JP2020000167A - 低温菌を用いたイタコン酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な操作のみで微生物を用いてイタコン酸を高効率で生産できるようにする。【解決手段】イタコン酸の製造方法は、アコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子が導入された組換え低温菌を準備するステップと、クエン酸を含む溶液に前記低温菌を反応させてイタコン酸を生産させるステップと、反応後に前記溶液の上清を回収するステップとを備えている。【選択図】なし

Description

本発明は、イタコン酸の製造方法に関し、特に低温菌を用いたイタコン酸の製造方法に関する。
イタコン酸は、水溶性モノマー、合成樹脂、合成繊維、印刷用インキ、接着剤、ラテックス、界面活性剤、コンタクトレンズ、シャンプー又は抗菌剤等のポリマー製品の原料や共重合剤、添加物、特にラテックス製品の重合剤として需要が高い有用な化学物質であり、その効率的な生産方法が求められている。これまでに、基質となるクエン酸の存在下で微生物を培養することにより、微生物の代謝酵素によってクエン酸からイタコン酸を生産する技術が研究されてきた。
近年、その生産効率を向上するために更なる研究がなされており、非特許文献1には、大腸菌にAspergillus terrus由来のシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子であるcadAを導入し、この遺伝子組換え大腸菌を用いて効率よくイタコン酸を生産させる方法が記載されている。非特許文献1では、基質となるクエン酸存在下で、上記遺伝子組換え大腸菌を培養することで、大腸菌がクエン酸を取り込み、クエン酸を自己由来のアコニターゼによりシスアコニット酸に変換し、シスアコニット酸を上記Aspergillus terrus由来のシスアコニット酸デヒドロゲナーゼによりクエン酸に変換する。これにより、非特許文献1では、効率よくクエン酸からイタコン酸を製造できるとしている。
しかしながら、クエン酸は、大腸菌自身の生存に重要な中央代謝経路を構成する中間産物であり、代謝によってクエン酸から所望のイタコン酸とは異なる副産物が生じることとなる。また、クエン酸からイタコン酸への生産が大腸菌自身の生育と競合することが懸念される。これらの理由から、非特許文献1に開示の方法では、上記大腸菌から望むような十分な量のイタコン酸が得られないと考えられる。また、大腸菌自身の生育との競合を解消するために、例えば代謝工学を利用して上記代謝における流量を制御することによって、クエン酸からイタコン酸への代謝を増大させることも考えられるが、その制御は極めて困難であり、工業的生産には適しない。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な操作のみで微生物を用いてイタコン酸を高効率で生産できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、低温菌にアコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子を導入し、当該低温菌を、クエン酸を含む溶液に反応させることにより、高効率でイタコン酸を生産できることを見出して本発明を完成した。
具体的に、本発明に係るイタコン酸の製造方法は、低温菌以外に由来するアコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子が導入された組換え低温菌を準備するステップと、クエン酸を含む溶液に前記低温菌を反応させてイタコン酸を生産させるステップと、前記反応後に前記溶液の上清を回収するステップとを備えていることを特徴とする。
本発明に係るイタコン酸の製造方法では、低温菌以外に由来するクエン酸からイタコン酸を生産するのに必要な酵素を発現する遺伝子を低温菌に導入しており、その組換え低温菌を用いることで上述の通り高効率でイタコン酸を生産できる。特に、その組換え低温菌を自身の生育に適する温度を超える、すなわち自身の代謝酵素の至適温度を超える温度環境下に置くことにより、クエン酸が低温菌自身の代謝よりも上記導入遺伝子により発現した酵素によって消費されるため、より高効率でイタコン酸を生産できる。また、導入する遺伝子が中温菌等に由来する遺伝子を採用し、上記反応ステップを例えば37℃前後で行うことで、クエン酸からイタコン酸への生産と低温菌自身の生育のための代謝との競合を抑制できて好ましい。以上により、本発明に係るイタコン酸の製造方法によると、上記のような簡便な方法でクエン酸から高効率でイタコン酸を生産することができる。
本発明に係るイタコン酸の製造方法は、クエン酸を含む溶液に前記低温菌を反応させる前に、前記低温菌を30℃〜50℃の温度で熱処理するステップをさらに備えていることが好ましい。また、熱処理は、35℃〜45℃で行うことがより好ましい。
このようにすると、熱処理により低温菌自身の代謝酵素が失活されるため、クエン酸を自己の生育のための代謝に用いられず、主にイタコン酸の生産に用いられるようになる。従って、クエン酸から不要な副産物が生産されず、イタコン酸の収率を向上することができる。さらに、熱処理により、低温菌の膜構造を変質して膜透過性を向上できるため、低温菌のクエン酸取り込み量を向上できてイタコン酸の生産に利用できるクエン酸量を向上できる。また、生産されたイタコン酸の低温菌外への放出量を向上することもできる。従って、熱処理という簡便な方法でより高効率でクエン酸からイタコン酸を生産することができる。
本発明に係るイタコン酸の製造方法において、アコニターゼ発現遺伝子としては、大腸菌由来のacnB遺伝子を用いることができる。また、シスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子としては、Aspergillus属の細菌に由来するcadA遺伝子を用いることができる。
本発明に係るイタコン酸の製造方法において、低温菌としては、Shewanella frigidimarinaを用いることができる。
本発明に係るイタコン酸の製造方法によると、簡便な操作のみで低温菌を用いてイタコン酸を高効率で生産できる。
Aspergillus terrus由来のシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子及び大腸菌由来のアコニターゼ発現遺伝子を発現させるためのpHA12−cadA−acnB発現プラスミドのマップを示す図である。 熱処理を受けた組換え低温菌とクエン酸とを混合した3時間後に、クエン酸、シスアコニット酸及びイタコン酸を定量した結果を示すグラフである。 大腸菌と、熱処理を受けていない組換え低温菌と、熱処理を受けた組換え低温菌のそれぞれのクエン酸を基質とするイタコン酸の生産能を比較したグラフである。 熱処理を受けた組換え低温菌におけるクエン酸接触後のクエン酸、シスアコニット酸及びイタコン酸の量の時間経過による変化を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明は、クエン酸から高効率でイタコン酸を生産するために、低温菌以外に由来するアコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子が導入された組換え低温菌を、クエン酸を含む溶液に反応させることによってイタコン酸を生産する方法である。
本発明において、低温菌は、比較的低温環境下、例えば30℃未満、好ましくは28℃未満の環境下で生育する細菌であり、特にそれ以上の環境下では自己の生育のための中央代謝経路に関わる酵素が失活する細菌であり、所謂好冷菌も含まれる。本発明では種々の低温菌を用いることが可能であり、利用可能な低温菌としては例えばShewanella属の細菌が挙げられ、その中でも例えばShewanellafrigidimarinaが挙げられるが、これに限られない。
本発明において、低温菌に導入されるアコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子は、低温菌の生育に適する28℃よりも高い温度の環境下で作用する代謝酵素を有する中温菌や高温菌、動物又は植物等に由来する。すなわち、後に説明する熱処理によって失活しないアコニターゼ及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼを発現する中温菌等に由来する。それらの遺伝子は、同一種に由来してもよいし、それぞれ異なる種に由来してもよい。例えば、大腸菌(E. coli)由来のアコニターゼ発現遺伝子acnBと、Aspergillusterrus由来のシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子cadAとを用いることができる。これらの遺伝子の低温菌への導入方法は、特に限られないが、例えば当該低温菌がこれらの遺伝子を発現できるプロモーターを有する発現ベクターに組み込み、接合伝達法等を利用して当該発現ベクターを低温菌に導入することによって行われる。
本発明において、上記のような中温菌に由来するアコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子を採用した場合、それらが導入された低温菌は、当該中温菌由来アコニターゼ及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼを発現させた後、至適温度又はそれに近い温度で反応されることが好ましい。このようにすると、低温菌の生育のための代謝酵素は作用し難い一方で、導入遺伝子によるアコニターゼ及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼは好適に作用するため、クエン酸を低温菌の代謝でなく主にイタコン酸の生産に利用できる。これにより、イタコン酸の収率を向上することができる。
また、本発明では、低温菌をクエン酸に接触させる前に、低温菌を熱処理することにより、低温菌自身の代謝酵素を失活させることが特に好ましい。本発明において、低温菌の熱処理は、低温菌の代謝に関わる酵素を失活できる温度以上で且つ上記の通り導入した遺伝子により発現するアコニターゼ発現及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼが失活する温度未満で行われる。また、低温菌の膜構造を変質して、膜透過性を向上できる温度以上であることが好ましい。例えば、熱処理は30℃〜50℃で行われ、好ましくは35℃〜45℃で行われる。また、例えば、低温菌としてShewanella frigidimarinaを用い、導入遺伝子として大腸菌由来のアコニターゼ発現遺伝子acnBと、Aspergillus terrus由来のシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子cadAとを用いた場合、40℃前後の温度で熱処理することが好ましい。また、熱処理時間は、上記失活及び膜変質ができれば特に限定されないが、例えば5分〜10分程度で行うことができる。
本発明において、低温菌により生産されたイタコン酸の回収は、例えば低温菌をその反応液と共に回収し、遠心分離処理を行うことによって反応液の上清のみを回収することで行われるが、低温菌と上清を分離できて、イタコン酸を含む上清のみを回収できる方法であれば上記方法に限られない。また、この回収工程後に、例えばクロマトグラフィー法等を用いたイタコン酸の精製工程を含むことが好ましい。
本発明において、イタコン酸の生産のための材料となるクエン酸の由来は、特に限定されないが、例えば焼酎粕のようなクエン酸を含有する産業廃棄物として廃棄される製品等に由来するクエン酸を用いることで不要品を有効利用できるため好ましい。
以下に、本発明に係るイタコン酸の製造方法について詳細に説明するための実施例を示す。
まず、低温菌に導入するためのAspergillus terrus由来のシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子cadA(配列番号1)、及び大腸菌(E.coli)由来のアコニターゼ発現遺伝子acnB(配列番号2)の発現プラスミドの構築について説明する。cadA及びAcnBはそれぞれKOD plus Neo (KOD-401, TOYOBO)を用いたPCR法で増幅した。具体的に、cadAはAspergillus terrus由来のcadA(Gene ID: 4319646)の人工合成遺伝子(配列番号3)をpUCIDT-AMPベクター(Integrated DNA Technologies社)にクローニングしたプラスミドpUCIDT-AMP: 1_ATEG_09971を鋳型として、CAD_F (5´-ATGCGAATTCGGAGAGATGAACAATGACTAAGCAATCAGCAGA-3´:配列番号4)及びCAD_R (5´-ATGCGGTACCTTATACCAGCGGCGATTTTAC-3´:配列番号5)をプライマーに用いて増幅した。なお、配列番号3の人工合成遺伝子の配列は、配列番号1のAspergillusterrus由来CadAの配列と異なる部分があるが、これは、合成の際にShewanellafrigidimarinaのゲノム情報より得られているコドン頻度に合うようにアミノ酸配列を変えない範囲で別のコドンに置換したためである。一方、acnBは大腸菌BL21(Takara, 9126)のゲノムDNAを鋳型にし、AcnB_F(5´-ATGCCCCGGGAGAGATGAACAGTGCTAGAAGAATACCGTAA-3´:配列番号6)及びAcnB_R (5´-ATGCAAGCTTAAACCGCAGTCTGGAAAATCA-3´:配列番号7)をプライマーに用いて増幅した。PCR法の反応条件は94℃で2分の後に(94℃で15秒、58℃で30秒、68℃で2分)×25サイクルとし、反応液中の組成はKOD plus Neoの説明書に従って行った。
なお、大腸菌BL21のゲノムDNAの抽出は以下のように行った。まず、一晩培養した大腸菌BL21を培養液より遠心分離(20400×g、2分)にて回収し、10g/Lリゾチームを含む540μLのGTE(50mMGlucose、25mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA)で懸濁し、37℃で2時間反応させた。その後、10mg/μLプロテナーゼKを5μLと、10%w/vドデシル硫酸ナトリウムを60 μLとを加えて混合し、50℃で1時間保持した。氷冷後にフェノール/クロロホルム溶液(TE(10mMTris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA)飽和フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1)を600μL加え、この溶液を含むチューブを10分間反転して混合した。遠心分離(20400×g、5分)後、上層の溶液を新しいマイクロチューブに分取し、フェノール/クロロホルム溶液による精製を繰り返した。遠心分離(20400×g、5分)により得た上層の溶液に3MのCHCOOKを40μLと99.5%w/vエタノールを1mL加えて−20℃で30分置いた。遠心分離(20400×g、5分)にて得られた沈殿を70%w/vエタノールで洗浄して50μg/mLRNaseを含むTE50μLに溶解した。以上により大腸菌BL21のゲノムDNAを抽出した。
その後、得られたPCR産物をpHA12ベクター(Agric. Biol. Chem., 55(9), 2431-2432, 1991)に導入した。具体的に、pHA12、及びAcnB_FとAcnB_Rとを用いて得られたPCR増幅産物を制限酵素SmaI及びHindIII (FastDigest, Thermo)で処理し、電気泳動して当該サイズの断片を抽出・精製し、Ligation High Ver.2 (LGK-201, TOYOBO)でライゲーションを行った。ライゲーションにより得られた産物を常法で大腸菌DH5α株に形質転換し、100mg/Lアンピシリン含有のLysogeny Broth(LB)培地プレート(10g/L トリプトン、10g/L NaCl、5g/L酵母エキス、1.5g/L アガー)で形成したコロニーからpHA12−acnBを得た。次にpHA12−acnB、及びCAD_FとCAD_Rとを用いて得られたPCR増幅産物を制限酵素EcoRI及びKpnI(FastDigest, Thermo)で処理し、電気泳動して当該サイズの断片を抽出・精製し、ライゲーションを行った。ライゲーションにより得られた産物を常法で大腸菌DH5α株に形質転換し、100mg/Lアンピシリン含有のLB培地プレートにて形成したコロニーからpHA12−cadA−acnB発現プラスミド(図1を参照)を得た。なお、上記制限酵素反応はいずれも37℃で30分間、ライゲーション反応は16℃で30分間行った。
次に、得られたpHA12−cadA−acnB発現プラスミドを用いて、cadA及びacnBを発現する組換え低温菌を作製した。低温菌にはShewanella frigidimarinaを用い、接合伝達法によりShewanellafrigidimarinaに上記発現プラスミドを導入した。具体的に、まず、大腸菌S17−1株に常法でpHA12−cadA−acnBを形質転換した株を、LB培地において37℃で一晩培養し、その一方でShewanella frigidimarinaをTryptic Soy Broth (TSB)培地(Difco, USA)において18℃で30時間培養した。その後、それぞれの培養液から細胞を遠心分離(3300×g、3分)にて回収し、抗生物質を含まないLB培地で洗浄後、それぞれの細胞懸濁液を混合してLB寒天培地に滴下して18℃で1日間培養した。その後、細胞を滅菌水にて寒天培地より洗い出して10倍から1000倍に希釈して懸濁し、50mg/Lリファンピシンと100mg/L アンピシリンを添加したTSB寒天培地に塗付し、18℃で5日間培養してコロニーを形成させることで上記遺伝子が導入されたShewanella frigidimarinaの形質転換株(組換え低温菌)を得た。
次に、上記の通りに得られた組換え低温菌を用いて、クエン酸を基質としたイタコン酸の生産方法及びその定量方法について以下に説明する。まず、上記組換え低温菌を100mg/Lアンピシリンと50mg/L リファンピシンとを含む4mLのTSB培地で48時間前培養し、これを200mLのTSB培地に接種して本培養を行った。培養開始から20時間後にイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG;終濃度100μM)を添加して遺伝子発現を誘導した。その後に4℃で5000×g、10分間遠心分離して細胞を回収し、50mMリン酸緩衝液(0.41%(w/v)NaHPO、0.57%(w/v)NaHPO、pH6.5)で2回洗浄し、OD660=20になるように懸濁液を調整した。その後、懸濁液に対して40℃で5分間の熱処理を行い又は行わずに、懸濁液と、50mMクエン酸溶液と、200mMリン酸緩衝液(1.64%(w/v)NaHPO、2.26%(w/v)NaHPO、pH6.5)とを混合して37℃で反応した。反応後、80℃で15分間の熱処理をすることによりシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ及びアコニターゼを失活させ、20400×gで10分間遠心して上清を得た。上清中のイタコン酸、シスアコニット酸及びクエン酸を、有機酸分析用カラム(KC-811, Shodex)を備えた液体クロマトグラフィーにてUV検出器(210nm)で測定した。
上記方法を利用して、実際に低温菌を用い、クエン酸を基質としてイタコン酸がどの程度の収率で得られるかを評価した。具体的に、上記方法において、組換え低温菌の懸濁液に対して40℃で5分間の熱処理を行い、50mMクエン酸と混合して37℃で3時間反応させた場合のイタコン酸、シスアコニット酸及びクエン酸のそれぞれを定量した。その結果を図2に示す。
図2に示すように、最初に50mMの濃度で存在したクエン酸はそのほとんどが消費されておりわずかに検出されたのみであり、中間産物であるシスアコニット酸もほとんど検出されなかった。一方、イタコン酸は40mM以上の濃度で検出され、80%〜90%程度の収率が認められた。この結果から、本発明の方法によると、極めて高い収率でイタコン酸を生産できることが明らかである。
次に、上記組換え低温菌を用いた場合と大腸菌を用いた場合とでイタコン酸の生産能を比較し、さらに、組換え低温菌においてクエン酸との接触前の40℃の熱処理を行った場合と行っていない場合とでイタコン酸の生産能を比較した。本試験では、上記方法を利用して、特にクエン酸との反応時間を1時間とし、組換え低温菌に対しては40℃で5分の熱処理をした場合と、していない場合との2群を作製した。また、大腸菌には、予め当該組換え低温菌と同様にpHA12−cadA−acnB発現プラスミドを導入して、上記熱処理は行わずに上記方法のイタコン酸の生産方法を行った。その結果を図3に示す。なお、図3では、それぞれの細胞破砕液をクエン酸と反応して得られたイタコン酸生産量を100%とした場合の相対量(%)を示す。また、大腸菌のデータについては大腸菌の細胞破砕液を用い、低温菌のデータについては低温菌の細胞破砕液を用いた。
図3に示すように、pHA12−cadA−acnB発現プラスミドを導入した大腸菌では、3%程度のイタコン酸の生産量であったが、熱処理をしていない組換え低温菌の場合では13%程度の生産性が認められた。さらに、熱処理をした組換え低温菌では22%程度にまで向上がみられた。以上の結果から、従来のように大腸菌を用いるよりも、本発明のように低温菌を用いる方が高い収率でイタコン酸が得られることが示された。さらに、低温菌に対して熱処理をすることの有効性が認められた。これは、熱処理により、低温菌由来の代謝酵素が失活して、クエン酸からイタコン酸の生産が低温菌自身の代謝と競合することを抑制し、さらに、低温菌の膜構造を変質して膜透過性を向上できたため、低温菌によるクエン酸の取り込み効率が向上したことに起因すると考えられる。
次に、熱処理を受けた組換え低温菌にクエン酸を処理した後のクエン酸、シスアコニット酸及びイタコン酸の量の時間経過による変化について検討した。本試験では、上記方法を利用し、但し、組換え低温菌の懸濁液と混合するクエン酸の量を200mMとし、その混合から0、1、2、3、4、5、7、8、10及び24時間経過時にクエン酸、シスアコニット酸及びイタコン酸の量を測定した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、組換え低温菌とクエン酸との混合後、時間経過と共にクエン酸の量は減少し、イタコン酸の量は増大した。特に10時間までの間で、多くのクエン酸を消費して多くのイタコン酸が生産されたことが示された。なお、中間産物であるシスアコニット酸の量はほぼ変化は無かった。また、24時間後において、最初のクエン酸の添加量に対するクエン酸の消費量である変換率は90.4%であり、クエン酸消費量に対するイタコン酸生成量である収率は83.4%であった。この結果から、本発明によると、極めて高い収率でクエン酸からイタコン酸を生産できることが示された。
以上の結果から、本発明に係るイタコン酸の製造方法によると、大腸菌を用いる従来の方法と比較して簡便な操作のみで低温菌を用いてイタコン酸を高効率で生産できることが示された。さらに、低温菌に熱処理をすることで、その効率をさらに向上できることが示された。

Claims (6)

  1. 低温菌以外に由来するアコニターゼ発現遺伝子及びシスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子が導入された組換え低温菌を準備するステップと、
    クエン酸を含む溶液に前記低温菌を反応させてイタコン酸を生産させるステップと、
    前記反応後に前記溶液の上清を回収するステップとを備えていることを特徴とするイタコン酸の製造方法。
  2. クエン酸を含む溶液に前記低温菌を反応させる前に、前記低温菌を30℃〜50℃の温度で熱処理するステップをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記熱処理は、35℃〜45℃で行うことを特徴とする請求項2に記載のイタコン酸の製造方法。
  4. 前記アコニターゼ発現遺伝子は、大腸菌由来のacnB遺伝子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイタコン酸の製造方法。
  5. 前記シスアコニット酸デヒドロゲナーゼ発現遺伝子は、Aspergillus属の細菌に由来するcadA遺伝子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイタコン酸の製造方法。
  6. 前記低温菌は、Shewanella frigidimarinaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のイタコン酸の製造方法

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