以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図2は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図1のA−A線に沿う断面を示している。図1及び図2を参照するに、ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30(抵抗部31及び32)と、端子部41、42、43、及び44とを有している。
なお、本実施の形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm〜500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm〜200μmであると、抵抗体30のひずみ感度誤差を少なくすることができる点で好ましい。
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
但し、基材10が可撓性を有する必要がない場合には、基材10に、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の材料を用いても構わない。
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。
抵抗体30は、抵抗部31及び32を含んでいる。すなわち、抵抗体30は、抵抗部31及び32の総称であり、抵抗部31及び32を特に区別する必要がない場合には抵抗体30と称する。なお、図1では、便宜上、抵抗部31及び32を梨地模様で示している。
抵抗部31は、基材10の上面10aに、長手方向をX方向に向けて直線状に形成された薄膜である。抵抗部32は、長手方向をY方向に向けて直線状に形成された薄膜である。抵抗部31と抵抗部32とは、同一面上で直交して互いに導通している。抵抗部31と抵抗部32とは、例えば、各々の長手方向の略中央部で交わるようにパターニングすることができる。
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu−Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni−Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm〜2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α−Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体30の厚さが1μm以下であると、抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。抵抗体30の幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm〜1000μm(1mm)程度とすることができる。
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα−Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体30がα−Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを−1000ppm/℃〜+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα−Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α−Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
端子部41は、抵抗部31の一端部から延在しており、平面視において、抵抗部31よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部43は、抵抗部31の他端部から延在しており、平面視において、抵抗部31よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部41及び43は、ひずみにより生じる抵抗部31の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部41及び43の上面を、端子部41及び43よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部31と端子部41及び43とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、端子部41及び43の平面形状は円形状には限定されず、矩形状等であってもよい。
端子部42は、抵抗部32の一端部から延在しており、平面視において、抵抗部32よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部44は、抵抗部32の他端部から延在しており、平面視において、抵抗部32よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部42及び44は、ひずみにより生じる抵抗部32の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部42及び44の上面を、端子部42及び44よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部32と端子部42及び44とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、端子部42及び44の平面形状は円形状には限定されず、矩形状等であってもよい。
抵抗体30を被覆し端子部41〜44を露出するように基材10の上面10aにカバー層60(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41〜44を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm〜30μm程度とすることができる。
ひずみゲージ1において、抵抗部31はX方向のひずみを抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部41及び43から出力することができる。又、抵抗部32はY方向のひずみを抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部42及び44から出力することができる。
但し、抵抗部31と抵抗部32とが図1に示すように同一面上で直交しているのは一例であり、抵抗部31と抵抗部32とは、直線状に形成されて同一面上で交差していればよい。この場合、抵抗部31及び抵抗部32は、各々の長手方向のひずみを検出することができる。例えば、抵抗部31は長手方向をX方向に向けて直線状に形成し、抵抗部32は長手方向をX方向に対して45度傾けて直線状に形成することができる。
なお、抵抗部31が検出したひずみと抵抗部32が検出したひずみに基づいて、演算により、抵抗部31及び32の長手方向とは異なる方向のひずみを求めることができる。
ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに図1に示す平面形状の抵抗体30及び端子部41〜44を形成する。抵抗体30及び端子部41〜44の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗体30と端子部41〜44とは、同一材料により一体に形成することができる。
抵抗体30及び端子部41〜44は、例えば、抵抗体30及び端子部41〜44を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗体30及び端子部41〜44は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
ゲージ特性を安定化する観点から、抵抗体30及び端子部41〜44を成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm〜100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗体30及び端子部41〜44を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗体30及び端子部41〜44と共に図1に示す平面形状にパターニングされる。
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗体30がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗体30の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗体30の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
機能層の材料と抵抗体30及び端子部41〜44の材料との組合せは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗体30及び端子部41〜44としてα−Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗体30及び端子部41〜44を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗体30及び端子部41〜44を成膜してもよい。
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα−Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを−1000ppm/℃〜+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
なお、抵抗体30がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗体30の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗体30の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗体30との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
このように、抵抗体30の下層に機能層を設けることにより、抵抗体30の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる抵抗体30を作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が抵抗体30に拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上することができる。
抵抗体30及び端子部41〜44を形成後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41〜44を露出するカバー層60を設けることで、ひずみゲージ1が完成する。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41〜44を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30を被覆し端子部41〜44を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
このように、ひずみゲージ1では、抵抗部31及び32は、各々が直線状に形成されて同一面上で交差して互いに導通している。これにより、抵抗部31及び32を順次ブリッジ回路に接続することで、抵抗部31及び32の抵抗値の変化に基づいて、抵抗部31及び32の各々の長手方向のひずみを検出することができる。すなわち、ひずみゲージ1により、2方向のひずみを検出可能な多軸ゲージを実現できる。
なお、従来、2方向のひずみを検出する場合には、例えば、2つのひずみゲージを作製し、互いのグリッド方向が交差するように両者を積層していたが、積層時の位置ずれや、各々のひずみゲージの積層方向の位置の差により測定誤差を生じていた。これに対して、ひずみゲージ1では抵抗部31及び32を同一面上に同時にパターニングするため、製造工程を簡略化できると共に、位置ずれ等による測定誤差を生じ難くすることができる。
又、ひずみゲージ1では抵抗部31及び32を同一面上にパターニングするため、複数のひずみゲージを貼り付ける構造に比べて小型化することができる。その結果、所望の測定位置に容易に貼り付けることができる。
又、ひずみゲージ1において、特に、抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体30がCu−NiやNi−Crから形成されている場合と比べ、ひずみに対する抵抗値の感度(同一のひずみに対する抵抗体30の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗体30がCr混相膜から形成されている場合、ひずみに対する抵抗値の感度は、抵抗体30がCu−NiやNi−Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5〜10倍程度となる。そのため、抵抗体30をCr混相膜から形成することで、ひずみを精度よく検出することが可能となる。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態のひずみゲージに選択回路を搭載したセンサモジュールの例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図3は、第2の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する模式図である。図3では、ひずみゲージ1(図1及び図2参照)を簡略化し、端子部41〜44のみを図示している。
図3を参照するに、センサモジュール5は、ひずみゲージ1と、選択回路2とを有している。
選択回路2は、例えば、スイッチSW1及びSW2と、入力端子I1〜I4と、出力端子O1及びO2と、制御端子CNTと、電源端子VDD及びVSS(正極端子及び負極端子)とを備えたICである。電源端子VDD及びVSSには、センサモジュール5の外部から所定電圧の電源が供給される。制御端子CNT、並びに出力端子O1及びO2は、センサモジュール5の外部と電気的に接続可能である。選択回路2は、例えば、ひずみゲージ1の基材10の上面10a側又は下面10b側に実装することができる。
選択回路2において、入力端子I1及びI3は、抵抗部31の一対の電極である端子部41及び43に接続されている。又、入力端子I2及びI4は、抵抗部32の一対の電極である端子部42及び44に接続されている。
スイッチSW1及びSW2は、制御端子CNTに外部から入力されるH/L信号に応じて連動して切り替わるスイッチである。
例えば、制御端子CNTに外部からH信号が入力されると、SW1は入力端子I1と出力端子O1とを接続し、SW2は入力端子I3と出力端子O2とを接続する(図3に示す状態)。この場合、出力端子O1及びO2は、抵抗部31の一対の電極である端子部41及び43に接続され、出力端子O1及びO2を介して抵抗部31の抵抗値を測定可能となる。
一方、制御端子CNTに外部からL信号が入力されると、SW1は入力端子I2と出力端子O1とを接続し、SW2は入力端子I4と出力端子O2とを接続する。この場合、出力端子O1及びO2は、抵抗部32の一対の電極である端子部42及び44に接続され、出力端子O1及びO2を介して抵抗部32の抵抗値を測定可能となる。
図4は、第2の実施の形態に係るセンサモジュールの使用方法を例示する模式図である。図4を参照するに、センサモジュール5は、センサモジュール5の外部に配置された測定部7に接続することができる。
測定部7は、ブリッジ回路71と、アナログフロントエンド部72と、制御部73とを有している。
ブリッジ回路71は、3辺が固定抵抗R1、R2、及びR3で構成され、他の1辺がセンサモジュール5の選択回路2の出力端子O1及びO2に接続されている。又、ブリッジ回路71の一対の対角点間には、直流電圧Vが印加されている。この構成により、ブリッジ回路71の他の一対の対角点間は、選択回路2において選択された抵抗部31又は32のひずみに応じたアナログの電圧が出力される。ブリッジ回路71から出力された電圧は、アナログフロントエンド部72に入力される。
なお、ここでは、ひずみゲージ1とブリッジ回路71との接続を1ゲージ2線式としているが、これには限定されない。
アナログフロントエンド部72は、例えば、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)、外部通信機能(例えば、I2C等のシリアル通信機能)等を備えている。アナログフロントエンド部72は、温度補償回路を備えていてもよい。アナログフロントエンド部72は、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
アナログフロントエンド部72において、ブリッジ回路71から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、出力される。アナログフロントエンド部72が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が出力される。
制御部73は、センサモジュール5の選択回路2の制御端子CNTにH信号又はL信号を入力し、スイッチSW1及びSW2を切り替えることができる。制御部73は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成とすることができる。
この場合、制御部73の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、制御部73の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御部73は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
このように、センサモジュール5の選択回路2の制御端子CNTに外部から入力されるH信号又はL信号により、選択回路2のスイッチSW1及びSW2を切り替えることができる。これにより、ひずみゲージ1の抵抗部31の抵抗値、抵抗部32の抵抗値を選択的に測定することができる。すなわち、X方向のひずみとY方向のひずみを選択的に測定することができる。
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1の実施の形態よりもひずみの検出方向を増やしたひずみゲージの例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図5は、第3の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。なお、第3の実施の形態に係るひずみゲージの断面形状は図2と同様であるため、図示を省略する。図5を参照するに、ひずみゲージ1Aは、抵抗部と一対の端子部との組が2組から4組に増えた点が、ひずみゲージ1(図1及び図2参照)と相違する。すなわち、ひずみゲージ1Aは、4方向のひずみを検出可能な多軸ゲージである。
ひずみゲージ1Aにおいて、抵抗体30Aは、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30Aは、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。抵抗体30Aの材料、厚さ、製造方法等は、抵抗体30と同様とすることができる。
抵抗体30Aは、抵抗部31、32、33、及び34を含んでいる。すなわち、抵抗体30Aは、抵抗部31、32、33、及び34の総称であり、抵抗部31、32、33、及び34を特に区別する必要がない場合には抵抗体30Aと称する。なお、図5では、便宜上、31、32、33、及び34を梨地模様で示している。
抵抗部31は、基材10の上面10aに、長手方向をX方向に向けて直線状に形成された薄膜である。抵抗部32は、長手方向をY方向に向けて直線状に形成された薄膜である。抵抗部33は、基材10の上面10aに、長手方向をX方向とのなす角θ1が−45度となる方向に向けて直線状に形成された薄膜である。抵抗部34は、基材10の上面10aに、長手方向をX方向とのなす角θ2が+45度となる方向に向けて直線状に形成された薄膜である。なお、ここでは反時計回りを正の角度としている。
抵抗部31、32、33、及び34は、同一面上で交差して互いに導通している。抵抗部31、32、33、及び34は、例えば、各々の長手方向の略中央部で交わるようにパターニングすることができる。すなわち、抵抗部31、32、33、及び34は、各々が直線状に形成されて同一面上で交差して互いに導通しており、隣接する抵抗部同士のなす角が45度である。
端子部45は、抵抗部33の一端部から延在しており、平面視において、抵抗部33よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部47は、抵抗部33の他端部から延在しており、平面視において、抵抗部33よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部45及び47は、ひずみにより生じる抵抗部33の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部45及び47の上面を、端子部45及び47よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部33と端子部45及び47とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、端子部45及び47の平面形状は円形状には限定されず、矩形状等であってもよい。
端子部46は、抵抗部34の一端部から延在しており、平面視において、抵抗部34よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部48は、抵抗部34の他端部から延在しており、平面視において、抵抗部34よりも拡幅して略円形状に形成されている。端子部46及び48は、ひずみにより生じる抵抗部34の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部46及び48の上面を、端子部46及び48よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部34と端子部46及び48とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、端子部46及び48の平面形状は円形状には限定されず、矩形状等であってもよい。
抵抗体30Aを被覆し端子部41〜48を露出するように基材10の上面10aにカバー層60(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体30Aに機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30Aを湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、端子部41〜48を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
ひずみゲージ1Aにおいて、抵抗部31はX方向のひずみを抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部41及び43から出力することができる。又、抵抗部32はY方向のひずみを抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部42及び44から出力することができる。抵抗部33はX方向とのなす角θ1が−45度となる方向のひずみを抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部45及び47から出力することができる。抵抗部34はX方向とのなす角θ2が+45度となる方向のひずみを抵抗値の変化として検出し、一対の電極である端子部46及び48から出力することができる。
このように、ひずみゲージ1Aでは、抵抗部31、32、33、及び34は、各々が直線状に形成されて同一面上で交差して互いに導通しており、隣接する抵抗部同士のなす角が45度である。これにより、抵抗部31、32、33、及び34を順次ブリッジ回路に接続することで、抵抗部31、32、33、及び34の抵抗値の変化に基づいて、抵抗部31、32、33、及び34の各々の長手方向のひずみを検出することができる。又、抵抗部31、32、33、及び34のひずみの検出結果に基づいて、主ひずみの大きさ及び方向を演算により知ることができる。その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、第3の実施の形態のひずみゲージに選択回路を搭載したセンサモジュールの例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図6は、第4の実施の形態に係るセンサモジュールを例示する模式図である。図6では、ひずみゲージ1A(図5参照)を簡略化し、端子部41〜48のみを図示している。
図6を参照するに、センサモジュール5Aは、ひずみゲージ1Aと、選択回路2Aとを有している。
選択回路2Aは、例えば、スイッチSW1及びSW2と、入力端子I1〜I8と、出力端子O1及びO2と、制御端子CNT1及びCNT2と、電源端子VDD及びVSS(正極端子及び負極端子)とを備えたICである。電源端子VDD及びVSSには、センサモジュール5Aの外部から所定電圧の電源が供給される。制御端子CNT1及びCNT2、並びに出力端子O1及びO2は、センサモジュール5Aの外部と電気的に接続可能である。選択回路2Aは、例えば、ひずみゲージ1Aの基材10の上面10a側又は下面10b側に実装することができる。
選択回路2Aにおいて、入力端子I1及びI5は、抵抗部31の一対の電極である端子部41及び43に接続されている。又、入力端子I2及びI6は、抵抗部32の一対の電極である端子部42及び44に接続されている。又、入力端子I3及びI7は、抵抗部33の一対の電極である端子部45及び47に接続されている。又、入力端子I4及びI8は、抵抗部34の一対の電極である端子部46及び48に接続されている。
スイッチSW3及びSW4は、制御端子CNT1及びCNT2に外部から入力されるH/L信号の組合せに応じて連動して切り替わるスイッチである。
例えば、制御端子CNT1に外部からH信号、制御端子CNT2に外部からH信号が入力されると、SW3は入力端子I1と出力端子O1とを接続し、SW4は入力端子I5と出力端子O2とを接続する(図6に示す状態)。この場合、出力端子O1及びO2は、抵抗部31の一対の電極である端子部41及び43に接続され、出力端子O1及びO2を介して抵抗部31の抵抗値を測定可能となる。
又、制御端子CNT1に外部からH信号、制御端子CNT2に外部からL信号が入力されると、SW3は入力端子I2と出力端子O1とを接続し、SW4は入力端子I6と出力端子O2とを接続する。この場合、出力端子O1及びO2は、抵抗部32の一対の電極である端子部42及び44に接続され、出力端子O1及びO2を介して抵抗部32の抵抗値を測定可能となる。
又、制御端子CNT1に外部からL信号、制御端子CNT2に外部からH信号が入力されると、SW3は入力端子I3と出力端子O1とを接続し、SW4は入力端子I7と出力端子O2とを接続する。この場合、出力端子O1及びO2は、抵抗部33の一対の電極である端子部45及び47に接続され、出力端子O1及びO2を介して抵抗部33の抵抗値を測定可能となる。
又、制御端子CNT1に外部からL信号、制御端子CNT2に外部からL信号が入力されると、SW3は入力端子I4と出力端子O1とを接続し、SW4は入力端子I8と出力端子O2とを接続する。この場合、出力端子O1及びO2は、抵抗部34の一対の電極である端子部46及び48に接続され、出力端子O1及びO2を介して抵抗部34の抵抗値を測定可能となる。
センサモジュール5Aの使用方法は、制御部73が選択回路2Aの制御端子CNT1及びCNT2を制御する点を除いて、図4を参照して説明した方法と同様である。
このように、センサモジュール5Aの選択回路2Aの制御端子CNT1及びCNT2に外部から入力されるH/L信号の組合せにより、選択回路2AのスイッチSW3及びSW4を切り替えることができる。これにより、ひずみゲージ1Aの抵抗部31の抵抗値、抵抗部32の抵抗値、抵抗部33の抵抗値、抵抗部34の抵抗値を選択的に測定することができる。すなわち、X方向のひずみ、Y方向のひずみ、X方向とのなす角が±45度となる方向のひずみを選択的に測定することができる。
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態では、ひずみゲージを有する軸受機構の例を示す。なお、第5の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図7は、第5の実施の形態に係る軸受機構を例示する斜視図である。図8は、第5の実施の形態に係る軸受機構を例示する断面図である。
図7及び図8を参照するに、軸受機構100は、回転軸110(シャフト)と、軸受120(ベアリング)と、ひずみゲージ1とを有している。回転軸110は、軸受120により回転可能に支持されている。軸受120の側壁には、ひずみゲージ1が貼り付けられている。
軸受120の側壁にひずみゲージ1を貼り付けることで、軸受120の振動を検出することができる。軸受120の寿命は、本来の転がり疲労寿命以外にも、振動に大きく影響を受ける。軸受120にひずみゲージ1を貼り付けて振動検出を行うことで、ひずみゲージ1による振動検出の結果に基づいて軸受120の寿命を予測することが可能となる。
更に、ひずみゲージ1から得た振動情報をフィードバックすることで、軸受120を使用した様々な製品への悪影響を回避することが可能となる。特に、ひずみゲージ1は2軸ゲージであるため、回転軸110に対して垂直な方向の振動成分と、回転軸110の方向の振動成分とを同時に検出可能である。その結果、軸受120について、より精度の高い寿命予測が可能となる。
又、ひずみゲージ1に代えてひずみゲージ1Aを用いることもできる。軸受機構100がアンバランスであれば回転軸110に対して垂直な方向に振動しやすく、アライメントが狂っていれば回転軸110の方向に振動が発生する。
振動は異常の種類によって発生する方向に特徴があるため、垂直(Vertical)と水平(Horizontal)と軸(Axial)の3方向についてそれぞれ測定することが好ましい。ひずみゲージ1Aを用いることで、3方向の振動検出を同時に行うことが可能となるため、振動源を切り分ける能力を大幅に向上することができる。
このように、軸受機構100において、軸受120の側壁にひずみゲージ1又は1Aを貼り付けて、軸受120の振動検出を行うことにより、軸受120に発生する振動の異常モードを精度良く検出することができる。
なお、ひずみゲージ1又は1Aに代えて、センサモジュール5又は5Aを用いてもよい。
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、センサモジュール5又は5Aに、ブリッジ回路71を取り込んでも構わない。又、センサモジュール5又は5Aに、ブリッジ回路71及びアナログフロントエンド部72を取り込んでも構わない。この場合、例えば、ブリッジ回路71とアナログフロントエンド部72をIC化し、基材10の上面10a又は下面10bに実装することができる。
又、多軸ゲージにおいて、抵抗部の本数は2本や4本には限定されず、3本や5本以上であっても構わない。