JP2020008012A - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】噴射間インターバル短縮を妨げないようにしつつ、噴射量および噴射開始時期のばらつきを抑制可能にした燃料噴射制御装置を提供する。【解決手段】燃料噴射制御装置は、昇圧回路と、ピーク電流制御部と、定電流制御部と、ステップS40によるピーク検出部と、ステップS50による昇圧設定値変更部と、を備える。昇圧回路は、バッテリ電圧を昇圧設定値に昇圧する。ピーク電流制御部は、昇圧回路により昇圧されたブースト電圧を燃料噴射弁へ印加開始し、その後、燃料噴射弁に流れる電流がピーク電流設定値にまで上昇したことに伴いブースト電圧の印加を終了させる。ピーク検出部は、ピーク電流制御部によりブースト電圧が印加されている期間であるピーク電流駆動期間を検出する。昇圧設定値変更部は、ピーク検出部により検出されたピーク電流駆動期間が長いほど昇圧設定値を高くするよう、昇圧設定値を変更する。【選択図】図4

Description

この明細書における開示は、燃料噴射制御装置に関する。
従来より、電磁コイルへの通電により生じる開弁力で開弁作動して燃料を噴射させる燃料噴射弁と、その燃料噴射弁への通電を制御することで燃料噴射状態を制御する制御装置とが知られている。この種の制御装置は、燃料噴射弁への通電時間を制御することで開弁期間を制御して、1回の開弁で噴射される量(噴射量)を制御する。上記通電時間は、要求される噴射量に応じた長さに設定される。
特許文献1に開示されている制御装置では、以下のように電磁コイルへの通電を制御している。先ず、バッテリ電圧を昇圧させたブースト電圧を電磁コイルに印加し、電磁コイルを流れる電流(駆動電流)がピーク電流設定値にまで上昇したことに伴いブースト電圧の印加を終了させる。その後、駆動電流を所定の定電流に維持させるようにバッテリ電圧を電磁コイルへ印加して、消費電力を抑制させつつ開弁状態を維持させる。要するに、バッテリ電圧に先立ちブースト電圧を印加することで、駆動電流をピーク電流設定値まで急上昇させ、これにより、電磁コイルによる磁気吸引力を急上昇させて、燃料噴射弁の開弁作動を速やかに開始させる。
特開2013−2476号公報
しかしながら、ブースト電圧の印加開始からピーク電流設定値に達するまでの駆動電流の上昇速度は、温度環境に応じてばらつく。そうすると、燃料噴射弁による開弁力の上昇速度が遅くなり、開弁開始時期がばらつくことになる。そして、例えば開弁開始時期が遅くなると、同じ通電時間であっても実際の開弁期間が短くなるので、要求噴射量に対する実際の噴射量が少なくなる。このように、従来の燃料噴射制御装置では、温度環境に依存して噴射量にばらつきが生じてしまう。
なお、上記温度環境の具体例として、内燃機関の温度上昇に伴い燃料噴射弁の温度が上昇して、燃料噴射弁に搭載されている電磁コイル等の電気抵抗が高くなることが挙げられる。また、制御装置が備える電子部品の発熱に伴い、制御装置内において、駆動電流が流れる部分の電気抵抗が高くなることが挙げられる。これらに例示されるように高温環境で電気抵抗が高くなると、駆動電流の上昇速度が遅くなり、低温環境で電気抵抗が低くなると駆動電流の上昇速度が速くなる。
ここで、高温環境であるほど通電時間を長くするように補正すれば、上述した噴射量ばらつきの問題を抑制できる。しかしながら、以下の問題については解消できない。すなわち、通電時間を補正しても、駆動電流の上昇速度がばらつくことに変わりはないので、開弁開始時期(噴射開始時期)のばらつきについては抑制されない。また、高温環境に伴い通電時間を長くすると、1燃焼サイクル中に複数回噴射させる多段噴射を実行するにあたり、噴射間インターバルを短縮させることが困難になる。
開示される1つの目的は、噴射間インターバル短縮を妨げないようにしつつ、噴射量および噴射開始時期のばらつきを抑制可能にした燃料噴射制御装置を提供することである。
上記目的を達成するため、開示された1つの態様は、
燃料噴射弁(1)への通電状態を制御することにより燃料噴射を制御する燃料噴射制御装置であって、
バッテリ電圧を昇圧設定値に昇圧する昇圧回路(21、31、32、33、34)と、
燃料噴射弁の開弁作動を開始させるべく、昇圧回路により昇圧されたブースト電圧を燃料噴射弁へ印加開始し、その後、燃料噴射弁に流れる電流がピーク電流設定値(Ith)にまで上昇したことに伴いブースト電圧の印加を終了させるピーク電流制御部(41)と、
ブースト電圧の印加終了の後、燃料噴射弁の開弁状態を維持させるべく、燃料噴射弁に流れる電流を所定の定電流に維持させるように、バッテリ電圧を燃料噴射弁へ印加する定電流制御部(51)と、
ピーク電流制御部によりブースト電圧が印加されている期間であるピーク電流駆動期間(Ta)を検出するピーク検出部(S40)と、
ピーク検出部により検出されたピーク電流駆動期間が長いほど昇圧設定値を高くするよう、昇圧設定値を変更する昇圧設定値変更部(S50)と、
を備える燃料噴射制御装置とされる。
ピーク電流駆動期間が長いということは、燃料噴射弁に流れる電流(駆動電流)がピーク電流設定値まで上昇する速度が遅く、開弁開始時期が遅くなっていることを意味する。そして、上記燃料噴射制御装置は、ピーク電流駆動期間を検出し、検出したピーク電流駆動期間が長いほど、昇圧設定値を高くするように変更する。したがって、駆動電流の上昇速度が遅く、開弁開始時期が遅い状態になると、今後の燃料噴射では、昇圧設定値は高い値に変更される。その結果、駆動電流の上昇速度が速くなるように変更され、遅くなっていた開弁開始時期が是正される。したがって、上述の如く昇圧設定値を変更することで、開弁開始時期のばらつきを抑制できる。
以上により、上記燃料噴射制御装置によれば、開弁開始時期のばらつきを抑制でき、その結果、噴射量のばらつきも抑制される。それでいて、燃料噴射弁への通電時間の変更を必要としないので、噴射間インターバル短縮の妨げになることを抑制できる。
なお、上記括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
第1実施形態に係る燃料噴射制御装置、およびその装置の制御対象となる燃料噴射弁を示す回路図である。 第1実施形態において、燃料噴射弁の電磁コイルに流れる電流と、電磁コイルの高電位側端子の電圧と、電磁コイルへの通電に伴い生じる磁気吸引力の変化を示す図。 第1実施形態の比較例において、燃料噴射弁のコイルに流れる電流の変化を示す図。 第1実施形態において、昇圧設定値を変更する処理手順を示すフローチャートである。
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。
(第1実施形態)
図1に示す燃料噴射弁1は、圧縮自己着火式の内燃機関(ディーゼルエンジン)に搭載されており、内燃機関の燃焼室へ直接燃料を噴射する直噴式である。燃料噴射弁1へ供給される燃料は燃料ポンプにより圧送され、燃料ポンプは内燃機関の回転駆動力により駆動する。内燃機関は複数の気筒を備え、各気筒に燃料噴射弁1が設けられている。
燃料噴射弁1は、図示しないボデー、ニードル、制御弁、固定コアおよび可動コアを備えるとともに、電磁コイル1aを備える。ボデーには、燃料を噴射する噴孔および制御室が形成されている。ニードルは、噴孔に通じる燃料通路を開閉することで、燃料の噴射と噴射停止とを切り替える。制御室には、燃料噴射弁1へ供給された高圧燃料の一部が溜められており、この高圧燃料の圧力(制御圧)がニードルに閉弁側へ付与されている。制御弁は、制御室から燃料を排出する排出通路を開閉する。制御弁を開弁作動させると、制御室の燃料が排出されて制御圧が低下し、ニードルが開弁作動を開始する。
固定コアおよび可動コアは磁気回路を形成する。電磁コイル1aへ通電すると磁気回路に磁束が流れ、それにより、可動コアに磁気吸引力が作用して、可動コアが固定コアに吸引されて移動する。制御弁は、可動コアに係合しているため、可動コアの吸引移動とともに開弁作動する。閉弁状態にある制御弁には、図示しない弾性部材による弾性変形力(弾性閉弁力)が作用している。したがって、電磁コイル1aへの通電開始に伴い磁気吸引力が上昇していき、弾性閉弁力よりも大きくなった時点で、制御弁は開弁作動を開始する。その結果、制御圧が低下してニードルが開弁作動を開始する。電磁コイル1aへの通電をオフさせると、磁気吸引力が低下して弾性閉弁力よりも小さくなった時点で、制御弁は閉弁作動を開始する。その結果、制御圧が上昇してニードルが閉弁作動を開始する。
制御装置5は、電磁コイル1aへの通電状態を制御することで燃料の噴射状態を制御する燃料噴射制御装置に相当する。具体的には、制御装置5は、通電オン時期を制御することで噴射開始時期を制御し、通電オフ時期を制御することで噴射終了時期を制御し、通電期間を制御することで、1回の開弁に伴い噴孔から噴射される燃料の量(燃料噴射量)を制御する。また、燃料噴射弁1および制御装置5は燃料噴射システムを提供する。
制御装置5は、マイクロコンピュータ(マイコン10)、制御集積回路(制御IC20)、昇圧回路、放電回路、定電流回路および気筒スイッチ回路を備える。さらに制御装置5は、これらのマイコン10、制御IC20および各種回路を収容する筐体5aを備える。筐体5aには、高電位側端子5bおよび低電位側端子5cが設けられている。高電位側端子5bは、電磁コイル1aの高電位側と配線で接続され、低電位側端子5cは、電磁コイル1aの低電位側と配線で接続されている。
本実施形態では、プロセッサ(CPU11)およびメモリ12はマイコン10に内蔵されている(図1参照)。メモリ12に予め記憶されている各種プログラムをCPU11が実行することで、電磁コイル1aへの通電状態を制御(噴射制御)する。
具体的には、マイコン10は、先ず、内燃機関の運転状態に基づき、燃料噴射量の目標値(目標噴射量)および目標噴射開始時期を算出する。上記運転状態の具体例としてはエンジン負荷およびエンジン回転数NEが挙げられる。次に、目標噴射量に対応する電磁コイル1aへの通電時間Tq(図2参照)と、目標噴射開始時期に対応する通電開始時期を算出する。次に、算出した通電時間Tqおよび通電開始時期を指令する噴射指令信号を制御IC20へ出力する。なお、目標噴射量に対応する通電時間Tqは、燃料噴射弁1へ供給される燃料の圧力が高いほど短い時間に設定される。
マイコン10は、1燃焼サイクル中に同一の燃料噴射弁1から複数回燃料を噴射させる多段噴射を実行するか否かの決定と、多段噴射を実行する場合の噴射回数(段数)の算出を、内燃機関の運転状態に基づき実行する。マイコン10は、上記多段噴射を実行している時には多段噴射制御部を提供する。
制御IC20は、マイコン10から出力された噴射指令信号等に基づき、以下に詳述する昇圧回路、放電回路、定電流回路および気筒SW回路の作動を制御する。制御IC20は、車両に搭載されたバッテリの電圧(バッテリ電圧Vb)から所定の制御電圧を生成する、図示しない制御電圧生成回路を有する。例えば、バッテリ電圧Vbは約14Vであり、制御電圧は約5Vである。制御IC20は、後述する各種のスイッチング素子のゲート端子に制御電圧を印加することでスイッチング素子をオン作動させる。
昇圧回路は、バッテリ電圧Vbを昇圧してブースト電圧Vcを生成するための回路であり、昇圧コイル31、昇圧コンデンサ32、昇圧スイッチング素子(昇圧SW33)およびダイオード34を有する。放電回路は放電SW41を有し、放電SW41がオン作動することで、昇圧回路により昇圧されたブースト電圧Vcが電磁コイル1aの高電位側へ印加される。放電SW41をオフさせた状態で昇圧SW33をオン作動させると、昇圧コイル31にエネルギーが蓄積されて、昇圧SW33をオフ作動させると、昇圧コイル31に蓄積されたエネルギーが昇圧コンデンサ32に蓄電される。昇圧SW33がオン作動とオフ作動を繰り返すことにより、オフ作動する毎に昇圧コンデンサ32の電圧、つまりブースト電圧Vcが上昇していく。このように昇圧されて蓄電された電力の電圧がブースト電圧Vcに相当する。
制御IC20は、ブースト電圧Vcを検出する回路である昇圧モニタ21を有する。制御IC20は、昇圧モニタ21で検出されるブースト電圧Vcが所定の値(昇圧設定値)になるまで昇圧SW33のオンオフ作動を繰り返すように制御する。このように、ブースト電圧Vcが昇圧設定値に達した時点で、昇圧コンデンサ32への充電が完了し、昇圧回路は昇圧SW33のオンオフ作動による昇圧を終了させる。
気筒SW回路は、気筒スイッチング素子(気筒SW61)を有する。上述の如く昇圧コンデンサ32への充電が完了した後、気筒SW61および放電SW41をオン作動させると、ブースト電圧Vcが電磁コイル1aの高電位側へ印加され、ブースト電圧Vcによる電流(駆動電流)が電磁コイル1aに流れる。
定電流回路は、定電流スイッチング素子(定電流SW51)およびダイオード52を有する。放電SW41をオフ作動させた状態で気筒SW61および定電流SW51をオン作動させると、バッテリ電圧Vbが電磁コイル1aの高電位側へ印加され、バッテリ電圧Vbによる駆動電流が電磁コイル1aに流れる。
制御IC20は、先述した昇圧モニタ21に加えて、電流モニタ22および電圧モニタ23を有する。電流モニタ22は、電磁コイル1aの低電位側に接続されたシャント抵抗71による電圧降下量を検出することで、駆動電流を検出する。電圧モニタ23は、高電位側端子5bの電圧(高電位側電圧)を検出する。
昇圧SW33、放電SW41、定電流SW51および気筒SW61は、電界効果トランジスタの一種であるMOSFETであり、これらのオンオフ作動は制御IC20により制御される。制御IC20は、昇圧モニタ21、電流モニタ22および電圧モニタ23により検出された値と、マイコン10から出力された先述の噴射指令信号とに基づき、昇圧SW33、放電SW41、定電流SW51および気筒SW61の作動を制御(噴射制御)する。
以下、このような噴射制御による駆動電流等の時間変化について、図2を用いて説明する。図2の上段は、電磁コイル1aへの通電時間Tqにおける駆動電流の変化、つまり電流モニタ22により検出される駆動電流の変化を示す。図2の中段は、通電時間Tqにおける高電位側端子5bの電圧の変化、つまり電圧モニタ23により検出される高電位側電圧の変化を示す。図2の下段は、可動コアに作用する磁気吸引力の変化を示す。
制御IC20は、噴射指令信号が入力されることに先立ち、バッテリ電圧Vbを昇圧設定値まで昇圧させることを完了させて、昇圧コンデンサ32への充電を完了させておく。その後、噴射指令信号が制御IC20へ入力されると、制御IC20は、放電SW41をオン作動させて、昇圧コンデンサ32から電磁コイル1aへの放電を開始させる。つまり、電磁コイル1aへの通電開始時にはブースト電圧Vcを電磁コイル1aに印加させて(図2中段参照)、駆動電流を急上昇させる(図2上段参照)。
その後、制御IC20は、電流モニタ22により検出された駆動電流の値がピーク電流設定値Ithに達するまでブースト電圧Vcによる通電を継続させ、ピーク電流設定値Ithに達したことを検知すると、ブースト電圧Vcによる通電を停止させる。ピーク電流設定値Ithは予め設定された固定値である。ブースト電圧Vcの通電開始から通電停止までの期間、つまり通電時間Tqの開始から駆動電流がピーク電流設定値Ithに達するまでの期間は、ピーク電流駆動期間Taに相当する。
その後、制御IC20は、電流モニタ22により検出された駆動電流の値が第1定電流Iaになるよう、定電流SW51をオンオフ作動させて、駆動電流をデューティ制御する。具体的には、駆動電流が閾値I2にまで下降したら定電流SW51をオン作動させ、閾値I1にまで上昇したら定電流SW51をオフ作動させる。両閾値I1、I2の平均値が第1定電流Iaとなるように両閾値I1、I2は設定されている。
その後、制御IC20は、電流モニタ22により検出された駆動電流の値が第2定電流Ibになるよう、定電流SW51をオンオフ作動させて、駆動電流をデューティ制御する。具体的には、駆動電流が閾値I4にまで下降したら定電流SW51をオン作動させ、閾値I3にまで上昇したら定電流SW51をオフ作動させる。両閾値I3、I4の平均値が第2定電流Ibとなるように両閾値I3、I4は設定されており、第2定電流Ibは第1定電流Iaより小さい値に設定されている。
その後、制御IC20は、電磁コイル1aへの通電開始から通電時間Tqが経過した時点で、定電流SW51および気筒SW61をオフ作動させて、電磁コイル1aへの通電を終了させる。ブースト電圧Vcの通電停止からバッテリ電圧Vbの通電停止までの期間、つまり通電時間Tqのうちピーク電流駆動期間Ta以降の期間は、定電流駆動期間Tbに相当する。定電流駆動期間Tbのうち、第1定電流Iaで制御されている期間は、ピーク電流駆動期間Taの終了時点から、予め設定された所定時間が経過した時点で終了させている。
図2の下段に示すように、電磁コイル1aへの通電開始とともに磁気吸引力は上昇する。磁気吸引力は、ピーク電流駆動期間Taから定電流駆動期間Tbにかけて上昇していき、定電流駆動期間Tb中に一定の値に飽和する。磁気吸引力が上昇する速度は、ピーク電流駆動期間Taに最大となり、ピーク電流駆動期間Taから定電流駆動期間Tbに切り替わると徐々に低下していく。
燃料噴射弁1の制御弁が開弁するのに要する力を必要開弁力Nthと呼ぶ。磁気吸引力が必要開弁力Nthに達した時点(開弁開始時期to)で制御弁が開弁を開始して燃料の噴射が開始される。つまり、通電開始から開弁遅れ時間Tdが経過した時点が開弁開始時期toとなる。図2の例では、開弁開始時期toは、駆動電流がピーク電流設定値Ithに達した時期とほぼ同時期となっている。
要するに、放電SW41は、噴射指令信号に基づきオン作動することで、ブースト電圧Vcを電磁コイル1aへ印加開始させて制御弁の開弁作動を開始させる。その後、放電SW41は、駆動電流がピーク電流設定値Ithにまで上昇したことに伴いオフ作動することで、ブースト電圧Vcの印加を終了させる。このように機能する放電SW41は、ブースト電圧Vcの印加開始と終了を制御することで、ピーク電流駆動期間Taを制御する「ピーク電流制御部」に相当する。
定電流SW51は、ブースト電圧Vcの印加終了の後、バッテリ電圧Vbによる駆動電流を所定の定電流、つまり第1定電流Iaおよび第2定電流Ibに維持させるようにオンオフ作動を繰り返すことで、制御弁の開弁状態を維持させる。このように機能する定電流SW51は、ブースト電圧Vcの印加終了後に定電流を維持させるように駆動電流を制御する「定電流制御部」に相当する。
ここで、制御IC20は、以下に説明するピーク検出部および昇圧設定値変更部を有する。ピーク検出部は、後述する図4のステップS40の処理を実行している時の制御IC20に相当し、昇圧設定値変更部は、ステップS50の処理を実行している時の制御IC20に相当する。
ピーク検出部は、先述した電圧モニタ23により検出された高電位側電圧の変化に基づき、ピーク電流駆動期間Taを検出する。具体的には、ピーク検出部は、電圧モニタ23により検出された高電位側電圧が所定電圧Vth以上であるか否かを判定し、所定電圧Vth以上であると判定されている期間をピーク電流駆動期間Taとして検出する。
所定電圧Vthは、図2の中段に示すように、ブースト電圧Vcよりも小さい値、かつ、バッテリ電圧Vbよりも大きい値に設定されている。これにより、ピーク電流駆動期間Taの開始時点では、検出される高電位側電圧が所定電圧Vth未満(ゼロ)との判定結果から、所定電圧Vth以上(ブースト電圧Vc)との判定結果に変化する。また、ピーク電流駆動期間Taの終了時点では、検出される高電位側電圧が所定電圧Vth以上(ブースト電圧Vc)との判定結果から、所定電圧Vth未満(バッテリ電圧Vb)との判定結果に変化する。
先述した通り、制御IC20は、昇圧モニタ21で検出されるブースト電圧Vcが所定の値(昇圧設定値)になるまで昇圧SW33のオンオフ作動を繰り返すように制御する。この昇圧設定値は、昇圧設定値変更部により変更される。具体的には、昇圧設定値変更部は、ピーク検出部により検出されたピーク電流駆動期間Taが長いほど、昇圧設定値を高くするように変更する。以下、このように昇圧設定値を変更することによる技術的意義について説明する。
本実施形態に反して昇圧設定値を変更させない場合には、図2の上段中の点線に示すように、ピーク電流駆動期間Taにおける駆動電流の上昇速度は、温度環境に応じてばらつく。そうすると、図2の下段中の点線に示すように、磁気吸引力の上昇速度がばらつくので、磁気吸引力が必要開弁力Nthに達する時期がばらつく。つまり、開弁開始時期toがばらつくことになる。例えば、駆動電流の上昇速度が遅くなると、磁気吸引力の上昇速度が遅くなり、開弁開始時期toが遅くなる。
そして、要求噴射量に応じて設定される通電時間Tqは、環境温度に拘らず設定される。そのため、図3の中段に示すように、低温環境であることに起因して駆動電流の上昇速度が速くなり、その結果ピーク電流駆動期間Taが短くなると、その短くなった分だけ定電流駆動期間Tbが長くなる。したがって、同じ通電時間Tqであっても実際の開弁期間が長くなるので、要求噴射量に対する実際の噴射量が多くなる。また、図3の下段に示すように、高温環境であることに起因して駆動電流の上昇速度が遅くなり、その結果ピーク電流駆動期間Taが長くなると、その長くなった分だけ定電流駆動期間Tbが短くなる。したがって、同じ通電時間Tqであっても実際の開弁期間が短くなるので、要求噴射量に対する実際の噴射量が少なくなる。
なお、上記温度環境の具体例として、内燃機関の温度上昇に伴い燃料噴射弁1の温度が上昇して、燃料噴射弁1に搭載されている電磁コイル1a等の電気抵抗が高くなることが挙げられる。また、制御装置5が備える電子部品の発熱に伴い、筐体5a内において、駆動電流が流れる部分の電気抵抗が高くなることが挙げられる。燃料噴射弁1の温度と筐体5a内の温度とは異なり、これら各々の温度が駆動電流の上昇速度に影響を与えている。そして、これらに例示されるように高温環境で電気抵抗が高くなると、駆動電流の上昇速度が遅くなる。一方、低温環境で電気抵抗が低くなると、駆動電流の上昇速度が速くなる。そして、駆動電流の上昇速度が遅いということはピーク電流駆動期間Taが長いことを意味する。
これに対し本実施形態では、上述したピーク検出部および昇圧設定値変更部は、ピーク電流駆動期間Taが長いほど昇圧設定値を高い値に変更する。つまり、今回の噴射で検出されたピーク電流駆動期間Taが長いほど、次回の噴射に用いるブースト電圧Vcを高くする。そのため、次回の噴射に係る駆動電流の上昇速度は、所望の上昇速度に近づくように是正される。よって、図2の点線に示す如く駆動電流の上昇速度が温度環境に応じてばらつくことが抑制され、磁気吸引力が必要開弁力Nthに達する時期がばらつくことも抑制される。つまり、開弁開始時期toがばらつくことが抑制される。
図4に示す、昇圧設定値を変更する処理は、制御IC20により所定周期で繰り返し実行されるものであり、制御装置5へ電源投入されている期間に常時実行される。先ず、図4のステップS10では、制御装置5への電源投入がオフからオンに切り替わったか否かを判定する。
電源投入がオフからオンに切り替わったと判定された場合、続くステップS20において、前回のステップS50による設定変更処理で変更された昇圧設定値を、初期値にリセットする。このようにステップS20でのリセット処理を実行している時の制御IC20は、電磁コイル1aへの通電が可能となるように制御装置5へ電源投入した時点で昇圧設定値をリセットさせておく「リセット部」に相当する。電源投入がオンに切り替わったと判定されていない場合には、上記リセットを実行することなく、次のステップS30の処理に進む。
ステップS30では、放電SW41がオフからオンに切り替わったか否かを判定する。放電SW41がオフからオンに切り替わったと判定された場合、続くステップS40(ピーク検出部)において、電圧モニタ23により検出された高電位側電圧の変化と所定電圧Vthとの比較に基づき、先述したようにピーク電流駆動期間Taを検出する。
続くステップS50(昇圧設定値変更部)では、ステップS40で検出されたピーク電流駆動期間Taが長いほど昇圧設定値を高い値に変更し、ピーク電流駆動期間Taが短いほど昇圧設定値を低い値に変更する。詳細には、以下に説明するステップS51、S52、S53、S54の処理により昇圧設定値は変更される。
先ず、ステップS51では、ステップS40で検出されたピーク電流駆動期間Taが、予め設定された所定範囲内であるか否かを判定する。ピーク電流駆動期間Taが所定範囲内であると判定された場合、昇圧設定値を変更させることなくステップS50の処理を終了させる。ピーク電流駆動期間Taが所定範囲内でないと判定され、かつ、続くステップS52にてピーク電流駆動期間Taが所定範囲より長いと肯定判定された場合、続くステップS53において、予め設定された所定量だけ昇圧設定値を上げる。一方、ステップS52にてピーク電流駆動期間Taが所定範囲より長くない(短い)と否定判定された場合、続くステップS54において、予め設定された所定量だけ昇圧設定値を下げる。なお、ステップS53での所定量とステップS54での所定量は同じ大きさに設定されている。
要するに、今回検出されたピーク電流駆動期間Taが前回の検出結果に対して変化していたとしても、そのピーク電流駆動期間Taの値が所定範囲内であれば、昇圧設定値を変更させない。つまり、ステップS50による昇圧設定値変更部は、ステップS40にて今回検出されたピーク電流駆動期間Taが所定範囲を超えたことを条件として、昇圧設定値を変更する。
以上に説明した通り、本実施形態に係る制御装置5は、放電SW41によるピーク電流制御部と、定電流SW51による定電流制御部と、制御IC20によるピーク検出部および昇圧設定値変更部と、を備える。昇圧設定値変更部は、ピーク検出部により検出されたピーク電流駆動期間Taが長いほど、ブースト電圧Vcの設定値(昇圧設定値)を高くするように変更する。
ピーク電流駆動期間Taが長いということは、駆動電流がピーク電流設定値Ithまで上昇する速度が遅く、開弁開始時期toが遅くなっていることを意味する。したがって、ピーク電流駆動期間Taを検出すれば、実際の開弁開始時期toや開弁期間(噴射量)を検出することなく、これら開弁開始時期toや噴射量と相関の高い物理量を取得できると言える。また、環境温度に応じてブースト電圧Vcの値を調整することで、環境温度に起因して駆動電流の上昇速度が変化することによる開弁開始時期toや噴射量のばらつきを抑制できる。
これらの点を鑑み、本実施形態では、ピーク電流駆動期間Taを検出し、その検出結果に応じてブースト電圧Vcの設定値(昇圧設定値)を変更するので、環境温度に応じて駆動電流の上昇速度が変化することを抑制できる。よって、環境温度に起因して開弁開始時期toや噴射量がばらつくことを抑制できる。それでいて、環境温度に応じて通電時間Tqを変更させることを必要としないので、多段噴射する場合の噴射間インターバル短縮を妨げないようにしつつ、噴射量および噴射開始時期のばらつきを抑制できる。
さらに本実施形態では、電磁コイル1aの高電位側の端子電圧を検出する電圧モニタ23を備え、ピーク検出部は、電圧モニタ23により検出された電圧の変化に基づきピーク電流駆動期間Taを検出する。そのため、以下に説明する第1および第2の手法でピーク電流駆動期間Taを推定する場合には推定誤差が大きくなるのに対し、本実施形態によれば、ピーク電流駆動期間Taを高精度で検出できる。
上記第1の手法では、制御IC20が放電SW41のオンオフ作動を指令したタイミングに基づき、ピーク電流駆動期間Taを推定する。しかしながら、例えば放電SW41のゲート電圧に対するオンオフ作動の応答遅れ等、各種の応答遅れが存在することに起因して、ピーク電流駆動期間Taの推定誤差が生じる。
上記第2の手法では、電流モニタ22により検出された駆動電流がピーク電流設定値Ithに達したことを検出したタイミングに基づき、ピーク電流駆動期間Taを推定する。しかしながら、例えば駆動電流がピーク電流設定値Ithに達したことを検出してから、実際に放電SW41がオフ作動するまでの応答遅れ等、各種の応答遅れが存在することに起因して、ピーク電流駆動期間Taの推定誤差が生じる。
さらに本実施形態では、昇圧設定値変更部は、ピーク検出部により検出されたピーク電流駆動期間Taが所定範囲を超えたことを条件として昇圧設定値を変更する。ここで、本実施形態に反して、所定範囲を超えていない場合であっても、ピーク電流駆動期間Taが検出される都度に昇圧設定値を変更する場合、制御IC20の演算処理負荷が大きくなる。その結果、制御IC20での消費電力や発熱が大きくなる。これに対し本実施形態では、所定範囲を超えたことを条件として昇圧設定値を変更するので、制御IC20の演算処理負荷を抑制でき、消費電力や発熱を抑制できる。
さらに本実施形態では、電磁コイル1aへの通電が可能となるように制御装置5に電源投入した時点で昇圧設定値をリセットさせておくリセット部を備える。電源投入時点での温度環境は、前回の昇圧設定値を変更させた時の温度環境よりも低温になっている蓋然性が高い。そのため、上記リセット部を備える本実施形態によれば、電源投入時点において、実際の温度環境に適さない昇圧設定値でブースト電圧を生成してしまうことを抑制できる。
(他の実施形態)
上述した実施形態について、以下に例示するように種々変形して実施することが可能である。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
上記第1実施形態に係る制御装置5は、電源投入時点で昇圧設定値をリセットさせておくリセット部を備えているが、そのリセット部を廃止してもよい。或いは、前回の電源オフから今回の電源投入時点までのインターバルが所定時間未満であれば、温度環境がそれほど変化していないとみなしてリセットを禁止し、所定時間以上である場合にリセットを実行させてもよい。
上記第1実施形態では、ピーク電流設定値Ithを固定して設定しているが、バッテリ電圧Vbや昇圧設定値、ピーク電流駆動期間Ta等に応じてピーク電流設定値Ithを可変設定してもよい。
上記第1実施形態では、電磁コイル1aの高電位側の端子電圧を検出する電圧モニタ23を備え、ピーク検出部は、電圧モニタ23により検出された電圧の変化に基づきピーク電流駆動期間Taを検出する。これに対し、ピーク検出部は以下のようにピーク電流駆動期間Taを推定し、その推定結果を検出値としてもよい。すなわち、制御IC20が放電SW41のオン作動を指令している期間を、ピーク電流駆動期間Taとして検出してもよい。或いは、電流モニタ22により検出された駆動電流がピーク電流設定値Ithに達したことを検出したタイミングに基づき、ピーク電流駆動期間Taを推定してもよい。
上記各実施形態では、図4の処理を制御IC20が実行しているが、マイコン10が実行してもよいし、マイコン10および制御IC20の両方で実行してもよい。つまり、ピーク検出部および昇圧設定値変更部は、制御IC20により提供される場合に限らず、マイコン10により提供されてもよいし、制御IC20およびマイコン10の両方で提供されてもよい。
上記各実施形態に係る燃料噴射制御装置は、圧縮自己着火式の内燃機関(ディーゼルエンジン)に搭載された燃料噴射弁1を制御対象としている。これに対し、点火式の内燃機関(ガソリンエンジン)であって、燃焼室へ直接燃料を噴射する直噴式の内燃機関に搭載された燃料噴射弁を制御対象としてもよい。
1 燃料噴射弁、 21 昇圧回路、 23 電圧モニタ、 31、32、33、34 昇圧回路、 41 ピーク電流制御部、 51 定電流制御部、 Ith ピーク電流設定値、 S20 リセット部、 S40 ピーク検出部、 S50 昇圧設定値変更部、 Ta ピーク電流駆動期間。

Claims (5)

  1. 燃料噴射弁(1)への通電状態を制御することにより燃料噴射を制御する燃料噴射制御装置であって、
    バッテリ電圧を昇圧設定値に昇圧する昇圧回路(21、31、32、33、34)と、
    前記燃料噴射弁の開弁作動を開始させるべく、前記昇圧回路により昇圧されたブースト電圧を前記燃料噴射弁へ印加開始し、その後、前記燃料噴射弁に流れる電流がピーク電流設定値(Ith)にまで上昇したことに伴い前記ブースト電圧の印加を終了させるピーク電流制御部(41)と、
    前記ブースト電圧の印加終了の後、前記燃料噴射弁の開弁状態を維持させるべく、前記燃料噴射弁に流れる電流を所定の定電流に維持させるように、前記バッテリ電圧を前記燃料噴射弁へ印加する定電流制御部(51)と、
    前記ピーク電流制御部により前記ブースト電圧が印加されている期間であるピーク電流駆動期間(Ta)を検出するピーク検出部(S40)と、
    前記ピーク検出部により検出された前記ピーク電流駆動期間が長いほど前記昇圧設定値を高くするよう、前記昇圧設定値を変更する昇圧設定値変更部(S50)と、
    を備える燃料噴射制御装置。
  2. 前記燃料噴射弁の高電位側の電圧を検出する電圧モニタ(23)を備え、
    前記ピーク検出部は、前記電圧モニタにより検出された電圧の変化に基づき前記ピーク電流駆動期間を検出する請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
  3. 前記ピーク電流制御部は、前記燃料噴射弁への通電オンオフを切り替えるスイッチング素子であり、
    前記ピーク検出部は、前記スイッチング素子をオン作動させる指令を出力している期間を、前記ピーク電流駆動期間として検出する請求項1に記載の燃料噴射制御装置。
  4. 前記昇圧設定値変更部は、前記ピーク検出部により検出された前記ピーク電流駆動期間が所定範囲を超えたことを条件として前記昇圧設定値を変更する請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。
  5. 前記燃料噴射弁への通電が可能となるように電源投入した時点では、前記昇圧設定値をリセットさせておくリセット部(S20)を備える請求項1〜4のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。
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