JP2020019951A - 樹脂材料、積層構造体及び多層プリント配線板 - Google Patents

樹脂材料、積層構造体及び多層プリント配線板 Download PDF

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悠子 川原
達史 林
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達史 林
顕紀子 久保
Akiko Kubo
顕紀子 久保
幸平 竹田
Kohei Takeda
幸平 竹田
さやか 脇岡
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さやか 脇岡
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Masami Niido
誠実 新土
悠太 大當
Yuta Daito
悠太 大當
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Abstract

【課題】硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつ常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高めることができる樹脂材料を提供する。【解決手段】本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性化合物と、無機充填材と、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物とを含み、該ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ前記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有し、該ヘテロ原子含有化合物の分子量が500以下であり、樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、該ヘテロ原子含有化合物の含有量が1.5重量%を超え20重量%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、熱硬化性化合物と、無機充填材とを含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料を用いた積層構造体及び多層プリント配線板に関する。
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、上記絶縁層を形成するために、上記樹脂材料がフィルム化された樹脂フィルムが用いられることがある。上記樹脂材料及び上記樹脂フィルムは、ビルドアップフィルムを含む多層プリント配線板用の絶縁材料等として用いられている。
下記の特許文献1には、フィルム形成能のある樹脂、光吸収剤及び多官能エポキシ樹脂を配合した熱硬化性樹脂組成物が開示されている。特許文献1には、上記光吸収剤として、特定の構造を有するピラゾリン誘導体を用いることができることが記載されている。
下記の特許文献2には、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)アミン系安定剤を含有する樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物では、(B)硬化剤が活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤を含み、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(D)アミン系安定剤の含有量が0.01〜0.5質量%である。
特開平09−100392号公報 特開2014−136779号公報
絶縁層と金属層との密着性を高めるために、樹脂材料(樹脂組成物)に、硬化剤として、窒素原子を有する化合物を配合することがある。しかしながら、窒素原子を有する化合物が単に配合された樹脂材料を用いて硬化物(絶縁層)を形成した場合には、硬化物の電気特性が低下することがある。
また、特許文献1に記載の樹脂材料では、波長380nm〜420nmの紫外線を吸収するための光吸収剤として、特定の構造を有するピラゾリン誘導体が配合されているにすぎない。さらに、特許文献1に記載のような無機充填材を含まない樹脂材料では、硬化物の誘電正接を低くすることは困難である。
また、特許文献2に記載の樹脂材料では、アミン系安定剤の含有量が比較的少量であるため、絶縁層と金属層との密着性を十分に高めることは困難である。
本発明の目的は、硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつ常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高めることができる樹脂材料を提供ことである。また、本発明は、上記樹脂材料を用いた積層構造体及び多層プリント配線板を提供することも目的とする。
本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、無機充填材と、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物とを含み、前記ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ前記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有し、前記ヘテロ原子含有化合物の分子量が500以下であり、樹脂材料中の前記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1.5重量%を超え20重量%以下である、樹脂材料が提供される。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子含有化合物が、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の炭素原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子が、窒素原子又は酸素原子である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子が、窒素原子である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物又はビスマレイミド化合物を含む。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機充填材の含有量が10重量%以上である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料が、硬化剤を含み、前記硬化剤が、活性エステル化合物である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子含有化合物が、環状構造を有し、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子と、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子との合計で3個以上のヘテロ原子が、前記環状構造における環を構成する原子である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子の内の少なくとも2個のヘテロ原子が、前記環状構造における同一の環を構成する原子である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基を有し、前記フェノール性水酸基の数が、2個以下である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子含有化合物の水酸基当量が150以上であるか、又は、前記ヘテロ原子含有化合物の窒素含有量が20重量%以上である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ヘテロ原子含有化合物が、分子量分布を有さない。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物100重量部に対する前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が0.5重量部以上である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記無機充填材の平均粒径が1μm以下である。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記無機充填材がシリカである。
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、樹脂フィルムである。
本発明の広い局面によれば、金属層を表面に有する積層対象部材と、前記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、前記樹脂フィルムが、上述した樹脂材料である、積層構造体が提供される。
本発明に係る積層構造体のある特定の局面では、前記金属層の材料が銅である。
本発明の広い局面によれば、回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板が提供される。
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性化合物と、無機充填材と、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物とを含む。本発明に係る樹脂材料では、上記ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有する。本発明に係る樹脂材料では、上記ヘテロ原子含有化合物の分子量が500以下である。本発明に係る樹脂材料では、樹脂材料中の上記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1.5重量%を超え20重量%以下である。本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつ常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性化合物と、無機充填材と、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物とを含む。
上記ヘテロ原子含有化合物は、ヘテロ原子を3個以上有する。上記ヘテロ原子含有化合物の内、特に窒素原子含有化合物においては、−N基(−NH−、及び、−N=)に結合した窒素原子、及び、−X−N基(−X−NH−、及び、−X−N=)に結合した窒素原子を合計で3個以上有する。上記−X−N基におけるXは、任意の原子である。
本発明に係る樹脂材料では、上記ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有する。上記エステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造においては、上記カルボニル基に結合した酸素原子が少なくとも、芳香族環に結合している。
本発明に係る樹脂材料では、上記ヘテロ原子含有化合物の分子量が500以下である。
本発明に係る樹脂材料では、樹脂材料中の上記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1.5重量%を超え20重量%以下である。
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつ常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。
また、本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、樹脂材料の粘度を小さくすることができ、その結果、基板等の凹凸に対する樹脂材料の埋め込み性を高めることができる。さらに、本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、デスミア性を高めることができる。
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
[熱硬化性化合物]
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性化合物を含む。上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、ビスマレイミド化合物、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、ポリフェニレンエーテル化合物、ジビニルベンジルエーテル化合物、ポリアリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、ベンゾオキサゾール化合物、アクリレート化合物、及びシリコーン化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ絶縁層と金属層との密着性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、上記エポキシ化合物又は上記ビスマレイミド化合物を含むことが好ましく、エポキシ化合物を含むことがより好ましく、エポキシ化合物であることが更に好ましい。
(エポキシ化合物)
上記エポキシ化合物とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性及び難燃性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、芳香族骨格を有するエポキシ化合物であることがより好ましい。
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物と、25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
上記エポキシ化合物の粘度を測定する際には、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR−100」)等が用いられる。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂材料の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
(ビスマレイミド化合物)
上記ビスマレイミド化合物は特に限定されない。上記ビスマレイミド化合物は、マレイミド基を有する。上記ビスマレイミド化合物として、従来公知のビスマレイミド化合物を使用可能である。なお、上記ビスマレイミド化合物には、シトラコンイミド化合物が含まれる。上記シトラコンイミド化合物とは、マレイミド基における炭素原子間の二重結合を構成する炭素原子の一方にメチル基が結合した化合物である。上記ビスマレイミド化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビスマレイミド化合物は、主鎖の両末端に上記ダイマージアミンに由来する骨格を有することが好ましい。この場合、上記ビスマレイミド化合物は、主鎖の両末端及び主鎖の両末端以外の骨格内に上記ダイマージアミンに由来する骨格を有していてもよく、主鎖の両末端にのみ上記ダイマージアミンに由来する骨格を有していてもよい。上記ダイマージアミンに由来する骨格を有する場合には、該ダイマージアミンに由来する骨格同士が会合しやすく、相分離構造を形成することで樹脂材料の硬化物のガラス転移温度を効果的に高くすることができる。このため、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
上記ビスマレイミド化合物としては、芳香族ビスマレイミド化合物、及び脂肪族ビスマレイミド化合物等が挙げられる。
上記脂肪族ビスマレイミド化合物としては、N−アルキルビスマレイミド化合物等が挙げられる。
誘電正接を低くし、硬化温度を低く抑える観点からは、上記ビスマレイミド化合物は、N−アルキルビスマレイミド化合物であることが好ましい。
硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ絶縁層と金属層との密着性をより一層高める観点からは、上記N−アルキルビスマレイミド化合物は、マレイミド基における窒素原子に脂肪族骨格が結合した構造を有することが好ましい。また、エッチング性能を高める観点からは、N−アルキルビスマレイミド化合物は、イミド結合又はダイマージアミン骨格を有することが好ましく、イミド結合とダイマージアミン骨格との双方を有することが好ましい。なお、ダイマージアミン骨格が有する不飽和結合の数が多いと、エッチング性能をより一層高めることができる。
誘電正接をより一層低くする観点からは、上記N−アルキルビスマレイミド化合物は、ダイマージアミンに由来する骨格を有するN−アルキルビスマレイミド化合物であることがより好ましい。ダイマージアミンに由来する骨格を有するN−アルキルビスマレイミド化合物において、ダイマージアミン骨格は、部分骨格として存在する。
上記ビスマレイミド化合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させて反応物を得た後、該反応物と無水マレイン酸とを反応させて得ることができる。
また、主鎖の両末端にのみ上記ダイマージアミンに由来する骨格を有するビスマレイミド化合物は、例えば、以下のようにして得ることができる。テトラカルボン酸二無水物と、ダイマージアミンと、ダイマージアミン以外のジアミン化合物とを反応させて第1の反応物を得る。得られた第1の反応物とダイマージアミンとを反応させて第2の反応物を得る。得られた第2の反応物と無水マレイン酸とを反応させる。
また、上記ダイマージアミンに由来する骨格を有するN−アルキルビスマレイミド化合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させて反応物を得た後、該反応物と無水マレイン酸とを反応させて得ることができる。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
上記ジアミン化合物としては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、1,4−ジアミノブタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,7−ジアミノヘプタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,8−ジアミノオクタン、1,3−ジアミノプロパン、1,11−ジアミノウンデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、及びダイマージアミン等が挙げられる。
本発明の効果により一層優れることから、上記ジアミン化合物は、脂肪族骨格を有するジアミン化合物であることが好ましい。この場合に、上記ビスマレイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族骨格を有するジアミン化合物との反応物に由来する骨格を有していてもよく、テトラカルボン酸二無水物と、脂肪族骨格を有するジアミン化合物と、脂肪族骨格を有するジアミン化合物とは異なるアミン化合物との反応物に由来する骨格を有していてもよい。また、上記ビスマレイミド化合物は、両末端のジアミン骨格が上記脂肪族骨格を有するジアミン化合物に由来したジアミン骨格を有し、かつ両末端以外のジアミン骨格が芳香族骨格を有するジアミン化合物に由来したジアミン骨格を有してもよい。
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名、BASFジャパン社製、3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、並びにPRIAMINE1075、PRIAMINE1074、及びPRIAMINE1071(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。なお、上記ダイマージアミンとして、PRIAMINE1074、又はPRIAMINE1071を用いることにより、デスミア性を高めることができる場合がある。PRIAMINE1074及びPRIAMINE1071は、不飽和結合の数が多いダイマージアミンである。
上記N−アルキルビスマレイミド化合物の市販品としては、Designer Molecules Inc.製「BMI−1500」、「BMI−1700」、及び「BMI−3000」等が挙げられる。
上記ビスマレイミド化合物の分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上であり、好ましくは20000未満、より好ましくは15000未満である。上記ビスマレイミド化合物の分子量が上記下限以上及び上記上限未満であると、硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。上記ビスマレイミド化合物の分子量が上記上限未満であると、基板等の凹凸に対する樹脂材料の埋め込み性をより一層高めることができる。
上記ビスマレイミド化合物の分子量は、上記ビスマレイミド化合物が重合体ではない場合、及び上記ビスマレイミド化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記ビスマレイミド化合物の分子量は、上記ビスマレイミド化合物が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記ビスマレイミド化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。上記ビスマレイミド化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、海島構造をより一層容易に形成させることができ、誘電正接をより一層低くし、熱寸法安定性、弾性率及び絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ビスマレイミド化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは65重量%以下、より好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記ビスマレイミド化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、海島構造をより一層容易に形成させることができ、誘電正接をより一層低くし、熱寸法安定性、弾性率及び絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
[無機充填材]
上記樹脂材料は、無機充填材を含む。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より一層好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、特に好ましくは68重量%以上である。樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
[ヘテロ原子含有化合物]
上記樹脂材料は、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物とを含む。上記ヘテロ原子含有化合物は、上記熱硬化性化合物とは異なる化合物である。上記ヘテロ原子含有化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ヘテロ原子含有化合物は、フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有する。
上記フェノール性水酸基における水酸基、上記ビニル基、上記エポキシ基、上記シアネート基、上記カルボジイミド基は、反応性官能基である。反応性を高める観点からは、上記ヘテロ原子含有化合物では、上記反応性官能基に結合した第1の原子(例えば炭素原子)が該反応性官能基以外に結合している第2の原子は、水素原子と結合していることが好ましく、例えば、ターシャリーブチル基等の嵩高い構造を有する基と結合していないことが好ましい。
上記ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、リン原子、又は硫黄原子であることが好ましく、窒素原子又は酸素原子であることがより好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。
「他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子」における「1個の原子」としては、炭素原子又は酸素原子等が挙げられる。「他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子」における「1個の原子」は、炭素原子であることが好ましい。従って、上記ヘテロ原子含有化合物は、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の炭素原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物であることが好ましい。
硬化物の誘電正接を低くする観点、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高める観点からは、上記ヘテロ原子含有化合物は、環状構造を有することが好ましい。上記環状構造は、複素環等の環を有することが好ましい。上記ヘテロ原子含有化合物は、環を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子と、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子との合計で3個以上のヘテロ原子が、上記環状構造における環を構成する原子であることが好ましい。この場合、上記3個以上のヘテロ原子は、同一の環を構成している原子であってもよく、異なる環を構成する原子であってもよい。他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子の内の少なくとも2個のヘテロ原子が、上記環状構造における同一の環を構成する原子であることが好ましい。上記の好ましい態様を満足することで、硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつ常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。
硬化物の誘電正接を低くする観点、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高める観点からは、上記ヘテロ原子含有化合物は、上記フェノール性水酸基を有することが好ましい。硬化物の誘電正接を低くする観点、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高める観点からは、上記フェノール性水酸基の数は、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
上記ヘテロ原子含有化合物の分子量は500以下であり、好ましくは400以下である。
硬化物の誘電正接を低くする観点、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高める観点からは、上記ヘテロ原子含有化合物の水酸基当量は150以上であることが好ましく、170以上であることがより好ましい。上記水酸基当量が上記下限以上であると、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができ、また、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。特に、上記ヘテロ原子含有化合物がフェノール性水酸基を有するヘテロ原子含有化合物である場合には、上記水酸基当量が上記下限以上であると、硬化物の誘電正接を更により一層低くすることができ、また、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を更により一層高めることができる。
常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高める観点からは、上記ヘテロ原子含有化合物の窒素含有量は20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましい。特に、上記ヘテロ原子含有化合物がフェノール性水酸基を有するヘテロ原子含有化合物である場合には、上記窒素含有量が上記下限以上であると、硬化物の誘電正接を更により一層低くすることができ、また、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を更により一層高めることができる。
硬化物の誘電正接を低くする観点、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高める観点からは、上記ヘテロ原子含有化合物は、分子量分布を有さないことが好ましい。分子量分布を有さないとは、上記ヘテロ原子含有化合物が単一の化合物であり、繰り返し単位を有する場合に、該繰り返し単位の繰り返し数が異なる化合物の混合物ではないことを意味する。
樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ヘテロ原子含有化合物の含有量は、1.5重量%を超え20重量%以下である。樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ヘテロ原子含有化合物の含有量は、好ましくは1.7重量%以上、より好ましくは1.75重量%以上、更に好ましくは2.0重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、更に好ましくは12重量%以下である。上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、フィルムライフ及びフィルム保管ライフをより一層向上させることができ、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。
硬化物の誘電正接をより一層低くする観点からは、上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記ヘテロ原子含有化合物の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下、更に好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。なお、上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が8重量部を超えると、上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が8重量部以下である場合と比べて、硬化物の誘電正接が高くなることがある。また、上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記ヘテロ原子含有化合物の含有量が5重量部を超えると、フィルムライフ及びフィルム保管ライフが短くなることもある。
以下、ヘテロ原子含有化合物の具体例として、窒素原子含有化合物について説明する。
[窒素原子含有化合物]
上記樹脂材料は、他の窒素原子と直接結合している窒素原子、及び、他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子を合計で3個以上有する窒素原子含有化合物を含むことが好ましい。本明細書において、他の窒素原子と直接結合している窒素原子、及び、他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子をまとめて、「特定の窒素原子」と記載することがある。上記窒素原子含有化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記窒素原子含有化合物は、特定の窒素原子を3個以上有する。上記窒素原子含有化合物は、−N基(−NH−、及び、−N=)に結合した窒素原子、−X−N基(−X−NH−、及び、−X−N=)に結合した窒素原子を合計で3個以上有する。上記窒素原子含有化合物は、(特定の窒素原子)−Nの構造、及び(特定の窒素原子)−X−Nの構造で、特定の窒素原子を合計で3個以上有する。上記−X−N基におけるXは、任意の原子である。上記構造には、不飽和結合が含まれていてもよい。
上記窒素原子含有化合物は、特定の窒素原子以外に、他の窒素原子と2個以上の原子を介して結合している窒素原子を有していてもよい。上記窒素原子含有化合物は、他の窒素原子と2個以上の原子を介して結合している窒素原子を有していなくてもよい。他の窒素原子と2個以上の原子を介して結合している窒素原子は、上記の特定の窒素原子の数に含まれない。
上記−X−N基におけるXとしては、炭素原子又は酸素原子等が挙げられる。上記−X−N基におけるXは、炭素原子であることが好ましい。「他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子」における「1個の原子」としては、炭素原子又は酸素原子等が挙げられる。「他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子」における「1個の原子」は、炭素原子であることが好ましい。従って、上記窒素原子含有化合物は、他の窒素原子と直接結合している窒素原子、及び、他の窒素原子と1個の炭素原子を介して結合している窒素原子を合計で3個以上有する窒素原子含有化合物であることが好ましい。
特定の窒素原子は、1つの他の窒素原子と直接結合していてもよく、2つの他の窒素原子と直接結合していてもよい。上記窒素原子含有化合物は、N−(特定の窒素原子)−Nの構造を有していてもよい。上記窒素原子含有化合物は、N−(特定の窒素原子)−X−Nの構造を有していてもよい。上記窒素原子含有化合物は、N−(特定の窒素原子)−X1−X2の構造(X1及びX2は任意の基)を有していてもよい。上記窒素原子含有化合物は、N−X−(特定の窒素原子)−X1−X2の構造(X1及びX2は任意の基)を有していてもよい。
上記窒素原子含有化合物は、他の窒素原子と直接結合している窒素原子のみを3個以上有していてもよく、他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子のみを3個以上有していてもよく、他の窒素原子と直接結合している窒素原子、及び、他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子の双方を有していてもよい。
上記窒素原子含有化合物は、以下の構成(1)と構成(2)と構成(3)とを備える化合物である。
構成(1):他の窒素原子と直接結合している窒素原子、及び、他の窒素原子と1個の原子を介して結合している窒素原子を合計で3個以上有する。
構成(2):フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有する。なお、上記カルボニル基を構成している炭素(カルボニル炭素)は必ずしも芳香族環に結合している必要はない。カルボニル炭素の電子密度が低いと芳香族環に対する反応性が高くなる。
構成(3):分子量が500以下である。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(1)を備えるので、窒素原子の密度が高い化合物である。そのため、硬化のための加熱時に、窒素原子含有化合物が絶縁層と金属層との界面に移動した場合に、上記窒素原子含有化合物と金属層とが、非共有結合を形成するなどして強い相互作用を発揮することができる。その結果、上記窒素原子含有化合物を介して、絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(2)を備えるので、上記熱硬化性化合物と上記窒素原子含有化合物とが反応して共有結合を形成することが可能である。そのため、絶縁層において、上記熱硬化性化合物と上記窒素原子含有化合物とが強固に結合できる。その結果、絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。また、上記窒素原子含有化合物は、フェノール性水酸基を有しないか、又はフェノール性水酸基を少ない数で有するため、誘電正接を低くすることができる。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(3)を備えるので、硬化のための加熱時に、対流等の影響で、上記窒素原子含有化合物が絶縁層と金属層との界面上に効果的に移動することができる。そのため、上記窒素原子含有化合物と金属層とが、非共有結合をより一層効果的に形成することができ、絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。また、上記窒素原子含有化合物は低分子化合物であるため、樹脂材料の粘度を効果的に小さくすることができる。特に、フェノール樹脂を用いると、他の低極性樹脂成分との混ざりが悪く、樹脂材料の粘度が上昇する傾向にあるものの、上記窒素原子含有化合物を用いることで樹脂材料の粘度を効果的に小さくすることができる。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(1)、上記構成(2)及び上記構成(3)の全てを備えるので、硬化物の誘電正接を低くすることができ、常温及び高温での絶縁層と金属層との密着性を高めることができ、基板等の凹凸に対する樹脂材料の埋め込み性を高めることができ、さらにデスミア性も高めることができる。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(1)を備える。
上記窒素原子含有化合物は、他の窒素原子と直接結合している窒素原子、及び、他の窒素原子と1個の原子を介して結合している特定の窒素原子を合計で3個以上有する。上記窒素原子含有化合物は特定の窒素原子を3個有していてもよく、4個有していてもよく、5個有していてもよく、6個有していてもよい。
上記窒素原子含有化合物が有する特定の窒素原子の数は、4個以上であってもよく、5個以上であってもよく、6個以上であってもよい。但し、上記窒素原子含有化合物の化学的安定性をより一層高める観点からは、他の窒素原子と直接結合している窒素原子の数は、4個以下であることが好ましい。
上記窒素原子含有化合物は、全ての窒素原子が連続して結合している構造を有するか、又は、全ての窒素原子において、各窒素原子間に存在する窒素原子以外の原子の数が1個以下であることが好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接を低くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。
本発明の効果を効果的に高める観点からは、上記特定の窒素原子は、複素環を構成する原子であることが好ましい。上記複素環としては、トリアゾール環、トリアジン環、アミノトリアジン構造、及びシアヌル酸構造等が挙げられる。本発明の効果を効果的に高める観点からは、2個以上の特定の窒素原子が、1つの環状構造内に含まれることが好ましく、3個の特定の窒素原子が、1つの環状構造内に含まれることが好ましい。また、上記複素環が3個の窒素原子が連続して結合している構造を有する上記トリアゾール環である場合には、該トリアゾール環が有する3個の窒素原子のうち、中央の窒素原子が置換基を有さないことが好ましい。
本発明の効果を効果的に高める観点からは、上記窒素原子含有化合物は、環状構造を有することが好ましい。上記環状構造は複素環等の環を有することが好ましい。上記窒素原子含有化合物は、環を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。本発明の効果を効果的に高める観点からは、3個以上の特定の窒素原子が、上記環状構造における環を構成する原子であることが好ましい。この場合、上記3個以上の特定の窒素原子は、同一の環を構成している原子であってもよく、異なる環を構成する原子であってもよい。本発明の効果を効果的に高める観点からは、少なくとも2個の特定の窒素原子が、上記環状構造における同一の環を構成する原子であることが好ましい。
上記窒素原子含有化合物が、特定の窒素原子以外の窒素原子を有する場合に、特定の窒素原子以外の窒素原子は、複素環を構成する原子であってもよく、アミノ基等を構成する原子であってもよい。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(2)を備える。
熱硬化性化合物と窒素原子含有化合物とをより一層良好に結合させ、絶縁層と金属層との密着性をより一層高める観点からは、上記窒素原子含有化合物は、フェノール性水酸基、活性エステル骨格又はビニル基を有することが好ましく、フェノール性水酸基を有することがより好ましい。
上記窒素原子含有化合物がフェノール性水酸基を有する場合に、該フェノール性水酸基の数は、好ましくは3個以下であり、より好ましくは2個以下であり、最も好ましくは1個である。
本発明の効果を効果的に高める観点からは、上記窒素原子含有化合物の水酸基当量は150以上であることが好ましく、170以上であることがより好ましい。
本発明の効果を効果的に高める観点からは、上記窒素原子含有化合物の窒素含有量は20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましい。
硬化物の誘電正接をより一層低くする観点からは、上記窒素原子含有化合物は、エステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有することが好ましい。
エステル結合を有しかつ上記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有する窒素原子含有化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。該構造を有する窒素原子含有化合物の例としては、下記式(11)及び下記式(12)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020019951
上記式(11)中、X1は、アルキル基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表し、X3は、3個以上の窒素原子を含む基を表す。
Figure 2020019951
上記式(12)中、Y1は、3個以上の窒素原子を含む基を表し、Y2は、アルキル基又は芳香族環を含む基を表し、Y3は、芳香族環を含む基を表す。
上記式(11)及び上記式(12)において、芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
X1とX2との組み合わせ、並びにY1とY2との組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、X1とX2との組み合わせ、並びにY1とY2との組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。X1及びY2はメチル基であってもよい。
上記熱硬化性化合物がエポキシ化合物を含む場合には、上記窒素原子含有化合物は、フェノール性水酸基、又は活性エステル骨格を有することが好ましい。上記熱硬化性化合物がビスマレイミド化合物を含む場合には、上記窒素原子含有化合物は、ビニル基を有することが好ましい。
上記窒素原子含有化合物は、上記構成(3)を備える。
上記窒素原子含有化合物の分子量は、500以下であり、好ましくは400以下である。上記窒素原子含有化合物の分子量が上記上限以下であると、硬化に伴う加熱時に、対流等の影響で、上記窒素原子含有化合物が絶縁層と金属層との界面上に効果的に移動することができる。そのため、上記窒素原子含有化合物と金属層とが、非共有結合をより一層効果的に形成することができ、金属層と絶縁層との接着強度をより一層高めることができる。また、樹脂材料の粘度をより一層小さくすることができ、その結果、基板等の凹凸に対する樹脂材料の埋め込み性をより一層高めることができる。
上記窒素原子含有化合物の市販品としては、TCI社製「2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール」、及び「2−ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン」等が挙げられる。
樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記窒素原子含有化合物の含有量は、好ましくは1.5重量%を超え、より好ましくは1.7重量%以上、更に好ましくは2.0重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、更に好ましくは12重量%以下である。上記窒素原子含有化合物の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記窒素原子含有化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記窒素原子含有化合物が硬化促進剤として作用することを防止することができ、フィルムライフ、及びフィルム保管ライフをより一層向上させることができ、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。
硬化物の誘電正接をより一層低くする観点からは、上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記窒素原子含有化合物の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。なお、上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記窒素原子含有化合物の含有量が8重量部を超えると、上記窒素原子含有化合物の含有量8重量部以下である場合と比べて、硬化物の誘電正接が高くなることがある。また、上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記窒素原子含有化合物の含有量が5重量部を超えると、上記窒素原子含有化合物が硬化促進剤として作用して、フィルムライフ、及びフィルム保管ライフが短くなることもある。
[硬化剤]
上記樹脂材料は、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は、上記ヘテロ原子含有化合物とは異なる。上記硬化剤は、上記窒素原子含有化合物とは異なる。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、酸無水物、活性エステル化合物(活性エステル硬化剤)、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、及びベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、シアネートエステル化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分を含むことが好ましく、活性エステル化合物であることがより好ましい。すなわち、上記樹脂材料は、フェノール化合物、シアネートエステル化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分を含む硬化剤を含むことが好ましく、活性エステル化合物である硬化剤を含むことがより好ましい。
本明細書において、「フェノール化合物、シアネートエステル化合物、酸無水物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分」を「成分X」と記載することがある。
したがって、上記樹脂材料は、成分Xを含む硬化剤を含むことが好ましい。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、並びにビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA−100」等が挙げられる。
上記活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2020019951
上記式(1)中、X1は、脂肪族環又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記X1は、ナフタレン環であることが好ましい。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。熱寸法安定性及び難燃性を高める観点からは、上記活性エステルは、2個以上の芳香族骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、活性エステルの主鎖骨格中にナフタレン環を有することがより好ましい。
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000−65T」、「EXB−9416−70BK」、「EXB−8100−65T」及び「HPC−8150−60T」等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
Figure 2020019951
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1〜5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V−02B」、「カルボジライト V−03」、「カルボジライト V−04K」、「カルボジライト V−07」、「カルボジライト V−09」、「カルボジライト 10M−SP」、及び「カルボジライト 10M−SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P−d型ベンゾオキサジン、及びF−a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P−d型」等が挙げられる。
上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記成分Xの含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上であり、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と上記成分Xとの合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記熱硬化性化合物と上記成分Xとの合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
上記熱硬化性化合物100重量部に対する上記活性エステル化合物の含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上であり、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記活性エステル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と上記活性エステル化合物との合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記熱硬化性化合物と上記活性エステル化合物との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤、並びに過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン化合物等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記過酸化物としてはジクミルペルオキシド、及びパーヘキシル25B等が挙げられる。
硬化温度をより一層低く抑え、硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤を含むことが好ましく、上記イミダゾール化合物を含むことがより好ましい。
硬化温度をより一層低く抑え、硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤100重量%中、上記アニオン性硬化促進剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤であることが最も好ましい。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂材料の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
上記樹脂材料に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
ハンドリング性、低粗度でのメッキピール強度及び絶縁層と金属層との密着性を高める観点から、上記熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂(ポリイミド化合物)であることが好ましい。
溶解性を良好にする観点からは、上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させる方法によって得られたポリイミド化合物であることが好ましい。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名BASFジャパン社製、3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
なお、上記ポリイミド化合物は末端に、酸無水物構造、マレイミド構造、シトラコンイミド構造を有していてもよい。この場合には、上記ポリイミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることができる。上記ポリイミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることにより、硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
保存安定性により一層優れた樹脂材料を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂である場合には、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、及び揺変性付与剤等を含んでいてもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃〜150℃で1分間〜10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材と、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
(半導体装置、プリント配線板、銅張積層板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。
上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂材料を加熱加圧成形することにより得られる。
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層できる。金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが、上述した樹脂材料である、積層構造体を好適に得ることができる。上記樹脂フィルムと上記金属層を表面に有する積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、金属層を表面に有する積層対象部材に積層可能である。
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板が挙げられる。
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。
上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂材料により形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
多層基板のうち多層プリント配線板においては、低い誘電正接が求められ、絶縁層による高い絶縁信頼性が求められる。従って、本発明に係る樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料の硬化物である。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13〜16が積層されている。絶縁層13〜16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13〜16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層プリント配線板11では、絶縁層13〜16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13〜16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃〜85℃で1分間〜30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
(デスミア処理)
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60μm〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
(熱硬化性化合物)
エポキシ化合物:
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC−3000」)
ナフタレン型エポキシ化合物(DIC社製「HP−4032D」)
ナフトールアラルキル型エポキシ化合物(新日鐵住金化学社製「ESN−475V」
ビスマレイミド化合物:
N−アルキルビスマレイミド化合物(Designer Molecules Inc.製「BMI−1700」)
(無機充填材)
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050−HOA」、平均粒径1.0μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
(特定の窒素原子を3個以上有する窒素原子含有化合物)
下記式(1A)で表される化合物1A(分子量225、TCI社製「2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール」、特定の窒素原子3個、水酸基当量225、窒素含有量19重量%)
下記式(2A)で表される化合物2A(分子量150、TCI社製「7−ヒドロキシ−5−メチル−1,3,4−トリアザインドリジン」、特定の窒素原子4個、水酸基当量150、窒素含有量37重量%)
下記式(3A)で表される化合物3A(分子量304、特定の窒素原子4個、水酸基当量0、窒素含有量18重量%)
下記式(4A)で表される化合物4A(分子量380、特定の窒素原子3個、水酸基当量0、窒素含有量11重量%)
下記式(5A)で表される化合物5A(分子量137、TCI社製「2−ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン」、特定の窒素原子5個、水酸基当量0、窒素含有量51重量%)
下記式(6A)で表される化合物6A(分子量397、TCI社製「2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン」、特定の窒素原子3個、水酸基当量198.5、窒素含有量11重量%)
下記式(7A)で表される化合物7A(分子量365、特定の窒素原子5個、水酸基当量182、窒素含有量19重量%)
下記式(8A)で表される化合物8A(分子量309、特定の窒素原子5個、水酸基当量154.5、窒素含有量22.6重量%)
Figure 2020019951
Figure 2020019951
Figure 2020019951
Figure 2020019951
Figure 2020019951
Figure 2020019951
Figure 2020019951
Figure 2020019951
上記化合物3Aは、下記の合成例1に従って合成した。
(合成例1)
TCI社製「7−ヒドロキシ−5−メチル−1,3,4−トリアザインドリジン」15.01gをTHF中に微分散させ、2―ナフタレンカルボン酸を17.2g添加した。その後、触媒としてジシクロヘキシルカルボジイミドとジメチルアミノピリジンとを添加して、過熱攪拌した。得られた生成物の溶解したTHF溶液を濾過により回収し、エバポレーションにより、溶剤を除去することで生成物を得た。
上記化合物4Aは、下記の合成例2に従って合成した。
(合成例2)
TCI社製「2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール」22.5gをTHF中に溶解させ、2―ナフタレンカルボン酸を17.2g添加した。その後、触媒としてジシクロヘキシルカルボジイミドとジメチルアミノピリジンとを添加して、過熱攪拌した。得られた生成物の溶解したTHF溶液を濾過により回収し、再結晶法により、溶剤を除去することで生成物を得た。
上記化合物7Aは、下記の合成例3に従って合成した。
(合成例3)
TCI社製「2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン」12.5gをTHF中に溶解させ、4−ヒドロキシ安息香酸27.6g(2モル等量)追加し、攪拌した。その後、触媒としてジシクロヘキシルカルボジイミドとジメチルアミノピリジンとを添加して、過熱攪拌した。得られた生成物の溶解したTHF溶液を濾過により回収し、エバポレーションにより、溶剤を除去することで生成物を得た。
上記化合物8Aは、下記の合成例4に従って合成した。
(合成例4)
TCI社製「2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン」12.5gをTHF中に溶解させ、クロロフェノールと反応させ、精製することで生成物を得た。
(特定の窒素原子を3個以上有する窒素原子含有化合物に相当しない化合物)
下記式(1B)で表される化合物1B(Mw>500、DIC社製「LA1356」、水酸基当量146、窒素含有量19重量%)
Figure 2020019951
上記式(1B)中、nは2〜5の整数を表す。
(硬化剤)
成分X:
活性エステル化合物含有液(DIC社製「EXB−9416−70BK」、固形分70重量%)
(硬化促進剤)
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
イミダゾール化合物(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
ジクミルペルオキシド(東京化成工業社製)
(熱可塑性樹脂)
ポリイミド化合物(ポリイミド樹脂):
テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとの反応物であるポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.8重量%)を以下の合成例5に従って合成した。
(合成例5)
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン合同会社製「BisDA−1000」)300.0gと、シクロヘキサノン665.5gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」)89.0gと、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製)54.7gとを滴下した。次いで、反応容器中に、メチルシクロヘキサン121.0gと、エチレングリコールジメチルエーテル423.5gとを添加し、140℃で10時間かけてイミド化反応を行った。このようにして、ポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.8重量%)を得た。得られたポリイミド化合物の分子量(重量平均分子量)は20000であった。なお、酸成分/アミン成分のモル比は1.04であった。
合成例5で合成したポリイミド化合物の分子量は、以下のようにして求めた。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD−10A」を用い、カラムはShodex社製「KF−804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー社製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500の物質を使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
(実施例1〜9及び比較例1〜4)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂材料を得た。
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
(評価)
(1)誘電正接
得られた樹脂フィルムを幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して5枚を重ね合わせて、厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体を190℃で90分間加熱して、硬化物を得た。得られた硬化物について、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)にて、周波数1.0GHzにて誘電正接を測定した。
[誘電正接の判定基準]
○○:誘電正接が0.0040以下
○:誘電正接が0.0040を超え0.0050未満
×:誘電正接が0.0050以上
(2)絶縁層と金属層との密着性(ピール強度)
ラミネート工程:
両面銅張積層板(各面の銅箔の厚み18μm、基板の厚み0.7mm、基板サイズ100mm×100mm、日立化成社製「MCL−E679FG」)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔面の両面をメック社製「Cz8101」に浸漬して、銅箔の表面を粗化処理した。粗化処理された銅張積層板の両面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500−IIA」を用いて、積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートして、積層構造体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.4MPaでプレスする条件とした。
フィルム剥離工程:
得られた積層構造体において、両面のPETフィルムを剥離した。
銅箔貼り付け工程:
銅箔(厚み35μm、三井金属社製)のシャイニー面をCz処理(メック社製「Cz8101」)して、銅箔表面を1μm程度エッチングした。PETフィルムを剥離した上記積層構造体に、エッチング処理した銅箔を貼り合せて、銅箔付き基板を得た。得られた銅箔付き基板をギアオーブン内で190℃で90分間熱処理し、評価サンプルを得た。
(2−1)常温環境下におけるピール強度の測定:
評価サンプルの銅箔の表面に1cm幅の短冊状の切込みを入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE−3001」)に評価サンプルをセットし、つかみ具で切込みの入った銅箔の端部をつまみあげ、銅箔を20mm剥離して剥離強度(ピール強度)を測定した。
[常温環境下におけるピール強度の判定基準]
○:ピール強度が0.6kgf以上
△:ピール強度が0.4kgf以上0.6kgf未満
×:ピール強度が0.4kgf未満
(2−2)高温(260℃)環境下におけるピール強度の測定:
評価サンプルの銅箔の表面に1cm幅の短冊状の切込みを入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE−3001」)の評価サンプルをセットする箇所に加熱ユニットを設置した後、評価サンプルをセットし、加熱ユニットを260℃に設定した。その後、つかみ具で切込みの入った銅箔の端部をつまみあげ、銅箔を20mm剥離して剥離強度(ピール強度)を測定した。
[高温(260℃)環境下におけるピール強度の判定基準]
○:ピール強度が0.1kgf以上
△:ピール強度が0.05kgf以上0.1kgf未満
×:ピール強度が0.05kgf未満
(3)凹凸表面に対する埋め込み性
100mm角の銅張積層板(厚さ400μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)の銅箔のみをエッチングして、直径100μm及び深さ25μmの窪み(開口部)を、基板の中心30mm角のエリアに対して直線上にかつ隣接する穴の中心の間隔が900μmになるように開けた。このようにして、計900穴の窪みを持つ評価基板を準備した。
得られた積層フィルムの樹脂フィルム側を評価基板上に重ねて、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500−IIA」を用い、ラミネート圧0.4MPaで20秒、プレス圧力0.8MPaで20秒、ラミネート及びプレスの温度85℃で加熱加圧した。常温で冷却した後、PETフィルムを剥離した。このようにして、評価基板上に樹脂フィルムが積層された評価サンプルを得た。
得られた評価サンプルについて光学顕微鏡を用いて、窪みの中のボイドを観察した。ボイドが観察された窪みの割合を評価することによって、凹凸表面に対する埋め込み性を下記の基準で判定した。
[凹凸表面に対する埋め込み性の判定基準]
○:ボイドが観察された窪みの割合0%
△:ボイドが観察された窪みの割合0%を超え5%未満
×:ボイドが観察された窪みの割合5%以上
(4)フィルムライフ
得られた樹脂フィルム(Bステージフィルム)を常温で5日間静置した。静置前後のBステージフィルムの溶融粘度を測定した。静置前のBステージフィルムの溶融粘度の最小値(最低溶融粘度)と静置後のBステージフィルムの溶融粘度の最小値(最低溶融粘度)とから、溶融粘度の上昇割合を求めた。フィルムライフを下記の基準で判定した。なお、溶融粘度は、Rheometer装置(TAインスツルメント社製「AR2000」)を用い、60℃〜180℃の範囲で昇温速度5℃/分、歪み20%、周波数1Hzの条件で、大気下で測定した。
[フィルムライフの判定基準]
○:溶融粘度の上昇割合が25%未満
×:溶融粘度の上昇割合が25%以上
組成及び結果を下記の表1,2に示す。
Figure 2020019951
Figure 2020019951
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13〜16…絶縁層
17…金属層

Claims (19)

  1. 熱硬化性化合物と、無機充填材と、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物とを含み、
    前記ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基、ビニル基、エポキシ基、シアネート基、カルボジイミド基、酸無水物骨格、若しくはベンゾオキサジン骨格を有するか、又はエステル結合を有しかつ前記エステル結合のカルボニル基に結合した酸素原子が芳香族環に結合している構造を有し、
    前記ヘテロ原子含有化合物の分子量が500以下であり、
    樹脂材料中の前記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1.5重量%を超え20重量%以下である、樹脂材料。
  2. 前記ヘテロ原子含有化合物が、他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の炭素原子を介して結合しているヘテロ原子を合計で3個以上有するヘテロ原子含有化合物である、請求項1に記載の樹脂材料。
  3. 前記ヘテロ原子が、窒素原子又は酸素原子である、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
  4. 前記ヘテロ原子が、窒素原子である、請求項3に記載の樹脂材料。
  5. 前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物又はビスマレイミド化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  6. 樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機充填材の含有量が10重量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  7. 硬化剤を含み、
    前記硬化剤が、活性エステル化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  8. 前記ヘテロ原子含有化合物が、環状構造を有し、
    他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子と、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子との合計で3個以上のヘテロ原子が、前記環状構造における環を構成する原子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  9. 他のヘテロ原子と直接結合しているヘテロ原子、及び、他のヘテロ原子と1個の原子を介して結合しているヘテロ原子の内の少なくとも2個のヘテロ原子が、前記環状構造における同一の環を構成する原子である、請求項8に記載の樹脂材料。
  10. 前記ヘテロ原子含有化合物が、フェノール性水酸基を有し、
    前記フェノール性水酸基の数が、2個以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  11. 前記ヘテロ原子含有化合物の水酸基当量が150以上であるか、又は、前記ヘテロ原子含有化合物の窒素含有量が20重量%以上である、請求項10に記載の樹脂材料。
  12. 前記ヘテロ原子含有化合物が、分子量分布を有さない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  13. 前記熱硬化性化合物100重量部に対する前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が0.5重量部以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  14. 前記無機充填材の平均粒径が1μm以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  15. 前記無機充填材がシリカである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  16. 樹脂フィルムである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂材料。
  17. 金属層を表面に有する積層対象部材と、前記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、
    前記樹脂フィルムが、請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂材料である、積層構造体。
  18. 前記金属層の材料が銅である、請求項17に記載の積層構造体。
  19. 回路基板と、
    前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、
    複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
    複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
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