JP2020021582A - 透明電極、有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法 - Google Patents

透明電極、有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法 Download PDF

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孝敏 末松
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Abstract

【課題】耐溶媒性と耐剥離性に優れた透明電極、それを用いた有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法を提供する。【解決手段】透明基板1上に、第1電極4及び絶縁層5を順次積層させた透明電極であって、絶縁層が、少なくとも第1電極の一部に形成され、かつポリシロキサン骨格に少なくとも1種のアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーである。【選択図】図1

Description

本発明は、透明電極、有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法に関する。より詳しくは、耐溶媒性と耐剥離性に優れた透明電極、それ用いた有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法に関する。
近年、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(以下、有機ELデバイスと略記する。)や有機太陽電池といった有機電子デバイスには、高効率化、大面積化、軽量化及びフレキシブル化等の様々な性能が要求されている。そのため、有機電子デバイスに用いられる透明電極には、低抵抗化、基板の軽量化、フレキシブル化等が求められている。さらに、コストの面からPET基板といった安価な樹脂基板の使用、ロール・トゥ・ロールプロセスによる大量生産方式への適応等が求められている。
従来、透明電極としては、透明基板上にインジウム−スズの複合酸化物(SnO2−In23:ITO)膜を、真空蒸着法やスパッタリング法により作製したITO透明電極が、その導電性や透明性といった特性上の利点から広く使用されてきた。しかしながら、PET基板等の樹脂フィルム基板上にITO透明電極を作製すると、ガラス基板上での場合より抵抗が高くなるため、大型の有機電子デバイスに用いることができない。また、樹脂フィルム基板のようなフレキシブルな基板に用いると、折り曲げの際、ITO層が基板の曲がりに追従できず、クラックが生じてしまうという問題があった。
一方、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSS)を基板上に形成した透明電極が知られている。導電性ポリマーは、フレキシブル性に優れ、ロール・トゥ・ロールプロセスに用いることができる。しかし、導電性ポリマー自体の体積抵抗が高く、かつ可視光域に吸収があるため、高い透明性を維持しながら、低抵抗の電極を作製することは難しい。
さらに、透明電極の低抵抗化、フレキシブル化を目指す中で、基板上に金属細線を補助電極として形成し、その上に透明導電層と絶縁層を用いることで、透明電極上に流れる電流にムラがなく、かつ高い導電性を有する透明電極が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。また、有機電子デバイスの製造プロセスでは、プロセスの簡略化や低コスト化の観点から、有機機能層を塗布プロセスで形成する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、基板上に補助電極と絶縁層を組み合わせた透明電極を用いその上に有機機能層を塗布する場合、有機機能層に用いられている溶媒に対し、絶縁層が溶出、剥離することにより、補助電極と透明電極との接着が十分でなく、そのような透明電極を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いると、ダークスポットの発生や、電流リークによる整流比が悪化するという問題があった。
特許第5991626号公報 特開2006−190759
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐溶媒性と耐剥離性に優れた透明電極を提供することである。また、それ用いた有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、電極上に設けられる絶縁層が、ポリシロキサン骨格に少なくとも1種のアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することにより上記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.透明基板上に第1電極及び絶縁層を順次積層させた透明電極であって、
前記絶縁層が、少なくとも前記第1電極の一部に形成され、かつ
ポリシロキサン骨格に少なくともアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することを特徴とする透明電極。
2.前記有機無機ハイブリッドポリマーの有機基が、アクリロイル基、エポキシ基又はイソシアネート基であることを特徴とする第1項に記載の透明電極。
3.前記絶縁層の厚さが、0.5〜3.0μmの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の透明電極。
4.前記第1電極が、透明導電層と補助電極を有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の透明電極。
5.前記補助電極上に、透明導電層を有することを特徴とする第4項に記載の透明電極。
6.前記透明基板が、フレキシブル基板であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の透明電極。
7.第1項から第6項までのいずれか一項に記載の透明電極を用いたことを特徴とする有機電子デバイス。
8.前記有機電子デバイスが、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする第7項に記載の有機電子デバイス。
9.第7項又は第8項に記載の有機電子デバイスを製造する有機電子デバイスの製造方法であって、
前記第1電極上に、前記有機無機ハイブリッドポリマーを含有する分散液を塗布し、前記絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に対し、100〜280℃の範囲内で加熱する工程又は、
150〜230nmの範囲内の波長のエキシマ光を照射する工程と、
を有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
本発明の上記手段により、耐溶媒性と耐剥離性に優れた透明電極を提供することができる。また、それ用いた有機電子デバイス及び有機電子デバイスの製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
金属細線と絶縁層を組み合わせた透明電極を用い、その上に有機機能層を設ける場合、
金属細線や絶縁層には、有機機能層を塗布するために用いられる溶媒に対して、溶媒に絶縁層が溶けない又は溶出しない特性である耐溶媒性や、塗布液で金属細線や樹脂が基板又は透明導電層から剥離しない特性である耐剥離性が求められる。これが十分でないと、部分的に金属細線が電極から剥離し絶縁層が機能しなくなってしまう。本発明においては、金属細線上に設けられた絶縁層を特定構造のシロキサン骨格を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することにより、有機溶媒に対する耐性を改善することができるため耐溶媒性と耐剥離性に優れた透明電極が実現できるものであると推察される。
透明電極の構成の一例を示す概略断面図 インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略図 インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略外観図 照明装置の概略図 照明装置の断面図
本発明の透明電極は、透明基板上に第1電極及び絶縁層を順次積層させた透明電極であって、前記絶縁層が、少なくとも前記第1電極の一部に形成され、かつポリシロキサン骨格に少なくともアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記有機無機ハイブリッドポリマーの有機基が、アクリロイル基、エポキシ基又はイソシアネート基であることが好ましい。
また、前記絶縁層の厚さは、0.5μm以上であることが絶縁性の観点から好ましく、耐溶媒性の観点から3.0μm以下であることが好ましい。
さらに、前記第1電極が、透明導電層と補助電極を有することが、透明電極の導電性の観点から好ましい。
また、前記補助電極上に、透明導電層を有することが好ましい。これにより、均一な面電極が得られる。基板が、フレキシブル基板であることが有機電子デバイスの可撓性の観点から好ましい。
本発明の透明電極は有機電子デバイスに用いられることが好ましい。
さらに、前記有機電子デバイスが、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
本発明の有機電子デバイスを製造する有機電子デバイスの製造方法としては、前記第1電極上に、前記有機無機ハイブリッドポリマーを含有する分散液を塗布し、前記絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層に対し、100〜280℃の範囲内で加熱する工程又は、150〜230nmの範囲内の波長のエキシマ光を照射する工程と、を有することが、耐溶媒性の観点から、より好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
なお、本発明において透明とは、光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。好ましくは光透過率が70%以上で、より好ましくは光透過率が80%以上である。
《透明電極の概要》
本発明の透明電極は、透明基板上に第1電極及び絶縁層を順次積層させた透明電極であって、前記絶縁層が、少なくとも前記第1電極の一部に形成され、かつポリシロキサン骨格に少なくともアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することを特徴とする。
図1は、本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図である。図1(A)は、透明基板(1)上に、透明導電層(2)と補助電極(3)とから構成される第1電極(4)を有し、その補助電極(3)上に絶縁層(5)が設けられている。つまり、基板/透明導電層/補助電極/絶縁層の順に積層させた透明電極を示している。
図1(B)は、透明基板(1)上に、第1電極(4)を構成する透明導電層(2)に対して補助電極(3)を先に塗布した場合、すなわち基板/補助電極/透明導電層/絶縁層の順に積層させた透明電極を示している。
図1(C)で示したように、透明基板(1)と第1電極(4)との間にガスバリアー層(6)を設けることができる。
本発明の透明電極上に、発光層を含む有機機能層と第2電極及び封止層等を設けることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製することができる。
図1(A)〜(C)において補助電極として、金属細線を用いることにより、面発光の有機EL素子を得ることができる。
また、例えば、図1(D)のように、補助電極(3)と絶縁層(5)を大面積にすることや、絶縁層(5)を透明導電層部分に任意に配置することにより作製した有機EL素子の絶縁層に覆われた部分を非発光部とすることもできる。このように非発光部と絶縁層に覆われていない発光部とを設けることにより、発光部にパターン化された形状、例えば様々な文様や、文字などの情報を有す有機EL素子を作製することもできる。同様に、例えば、図1(A)に示された二つの絶縁層の間だけに、発光層を含む有機機能層と第2電極及び封止層等を設けて有機EL素子を形成することにより、絶縁層の間だけを発光させ、この発光部に様々なパターンや、文字などの情報を付与することもできる。
本発明の透明電極は、絶縁層がポリシロキサン骨格に少なくとも1種のアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することにより、有機溶媒に対して、耐溶媒性(有機溶媒に絶縁層が溶けない、溶出しない)、耐剥離性(塗布液で金属細線や樹脂が基板又は透明導電層から剥離しない)に優れており、透明電極上に有機溶媒を用いた有機機能層を使用した場合でも、耐溶媒性、耐剥離性が優れており、本発明の透明電極を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は電流リークが少なくなり、ダークスポットも少ないという特徴を有する。
〔絶縁層〕
本発明に係る絶縁層は、少なくとも前記第1電極の一部に形成され、かつポリシロキサン骨格に少なくとも1種のアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することを特徴とする。ポリシロキサン骨格に少なくとも1種のアルキル基以外の有機基を有することにより、耐溶媒性と耐剥離性に優れた透明電極とすることが可能となる。
(有機無機ハイブリッドポリマー構造)
本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマーのアルキル基以外の有機基としては、公知の置換基を特に制限なく使用可能であり、例えば、アリール基、アラアルキル基、シクロアルキル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジ基、カルボニル基、フェニル基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、アシル基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミド基、イミド基、エステル基、オキシム基、チオール基、スルホ基、ウレア基、イソニトリル基、アレン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基等を用いることができる。アクリロイル基、エポキシ基又はイソシアネート基が好ましい。中でもアクリロイル基が特に好ましい。
(ポリシロキサン骨格)
ポリシロキサン骨格としては、例えば、Si−O−Si結合を有するポリシロキサン(ポリシルセスキオキサンを含む)を挙げることができる。ポリシロキサンとしては、具体的には、一般構造単位としての〔R3SiO1/2〕、〔R2SiO〕、〔RSiO3/2〕及び〔SiO2〕を含むことができる。ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基(Me)、エチル基、プロピル基等)、アリール基(例えば、フェニル基(Ph)等)、不飽和アルキル基(例えば、ビニル基等)からなる群より独立して選択される。特定のポリシロキサン骨格の例としては、〔PhSiO3/2〕、〔MeSiO3/2〕、〔HSiO3/2〕、〔MePhSiO〕、〔Ph2SiO〕、〔PhViSiO〕、〔ViSiO3/2〕(Viはビニル基を表す。)、〔MeHSiO〕、〔MeViSiO〕、〔Me2SiO〕、〔Me3SiO1/2〕等が挙げられる。また、ポリシロキサンの混合物やコポリマーも使用可能である。
(バインダー樹脂)
絶縁層には、本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマーの他に、本発明の効果を損なわない範囲内でバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、コポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂又はアクリル樹脂とその他樹脂との共重合体を用いることができるが、特にこれら例示する樹脂材料に限定されるものではない。この中では、セルロース誘導体、アクリル樹脂が好ましく、アクリル樹脂が最も好ましく用いられる。
〔第1電極〕
第1電極は、陽極又はアノードとして用いることが好ましい。第1電極は、透明導電層と補助電極を有することが好ましい。
図1(B)で示したように、透明基板(1)上に補助電極(3)を形成し、当該補助電極(3)上を被覆するように透明導電層(2)が形成されることが好ましい。又は、図1(A)で示したように透明基板(1)上に透明導電層(2)を形成し、当該透明導電層(2)上に補助電極(3)が形成されている構成であってもよい。透明導電層(2)は、主には、導電性ポリマー、カーボン材料、金属ナノ材料、又はこれらの混合で構成され、湿式塗布法又はインクジェットプリント法により形成することが好ましい。
透明導電層(2)の厚さは、10〜10000nmの範囲内にすることができる。導電性を高める観点、表面の平滑性を高める観点からは、厚さが100nm以上であることがより好ましい。また、透明性を高める観点からは、厚さが2000nm以下であることがより好ましい。
(導電性ポリマー)
本発明において、第1電極に用いる透明導電層の形成に適用可能な導電性ポリマーの一例として、ポリアニオンを含有するπ共役系導電性高分子を挙げることができる。
本発明に適用可能なπ共役系導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類等が挙げられる。なかでも、導電性、透明性、安定性等を高める観点から、ポリチオフェン類又はポリアニリン類が好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。
π共役系導電性高分子は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、酸化剤、酸化触媒及びポリアニオンの存在の下で、化学酸化重合させることによって容易に製造できる。π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、酸化剤の作用によって高分子化した際にも主鎖にπ共役系を有する。そのような前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル、又はこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなる化合物である。ポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化又は分散させ、ポリアニオンのアニオン基はπ共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、製造を容易とし、安定性を高める観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。なかでも、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点から、スルホ基、一置換硫酸エステル基又はカルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。さらに、これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、分子内にさらにフッ素原子を有するフッ素化ポリアニオンも使用することができる。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等が挙げられる。フッ素化ポリアニオンは、非フッ素化ポリアニオンと併用することにより、正孔注入機能を付加した透明電極を一体形成することができ、生産性が高まることから好ましい。
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲内にあることが好ましく、溶媒への溶解性及び導電性を高める点からは、50〜10000個の範囲内にあることがより好ましい。
導電性ポリマーにおけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンの比率、すなわちπ共役系導電性高分子:ポリアニオンの質量比は、1:1〜1:20の範囲内とすることができ、導電性及び分散性を高める観点からは、1:2〜1:10の範囲内とすることが好ましい。
導電性ポリマーは市販品を使用してもよく、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(以下、PEDOT−PSSと略す)の市販品としては、Heraeus社のCleviosシリーズ(PH510等)、Aldrich社のPEDOT−PSSの483095、560596、Nagase Chemtex社のDenatronシリーズ等がある。また、ポリアニリンの市販品としては、日産化学工業社製のORMECONシリーズ等を使用できる。
(非導電性ポリマー)
第1電極に用いる透明導電層は、透明性を高める観点から、上記説明した導電性ポリマーとともに、非導電性ポリマーを含有することが好ましく、さらに非導電性ポリマーが自己分散型ポリマー及びヒドロキシ基含有ポリマーの少なくとも一つを含有することがより好ましい。非電導性ポリマーを用いることにより、第1電極の導電性を損なうことなく、導電性ポリマーの含有量を減らすことができ、第1電極として高い導電性と透明性の両方を備える透明電極を得ることができる。
〈自己分散型ポリマー〉
導電性ポリマーと併用できる自己分散型ポリマーは、解離性基を有し、ミセル形成を補助する界面活性剤や乳化剤等がなくても、自己分散型ポリマーにより形成されるコロイド粒子が凝集することなく、自己分散型ポリマー単体で水系媒体中に分散することが可能な非導電性ポリマーである。自己分散型ポリマーは透明性が高いと、第1電極の透明性を高めることができ、好ましい。
自己分散型ポリマーの使用量は、導電性ポリマーに対して50〜1000質量%の範囲内とすることができる。
自己分散型ポリマーの主骨格としては、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン−ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアクリレート−ポリエステル、ポリアクリレート−ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン−ポリカーボネート、ポリウレタン−ポリエーテル、ポリウレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリアクリレート、シリコーン、シリコーン−ポリウレタン、シリコーン−ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン−ポリアクリレート、ポリフルオロオレフィン−ポリビニルエーテル等が挙げられる。また、これらの骨格をベースに、さらに他のモノマーを使用した共重合体でもよい。なかでも、エステル骨格を有するポリエステル樹脂エマルジョン、ポリエステル−アクリル樹脂エマルジョン、アクリル骨格を有するアクリル樹脂エマルジョン又はエチレン骨格を有するポリエチレン樹脂エマルジョンが好ましい。
自己分散型ポリマーの市販品としては、例えば、ヨドゾールAD−176、AD−137(以上、アクリル樹脂:ヘンケルジャパン社製)、バイロナールMD−1200、MD−1245、MD−1500(以上、ポリエステル樹脂:東洋紡社製)、プラスコートRZ570、プラスコートZ561、プラスコートZ565、プラスコートZ687、プラスコートZ690(以上、ポリエステル樹脂:互応化学社製)等を用いることができる。上記水系媒体に分散可能な、解離性基を含有する自己分散型ポリマー分散液は、1種でも複数種でも使用することができる。
〈ヒドロキシ基含有ポリマー〉
ヒドロキシ基含有ポリマーは、ヒドロキシ基を有する非導電性ポリマーである。第1電極における導電性ポリマーとヒドロキシ基含有ポリマーの比率、すなわち導電性ポリマー:ヒドロキシ基含有ポリマーの質量比は、100:30〜100:900の範囲内であることが好ましく、電流リークを防止し、透明性を高める観点からは、100:100〜100:900の範囲内であることがより好ましい。
ヒドロキシ基含有ポリマーとしては、例えば、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーが挙げられる。
Figure 2020021582
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表す。−Q−は、−C(=O)O−、又は−C(=O)NRd−を表し、Rdは、水素原子又はアルキル基を表す。Aは、置換もしくは無置換のアルキレン基、又は−(CH2CHReO)xCH2CHRe−を表し、Reは、水素原子又はアルキル基を表す。xは、平均繰り返しユニット数を表す。
ヒドロキシ基含有ポリマーは、第1電極の形成工程において、塗膜の乾燥に赤外線を用いる場合、溶媒の除去が容易となることから、赤外線と同じ2.5〜3.0μmの波長範囲内に吸光度0.1以上の吸収を持つことが好ましい。ここでいう吸光度は、形成する透明導電層の厚さの塗布膜における吸光度をいう。
(カーボン材料)
第1電極に用いる透明導電層の形成に適用可能なカーボン材料としては、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。これらカーボン材料は、それぞれ単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。また、カーボン材料により形成する第1電極は、単層であってもよいし、カーボン材料が同じ又は異なる複数の層からなる多層構造であってもよい。カーボン材料により形成する透明導電層の厚さは、10nm〜10μmの範囲内とすることができる。
〈グラフェン〉
グラフェンは、ハニカム構造状に結合した炭素原子のシートであり、このシートを、例えば、ガスバリアー層上に転写することにより、カーボンから構成される透明導電層を形成することができる。グラフェンの生成方法としては、例えば、特開2011−241479号公報記載の酸化グラフェンを塗布して還元する方法、SiC基板上にエピタキシャル成長を用いる方法、CuやNi等を触媒金属として熱CVDによりグラフェンを生成する方法、サファイア等の非金属基板上にグラフェンを生成する方法等の公知の方法を適用して生成することができる。
〈カーボンナノチューブ〉
カーボンナノチューブは、中空状のグラフェンからなるカーボンファイバーである。カーボンナノチューブは、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒とともに反応させて気相で成長させるHiPco法等によって生成することができる。フラーレンとしては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ等を用いることができる。カーボンナノチューブ又はフラーレンを用いる場合は、これらを含有する塗布液を調製してガスバリアー層上に塗布することにより、カーボンナノチューブから構成される透明導電層を形成することができる。
(金属ナノ材料)
透明導電層の形成に適用可能な金属ナノ材料は、サイズがナノスケールの金属材料であり、形状によってナノチューブ、ナノワイヤー、ナノファイバー等とも呼ばれる。金属の種類としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、これらの合金等が挙げられる。なかでも、銀は低抵抗で導電性が高く、所望の形状に加工しやすいことから、好ましい。
透明導電層を金属ナノ材料により形成する場合、金属ナノ材料を含有する塗布液を調製してガスバリアー層上に塗布することにより、形成することができる。金属ナノ材料により形成する透明導電層の厚さは、10nm〜10μmの範囲内とすることができる。
〔補助電極〕
第1電極は、透明導電層と補助電極を有することが好ましい。また、前記補助電極上に、透明導電層を有することが好ましい。
補助電極は、導電性の金属細線から構成されているグリッドであることが好ましい。グリッドの形状は、格子状に限らず、ストライプ状、ハニカム構造状、網目状等の様々な形状のグリッドを使用できる。位置によらず均一な導電性を得る観点からは、本発明の透明電極においては、ストライプ状又は格子状であることが好ましい。
さらに、補助電極は、有機EL素子を作製したとき、パターン化された発光部を形成できるように、絶縁層とともに、非発光部を形成することができる。この場合、グリッドと同じ材料を使用することができる。
グリッドを構成する金属細線の線幅dwは、10〜2000μmの範囲内にあることができる。線幅dwが10μm以上であれば十分な導電性が得られ、2000μm以下であれば透明性の低下を抑制できる。又は、有機EL素子を形成したときにパターン化された発光部を形成する場合には、非発光部を大面積化することもできる。
グリッドを構成する金属細線の高さdhは、0.1〜10.0μmの範囲内にあることが好ましい。高さdhが0.1μm以上であれば十分な導電性が得られ、10.0μm以下であれば電子デバイスに用いたときに電流リークを防ぐことができる。
グリッドの抵抗率は、100Ω/sq.以下であることが好ましく、大面積化するには20Ω/sq.以下であることがより好ましい。グリッドの抵抗率は、JIS K 7194−1994に準拠して測定することができる。
グリッドの開口率は、透明性を高める観点から、80%以上であることが好ましい。開口率とは、面発光部の全面積のうち、グリッドを形成する金属細線が配置されていない領域が占める面積の割合である。例えば、線幅が1mm、線間隔が10mmの金属細線が、格子状に形成されたグリッドの開口率は、約90%である。
グリッドの金属細線に使用できる導電性の金属材料としては、例えば、金、銀、銅、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、これらの合金等が挙げられる。低抵抗という観点からは、銀又は銅が好ましく、特に好ましくは銀である。
グリッドは、上記金属材料を用いた金属ナノ粒子、金属錯体等を含有する塗布液を、凸版印刷法、凹版印刷法、孔版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェットプリント法、インクジェット平行線描画法等により所望の形状に塗布することにより、形成することができる。インクジェット平行線描画法は、塗布液を線状に塗布したときに線の中央部から端部へと塗布液が流動して端部の固形化がすすむコーヒーステイン現象を利用して、1本の線から2本の平行線を形成する方法である。ランダムな網目形状を形成する場合は、特表2005−530005号公報に記載のように、金属微粒子を含有する塗布液を塗布した後、乾燥することにより、自発的に金属微粒子が無秩序な網目形状を形成する方法を利用できる。なかでも、形状の制御が容易なインクジェットプリント法又は細線形成の精度が高いインクジェット平行線描画法が好ましい。また、インクジェットプリント法は前記した有機EL素子にしたとき非発光部を有するためにパターン化された形状を有する補助電極を作製する場合においても好ましい。
金属錯体を含有する塗布液は、錯体を形成する金属が溶媒中に分散又は溶解されていればよい。溶媒としては、ケトカルボン酸、ベヘン酸、ステアリン酸等を使用できる。また、特表2008−530001号公報には、銀化合物とアンモニウムカーボネート系化合物とを反応して誘導された銀錯体化合物も挙げられている。塗布液は、還元剤として、アミン系化合物を含有することもできる。
グリッド形成時、フレキシブル基板にダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属ナノ粒子や金属錯体等の金属材料の融着が進み、グリッドの導電性が高まる。加熱処理には、一般的なオーブンやホットプレートによる加熱方法等を用いることができる。また、フラッシュパルス光照射処理、マイクロ波処理、プラズマ処理、誘電加熱処理、エキシマ光照射処理、紫外線処理、赤外ヒーター処理、熱風ヒーター処理等により、局所的な加熱処理を施してもよく、上記オーブン等による加熱処理と併用してもよい。
グリッドの表面の平滑性としては、JIS B 0601−2013に準拠して測定される最大断面高さRt(p)が500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。平滑性が高いほど、電極として用いたときの有機EL素子の歩留りや連続駆動性が向上する。
〔透明基板〕
透明電極に適用可能な透明基板としては、特に制限はなく、例えば、ガラス、樹脂等の種類を挙げることができ、好ましくは、有機EL素子にフレキシブル性を付与することができる観点からフレキシブル基板である。透明な樹脂材料が好ましい。
本発明に適用可能なフレキシブル性を備えた樹脂基板を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)及びアペル(商品名、三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
これら樹脂のうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)等のフィルムがフレキシブル性を有する透明基板として好ましく用いられる。
本発明において、透明基板の厚さとしては、3〜200μmの範囲内とすることができ、好ましくは、10〜100μmの範囲内であり、より好ましくは20〜50μmの範囲内である。
本発明に係る透明基板は、有機EL素子の封止部材(透明基板)としても好適に用いることもできる。また、上記の樹脂基板は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に適用可能な透明基板は、従来公知の一般的な製膜方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂を製造することができる。また、未延伸の樹脂を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、樹脂基板の搬送方向(縦軸方向、MD方向)、又は樹脂の搬送方向と直角の方向(横軸方向、TD方向)に延伸することにより、延伸樹脂を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内であることが好ましい。
また、本発明に適用可能な光透過性を有する透明基板であるガラス材料としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
〈ガスバリアー層〉
本発明に係る透明基板上には、ガスバリアー層を設けることができる。ガスバリアー層としては、気体や水分等の遮断効果を有していれば、特に制限はなく、従来公知のガスバリアー層を適宜選択して適用することができる。
ガスバリアー層は、無機材料被膜だけでなく、有機材料との複合材料からなる被膜又はこれらの被膜を積層したハイブリッド被膜であってもよい。ガスバリアー層の性能としては、JIS(日本工業規格)−K7129(2008年)に準拠した水蒸気透過度(環境条件:25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が約0.01g/(m2・24h)以下、JIS−K7126(2006年)に準拠した酸素透過度が約0.01mL/(m2・24h・atm)以下、抵抗率が1×1012Ω・cm以上、光線透過率は可視光領域で約80%以上であるような、ガスバリアー性を有する光透過性を有する絶縁膜であることが好ましい。
ガスバリアー層の形成材料としては、有機EL素子の劣化を招く、例えば水や酸素等のガスの有機EL素子への浸入を抑制できる材料であれば、任意の材料を用いることができる。
例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン等の無機材料からなる被膜で構成することができ、好ましくは、窒化ケイ素や酸化ケイ素等のケイ素化合物を主原料とする構成である。
ガスバリアー層の形成方法としては、従来公知の成膜方法を適宜選択して用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法(特開2004−68143号公報参照)、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、レーザーCVD法、熱CVD法、ALD(原子層堆積)法、また、ポリシラザン等を用いた湿式塗布法を適用することもできる。
〔透明電極の作製方法〕
透明電極は透明基板上に透明導電層、補助電極及び絶縁層とを積層することで作製することができる。必要により、透明基板と第1電極との間にガスバリアー層を設けることもできる。透明導電層、補助電極及びガスバリアー層の形成方法は前述のとおりである。絶縁層の形成方法について述べる。
(絶縁層の作製方法)
本発明に係る透明電極の作製方法は、主に、
(i)第1電極上に、有機無機ハイブリッドポリマーを含有する分散液を塗布し、絶縁層を形成する工程と、
(ii)絶縁層に対し、100〜280℃の範囲内で加熱する工程、又は150〜230nmの範囲内の波長のエキシマ光を照射する工程と、
を有していることが好ましい。以下、各工程について説明する。
(i)絶縁層を形成する工程
絶縁層は、本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマーを含有する分散液を、第1電極を形成した透明基板上に塗布することで形成する。分散液の塗布方法としては、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー塗布等の各種印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の各種塗布法を用いることができる。
さらに、絶縁層は、有機EL素子を作製したとき、パターン化された発光部を形成できるように、補助電極とともに、非発光部を形成することができる。
例えば、前述した、図1(A)に示された2個所の絶縁層を厚く塗布し、二つの絶縁層の間だけに、発光層を含む有機機能層と第2電極及び封止層等を設けて有機EL素子を設ける場合、絶縁層の厚さは0.05〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。
(ii−1)絶縁層を加熱する工程
本発明に係る絶縁層は、100〜280℃の範囲内で加熱することにより、硬化させることが好ましい。100℃以上であれば、絶縁層がエネルギー不足で硬化しないことがない。280℃以内であると絶縁層が分解を起こして着色し、光透過率が低下し、素子の発光効率が低下することがない。
絶縁層の加熱に用いられる加熱装置としては、一般に使用されているものが使用でき、例えば、接触式のホットプレート、非接触式のIRヒーター等が挙げられる。これらの装置は、透明基板を加熱できるものであれば使用に際して特に制限なく用いることができる。
(ii−2)絶縁層にエキシマ光を照射する工程
本発明に係る絶縁層は、上記加熱工程に代えて、150〜230nmの範囲内の波長のエキシマ光を照射することにより、硬化させることが好ましい。このような照射装置としては、具体的には、100〜230nmの範囲内の真空紫外線を発する希ガスエキシマランプが挙げられる。
Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガス原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガス原子(励起原子)は、他の原子と結合して分子を作ることができる。
例えば、Xe(キセノン)の場合、下記反応式で示されるように、励起されたエキシマ分子であるXe2*が基底状態に遷移するときに、波長172nmのエキシマ光を発光する。
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2*+Xe
Xe2*→Xe+Xe+hν(172nm)
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので、光の発生効率が高いことが挙げられる。これにより、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域の単一波長でエネルギーを照射するため、対象物の温度を比較的低く保つことができる。さらには、始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ光を効率よく照射する光源としては、誘電体バリアー放電ランプが挙げられる。誘電体バリアー放電ランプの構成としては、電極間に誘電体を介して放電を起こすものであり、一般的には、誘電体からなる放電容器とその外部とに少なくとも一方の電極が配置されていればよい。誘電体バリアー放電ランプとして、例えば、石英ガラスで構成された太い管と細い管とからなる二重円筒状の放電容器中にXe等の希ガスが封入され、該放電容器の外部に網状の第1の電極を設け、内管の内側に他の電極を設けたものがある。誘電体バリアー放電ランプは、電極間に高周波電圧等を加えることによって放電容器内部に誘電体バリアー放電を発生させ、該放電により生成されたXe等のエキシマ分子が解離する際にエキシマ光を発生させる。
《有機電子デバイス》
本発明の透明電極は有機電子デバイスの電極として好ましく使用することができる。有機電子デバイスは、本発明の透明電極と有機機能層とを有する。例えば、本発明の透明電極を第1電極として、この第1電極の上に有機機能層を形成し、更にこの有機機能層の上に対向配置された第2電極を形成することによって、有機電子デバイスを得ることができる。
有機機能層としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層等、特に限定なく挙げることができるが、有機機能層が薄膜で、かつ電流駆動系のものである有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
以下、有機電子デバイスが、有機EL素子又は有機光電変換素子である場合のその構成要素について説明する。
〔有機EL素子〕
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明に係る発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
本発明に係る電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。本発明に係る正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機機能層」ともいう。
(タンデム構造)
また、本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/第2発光ユニット/第3発光ユニット/陰極
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。また、第3発光ユニットはなくてもよく、一方で第3発光ユニットと電極の間にさらに発光ユニットや中間層を設けてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料及び構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・錫酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO2、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO2、CuGaO2、SrCu22、LaB6、RuO2、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi23等の2層膜や、SnO2/Ag/SnO2、ZnO/Ag/ZnO、Bi23/Au/Bi23、TiO2/TiN/TiO2、TiO2/ZrN/TiO2等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号、米国特許第7420203号、米国特許第7473923号、米国特許第6872472号、米国特許第6107734号、米国特許第6337492号、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に係る発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の厚さの総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2nm〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5nm〜200nmの範囲に調整される。
また、個々の発光層の厚さとしては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2nm〜200nmnmの範囲に調整され、更に好ましくは3nm〜150nmの範囲に調整される。
発光層には、発光ドーパント(発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう)と、ホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう)とを含有することが好ましい。
(1)発光ドーパント
発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)と、リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう)が好ましく用いられる。本発明においては、少なくとも1層の発光層がリン光発光ドーパントを含有することが好ましい。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパント及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の厚さ方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明に係る発光ドーパントは、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。本発明の有機EL素子における白色とは、特に限定はなく、橙色寄りの白色であっても青色寄りの白色であってもよいが、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/m2でのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
(1.1)リン光発光性ドーパント
本発明に係るリン光発光性ドーパント(以下、「リン光ドーパント」ともいう)について説明する。
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては二種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明において使用できるリン光ドーパントとしては、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006835469号、米国特許公開第20060202194号、米国特許公開第20070087321号、米国特許公開第20050244673号、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第20020034656号、米国特許第7332232号、米国特許公開第20090108737号、米国特許公開第20090039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20060008670号、米国特許公開第20090165846号、米国特許公開第20080015355号、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許公開第20060263635号、米国特許公開第20030138657号、米国特許公開第20030152802号、米国特許第7090928号、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第20060251923号、米国特許公開第20050260441号、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許公開第20070190359号、米国特許公開第20080297033号、米国特許第7338722号、米国特許公開第20020134984号、米国特許第7279704号、米国特許公開第2006098120号、米国特許公開第2006103874号、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許公開第2012228583号、米国特許公開第2012212126号、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(1.2)蛍光発光性ドーパント
本発明に係る蛍光発光性ドーパント(以下、「蛍光ドーパント」ともいう)について説明する。本発明に係る蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
本発明に係る蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
(2)ホスト化合物
本発明に係るホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
本発明で用いることができるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好まし。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第20030175553号、米国特許公開第20060280965号、米国特許公開第20050112407号、米国特許公開第20090017330号、米国特許公開第20090030202号、米国特許公開第20050238919号、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP2034538、
等である。
《電子輸送層》
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。本発明に係る電子輸送層の総厚さについては特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総厚さを数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。一方で、電子輸送層の厚さを厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に厚さが厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10-5cm2/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許第6528187号、米国特許第7230107号、米国特許公開第20050025993号、米国特許公開第20040036077号、米国特許公開第20090115316号、米国特許公開第20090101870号、米国特許公開第20090179554号、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号、米国特許公開第2009030202号、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号、等である。
本発明におけるよりより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《正孔阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。本発明に係る正孔阻止層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
《電子注入層》
本発明に係る電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記の如く陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその厚さは0.1nm〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
《正孔輸送層》
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。本発明に係る正孔輸送層の総厚さについては特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン):PSS(ポリスチレンスルホン酸)、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、αNPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)に代表されるベンジジン型や、MTDATA(4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン)に代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)3に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許公開第20030162053号、米国特許公開第20020158242号、米国特許公開第20060240279号、米国特許公開第20080220265号、米国特許第5061569号、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許公開第20080124572号、米国特許公開第20070278938号、米国特許公開第20080106190号、米国特許公開第20080018221号、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《電子阻止層》
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に係る電子阻止層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も電子阻止層に好ましく用いられる。
《正孔注入層》
本発明に係る正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記の如く陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432や特開2006−135145等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《含有物》
前述した本発明における有機機能層は、更に他の含有物が含まれていてもよい。
含有物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。含有物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
《有機機能層の形成方法》
本発明に係る有機機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明に係る有機機能層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、例えばグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法のほか、スピンコート法、キャスト法、インクジェット印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ドクターコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、塗布液を容易に精度良く塗布することが可能で、且つ高生産性の点から、インクジェットヘッドを用いたインクジェット印刷法により塗布することがより好ましい。
湿式法に用いる塗布液は、有機機能層を形成する材料が液媒体に均一に溶解される溶液でも、材料が固形分として液媒体に分散される分散液でも良い。分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
液媒体としては特に制限はなく、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、ジクロロヘキサノン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(OFPO)、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)等のフッ素置換したアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(略称:PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル(炭素数1〜4)系溶媒プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4)アルキルエーテルエステル類ジメチルスルホキシド、水又はこれらの混合液媒体等が挙げられる。
塗布液の調製に用いる有機溶剤としては、炭化水素類、アルコール(特にフッ素置換したアルコール類)、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類などを適宜混合して使用することができるが、有機溶剤は、特にこれらに限定されるものではない。
これらの液媒体の沸点としては、迅速に液媒体を乾燥させる観点から乾燥処理の温度未満の沸点が好ましく、具体的には60℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは、80℃〜180℃の範囲である。
塗布液は、塗布範囲を制御する目的や、塗布後の表面張力勾配に伴う液流動(例えば、コーヒーリングと呼ばれる現象を引き起こす液流動)を抑制する目的に応じて、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤としては、溶媒に含まれる水分の影響、レベリング性、透明電極への濡れ性等の観点から、例えばアニオン性又はノニオン性の界面活性剤等が挙げられる。具体的には、含フッ素系活性剤等、国際公開第08/146681号、特開平2−41308号公報等に挙げられた界面活性剤を用いることができる。
塗布膜の粘度についても、厚さと同様に、有機機能層として必要とされる機能と有機材料の溶解度又は分散性により、適宜選択することが可能で、具体的には例えば0.3〜100mPa・sの範囲内で選択することができる。
塗布膜の厚さは、有機機能層として必要とされる機能と有機材料の溶解度又は分散性により適宜選択することが可能で、具体的には例えば1〜90μmの範囲内で選択することができる。
湿式法により塗布膜を形成した後、上述した液媒体を除去する塗布工程を有することができる。乾燥工程の温度は特に制限されないが、有機機能層や透明電極や基材が損傷しない程度の温度で乾燥処理することが好ましい。具体的には、塗布液の組成等によって異なるため一概には言えないが、例えば、80℃以上の温度とすることができ、上限は300℃程度までは可能な領域と考えられる。時間は10秒以上10分以下程度とすることが好ましい。このような条件とすることにより、乾燥を迅速に行うことができる。
《第2電極》
第2電極は、第1電極と対をなし、陰極であることが好ましい。陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《封止》
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、たとえば、封止部材と、電極、透明基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10-3mL/(m2・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10-3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機機能層を挟み透明基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機機能層を被覆し、透明基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、たとえば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。
さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、たとえば、金属酸化物(たとえば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(たとえば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(たとえば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(たとえば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
《保護膜、保護板》
有機機能層を挟み透明基板と対向する側の前記封止膜あるいは前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
《光取り出し向上技術》
有機エレクトロルミネッセンス素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などが挙げられる。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。またさらに1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む厚さになると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でも良いが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
《集光シート》
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明基板(基板)の光取出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
《有機EL素子の製造方法》
本発明の有機EL素子の製造方法においては、湿式法で形成することが好ましく、インクジェットヘッドを用いて、インクジェット印刷法により、本発明に係る有機機能層を形成することがより好ましい。
〔インクジェット印刷法〕
本発明に係る有機機能層や透明電極は、特にインクジェット印刷法により形成することが好ましい。
インクジェット印刷法で用いられるインクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でもよい。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いてもよい。また、印字方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式等を制限なく用いることができる。
ヘッドから射出するインク滴の体積は、0.5〜100pLの範囲とすることが好ましい。塗布ムラが少なく、かつ印字速度を高速化できる観点から、2〜50pLの範囲であることが、より好ましい。なお、インク滴の体積は、印加電圧の調整等によって適宜調整可能である。
印字解像度は、好ましくは180〜10000dpi(dots per inch)の範囲、より好ましくは360〜2880dpiの範囲で、湿潤厚さとインク滴の体積等を考慮して適宜設定することができる。
本発明において、インクジェット塗布時(塗布直後)における湿潤塗膜の湿潤厚さは、適宜設定することができるが、好ましくは1〜100μmの範囲、より好ましくは1〜30μmの範囲、最も好ましくは1〜5μmの範囲において、本発明の効果がより顕著に奏される。なお、湿潤厚さは、塗布面積、印字解像度及びインク滴の体積から算出できる。
インクジェットによる印字方法には、ワンパス印字法とマルチパス印字法がある。ワンパス印字法は、所定の印字領域を1回のヘッドスキャンで印字する方法である。対して、マルチパス印字法は、所定の印字領域を複数回のヘッドスキャンで印字する方法である。
ワンパス印字法では、所望とする塗布パターンの幅以上の幅に亘ってノズルが並設された広幅のヘッドを用いることが好ましい。同一の基材上に、互いにパターンが連続していない独立した複数の塗布パターンを形成する場合は、少なくとも各塗布パターンの幅以上の広幅ヘッドを用いればよい。
以下、インクジェット印刷法による有機機能層の形成方法について、その一例を、図を交えて説明する。
図2は、インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略図である。
図2には、インクジェットヘッドを具備したインクジェット印刷装置を用いて、透明基板上に、有機EL素子の有機機能層を形成する有機機能性材料と、溶媒を含有するインク組成物を吐出する方法の一例を示してある。
図2に示すように、一例として、透明基板を連続的に搬送しながら、インクジェットヘッドにより、インク組成物を、インク液滴として順次、透明基板上に射出して、有機EL素子の有機機能層ユニット(U)を形成することができる。
本発明の有機EL素子の製造方法に適用可能なインクジェットヘッド(30)としては、特に限定はなく、例えば、インク圧力室に圧電素子を備えた振動板を有し、この振動板によるインク圧力室の圧力変化でインク組成物を吐出させる剪断モード型(ピエゾ型)のヘッドでもよいし、発熱素子を有し、この発熱素子からの熱エネルギーによりインク組成物の膜沸騰による急激な体積変化によりノズルからインク組成物を吐出させるサーマルタイプのヘッドであってもよい。
インクジェットヘッド(30)には、射出用のインク組成物の供給機構などが接続されている。インク組成物のインクジェットヘッド(30)への供給は、タンク(38A)により行われる。インクジェットヘッド(30)内のインク組成物の圧力を常に一定に保つようにこの例ではタンク液面を一定にする。その方法としては、インク組成物をタンク(38A)からオーバーフローさせてタンク(38B)に自然流下で戻している。タンク(38B)からタンク(38A)へのインク組成物の供給は、ポンプ(31)により行われており、射出条件に合わせて安定的にタンク(38A)の液面が一定となるように制御されている。
なお、ポンプ(31)によりタンク(38A)へインク組成物を戻す際には、フィルター(32)を通してから行われている。このように、インク組成物はインクジェットヘッド(30)へ供給される前に絶対濾過精度又は準絶対濾過精度が0.05〜50μmの濾材を少なくとも1回は通過させることが好ましい。
また、インクジェットヘッド(30)の洗浄作業や液体充填作業などを実施するためにタンク(36)よりインク組成物が、タンク(37)より洗浄溶媒がポンプ(39)によりインクジェットヘッド(30)へ強制的に供給可能となっている。インクジェットヘッド(30)に対してこうしたタンクポンプ類は複数に分けても良いし、配管の分岐を使用しても良い、またそれらの組み合わせでもかまわない。
図2では配管分岐(33)を使用している。さらにインクジェットヘッド(30)内のエアーを十分に除去するためにタンク(36)よりポンプ(39)にてインクジェット(30)へインク組成物を強制的に送液しながら下記に記すエアー抜き配管からインク組成物を抜き出して廃液タンク(34)に送ることもある。
図3は、インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略外観図である。
図3の(a)は、本発明に適用可能なインクジェットヘッド(100)を示す概略斜視図であり、図3の(b)は、インクジェットヘッド(100)の底面図である。
本発明に適用可能なインクジェットヘッド(100)は、インクジェット記録装置(図示略)に搭載されるものであり、インクをノズルから吐出させるヘッドチップと、このヘッドチップが配設された配線基板と、この配線基板とフレキシブル基板を介して接続された駆動回路基板と、ヘッドチップのチャネルにフィルターを介してインクを導入するマニホールドと、内側にマニホールドが収納された筐体(56)と、この筐体(56)の底面開口を塞ぐように取り付けられたキャップ受板(57)と、マニホールドの第1インクポート及び第2インクポートに取り付けられた第1及び第2ジョイント(81a、81b)と、マニホールドの第3インクポートに取り付けられた第3ジョイント(82)と、筐体(56)に取り付けられたカバー部材(59)とを備えている。また、筐体(56)をプリンタ本体側に取り付けるための取り付け用孔(68)がそれぞれ形成されている。
また、図3の(b)で示すキャップ受板(57)は、キャップ受板取り付け部(62)の形状に対応して、外形が左右方向に長尺な略矩形板状として形成され、その略中央部に複数のノズルが配置されているノズルプレート(61)を露出させるため、左右方向に長尺なノズル用開口部(71)が設けられている。また、図3の(a)で示すインクジェットヘッド内部の具体的な構造に関しては、例えば、特開2012−140017号公報に記載されている図2等を参照することができる。
図3にはインクジェットヘッドの代表例を示したが、そのほかにも、例えば、特開2012−140017号公報、特開2013−010227号公報、特開2014−058171号公報、特開2014−097644号公報、特開2015−142979号公報、特開2015−142980号公報、特開2016−002675号公報、特開2016−002682号公報、特開2016−107401号公報、特開2017−109476号公報、特開2017−177626号公報等に記載されている構成からなるインクジェットヘッドを適宜選択して適用することができる。
《用途》
本発明の透明電極は、有機電子デバイスに好ましく用いられる。上述したように、有機電子デバイスが有機EL素子であることが好ましい。また、有機電子デバイスが有機光電変換素子であることが好ましい。
有機EL素子としては、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
(照明装置の一態様)
本発明の有機EL素子を具備した、照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚み300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図4、図5に示すような照明装置を形成することができる。
図4は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。)。
図5は、照明装置の断面図を示し、図5において、105は陰極、106は有機EL層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
〔有機光電変換素子〕
有機光電変換素子は、本発明の透明電極、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層及びn型半導体層)を有する光電変換層(バルクヘテロジャンクション層ともいう。)、第2電極が積層された構造を有することが好ましい。
本発明の透明電極は、少なくとも入射光側に用いられる。光電変換層と第2電極との間に電子輸送層等の中間層を有してもよい。
(2.1)光電変換層
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成していることが好ましい。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子とのペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
特に、ポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン等のオリゴマーを好適に用いることができる。
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリン等が挙げられ、更には、特開2006−36755号公報等の置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、国際公開第2008/000664号、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981等のチオフェン共重合体等を挙げることができる。
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、シングルウォールナノチューブ(SWNT)等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、更にポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号公報に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
これらのπ共役系材料の中でも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号号、国際公開第03/28125号号、米国特許第6690029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No14,4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶媒への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123,p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008),No.9,2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
これらの中でも、後者のプレカーサータイプの方が好ましく用いることができる。これは、プレカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔阻止層・電子阻止層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、正孔輸送層等を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって化学構造変化を起こす化合物が好ましい。
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
フラーレン含有ポリマーは、フラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
本発明の光電変換素子を、太陽電池等の光電変換素子として用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層(タンデム型)して利用してもよい。また、光電変換素子は、環境中の酸素、水分等で劣化しないように、公知の手法によって封止することが好ましい。
光電変換素子の有機機能層や透明電極は有機EL素子同様インクジェット印刷法で形成することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例1
《透明電極の作製》
(透明導電層用塗布液1の調製)
下記の透明導電材料導電性ポリマー42gに、ジメチスルホキシド(DMSO)4.2gに添加混合した後、加熱溶解して、透明導電層用塗布液1を調製した。
導電性ポリマーとしてPH510:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510、Heraeus社製(固形分濃度1.89質量%、PEDOT:PSS(固形分比率)=1:2.5)を用いた。
〔透明電極101の作製〕
(透明導電層の形成)
透明基板として60mm×60mm×0.7mmの透明な無アルカリガラス基板を脱脂し、超純水洗浄、クリーンドライヤーで乾燥したものを用いた。この上に上記のようにして調製した透明導電層用塗布液1を、アプリケーターを用いて塗布し、塗布後、ヒーターを用いて、120℃で60分間加熱処理を行い乾燥層厚が400nmとなるように塗布した。
(補助電極の形成)
乾燥後、透明導電層上に、銀ナノ粒子分散液(NPS−JL ハリマ化成株式会社製)をインクジェット印刷法を用いて、1mmピッチでストライプ状に塗布してパターン形成し、焼成後の金属細線の厚さが1.0μmになるように複数回塗布し、積層した。その後、110℃、60分間焼成し金属細線を形成した。金属細線の厚さは、高輝度非接触3次元表面形状粗さ計WYKO NT9100を用いて測定した。なお、分散液塗布後、線幅が90μmとなっていた。
インクジェット印刷法としては、インク液滴の射出量が4pLのインクジェットヘッドを使用し、塗布速度と射出周波数を調整して、パターンを印刷した。インクジェット印刷装置としては、インクジェットヘッドKM512Sタイプ(コニカミノルタ社製)を取り付けた卓上型ロボットShotmaster−300(武蔵エンジニアリング社製)を用い、インクジェット評価装置EB150(コニカミノルタ社製)にて制御した。
(絶縁層の形成)
ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を補助電極の形成と同様にして、補助電極を覆うように、補助電極と同じ位置にインクジェット印刷法により、乾燥時の厚さが1.0μmとなるよう塗布して、透明基板上に透明導電層補助電極及び絶縁層を有する積層体を得た。
(硬化条件)
上記形成した絶縁層を80℃で2min加熱処理することにより、透明電極101を得た。
〔透明電極102の作製〕
透明電極101の作製において、用いたポリカーボネート樹脂をポリ塩化ビニル樹脂に置き換えた以外は同様にして透明電極102を作製した。
〔透明電極103の作製〕
透明電極101の作製において、用いたポリカーボネート樹脂をポリメチルメタクリレート樹脂に置き換えた以外は同様にして透明電極103を作製した。
〔透明電極104の作製〕
透明電極101の作製において、用いたポリカーボネート樹脂をポリビニルフェノール樹脂に置き換えた以外は同様にして透明電極104を作製した。
〔透明電極105の作製〕
透明電極101の作製において、補助電極までは、透明電極101と同様に形成した後絶縁層を以下のようにして形成し、透明電極105を作製した。
(絶縁層の形成)
ポリシロキサンの塩化メチレン溶液を補助電極の形成と同様にして、補助電極を覆うように、補助電極と同じ位置にインクジェット印刷法により、乾燥時の厚さが1.0μmとなるよう塗布して、透明基板上に透明導電層補助電極及び絶縁層を有する積層体を得た。ポリシロキサン骨格を生成する素材としては、信越化学工業(株)製、X−40−9238(完全無機系)を使用した。
(硬化条件)
上記形成した絶縁層を120℃で10min加熱処理した後、波長222nmのエキシマ光(エキシマ光A)を照射することにより、透明電極105を得た。
(エキシマ光Aの照射条件)
装置:株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL MEIRH−M−1−200−222−H−KM−G
波長:222nm
ランプ封入ガス:KrCl
エキシマ光強度:8J/cm2(222nm)
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:大気
積算光量:1J
〔透明電極106の作製〕
透明電極105の作製において、ポリシロキサンをカルボキシ基を有するポリシロキサンに変え、さらに絶縁層の硬化条件を加熱のみ、すなわち120℃で10min加熱処理することにより、透明電極106を得た。カルボキシ基を有するポリシロキサン骨格を生成する素材としては、信越化学工業(株)製、X−22−3710を使用した。
〔透明電極107〜120の作製〕
透明電極105の作製において、用いた透明導電層と絶縁層の材料及び厚さ並びに絶縁層の硬化条件を表Iのように変えて透明電極105と同様にして透明電極107〜120を作製した。なお、絶縁層の硬化条件として、透明電極116では50℃で乾燥後、エキシマ光Aとエキシマ光Bで硬化した。
なお、透明電極119及び120の作製において、透明導電層は、スパッタ法により厚さ100nmに成膜した。また、表I中の「ポリシロキサン(カルボキシ基)」は、カルボキシ基を有するポリシロキサン化合物を意味する。他の()内のアミノ基、アクリロイル基等も同様である。
表I中の絶縁層は以下を用いた。
・ポリシロキサン:信越化学工業(株)製、X−40−9238(完全無機系)
・ポリシロキサン(カルボキシ基):カルボキシ基を有するポリシロキサン化合物 信越化学工業(株)製、X−22−3710
・ポリシロキサン(アミノ基):アミノ基を有するポリシロキサン化合物 信越化学工業(株)製、KF−868
・ポリシロキサン(アクリロイル基1):アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物 JSR(株)製、グラスカ
・ポリシロキサン(アクリロイル基2):アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物 APM社製ED230L
・ポリシロキサン(エポキシ基):エポキシ基を有するポリシロキサン化合物 信越化学工業(株)製、X−41−1053
・ポリシロキサン(ブロックイソシアネート基):ブロックイソシアネート基を有するポリシロキサン化合物 JSR(株)製、有機無機ハイブリッドコート剤#2087
また、表I中のエキシマ光(エキシマ光B)の条件は以下の通りである。
(エキシマ光Bの照射条件)
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:大気
積算光量:0.25J
なお、表I中、エキシマ光Aを用いた絶縁層の硬化条件を光硬化A、及びエキシマ光Bを用いた絶縁層の硬化条件を光硬化Bと略記した。
〔透明電極121〜123の作製〕
透明電極109、119及び120の作製において、透明導電層と補助電極の形成の順番と絶縁層の硬化条件を変えた以外は同様にして、それぞれ121〜123を作製した。
(透明電極122及び123の作製)
透明電極119の作製同様、透明導電層をそれぞれ表1に示した材料に代えてスパッタ法により作製した。
〔透明電極124の作製〕
透明電極109の作製において、透明基板として、ガラスに代えてガスバリアー層を有する樹脂フィルムを用いた以外は透明電極109と同様にして透明電極124を作製した。具体的には、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション社製フィルム)を用い、その陽極を形成する面側に、特開2004−68143号公報に記載の構成からなる大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、連続して可撓性フィルム上に、SiOxからなる無機物のガスバリアー膜を厚さ500nmとなるように形成し、酸素透過度が0.001mL/(m2・24hr・atm)以下、水蒸気透過度が0.001g/(m2・24hr)以下のガスバリアー層を有する透明基材を用いた。
以上の透明電極の作製に用いた材料の詳細又は略称は以下のとおりである。
透明導電層
ITO:酸化インジウム−酸化スズ
IZO:酸化インジウム−酸化亜鉛
《透明電極の評価》
上記作製した透明電極101〜124について、それぞれ耐溶媒性と耐剥離性を評価した。
〔耐溶媒性〕
製造した透明電極における絶縁層部分の厚さを測定した。次に作製した透明電極を下記の30種の溶媒中に、それぞれに温度23℃で1分の条件で浸漬し、それぞれの乾燥後の厚さを測定した。残存率=(浸漬乾燥後の膜厚)/(浸漬前の膜厚)とし、以下の評価基準によりランク分けした。厚さは、高輝度非接触3次元表面形状粗さ計WYKO NT9100を用いて3か所測定し、得られた値の算術平均値を用いた。
(用いた溶媒)
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(OFPO)、
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)、
酢酸3−メトキシブチル、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、
エチレングリコールモノブチルエーテル、
プロピレングリコールn−ブチルエーテル、
プロピレングリコールn−プロピルエーテル、
2−エトキシエタノール(エチレングリコールモノエチルエーテル)、
2−ヘキサノール、
1−ブタノール、
1−プロパノール、
プロピレングリコール、
エチレングリコール、
o−キシレン、
1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、
2−メトキシトルエン、
テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)、
2,3−ジメチルアニソール、
1,2−ジメトキシベンゼン、
ブトキシベンゼン、
デシルベンゼン、
シクロヘキサノン、
シクロヘキサノール、
シクロヘキシルベンゼン(フェニルシクロヘキサン)及び
安息香酸エチル
5:使用した溶媒の9割以上で厚さの残存率が90%以上
4:使用した溶媒の8割以上で厚さの残存率が80%以上
3:使用した溶媒の7割以上で厚さの残存率が70%以上
2:使用した溶媒の5割以上で厚さの残存率が50%以上
1:使用した溶媒の5割以下で厚さの残存率が50%以下
〔耐剥離性〕
作製した透明電極を上述の溶媒中にそれぞれに温度23℃で5分の条件で浸漬し、乾燥後、補助電極の剥離が起きるか検討した。
5:使用した溶媒の8割以上で剥離が認められない
4:使用した溶媒の7割以上で剥離が認められない
3:使用した溶媒の6割以上で剥離が認められない
2:使用した溶媒の5割以上で剥離が認められない
1:使用した溶媒の5割以下で剥離が認められない
以上の評価結果を表Iに示す。
Figure 2020021582
表Iより、本発明の透明電極は耐溶媒性と耐剥離性に優れていることが分る。
実施例2
《有機EL素子の作製》
〔有機EL素子101〜124の作製〕
上記作製した透明電極上に、以下の手順で各層を積層し、有機EL素子101〜124を作製した。
(正孔注入層の形成)
パターニング後のITO基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT−PSSと略記、ヘレウス製、Clevios P JET)を正孔注入層形成用のインク組成物として、前述の図3に記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で第1電極(陽極)上に、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で射出したのち、200℃で1時間乾燥して、正孔注入層を形成した。
(正孔輸送層の形成)
上記基材に形成した正孔注入層上に、下記組成の正孔輸送層形成用のインク組成物を用い、前述の図3に記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で射出したのち、160℃で30分間乾燥して、正孔輸送層を形成した。
〈正孔輸送層形成用のインク組成物〉
正孔輸送材料1(重量平均分子量Mw=80000) 2.5質量部
キシレン/テトラリン 250/250質量部
(発光層の形成)
次いで、下記組成の発光層形成用のインク組成物を用い、前述の図3に記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で、乾燥後の層厚が50nmとなる条件で正孔輸送層上に射出したのち、120℃で30分間乾燥して、発光層を形成した。
〈発光層形成用のインク組成物〉
ホスト化合物1 8.78質量部
リン光発光ドーパント化合物D−1 3.01質量部
リン光発光ドーパント化合物D−2 0.05質量部
リン光発光ドーパント化合物D−3 0.05質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1000質量部
(電子輸送層の形成)
続いて、下記組成の電子輸送層形成用のインク組成物を用い、前述の図3に記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で、発光層上に射出したのち、120℃で30分間乾燥して、電子輸送層を形成した。
〈電子輸送層形成用のインク組成物〉
8−ヒドロキシキノリナトリチウム 0.3質量部
電子輸送性化合物M−33 2.7質量部
酢酸セシウム 0.18質量部
2−ヘキサノール 150質量部
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(OFPO)
350質量部
(電子注入層及び陰極の形成)
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムをそれぞれ入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10-5Paまで減圧した後、前記ボートに通電して加熱してフッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に蒸着させて厚さ1nmの薄膜を形成し、続けて同様にフッ化カリウムを0.02nm/秒で当該薄膜上に蒸着させて、厚さ1.5nmの電子注入層を設けた。
引き続き、電子注入層上にアルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を設けた。
(封止及び有機EL素子の作製)
引き続き、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着して、有機EL素子を作製した。
詳しくは、封止部材として、可撓性の厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚さ1.5μm)ものを用いた。
アルミニウム面に封止用接着剤として、熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。さらに露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動し、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率を100ppm以下となるように調整した。
熱硬化接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
以上のようにして、封止部材を、取り出し電極及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて厚着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止して、各有機EL素子を作製した。
各有機EL素子の作製に用いた電子輸送性化合物を除く化合物の詳細は、以下のとおりである。
Figure 2020021582
《有機EL素子の評価》
上記作製した有機EL素子101〜124のそれぞれについて絶縁層周りのダークスポット及び電流リークの評価を行った。
〔ダークスポット〕
絶縁層の機能低下の評価として、作製した各有機ELデバイスを、オーブンにて60%RH、温度80℃の条件下で10時間加熱したのち、23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間温調した後、ダークスポットの発生度(数、大きさ)により、以下の基準で評価した。
5:微小ダークスポット(0〜0.5mm径)が5個以下
4:微小ダークスポット(0〜0.5mm径)が10個以下
3:微小ダークスポットが30個以下、小径ダークスポット(0.5〜1mm径)が10個以下
2:小径ダークスポットが10個以上、大径ダークスポット(1mm以上)が5個以下
1:大径ダークスポットが6個以上
〔電流リーク〕
各有機ELデバイスのそれぞれ10サンプルについて、+4V印加時の電流値と、−4V印加時の電流値を測定し、下式に従って整流比を測定し、10サンプルの平均値を求めることにより、電流リーク耐性を評価した。
整流比=+4V印加時の電流値/−4V印加時の電流値
下記のランクにおいては、ランク3以上のレベルであることが電流リーク耐性の観点から必須であり、大面積化の観点からは、ランク4以上であることが好ましい。
5:整流比が1.0×104以上
4:整流比が1.0×103以上、1.0×104未満
3:整流比が1.0×102以上、1.0×103未満
2:整流比が5.0×101以上、1.0×102未満
1:整流比が5.0×101未満
以上により得られた結果を、表IIに示す。
Figure 2020021582
表IIより、本発明の透明電極を用いた有機EL素子は、ダークスポットが少なく、また電流リークも少なく良好であることが分る。
実施例3
《透明電極の作製》
〔透明電極201の作製〕
実施例1に記載の透明電極121の作製において、透明導電層用塗布液1を下記透明導電層用塗布液2に変えて、以下のように透明導電層を形成した以外は透明電極121の作製と同様にして、透明電極201を作製した。
(透明導電層の形成)
金属細線上に、下記透明導電層用塗布液2を、押し出し法を用いて、乾燥後の厚さが300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、110℃、5分で加熱乾燥し、前記した導電性ポリマーPH10(Heraeus社製)と水溶性ポリマーP−1(ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート))からなる透明導電層を形成した。水溶性ポリマーP−1は、特許第5750908号公報の段落0156に記載の方法により合成した
透明導電層用塗布液2は、別途調製した溶液Aと溶液Bとを混合して作製した。
(透明導電層用塗布液2)
(溶液A)
導電性ポリマー:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
P−1(固形分20%水溶液) 0.35g
(溶液B)
ジメチルスルホキシド(DMSO、導電性ポリマー溶液質量の10分の1量)
0.16g
化合物1 0.008g
Figure 2020021582
以上のようにして得られた電極を8cm×8cmに切り出し、オーブンを用いて110℃、30分加熱することで透明導電層を形成した。
〔透明電極202の作製〕
透明電極201の作製において、透明導電層用塗布液2を下記塗透明導電層用塗布液3に変更した以外は透明電極201の作製と同様にして、透明電極202を作製した。
(透明導電層用塗布液3)
導電性ポリマー:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g
バインダー:プラスコートRZ570(固形分25%水溶液、互応化学社製)
0.28g
ジメチルスルホキシド(DMSO、導電性ポリマー溶液質量の10分の1)
0.16g
《透明電極の評価》
上記作製した透明電極201及び202について、それぞれ実施例1と同様にして耐溶媒性と耐剥離性を評価した結果、ともに透明電極121と同等の良好な結果が得られた。
《有機EL素子の作製》
〔有機EL素子201及び202の作製〕
上記作製した透明電極201及び202上に、実施例2に記載の有機EL素子121の作製と同様にして各層を積層し、有機EL素子201及び202を作製した。
《有機EL素子の評価》
上記作製した有機EL素子201及び202のそれぞれについて、実施例2と同様にして絶縁層周りのダークスポット及び電流リークの評価を行った結果。ともに有機EL素子121と同等の良好な結果が得られた。
1 透明基板
2 透明導電層
3 補助電極
4 第1電極
5 絶縁層
6 ガスバリアー層
30、100 インクジェットヘッド
31、39 ポンプ
32 フィルター
33 配管分岐
34 廃液タンク
35 制御部
36、37、38A、38B タンク
56 筐体
57 キャップ受板
59 カバー部材
61 ノズルプレート
62 キャップ受板取り付け部
68 取り付け用孔
71 ノズル用開口部
81a 第1ジョイト
81b 第2ジョイント
82 第3ジョイント
LA 発光領域
U 有機機能層ユニット
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤

Claims (9)

  1. 透明基板上に第1電極及び絶縁層を順次積層させた透明電極であって、
    前記絶縁層が、少なくとも前記第1電極の一部に形成され、かつ
    ポリシロキサン骨格に少なくともアルキル基以外の有機基を有する有機無機ハイブリッドポリマーを含有することを特徴とする透明電極。
  2. 前記有機無機ハイブリッドポリマーの有機基が、アクリロイル基、エポキシ基又はイソシアネート基であることを特徴とする請求項1に記載の透明電極。
  3. 前記絶縁層の厚さが、0.5〜3.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明電極。
  4. 前記第1電極が、透明導電層と補助電極を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の透明電極。
  5. 前記補助電極上に、透明導電層を有することを特徴とする請求項4に記載の透明電極。
  6. 前記透明基板が、フレキシブル基板であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の透明電極。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の透明電極を用いたことを特徴とする有機電子デバイス。
  8. 前記有機電子デバイスが、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項7に記載の有機電子デバイス。
  9. 請求項7又は請求項8に記載の有機電子デバイスを製造する有機電子デバイスの製造方法であって、
    前記第1電極上に、前記有機無機ハイブリッドポリマーを含有する分散液を塗布し、前記絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層に対し、100〜280℃の範囲内で加熱する工程又は、
    150〜230nmの範囲内の波長のエキシマ光を照射する工程と、
    を有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022249647A1 (ja) * 2021-05-24 2022-12-01 パナソニックホールディングス株式会社 電子デバイス

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