以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。図3は、図1のトレッド部詳細図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ赤道線は、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいい、本実施形態では、タイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4及びビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その外周表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面は、主に走行時に路面と接触し得る面であって、接地面10として構成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア15とビードフィラー16とを有する。ビードコア15は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー16は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア15の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア15でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつ、タイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、例えば、ポリエステルやレーヨンやナイロンなどの有機繊維からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト7a,7bを積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト7a,7bは、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20°〜30°)で複数並設されたコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロンなどの有機繊維からなる。また、重なり合うベルト7a,7bは、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示省略)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロンなどの有機繊維からなり、コードの角度はタイヤ周方向に対して±5°の範囲内になっている。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7全体を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。即ち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、例えば幅が10mm程度の帯状のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
なお、上述した空気入りタイヤ1の内部構造は、空気入りタイヤ1における代表的な例を示すものであるが、内部構造は、これに限定されるものではない。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されている。すなわち、本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両に装着した場合、タイヤ幅方向において、車両の外側および内側に対する向きが指定されている。向きの指定は、図には明示しないが、例えば、サイドウォール部4に設けられた指標により示される。このため、車両に装着した場合に車両の外側に向く側が車両外側(第一側)となり、車両の内側に向く側が車両内側(第二側)となる。なお、車両外側および車両内側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の外側および内側に対するリムの向きが決まっている。このため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両外側および車両内側に対する向きが指定される。
トレッド部2の接地面10は、タイヤ周方向に延在してタイヤ全周に渡って連続する周方向溝20がタイヤ幅方向に4本並んで形成されている。
周方向溝20は、最も車両外側に配置される周方向溝20以外が3.0mm以上の溝幅および6.0mm以上の溝深さを有し、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝である。最も車両外側に配置される周方向溝20は、他の周方向溝20よりも溝幅が細い周方向細溝として形成されている。周方向細溝の溝幅は、他の周方向溝20の溝幅よりも狭く、1.5mm以上4.0mmの範囲にある。周方向細溝の溝深さは、他の周方向溝20と同等である。
なお、以下に説明する溝幅やサイプ幅や陸部幅は、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態(規定荷重=0)にて、接地面10に開口する両溝開口端のタイヤ幅方向の寸法の最大値として測定される。溝開口縁に切欠部や面取部が形成されている構成では、溝開口端を切欠部や面取部の外縁として溝幅は切欠部や面取部を含み測定される。溝深さやサイプ深さは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態(規定荷重=0)にて、接地面10から溝底までの寸法の最大値として測定される。
規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
周方向溝20は、タイヤ赤道面CLを境界としてタイヤ幅方向外側に2本ずつ配置されている。そして、車両外側において、タイヤ赤道面CL寄りの周方向溝20を外側センター溝21と呼び、外側センター溝21のタイヤ幅方向外側の周方向溝(周方向細溝)20を外側ショルダー溝23と呼ぶ。車両内側において、タイヤ赤道面CL寄りの周方向溝20を内側センター溝22と呼び、内側センター溝22のタイヤ幅方向外側の周方向溝20を内側ショルダー溝24と呼ぶ。
本実施形態において、周方向溝20は、外側センター溝21がタイヤ周方向に沿いつつタイヤ幅方向両側に一定間隔で屈曲したジグザグ状に形成されている。他の内側センター溝22、外側ショルダー溝23、内側ショルダー溝24は、タイヤ周方向に直線状に形成されている。外側センター溝21は、その溝開口端において接地面10に長尺部と短尺部とを有する三角形状の面取部がタイヤ周方向に並んで形成され、両溝開口端において面取部の長尺部および短尺部が点対称の配置とされることで、ジグザグ状に形成されている。
また、トレッド部2の接地面10は、4本の周方向溝20(21,22,23,24)により、タイヤ幅方向に並ぶ5本の陸部30が区画形成されている。そして、外側センター溝21と内側センター溝22との間に形成されたタイヤ赤道面CL上の陸部30をセンター陸部31と呼ぶ。車両外側(第一側)において、外側センター溝21と外側ショルダー溝23との間に形成された陸部30を外側ミドル陸部(第一側ミドル陸部)32と呼び、外側ショルダー溝23のタイヤ幅方向外側に形成された陸部30を外側ショルダー陸部(第一側ショルダー陸部)34と呼ぶ。車両内側(第二側)において、内側センター溝22と内側ショルダー溝24との間に形成された陸部30を内側ミドル陸部(第二側ミドル陸部)33と呼び、内側ショルダー溝24のタイヤ幅方向外側に形成された陸部30を内側ショルダー陸部(第二側ショルダー陸部)35と呼ぶ。外側ショルダー溝23と内側ショルダー溝24とは、それぞれ接地端T上に位置している。
接地端Tは、接地領域のタイヤ幅方向における両最外端であり、図2では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。接地領域は、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みし、かつ、規定内圧を充填すると共に規定荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2の接地面10が乾燥した平坦な路面と接地する領域である。
センター陸部31は、接地面10にラグ溝51のみ形成されている。ラグ溝51は、内側センター溝22に一端が連通してタイヤ赤道面CL側(タイヤ幅方向内側)に延在し、センター陸部31の接地面10内で他端がセンター陸部31のタイヤ幅方向の中央付近にあるタイヤ赤道面CLに到らず終端して設けられている。ラグ溝51は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝51は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲内にあり、溝深さが内側センター溝22の溝深さの55%以上80%以下の範囲にある。ラグ溝51は、センター陸部31に溝が形成されていない構成と比較して、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与する。また、ラグ溝51がセンター陸部31の接地面10内で他端がタイヤ赤道面CLに到らず終端して設けられていることで、センター陸部31の剛性を確保し、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。また、ラグ溝51は、タイヤ周方向に対する傾斜角が、110deg以上130deg以下の範囲内にある。ラグ溝51は、傾斜角が110deg以上を確保されることでチッピング摩耗の発生の抑制に寄与し、130deg以下を確保されることでエッジ効果により湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
ラグ溝51は、タイヤ幅方向の寸法L1と、センター陸部31の陸部幅Wccとが0.30≦L1/Wcc≦0.60の関係を有することが好ましい。センター陸部31の陸部幅Wccは、周方向溝20における面取部を除く接地面10のタイヤ幅方向の寸法であり、路面に実際に接地し得る接地幅ともいう。以下、他の陸部の陸部幅の定義も同様である。ラグ溝51は、0.30≦L1/Wccにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L1/Wcc≦0.60により、センター陸部31の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。
外側ミドル陸部32は、接地面10にラグ溝52およびサイプ41のみ形成されている。
ラグ溝52は、外側ショルダー溝23に一端が連通してタイヤ幅方向内側に延在し、外側ミドル陸部32の接地面10内で他端が終端して設けられている。ラグ溝52は、主にタイヤ幅方向へ長尺状に延在して形成され、他端において屈曲部が設けられて主にタイヤ周方向に短尺状に延在して形成されている。ラグ溝52は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝52は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲内にあり、溝深さが外側ショルダー溝23の溝深さの55%以上80%以下の範囲にある。
ラグ溝52は、タイヤ幅方向の寸法L2と、外側ミドル陸部32の陸部幅Wcoとが0.65≦L2/Wco≦0.85の関係を有することが好ましい。ラグ溝52は、0.65≦L2/Wcoにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L2/Wco≦0.85により、外側ミドル陸部32の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。特に、ラグ溝52が外側ミドル陸部32において除水作用の寄与が高いタイヤ幅方向外側(接地端T側)のエッジ部に配置されていることで、湿潤路面での操縦安定性能の向上への寄与が高い。
サイプ41は、タイヤ周方向で隣り合う各ラグ溝52の終端部の間に単一で配置されて、主にタイヤ周方向に延在する。サイプ41は、ラグ溝52および周方向溝20に連通せず、両端が外側ミドル陸部32の接地面10内で終端して設けられている。サイプ41は、サイプ幅が0.3mm以上1.5mm以下の範囲内にあり、サイプ深さが3.0mm以上7.0mm以下の範囲内である。サイプ41は、接地面10が接地したときに閉塞する。サイプ41は、上記の如く、タイヤ幅方向の寸法L2のラグ溝52と、当該ラグ溝52の終端部の間での配置により、ラグ溝52および周方向溝20との配置関係が適正化されているため、外側ミドル陸部32の剛性を均一化して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。
内側ミドル陸部33は、接地面10にラグ溝53およびサイプ42のみ形成されている。
ラグ溝53は、内側ショルダー溝24に一端が連通してタイヤ幅方向内側に延在し、内側ミドル陸部33の接地面10内で他端が終端して設けられている。ラグ溝53は、主にタイヤ幅方向へ長尺状に延在して形成されている。ラグ溝53は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝53は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝52は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲内にあり、溝深さが外側ショルダー溝23の溝深さの55%以上80%以下の範囲にある。
ラグ溝53は、タイヤ幅方向の寸法L3と、内側ミドル陸部33の陸部幅Wciとが0.50≦L3/Wci≦0.80の関係を有することが好ましい。ラグ溝52は、0.50≦L3/Wciにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L3/Wci≦0.80により、内側ミドル陸部33の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。
サイプ42は、内側センター溝22に一端が連通してタイヤ幅方向外側に延在し、内側ミドル陸部33の接地面10内で他端が終端して設けられている。サイプ42は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。サイプ42は、サイプ幅が0.6mm以上1.8mm以下の範囲内にあり、サイプ深さが3.0mm以上7.0mm以下の範囲内である。サイプ42は、接地面10が接地したときに閉塞する。サイプ42は、ラグ溝53に対してタイヤ周方向で交互に配置される。これにより、ラグ溝のみあるいはサイプのみがタイヤ周方向に配置される構成と比較して、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与すると共に、内側ミドル陸部33の剛性バランスを確保して、乾燥路面での操縦安定性能の向上に寄与する。特に、ラグ溝53が内側ミドル陸部33において除水作用の寄与が高いタイヤ幅方向外側(接地端T側)のエッジ部に配置され、サイプ42が内側ミドル陸部33において剛性向上の寄与が高いタイヤ幅方向内側(タイヤ赤道面CL側)のエッジ部に配置されることにより、湿潤路面での操縦安定性能および乾燥路面での操縦安定性能の相互のバランスを効果的に高めることができる。
サイプ42は、タイヤ幅方向の寸法L4と、内側ミドル陸部33の陸部幅Wciとが0.20≦L4/Wci≦0.25の関係を有することが好ましい。サイプ42は、0.20≦L4/Wciにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L4/Wci≦0.25により、内側ミドル陸部33の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。
なお、サイプ42とラグ溝53とは、タイヤ周方向で視たときに互いに重なることなく配置されている。具体的に、サイプ42の終端とラグ溝53の終端とのタイヤ幅方向の寸法D1が、内側ミドル陸部33の陸部幅Wciに対して、0.05≦D1/Wci≦0.20の範囲にあることが好ましい。これにより、両者がタイヤ周方向で視たときに互いに重なる構成と比較して、内側ミドル陸部33の剛性が確保されて、乾燥路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
また、内側ミドル陸部33のサイプ42とセンター陸部31のラグ溝51とは、タイヤ周方向に対して相互に同一方向に傾斜する。また、サイプ42とラグ溝51とは、相互の延長線に沿って延在し、内側センター溝22を間において内側センター溝22に連通する一端が互いに対向するように設けられている。これにより、サイプ42とラグ溝51とは、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
外側ショルダー陸部34は、接地面10にラグ溝54,55のみ形成されている。
ラグ溝54は、タイヤ幅方向外側から接地端Tに交差してタイヤ幅方向内側に延在し、延在端が外側ショルダー溝23に連通することなく外側ショルダー陸部34の接地面10内で終端して設けられている。ラグ溝54は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝54は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲内にあり、溝深さが外側ショルダー溝23の溝深さの55%以上80%以下の範囲にある。
ラグ溝54は、接地端Tからタイヤ幅方向内側の寸法L5と、外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoとが0.50≦L5/Wso≦0.90の関係を有することが好ましい。ラグ溝54は、0.50≦L5/Wsoにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L5/Wso≦0.90により、外側ショルダー陸部34の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoは、外側ショルダー溝23のタイヤ幅方向外側のエッジ部と、車両外側の接地端Tとの間のタイヤ幅方向の寸法である。
ラグ溝55は、外側ショルダー溝23に一端が連通してタイヤ幅方向外側に延在し、接地端Tに交差することなく外側ショルダー陸部34の接地面10内で他端が終端して設けられている。ラグ溝55は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝55は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲内にあり、溝深さが内側ショルダー溝24の溝深さの55%以上80%以下の範囲にある。ラグ溝55は、ラグ溝54に対してタイヤ周方向で交互に配置される。これにより、いずれか一方のラグ溝のみがタイヤ周方向に配置される構成と比較して、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与すると共に、外側ショルダー陸部34の剛性バランスを確保して、乾燥路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
ラグ溝55は、タイヤ幅方向の寸法L6と、外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoとが0.35≦L6/Wso≦0.55の関係を有することが好ましい。ラグ溝55は、0.35≦L6/Wsoにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L6/Wso≦0.55により、外側ショルダー陸部34の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。
なお、ラグ溝54,55は、タイヤ周方向で視たときに互いに重なるように配置されている。具体的に、相互に重なるラグ溝54,55の終端同士のタイヤ幅方向の寸法D2が、外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoに対して、0.10≦D2/Wso≦0.30の範囲にあることが好ましい。これにより、両者がタイヤ周方向で視たときに互いに重ならない構成と比較して、除水作用が確保されて、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
内側ショルダー陸部35は、ラグ溝56およびサイプ43のみ形成されている。
ラグ溝56は、タイヤ幅方向外側から接地端Tに交差してタイヤ幅方向内側に延在し、延在端が内側ショルダー溝24に連通することなく内側ショルダー陸部35の接地面10内で終端して設けられている。ラグ溝56は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。ラグ溝56は、溝幅が、1.5mm以上4.5mm以下の範囲内にあり、溝深さが内側ショルダー溝24の溝深さの55%以上80%以下の範囲にある。
ラグ溝56は、接地端Tからタイヤ幅方向内側の寸法L7と、内側ショルダー陸部35の陸部幅Wsiとが0.70≦L7/Wsi≦0.90の関係を有することが好ましい。ラグ溝56は、0.70≦L7/Wsiにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L7/Wsi≦0.90により、内側ショルダー陸部35の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。内側ショルダー陸部35の陸部幅Wsiは、内側ショルダー溝24のタイヤ幅方向外側のエッジ部と、車両内側の接地端Tとの間のタイヤ幅方向の寸法である。
サイプ43は、内側ショルダー溝24に一端が連通してタイヤ幅方向外側に延在し、接地端Tに交差することなく内側ショルダー陸部35の接地面10内で他端が終端して設けられている。サイプ43は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置されている。サイプ43は、サイプ幅が0.6mm以上1.8mm以下の範囲内にあり、サイプ深さが3.0mm以上7.0mm以下の範囲内である。サイプ43は、接地面10が接地したときに閉塞する。サイプ43は、ラグ溝56に対してタイヤ周方向で交互に配置される。これにより、ラグ溝のみあるいはサイプのみがタイヤ周方向に配置される構成と比較して、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与すると共に、内側ショルダー陸部35の剛性バランスを確保して、乾燥路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
サイプ43は、タイヤ幅方向の寸法L8と、内側ショルダー陸部35の陸部幅Wsiとが0.40≦L8/Wsi≦0.60の関係を有することが好ましい。サイプ43は、0.40≦L8/Wsiにより、除水作用を確保して、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与し、L8/Wsi≦0.60により、内側ショルダー陸部35の剛性を確保して、乾燥路面での操縦安定性能に寄与する。
なお、サイプ43とラグ溝56とは、タイヤ周方向で視たときに互いに重なるように配置されている。具体的に、相互に重なるサイプ43とラグ溝56との終端のタイヤ幅方向の寸法D3が、外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsiに対して、0.20≦D3/Wsi≦0.40の範囲にあることが好ましい。これにより、両者がタイヤ周方向で視たときに互いに重ならない構成と比較して、除水作用が確保されて、湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与する。
上述した本実施形態の空気入りタイヤ1は、センター陸部31の陸部幅Wccと外側ミドル陸部(第一側ミドル陸部)32の陸部幅WcoとがWco<Wccの関係を満たし、かつ外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部(第一側ショルダー陸部)34の接地面10が外側ショルダー溝(周方向細溝)23を跨ぐ基準プロファイルPRsoに対してタイヤ径方向外側に共に突出して形成され、センター陸部31の接地面10が基準プロファイルPRccに対してタイヤ径方向外側に突出して形成され、内側ミドル陸部(第二側ミドル陸部)33の接地面10が基準プロファイルPRciに対してタイヤ径方向外側に突出して形成されて、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoに対し、センター陸部31の突出量Hccと内側ミドル陸部33の突出量Hciとが、Hcc<Hso、Hci<Hsoの関係を満たす。
ここで、図3に示すように、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の基準プロファイルPRcoは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態(規定荷重=0)の子午断面視で、外側センター溝21における各溝開口端P1o,P2oおよび車両外側(第一側)の接地端Tの3点を通過する円弧である。そして、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の接地面10は、外側センター溝21のタイヤ幅方向外側の溝開口端P2oと車両外側の接地端Tとの間のタイヤ幅方向の寸法である外側ミドル陸部32の陸部幅Wcoおよび外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoを含む範囲において、各溝開口端P2oおよび車両外側の接地端Tから外側ショルダー溝(周方向細溝)23を跨いでタイヤ幅方向の中央部に向けて漸次曲線(または円弧)にてタイヤ径方向外側に突出している。即ち、言い換えると、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoは、陸部幅Wcoのタイヤ幅方向の端部である溝開口端P2oおよび陸部幅Wsoのタイヤ幅方向の端部である車両外側の接地端Tに対する基準プロファイルPRsoからの突出差となる。
また、センター陸部31の基準プロファイルPRccは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態(規定荷重=0)の子午断面視で、外側センター溝21における各溝開口端P1o,P2oおよび内側センター溝22におけるタイヤ幅方向内側の溝開口端P1iの3点を通過する円弧、または内側センター溝22における各溝開口端P1i,P2iおよび外側センター溝21におけるタイヤ幅方向内側の溝開口端P2iの3点を通過する円弧である。そして、センター陸部31の接地面10は、外側センター溝21のタイヤ幅方向内側の溝開口端P1oと内側センター溝22のタイヤ幅方向内側の溝開口端P1iとの間のタイヤ幅方向の寸法であるセンター陸部31の陸部幅Wccにおいて、各溝開口端P1o,P1iからタイヤ幅方向の中央部に向けて漸次曲線(または円弧)にてタイヤ径方向外側に突出している。即ち、言い換えると、センター陸部31の突出量Hccは、陸部幅Wccのタイヤ幅方向の端部である各溝開口端P1o,P1iに対する基準プロファイルPRccからの突出差となる。
また、内側ミドル陸部33の基準プロファイルPRciは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態(規定荷重=0)の子午断面視で、内側センター溝22における各溝開口端P1i,P2iおよび内側ショルダー溝24におけるタイヤ幅方向内側の溝開口端P3iの3点を通過する円弧である。そして、内側ミドル陸部33の接地面10は、内側センター溝22のタイヤ幅方向外側の溝開口端P2iと内側ショルダー溝24のタイヤ幅方向内側の溝開口端P3iとの間のタイヤ幅方向の寸法である内側ミドル陸部33の陸部幅Wciにおいて、各溝開口端P2i,P3iからタイヤ幅方向の中央部に向けて漸次曲線(または円弧)にてタイヤ径方向外側に突出している。即ち、言い換えると、内側ミドル陸部33の突出量Hciは、陸部幅Wciのタイヤ幅方向の端部である各溝開口端P2i,P3iに対する基準プロファイルPRciからの突出差となる。
従って、この空気入りタイヤ1によれば、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の接地面10が、基準プロファイルPRsoよりタイヤ径方向外側に共に突出して形成され、センター陸部31および内側ミドル陸部33の接地面10も、それぞれ基準プロファイルPRcc,PRciよりタイヤ径方向外側に突出して形成されていることで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34を含むタイヤ幅方向中央部の接地長、センター陸部31および内側ミドル陸部33のそれぞれのタイヤ幅方向中央部の接地長を確保することができる。このため、乾燥路面での操縦安定性能を向上することができる。特に、外側ミドル陸部32と外側ショルダー陸部34との間に周方向細である外側ショルダー溝23が設けられていることで、この外側ショルダー溝23の部分で接地長を確保することができる。接地長は、上述した接地領域におけるタイヤ周方向の寸法である。このため、乾燥路面での操縦安定性能を向上することができる。また、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の接地面10が、基準プロファイルPRsoよりタイヤ径方向外側に共に突出して形成され、センター陸部31および内側ミドル陸部33の接地面10も、それぞれ基準プロファイルPRcc,PRciよりタイヤ径方向外側に突出して形成されていることで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34を含むタイヤ幅方向中央部の接地圧、センター陸部31および内側ミドル陸部33のそれぞれのタイヤ幅方向中央部の接地圧を高めることができる。このため、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34を含むタイヤ幅方向中央部からタイヤ幅方向両側に向けて除水作用が向上し、センター陸部31および内側ミドル陸部33のそれぞれのタイヤ幅方向中央部タイヤ幅方向両側に向けて除水作用が向上して、湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
しかも、この空気入りタイヤ1によれば、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoに対し、センター陸部31の突出量Hccと内側ミドル陸部33の突出量Hciとが、Hcc<Hso、Hci<Hsoの関係を満たし、接地領域において他と比較して接地長が減少するタイヤ幅方向外側の外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoを、そのタイヤ幅方向内側に隣接するセンター陸部31の突出量Hccや内側ミドル陸部33の突出量Hciよりも大きくすることで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34とそのタイヤ幅方向内側との間で急激な接地長の減少を抑制することができ、接地性を良好とし、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能の向上に寄与することができる。この結果、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
しかも、この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部31の陸部幅Wccと外側ミドル陸部(第一側ミドル陸部)32の陸部幅WcoとがWco<Wccの関係を満たすことで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の外側ショルダー溝23を挟むタイヤ径方向外側への突出と、センター陸部31のタイヤ径方向外側への突出とのバランスを整え、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34と、センター陸部31との接地長や接地圧のバランスを整えることができる。このため、乾燥路面での操縦安定性能の向上効果、および湿潤路面での操縦安定性能の向上効果を顕著に得ることができる。
また、この空気入りタイヤ1によれば、車両に対する装着方向が指定されており、車両外側がタイヤ幅方向の第一側であり、車両内側がタイヤ幅方向の第二側である場合、車両外側のコーナリング時に接地圧が上昇する領域において、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の接地面10が、基準プロファイルPRsoよりタイヤ径方向外側に共に突出して形成されていることで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34のタイヤ幅方向中央部の接地長を確保し、乾燥路面での操縦安定性能の向上効果を顕著に得ることができ、かつ外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34のタイヤ幅方向中央部の接地圧を高め、タイヤ幅方向中央部からタイヤ幅方向両側に向けて除水作用を向上し、湿潤路面での操縦安定性能の向上効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部31の突出量Hccが0.2mm≦Hcc≦0.4mmの範囲であることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部31の突出量Hccを0.2mm以上とすることで、センター陸部31のタイヤ幅方向の中央部での接地圧を、そのタイヤ幅方向の両側の接地圧に近づけることができる。一方、センター陸部31の突出量Hccを0.4mm以下とすることで、センター陸部31のタイヤ幅方向の両側での接地圧の過度な低下を抑制することができる。この結果、センター陸部31における接地性を良好として、路面とのクリップ力を高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoが0.3mm≦Hso≦0.6mmの範囲であることが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoを0.3mm以上とすることで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34のタイヤ幅方向の中央部での接地圧を、そのタイヤ幅方向の両側の接地圧に近づけることができる。一方、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoを0.6mm以下とすることで、外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34のタイヤ幅方向の両側での接地圧の過度な低下を抑制することができる。この結果、外側ショルダー溝23を挟む外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34における接地性を良好として、路面とのクリップ力を高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部31の突出量Hccと外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の突出量Hsoとが1.2≦Hso/Hcc≦2.0の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部31における接地圧と、外側ショルダー溝23を挟む外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34における接地圧とのバランスを確保し、双方の接地性を良好として、センター陸部31よりも車両外側のコーナリング時に接地圧が上昇する外側ミドル陸部32および外側ショルダー陸部34の領域において、路面とのクリップ力を高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部31の突出量Hccと内側ミドル陸部33の突出量Hciとが0.9≦Hcc/Hci≦1.1の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部31の突出量Hccと内側ミドル陸部33の突出量Hciとが0.9≦Hcc/Hci≦1.1の関係を満たすことで、センター陸部31および内側ミドル陸部33において、接地圧の過度な変動を抑制することができ、これらの接地性を良好として、路面とのクリップ力を高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部31の接地面10において接地時にタイヤ幅方向の一方の周方向溝20に一端が連通して他端がセンター陸部31で終端するラグ溝51が存在し、外側ミドル陸部32の接地面10において接地時にタイヤ幅方向外側の外側ショルダー溝23に一端が連通して他端が外側ミドル陸部32で終端するラグ溝52が存在し、内側ミドル陸部33の接地面10において接地時にタイヤ幅方向外側の内側ショルダー溝24に一端が連通して他端が内側ミドル陸部33で終端するラグ53溝が存在することが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部31、外側ミドル陸部32、内側ミドル陸部33において、他端が陸部31,32,33で終端するラグ溝51,52,53が設けられていることで、各陸部31,32,33がリブ状に形成されて陸部剛性を確保し、接地性を良好として、路面とのクリップ力を高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能を向上することができる。さらに、他端が陸部31,32,33で終端するラグ溝51,52,53が設けられていることで、除水作用を確保するため、乾燥路面での操縦安定性能を維持しつつ湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部31の陸部幅Wccに対し、外側ミドル陸部32の陸部幅Wcoと、外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoと、内側ミドル陸部33の陸部幅Wciと、内側ショルダー陸部35の陸部幅Wsiとが0.7≦Wco/Wcc≦0.9、1.0≦Wso/Wcc≦1.2、0.7≦Wci/Wcc≦0.9、0.9≦Wsi/Wcc≦1.1の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部31の陸部幅Wccに対し、外側ミドル陸部32の陸部幅Wcoが0.7倍から0.9倍に形成され、センター陸部31の陸部幅Wccに対し、外側ショルダー陸部34の陸部幅Wsoが1.0倍から1.2倍に形成され、センター陸部31の陸部幅Wccに対し、内側ミドル陸部33の陸部幅Wciが0.7倍から0.9倍に形成され、センター陸部31の陸部幅Wccに対し、内側ショルダー陸部35の陸部幅Wsiが同等に形成されていることで、センター陸部31に対して各ショルダー陸部34,35の間の各ミドル陸部32,33の接地圧を弱め、その分各ショルダー陸部34,35の接地圧を高め、接地領域のタイヤ幅方向全体において、路面とのクリップ力をバランスよく高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、内側ショルダー陸部35の接地面10が基準プロファイルPRsiに対してタイヤ径方向外側に突出して形成されており、前記第一側ショルダー陸部の突出量Hsoと前記第二側ショルダー陸部の突出量Hsiとが0.9≦Hso/Hsi≦1.1の関係を満たすことが好ましい。
ここで、図3に示すように、内側ショルダー陸部35の基準プロファイルPRsiは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態(規定荷重=0)の子午断面視で、内側ショルダー溝24における各溝開口端P3i,P4iおよび車両内側の接地端Tの3点を通過する円弧である。そして、内側ショルダー陸部35の接地面10は、内側ショルダー溝24のタイヤ幅方向外側の溝開口端P4iと車両内側の接地端Tとの間のタイヤ幅方向の寸法が内側ショルダー陸部35の陸部幅Wsiにおいて、溝開口端P4iおよび車両内側の接地端Tからタイヤ幅方向の中央部に向けて漸次曲線(または円弧)にてタイヤ径方向外側に突出している。即ち、言い換えると、内側ショルダー陸部35の突出量Hsiは、陸部幅Wsiのタイヤ幅方向の端部である溝開口端P4iおよび車両内側の接地端Tに対する基準プロファイルPRsiからの突出差となる。
従って、この空気入りタイヤ1によれば、内側ショルダー陸部35の接地面10も、基準プロファイルPRsiよりタイヤ径方向外側に突出して形成されることで、内側ショルダー陸部35のタイヤ幅方向中央部の接地長も確保することができる。このため、乾燥路面での操縦安定性能を向上することができる。しかも、内側ショルダー陸部35の接地面10も、基準プロファイルPRsiよりタイヤ径方向外側に突出して形成されることで、内側ショルダー陸部35のタイヤ幅方向中央部の接地圧を高めることができる。このため、内側ショルダー陸部35のタイヤ幅方向中央部からタイヤ幅方向両側に向けて除水作用が向上し、湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。この結果、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。しかも、外側ショルダー陸部34の突出量Hsoと内側ショルダー陸部35の突出量Hsiとが0.9≦Hso/Hsi≦1.1の関係を満たすことで、外側ショルダー陸部34と内側ショルダー陸部35において、接地圧の過度な変動を抑制することができ、これらの接地性を良好として、路面とのクリップ力を高めることができ、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、乾燥路面での操縦安定性能(ドライ性能とも言う)および湿潤路面で操縦安定性能(ウエット性能とも言う)に関する性能試験が行われた(図4参照)。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが225/50R17 98Wサイズの試験タイヤである空気入りタイヤを、リムサイズ17×75Jの正規リムに組み付けて内圧230kPaを充填し、セダンタイプの試験車両の全後輪全てに装着した。
乾燥路面での操縦安定性能の評価方法は、乾燥路面のテストコースを走向し、専門のテストドライバーが制駆動性能やレーンチェンジ性能、コーナリング性能などに関してフィーリング評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が高いほど乾燥路面で操縦安定性能が優れていることを示している。
湿潤路面で操縦安定性能の評価方法は、湿潤路面のテストコースを走向し、専門のテストドライバーが制駆動性能やレーンチェンジ性能、コーナリング性能などに関してフィーリング評価を行う。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が高いほど湿潤路面で操縦安定性能が優れていることを示している。
図4において、従来例および実施例1〜実施例15の空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定されており、トレッド部の接地面にタイヤ周方向に延びる4本の周方向溝によりタイヤ幅方向に5本の陸部が区画形成されることで、タイヤ赤道面上のセンター陸部と、センター陸部の車両外側の外側ミドル陸部と、外側ミドル陸部の車両外側の外側ショルダー陸部と、センター陸部の車両内側の内側ミドル陸部と、内ミドル陸部の車両内側の内側ショルダー陸部と、を有してなり、外側ミドル陸部と外側ショルダー陸部との間の周方向溝が、他の3本の周方向溝よりも溝幅が細い周方向細溝として形成されている。
そして、従来例の空気入りタイヤは、各陸部の接地面が基準プロファイル上にあり、各陸部幅が同等である。一方、実施例1〜実施例16の空気入りタイヤは、センター陸部の陸部幅Wccと外側ミドル陸部の陸部幅WcoとがWco<Wccの関係を満たし、かつ外側ミドル陸部および外側ショルダー陸部の接地面が周方向細溝を跨ぐ基準プロファイルに対してタイヤ径方向外側に突出して形成され、センター陸部の接地面が基準プロファイルに対してタイヤ径方向外側に共に突出して形成され、内側ミドル陸部の接地面が基準プロファイルに対してタイヤ径方向外側に突出して形成されて、外側ミドル陸部および外側ショルダー陸部の突出量Hsoに対し、センター陸部の突出量Hccと内側ミドル陸部の突出量Hciとが、Hcc<Hso、Hci<Hsoの関係を満たす。
図4の試験結果に示すように、実施例1〜実施例16の空気入りタイヤは、乾燥路面での操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能が改善されていることが分かる。