JP2020024477A - カバー部材及びその製造方法、並びに携帯情報端末 - Google Patents

カバー部材及びその製造方法、並びに携帯情報端末 Download PDF

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Abstract

【課題】意匠性に優れ、且つ、センサ等の各種装置を容易に組み込め、その位置を容易に認識できるカバー部材、及びこれを有する携帯情報端末、並びにカバー部材の製造方法を提供すること。【解決手段】保護対象を保護するカバー部材1は、カバー部材1の第1の主面3には、第1の凹部7が設けられ、第2の主面5における第1の凹部7に対応する位置には、第2の凹部14が設けられ、第1の凹部7は、曲面状に形成された第1の底面部8を備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、カバー部材及びその製造方法、並びに携帯情報端末に関する。
近年、電子機器類における高度なセキュリティ対策として、指紋を個人の認証に用いる方法が盛んに用いられている。指紋認証の方法には、光学方式、感熱方式、圧力方式、静電容量方式、超音波方式などのセンサを使用しているが、センシング感度や消費電力の観点から静電容量方式、超音波方式のセンサが優れているとされている。
例えば、静電容量方式センサは、被検出物が接近、又は、接触した部位の局所的な静電容量の変化を検出する。一般的な静電容量方式センサは、該センサ内に配置された電極と被検出物との距離を静電容量の大きさによって測定する。また、超音波方式センサは超音波を用いることで被検出物を三次元で検出できる。この方式では、液体などの異物を透過して検出でき、セキュリティを向上した生体認証センサとして期待されている。このようなセンサを用いた指紋認証機能は、小型軽量で消費電力が低いことから、特にスマートフォンや携帯電話、タブレット型パーソナルコンピューターなどの携帯情報端末(Personal Data Assistance:PDA)に搭載されている。通常、指紋認証用センサ(以下、単にセンサと記載する場合がある)を保護するため、該センサの上部にはカバー部材が配置される。
通常、静電容量方式センサを保護するため、該センサの上部には保護カバーが配置される。例えば、特許文献1の静電容量方式センサパッケージングでは、センサが対象物を検出できるカバー部材に孔を設け、当該孔にセンサカバーを配置することが開示されている。
特許文献2には、携帯機器用カバー部材として、文字又は図形を利用者に認識させるための凹部がカバー部材の主表面に形成されている。ここで、凹部のヘイズ値(曇り度)を高くすることにより、凹部の視認性を向上させている。また、凹部の表面粗さRaを主表面平坦部の表面粗さRaよりも大きくしている。これにより、凹部と主表面平坦部との手触りの差によって、凹部を認識させる触覚性を向上させている。
国際公開第2013/173773号 特開2013−137383号
しかしながら、特許文献1に記載された発明のように、カバー部材に孔を設け、当該孔にセンサカバーを配置する構成では、センサカバーを孔に固定する治具等が必要となるため、部品点数が多くなり、組立工程も複雑化してしまう。また、カバー部材の他にセンサカバー等の異種材料が必要となるため、材料的な統一感を実現することが困難であり、意匠性に劣っていた。
また、例えば、特許文献2の携帯機器用カバー部材においては、カバー部材表面に凹部を形成することが開示されているが、文字又は図形を利用者に認識させるため、凹部表面を粗らしたものであり、該凹部反対面にセンサを配置することは意図されていない。仮に、特許文献2の携帯機器用カバー部材において、凹部と対応する位置にセンサを配置した場合、凹部のヘイズ値が高く、凹部の表面粗さRaが大きいため不都合が生じる。すなわち、当該凹部の表面が粗れているため、センサ電極と被検出物との距離が不均一になり、検出される静電容量も不均一になってしまう。この場合、センサ感度が低下してしまい、所望の機能を発揮できない可能性がある。
本発明の目的は、意匠性に優れ、且つ、センサ等の各種装置を容易に組み込め、その位置を容易に認識できるカバー部材、及びこれを有する携帯情報端末、並びにカバー部材の製造方法を提供することにある。
本発明のカバー部材は、保護対象を保護するカバー部材であって、前記カバー部材の第1の主面には、第1の凹部が設けられ、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置には、第2の凹部が設けられ、前記第1の凹部は、曲面状に形成された第1の底面部を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、第2の凹部にセンサ等の装置を配置した場合、第1の凹部と第2の凹部とで挟まれる部分によって当該装置を保護できるので、上記特許文献1と異なりセンサカバー等の異種材料を併用することなく、材料的に一様で統一感のある意匠性に優れたカバー部材を実現できる。また、部材点数が少なく済み、組立工程を簡略化できるので、コストを削減できる。さらに、第2の凹部にセンサ等の装置を配置した場合、第2の凹部に対向する第1の凹部がカバー部材の表面に設けられているので、当該装置の位置を視覚や触覚等により容易に認識できる。特に、第1の凹部における第1の底面部を曲面状に形成したため、当該第1の底面部を第1の主面と同じ平面状に形成する場合と比べて、装置の位置を触覚により容易に認識できる。また、センサ等の装置を利用者に認識させるために、第1の凹部を粗らす必要がないため、センサ電極と被検出物との距離を均一にでき、センサ感度の低下を抑制できる。
本発明のカバー部材において、前記第1の底面部は、前記第1の主面側に突出する曲面状であり、前記第1の凹部は、当該第1の凹部の開口縁と前記第1の底面部の外縁とを接続する第1の接続面部を備えていることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第1の底面部は、前記第2の主面側に突出する曲面状であることが好ましい。
本発明のこの態様では、利用者の指が第1の底面部に密着しやすくなり、装置認識時の違和感を低減できる。
本発明のカバー部材において、前記カバー部材の厚さ方向の断面視における前記第1の底面部の両端を結ぶ直線を第1の基準線L1、前記第1の基準線L1から最も離れた前記第1の底面部上の点を第1の点A1とした場合、前記第1の基準線L1から前記第1の点A1までの距離H1が5μm以上であることが好ましい。
本発明の上記の態様では、利用者が第1の底面部に接触しやすくなり、装置の位置をさらに容易に認識できる。
本発明のカバー部材において、前記カバー部材の厚さ方向の断面視における前記第1の底面部の両端を結ぶ直線を第1の基準線L1、前記第1の基準線L1から最も離れた前記第1の底面部上の点を第1の点A1、前記第2の凹部における前記第1の点A1に対応する点を対応点B2とした場合、前記第1の主面から前記第1の点A1までの深さJ1と前記第2の主面から前記対応点B2までの深さJ2との差の絶対値が0.1μm以上である
ことが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第2の凹部における前記第1の底面部に対応する位置には、曲面状の第2の底面部が設けられていることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第2の底面部は、前記第2の主面側に突出する曲面状であり、前記第2の凹部は、当該第2の凹部の開口縁と前記第2の底面部の外縁とを接続する第2の接続面部を備えていることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第2の底面部は、前記第1の主面側に突出する曲面状であることが好ましい。
本発明の上記の態様では、カバー部材の厚さ方向中心に対して、第2の凹部の形状を第1の凹部と対称的に形成すれば、第1の主面側、第2の主面側のどちらに保護対象を設けても同じように保護でき、カバー部材の管理や設置作業が容易になる。
本発明のカバー部材において、前記カバー部材の厚さ方向の断面視における前記第2の底面部の両端を結ぶ直線を第2の基準線L2、前記第2の基準線L2から最も離れた前記第2の底面部上の点を第2の点A2とした場合、前記第2の基準線L2から前記第2の点A2までの距離H2が5μm以上であることが好ましい。
本発明のカバー部材において、前記第2の凹部における前記第1の底面部に対応する位置には、前記第1の底面部と同じ方向に曲面状に突出する第2の底面部が形成され、当該第2の底面部と前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部が構成されることが好ましい。
本発明のこの態様では、第1の底面部と第2の底面部とが重なる箇所でのお互いの接線はほぼ平行となり薄肉部の厚さがある範囲内に収まる。そのため例えば静電容量式センサを配置した場合に、良好なセンシング感度が得られる。
本発明のカバー部材において、前記カバー部材の平面視において前記第1の凹部が前記第2の凹部と重なることが好ましい。
本発明のこの態様では、第1の凹部と第2の凹部とが設けられたガラス基板を化学強化するに際し、平面視における第1,第2の凹部の形状を適切な位置関係に形成するだけで第1の底面部が曲面状のカバー部材を得られる。
本発明のカバー部材において、前記カバー部材の平面視における前記第1の凹部の重心位置と前記第2の凹部の重心位置との距離が100μm以下であることが好ましい。
本発明のこの態様では、平面視における第1,第2の凹部の位置ずれが小さくなり、良好な外観を得られる。
本発明のカバー部材において、前記第1の主面および前記第2の主面におけるカリウムイオン濃度が前記カバー部材の厚さ方向中央におけるカリウムイオン濃度よりも高いことが好ましい。
本発明のこの態様によれば、強度が高いカバー部材を得られる。
本発明のカバー部材において、前記保護対象は、携帯情報端末であることが好ましい。
本発明の携帯情報端末は、上述のカバー部材を有する。
本発明の上記の態様によれば、カバー部材で保護された携帯情報端末を得られる。
本発明のカバー部材の製造方法は、
保護対象を保護するカバー部材をガラス基板から製造するカバー部材の製造方法であって、前記ガラス基板の第1の主面に第1の凹部を形成するとともに、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置に第2の凹部を形成し、前記第1の凹部および前記第2の凹部が形成された前記ガラス基板を化学強化し、前記凹部を形成する際に、前記第1の凹部が、平面状の第1の底面部を備え、前記第2の凹部が、前記第1の底面部に対応する位置に設けられ、前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部を構成する平面状の第2の底面部を備え、平面視において前記第1の凹部が前記第2の凹部と重なるように処理を行うことを特徴とする。
本発明のカバー部材の製造方法は、保護対象を保護するカバー部材をガラス基板から製造するカバー部材の製造方法であって、前記ガラス基板の第1の主面に第1の凹部を形成するとともに、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置に第2の凹部を形成し、前記第1の凹部および前記第2の凹部が形成された前記ガラス基板を化学強化し、前記凹部を形成する際に、前記第1の凹部が、平面状の第1の底面部と、前記第1の凹部の開口縁と前記第1の底面部の外縁とを接続する第1の接続面部とを備え、前記第2の凹部が、前記第1の底面部に対応する位置に設けられ、前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部を構成する平面状の第2の底面部と、前記第2の凹部の開口縁と前記第2の底面部の外縁とを接続する第2の接続面部とを備え、前記第1の底面部の深さと前記第2の底面部の深さとが異なるように処理を行うことを特徴とする。
本発明の上記の態様によれば、ガラス基板を化学強化するだけで第1,第2の底面部が第1の主面側又は第2の主面側に曲面状に曲がったカバー部材を得られる。
本発明のカバー部材の製造方法は、保護対象を保護するカバー部材をガラス基板から製造するカバー部材の製造方法であって、前記ガラス基板の第1の主面に第1の凹部を形成するとともに、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置に第2の凹部を形成し、前記凹部を形成する際に、前記第1の凹部が、前記第1の主面側に突出する曲面状の第1の底面部を備え、前記第2の凹部が、前記第1の底面部に対応する位置において前記第1の主面側に突出する曲面状に形成し、前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部を構成する第2の底面部を備えるように処理を行うことを特徴とする。
本発明のこの態様によれば、ガラス基板を化学強化することなく、第1,第2の底面部が第1の主面側に曲面状に曲がったカバー部材を得られる。
本発明の一実施形態に係るカバー部材の構成を示し、(A)は厚さ方向の断面図、(B)は第1の主面側からの平面図、(C)は第2の主面側からの平面図。 (A)は図1(B)のIIA−IIA線に沿う断面図、(B)は図1(B)のIIB−IIB線に沿う断面図。 センサを配置したカバー部材の断面図。 (A)は他の例におけるカバー部材の断面図、(B)はさらに他の例におけるセンサを配置したカバー部材の断面図。 (A),(B)はそれぞれさらに他の例におけるセンサを配置したカバー部材の断面図。 (A)〜(C)はさらに他の例におけるカバー部材の断面図。 カバー部材の製造方法の説明図であり、(A)カバー部材の第1の主面側からの平面図、(B)は第1,第2のマスク部材の平面図、(C)は平板状の薄肉部を備えたカバー部材の断面図。 異なる条件で化学強化した場合のCS−DOLプロファイルをそれぞれ示す図。 異なる条件で二段階の化学強化を実施した場合のCS−DOLプロファイルを示す図。 交点Qの求め方の説明図。 筐体に組み込まれたカバー部材の断面図。 防眩処理層を施したカバー部材を示し、(A)は平面図、(B)はB−B線に沿う断面図、(C)はB−B線に沿う他の例の断面図。 防眩処理層を施した他の例のカバー部材を示し、(A)は平面図、(B)はB−B線に沿う断面図、(C)はB−B線に沿う他の例の断面図。 (A)〜(D)はそれぞれ防指紋コート層を施したカバー部材の断面図。 (A)〜(D)はそれぞれ防指紋コート層を施した他の例のカバー部材の断面図。 (A)、(B)はそれぞれ印刷層が設けられたカバー部材の断面図。 複数のカバー部材を得られるガラス基板の平面図。 (A)は図17のXVIIIA部分の拡大図、(B)はXVIIIB部分の拡大図。 (A)はガラス基板の平面図、(B)は他の例の第1,第2のマスク部材の平面図。 (A)はさらに他の例の第1,第2のマスク部材の平面図、(B)は(A)の第1,第2のマスク部材を用いた処理により得られたガラス基板平面図。 他の例のガラス基板の平面図 (A)〜(D)は実施例3におけるカバー部材に印刷層を形成する順序の説明図であり、カバー部材を第2の主面側から見た図。 実施例6における携帯情報端末の断面図。 (A)〜(D)は、実施例7における化学強化シミュレーション前の例1〜4のカバー部材の断面図。 実施例7における化学強化シミュレーション後のカバー部材の断面図。
以下、本発明の一実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。また、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形及び置換等を加えられる。
(カバー部材の構成)
本実施形態に係るカバー部材は、任意の保護対象を保護するために用いられる。以下、カバー部材の保護対象はスマートフォン等の携帯情報端末であるとして説明するが、保護対象としては任意の対象が適用可能である。例えば液晶パネルやELパネル等の表示パネルと組み合わせた表示装置に適用できる。特に車載用ディスプレイ用の大型カバー部材を効率的に作製できる方法としても優れている。
図1(A)〜(C)に示すように、本実施形態のカバー部材1は、全体として平板状の略直方体であり、図1上側の第1の主面3と、第1の主面3に対向する図1下側の第2の主面5と、を有する。本実施形態において、第1の主面とは、カバー部材1を含む組立体(アセンブリ)の外側の面、すなわち通常の使用状態において使用者が触れられる面をいう。また、第2の主面とは、組立体の内側の面、すなわち通常の使用状態において使用者が触れられない面をいう。また、以下の説明において、カバー部材1の長手方向をX方向とし、短手方向をY方向とし、厚み方向をZ方向とする。
なお、カバー部材1は、屈曲部を1つ以上有するガラスでもよい。また、第1の主面が使用者に触れられない面で、第2の主面が使用者に触れられる面であってもよい。
カバー部材1の第1の主面3には、少なくとも一つの第1の凹部7が設けられている。カバー部材1の第2の主面5における第1の凹部7に対応する位置には、第2の凹部14が設けられている。図1(A)〜(C)には、カバー部材1の第1,第2の主面3,5に、それぞれ一つずつの第1,第2の凹部7,14が設けられた例が示されている。第1,第2の凹部7,14は、カバー部材1のX方向端部近傍で且つY方向中央部近傍に形成される。第1,第2の凹部7,14は、−Z方向、+Z方向からそれぞれ見たとき、Y方向の長さがX方向よりも長い長円状に形成されている。
なお、第1,第2の凹部7,14が形成される位置は、両者がZ方向に対向して(XY平面において重なって、すなわち平面視において第1の凹部7と第2の凹部14が重なって)いる限り、任意の位置に設定して構わない。カバー部材1の平面視における第1の凹部7の重心位置と第2の凹部14の重心位置との距離は、第1,第2の凹部7,14の位置ずれを目立たなくなるようにするために、100μm以下であることが好ましい。カバー部材1が屈曲部を1つ以上有する場合、この屈曲部に第1,第2の凹部7,14が形成されてもよい。また、第1,第2の凹部7,14の数や形状等も任意である。
図2(A),(B)にも示すように、第1の凹部7は、第1の主面3側に曲面状に突出する第1の底面部8と、当該第1の凹部7の開口縁と第1の底面部8の外縁とを接続する第1の接続面部11とを備えている。なお、第1の底面部8の外縁とは、第1の凹部7が第1の接続面部11を備える場合、断面視において第1の主面3側に突出する部分における最も第2の主面5側に位置する部分である。第1の底面部8は、長円状の領域であり、第1の接続面部11は、第1の底面部8を囲む長円環状の領域である。第1の接続面部11は、第1の底面部8と第1の主面3とを滑らかに接続する曲面状(R形状)とされている。
第1の接続面部11の曲率半径は、第1の底面部8側から第1の凹部7の開口縁側に向かうにしたがって大きくなるのが好ましい。この構成により、第1の底面部8と第1の接続面部11との接続部における応力集中が緩和され、強度が向上する。特に、第2の凹部14に指紋認証用センサ40(センサ40)が配置される場合(図3参照)には、認証のたびに薄肉部21に指を押し当てることになるため、上記接続部には繰り返し力がかかるので、形状的にその部分の応力集中を抑制する効果がある。
第2の凹部14は、第1の主面3側に突出する曲面状の第2の底面部15を構成している。第2の底面部15は、第2の薄肉部構成部分16と、第2の接続部構成部分17とを備えている。第2の薄肉部構成部分16は、平面視で第1の底面部8と重なるように設けられ、当該第1の底面部8に対応する曲面状に形成されている。第2の接続部構成部分17は、平面視で第1の接続面部11と重なるように設けられ、第2の薄肉部構成部分16の外縁と第2の底面部15の外縁とを接続する。なお、第2の薄肉部構成部分16とは、平面視で第1の底面部8の外縁と重なる部分である。
このような第1,第2の凹部7,14が設けられることにより、カバー部材1には、薄肉部21と、厚肉部22と、接続部23とが形成される。薄肉部21は、第1の底面部8と第2の薄肉部構成部分16とで挟まれる曲板状の部分である。厚肉部22は、第1,第2の主面3,5における第1,第2の凹部7,14が設けられていない領域で挟まれる部分である。接続部23は、第1の接続面部11と第2の接続部構成部分17とで挟まれる領域であって、薄肉部21と厚肉部22とを接続する部分である。
このようなカバー部材1は、携帯情報端末や表示装置の任意の面(例えば前面や側面)を保護するために筐体等に組み込まれる際、第2の凹部14に指紋認証用などのセンサ、や液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネル、照明、カメラ等の各種装置を配置できるので、スペース効率を向上させられる。センサとしては、指紋、虹彩、静脈などの生体認証センサが挙げられ、センシング方式として静電容量式、光学式、赤外線式、超音波式などのセンサが知られており、その他に照度センサ、温度センサ等が挙げられる。ここで、第2の凹部14に組み込んだ装置は、Z方向に対向する薄肉部21によって保護されるので、上述した特許文献1の発明と異なりセンサカバー等の異種材料を併用することなく、材料的に一様で統一感のある意匠性に優れたカバー部材1を実現できる。また、部材点数が少なく済み、組立工程を簡略化できるので、コスト削減にも多大な効果がある。さらに別部材を組み込むためのカバー部材開口が減らせるため、防水・防滴性の付与が容易になる。さらに、厚肉部22が平面形状であるのに対し、表面側から見て薄肉部21が凹入しているため、携帯情報端末の使用者は、薄肉部21の位置、並びに当該薄肉部21の裏側の各種装置の位置を、視覚や触覚等により容易に認識できる。特に、第1の凹部7における第1の底面部8を第1の主面3側に突出する曲面状に形成したため、各種装置の位置を触覚により容易に認識できる。
第1,第2の凹部7,14は、研削加工等の機械加工や熱プレスや真空成形等の成形工程によっても設けられるが、エッチングにより設けられることが好ましい。エッチングによれば、微細な傷や欠点が取り除かれ、カバー部材1の強度が向上する。また、エッチングによれば、薄肉部21のZ方向厚さの制御が容易であり、しかも一工程で完了する。
第1,第2の底面部8,15で挟まれる曲板状の薄肉部21は、研削加工等の機械加工によっても設けられるが、化学強化により設けられることが好ましい。化学強化によれば、第1,第2の凹部7,14の形状差で生じる表面膨張を利用して薄肉部21を反らせ、第1,第2の底面部8,15を曲面状に容易に形成できる。
なお、図3に示すように、第1の凹部7と第1の主面3との接続部分P1及び第2の凹部14と第2の主面5との接続部分P2も滑らかに連続する曲面状とすることが好ましい。当該接続部分P1,P2をエッジのない曲面状とすることにより、落下や外部の堅い部材との接触による欠けや破損を生じにくくする効果がある。当該接続部分P1,P2を滑らかに連続する曲面状とするには、第1,第2の凹部7,14形成後に接続部分P1,P2をバフ研磨等により仕上げられる。しかし、第1,第2の凹部7,14がウェットエッチングによって設けられる場合には、エッチング工程後、ガラス基板をエッチャントから分離しマスクを剥離・洗浄するまでの時間を通常より長く保持することによっても、上記接続部分P1,P2を滑らかに連続する曲面状とできる。エッチングによって形成された第1,第2の凹部7,14とマスクとの境界部分にエッチャントが表面張力により残存し、残存したエッチャントに接する第1,第2の凹部7,14と第1,第2の主面3,5との接続部分P1,P2でわずかながらエッチングが進行するため、当該接続部分P1,P2のエッジが滑らかな連続曲面となる。そのための保持時間は、使用するエッチャントとガラス基板のエッチング耐性とにより数秒から数十分の間で調整する。
なお、第1,第2の凹部7,14のうち、指を接触させる第1の凹部7は、第1の接続面部11を上述したような滑らかな曲面状とすることが好ましいが、例えば、図4(A)に示すように、第1の凹部7Aを第1の底面部8Aと、Z方向に延びる(XY平面と垂直な)平面状の第1の接続面部11Aとで構成し、第2の凹部14Aを第1の底面部8Aに対応する曲面状の第2の底面部15Aと、Z方向に延びる平面状の第2の接続面部18Aとで構成してもよい。その場合、第1の接続面部11Aと第1の主面3とは互いに垂直に接続され、第2の接続面部18Aと第2の主面5とも互いに垂直に接続される。
そして、第1の底面部8Aと第2の底面部15Aとで挟まれる部分は、薄肉部21Aを構成する。第1,第2の主面3,5における第1,第2の凹部7A,14Aが設けられていない領域で挟まれる部分は、厚肉部22Aを構成する。
第1の接続面部11Aの高さT1と第2の接続面部18Aの高さT2とは同じであってもよい。
本実施形態のように、第2の凹部14にセンサ40が配置される場合、薄肉部21を構成する第1の底面部8の算術平均粗さRaは、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。静電容量方式センサや超音波方式センサ等のセンサ40は、図3に示すように、接着層41を介して第2の凹部14(薄肉部21を構成する第2の底面部15)に配置されると共に、第1の底面部8に当接した被検出物(例えば指)を検出する。なお、センサ40が筐体等に固定される場合には、上記接着層41を設けなくても良い。したがって、第1の底面部8の算術平均粗さRaが50nm以下であると、指の指紋の凹凸の程度と比べて十分に小さくなるため、センシング感度が高くなる点で好ましい。また、このような構成においては、表示装置や携帯情報端末の使用者は、第1の凹部7によって、薄肉部21の位置及び薄肉部21の第2の凹部14側に配置されたセンサ40の位置を、視覚や触覚等により容易に認識できる。また、第1の底面部8の算術平均粗さRaの下限は、特に限定されないが、好ましくは2nm以上であり、より好ましくは4nm以上である。なお、第1の底面部8の算術平均粗さRaは、研磨砥粒や研磨方法等の選択により調整できる。
算術平均粗さRaは、日本工業規格 JIS B0601に基づいて測定できる。
図3に示すように、センサ40が接着層41を介して第2の凹部14に配置される場合、センサ40の裏面が第2の主面5から突出しないことが好ましい。この場合、第2の凹部14に接着層41とセンサ40とが収納され保護対象と組み合わせやすくなる。
薄肉部21を構成する第2の底面部15の算術平均粗さRaは、より好適には第1の底面部8と同様に、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。第2の底面部15の算術平均粗さRaが50nm以下であると、指の指紋の凹凸の程度と比べて十分に小さくなり、センシング感度が高くなる点で好ましい。
また、図3に示すように、カバー部材1の厚さ方向の断面視における第1の底面部8の両端を結ぶ直線を第1の基準線L1、第1の基準線L1から最も離れた点である第1の底面部8の頂点を第1の点A1とした場合、第1の基準線L1から第1の点A1までの距離H1は5μm以上が好ましい。距離H1を5μm以上にすることで、利用者が第1の底面部8を容易に認識できる。また、第1の底面部8の頂点(第1の点A)は、第1の主面3よりも下方(カバー部材内部側)に位置することが好ましい。
さらに、第1の点A1に対応する(薄肉部21における第1の点A1の反対側に位置する)第2の底面部8上の点を対応点B2とした場合、第1の主面3から第1の点A1までの深さJ1と第2の主面5から対応点B2までの深さJ2との差の絶対値が0.1μm以上であることが好ましい。深さJ1と深さJ2との差の絶対値は、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらにこのましい。これにより後述の化学強化により薄肉部21を曲面化が顕著となり、使用者が触覚だけで位置を容易に判断できる。
また、図4(B)に示すように、図3に示す構成を上下反転した構成としてもよい。この構成では、第1の凹部7Bの第1の底面部8B、第1の薄肉部構成部分9B、第1の接続部構成部分10Bが、図3における第2の底面部15、第2の薄肉部構成部分16、第2の接続部構成部分17に対応し、第2の凹部14Bの第2の底面部15B、第2の接続面部18Bが、図3における第1の底面部8、第1の接続面部11に対応し、薄肉部21B、厚肉部22B、接続部23Bが設けられる。そして、センサ40Bが薄肉部21Bの第2の凹部14B側に配置される。
すなわち、第1の底面部8Bは、第2の主面5側に突出する曲面状となる。また、第2の底面部15Bは、第2の主面5側に突出する曲面状となる。第2の凹部14Bは、当該第2の凹部14Bの開口縁と第2の底面部15Bの外縁とを接続する第2の接続面部18Bを備える。
この際、カバー部材1の厚さ方向の断面視における第2の底面部15Bの両端を結ぶ直線を第2の基準線L2、第2の基準線L2から最も離れた点である第2の底面部15Bの頂点を第2の点A2とした場合、第2の基準線L2から第2の点A2までの距離H2が5μm以上であることが好ましい。
また、第1,第2の凹部は、同一形状である必要はなく、互いに面積や形成等が異なっていても構わない。これにより、配置されるセンサ等の装置に合わせて、第2の凹部の大きさを適宜変更できる。
例えば、図5(A)に示すように、第1の主面3の第1の凹部7CのY方向及びX方向の長さを第2の主面5の第2の凹部14CのY方向及びX方向の長さよりも長くして、すなわちカバー部材1の平面視において、第1の凹部7Cの外縁が第2の凹部14Cの外縁より外側に位置するようにしてもよい。
この場合、第1の凹部7Cは、第1の主面3側に突出する曲面状の第1の底面部8Cと、当該第1の凹部7Cの開口縁と第1の底面部8Cの外縁とを接続する第1の接続面部11Cを備えている。第1の底面部8Cは、当該第1の底面部8Cの中央に位置する第1の薄肉部構成部分9Cと、第1の薄肉部構成部分9Cを囲む第1の接続部構成部分10Cとを備えている。
第2の凹部14Cは、第1の主面3側に突出する曲面状の第2の底面部15Cを備えている。第2の底面部15Cは、第2の薄肉部構成部分16Cと、第2の接続部構成部分17Cとを備えている。第2の薄肉部構成部分16Cは、第1の薄肉部構成部分9Cに対応する曲面状に形成されている。
そして、第1の薄肉部構成部分9Cと第2の薄肉部構成部分16Cとで挟まれる厚さが一定の曲板状の部分は、薄肉部21Cを構成する。第1,第2の主面3,5における第1,第2の凹部7C,14Cが設けられていない領域で挟まれる部分は、厚肉部22Cを構成する。第2の主面5における第1の接続部構成部分10C及び第1の接続面部11Cと対向する領域を第2の凹部対向部分5Cとした場合、第1の接続部構成部分10C及び第1の接続面部11Cと、第2の接続部構成部分17C及び第2の凹部対向部分5Cとで挟まれる領域は、薄肉部21Cと厚肉部22Cとを接続する接続部23Cを構成する。
このような構成では、Y方向及びX方向において、センサ40Cの寸法を第1の凹部7Cの寸法よりも小さくできる。ここで、センサ40Cは、センシングを行うセンサ本体46Cと、センサ本体46CのXY方向における外周を支持固定する筐体47Cとを有する。したがって、センサ40C全体の寸法を第1の凹部7Cの寸法よりも小さくし、当該センサ40Cを薄肉部21Cの第2の凹部14C側に配置することで、薄肉部21Cを補強できる。
また、図5(B)に示すように、図5(A)に示す構成を上下反転した構成としてもよい。この構成では、第1の凹部対向部分3D、第1の凹部7Dの第1の底面部8D、第1の薄肉部構成部分9D、第1の接続部構成部分10Dが、図5(A)の第2の凹部対向部分5C、第2の凹部14Cの第2の底面部15C、第2の薄肉部構成部分16C、第2の接続部構成部分17Cに対応し、第2の凹部14Dの第2の底面部15D、第2の薄肉部構成部分16D、第2の接続部構成部分17D、第2の接続面部18Dが、図5(A)の第1の凹部7Cの第1の底面部8C、第1の薄肉部構成部分9C、第1の接続部構成部分10C、第1の接続面部11Cに対応し、薄肉部21D、厚肉部22D、接続部23Dが設けられる。また第1の凹部7Dの外縁が第2の凹部14Dの外縁より内側に位置する。
このような構成でも、センサ40D全体の寸法を第1の凹部7Dの寸法よりも大きくし、当該センサ40Dを薄肉部21Dの第2の凹部14D側に配置することで、薄肉部21Dを補強できる。ここで、センサ本体46Dの寸法は、適切にセンシングを行うために、第1の凹部7D全体の寸法よりも小さいことが好ましい。すなわち、第1の凹部7D全体の寸法は、センサ本体46Dの寸法よりも大きく、且つセンサ40D全体の寸法より小さいことが好ましい。
また、第1の凹部の外縁の少なくとも一部が第2の凹部の外縁より内側又は外側に位置するようにしてもよい。
また、図6(A)に示すように、第2の凹部14Eを、平面状の第2の底面部15Eと、第2の接続面部18Eとで構成し、第1の底面部8と第2の底面部15Eとで挟まれる薄肉部21Eを形成してもよい。この場合、第1の接続面部11と第2の接続面部18Eとで挟まれる接続部23Eと、薄肉部21E及び接続部23E以外の部分で構成される厚肉部22Eとが設けられる。
また、図6(B)に示すように、第2の凹部14Fを、第2の主面5側に曲面状に突出する第2の底面部15Fと、第2の接続面部18Fとで構成し、第1の底面部8と第2の底面部15Fとで挟まれる薄肉部21Fを形成してもよい。この場合、第1の接続面部11と第2の接続面部18Fとで挟まれる接続部23Fと、薄肉部21F及び接続部23F以外の部分で構成される厚肉部22Fとが設けられる。
さらに、図6(C)に示すように、第1の凹部7Gを、第2の主面5側に曲面状に突出する第1の底面部8Gで構成し、第2の凹部14Gを第1の主面3側に突出する第2の底面部15Gで構成してもよい。
以下、カバー部材の好ましい形態について、図1,2に示す構成を例示して説明するが、図4〜6の構成にも同様に適用できる。
薄肉部21のヘイズ値(曇り度)は、16%以下が好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましい。薄肉部21のヘイズ値を16%以下とすることで、薄肉部21を構成する第1,第2の底面部8,15の表面平坦性とカバー部材1の美観性を両立できる。すなわち、薄肉部21のヘイズ値が16%以下であり第1,第2の底面部8,15の表面平坦性が高いので、上述したように第2の凹部14にセンサ40が配置された場合であっても、所望のセンシング能力を実現できる。ただし、薄肉部21に表示パネルを配置する場合には、後述の防眩処理を行うことがある。このときのヘイズ値は、上記範囲に限らない。
また、薄肉部21の表面平坦性は、薄肉部21の第2の底面部15に印刷した場合に印刷層の表面平坦性に影響を及ぼす。薄肉部21のヘイズ値を16%以下とすることで、センサ感度に影響の出ない表面平坦性を確保でき、後述する印刷層の美観を優れたものにできる。一方、薄肉部21のヘイズ値が16%より大きい場合には、薄肉部21の最表面にできた凹凸に、印刷に用いたインクが入りきらず、カバー部材1を保護対象に実装した後に外観が悪くなる。
また、薄肉部21のヘイズ値を16%以下とし、当該薄肉部21の透過率を高めることで、薄肉部21と厚肉部22との間に統一感があり、全体として美観性に優れたカバー部材が実現できる。
なお、厚肉部22のヘイズ値は5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.2%以下が特に好ましい。このように、エッチング処理等により形成される薄肉部21に比べ、厚肉部22は高い表面平坦性及び透過率を有している。したがって、仮に薄肉部21のヘイズ値が16%より大きい場合、高い透過率を有する厚肉部22に対し、薄肉部21が曇ってしまい、カバー部材1全体としての意匠性が悪化してしまう。ただし、厚肉部22に表示パネルを配置する場合には、後述の防眩処理を行うことがある。このときのヘイズ値は、上記範囲に限らない。
なお、薄肉部21のヘイズ値は、第1,第2の凹部7,14を設ける際のエッチング条件等により調整できる。ヘイズ値は、日本工業規格 JIS K7136に基づいて測定できる。
カバー部材1は化学強化ガラスであることが好ましい。化学強化されたカバー部材1は、薄肉部21及び厚肉部22の表面、すなわち第1,第2の主面3,5全体に圧縮応力層が形成されているため、高い機械的強度を得られる。
ここで、化学強化されたガラスの内部引張応力(CT:Central Tension)は一般に、板厚tと、圧縮応力層の表面圧縮応力CS(Compressive Stress)と、圧縮応力層の深さDOL(Depth Of Layer)と、によって、関係式CT=(CS×DOL)/(t−2×DOL)により近似的に求められる。したがって、同じCSで、且つ同じDOLの場合、板厚が小さいほどCTが大きくなる。薄肉部21と厚肉部22を有するカバー部材1のように部分的に板厚の異なる部分があるガラスに対し、一般的なアルカリ金属溶融塩に浸漬する化学強化を行うと、第1の主面3及び第2の主面5から等方的にイオン交換され、部分的な板厚差に関わらず同じCS、同じDOLとなる。このとき、通常の平坦なカバー部材に行われるような条件で化学強化を行うと、薄肉部21のCTが過剰に大きくなり自爆破壊のおそれが高くなる。一方、薄肉部21が破壊しない程度のCS、DOLに合せた条件で全体を化学強化すると、強化としては弱い化学強化とならざるを得ず、厚肉部22の強度が、薄肉部21を持たない平坦なカバー部材に較べて弱くなる。したがって、厚肉部22には通常の平坦なカバー部材と同等のCS、DOLを与えつつ、薄肉部21には、当該薄肉部21が破壊しない程度のCS、DOLを与えることが好ましい。すなわち、厚肉部22に形成された圧縮応力層の深さよりも、薄肉部21に形成された圧縮応力層の深さの方が小さいことが好ましい。
より具体的には、厚肉部22のCSは、好ましくは400MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上、さらに好ましくは600MPa以上とし、DOLは、好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上とする。厚肉部22のCSは、好ましくは1300MPa以下、さらに好ましくは1200MPa以下、さらに好ましくは1100MPa以下とし、DOLは、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下とする。また、薄肉部21のCSは、好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは400MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上とし、DOLは、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上とする。また、薄肉部21のCSは、好ましくは1300MPa以下、さらに好ましくは1200MPa以下、さらに好ましくは1100MPa以下とし、DOLは、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下とする。これによって、厚肉部22には、凹部を持たない通常の平坦なカバー部材と同等の強度をもたせつつ、薄肉部21には、可能な範囲で必要な強化を与えられる。本実施形態の場合、薄肉部21は第1の主面3及び第2の主面5から凹入した位置にあるため、カバー部材1を使用した機器を落下させたような場合でも、薄肉部21が直接床面(地面)に接触する確率が低く、薄肉部21が厚肉部22よりも低いCS、DOLであっても破損しにくい。このように薄肉部21と厚肉部22のCS、DOLを異ならせる方法については後述する。
カバー部材1は、平滑性を高めるため、第1の主面3及び第2の主面5が研磨加工されることが好ましい。例えば、スエードパッドを用いて、酸化セリウム又はコロイダルシリカ含む研磨スラリーを研磨剤として行うと、カバー部材1の第1,第2の主面3,5に存在する傷(クラック)やカバー部材1の撓みや凹みを除去でき、カバー部材1の強度が向上する。当該研磨は、カバー部材1の化学強化前後どちらで行っても良いが、化学強化後に行うことが好ましい。なぜならば、イオン交換による化学強化を施したガラス板は、その第1の主面及び第2の主面に欠陥が発生する。また、最大で1μm程度の微細な凹凸が残留することがある。ガラス板に力が作用する場合、前述の欠陥や微細な凹凸が存在する箇所に応力が集中し、理論強度よりも小さな力でも割れることがある。そのため、化学強化後のガラス板の最表面に存在する、欠陥及び微細な凹凸を有する層(欠陥層)を研磨により除去する。なお、欠陥が存在する欠陥層の厚さは、化学強化の条件にもよるが、通常、0.01〜0.5μmである。
なお、研磨は厚肉部22のみ実施してもよい。この場合、第2の主面5側にセンサや表示パネルを配置した場合のセンシング感度の向上、視認性の向上などの効果が得られる。また厚肉部22がカバー部材1全体の強度に関わるため、欠陥を研磨加工により除くことでカバー部材1の強度を向上できる。化学強化後のカバー部材1の厚肉部22を研磨する場合、第1,第2の凹部7,14の圧縮応力層の深さ(DOL)が厚肉部22に比べ深くなる。すなわち薄肉部21の強度を維持したカバー部材1が得られる。
また、研磨を第1,第2の凹部7,14に実施してもよい。この場合、第1,第2の凹部7,14にセンサや表示パネルを配置した場合のセンシング感度の向上、視認性の向上などの効果が得られる。化学強化後のカバー部材1の第1,第2の凹部7,14を研磨する場合、厚肉部22の圧縮応力層の深さ(DOL)が薄肉部21に比べ深くなる。第1,第2の凹部7,14形成時にできた異質層を研磨により除去することで、後述する防汚層を形成しやすくなる。
また、上述したように、本実施形態のカバー部材1は携帯情報端末の保護用途に限定されないが、特に携帯情報端末、表示パネルなどの表示装置の保護のために用いられる場合、厚肉部22のZ方向厚みは、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下さらに好ましく、0.8mm以下が特に好ましい。なぜなら、5mmよりも厚い場合、薄肉部21との厚みの差が大きくなり、加工が困難になるほか、例えば携帯情報端末の使用には質量増になるからである。また、厚肉部22のZ方向厚みは、その剛性を高めるため、0.1mm以上であり、0.15mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。0.1mmより薄い場合、剛性が低くなり過ぎ、携帯情報端末の保護の用をなさない恐れがある。
また、薄肉部21のZ方向最大厚みは、1mm以下であり、0.4mm以下が好ましく、0.35mm以下がより好ましく、0.3mm以下がさらに好ましく、0.25mm以下が特に好ましく、0.2mm以下がとりわけ好ましく、0.1mm以下が最も好ましい。特に、薄肉部21の第2の凹部14側に静電容量式センサが配置された場合、薄肉部21が薄いほど、検出される静電容量が大きくなり、センシング感度が向上する。例えば、指先の指紋の微細な凹凸を検出する指紋認証の場合にも、指先の指紋の微細な凹凸に応じた静電容量の差が大きくなるため、高いセンシング感度で検出できる。一方、薄肉部21のZ方向厚みの下限は、特に限定されないが、薄肉部21が過度に薄くなると、強度が低下し、センサ等の保護部としての適切な機能を発揮し難くなる傾向がある。したがって、薄肉部21のZ方向厚みは、例えば0.01mm以上であり、0.05mm以上が好ましい。
薄肉部21のZ方向厚みに対して、厚肉部22のZ方向厚みは10倍以下が好ましく、より好ましくは8倍以下である。薄肉部21のZ方向厚みに対して、厚肉部22のZ方向厚みが10倍超であると、加工に困難が生じる恐れがある。薄肉部21のZ方向厚みに対する、厚肉部22のZ方向厚みの比率は特に下限値はなく、用途に応じて設定できる。携帯情報端末の保護用途では、典型的に1.5倍以上である。厚肉部22に対する薄肉部21の面積の比率は、1/2以下であり、1/3以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。厚肉部22に対する薄肉部21の面積の比率が1/2より大きいと強度が著しく損なわれる恐れがある。なお、薄肉部21のZ方向厚みは、例えば株式会社キーエンス製のレーザー変位計LT−9000で測定できる。
薄肉部21のヤング率は60GPa以上であり、65GPa以上が好ましく、70GPa以上がより好ましい。薄肉部21のヤング率が60GPa以上であると、外部からの衝突物との衝突に起因する薄肉部21の破損を十分に防止できる。また、指紋認証用センサが第2の凹部14に配置される場合には、スマートフォン等の落下や衝突に起因する薄肉部21の破損を十分に防止できる。さらに、薄肉部21により保護されるセンサの破損等を、十分に防止できる。また、薄肉部21のヤング率の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、薄肉部21のヤング率は、例えば200GPa以下であり、150GPa以下が好ましい。
薄肉部21のビッカース硬度Hvは、400以上が好ましく、500以上がより好ましい。薄肉部21のビッカース硬度が400以上であると、外部からの衝突物との衝突に起因する薄肉部21の擦傷を十分に防止できる。また、指紋認証用センサが第2の凹部14に配置される場合には、スマートフォン等の落下や衝突に起因する薄肉部21の擦傷を十分に防止できる。さらに、薄肉部21により保護されるセンサの破損等を、十分に防止できる。また、薄肉部21のビッカース硬度の上限は、特に限定されないが、過度に高すぎると研磨や加工が困難となる場合がある。したがって、当該化学強化ガラスのビッカース硬度は、例えば1200以下であり、好ましくは1000以下である。なお、ビッカース硬度は、例えば日本工業規格JIS Z 2244に記載された、ビッカース硬さ試験により測定できる。
薄肉部21の周波数1MHzでの比誘電率は、7以上が好ましく、7.2以上より好ましく、7.5以上がさらに好ましい。静電容量方式センサが薄肉部21を構成する第2の凹部14に配置される場合、薄肉部21の比誘電率を高くすることにより、検出される静電容量を大きくでき、優れたセンシング感度を実現できる。特に、薄肉部21の周波数1MHzでの比誘電率が7以上であると、指先の指紋の微細な凹凸を検出する指紋認証の場合にも、指先の指紋の微細な凹凸に応じた静電容量の差が大きくなるため、高いセンシング感度での検出できる。また、薄肉部21の比誘電率の上限については、特に限定されないが、過度に高すぎると誘電損失が大きくなり、消費電力が増加し、また、反応が遅くなる場合がある。したがって、薄肉部21の周波数1MHzでの比誘電率は、例えば20以下が好ましく、15以下がより好ましい。比誘電率は、カバー部材1の両面に電極を作製したキャパシタンスの静電容量測定によって得られる。
カバー部材1の第2の主面5には、印刷層が設けられることが好ましい。特に、第2の凹部14にも印刷層を設けることが好ましい。このような印刷層を設けることにより、カバー部材1の保護対象である携帯情報端末の内部や、第2の凹部14に配置された指紋認証センサが、カバー部材1を介して視認されることを効果的に防止できる。また、所望の色を付与でき、優れた外観性を得られる。カバー部材1(薄肉部21)の静電容量を高く維持するためには、印刷層の厚みは薄ければ薄い程良い。印刷層の厚みは、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。但し、比誘電率が高い化合物を含むインク(例えばTiOを含むインク)を使用した白印刷では、印刷層の比誘電率が高いので、印刷層の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、25μm以下が特に好ましい。
カバー部材1の第2の主面5に印刷層が設けられる場合には、センサ等の装置は、当該印刷層の裏面において第2の凹部14とZ方向に対向する位置(薄肉部21の裏側)に配置される。したがって、印刷層の最表面の算術平均粗さRaは、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。さらに好適には、印刷層の裏面の算術平均粗さRaも、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。印刷層の最表面及び裏面の算術平均粗さRaが50nm以下であると、指の指紋の凹凸の程度と比べて十分に小さくなるため、センシング感度が高くなる点で好ましい。また、印刷層の最表面及び裏面の算術平均粗さRaの下限は、特に限定されないが、好ましくは2nm以上であり、より好ましくは4nm以上である。
(カバー部材の製造方法)
上述したカバー部材1は、図7(A)に示すように、当該カバー部材1と同一寸法のガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105に、それぞれ対向する少なくとも一つの第1の凹部107及び第2の凹部114を設けることによって、得られる。
ガラス基板101の製造方法について説明する。先ず、各成分の原料を後述する組成となるように調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。ガラスの成形法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法、ダウンドロー法及びロールアウト法が挙げられる。特に、大量生産に適したフロート法が好適である。また、フロート法以外の連続成形法、すなわち、フュージョン法およびダウンドロー法も好適である。任意の成形法により平板状に成形されたガラス部材は、徐冷された後、所望のサイズ(カバー部材1のサイズ)に切断される。なお、より正確な寸法精度が必要な場合等には、切断後のガラス部材に研磨加工を施してもよい。これにより、図7(A)に示すような、平面状の第1の主面103及び第2の主面105を有し、全体として平板状であるガラス基板101が得られる。
続いて、ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105に、それぞれ対向する少なくとも一つの第1の凹部107及び第2の凹部114を設ける凹部形成工程に移行する。凹部形成工程では、ガラス基板101の第1の主面103に図7(B)に示すような第1のマスク部材201を配置し、且つ、第2の主面105に第2のマスク部材301を配置した上で、ガラス基板101にエッチング処理が施される。
第1のマスク部材201のX方向寸法及びY方向寸法は、ガラス基板101の第1の主面103全体を覆えるように設定されている。図7(B)の例では、第1のマスク部材201のX方向寸法及びY方向寸法は、ガラス基板101のX方向寸法及びY方向寸法とほぼ等しい。さらに、第1のマスク部材201には、ガラス基板101の第1の主面103に、第1の凹部107を形成するための第1の凹部形成用孔207が設けられている。したがって、エッチャントが第1の凹部形成用孔207を介してガラス基板101の第1の主面103に到達し、図7(A)に示すように、第1の凹部107を形成する。なお、ガラス基板101の第1の主面103に複数の第1の凹部107を形成する場合には、複数の第1の凹部形成用孔207を有する第1のマスク部材201を用いればよい。
第2のマスク部材301のX方向寸法及びY方向寸法は、ガラス基板101の第2の主面105全体を覆えるように設定されている。図7(B)の例では、第2のマスク部材301のX方向寸法及びY方向寸法は、ガラス基板101のX方向寸法及びY方向寸法とほぼ等しい。さらに、第2のマスク部材301には、ガラス基板101の第2の主面105に、第2の凹部形成用孔314が設けられている。したがって、エッチャントが第2の凹部形成用孔314を介してガラス基板101の第2の主面105に到達し、第2の凹部114を形成する。なお、ガラス基板101の第2の主面105に複数の第2の凹部114を形成する場合には、複数の第2の凹部形成用孔314を有する第2のマスク部材301を用いればよい。
このような処理により、図7(C)に示すように、ガラス基板101には、それぞれ少なくとも一つの第1の凹部107と、第2の凹部114とが設けられる。
第1の凹部107は、平面状の第1の底面部108と、当該第1の凹部107の開口縁と第1の底面部108の外縁とを接続する第1の接続面部111とを備えている。第2の凹部114は、第1の底面部108に対応する位置に設けられた平面状の第2の底面部115と、当該第2の凹部114の開口縁と第2の底面部115の外縁とを接続する第2の接続面部118とを備えている。
第1の底面部108と第2の底面部115とで挟まれる領域で平板状の薄肉部121が構成され、第1の接続面部111と第2の接続面部118とで挟まれる領域で接続部123が構成され、薄肉部121及び接続部123以外の部分で厚肉部122が構成される。
また、第1の底面部108の第1の主面103からの深さ寸法D1は、第2の底面部115の第2の主面105からの深さ寸法D2よりも小さくなっている。このように深さ寸法D1と深さ寸法D2とを異ならせることにより、化学強化後に薄肉部121が平板状から曲板状になる。なお、第1の凹部107の幅寸法W1と第2の凹部114の幅寸法W2とを異ならせ、平面視において第1の凹部107が第2の凹部114と重なるようにしても、例えば図5(A),(B)に示すように、化学強化後に薄肉部121が平板状から曲板状になる。
ここで、ガラス基板101の薄肉部121を構成する第1,第2の底面部108,115の算術平均粗さRaは、上述したカバー部材1の第1,第2の底面部8,15と同様に、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。薄肉部121のヘイズ値は、16%以下が好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましい。
ガラス基板101の第1の凹部107の第1の接続面部111は、カバー部材1の第1の凹部7の第1の接続面部11と同様、第1の底面部108と滑らかに接続する曲面状が好ましい。第1の接続面部111の曲率半径は、第1の凹部107の中央部から周縁部に向かうにしたがって大きくなることが好ましい。第1の接続面部111の曲率半径は、第1の底面部108の深さ寸法D1以上に設定されることが好ましい。第1の接続面部111の曲率半径は、0.1mm以上2mm以下が好ましい。第1の接続面部111と第1の主面103との接続部分は、カバー部材1の第1の接続面部11と第1の主面3との接続部分と同様(図3参照)、滑らかに連続する曲面状が好ましい。
第1のマスク部材201及び第2のマスク部材301の材料は、例えば感光性有機材料、特に感光性樹脂材料であるレジストや樹脂、金属膜、セラミックスなど耐エッチャント性材料からなる。第1,第2の凹部形成用孔207,314は、レジストの場合には所定の露光、現像を行うことにより形成される。
エッチング処理は、ウェットエッチング及びドライエッチングのどちらでもよいが、コストの観点からウェットエッチングが好ましい。エッチャントとしては、ウェットエッチングの場合には、フッ酸を主成分とする溶液が挙げられ、ドライエッチングの場合には、フッ素系ガス等が挙げられる。エッチング処理を施すことにより、複数の凹部を有するガラス基板が簡便に得られる。
また、エッチング処理は、ガラス基板101とエッチャントとを、ガラス基板101の第1の主面103又は第2の主面105に平行な方向(XY方向)に相対的に移動させながら行うことが好ましい。このようなエッチングは、ガラス基板101をXY方向に揺動させながら行ってもよく、エッチャントにXY方向の流れを生じさせることにより行ってもよく、両者を組み合わせて行ってもよい。基本的にエッチング処理はガラス基板101に対して等方的に進行する。そのため、第1,第2の凹部形成用孔207,314の開口辺直下では、エッチングされる深さと同等の半径で側面方向にもエッチングが進行し、ガラス基板101の第1,第2の凹部107,114の第1,第2の接続面部111,118を、第1,第2の底面部108,115と滑らかに接続する曲面状とできる。また、ガラス基板101とエッチャントとを、ガラス基板101の第1の主面103又は第2の主面105に平行な方向(XY方向)に相対的に移動させながらエッチングを行えば、エッチングの進行に伴って第1,第2の凹部形成用孔207,314の開口辺からガラス基板101の第1,第2の凹部107,114側に巻き込む流れが生じる。そして、第1,第2の凹部107,114の中央部よりも周辺部から側面への流速が早まる。そのため、相対的に第1,第2の凹部107,114の周縁から側面側にかけてのエッチングレートが高くなり、第1,第2の接続面部111,118の曲率半径を第1,第2の凹部107,114の中央部から周縁部に向かうにしたがって大きくできる。また、第1,第2の接続面部111,118の曲率半径を第1,第2の底面部108,115の深さ寸法以上とできる。また、エッチング処理時間およびガラス基板101とエッチャントとの相対移動速度を調整することにより、第1,第2の接続面部111,118の側面の曲率半径を0.1mm以上2mm以下に調整できる。さらに、上記のようにガラス基板101とエッチャントとを、ガラス基板101の第1の主面103又は第2の主面105に平行な方向(XY方向)に相対的に移動させながらエッチングを行うことにより、化学強化を行うことなく第1の底面部108を中心部に向かうにしたがって第1の主面103側もしくは第2の主面105側に突出する形状とできる。
また、薄肉部121を構成する第1,第2の底面部108,115の算術平均粗さRaを50nm以下とするには、ガラス基板101上のエッチング液の流動性を上げるようにエッチング処理を行えばよい。また、薄肉部121のヘイズ値を16%以下とするためには、ガラス基板101上のエッチング液の流動性を上げるようにエッチング処理を行えばよい。また、化学強化を行うことなく第1の凹部107の底面を中心部に向かうにしたがって第1の主面103側もしくは第2の主面105側に突出する形状とするには、エッチング液が第1の凹部107の角部にぶつかるような流れをつくるようにエッチング処理を行えばよい。
なお、第1,第2の底面部108,115の深さ寸法D1,D2を異ならせるためには、エッチング処理時間の長さ、エッチング処理に使用する薬液の濃度やその流れ、エッチングの薬液温度を異ならせればよい。
ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105に第1,第2の凹部107,114を設ける方法は、上述したようなエッチング処理による方法に限定されず、機械加工による方法でも構わない。当該機械加工による方法では、マシニングセンターやその他数値制御工作機械を用いて、ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105に、砥石を接触させた上で回転変位させ、所定の寸法の第1,第2の凹部107,114を形成する。例えば、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等を電着又はメタルボンドで固定した砥石を用いて、主軸回転数100〜30,000rpm、切削速度1〜10,000mm/分で研削する。
続いて、第1,第2の凹部107,114の底面及び側面を研磨加工して、第1,第2の底面部108,115及び第1,第2の接続面部111,118を形成してもよい。研磨加工工程では、回転研磨ツールの研磨加工部を、第1,第2の凹部107,114の底面及び側面にそれぞれ別個に独立した一定圧力で接触させて、一定速度で相対的に移動させて行う。一定圧力、一定速度の条件で研磨を行うことにより、一定の研磨レートで研削面を均一に研磨できる。回転研磨ツールの研磨加工部の接触時の圧力としては、経済性及び制御のし易さ等の点で1〜1,000,000Paが好ましい。速度は、経済性及び制御のし易さなどの点で1〜10,000mm/分が好ましい。移動量はガラス基板101の形状、大きさに応じて適宜決められる。回転研磨ツールは、その研磨加工部が研磨可能な回転体であれば特に限定されないが、ツールチャッキング部を有するスピンドル、リューターに研磨ツールを装着させる方式等が挙げられる。回転研磨ツールの材質としては、少なくともその研磨加工部がセリウムパッド、ゴム砥石、フェルトバフ、ポリウレタン等、被加工物を加工除去でき、且つヤング率は7GPa以下が好ましく、5GPa以下がより好ましく、種類は限定されない。回転研磨ツールの材質をヤング率7GPa以下の部材を用いることにより、圧力により研磨加工部を第1,第2の凹部107,114の形状に沿うように変形させて、底面及び側面を上述した所定の表面粗さに加工できる。回転研磨ツールの研磨加工部の形状は円又はドーナツ型の平盤、円柱型、砲弾型、ディスク型、たる型等が挙げられる。
第1,第2の凹部107,114の底面及び側面に回転研磨ツールの研磨加工部を接触させて研磨を行う場合、研磨砥粒スラリーを介在させた状態で加工を行うことが好ましい。この場合、研磨砥粒としてはシリカ、セリア、アランダム、ホワイトアランダム(WA)、エメリー、ジルコニア、SiC、ダイヤモンド、チタニア、ゲルマニア等が挙げられ、その粒度は10nm〜10μmが好ましい。回転研磨ツールの相対移動速度は、上述したように、1〜10,000mm/分の範囲で選定できる。回転研磨ツールの研磨加工部の回転数は100〜10,000rpmである。回転数が小さいと加工レートが遅くなり、所望の表面粗さにするのに時間がかかりすぎる場合があり、回転数が大きいと加工レートが速くなり、ツールの磨耗が激しくなるため、研磨の制御が難しくなる場合がある。
上述したように第1,第2の凹部107,114の底面及び側面をそれぞれ独立の圧力で回転研磨ツールを接触させて研磨加工する場合、圧力の調節は、空気圧ピストン、ロードセル等を使用できる。例えば、回転研磨ツールを第1,第2の凹部107,114の底面に向かって進退させる空気圧ピストンと、回転研磨ツールを第1,第2の凹部107,114の側面に向かって進退させる他の空気圧ピストンと、を設ければ、第1,第2の凹部107,114の底面及び側面に対する研磨加工部の圧力を調整できる。このように、第1,第2の凹部107,114の底面と側面への圧力を独立させ、単独の回転研磨ツールをそれぞれの面に独立した一定圧力で回転研磨ツールを接触させながら、一定速度で相対的に移動させることで、それぞれの面を同時に独立の研磨レートで均一に研磨できる。
なお、第1,第2の凹部107,114の形状に沿うように回転研磨ツールとガラス基板101とを相対的に移動させて研磨加工してもよい。移動させる方式は移動量、方向、速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよい。例えば、多軸ロボット等を用いる方式等が挙げられる。
以上のように、Z方向に対向する少なくとも第1,第2の凹部107,114が形成されたガラス基板101は、その後の化学強化により、薄肉部121が平板状から曲板状に成形される。
化学強化とは、ガラスの表層のイオン半径が小さいアルカリイオン(例えば、ナトリウムイオン)をイオン半径の大きなアルカリイオン(例えば、カリウムイオン)に置換(イオン交換)することをいう。化学強化の方法としてはガラスの表層のアルカリイオンをよりイオン半径の大きなアルカリイオンとイオン交換できるものであれば特に限定されないが、例えば、ナトリウムイオンを含有するガラスを、カリウムイオンを含む溶融塩で処理することにより実施できる。一般的には、ガラス転移点以下の温度で、硝酸カリウム溶融塩にガラス基材を浸漬し、イオン交換する。硝酸カリウム溶融塩には、炭酸カリウム塩などが混合された混合溶融塩を用いてもよい。また、浸漬に限らず、前記溶融塩のスプレーや前記溶融塩を含む紛体・ペーストなどの塗布の方法を用いてもよい。このようなイオン交換処理が行われるため、ガラス表層の圧縮応力層の組成はイオン交換処理前の組成と若干異なるが、基板厚み中央部の組成はイオン交換処理前の組成とほぼ同じである。その結果、第1の主面3および第2の主面5におけるカリウムイオン濃度がカバー部材1の厚さ方向中央におけるカリウムイオン濃度よりも高くなる。
化学強化ガラスには、表層に圧縮応力層が形成される。カバー部材1の薄肉部21または厚肉部22の圧縮応力層の表面圧縮応力(CS)は上述の範囲に制御される。CSは、表面応力計(例えば、折原製作所製FSM−6000)等を用いて測定できる。
化学強化によりガラス表層のナトリウムイオンと溶融塩中のカリウムイオンとをイオン交換する場合、化学強化によって生じる表面圧縮応力層の深さ(DOL)は任意の方法により測定できるが、例えばEPMA(electron probe micro analyzer、電子線マイクロアナライザー)にてガラスの深さ方向のアルカリイオン濃度分析(この例の場合はカリウムイオン濃度分析)を行い、測定により得られたイオン拡散深さをDOLとしてもよい。また、DOLは表面応力計(例えば、折原製作所製FSM−6000)等を用いても測定できる。また、ガラス表層のリチウムイオンと溶融塩中のナトリウムイオンとをイオン交換する場合、EPMAにてガラスの深さ方向のナトリウムイオン濃度分析を行い、測定により得られたイオン拡散深さをDOLとみなす。カバー部材1の薄肉部21または厚肉部22のDOLは上述の範囲に制御される。
カバー部材1(ガラス基板101)の内部引張応力(CT)は、300MPa以下が好ましく、250MPa以下がより好ましく、200MPa以下がさらに好ましく、170MPa以下特に好ましい。
化学強化を施す前のガラス基板101又はカバー部材1の歪点は500℃以上が好ましい。化学強化前のガラス基板101又はカバー部材1の歪点が500℃以上であると、表面圧縮応力の緩和が生じにくくなるからである。530℃以上がより好ましく、550℃以上がさらに好ましい。
ここで、化学強化は、凹部形成工程後のみ行ってもよいが、凹部形成工程前後に行うことが好ましい。すなわち、カバー部材1の製造方法は、ガラス基板101を化学強化する工程(第1化学強化工程)と、ガラス基板101に第1,第2の凹部107,114を設ける凹部形成工程と、第1,第2の凹部107,114が設けられたガラス基板101を再度化学強化する工程(第2化学強化工程)と、を含むことが好ましい。これによれば、先ず、第1化学強化工程において、第1,第2の凹部107,114が設けられていないガラス基板101の全体に通常の平坦なカバー部材と同等のCS、DOLが与えられる。次いで、凹部形成工程において、第1,第2の凹部107,114を設けることによって強化されていない薄肉部121を露出させる。さらに、第2化学強化工程において、再び薄肉部121が破壊しない程度、且つ、平板状の薄肉部121が図2(A)に示すような薄肉部21のように曲板状に成形されるような強化条件で再強化を行う。したがって、厚肉部122に十分な強度を持たせながら薄肉部121にも好適な強度を与えられる。
このように、凹部形成工程前後に化学強化を行う場合には、第1化学強化工程においてガラス基板101を400〜500℃に加熱された30〜100%のKNO溶融塩に1〜24時間に亘って接触させ、第2化学強化工程においてガラス基板101を350〜450℃に加熱された70〜100%のKNO溶融塩に1分〜3時間に亘って接触させることが好ましい。当該条件によれば、厚肉部122の最表面のCSを400〜1300MPa、DOLを15〜100μm、変曲点におけるCS、DOLをそれぞれ10〜1000MPa、1〜24μmとし、薄肉部121のCSを300〜1300MPa、DOLを5〜25μmとできる。
ここで、「変曲点におけるCS、DOL」の求め方について説明する。図8には、二種類の異なる化学強化条件におけるCS−DOLプロファイルが示されている。異なる条件1、2で化学強化を行ったガラスにおいて、CSとDOLの関係を表す曲線はそれぞれ曲線a,aとなる。曲線a,aの形状は互いに異なる。また、曲線aのCS及びDOLはCS及びDOLで表され、曲線aのCS及びDOLはCS及びDOLで表され、両者の値はそれぞれ異なる。上述のように、ガラス基板101に対し二段階の化学強化を実施した場合、特に条件1で化学強化したガラス基板101に引き続いて条件2で化学強化した場合を考える。この場合、図9に示すように、当該ガラス基板101の厚肉部122のCSとDOLの関係を表す曲線Aは、上記曲線a,aを重畳したような曲線となる。図10に示すように、曲線AのCS及びDOLはCS及びDOLで表される。このようなガラス基板101の厚肉部122を表面応力計により測定すると、最表面(X軸において0の位置)とDOLとの間に、変曲点Pが観察される。当該変曲点Pは、二段階の化学強化条件に形状が変化するため、どこが変曲点Pであるか判断が難しいことがある。そこで、変曲点Pの代替として交点Qを求め、当該交点Qの値を上述した「変曲点におけるCS、DOL」とみなした。交点Qは、曲線A上の(0、CS)における接線kと、(DOL、0)における接線をkと、の交点である。そして、交点QのY座標及びX座標の値であるCS及びDOLが、「変曲点におけるCS及びDOL」とみなされる。
なお、上述した機械加工で薄肉部121を曲板状に形成する場合、薄肉部121の第1の底面部108及び第2の底面部115のうち少なくとも一方には、薄肉部121の化学強化時に所望の曲面形状に制御するため、膜が形成されていてもよい。不図示であるが、このような膜としては、第1の底面部108に形成される表面膜や、第2の底面部115に形成される裏面膜や、第1,第2の接続面部111,118に形成される側面膜等が挙げられる。
これらの膜は、それぞれ膜が形成された部分が化学強化されることを抑制する。化学強化抑制効果を発揮するためには、膜は酸化物や窒化物、炭化物、ホウ化物、ケイ化物、金属等を含むことが好ましい。なぜなら、前記のような物質を含む膜は、膜中でのナトリウムイオンやカリウムイオンの拡散係数がガラス中のそれより小さくなるからである。
上記酸化物としては、例えば、無アルカリ酸化物、アルカリ元素又はアルカリ土類元素を含む複合酸化物が挙げられるが、特にSiOが好ましい。主成分としてSiOを適用することにより、膜中でナトリウムイオンやカリウムイオンの拡散が適度に抑制される。また、膜の透過率が高く、屈折率がガラスと近いため、コーティングを施したことによる外観変化を最小限に抑えられる。また、SiOを主成分とする膜は、物理的耐久性や化学的耐久性も高い。
膜の膜厚は10nm以上が好ましく、12nm以上がより好ましく、15nm以上がさらに好ましく、20nm以上が特に好ましく、25nm以上が最も好ましい。膜厚が10nm以上であると、イオン交換阻害の効果により膜が形成された部分の化学強化が抑制できる。膜の膜厚が厚くなるほど、化学強化抑制効果が高くなり、曲面形状を制御できる。
膜の膜厚は1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましく、100nm以下が特に好ましく、50nm以下が最も好ましい。膜厚が1000nmを超えると、薄肉部121の強化が入りにくくなるおそれがある。また、膜がある部位とない部位の外観の差が大きくなるおそれがある。
なお、カバー部材1は、機械加工で薄肉部121が曲板状に形成されている場合、化学強化処理が施されていないガラスであってもよい。すなわち、ガラス基板101には必ずしも化学強化処理を施す必要はない。
また、上述したように、ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105には、それぞれ対向する複数の第1,第2の凹部107,114を設けても構わない。例えば、図11に示すように、カバー部材1裏に配置すべきセンサ40Hやカメラモジュール42H等の各種装置の数が複数である場合、当該センサ40Hやカメラモジュール42H等の個数と同数の第1,第2の凹部107,114を設ければよい。なお、ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105には、対向する第1,第2の凹部107,114のほかに、対向しない凹部を形成してもよい。
図11には、センサ40H、カメラモジュール42H、及び液晶層(表示パネル)44Hをスマートフォン等の筐体43Hに収納した状態が示されている。ここで、カバー部材1には、第1の凹部7Hと、第2の凹部14Hとが設けられている。第1の凹部7Hは、第1の主面3側に曲面状に突出する第1の底面部8Hと、第1の接続面部11Hとを備え、第2の凹部14Hは、第1の底面部8Hとで挟まれた領域で曲板状の薄肉部21Hを構成する第2の底面部15Hと、第2の接続面部18Hとを備えている。
センサ40Hは、接着層41を介して図11中右側の第2の底面部15Hに固定されている。液晶層44Hは、接着層45Hを介してカバー部材1の第2の主面5に固定される。また、カメラモジュール42Hは、レンズ側の先端部が筐体43Hに固定される。このような構成において、カメラモジュール42Hの先端部が、筐体43Hよりも外側に延在してしまうことがある。しかしながら、図示の例のように、カメラモジュール42Hと対向する位置において、カバー部材1の第2の主面5に第2の凹部14Hを設けることで、当該第2の凹部14Hにカメラモジュール42Hの基部を収納し、当該カメラモジュール42Hの厚みを吸収できる。これにより、薄肉化の進む機器のカメラ部を含むフラッシュサーフェイス化に貢献できる。また、カメラモジュール42Hの先端部と基部を逆にして、カメラモジュール42Hのレンズをカバー部材1の第2の凹部14Hに固定してもよい。これにより、カバー部材1の薄肉部21Hが、一眼レフカメラのレンズでよく用いられている「レンズプロテクター」のように機能し、カメラレンズの保護や埃の侵入を防ぐ効果がある。なお、この場合、第2の凹部14Hの底面(薄肉部21Hの第2の底面部15H)は光学研磨が必要になり、第2の凹部14Hの第2の接続面部18Hは遮光される必要がある。指紋を付着しにくくするAFP膜やMgF等の反射防止膜等を、第2の凹部14Hや、薄肉部21Hの第2の底面部15Hに形成してもよい。
また、第1,第2の凹部7,14の形状は特に限定されず、任意の形状を適用して構わない。例えば、第1,第2の凹部7,14のZ方向から見た断面形状は、長円状に限定されず、例えば円形状や楕円形状、三角形形状、矩形形状等が適用できる。
カバー部材1の第1の主面3又は第2の主面5には、防眩処理(anti−glare)による防眩処理層を形成してもよく、その他、反射防止層、防汚層、防曇層等の機能層を形成してよい。機能層はカバー部材1の第1の主面3に形成されることが好ましい。
防眩処理としては、フッ酸等によるエッチングによる処理や、コーティングによる処理等が挙げられる。エッチング処理による場合には、エッチング後に化学強化してもよく、化学強化後にエッチングしてもよいが、化学強化を行う前にエッチングが行われるのが好ましい。コーティング処理による場合には、コーティング後に化学強化してもよく、化学強化後にコーティングしてもよい。コーティング処理による防眩処理層の場合、カバー部材1の厚さ方向断面視で厚肉部中央部の組成と防眩処理層の組成とを異なるようにできる。これによりカバー部材1より防眩処理層の屈折率を低くなるように組成変更でき、反射防止効果も得られるようになる。防眩処理層の成分が無機系材料である場合には、エッチング処理又はコーティング処理のどちらでもよく、防眩処理層の成分が有機系材料である場合には、コーティング処理を行えばよい。なお、防眩処理層の上には、耐指紋コート(Anti‐Fingerprint:AFP)層を形成してもよい。また、カバー部材や防眩処理層の最表面にフッ素又は塩素などが存在する層が配されるように、例えば無機フッ化物や無機塩化物を形成してもよい。これにより親水性が向上するため、水により汚れを洗浄しやすくなる。
防眩処理領域50が図12(A)〜(C)に示すように第1の凹部7内部及び周縁部に施される場合、使用者が視認せずとも触感でセンサの位置を瞬時に判断でき、防眩処理の凹凸による摩擦で指のスライド時間を確保し認証確率を向上できる効果が得られる。更に防眩処理領域50は図13(A)〜(C)に示すようにカバー部材1の第1の凹部7の周縁部の少なくとも一部に施されていることが好ましい。第2の凹部14にセンサが配置され、第1の凹部7に触れた指の指紋などを検出する。第1の凹部7の周縁部に防眩処理領域50を設けることで検出感度を維持できるようになる。
なお、防眩処理層の上には、例えば図14(A)〜(D)及び図15(A)〜(D)に示すように防指紋コート層52を形成してもよい。防指紋コート層52をカバー部材1の第1の主面3全面に形成してもよい。これによりカバー部材1を指で触れても指紋が付きにくくなり、汚れても拭き取りやすくなる。また指紋認証を実施する際など指で頻繁に触れる薄肉部21の第1の底面部8に防指紋コート層52を形成してもよい。防指紋コート層52の材料が静電気を生じやすい場合、センサの種類により静電気が検出感度を低下させてしまう恐れがある。この場合には、図14(C),(D)、図15(A)〜(D)に示すようにカバー部材1の第1の凹部7以外の厚肉部22の第1の主面3のみに施されていてもよい。なお、前記した機能層形成は、ガラス基板101に予め形成してもよい。
なお、上述の図12〜図15、後述の図16に示すカバー部材1は、図2に示すものと同じ構成を有しているが、図中の各構成を示す符号の一部を省略してある。
また、カバー部材1の第1の主面3及び第2の主面5は、研磨されることが好ましい。イオン交換による化学強化を施した強化ガラス板は、その最表面に欠陥が発生する。また、最大で1μm程度の微細な凹凸が残留することがある。カバー部材1に力が作用する場合、前述の欠陥や微細な凹凸が存在する箇所に応力が集中し、理論強度よりも小さな力でも割れることがある。そのため、化学強化後のカバー部材1の第1の主面3及び第2の主面5に存在する、欠陥及び微細な凹凸を有する層(欠陥層)を研磨により除去する。なお、欠陥が存在する欠陥層の厚さは、化学強化の条件にもよるが、通常、0.01〜0.5μmである。当該研磨は、例えば両面研磨装置によって行われる。両面研磨装置は、それぞれ所定の回転比率で回転駆動されるリングギヤ及びサンギヤを有するキャリア装着部と、キャリア装着部を挟んで互いに逆回転駆動される金属製の上定盤及び下定盤と、を有して構成され、キャリア装着部には、リングギヤ及びサンギヤと噛合する複数のキャリアが装着される。キャリアは自らの中心を軸に自転し、且つサンギヤを軸に公転するように遊星歯車運動し、遊星歯車運動によりキャリアに装着された複数のカバー部材1の両面(第1の主面3及び第2の主面5)が上定盤及び下定盤との摩擦で研磨される。
さらに、カバー部材1の第2の主面5には印刷層が設けられてもよい。印刷層は、例えば、所定の色材を含むインク組成物により形成できる。当該インク組成物は、色材の他、必要に応じてバインダー、分散剤や溶剤などを含むものである。色材は、顔料や染料などいずれの色材(着色剤)であってもよく、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、色材は所望される色によって適宜選択できるが、例えば、遮光性が求められる場合には、黒系色材等が好ましく用いられる。また、バインダーは、特に制限されず、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノキシ樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、セルロース類、ポリアセタール等の公知の樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂など)等が挙げられる。バインダーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
印刷層を形成するための印刷法は特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、パッド印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法などの適宜な印刷法を適用できる。
第2の底面部15における第2の薄肉部構成部分16又は第2の接続部構成部分17(図2(A)参照)に対応する場所に色彩を付すことで、視覚的に場所を解り易くできる。また、第2の接続部構成部分17に対応する場所を鏡面反射印刷(例えばシルバー印刷)にすると、第2の接続部構成部分17の曲率を持った形状がレンズ効果を示し、第2の接続部構成部分17に対応する反射がカバー部材1の角度を変えても広い角度で反射するため、キラキラして高級感を演出できる。
印刷は、第2の凹部14と、カバー部材1の第2の主面5において第2の凹部14が形成されない平坦部分と、で個別に実施されることが好ましい。なぜなら、スクリーン印刷法等の印刷方向では形状追従性がそれ程高くないため、第2の凹部14と、第2の凹部14が形成されない平坦部分と、を一度に印刷することが難しいからである。したがって、これらの部分を個別に印刷することにより高精度な印刷層を形成できる。また、第2の凹部14と第2の凹部14が形成されない平坦部分とで印刷の色彩又はテクスチャを変えて、センサ40の位置を視覚的に分かりやすく表示でき、デザイン上のアクセントとなる。
より具体的には図16(A)に示すように、第2の主面5において第2の凹部14が形成されない平坦部分には、スクリーン印刷法等によって第1の印刷層31が設けられる。なお、スクリーン印刷とは、開口部を有するスクリーン上に印刷材料を載置した後、スクリーン上でスキージを押圧摺動させ、スクリーンの開口部から印刷材料を押し出して、開口部のパターンを印刷する方法をいう。また、第2の凹部14は曲面状である第2の底面部15を有するので、当該第2の凹部14に対してはパッド印刷法が好適である。これにより、第2の凹部14の第2の底面部15全体には第2の印刷層32が形成される。ここで、パッド印刷法とは、表面にインクパターンを設けたやわらかいパッド(例えば、シリコーン製パッド)を、目的基材に押付けてインクパターンを基材表面に転写させて印刷する方法である。パッド印刷は、タンポ印刷と呼ばれることもある。このように、パッド印刷法では、比較的やわらかく形状追従性のよいパッドが用いられるので、第2の底面部15に対する印刷は、パッド印刷法によって行うのが好ましい。一方、スクリーン印刷法等の印刷方法では形状追従性がそれ程高くなく、インクが第2の底面部15に印刷できないため不適である。なお、第1,第2の印刷層31,32に対する印刷の順序は特に限定されない。
また、図16(B)に示すように、第2の主面5において第2の凹部14が形成されない平坦部分と、第2の底面部15の第2の薄肉部構成部分16と、第2の接続部構成部分17とで個別に印刷しても構わない。この場合、第2の主面5において第2の凹部14が形成されない平坦部分には、スクリーン印刷法等によって第1の印刷層31が設けられる。次に、第2の凹部14の第2の薄肉部構成部分16及び第2の接続部構成部分17には、それぞれパッド印刷法によって第2,第3の印刷層32,33が設けられる。なお、第1〜第3の印刷層31〜33に対する印刷の順番は特に限定されない。また、第1の印刷層31と第2の印刷層32と第3の印刷層33とで印刷の色彩又はテクスチャを変えることで、センサ40の位置を視覚的に分かりやすく、デザイン上のアクセントとなる。例えば、第1の印刷層31と第2の印刷層32を同色にし、第3の印刷層33を異なる色の印刷とした場合、第3の印刷層33が環状のパターンとして認識されるデザインにできる。
なお、第2の主面5において第2の凹部14が形成されない部分等、平坦部分に対する印刷法は、スクリーン印刷法によるものに限られず、印刷層の膜厚等を正確に制御できるものであれば、ロータリースクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、スプレー印刷法等によるものでも構わない。また、静電複写法や熱転写法、インクジェット法等によるプリントでも構わない。
また、第2の凹部14等、曲面状に対する印刷法は、当該曲面状への追従性が良好であればパッド印刷法に限定されず、例えばスプレー印刷法を採用してもよい。
上述したカバー部材1は、図17に示すような、複数の第1,第2の凹部107,114が設けられたガラス基板101から、複数の第1,第2の凹部107,114をそれぞれ少なくとも一つ含むように分離することによっても得られる。
図17中、分離されるカバー部材1の外形が破線で示されており、当該破線に沿うようにガラス基板101を切断することによって、複数のカバー部材1を得られる。なお、切断線は図中破線のように直線であるが、直線である必要はなく曲線でもよい。
ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105には、それぞれ対向する複数の第1,第2の凹部107,114が設けられる。なお、後述するように、複数の第1,第2の凹部107,114は、第1の主面103及び第2の主面105をエッチング処理することによって設けられる。なお、後述するように、複数の第1,第2の凹部107,114は、研削加工処理、加熱変形などによっても設けられる。
ガラス基板101は、複数の第1,第2の凹部107,114が設けられることにより平板状に形成された複数の薄肉部121と、図示しない接続部(図7(C)参照)を介して複数の薄肉部121に接続する厚肉部122と、を備える。第1,第2の凹部107,114は、X方向及びY方向において所定間隔毎に設けられる。したがって、薄肉部121もX方向及びY方向において所定間隔毎に設けられる。なお、複数の第1,第2の凹部107,114は必ずしも所定間隔毎に設ける必要はない。複数種の間隔で配置されていたり、少なくとも一部がランダムな間隔で配置されていてもよい。しかし、複数のカバー部材1を分離する際のスペース効率を向上させるためには、図17に示すように、複数の第1,第2の凹部107,114を所定間隔毎に設け、各カバー部材1を隙間なく敷き詰めることが好ましい。
ここで、薄肉部121の最表面の算術平均粗さRaは、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。薄肉部121のヘイズ値は、16%以下が好ましく、15%以下がより好ましく10%以下がさらに好ましい。
図7(C)に示すように、ガラス基板101の第1,第2の凹部107,114の第1,第2の接続面部111,118は、第1,第2の底面部108,115と滑らかに接続する曲面状が好ましい。第1,第2の接続面部111,118の曲率半径は、第1,第2の凹部107,114の中央部から周縁部に向かって大きくなることが好ましい。第1,第2の接続面部111,118の曲率半径は、第1,第2の底面部108,115の深さ寸法以上に設定されることが好ましい。第1,第2の接続面部111,118の曲率半径は、0.1mm以上2mm以下が好ましい。第1,第2の接続面部111,118と第1,第2の主面103,105との接続部分は、滑らかに連続する曲面状が好ましい。
図18(A),(B)に示すように、ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105の少なくとも一方には、複数のカバー部材1を分離する際に位置合わせを行うための複数の第1のマーク131及び第2のマーク132が設けられている。図18(A),(B)には、各カバー部材1の外形(図17の破線)のX方向の延長線がAで表され、Y方向の延長線がBで表されている。第1のマーク131は、カバー部材1の近傍において、X方向延長線Aを挟むように一対ずつ配置されると共に、Y方向延長線Bを挟むように一対ずつ配置される。それぞれの第1のマーク131は、一対の第1のマーク片131Aからなる。第1のマーク片131Aは、垂直な二辺から構成される略L字形状である。互いに隣り合う第1のマーク片131Aの一辺は、僅かな隙間を空けて対向する。第2のマーク132は、ガラス基板101の四隅にそれぞれ配置される。第2のマーク132は、垂直の二辺から構成される略十字形状である。第2のマーク132を構成する二辺のうち、X方向延長線Aと平行な辺は、その一部がY方向延長線Bと交わり、Y方向延長線Bと平行な辺は、その一部がX方向延長線Aと交わる。
ガラス基板101からカバー部材1を切断して分離する際に、第2のマーク132の位置を読み取り切断場所を選択し、第1のマーク131の中間部(X方向延長線A又はY方向延長線B)に切断線が来ていることを確認し、正確に切断されているか確認できる。
次に、ガラス基板101の製造方法について説明する。先ず、各成分の原料を後述する組成となるように調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。任意の成形法により平板状に成形されたガラス部材は、徐冷された後、所望のサイズに切断される。なお、より正確な寸法精度が必要な場合等には、切断後のガラス部材に面取加工や研磨加工を施してもよい。これにより、平面状の第1の主面103及び第2の主面105を有し、全体として平板状であるガラス基板101が得られる。
次に、ガラス基板101に対して化学強化処理を施す(第1化学強化工程)。この第1化学強化工程においては、ガラス基板101を400〜500℃に加熱された30〜100%のKNO溶融塩に1〜24時間に亘って接触させることが好ましい。これにより、ガラス基板101の全体(薄肉部121及び厚肉部122)に通常の平坦なカバー部材と同等のCS、DOLが与えられる。第1化学強化工程によって得られるガラス基板101(厚肉部122)のCSは、400MPa以上が好ましく、500MPa以上がより好ましく、600MPa以上がさらに好ましい。また、同様にDOLは、15μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましい。
続いて、ガラス基板101の第1の主面103及び第2の主面105に第1,第2の凹部107,114を設けるための凹部形成工程に移行する。以下に説明する例では、図19(A)に示すように複数の第1,第2の凹部107,114がガラス基板101の第1,第2の主面103,105にそれぞれ設けられる。凹部形成工程では、ガラス基板101の第1,第2の主面103,105に図19(B)に示すような第1,第2のマスク部材201A,301Aを配置した上で、ガラス基板101にエッチング処理が施される。
第1,第2のマスク部材201A,301AのX方向寸法及びY方向寸法は、ガラス基板101の第1、第2の主面103,105全体を覆えるように設定されている。図19(B)の例では、第1のマスク部材201A,301AのX方向寸法及びY方向寸法は、ガラス基板101のX方向寸法及びY方向寸法とほぼ等しい。さらに、第1のマスク部材201A,301Aには、ガラス基板101に複数の第1,第2の凹部107,114を形成するための第1,第2の凹部形成用孔207A,314Aが、X方向及びY方向において所定間隔毎に複数設けられている。したがって、エッチャントが複数の第1,第2の凹部形成用孔207A,314Aを介してガラス基板101の第1、第2の主面103,105に到達し、複数の第1,第2の凹部107,114を形成する。
以上のように複数の第1,第2の凹部107,114が形成されたガラス基板101には、レーザー刻印又は印刷等の方法で第1のマーク131及び第2のマーク132が付され、図17に示すようなガラス基板101が得られる。そして、第2のマーク132の場所を読み取り切断位置を特定し、ダイヤモンドカッター等の切断工具でガラス基板101を切断することで、複数のカバー部材1が分離される。その後、一対の第1のマーク131の中間部(X方向延長線A又はY方向延長線B)に切断線が通過していることをもって、所望の形状にカバー部材1が分離されたことが確認される。
なお、図20(A)に示すように、第1,第2のマスク部材201B,301Bは、複数のカバー部材1の外形に対応する第1,第2の溝部形成用孔220B,320Bを有してもよい。例えば、このような第1のマスク部材201Bを用いてエッチングを行った場合、図20(B)に示すように、ガラス基板101の第1の主面103に、複数のカバー部材1の外形に対応する溝部140が設けられる。そして、溝部140に沿ってガラス基板101を切断することで、複数のカバー部材1を分離できる。このように、ガラス基板101にカバー部材1の外形に対応する溝部140を予め設けることによって、より正確にカバー部材1を分離できる。また、従来技術のようにカバー部材の外形形状を有するマスクを用意する必要がない。
また、図21に示すように、それぞれ複数の第1,第2の凹部107,114を含むように、ガラス基板101から複数のカバー部材1を分離しても構わない。例えば、図11に示すように、カバー部材1裏に配置すべきセンサ40やカメラモジュール42H等の各種装置の数が複数である場合、当該センサ40やカメラモジュール42H等の個数と同数の第1,第2の凹部107,114を設ければよい。
上述したように、ガラス基板101からそれぞれ第1,第2の凹部107,114を少なくとも一つ含むように複数のカバー部材1を分離することによって、図7(C)に示したような平板状の薄肉部121を有するカバー部材1を得られる。なお、カバー部材1は、屈曲部を1つ以上有するガラスでもよい。また、第1,第2の凹部107,114は上記屈曲部に形成されてもよい。
ここで、第1,第2の凹部107,114が形成されたガラス基板101を再度化学強化した後、複数のカバー部材1を分離してもよく、複数のカバー部材1を分離した後、それぞれのカバー部材1を化学強化してもよい。すなわち、前者は、第1化学強化工程、凹部形成工程、第2化学強化工程、(表面研磨工程、)カバー部材分離工程の順であるのに対し、後者は、第1化学強化工程、凹部形成工程、カバー部材分離工程、第2化学強化工程、(表面研磨工程)の順である点で相違する。両者において、表面研磨工程は任意であるが、当該工程を実施する場合には、最終化学強化工程(最後に実施された化学強化工程、すなわち第2化学強化工程)の後に実施する。また、カバー部材分離工程後に、端面の面取加工を実施することが好ましい。
前者及び後者どちらの場合であっても、第1化学強化工程によって、厚肉部22には、凹部を持たない通常の平坦なカバー部材と同等の強度を与えた後、第1,第2の凹部7,14を形成することによって、強化されていない平板状の薄肉部21を露出させ、第2化学強化工程によって、薄肉部21を図2(A)に示すように曲板状に成形すると共に、当該薄肉部21に可能な範囲で必要な強化を与える。第2化学強化工程においては、カバー部材1又はガラス基板101を350〜450℃に加熱された70〜100%のKNO溶融塩に1分〜3時間に亘って接触させることが好ましい。第2化学強化工程によって得られる薄肉部21のCSは、300MPa以上が好ましく、400MPa以上がより好ましく、500MPa以上がさらに好ましい。また、同様にDOLは、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
前者の場合は、二回の化学強化工程、凹部形成工程、及び表面研磨工程を、全て大板のガラス基板101の状態で行えるので、工程を効率化できる。
後者の場合は、第1化学強化工程と凹部形成工程を大板のガラス基板101の状態で行えるので、ある程度工程を効率化できる。また、カバー部材分離後に第2化学強化工程を行って薄肉部21を曲板状に成形するので、研磨装置やイオン交換浴などの設備が小型のものでも対応でき、カバー部材端面まで化学強化でき端面強度を向上しやすい。
なお、上述したカバー部材1の製造方法では、第1化学強化工程を、凹部形成工程前に実施していたが、凹部形成工程後に実施しても構わない。この場合、第2化学強化工程は実施しなくてよい。具体的には、凹部形成工程、第1化学強化工程、(表面研磨工程、)カバーガラス分離工程の順で行うか、凹部形成工程、カバーガラス分離工程、第1化学強化工程、(表面研磨工程)の順で行う。表面研磨工程は任意であるが、当該工程を実施する場合には、最終化学強化工程(最後に実施された化学強化工程、すなわち第1化学強化工程)の後に実施する。
また、第2化学強化工程は、カバー部材1全体を強化する必要はない。例えば、端面のみに化学強化を実施、屈曲部のみに化学強化を実施、凹部のみに化学強化を実施するなど、カバー部材1の少なくとも一部を化学強化してもよい。これにより、選択的に所望の部位を化学強化できるため、所望の強度に制御できる。さらに、カバー部材1を部分的に化学強化することで、所望の形状に制御できる。
(ガラス組成)
カバー部材1及びガラス基板101としては、例えば、以下の(i)〜(vii)の何れか一つのガラスが挙げられる。なお、以下の(i)〜(v)のガラス組成は、酸化物基準のモル%で表示した組成であり、(vi)〜(vii)のガラス組成は、酸化物基準の質量%で表示した組成である。
(i)SiOを50〜80%、Alを2〜25%、LiOを0〜10%、NaOを0〜18%、KOを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%およびZrOを0〜5%を含むガラス。
(ii)SiOを50〜74%、Alを1〜10%、NaOを6〜14%、KOを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が75%以下、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス。
(iii)SiOを68〜80%、Alを4〜10%、NaOを5〜15%、KOを0〜1%、MgOを4〜15%およびZrOを0〜1%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が80%以下であるガラス。
(iv)SiOを67〜75%、Alを0〜4%、NaOを7〜15%、KOを1〜9%、MgOを6〜14%、CaOを0〜1%およびZrOを0〜1.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が71〜75%、NaOおよびKOの含有量の合計が12〜20%であるガラス。
(v)SiOを60〜75%、Alを0.5〜8%、NaOを10〜18%、KOを0〜5%、MgOを6〜15%、CaOを0〜8%含むガラス。
(vi)SiOを63〜75%、Alを3〜12%、MgOを3〜10%、CaOを0.5〜10%、SrOを0〜3%、BaOを0〜3%、NaOを10〜18%、KOを0〜8%、ZrOを0〜3%、Feを0.005〜0.25%含有し、RO/Al(式中、ROはNaO+KOである)が2.0以上4.6以下であるガラス。
(vii)SiOを66〜75%、Alを0〜3%、MgOを1〜9%、CaOを1〜12%、NaOを10〜16%、KOを0〜5%含有するガラス。
(実施例1)
図17に示すガラス基板101とその製造方法の実施例を説明する。X方向長さ730mm、Y方向長さ920mm、Z方向厚さ0.5mmのガラス基板101を用いた。
先ず、第1化学強化工程において、ガラス基板101を450℃に加熱された60%のKNO溶融塩に10.5時間に亘って浸漬させた。
次に、凹部形成工程において、ガラス基板101に、X方向は130mmピッチで5行、Y方向は65mmピッチで13列、合計65個の第1,第2の凹部107,114を形成した(図19(A))。第1,第2の凹部107,114は、X方向長さ10mm、Y方向長さ13mmの長円状にした。また、第1の凹部107のZ方向深さを0.15mm、第2の凹部114のZ方向深さを0.2mmとした。すなわち第1,第2の凹部107,114が設けられることにより形成される平板状の薄肉部121のZ方向厚みは0.15mmとした。
ガラス基板101の第1,第2の主面103,105に第1,第2の凹部107,114を形成する方法は、以下の通りである。先ず、ガラス基板101の第1,第2の主面103,105にレジスト材を塗布し、露光によりレジスト材に第1,第2の凹部107,114の底面と同サイズの孔(第1,第2の凹部形成用孔207A,314A)を開け、図19(B)に示す第1,第2のマスク部材201A,301Aを形成した。
次に、第1,第2のマスク部材201A,301Aを第1,第2の主面103,105に配置した状態で、ガラス基板101をフッ酸(HF)を含むエッチング液に浸し、XYZ方向に揺動させながら、おもて側及び第2の凹部形成用孔207A、314AからHF溶液を浸入させ、ガラス基板101をエッチングした。この際、第2の凹部におけるエッチング液の流動を第1の凹部107に比べ活発にした。第1の凹部107の深さが0.15mm且つ第2の凹部114の深さが0.2mmになるまでガラス基板101をエッチングした後、ガラス基板101をHF溶液より引き上げ、レジスト材(第1,第2のマスク部材201A,301A)を剥離し、洗浄・乾燥させた。以上の操作により、図17に示す第1,第2の凹部107,114を有し、かつ、図7(C)に示すような平板状の薄肉部121を有するガラス基板101を作製できた。
そして、第2化学強化工程において、ガラス基板101を400℃に加熱された100%のKNO溶融塩に7分に亘って接触させ、平板状の薄肉部121を図2(A)に示すように第1の主面103側に突出する曲面状に成形した。
また、ガラス基板101の周縁部には、複数のカバー部材1を分離する際に位置合わせを行うための複数の第1,第2のマーク131,132を形成した。図2(A)に示すように、第1の凹部107の第1の接続面部111(実施例1,2において「第1の凹部107の側面」と言う)、第2の凹部114を構成する第2の底面部115の第2の接続部構成部分117(実施例1,2において「第2の凹部114の側面」と言う)は、それぞれ第1の底面部108(実施例1,2において「第1の凹部107の底面」と言う)、第2の薄肉部構成部分116(実施例1,2において「第2の凹部114の底面」と言う)と滑らかに接続する曲面形状であった。第1の凹部107の底面から側面への曲率半径は、最大約0.4mmであり、第2の凹部114の底面から側面への曲率半径は、最大約0.4mmであった。また、第1,第2の凹部107,114の側面と第1,第2の主面103,105の平坦部との接続部分は、ほぼ垂直であった。
ガラス基板101は、旭硝子株式会社のアルミノシリケートガラスである、Dragontrail(旭硝子株式会社の登録商標)を使用した。
(実施例2)
ガラス基板101とその製造方法の実施例を説明する。実施例1に対して、ガラス基板101として旭硝子株式会社のアルミノシリケートガラスであるDragontrail‐Xを使用した。第1化学強化工程においては、ガラス基板101を450℃に加熱された60%のKNO溶融塩に15時間に亘って接触させた。また第1,第2の凹部107,114の形状を直径10mmの円形として、平板状の薄肉部121を形成した。また、エッチング後、フッ酸(HF)を含むエッチング液からガラス基板101を取り出した後、30秒間そのまま保持してからレジスト材(第1,第2のマスク部材201A,301A)を剥離、洗浄した。第2化学強化工程においては、ガラス基板101を400℃に加熱された100%のKNO溶融塩に10分に亘って接触させ平板状の薄肉部121を図2(A)に示すように第1の主面103側に突出する曲面状に成形した。前記以外は実施例1と同様にしてガラス基板101を作成した。
第1,第2の凹部107,114の側面は該第1,第2の凹部107,114の底面と滑らかに接続する曲面状であり、第1の凹部107の底面から側面へ曲率半径、第2の凹部114の底面から側面へ曲率半径が、それぞれ最大約0.4mm、最大約0.4mmであった。第1,第2の凹部107,114の側面と、第1,第2の主面103,105の平坦部との接続部分は、滑らかに連続する曲面状であり、当該接続部分の曲率半径は約0.4mmであった。第1,第2の凹部107,114の底面から側面への曲率半径は、ガラス基板101側に凹曲する曲率半径であった。第1,第2の凹部107,114の側面から第1,第2の主面103,105の平坦部への形状は、第1,第2の凹部107,114の側面の途中に変曲点がある形状であった。
(実施例3)
カバー部材1とその製造方法の実施例を説明する。実施例1又は2のガラス基板101を、ガラス切断用のホイール切断装置を用いて、第1,第2の凹部107,114を1個ずつ有する130mm×65mmの長方形のサイズに切断した。これにより、第1,第2の凹部107,114を1個ずつ有する長方形のカバー部材1を複数得た。切断する時には、第2のマーク132を読んで切断位置を決めた。また、正しく切断されているかどうかは、第1のマーク131の中心に切断線が走っているかどうかを確認し、所定の形状に正しく切断されていることを確認した。第2のマーク132と第1,第2の凹部107,114は位置関係に相関があるので、130mm×65mmの所望の位置に第1,第2の凹部107,114を配置できた。
図22(A)に示すように、長方形のカバー部材1の平面視での四隅の角部2を、CNC(砥石削り)で削り、曲率Rをつけた形状とした。同時にCNCにより面取りを実施した。面取りはR面取り(ガラスエッジを半円状態とする加工)とC面取り(斜めに削りとる処理)等色々できるが、本実施例ではC面取りとした。また、CNC工程では、所定の位置にスピーカ孔4を設けた。なお、スピーカ孔4を予め設けた上で、第1,第2の凹部7,14を形成してもよい。また、スピーカ孔4は、別の工程でエッチングにより設けてもよい。また、スピーカ孔4は、カバー部材1の端面を切り欠くことで設けてもよい。
実施例1のガラス基板101から得られたカバー部材1(Dragontrail)においては、厚肉部の最表面のCSが625MPa、DOLが45μm、変曲点のCSが200MPa、DOLが6μm、薄肉部の最表面のCSが625MPa、DOLが6μmであった。実施例2のガラス基板101から得られたカバー部材1(Dragontrail‐X)においては、厚肉部の最表面のCSが800MPa、DOLが45μm、変曲点のCSが250MPa、DOLが6μm、薄肉部の最表面のCSが800MPa、DOLが6μmであった。CSやDOLの測定は有限会社折原製作所のガラス表面応力計 FSM‐6000を用いて測定した。なお、上述したように交点Qの数値を、変曲点のCS及びDOLとした(図8〜10参照)。
次に、カバー部材1の第2の主面5に対し、印刷を実施した。当該印刷は、黒色の三層31〜33を形成するものであり、図16(B)に示した第1〜第3の印刷層31〜33の形成方法と略同一である。
先ず、図22(B)に示すように、カバー部材1の第2の主面5において、スピーカ孔4と、第2の凹部14と、携帯情報端末の表示部に相当する部分(表示領域6)と、を除いた領域に黒印刷を実施し、第1の印刷層31を形成した。次に、図22(C)に示すように、第2の凹部14の第2の薄肉部構成部分16に黒印刷を実施し、第2の印刷層32を形成した。続いて、図22(D)に示すように、第2の凹部14の第2の接続部構成部分17に黒印刷を実施し、第3の印刷層33を形成した。
第1の印刷層31はスクリーン印刷により形成され、1回のスクリーン印刷で約4μmのZ方向厚みを印刷した。これを2回実施し、第1の印刷層31のZ方向厚みを約8μmとした。第2の印刷層32はパッド印刷により形成した。1回のパッド印刷で約3μmのZ方向厚みを印刷した。これを3回実施し、第2の印刷層32のZ方向厚みを約9μmとした。第3の印刷層33はパッド印刷により形成した。当該パッド印刷を3回実施し、第3の印刷層33のZ方向厚みを約9μmとした。第3の印刷層33は、第1,第2の印刷層31,32とXY方向において重なるよう(Z方向において対向するよう)にした。これにより第2の凹部14を光抜けなく、黒印刷ができた。カバー部材1の第1の主面3(第2の凹部14が形成される第2の主面5と反対側の面。)から見ると、色味によっては第2の凹部14の境界がどこにあるかほぼ解らなかった。
なお、黒印刷の方法としては、第1の印刷層31の黒印刷を1回とし、第3の印刷層33の印刷が終わった後に、第1の印刷層31の黒印刷を1回実施する方法もある。また、プロセス条件を最適化すれば、第2の凹部14の第2の薄肉部構成部分16と第2の接続部構成部分17を同時に黒印刷し、第2,第3の印刷層32,33を同時に形成できる。
最後に、カバー部材1の第1の主面3に防指紋コート層(Anti‐Fingerprint)を形成した。防指紋コート層の形成方法は、一般的に溶液塗布法、スプレー法と蒸着法とあるが、本実施例では蒸着法で成膜した。以上により、所望のカバー部材1を作製した。
(実施例4)
携帯情報端末の実施例を説明する。実施例3のカバー部材1の第2の凹部14の第2の底面部15に、指紋認証用センサ40H(図11参照)のセンサ面を当接させて固着した。接着層41のZ方向厚みは約10μmとした。カバー部材1の第2の主面5の非印刷部に、液晶層44H(表示パネル)を接着層45Hを介して積層した。接着層45HのZ方向厚みは約100μmとした。カバー部材1第1の主面3を外側にして、その他の部品とともに筐体43Hに組み込むことによってスマートフォンを作製した。
スマートフォンのディスプレイ側に配置された指紋認証用センサ40H位置のカバー部材外表面には第1の凹部7Hが存在するため、指紋認証用センサ40Hの位置を視覚や触覚等により容易に認識でき、第1の凹部7Hにより指の当接位置がある程度固定されるため、指紋読取が容易になる。
(実施例5)
実施例3のカバー部材1を用いて携帯情報端末を製造する場合には、カバー部材1の薄肉部21の第2の底面部15に、指紋認証用センサ40Hのセンサ面を当接させて固着した。第2の凹部14がカバー部材1の第2の主面5に設けられ、指紋認証用センサ40Hが第2の底面部15に配置される場合は、指紋認証用センサ40Hの機能上問題が無いのであれば、指紋認証用センサ40Hのサイズが第1の凹部7より大きくてもよい。指紋認証用センサ40Hのサイズが第1の凹部7より大きいことで、薄肉部21が薄いカバー部材1の強度を増強できる。より好適には、図5(B)で示したように、第1の凹部7の寸法を、センサ本体46Dの寸法よりも大きく、且つ指紋認証用センサ40D全体の寸法より小さくしてもよい。
またカバー部材1の第2の主面5の非印刷部に、液晶層44H(表示パネル)を接着層45Hを介して積層する。カバー部材1の第1の主面3を外側にして、その他の部品とともに筐体43Hに組み込むことによってスマートフォンなどの携帯情報端末とする。この場合、携帯情報端末の外表面に第1の凹部7が存在するため、印刷によるマーキングがなくてもセンサ位置は容易に認識される。
(実施例6)
携帯情報端末の他の実施例を説明する。図23に示すように、カバー部材1の第2の凹部14Hに、指紋認証用センサ40Hのセンサ面を当接させて固着した。カバー部材1の第2の主面5の非印刷部に、液晶層44H(表示パネル)を接着層45Hを介して積層する。接着層45HのZ方向厚みは約100μmとした。また他の第2の凹部14Hに、光源48Jを当接させて接着層49Jを介して固着した。接着層49JのZ方向厚みは約10μmとした。カバー部材1の第2の凹部14Hが形成されていない面(第1の主面3)を外側にして、その他の部品とともに筐体43Jに組み込むことによってスマートフォンを作製した。
カバー部材1のディスプレイ側に配置された光源48Jにより、第1の凹部7Hや第2の凹部14Hを照射すると、その側面において光が散乱されるため、指紋認証用センサ40の位置を視覚や触覚等により容易に認識でき指紋読取が容易になる。
(実施例7)
本発明の実施例7である化学強化シミュレーション結果について説明する。例1〜4は実施例、例5は比較例である。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(例1〜4)
[カバー部材]
ガラス基材として厚さT1が0.71mm、主面が70mm×150mmの直方体を使用した。このガラス基材に、図24(A)〜(D)に示すように、第1の主面3における第1の凹部7の幅W1、第1の凹部7の深さD1、第2の主面5における第2の凹部14の幅W2、第2の凹部14の深さD2がそれぞれ各図に示す値となるように、第1,第2の凹部7,14を形成し、薄肉部21の厚さT2を0.15mmとした例1〜4のカバー部材1を作製した。なお、第1,第2の凹部7,14のY方向の幅は、X方向の幅が23.5mmの場合、6.5mm、X方向の幅が27.5mmの場合、8.5mmとした。
例1〜4のカバー部材1について以下に示す化学強化シミュレーションモデルにより、第1の凹部7に突出部を形成した。すなわち、第1の凹部7の第1の底面部8と第2の凹部14の第2の底面部15とで挟まれる薄肉部21を曲面状にした。化学強化シミュレーションは以下の通り実施した。
[化学強化シミュレーション]
化学強化のシミュレーションには、汎用構造解析「Abaqus」(Ver6.13−2)を用いた。Abaqusの熱伝導解析を用いて「カリウムイオン濃度分布」を「温度分布」とみなして非定常計算した。なお、本シミュレーションに式(1)および式(2)を用い、表1に示す、425℃における硝酸カリウム100mol%溶融塩での材料係数を使用して計算した。
Figure 2020024477
ここで、式(1)におけるCはカリウムイオン濃度[mol%]、Cは初期カリウムイオン濃度[mol%]、Ceqは平衡カリウムイオン濃度[mol%]、Dはカリウムイオンの拡散係数[m/s]、Hはカリウムイオンの物質移動係数[m/s]、t:時間[s]、x:ガラス表面からの深さ[m]である。
Figure 2020024477
ここで、式(2)におけるσは応力[Pa]、Bは膨張係数、Eはヤング率[Pa]、νはポアソン比、Cavgは平均カリウム濃度[mol%]であり、式(3)で求められる。
Figure 2020024477
ここで、式(3)におけるLは半厚さ[m]、xはガラス表面からの深さ[m]である。
Figure 2020024477
(例5)
ガラス基材として厚さが0.71mm、主面が70mm×150mmの直方体を使用した。このガラス基材に、図24の例4と同様のサイズの第1,第2の凹部7,14を形成し例5とした。なお、例5については化学強化を施さないため、化学強化シミュレーションは必要なかった。
図25に示すように、カバー部材1の厚さ方向断面視で第1の底面部8の両端を結ぶ直線(第1の底面部8と第1の接続面部11とが接続される2つの点を結ぶ直線)を第1の基準線L1とする。第2の接続面部18は、第2の凹部14の開口縁と第2の底面部15の外縁とを接続する。第1の基準線L1と平行な線が第1の底面部8を構成する曲線と接する点のうち、第1の基準線L1から最も離れた点を第1の点A1とし、第1の点A1から第1の基準線L1までの垂線の長さ(距離H1)を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2020024477
例5は、未強化サンプルのため第1の凹部7に突出部はなく(薄肉部21が平板状のままで)、垂線の長さは0μmであった。一方、例1〜4については、薄肉部21が曲板状となり、所望の垂線の長さとなる突出部が得られた。以上のことから、例1〜4が本発明の実施例に相当し、例5が本発明の比較例に相当することがわかった。
そして、実際に、実施例に相当する例4のような突出部を備えたカバーガラスを作製したところ、この突出部を備えたカバー部材について、指にて突出部を認識できセンサ等の装置を組み合わせてもその位置を認識できた。一方、比較例に相当する例5では、強化されていないため耐擦傷性が低くなりさらに平坦部の触感が悪く指にフィットしなかった。
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更などでき、その他、本発明の実施の際の具体的な手順、及び構造等は本発明の目的を達成できる範囲で変更してもよい。
(屈曲部を有するカバー部材)
屈曲部を有するカバー部材は、少なくとも1つ以上の屈曲部を備える。屈曲部と平坦部を組み合わせた形状、全体が屈曲部となる形状などが挙げられるが、屈曲部を有すれば特に形状は限定されない。最近では、屈曲部を有するカバー部材を表示装置に使用する場合、各種機器(テレビ、パーソナルコンピューター、スマートフォン、カーナビゲーション等)において、表示パネルの表示面が曲面となったものが登場している。屈曲部は、表示パネルの形状や表示パネルの筺体の形状などに合わせて作製できる。なお、「平坦部」とは、平均曲率半径が1000mm超である部分を意味し、「屈曲部」とは、平均曲率半径が1000mm以下である部分を意味する。
(表面粗さなど)
カバー部材の薄肉部における第1の底面部、第2の底面部や、印刷層の第1の主面、第2の主面の粗さは前述のような算術平均粗さRaに限らない。例えば、二乗平均平方根粗さRqである場合、0.3nm以上100nm以下が好ましい。Rqが100nm以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rqが0.3nm以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。最大高さ粗さRzである場合、0.5nm以上300nm以下が好ましい。Rzが300nm以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rzが0.5nm以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。
最大断面高さ粗さRtである場合、1nm以上500nm以下が好ましい。Rtが500nm以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rtが1nm以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。最大山高さRpである場合、0.3nm以上500nm以下が好ましい。Rpが500nm以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rpが0.3nm以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。最大谷深さ粗さRvである場合、0.3nm以上500nm以下が好ましい。Rvが500nm以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rvが0.3nm以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。
平均長さ粗さRsmである場合、0.3nm以上1000nm以下が好ましい。Rsmが1000nm以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rsmが0.3nm以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。クルトシス粗さRkuである場合、1以上3以下が好ましい。Rkuが3以下であるとざらつきを感じにくくなり、Rkuが1以上であるとガラス表面の摩擦係数が適度となり、指などのすべり性が向上する。その他、Waなどのうねりでも表せ、粗さを表現するパラメータについては特に制限はない。スキューネス粗さRskが視認性、触感などの均一性の観点から−1以上1以下が好ましい。
<用途>
本発明のカバー部材の用途としては、特に限定されない。具体例としては、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板、インスツルメントパネル表面等。)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、建築用内装部材、建築用外装部材、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバ端面、プロジェクタ部品、複写機部品、太陽電池用透明基板(カバー部材等。)、携帯電話窓、バックライトユニット部品(導光板、冷陰極管等。)、バックライトユニット部品液晶輝度向上フィルム(プリズム、半透過フィルム等。)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザー光源、反射防止フィルム、偏光フィルム、農業用フィルム等が挙げられる。
<物品>
本発明の物品は、前記カバー部材を備える。
本発明の物品は、前記カバー部材からなるものでもよく、前記カバー部材以外の他の部材を更に備えるものでもよい。
本発明の物品の例としては、前記でカバー部材の用途として挙げたもの、それらの何れか1種以上を備える装置、等が挙げられる。
装置としては、例えば携帯情報端末、表示装置、照明装置、太陽電池モジュール等が挙げられる。
本発明の物品は、凹部が得られセンシング感度や視認性が良好であり、携帯情報端末や表示装置に適している。また車載用として使用されるカバー部材には複数かつサイズの大きな凹部が求められ、センサを配置した場合には高いセンシング感度が求められる。さらに屈曲形状であるカバー部材に凹部が求められることもある。本発明はこれらの要求を満足できるカバー部材を提供できる。以上より本発明のカバー部材は車載用のカバー部材として適している。
本発明の物品が表示装置の場合、本発明の物品は、画像を表示する表示パネルと、表示装置本体の視認側に設けられた本発明のカバー部材とを具備する。
表示パネルとしては、液晶パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。カバー部材は、表示装置の保護板として、表示パネルに一体に設けられてもよく、表示パネルの第2の主面にタッチパネルセンサのようなセンサを配置、すなわちカバー部材とセンサとの間に表示パネルがある構造としてもよい。またカバー部材はセンサを介して、表示パネルの視認側に配置してもよい。
本発明によれば、指紋認証用センサを組み込んだ場合に所望のセンシング能力を発揮可能なカバー部材、カバー部材を有する携帯情報端末又は表示装置、及びカバー部材を複数抜き出すためのガラス基板、並びに簡便なカバー部材及びガラス基板の製造方法を提供できる。
1…カバー部材、3,103…第1の主面、5,105…第2の主面、7,7A,7B,7C,7D,7G,7H,107…第1の凹部、8,8A,8B,8C,8D,8G,8H,108…第1の底面部、11,11A,11C,11H,111…第1の接続面部、14,14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G,14H,114…第2の凹部、15,15A,15B,15C,15D,15E,15F,15G,15H,115…第2の底面部、18A,18B,18D,18E,18F,18H,118…第2の接続面部、21,21A,21B,21C,21D,21E,21F,21H,121…薄肉部、22,22A,22B,22C,22D,22E,22F,122…厚肉部、101…ガラス基板。

Claims (18)

  1. 保護対象を保護するカバー部材であって、
    前記カバー部材の第1の主面には、第1の凹部が設けられ、
    第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置には、第2の凹部が設けられ、
    前記第1の凹部は、曲面状に形成された第1の底面部を備えていることを特徴とするカバー部材。
  2. 前記第1の底面部は、前記第1の主面側に突出する曲面状であり、
    前記第1の凹部は、当該第1の凹部の開口縁と前記第1の底面部の外縁とを接続する第1の接続面部を備えている請求項1に記載のカバー部材。
  3. 前記第1の底面部は、前記第2の主面側に突出する曲面状である請求項1に記載のカバー部材。
  4. 前記カバー部材の厚さ方向の断面視における前記第1の底面部の両端を結ぶ直線を第1の基準線L1、前記第1の基準線L1から最も離れた前記第1の底面部上の点を第1の点A1とした場合、
    前記第1の基準線L1から前記第1の点A1までの距離H1が5μm以上である請求項2又は3に記載のカバー部材。
  5. 前記カバー部材の厚さ方向の断面視における前記第1の底面部の両端を結ぶ直線を第1の基準線L1、前記第1の基準線L1から最も離れた前記第1の底面部上の点を第1の点A1、前記第2の凹部における前記第1の点A1に対応する点を対応点B2とした場合、
    前記第1の主面から前記第1の点A1までの深さJ1と前記第2の主面から前記対応点B2までの深さJ2との差の絶対値が0.1μm以上である請求項2から4のいずれか一項に記載のカバー部材。
  6. 前記第2の凹部における前記第1の底面部に対応する位置には、曲面状の第2の底面部が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のカバー部材。
  7. 前記第2の底面部は、前記第2の主面側に突出する曲面状であり、
    前記第2の凹部は、当該第2の凹部の開口縁と前記第2の底面部の外縁とを接続する第2の接続面部を備えている請求項6に記載のカバー部材。
  8. 前記第2の底面部は、前記第1の主面側に突出する曲面状である請求項6に記載のカバー部材。
  9. 前記カバー部材の厚さ方向の断面視における前記第2の底面部の両端を結ぶ直線を第2の基準線L2、前記第2の基準線L2から最も離れた前記第2の底面部上の点を第2の点A2とした場合、
    前記第2の基準線L2から前記第2の点A2までの距離H2が5μm以上である請求項7又は8に記載のカバー部材。
  10. 前記第2の凹部における前記第1の底面部に対応する位置には、前記第1の底面部と同じ方向に曲面状に突出する第2の底面部が形成され、当該第2の底面部と前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部が構成される請求項1から5のいずれか一項に記載のカバー部材。
  11. 前記カバー部材の平面視において前記第1の凹部が前記第2の凹部と重なる請求項1から10のいずれか一項に記載のカバー部材。
  12. 前記カバー部材の平面視における前記第1の凹部の重心位置と前記第2の凹部の重心位置との距離が100μm以下である請求項1から11のいずれか一項に記載のカバー部材。
  13. 前記第1の主面および前記第2の主面におけるカリウムイオン濃度が前記カバー部材の厚さ方向中央におけるカリウムイオン濃度よりも高い請求項1から12のいずれか一項に記載のカバー部材。
  14. 前記保護対象は、携帯情報端末である請求項1から13のいずれか一項に記載のカバー部材。
  15. 請求項1から14のいずれか一項に記載のカバー部材を有する携帯情報端末。
  16. 保護対象を保護するカバー部材をガラス基板から製造するカバー部材の製造方法であって、
    前記ガラス基板の第1の主面に第1の凹部を形成するとともに、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置に第2の凹部を形成し、
    前記第1の凹部および前記第2の凹部が形成された前記ガラス基板を化学強化し、
    前記凹部を形成する際に、前記第1の凹部が、平面状の第1の底面部を備え、前記第2の凹部が、前記第1の底面部に対応する位置に設けられ、前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部を構成する平面状の第2の底面部を備え、平面視において前記第1の凹部が前記第2の凹部と重なるように処理を行うことを特徴とするカバー部材の製造方法。
  17. 保護対象を保護するカバー部材をガラス基板から製造するカバー部材の製造方法であって、
    前記ガラス基板の第1の主面に第1の凹部を形成するとともに、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置に第2の凹部を形成し、
    前記第1の凹部および前記第2の凹部が形成された前記ガラス基板を化学強化し、
    前記凹部を形成する際に、前記第1の凹部が、平面状の第1の底面部と、前記第1の凹部の開口縁と前記第1の底面部の外縁とを接続する第1の接続面部とを備え、前記第2の凹部が、前記第1の底面部に対応する位置に設けられ、前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部を構成する平面状の第2の底面部と、前記第2の凹部の開口縁と前記第2の底面部の外縁とを接続する第2の接続面部とを備え、前記第1の底面部の深さと前記第2の底面部の深さとが異なるように処理を行うことを特徴とするカバー部材の製造方法。
  18. 保護対象を保護するカバー部材をガラス基板から製造するカバー部材の製造方法であって、
    前記ガラス基板の第1の主面に第1の凹部を形成するとともに、第2の主面における前記第1の凹部に対応する位置に第2の凹部を形成し、
    前記凹部を形成する際に、前記第1の凹部が、前記第1の主面側に突出する曲面状の第1の底面部を備え、前記第2の凹部が、前記第1の底面部に対応する位置において前記第1の主面側に突出する曲面状に形成し、前記第1の底面部とで挟まれる領域により薄肉部を構成する第2の底面部を備えるように処理を行うことを特徴とするカバー部材の製造方法。
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