以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態に係る洗浄ブラシが組み込まれた基板処理装置10を示す縦断面図、図2は基板処理装置10の要部を切断して示す斜視図、図3は基板処理装置10に組み込まれた洗浄ブラシユニット(洗浄部)60を示す平面図、図4は洗浄ブラシユニット60に設けられた洗浄ブラシ61と半導体ウェーハWとの関係を模式的に示す説明図、図5は洗浄ブラシ61を下方から示す斜視図である。
なお、これらの図中Paはパーティクルサイズ(粒径)10nm〜300nm未満のパーティクル、Pbはパーティクルサイズ300nm〜500nmのパーティクルを示している。パーティクルPa,Pbは、半導体ウェーハWに付着するゴミであり、ただ単純に半導体ウェーハW表面に載っているものの他、半導体ウェーハW基板にひっかかる状態で存在しているものも含まれている。このため、半導体ウェーハW上に洗浄液を流すことによる、洗浄液の流れによる勢いの力だけでは、除去出来ない性質を有している。パーティクルPa,Pbは、ゴミの場合や、前工程のCMP処理(化学的機械的研磨処理)で用いた研磨材であるスラリー(コロイダルシリカ)や研磨による削りかすである。
図1に示す本発明の一実施形態の基板処理装置10は処理容器11を備えている。この処理容器11は上面が開放した有底筒状の本体部11aと、この本体部11aに対してスライド自在に設けられ周壁が傾斜した円錐筒状の覆い部11bとを備え、この覆い部11bは図示しない駆動機構によって上下方向にスライドさせることができる。
処理容器11の本体部11a底部には、周辺部に複数の排出管12の一端が接続され、中心部には周囲がフランジ13によって囲まれた挿通孔14が形成されている。この挿通孔14には支持軸15が挿通されている。支持軸15の上部は処理容器11の内部に突出し、下端部は処理容器11の下方に配置されたベース板16に固定されている。排出管12は図示しない廃液タンクに連通している。
支持軸15には回転チャック(保持部)21が半導体ウェーハWの法線方向を基板回転軸として回転自在に支持されている。回転チャック21は中心部に通孔22aが設けられた円盤状のベース22を有する。このベース22の下面、つまり通孔22aと対応する位置には筒状の支持部23が中心軸を鉛直方向にして設けられている。この支持部23は支持軸15の外周側に嵌め込まれていて、支持軸15の上部と下部とはそれぞれ軸受24によって回転自在に支持されている。
支持部23の下端部の外周面には従動プーリ25が設けられている。ベース板16にはモータ26が設けられ、このモータ26の回転軸26aには駆動プーリ27が嵌め込まれている。この駆動プーリ27と従動プーリ25とにはベルト28が張り渡されている。したがって、モータ26が作動すれば、支持部23、つまり回転チャック21が回転駆動される。
回転チャック21のベース22の上面には周方向に4本の支柱29が上方に向けて設けられている。各支柱29の上端部には支持ピン31aと、この支持ピン31aよりも外方で、しかも支持ピン31aよりも背の高い係合ピン31bとが突き出て設けられている。
支柱29の上端には、基板としての半導体ウェーハWが周辺部の下面を支持ピン31aに支持され、外周面を係合ピン31bに係合させて着脱可能に保持される。したがって、半導体ウェーハWは回転チャック21と一体的に回転される。
支持軸15には、上端に支持軸15よりも大径で、円錐状をなした頭部40が設けられている。この支持軸15には、先端を頭部40の上面に開口させた窒素ガス等の不活性ガスのガス供給路40aと、先端を同じく頭部40の上面に開口させた、洗浄液Lの洗浄液供給路40bとが軸方向に沿って形成されている。ガス供給路40aは図示しないガス供給源に連通し、洗浄液供給路40bは同じく図示しない洗浄液Lの供給源に連通している。
ガス供給路40aに供給された不活性ガスは支柱29に保持された半導体ウェーハWに向かって噴出され、洗浄液供給路40bに供給された洗浄液Lはその先端のノズル孔40cから半導体ウェーハWの下面に向かって噴出される。
回転チャック21に保持される半導体ウェーハWの被洗浄面(上面)Wa側には、この半導体ウェーハWの上面を洗浄するため円形状の洗浄ブラシユニット60が配置されている。洗浄ブラシユニット60は、半導体ウェーハWの被洗浄面Waにおいて対向配置される洗浄ブラシ61を着脱自在に保持している。洗浄ブラシ61は、円盤状のブラシホルダ62を有している。このブラシホルダ62の表面には、図5に示すように、1つの縦ブラシ63が中央に、その周囲に6つの横ブラシ64が周方向に沿って配置されている。なお、本実施形態において、縦ブラシ63は、第1のブラシを構成し、横ブラシ64は、第2のブラシを構成するものである。
縦ブラシ63及び横ブラシ64は、ブロック状で円柱状に形成されており、その軸心方向は半導体ウェーハWの被洗浄面Waに対して垂直になるように、ブラシホルダ62に嵌め込んで設けられている。なお、縦ブラシ63及び横ブラシ64における半導体ウェーハWの被処理面Waに対向する面は、半導体ウェーハWの被処理面Waに対して平行に形成されている。洗浄ブラシ61は揺動機構42によって半導体ウェーハWの径方向に沿って揺動される。つまり、揺動機構42は中空筒状の水平アーム43を有する。この水平アーム43の先端部内には駆動源としての回転モータ44が回転軸44aを垂直にして内蔵されていて、その回転軸44aに洗浄ブラシユニット60が取り付けられている。
縦ブラシ63は、フッ素系樹脂の1つである多孔質PTFE材(ポリテトラフルオロエチレン)の繊維(以下、「PTFE繊維」と称する)により形成されている。縦ブラシ63は、PTFE繊維方向が縦に形成されている。具体的には、図6に示すように、縦ブラシ63の繊維が伸びる方向は、半導体ウェーハWの上面に対して全体的に見て垂直に配置されている。すなわち、半導体ウェーハWの上面に対して、全体的に見て垂直方向に繊維(フィブリル)が伸びて形成されている。なお、後述するように繊維を繋ぐノード(島状のもの)が半導体ウェーハWの上面に対して全体的に見て平行に形成されていると言い換えることができる。この場合、半導体ウェーハW上面と触れる面における各繊維間の隙間は一定の間隔に形成されているのではなく、不規則の間隔で形成されており、例えば、10nm〜300nmと様々に形成される。
図6の拡大図では、縦ブラシ63の要部、すなわち、多孔質PTFE材100を拡大して示している。多孔質PTFE材100は、島状に分布した複数のノード101と、これらノード101から、その延伸方向(横)に配向された複数の繊維102とを含んでいる。各繊維102間には、隙間103が存在する。隙間103は、連続気孔あるいは独立気孔になり得る。
横ブラシ64は、多孔質PTFE材100の繊維方向が横に形成されている。具体的には、図7に示すように、半導体ウェーハWの上面に対して、平行に繊維(フィブリル)が伸びて形成されている。繊維を繋ぐノード(島状のもの)が半導体ウェーハWの上面に対して全体的に見て垂直方向に形成されていると言い換えることができる。この場合、半導体ウェーハW上面と触れる面における各ノード間の隙間(各ノードから伸びる繊維の長さ)は一定の間隔に形成されているのではなく、不規則の間隔で形成されており、例えば、300nm〜500nmの大きさで形成される。
図7の拡大図では、横ブラシ64の要部、すなわち多孔質PTFE材100を拡大して示している。多孔質PTFE材100は、島状に分布した複数のノード101と、これらノード101から、その延伸方向(縦)に配向された複数の繊維102とを含んでいる。各繊維102間には、隙間103が存在する。隙間103は、連続気孔あるいは独立気孔になり得る。
半導体ウェーハW上面に存在するパーティクルが縦ブラシ63と横ブラシ64に入り込む。入り込んだパーティクルが、縦ブラシ63と横ブラシ64の底面(半導体ウェーハWとの接触面)の繊維と繊維の間に引っかかる。この引っかかったパーティクルは、半導体ウェーハWと相対移動する縦ブラシ63と横ブラシ64によって引っ張られて半導体ウェーハW上面から剥ぎ取られる。なお、縦ブラシ63と横ブラシ64の底面と半導体ウェーハW表面との間に入り込まないサイズのパーティクルは、縦ブラシ63と横ブラシ64の端面に当たる。この当たったパーティクルは、縦ブラシ63と横ブラシ64の揺動により、ほうきで掃かれるように半導体ウェーハWの端に移動させられる。
まず、縦ブラシ63と横ブラシ64によって、半導体ウェーハW上面のパーティクルが除去される場合、除去するパーティクルのサイズが異なる点について考察する。すなわち、多孔質PTFE材100の繊維方向を縦にした場合は、縦ブラシ63の繊維同士の間隔が不規則に形成されているため、半導体ウェーハW上面と触れる面における繊維同士の隙間の大きさも様々な大きさ(10nm〜300nm)に形成されている。繊維と繊維の間隔が狭い(300nm未満)箇所は、繊維同士の間隔の大きさに合う、小さいサイズのパーティクルPaが入り込むことができる。したがって、小さなパーティクルPaを除去する除去率が高いと考えられる。
一方、PTFE繊維方向を横にした場合は、横ブラシ64のノード間の間隔が縦ブラシ63における繊維同士の間隔より大きく、不規則に形成されているため、半導体ウェーハW上面と触れる面におけるノード同士の隙間(ノード間に形成される繊維同士の隙間)の大きさも様々な大きさ(300nm〜500nm)に形成されている。この隙間に、ノード間の間隔の大きさに合う、大きいサイズのパーティクルPbが入り込むことができる。したがって、大きなパーティクルPbを除去する除去率が高いと考えられる。
水平アーム43には図示しない洗浄液Lの供給源に接続されたノズル管(供給部)45が挿通されている。このノズル管45の先端部は水平アーム43の先端部から下方に向かって導出され、その先端開口はブラシホルダ62の外周面に向けられている。したがって、ノズル管45により洗浄液Lがブラシホルダ62の径方向外方から供給されるようになっている。
洗浄液Lは、例えば、アンモニア、硫酸、過酸化水素水、オゾン水、アンモニアと過酸化水素水の混合液(APM)、界面活性剤のいずれかを含む薬液、若しくは、水・超純水である。洗浄液Lは加熱されている場合がある。このように洗浄液Lとして薬液を用いたり、加熱したりすることで、パーティクルの除去力を増加させることができる。なお、上述した縦ブラシ63及び横ブラシ64の主成分である多孔質PTFE材は、耐熱、耐薬液性に優れており、洗浄液Lによって劣化することが少ない。このため、各種の薬液及び加熱された洗浄液Lを用いることができる。
なお、この実施形態においては、図3に示すようにノズル管45から洗浄ブラシユニット60に向かって供給される洗浄液Lの供給方向Aは、洗浄ブラシユニット60のほぼ接線方向で、しかも、洗浄ブラシユニット60の回転方向Bに沿う方向に設定されている。また、洗浄ブラシユニット60の回転方向は、半導体ウェーハWの回転方向と同方向または逆方向のいずれであってもよい。
水平アーム43の端部には軸線を垂直にした揺動軸46の上端が連結されている。この揺動軸46の下端部はベース板16の下方に突出され、支持体47に揺動自在に支持されている。
支持体47の一側面には一対のガイド48が上下方向に沿って設けられ、このガイド48はベース板16の下面に設けられた取付板49の一側面に上下方向に沿って設けられたレール50にスライド自在に係合している。
取付板49の支持体47の下方の部分には上下駆動モータ51が設けられている。この上下駆動モータ51は、例えば、ねじ軸等の駆動軸52を有し、この駆動軸52は支持体47に嵌め合されている。
したがって、この駆動軸52が上下駆動モータ51によって回転駆動されると、支持体47がレール50に沿って上下駆動されるようになっている。つまり、洗浄ブラシユニット60が支持体47、揺動軸46及び水平アーム43を介して上下駆動される。
支持体47の他側には揺動駆動源53が取り付けられている。この揺動駆動源53は収納ボックス54及びこの収納ボックス54の下面に設けられたモータ55を有する。収納ボックス54内にはモータ55によって回転駆動される図示しない駆動歯車が収容されている。
揺動軸46の支持体47によって支持された下端部には図示しない従動歯車が設けられ、この従動歯車と駆動歯車との間にはベルトが張り渡されている。したがって、揺動軸46は、揺動駆動源53のモータ55が作動することで所定の角度範囲内で揺動する。
揺動軸46が所定の角度範囲内で揺動され、その揺動によって水平アーム43が揺動すると、この水平アーム43の先端部に設けられた洗浄ブラシユニット60は、図3に実線と破線で示すように回転チャック21に保持された半導体ウェーハWの径方向中心部と周辺部との間で揺動されるようになっている。この揺動範囲を図3に矢印Dで示す。
洗浄ブラシユニット60を回転駆動する回転モータ44は制御装置90に接続されている。この制御装置90は回転モータ44に給電すると共に、洗浄ブラシユニット60を上下駆動モータ51によって上下駆動させる。制御装置90は、各機構のパラメータ、例えば、押し付け量、回転数、揺動速度、洗浄液Lの吐出量を適宜制御する。
このように構成された基板処理装置10によって、例えばCMP処理が行われた半導体ウェーハWを洗浄処理する場合について説明する。CMP処理によって半導体ウェーハW上面には有機物を含むスラリーや半導体ウェーハWの削りくず等の残留物が残留しており、半導体ウェーハW上面に付着する。まず、洗浄ブラシユニット60を処理容器11の外方に退避させた状態で回転チャック21に半導体ウェーハWを保持し、モータ26を作動させて回転チャック21とともに半導体ウェーハWを回転させる。
ついで、洗浄ブラシユニット60を退避位置から半導体ウェーハWの上方に移動させる。回転モータ44を作動させて洗浄ブラシユニット60を回転させるとともに、支持軸15の洗浄液供給路40bとノズル管45とから半導体ウェーハWの下面と上面とに純水等の洗浄液Lを供給しながら上下駆動モータ51を作動させて洗浄ブラシユニット60を下降させる。洗浄液Lとしてオゾン水を用いた場合には、有機物を含むスラリーが分解されて、スラリーに含まれた粒状のコロイダルシリカ等が生ずる。また、揺動駆動源53を作動させて水平アーム43、つまり洗浄ブラシユニット60を半導体ウェーハWの上面で図3に矢印Dで示すように揺動させる。なお、揺動速度は、半導体ウェーハW上面に残留する残留物の粘度に応じて適宜調整することができる。例えば、有機物を含むスラリーの付着力が強い場合は、揺動速度や半導体ウェーハWの回転速度を遅くする等の制御を行う。
洗浄ブラシ61が上下駆動モータ51によって下降して、半導体ウェーハWの被洗浄面Waに縦ブラシ63及び横ブラシ64が接触する。半導体ウェーハWの上面は縦ブラシ63及び横ブラシ64によって、その上面に付着した小さなパーティクルPaと比較的大きなパーティクルPbを同時に除去することができる。これにより、半導体ウェーハWの上面に付着する様々なサイズのパーティクルを除去ができるので、ウェーハW上面における清浄度を向上させることができる。また、ブラシホルダ62に設けられる横ブラシ64が縦ブラシ63よりも外周側に位置しているため、大きなパーティクルPbが先に除去され、その後、中央に位置する縦ブラシ63によって小さなパーティクルPaが除去される。縦ブラシ63に接触する大きなパーティクルPbを減らすことができることになるため、縦ブラシ63における半導体ウェーハW上面と触れる面に大きなパーティクルPbが引っ掛かってパーティクルPbを引き摺る現象を回避でき、本来の除去対象である小さなパーティクルPaを除去することができる。
なお、洗浄ブラシ61は、縦ブラシ63及び横ブラシ64同士に隙間が設けられているため、洗浄液Lが隙間を通って、縦ブラシ63及び横ブラシ64により掃き出されたパーティクルとともに縦ブラシ63及び横ブラシ64の揺動方向の後方に抜ける。
なお、図8に示すように、ブラシホルダ62の中央に位置する縦ブラシ63は横ブラシ64の直径より大きく設定することもできる。これにより、縦ブラシ63における半導体ウェーハの被処理面Waと接触する面の接触面積を増やすことで、小さいパーティクルPaの除去する効果を高めることができる。
縦ブラシ63及び横ブラシ64の主成分は、多孔質PTFE材であるため、薬液や加熱された洗浄液Lに対して、耐熱性・耐薬液性に優れている。
そのため、半導体ウェーハWにCMP処理後、半導体ウェーハW上面の有機物を薬液によって化学的に分解する処理を行いながらスクラブ洗浄することができる。これにより、半導体ウェーハW上面に存在する削りくず等の残留物を除去するだけでなく、半導体ウェーハW上面にある有機物と有機物に含まれる粒状のコロイダルシリカ等も同時に除去することが可能となり、ウェーハW上面における洗浄効率を向上させることができる。また、薬液によって化学的に分解された有機物を、縦ブラシ63及び横ブラシ64により掃き出すことが可能となり、ウェーハW上面における洗浄能力を向上させることができる。
以上説明したように、上記の実施形態によれば、半導体ウェーハWの被洗浄面Waに対してPTFE繊維方向を縦(垂直方向)及び横(平行方向)にして縦ブラシ63及び横ブラシ64を接触させて半導体ウェーハWの径方向に沿って揺動することで、小さなパーティクルPaから比較的大きなパーティクルPbまで除去することができる。したがって、半導体ウェーハWの被洗浄面Waにおける高い清浄度を有することができる。また、耐薬液性を有するPTFE材料を用いた縦ブラシ63及び横ブラシ64を用いているため、オゾンや酸等の例えば有機物を含むスラリーを分解できる薬液を用いることができる。したがって、薬液により分解されるスラリーから生ずる様々なサイズの粒状物(コロイダルシリカ等)を除去することができる。
なお、ブラシホルダ62に設けられる縦ブラシ63や横ブラシ64の個数及び配置パターン、さらにブラシの材質は上記のものに限定されない。例えば、前工程で生ずる小さいパーティクルPaと大きいパーティクルPbの割合やその材質、半導体ウェーハW及び洗浄液Lの種類に応じて、半導体ウェーハWの被洗浄面Waを十分に洗浄処理できるものが選択される。以下、図8〜図13において洗浄ブラシ61の変形例の主な例を示す。
図9は、洗浄ブラシ61の変形例に係る洗浄ブラシ61Aを下面側から示す説明図である。洗浄ブラシ61Aは、縦ブラシ63を中央に配置し、その周囲を3つの縦ブラシ63及び3つの横ブラシ64を周方向に沿って交互に配置している。この場合は、縦ブラシ63が半導体ウェーハWの被洗浄面Waに接触する合計接触面積が、横ブラシ64が半導体ウェーハWの被洗浄面Waに接触する合計接触面積より大きく設定されている。これにより、多くの小さいパーティクルPaを除去することができる。したがって、半導体ウェーハWの被処理面Waにおいて、小さいパーティクルPaが比較的多い場合に適切である。
図10は、洗浄ブラシ61の変形例に係る洗浄ブラシ61Bを下面側から示す説明図である。洗浄ブラシ61Bは、横ブラシ64を中央に配置し、その周囲を3つの縦ブラシ63及び3つの横ブラシ64を周方向に沿って交互に配置している。この場合は、縦ブラシ63が半導体ウェーハWの被洗浄面Waに接触する合計接触面積より横ブラシ64が半導体ウェーハWの被洗浄面Waに接触する合計接触面積が大きく設定されている。これにより、多くの大きなパーティクルPbを除去することができる。したがって、半導体ウェーハWの被処理面Waにおいて、大きいパーティクルPbが比較的多い場合に適切である。
図11は、洗浄ブラシ61の変形例に係る洗浄ブラシ61Cを下面側から示す説明図である。洗浄ブラシ61Cは、縦ブラシ63を中央に配置し、その周囲を4つの縦ブラシ63及び2つの横ブラシ64を周方向に沿って配置している。この場合は、縦ブラシ63が半導体ウェーハWの被洗浄面Waに接触する合計接触面積が、横ブラシ64が半導体ウェーハWの被洗浄面Waに接触する合計接触面積より大きく設定されている。これにより、より多くの小さいパーティクルPaを除去することができる。したがって、半導体ウェーハWの被処理面Waにおいて、小さいパーティクルPaが多い場合に適切である。
図12は、洗浄ブラシ61の変形例に係る洗浄ブラシ61Eを下面側から示す説明図である。洗浄ブラシ61Eは、縦ブラシ63を中央に配置し、その周囲を2つの縦ブラシ63、2つの横ブラシ64、及び、2つのPVAブラシ65を周方向に沿って交互に配置している。PVAブラシ65は、円柱状のスポンジ状のブラシであり、上述した横ブラシ64に形成される隙間より大きい隙間が形成されているため、上述した大きいパーティクルPbよりさらに大きいパーティクル(例えば、直径500nm以上)を効率的に除去することができる。PVA(ポリビニルアルコール)はPTFEとは異なる材料であり、上述した薬液に対して弱いため、洗浄液Lとしては水・超純水を用いる。
図13は、洗浄ブラシ61の変形例に係る洗浄ブラシ61Fを下面側から示す説明図である。洗浄ブラシ61Fは、縦ブラシ63を中央に配置し、その周囲を2つの縦ブラシ63、2つの横ブラシ64、及び、2つの毛ブラシ66を周方向に沿って交互に配置している。毛ブラシ66は、上述した大きいパーティクルPbよりさらに大きいパーティクルを効率的に除去することができる。毛ブラシ66の材質は、例えば、PTFEとは異なる材質を用いる。例えば、PP(ポリプロピレン)や疎水性で耐薬液性を有するPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で形成されている。PPは上述した薬液に対して弱いため、洗浄液Lとしては水・超純水を用いる。毛ブラシ66の材質は、樹脂材料に限られない。図14に示すように、毛ブラシ66を用いることで、凹状の半導体ウェーハWの溝の隅に入ったパーティクルを掻き出すことが容易となる。また、凹凸状のパターンを有した半導体ウェーハWにおいて、パターンの溝に入り込んだパーティクルも掻き出すこともできる。
図15は、本発明の第2実施の形態に係る洗浄ブラシ70を示す側面図、図16は洗浄ブラシ70を示す下面図である。なお、図15及び図16において、図5と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
洗浄ブラシ70は、矩形状のブラシホルダ71と、このブラシホルダ71に2つの縦ブラシ63と3つの横ブラシ64がブラシホルダ71の長手方向に沿って一列に配置されている。なお、ブラシホルダ71の両端に横ブラシ64が配置される。
このように構成された洗浄ブラシ70を用いて、洗浄を行う。すなわち、例えば、往復動機構(不図示)の下端に洗浄ブラシ70を取り付けて、半導体ウェーハWの下面と上面とに純水等の洗浄液Lを供給する。なお、洗浄ブラシ70を回転軸44aに取り付け、回転モータ44を回転させずに、水平アーム43によって揺動させるようにしてもよい。
洗浄ブラシ70の半導体ウェーハWの被洗浄面Waに縦ブラシ63及び横ブラシ64が接触させ、往復動機構を動作させることで、洗浄ブラシ70を半導体ウェーハWの被洗浄面Wa上を往復動させる。半導体ウェーハWの上面は縦ブラシ63及び横ブラシ64によって、その上面に付着したパーティクルが除去される。この時、横ブラシ64が両端に位置しているため、大きなパーティクルPbが先に除去され、その後、中央に位置する縦ブラシ63によって小さなパーティクルPaが除去される。これにより、小さなパーティクルPaを効率的に除去することができる。また、縦ブラシ63に接触する大きなパーティクルPbを減らすことができることになるため、また、縦ブラシ63における半導体ウェーハW上面と触れる面に大きなパーティクルPbが引っ掛かってパーティクルPbを引き摺る現象を回避でき、本来の除去対象である小さなパーティクルPaを除去することができる。
なお、上記の実施形態では、縦ブラシ63及び横ブラシ64を1つのブラシホルダ62に嵌めこんで設けたが、縦ブラシ63と横ブラシ64を別のブラシホルダに分けて設けても良い。つまり、一方のブラシホルダに縦ブラシ63だけを設け、他方のブラシホルダに横ブラシ64だけを設け、それぞれのブラシに対して上述した洗浄ブラシユニット60が構成されることになる。この場合、先に横ブラシ64が設けられた洗浄ブラシユニット60で半導体ウェーハWの被処理面Waを洗浄し、その後、縦ブラシ63が設けられた洗浄ブラシユニット60で半導体ウェーハWの被処理面Waを洗浄する。これにより、上述したように、縦ブラシ63における半導体ウェーハW上面と触れる面に大きなパーティクルPbが引っ掛かってパーティクルPbを引き摺る現象を回避でき、本来の除去対象である小さなパーティクルPaを除去することができる。
図17は、本発明の第3実施の形態に係る洗浄ブラシ80を示す斜視図である。図17において、図5と同一機能部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。洗浄ブラシ80は、円盤状のブラシホルダ81を有している。ブラシホルダ81の中央に洗浄液供給路45Aに接続されたノズル孔82が設けられている。ブラシホルダ81の表面には、図17に示すように、ノズル孔82の周囲を3つの縦ブラシ63及び3つの横ブラシ64を周方向に沿って交互に配置している。
本実施形態においては、ノズル孔82から洗浄液Lを供給することで、縦ブラシ63及び横ブラシ64よって掃き出されたパーティクルを中央から外側に向けて押し流すことができる。なお、この場合、図1におけるノズル管45は無くても良い。
図18は、本発明の第4実施の形態に係るロール洗浄ブラシ221が組み込まれた基板処理装置200を示す縦断面図、図19は、基板処理装置200を示す横断面図、図20は基板処理装置200に組み込まれたロール洗浄ブラシ221を示す斜視図である。
図18及び図19に示すように、基板処理装置200は、洗浄槽201を備えている。図19に示すように洗浄槽201の一側壁には導入口203が形成されている。この導入口203からは、半導体ウェーハWが外部から内部に導入される。洗浄槽201の一側壁に隣接する側壁には洗浄された半導体ウェーハWを搬出するための導出口204が形成されている。
図18及び図19に示すように、洗浄槽201内には、3本の駆動ローラ206及び2本の規制ローラ207が配置されている。駆動ローラ206及び規制ローラ207は、それぞれ軸線を鉛直にして回転自在に、しかも、半導体ウェーハWの周方向に沿って所定の間隔で配設されている。駆動ローラ206は図19中右側、規制ローラ207は図19中左側に配置されている。駆動ローラ206の下端部は、第1の軸受体211によって回転自在に支持されている。第1の軸受体211は、支持板209に固定されて設けられている。
規制ローラ207の下端部は第2の軸受体212によって回転自在に支持されている。第2の軸受体212は支持板209にスライド自在に設けられ、図18に矢印で示すように駆動シリンダ213により駆動ローラ206に対して接離する方向に駆動されるようになっている。
駆動ローラ206は、半導体ウェーハWの周辺部が係合する。規制ローラ207は、半導体ウェーハWの周辺部に接触して係合保持された半導体ウェーハWが径方向にずれ動くのを規制するようになっている。
駆動ローラ206は第1の駆動機構217によって回転駆動されるようになっている。この第1の駆動機構217は図18に示すように支持板209の下方に配置されたモータ218を有する。このモータ218の回転軸218aには駆動プーリ219aが設けられている。この駆動プーリ219aと各駆動ローラ206の下端部にそれぞれ設けられた3つの従動プーリ219bとの間にはベルト220が張り渡されている。したがって、モータ218が作動すれば、ベルト220を介して各駆動ローラ206を回転駆動することができる。
洗浄槽201内には、上下一対のロール洗浄ブラシ221が水平方向の回転軸を有する一対の保持部222に支持されて配置されている。これらロール洗浄ブラシ221は、図19に示す第2の駆動機構220Aによってそれぞれ回転駆動されるとともに、保持部222を介して上下駆動機構220Bによって上下方向に駆動される。これらのロール洗浄ブラシ221は半導体ウェーハWを挟んで配置され、それぞれ半導体ウェーハWの上下面(被洗浄面Wa)に接触して洗浄を行う。
図18に示すように、ロール洗浄ブラシ221の近傍には、一対のパイプ状の下部のノズル241と上部のノズル242とが半導体ウェーハWを挟んで配置されている。各ノズル241、242からは半導体ウェーハWの上下面(被洗浄面Wa)を一対のロール洗浄ブラシ221によって洗浄するときに洗浄液Lが供給される。
保持部222は、上下方向に沿って移動可能に構成された軸受体223に対し回転自在に支持されている。この軸受体223の内部には、モータ224の回転軸が連結されており、このモータ224の回転が軸受体223を介して保持部222に伝達され、ロール洗浄ブラシ221を回転することができる。軸受体223は、アーム226によって支持され、上下駆動機構220Bに支持されている。このような上下駆動機構220Bによって、アーム226を上下に駆動することで、各ロール洗浄ブラシ221を半導体ウェーハWの下面と上面とに所定の接触力で接触させることができる。
各ロール洗浄ブラシ221は、図20に示すように円筒状のブラシホルダ221aの表面に、ブラシホルダ221aの軸心線に平行に列状に取付けられた縦ブラシ221bと、ブラシホルダ221aの軸心線に平行に列状に取付けられた横ブラシ221cを備えている。また、縦ブラシ221bと横ブラシ221cは、交互に配置されている。縦ブラシ221bは上述した縦ブラシ63と同様に形成され、また、横ブラシ221cは上述した横ブラシ64と同様に形成されている。
ブラシホルダ221aの軸心方向は、半導体ウェーハWの被洗浄面Waに対して平行に形成されている。つまり、各ロール洗浄ブラシ221は、半導体ウェーハWの被処理面に対して平行に設けられている。すなわち、各縦ブラシ221bは、円柱状に形成されており、半導体ウェーハWの被洗浄面Waと対向配置されたとき、縦ブラシ221bの軸心方向は半導体ウェーハの被処理面に対して垂直になるように、ブラシホルダ221aの表面に設けられている。なお、寸法については、上述した縦ブラシ63よりも小径に形成されている。各横ブラシ221cは、円柱状に形成されており、半導体ウェーハWの被洗浄面Waと対向配置されたとき、横ブラシ221cの軸心方向は半導体ウェーハの被処理面に対して垂直になるように、ブラシホルダ221aの表面に設けられている。なお、寸法については、上述した横ブラシ64よりも小径に形成されている。さらに、各ロール洗浄ブラシ221の長さは、半導体ウェーハWの直径をカバーするような長さで形成されている。
ロール洗浄ブラシ221は、それぞれモータ224によって一対のロール洗浄ブラシ221間に供給された半導体ウェーハWをその回転力で駆動ローラ206の外周面に押し付ける方向に回転駆動される。
このように構成された基板処理装置200では、一対のロール洗浄ブラシ221を所定の高さに位置決めし、駆動シリンダ213を作動させて一対の規制ローラ207を半導体ウェーハWの径方向の反対側の部分の駆動ローラ206の外周面に当接するまであるいはわずかな間隔を介して近接するまで前進方向へ駆動する。このようにして半導体ウェーハWを保持し、ロール洗浄ブラシ221及び3本の駆動ローラ206を回転駆動する。また、各ノズル241、242から半導体ウェーハWの上下面に向けて洗浄液Lを噴射する。
一対のロール洗浄ブラシ221が回転駆動されることで、半導体ウェーハWの上下面に対して各ロール洗浄ブラシ221の縦ブラシ221b及び横ブラシ221cを押し当てることができるから、半導体ウェーハWの上下面をロール洗浄ブラシ221の軸方向全長にわたってむらなくほぼ均一に洗浄することができる。
本実施形態に係るロール洗浄ブラシ221においても、上述した洗浄ブラシ61と同様に用いることで、広範囲の大きさのパーティクルPa,Pbを除去することができると共に、洗浄液Lの供給と同時にスクラブ洗浄が可能である。
なお、ロール洗浄ブラシ221は、縦ブラシ221b及び横ブラシ221cを軸方向に列状に配置したが、周方向に沿って列状に配置してもよい。また、ランダムに配置しても良い。さらに、縦ブラシ221b及び横ブラシ221cの比率を、前工程の種類に応じて変更してもよい。また、パーティクルの大きさや処理対象の半導体ウェーハWの種類に応じて、縦ブラシ221b及び横ブラシ221cに、PVAブラシや毛ブラシを加えても良い。
なお、上記の実施形態では、基板処理装置で処理を行う基板として半導体ウェーハWを例示したが、これに限られるものではなく、液晶基板や、フォトマスク等のガラス基板に適用することもできる。また、洗浄処理時に洗浄ブラシユニットを回転させているが、基板側を回転させても良い。また、相対移動であれば回転させなくても良い。さらに、洗浄ブラシの形状は、円盤状や円柱状に限るものではない。また、フッ素系樹脂として多孔質PTFE材を挙げたが、上述したように小さなパーティクルを取り込むことができる同様な構成を有するものであれば、他のフッ素系樹脂(例えば、PVDFやTFE)を用いてもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。