(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
本実施形態の防災機器1は、防災に関する報知動作を行う。ここでは防災機器1は、一例として、火災に関する報知動作を行うものを想定する。すなわち、防災機器1は、火災の発生時に警報音等の音を出力する火災警報器である。しかし、防災機器1における警報音の発報対象は、火災に限定されず、ガス漏れ、又は不完全燃焼によるCO(一酸化炭素)の発生等であってもよい。
防災機器1は、図5に示すように、構造体C1(天井や壁等の造営材)に設置される。防災機器1は、図1に示すように、予備報知部X1と、操作部3と、本報知部X2と、を備えている。防災機器1は、図1に示すように、その内部に煙を検知する光電式のセンサ(検知部2)を更に備えている。検知部2は、熱を検知する定温式のセンサでもよい。また検知部2は、防災機器1と別体であってもよい。防災機器1は、検知部2を備えた別の防災機器(火災警報器)との通信により、火災に関する情報を受けてもよい。
防災機器1は、図2に示すように、住宅200内の居室、寝室、階段、廊下等の構造体C1の一面(天井面又は壁面)に設置される。住宅は、戸建住宅、又は集合住宅(マンション)でもよい。更に、防災機器1は、住宅だけでなく非住宅の構造体C1(天井面又は壁面等)に設置されてもよい。非住宅の例としては、オフィスビル、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等を含む。
ここで、予備報知部X1は、防災機器1が取り換えの時期に到達した場合に、取り換えに関する予備報知を実行する。「取り換えの時期」は、防災機器1の設置後(電源が投入されてから)、約10年が経過すると到達したと判断される。防災機器1は、10年が経過すると、内部の電子部品の寿命、及び電池切れ等により、火災の感知や報知ができなくなる可能性があり、10年を目安に取り換えが推奨されている。
操作部3は、ユーザ(図5の住人300等)からの操作を受け付ける。本報知部X2は、予備報知部X1にて予備報知の実行中に、操作部3にて操作を受け付けると、取り換えに関する本報知を実行する。以下では、予備報知部X1は、予備報知を表示により実行する表示部11を含むことを想定する。また本報知部X2は、本報知を音の出力により実行する音響部12を含むことを想定する。すなわち、予備報知は、光により行われ、本報知は、音により行われる。
そして予備報知部X1は、本報知が開始された後、所定の条件を満たすと、予備報知を少なくとももう1回実行する。この構成によれば、所定の条件を満たすと予備報知が少なくとももう1回実行されるため、ユーザの取り換え忘れの抑制を図ることができる。
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る防災機器1及び防災システム100の全体構成について詳しく説明する。ここでは、防災機器1は、一例として電池式の火災警報器である。ただし、防災機器1は、外部電源(例えば商用の電力系統)に電気的に接続され、外部電源から供給される交流電力(例えば実効値100V)を直流電流に変換して駆動する火災警報器であってもよい。
防災システム100は、図2に示すように、複数(図示例では5つ)の防災機器1を備えている。複数の防災機器1は、いわゆる連動型の防災機器であり、いずれの防災機器1で火災を検出しても、他の防災機器1と連動して(他の防災機器1と共に)、警報音の発報を行うように構成されている。火元の位置にある防災機器1(連動元)は、例えば、「ビュービュー火事です。」という警報音の発報を行う。一方、他の防災機器1(連動先)は、火元の位置を特定できるような警報音の発報を行う。複数の防災機器1のうち、いずれか1台は、親器として機能し、他の残りの防災機器1は、子器として機能することが望ましい。親器の防災機器1は、他の子器である防災機器1の識別情報を記憶していることが望ましい。
親器、子器に関わらず、各防災機器1は、自身が設置されている場所に応じた警報音を、自身以外の他の防災機器1で出力するように、施工者又はユーザ(住人300等)によって予め設定されている。各防災機器1は、予め複数種類の警報音の音声メッセージを記憶している。例えば、ある防災機器1がリビングに設置されていて、当該防災機器1が火災を検出すると、この火元の防災機器1は、「ビュービュー火事です。」という警報音の発報を行う。また火元の防災機器1は、火災発生の旨と自身の設置場所に対応する音声メッセージの種類に関する情報を含む警報信号を、親器及び子器の防災機器1に送信する。そして、火元以外の防災機器1は、受信した警報信号に基づいて、「ビュービュー、リビングで火事です。」という警報音の発報を行う。
以下では、図2の例の通り、複数の防災機器1がいずれも、住宅200内における各部屋又は階段の天井面(構造体C1の一面)に設置されていることを想定する。これにより、防災機器1の上下、左右の方向を、図3に図示されている上下、左右の矢印を用いて規定して説明する。これらの矢印は、単に説明を補助する目的で記載しているに過ぎず、実体を伴わない。またこれらの方向は、防災機器1の使用方向を限定する趣旨ではない。
各防災機器1は、図1に示すように、制御部10、表示部11(予備報知部X1)、音響部12(本報知部X2)、検知部2及び操作部3の他に、例えば、出力部13と、バッテリー14と、筐体4(図3参照)と、を更に備えている。表示部11及び音響部12は、報知部6を構成する。また防災機器1は、記憶部7を更に備えている。
また各防災機器1は、他の防災機器1と通信するための通信部8(送出部15)を更に備えている。通信部8は、無線により(有線でもよい)、警報音の発報、及び(後述する)動作試験の連動を、防災システム100内で行うための通信インタフェーイスである。
(2.2)筐体
筐体4は、制御部10、表示部11、音響部12、出力部13、バッテリー14、検知部2、記憶部7、通信部8、及び、制御部10や各種の回路を構成する回路部品が実装される回路基板(不図示)等を内部に収容する。図示は省略するが、ここで言う各種の回路とは、例えば後述する音響回路、第1点灯回路、第2点灯回路、及び電源回路等である。
筐体4は、合成樹脂製であり、例えば難燃性ABS樹脂製である。筐体4は、全体としてへん平な円筒状に形成されている。筐体4は、その上面に取付部を有しており、当該取付部によって構造体C1の一面(設置面)に取り付けられる。
筐体4は、図3に示すように、その周壁400に、筐体4内に設けられているラビリンスに煙を導入可能な孔401を有している。筐体4は、その内部空間を上下2つに仕切る仕切壁を有している。ラビリンス及び検知部2は、上側の第1空間にあり、制御部10、表示部11、音響部12、出力部13、バッテリー14、記憶部7、通信部8、及び回路基板等は、下側の第2空間にある。
筐体4は、図3及び図4に示すように、その前面402(図3では下面)において、上方向に凹んだスリット9を有している。スリット9は、筐体4の外周に沿った、所定の溝幅を有する円環の形状となっている。スリット9は、図4に示すように、その内面90の第1領域91と、第2領域92とに、それぞれ、音響孔H1と、窓孔H2とを有している。音響孔H1は、音響部12の警報音を筐体4の外部に導出するための孔であり、筐体4内の音響部12と対向している。なお、音響孔H1は、省略されてもよく、設けられていなくてもよい。また、窓孔H2は、出力部13からの光を筐体4の外部に導出するための孔であり、筐体4内の出力部13と対向している。以下、出力部13の光を「照明光」と呼ぶこともあるが、出力部13の光は、例えば、一般的な照明器具が出力する照明光に比べて明るさの弱い、避難経路を照らす程度の光である。
更に筐体4は、その前面402において、操作部3の下面が筐体4の外部に露出するように、操作部3を支持している。操作部3は、外部からの操作入力(操作)を受け付ける。操作部3は、ユーザの指等による押し操作により上方へ押し込み可能となっている。操作部3は、透光性を有した円板状の部材である。操作部3は、筐体4内に収容されている表示部(作動灯)11と対向して配置されている。また操作部3は、押し操作により、筐体4内に収容されている押し釦スイッチ(不図示)を押すように構成されている。
(2.3)報知部
報知部6は、上述の通り、表示部11及び音響部12から構成される。報知部6は、外的事象の発生を報知する機能を有している。本開示における「外的事象の発生」とは、一例として、防災機器1において防災の対象となる事象、すなわち、火災の発生である。また報知部6は、防災機器1において防災の対象となる外的事象以外の、内的事象の発生を報知する機能も有している。本開示における「内的事象の発生」とは、防災機器1自身に起こり得る事象であり、一例として、防災機器1の取り換え時期(交換時期)の発生を含む。この他にも、「内的事象の発生」は、防災機器1内の故障(回路部品の故障や断線等)、電池切れ(バッテリー14の残容量が残り僅かな状態)の発生、及び、防災機器1間の通信エラーの発生等も含む。バッテリー14は、例えばリチウム電池である。
音響部12は、内的事象の発生を報知する機能と火災の発生を報知する機能とを有している。音響部12は、音(音波)を出力する。音響部12は、制御部10にて火災が発生したと判定したときに、火災の発生を報知するように警報音を出力する。
音響部12は、電気信号を音に変換するスピーカにより構成される。スピーカは、振動板を有し、電気信号に従って振動板を機械的に振動させることにより警報音を発する。スピーカは、正面視円形状に形成されており、円板状である。音響部12は、制御部10による制御下で、警報音(例えば「ピー」音)を出力する。音響部12は、警報音の大きさ(音圧レベル)を変化させて警報音を出力することが好ましい。警報音は、例えば、低音から高音にスイープさせたスイープ音を含んでもよい。警報音は、例えば「火事です。火事です。」といった音声メッセージを含んでもよい。ここでは、警報音は、スイープ音と、スイープ音に連続する音声メッセージとから構成されることを想定する。
上記の回路基板には、例えば音響回路を構成する回路部品が実装されている。音響回路は、ローパスフィルタ、及び増幅器等を有する。音響回路は、火災発生時に制御部10にて生成された警報音に対応するPWM(Pulse Width Modulation)信号を受け取ると、ローパスフィルタで正弦波形の音声信号に変換し増幅器で増幅して、警報音として音響部12から出力させる。
音響部12は、いずれかの内的事象が発生したと制御部10が判定したとき、内的事象の発生を報知するための音を出力する。以下、この音を、火災発生時の警報音と区別するために「報知音」と呼ぶこともある。例えば、防災機器1の取り換え時期に関する報知音の例は、「警報器の交換時期です。」といった音声メッセージを含む。また故障に関する報知音の例は「○○に故障が発生しました。」といった音声メッセージを含む。また電池切れに関する報知音の例は「電池切れです。」といった音声メッセージを含む。報知音は、警報音の音量の60〜70%程度の音量で出力される。
音響部12は、動作試験時においても、警報音及び報知音を試験的に出力する。動作試験は、操作部3が押し操作されるか、又は筐体4から導出されている引き紐(不図示)が引き操作されることで実行可能となっている。
なお、警報中(警報音を発報中)に操作部3が外部からの操作入力を受け付けると、音響部12は、警報音の出力を停止する。
表示部(作動灯)11は、内的事象の発生を報知する機能と火災の発生を報知する機能とを有している。表示部11は、光源として上記回路基板に実装された赤色LED(Light Emitting Diode)110を有している。表示部11は、通常時(火災の監視時)には消灯しており、制御部10にて火災が発生したと判定したときに点滅(又は点灯)を開始する。以下、火災発生を報知する点滅を「作動点滅」と呼ぶこともある。作動点滅は、警報音の発報が停止すると、制御部10の制御の下、停止する。
上記の回路基板には、表示部11のLED110を点滅させるための第1点灯回路を構成する回路部品が実装されている。第1点灯回路は、制御部10による制御下で、バッテリー14から放電される直流電力を用いて、LED110を点滅させる。防災機器1が、商用の電力系統に電気的に接続されている場合には、第1点灯回路は、電力系統から供給される交流電力を直流電流に変換して、LED110を点滅させる。
表示部11から出射された光は、透光性を有した操作部3を介して、筐体4の外部に導出される。住人300は、操作部3越しの赤色の作動点滅を視認することで、防災機器1が作動中(火災を検知中)であることを知ることができる。
ところで、表示部11は、本開示における予備報知部X1に含まれる。予備報知部X1は、制御部10による制御下で、内的事象が発生した場合に、内的事象に関する予備報知を実行する。ここでは、予備報知部X1は、防災機器1が取り換えの時期に到達した場合に、取り換えに関する予備報知を表示により実行する。言い換えると、防災機器1が取り換えの時期に到達したと制御部10が判定したとき、表示部11は、取り換えの時期に到達したことを報知するために点滅する。以下、この点滅を「報知点滅」と呼ぶこともある。表示部11は、取り換えの時期以外に、故障や電池切れの発生時にも報知点滅を行ってもよい。なお、報知点滅と作動点滅とを区別するために、点滅周期が互いに異なる。
表示部11の動作試験は、音響部12と同様に、操作部3が押し操作されるか、又は引き紐が引き操作されることで実行可能となっている。
一方、音響部12は、本開示における本報知部X2に含まれる。本報知部X2は、制御部10による制御下で、予備報知部X1にて予備報知の実行中に、操作部3にて操作を受け付けると、取り換えに関する本報知を実行する。言い換えると、音響部12は、表示部11にて予備報知の実行中(報知点滅中)に、操作部3が押し操作されると、「警報器の交換時期です。」といった音声メッセージを出力する。このとき、操作部3への押し操作をトリガーとして、動作試験が、操作を受け付けた防災機器1、及び他の防災機器1において連動して開始される。上記音声メッセージは、動作試験において出力される。本報知の実行中(上記音声メッセージの出力中)に、操作部3にて再度押し操作を受け付けると、音響部12は、制御部10による制御下で、本報知を停止する。
(2.4)出力部
出力部13は、制御部10の制御の下、火災の発生に応じて、周囲の領域R1(図5参照:主に床面)を照らす照明光を出力する。出力部13は、光源として上記の回路基板に実装された1又は複数の照明用白色LED130を有している(図1参照)。出力部13は、通常時には消灯しており、制御部10にて火災が発生したと判定したとき点灯(照明光の出力)を開始する。したがって、図5に示すように例えば住人300が就寝している深夜の時間帯に火災が発生しても、住人300は、照明器具を点灯させるために壁スイッチをオン操作しなくても出力部13の照明光を利用して、直ちに避難経路を視認して避難できる。
LED130は、平板状の実装基板の実装面の中央に少なくとも1個のLEDチップが実装された、パッケージ型のLEDとして構成される。LEDチップは、例えば、発光面から青色光を放射する青色発光ダイオードであることが好ましい。また、LEDチップを含む基板の実装面は、LEDチップから放射される青色光を波長変換する蛍光物質が混入された封止樹脂で被われている。LED130は、そのアノード電極とカソード電極との間に直流電圧が印加されることにより、白色の照明光を発光面から放射するように構成されている。照明光の色は、白色に限定されず、他の光色でもよい。ただし、表示部11の光色と被らないことが望ましい。
上記の回路基板には、出力部13のLED130を点灯させるための第2点灯回路を構成する回路部品が実装されている。第2点灯回路は、制御部10による制御下で、バッテリー14から放電される直流電力を用いて、LED130を点灯させる。防災機器1が、商用の電力系統に電気的に接続されている場合には、第2点灯回路は、電力系統から供給される交流電力を直流電流に変換して、LED130を点灯させる。
出力部13から出射された光(照明光)は、スリット9の窓孔H2を介して、筐体4の外部に導出されて、周囲の領域R1が照らされる。出力部13は、動作試験時においても試験的に点灯する。出力部13の動作試験は、音響部12と同様に、操作部3が押し操作されるか、又は引き紐が引き操作されることで実行可能となっている。
(2.5)検知部
検知部2は、警報音の発報対象となる火災(外的事象)に関する情報を検知する。ここでは、検知部2は、一例として、煙を検知する光電式のセンサである。したがって、上記情報は、例えば、煙に関する情報を含む。検知部2は、図1に示すように、例えば、LED等の発光部21と、フォトダイオード等の受光部22とを備えている。発光部21及び受光部22は、筐体4のラビリンス内において、受光部22の受光面が、発光部21の照射光の光軸上から外れるように配置されている。火災の発生時には、煙が筐体4の周壁400にある孔401を通じて、ラビリンス内に導入され得る。
筐体4のラビリンス内に煙が存在しない場合、発光部21の照射光は、受光部22の受光面にほとんど到達しない。一方、筐体4のラビリンス内に煙が存在する場合、発光部21の照射光が煙によって散乱し、散乱した光の一部が受光部22の受光面に到達する。つまり、検知部2は、煙によって散乱された発光部21の照射光を受光部22で受光する。
検知部2は、制御部10と電気的に接続されている。検知部2は、受光部22で受光された光量に応じた電圧レベルを示す電気信号(検知信号)を制御部10に送信する。制御部10は、検知部2から受け取った検知信号の光量を煙濃度に換算して火災の判定を行う。検知部2は、受光部22で受光された光量を煙濃度に換算してから煙濃度に応じた電圧レベルを示す検知信号を制御部10に送信してもよい。あるいは、検知部2は、受光部22で受光された光量から火災(煙)の発生を判定し、火災が発生したという情報を含む検知信号を制御部10に送信してもよい。
(2.6)制御部
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、制御部10は、CPU及びメモリを有するコンピュータにて実現されており、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータが制御部10として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
制御部10は、表示部11、第1点灯回路、音響部12、音響回路、出力部13、第2点灯回路、検知部2、記憶部7、及び通信部8等を制御する。また制御部10は、バッテリー14の直流電力から各種の回路の動作電力を生成する電源回路を制御する。記憶部7は、データを書き換え可能なメモリであって、不揮発性メモリであることが好ましい。記憶部7は、制御部10自身が有しているメモリであってもよい。
制御部10は、検知部2から検知信号を受信し、火災が発生したか否かを判定するように構成されている。具体的には、制御部10は、検知部2の検知信号を監視し、検知信号に含まれている信号レベルが閾値を超えたか否かを判定する。
制御部10は、記憶部7内に閾値を記憶している。制御部10は、例えば、所定の時間間隔で、周期的に煙濃度が閾値を超えたか否かを判定し、一度でも煙濃度が閾値を超えれば、火災が発生したと決定してもよい。所定の時間間隔は、例えば5秒間隔である。あるいは、制御部10は、煙濃度が連続して閾値を超えた回数をカウントし、その回数が規定回数に到達したときに、火災が発生したと決定してもよい。もちろん、制御部10は、検知部2から火災が発生したという情報を含む検知信号を受信すれば、直接的に火災が発生したと決定してもよい。
制御部10は、煙濃度に基づいて火災が発生したと判定すると、音響部12から警報音の出力を開始させる。具体的には、制御部10は、時間の経過に伴って周波数が直線的に変化するスイープ音に対応したPWM信号を生成し、音響回路に出力する。上記PWM信号は、音響回路にて音声信号に変換されて、スイープ音(警報音)が音響部12から出力される。また、制御部10は、記憶部7内に記憶されているメッセージデータに基づいて、音声メッセージに対応したPWM信号を生成し、音響回路に出力する。上記PWM信号は、音響回路にて音声信号に変換されて、音声メッセージ(警報音)が音響部12から出力される。
また制御部10は、火災が発生したと判定すると、表示部11を点滅させるための制御信号を第1点灯回路へ、出力部13を点灯させるための制御信号を第2点灯回路へそれぞれ送信する。第1点灯回路は、制御部10から制御信号を受信すると、表示部11に作動点滅を開始させる。第2点灯回路は、制御部10から制御信号を受信すると、出力部13を一定の明るさで点灯させる。
制御部10は、警報中(警報音を発報中)も煙濃度の判定を行なっている。制御部10は、もし警報中に煙濃度が、基準値以下になれば、PWM信号の生成を止めて音響部12による警報音の出力を停止し、また停止信号を第1点灯回路及び第2点灯回路にそれぞれ送信して、表示部11及び出力部13からの光出力も停止する。つまり、制御部10は、火災(煙)が無くなったと判断すると、自動的に警報音の出力、照明光の出力、及び表示部11の点滅を停止する。
また制御部10は、警報中に、操作部3への押し操作により筐体4内の押し釦スイッチがオンされると、警報音の出力を停止する。もし住人300が、防災機器1の警報が誤報であると判断すれば、操作部3を押すことで、警報音の発報を停止することができる。警報音の発報の停止は、引き紐の引っ張りでも可能である。
一方、制御部10は、非警報中に、操作部3への押し操作により筐体4内の押し釦スイッチがオンされると、点検用の所定の動作試験を実行する。動作試験は、音響部12の音出力試験、出力部13の光出力試験、表示部11の点滅試験等を含む。動作試験は、引き紐の引き操作でも可能である。
制御部10は、さらに、内的事象(取り換え、故障及び電池切れ等)の発生の有無を判定するように構成される。以下、内的事象の発生の有無の判定について詳しく説明する。
制御部10は、内蔵されるタイマを用いて使用時間を監視している。使用時間は、例えば、電源が投入されて防災機器1が動作状態にある時間である。制御部10は、記憶部7内に使用時間を累積して記憶する。制御部10は、累積の使用時間が10年に到達すると、自身の防災機器1が、取り換え時期に到達したと判定し、予備報知部X1(表示部11)に、予備報知を実行させる(予備報知ステップ)。すなわち、表示部11が報知点滅を開始する。
図6Aは、予備報知(報知点滅)の様子を示す図である。図示例では、期間A3が1周期分に相当する。期間A3は、例えば5分である。表示部11は、期間A1の間点灯した後に期間A2の間消灯するという動作を繰り返す。期間A1は、例えば0.1秒間であり、期間A2は、例えば1.9秒間である。そして、4回目の点灯後、残り時間消灯し続け、期間A3の経過後に再び期間A1の間の点灯を4回繰り返す。なお、この報知点滅は、単なる一例であり、特に限定されない。
取り換え時期の到達は、電池切れや故障に比べて緊急性が低く、また防災機器1の取り換えは、住人300の都合もある。そのため、制御部10は、判定後直ちに本報知部X2(音響部12)に、本報知、すなわち取り換えを知らせる音声メッセージの出力を実行させない。そして、予備報知の実行中、すなわち報知点滅中に、住人300によって操作部3への1回目の押し操作が行われたときに、本報知を実行する(本報知ステップ)。このように、予備報知(光)、本報知(音)の順で取り換え時期の到達を通知することで、住人300に対して無理なく取り換えを促すことができる。
本報知の実行中に、操作部3が住人300によって再度押し操作(2回目の押し操作)されると、制御部10は、音響部12の音声メッセージの出力を停止する。すなわち、住人300の都合に応じて、実行中の本報知を停止できるため、利便性が向上される。また本報知が実行し続けることによって消費される電力の抑制を図ることができる。
なお、制御部10は、予備報知部X1(表示部11)に予備報知を開始させてから、本報知が開始されるまで(操作部3への1回目の押し操作がされるまで)、予備報知を継続的に実行させる。そのため、住人300が予備報知に気づく可能性が向上され、住人300の取り換え忘れをさらに抑制できる。
制御部10は、使用時間の監視以外にも、例えば、音響回路から音響部12に流れる電流を監視し、当該電流の電流値が異常値(ゼロ又はそれに近い値等)であれば、断線が発生したと判定する。また制御部10は、各種回路における所定の電路の電圧値が異常値であれば、当該回路に故障が発生したと判定する。また制御部10は、各種回路の温度等を監視し、異常な発熱があれば、故障が発生したと判定してもよい。制御部10は、故障が発生したと判定すると、報知部6に報知させる。故障に関する報知は、上述した取り換えお知らせと同様に、予備報知、本報知の順で行われてもよいし、予備報知は省略されて本報知のみ行われてもよい。なお、音響回路及び音響部12間に断線が生じている場合、音響部12による報知は不可能であるため、故障に関する報知は、表示部11からのみとなる。
また制御部10は、バッテリー14の電池電圧を監視する。制御部10は、記憶部7内に、バッテリー14の電池電圧と容量とが対応付けされた特性データを予め記憶し、監視する電池電圧に対応する残容量が容量の10%未満であれば、電池切れが発生したと判定する。制御部10は、電池切れが発生したと判定すると、報知部6に報知させる。電池切れに関する報知も、上述した取り換えお知らせと同様に、予備報知、本報知の順で行われてもよいし、予備報知は省略されて本報知のみ行われてもよい。
制御部10は、所定の周期で、これらの内的事象の発生の有無を判定してもよい。内的事象の少なくとも一部の判定は、一例として、1日に1回、深夜0時に行われてもよい。
なお、内的事象の発生を報知する音声メッセージに関して、制御部10は、記憶部7内に記憶されているメッセージデータに基づいてPWM信号を生成し、音響回路を介して対応する音声メッセージを音響部12から出力させる。
(2.7)予備報知の再実行
本実施形態における各防災機器1の予備報知部X1は、本報知が開始された後、所定の条件を満たすと、予備報知を、少なくとももう1回実行する。言い換えると、制御部10は、本報知が開始された後、所定の条件を満したと判定すると、予備報知部X1(表示部11)に予備報知を少なくとももう1回実行させる(再報知ステップ)。
ここでは「所定の条件」とは、ある時点tx(図7A参照)から所定時間T1が経過することである。時点txは、一例として、本報知の開始時点t1(操作部3へ1回目の押し操作が行われた時点)である(図7A参照)。所定時間T1は、一例として4週間であるが、特に限定されない。図7Aの場合、時点t3において、2回目の予備報知が実行される。
時点txは、本報知の終了時点t2(操作部3へ2回目の押し操作が行われた時点)でもよい(図7B参照)。図7Bの場合、時点t4において、2回目の予備報知が実行される。
あるいは、時点txは、予備報知の開始時点t0でもよい(図7C参照)。図7Cの場合、時点t5において、2回目の予備報知が実行される。図7Cの例において、所定時間T1が経過しても、操作部3への1回目の押し操作が行われていなければ、制御部10は、所定時間T1の計時をリセットして、予備報知を継続させることが望ましい。
このように本実施形態では、所定の条件を満したときに、予備報知が少なくとももう1回(合計最低でも2回、本報知も合わせると3回)実行されるため、住人300の取り換え忘れの抑制を図ることができる。
また予備報知は(点灯)表示により、本報知は音の出力により実行されるため、予備報知と本報知の両方が表示により実行されたりその両方が音の出力により実行されたりする場合に比べて、予備報知と本報知との差を住人300に認識させることができる。また予備報知が音の出力により実行される場合に比べて、住人300に不快感を与える可能性を低減できる。また本報知が表示により実行される場合に比べて、住人300が報知に気づく可能性を高めることができる。特に、操作を行った直後に音で本報知を行うことで、住人300が、音による本報知を聞き逃すといった事態が抑制される。
なお、予備報知部X1は、本報知が開始された後、上記の所定の条件を満たすと、予備報知を、繰り返し実行してもよい。要するに、各防災機器1は、予備報知、本報知、所定時間T1の経過、予備報知、本報知、所定時間T1の経過、予備報知・・・という動作を継続させてもよい。予備報知を繰り返し実行させることで、住人300の取り換え忘れをさらに抑制できる。
ところで、再実行は、予備報知だけではなく本報知についても実行されてもよい。例えば、制御部10は、図8Aに示すように、特定の時点tzから一定期間T2の経過後に、操作部3にて操作を受け付けると(時点t6)、本報知部X2(音響部12)に本報知を再度実行させてもよい。図8Aでは、特定の時点tzは、予備報知の実行中に操作部3にて1回目の操作を受け付けた時点、すなわち、1回目の本報知の開始時点t1に相当する。ただし、特定の時点tzは、図8Bに示すように、1回目の本報知の実行中に操作部3にて2回目の操作を受け付けた時点、すなわち1回目の本報知の終了時点t2でもよい。
一定期間T2は、所定時間T1(例えば4週間)よりも短いことが望ましいが(例えば1日)、特に限定されない。一定期間T2は、所定時間T1と同じでもよいし、所定時間T1より長くてもよい。
また制御部10は、特定の時点tzから一定期間T2の経過後に、操作部3にて操作を受け付けると、もしその時点で取り換えよりも優先度の高い事象が発生していれば、本報知部X2に、その優先度の高い事象に関する情報の報知を実行させてもよい。取り換えよりも優先度の高い事象とは、故障の発生や、電池切れ等である。当然ながら、火災警報の発報中においては、火災警報が最優先される。
この場合、本報知の再実行又は優先度の高い事象に関する情報の報知の実行を、住人300の都合に応じて行えるため、利便性が向上される。
(2.8)動作試験と連動機能
ところで、本実施形態では、予備報知を実行中の防災機器1に対して、操作部3へ1回目の押し操作を行うと、当該防災機器1が、直ちに本報知、すなわち取り換えを知らせる音声メッセージの出力を行うのではなく、まずは所定の動作試験を開始する。また複数の防災機器1は、いわゆる連動型の防災機器であり、連動して警報音の発報を行うことを説明したが、動作試験についても連動して実行する。つまり、予備報知の実行中に操作部3にて操作を受け付けると、動作試験は、操作を受け付けたその防災機器1だけでなく、その防災機器1が連動元となって、他の防災機器1(連動先)の各々に対して動作試験を開始させる(連動ステップ)。
以下、防災システム100における、予備報知を起点とした動作試験とその連動機能に関する動作について、図6Bを参照しながら説明する。なお、上述の通り、動作試験の実行自体は、予備報知の実行中でなくても、防災機器1が待機状態のときに特定の操作(操作部3や引き紐等への操作)を行うことで可能である。
動作試験は、少なくとも取り換えに関する試験(取り換え時期の確認)を含む。本実施形態では、動作試験は、一例として、防災機器1の取り換え時期の確認、出力部13の照明光の出力試験、音響部12の警報音の出力試験、表示部(作動灯)11の点灯試験、バッテリー14の容量確認、各種回路の故障の有無の確認等を含む。また動作試験は、複数の防災機器1間における通信テストを含んでもよい。例えば親器の防災機器1は、複数の子器の防災機器1が、通信可能なエリア内に全て存在するか等の、電波強度の確認も実施する。
ここでは、防災システム100の複数の防災機器1のうち、仮に子器である1台の防災機器1が、10年の取り換え時期に到達したとする。その防災機器1は、予備報知を開始する(図6A参照)。予備報知に気づいた住人300が、図6Bにおける時点t10にて、予備報知を実行中の防災機器1の操作部3に1回目の押し操作を行ったとする。
押し操作を受け付けたその防災機器1は、音響部12を通じて、例えば「ピ、テスト中です。」といった音声メッセージを出力する。その後、時点t11において、動作試験を開始する。
ここで押し操作を受け付けたその防災機器1は、連動元となって、時点t10〜t11の間において、通信部8(送出部15)より、親器又は子器の防災機器1に対して、動作試験の開始を指示する試験信号(連動信号)を送出する。連動元からの試験信号を、子器の防災機器1が受信すると、そのまま動作試験を開始する。また連動元からの試験信号を、親器の防災機器1が受信すると、防災システム100内の子器の防災機器1に対して、動作試験の開始を指示する試験信号を送出する。
更に具体的に説明すると、防災システム100内における親器及び複数の子器の防災機器1の各々は、待機状態において、非同期の間欠受信方式で、試験信号及び実際の火災を検出した時の警報信号等の信号の有無を確認している。つまり、本実施形態では、バッテリー14を内蔵した無線タイプの防災機器1において、バッテリー14の消費電力を抑えるために、間欠受信方式が採用されている。そして、連動元となる防災機器1は、試験信号(火災検出時には警報信号)を、複数回(例えば3回)繰り返し、親器又は他の子器の防災機器1にマルチキャスト送信する。子器の防災機器1が試験信号を受信した場合には、そのまま動作試験を開始し、親器の防災機器1が試験信号を受信した場合には、子器に対して周期的なビーコンの送信を開始して漏れなく子器で動作試験が開始される。以降、親器と子器の防災機器1は、動作試験の終了まで、時分割多元接続方式で通信することになる。
図6Bの例では、時点t11で、防災システム100内の全ての防災機器1が、概ね一斉に、動作試験を開始するものとする。ここでは連動元の防災機器1は、図6Bに示すように、時点t11までは予備報知をそのまま継続し、時点t11にて予備報知を停止する。なお、予備報知の停止は、時点t11でなくてもよく、1回目の押し操作が行われた時点t10でもよい。
時点t11において、各防災機器1は、音響部12より、「ピ、ピ、ピ、ピ」というビープ音と共に、動作試験に関する試験結果を、それぞれ報知する。連動元の防災機器1は、取り換え時期に到達しているため、図示例の通り、そのまま「ピ、ピ、ピ、ピ、警報器の交換時期です。」という音声メッセージを出力(本報知)する。すなわち、時点t11が、図7Aにおける本報知の開始時点t1、すなわち「ある時点tx」に相当する。連動先の他の防災機器1で、例えば、バッテリー14の残容量が残り僅かな状態であることが確認されると、「ピ、ピ、ピ、ピ、電池切れです。」等の音声メッセージを出力する。
各防災機器1は、動作試験により、故障や電池切れ等の、取り換え時期の到達以外の事象が発生していることが見つかれば、最も優先度の高い事象のみを試験結果として報知してもよいし、順次全ての試験結果を報知してもよい。予備報知が前提の動作試験のため、連動元の防災機器1には、少なくとも取り換え時期の到達は発生していることになるが、もし、他の防災機器1で、取り換え時期、電池切れ、及び故障等が無ければ、「ピ、正常です。」という音声メッセージを出力する。これらの音声メッセージは、動作試験が終了されるまで、例えば4秒間隔で、繰り返し出力される。
また時点t11において、各防災機器1は、試験結果の報知と平行して、表示部(作動灯)11より、点灯試験を行う。表示部11は、例えば、0.5秒間の点灯と0.5秒間の消灯とを周期的に繰り返す。
また時点t11において、各防災機器1は、試験結果の報知と平行して、出力部13より、照明光の出力試験を行う。すなわち、各防災機器1の出力部13は、連動元の防災機器1の操作部3にて1回目の押し操作を受け付けたことをトリガーとして、照明光の出力を開始する。出力部13は、連続点灯を行う。
このように本実施形態では、ある防災機器1における予備報知、すなわち取り換えの時期に到達したことを起点として、他の複数の防災機器1の動作試験を実施できる。したがって、住人300が動作試験を実施すべきタイミングを知らなくても、予備報知を通じて動作試験が実施される可能性が高くなる。また複数の防災機器1に対する動作試験を、1台ずつ実施する作業が不要となり、動作試験に関する利便性の向上を図ることができる。
上述した動作試験(試験結果の報知、表示部11の点灯試験、及び出力部13の照明光の出力試験等)は、操作部3に対して2回目の押し操作が行われると終了する。すなわち、連動元の防災機器1は、本報知の実行中の操作部3にて再度操作を受け付けると、本報知を停止し、さらに当該防災機器1は、試験結果の報知中にある他の防災機器1に対して、試験結果の報知を停止させる。そのため、当該防災機器1における操作部3への操作を起点として、他の防災機器1に試験結果の報知を停止させることができる。また住人300の都合に応じて、実行中の試験結果の報知を一斉に停止できるため、利便性が向上される。また試験結果の報知が実行し続けることによって消費される電力の抑制を図ることができる。
同様に、各防災機器1の出力部13は、照明光の出力中に、連動元の防災機器1の操作部3にて再度操作を受け付けたことをトリガーとして、照明光の出力を停止する。したがって、本報知及び照明光に関する連動を実現できる。
図6Bは、住人300が時点t12で操作部3に押し操作を行った例である。もし時点t11から最大で例えば1分間、操作部3への押し操作がなければ、動作試験は自動的に終了する。なお、動作試験は、上の説明例では、予備報知を実行した防災機器1の操作部3への押し操作が起点となって連動停止しているが、他の防災機器1の操作部3への押し操作が起点となっても連動停止可能である。要するに、1回目の押し操作と2回目の押し操作の対象となる防災機器1は、互いに異なってもよい。
そして、本報知の開始時点t11から所定時間T1が経過した時点t13において、連動元である防災機器1は、再度予備報知を実行する。2回目以降の予備通知においても、操作部3への押し操作が行われると、動作試験も、再び各防災機器1で実行される。
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る防災機器1と同様の機能は、防災機器1の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
本開示における防災機器1の制御部10は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における防災機器1の制御部10としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
また、防災機器1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは防災機器1に必須の構成ではなく、防災機器1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、防災機器1の少なくとも一部の機能、例えば、防災機器1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、基本例のように、防災機器1の複数の機能が1つの筐体内に集約されていてもよい。
基本例では、防災機器1は、連動型の火災警報器であり、他の火災警報器と通信するための通信部8を有しているが、単独型の火災警報器であってもよい。要するに、通信部8は、防災機器1において必須の構成要素ではない。
基本例では、予備報知部X1(表示部11)は、予備報知を開始してから、本報知が開始されるまで(操作部3への押し操作がされるまで)、予備報知を継続的に実行するものである。しかし、予備報知部X1は、予備報知を開始してから、操作部3にて操作を受け付けることなく規定期間が経過すると、予備報知を停止してもよい。この場合、基本例のように予備報知の実行が維持される場合に比べて、住人300に不快感を与える可能性を低減できる。また予備報知が実行し続けることによって消費される電力の抑制を図ることができる。
なお、予備報知部X1は、規定期間の経過に応じて予備報知を停止した時点から、さらに特定期間が経過すると、再度予備報知を開始することが好ましい。再度予備報知を開始することで、住人300に不快感を与える可能性を低減しつつ、住人300の取り換え忘れをさらに抑制できる。
基本例では、予備報知が表示により、本報知が音の出力により実行されるが、この限りではない。例えば、予備報知と本報知の両方が音の出力でもよく、この場合、予備報知と本報知とで音量が違ってもよいし、出力される音声メッセージの内容が違ってもよい。
基本例では、防災機器1は、照明光を出力する出力部13を備えている。しかし、出力部13は、防災機器1にとって必須の構成要素ではない。防災機器1は、出力部13を備えてなくてもよい。
基本例では、表示部11が作動灯(作動点滅)と予備報知(報知点滅)の両方を兼ねているが、作動灯は、表示部11とは別に設けられてもよい。また表示部11の灯りは、透光性を有した操作部3越しに見える構成である。しかし、操作部3は、不透明な部材でもよいし、この場合、表示部11の灯りは、操作部3とは別の位置にある孔や透光性のカバー等から筐体4の外部に放射されてもよい。
基本例では、予備報知の後に動作試験が続く構成を説明したが、その構成に加えて、予備報知がなくても、防災機器1が待機状態のときに操作部3が操作されると、動作試験が開始されてもよい。またこの時も、その防災機器1が連動元となって、他の防災機器1において動作試験が開始されてもよい。
基本例では、操作を受け付けた防災機器1自身も動作試験を行うが、自身は行わなくてもよい。すなわち、防災機器1は、操作を受け付け後、直ちに本報知である「警報器の交換時期です。」といった音声メッセージを出力するのみでもよい。
(4)利点
以上説明したように、第1の態様に係る防災機器(1)は、防災に関する報知動作を行う。防災機器(1)は、予備報知部(X1)と、操作部(3)と、本報知部(X2)と、を備える。予備報知部(X1)は、当該防災機器(1)が取り換えの時期に到達した場合に、取り換えに関する予備報知を実行する。操作部(3)は、操作を受け付ける。本報知部(X2)は、予備報知部(X1)にて予備報知の実行中に、操作部(3)にて操作を受け付けると、取り換えに関する本報知を実行する。予備報知部(X1)は、本報知が開始された後、所定の条件を満たすと、予備報知を、少なくとももう1回実行する。第1の態様によれば、所定の条件を満たすと、予備報知が少なくとももう1回実行されるため、ユーザの取り換え忘れの抑制を図ることができる。
第2の態様に係る防災機器(1)に関して、第1の態様において、予備報知部(X1)は、予備報知を表示により実行する表示部(11)を含むことが好ましい。本報知部(X2)は、本報知を音の出力により実行する音響部(12)を含むことが好ましい。第2の態様によれば、予備報知と本報知との差をユーザに認識させることができる。
第3の態様に係る防災機器(1)に関して、第1の態様又は第2の態様において、本報知部(X2)は、本報知の実行中に、操作部(3)にて再度操作を受け付けると、本報知を停止することが好ましい。第3の態様によれば、ユーザの都合に応じて実行中の本報知を停止できるため、利便性が向上される。また本報知が実行し続けることによって消費される電力の抑制を図ることができる。
第4の態様に係る防災機器(1)に関して、第1〜第3の態様のいずれか1つにおいて、所定の条件は、ある時点(tx)から所定時間(T1)が経過することであることが好ましい。ある時点(tx)とは、本報知の開始時点(t1、t11)、本報知の終了時点(t2)、又は予備報知の開始時点(t0)であることが好ましい。第4の態様によれば、ユーザの取り換え忘れの抑制を図ることができる。
第5の態様に係る防災機器(1)は、第1〜第4の態様のいずれか1つにおいて、周囲の領域(R1)を照らす照明光を出力する出力部(13)を、更に備えることが好ましい。出力部(13)は、操作部(3)にて操作を受け付けたことをトリガーとして、照明光の出力を開始することが好ましい。また出力部(13)は、照明光の出力中に操作部(3)にて再度操作を受け付けたことをトリガーとして、照明光の出力を停止することが好ましい。第5の態様によれば、照明光を出力可能な防災機器(1)を提供でき、さらに本報知及び照明光に関する連動を実現できる。
第6の態様に係る防災機器(1)に関して、第1〜第5の態様のいずれか1つにおいて、本報知部(X2)は、特定の時点(tz)から一定期間(T2)の経過後に、操作部(3)にて操作を受け付けると、本報知を実行することが好ましい。又は、本報知部(X2)は、特定の時点(tz)から一定期間(T2)の経過後に、操作部(3)にて操作を受け付けると、取り換えよりも優先度の高い事象に関する情報の報知を実行することが好ましい。特定の時点(tz)とは、予備報知の実行中又は本報知の実行中に、操作部(3)にて操作を受け付けた時点であることが好ましい。第6の態様によれば、本報知の再実行又は優先度の高い事象に関する情報の報知の実行を、ユーザの都合に応じて行えるため、利便性が向上される。
第7の態様に係る防災機器(1)に関して、第1〜第6の態様のいずれか1つにおいて、予備報知部(X1)は、予備報知を開始してから、本報知が開始されるまで、予備報知を継続的に実行することが好ましい。第7の態様によれば、ユーザが予備報知に気づく可能性が向上され、ユーザの取り換え忘れをさらに抑制できる。
第8の態様に係る防災機器(1)に関して、第1〜第6の態様のいずれか1つにおいて、予備報知部(X1)は、予備報知を開始してから、操作部(3)にて操作を受け付けることなく規定期間が経過すると、予備報知を停止することが好ましい。第8の態様によれば、予備報知の実行が維持される場合に比べて、ユーザに不快感を与える可能性を低減できる。また予備報知が実行し続けることによって消費される電力の抑制を図ることができる。
第9の態様に係る防災機器(1)に関して、第8の態様において、予備報知部(X1)は、規定期間の経過に応じて予備報知を停止した時点から、さらに特定期間が経過すると、再度予備報知を開始することが好ましい。第9の態様によれば、ユーザに不快感を与える可能性を低減しつつ、ユーザの取り換え忘れをさらに抑制できる。
第10の態様に係る防災機器(1)は、第1〜第9の態様のいずれか1つにおいて、予備報知の実行中に、操作部(3)にて操作を受け付けると、他の1又は複数の防災機器(1)に対して、動作試験を開始させることが好ましい。動作試験は、少なくとも取り換えに関する試験を含む。第10の態様によれば、当該防災機器(1)における予備報知を起点として、他の複数の防災機器(1)に動作試験を行わせることができる。
第11の態様に係る防災機器(1)は、第10の態様において、本報知の実行中に、操作部(3)にて再度操作を受け付けると、本報知を停止することが好ましい。さらに防災機器(1)は、他の1又は複数の防災機器(1)に対して、動作試験に関する試験結果の報知を停止させることが好ましい。第11の態様によれば、当該防災機器(1)における操作部(3)への操作を起点として、他の1又は複数の防災機器(1)に試験結果の報知を停止させることができる。
第12の態様に係る制御方法は、防災に関する報知動作を行う防災機器(1)の制御方法である。制御方法は、予備報知ステップと、本報知ステップと、再報知ステップと、を有する。予備報知ステップにて、当該防災機器(1)が取り換えの時期に到達した場合に、取り換えに関する予備報知を実行する。本報知ステップにて、予備報知の実行中に、当該防災機器(1)の操作部(3)にて操作を受け付けると、取り換えに関する本報知を実行する。再報知ステップにて、本報知が開始された後、所定の条件を満たすと、予備報知を、少なくとももう1回実行する。第12の態様によれば、ユーザの取り換え忘れの抑制を図ることが可能な制御方法を提供できる。
第13の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに第12の態様における制御方法を実行させる。第13の態様によれば、ユーザの取り換え忘れの抑制を図ることが可能な機能を提供できる。
第2〜11の態様に係る構成については、防災機器(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。