JP2020009923A - 電磁波制御体及びレーダーシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】所定方向に伝搬する電磁波を透過し、他の方向に伝搬する電磁波を吸収することにより、電磁波の伝搬方向を制御することが可能な電磁波制御体、及びこれを備えたレーダーシステムを提供する。【解決手段】[A]周波数が5GHz以上500GHz以下の電磁波のうち少なくとも一部の周波数帯を吸収する電磁波吸収物質が含まれた平板状の本体11を備え、前記本体の厚さ方向に貫通する貫通部12が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体10。[B]レーダー装置と、前記レーダー装置の送信部又は受信部に設置された前記電磁波制御体とを備えた、レーダーシステム。【選択図】図1

Description

本発明は、アンテナの近傍に備えられ、送信又は受信される電磁波の指向性を制御することが可能な電磁波制御体及びこれを備えたレーダーシステムに関する。
電子機器、通信機器、情報機器などの多くの電磁波発生源が身の周りに存在しており、機器同士が互いの電磁波によって干渉することを防ぐ対策(EMC対策)が求められることがある。例えば、電子機器の検査等を行う電波暗室では厳格なEMC対策が施されている。電波暗室の壁面には、四角錘の電磁波吸収体が電波を効果的に吸収できるように高密度に配置されている。このような電磁波吸収体として、特許文献1には、カルシウムとアルミニウムの複合酸化物を含む多孔質成形体の基材と、これに添加された導電性材料とを含み、ミリ波を吸収する電波吸収体が開示されている。また、特許文献2には、母材(基材)と、電波を散乱する発泡材と、カーボンを含む電波吸収材とを備え、各材の誘電率が所定の範囲に調整され、所望の形状に成形することが容易な電波吸収体が開示されている。
特開2014−187134号公報 特開2016−171113号公報
近年、ミリ波〜準ミリ波を用いた車載レーダーが活用されている。車載レーダーにおいても、周辺の電磁波ノイズの影響を排除するためのEMC対策を施すことが望ましい。また、レーダーの検知精度を高める観点から、送信部から放射される信号の指向性を高めること、及び受信部に入射する信号の指向性を高める(受信する方向を限定する)ことが求められている。
本発明は、所定方向に伝搬する電磁波を透過し、他の方向に伝搬する電磁波を吸収することにより、電磁波の伝搬方向を制御することが可能な電磁波制御体、及びこれを備えたレーダーシステムを提供する。
[1] 周波数が5GHz以上500GHz以下の電磁波のうち少なくとも一部の周波数帯を吸収する電磁波吸収物質が含まれた平板状の本体を備え、前記本体の厚さ方向に貫通する貫通部が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体。
[2] 前記本体の厚さが0.5mm以上50mm以下である、[1]に記載の電磁波制御体。
[3] 前記貫通部を囲む壁の平面方向の幅が1mm以上50mm以下である、[1]又は[2]に記載の電磁波制御体。
[4] 前記貫通部における、前記本体の第一面側の開口面積が、前記本体の第二面側の開口面積と同じである、[1]〜[3]の何れか一項に記載の電磁波制御体。
[5] 前記貫通部を囲む壁面の少なくとも一部が、前記第一面又は前記第二面に対して垂直である、[4]に記載の電磁波制御体。
[6] 前記貫通部における、前記本体の第一面側の開口面積が、前記本体の第二面側の開口面積と異なる、[1]〜[3]の何れか一項に記載の電磁波制御体。
[7] 前記貫通部を囲む壁面の少なくとも一部が、前記第一面及び前記第二面に対して傾斜している、[6]に記載の電磁波制御体。
[8] 前記貫通部が、前記本体の第一面から第二面へ向けてすぼまっている、[7]に記載の電磁波制御体。
[9] 前記貫通部が碗状の凹部である、[8]に記載の電磁波制御体。
[10] 前記貫通部が錘台状の凹部である、[8]に記載の電磁波制御体。
[11] 前記電磁波吸収物質が、炭素材料又はセラミックスである、[1]〜[10]の何れか一項に記載の電磁波制御体。
[12] 前記本体が、さらに前記電磁波吸収物質同士を結着するバインダを含む、[1]〜[11]の何れか一項に記載の電磁波制御体。
[13] 前記本体の表面抵抗が1Ω/□以上である、[1]〜[12]の何れか一項に記載の電磁波制御体。
[14] レーダー装置と、前記レーダー装置の送信部又は受信部に設置された[1]〜[13]の何れか一項に記載の電磁波制御体とを備えた、レーダーシステム。
[15] 前記電磁波制御体における前記貫通部が、前記本体の第一面から第二面へ向けてすぼまっており、前記送信部又は前記受信部は、前記貫通部の前記第二面側の開口側に設置されている、[14]に記載のレーダーシステム。
本発明の電磁波制御体によれば、所定方向に伝搬するミリ波を透過し、所定以外の方向に伝搬するミリ波を吸収することによって、ミリ波の伝搬方向を制御することができる。
本発明の電磁波制御体をレーダー装置の送信部又は受信部の前方に設置することによって、送信部から放射される信号の指向性を高めること、又は受信部に入射する信号の指向性を高めることができる。さらに、所定以外の方向から来る電磁波ノイズを吸収できるので、EMC対策にもなる。
本発明のレーダーシステムによれば、送信(放射)又は受信する電磁波の指向性を高めることができる。
本発明の一例である電磁波制御体10の斜視図である。 電磁波制御体10の厚さ方向の断面図である。 本発明の一例である電磁波制御体20の斜視図である。 本発明の一例である電磁波制御体30の斜視図である。 電磁波制御体30の厚さ方向の断面図である。 本発明の一例である電磁波制御体40の斜視図である。 電磁波制御体40の厚さ方向の断面図である。 本発明のレーダーシステムの一例を示す模式図である。 本発明のレーダーシステムに設置した電磁波制御体10の部分断面図である。 本発明のレーダーシステムに設置した電磁波制御体40の部分断面図である。 電磁波制御体10及び電磁波制御体20を押出成形によって製造する様子を説明する斜視図である。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
電磁波制御体の各部の大きさ、長さ、厚さ等のサイズや各部の配置の角度等は、特に明記しない限り、測定顕微鏡等の観察手段を必要に応じて用いて測定し、無作為に選択した3箇所以上の測定値を平均した値である。
「表面抵抗」は、石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、この電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を0.049Nの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で測定される電極間の抵抗である。
「ミリ波」は、特に明記しない限り、周波数が10GHz以上30GHz未満の準ミリ波と、周波数が30GHz以上300GHz以下のミリ波との両方を意味する。
図1〜図11における寸法比は、説明の便宜上、実際の寸法とは異なる。
<電磁波制御体>
本発明の第一実施形態は、図1に示すように、電磁波吸収物質を含有する平板状の本体11を備え、本体11の厚さ方向に貫通する貫通部12が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体10である。
ここで「平板状」とは、全体として平らな板の形状であることを意味するが、広い面積を有する2つの主面は、互いに平行でもよいし、非平行であってもよい。また、主面の一部の厚さが他部の厚さと異なっていてもよい。また、平板状の輪郭を形成する各辺が面取りされたり、丸みを付与されたりしていてもよい。
本体11には円柱状の7個の貫通部12が、一の貫通部12を中心として、中心から等距離の位置に残りの6個の貫通部12が放射状に配置されている。中心にある一の貫通部12から見て、残りの6個の貫通部12は点対称に配置されている。各貫通部12は中空であり、本体11の第一面11aから第二面11bへ向けて、本体11の一部を円柱状にくり貫いた形状を有する。
本体11の厚さ方向の断面図(図2)に示すように、電磁波E1の伝播方向を表す矢印が本体11の厚さ方向(第一面11aから第二面11bへ向かう方向)に対してなす角(交差する角)は比較的大きいので、電磁波E1は本体11の第一面11a側の貫通部12の開口に入射した後、貫通部12を囲む壁(以下、囲壁と記す。)の表面(囲壁面)12wに当たり、少なくとも一部が吸収される。吸収された電磁波は、電磁誘導による渦電流でジュール発熱が生じて失われる。
これに対して、電磁波E2及び電磁波E3の伝播方向を表す矢印が本体11の厚さ方向に対してなす角は比較的小さいので、電磁波E2及び電磁波E3は本体11の第一面11aから貫通部12に入射した後、第二面11b側の開口から出射する。
本体11の厚さを厚くすると、貫通部12を厚さ方向に透過する電磁波の空間的な広がりを絞ることができる。貫通部12を厚さ方向に透過する電磁波は、本体11の厚さ方向に対する交差角が比較的小さい伝播方向の電磁波に限定され、前記交差角が比較的大きい伝播方向の電磁波は貫通部12の囲壁面12wに吸収されやすくなる。
逆に、本体11の厚さを薄くすると、貫通部12を厚さ方向に透過する電磁波の空間的な広がりを許容することができる。貫通部12を厚さ方向に透過する電磁波は、本体11の厚さ方向に対する交差角が比較的小さい伝播方向の電磁波に限定されず、前記交差角が比較的大きい伝播方向の電磁波も貫通部12を透過しやすくなる。
本体11の厚さ(第一面11aから第二面11bまでの距離)は、例えば、0.5mm以上50mm以下が好ましく、1mm以上30mm以下がより好ましく、1.5mm以上5mm以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、車載用ミリ波レーダーで用いられる周波数20GHz〜300GHz程度のミリ波の透過をより容易に制御することができる。
本体11の幅方向(第一面11aの平面方向)のサイズは、用途に応じて適宜設定されるので特に制限されず、例えば、縦×横=1mm〜50mm×1mm〜50mm程度のサイズが挙げられる。ここで、縦は第一面の平面方向における最長の差し渡しの長さであり、横は縦に直交する長さである。
隣接する貫通部12同士を隔て、貫通部12を形成する囲壁(隔壁)は、本体11の一部によって形成されている。貫通部12の囲壁の平面方向(本体11の第一面11aと平行な方向)の幅(肉厚)は、水平に設置された第一面11aを鉛直方向に見下ろして、隣接する貫通部12同士が最も近くなる部位(即ち、囲壁が最も薄い部位)を測定して求められる。測定には、測定顕微鏡等の拡大観察手段を用いてもよい。
電磁波制御体10における任意の隣接する貫通部12の囲壁の平面方向の幅は、例えば、1mm以上50mm以下が好ましく、1.5mm以上30mm以下がより好ましく、2mm以上15mm以下がさらに好ましい。
電磁波制御体10における複数の貫通部12から無作為に組み合わせた3組以上の隣接する貫通部12の囲壁の幅をそれぞれ測定し、その平均値を求めたとき、その平均値は、1mm以上50mm以下が好ましく、1.5mm以上30mm以下がより好ましく、2mm以上15mm以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、貫通部12の囲壁の表面(囲壁面)に当たった電磁波を充分に吸収することができる。
上記範囲の上限値以下であると、本体11において、隣接する複数の貫通部12を高密度に配置することが容易になる。
本体11に配置された貫通部12の数は特に限定されず、用途に応じて適宜設定され、例えば、1〜10000個の範囲が挙げられる。図1の電磁波制御体10の貫通部12の配置を基本形態とした場合、7個の貫通部12から任意に選択される貫通部12を非貫通部とすることにより貫通部の数を減じた形態としてもよい。また、中心の周囲に配置された既存の6個の貫通部12から任意に選択される貫通部12に隣接する位置に、新たな貫通部を任意の数で増加させた形態としてもよい。
本体11に配置された複数の貫通部12は、それぞれ円柱形であり、各貫通部12における第一面11a側の開口面積と第二面11b側の開口面積は同じである。この開口面積は円柱形の底面を構成する円の面積として求められる。
本体11の第一面11aの面積S11aに対する、複数の貫通部12の第一面11a側の開口の合計の面積S12aの割合(S12a/S11a×100%)は、例えば、20〜99%の範囲、40〜90%の範囲、60〜80%の範囲等で、用途に応じて適宜設定することができる。同様に、本体11の第二面11bの面積S11bに対する、複数の貫通部12の第二面11b側の開口の合計の面積S12bの割合(S12b/S11b×100%)も、上記範囲で適宜設定することができる。
電磁波制御体10が備える各貫通部12の形状は円柱形であるが、貫通部12の形状は特に制限されず、例えば、楕円柱形、四角柱形、その他の多角柱形等の柱状が挙げられる。電磁波制御体10が備える複数の貫通部12の形状は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
貫通部12が柱状である場合、貫通部12の直径は、第一面11a又は第二面11bの開口(外部へ開いた口の周縁)を含む最小円の直径として求められる。
単一の貫通部12の直径は、例えば、0.5mm以上50mm以下の範囲、1mm以上30mm以下の範囲、1.5mm以上15mm以下の範囲等で、用途に応じて適宜設定することができる。
単一の貫通部12について、第一面11a側の開口の直径と、第二面11b側の開口の直径とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本体11の第一面11aにおける複数の貫通部12から無作為に選択された4個以上の貫通部12の直径の平均値は、例えば、0.5mm以上50mm以下の範囲、1mm以上30mm以下の範囲、1.5mm以上15mm以下の範囲等で、用途に応じて適宜設定することができる。
上記範囲であると、車載用ミリ波レーダーで用いられる周波数20GHz〜300GHz程度のミリ波の透過をより容易に制御することができる。
平板状の本体11の主面である第一面11aと第二面11bは互いに平行な面であってもよいし、非平行であってもよい。互いに平行な面である場合、第一面11aは2つの主面から任意に選択された一方の主面である。互いに非平行な面である場合、両主面の面積を比べて、面積の小さい主面を第一面11aとし、面積の大きい主面を第二面11bとする。ここで、主面の面積は、貫通部12の開口を含めた全体の面積である。なお、主面の面積は公知方法により求められる。
電磁波制御体10の各貫通部12を構成する囲壁面12wの少なくとも一部は、第一面11a又は第二面12bに対して垂直である。
電磁波制御体10の第一面11aと第二面11bが互いに平行な面であり、柱状の貫通部12の高さ方向が本体11の厚さ方向と垂直であり、貫通部12の囲壁面12wは第一面11a及び第二面11bに対して垂直である。
電磁波制御体10の変形例として、第一面11aと第二面11bが互いに平行な面であり、柱状の貫通部12の高さ方向が本体11の厚さ方向に対して傾いた形態が挙げられる。この変形例では、貫通部12の囲壁面12wは第一面11a及び第二面11bに対して垂直ではなく、貫通部12は、本体11の第一面11aから第二面11bへ向けて、本体11の一部を斜円柱等の斜柱形状にくり貫いた形状を有する。
本発明の第二実施形態は、図3に示すように、電磁波吸収物質を含有する平板状の本体21を備え、本体21の厚さ方向に貫通する貫通部22が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体20である。本体21には四角柱状の9個の貫通部22が、縦×横=3×3の格子状に配置されている。各貫通部22は中空であり、本体21の第一面21aから第二面21bへ向けて、本体21の一部を四角柱状にくり貫いた形状である。
本実施形態の電磁波制御体20は、第一実施形態の電磁波制御体10の変形例であり、基本的な構成は同様であるので、その他の説明を省略する。
本発明の第三実施形態は、図4に示すように、電磁波吸収物質を含有する平板状の本体31を備え、本体31の厚さ方向に貫通する貫通部32が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体30である。本体31の外縁の形状は、電磁波制御体10の本体11と同じである。本体31における複数の貫通部32の配置も、電磁波制御体10の貫通部12の配置と同じである。電磁波制御体30と電磁波制御体10が異なる点は、個々の貫通部32の形状であり、それ以外の基本的な構成は電磁波制御体10と同様である。
各貫通部32は中空であり、本体31の第一面31aから第二面31bへ向けて、本体31の一部から碗状の凹部をくり貫いた形状を有する。ここで、第一面31aを上面、第二面31bを下面とすれば、各貫通部32は上に開口した碗状の凹部であるといえる。なお、凹部の第二面31b側は貫通している。
本体31の厚さ方向の断面図(図5)に示すように、各貫通部32を形成する囲壁面32wの少なくとも一部は、第一面31a及び第二面32bに対して傾斜している。囲壁面32wの各主面に対する傾斜率は、囲壁面32wの部位によって異なる。具体的には、貫通部32は第一面31aから第二面32bへ向けて厚さ方向に沿って徐々に傾斜率を増しながら縮径している。本体31の厚さ方向の断面における貫通部32の囲壁面32wの断面輪郭線は、例えば放物線に沿うように成形される。
電磁波制御体30において、図5の断面図に示すように、電磁波E1の伝播方向を表す矢印が本体31の厚さ方向に対してなす角は比較的大きく、電磁波E1は本体31の第一面31a側の貫通部32の開口に入射した後、貫通部32の囲壁面32wに当たり、少なくとも一部が吸収される。吸収された電磁波は、電磁誘導による渦電流でジュール発熱が生じて失われる。
これに対して、電磁波E2及び電磁波E3の伝播方向を表す矢印が本体31の厚さ方向に対してなす角は比較的小さく、電磁波E2及び電磁波E3は本体31の第一面31aから貫通部32に入射した後、第二面31b側の開口から出射する。
電磁波制御体30の第二面31b側の開口面積は、第一面31a側の開口面積よりも小さいので、電磁波制御体30の形態は、電磁波制御体10と比べて電磁波が比較的透過しにくい形態である。なお、電磁波制御体30の第二面31b側の開口面積が、第一面31a側の開口面積より大きい構成であってもよい。
本発明の第四実施形態は、図6に示すように、電磁波吸収物質を含有する平板状の本体41を備え、本体41の厚さ方向に貫通する貫通部42が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体40である。本体41の外縁の形状は、電磁波制御体20の本体21と同じである。本体41における複数の貫通部42の配置も、電磁波制御体20の貫通部22の配置と同じである。電磁波制御体40と電磁波制御体20が異なる点は、個々の貫通部42の形状であり、それ以外の基本的な構成は電磁波制御体20と同様である。
各貫通部42は中空であり、本体41の第一面41aから第二面41bへ向けて、本体41の一部から錘台状の凹部をくり貫いた形状を有する。ここで、第一面41aを上面、第二面41bを下面とすれば、各貫通部42は倒立錘台状の凹部であるといえる。なお、凹部の第二面41b側は貫通している。
本体41の厚さ方向の断面図(図7)に示すように、各貫通部42を構成する囲壁面42wの少なくとも一部は、第一面41a及び第二面42bに対して傾斜している。囲壁面42wの各主面に対する傾斜率は、囲壁面42wの部位によらず一定である。つまり、貫通部42は第一面41aから第二面42bへ向けて厚さ方向に沿って一定の割合で縮径している。
電磁波制御体40において、図7の断面図に示すように、電磁波E1の伝播方向を表す矢印が本体41の厚さ方向に対してなす角は比較的大きく、電磁波E1は本体41の第一面41a側の貫通部42の開口に入射した後、貫通部42の囲壁面42wに当たり、少なくとも一部が吸収される。吸収された電磁波は、電磁誘導による渦電流でジュール発熱が生じて失われる。また、電磁波E3の入射角は比較的小さい(前記なす角は比較的小さい)が、電磁波E3の発信源が本体41の第一面41aの正面にないので、電磁波E1と同様に囲壁面42wに吸収される。
これに対して、電磁波E2の伝播方向を表す矢印が本体41の厚さ方向に対してなす角は比較的小さく、電磁波E2の発信源が本体41の第一面41aの正面にあるので、電磁波E2は本体41の第一面41aから貫通部42に入射した後、第二面41b側の開口から出射する。
電磁波制御体40の第二面41b側の開口面積は、第一面41a側の開口面積よりも小さいので、電磁波制御体40の形態は、電磁波制御体10と比べて電磁波が比較的透過しにくい形態である。なお、電磁波制御体40の第二面41b側の開口面積が、第一面41a側の開口面積より大きい構成であってもよい。
(構成材料)
本発明にかかる電磁波制御体の本体は、周波数が5GHz以上500GHz以下の電磁波のうち少なくとも一部の周波数帯を吸収する電磁波吸収物質を含む。本体は電磁波吸収物質のみで形成されていてもよいし、電磁波吸収物質と、電磁波吸収物質同士を結着するバインダとによって形成されていてもよい。
電磁波吸収物質としては、例えば、金属、導電性金属化合物、炭素材料、セラミックス等が挙げられる。
前記金属としては、例えば、強磁性金属、常磁性金属が挙げられる。強磁性金属としては、例えば、鉄、コバルト及びニッケルよりなる群から選ばれる1種の金属又は2種以上の合金が挙げられる。常磁性金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、チタン及びクロムよりなる群から選ばれる1種の金属又は2種以上の合金が挙げられる。
前記導電性金属化合物としては、例えば、金属と、ホウ素、炭素、窒素、ケイ素、リン及び硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む化合物が挙げられる。ここで、導電性金属化合物における金属は半金属も含む。導電性金属化合物は、合金でもよいし、金属間化合物でもよいし、固溶体でもよいし、それら以外の構造を有して易もよい。前記導電性金属化合物の具体例としては、例えば、窒化ニッケル、窒化チタン、窒化クロム、窒化タンタル、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化クロム等が挙げられる。
前記炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、フラーレン、グラフェン、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン等が挙げられる。
前記セラミックスとしては、例えば、フェライト、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、チタン酸バリウム、LTCC(低温同時焼成セラミックス)等が挙げられる。
前記バインダとしては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、縮合硬化型シリコーン、付加硬化型シリコーン、熱硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂とともに公知の硬化剤が含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、クロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等が挙げられる。
電磁波吸収物質がバインダによって結着される場合、電磁波吸収物質の形態は、バインダ内における分散性を高める観点から、粉体又は細片体であることが好ましい。
バインダによって結着される電磁波吸収物質の種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
電磁波吸収物質を結着するバインダの種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
電磁波制御体の本体がバインダを含む場合、本体の総質量に対する電磁波吸収物質の含有量は、例えば、10〜90質量%、20〜80質量%、30〜70質量%等の範囲が挙げられる。
電磁波吸収物質およびバインダの含有量は、電磁波制御体の本体の表面抵抗の設定に応じて適宜調整される。
電磁波制御体の本体の表面抵抗(単位:Ω/□)は、例えば、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、電磁波制御体の本体におけるミリ波の反射を低減し、吸収率をより高めることができる。上限値は特に限定されず、例えば、10,000以下が挙げられる。
(変形例)
以上で説明した電磁波制御体の貫通部は主面の中心に対して点対称又は線対称に配置されているが、貫通部の配置は幾何学的な対称性を有していてもよいし、ランダムな配置又は任意の配置であって幾何学的な対称性が有しなくてもよい。
以上で説明した電磁波制御体の貫通部は中空であるが、電磁波が透過することが可能な部材が貫通部内に充填されていても構わない。このような電磁波透過部材としては、例えば、電磁波吸収物質を含まない前述したバインダを構成する樹脂やガラスが挙げられる。
以上で説明した電磁波制御体の本体の外縁の輪郭(主面を正面から見た形状)は図示例に限定されず、設置する箇所に応じて適宜成形することができ、例えば、正方形、円形、楕円形等の任意の形状とすることができる。
以上で説明した電磁波制御体には7個以上の貫通部が備えられているが、3個以上の貫通部が備えられていれば、各貫通部の中心同士の距離を考慮することができる。隣接する貫通部同士の中心間距離(ピッチ)は同じでもよいし、異なっていてもよい。中心間距離は、囲壁の幅と貫通部の直径に応じて適宜調整され、例えば、1mm〜10mm程度の範囲で設定できる。
本発明の電磁波制御体は、上述の本体を支持する枠や基材を備えていてもよい。また、本体の第一面及び第二面の少なくとも一方の表面には、主面を保護する保護層や、主面を加飾する加飾層等の別の層を有していてもよい。
(作用効果)
本発明の電磁波制御体は、電磁波吸収物質を含む平板状の本体に、電磁波が透過可能な貫通孔が設けられた構成を備える。この構成によって、本体の主面の正面から入射する電磁波は透過しやすく、本体の正面から外れた方向から入射する電磁波は本体に吸収されて透過しがたい。したがって、例えば、本発明の電磁波制御体をミリ波レーダー装置の送信部又は受信部の近傍に設置することによって、送信部から放射されるミリ波又は受信部に受信されるミリ波の指向性(方向性)を制御することができる。この結果、レーダー装置の機能を妨害するゴースト波(妨害波)を除去又は低減することができる。
<レーダーシステム>
本発明のレーダーシステムの第一実施形態は、図8に示すように、レーダー装置101と、レーダー装置101の送信部及び受信部を兼ね備えた送受信部101aの近傍に設置された本発明の電磁波制御体100とを備えた、レーダーシステム200である。
レーダー装置101は、ミリ波を利用して任意の対象Tを検知する公知のレーダー装置である。レーダー装置101における送信部と受信部は同じ箇所に設けられていてもよいし、個別に離れた箇所に設けられていてもよい。電磁波制御体100は送信部及び受信部のうち少なくとも一方に設けられていればよい。電磁波制御体100は、送信部から放射されるミリ波の送信信号103の伝搬経路上、又は受信部へ入射するミリ波の受信信号104の伝搬経路上に設けられており、電磁波制御体100の主面に対して正面から入射するミリ波を透過し、正面から大きく外れた箇所から入射するミリ波を吸収する。電磁波制御体100は送受信部101aに密着して設置されていてもよいし、数ミリ〜数十センチ程度で離間して設置されていてもよい。
本発明のレーダーシステムにおける電磁波制御体10の設置例を図9の断面図に示す。本体11の第二面11bは不図示の部材の表面に設置されており、前記部材の表面が貫通部12の底面を構成している。各貫通部12の底面にはレーダー装置の送受信器15が備えられている。符号Wを付けた領域は、送受信器15が送受信する電磁波の広がりを表している。図から明らかなように、本体11が厚いほど、電磁波の横方向への広がりが絞られる。
本発明のレーダーシステムにおける電磁波制御体40の設置例を図10の断面図に示す。本体41の第二面41bは不図示の部材の表面に設置されており、各貫通部12の第二面41b側の開口部にレーダー装置の送受信器45が備えられている。符号Wを付けた領域は、送受信器45が送受信する電磁波の広がりを表している。図から明らかなように、本体41が厚いほど、又は囲壁面42wの傾斜勾配が急であるほど、電磁波の横方向への広がりが絞られる。
(電磁波制御体の製造方法)
本発明の電磁波制御体の製造方法は特に限定されず、金属成形品、樹脂成形品、セラミックス成形品等の公知の製造方法と同様に製造することができる。公知の製造方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、3Dプリンタを用いた成形法、ロストワックス成形法等が挙げられる。
具体例として、まず、前述のバインダ成分に電磁波吸収物質を公知のフィラーと同様にして混合した樹脂組成物を得る。この樹脂組成物を公知方法で押出成形することにより、前述の電磁波制御体10,20が得られる。図11の(a)(b)は押出材の先端部を任意の厚さで切断することにより、それぞれ電磁波制御体10,20を切り出す様子を示す。前述の電磁波制御体30,40は、例えば前記樹脂組成物を用いて射出成形法によって製造することができる。成形体をさらに切削加工することにより形状を整えてもよい。
また、特許文献1に記載された電波吸収体の製造方法を参照して、電磁波吸収物質と有機バインダを混合したスラリーを所望の形状に成形した後、高温で焼成する方法を適用してもよい。また、特許文献2に記載された電波吸収材及び成形方法を適用してもよい。
10…電磁波制御体、11…本体、11a…第一面、11b…第二面、12…貫通部、12b…第二面、12w…囲壁面、15…送受信器、20…電磁波制御体、21…本体、21a…第一面、21b…第二面、22…貫通部、30…電磁波制御体、31…本体、31a…第一面、31b…第二面、32…貫通部、32b…第二面、32w…囲壁面、40…電磁波制御体、41…本体、41a…第一面、41b…第二面、42…貫通部、42b…第二面、42w…囲壁面、45…送受信器、100…電磁波制御体、101…レーダー装置、101a…送受信部、103…送信信号、104…受信信号、200…レーダーシステム、E1…電磁波、E2…電磁波、E3…電磁波、T…対象、W…電磁波の広がり

Claims (15)

  1. 周波数が5GHz以上500GHz以下の電磁波のうち少なくとも一部の周波数帯を吸収する電磁波吸収物質が含まれた平板状の本体を備え、
    前記本体の厚さ方向に貫通する貫通部が少なくとも1つ設けられた、電磁波制御体。
  2. 前記本体の厚さが0.5mm以上50mm以下である、請求項1に記載の電磁波制御体。
  3. 前記貫通部を囲む壁の平面方向の幅が1mm以上50mm以下である、請求項1又は2に記載の電磁波制御体。
  4. 前記貫通部における、前記本体の第一面側の開口面積が、前記本体の第二面側の開口面積と同じである、請求項1〜3の何れか一項に記載の電磁波制御体。
  5. 前記貫通部を囲む壁面の少なくとも一部が、前記第一面又は前記第二面に対して垂直である、請求項4に記載の電磁波制御体。
  6. 前記貫通部における、前記本体の第一面側の開口面積が、前記本体の第二面側の開口面積と異なる、請求項1〜3の何れか一項に記載の電磁波制御体。
  7. 前記貫通部を囲む壁面の少なくとも一部が、前記第一面及び前記第二面に対して傾斜している、請求項6に記載の電磁波制御体。
  8. 前記貫通部が、前記本体の第一面から第二面へ向けてすぼまっている、請求項7に記載の電磁波制御体。
  9. 前記貫通部が碗状の凹部である、請求項8に記載の電磁波制御体。
  10. 前記貫通部が錘台状の凹部である、請求項8に記載の電磁波制御体。
  11. 前記電磁波吸収物質が、炭素材料又はセラミックスである、請求項1〜10の何れか一項に記載の電磁波制御体。
  12. 前記本体が、さらに前記電磁波吸収物質同士を結着するバインダを含む、請求項1〜11の何れか一項に記載の電磁波制御体。
  13. 前記本体の表面抵抗が1Ω/□以上である、請求項1〜12の何れか一項に記載の電磁波制御体。
  14. レーダー装置と、前記レーダー装置の送信部又は受信部に設置された請求項1〜13の何れか一項に記載の電磁波制御体とを備えた、レーダーシステム。
  15. 前記電磁波制御体における前記貫通部が、前記本体の第一面から第二面へ向けてすぼまっており、前記送信部又は前記受信部は、前記貫通部の前記第二面側の開口側に設置されている、請求項14に記載のレーダーシステム。
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