以下、本発明の実施形態によるシリンダ装置を、4輪自動車等の車両に設けられる緩衝器に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
図1において、シリンダ装置としての緩衝器1は、内部に封入される電気粘性流体21を用いた減衰力調整式の油圧緩衝器(セミアクティブダンパ)として構成されている。緩衝器1は、例えばコイルばねからなる懸架ばね(図示せず)と共に、車両用のサスペンション装置を構成する。なお、以下の説明では、緩衝器1の軸方向の一端側を「上端」側とし、軸方向の他端側を「下端」側として記載するものとする。
緩衝器1は、内筒2、外筒3、ピストン5、ピストンロッド8、中間筒18等を含んで構成されている。内筒2は、軸方向に延びる円筒状の筒体として形成され、電界により流体の性状が変化する電気粘性流体21が内部に封入されている。内筒2の内部には、後述のピストンロッド8が挿入され、内筒2の径方向外側には、外筒3が同軸となるように設けられている。
外筒3は、緩衝器1の外殻をなすもので、円筒体として形成されている。外筒3は、内筒2の外側に設けられ、その下端側がボトムキャップ4により溶接手段等を用いて閉塞された閉塞端となっている。ボトムキャップ4は、後述するボトムバルブ13のバルブボディ14と共にベース部材を構成している。外筒3の上端側は、開口端となり、この開口端側には、かしめ部3Aが径方向内側に屈曲して形成されている。かしめ部3Aは、シール部材11の環状板体11Aの外周側を抜け止め状態で保持している。さらに、外筒3には、後述する高電圧ドライバ23が取付けられる取付孔3Bが径方向の横孔(貫通孔)として形成されている。
一方、内筒2は、外筒3内に該外筒3と同軸に設けられている。内筒2は、下端側がボトムバルブ13のバルブボディ14に嵌合して取付けられ、上端側はロッドガイド10に嵌合して取付けられている。内筒2には、後述の通路19に常時連通する油穴2Aが、径方向の横孔として周方向に離間して複数(例えば、4〜8個)形成されている。内筒2内のロッド側油室Bは、油穴2Aによって通路19と連通している。
内筒2は、外筒3と共にシリンダを構成し、このシリンダ内には、液体からなる電気粘性流体21(ERF:Electro Rheological Fluid)が封入(充填)されている。なお、各図では、封入されている電気粘性流体21を無色透明としている。
電気粘性流体21は、外部刺激により流体の性状が変化する機能性流体の一種であり、電圧の増減(電界の強弱)により粘性(性状)が変化する流体である。即ち、電気粘性流体21は、印加される電圧(電界強度)に応じて流動抵抗(減衰力)が変化するものである。電気粘性流体21は、例えばシリコンオイル等からなる基油(ベースオイル)と、該基油に混ぜ込まれ(分散され)電界の変化に応じて粘性を可変にする粒子(ウレタン粒子)とにより構成されている。緩衝器1は、後述の通路19内に電位差を発生させ、該通路19を通過する電気粘性流体21の粘度を可変に制御することで、発生減衰力を制御(調整)する構成となっている。
内筒2(後述の中間筒18)と外筒3との間には、環状のリザーバ室Aが形成されている。このリザーバ室A内には、液体の電気粘性流体21と共に作動気体となるガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド8の縮小時(縮み行程)に、当該ピストンロッド8の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストン5は、内筒2内をロッド側油室Bとボトム側油室Cとの2室に画成して、後述の導電体部材28を介して内筒2内を摺動する。ピストン5は、例えば金属材料等の導電体からなり、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。ここで、実施形態による緩衝器1は、ユニフロー構造となっている。このため、内筒2内の電気粘性流体21は、ピストンロッド8の縮み行程と伸び行程との両行程で、ロッド側油室B(即ち、内筒2の油穴2A)から通路19に向けて常に一方向(即ち、図1中に二点鎖線で示す矢印Fの方向)に流通する。
このようなユニフロー構造を実現するため、ピストン5の上端面には、ピストンロッド8の縮小行程(縮み行程)でピストン5が内筒2内を下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁6が設けられている。縮み側逆止弁6は、ボトム側油室C内の液体(電気粘性流体21)がロッド側油室Bに向けて各油路5A内を流通するのを許し、これとは逆向きに液体が流れるのを阻止する。
ピストン5の下端面には、伸長側のディスクバルブ7が設けられている。伸長側のディスクバルブ7は、ピストンロッド8の伸長行程(伸び行程)でピストン5が内筒2内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を各油路5Bを介してボトム側油室C側にリリーフする。
ロッドとしてのピストンロッド8は、内筒2内を軸方向(内筒2および外筒3の中心軸線と同方向であり、図1の上,下方向)に延びている。ピストンロッド8は、例えば金属材料等の導電体からなり、上端側(一端側)がシリンダとなる内筒2および外筒3の外部に突出し、下端側(他端側)が内筒2内でピストン5に連結(固定)されている。この場合、ピストンロッド8の下端側には、ナット8A等を用いてピストン5が固定(固着)されている。一方、ピストンロッド8の上端側は、ロッドガイド10を介して外部に突出し、車体G(グランド)に対して導通状態(電気的に接続状態)で接触している。なお、ピストンロッド8の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ4)側から外向きに突出させた両ロッドとしてもよい。
閉塞部材9は、内筒2と外筒3との上端側(一端側)に設けられ、内筒2と外筒3との上端側を閉塞している。この閉塞部材9は、内筒2と外筒3との上端側で軸方向に変位するピストンロッド8を支持している。そして、閉塞部材9は、段付円筒状のロッドガイド10と、環状のシール部材11とにより構成されている。
ロッドガイド10は、ピストンロッド8を支持するもので、例えば金属材料等の導電体に成形加工、切削加工等を施すことにより所定形状の筒体として形成されている。ロッドガイド10は、内筒2の上側部分および後述の中間筒18の上側部分を外筒3の中央に位置決めする。これと共に、ロッドガイド10は、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能に案内(ガイド)する。
ここで、ロッドガイド10は、上側に位置して外筒3の内周側に挿嵌される環状の大径部10Aと、該大径部10Aの下側に位置して内筒2の内周側に挿嵌される短尺筒状の小径部10Bとにより段付円筒状に形成されている。ロッドガイド10の小径部10Bの内周側には、ピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイドするガイド部10Cが設けられている。ガイド部10Cは、例えば金属筒の内周面に4フッ化エチレンコーティングを施すことにより形成されている。
ロッドガイド10の大径部10Aと外筒3のかしめ部3Aとの間には、環状のシール部材11が設けられている。シール部材11は、中心にピストンロッド8が挿通される孔が設けられた金属性の環状板体11Aと、該環状板体11Aに焼き付等の手段で固着されたゴム等の弾性材料からなる弾性体11Bとを含んで構成されている。シール部材11は、弾性体11Bの内周がピストンロッド8の外周側に摺接することにより、ピストンロッド8との間を液密、気密に封止(シール)する。
一方、ロッドガイド10の外周側で大径部10Aと小径部10Bとの間には、環状の保持部材12が嵌合して取付けられている。保持部材12は、本発明のスペーサを構成するもので、内筒2と後述の中間筒18との上端部に設けられ、内筒2と中間筒18との間を閉塞して絶縁している。保持部材12は、中間筒18の上端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材12は、例えば電気絶縁性材料により形成され、内筒2およびロッドガイド10と中間筒18との間を電気的に絶縁した状態に保っている。
内筒2の下端側(他端側)には、内筒2とボトムキャップ4との間に位置してボトムバルブ13が設けられている。ボトムバルブ13は、バルブボディ14、伸び側逆止弁16、およびディスクバルブ17を含んで構成されている。バルブボディ14は、本発明のボディを構成するもので、内筒2の他端(下端)に設けられ、内筒2の内部とリザーバ室Aとを画成している。即ち、バルブボディ14は、ボトムキャップ4と内筒2との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成する。バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路14A,14Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
バルブボディ14の外周側には、段差部14Cが形成され、該段差部14Cには、内筒2の下端内周側が嵌合して固定されている。また、段差部14Cには、環状の保持部材15が内筒2の外周側に嵌合して取付けられている。保持部材15は、本発明のスペーサを構成するもので、内筒2と中間筒18との下端部に設けられ、内筒2と中間筒18との間を閉塞して絶縁している。保持部材15は、中間筒18の下端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材15は、例えば電気絶縁性材料により形成され、内筒2およびバルブボディ14と中間筒18との間を電気的に絶縁した状態に保っている。また、保持部材15には、後述の通路19をリザーバ室Aに対して連通させる複数の油路15Aが形成されている。
伸び側逆止弁16は、例えばバルブボディ14の上面側に設けられている。伸び側逆止弁16は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。伸び側逆止弁16は、リザーバ室A内の電気粘性流体21がボトム側油室Cに向けて各油路14A内を流通するのを許し、これとは逆向きに液体が流れるのを阻止する。
縮小側のディスクバルブ17は、バルブボディ14の下面側に設けられている。縮小側のディスクバルブ17は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路14Bを介してリザーバ室A側にリリーフする。
内筒2と外筒3との間には、軸方向に延びる圧力管からなる中間筒18が設けられている。中間筒18は、導電性材料を用いて形成され、後述のバッテリ22(高電圧ドライバ23)から高電圧(電界)が付与される筒状電極を構成する。中間筒18は、内筒2との間に軸方向の上端側から下端側に向けてピストンロッド8の進退動により電気粘性流体21が流動する通路19を形成している。
即ち、中間筒18は、内筒2の外周側に保持部材12,15を介して取付けられている。保持部材12,15は、内筒2の外周側で軸方向(上下方向)に離間して設けられている。この場合に、中間筒18の上端側は、保持部材12およびロッドガイド10を介して、外筒3に対して相対回転が不能になっている。中間筒18の下端側は、保持部材15、バルブボディ14、およびボトムキャップ4を介して、外筒3に対して相対回転が不能になっている。中間筒18は、内筒2の外周側を全周にわたって取囲むことにより、中間筒18の内周側と内筒2の外周側との間に環状の流路、即ち電気粘性流体21が流通する通路19を形成している。また、中間筒18の外周には、後述する高電圧出力線26のプラス電極26Aが接触している。
通路19は、内筒2に径方向の横孔として形成した油穴2Aによりロッド側油室Bと常時連通している。緩衝器1は、ピストン5の縮み行程および伸び行程の両方で、ロッド側油室Bから油穴2Aを通じて通路19に電気粘性流体21が流入する。通路19内に流入した電気粘性流体21は、ピストンロッド8が内筒2内を進退動するとき(即ち、縮み行程と伸び行程を繰返す間)に、この進退動により通路19の軸方向の上端側から下端側に向けて流動する。即ち、電気粘性流体21は、図1中に矢印Fで示す方向に流動する。
通路19内に流入した電気粘性流体21は、中間筒18の下端側から保持部材15の油路14Aを介してリザーバ室Aへと流出する。このとき、電気粘性流体21の圧力は、通路19の上流側(即ち、油穴2A側)で最も高く、通路19内を流通する間に流路(通路)抵抗を受けるため漸次低下する。このため、通路19内の電気粘性流体21は、通路19の下流側(即ち、保持部材15の油路14A)を流通するときに最も低い圧力となっている。
内筒2の外周と中間筒18の内周との間には、電気粘性流体21が流通する通路19を仕切る(電気粘性流体21の流れを案内する)隔壁部材20が設けられている。この隔壁部材20は、電気絶縁性材料により形成され、内筒2の外周面と中間筒18の内周面とに対して相対回転不能に取付けられている。隔壁部材20は、内筒2と中間筒18との間で電気粘性流体21を軸方向だけでなく、周方向にも案内する流路形成部材である。これにより、電気粘性流体21が流通する通路19を、周方向に延びる部分を有する螺旋状または蛇行する1または複数の通路(流路)とすることができる。この場合には、軸方向に直線的に延びる通路と比較して、通路19の全長(油穴2Aから油路14Aまでの流路の長さ)を長くすることができる。
通路19は、外筒3および内筒2内でピストン5の摺動によって流通する電気粘性流体21に抵抗を付与する。このため、中間筒18は、電源となるバッテリ22の正極に、例えば高電圧を発生する高電圧ドライバ23を介して接続されている。即ち、中間筒18は、通路19内を流れる電気粘性流体21に電界を付与するための電極(エレクトロード)となる。
ここで、中間筒18の両端側は、ロッドガイド10とバルブボディ14(ボトムキャップ4)とに対し、保持部材12,15を介して電気的に絶縁されている。一方、内筒2は、ロッドガイド10、ボトムバルブ13(バルブボディ14)、ボトムキャップ4、外筒3、高電圧ドライバ23等を介して負極(グランド)に接続されている。
バッテリ22は、中間筒18に印加するための電源となるものである。バッテリ22は、高電圧ボックス(HV-Box)とも呼ばれる高電圧ドライバ23を介して緩衝器1(中間筒18および外筒3)に接続されている。なお、バッテリ22は、例えば走行用の電動モータ(駆動モータ)が搭載されたハイブリッド自動車や電気自動車の場合に車両駆動用の大容量バッテリ(図示せず)を用いることもできる。バッテリ22は、高電圧ドライバ23と共に本発明の電圧供給部(電界供給部)を構成している。
高電圧ドライバ23は、外筒3の取付孔3Bに取付けられている。高電圧ドライバ23は、昇圧回路23A等を含んで構成され、コントローラ(図示せず)から出力される指令信号(高電圧指令)に基づいて、バッテリ22から出力される直流電圧を昇圧回路23Aで昇圧する。これにより、高電圧ドライバ23は、電気粘性流体21に印加する高電圧(例えば、5kV)を発生する。このために、高電圧ドライバ23は、(低電圧)直流電力線を構成するバッテリ線24およびグランド線25を介して電源となるバッテリ22に接続されている。
また、高電圧ドライバ23は、(高電圧)直流電力線を構成する高電圧出力線26およびグランド線27を介して緩衝器1(中間筒18および外筒3)に接続されている。高電圧出力線26と中間筒18との接触部は、プラス電位を中間筒18に付与するプラス電極26Aとなっている。一方、グランド線27と外筒3との接触部は、マイナス電位を外筒3に付与するマイナス電極27Aとなっている。プラス電極26Aとマイナス電極27Aとは、本発明の付与部を構成している。
これにより、内筒2と中間筒18との間、換言すれば、通路19内には、中間筒18に印加される高電圧に応じた電位差が発生し、電気粘性流体21の粘度が変化する。この場合、緩衝器1は、中間筒18に印加される高電圧に応じて発生減衰力の特性(減衰力特性)を、ハード(Hard)な特性(硬特性)とソフト(Soft)な特性(軟特性)との間で連続的に調整することができる。なお、緩衝器1は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。また、本実施形態では、高電圧ドライバが昇圧する電圧は直流電圧としたが、交流電圧であってもよい。
次に、ピストン5の外周に設けられた導電体部材28について説明する。
導電体部材28は、内筒2と内筒2に当接するピストン5との間に設けられている。導電体部材28は、ピストン5の外周に設けられ、内筒2と当接(摺接)している。即ち、導電体部材28は、ピストン5を介して内筒2とピストンロッド8との間に設けられている。この導電体部材28は、例えばグラファイトおよびセラミックス等によりピストン5の外周に巻回されたバンドとなっている。これにより、内筒2とグランドである車体Gとは、導電体部材28、ピストン5、およびピストンロッド8を介して電気的に接続している。この場合、内筒2と車体Gとは、人体抵抗Wよりも十分に低い抵抗値(例えば、7.9Ω以下)で導通させている。
従って、緩衝器1は、外筒3がグランド線25,27によりバッテリ22を介してグランドである車体Gに導通されていると共に、内筒2が導電体部材28、ピストン5、およびピストンロッド8を介してグランドである車体Gに導通されている。即ち、緩衝器1は、マイナス側がグランドである車体Gに対して2系統で電気的に接続されている。これにより、例えばバッテリ22と高電圧ドライバ23との間を接続するグランド線27が断線したとしても、マイナス側である内筒2から導電体部材28、ピストン5、およびピストンロッド8を介してグランドである車体G側への電気的な接続を確保することができる。
第1実施形態による緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
緩衝器1を自動車等の車両に実装するときは、例えばピストンロッド8の上端側を車両の車体G側に取付け、外筒3の下端側(ボトムキャップ4側)を車輪側(車軸側)に取付ける。車両の走行時には、路面の凹凸等により、上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド8が外筒3から伸長,縮小するように変位する。このとき、コントローラからの減衰力指令に基づいた電位差を内筒2と中間筒18との間に発生させて、通路19内に電界を付与して通路19を通過する電気粘性流体21の粘度を制御することにより、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整する。
この場合、ピストンロッド8の伸び行程時には、内筒2内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁6が閉じる。ピストン5のディスクバルブ7の開弁前には、ロッド側油室Bの電気粘性流体21が加圧されて内筒2の油穴2Aを通じて通路19内に流入する。このとき、ピストン5が移動した分の電気粘性流体21は、リザーバ室Aからボトムバルブ13の伸び側逆止弁16を開いてボトム側油室Cに流入する。
一方、ピストンロッド8の縮み行程時には、内筒2内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁6が開き、ボトムバルブ13の伸び側逆止弁16が閉じる。ボトムバルブ13(ディスクバルブ17)の開弁前には、ボトム側油室Cの液体がロッド側油室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド8が内筒2内に浸入した分に相当する液体が、ロッド側油室Bから内筒2の油穴2Aを通じて通路19内に流入する。
いずれの場合も(伸び行程も縮み行程も)、通路19内に流入した電気粘性流体21は、通路19の電界強度(内筒2と中間筒18との間の電位差)に応じた粘度で通路19内を出口側(下側)に向けて流通し、通路19から保持部材15の油路14Aを介してリザーバ室Aに流れる。このとき、緩衝器1は、通路19内を通過する電気粘性流体21の粘度に応じた減衰力が発生し、車両の上下振動を緩衝(減衰)することができる。
ところで、上述した従来技術では、外筒に接続されたマイナス側のワイヤハーネス(グランド線)が断線等した場合に、シリンダ装置からグランド側への電気的な接続が遮断される。この状態で、作業者が緩衝器と車体とに同時に接触した場合には、作業者側に電流が流れる虞がある。
そこで、本実施形態では、外筒3に接続されたグランド線27に加えて、マイナス側である内筒2とグランドである車体Gとをピストンロッド8を介して電気的に接続させている。具体的には、導電体により形成されたピストンロッド8の上端側は、車体Gに電気的に接続されている。そして、導電体により形成されたピストン5の外周側には、内筒2との間でシール性および摺動性を有する導電体部材28が設けられている。この場合、内筒2と車体Gとは、導電体部材28、ピストン5、およびピストンロッド8を介して人体抵抗Wよりも十分に低い抵抗値(例えば、7.9Ω以下)で電気的に接続されている。
これにより、バッテリ22と中間筒18との間を接続するグランド線27が断線しているときに、図3中の点線で示すように作業者が緩衝器1と車体Gとに同時に接触したとしても、図3中の矢印Dで示すように内筒2から車体Gに向けて大部分の電流が流れる。従って、図3中の矢印Eで示す緩衝器1から作業者を介して車体Gに流れる電流は、作業者が感じることができる電流よりも小さい値(例えば、5.2mA以下)とすることができる。その結果、緩衝器1をメンテナンスするときの作業の作業性を向上させることができる。
次に、図4は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態の特徴は、閉塞部材9を構成するロッドガイド10の内周側に導電体部材31を設けたことにある。なお、第2実施形態では、前述した第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
導電体部材31は、ピストンロッド8とピストンロッド8と当接する閉塞部材9との間に設けられている。具体的には、導電体部材31は、閉塞部材9を構成するロッドガイド10の内周に設けられている。この導電体部材31は、例えばグラファイトおよびセラミックス等により内周側にピストンロッド8が貫通(摺接)するリング状に形成されている。この場合、ロッドガイド10は、導電体により形成され、マイナス側である内筒2および外筒3に接触している。
これにより、内筒2および外筒3とグランドである車体Gとは、ロッドガイド10、導電体部材31、およびピストンロッド8を介して電気的に接続している。この場合、内筒2および外筒3と車体Gとは、人体抵抗Wよりも十分に低い抵抗値(例えば、7.9Ω以下)で導通させている。
従って、緩衝器1は、外筒3がグランド線25,27によりバッテリ22を介してグランドである車体Gに導通されていると共に、外筒3および内筒2がロッドガイド10、導電体部材31、およびピストンロッド8を介してグランドである車体Gに導通されている。即ち、緩衝器1は、マイナス側がグランドである車体Gに対して2系統で電気的に接続されている。これにより、例えばバッテリ22と高電圧ドライバ23との間を接続するグランド線27が断線したとしても、マイナス側である外筒3および内筒2からロッドガイド10、導電体部材31、およびピストンロッド8を介してグランドである車体G側への電気的な接続を確保することができる。
従って、バッテリ22と中間筒18との間を接続するグランド線27が断線しているときに、作業者が緩衝器1と車体Gとに同時に接触したとしても、内筒2および外筒3から車体Gに向けて大部分の電流が流れる。従って、緩衝器1から作業者を介して車体Gに流れる電流は、作業者が感じることができる電流よりも小さい値(例えば、5.2mA以下)とすることができる。その結果、緩衝器1をメンテナンスするときの作業の作業性を向上させることができる。
なお、上述した第1実施形態では、導電体部材28をピストン5の全周に亘って設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図5に示す第1変形例のように、ピストン5の外周に設けられた絶縁体41の一部に導電体部材42を設けてもよい。
また、上述した第1実施形態では、導電体部材28をピストン5の全周に亘って設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図6に示す第2変形例のように、ピストンロッド8の他端部(下端部)に内筒2と接触するバンドからなる導電体部材51を設けてもよい。なお、バンドは、内筒2の内周面と摺動するバンドの一部を導電体として形成してもよい。
また、上述した第2実施形態では、ロッドガイド10の内周側に導電体部材31を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばロッドガイド10のガイド部10Cを導電材料により形成してもよい。この場合、ガイド部10Cの全てを導電材料で形成してもよいし、ロッドガイド10の小径部10Bとピストンロッド8とに接触する導電材料をガイド部10Cの一部に形成してもよい。
また、上述した第2実施形態では、ロッドガイド10の内周側に導電体部材31を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば閉塞部材9を構成するシール部材11を導電材料により形成してもよい。この場合、シール部材11の全てを導電材料で形成してもよいし、ピストンロッド8とロッドガイド10とに接触する導電材料をシール部材11の一部に形成してもよい。
さらに、実施形態では、シリンダ装置としての緩衝器1を4輪自動車に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2輪車に用いる緩衝器、鉄道車両に用いる緩衝器、一般産業機器を含む各種の機械機器に用いる緩衝器、建築物に用いる緩衝器等、緩衝すべき対象を緩衝する各種の緩衝器(シリンダ装置)として広く用いることができる。
以上説明した実施形態に基づくシリンダ装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
シリンダ装置の第1の態様としては、電界により流体の性状が変化する電気粘性流体が封入される内筒と、前記内筒内を2室に画成して摺動するピストンと、一端側が前記内筒の外部に突出して車体に当接し、他端側が前記ピストンと連結されるロッドと、前記内筒の外側に設けられる外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられる電極であって、前記電気粘性流体が流動する通路を前記内筒との間に形成する中間筒と、前記内筒と前記中間筒とのそれぞれの端部に設けられ、前記内筒と前記中間筒との間を閉塞して絶縁するスペーサと、前記中間筒と前記外筒との間に形成され、前記電気粘性流体および作動気体が封入されるリザーバ室と、前記内筒と前記外筒との一端を閉塞するように設けられ、前記ロッドを支持する閉塞部材と、前記内筒の他端に設けられ、前記内筒の内部と前記リザーバ室とを画成するボディと、電圧供給部からプラス電位が前記中間筒に付与され、マイナス電位が前記外筒に付与される付与部と、を有するシリンダ装置であって、該シリンダ装置は、前記内筒と前記内筒に当接する前記ピストンとの間、または、前記ロッドと前記ロッドと当接する前記閉塞部材との間に、導電体部材が設けられていることを特徴としている。これにより、外筒に接続されたマイナス側のワイヤハーネスが断線したとしても、シリンダ装置からグランドである車体側への電気的な接続を確保することができる。
シリンダ装置の第2の態様としては、電界により流体の性状が変化する電気粘性流体が封入される内筒と、前記内筒内を2室に画成して摺動するピストンと、一端側が前記内筒の外部に突出して車体に当接し、他端側が前記ピストンと連結されるロッドと、前記内筒の外側に設けられる外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられる電極であって、前記電気粘性流体が流動する通路を前記内筒との間に形成する中間筒と、前記内筒と前記中間筒とのそれぞれの端部に設けられ、前記内筒と前記中間筒との間を閉塞して絶縁するスペーサと、前記中間筒と前記外筒との間に形成され、前記電気粘性流体および作動気体が封入されるリザーバ室と、前記内筒と前記外筒との一端を閉塞するように設けられ、前記ロッドを支持する閉塞部材と、前記内筒の他端に設けられ、前記内筒の内部と前記リザーバ室とを画成するボディと、電圧供給部からプラス電位が前記中間筒に付与され、マイナス電位が前記外筒に付与される付与部と、を有するシリンダ装置であって、該シリンダ装置は、前記内筒と当接し、前記ロッドの他端部に設けられる導電体部材を有することを特徴としている。これにより、外筒に接続されたマイナス側のワイヤハーネスが断線したとしても、シリンダ装置からグランドである車体側への電気的な接続を確保することができる。