以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1はエアセル群100の斜視図、図2はエアセル200の斜視図、図3はエアセル200の側面図(図2の矢印3A方向から見た側面図)、図4はエアセル200の底面図(図3の矢印4A方向から見た平面図)、図5はエアセル200の断面図(図4の矢印5A−5A線に沿う断面図であり、エアセル200の高さ方向に沿う断面図)である。
各図面に付した矢印Xは、エアセル群100の長手方向と、エアセル200の幅方向(奥行方向)を示し、矢印Yは、エアセル群100の幅方向(奥行方向)と、エアセル200の長手方向を示し、矢印Zは、エアセル群100の高さ方向と、エアセル200の高さ方向を示す。
(エアセル群)
図1に示すように、エアセル群100は、エアセル群100の長手方向に沿って並べて配置された複数のエアセル200を有する。
本実施形態に係るエアセル群100は、圧切替型のマットレスに利用することができる。エアセル群100は、マットレスに利用される際、例えば、所定のカバー部材に収容されて外表面が覆われた状態でベッド装置(例えば、背上げ動作機能を備える介護用ベッド装置や医療用ベッド装置)等に配置される。使用者は、圧切替型のマットレスを使用する際、エアセル群100の長手方向に沿って身体を横たえることができる。
エアセル200は、流体送給用のコネクタ270を介して各エアセル200に流体(例えば、空気等の気体)が供給されると膨張する。また、エアセル200は、流体送給用のコネクタ270を介して各エアセル200から流体が排出されると収縮する。
エアセル群100には、例えば、二つの流体供給系統を備えさせることができる。エアセル群100の各エアセル200は、流体供給系統を介して内圧が周期的に変更されることにより、周期的に膨張および収縮する。また、各系統のエアセル200は、異なる系統のエアセル200とは独立して膨張および収縮できる。そのため、エアセル群100は、各エアセル200の膨張および収縮に伴って揺動(波動)する。このような動作により、エアセル群100は、使用者とエアセル200との接触部位を周期的に変更することができ、同一のエアセル200が長時間連続して使用者に接触することを防止できる。
なお、エアセル群100において、エアセル200の個数、流体供給系統のグループ数、エアセル200を膨張収縮させる制御パターン等は、特に限定されない。また、図示省略するが、エアセル群100は、圧切替型のマットレスに利用される際、流体を送給するための所定のチューブが流体送給用のコネクタ270に接続される。また、圧切替型のマットレスには、各エアセル200の膨張収縮を制御するコントローラが適宜備えられる。
(エアセル)
図2および図5に示すように、本実施形態に係るエアセル200は、当該エアセル200の長手方向と交差する高さ方向(図5の上下方向)に並べて配置された複数のセル210、220、230を有している。
エアセル200は、各セル210、220、230により高さ方向の各部で区切られた複数の空間を備える多層構造のエアセルである。本明細書では、エアセル200の高さ方向を基準にして、使用者の身体が配置される上部側の位置を高い位置と定義し、上部側から底部側に向かって離れた位置を低い位置と定義する。また、以下の説明では、最も高い位置に配置されたセルを「第1セル210」とし、第1セル210と隣接し、かつ、高さ方向の真中に配置されたセルを「第2セル220」とし、第2セル220と隣接し、かつ、最も低い位置に配置されたセルを「第3セル230」とする。
第1セル210は、図2に示すように、略円筒形状をなすように整形されたフィルム(シート状の部材)で構成している。第2セル220および第3セル230も第1セル210と同様に、丸められたフィルムで構成している。
第1セル210の長手方向の各端部210a、210bには、第1セル210の内部を気密に保持する封止部211が形成されている。同様に、第2セル220の長手方向の各端部220a、220bには、第2セル220の内部を気密に保持する封止部221が形成されており、第3セル230の長手方向の各端部230a、230bには、第3セル230の内部を気密に保持する封止部231が形成されている。封止部231は、例えば、各セル210、220、230を構成するフィルムの長手方向に位置する端辺を溶着することで形成することができる。
図5に示すように、第1セル210は、流体が流入する第1内部空間(「内部空間」に相当する)213を有している。また、第2セル220は、流体が流入する第2内部空間(「内部空間」に相当する)223を有している。また、第3セル230は、流体が流入する第3内部空間(「内部空間」に相当する)233を有している。なお、図5には、各セル210、220、230が膨張した際の断面を例示している。
エアセル200は、図2および図5に示すように、第1セル210の第1内部空間213と第2セル220の第2内部空間223を連通する複数の第1連通孔(「連通孔」に相当する)251a、251b、251cと、第2セル220の第2内部空間223と第3セル230の第3内部空間233を連通する複数の第2連通孔(「連通孔」に相当する)252a、252b、252cと、を有している。
図2に示すように、第1連通孔251a、第1連通孔251b、第1連通孔251cの各々は、エアセル200の長手方向の異なる位置に配置している。第1連通孔251a、第1連通孔251b、第1連通孔251cの各々は、図4に示す平面視において、略円形形状を有している。
図2に示すように、第2連通孔252a、第2連通孔252b、第2連通孔252cの各々は、エアセル200の長手方向の異なる位置に配置している。第2連通孔252a、第2連通孔252b、第2連通孔252cの各々は、図4に示す平面視において、略円形形状を有している。
第1連通孔251aと第2連通孔252aは、図4に示す平面図上において、互いに重なる位置に形成されている。同様に、第1連通孔251bと第2連通孔252bは、図4に示す平面図上において、互いに重なる位置に形成されており、第1連通孔251cと第2連通孔252cは、互いに重なる位置に形成されている。
エアセル200は、図2および図5に示すように、第1セル210と第2セル220が溶着された第1溶着部(「溶着部」に相当する)241と、第2セル220と第3セル230が溶着された第2溶着部(「溶着部」に相当する)242と、を有している。
第1溶着部241と第2溶着部242は、図4に示す平面図上において、互いに重なる位置に形成されている。
図4および図5に示すように、各第1連通孔251a、251b、251cは、エアセル200の高さ方向に沿う断面において、第1溶着部241が形成された位置よりも各セル210、220、230の中心部側(図5に示す各セル210、220、230の断面の中心位置を通る中心線c1側)に形成されている。同様に、各第2連通孔252a、252b、252cは、エアセル200の高さ方向に沿う断面において、第2溶着部242が形成された位置よりも各セル210、220、230の中心部側に形成されている。
図2および図4に示すように、第1溶着部241は、各第1連通孔251a、251b、251cの周囲を囲む略楕円形状の溶着パターンで形成されている。同様に、第2溶着部242は、各第2連通孔252a、252b、252cの周囲を囲む略楕円形状の溶着パターンで形成されている。
図5に示すように、第1溶着部241と各第1連通孔251a、251b、251cとの間には、第1セル210と第2セル220とが溶着されていない未溶着部261が形成されている。同様に、第2溶着部242と各第2連通孔252a、252b、252cとの間には、第2セル220と第3セル230とが溶着されていない未溶着部262が形成されている。なお、各第1連通孔251a、251b、251cの間および各第2連通孔252a、252b、252cの間にも、溶着がなされていない未溶着部が形成されている。
図2に示すように、第1溶着部241は、第1セル210の長手方向の両端部210a、210bおよび第2セル220の長手方向の両端部220a、220bまでは延びておらず、各セル210、220の長手方向の中心部側の所定の範囲に形成されている。また、第2溶着部242は、第2セル220の長手方向の両端部220a、220bおよび第3セル230の長手方向の両端部230a、230bまでは延びておらず、各セル220、230の長手方向の中心部側の所定の範囲に形成されている。なお、上記の「長手方向の中心部側の所定の範囲」とは、各セルの両端部を除いた範囲を意味し、長手方向の中心部およびその周辺部を含む任意の範囲を意味する。
上記のように、第1セル210と第2セル220は、第1溶着部241が形成された部分で両者の固定が維持されており、第1溶着部241が形成されていない各端部210a、210b、220a、220b付近は、隣接する他方のセルに対して固定されていない。同様に、第2セル220と第3セル230は、第2溶着部242が形成された部分で両者の固定が維持されており、第2溶着部242が形成されていない各端部220a、220b、230a、230b付近は、隣接する他方のセルに対して固定されていない。
図5に示すように、本実施形態に係るエアセル200は、エアセル200の高さ方向に三つ以上のセル210、220、230が重ねて配置されている。
最も高い位置に配置された第1セル210の第1内部空間213は、図5に示す高さ方向に沿う断面において、第2セル220の第2内部空間223および第3セル230の第3内部空間233に比べて断面積が大きい。一方、最も低い位置に配置された第3セル230の第3内部空間233は、図5に示す高さ方向に沿う断面において、第1セル210の第1内部空間213および第2セル220の第2内部空間223に比べて断面積が小さい。
また、図5に示すように、エアセル200は、高い位置に配置された第1セル210から低い位置に配置された各セル220、230に向かう順に、膨張した際の内部空間の断面積が小さい。つまり、第1セル210の第1内部空間213、第2セル220の第2内部空間223、第3セル230の第3内部空間233の順に、図5に示す断面の断面積が小さい。
第1セル210、第2セル220、第3セル230の各々は、膨張した際、高さ方向と交差する方向(図5の左右方向)に円弧状に突出した外周面を含む断面形状を呈する。本実施形態では、第1セル210は、第1セル210と第2セル220とを溶着する第1溶着部241が形成された底部側の一部の範囲を除いて外周面が円弧状を呈する。また、第2セル220は、第1セル210と第2セル220とを溶着する第1溶着部241が形成された上部側の一部の範囲および第2セル220と第3セル230とを溶着する第2溶着部242が形成された底部側の一部の範囲を除いて外周面が円弧状を呈する。また、第3セル230は、第2セル220と第3セル230とを溶着する第2溶着部242が形成された上部側の一部の範囲を除いて外周面が円弧状を呈する。
上記のように、各セル210、220、230は、膨張した際、各溶着部241、242が形成された部分以外の断面形状が円弧状に湾曲している。換言すると、各セル210、220、230は、膨張した際、略円形の断面形状を呈する。また、各セル210、220、230は、膨張した際、溶着部241、242が形成された部分を除いた断面形状が略相似形状を呈する。
エアセル200は、各セル210、220、230が膨張すると、第1セル210と第2セル220が高さ方向に互いに押し付け合うように変形しつつ、第2セル220と第3セル230が高さ方向に互いに押し付け合うように変形する。そのため、各セル210、220、230は、高さ方向に縦長に伸びるように変形する。各セル210、220、230は、上記のように変形することにより、使用者の身体をエアセル200の高さ方向に十分に沈み込ませることを可能にする除圧層として機能する。
図3および図4に示すように、最も低い位置に配置された第3セル230は、第1セル210および第2セル220に比べてエアセル200の長手方向の寸法が最も小さい。また、最も低い位置に配置された第3セル230に隣接する第2セル220は、第3セル230とエアセル200の長手方向において重ならない位置に取り付けられた流体送給用のコネクタ270を備える。より具体的には、流体送給用のコネクタ270は、第2セル220の端部220aと第3セル230の端部230aとの間のスペースに配置している。なお、図3に示すように、第1セル210と第2セル220は、例えば、エアセル200の長手方向に沿う長さを略同一に形成することができる。
流体送給用のコネクタ270の内部は、第2セル220の第2内部空間223と連通している。流体送給用のコネクタ270としては、例えば、流体を流通させるためのチューブと連結分離可能に構成された公知のものを利用することができる。
エアセル200を膨張させる際、第2セル220に取り付けられた流体送給用のコネクタ270を介して第2セル220に流体が供給される。第2セル220に供給された流体は、第2セル220の第2内部空間223内を第2セル220の端部220a側から第2セル220の端部220b側へ向けて移動する。第2セル220に供給された流体は、第2セル220の第2内部空間223内を移動する過程において、各第1連通孔251a、251b、251cに到達すると、第1セル210の第1内部空間213内に流入し、第1セル210を膨張させる。同様に、第2セル220に供給された流体は、各第2連通孔252a、252b、252cに到達すると、第3セル230の第3内部空間233内に流入し、第3セル230を膨張させる。
各セル210、220、230同士を連通する連通孔251a、251b、251c、252a、252b、252cの各々は、溶着部241、242が形成された位置よりも、各セル210、220、230の中心部側に形成されている(図5を参照)。そのため、第1セル210および第2セル220は、各連通孔251a、251b、251c、252a、252b、252cを介して流入した流体により、中心部付近が速やかに膨張する。これにより、エアセル200は、各セル210、220、230の中心部付近の高さ寸法が最大となる縦長の形状に膨張することができる。
図1に示すように、複数のエアセル200を備えるエアセル群100をマットレスに利用する場合、各エアセル200は、エアセル群100の長手方向(エアセル200の幅方向、図5に示す左右方向)に並べて配置される。エアセル200は、隣接する他のエアセル200に並べて配置される際、第1セル210の外周側面同士が接触するように配置される(図5の2点鎖線を参照)。前述したように、エアセル200が膨張した際、第1セル210の内部空間213の断面積は、第2セル220の内部空間223の断面積よりも大きい(図5を参照)。また、エアセル200が膨張した際、第2セル220の第2内部空間223の断面積は、第3セル230の第3内部空間233の断面積よりも大きい。そのため、第1セル210よりも小さな断面積を備える第2セル220同士の間および第3セル230同士の間には、所定の隙間(空間)gが形成される。隙間gは、エアセル群100をマットレスに利用する際、マットレス内の通気性を高める。
さらに、本実施形態では、第1セル210の第1内部空間213、第2セル220の第2内部空間223、第3セル230の第3内部空間233の順に、断面積が小さくなっている。そのため、エアセル群100をマットレスに利用する際、第1セル210が配置された上部側では、使用者の身体をしっかりと支えることができ、かつ、第3セル230が配置された底部側では、マットレス内における通気性をより一層高めることができる。
各セル210、220、230を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、例えば、熱可塑性ポリウレタンを利用することができる。また、各溶着部241、242を形成する方法としては、公知の溶着方法(例えば、熱溶着、超音波溶着、高周波溶着等)を採用することができる。
図6を参照して、吊部材を使用した対比例に係るエアセルの製造方法の一例を説明する。
吊部材を使用して3層構造のエアセルを製造する場合、各セルに相当する層部分を形成するための外周フィルム310Aと、各層を仕切るための吊部材を形成するための吊フィルム310Bを準備する。次に、図6に示すように、凹状の成形面411を備える上型410と、成形面411と対向するように配置される凹状の成形面421を備える下型420と、上型410と下型420の間に配置される中型430とを有する成形装置400に、外周フィルム310Aと吊フィルム310Bをセットする。外周フィルム310Aは、吊フィルム310Bに溶着される部分が下型420の成形面421に沿って配置されることにより、円形の断面形状をなすように形が整えられる。エアセルを製造する作業者は、成形装置400に各フィルム310A、310Bをセットした後、各型410、420を型閉めし、各フィルム310A、310B同士を溶着する。
対比例に係るエアセルを製造する場合、成形装置400の下型420には、外周フィルム310Aを逃がすための凹状の成形面421を設ける必要がある。また、成形装置400には、型閉めした際に外周フィルム310Aを押えるための中型430が必要になる。したがって、成形装置400の構造が複雑になるうえに、成形装置400に各フィルム310A、310Bをセットする作業が煩雑なものとなる。
本実施形態に係るエアセル200を製造する方法では、各セル210、220、230を構成するフィルムを溶着した後、それぞれのフィルムを円筒形状に整形する。そのため、吊フィルム310Bを設ける場合に使用する複雑な構造の成形装置400の使用が不要となる。したがって、エアセル200の製造作業が容易なものとなる。
また、本実施形態に係るエアセル200は、次のような利点も有する。
図7には、第1セル210を形成する第1フィルム210Aと第2セル220を形成する第2フィルム220Aを第1溶着部241で溶着した際の様子を示している。図8には、第1フィルム210Aの端部210aを封止する際の様子を示している。なお、以下では、第3セル230についての説明は省略するが、第3セル230も第1セル210および第2セル220と同様の手順で製造することが可能である。
第1フィルム210Aおよび第2フィルム210Bの各々は、長手方向の端部に開口部が形成された円筒形状に整形された状態で互いに溶着される。ここで、前述したように、本実施形態に係るエアセル200では、第1溶着部241は、第1セル210の両端部210a、210bおよび第2セル220の両端部220a、220bまで延びていない。そのため、第1セル210の端部210aを封止する際、図8に示すように、第1セル210の端部210aに形成された開口部を第1セル210の幅方向(矢印X方向)に潰した状態で、第1セル210の端部210aのみを溶着することができる。なお、作業者は、第1セル210の端部210b、第2セル220の両端部220a、220bについても同様に、各端部210b、220a、220bに形成された開口部を端部210b、220a、220bごとに封止することができる。
例えば、図9に示すように、第1溶着部241が第1フィルム210Aの端部210aおよび第2フィルム220Aの端部220aまで延びている場合、各フィルム210A、220Aの開口部を封止する際、作業者は、各フィルム210A、220Aの中心線c1を挟んで対向する対象な方向に熱を付与して溶着を行う(図中の矢印を参照)。溶着の際、第1溶着部241により溶着された部分のフィルムの重なりは、各フィルム210、220の他の部分よりも多くなる。そのため、フィルムの重なりが偏ってしまい、各フィルム210、220の高さ方向に沿って均一に熱を付与することが難しくなる。例えば、フィルムの重なりが多い部分を確実に溶着するために、フィルムの重なりが多い部分を十分に溶着することが可能な熱を付与すると、フィルムの重なりが少ない部分に対して熱が過剰に付与されてしまう。その結果、溶着部におけるフィルムの肉厚が部分的に小さくなるといった溶着不良が発生し得る。前述したように、本実施形態に係るエアセル200は、各セル210、220の端部210a、210b、220a、220bに形成された開口部を封止する際、各端部210a、210b、220a、220bを個別に溶着することができるため、上記のような溶着不良が発生することを防止できる。
以上、本実施形態に係るエアセル200は、エアセル200の長手方向と交差する高さ方向に並べて配置された複数のセル210、220、230と、隣接するセル210、220、230の内部空間213、223、233同士を連通する連通孔251a、251b、251c、252a、252b、252cと、隣接するセル210、220、230同士が溶着された溶着部241、242と、を有している。第1溶着部241は、第1セル210の長手方向の両端部210a、210bおよび第2セル220の長手方向の両端部220a、220bまでは延びておらず、各セル210、220の長手方向の中心部側の所定の範囲に形成されている。
上記のように構成されたエアセル200は、隣接するセル210、220、230同士が溶着されることにより、多層構造を実現している。そのため、吊部材を使用して多層構造を実現したエアセルに比べて、製造作業が容易になる。また、第1溶着部241は、第1セル210の長手方向の両端部210a、210bおよび第2セル220の長手方向の両端部220a、220bまでは延びておらず、各セル210、220の長手方向の中心部側の所定の範囲に形成されているため、作業者は、各セル210、220の両端部210a、210b、220a、220bを封止する際、セル毎に個別に封止作業を実施することができる。作業者は、各セル210、220の両端部210a、210b、220a、220bで溶着不良が発生することを防止でき、エアセル200の製品品質の向上を図ることができる。
また、複数のセルは、最も高い位置に配置された第1セル210と、第1セル210に隣接する第2セル220と、第2セル220に隣接する第3セル230と、を少なくとも備えており、第1セル210は、高さ方向に沿う断面において、他のセル220、230に比べて第1内部空間213の断面積が最も大きい。そのため、エアセル200をマットレスに利用する際、第1セル210よりも低い位置に配置された各セル220、230の周囲には隙間gが形成される。それにより、エアセル群100をマットレスに利用した際、マットレス内の通気性を高めることができる。
また、第2セル220の第2内部空間223の断面積は、第3セル230の第3内部空間233の断面積よりも大きい。そのため、エアセル群100をマットレスに利用した際、第1セル210および第2セル220が配置された上部側では、使用者の接触面積が大きくなるため、身体をしっかりと支えることができ、第3セル230が配置された底部側では、マットレス内により大きな隙間を形成することができるため、マットレス内の通気性を効果的に高めることができる。
また、最も低い位置に配置された第3セル230は、他のセル210、220に比べて長手方向の寸法が最も小さく、最も低い位置に配置された第3セル230に隣接する第2セル220は、第3セル230と長手方向において重ならない位置に取り付けられた流体送給用のコネクタ270を備える。エアセル200は、第2セル220と第3セル230とが長手方向において重ならない位置に送給用のコネクタ270が配置されるため、送給用のコネクタ270が第3セル230と干渉するのを防止でき、また、マットレスの使用時に送給用のコネクタ270が床面などと接触するのを防止できる。
また、各セル210、220、230は、膨張した際、高さ方向と交差する方向に円弧状に突出した外周面を含む断面形状を呈する。そのため、エアセル200は、膨張した際、各セル210、220、230の中心部付近が高さ方向に重なって互いに押し付け合うように変形するため、各セル210、220、230の中心部付近の高さ寸法が最大となる縦長の断面形状を呈することができる。
(変形例)
次に、変形例に係るエアセル500を説明する。前述した実施形態において既に説明した部材等については同一の符号を付して説明を省略する。
図10には、変形例に係るエアセル500を示す。図10に示す断面図は、図5に示す断面図と同様にエアセル500の高さ方向の断面を示している。
変形例に係るエアセル500は、最も高い位置に配置された第1セル210と、第1セル210に隣接する第2セル220と、第2セル220と隣接する第3セル230と、を備えている。
図10に示すように、第1セル210の第1内部空間213の断面積は、第2セル220の第2内部空間223の断面積および第3セル230の第3内部空間233の断面積よりも大きい。また、第2セル220の第2内部空間223の断面積と第3セル230の第3内部空間233の断面積は、略同一である。
変形例に係るエアセル500は、前述した実施形態に係るエアセル200と同様に、隣接するセル210、220、230同士が溶着されることにより、多層構造を実現している。そのため、吊部材を使用して多層構造を実現したエアセルに比べて、製造作業が容易になる。また、第1セル210の第1内部空間213の断面積が他のセル220、230の内部空間223、233に比べて大きいため、エアセル500をマットレスに利用する際、第1セル210よりも低い位置に配置された各セル220、230の周囲に隙間gを形成することができる。そのため、エアセル500を利用したマットレス内の通気性を高めることができる。また、変形例に係るエアセル500は、複数のエアセル500で構成されるエアセル群100上に使用者が寝そべった際、第1セル210と使用者の身体との接触面積を大きく確保することができる。
さらに、エアセル500は、第2セル220の第2内部空間223の断面積および第3セル230の第3内部空間233の断面積が略同一であるため、第2セル220同士の間および第3セル230同士の間に形成される隙間gは、幅方向の寸法が略同一となる。そのため、エアセル500は、前述した実施形態に係るエアセル200と比較して、第1セル210よりも下部側で各セル220、230が幅方向に過度に移動することを抑制することができる。そのため、第2セル220、第3セル230により、エアセル500の下部側からも使用者の身体を適切に支持することができ、使用者に掛かる接触圧を好適に低減することができる。
なお、本明細書中における「略同一」は、発明の効果が損なわれることがない範囲で同一であることを意味し、例えば、製造公差に基づく寸法の相違は略同一に含まれるものとする。
以上、実施形態を通じて本発明に係るエアセルを説明したが、本発明は明細書内で説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々改変することが可能である。
本発明に係るエアセルは、高さ方向に並べて配置された複数のエアセルを有し、隣接するセル同士が溶着部により溶着されており、かつ、溶着部が各セルの長手方向の両端部までは延びておらず、各セルの長手方向の中心部側の所定の範囲に形成されている限り、具体的な構造は特に限定されない。
また、一つのエアセルに備えられるセルの個数、各セルの内部空間の断面形状、各セルの内部空間の断面形状の大きさの組み合わせ(高さ方向から順に小さくなるような組み合わせや、最も高い位置にあるセルが最も断面積が大きくなり、かつ、その他のセルの断面積が同一となるような組み合わせ)等は適宜変更することが可能である。一例として、エアセルは、2つのみで構成してもよい。
また、連通孔の大きさ、連通孔の形状、一つのセルに形成される連通孔の個数、連通孔の具体的な位置等も適宜変更することが可能である。
また、溶着部のパターン、溶着部を形成する具体的な位置等も適宜変更することが可能である。
また、各セルの体積、断面積、長手方向の寸法等についても特に制限はない。
また、エアセルを構成する材料の材質、エアセルへの付加的な部材の追加や省略等の変更は任意に行い得る。