次に、本発明に係る半導体装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。なお、断面の位置は図2に示されるI−I線である。図2は、放熱部材と第二熱伝導部材を省略して半導体装置を示す斜視図である。
半導体装置100は、例えば電動パワーステアリング装置(EPS:electric power steering)に備えられるモータの駆動制御を行うインバータ回路を実現するためのモジュールであり、配線基板110と、半導体部品120、第一熱伝導部材131と、第二熱伝導部材132と、緩衝部材140と、放熱部材150と、連結部材160とを備えている。
配線基板110は、樹脂などの絶縁性の基板の表面に銅などの導電性の膜によりパターンが形成された部材である。配線基板110は、半導体部品120などとパターンとを電気的に接続する部分以外はレジストなどの絶縁性の膜でパターンが覆われて絶縁を確保している。なお、配線基板110には半導体部品120以外の電子部品やコネクタなどが実装されているが、それらの図示は省略する。
半導体部品120は、半導体で構成された素子からなる部品である。半導体部品120の種類は特に限定されるものではないが、半導体装置100の稼働時に熱が発生する部品が対象となる。具体的に半導体部品120を例示すると、電源用FET(Field effect transistor)、LED(light emitting diode)、レーザーダイオードなどを例示することができる。本実施の形態の場合、半導体部品120は、インバータ回路を構成するスイッチング素子であり、特にGaNにより形成される横型半導体である。半導体部品120は、樹脂や金属などの筐体によりパッケージされたものも存在するが、本実施の形態の場合、パッケージレスの部品が採用されている。
本実施の形態の場合、6個の半導体部品120は、モータのU相用のハイサイド、それに直列に接続されたU相用のローサイド、V相用のハイサイドと、それに直列に接続されたV相用のローサイド、W相用のハイサイドと、それに直列に接続されたW相用のローサイドにそれぞれ接続されている。一枚の配線基板110には、同種の半導体部品120が6個実装されており、半導体部品120のそれぞれの厚み(図中Z軸方向の長さ)は均等である。また、半導体部品120と配線基板110とは、ハンダを介して電気的、かつ機械的に接続されている。
放熱部材150と半導体部品120との距離がそれぞれ異なる要因としては、例えば、配線基板110に対し半導体部品120をハンダ付けする際に塗布されるハンダの量の相違などによる場合が考えられる。また、熱などにより配線基板110が湾曲する場合などを挙示することができる。本実施の形態の場合、図1に示すように両端にある半導体部品120よりも、それらの間にある半導体部品120が若干没入した状態となっている。
第一熱伝導部材131は、半導体部品120の表面上に配置され、半導体部品120が発する熱を外部に配置されている緩衝部材140に伝導する部材である。第一熱伝導部材131は、半導体部品120から緩衝部材140へ熱を効果的に伝達できるものであれば特に限定されるものではなく、ペースト状の熱伝導部材や、シート状の熱伝導部材を例示することができる。また、短時間で急激に発熱する半導体部品120を効果的に冷却するために第一熱伝導部材131の厚みは、薄い方が好ましく、少なくとも第二熱伝導部材132の厚みよりも薄い。
緩衝部材140は、第一熱伝導部材131を介して半導体部品120上にそれぞれ配置される固形の部材であり、いわゆるヒートスプレッダなどと称される部材である。ここで固形とは、第一熱伝導部材131、および第二熱伝導部材132よりも硬質であることを意味するものとして使用している。緩衝部材140の材質は特に限定されるものではないが、短時間で急激に発熱する半導体部品120からの熱を蓄積することができる熱容量を備え、放熱部材150に効率的に熱を伝えることができるものが好ましく、例えば銅からなるブロック状の部材を例示することができる。緩衝部材140の大きさは、特に限定されるものではないが、半導体部品120の熱を効率的に吸収するためには、半導体部品120の接触面より広い平面部を備えることが好ましい。また、緩衝部材140の高さは、熱容量を十分に確保できる高さであることが好ましく、半導体部品120に対してそれぞれ取り付けられる緩衝部材140の高さは同じである。
第二熱伝導部材132は、緩衝部材140上に配置され、緩衝部材140の熱を外部に配置される放熱部材150に伝導する部材である。本実施の形態の場合、第二熱伝導部材132は、複数の緩衝部材140に対して共通に接続される一枚のシート状であり、放熱部材150から緩衝部材140に向かう方向の押圧力により、放熱部材150から緩衝部材140までの距離の相違を埋める程度の厚みおよび柔軟性を備えている。従って、第一熱伝導部材131よりも厚みは厚い。
放熱部材150は、第二熱伝導部材132を介して複数の緩衝部材140とそれぞれ熱的に接続される部材であり、いわゆるヒートシンクである。放熱部材150の形状は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、放熱部材150は、複数の半導体部品120、緩衝部材140、第一熱伝導部材131、第二熱伝導部材132を内方に収容することができる箱形状であり、配線基板110と締結部材151により締結されている。また、放熱部材150と配線基板110との締結力により、半導体部品120、第一熱伝導部材131、緩衝部材140、第二熱伝導部材132の並び方向に圧力が発生し、第二熱伝導部材132の柔軟性により配線基板110に対する半導体部品120の高さの相違を埋め半導体部品120から放熱部材150までの熱的接続を確保している。放熱部材150の材質は、熱伝導性の高い物が好ましく、例えばアルミニウムや、アルミニウムを主として含む合金などを例示することができる。
連結部材160は、緩衝部材140が配置される面(図中XY平面)に垂直な方向(図中Z軸方向)において、複数の緩衝部材140の相互の変位を許容し、隣り合う緩衝部材140同士を半導体部品120の配置と対応するように連結する部材である。連結部材160は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、厚み200μm以下、50μm以上の金属製のシートで繋がっている。具体的には、半導体部品120の配置に対応した配置で仮に固定された緩衝部材140に対し、ニッケルなどの金属を電気メッキすることによりニッケルからなるシート状(薄膜状)の連結部材160を製造する方法を例示できる。この製造方法によれば、連結部材160の製造と緩衝部材140との接続を一度のメッキ工程により実現することができる。連結部材160により複数の半導体部品120に対し複数の緩衝部材140を一体のものとして容易に組付けることができる一方で連結部材160の厚みが薄いため、各緩衝部材140を半導体部品120に向かって押圧した際に容易に変形し、各半導体部品120の配線基板110に対する高さが異なる場合にも、第一熱伝導部材131を介して各半導体部品120に密着させることができる。
次に半導体装置100の組立方法の一例を説明する。半導体部品120、およびその他の部品は、クリームハンダを介して配線基板110上に実装され、リフロー炉を通過させることで、クリームハンダの溶融と固化が実施される。以上により、図3の(A)の段に示すように、配線基板110上に半導体部品120などが取り付けられる。また、配線基板110上に塗布されたクリームハンダの量や、リフロー炉の状態、過熱による配線基板110の反りなどにより、半導体部品120の高さ位置が相互に異なる場合がある。次に、図3の(B)の段に示すように、半導体部品120の上面に第一熱伝導部材131が取り付けられる。
次に、連結部材160により一体に連結された複数の緩衝部材140を第一熱伝導部材131の上に取り付ける、半導体部品120の配置と、連結部材160により連結された緩衝部材140の配置とが一致するため、図3の(C)の段に示すように、一度の操作により、各半導体部品120に対して緩衝部材140をセットすることができる。次に、緩衝部材140をそれぞれ半導体部品120に向かって押圧することにより、半導体部品120の高さ位置に応じて緩衝部材140が相互に変位し、当該変位に応じて連結部材160が塑性変形する。
次に、図4の(E)の段に示すように、緩衝部材140、および連結部材160の上に、シート状の第二熱伝導部材132を配置する。最後に、半導体部品120、および緩衝部材140などを収容するように放熱部材150をかぶせ、放熱部材150と配線基板110とを締結部材151により締結する。この締結による圧力により第二熱伝導部材132が弾性変形し、高さ位置の異なる緩衝部材140と放熱部材150との隙間を埋めて熱的に接続する。以上により図4の(F)の段に示すような半導体装置100が組み立てられる。
本実施の形態で説明したように、半導体装置100は、連結部材160により一体に接続された複数の緩衝部材140を一度の工程で半導体部品120の上に配置することができるため、半導体装置100を容易に組み立てることが可能となる。また、半導体部品120に対し緩衝部材140を配置した後、連結部材160を変形させることで、高さ位置の異なる半導体部品120と緩衝部材140とを密着させることができるため、半導体部品120のそれぞれに対し、半導体部品120と緩衝部材140との間の熱の移動度を均一にすることができる。これにより、半導体部品120の短期間で急激な発熱を素早く緩衝部材140が吸収することができ、各半導体部品120を効果的に冷却することが可能となる。
半導体部品120の高さ位置の相違に基づき緩衝部材140の高さ位置も相違するが、第二熱伝導部材132が変形することにより高さ位置の相違を吸収して各緩衝部材140と放熱部材150とを熱的に接続するため、素早く熱を吸収した緩衝部材140を確実に冷却することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
例えば、複数の半導体部品120は、同一種類のものであるとして説明したが、種類の異なる半導体部品120が含まれていても構わない。この場合、各半導体部品120の厚みが異なる場合があるが、緩衝部材140の高さ位置が設計上面一になるように緩衝部材140の厚みを各半導体部品120の厚みに対応させて変えても構わない。
また、連結部材160は、実施の形態の様に、放熱部材150側、および半導体部品120側の一方に対向する緩衝部材140の面同士を連結し、面全体を覆うシート状ばかりでなく、図5に示すように緩衝部材140の両面同士をそれぞれ連結するシート状の部材であっても構わない。
また、図6に示すように、連結部材160は板状であり、緩衝部材140が相互に対向する面の一部同士を連結しても構わない。また、緩衝部材140と連結部材160とが一体であっても構わない。このような緩衝部材140と連結部材160の構造は、切削加工などにより実現することができる。さらに、図7に示すように、緩衝部材140と一体の連結部材160が、半導体部品120側、および放熱部材150側など複数箇所に設けられていても構わない。
また、連結部材160は、図8に示すように、シリコングリスやゲルシートなど変形可能な部材であっても構わない。
また、連結部材160は、図9に示すように緩衝部材140の形状に対応し、半導体部品120に配置に対応した位置に複数の貫通孔を備えるものでもよい。この場合連結部材160は、例えば樹脂からなり、緩衝部材140が配置されている平面(図中XY平面)においては、各貫通孔に挿通される緩衝部材140同士の変位を規制し、緩衝部材140が配置されている平面の法線方向においては、静摩擦力により緩衝部材140の自重では落下しないが、静摩擦力を越える所定の圧力で押圧した際は、それぞれの緩衝部材140を変位させることができる程度に緩衝部材140を保持している。