以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明に従う構造とされた防振装置の一実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、インナ取付部材12とアウタ取付部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、マウント中心軸方向であり、主たる振動の入力方向でもある図1中の上下方向を言う。
より詳細には、インナ取付部材12は、金属などで形成された高剛性の部材であって、図2にも示すように、小径の略円柱形状を呈する本体部18と、本体部18の上端部において外周へ突出する突出部としてのフランジ状部20とを、一体的に備えている。また、本体部18には、中心軸上を上下方向に延びて上面に開口するねじ穴22が形成されている。さらに、インナ取付部材12の本体部18における軸方向内方の端面である下端面24は、中央部分が軸直角方向に広がる略円形の平坦部24aとされていると共に、平坦部24aの外周が、滑らかに湾曲して本体部18の外周面につながる外周面取り形状を有する環状の湾曲部24bとされている。
さらに、インナ取付部材12の本体部18には、外周面に開口するインナ凹部26が形成されている。インナ凹部26は、本体部18の上部に形成されており、本実施形態では全周に亘って連続する凹溝状とされている。更に、インナ凹部26は、軸方向の断面形状(縦断面形状)において、最も深さ寸法の大きい最深部28が上下中間部分に位置していると共に、最深部28から上下外側に向けて外周へ傾斜するテーパ形状の内面(外周面)を有しており、最深部28から上下に離れるに従って深さ寸法が徐々に小さくなっている。なお、最深部28は、インナ凹部26の内面において、軸直角方向でマウント中心軸(図1中の一点鎖線)に最も接近する点を言う。
より具体的には、本実施形態のインナ凹部26の内面は、最深部28を含む上下中間部分が縦断面において略円弧状をなす湾曲面30とされていると共に、円弧状湾曲面30の接線方向に延びるテーパ面32,34が円弧状湾曲面30の上下両端と連続して設けられて構成されている。更に、上側のテーパ面32は、上側に向けて外周へ傾斜しており、上端がフランジ状部20の下面に滑らかに繋がっていると共に、下側のテーパ面34は、下側に向けて外周へ傾斜していると共に、下端がインナ凹部26を外れた本体部18(後述する上側の外周突部40a)の外周面に滑らかに繋がっている。なお、上記からも分かるように、フランジ状部20は、インナ凹部26よりも上側に設けられている。
さらに、本実施形態のインナ凹部26は、上下方向の最大幅寸法がインナ取付部材12の本体部18の上下寸法に対して1/4倍〜1/2倍であることが望ましい。更にまた、インナ凹部26は、好適には最深部28が本体部18の上下方向中央よりも上側に位置している。更に、インナ凹部26は、径方向の深さが上下方向の幅よりも小さくされており、上下方向の最大幅寸法に対する径方向の最大深さ寸法の比が、好適には1/2〜1/4とされる。
更にまた、インナ凹部26の内面を構成する上側のテーパ面32は、上下方向に対する傾斜角度が20°〜70°であることが望ましい。一方、インナ凹部26の内面を構成する下側のテーパ面34は、上下方向に対する傾斜角度が20°〜70°であることが望ましく、本実施形態では対応する本体ゴム弾性体16の外周面と略同じ角度で傾斜している。なお、本実施形態の上下のテーパ面32,34は、縦断面において略直線的に延びており、上下方向に対する傾斜角度が全体に亘って略一定とされているが、例えば、上下のテーパ面は、縦断面において湾曲面とされて、上下方向に対する傾斜角度が変化していても良い。
また、インナ取付部材12は、図2にも示すように、本体部18の軸方向中間部分に周溝状凹部36が形成されている。周溝状凹部36は、インナ凹部26よりも軸方向下方に設けられて、本体部18の外周面に開口しながら周方向に延びており、本実施形態では、略一定の断面形状で全周に亘って連続して延びている。
さらに、周溝状凹部36は、軸方向の断面形状において、外周面(凹部内面)の略全体が滑らかに湾曲する湾曲形状とされている。また、本実施形態の周溝状凹部36は、最深部38における径方向の深さ寸法が、インナ凹部26の最深部28における深さ寸法よりも小さくされており、例えば、インナ凹部26の最深部28の深さ寸法に対して1/2以下とされている。
また、周溝状凹部36の軸方向両側には、外周突部40a,40bが設けられている。外周突部40a,40bは、何れも、周溝状凹部36の最深部38に対して外周へ突出して、インナ取付部材12における周溝状凹部36の形成部分に比して大径とされており、上側の外周突部40aがインナ凹部26と周溝状凹部36の間に設けられていると共に、下側の外周突部40bが周溝状凹部36よりも下方に設けられている。
さらに、周溝状凹部36の外周面と外周突部40a,40bの外周面は、軸方向で滑らかに湾曲してつながった波形状とされている。また、インナ凹部26の外周面と上側の外周突部40aの外周面も、軸方向で滑らかに湾曲してつながった波形状とされており、インナ取付部材12の本体部18の外周面全体が、折れ点や折れ線を持たない滑らかな面形状とされている。
アウタ取付部材14は、インナ取付部材12と同様に金属などで形成されて、薄肉大径の略円筒形状を有しており、上下方向の中間部分に段差部42が設けられて、段差部42よりも上側が大径筒部44とされていると共に、段差部42よりも下側が小径筒部46とされている。
そして、インナ取付部材12とアウタ取付部材14は、略同一中心軸上に配されて、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、上部が小径部分48とされるとともに下部が大径部分50とされた略円錐台形状を有しており、インナ取付部材12が、本体ゴム弾性体16に小径側端部(上端部)から入り込んで、インナ取付部材12における本体部18の表面とフランジ状部20の下面とが、本体ゴム弾性体16の小径部分48に加硫接着されていると共に、アウタ取付部材14の内周面が本体ゴム弾性体16の大径側端部を構成する大径部分50の外周面に加硫接着されている。本実施形態の本体ゴム弾性体16は、インナ取付部材12とアウタ取付部材14を備える一体加硫成形品として形成されている。
なお、本体ゴム弾性体16は、アウタ取付部材14が固着されている部分が大径側端部を含む大径部分50とされていると共に、大径部分50よりも上側に位置して大径部分50よりも小径とされた部分が小径側端部を含む小径部分48とされており、本実施形態では、軸方向の断面形状において、小径部分48が略円錐台形状を有していると共に、大径部分50が略円柱形状を有している。
本実施形態では、インナ取付部材12が、本体ゴム弾性体16の小径側端面(上面)から大径側端部(下端部)に向かって差し入れられており、本体部18の外周面が本体ゴム弾性体16に埋入した状態で配されている。特にインナ取付部材12の軸方向長さは、本体ゴム弾性体16の軸方向全長の3/5以上の長さとされており、アウタ取付部材14が固着された本体ゴム弾性体16の大径部分50にまで達している。即ち、インナ取付部材12の先端(下端)は、アウタ取付部材14の本体ゴム弾性体16に対する固着面に対して、軸直角方向の投影でオーバーラップする位置に配されている。尤も、インナ取付部材12は、少なくとも小径部分48に固着されていれば、大径部分50には固着されていなくても良い。
さらに、本体ゴム弾性体16の大径部分50は、下面に開口する凹所52を備えている。凹所52は、略皿状を呈しており、開口側である下側に向けて大径となっている。更にまた、薄肉大径のシールゴム層54が、本体ゴム弾性体16における凹所52の開口周縁部分から下方へ延び出すように一体形成されて、アウタ取付部材14の小径筒部46の内周面に固着されている。なお、インナ取付部材12の本体部18の下面は、凹所52の上底壁部を構成する本体ゴム弾性体16の大径部分50によって覆われている。
また、本体ゴム弾性体16の小径部分48は、上部においてインナ凹部26の内面に固着されている。本体ゴム弾性体16の小径部分48は、内周部分がインナ凹部26の全体を充填するように配されて、インナ凹部26の内面に加硫接着されていると共に、外周部分がインナ凹部26の開口(図1中の二点鎖線)よりも外周に位置している。また、本体ゴム弾性体16は、インナ取付部材12の本体部18におけるインナ凹部26より下側部分の外径寸法に比して、インナ凹部26に固着された小径部分48の外径寸法が大きくされていると共に、小径部分48がインナ凹部26よりも下方に向かって次第に外径が大きくなっている。本実施形態の本体ゴム弾性体16の小径部分48は、外周面が外周へ向けて凹となる凹状湾曲面56を備えており、凹状湾曲面56において径方向の深さ寸法が最大となる最深部58が、インナ取付部材12におけるインナ凹部26よりも下側部分であるインナ凹部26の開口の下側縁部に対して、軸方向投影において外周に外れて位置している。なお、凹状湾曲面56は、最深部58から上下両側へ向けて外周へ傾斜するように湾曲しており、最深部58よりも下側部分が、下方へ向けて外周へ傾斜するテーパ状外周面60を構成している。また、最深部58は、凹状湾曲面56の内面において、軸直角方向でマウント中心軸(図1中の一点鎖線)に最も接近する点を言う。
このように、本体ゴム弾性体16の小径部分48の上部は、インナ凹部26の内面に固着されて、インナ凹部26の形成部分において径方向で厚肉化されている。本実施形態では、インナ凹部26が全周に亘って連続的に設けられていることから、本体ゴム弾性体16の小径部分48がインナ凹部26によって全周に亘って厚肉化されている。なお、インナ凹部26の最深部28は、本体ゴム弾性体16の凹状湾曲面56の開口領域内に位置していると共に、凹状湾曲面56の最深部58よりも下側に位置している。
さらに、本体ゴム弾性体16の小径部分48の上端は、インナ取付部材12のフランジ状部20の下面に固着されている。なお、本体ゴム弾性体16の小径部分48は、凹状湾曲面56よりも上側において、インナ取付部材12のフランジ状部20に固着されている。さらに、フランジ状部20の下面に固着される小径部分48の上端部は、最深部58よりも上側において上方に向かって大径とされている。
また、周溝状凹部36の外周面とアウタ取付部材14の内周面との対向面間は、本体ゴム弾性体16の凹状湾曲面56の下部であるテーパ状外周面60と同じ傾斜方向で、中実構造の本体ゴム弾性体16によって連結されている。要するに、本実施形態では、周溝状凹部36が本体ゴム弾性体16によって充填されていると共に、周溝状凹部36の外周面とアウタ取付部材14の内周面との対向面間が、下方に向けて外周へ傾斜する傾斜方向において、本体ゴム弾性体16によって連続的に連結されており、それら周溝状凹部36の外周面とアウタ取付部材14の内周面との傾斜方向の対向面間には、空所や液室などが形成されていない。なお、周溝状凹部36の外周面とアウタ取付部材14の内周面とを連結する本体ゴム弾性体16は、テーパ状外周面60と同じ傾斜方向に連続して延びていればよく、傾斜角度は特に限定されない。
さらに、周溝状凹部36において径方向の深さ寸法が最大となる最深部38は、本体ゴム弾性体16の大径部分50におけるアウタ取付部材14の内周面への固着面に対して、軸方向上側に離れて位置している。本実施形態では、周溝状凹部36の全体が大径部分50に対して軸方向上側に離れて位置しており、周溝状凹部36の外周面には、本体ゴム弾性体16の小径部分48が固着されている。また、本実施形態では、本体ゴム弾性体16の小径部分48の上部がインナ凹部26の外周面に固着されていると共に、小径部分48の下部が周溝状凹部36の外周面に固着されている。
また、本体ゴム弾性体16に固着されたアウタ取付部材14には、可撓性膜62が取り付けられている。可撓性膜62は、撓み変形および伸縮変形を許容された薄肉のゴム膜であって、全体として略円板形状とされていると共に、外周部分が内周部分よりも更に薄肉とされて十分な弛みが与えられている。
さらに、可撓性膜62の外周面には、環状乃至は筒状の固定部材64が固着されている。固定部材64は、金属などで形成されており、シールゴム層54で覆われたアウタ取付部材14の小径筒部46に固定されている。本実施形態では、固定部材64がアウタ取付部材14の小径筒部46に差し入れられた後、アウタ取付部材14に八方絞りなどの縮径加工が施されることによって、固定部材64の外周面がシールゴム層54を介してアウタ取付部材14の小径筒部46の内周面に押し付けられることで、固定部材64がアウタ取付部材14に固定されている。更に、アウタ取付部材14の小径筒部46の下端部が縮径時に内周へ曲げられていることによって、固定部材64の下側への抜けが防止されている。
このように可撓性膜62がアウタ取付部材14に取り付けられることにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜62の軸方向間には、外部から隔てられた流体封入領域66が形成されており、非圧縮性流体が封入されている。流体封入領域66に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やエチレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などの液体が望ましく、より好適には0.1Pa・s以下の低粘性流体が採用される。
なお、本実施形態では、インナ取付部材12の本体部18の下面が本体ゴム弾性体16の大径部分50によって覆われており、流体封入領域66の上底壁面は、インナ取付部材12の本体部18が露出することなく、略全面が本体ゴム弾性体16によって構成されている。これにより、流体封入領域66に封入された流体によるインナ取付部材12の侵食が防止されており、インナ取付部材12の耐久性の向上が図られている。
また、流体封入領域66には、仕切部材68が配されている。仕切部材68は、金属や硬質の合成樹脂で形成されており、全体として略円板形状とされている。更に、仕切部材68の外周端部には、外周面に開口しながら周方向へ延びる周溝70が1周に満たない長さで形成されている。
そして、仕切部材68は、アウタ取付部材14の小径筒部46の内周に差し入れられて、流体封入領域66において略軸直角方向に広がるように配されており、外周面がシールゴム層54を介して小径筒部46の内周面に押し付けられることで、アウタ取付部材14に対して固定されている。なお、仕切部材68は、可撓性膜62の固定部材64と同様に、例えばアウタ取付部材14の縮径加工によって、アウタ取付部材14に固定される。
さらに、仕切部材68は、流体封入領域66を上下に二分しており、流体封入領域66における仕切部材68よりも上側が、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室72とされていると共に、流体封入領域66における仕切部材68よりも下側が、壁部の一部が可撓性膜62で構成された平衡室74とされている。なお、受圧室72と平衡室74には、上記非圧縮性流体が封入されている。また、受圧室72は、本体ゴム弾性体16の大径部分50に対して軸方向外方(下方)に設けられている。
更にまた、仕切部材68に設けられた周溝70の外周開口は、シールゴム層54を介してアウタ取付部材14によって流体密に覆蓋されており、周方向に延びるトンネル状の流路が形成されている。そして、トンネル状流路の一方の端部が上連通口76を通じて受圧室72に連通されると共に、他方の端部が下連通口78を通じて平衡室74に連通されることにより、受圧室72と平衡室74を相互に連通するオリフィス通路80が形成されている。本実施形態のオリフィス通路80は、通路断面積と通路長の比を調節することによって、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波に設定されている。尤も、オリフィス通路80のチューニング周波数は、特に限定されない。
かくの如き構造とされたエンジンマウント10は、例えば、インナ取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、アウタ取付部材14が同じく図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、車両に装着されている。そして、車両への装着状態において、エンジンマウント10に上下方向の振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形による振動減衰作用などの防振効果が発揮されると共に、受圧室72と平衡室74の相対的な圧力変動に基づいてオリフィス通路80を通じた流体流動が生ぜしめられて、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮される。本実施形態では、インナ取付部材12の下端面24が平坦部24aを備えていることによって、ピストン効率の向上による優れた防振性能の発揮が図られている。しかも、平坦部24aの外周側が湾曲部24bとされていることで、インナ取付部材12における下端面24と外周面のつなぎ部分における本体ゴム弾性体16の応力集中が防止されている。
ここにおいて、上下方向の振動入力に際して応力が集中し易い本体ゴム弾性体16の小径部分48の上部が、インナ凹部26によって厚肉化されていることから、本体ゴム弾性体16の小径部分48の上部において応力の集中が緩和されて、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られる。
特に本実施形態では、凹状湾曲面56の最深部58がインナ凹部26の外周に位置しており、薄肉となり易い凹状湾曲面56の最深部58においてインナ凹部26による小径部分48の厚肉化が図られている。このように、本体ゴム弾性体16の小径部分48において特に薄肉となって応力が集中し易い部分が、インナ凹部26によって厚肉化されることで、小径部分48における耐久性の向上がより有利に図られる。
また、本体ゴム弾性体16においてインナ凹部26の外周に位置する部分の外周面が、インナ凹部26よりも下側における本体部18の外周面に対して、より外周に位置している。これにより、本体ゴム弾性体16においてインナ凹部26の開口よりも外周に位置する部分は、上下方向の振動入力時に、インナ凹部26の内面によって拘束され難く、弾性変形が許容されている。その結果、インナ取付部材12からの下向きの入力が本体ゴム弾性体16に効率的に伝達されることから、本体ゴム弾性体16の上下方向の圧縮ばね成分を大きく得ることができて、ばね特性を大きな自由度でチューニングすることができる。
しかも、本実施形態では、インナ凹部26の内面が、最深部28から軸方向両側に向けて外周へ傾斜する上下のテーパ面32,34を有している。それ故、上側のテーパ面32によって、インナ取付部材12から本体ゴム弾性体16へ下向きの力が及ぼされ易くなっていると共に、インナ凹部26の内面から本体ゴム弾性体16へ及ぼされた下向きの力が、下側のテーパ面34によって妨げられることなく、本体ゴム弾性体16の大径部分50へ効率的に伝達される。このように、インナ凹部26の外周に配された本体ゴム弾性体16は、上下方向の振動入力時に変形するようになっていることから、本体ゴム弾性体16の小径部分48の実質的なゴムボリュームが、インナ凹部26によって大きく確保されており、小径部分48の耐久性の向上が有効に実現されている。
特に本実施形態では、インナ取付部材12の上端部に外周へ突出するフランジ状部20が設けられており、フランジ状部20の下面に本体ゴム弾性体16の上端が固着されている。これにより、インナ取付部材12から本体ゴム弾性体16へ下向きの力がより有利に及ぼされる。しかも、本体ゴム弾性体16の上端におけるインナ取付部材12への固着面積が大きく確保されて、インナ取付部材12と本体ゴム弾性体16の固着強度を大きく得ることもできる。
さらに、インナ凹部26の最深部28付近の内面が、縦断面において外周へ向けて凹となる円弧状湾曲面30とされていることにより、本体ゴム弾性体16においてインナ凹部26の最深部28に固着される部分の応力集中が緩和される。また、インナ凹部26において最深部28を含む深さ寸法の大きな領域が、円弧状湾曲面30によって上下にある程度の幅をもって設定されていることにより、本体ゴム弾性体16の小径部分48がインナ凹部26によって上下方向の広い範囲に亘って厚肉化されている。
更にまた、インナ凹部26が全周に亘って連続する環状とされていることにより、インナ凹部26の形成による本体ゴム弾性体16の小径部分48の厚肉化が全周に亘って実現されており、応力の分散化による本体ゴム弾性体16の耐久性の向上がより効果的に実現される。しかも、本実施形態では、インナ凹部26が全周に亘って略一定の断面形状を有していることにより、インナ凹部26の断面形状の変化に起因する応力の集中も回避されており、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上がより有利に図られている。
また、本体ゴム弾性体16の小径部分48の外周面が、外周に向けて凹となる凹状湾曲面56を備えており、インナ凹部26の最深部28が、凹状湾曲面56において最も内周に位置する最深部58よりも下側に位置している。これにより、仮に凹状湾曲面56の最深部58付近で本体ゴム弾性体16の小径部分48に亀裂が発生したとしても、亀裂の伸展がインナ凹部26の内面によって抑制されて、亀裂が本体ゴム弾性体16の大径部分50まで到達し難くなる。
さらに、本体ゴム弾性体16の圧縮によるひずみや応力は、本体ゴム弾性体16の存在する側である凹状湾曲面56の最深部58よりも下側において、上側よりも大きく発生し易い。それ故、凹状湾曲面56の最深部58よりもインナ凹部26の最深部28を下方に位置せしめて、応力やひずみの大きくなる部位におけるゴム厚さを大きく設定することで、ひずみや応力の軽減を図ることも可能になる。
また、インナ取付部材12の本体部18の下面が本体ゴム弾性体16によって覆われており、受圧室72の上底壁面が全体に亘って本体ゴム弾性体16で構成されていることにより、受圧室72の壁面において本体ゴム弾性体16の自由表面が大きく確保されて、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られている。
一方、インナ取付部材12の本体部18に周溝状凹部36が形成されていることにより、本体ゴム弾性体16の自由長が周溝状凹部36の外周面とアウタ取付部材14の内周面とをつなぐ傾斜方向で大きくされている。これにより、本体ゴム弾性体16のテーパ状外周面60と同じ傾斜の入力に際して、本体ゴム弾性体16のひずみが低減されて、傾斜方向の入力に対する本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られる。特に本実施形態では、上述のように、軸方向の入力に対する本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が、インナ凹部26によって実現されることから、それらインナ凹部26と周溝状凹部36の両方を備えるインナ取付部材12によって、軸方向と軸方向に対して傾斜する方向との両方の入力に対して、優れた耐久性を実現することができる。
さらに、周溝状凹部36の軸方向両側に外周突部40a,40bが形成されていることから、周溝状凹部36の形成による上下方向の防振特性への影響が軽減されている。すなわち、下側の外周突部40bによってインナ取付部材12の下端面24の面積が大きく確保されていることにより、上下方向の振動入力時に下端面24から受圧室72に力が効率的に及ぼされて、受圧室72の内圧変動が効率的に惹起されることから、流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得ることができる。また、上下方向の振動入力時に、周溝状凹部36内の本体ゴム弾性体16が上側へ逃げるように変形するのが、上側の外周突部40aによって防止されて、周溝状凹部36の形成による受圧室72の拡張ばねの低下が防止されることから、受圧室72のポンプ効果を十分に得ることができて、流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得ることができる。
更にまた、周溝状凹部36の外周面と外周突部40a,40bの外周面が軸方向で滑らかに連続していることから、本体ゴム弾性体16において応力の分散化が図られて、耐久性の更なる向上が図られる。特に本実施形態では、本体ゴム弾性体16に軸方向で入り込んで固着されるインナ取付部材12の本体部18の外周面全体が、軸方向に滑らかに連続する波形状とされていることから、インナ凹部26や周溝状凹部36の形成による本体ゴム弾性体16の応力集中が緩和されて、本体ゴム弾性体16の耐久性が確保されると共に、インナ取付部材12に対する本体ゴム弾性体16の固着面積が大きくされて、固着強度の向上も図られる。
ところで、前記実施形態に従う構造とされた本発明に係るエンジンマウント(実施例)と、インナ取付部材の外周面に周溝状凹部を持たないエンジンマウント(比較例)について、傾斜方向の入力に対する本体ゴム弾性体のひずみの分布をシミュレーションしてみると、周溝状凹部を設けた実施例では、周溝状凹部を持たない比較例に比べて、周溝状凹部への固着部分の軸方向両側にひずみが分散されており、第一の取付部材の軸方向中央部分に設けられた周溝状凹部への固着部分においてひずみが低減されていた。このように、周溝状凹部を設けることによって、傾斜方向の入力時に本体ゴム弾性体のひずみが分散されて低減されるという本発明の効果は、シミュレーションによっても確認されている。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、全周に亘って連続して延びる周溝状凹部36を例示したが、図3,4に示すインナ取付部材90のように、周方向で部分的に設けられた周溝状凹部92を採用することもできる。図3,4の実施形態では、一対の周溝状凹部92,92が径方向一方向(図4中の上下方向)で対向する位置に設けられており、それら一対の周溝状凹部92,92の形成部分において、本体ゴム弾性体16の自由長が大きく確保されている。これによれば、例えば、互いに直交する径方向2方向のばね特性を、周溝状凹部92の有無によって互いに異なるように調節して、要求されるばね比を実現することなども可能になる。
なお、図3,4に示すインナ取付部材90では、周溝状凹部92が周方向の2箇所に設けられていることから、それら周溝状凹部92,92の軸方向両側にそれぞれ外周突部94a,94bが設けられており、外周突部94a,94bも周方向で部分的に設けられている。また、周溝状凹部92の外周面は、本体部18における周溝状凹部92を周方向に外れた両側の外周面と軸方向に外れた両側の外周面とに対して、それぞれ折れ点や折れ線を持たない滑らかな面でつながっている。
さらに、前記実施形態の周溝状凹部36は、周方向に略一定の断面形状で延びていたが、周方向で断面形状が変化するようにもできる。例えば、図3,4に示す一対の周溝状凹部92,92において、軸方向寸法や深さ寸法が周方向両端に向けて徐々に小さくなっていてもよい。加えて、前記実施形態では、周溝状凹部36がインナ凹部26よりも浅い凹形状とされているが、インナ凹部26より深い凹形状の周溝状凹部を採用することもできる。また、周溝状凹部36において、開口部の軸方向寸法や最深部38に対する軸方向両側の外周面の傾斜角度なども、適宜に変更され得る。
さらに、周方向で部分的な周溝状凹部の3つ以上を、同一周上で周方向に離れた位置に設けることもできる。また、複数の周溝状凹部を軸方向で並ぶように並列的に設けることもできる。
また、本体ゴム弾性体16の小径部分48の外周面は、全体に亘って上方に向けて小径となるテーパ状外周面60とされて、凹状湾曲面56をなしていなくても良い。小径部分48の外周面が凹状湾曲面56を有する場合に、凹状湾曲面56の最深部58は、インナ凹部26の最深部28に対して略同じ上下位置に配されていても良いし、インナ凹部26の最深部28に対して下側に配されていても良い。
また、インナ凹部は、必須ではなく省略することもできる。要するに、インナ取付部材の本体部の外周面に対して、周溝状凹部と外周突部だけを形成することもできる。
さらに、インナ凹部の形状は、適宜に変更され得る。具体的には、例えば、前記実施形態のインナ凹部26の内面は、最深部28付近が円弧状湾曲面30とされていると共に、円弧状湾曲面30の上下両側にテーパ面32,34の各一方が連続して設けられていたが、インナ凹部の内面全体が円弧状の湾曲面で構成されていても良い。
更にまた、インナ凹部は、必ずしもインナ取付部材の全周に亘って連続する環状である必要はなく、例えば、一周に満たない長さで周方向に連続するC字状の溝や、径方向一方向に直線的に延びる溝であっても良いし、スポット的な凹みであっても良い。
インナ取付部材12の本体部18の外周面は、例えば下方に向けて小径となるテーパ形状であっても良い。これによれば、インナ取付部材12の本体部18とアウタ取付部材14との間で本体ゴム弾性体16の圧縮ばね成分を有利に得ることができ得る。また、インナ取付部材12の突出部は、前記実施形態のフランジ状部20のような全周に設けられるフランジ状のものに限定されず、例えば、突出部が周方向で部分的に設けられていても良いし、突出部が設けられていなくても良い。なお、突出部がない場合には、例えばインナ取付部材12の外周面の全体がテーパ形状とされ得る。
さらに、本体部18の下端面24は、平坦部24aを備えていなくてもよく、例えば、全体が湾曲部24bのような外周へ向けて上傾する湾曲面で構成されていてもよい。
また、本発明は、流体封入式防振装置にのみ適用されるものではなく、流体封入領域66を持たないソリッドタイプの防振装置に適用することもできる。さらに、本発明は、インナ取付部材とアウタ取付部材が同軸的に配置されて、本体ゴム弾性体によって径方向に弾性連結された筒形防振装置にも適用可能である。