図1において、塗装パネル10は、被塗物2と、被塗物2の上に形成される複層膜1とを備えている。
被塗物2は、基材3を備えている。
基材3としては、例えば、金属板、樹脂板などが挙げられる。
金属板において、金属としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、亜鉛、スズなどが挙げられる。これら金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。
樹脂板において、樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、スチロール樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
これら基材3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
すなわち、基材3は、金属板であってもよく、樹脂板であってもよく、さらには、金属および樹脂を含む複合板であってもよい。基材3として、好ましくは、金属板が挙げられる。
また、基材3は、必要に応じて、化成処理(リン酸亜鉛化成処理、ジルコニウム化成処理、クロム酸化成処理など)などの表面処理がされていてもよい。さらに、基材3の表面には、必要に応じて、カチオン電着塗装処理、アニオン電着塗装処理などの電着塗装がされていてもよい。
好ましくは、基材3は化成処理および電着塗装されている。すなわち、基材3の表面には、好ましくは、電着塗料からなる電着層4が形成されている。
換言すれば、被塗物2は、好ましくは、基材3および電着層4を備えている。このような被塗物2として、より具体的には、例えば、自動車、電車などの車両の外板、航空機などの機体の外板、工業機械などの外板などが挙げられ、好ましくは、車両の外板が挙げられる。
複層膜1は、被塗物2(電着層4)の上に形成される多層構造の膜体であって、中塗層5と、中塗層5の上に積層されるベース層6と、ベース層6の上に積層されるクリア層7とを備えている。
複層膜1において、中塗層5は、後述する中塗り塗料の熱硬化物(中塗り樹脂硬化物)であり、また、ベース層6は、後述するベース塗料の熱硬化物(ベース樹脂硬化物)であり、また、クリア層7は、後述するクリア塗料の熱硬化物(クリア樹脂硬化物)である。
このような複層膜1は、以下に示す方法によって、例えば、3コート1ベーク方式で製造される。
すなわち、この方法では、まず、図2Aに示されるように、基材3(および必要により電着層4)を備えた被塗物2を準備する(準備工程)。
次いで、この方法では、図2Bに示されるように、被塗物2の表面(電着層4を備える場合には、電着層4の表面)に中塗り塗料を塗布し、中塗り塗膜15を形成する(中塗工程)。
中塗り塗料は、カルボキシル基を有する中塗り主剤と、直鎖脂肪族ジイソシアネートのカルボジイミド変性体を含む中塗り硬化剤とを含有する樹脂組成物(中塗り樹脂組成物)である。
カルボキシル基を有する中塗り主剤としては、カルボキシル基を有する水系樹脂、カルボキシル基を有する油系樹脂などが挙げられる。
カルボキシル基を有する水系樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する親水性高分子が挙げられ、具体的には、カルボキシル基を有する親水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリアミド樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂(親水性ポリウレタンポリオール)、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂(親水性アクリルポリオール)、カルボキシル基を有する親水性ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他、繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン)樹脂などが挙げられる。これらカルボキシル基を有する水系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
カルボキシル基を有する水系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂が挙げられる。
カルボキシル基を有する油系樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する疎水性高分子が挙げられ、具体的には、カルボキシル基を有する疎水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリアミド樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリウレタン樹脂(疎水性ポリウレタンポリオール)、カルボキシル基を有する疎水性アクリル樹脂(疎水性アクリルポリオール)、カルボキシル基を有する疎水性ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他、繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン)樹脂などが挙げられる。これらカルボキシル基を有する油系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
カルボキシル基を有する油系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する疎水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する疎水性アクリル樹脂が挙げられる。
これら中塗り主剤は単独使用または2種類以上併用することができる。
中塗り主剤として、好ましくは、カルボキシル基を有する水系樹脂が挙げられる。
また、中塗り主剤として、好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂(親水性アクリル樹脂および疎水性アクリル樹脂)、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(親水性ポリウレタン樹脂および疎水性ポリウレタン樹脂)が挙げられ、より具体的には、カルボキシル基を有するアクリルポリオール(親水性アクリルポリオールおよび疎水性アクリルポリオール)、カルボキシル基を有するポリウレタンポリオール(親水性ポリウレタンポリオールおよび疎水性ポリウレタンポリオール)が挙げられる。
また、中塗り主剤としては、耐チッピング性の観点から、より好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂(さらに好ましくは、カルボキシル基を有するアクリルポリオール(以下同様))と、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂(さらに好ましくは、カルボキシル基を有するポリウレタンポリオール(以下同様))との併用が挙げられる。
カルボキシル基を含有するアクリル樹脂と、カルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂とが併用される場合、好ましくは、それらの親水性および/または疎水性が統一される。すなわち、親水性アクリル樹脂が用いられる場合には、親水性ポリウレタン樹脂が用いられる。また、疎水性アクリル樹脂が用いられる場合には、疎水性ポリウレタン樹脂が用いられる。
中塗り主剤として、とりわけ好ましくは、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂と、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂との併用が挙げられる。
また、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂と、カルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂とが併用される場合、それらの併用割合は、耐チッピング性の観点から、固形分基準で、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂との総量に対して、アクリル樹脂の割合が、例えば、50質量%以上、好ましくは、55質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、65質量%以上、とりわけ好ましくは、70質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。また、ポリウレタン樹脂が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、35質量%以下、とりわけ好ましくは、30質量%以下である。
カルボキシル基を含有するアクリル樹脂と、カルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂との併用割合が上記範囲であれば、機械強度および耐チッピング性の両立を図ることができる。
中塗り硬化剤は、直鎖脂肪族ジイソシアネートのカルボジイミド変性体を含んでいる。
より具体的には、中塗り硬化剤は、詳しくは後述するように、カルボジイミド変性体を含むポリカルボジイミド組成物と、水および/または有機溶剤とを含む組成物として、調製される。
ポリカルボジイミド組成物は、主成分として(例えば、ポリカルボジイミド組成物に対して90質量%以上の割合で)、直鎖脂肪族ジイソシアネートのカルボジイミド変性体を含有する。
カルボジイミド変性体は、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応生成物を、カルボジイミド化反応させることにより得ることができる。
直鎖脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、1,3−プロパンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,5−ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)1,8−オクタンジイソシアネート(オクタメチレンジイソシアネート)、1,12−ドデカンジイソシアネート(ドデカメチレンジイソシアネート)などの炭素数1〜20の直鎖脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
これら直鎖脂肪族ジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
直鎖脂肪族ジイソシアネートを用いることにより、熱安定性に優れるポリカルボジイミド組成物を得ることができ、また、外観および耐薬品性に優れる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
直鎖脂肪族ジイソシアネートとして、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、好ましくは、1,5−ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)が挙げられ、より好ましくは、1,5−ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)が挙げられる。
とりわけ、1,5−ペンタンジイソシアネートは、1,6−ヘキサンジイソシアネートに比べて炭素数が少なく、分子量が小さいため、同じ分子量のポリカルボジイミド組成物を製造する場合、1,5−ペンタンジイソシアネートを用いると、1,6−ヘキサンジイソシアネートを用いる場合に比べ、ポリカルボジイミド組成物中のカルボジイミド基濃度を高くすることができる。その結果、低温速硬化性に優れたポリカルボジイミド組成物を得ることができ、さらに、各種物性(外観および耐薬品性など)に優れた熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。また、炭素数が奇数である1,5−ペンタンジイソシアネートは、炭素数が偶数である1,6−ヘキサンジイソシアネートに比べ、奇数炭素数に由来する非晶構造によって結晶性が低いため、流動性および分散性に優れ、得られる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))の物性が向上する。
さらに、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを用いると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを用いる場合に比べ、後述するウレトンイミン基の熱分解が起こりやすく、そのため、ポリカルボジイミド組成物を収率よく得ることができる。また、低い温度でもハンドリングできるため、ウレトンイミンの高分子量化を抑制できる。
アルコール類は、ポリオールおよび/またはモノオールを含み、好ましくは、ポリオールおよびモノオールを含み、さらに好ましくは、ポリオールおよびモノオールからなる。
ポリオールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する有機化合物であって、単量体ポリオール、重合体ポリオールが挙げられる。
単量体ポリオールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する有機モノマー(単一化合物(以下同様))であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−、テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C2〜20)ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
これら単量体ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
単量体ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールが挙げられる。
重合体ポリオールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する有機ポリマー(重合化合物(以下同様))であり、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数2〜3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレン(炭素数2〜3)ポリオールとしては、例えば、単量体ポリオールや、公知の単量体(低分子量)ポリアミンなどを開始剤とする、炭素数2〜3のアルキレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
単量体ポリオールとしては、上記した単量体ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
炭素数2〜3のアルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド(1,2−プロピレンオキサイド)、エチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオキシアルキレン(炭素数2〜3)ポリオールとして、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール(プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体)などが挙げられる。
また、ポリオキシアルキレン(炭素数2〜3)ポリオールとしては、さらに、ポリトリメチレングリコールなども含まれる。
ポリトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物成分由来の1,3−プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールなどが挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性))や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、単量体ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
単量体ポリオールとしては、上記した単量体ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸(C11〜13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
これら多塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
多塩基酸として、好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、酸無水物が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した単量体ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなども挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した単量体ポリオール(好ましくは、2〜3価アルコール)を開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L−ラクチド、D−ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられ、さらには、それらに上記2価アルコールを共重合したアルコール変性ラクトンポリオールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した単量体ポリオール(好ましくは、上記2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物(結晶性ポリカーボネートポリオール)や、例えば、炭素数4〜6の2価アルコール(1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)と、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。また、イソソルバイドなど植物由来原料から誘導された植物由来ポリカーボネートポリオールなど挙げられる。なお、非晶性とは、常温(25℃)において液状であることを示す。また、結晶性とは、常温(25℃)において固形状であることを示す。
これら重合体ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
重合体ポリオールとして、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の向上を図る観点から、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール(好ましくは、ラクトン系ポリエステルポリオール)が挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
これらポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオールとして、好ましくは、重合体ポリオールが挙げられる。
ポリオールの分子量(複数併用される場合には、ポリオールの平均分子量)は、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の観点から、例えば、60以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、120以上、さらに好ましくは、150以上、とりわけ好ましくは、200以上であり、熱硬化物(樹脂硬化物(後述))の耐薬品性の観点から、例えば、5000以下、好ましくは、2000以下、より好ましくは、1000以下、さらに好ましくは、800以下、とりわけ好ましくは、500以下である。
ポリオールの分子量が上記範囲であれば、ポリカルボジイミド組成物が優れた熱安定性を得ることができ、また、耐薬品性に優れた熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
なお、単量体ポリオールの分子量は、分子骨格および原子数から算出することができる。また、重合体ポリオールの分子量は、数平均分子量として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定による標準ポリスチレン換算分子量として求められる。そして、ポリオールの分子量は、各成分の分子量の平均値として算出される。
また、ポリオールの平均官能基数は、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の観点から、例えば、2以上であり、例えば、8以下、好ましくは、6以下、より好ましくは、4以下、さらに好ましくは、3以下であり、とりわけ好ましくは、2である。
モノオールは、分子中に1つの水酸基を有する有機化合物であって、単量体モノオール、重合体モノオールが挙げられる。
単量体モノオールは、分子中に1つの水酸基を有する有機モノマーであって、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール(炭素数10)、ラウリルアルコール(炭素数12)、セチルアルコール(炭素数14)、ステアリルアルコール(炭素数18)、オレイルアルコール(炭素数18)、エイコサノール(炭素数20)などの脂肪族モノオール、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名エチルカルビトール)などのエーテルモノオール、例えば、フェノールおよびその誘導体、ベンジルアルコールおよびその誘導体、フェネチルアルコールおよびその誘導体、ナフトールおよびその誘導体などの芳香族アルコールなどが挙げられる。
これら単量体モノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
単量体モノオールとして、好ましくは、脂肪族モノオールが挙げられ、より好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族モノオールが挙げられ、さらに好ましくは、イソブタノールが挙げられる。
重合体モノオールは、分子中に1つの水酸基を有する有機ポリマーであって、例えば、重合体ポリオールの末端が、1つの末端を除いてアルキル基などにより封止された封止体
などが挙げられる。
より具体的には、例えば、2官能の重合体ポリオール(重合体ジオール)の片末端がアルキル基などにより封止された封止体(以下、片末端封止重合体ジオールと称する場合がある)などが挙げられる。
片末端封止重合体ジオールとしては、例えば、片末端封止ポリエーテルジオール、片末端封止ポリエステルジオール、片末端封止ポリカーボネートジオール、片末端封止ポリウレタンジオール、片末端封止エポキシジオール、片末端封止植物油ジオール、片末端封止ポリオレフィンジオール、片末端封止アクリルジオール、片末端封止ビニルモノマー変性ジオールなどが挙げられ、好ましくは、片末端封止ポリエーテルジオールが挙げられる。
片末端封止ポリエーテルジオールとしては、より好ましくは、片末端封止ポリオキシエチレングリコール、片末端封止ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
片末端封止ポリオキシエチレングリコールは、ポリオキシエチレングリコールの片方の末端水酸基をアルキル基により封止(すなわち、水酸基をオキシアルキレン基に置換)したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。
片末端封止ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールは、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数は、1以上であり、例えば、20以下、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、2以下である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、メチル基、エチル基が挙げられる。
そのようなポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとして、具体的には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
片末端封止ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールの片方の末端水酸基をアルキル基により封止(すなわち、水酸基をオキシアルキレン基に置換)したポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルである。
片末端封止ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールは、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。具体的には、例えば、上記した2価アルコールの片方の末端水酸基がアルキル基で封止された1価アルコール(ジプロピレングリコールのモノアルキルエーテルなど)を開始剤として、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加反応させることにより、得ることができる。
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数は、1以上であり、例えば、20以下、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、2以下である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
そのようなポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルとして、具体的には、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の総質量に対するオキシエチレン基の割合は、水分散性および耐水性のバランスの観点から、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
これら重合体モノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
重合体モノオールとして、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、好ましくは、片末端封止ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
モノオールとして、好ましくは、重合体モノオールを単独使用するか、または、重合体モノオールと単量体モノオールとを併用する。より好ましくは、重合体モノオールを単独使用する。
重合体モノオールと単量体モノオールとを併用する場合、その併用割合は、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、それらの総モルに対して、重合体モノオールが、例えば、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上であり、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。また、単量体モノオールが、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上であり、例えば、50モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。
モノオールの分子量(複数併用される場合には、モノオールの平均分子量)は、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の観点から、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、200以上、さらに好ましくは、400以上であり、熱硬化物(樹脂硬化物(後述))の耐薬品性の観点から、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1000以下である。
モノオールの分子量が上記範囲であれば、ポリカルボジイミド組成物が優れた熱安定性を得ることができ、また、耐薬品性に優れた熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
なお、単量体モノオールの分子量は、分子骨格および原子数から算出することができる。また、重合体モノオールの分子量は、数平均分子量として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定によるポリスチレン換算分子量として求められる。そして、モノオールの分子量は、各成分の分子量の平均値として算出される。
アルコール類において、ポリオールとモノオールとの併用割合は、ポリオールに由来する水酸基数と、モノオールに由来する水酸基数とのモル比を基準として設定される。
具体的には、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、モノオール由来の水酸基数に対するポリオール由来の水酸基数のモル比(ポリオール由来の水酸基/モノオール由来の水酸基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.8以上であり、例えば、2.0未満、好ましくは、1.8以下、より好ましくは、1.5以下、さらに好ましくは、1.2以下である。
すなわち、カルボジイミド変性体を含むポリカルボジイミド組成物は、まず、原料成分としての直鎖脂肪族ジイソシアネートと上記のアルコール類(モノオールおよびポリオール)とを所定の条件で反応させ、反応生成物としてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、さらに、イソシアネート基末端プレポリマーをカルボジイミド化反応させることにより、得ることができる。
このような場合において、ポリオールとモノオールとの併用割合が上記範囲であれば、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応(後述)により、適度に高分子量化されたプレポリマーが得られ、そのプレポリマーがカルボジイミド化される。そのため、カルボジイミド変性体が比較的高分子量化され、比較的低分子である場合に比べ、優れた熱安定性、外観および耐薬品性を得ることができる。
以下において、ポリカルボジイミド組成物の製造方法について、詳述する。
この方法では、まず、上記の直鎖脂肪族ジイソシアネートと上記のアルコール類とをウレタン化反応させる(ウレタン化工程)。
ウレタン化工程において、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応割合は、アルコール類の水酸基に対する、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)が後述する範囲になるように、直鎖脂肪族ジイソシアネートおよびアルコール類の種類(分子量など)に応じて、設定される。
より具体的には、直鎖脂肪族ジイソシアネートおよびアルコール類の種類にもよるが、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応割合は、アルコール類の水酸基に対する、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、例えば、2を超過し、好ましくは、3以上、より好ましくは、4以上、さらに好ましくは、5以上であり、例えば、16以下、好ましくは、10以下、より好ましくは、8未満、さらに好ましくは、6以下である。すなわち、ウレタン化工程では、好ましくは、水酸基に対してイソシアネート基が過剰となる割合で反応させる。
直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応割合が上記範囲内であれば、耐薬品性に優れる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
また、この反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加してもよい。
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート(ジラウリン酸ジブチル錫(IV))、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、ウレタン化工程における反応条件は、ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)が後述する範囲になるように、直鎖脂肪族ジイソシアネートおよびアルコール類の種類や、上記の当量比(NCO/OH)などに応じて、設定される。
より具体的には、ウレタン化工程における反応条件は、例えば、常圧および不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気下において、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、50時間以下、好ましくは、40時間以下である。
これにより、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応生成物として、プレポリマーを得ることができる。なお、プレポリマーは、分子末端にイソシアネート基を有する(すなわち、イソシアネート基末端プレポリマーである。)。
次いで、この方法では、上記のウレタン化工程における反応生成物を含む反応液を、カルボジイミド化触媒の存在下において加熱し、カルボジイミド化反応させる(カルボジイミド化工程)。
カルボジイミド化触媒としては、特に制限されないが、例えば、トリアルキルリン酸エステル系化合物、フォスフォレンオキシド系化合物、フォスフォレンスルフィド系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、ホスフィン系化合物などが挙げられる。
トリアルキルリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェートなどの炭素数3〜24のトリアルキルリン酸エステル系化合物などが挙げられる。
フォスフォレンオキシド系化合物としては、例えば、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド(MPPO)、1−エチル−3−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド(EMPO)、1−ブチル−3−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−ベンジル−3−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシドおよびこれらの二重結合異性体などの炭素数4〜18のフォスフォレンオキシド系化合物などが挙げられる。
フォスフォレンスルフィド系化合物としては、例えば、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−スルフィドなどの炭素数4〜18のフォスフォレンスルフィド系化合物などが挙げられる。
ホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリトリルホスフィンオキシドなどの炭素数3〜21のホスフィンオキシド系化合物などが挙げられる。
ホスフィン系化合物としては、例えば、ビス(オキサジフェニルホスフィノ)エタンなどの炭素数3〜30のホスフィン系化合物などが挙げられる。
これらカルボジイミド化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
カルボジイミド化触媒として、好ましくは、フォスフォレンオキシド系化合物が挙げられ、より好ましくは、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシドが挙げられる。
上記のカルボジイミド化触媒を用いれば、カルボジイミド化の活性を向上して、反応温度を低下させることができ、また、ウレトンイミン化などの副反応を抑制して、ポリカルボジイミド組成物を収率よく得ることができ、また、カルボジイミド基の含有量の向上を図ることができる。
カルボジイミド化触媒として、耐水性に優れた熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得る観点から、とりわけ好ましくは、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドが挙げられる。
カルボジイミド化触媒の配合割合は、直鎖脂肪族ジイソシアネート(ウレタン化工程において用いられた直鎖脂肪族ジイソシアネート)100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
また、カルボジイミド化工程における反応条件は、得られるポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド基の含有割合(カルボジイミド当量)が、後述する特定範囲となるように設定される。より具体的には、カルボジイミド化反応の進行を図り、ウレトンイミンの低減を図る観点から、常圧および不活性ガス(窒素ガスなど)雰囲気下において、反応温度が、例えば、125℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、135℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、50時間以下、好ましくは、40時間以下である。
このような条件で反応させることにより、ウレタン化工程で得られた反応生成物(イソシアネート基末端プレポリマー)が、イソシアネート基を介して脱炭酸縮合し、効率よくカルボジイミド基を生成することができる。
より具体的には、反応温度が上記下限以上であれば、生成したウレトンイミンがカルボジイミドとイソシアネート基に分解する反応を促進しつつ、カルボジイミド化反応を進行させることができる。上記下限未満の温度であると、この熱分解反応が非常に起こりにくくなり、ウレトンイミンの含有量が増加し、カルボジイミド基の含有率が低下する。また、ウレトンイミンの増加による分子量が増加し、反応液が固化する場合がある。一方、反応温度が上記上限以下であれば、重合ロスを低減することができる。上記上限温度を超えてしまうと、カルボジイミド化、ウレトンイミン化以外の重合反応が促進され、カルボジイミド基の含有量が低下するだけでなく、分子量増加によって反応液が固化しやすくなる。
また、カルボジイミド化工程では、円滑にカルボジイミド化反応させ、また、脱炭酸縮合を促進する観点から、好ましくは、有機溶媒の存在下において、反応液を還流させる。すなわち、還流下において、カルボジイミド化反応させる。
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
有機溶媒として、好ましくは、還流時の温度が、上記した反応温度の範囲内である有機溶媒が挙げられる。
そのような有機溶媒として、具体的には、キシレン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
有機溶媒の配合割合は、特に制限されないが、優れた外観の熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得る観点から、直鎖脂肪族ジイソシアネート(ウレタン化工程において用いられた直鎖脂肪族ジイソシアネート)100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上であり、例えば、2000質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
有機溶媒の存在下で反応液を還流させることにより、ウレトンイミンの分解反応を促進しつつ、円滑にカルボジイミド化反応させることができ、また、イソシアネート基のカルボジイミド化に伴って生じる炭酸ガスを脱離させることができるため、カルボジイミド化の促進を図ることができる。
そして、このような方法によって、ウレタン基およびカルボジイミド基を含有し、また、場合によりウレトンイミン基を含有するカルボジイミド変性体が得られる。
より具体的には、まず、ウレタン化工程において、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基に由来するウレタン基が生成する。
次いで、ウレタン化工程で得られた反応生成物(イソシアネート基末端プレポリマー)が、カルボジイミド化工程において加熱されると、分子末端のイソシアネート基に由来するカルボジイミド基が生成し、また、場合により、生成したカルボジイミド基の一部が分子末端のイソシアネート基と反応し、ウレトンイミン基が生成する。なお、ウレトンイミン基は、カルボジイミド化工程において加熱が継続されることにより熱分解され、カルボジイミド基と、分子末端のイソシアネート基とが再生し、さらに、分子末端のイソシアネート基に由来するカルボジイミド基が生成する。
このようにして、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基が、ウレタン基およびカルボジイミド基(さらに、場合によりウレトンイミン基)に変換される。
その結果、ウレタン基およびカルボジイミド基を含有し、また、場合によりウレトンイミン基を含有するカルボジイミド変性体が得られる。
また、これによって、カルボジイミド変性体を主成分として含むポリカルボジイミド組成物が得られる。また、ポリカルボジイミド組成物は、副成分として、未反応の直鎖脂肪族ジイソシアネートを含有することもできる。直鎖脂肪族ジイソシアネートの含有割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。
また、この方法では、必要に応じて、上記したカルボジイミド化工程において得られたポリカルボジイミド組成物と、アルコール類とを、さらに反応させることもできる。なお、以下において、カルボジイミド化工程の前のウレタン化工程を、第1ウレタン化工程と称し、また、カルボジイミド化工程の後のウレタン化工程を、第2ウレタン化工程と称する場合がある。
具体的には、カルボジイミド化工程において得られたポリカルボジイミド組成物が、さらに、分子末端にイソシアネート基を有する場合には、そのポリカルボジイミド組成物とアルコール類とを反応させることにより、分子末端のイソシアネート基をウレタン化することができる。
なお、第2ウレタン化工程が実施されると、アルコール類由来の副生成物が多くなり、分子量が急激に増加して流動性が低下し、作業性が低下する場合や、また、水分散組成物における分散性が低下する場合がある。そのため、好ましくは、第2ウレタン化工程を実施せず、第1ウレタン化工程およびカルボジイミド化工程のみを実施する。
なお、ポリカルボジイミド組成物の製造方法は、上記に限定されず、例えば直鎖脂肪族ジイソシアネートとカルボジイミド化触媒とアルコール類とを一括配合し、加熱することもできる。
また、必要に応じて、ポリカルボジイミド組成物から、例えば、未反応の直鎖脂肪族ジイソシアネート、未反応のアルコール類、低分子量化合物(副生成物)、有機溶媒、カルボジイミド化触媒、ウレタン化触媒などを、蒸留、抽出、ろ過などの公知の方法によって除去することもできる。
また、ポリカルボジイミド組成物には、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、貯蔵安定剤(o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドなど)、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、顔料、表面調整剤、分散剤、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜のタイミングで添加することができる。なお、添加剤の添加割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、ポリカルボジイミド組成物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
このようにして得られるポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)は、例えば、300以上、好ましくは、350以上、より好ましくは、400以上、さらに好ましくは、410以上、とりわけ好ましくは、430以上であり、例えば、550以下、好ましくは、530以下、より好ましくは、500以下、さらに好ましくは、480以下、とりわけ好ましくは、460以下である。
なお、カルボジイミド当量(g/mol)は、後述する実施例に準拠して、13C−NMRにより測定される。
すなわち、カルボジイミド当量(g/mol)は、仕込み比から算出することもできるが、13C−NMRによる実測値が採用される。
また、このようなポリカルボジイミド組成物は、ポリオールおよびモノオールを所定割合で含むアルコール類を用いるため、モノオールのみを用いるポリカルボジイミド組成物に比べて、高分子量化されており、低分子量体が低減されている。
具体的には、ポリカルボジイミド組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、熱安定性、耐薬品性および外観の向上を図る観点から、例えば、7.0%以下、好ましくは、6.5%以下、より好ましくは、6.0%以下、さらに好ましくは、5.0%以下、とりわけ好ましくは、4.5%以下である。
また、ポリカルボジイミド組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量1000以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、熱安定性、耐薬品性および外観の向上を図る観点から、例えば、12.0%以下、好ましくは、10.0%以下、より好ましくは、9.0%以下、さらに好ましくは、8.0%以下、とりわけ好ましくは、7.0%以下である。
なお、面積率は、後述する実施例に準拠して、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の分子量分布を、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における面積比率として、算出することができる。なお、分子量500以下のピーク面積の面積率、および、分子量1000以下のピーク面積の面積率は、標準ポリスチレンの検量線に基づく。
そして、分子量500以下のピーク面積の面積率が上記範囲であり、かつ、分子量1000以下のピーク面積の面積率が上記範囲であれば、外観、耐薬品性および熱安定性の向上を図ることができ、とりわけ、熱硬化物(樹脂硬化物(後述))の外観の向上を図ることができる。
そして、このようなポリカルボジイミド組成物では、原料成分のアルコール類が、ポリオールおよびモノオールを所定割合で含んでいるため、アルコール類がポリオールを含まない場合に比べて、カルボジイミド変性体が高分子量化される。具体的には、直鎖脂肪族ジイソシアネートと、ポリオールを含むアルコール類との反応によりプレポリマーが得られ、そのプレポリマーがカルボジイミド化されるため、比較的高分子量のカルボジイミド変性体が得られる。その結果、ポリカルボジイミド組成物から、耐薬品性に優れる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
一方、過度にカルボジイミド変性体が高分子量化されると、増粘しやすく、熱安定性に劣る場合がある。これに対して、ポリカルボジイミド組成物において、カルボジイミド変性体は、ポリオールおよびモノオールの割合が調整されているため、適度に高分子量化されるに留まり、熱安定性にも優れる。
さらに、上記のポリカルボジイミド組成物は、カルボジイミド当量が、所定割合に調整されているため、外観および耐薬品性に優れる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
すなわち、上記したポリカルボジイミド組成物は、熱安定性に優れており、さらに、外観および耐薬品性に優れる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
また、上記のポリカルボジイミド組成物の製造方法によれば、ポリカルボジイミド組成物を、効率よく製造することができる。
このようなポリカルボジイミド組成物は、熱安定性に優れており、さらに、外観および耐薬品性に優れる熱硬化物(樹脂硬化物(後述))を得ることができる。
そして、中塗り硬化剤は、ポリカルボジイミド組成物を含んでいれば、特に制限されないが、例えば、ポリカルボジイミド組成物が水に分散された水分散液(以下、水分散組成物と称する。)や、ポリカルボジイミド組成物が有機溶媒に溶解された溶液(以下、溶液組成物と称する。)などとして調製される。
水分散組成物は、ポリカルボジイミド組成物と水とを含有している。
ポリカルボジイミド組成物を水に分散させる方法としては、特に制限されず、ポリカルボジイミド組成物に水を添加し、撹拌する方法や、水にポリカルボジイミド組成物を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリカルボジイミド組成物に水を添加する。
ポリカルボジイミド組成物と水との割合は、特に制限されないが、水分散組成物におけるポリカルボジイミド組成物(樹脂成分)の濃度(すなわち、固形分濃度)が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
中塗り硬化剤が水分散組成物であれば、水系樹脂(中塗り主剤)との相溶性の向上を図ることができ、また、外観および耐薬品性に優れた硬化物を得ることができる。また、このような溶液組成物は、上記ポリカルボジイミド組成物を含むため、熱安定性に優れる。
溶液組成物は、ポリカルボジイミド組成物と有機溶媒とを含有している。
有機溶媒としては、上記した有機溶媒が挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが挙げられる。
また、カルボジイミド化工程で使用する溶媒を、溶液組成物の有機溶媒として使用してもよい。例えば、カルボジイミド化工程後において使用した溶媒を、留去することなく、そのまま溶液組成物の有機溶媒として用いることもできる。
ポリカルボジイミド組成物を有機溶媒に溶解させる方法としては、特に制限されず、ポリカルボジイミド組成物に有機溶媒を添加し、撹拌する方法や、有機溶媒にポリカルボジイミド組成物を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリカルボジイミド組成物に有機溶媒を添加する。
ポリカルボジイミド組成物と有機溶媒との割合は、特に制限されないが、溶液組成物におけるポリカルボジイミド組成物(樹脂成分)の濃度(すなわち、固形分濃度)が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
中塗り硬化剤が溶液組成物であれば、油系樹脂(中塗り主剤)との相溶性の向上を図ることができ、また、外観および耐薬品性に優れた硬化物を得ることができる。また、このような溶液組成物は、熱安定性に優れる。
これら中塗り硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
中塗り硬化剤として、好ましくは、水分散組成物が挙げられる。
また、中塗り主剤および中塗り硬化剤の組み合わせとして、好ましくは、中塗り主剤が水系樹脂であり、中塗り硬化剤が水分散組成物である組み合わせが挙げられる。また、好ましくは、中塗り主剤が油系樹脂であり、中塗り硬化剤が溶液組成物である組み合わせも挙げられる。
中塗り塗料(樹脂組成物)として、有機溶媒を低減し、地球環境を保護する観点から、好ましくは、水系中塗り主剤と水分散組成物との組み合わせが挙げられる。
中塗り主剤および中塗り硬化剤の含有割合は、それらの総量100質量部に対して、中塗り主剤が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、99.5質量部以下、好ましくは、95.0質量部以下である。また、中塗り硬化剤、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
また、中塗り主剤中のカルボキシル基に対する、中塗り硬化剤中のカルボジイミド基のモル比が、耐薬品性、密着性、耐水性(耐湿性)および耐チッピング性の観点から、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは、0.5以上であり、耐薬品性およびポットライフの両立を図る観点から、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下、より好ましくは、1.5以下である。
また、中塗り塗料には、必要に応じて、中塗り主剤および中塗り硬化剤のいずれか一方またはその両方に、例えば、エポキシ樹脂、触媒(ウレタン化触媒など)、塗工改良剤、レベリング剤、粘性調整剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、溶剤、表面調整剤、分散剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
なお、上記の添加剤は、2種類以上を予め混合し、混合添加物として調製することもできる。混合添加物としては、例えば、顔料、分散剤および溶剤を予め混合した顔料ペーストなどが挙げられる。
また、中塗り主剤として、上記したカルボキシル基を有する水系樹脂、および/または、上記したカルボキシル基を有する油系樹脂と、その他の樹脂(例えば、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂など)とを併用することもできる。
また、中塗り硬化剤として、上記したポリカルボジイミド組成物と、その他の硬化剤(例えば、ポリイソシアネート系樹脂(ブロックポリイソシアネートなど)、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂など)とを併用することもできる。
なお、中塗り塗料は、例えば、中塗り硬化剤および中塗り主剤を備える2液タイプの塗料として製造されるか、中塗り硬化剤および中塗り主剤が予め混合された1液タイプの塗料として製造される。好ましくは、中塗り塗料は、中塗り硬化剤および中塗り主剤を備える2液タイプの塗料として製造される。
また、中塗り塗料の塗布では、例えば、中塗り塗料が2液タイプの場合は中塗り主剤および中塗り硬化剤を混合して、得られた混合物を、被塗物2に塗布する。また、中塗り塗料が1液タイプの場合は、中塗り塗料をそのまま、被塗物2に塗布する。
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、刷毛塗り、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知の塗布方法が採用される。
中塗り塗料の塗布量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
より具体的には、中塗り塗膜15の乾燥膜厚が、例えば、10μm以上、好ましくは、15μm以上であり、例えば、50μm以下、好ましくは、40μm以下である。
次いで、この方法では、図2Cに示されるように、上記の中塗り塗膜15の上にベース塗料を塗布し、ベース塗膜16を形成する(ベース工程)。
ベース塗料は、少なくとも、ベース主剤を含有する樹脂組成物(ベース樹脂組成物)である。
ベース主剤としては、例えば、水酸基を有する水系樹脂、水酸基を有する油系樹脂などが挙げられる。
水酸基を有する水系樹脂としては、例えば、水酸基を有する親水性高分子が挙げられ、具体的には、親水性ポリエステル樹脂、親水性ポリエーテル樹脂、親水性ポリウレタン樹脂(親水性ポリウレタンポリオール)、親水性アクリル樹脂(親水性アクリルポリオール)などが挙げられる。これら水系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
水系樹脂として、好ましくは、親水性ポリウレタン樹脂(親水性ポリウレタンポリオール)、親水性アクリル樹脂(親水性アクリルポリオール)が挙げられる。
油系樹脂としては、例えば、水酸基を有する疎水性高分子が挙げられ、具体的には、疎水性ポリエステル樹脂、疎水性ポリエーテル樹脂、疎水性ポリウレタン樹脂(疎水性ポリウレタンポリオール)、疎水性アクリル樹脂(疎水性アクリルポリオール)などが挙げられる。これら油系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
油系樹脂として、好ましくは、疎水性ポリウレタン樹脂(疎水性ポリウレタンポリオール)、疎水性アクリル樹脂(疎水性アクリルポリオール)が挙げられる。
これらベース主剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ベース主剤として、好ましくは、水酸基を有する親水性樹脂が挙げられ、耐チッピング性の観点から、好ましくは、アクリル樹脂が挙げられ、より好ましくは、親水性アクリル樹脂が挙げられる。
また、ベース主剤は、より好ましくは、ポリウレタン樹脂を含んでおり、より好ましくは、親水性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
換言すれば、ベース主剤として、より好ましくは、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂の併用が挙げられ、より具体的には、アクリルポリオールとポリウレタンポリオールとの併用が挙げられ、さらに好ましくは、親水性アクリルポリオールと親水性ポリウレタンポリオールとの併用が挙げられ、とりわけ好ましくは、中塗り主剤と同種の親水性アクリルポリオールと、中塗り主剤と同種の親水性ポリウレタンポリオールとの併用が挙げられる。
ベース主剤が、アクリル樹脂(さらに好ましくは、アクリルポリオール(以下同様))ポリオールとポリウレタン樹脂(さらに好ましくは、ポリウレタンポリオール(以下同様))とを含有していれば、密着性およびチッピング性の向上を図ることができる。
ベース主剤として、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂とが併用される場合、それらの併用割合は、固形分基準で、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂との総量に対して、アクリル樹脂の割合が、例えば、50質量%以上、好ましくは、55質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、65質量%以上、とりわけ好ましくは、70質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。また、ポリウレタン樹脂が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、35質量%以下、とりわけ好ましくは、30質量%以下である。
アクリル樹脂とポリウレタン樹脂との併用割合が上記範囲であれば、密着性および耐チッピング性の両立を図ることができる。
また、ベース塗料は、後述するように、クリア硬化剤によって硬化可能であるため、ベース主剤が含まれていれば、硬化剤が含まれていなくともよいが、必要に応じて、ベース硬化剤を含むこともできる。
ベース硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤(ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ブロックイソシアネートなど)などが挙げられる。これらベース硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ベース塗料がベース硬化剤を含んでいれば、ベース層6の機械強度を向上でき、耐チッピング性の向上を図ることができる。
なお、上記したように、ベース硬化剤は、ベース塗料に含有されていなくともよい。
より具体的には、例えば、後述するクリア塗料(クリア塗膜16)にクリア硬化剤が含有されており、かつ、複層膜1が3コート1ベーク方式で形成される場合には、ベース塗料がベース硬化剤を含有していなくとも、クリア塗料(クリア塗膜16)中のクリア硬化剤が、ベース塗料(ベース塗膜15)に浸透して、ベース塗膜15を硬化させることができる。
なお、後述するクリア塗料(クリア塗膜16)にクリア硬化剤が含有されていない場合や、複層膜1が3コート1ベーク方式で形成されない場合(例えば、3コート3ベーク方式で形成される場合)などには、ベース塗膜15を硬化させるため、好ましくは、ベース塗料(ベース塗膜15)に、ベース硬化剤を含有させる。また、ベース塗膜15の硬化性の向上を図るため、ベース塗料(ベース塗膜15)に、ベース硬化剤を含有させることもできる。
ベース塗料がベース硬化剤を含有する場合、ベース主剤およびベース硬化剤の含有割合は、ベース主剤の種類およびベース硬化剤の種類(官能基の種類および数など)に応じて、適宜設定される。
例えば、ベース主剤の種類およびベース硬化剤の種類にもよるが、ベース主剤中の官能基(水酸基など)に対する、ベース硬化剤中の官能基(イソシアネート基など)の当量比が、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上であり、例えば,1.2以下、好ましくは、1.1以下である。
また、質量基準では、例えば、ベース主剤およびベース硬化剤の総量100質量部に対して、ベース主剤が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、99.5質量部以下、好ましくは、95.0質量部以下である。また、ベース硬化剤、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
また、ベース塗料には、必要に応じて、ベース主剤およびベース硬化剤のいずれか一方またはその両方に、例えば、エポキシ樹脂、触媒(ウレタン化触媒など)、塗工改良剤、レベリング剤、粘性調整剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、溶剤、表面調整剤、分散剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
なお、上記の添加剤は、2種類以上を予め混合し、混合添加物として調製することもできる。混合添加物としては、例えば、顔料、分散剤および溶剤を予め混合した顔料ペーストなどが挙げられる。
なお、ベース硬化剤を含まないベース塗料は、ベース主剤からなる1液タイプの塗料として製造される。
また、ベース硬化剤を含むベース塗料は、例えば、ベース硬化剤およびベース主剤を別々に備える2液タイプの塗料として製造されるか、ベース硬化剤およびベース主剤が予め混合された1液タイプの塗料として製造される。
好ましくは、ベース塗料は、ベース硬化剤を含まず、ベース主剤からなる1液タイプの塗料として製造される。
そして、ベース塗料の塗布では、ベース塗料が1液タイプの場合は、ベース塗料をそのまま、中塗り塗膜15に塗布する。また、例えば、ベース塗料が2液タイプの場合はベース主剤およびベース硬化剤を混合して、得られた混合物を、中塗り塗膜15に塗布する。
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、刷毛塗り、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知の塗布方法が採用される。
ベース塗料の塗布量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
より具体的には、ベース塗膜16の乾燥膜厚が、例えば、8μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、25μm以下、好ましくは、20μm以下である。
次いで、この方法では、図3Aに示されるように、上記のベース塗膜16の上にクリア塗料を塗布し、クリア塗膜17を形成する(クリア工程)。
クリア塗料は、クリア主剤およびクリア硬化剤を含有する樹脂組成物(クリア樹脂組成物)である。
クリア主剤としては、例えば、上記した水酸基を有する水系樹脂、上記した水酸基を有する油系樹脂などが挙げられる。
クリア主剤として、好ましくは、アクリル樹脂、より好ましくは、アクリルポリオール、さらに好ましくは、疎水性アクリルポリオール(有機溶剤系アクリルポリオール)が挙げられる。
クリア主剤がアクリルポリオールを含有していれば、密着性およびチッピング性の向上を図ることができる。
クリア硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤などが挙げられる。これらクリア硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
クリア硬化剤として、好ましくは、イソシアネート硬化剤が挙げられる。
イソシアネート硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート単量体および/またはその誘導体が挙げられる。
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、1,3−プロパンジイソシアネート(トリメチレンジイソシアネート)、1,2−プロパンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート)、1,2−ブタンジイソシアネート、2,3−ブタンジイソシアネート、1,3−ブタンジイソシアネート、1,5−ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、1,8−オクタンジイソシアネート(オクタメチレンジイソシアネート)、1,12−ドデカンジイソシアネート(ドデカメチレンジイソシアネート)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの直鎖状または分岐鎖状の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート単量体として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、直鎖脂肪族ジイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、1,5−ペンタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート単量体の誘導体(以下、ポリイソシアネート誘導体と称する。)としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体)、5量体、7量体など)、アロファネート誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、上記した単量体ポリオールとの反応より生成するアロファネート誘導体など)、ポリオール誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と上記した単量体ポリオールとの反応より生成するポリオール誘導体(アルコール付加体)など)、ビウレット誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット誘導体など)、ウレア誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア誘導体など)、オキサジアジントリオン誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド誘導体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド誘導体など)、ウレトジオン誘導体、ウレトンイミン誘導体などが挙げられる。さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体として、好ましくは、多量体が挙げられ、より好ましくは、イソシアヌレート誘導体が挙げられる。
また、イソシアネート硬化剤としては、上記したポリイソシアネート単量体および/またはその誘導体のイソシアネート基を、公知のブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートも挙げられる。
クリア硬化剤として、耐候性および機械物性の観点から、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体が挙げられ、機械物性の観点から、より好ましくは、1,5−ペンタンジイソシアネートおよび/またはその誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、1,5−ペンタンジイソシアネートの誘導体が挙げられ、とりわけ好ましくは、1,5−ペンタンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
クリア主剤およびクリア硬化剤の含有割合は、クリア主剤の主剤の種類およびクリア硬化剤の種類(官能基の種類および数など)に応じて、適宜設定される。
例えば、クリア主剤の種類およびクリア硬化剤の種類にもよるが、クリア主剤中の官能基(水酸基など)に対する、クリア硬化剤中の官能基(イソシアネート基など)の当量比が、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上であり、例えば、1.4以下、好ましくは、1.2以下である。
また、質量基準では、例えば、クリア主剤およびクリア硬化剤の総量100質量部に対して、クリア主剤が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、99.5質量部以下、好ましくは、95.0質量部以下である。また、クリア硬化剤、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
また、クリア塗料には、必要に応じて、クリア主剤およびクリア硬化剤のいずれか一方またはその両方に、例えば、エポキシ樹脂、触媒(ウレタン化触媒など)、塗工改良剤、レベリング剤、粘性調整剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、溶剤、表面調整剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
なお、クリア塗料は、例えば、クリア硬化剤およびクリア主剤を別々に備える2液タイプの塗料として製造されるか、クリア硬化剤およびクリア主剤が予め混合された1液タイプの塗料として製造される。
好ましくは、クリア塗料は、クリア硬化剤およびクリア主剤を別々に備える2液タイプの塗料として製造される。
そして、クリア塗料の塗布では、クリア塗料が2液タイプの場合はクリア主剤およびクリア硬化剤を混合して、得られた混合物を、ベース塗膜16に塗布する。また、クリア塗料が1液タイプの場合は、クリア塗料をそのまま、ベース塗膜16に塗布する。
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、刷毛塗り、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知の塗布方法が採用される。
クリア塗料の塗布量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
より具体的には、クリア塗膜17の乾燥膜厚が、例えば、20μm以上、好ましくは、25μm以上であり、例えば、60μm以下、好ましくは、50μm以下である。
その後、この方法では、図3Bに示されるように、中塗り塗膜15、ベース塗膜16およびクリア塗膜17を加熱硬化させる(熱硬化工程)。
加熱温度は、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。
また、硬化時間が、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下である。また、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上である。
これにより、中塗り塗膜15が熱硬化し、中塗り塗料の熱硬化物(中塗り樹脂硬化物)として、中塗層5が得られる。
また、ベース塗膜16が熱硬化し、ベース塗料の熱硬化物(ベース樹脂硬化物)として、ベース層6が得られる。
なお、ベース硬化剤が、ベース塗料に含有されていない場合には、クリア塗料(クリア塗膜16)のクリア硬化剤が、ベース塗料(ベース塗膜15)に浸透して、ベース塗膜15が硬化する。すなわち、ベース主剤とクリア硬化剤との熱硬化物として、ベース層6が得られる。
さらに、クリア塗膜17が熱硬化し、クリア塗料の熱硬化物(クリア樹脂硬化物)として、クリア層7が得られる。
その結果、中塗層5と、中塗層5の上に積層されるベース層6と、ベース層6の上に積層されるクリア層7とを備える複層膜1が得られる。
なお、必要により、加熱硬化された複層膜1を、さらに乾燥させることもできる。
そのような場合、乾燥温度は、室温でよく、例えば、10℃以上、好ましくは、15℃以上であり、例えば、40℃以下、好ましくは、30℃以下である。
また、乾燥時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下である。
これにより、被塗物2の上において複層膜1を製造することができ、その結果、被塗物2と複層膜1とを備える塗装パネル10を得ることができる。
そして、上記した複層膜1の製造方法、および、複層膜1では、中塗り塗料が、カルボキシル基を有する中塗り主剤と、直鎖脂肪族ジイソシアネートのカルボジイミド変性体を含む中塗り硬化剤との2液タイプとして調製されるため、使用時の作業性に優れるとともに、適度なポットライフを有する。
また、中塗り主剤中のカルボキシル基に対する、中塗り硬化剤中のカルボジイミド基のモル比が所定範囲であるため、中塗層5の耐薬品性に優れる。
また、中塗層5は、直鎖脂肪族ジイソシアネートのカルボジイミド変性体を含む中塗り硬化剤を用いて得られるため、熱安定性、生産性、外観、耐光性(耐候性)などの各種物性に優れる。
なお、上記した説明では、3コート1ベーク方式を採用しており、具体的には、中塗り塗膜15、ベース塗膜16およびクリア塗膜17を、ウェット状態で塗布および積層した後、それらウェット状態の3つの塗膜を、1度の加熱で硬化させているが、必要に応じて、適宜のタイミングで、中塗り塗膜15、ベース塗膜16および/またはクリア塗膜17を、予備加熱することができる。
より具体的には、例えば、中塗り塗膜15を形成した後、ベース塗膜16を形成する前のタイミングや、例えば、中塗り塗膜15およびベース塗膜16を形成した後、クリア塗膜17を形成するタイミングにおいて、予備加熱することができる。
予備加熱温度は、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。
また、予備加熱時間が、例えば、30分以下、好ましくは、10分以下である。また、例えば、1分以上、好ましくは、2分以上である。
このような予備加熱により、複層膜1の表面平滑性の向上を図ることができる。
さらに、上記の熱硬化工程では、中塗り塗膜15、ベース塗膜16およびクリア塗膜17を、1度の加熱で硬化させることなく、それぞれ個別に硬化させてもよい。例えば、中塗り塗膜15、ベース塗膜16およびクリア塗膜17を、順次硬化させてもよく、また、中塗り塗膜15およびベース塗膜16のみを硬化させた後、クリア塗膜17を硬化させてもよく、さらに、中塗り塗膜15のみを硬化させた後、ベース塗膜16およびクリア塗膜17を硬化させてもよい。
換言すれば、複層膜1の製造方法は、上記に限定されず、例えば、3コート3ベーク方式、3コート2ベーク方式を採用することもできる。
例えば、3コート3ベーク方式が採用される場合には、まず、中塗り塗料を塗布および加熱硬化させて中塗層5を形成し、次いで、その中塗層5(硬化後の中塗り塗膜15)の上にベース塗料を塗布および加熱硬化させてベース層6を形成し、その後、ベース層6の上(硬化後のベース塗膜16)にクリア塗料を塗布および加熱硬化させてクリア層7を形成する。このような方法でも、複層膜1を得ることができる。
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<IRスペクトル>
ポリカルボジイミド組成物の製造方法におけるカルボジイミド化反応の終了は、下記の装置および条件にてIRスペクトルを測定することにより、確認した。
IR測定装置:Perkin Elmer社製Frontier FT−IR
測定法: ATR(反射法)
波数範囲: 4000〜400cm−1
分解能 4cm−1
<ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)>
ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量は、13C−NMRの測定結果より実測値を求めた。また、参考値として、仕込み量からのカルボジイミド当量の計算値を求めた。
すなわち、下記の装置および条件にて13C−NMRを測定し、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、アロファネート基、ウレタン基との合計1モルに対する、ウレトンイミン基の含有割合を、以下の式により算出した。なお、化学シフトppmの基準として、CDCL3溶媒中のテトラメチルシラン(0ppm)を用いた。
装置; ECA−500型(日本電子製)
条件; 測定周波数:125MHz、溶媒:CDCL3、溶質濃度:50質量%
測定温度:室温、スキャン回数8500回
繰返し時間:3.0秒、パルス幅:30°(3.70μ秒)
カルボジイミド基(カルボジイミド基内のN=C=N基)の炭素の帰属ピーク
:139ppm
ウレトンイミン基(ウレトンイミン基内のC=O基、C=N基)の炭素の帰属ピーク
:159ppm、145ppm
アロファネート基(アロファネート基内のC=O基)の炭素の帰属ピーク
:154ppm
ウレタン基(ウレタン基内のC=O基)の炭素の帰属ピーク)
:156ppm
(カルボジイミド当量)={(仕込み固形分重量)―(ウレタン基に対する発生した二酸化炭素のモル比率)×(総アルコール仕込みモル数)×44.01}}/{(ウレタン基に対するカルボジイミド基のモル比率)×(総アルコール仕込みモル数)
なお、ウレタン基に対する発生した二酸化炭素のモル比率とウレタン基に対するカルボジイミド基のモル比率は以下のように算出する。
(ウレタン基に対する発生した二酸化炭素のモル比率)={(カルボジイミド基の積分値)+(ウレトンイミン基の積分値)}/{(ウレタン基の積分値)+(アロファネート基の積分値)}
(ウレタン基に対するカルボジイミド基のモル比率)=(カルボジイミド基の積分値)/{(ウレタン基の積分値)+(アロファネート基の積分値)}
製造例1(ペンタンジイソシアネートの製造)
国際公開パンフレットWO2012/121291号の明細書における実施例1と同じ操作にて、99.9質量%の1,5−ペンタンジイソシアネート(以後PDIと略する場合がある。)を得た。
製造例2(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルの製造)
開始剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒として水酸化カリウム(以下、KOH)をそれぞれ用いて、温度110℃、最大反応圧力0.4MPaゲージ(G)において、ポリオール中のエチレンオキシドとプロピレンオキサイドとの質量比が50:50となるように、水酸基価(以下、OHV)が102mgKOH/gまで、これらのアルキレンオキシド(エチレンオキシドおよびプロピレンオキサイド)をランダム付加重合させ、粗製ポリオールを調製した。
次いで、窒素雰囲気下、80℃に加熱した粗製ポリオールに対し、イオン交換水、および、KOHに対して1.05当量のリン酸(75.2重量%の水溶液の形態)を添加し、80℃において、2時間中和反応させた。
次いで、昇温しながら、減圧脱水を開始し、圧力が40kPaの時点で、吸着剤を添加した。最終的に、105℃、1.33kPa以下の条件で3時間加熱減圧処理した。
その後、ろ過することにより、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルを得た。
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルの、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の総量に対するオキシエチレン基の割合(以下、EO比率とする。)は、50質量%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定された数平均分子量は、550であった。
このポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(EO比率50質量%、分子量550)を、モノオールAとした。
製造例3(ポリカルボジイミド(C1)の製造)
・ポリカルボジイミド組成物の製造
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、製造例1で得られたペンタメチレンジイソシアネート(PDI)を100.0質量部、PTG−250(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量250)を16.2質量部、モノオールA(製造例2で得られたポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(EO比率50質量%、分子量550))を71.4質量部、装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、4時間撹拌した(ウレタン化工程)。
続けて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を758.3質量部、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド(MPPO)を2.0質量部装入し、還流下(150℃)で撹拌した(カルボジイミド化工程)。反応が完結したことは赤外吸収(IR)スペクトル測定にて、イソシアネート基の伸縮振動由来の2260cm−1付近の吸収ピークがほぼ消失したことにより確認した。
反応終了後、80℃まで冷却し、PMAの残存率が2%以下になるまで、減圧下でPMAを留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を13C−NMRで測定した結果、カルボジイミド当量は450g/molであった。
また、得られたポリカルボジイミド組成物の一部を取り出し、25℃におけるE型粘度を測定した結果、4000mPa・sであった。
・ポリカルボジイミド組成物の水分散体(水分散組成物)の調製
ポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、樹脂固形分が40%になるように蒸留水を徐々に加え、撹拌することで、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を得た。
これを、ポリカルボジイミド(C1)とした。
製造例4(ポリカルボジイミド(C2)の製造)
PDIの代わりにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を100.0質量部、PTG−250を14.9質量部、モノオールAを65.4質量部、PMAを729.1質量部使用した以外は製造例3と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を13C−NMRで測定した結果、カルボジイミド当量は475g/molであった。
また、製造例3と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製した。
これを、ポリカルボジイミド(C2)とした。
製造例5(ポリカルボジイミド(C3)の製造)
・ポリカルボジイミド組成物の製造
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を700質量部、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド(MPPO)を7質量部、封入した。窒素を導入しながら、170℃で7時間反応させ、1分子にカルボジイミド基を3個有し、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミドを得た(カルボジイミド化工程)。
次に、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、得られたカルボジイミドを180質量部、および、PTMG−1000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1000、三菱化学社製)を95質量部加えて、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部を加えて、85℃で2時間反応させた。
その後、メチルポリグリコール130(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、水酸基価130mgKOH/g、日本乳化剤社製)を86.4質量部、封入し、85℃で3時間反応させた。反応が完結したことは赤外吸収(IR)スペクトル測定にて、イソシアネート基の伸縮振動由来の2260cm−1付近の吸収ピークがほぼ消失したことにより確認した。
・ポリカルボジイミド組成物の水分散体(水分散組成物)の調製
得られたH12MDI由来のポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、80℃に加温しながら、樹脂固形分が40%になるように蒸留水を徐々に加えた。5分間撹拌した後に冷却することで、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を得た。
これを、ポリカルボジイミド(C3)とした。
製造例6(顔料ペーストの製造)
市販の分散剤Disperbyk−180(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)を2.1質量部、イオン交換水を29.6質量部、顔料としての二酸化チタン(商品名タイピュアR706、デュポン社製)68.4質量部をディスパーで予備混合し、その後ビーズミルで粒度5μm以下まで分散し、ろ過した後、顔料ペーストを作製した。
製造例7(水性中塗り塗料(G−1)の製造)
親水性アクリルエマルション(カルボキシル基含有アクリルポリオール、商品名Neocryl XK−110、DSM社製、樹脂固形分46.5質量%)を用意した。これを、水性樹脂(A)とした。
また、親水性ポリウレタンディスパージョン(カルボキシル基含有ポリウレタンポリオール、商品名W−5030、三井化学社製、樹脂固形分30.0質量%)とを用意した。これを、水性樹脂(B)とした。
そして、水性樹脂(A)32.3質量部と、水性樹脂(B)21.5質量部と、レベリング剤(市販品、商品名サーフィノール440、日信化学工業社製)0.5質量部とを加えて、ディスパーにて撹拌した。これを、中塗り主剤とした。
次いで、粘性調整剤(商品名PRIMAL8−w、ダウケミカルズ社製)0.6質量部と、製造例6で得られた顔料ペースト39.8質量部と、ブチルセロソルブ(溶剤)5.0質量部と、脱イオン水5.0質量部とを加え、中和剤(ジメチルアミノエタノール10%水溶液)0.2質量部を加え、pHを8.1に調整した。
さらに、製造例3で得られた(ポリカルボジイミドC1)6.9質量部を中塗り硬化剤として撹拌しながら加え、水性中塗り塗料(G−1)を得た。
製造例8〜16(水性中塗り塗料(G−2)〜(G−10)の製造)
表1に示した配合処方に変更した以外は、製造例7と同様の方法で、水性中塗り塗料(G−2)〜(G−10)を得た。
製造例17(水性ベース塗料(H−1)の製造)
水性樹脂(A)32.3質量部と、水性樹脂(B)21.5質量部と、レベリング剤(市販品、商品名サーフィノール440、日信化学工業社製)0.5質量部とを加えて、ディスパーにて撹拌した。これを、ベース主剤とした。
次いで、粘性調整剤(商品名PRIMAL8−w、ダウケミカルズ社製)0.6質量部と、製造例6で得られた顔料ペースト39.8質量部と、ブチルセロソルブ(溶剤)5.0質量部と、脱イオン水5.0質量部とを加え、中和剤(ジメチルアミノエタノール10%水溶液)0.2質量部を加え、pHを8.1に調整した。
これにより、水性ベース塗料(H−1)を得た。
製造例18〜20(水性ベース塗料(H−2)〜(H−4)の製造)
表2に示した配合処方に変更した以外は、製造例17と同様の方法で、水性ベース塗料(H−2)〜(H−4)を得た。
製造例21(クリア塗料(I−1)の製造)
アクリルポリオール(クリア主剤、Setalux 1753 SS―70、Nuplex社製、樹脂固形分70.0質量%、水酸基価138.6mgKOH/g)61.8質量部と、酢酸ブチル(有機溶剤)25.8質量部と、ソルベッソ150(商品名スタンダード石油社製、有機溶剤)12.4質量部と、BYK−331(商品名、ビックケミー・ジャパン社製、表面調整剤)0.1質量部と、イソシアネート硬化剤としてのPDI系イソシアヌレート誘導体(J)(クリア硬化剤、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、三井化学社製、固形分濃度75質量%、商品名スタビオD−370N)23.9質量部とを混合および撹拌し、クリア塗料(I−1)を得た。
なお、クリア主剤中の水酸基に対するクリア硬化剤中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、1.0であった。配合処方を表3に示す。
製造例22(クリア塗料(I−2)の製造)
イソシアネート硬化剤として、HDI系イソシアヌレート誘導体(K)(クリア硬化剤、商品名Desmodur(登録商標)ultra N 3390 BA/SN、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、Covestoro社製、固形分濃度90質量%)22.9質量部に変更した以外は、製造例20と同様の方法で、クリア塗料(I−2)を得た。
なお、クリア主剤中の水酸基に対するクリア硬化剤中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、1.0であった。配合処方を表3に示す。
実施例1
・中塗層の形成
被塗物として、カチオン電着板(テストピース社製)を用意した。
次いで、カチオン電着板の表面に、ハンドスプレーガン(W−101、アネスト岩田社製)にて、水性中塗り塗料(G−1)を、乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、中塗り塗膜を得た。
その後、室温で10分間静置し、80℃で30分間焼き付けて塗膜を加熱硬化させ、中塗層(単膜)を備える評価板を得た。
・複層膜の形成
被塗物として、カチオン電着板(テストピース社製)を用意した(準備工程)。
次いで、カチオン電着板の表面に、ハンドスプレーガン(W−101、アネスト岩田社製)にて、水性中塗り塗料(G−1)を、乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、中塗り塗膜を得た(中塗り工程)。
次いで、室温で5分間静置し、中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料(H−1)を、乾燥膜厚が12μmとなるように塗布し、ベース塗膜を得た(ベース工程)。
次いで、5分間室温で静置し、80℃で5分間、予備加熱した。
次いで、室温となるまで放冷し、ベース塗膜の上に、クリア塗料(I−1)を乾燥膜厚が40μmとなるように塗布し、クリア塗膜を得た(クリア工程)。
その後、室温で10分間静置し、80℃で30分間焼き付けて各塗膜を加熱硬化させた(熱硬化工程)。
これにより、複層膜を備える評価板を得た。
実施例2〜9および比較例1〜5
表4に示す処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、中塗層(単膜)を備える評価板、および複層膜を備える評価板を得た。
<評価>
以下の方法により、中塗り塗料、中塗り塗膜および複層膜について評価した。その結果を表4に示す。
(1)中塗り塗料のポットライフ
中塗り主剤と中塗り硬化剤とを混合した後、室温放置し、次の基準に従い評価した。
◎:3時間以上でもゲル化しなかった。
○:2時間以上、3時間以内でゲル化が観察された。
△:1時間以上、2時間以内でゲル化が観察された。
×:1時間以内でゲル化が観察された。
(2)中塗層の耐薬品性(ラビング試験)
評価板の中塗層(単膜)に対して、エタノールを浸透させたガーゼを、500gの荷重、60往復毎分の速さで50往復押し当てながら擦り、塗膜外観を、目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:塗膜の溶解が観察されなかった。
△:部分的に塗膜の溶解が観察された。
×:塗膜全体に溶解が観察された。
(3)複層膜の密着性
評価板の複層膜に、カッターナイフを用いて2mm×2mmの碁盤目を100個形成し、碁盤目部分にセロハンテープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を観察して、次の基準に従い評価した。
○:塗膜の剥離が認められなかった。
△:一部の塗膜で剥離が認められた。
×:塗膜全体の剥離が認められた。
(4)複層膜の耐湿性(耐水性)
複層膜を備える評価板を、温度50℃、相対湿度95%以上の恒温恒湿槽内に240時間定置した後、取り出し、外観および密着性を、次の基準に従って、目視で評価した。
○:塗膜外観および密着性試験のいずれにおいても、異常が認められなかった。
△:塗膜外観で、少し異常が認められた。
×:塗膜外観の異常、および、密着性試験での剥離が、それぞれ認められた。
(5)チッピング性
複層膜を備える評価板を、グラベロメータ試験機にて、−20℃に冷却した後、ショット材(7号砕石、50g)が90°の角度で当たるように所定の位置にセットし、0.20MPaのエアー圧力でショットした。
その後、評価板を取り出し、破壊された塗膜と、浮きの見られる箇所の塗膜とを、粘着テープを用いて剥離した。
その後、評価板における複層膜の剥がれの状態を、次の基準に従って、目視で評価した。
◎:剥離がほとんど認められなかった。
○:小さな剥離が認められる。
△:小さな剥離が多数認められた。
×:大きな剥離が多数認められた。
なお、表中の略号の詳細を下記する。
水性樹脂(A):親水性アクリルエマルション、カルボキシル基含有アクリルポリオール、商品名Neocryl XK−110、DSM社製、樹脂固形分46.5%
水性樹脂(B):親水性ポリウレタンディスパージョン、カルボキシル基含有ポリウレタンポリオール、商品名W−5030、三井化学社製、樹脂固形分30.0%
ポリカルボジイミド(C1):製造例3で得られた、PDI系のポリカルボジイミド組成物の水分散液
ポリカルボジイミド(C2):製造例4で得られた、HDI系のポリカルボジイミド組成物の水分散液
ポリカルボジイミド(C3):製造例5で得られた、H12MDI系のポリカルボジイミド組成物の水分散液
ポリイソシアネート化合物(D):ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体、商品名Bayhydur(登録商標)ultra 3100、Covestro社製、固形分100質量%
ブロックイソシアネート(E):HDI系ブロックイソシアネート、商品名デュラネート(登録商標)WM44−L70G、旭化成社製
メラミン硬化剤(F):メラミン樹脂、商品名サイメル327、allnex社製、固形分90質量%
PDI系イソシアヌレート誘導体(J):PDI系イソシアヌレート誘導体(クリア硬化剤、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、三井化学社製、商品名スタビオD−370N
HDI系イソシアヌレート誘導体(K):商品名Desmodur(登録商標)ultra N 3390 BA/SN、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、Covestoro社製