以下、図面を用いて実施の形態を説明する。なお、図面中、同一又は類似の箇所には、同一又は類似の符号を付している。
(第1の実施の形態)
本実施形態の複数の扁平磁性金属粒子は、扁平面と、Fe、Co及びSiを含む磁性金属相とを有し、Coの量はFeとCoの合計量に対して0.001at%以上80at%以下であり、Siの量は前記磁性金属相全体に対して0.001at%以上30at%以下であり、前記複数の扁平磁性金属粒子の平均厚さは10nm以上100μm以下であり、厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値は5以上10000以下であり、前記扁平面内において方向による保磁力差を有する複数の扁平磁性金属粒子である。
また、本実施形態の複数の扁平磁性金属粒子は、扁平面と、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素と添加元素からなる磁性金属相を有し、前記添加元素がB及びHfを含み、前記添加元素の合計量が前記磁性金属相全体に対して0.002at%以上80at%以下含まれ、前記複数の扁平磁性金属粒子の平均厚さは10nm以上100μm以下であり、厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値は5以上10000以下であり、前記扁平面内において方向による保磁力差を有する複数の扁平磁性金属粒子である。
扁平磁性金属粒子は、扁平状(flaky、flattened)の形状(flaky shape、flattened shape)をした、扁平粒子(flaky particle、flattened particle)である。
厚さとは、1つの扁平磁性金属粒子における平均的な厚さのことをいう。厚さを求める方法としては、1つの扁平磁性金属粒子における平均的な厚さを求めることができる方法であれば、その方法は問わない。例えば、扁平磁性金属粒子の扁平面に垂直な断面を透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)又は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)又は光学顕微鏡などで観察し、観察した扁平磁性金属粒子の断面において、扁平面内の方向に任意の10箇所以上を選び、選んだ各箇所における厚さを測定し、その平均値を採用する方法を用いても良い。また、観察した扁平磁性金属粒子の断面において、扁平面内の方向で、端部から別の端部に向かって等間隔に10箇所以上を選び(この時、端部及び別の端部は特殊な場所であるため選ばない方が好ましい)、選んだ各箇所における厚さを測定し、その平均値を採用する方法を用いても良い。図1は、第1の実施の形態の扁平磁性金属粒子において、厚さの求め方の一例を示す概念図である。図1に、この場合の厚さの求め方を具体的に示す。いずれにおいても、できるだけ多くの箇所を測定することが平均的な情報を取得できるため、好ましい。なお、断面の輪郭線が凹凸の激しい、又は表面の荒れた輪郭線を有し、そのままの状態では平均的な厚さを求めることが難しい場合、輪郭線を平均的な直線又は曲線で、状況に応じて適宜、平滑化した上で、上記の方法を行うことが好ましい。
また、平均厚さとは、複数の扁平磁性金属粒子における厚さの平均値のことを言い、上述の単なる「厚さ」とは区別される。平均厚さを求める際は、20個以上の扁平磁性金属粒子に対して平均した値を採用することが好ましい。また、できるだけ多くの扁平磁性金属粒子を対象として求めることが平均的な情報を取得できるため、好ましい。また、20個以上の扁平磁性金属粒子を観察することが出来ない場合は、できる限り多くの扁平磁性金属粒子観察し、それらに対して平均した値を採用することが好ましい。扁平磁性金属粒子の平均厚さは、10nm以上100μm以下が好ましい。より好ましくは10nm以上1μm以下、更に好ましくは10nm以上100nm以下である。また、扁平磁性金属粒子は、厚さ10nm以上100μm以下、より好ましくは10nm以上1μm以下、更に好ましくは10nm以上100nm以下のものを含むことが好ましい。これによって扁平面に平行な方向に磁界が印加された際に、渦電流損失を十分に小さく出来て好ましい。また、厚さが小さい方が、磁気モーメントが扁平面に平行な方向に閉じ込められ、回転磁化で磁化が進行しやすくなり好ましい。回転磁化で磁化が進行する場合は、磁化が可逆的に進行しやすいため、保磁力が小さくなり、これによってヒステリシス損失が低減出来好ましい。
扁平磁性金属粒子の平均長さは、扁平面内の最大長さa、最小長さbを用いて、(a+b)/2で定義される。最大長さa及び最小長さbに関しては、次のようにして求めることができる。例えば、扁平面に外接する長方形の中で最も面積の小さな長方形を考える。そして、その長方形の長辺の長さを最大長さa、短辺の長さを最小長さbとする。図2は、第1の実施の形態の扁平磁性金属粒子において、扁平面内の最大長さ、最小長さの求め方を説明するための概念図である。図2は、いくつかの扁平磁性金属粒子を例として、前記方法で求めた最大長さaと最小長さbを示した模式図である。最大長さa及び最小長さbは、平均厚さ同様、扁平磁性金属粒子をTEM又はSEM又は光学顕微鏡などで観察することにより求めることができる。また、計算機上で顕微鏡写真の画像解析を行い、最大長さa及び最小長さbを求めることも可能である。いずれにおいても、20個以上の扁平磁性金属粒子を対象として求めることが好ましい。また、できるだけ多くの扁平磁性金属粒子を対象として求めることが平均的な情報を取得できるため、好ましい。また、20個以上の扁平磁性金属粒子を観察することが出来ない場合は、できる限り多くの扁平磁性金属粒子観察し、それらに対して平均した値を採用することが好ましい。また、この際できるだけ平均的な値として求めることが好ましいため、扁平磁性金属粒子を均一に分散した状態で(最大長さ、最小長さが異なる複数の扁平磁性金属粒子ができるだけランダムに分散した状態で)、観察又は画像解析を行うことが好ましい。たとえば、複数の扁平磁性金属粒子を十分にかき混ぜた状態で、テープの上に貼り付けたり、又は、複数の扁平磁性金属粒子を上から落下させて下に落としてテープの上に貼り付けたり、することによって観察又は画像解析を行うことが好ましい。
ただし、扁平磁性金属粒子によっては、上記の方法で最大長さa、最小長さbを求めた場合、本質を捉えていない求め方になる場合もある。図3は、第1の実施の形態の扁平磁性金属粒子において、扁平面内の最大長さ、最小長さの他の一例における求め方を説明するための概念図である。例えば、図3の様な場合においては、扁平磁性金属粒子が細長く湾曲した状態になっているが、この場合は、本質的には、扁平磁性金属粒子の最大長さ、最小長さは図2に示したa、bの長さである。このように、最大長さa、bの求め方としては完全に一義的に決められる訳ではなく、基本的には「扁平面に外接する長方形の中で最も面積の小さな長方形を考えて、その長方形の長辺の長さを最大長さa、短辺の長さを最小長さbとする」方法で問題ないが、粒子の形状に応じて、この方法では本質を捉えない場合は、臨機応変に、本質を捉える最大長さa、最小長さbとして求める。厚さtは、扁平面に垂直方向の長さで定義される。厚さに対する扁平面内の平均長さの比Aは、最大長さa、最小長さb、厚さtを用いて、A=((a+b)/2)/tで定義される。
扁平磁性金属粒子の厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値は、5以上10000以下が好ましい。これによって透磁率が大きくなるためである。また、強磁性共鳴周波数を高くできるため、強磁性共鳴損失を小さくできるためである。
厚さに対する扁平面内の平均長さの比は、平均値を採用する。好ましくは、20個以上の扁平磁性金属粒子に対して平均した値を採用することが好ましい。また、できるだけ多くの扁平磁性金属粒子を対象として求めることが平均的な情報を取得できるため、好ましい。また、20個以上の扁平磁性金属粒子を観察することが出来ない場合は、できる限り多くの扁平磁性金属粒子観察し、それらに対して平均した値を採用することが好ましい。なお、たとえば、粒子Pa、粒子Pb、粒子Pcがあり、それぞれの厚さTa、Tb、Tc、扁平面内の平均長さLa、Lb、Lcという場合に、平均厚さは(Ta+Tb+Tc)/3で計算され、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値は(La/Ta+Lb/Tb+Lc/Tc)/3で計算される。
前記扁平磁性金属粒子は、前記扁平面内において方向による保磁力差を有することが好ましい。方向による保磁力差の割合は大きければ大きいほど好ましく、1%以上であることが好ましい。より好ましくは、保磁力差の割合が10%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が50%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が100%以上である。ここでいう保磁力差の割合とは、扁平面内において、最大となる保磁力Hc(max)と最小となる保磁力Hc(min)を用いて、(Hc(max)−Hc(min))/Hc(min)×100(%)で定義される。なお、保磁力は、振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)等を用いて評価できる。保磁力が低い場合は、低磁界ユニットを用いることによって、0.1Oe以下の保磁力も測定することができる。測定磁界の方向に対して、扁平面内の方向を変えて測定を行う。
なお、「保磁力差を有する」というのは、扁平面内の360度方向に磁界を印加して保磁力を測定した際に、保磁力が最大になる方向と、保磁力が最小になる方向とが存在する、ことを表している。例えば、扁平面内の360度の角度に対して、22.5度おきに方向を変えて保磁力を測定した際に、保磁力差が表れる、すなわち保磁力がより大きくなる角度と、保磁力がより小さくなる角度があらわれる場合、「保磁力差を有する」ものとする。図4は、第1の実施の形態の扁平磁性金属粒子において、扁平面内の360度の角度に対して、22.5度おきに方向を変えて保磁力を測定した際の方向を示す模式図である。扁平面内において保磁力差を有することによって、保磁力差がほとんどない等方性の場合に比べて、最小となる保磁力値が小さくなり好ましい。扁平面内で磁気異方性を有する材料においては、扁平面内の方向によって保磁力に差を有し、磁気的に等方性の材料に比べて、最小となる保磁力値が小さくなる。これによってヒステリシス損失は低減し、透磁率は向上し、好ましい。
保磁力は、結晶磁気異方性と関連して、Hc=αHa−NMs (Hc:保磁力、Ha:結晶磁気異方性、Ms:飽和磁化、α、N:組成、組織、形状などによって変わる値)という近似式で議論されることがある。すなわち、一般的には、結晶磁気異方性が大きければ大きいほど保磁力は大きくなりやすく、結晶磁気異方性が小さければ小さいほど保磁力は小さくなりやすい傾向にある。しかしながら、上記近似式のα値、N値は材料の組成、組織、形状によって大きく変わる値であり、結晶磁気異方性が大きくても保磁力が比較的小さい値になったり(α値が小さかったりN値が大きかったりする場合)、結晶磁気異方性が小さくても(α値が大きかったりN値が小さかったりする場合)保磁力が比較的大きい値になったりする。すなわち、結晶磁気異方性は材料の組成によって決まる物質固有の特性であるが、保磁力は材料の組成だけでは決まらず組織、形状などによって大きく変わりうる特性である。また、結晶磁気異方性は、ヒステリシス損失に直接的に影響を与える因子ではなく間接的に影響を与える因子であるが、保磁力は、直流磁化曲線のループ面積(この面積がヒステリシス損失の大きさに相当する)に対して直接的に影響を与える因子であるため、ヒステリシス損失の大きさをほぼ直接的に決める因子である。すなわち、保磁力は、結晶磁気異方性とは異なり、ヒステリシス損失に直接的に大きく影響を与える非常に重要な因子と言える。
また扁平磁性金属粒子が、結晶磁気異方性を含めた磁気異方性を有するからと言って、必ずしも、扁平磁性金属粒子の扁平面の方向によって保磁力差が発現するとは限らない。前述の通り、保磁力は、結晶磁気異方性によって一義的に決まる値ではなく、材料の組成、組織、形状によっていかようにも変わってくる特性であるためである。そして、前述の通り、ヒステリシス損失に直接的に大きく影響を与える因子は、磁気異方性ではなく、保磁力の方である。以上のことから、高特性化に向けて大変好ましい条件は、「扁平面内の方向によって保磁力差を有すること」である。これによって、ヒステリシス損失が低減し、透磁率も大きくなり好ましい。
扁平面内の最小長さbに対する最大長さaの比a/bは平均して2以上であることが好ましく、更に好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上である。扁平面内の最小長さbに対する最大長さaの比a/bが2以上であるものを含むことが好ましく、更に好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上のものを含むことが好ましい。これによって、磁気的な異方性を付与し易くなり望ましい。磁気的な異方性が付与されると、扁平面内において保磁力差が生まれ、磁気的に等方性の材料に比べ、最小となる保磁力値が小さくなる。これによって、ヒステリシス損失は低減し、透磁率は向上し、好ましい。更に望ましくは、前記扁平磁性金属粒子において、後述する複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方の第1方向が最大長さ方向に配列されていることが望ましい。また、扁平磁性金属粒子を圧粉化する場合、扁平磁性金属粒子のa/bが大きいため、個々の扁平磁性金属粒子の扁平面が重なり合う面積(又は面積割合)が大きくなり、圧粉体としての強度は高くなり、好ましい。また、最小長さに対する最大長さの比が大きいほうが、磁気モーメントが扁平面に平行な方向に閉じ込められ、回転磁化で磁化が進行しやすくなり好ましい。回転磁化で磁化が進行する場合は、磁化が可逆的に進行しやすいため、保磁力が小さくなり、これによってヒステリシス損失が低減出来好ましい。一方、高強度化の観点からは、扁平面内の最小長さbに対する最大長さaの比a/bは平均して1以上で2より小さいことが好ましく、更に好ましくは、1以上で1.5より小さいことがより好ましい。これによって、粒子の流動性や充填性が向上され望ましい。また、a/bが大きい場合に比べて、扁平面内に垂直な方向に対しての強度が高くなり、扁平磁性金属粒子の高強度化の観点から好ましい。更に、粒子を圧粉化する際に屈曲して圧粉化されることが少なくなり、粒子への応力が低減されやすい。つまり、歪みが低減され保磁力、ヒステリシス損失が低減されるとともに、応力が低減されるため熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性が向上しやすくなる。
また、扁平面の輪郭形状の少なくとも一部に角を有するものは好ましく用いられる。例えば、正方形や長方形の様な輪郭形状、言い換えれば、角の角度が略90度であることは望ましい。これらによって、角部で、原子配列の対称性が低下し、電子軌道が拘束されるため、扁平面内に磁気的な異方性を付与し易くなり望ましい。
一方、低損失化や高強度化の観点からは、扁平面の輪郭形状は丸みを帯びた曲線によって形成されるほうが望ましい。極端な例としては、円や楕円の様な丸まった輪郭形状をするものの方が望ましい。これらによって、粒子の耐摩耗性が向上され望ましい。また、輪郭形状周辺において応力が集中しにくく、扁平磁性金属粒子の磁気的な歪みが低減され、保磁力が下がり、ヒステリシス損失が低減され望ましい。応力集中が低減されるため熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性も向上しやすくなり望ましい。
扁平磁性金属粒子は、Fe、Co及びSiを含む磁性金属相を有すことが望ましい。以下この場合について詳しく説明する。前記磁性金属相において、Coの量はFeとCoの合計量に対して0.001at%以上80at%以下であることが好ましく、より好ましくは1at%以上60at%以下であることが好ましく、更に好ましくは5at%以上40at%以下、更に好ましくは10at%以上20at%以下であることが好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。また、Fe−Co系は高飽和磁化を実現し易いため好ましい。更にFeとCoの組成範囲が上記の範囲に入ることによって、より高い飽和磁化が実現出来好ましい。また、Siの量は前記磁性金属相全体に対して0.001at%以上30at%以下であることが好ましく、より好ましくは1at%以上25at%以下であることが好ましく、更に好ましくは5at%以上20at%以下であることが好ましい。これによって、結晶磁気異方性が適度な大きさになり、保磁力も低減しやすく、低ヒステリシス損失、高透磁率が実現しやすく好ましい。
なお、前記磁性金属相が、Fe、Co及びSiを含む系であり、かつ、Co量、Si量がそれぞれ上記の範囲に入っている場合、特に、上記の異方性付与効果について大きな効果が発現する。Fe若しくは、Coだけの単原子系や、FeとSiだけ、又はFeとCoだけの二原子系と比べて、Fe、Co及びSiの三原子系においては、特に、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、保磁力が小さくなり、これによって、ヒステリシス損失は低減し、透磁率は向上し、好ましい。この大きな効果は、特に、上記の組成範囲に入っている時にのみもたらされる。また、Fe、Co及びSiの三原子系において上記の組成範囲に入っていると、熱的安定性や耐酸化性についても格段に向上し好ましい。また、熱的安定性や耐酸化性が向上するため、高温での機械特性も向上し好ましい。更には、室温における機械特性についても、強度、硬度、耐摩耗性などの機械特性が向上し、好ましい。また、前記扁平磁性金属粒子を合成する際に、ロール急冷法等によってリボンを合成し、このリボンを粉砕することによって扁平磁性金属粒子を得る場合は、前記磁性金属相が、Fe、Co及びSiの三原子系で、かつ、Co量、Si量がそれぞれ上記の範囲に入っている場合、特に、容易に粉砕されやすく、これによって、前記扁平磁性金属粒子に歪みが比較的入りにくい状態が実現でき好ましい。扁平磁性金属粒子に歪みが入りにくいと、保磁力が低減しやすく、低ヒステリシス損失と高透磁率が実現しやすく好ましい。また歪みが少ないと、経時的な安定性が高くなったり、熱的な安定性が高くなったり、強度、硬度、耐摩耗性などの機械的特性が優れたりして、好ましい。
前記磁性金属相の平均結晶粒径は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であることが好ましく、更に好ましくは50μm以上であることが好ましく、更に好ましくは100μm以上であることが好ましい。前記磁性金属相の平均結晶粒径が大きくなると、前記磁性金属相の表面の割合が小さくなるためピニングサイトが低減し、これによって保磁力が低減し、ヒステリシス損失が低減し好ましい。また、前記磁性金属相の平均結晶粒径が上記の範囲で大きくなると、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
特に、前記磁性金属相が、Fe、Co及びSiを含む系であり、かつ、Co量、Si量がそれぞれ前述の範囲に入っている場合で、かつ、前記磁性金属相の平均結晶粒径が上記の範囲に入る場合は、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が著しく向上し、より好ましい。その中でも特に、前記磁性金属相が、Fe、Co及びSiを含む系であり、Co量がFeとCoの合計量に対して5at%以上40at%以下、更に好ましくは10at%以上20at%以下であり、かつ、Siの量は前記磁性金属相全体に対して1at%以上25at%以下、更に好ましくは5at%以上20at%以下であり、かつ、前記磁性金属相の平均結晶粒径が10μm以上、更に好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上である場合は、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が特に著しく向上し、より好ましい。
また、前記磁性金属相は、体心立方構造(bcc)の結晶構造を有する部分を有することが好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。また、面心立方構造(fcc)の結晶構造を部分的に有する「bccとfccの混相の結晶構造」であっても、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
また、前記扁平磁性金属粒子の扁平面は、結晶的に概ね配向していることが好ましい。配向方向としては、(110)面配向が好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。更に好ましい配向方向としては、(110)[111]方向である。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。前記扁平磁性金属粒子の扁平面の結晶面は、(110)(220)以外の他の結晶面(たとえば、(200)、(211)、(310)、(222)など)が(110)に対してXRD(X線回折法)で測定されたピーク強度比で10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下であることが好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
前記扁平磁性金属粒子の扁平面を(110)配向させるためには、適切な熱処理条件を選定することが有効である。熱処理温度を800℃以上1200℃以下に設定することが好ましく、より好ましくは850℃以上1100℃以下、更に好ましくは900℃以上1000℃以下、更に好ましくは920℃以上980℃以下(940℃付近が好ましい)である。熱処理温度は低すぎても、また、高すぎても(110)配向が進みにくく、上記の範囲の熱処理温度が最も好ましい。また熱処理時間は10分以上が好ましく、より好ましくは1h以上であり、更に好ましくは4h程度である。熱処理時間は短すぎても、また、長すぎても(110)配向が進みにくく、4h程度の熱処理時間が最も好ましい。熱処理雰囲気は低酸素濃度の真空雰囲気下、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下が望ましく、更に望ましくは、H2(水素)、CO(一酸化炭素)、CH4(メタン)等の還元雰囲気下が好ましい。これによって、扁平磁性金属粒子の酸化が抑制され、酸化された部分を還元することができるため好ましい。以上の熱処理条件を選定することによって、(110)配向が進行しやすくなり、(110)(220)以外の他の結晶面(たとえば、(200)、(211)、(310)、(222)など)が(110)に対してXRD(X線回折法)で測定されたピーク強度比で10%以下、更には5%以下、更には3%以下となることがはじめて可能となる。また歪みも適切に除去することができ、酸化を抑制した状態(還元された状態にする)も実現でき好ましい。
また、扁平磁性金属粒子は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素と添加元素からなる磁性金属相を有することが好ましい。以下、この場合について詳しく説明する。前記添加元素は、B、Hfを含むことがより好ましい。また、前記添加元素の合計量が前記磁性金属相全体に対して0.002at%以上80at%以下含まれることが好ましく、より好ましくは5at%以上80at%以下であることが好ましく、更に好ましくは5at%以上40at%以下であることが好ましく、更に好ましくは10at%以上40at%以下であることが好ましい。これによって、非晶質化が進行し、磁気的な異方性を付与し易くなり、上記の磁気特性が向上するため好ましい。また、Hfの量が前記磁性金属相全体に対して0.001at%以上40at%以下含まれることが好ましく、より好ましくは1at%以上30at%以下であることが好ましく、更に好ましくは1at%以上20at%以下であることが好ましく、更に好ましくは1at%以上15at%以下であることが好ましく、更に好ましくは1at%以上10at%以下であることが好ましい。これによって、非晶質化が進行し、磁気的な異方性を付与し易くなり、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
なお、前記磁性金属相が、前記第1の元素と、前記添加元素としてB、Hfを含む系であり、かつ、前記添加元素の合計量、Hf量がそれぞれ上記の範囲に入っている場合、特に、上記の異方性付与効果について大きな効果が発現する。この大きな効果は、特に、上記の組成範囲に入っている時にのみもたらされる。また、他の添加元素の系と比べて、特にHfを含む系においては、少量で非晶質化が進行しやすく、磁気的な異方性を付与しやすく、高飽和磁化との両立が実現しやすく好ましい。また、Hfは融点が高く、前記磁性金属相に上記量の範囲で含まれることによって、熱的安定性、耐酸化性が格段に向上し好ましい。また、熱的安定性や耐酸化性が向上するため、高温での機械特性も向上し好ましい。更には、室温における機械特性についても、強度、硬度、耐摩耗性などの機械特性が向上し、好ましい。また、前記扁平磁性金属粒子を合成する際に、ロール急冷法等によってリボンを合成し、このリボンを粉砕することによって扁平磁性金属粒子を得る場合は、前記磁性金属相が、前記第1の元素と前記添加元素としてB、Hfを含む系であり、かつ、前記添加元素の合計量、Hf量がそれぞれ上記の範囲に入っている場合、特に、比較的容易に粉砕されやすく、これによって、前記扁平磁性金属粒子に歪みが比較的入りにくい状態が実現でき好ましい。扁平磁性金属粒子に歪みが入りにくいと、保磁力が低減しやすく、低ヒステリシス損失と高透磁率が実現しやすく好ましい。また歪みが少ないと、経時的な安定性が高くなったり、熱的な安定性が高くなったり、強度、硬度、耐摩耗性などの機械的特性が優れたりして、好ましい。
また、前記磁性金属相が、前記第1の元素と、前記添加元素としてB、Hfを含む系であり、かつ、前記添加元素の合計量、Hf量がそれぞれ上記の範囲に入っている場合、熱的安定性が優れるため、扁平磁性金属粒子の最適な熱処理条件を高く設定することが可能となる。すなわち、扁平磁性金属粒子の製造方法において、リボンを合成し、得られたリボンを熱処理をかけて(かけなくても良い)粉砕し、その後、歪みを除去するために熱処理を行うことが好ましいが(より好ましくは磁場中熱処理が好ましい)、この時の熱処理温度を比較的高く設定することが可能となる。これによって、歪みを解放させやすくなり、歪みの少ない低損失の材料が実現しやすい。たとえば500℃以上の熱処理を行うことによって低損失の材料を実現しやすくなる(他の系や組成よりも高い熱処理温度で低損失化を実現できる。他の系や組成ではたとえば400℃程度が最適な熱処理温度である)。
前記添加元素は、B、Hfに加えて、もう1つ以上の「別の異なる元素」を含むことが好ましい。「別の異なる元素」としては、C、Ta、W,P、N、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素が好ましく、この中でも、希土類元素がより好ましく、更に好ましくは、Yが好ましい。「別の異なる元素」が含まれることによって、前記磁性金属相に含まれる元素の拡散が効果的に抑制され、非晶質化が進行し、磁気的な異方性を付与し易くなり、より好ましい(低保磁力、低ヒステリシス損失、高透磁率が実現し易くなり好ましい)。特に、「別の異なる元素」が、B、Hfと異なる原子半径を持つことによって、磁性金属相に含まれる元素の拡散が効果的に抑制される。例えば、Yなどは、B、Hfよりも原子半径が大きいため、前記磁性金属相に含まれる元素の拡散を、非常に効果的に抑制することができる。以下、「別の異なる元素」がYの場合を例にとって、適切な組成範囲を説明する。Yの量は、HfとYの合計量に対して1at%以上80at%以下であることが好ましく、より好ましくは2at%以上60at%以下、更に好ましくは4at%以上60at%以下が好ましい。また、HfとYの合計量が前記磁性金属相全体に対して0.002at%以上40at%以下含まれることが好ましく、より好ましくは1at%以上30at%以下であることが好ましく、更に好ましくは1at%以上20at%以下であることが好ましく、更に好ましくは1at%以上15at%以下であることが好ましく、更に好ましくは1at%以上10at%以下であることが好ましい。これによって、非晶質化が進行し、磁気的な異方性を付与し易くなり、上記の磁気特性が向上するため好ましい。以上の組成範囲に入ることによって、添加元素がB、Hfだけの場合に比べて、特に、上記の異方性付与効果について更に著しく大きな効果が発現する。この著しく大きな効果は、特に、上記の組成範囲に入っている時にのみもたらされる。また、少量で非晶質化が進行しやすく、磁気的な異方性を付与しやすく、高飽和磁化との両立が実現しやすく好ましい。図5で、この効果について、具体例を用いて説明する。図5は、(FeCo)90(BHf)10組成および(FeCo)90(BHfY)10組成の扁平磁性金属粒子の飽和磁化と保磁力を示すグラフである。この図から、FeCo−BHfの系にYを加えて、FeCo−BHfYの系にすることによって、同じ飽和磁化において保磁力が顕著に下がることが分かる。すなわち、低保磁力(これによって低ヒステリシス損失および高透磁率が実現できる)と高飽和磁化の両立がより一層実現しやすくなる。図5はあくまで一例に過ぎないが、Yを添加した系で、組成を適切に選定することによって、BHfの系では実現できない特性をはじめて実現することが可能となる。また、熱的安定性、耐酸化性が格段に向上し好ましい。また、熱的安定性や耐酸化性が向上するため、高温での機械特性も向上し好ましい。更には、室温における機械特性についても、強度、硬度、耐摩耗性などの機械特性が向上し、好ましい。
また、前記磁性金属相の平均結晶粒径が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下であることが好ましい。小さければ小さいほど好ましく、5nm以下であるとより好ましいし、2nm以下であるとなお好ましい。これによって、異方性を付与し易くなり、上記の磁気特性が向上するため好ましい。また、結晶粒径が小さいということはアモルファスに近付くことを意味しているため、高結晶性のものに比べて、電気抵抗が高くなり、これによって渦電流損失が低減しやすくなり好ましい。また、高結晶性のものに比べて耐食性、耐酸化性、の点で優れるため好ましい。
なお、前記添加元素が、B、Hfに加えてもう1つ以上の「別の異なる元素(例えばY)」を含み、「別の異なる元素(例えばY)」の量、および、Hfと「別の異なる元素(例えばY)」の合計量が上述の範囲に入っている場合は、比較的容易に30nm以下の平均結晶粒径を実現することが出来るため好ましい。すなわち、アモルファスにより近付くため、高結晶性のものに比べて、電気抵抗が高くなり、これによって渦電流損失が低減しやすくなり好ましい。また、高結晶性のものに比べて耐食性、耐酸化性、の点で優れるため好ましい。また、異方性を付与し易くなり、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
特に、前記磁性金属相が、前記第1の元素と、前記添加元素としてB、Hfを含む系であり、かつ、前記添加元素の合計量、Hf量がそれぞれ上記の範囲に入っている場合で、かつ、前記磁性金属相の平均結晶粒径が上記の範囲に入る場合、磁気異方性の付与効果による磁気特性の向上、アモルファス化による高電気抵抗化(渦電流損失低減)、高耐食性、高耐酸化性の効果が著しく向上し、より好ましい。その中でも特に、前記磁性金属相が、前記第1の元素と、前記添加元素としてB、Hfを含む系であり、かつ、前記添加元素の合計量が前記磁性金属相全体に対して5at%以上40at%以下、更に好ましくは10at%以上40at%以下であり、Hf量が前記磁性金属相全体に対して1at%以上20at%以下、更に好ましくは1at%以上15at%以下、更に好ましくは1at%以上10at%以下であり、かつ、前記磁性金属相の平均結晶粒径が50nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下である場合は、磁気異方性の付与効果による磁気特性の向上、アモルファス化による高電気抵抗化(渦電流損失低減)、高耐食性、高耐酸化性の効果が特に著しく向上し、より好ましい。
なお、100nm以下の結晶粒径は、XRD測定によるScherrerの式によって簡単に算出することができるし、また、TEM(Transmission electron microscope、透過型電子顕微鏡)観察によって多数の磁性金属相を観察しその粒径を平均化することによっても求めることができる。結晶粒径が小さい場合はXRD測定で求める方が好ましく、結晶粒径が大きい場合はTEM観察で求める方が好ましいが、状況に応じて測定方法を選択するか、又は、両方の方法を併用して総合的に判断することが好ましい。
扁平磁性金属粒子は、飽和磁化が高い方が好ましく、1T以上であることが好ましく、より好ましくは1.5T以上であることが好ましく、更に好ましくは1.8T以上、更に好ましくは2.0T以上であることが好ましい。これによって磁気飽和が抑制され、システム上で磁気特性を十分に発揮することが出来好ましい。ただし、用途によっては(例えばモータの磁性くさびなど)、飽和磁化が比較的小さい場合でも十分に使用することができ、むしろ低損失に特化した方が好ましい場合もある。なお、モータの磁性くさびとは、コイルを入れるスロット部の蓋の様なもので、通常は非磁性のくさびが使用されるが、磁性のくさびを採用することによって、磁束密度の疎密が緩和され、高調波損失が低減され、モータ効率が向上する。この時、磁性くさびの飽和磁化は大きい方が好ましいが、比較的小さな飽和磁化であっても、十分な効果を発揮する。よって、用途に応じて、組成を選定することが重要である。
扁平磁性金属粒子の格子歪みは、0.01%以上10%以下が好ましく、より好ましくは0.01%以上5%以下、更に好ましくは0.01%以上1%以下、更に好ましくは0.01%以上0.5%以下にすることが好ましい。これによって、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
なお、格子歪みは、X線回折法(XRD:X−Ray Diffraction)で得られる線幅を詳細に解析することによって算出できる。即ち、Halder−Wagnerプロット、Hall−Williamsonプロットを行うことによって、線幅の広がりの寄与分を、結晶粒径と格子歪みに分離することができる。これによって格子歪みを算出することができる。Halder−Wagnerプロットの方が信頼性の観点から好ましい。Halder−Wagnerプロットに関しては、例えば、N. C. Halder、 C. N. J. Wagner、 Acta Cryst. 20 (1966) 312−313.等を参照されたい。ここで、Halder−Wagnerプロットは、以下の式で表される。
つまり、縦軸にβ2/tan2θ、横軸にβ/tanθsinθを取ってプロットし、その近似直線の傾きから結晶粒径Dを算出、また縦軸切片から格子歪みεを算出する。上記式のHalder−Wagnerプロットによる格子歪み(格子歪み(二乗平均平方根))が0.01%以上10%以下、より好ましくは0.01%以上5%以下、更に好ましくは0.01%以上1%以下、更に好ましくは0.01%以上0.5%以下であると、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
上記の格子歪み解析はXRDでのピークが複数検出できる場合には有効な手法であるが、一方でXRDでのピーク強度が弱く検出できるピークが少ない場合(例えば1つしか検出されない場合)は解析が困難である。この様な場合は、次の手順で格子歪みを算出することが好ましい。まず、高周波誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分析、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)などで組成を求め、磁性金属元素Fe、Co、Ni、3つの組成比を算出する(2つの磁性金属元素しかない場合は、2つの組成比。1つの磁性金属元素しかない場合は、1つの組成比(=100%))。次に、Fe−Co−Niの組成から理想的な格子面間隔d0を算出する(文献値などを参照。場合によっては、その組成の合金を作製し、格子面間隔を測定によって算出する)。その後、測定した試料のピークの格子面間隔dと理想的な格子面間隔d0との差を求めることによって歪み量を求めることができる。つまりこの場合は、歪み量としては、(d−d0)/d0×100(%)、として算出される。以上、格子歪みの解析は、ピーク強度の状態に応じて上記の2つの手法を使い分け、また場合によっては両方を併用しながら評価するのが好ましい。
扁平面内における格子面間隔は、方向によって差を有し、最大格子面間隔dmaxと最小格子面間隔dminの差の割合(=(dmax−dmin)/dmin×100(%))が、0.01%以上10%以下が好ましく、より好ましくは0.01%以上5%以下、更に好ましくは0.01%以上1%以下、更に好ましくは0.01%以上0.5%以下にすることが好ましい。これによって、磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。なお、格子面間隔はXRD測定によって簡単に求めることができる。このXRD測定を面内で向きを変えながら測定を行うことによって、方向による格子定数の差を求めることができる。
扁平磁性金属粒子の結晶子は、扁平面内で一方向に数珠繋ぎになっているか、又は、結晶子が棒状でありかつ扁平面内で一方向に配向しているかどちらかであることが好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。
扁平磁性金属粒子の扁平面は、第1方向に配列し、幅0.1μm以上、長さ1μm以上でアスペクト比が2以上の複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方を有することが好ましい。これによって、前記第1方向に磁気異方性が誘起され易くなり、扁平面内において、方向による保磁力差が大きくなり好ましい。この観点においては、更に好ましくは、幅1μm以上、長さ10μm以上が好ましい。アスペクト比は5以上が好ましく、更に好ましくは10以上が好ましい。また、このような凹部又は凸部を備えることによって、扁平磁性金属粒子を圧粉化して圧粉材料を合成する際の扁平磁性金属粒子同士の密着性が向上し(凹部又は凸部が粒子同士をくっつけるアンカーリングの効果をもたらす)、これによって、強度、硬度などの機械的特性や熱的安定性が向上するため好ましい。
図6は、第1の実施の形態の扁平磁性金属粒子の斜視模式図である。なお、図6の上の図においては凹部のみ、図6の中央の図においては凸部のみが設けられているが、図6の下図の様に、一つの扁平磁性金属粒子が凹部と凸部の両方を有していても良い。図7は、第1の実施の形態の扁平磁性金属粒子を上方から見た場合の模式図である。凹部又は凸部の幅と長さ及び凹部又は凸部間の距離を示す。一つの扁平磁性金属粒子が凹部と凸部の両方を有していても良い。なお、凹部又は凸部のアスペクト比とは、長軸の長さ/短軸の長さである。つまり、凹部又は凸部の幅よりも長さのほうが大きい(長い)場合、アスペクト比は長さ/幅で定義され、長さよりも幅のほうが大きい(長い)場合、アスペクト比は幅/長さで定義される。アスペクト比が大きいほうが、磁気的に一軸異方性(異方性)を有しやすくなり、より好ましい。図7においては、凹部2a、凸部2b、扁平面6、扁平磁性金属粒子10が示されている。
また、「第1方向に配列」とは、凹部又は凸部の長さ及び幅のうち長いほうが第1方向に平行に配列していることをいう。なお、凹部又は凸部の長さ及び幅のうち長いほうが、第1方向に平行な方向から±30度以内に配列されていれば、「第1方向に配列している」ものとする。これらによって、扁平磁性金属粒子が、形状磁気異方性の効果によって、第1方向に磁気的に一軸異方性を有しやすくなり好ましい。なお、扁平磁性金属粒子は扁平面内において一方向に磁気異方性を有することが好ましいが、これについて詳しく説明する。まず、扁平磁性金属粒子の磁区構造が多磁区構造の場合は、磁化過程は磁壁移動で進行するが、この場合扁平面内の容易軸方向の方が困難軸方向よりも保磁力が小さくなり、損失(ヒステリシス損失)が小さくなる。また容易軸方向の方が困難軸方向よりも透磁率が大きくなる。なお、等方的な扁平磁性金属粒子の場合と比べると、磁気異方性を有する扁平磁性金属粒子の場合の方が、特に容易軸方向において保磁力が小さくなり、これによって損失が小さくなり好ましい。また透磁率も大きくなり好ましい。つまり、扁平面内方向で磁気異方性を有することによって、等方的な材料と比べて磁気特性が向上する。特に、扁平面内の容易軸方向の方が困難軸方向よりも磁気特性が優れ、好ましい。次に、扁平磁性金属粒子の磁区構造が単磁区構造の場合は、磁化過程は回転磁化で進行するが、この場合は、扁平面内の困難軸方向の方が容易軸方向よりも保磁力が小さくなり、損失が小さくなる。完全に回転磁化で磁化が進行する場合は保磁力がゼロになり、ヒステリシス損失がゼロとなり好ましい。なお、磁化が磁壁移動で進行するか(磁壁移動型)それとも回転磁化で進行するか(回転磁化型)は、磁区構造が多磁区構造になるかそれとも単磁区構造になるか、によって決定される。この時、多磁区構造になるか単磁区構造にあるかは、扁平磁性金属粒子のサイズ(厚さやアスペクト比)、組成、粒子同士の相互作用の状況、等によって決定される。例えば、扁平磁性金属粒子の厚さtは小さい程単磁区構造になりやすく、厚さが10nm以上1μm以下の時、特に10nm以上100nm以下の時に単磁区構造になりやすい。組成としては、結晶磁気異方性が大きい組成においては厚さが大きくても単磁区構造を維持し易く、結晶磁気異方性が小さい組成においては厚さが小さくないと単磁区構造を維持し難い傾向にある。つまり、単磁区構造になるか多磁区構造になるかの境目の厚さは組成によっても変わる。また扁平磁性金属粒子同士が磁気的に結合して磁区構造が安定化した方が単磁区構造になりやすい。なお、磁化挙動が磁壁移動型か、それとも、回転磁化型かの判断は、次の様に簡単に判別することができる。まず、材料面内(扁平磁性金属粒子の扁平面と平行な面)において、磁界を加える向きを変えて磁化測定を行い、磁化曲線の違いが最も大きくなる2つの方向(この時2つの方向は互いに90度傾いた方向)を探し出す。次に、その2つの方向の曲線を比較することによって磁壁移動型か回転磁化型かを判別することができる。
以上の様に、扁平磁性金属粒子は扁平面内において一方向に磁気異方性を有することが好ましいが、より好ましくは、扁平磁性金属粒子が、第1方向に配列し、幅0.1μm以上で長さ1μm以上でアスペクト比が2以上の複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方を有することによって、前記第1方向に磁気異方性が誘起され易くなり、より好ましい。この観点においては、更に、幅1μm以上、長さ10μm以上が好ましい。アスペクト比は5以上が好ましく、更には10以上が好ましい。また、このような凹部又は凸部を備えることによって、扁平磁性金属粒子を圧粉化して圧粉材料を合成する際の扁平磁性金属粒子同士の密着性が向上し(凹部又は凸部が粒子同士をくっつけるアンカーリングの効果をもたらす)、これによって、強度、硬度などの機械的特性や熱的安定性が向上するため好ましい。
また、前記扁平磁性金属粒子において、磁化容易軸方向に、最も多くの複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方の第1方向が配列されていることが好ましい。つまり、扁平磁性金属粒子の扁平面内において、多数の配列方向(=第1方向)が存在した場合、多数の配列方向(=第1方向)の中で最も数が多い配列方向(=第1方向)が、扁平磁性金属粒子の容易軸方向に一致することが好ましい。凹部又は凸部が配列している長さ方向すなわち第1方向は、形状磁気異方性の効果によって、磁化容易軸になりやすいため、この方向を磁化容易軸として揃える方が、磁気異方性が付与され易くなり、好ましい。
複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方は、1つの扁平磁性金属粒子の中に平均して5個以上含まれることが望ましい。ここで、凹部が5個以上含まれていても良いし、凸部が5個以上含まれていてもよいし、凹部の個数と凸部の個数の和が5個以上であっても良い。なお、更に好ましくは10個以上含まれることが望ましい。また、各々の凹部又は凸部間の幅方向の平均距離が0.1μm以上100μm以下であることが望ましい。更には、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの前記第1の元素を含み、平均大きさが1nm以上1μm以下である複数の付着金属が、凹部又は凸部に沿って配列していることが望ましい。なお付着金属の平均大きさの求め方は、TEM又はSEM又は光学顕微鏡などによる観察に基づいて、凹部又は凸部に沿って配列している複数の付着金属の大きさを平均することによって算出する。これらの条件を満たすと、一方向に磁気異方性が誘起され易く好ましい。また、扁平磁性金属粒子を圧粉化して圧粉材料を合成する際の扁平磁性金属粒子同士の密着性が向上し(凹部又は凸部が粒子同士をくっつけるアンカーリングの効果をもたらす)、これによって、強度、硬度などの機械的特性や熱的安定性が向上するため好ましい。
扁平磁性金属粒子は、扁平面上に平均して5個以上の複数の磁性金属小粒子をさらに備えることが望ましい。磁性金属小粒子は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素を含み、平均粒径は10nm以上1μm以下である。より好ましくは、磁性金属小粒子は、扁平磁性金属粒子と同等の組成を有する。磁性金属小粒子が扁平面の表面に設けられる、又は扁平磁性金属粒子に磁性金属小粒子が一体化されることによって、扁平磁性金属粒子の表面が擬似的にやや荒らされた状態になり、これによって、扁平磁性金属粒子を後述する介在相とともに圧粉化する際の密着性が大きく向上する。これによって、熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性が向上しやすくなる。この様な効果を最大限に発揮するためには、磁性金属小粒子の平均粒径を10nm以上1μm以下にして、平均して5個以上の磁性金属小粒子を扁平磁性金属粒子の表面、すなわち扁平面に一体化させることが望ましい。なお、磁性金属小粒子が扁平面内の一方向に配列させると、扁平面内で磁気的な異方性が付与されやすく、高透磁率と低損失を実現しやすいため、より好ましい。磁性金属小粒子の平均粒径は、TEM又はSEM又は光学顕微鏡などで観察することにより求める。
扁平磁性金属粒子の粒度分布ばらつきは、変動係数(CV値)で定義できる。すなわち、CV値(%)=[粒度分布の標準偏差(μm)/平均粒径(μm)]×100である。CV値が小さいほど、粒度分布ばらつきが小さくシャープな粒度分布になるといえる。上記定義のCV値が0.1%以上60%以下であると、低保磁力、低ヒステリシス損失、高透磁率、高熱的安定性、を実現出来好ましい。また、ばらつきが少ないため、高い歩留りも実現しやすい。より好ましいCV値の範囲は0.1%以上40%以下である。
扁平磁性金属粒子の扁平面内において、方向による保磁力差を付与する1つの有効な方法は、磁場中で熱処理を施す方法である。扁平面内の一方向に磁場を印加しながら熱処理することが望ましい。磁場中熱処理を行う前に、扁平面内の容易軸方向を探しておき(保磁力が最も小さい方向を探しておき)、その方向に磁場を印加しながら熱処理を行うことが望ましい。印加する磁場は大きければ大きい程好ましいが、1kOe以上印加することが好ましく、更に好ましくは10kOe以上印加することがより好ましい。これによって扁平磁性金属粒子の扁平面内に磁気異方性を発現させることができ、また、方向による保磁力差を付与することができ、優れた磁気特性を実現できるため、好ましい。熱処理は50℃以上800℃以下の温度で行うことが好ましい。なお、熱処理の雰囲気は、低酸素濃度の真空雰囲気下、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下が望ましく、更に望ましくは、H2(水素)、CO(一酸化炭素)、CH4(メタン)等の還元雰囲気下が好ましい。この理由としては、扁平磁性金属粒子が酸化していても還元雰囲気で熱処理を施すことによって、酸化してしまった金属を還元して、金属に戻すことが可能となるためである。これによって、酸化し飽和磁化が減少した扁平磁性金属粒子を還元して、飽和磁化を回復させることもできる。なお、熱処理によって、扁平磁性金属粒子の結晶化が著しく進行してしまうと特性が劣化(保磁力が増加、透磁率が低下)してしまうため、過剰な結晶化を抑制するように条件を選定することが好ましい。
また、扁平磁性金属粒子を合成する際に、ロール急冷法等によってリボンを合成し、このリボンを粉砕することによって扁平磁性金属粒子を得る場合は、リボン合成時に、複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方が第1方向に配列されやすく(ロールの回転方向に凹部、凸部が付きやすい)、これによって、扁平面内において、方向による保磁力差を有し易くなり好ましい。すなわち、扁平面内の複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方が第1方向に配列した方向が磁化容易軸方向になりやすくなり、扁平面内において、方向による保磁力差が効果的に付与され好ましい。
本実施形態によれば、低い磁気損失等の優れた磁気特性を有する扁平磁性金属粒子の提供が可能になる。
(第2の実施形態)
本実施形態の複数の扁平磁性金属粒子は、扁平磁性金属粒子の表面の少なくとも一部が、厚さ0.1nm以上1μm以下で、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素を含む被覆層で覆われている点で、第1の実施形態と異なっている。
なお、第1の実施の形態と重複する内容の記載は省略する。
図8は、第2の実施の形態の扁平磁性金属粒子の模式図である。被覆層9が示されている。
被覆層は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素からなる群から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含み、かつ、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素を含むことがより好ましい。非磁性金属としては、Al、Siが熱的安定性の観点から特に好ましい。扁平磁性金属粒子がMg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素からなる群から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含む場合は、被覆層は、扁平磁性金属粒子の構成成分の1つである非磁性金属と同じ非磁性金属を少なくとも1つ含むことがより好ましい。酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)の中では、酸素(O)を含むことが好ましく、酸化物、複合酸化物であることが好ましい。以上は、被覆層形成の容易性、耐酸化性、熱的安定性の観点からである。以上によって、扁平磁性金属粒子と被覆層の密着性を向上出来、後述する圧粉材料の熱的安定性及び耐酸化性を向上させることが可能となる。被覆層は、扁平磁性金属粒子の熱的安定性や耐酸化性を向上させるのみならず、扁平磁性金属粒子の電気抵抗を向上させることができる。電気抵抗を高くすることによって、渦電流損失を抑制し、透磁率の周波数特性を向上することが可能になる。このため、被覆層14は電気的に高抵抗であることが好ましく、例えば1mΩ・cm以上の抵抗値を有することが好ましい。
また、被覆層の存在は、磁気的な観点からも好ましい。扁平磁性金属粒子は、扁平面のサイズに対して厚さのサイズが小さいため、疑似的な薄膜と見なすことができる。この時、扁平磁性金属粒子の表面に被覆層を形成させて一体化させたものは、疑似的な積層薄膜構造と見なすことが出来、磁区構造がエネルギー的に安定化する。これによって、保磁力を低減させること(これによってヒステリシス損失が低減)が可能になり、好ましい。この時、透磁率も大きくなり好ましい。このような観点においては、被覆層は非磁性であることがより好ましい(磁区構造が安定化しやすくなる)。
被覆層の厚みは、熱的安定性・耐酸化性・電気抵抗の観点からは、厚ければ厚い程好ましい。しかしながら、被覆層の厚さが厚くなりすぎると、飽和磁化が小さくなるため透磁率も小さくなり好ましくない。また、磁気的な観点からも、厚さが厚くなりすぎると、「磁区構造が安定化して低保磁力化・低損失化・高透磁率化する効果」は低減する。以上を考慮して、好ましい被覆層の厚さは、0.1nm以上1μm以下、より好ましくは0.1nm以上100m以下である。
以上、本実施形態によれば、高い透磁率、低い損失、優れた機械特性、高い熱的安定性等の優れた特性を有する扁平磁性金属粒子の提供が可能となる。
(第3の実施の形態)
本実施の形態の圧粉材料は、扁平面と、Fe、Co及びSiを含む磁性金属相とを有し、Coの量はFeとCoの合計量に対して0.001at%以上80at%以下であり、Siの量は前記磁性金属相全体に対して0.001at%以上30at%以下であり、平均厚さは10nm以上100μm以下であり、厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値は5以上10000以下である複数の扁平磁性金属粒子と、前記扁平磁性金属粒子間に存在し、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素を含む介在相と、を備える圧粉材料であり、前記圧粉材料において、前記扁平面が、前記圧粉材料が有する平面に対して平行に配向し、前記平面内において、方向による保磁力差を有する圧粉材料である。
また、本実施の形態の圧粉材料は、扁平面と、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素と添加元素からなる磁性金属相を有し、前記添加元素がB、Hfを含み、前記添加元素の合計量が前記磁性金属相全体に対して0.002at%以上80at%以下含まれ、平均厚さは10nm以上100μm以下であり、厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値は5以上10000以下である複数の扁平磁性金属粒子と、前記扁平磁性金属粒子間に存在し、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素を含む介在相と、を備える圧粉材料であり、前記圧粉材料において、前記扁平面が、前記圧粉材料が有する平面に対して平行に配向し、前記平面内において、方向による保磁力差を有する圧粉材料である。
前記磁性金属相の組成、平均結晶粒径、結晶配向(概ね(110)配向)、については、第1の実施の形態で述べた要件を満たすことが好ましいが、ここでは重複するため、内容の記載は省略する。
また、圧粉材料の飽和磁化は高い方が好ましく、0.2T以上であることが好ましく、より好ましくは0.5T以上であることが好ましく、1.0T以上、更に好ましくは1.8T以上、更に好ましくは2.0T以上であることが好ましい。これによって磁気飽和が抑制され、システム上で磁気特性を十分に発揮することが出来好ましい。ただし、用途によっては(例えばモータの磁性くさびなど)、飽和磁化が比較的小さい場合でも十分に使用することができ、むしろ低損失に特化した方が好ましい場合もある。よって、用途に応じて、組成を選定することが重要である。
図9は、第3の実施の形態の圧粉材料の模式図である。介在相20、圧粉材料100、圧粉材料の平面102が示されている。なお、図9右に示した図は、図9左に示した図から、介在相を見やすくするためにハッチングを取り除いた模式図である。
扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な面と、圧粉材料が有する平面とのなす角度が0度に近ければ近い程配向していると定義する。図10は、第3の実施の形態において、扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な面と、圧粉材料が有する平面とのなす角度を表した模式図である。10個以上の多数の扁平磁性金属粒子に関して前述の角度を求めその平均値が、好ましくは0度以上45度以下、より好ましくは0度以上30度以下、更に好ましくは0度以上10度以下であることが望ましい。すなわち、圧粉材料においては、前記複数の扁平磁性金属粒子の前記扁平面は互いに平行に、又は互いに平行に近くなるように層状に配向されていることが好ましい。これによって、圧粉材料の渦電流損失を低減することができ好ましい。また、反磁界を小さくできるため、圧粉材料の透磁率を大きくでき好ましい。また、強磁性共鳴周波数を高くできるため、強磁性共鳴損失を小さくでき好ましい。更には、この様な積層構造においては、磁区構造が安定化し、低い磁気損失を実現できるため好ましい。
圧粉材料が有する前記平面内(扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な平面内)において、方向による保磁力を測定する場合は、例えば、前記平面内の360度の角度に対して、22.5度おきに方向を変えて保磁力を測定する。
圧粉材料の前記平面内において保磁力差を有することによって、保磁力差がほとんどない等方性の場合に比べて、最小となる保磁力値が小さくなり好ましい。平面内で磁気異方性を有する材料においては、平面内の方向によって保磁力に差を有し、磁気的に等方性の材料に比べて、最小となる保磁力値が小さくなる。これによってヒステリシス損失は低減、透磁率は向上し、好ましい。
圧粉材料が有する前記平面内(扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な平面内)において、方向による保磁力差の割合は大きければ大きいほど好ましく、1%以上であることが好ましい。より好ましくは、保磁力差の割合が10%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が50%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が100%以上である。ここでいう保磁力差の割合とは、扁平面内において、最大となる保磁力Hc(max)と最小となる保磁力Hc(min)を用いて、(Hc(max)−Hc(min))/Hc(min)×100(%)で定義される。
なお、保磁力は、振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)等を用いて、簡単に評価できる。保磁力が低い場合は、低磁界ユニットを用いることによって、0.1Oe以下の保磁力も測定することができる。測定磁界の方向に対して、圧粉材料の前記平面内(扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な平面内)において方向を変えて測定を行う。
保磁力を算出する際は、横軸と交わる2つの点(磁化がゼロになる磁界H1、H2)の磁界の差分を2で割った値を採用することができる(つまり保磁力=|H2−H1|/2で算出できる)。
磁気異方性を付与する観点からは、磁性金属粒子が最大長さ方向を揃えて配列されていることが好ましい。最大長さ方向が揃っているかどうかは、圧粉材料に含まれる磁性金属粒子をTEM又はSEM又は光学顕微鏡などで観察し、最大長さ方向と任意に決めた基準線のなす角を求めて、そのばらつき度合いにより判断する。好ましくは、20個以上の扁平磁性金属粒子に対して平均的なばらつき度合いを判断することが好ましいが、20個以上の扁平磁性金属粒子を観察することが出来ない場合は、できる限り多くの扁平磁性金属粒子観察し、それらに対して平均的なばらつき度合いを判断することが好ましい。本明細書においては、ばらつき度合いが±30°の範囲に入っている時、最大長さ方向が揃っているという。ばらつき度合いは±20°の範囲内がより好ましく、±10°の範囲内が更に好ましい。これによって、圧粉材料の磁気的な異方性を付与し易くなり望ましい。更に好ましくは、扁平面にある複数の凹部と複数の凸部の一方又は両方の第1方向が最大長さ方向に配列されていることが望ましい。これによって、磁気的な異方性を大きく付与でき望ましい。
圧粉材料においては、近似的な第1方向が第2方向に配列される「配列割合」が30%以上であることが好ましい。より望ましくは50%以上、更に望ましくは75%以上である。これによって、磁気異方性が適度に大きくなり、前述の通り磁気特性が向上し好ましい。まず事前に評価する全ての扁平磁性金属粒子について、各扁平磁性金属粒子が有する凹部又は凸部の配列方向が最多数を占める方向をそれぞれ第1方向として定め、各扁平磁性金属粒子の第1方向が、圧粉材料全体として最も多く配列している方向を第2方向と定義する。次に、第2方向に対して、360度の角度を、45度おきの角度で分割した方向を決める。次に、各扁平磁性金属粒子の第1方向がどの角度の方向に最も近くに配列しているかを分類し、その方向を「近似的な第1方向」として定義する。すなわち、0度の方向、45度の方向、90度の方向、135度の方向の4つのいずれかに分類する。近似的な第1方向が、第2方向に対して、同じ方向で配列している割合を、「配列割合」と定義する。この「配列割合」を評価する際には、隣り合った扁平磁性金属粒子を順番に4つ選び、その4つを評価する。これを少なくとも3回以上の複数回(多い方が良い、例えば5回以上が望ましい、更に望ましくは10回以上が望ましい)行うことによって、その平均値を配列割合として採用する。なお、凹部又は凸部の方向が判別できない扁平磁性金属粒子は評価から除き、そのすぐ隣の扁平磁性金属粒子の評価を行う。例えば、単ロール急冷装置で合成したリボンを粉砕した扁平磁性金属粒子においては、片側の扁平面のみに凹部又は凸部が付き、もう片側の扁平面は凹部又は凸部が付かないことが多い。このような扁平磁性金属粒子をSEMで観察した場合、凹部又は凸部が付いていない扁平面が観察の画面上で見えている場合も確率としては半分ほど起こりうる(この場合も、実は裏側の扁平面は凹部又は凸部が付いているはずであるが、上記評価においては除く)。
また、圧粉材料の磁化容易軸方向に、最も多くの近似的な第1方向が配列されていることが好ましい。すなわち、圧粉材料の磁化容易軸は第2方向と平行であることが好ましい。凹部又は凸部が配列している長さ方向は、形状磁気異方性の効果によって、磁化容易軸になりやすいため、この方向を磁化容易軸として揃える方が、磁気異方性が付与され易くなり、好ましい。
第1方向に沿って前記介在相の一部が付着していることが好ましい。言い換えると、扁平磁性金属粒子の扁平面上にある凹部又は凸部の方向に沿って、介在相の一部が付着していることが好ましい。これによって、一方向に磁気異方性が誘起され易くなり、好ましい。また、このような介在相の付着は、扁平磁性金属粒子同士の密着性を向上させ、これによって、強度、硬度などの機械的特性や熱的安定性が向上するため好ましい。また、介在相は粒子状のものを含むことが好ましい。これによって、適度に扁平磁性金属粒子同士の密着性を適度な状態に保持し、歪みを軽減し(扁平磁性金属粒子間に粒子状の介在相があることによって、扁平磁性金属粒子に印加される応力が緩和され)、保磁力を低減しやすくさせ(ヒステリシス損失は低減、透磁率は増加)、好ましい。
介在相は、圧粉材料全体に対して0.01wt%以上80wt%以下、より好ましくは0.1wt%以上60wt以下、更に好ましくは0.1wt%以上40wt%以下の量を含むことが好ましい。介在相の割合が大きすぎると、磁性を担う扁平磁性金属粒子の割合が小さくなるため、これによって圧粉材料の飽和磁化や透磁率が小さくなり好ましくない。逆に、介在相の割合が小さすぎると、扁平磁性金属粒子と介在相との接合が弱くなり、熱的な安定性や強度・靱性等の機械的特性の観点から好ましくない。飽和磁化、透磁率などの磁気特性と、熱的な安定性、機械特性の観点から最適な介在相の割合は、圧粉材料全体に対して0.01wt%以上80wt%以下、より好ましくは0.1wt%以上60wt以下、更に好ましくは0.1wt%以上40wt%以下である。
また、介在相と扁平磁性金属粒子との格子ミスマッチ割合が0.1%以上50%以下であることが好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすく、上記の磁気特性が向上するため好ましい。格子ミスマッチを上記の範囲に設定するためには、介在相の組成と扁平磁性金属粒子10の組成の組み合わせを選ぶことによって実現できる。例えば、fcc構造のNiは格子定数が3.52Åで、NaCl型構造のMgOは格子定数が4.21Åであり、両者の格子ミスマッチが(4.21−3.52)/3.52×100=20%になる。つまり、扁平磁性金属粒子の主組成をfcc構造のNiに、介在相20をMgOにすることによって、格子ミスマッチを20%に設定できる。この様に、扁平磁性金属粒子の主組成と介在相の主組成の組み合わせを選ぶことによって、格子ミスマッチを上記の範囲に設定することが可能となる。
介在相は、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第2の元素を含む。これにより、抵抗を高くすることができるためである。介在相の電気抵抗率は、扁平磁性金属粒子の電気抵抗率よりも高い方が好ましい。これによって扁平磁性金属粒子の渦電流損失を低減できるためである。介在相は、扁平磁性金属粒子を取り囲んで存在するため、扁平磁性金属粒子の耐酸化性、熱的安定性を向上させることが出来好ましい。この中で酸素を含むものは、高い耐酸化性、高い熱的安定性の観点からより好ましい。介在相は、扁平磁性金属粒子同士を機械的に接着する役割も担っているため、高い強度の観点からも好ましい。
また、介在相は、「共晶系を有する酸化物」か、「樹脂を含有する」か、「Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有する」か、これら3つのうち少なくとも1つを有していても良い。これらの点について、以下に説明する。
まず、1つ目の「介在相が共晶系を有する酸化物の場合」について説明する。この場合、介在相は、B(ホウ素)、Si(シリコン)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Li(リチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛)、La(ランタン)、P(リン)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、W(タングステン)、Na(ナトリウム)、Ti(チタン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Ca(カルシウム)、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)、Te(テルル)、Sn(スズ)からなる群から選ばれる少なくとも2つの第3の元素を含む共晶系を有する酸化物を含む。特に、B、Bi、Si、Zn、Pbのうちの少なくとも2つの元素を含む共晶系を含むことが好ましい。これによって、扁平磁性金属粒子と介在相との密着性が強固になり(接合強度が高まり)、熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性が向上しやすくなる。
また上記の共晶系を有する酸化物は、軟化点が200℃以上600℃以下であることが好ましく、更に好ましくは、400℃以上500℃以下である。更に好ましくは、B、Bi、Si、Zn、Pbのうちの少なくとも2つの元素を含む共晶系を有する酸化物であり、かつ軟化点が400℃以上500℃以下であることが好ましい。これによって、扁平磁性金属粒子と上記の共晶系を有する酸化物との接合が強固になり、熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性が向上しやすくなる。扁平磁性金属粒子を上記の共晶系を有する酸化物とともに一体化させる際は、上記の共晶系を有する酸化物の軟化点付近の温度、好ましくは軟化点よりやや高い温度で熱処理しながら一体化させることによって、扁平磁性金属粒子と上記の共晶系を有する酸化物との密着性を向上させ、機械的特性を向上させることができる。一般に、熱処理の温度がある程度高い程、扁平磁性金属粒子と上記の共晶系を有する酸化物との密着性は向上し、機械的特性は向上する。ただし熱処理の温度が高くなりすぎると、熱膨張係数が大きくなるため扁平磁性金属粒子と上記の共晶系を有する酸化物との密着性が逆に低下してしまうこともある(扁平磁性金属粒子の熱膨張係数と上記の共晶系を有する酸化物の熱膨張係数の差が大きくなると、密着性が更に低下してしまうこともある)。また、扁平磁性金属粒子の結晶性が非晶質又は非晶質的な場合は、熱処理の温度が高いと結晶化が進行し保磁力が増加してしまい好ましくない。このため、機械的特性と保磁力特性を両立させるために、上記の共晶系を有する酸化物の軟化点を200℃以上600℃以下、更に好ましくは400℃以上500℃以下にして、上記の共晶系を有する酸化物の軟化点付近の温度、好ましくは軟化点よりやや高い温度で熱処理しながら一体化させることが好ましい。また、一体化した材料を実際にデバイスやシステムの中で使用する際の温度は軟化点より低い温度で使用することが好ましい。
また、上記の共晶系を有する酸化物は、ガラス転移点を有することが望ましい。更には、上記の共晶系を有する酸化物は、熱膨張係数が0.5×10-6/℃以上40×10-6/℃以下であることが望ましい。これによって、扁平磁性金属粒子10と上記の共晶系を有する酸化物との接合が強固になり、熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性が向上しやすくなる。
なお、粒径が10nm以上10μm以下の粒子状(好ましくは球状)の共晶粒子を少なくとも1つ以上含むことがより好ましい。この共晶粒子は、粒子状以外の上記の共晶系を有する酸化物と同じ材料を含む。圧粉材料中には空隙も部分的に存在していることがあり、上記の共晶系を有する酸化物の一部が粒子状、好ましくは球状となって存在していることを容易に観察することができる。空隙がない場合も、粒子状又は球状の界面は容易に判別することができる。共晶粒子の粒径は、より好ましくは10nm以上1μm、更に好ましくは10nm以上100nm以下である。これによって、熱処理時に、扁平磁性金属粒子同士の密着性を保持しながらも、応力を適度に緩和させることによって、扁平磁性金属粒子に印加される歪みを低減し、保磁力を低減させることができる。これによって、ヒステリシス損失も低減し、透磁率は向上する。なお、共晶粒子の粒径は、TEM又はSEM観察により測定することができる。前述の図28の走査型電子顕微鏡写真では、介在相からなる球状の共晶粒子が複数存在していることが分かる。
また、介在相は、その軟化点が、上記の共晶系を有する酸化物の軟化点よりも高く、より好ましくは軟化点が600℃より高く、O(酸素)、C(炭素)、N(窒素)及びF(フッ素)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む中間介在粒子を更に含むことが好ましい。中間介在粒子が扁平磁性金属粒子間に存在することによって、圧粉材料が高温に曝された時、扁平磁性金属粒子同士が熱的に融合し特性が劣化することを抑制することができる。すなわち、主に熱的な安定性のために中間介在粒子が存在することが望ましい。なお、中間介在粒子の軟化点が上記の共晶系を有する酸化物の軟化点よりも高く、更に好ましくは軟化点が600℃以上であることによって、熱的な安定性をより高めることができる。
中間介在粒子は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素からなる群から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含み、かつ、O(酸素)、C(炭素)、N(窒素)及びF(フッ素)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。より好ましくは、高い耐酸化性、高い熱的安定性の観点から、酸素を含有する酸化物又は複合酸化物であることがより好ましい。特に、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO3)などの酸化物、やAl−Si−O等の複合酸化物などが高い耐酸化性、高い熱的安定性の観点から好ましい。
中間介在粒子を含む圧粉材料を製造する方法としては、例えば、扁平磁性金属粒子及び中間介在粒子(酸化アルミニウム(Al2O3)粒子、二酸化珪素(SiO2)粒子、酸化チタン(TiO2)粒子、酸化ジルコニウム(ZrO3)粒子など)を、ボールミル等によって混合し、分散させた状態を作り、その後、プレス成型などで一体化させる方法などが挙げられる。分散させる方法は、適度に分散させることができる方法であれば、その方法は特に拘らない。
次に、2つ目の「介在相が樹脂を含有する場合」について説明する。この場合、樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、テフロン(登録商標、ポリテトラフルオロエチレン)系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ABS樹脂、ニトリル−ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、シリコーン樹脂、その他の合成ゴム、天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アリル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、或いはそれらの共重合体が用いられる。特に、高い熱的安定性を実現するためには、耐熱性の高いシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、を含むことが好ましい。これによって、扁平磁性金属粒子と介在相との接合が強固になり、熱的な安定性や強度や靱性などの機械的特性が向上しやすくなる。
樹脂は、大気雰囲気中180℃で3000時間加熱した後の重量減少率が5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが好ましい。また、大気雰囲気中220℃で200時間加熱した後の重量減少率に関して、5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが好ましい。また、大気雰囲気中250℃で200時間加熱した後の重量減少率に関して、5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが好ましいなお、これら重量減少率の評価は、未使用の状態の材料を用いて行う。未使用の状態とは、成形して使える状態にしたもので、その状態から熱(たとえば40度以上の温度の熱)、化学薬品、太陽光(紫外線)等に曝されていない状態のことである。重量減少率は、加熱前後の質量から次式で計算するものとする:重量減少率(%)=[加熱前の質量(g)−加熱後の質量(g)]/加熱前の質量(g)×100。また、好ましくは、大気雰囲気中180℃で20000時間加熱後の強度が、加熱前の強度の半分以上であることが好ましい。更に好ましくは、大気雰囲気中220℃で20000時間加熱後の強度が、加熱前の強度の半分以上であることが好ましい。また日本工業規格(JIS)で規定されるH種を満たすことが好ましい。特に、最高温度180℃に耐える耐熱性を満たすことが好ましい。更に好ましくは、国鉄規格(JRE)で規定されるH種を満たすことが好ましい。特に、周囲温度(標準:25℃、最高:40℃)に対して180℃の温度上昇に耐える耐熱性を満たすことが好ましい。これに好ましい樹脂は、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリベンズオキサゾール、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマーなどがある。これらの樹脂は、分子間凝集力が大きいため、耐熱性が高くなり、好ましい。中でも、芳香族ポリイミド、ポリベンズオキサゾールは、分子内に占める剛直ユニットの割合が高いため、より耐熱性が高く好ましい。また、熱可塑性樹脂であることが好ましい。以上の加熱重量減少率の規定、強度の規定、樹脂種類の規定は、それぞれ、樹脂の耐熱性を高めるために効果的である。また、これらによって、複数の扁平磁性金属粒子と介在相(ここでは樹脂)から成る圧粉材料を形成した時に、圧粉材料としての耐熱性が高まり(熱的な安定性が高まり)、高温(たとえば上記の200℃や250℃)に曝した後、又は高温(たとえば上記の200℃や250℃)での強度・靱性などの機械的特性が向上しやすくなり、好ましい。また、加熱後も扁平磁性粒子の周りを多くの介在相が取り囲んで存在するため、耐酸化性に優れ、扁平磁性金属粒子の酸化による磁気特性の劣化も起こり難く、好ましい。
また、圧粉材料は、180℃で3000時間加熱後の重量減少率が5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが好ましい。また、圧粉材料は、220℃で3000時間加熱後の重量減少率が5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが好ましい。また、大気雰囲気中250℃で200時間加熱した後の圧粉材料の重量減少率に関して、5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下であることが好ましい。なお、重量減少率の評価は、上記の樹脂の場合と同様である。また、好ましくは、大気雰囲気中180℃で20000時間加熱後の圧粉材料の強度が、加熱前の強度の半分以上であることが好ましい。更に好ましくは、大気雰囲気中220℃で20000時間加熱後の圧粉材料の強度が、加熱前の強度の半分以上であることが好ましい。また日本工業規格(JIS)で規定されるH種を満たすことが好ましい。特に、最高温度180℃に耐える耐熱性を満たすことが好ましい。更に好ましくは、国鉄規格(JRE)で規定されるH種を満たすことが好ましい。特に、周囲温度(標準:25℃、最高:40℃)に対して180℃の温度上昇に耐える耐熱性を満たすことが好ましい。以上の加熱重量減少率の規定、強度の規定、前述の樹脂種類の規定は、それぞれ、圧粉材料の耐熱性を高めるために効果的であり、高信頼性の材料を実現できる。また、圧粉材料としての耐熱性が高まり(熱的な安定性が高まり)、高温(たとえば上記の200℃や250℃)に曝した後、又は高温(たとえば上記の200℃や250℃)での強度・靱性などの機械的特性が向上しやすくなり、好ましい。また、加熱後も扁平磁性粒子の周りを多くの介在相が取り囲んで存在するため、耐酸化性に優れ、扁平磁性金属粒子の酸化による磁気特性の劣化も起こり難く、好ましい。
さらに、熱分解温度までガラス転移点を有しない結晶性の樹脂を含むことが好ましい。また、ガラス転移温度が180℃以上の樹脂を含むことが好ましく、更に好ましくはガラス転移温度が220℃以上の樹脂を含むことが好ましい。更に好ましくは、ガラス転移温度が250℃以上の樹脂を含むことが好ましい。なお、一般に扁平磁性金属粒子は、熱処理する温度が高くなるほど結晶粒径が大きくなる。そのため、扁平磁性金属粒子の結晶粒径を小さくする必要がある場合は、用いる樹脂のガラス転移温度は高すぎないほうが好ましく、具体的には600℃以下であることが好ましい。また、熱分解温度までガラス転移点を有しない結晶性の樹脂にガラス転移温度が180℃以上の樹脂を含むことが好ましく、更に好ましくはガラス転移温度が220℃以上の樹脂を含むことが好ましい。具体的には180℃以上のガラス転移温度を有するポリイミドを含むことが好ましく、更に好ましくは220℃以上のガラス転移温度を有するポリイミドを含むことが好ましく、更に好ましくは熱可塑性ポリイミドを含むことが好ましい。これによって、磁性金属粒子への融着が起こり易くなり、特に圧粉成形に好適に用いることができる。熱可塑性ポリイミドとしては、熱可塑性芳香族ポリイミド、熱可塑性芳香族ポリアミドイミド、熱可塑性芳香族ポリエ−テルイミド、熱可塑性芳香族ポリエステルイミド、熱可塑性芳香族ポリイミドシロキサンなどの高分子鎖中にイミド結合を有するものが好ましい。中でも、ガラス転移温度が250℃以上の場合は、より耐熱性が高くなり好ましい。
芳香族ポリイミド、ポリベンズオキサゾールは、芳香族環と複素環が直接結合して平面構造をとり、それらがπ-πスタッキングにより固定化されていることで高耐熱性を発現している。これによって、ガラス転移温度を高くでき、熱的安定性を向上できる。また、分子構造内に適度にエーテル結合などの屈曲ユニットを導入することで所望のガラス転移点に容易に調整できるので好ましい。中でも、イミドポリマーを構成する酸無水物由来ユニットのベンゼン環構造がビフェニル、トリフェニル、テトラフェニルのいずれかの構造であると強度の観点から好ましい。耐熱性に影響を及ぼすイミド基間の対称構造を損なわず、配向性も長距離に及ぶことから材料強度も向上する。これに好ましい芳香族ポリイミドの構造は、下記化学式(1)で示される。言い換えると、本実施形態のポリイミド樹脂は、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含む。
(1)
化学式(1)中、Rはビフェニル、トリフェニル、テトラフェニルのいずれかの構造、R’は構造内に少なくとも1つ以上の芳香環を有する構造を示す。
圧粉材料から、その構成成分である介在相(ここでは樹脂)の特性(重量減少率、樹脂種類、ガラス転移温度、分子構造など)を求める際には、圧粉材料から樹脂の部分のみを切り出して、種々の特性評価を行う。目視で樹脂かどうか判断がつかない場合は、EDXによる元素分析などを用いて樹脂と磁性金属粒子とを区別する。
圧粉材料全体に占める樹脂の含有量は、多ければ多いほど、扁平磁性金属粒子をぬらしている(覆っている)ポリマーと、隣接する扁平磁性金属粒子をぬらしている(覆っている)ポリマーの間を、無理なくポリマーがつなぐことができ、強度などの機械的特性が向上する。また電気抵抗率も高くなり圧粉材料の渦電流損失を低減でき好ましい。一方で、樹脂の含有量が多ければ多いほど、扁平磁性金属粒子の割合が減るため、圧粉材料の飽和磁化が下がり、透磁率も下がり、好ましくない。強度などの機械的特性、電気抵抗率・渦電流損失、飽和磁化、透磁率の特性を総合的に考慮してバランスの良い材料を実現するためには、圧粉材料全体に占める樹脂の含有量を93wt%以下、更に好ましくは86wt%以下、更に好ましくは2wt%以上67wt%以下、更に好ましくは2wt%以上43wt%以下にすることが好ましい。また、扁平磁性金属粒子の含有量は、7wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは、14wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは、33wt%以上98wt%以下、更に好ましくは、57wt%以上98wt%以下であることが好ましい。また、扁平磁性金属粒子は、粒子径が小さくなると、表面積が大きくなり、必要な樹脂の量が飛躍的に増加するため、適度に大きい粒子径を有することが好ましい。これによって、圧粉材料を高飽和磁化にでき、透磁率を大きくでき、システムの小型化・高出力化に有利である。
次に、3つ目の「介在相がFe、Co、Niから選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、磁性を有する場合」について説明する。この場合、介在相が磁性を有することによって、扁平磁性金属粒子同士が磁気的に結合し易くなり透磁率が向上するため好ましい。また、磁区構造が安定化するため、透磁率の周波数特性も向上し、好ましい。なお、ここで言う磁性とは、強磁性、フェリ磁性、弱磁性、反強磁性、等のことを示す。特に、強磁性、フェリ磁性の場合が、磁気的な結合力が高まり好ましい。介在相が磁性を有する点については、VSM(Vibrating Sample Magetometer:振動試料型磁力計)等を用いて評価することができる。介在相がFe、Co、Niから選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し磁性を有する点については、EDX等を用いて簡単に調べることができる。
以上、介在相の3つの形態を説明したが、これら3つのうち少なくとも1つを満たすことが好ましいが、2つ以上、更には3つ全てを満たしても構わない。「介在相が共晶系を有する酸化物の場合」(1つ目の場合)は、介在相が樹脂の場合(2つ目の場合)と比較すると、強度などの機械的特性ではやや劣るものの、一方で、歪みが解放され易く、特に、低保磁力化が進行しやすい、という観点では非常に優れており、好ましい(これによって、低いヒステリシス損失、高い透磁率、が実現し易く、好ましい)。また、樹脂に比べると耐熱性が高い場合が多く、熱的安定性にも優れているため好ましい。逆に、「介在相が樹脂を含有する場合」(2つ目の場合)は、扁平磁性金属粒子と樹脂との密着性が高いため、応力が加わり易く(歪みが入り易く)、これによって保磁力が増加しやすい傾向がある、という欠点があるものの、特に、強度などの機械的特性の点では非常に優れているため好ましい。「介在相がFe、Co、Niから選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、磁性を有する場合」(3つ目の場合)は、扁平磁性金属粒子同士が磁気的に結合し易くなるため、特に、高透磁率、低保磁力(それゆえに低ヒステリシス損失)の点で非常に優れているため好ましい。以上の長所、短所を踏まえて、使い分けたり、また、いくつかを組み合わせることによって、バランスの良いものを作ったりすることができる。
圧粉材料に含まれる扁平磁性金属粒子に関しては、第1、2の実施の形態で記述した要件を満たすことが望ましい。ここでは内容が重複するため、記述を省略する。
圧粉材料においては、前記複数の扁平磁性金属粒子の前記扁平面は互いに平行になるように層状に配向されていることが好ましい。これによって、圧粉材料の渦電流損失を低減することができ好ましい。また、反磁界を小さくできるため、圧粉材料の透磁率を大きくでき好ましい。また、強磁性共鳴周波数を高くできるため、強磁性共鳴損失を小さくでき好ましい。更には、この様な積層構造においては、磁区構造が安定化し、低い磁気損失を実現できるため好ましい。ここで、扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な面と、圧粉材料が有する平面とのなす角度が0度に近ければ近い程配向していると定義する。具体的には、10個以上の多数の扁平磁性金属粒子10に関して前述の角度を求めその平均値が、好ましくは0度以上45度以下、より好ましくは0度以上30度以下、更に好ましくは0度以上10度以下であることが望ましい。
圧粉材料は、前記扁平磁性金属粒子を含有する磁性層と、O、C、Nのいずれかを含有する中間層とからなる積層型の構造を有していても良い。磁性層においては、前記扁平磁性金属粒子が配向している(互いの扁平面を平行にする様に配向)ことが好ましい。また、中間層の透磁率を磁性層の透磁率よりも小さくすることが好ましい。これらの処置によって、疑似的な薄膜積層構造を実現でき、層方向の透磁率が高くできるため好ましい。また、このような構造においては、強磁性共鳴周波数を高くできるため、強磁性共鳴損失を小さくでき好ましい。更には、この様な積層構造においては、磁区構造が安定化し、低磁気損失を実現できるため好ましい。なお、これらの効果を更に高めるためには、中間層の透磁率を介在相(磁性層の中の介在相)の透磁率よりも小さくすることがより好ましい。これによって、疑似的な薄膜積層構造において、層方向の透磁率を更に高くできるため好ましい。また、強磁性共鳴周波数を更に高くできるため、強磁性共鳴損失を小さくでき好ましい。
以上、本実施形態によれば、低い磁気損失等の優れた磁気特性を有する圧粉材料の提供が可能になる。
(第4の実施の形態)
本実施の形態のシステム及びデバイス装置は、第3の実施の形態の圧粉材料を有するものである。したがって、第1ないし第3の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。このシステム、デバイス装置に含まれる圧粉材料の部品は、例えば、各種モータや発電機などの回転電機(例えば、モータ、発電機など)、変圧器、インダクタ、トランス、チョークコイル、フィルタ等のコアや、回転電機用の磁性楔(磁性くさび)等である。図11は、第4の実施の形態のモータシステムの概念図である。モータシステムは、回転電機システムの一例である。モータシステムとは、モータの回転数や電力(出力パワー)を制御する制御系を含めたシステムのことである。モータの回転数を制御する方式としては、ブリッジサーボ回路による制御、比例電流制御、電圧比較制御、周波数同期制御、PLL(Phase Locked Loop:位相同期ループ)制御、等による制御方法がある。一例として、PLLによる制御法について図11に示してある。PLLによるモータの回転数を制御するモータシステムは、モータと、モータの回転の機械的変位量を電気信号に変換してモータの回転数を検出するロータリーエンコーダと、ある命令により与えられたモータの回転数とロータリーエンコーダにより検出されたモータの回転数を比較しそれらの回転数差を出力する位相比較器と、当該回転数差を小さくするようにモータを制御するコントローラと、を備える。一方、モータの電力を制御する方法としては、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御、PAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス電圧振幅波形)制御、ベクトル制御、パルス制御、バイポーラ駆動、ペデスタル制御、抵抗制御、等による制御方法がある。またその他の制御方法として、マイクロステップ駆動制御、多相駆動制御、インバータ制御、スイッチング制御、等の制御方法がある。一例として、インバータによる制御法について図11に示してある。インバータによるモータの電力を制御するモータシステムは、交流電源と、交流電源の出力を直流電流に変換する整流器と、当該直流電流を任意の周波数による交流に変換するインバータ回路と、当該交流により制御されるモータと、を備える。
図12は、第4の実施の形態のモータの概念図を示す。モータ200は、回転電機の一例である。モータ200においては、第1のステータ(固定子)と第2のロータ(回転子)が配置されている。図では、ロータがステータの内側に配置されているインナーロータ型を示しているが、ロータがステータの外側に配置されるアウターロータ型でも構わない。
図13は、第4の実施の形態のモータコア(ステータ)の概念図である。図14は、第4の実施の形態のモータコア(ロータ)の概念図である。モータコア300(モータのコア)としては、ステータ及びロータのコアが該当する。この点を、以下に説明する。図13は第1のステータの断面概念図例である。第1のステータは、コアと、巻き線と、を有する。巻き線は、コア内側に設けられた、コアが有する突起の一部に巻き付けられている。このコア内に第3の実施形態の圧粉材料を配置することができる。図14は第1のロータの断面概念図例である。第1のロータは、コアと、巻き線と、を有する。巻き線は、コア外側に設けられた、コアが有する突起の一部に巻き付けられている。このコア内に第3の実施形態の圧粉材料を配置することができる。
なお、図13、図14はあくまでモータの一例を示したものであり、圧粉材料の適用先としてはこれに限定されるものではない。磁束を導きやすくするためのコアとして、あらゆる種類のモータに適用することができる。
図15は、第4の実施の形態の変圧器・トランスの概念図である。図16は、第4の実施の形態のインダクタ(リング状インダクタ、棒状インダクタ)の概念図である。図17は、第4の実施の形態のインダクタ(チップインダクタ、平面インダクタ)概念図である。これらもあくまで一例として示したものである。変圧器・トランス400、インダクタ500においてもモータコアと同様に、磁束を導きやすくするために、又は高い透磁率を利用するために、あらゆる種類の変圧器・トランス、インダクタに圧粉材料を適用することができる。
図18は、第4の実施の形態の発電機500の概念図である。発電機500は、回転電機の一例である。発電機500は、第1ないし第3の実施形態の圧粉材料をコアとして用いた第2のステータ(固定子)530と、第1ないし第3の実施形態の圧粉材料をコアとして用いた第2のロータ(回転子)540の、いずれか一方又はその両方を備えている。図では、第2のロータ(回転子)540は第2のステータ530の内側に配置されているが、外側に配置されていても構わない。第2のロータ540は、発電機500の一端に設けられたタービン510と、シャフト520を介して接続されている。タービン510は、例えば図示しない外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービンに代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフトを回転することも可能である。第2のステータ530及び第2のロータ540には、各種公知の構成を採用することができる。
シャフトは、第2のロータに対してタービンとは反対側に配置された、図示しない整流子と接触している。第2のロータの回転により発生した起電力は、発電機の電力として、図示しない相分離母線及び図示しない主変圧器を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。なお、第2のロータには、タービンからの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機は、第2のロータの帯電を放電させるためのブラシを備えている。
また、本実施形態の回転電機は、鉄道車両に好ましく用いることができる。例えば、鉄道車両を駆動するモータ200や、鉄道車両を駆動するための電気を発生する発電機500に好ましく用いることができる。
また、図19は、磁束の方向と圧粉材料の配置方向の関係を示す概念図である。なお、まず、磁壁移動型、回転磁化型のいずれにおいても、磁束の方向に対して、圧粉材料に含まれる扁平磁性金属粒子の扁平面をできるだけ互いに平行に、かつ層状に揃える方向に配置することが好ましい。これは磁束を貫く扁平磁性金属粒子の断面積をできるだけ小さくすることによって渦電流損失を低減できるからである。その上で、なおかつ、磁壁移動型においては、扁平磁性金属粒子の扁平面内における磁化容易軸(矢印方向)を磁束の方向と平行に配置することが好ましい。これによって、保磁力がより低減する方向で使用することができるためヒステリシス損失を低減出来好ましい。また透磁率も高く出来て好ましい。逆に、回転磁化型においては、扁平磁性金属粒子の扁平面内における磁化容易軸(矢印方向)を磁束の方向と垂直に配置することが好ましい。これによって、保磁力がより低減する方向で使用することができるためヒステリシス損失を低減出来好ましい。つまり、圧粉材料の磁化特性を把握し、磁壁移動型か回転磁化型か(判別方法は前述の通り)を見極めた上で、図13のように配置することが好ましい。磁束の向きが複雑な場合は完全に図13の様に配置することは難しいかもしれないが、できる限り図13のように配置することが好ましい。以上の配置方法は、本実施の形態の全てのシステム及びデバイス装置(例えば、各種モータや発電機などの回転電機(例えば、モータ、発電機など)、変圧器、インダクタ、トランス、チョークコイル、フィルタ等のコアや、回転電機用の磁性楔(くさび)等)において適用されることが望ましい。
このシステム及びデバイス装置に適用するために、圧粉材料は、種々の加工を施すことを許容する。例えば焼結体の場合は、研磨や切削等の機械加工が施され、粉末の場合はエポキシ樹脂、ポリブタジエンのような樹脂との混合が施される。必要に応じて更に表面処理が施される。また、必要に応じて巻線処理がなされる。
本実施の形態のシステム及びデバイス装置によれば、優れた特性(高効率、低損失)を有するモータシステム、モータ、変圧器、トランス、インダクタ及び発電機が実現可能となる。
(実施例)
以下に、実施例1〜20を、比較例1〜13と対比しながらより詳細に説明する。以下に示す実施例及び比較例によって得られる扁平磁性金属粒子について、扁平磁性金属粒子の平均厚さt、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値A、扁平磁性金属粒子の扁平面内の保磁力差の割合(%)、圧粉材料の平面内の保磁力差の割合(%)、をまとめたものを表1に示す。
(実施例1)
まず、単ロール急冷装置を用いて、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=10at%、Si/(Fe+Co+Si)=12at%)のリボンを作製する。次に得られたリボンをH2雰囲気中300℃で熱処理を行う。次に、このリボンを、ミキサー装置を用いて粉砕し、H2雰囲気中で1000℃で磁場中熱処理を行い、扁平磁性金属粒子を得る。得られた扁平磁性金属粒子の平均厚さtは10μm、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値Aが20であり、扁平面は最小長さに対する最大長さの比a/bの平均値が1.6で角張った輪郭形状を有している。また、磁性金属相の結晶粒径は約50μmである。得られた扁平磁性金属粒子は、無機酸化物介在相(B2O3−Bi2O3−ZnO)とともに混合、磁場中成型を行い(扁平粒子を配向化させる)、磁場中熱処理を施すことによって圧粉材料を得る。磁場中熱処理では、磁化容易軸方向に磁場を印加して熱処理を行う。
(実施例2)
組成を、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=80at%、Si/(Fe+Co+Si)=12at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(実施例3)
組成を、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=0.001at%、Si/(Fe+Co+Si)=12at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(実施例4)
組成を、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=10at%、Si/(Fe+Co+Si)=30at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(実施例5)
組成を、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=10at%、Si/(Fe+Co+Si)=0.001at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(実施例6)
実施例1において、リボン片を回収し、ZrO2ボールとZrO2容器を用いたビーズミルによってAr雰囲気下において約1000rpmの粉砕・圧延化を行い扁平粉末化する。粉砕・圧延化、熱処理、の作業を繰り返すことによって、所定のサイズ、構造になるように処理を行う。それ以外は実施例1とほぼ同じである。得られた扁平磁性金属粒子の平均厚さは10nm、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値が200である。
(実施例7)
扁平磁性金属粒子の平均厚さを1μm、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値を100とすること以外は実施例6とほぼ同じである。
(実施例8)
扁平磁性金属粒子の平均厚さを100μm、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値を5とすること以外は実施例6とほぼ同じである。
(実施例9)
扁平磁性金属粒子の平均厚さを10nm、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値を1000とすること以外は実施例6とほぼ同じである。
(実施例10)
扁平磁性金属粒子の平均厚さを10nm、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値を10000とすること以外は実施例6とほぼ同じである。
(実施例11)
リボン合成時において急冷条件を制御し、得られたリボンをH2雰囲気中300℃で熱処理を行い、その後、ミキサー装置を用いて粉砕し、H2雰囲気中で940℃、4時間磁場中熱処理を行うことによって、得られる扁平磁性金属粒子を概ね(110)配向させること以外は実施例1とほぼ同じである。(110)以外の全ての結晶面が(110)に対してピーク強度比で3%以下である。
(実施例12)
組成を、Fe−Co−B−Hf(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf)/(Fe+Co+B+Hf)=10at%、Hf/(Fe+Co+B+Hf)=6at%)とし、磁場中熱処理温度を500℃とすること以外は実施例1とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約15nmである。
(実施例13)
組成を、Fe−Co−B−Hf(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf)/(Fe+Co+B+Hf)=80at%、Hf/(Fe+Co+B+Hf)=6at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約15nmである。
(実施例14)
組成を、Fe−Co−B−Hf(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf)/(Fe+Co+B+Hf)=0.002at%、Hf/(Fe+Co+B+Hf)=0.001at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約1μmである。
(実施例15)
組成を、Fe−Co−B−Hf(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf)/(Fe+Co+B+Hf)=80at%、Hf/(Fe+Co+B+Hf)=40at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約15nmである。
(実施例16)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=10at%、Y/(Hf+Y)=1at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=6at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約12nmである。
(実施例17)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=10at%、Y/(Hf+Y)=20at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=6at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約12nmである。
(実施例18)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=10at%、Y/(Hf+Y)=80at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=6at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約12nmである。
(実施例19)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=60at%、Y/(Hf+Y)=50at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=0.002at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約11nmである。
(実施例20)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=60at%、Y/(Hf+Y)=50at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=40at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約11nmである。
(比較例1)
市販のFe−Si−Cr−Ni扁平粒子を用いる。扁平磁性金属粒子の厚さは約400nm、アスペクト比は約100である。扁平磁性金属粒子を介在相とともに混合し、成型を行うことによって圧粉材料を得る(磁場中成型、磁場中熱処理は行わない)。
(比較例2)
組成を、Fe−Si(Co量=0at%、Si/(Fe+Si)=12at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(比較例3)
組成を、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=90at%、Si/(Fe+Co+Si)=12at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(比較例4)
組成を、Fe−Co(Co/(Fe+Co)=10at%、Si量=0at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(比較例5)
組成を、Fe−Co−Si(Co/(Fe+Co)=10at%、Si/(Fe+Co+Si)=40at%)とすること以外は実施例1とほぼ同じである。
(比較例6)
組成を、Fe−Co−B−Hf(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf)/(Fe+Co+B+Hf)=90at%、Hf/(Fe+Co+B+Hf)=6at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約20nmである。
(比較例7)
組成を、Fe−Co(Co/(Fe+Co)=30at%、B量=0at%、Hf量=0at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約2μmである。
(比較例8)
組成を、Fe−Co−B(Co/(Fe+Co)=30at%、B/(Fe+Co+B)=10at%、Hf量=0at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約20nmである。
(比較例9)
組成を、Fe−Co−B−Hf(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf)/(Fe+Co+B+Hf)=80at%、Hf/(Fe+Co+B+Hf)=50at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約20nmである。
(比較例10)
組成を、Fe−Co−B−Zr(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Zr)/(Fe+Co+B+Zr)=10at%、Zr/(Fe+Co+B+Zr)=6at%)とし、得られたリボンをH2雰囲気中300℃で熱処理を行った後、このリボンを、ミキサー装置を用いて粉砕し、H2雰囲気中で400℃で磁場中熱処理を行い(実施例12の熱処理温度よりも100℃低い温度で熱処理を行う)、扁平磁性金属粒子を得ること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約20nmである。
(比較例11)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=10at%、Y/(Hf+Y)=90at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=6at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約20nmである。
(比較例12)
組成を、Fe−Co−B(−Hf−Y)(Hf、Yはなし。Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=60at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=0at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約40nmである。
(比較例13)
組成を、Fe−Co−B−Hf−Y(Co/(Fe+Co)=30at%、(B+Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=60at%、Y/(Hf+Y)=50at%、(Hf+Y)/(Fe+Co+B+Hf+Y)=50at%)とすること以外は実施例12とほぼ同じである。磁性金属相の結晶粒径は約50nmである。
次に、実施例1〜20及び比較例1〜13の評価用材料に関して、以下の方法で、鉄損、透磁率実部(μ’)の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比、を評価する。評価結果を表2に示す。
(1)鉄損:B−Hアナライザーを用いて100Hz、1Tの動作条件での鉄損を測定する。なお、100Hz、1Tの条件で直接測定出来ない場合は、鉄損の周波数依存性、磁束密度依存性を測定し、そのデータから100Hz、1Tの鉄損を推定する(そしてこの推定値を採用する)。
(2)透磁率実部μ’の経時変化割合:インピーダンスアナライザーを用いて、リング状の試料の透磁率実部μ’を100Hzで測定する。その後、評価用試料を温度100℃、大気中で100時間加熱した後、再度、透磁率実部μ’を測定し、経時変化(100時間放置後の透磁率実部μ’/放置前の透磁率実部μ’)を求める。
(3)経時酸化割合:評価用試料を温度100℃、大気中で100時間加熱した時の酸化割合を求める。
(4)強度比:評価用試料の室温での抗折強度を測定し、比較例1の試料の室温での抗折強度との比(=評価用試料の室温での抗折強度/比較例1の試料の室温での抗折強度)で示す。
(5)硬度比:評価用試料の室温での硬度を測定し、比較例1の試料の室温での硬度との比(=評価用試料の室温での硬度/比較例1の試料の室温での硬度)で示す。
(6)高温強度比:評価用試料の大気中100℃での抗折強度を測定し、比較例1の試料の大気中100℃での抗折強度との比(=評価用試料の100℃での抗折強度/比較例1の試料の100℃での抗折強度)で示す。
表1から明らかなように、実施例1〜20に係る扁平磁性金属粒子は、平均厚さが10nm以上100μm以下、厚さに対する扁平面内の平均長さの比の平均値が5以上10000以下である。また、扁平磁性金属粒子の扁平面内の方向によって保磁力差を有しており、また圧粉材料の平面内の方向によって保磁力差を有している。実施例1〜11はFe−Co−Si系であり、実施例12〜15はFe−Co−B−Hf系である。また、実施例16〜20はFe−Co−B−Hf−Y系である。実施例11は、前記磁性金属相が概ね(110)配向している。実施例1〜11は平均結晶粒径が1μm以上である。実施例12、13、15〜20は平均結晶粒径が100nm以下であり(30nm以下でもある)、比較例6〜13よりも小さい。特に、実施例16〜20(Fe−Co−B−Hf−Y系)の平均結晶粒径は、実施例12〜15(Fe−Co−B−Hf系)の平均結晶粒径よりも小さく、30nm以下である。
表2から明らかなように、実施例1〜20の扁平磁性金属粒子を用いた圧粉材料は、比較例1の圧粉材料と比べて、鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比、において優れていることが分かる。つまり、磁気的特性、熱的安定性、耐酸化性、機械特性(強度、硬度)、高温機械特性(高温強度)において優れていることが分かる。また、実施例1〜11の扁平磁性金属粒子を用いた圧粉材料は、比較例2〜5の圧粉材料と比べても、鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比、において優れていることが分かる。また、実施例12〜15の扁平磁性金属粒子を用いた圧粉材料は、比較例6〜10の圧粉材料と比べても、鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比、において優れていることが分かる。つまり、磁性金属相が、Fe、Co及びSiを含む系であり、かつ、Co量、Si量がそれぞれ請求項記載の範囲に入っている場合にのみ顕著な異方性付与効果が得られ、これによって、優れた特性(鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比)が得られることが分かる。同様に、磁性金属相が、前記第1の元素と、前記添加元素としてB、Hfを含む系であり、かつ、前記添加元素の合計量、Hf量がそれぞれ請求項記載の範囲に入っている場合にのみ顕著な異方性付与効果が得られ、これによって、優れた特性(鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比)が得られることが分かる。更に、実施例12の扁平磁性金属粒子を用いた圧粉材料は、比較例10の圧粉材料と比べて、鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比、において優れていることが分かり、これらの特性に関しては、Fe−Co−B−Zr系よりもFe−Co−B−Hf系の方が好ましいと思われる(Fe−Co−B−Zr系も好ましいことは間違いないが)。また、実施例16〜20(Fe−Co−B−Hf−Y系)は、実施例12〜15(YなしのFe−Co−B−Hf系)、比較例12(Hf、YなしのFe−Co−B系)、比較例11と13(Fe−Co−B−Hf−Y系ではあるが組成範囲が請求項記載の範囲外)と比べると、鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比、において優れていることが分かる。つまり、磁気的特性、熱的安定性、耐酸化性、機械特性(強度、硬度)、高温機械特性(高温強度)において優れていることが分かる。つまり、磁性金属相が、前記第1の元素と、前記添加元素としてB、Hf、Yを含む系であり、かつ、Y量、および、YとHfの合計量がそれぞれ請求項記載の範囲に入っている場合にのみ顕著な異方性付与効果が得られ、これによって、優れた特性(鉄損、μ’の経時変化割合、経時酸化割合、強度比、硬度比、高温強度比)が得られることが分かる。
また、実施例の材料は圧粉材料であるため、複雑な形状への適用が可能である。
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。