以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
図1は、パターン転写装置1の構成図である。パターン転写装置1の処理対象物は、略一定の幅を有した長尺状の帯状フィルム100である。帯状フィルム100は、表面100aと当該表面100aとは反対側の裏面100bとを有している。帯状フィルム100は、例えば、合成樹脂材料によって構成されるが、これには限定されない。帯状フィルム100は、ウエブとも称されうる。帯状フィルム100は、基材の一例であり、表面100aは、第一面の一例であり、裏面100bは、第二面の一例である。
パターン転写装置1は、帯状フィルム100をその長手方向に連続的にあるいは断続的に搬送しながら、所定位置で表面100aに処理を施すことにより、表面100a上に、その長手方向に渡って、凹凸形状が転写される樹脂層100cを形成する。以降では、凹凸形状の転写前の樹脂層100cを塗工層100caとも称し、凹凸形状の転写後の樹脂層100cを成形層100cbとも称する。樹脂層100cにおける帯状フィルム100とは反対側の面が、樹脂層100cの表面100gである。帯状フィルム100と樹脂層100cとによってシート101が構成される。シート101の表面101aは、樹脂層100cの表面100gによって構成され、シート101の裏面101bは、帯状フィルム100の裏面100bによって構成される。表面100aは、処理面とも称され、裏面100bは、非処理面とも称されうる。
図1に示されるように、パターン転写装置1は、繰出機構10、巻取機構20、塗工機構30、転写機構40、および光照射装置50を備えている。繰出機構10および巻取機構20は、帯状フィルム100を当該帯状フィルム100の長手方向に搬送する搬送機構を構成している。帯状フィルム100は、繰出機構10と巻取機構20との間で、当該繰出機構10および巻取機構20によって搬送されるとともに、塗工機構30、転写機構40、および光照射装置50によって処理される。よって、塗工機構30、転写機構40、および光照射装置50は、処理機構とも称されうる。
繰出機構10は、繰出軸11および繰出モータ12を有している。繰出軸11には、未処理の帯状フィルム100が巻き付けられている。繰出モータ12は、繰出軸11を駆動する駆動源である。制御装置80(図4)によって制御された繰出モータ12が繰出軸11を中心軸C1回りに回転させるのに伴い、繰出軸11に巻き付けられた帯状フィルム100が、帯状フィルム100の搬送方向の前方(図1では右方)に繰り出される。以後、帯状フィルム100の搬送方向を単に搬送方向とも称する。
巻取機構20は、巻取軸21および巻取モータ22を有している。巻取軸21は、円筒状の形状を有している。巻取モータ22は、巻取軸21を駆動する駆動源である。制御装置80によって制御された巻取モータ22が巻取軸21を中心軸C2回りに回転させるのに伴い、処理済の帯状フィルム100が、すなわち表面100a上に成形層100cbを有した帯状フィルム100が、巻取軸21に巻き取られる。制御装置80が繰出モータ12および巻取モータ22を制御することにより、帯状フィルム100に所定の張力が与えられるとともに、帯状フィルム100が所定の速度で搬送される。
塗工機構30は、繰出機構10と転写機構40との間に位置され、帯状フィルム100の表面100a上に、例えば、略一定の厚さの塗工層100caを塗工する。塗工層100caは、例えば紫外線のような光の照射によって硬化する光硬化性を有した合成樹脂材料である。塗工機構30は、合成樹脂材料を、送液ポンプによって帯状フィルム100の表面100a上に送り出す。送液ポンプは、例えば定量ポンプである。塗工層100caは、塗工機構30により塗工された段階では、未感光であり、比較的柔軟な状態である。成形層100cbは、光硬化性樹脂層や、感光性樹脂とも称されうる。塗工層100ca、すなわち樹脂層100cは、光硬化性樹脂の一例である。
転写機構40は、転写ロール41、押圧ロール42、剥離ロール43、転写モータ44、および剥離モータ45を有している。転写ロール41、押圧ロール42、および剥離ロール43は、それぞれ円筒状の形状を有しており、互いに平行に配置されている。転写モータ44は、転写ロール41を回転させる駆動源である。剥離モータ45は、剥離ロール43を回転させる駆動源である。転写モータ44、剥離モータ45は、例えば速度制御可能なACサーボモータである。
押圧ロール42および剥離ロール43は、それぞれ、転写ロール41と間隔I1,I2を空けて配置されている。剥離ロール43は、押圧ロール42よりも帯状フィルム100の搬送方向の前方に位置されている。帯状フィルム100は、繰出軸11と押圧ロール42との間において所要の張力が与えられた状態で架け渡され、押圧ロール42と剥離ロール43との間で転写ロール41の外周面41aの回りに巻き掛けられるとともに、剥離ロール43と巻取軸21との間においても所要の張力が与えられた状態で架け渡されている。押圧ロール42および剥離ロール43は、それぞれ、帯状フィルム100の裏面100bを支持している。帯状フィルム100の搬送に伴い、当該帯状フィルム100のうち塗工機構30によって塗工層100caが塗工された部分は、押圧ロール42に近付き、押圧ロール42の外周に沿って移動し、転写ロール41と押圧ロール42との間を通り、転写ロール41の外周面41aに沿って移動し、転写ロール41と剥離ロール43との間を通り、剥離ロール43の外周に沿って移動し、剥離ロール43から離間して、巻取軸21に移動する。
転写ロール41は、制御装置80によって制御された転写モータ44によって中心軸C3回りに回転可能に設けられる。パターン転写装置1において、制御装置80は、転写ロール41が例えば回転速度が一定のような所定の回転状態で回転するよう、転写モータ44を制御する。また、このとき、制御装置80は、帯状フィルム100の張力に応じて繰出モータ12および巻取モータ22に作用する負荷が略一定となるように、繰出モータ12および巻取モータ22を制御する。また、押圧ロール42および剥離ロール43は、それぞれ、中心軸C3と平行な中心軸C4,C5回りに回転可能に設けられている。制御装置80は、通常時には、剥離モータ45を駆動しない。よって、この場合、剥離ロール43は、剥離モータ45により回転される主動ロールではなく、帯状フィルム100の移動に伴って回転する従動ロールとして動作する。この場合には、剥離ロール43の周速度は、転写ロール41の周速度と同一である。剥離ロール43の回転方向は、転写ロール41の回転方向と反対である。また、押圧ロール42は、モータにより回転される主動ロールではなく、帯状フィルム100の移動に伴って回転する従動ロールである。よって、押圧ロール42の周速度は、転写ロール41と同一である。押圧ロール42の回転方向は、転写ロール41の回転方向と反対である。
転写ロール41の外周面41aには、凹凸形状のパターン41bが設けられている。なお、表面100a上に樹脂層100cが塗工された帯状フィルム100は、押圧ロール42と剥離ロール43との間において、樹脂層100cが外周面41aに接する姿勢で転写ロール41に巻き掛けられる。このため、押圧ロール42の外周面42aおよび剥離ロール43の外周面43aは、帯状フィルム100の裏面100bすなわちシート101の裏面101bと接する。樹脂層100cが塗工された帯状フィルム100は、剥離ロール43と巻取軸21との間において所要の張力が与えられた状態で架け渡されている。この状態で、押圧ロール42は、帯状フィルム100の裏面100bを転写ロール41の外周面41aに押圧している。これにより、樹脂層100cが外周面41aのパターン41bに倣って変形し、樹脂層100cにパターン41bが転写される。すなわち、樹脂層100cが、塗工層100caから成形層100cbに変化する。ここで、パターン41bの転写において、転写ロール41のパターン41bの凸部が樹脂層100cに食い込んで帯状フィルム100の表面100aと接した場合には、帯状フィルム100の表面100aにおけるパターン41bの凸部と接した部分は、樹脂層100cによって覆われていないため、シート101の表面101aの一部を構成する。
また、上述したように、帯状フィルム100は、剥離ロール43と巻取軸21との間において所要の張力が与えられた状態で架け渡されており、このため、剥離ロール43に押し付けられている。よって、帯状フィルム100は、転写ロール41と剥離ロール43との間よりも搬送方向の前方においては、転写ロール41から離間し、剥離ロール43に沿って移動する。すなわち、剥離ロール43は、帯状フィルム100の搬送方向を屈曲させることにより、成形層100cbが硬化された帯状フィルム100を転写ロール41から剥離させる。
また、転写機構40は、押圧ロール42を移動させる押圧ロール用移動機構46と、剥離ロール43を移動させる剥離ロール用移動機構47と、を有している。剥離ロール用移動機構47は、移動機構の一例である。
押圧ロール用移動機構46は、モータ46aおよびボールネジ46bを有している。押圧ロール用移動機構46は、押圧ロール42の位置を調整することにより、押圧ロール42と転写ロール41との間隔I1を調整可能である。押圧ロール用移動機構46は、モータ46aの回転運動を、ボールネジ46bによって、間隔I1が変わる方向(図1では左右方向)の押圧ロール42の直線運動に変換する。モータ46aは、転写ロール41を移動させる駆動源であり、例えばACサーボモータである。
剥離ロール用移動機構47は、モータ47aおよびボールネジ47bを有している。剥離ロール用移動機構47は、剥離ロール43の位置を調整することにより、剥離ロール43と転写ロール41との間隔I2を調整可能である。剥離ロール用移動機構47は、モータ47aの回転運動を、ボールネジ47bによって、間隔I2が変わる方向(図1では左右方向)の剥離ロール43の直線運動に変換する。モータ47aは、剥離ロール43を移動させる駆動源であり、例えばACサーボモータである。
剥離ロール用移動機構47は、通常時は、転写ロール41と剥離ロール43との間に隙間が無い状態となるように、剥離ロール43を位置させている。転写ロール41と剥離ロール43との間に隙間が無い状態とは、転写ロール41の中心軸C3と剥離ロール43の中心軸C5との間において、転写ロール41の外周面41aとシート101の表面101aとの間、および、剥離ロール43の外周面43aとシート101の裏面101bとの間の両方に、隙間が無い状態をいう。
転写ロール41と剥離ロール43との間に隙間が無い状態は、転写ロール41と剥離ロール43とによってシート101が挟まれている状態、すなわち転写ロール41と剥離ロール43とによって帯状フィルム100が挟まれている状態である。転写ロール41の外周面41aにおけるシート101の表面101aと接している部分と、剥離ロール43の外周面43aにおけるシート101の裏面101bと接している部分とは、ニップ部を構成している。
光照射装置50は、転写ロール41の外側において、転写ロール41の外周面41aに重ねられた帯状フィルム100と間隔を空けて対向する位置に配置されている。帯状フィルム100は、樹脂層100cを硬化させる光について透過性を有している。よって、光照射装置50からの光は帯状フィルム100を介して樹脂層100cに照射される。当該光によって、転写ロール41の外周面41a回りに巻き掛けられている樹脂層100cが硬化する。当該光は、例えば紫外線である。未露光の樹脂層100cが形成された帯状フィルム100、および露光されることにより硬化した成形層100cbを有した帯状フィルム100は、転写ロール41、剥離ロール43、および巻取軸21の外周に略倣いうる可撓性を有している。
また、パターン転写装置1には、センサ70が設けられている。センサ70は、当該センサ70と帯状フィルム100との間の距離を計測する距離センサである。例えば、センサ70は、当該センサ70と帯状フィルム100の裏面100bとの間の距離を非接触で計測可能なレーザ変位計等である。詳細には、センサ70は、帯状フィルム100のうち転写ロール41に押圧されている部分100dのうち、光照射装置50からの光が照射される部分と剥離ロール43に支持される部分との間の帯状フィルム100の部分100e、と間隔を空けて対向している。すなわち、センサ70は、当該センサ70と、上記帯状フィルム100の部分100eの裏面100bとの間の距離を検出する。なお、センサ70は、帯状フィルム100のうち転写ロール41に押圧されている部分100dのうち、光照射装置50からの光が照射される部分と剥離ロール43に支持される部分との間の部分100e以外の部分の裏面100bと、当該センサ70との間の距離を検出してもよい。センサ70は、当該センサ70と当該部分100eとの間の距離を計測し、計測した距離を示す距離情報を制御装置80に送信する。ここで、帯状フィルム100のうち転写ロール41に押圧されている部分100dは、帯状フィルム100のうち転写ロール41に沿う部分である。以後、帯状フィルム100のうち転写ロール41に押圧されている部分100dを被押圧部分100dとも称する。
このような構成のパターン転写装置1は、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間が有る第一状態と、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間が無い第二状態とのいずれかの状態で使用される。すなわち、押圧ロール42は、第一状態と第二状態とを切り替え可能である。第一状態および第二状態は、帯状フィルム100の厚さや帯状フィルム100に塗工される樹脂層100cの厚さに応じて使い分けられる。例えば、パターン41bが大きく樹脂層100cの厚さが比較的厚い場合には、パターン転写装置1は第一状態で使用される。一方、例えば、パターン41bが小さく樹脂層100cの厚さが比較的薄い場合には、パターン転写装置1は第二状態で使用される。第一状態と第二状態との切り替えは、制御装置80によって制御される押圧ロール用移動機構46によって行なわれる。
以下に、押圧ロール42の第一状態および第二状態について図2,3を参照して詳細に説明する。
図2は、転写ロール41および押圧ロール42の一部を示す図であって、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有る第一状態を示す図である。図2に示される第一状態は、転写ロール41の外周面41aと押圧ロール42の外周面42aとの間隔I1が帯状フィルム100の厚さおよび樹脂層100cの厚さの合計すなわちシート101の厚さよりも大きく設定されたことにより実現されている。なお、図2等に示された線L1は、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4とを結ぶ線である。
図2に示されるように、第一状態、すなわち転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有る状態とは、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間、および、押圧ロール42の外周面42aとシート101の裏面101bとの間の少なくとも一方に、隙間g1,g2が有る状態をいう。転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間に隙間g1が有るとは、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとが離間した状態をいう。また、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、押圧ロール42の外周面42aとシート101の裏面101bとの間に隙間g2が有る状態とは、押圧ロール42の外周面42aとシート101の裏面101bとが離間した状態をいう。なお、図2では、二つの隙間g1,g2の両方が形成された例が示されているが、隙間g1,g2のうち一方だけが形成されていてもよい。
転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有る状態は、転写ロール41と押圧ロール42とによってシート101が挟まれていない状態、すなわち転写ロール41と押圧ロール42とによって帯状フィルム100が挟まれていない状態である。
第一状態では、帯状フィルム100は、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間よりも当該帯状フィルム100の搬送方向の前方、かつ、光照射装置50からの光が照射される位置よりも当該帯状フィルム100の搬送方向の後方にて、転写ロール41の外周面41aに沿わされる(図1)。これにより、光照射装置50からの光の照射を受ける前の樹脂層100cに、パターン41bが転写される。
図3は、実施形態の転写ロール41および押圧ロール42の一部を示す図であって、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無い第二状態を示す図である。図3に示される第二状態は、転写ロール41の外周面41aと押圧ロール42の外周面42aとの間隔I1が帯状フィルム100の厚さに設定されたことにより実現されている。
図3に示されるように、第二状態、すなわち転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無い状態とは、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間、および、押圧ロール42の外周面42aとシート101の裏面101bとの間の両方に、隙間g1,g2が無い状態をいう。転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間に隙間g1が無い状態とは、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとが接した状態をいう。また、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、押圧ロール42の外周面42aとシート101の裏面101bとの間に隙間g2が無い状態とは、押圧ロール42の外周面42aとシート101の裏面101bとが接した状態をいう。
転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無い状態は、転写ロール41と押圧ロール42とによってシート101が挟まれている状態、すなわち転写ロール41と押圧ロール42とによって帯状フィルム100が挟まれている状態である。
図4は、パターン転写装置1のブロック図である。制御装置80は、パターン転写装置1の全体の動作を制御し、パターン転写装置1の各種の機能を実現するコンピュータである。制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、およびRAM(Random Access Memory)83を有している。CPU81は、ROM82等の記憶部に記憶された各種プログラムに従って各種の演算処理および制御を実行する。CPU81は、ハードウェアプロセッサの一例である。ROM82は、CPU81が実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAM83は、CPU81が実行する各種プログラムを一時的に記憶したり各種データを書き換え可能に記憶する。
また、制御装置80には、繰出モータ12、巻取モータ22、転写モータ44、剥離モータ45、モータ46a、モータ47a、光照射装置50、センサ70、記憶装置84、および入力装置85が接続されている。
記憶装置84は、不揮発性であり、電源が供給されなくても情報を保存する。記憶装置84は、各種情報を書き換え可能に記憶する。記憶装置84は、例えば、帯状フィルム100、樹脂層100c、およびシート101の厚さを記憶する。シート101の厚さは、帯状フィルム100の厚さと樹脂層100cの厚さとの合計である。記憶装置84は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。
入力装置85は、例えば、キーボードや表示装置を有し、当該入力装置85に対する操作者の操作に応じた情報を制御装置80に入力する。
図5は、パターン転写装置1の制御装置80の機能的構成を示したブロック図である。図5に示されるように、制御装置80は、機能的構成として、判定部91、検出部92、および制御部93を有している。これらの機能的構成は、制御装置80のCPU81がROM82や記憶装置84等の記憶部に記憶されたプログラムを実行した結果として実現される。なお、実施形態では、これらの機能的構成の一部または全部が専用のハードウェア(回路)によって実現されてもよい。判定部91、検出部92、および制御部93の詳細は、後述する。
制御装置80は、転写処理を実行する。まず、制御装置80は、押圧ロール42を第一状態(図2)と第二状態(図3)とのうちいずれか一方の状態にする。具体的には、制御装置80は、転写ロール41の外周面41aと押圧ロール42の外周面42aとの間隔I1が予め設定された設定値となるように、押圧ロール用移動機構46のモータ46aを制御して押圧ロール42を移動させる。ここで、例えば、間隔I1の設定値は、入力装置85等によって設定されうる。
次に、制御装置80は、帯状フィルム100に塗工された塗工層100caにパターン41bが転写されるよう、繰出モータ12、巻取モータ22、転写モータ44、剥離モータ45、モータ46a、モータ47a、および光照射装置50を駆動する。このようにして、制御装置80は、押圧ロール42を第一状態または第二状態にして、通常運転を行なう。
図6は、パターン転写装置1の転写機構40の構成図であって、押圧ロール42が第一状態の場合に帯状フィルム100に弛みが発生した状態を示す図である。図7は、パターン転写装置1の転写機構40の構成図であって、押圧ロール42が第二状態の場合に帯状フィルム100に弛みが発生した状態を示す図である。なお、図6,7では、パターン41b等の図示が省略されている。
図6や図7に示されるように、上記の転写処理中に、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが発生する場合がある。ここで、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有るとは、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100上の樹脂層100cとの間に隙間が有る状態をいう。すなわち、当該弛みとは、帯状フィルム100上の樹脂層100cが転写ロール41の外周面41aから離間した状態をいう。換言すると、当該弛みとは、シート101の表面101aが転写ロール41の外周面41aから離間した状態をいう。弛みは、浮きとも称されうる。
上記弛みを解消するために、制御装置80は、弛み対応処理を実行する。弛み対応処理は、図5に示される判定部91、検出部92および制御部93によって実行される。以下に弛み対応処理について詳細に説明する。
判定部91は、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間において、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有るか否か、すなわち押圧ロール42が第一状態か否かを判定する。具体的には、判定部91は、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間における転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離x1(図2,3)が、零よりも大きい場合には(図2)、すなわち転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとが離間している場合には、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有り、押圧ロール42は第一状態であると判定する。一方、判定部91は、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間における転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離x1が、零の場合には(図3)、すなわち転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとが接している場合には、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無く、押圧ロール42は第二状態であると判定する。
転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離x1は、例えば、押圧ロール用移動機構46の所定の初期状態からのモータ46aの回転量(回転角)またはボールネジ46bの送り量と、記憶装置84に記憶された帯状フィルム100の厚さと、に基づいて算出される。よって、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4との間における、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間に、樹脂層100cが僅かに存在していても、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離が零と算出されれば、押圧ロール42は第二状態であると判定されうる。ここで、押圧ロール用移動機構46の所定の初期状態からのモータ46aの回転量(回転角)やボールネジ46bの送り量、記憶装置84に記憶された帯状フィルム100の厚さは、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離x1に関する情報の一例である。
検出部92は、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みを検出する。詳細には、検出部92は、センサ70と帯状フィルム100との間の距離を示す距離情報をセンサ70から受信する。すなわち、検出部92は、距離情報をセンサ70から取得する。検出部92は、距離情報に基づいて、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有るか否かを判定する。検出部92は、センサ70が計測したセンサ70と帯状フィルム100との間の距離が、規定の距離の場合には、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みは無いと判定する。規定の距離は、センサ70と、弛みが無い状態の帯状フィルム100との間の距離である。一方、検出部92は、センサ70が計測したセンサ70と帯状フィルム100との間の距離が、規定の距離未満の場合には、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有ると判定する。すなわち、検出部92は、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みを検出する。センサ70が出力する距離情報は、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みを検出するための帯状フィルム100の情報の一例である。
制御部93は、検出部92が弛みを検出した場合に、第一解消処理と第二解消処理とのいずれか一つを行なう。
制御部93は、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有る場合、すなわち押圧ロール42が第一状態の場合(図2)、第一解消処理を行なう。具体的には、制御部93は、剥離ロール43の回転速度が速くなるように、すなわち剥離ロール43の周速度が速くなるように、剥離モータ45を制御する。したがって、剥離ロール43の回転速度が検出部92による弛みの検出前に比べて速くなる。これにより、弛み部100fにおける搬送方向の前方側の端部が弛み部100fにおける搬送方向の後方側の端部よりも速く搬送され、弛みが解消される(図1)。このとき、例えば、剥離ロール43の回転速度は、検出部92による弛みの検出前に比べて1.1倍にされる。なお、回転速度の倍率は、1.1倍未満であってもよいし、1.1倍を超えてもよい。また、剥離ロール43の目標回転速度は予め設定されており、制御部93は、剥離ロール43の速度が目標回転速度になるように、剥離モータ45を制御する。なお、剥離ロール43の回転速度を速度センサ(不図示)によって検出し、その検出結果を用いて、制御部93が剥離モータ45を制御してもよい。また、このとき、制御部93は、帯状フィルム100の張力に応じて巻取モータ22に作用する負荷が略一定となるように、巻取モータ22を制御する。すなわち、制御部93は、巻取軸21回転速度が速くなるように巻取モータ22を制御する。
制御部93は、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無い場合、すなわち押圧ロール42が第二状態の場合(図3)、第二解消処理を行なう。具体的には、制御部93は、剥離ロール43が転写ロール41から離れる方向(図7では右側)に剥離ロール43が移動するよう剥離ロール用移動機構47を制御する。このとき、制御部93は、帯状フィルム100の張力に応じて巻取モータ22に作用する負荷が、略一定となるように、巻取モータ22を制御する。すなわち、制御部93は、巻取軸21の回転速度が速くなるように巻取モータ22を制御する。これにより、弛み部100fにおける搬送方向の前方側の端部が弛み部100fにおける搬送方向の後方側の端部よりも速く搬送され、弛みが解消される。また、この弛みが解消する間、弛み部100fが搬送方向の前方に移動して、剥離ロール43よりも搬送方向の前方に移動して転写ロール41から遠ざかる。
ここで、図8には、図7の状態から剥離ロール43が移動されることにより弛みが解消された状態が示されている。なお、図8等に示された線L2は、転写ロール41の中心軸C3と押圧ロール42の中心軸C4とを結ぶ線である。また、図8では、パターン41b等の図示が省略されている。図8から、転写ロール41から離れる方向に剥離ロール43が移動されることにより、転写ロール41と剥離ロール43との間に隙間が形成され、弛みが解消することが分かる。
次に、弛み対応処理(パターン転写装置1の制御方法)の流れを図9を参照して説明する。図9は、パターン転写装置1の制御装置80が実行する弛み対応処理を示すフローチャートである。
図9に示されるように、まずは、判定部91が、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有るか否か、すなわち押圧ロール42が第一状態か否かを判定する(S10)。判定部91が、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有る、すなわち押圧ロール42は第一状態であると判定した場合には(S10:Yes(図2))、制御装置80は、S11に進む。
S11では、検出部92が、センサ70と帯状フィルム100との間の距離を示す距離情報をセンサ70から取得する。次に、検出部92が、距離情報に基づいて、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有るか否かを判定する(S12)。
検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有ると判定した場合には(S12:Yes)、制御部93が、剥離ロール43の回転速度が速くなるように剥離モータ45を制御し、剥離ロール43を増速させる(S13)。
次に、検出部92が、センサ70と帯状フィルム100との間の距離を示す距離情報をセンサ70から取得する(S14)。次に、検出部92が、距離情報に基づいて、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有るか否か、すなわち弛みが解消したか否かを判定する(S15)。
S15において、検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みが解消していないと判定した場合には(S15:No)、制御装置80は、S14に戻り、S14およびS15の処理を繰り返す。
S15において、検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みが解消したと判定した場合には(S15:Yes)、制御部93が、剥離ロール43の回転速度が増速前の速度すなわち初期速度に戻るよう剥離モータ45を制御する(S16)。これにより、剥離モータ45が、減速して初期速度に戻る。
次に、制御装置80は、制御を終了するか否かを判定する(S17)。制御を終了するか否かの判定は、例えば、入力装置85からの制御終了指示の有無等に基づき行なわれる。帯状フィルム100は、制御を終了すると判定した場合には(S17:Yes)、処理を終了する。一方、制御装置80は、制御を終了しないと判定した場合には(S17:No)、S11に戻り、S11以降の処理を繰り返す。
また、S12において、検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが無いと判定した場合には(S12:No)、制御装置80は、S17に進み、S17の処理を実行する。
一方、S10において、判定部91が、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無い、すなわち押圧ロール42は第二状態であると判定した場合には(S10:No(図3))、制御装置80は、S21に進む。
S21では、検出部92が、センサ70と帯状フィルム100との間の距離を示す距離情報をセンサ70から取得する。次に、検出部92が、距離情報に基づいて、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有るか否かを判定する(S22)。
検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有ると判定した場合には(S22:Yes)、制御部93が、転写ロール41から離れる方向に剥離ロール43が移動して剥離ロール43と転写ロール41との間隔I2が増大するように、剥離ロール用移動機構47のモータ47aを制御する(S23)。これにより、転写ロール41と剥離ロール43との間に隙間が形成される(図8)。
次に、検出部92が、センサ70と帯状フィルム100との間の距離を示す距離情報をセンサ70から取得する(S24)。次に、検出部92が、距離情報に基づいて、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが有るか否か、すなわち弛みが解消したか否かを判定する(S25)。
S25において、検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みが解消していないと判定した場合には(S25:No)、制御装置80は、S24に戻り、S24およびS25の処理を繰り返す。
S25において、検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みが解消したと判定した場合には(S25:Yes)、制御部93が、剥離ロール43が移動前の位置すなわち初期位置に戻るよう、剥離ロール用移動機構47のモータ47aを制御する(S26)。これにより、剥離ロール43が初期位置に戻る。
次に、制御装置80は、制御を終了するか否かを判定する(S27)。制御を終了するか否かの判定方法は、S17と同様である。制御装置80は、制御を終了すると判定した場合には(S27:Yes)、処理を終了する。一方、制御装置80は、制御を終了しないと判定した場合には(S27:No)、S21に戻り、S21以降の処理を繰り返す。
また、S22において、検出部92が、帯状フィルム100の被押圧部分100dに弛みが無いと判定した場合には(S22:No)、制御装置80は、S27に進み、S27の処理を実行する。
以上のように、本実施形態では、検出部92は、帯状フィルム100(基材)の被押圧部分100d(部分)の弛みを検出する。制御部93は、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が有る第一状態において検出部92が弛みを検出した場合は、剥離ロール43の回転速度が速くなるように剥離モータ45(駆動源)を制御する。よって、本実施形態によれば、帯状フィルム100(基材)の被押圧部分100dの弛みを解消することができるので、パターン41bの転写の精度が低下するのを抑制することができる。このとき、本実施形態では、転写ロール41と剥離ロール43とによって帯状フィルム100が挟まれた状態となっているので、転写ロール41に帯状フィルム100を押圧する押圧力が低下するのを抑制することができる。よって、パターン41bの転写の精度が低下するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、制御部93は、転写ロール41と押圧ロール42との間に隙間g1,g2が無い第二状態において検出部92が弛みを検出した場合は、剥離ロール43が転写ロール41から離れる方向に移動するように剥離ロール用移動機構47(移動機構)を制御する。よって、本実施形態によれば、帯状フィルム100の被押圧部分100dの弛みを解消することができたり、当該弛みを転写ロール41から離れる方向に移動させることができるので、パターン41bの転写の精度が低下するのを抑制することができる。このとき、転写ロール41と押圧ロール42とによって帯状フィルム100が挟まれた状態となっているので、転写ロール41に帯状フィルム100を押圧する押圧力が低下するのを抑制することができる。よって、パターン41bの転写の精度が低下するのを抑制することができる。
以上のように、本実施形態では、押圧ロール42の状態が第一状態と第二状態とのいずれであっても、帯状フィルム100に弛みが発生した場合に、押圧ロール42および剥離ロール43のうちいずれか一方と転写ロール41とによって帯状フィルム100が挟まれている状態を維持することができる。
なお、上記実施形態では、センサ70が距離センサの例が示されたが、これに限定されない。例えば、センサ70は、帯状フィルム100を撮像するイメージセンサであってもよい。この場合には、検出部92は、センサ70から送信された撮像画像に基づいて、帯状フィルム100の弛みの有無を判定することができる。この場合、例えば、センサ70は、帯状フィルム100を転写ロール41の軸方向から撮像する位置に配置されてよい。
また、上記実施形態では、押圧ロール用移動機構46および剥離ロール用移動機構47が、それぞれ、モータ46a,47aとボールネジ46b,47bを有し、モータ46a,47aがACサーボモータである例が示されたが、これに限定されない。例えば、押圧ロール用移動機構46および剥離ロール用移動機構47は、モータ46a,47aがリニアモータであり、モータ46a,47aの直線運動によって押圧ロール42および剥離ロール43を移動させる構成であってもよい。
また、上記実施形態では、図9に示された制御装置80の弛み対応処理において、S15およびS25にて弛みが解消したと判定されたことを条件に、S16,S26の処理が行なわれる例が示されたが、これに限定されない。例えば、S13およびS23を行なってから規定時間が経過したことを条件に、S16,S26の処理が行なわれてもよい。この場合には、S14,S15,24,S26の処理は、省略される。また、この場合に、S13での剥離ロール43の増速の度合いを、帯状フィルム100の搬送速度や転写ロール41の回転速度が速いほど大きくしてもよい。すなわち、S13において、帯状フィルム100の搬送速度や転写ロール41の回転速度が速いほど剥離ロール43の回転速度をより速くしてもよい。
また、上記実施形態では、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離を、押圧ロール用移動機構46の所定の初期状態からのモータ46aの回転量(回転角)またはボールネジ46bの送り量と、記憶装置84に記憶された帯状フィルム100の厚さと、に基づいて算出した例が示されたが、これに限定されない。例えば、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとの間の距離は、距離センサ等によって計測してもよい。
また、上記実施形態では、判定部91は、転写ロール41と押圧ロール42との間の隙間g1,g2無しの判定を、転写ロール41の外周面41aと帯状フィルム100の表面100aとが接しているかで判定したが、これに限定されない。例えば、判定部91は、転写ロール41と押圧ロール42との間の隙間g1,g2無しの判定を、転写ロール41の外周面41aとシート101の表面101aとが接しているかで判定してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。