JP2020000120A - レタスユビキチンプロモーターを含む組換えタンパク質発現用遺伝子構築物 - Google Patents

レタスユビキチンプロモーターを含む組換えタンパク質発現用遺伝子構築物 Download PDF

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Abstract

【課題】植物細胞を利用した目的遺伝子の発現において、発現遺伝子のサイレンシングを起こさず、後代に渡って安定した発現量を維持し、かつ、種子を効率的に採種できる技術を提供すること。【解決手段】レタスユビキチンプロモーターとシロイヌナズナ熱ショックタンパク質18.2ターミネーターを用いて組換えタンパク質をレタスなどの植物細胞で発現させる。【選択図】図1

Description

本発明は植物細胞を利用した遺伝子組換え技術に関し、より詳しくは、植物細胞を利用した遺伝子組換えタンパク質の生産技術に関する。
遺伝子組換え生物を用いた有用タンパク質の生産においては、当該タンパク質を生産する宿主を安定的に維持することと商業生産規模にまで生産スケールを拡大することが必要である。医薬品製造においてはこれらの工程が厳密に管理されることが重要であるところ、植物を宿主とした場合には、遺伝子組換え植物を一旦作出すれば種子の形で当該植物を長期保管し、かつ生産規模を拡大することが可能と考えられる。従って、種子を介した生産系においては組換え遺伝子が後代でも安定的に発現することと組換え植物種子を安定的に取得することが求められる。
従来、植物において外来遺伝子を発現させる場合、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の35Sプロモーターが汎用されている。
35Sプロモーターを用いた場合には、後代で遺伝子のサイレンシング(目的タンパク質の生産量の低下)が起こることが報告されている(非特許文献1〜3)。したがって、後代種子を用いて安定的に外来遺伝子を発現させるためにはサイレンシングを回避する技術が必要であった。
また、35Sプロモーター含む遺伝子発現用カセットを遺伝子組換えレタスに組み込んだ場合、後代種子の採種量が著しく少なくなることが分かり、当該レタスの商業化のためには採種効率を大幅に向上させる課題があった。
さらに、35Sプロモーターを用いた場合には、高光強度条件下で発現が低下することが報告されている(非特許文献4)。一般に、高光強度で植物の生育が促進されるため、高光強度条件下でも発現が低下しない発現システムの構築が課題であった。
さらに、非特許文献2には、レタスのユビキチンプロモーターとユビキチンターミネーターを含む遺伝子発現カセットが開示されているが、発現効率には改善の余地があり、上記のような高光強度条件下での発現量や後代種子の成熟種子の採種量については検討されていなかった。
Pniewski et al., Plant Cell Rep. 2012, 31:585-95 Hirai et al., Plant Cell Rep. 2011, 30:2255-65 Dubois et al., J. Exp. Bot. 2005 56: 2379-88 Elliott et al., Plant Cell 1989,1:691-8
上記のように35Sプロモーターなど従来のプロモーターを用いた場合は、後代種子の採種量の減少やサイレンシングや高光強度条件下で発現低下などの問題があった。
そこで、本発明は、遺伝子組換え植物の成熟種子を効率的に採種すること、遺伝子サイレンシングを回避すること、及び高光強度でも目的とする外来遺伝子の発現が低下しない発現システムを構築すること、を課題とする。
本発明者らはまず遺伝子サイレンシングを起こしにくい発現系の構築を目指して鋭意検討を行った。そして、レタスユビキチンプロモーター及びシロイヌナズナ熱ショックタンパク質18.2(HSP18.2)ターミネーターを含む遺伝子構築物(遺伝子発現カセット)を作製し、目的遺伝子を組み込んでレタスで発現させたところ、遺伝子サイレンシングを起こさず、高効率で目的遺伝子を発現できることを見出した。その際、全く予期しなかった効果として、組換えレタスの採種数が向上し、後代にわたって安定的に採種可能であることを見出した。さらに、当該遺伝子発現カセットを用いた場合に、高光強度でも目的遺伝子の発現が低下しないという効果も見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下を提供する。
[1] レタスユビキチンプロモーターとシロイヌナズナ熱ショックタンパク質18.2(HSP18.2)ターミネーターを含む、組換えタンパク質発現用遺伝子構築物。
[2]レタスユビキチンプロモーターが、配列番号1の塩基配列を含むDNA、又は配列番号1の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、植物細胞内でプロモーターとして機能するDNAである、[1]に記載の遺伝子構築物。
[3]シロイヌナズナHSP18.2ターミネーターが、配列番号2の塩基配列を含むDNA、又は配列番号2の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、植物細胞内でターミネーターとして機能するDNAである、[1]又は[2]に記載の遺伝子構築物。
[4]さらに、翻訳エンハンサー配列を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子構築物。
[5]目的タンパク質をコードするDNAを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の遺伝子構築物。
[6]目的タンパク質が、細菌毒素タンパク質及び/又はウイルス由来タンパク質である、[5]に記載の遺伝子構築物。
[7]目的タンパク質が、2つ以上のタンパク質の融合タンパク質である、[5]又は[6]に記載の遺伝子構築物。
[8]融合タンパク質が、2つ以上のタンパク質がペプチドリンカーで連結された融合タンパク質である、[7]に記載の遺伝子構築物。
[9]目的タンパク質が分泌シグナルペプチドを含む、[5]〜[8]のいずれかに記載の遺伝子構築物。
[10]目的タンパク質がペプチドタグを含む、[5]〜[9]のいずれかに記載の遺伝子構築物。
[11]目的タンパク質が小胞体残留シグナルペプチドを含む、[5]〜[10]のいずれかに記載の遺伝子構築物。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の遺伝子構築物を含む、ベクター。
[13] [1]〜[11]のいずれかに記載の遺伝子構築物、又は[12]に記載のベクターで形質転換された、遺伝子組換え植物。
[14]レタスである、[13]に記載の遺伝子組換え植物。
[15] [13]又は[14]に記載の遺伝子組換え植物から得られる種子。
[16] [13]又は[14]に記載の遺伝子組換え植物であって、目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物を栽培する工程を含む、目的タンパク質の製造方法。
[17]栽培を300〜600 PPFDの光強度下で行う、[16]に記載の目的タンパク質の製造方法。
[18]レタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物で形質転換され、目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物を300〜600 PPFDの光強度下で栽培する工程を含む、目的タンパク質の製造方法。
[19]目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物において、該植物から得られる成熟種
子の量を増加させる方法であって、レタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物を用いて植物を形質転換し、該形質転換植物を栽培することを特徴とする方法。
[20]前記形質転換植物は水耕栽培により栽培される、[19]に記載の方法。
[21]前記植物から得られる成熟種子の量は植物の一株(個体)あたりの成熟種子数である、[19]又は[20]に記載の方法。
[22]前記植物から得られる成熟種子の量は植物の一集合花あたりの成熟種子数である、[19]又は[20]に記載の方法。
本発明の遺伝子構築物を用いることにより、植物を宿主として目的遺伝子を高効率に発現させることができ、タンパク質生産の収率を向上させることができる。本発明の遺伝子構築物を用いて形質転換された植物は後代でも遺伝子発現が低下しないため、種子を介した安定的な生産システムが構築可能となる。また、高光強度でも遺伝子発現が低下しないので、高光強度条件下での効率的な組換えタンパク質生産が可能となる。さらに、遺伝子組換え植物の成熟種子を安定的に大量に取得できるようになったため、これを保管し、生産規模の拡大ができるようになった。
実施例で使用された、各組換えタンパク質発現用遺伝子構築物を示す図。略称は以下の通り。 NOST: A.tumefaciensノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター NPTII:選択マーカー NOS pro.: A.tumefaciensノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター NtADHmod 5′-UTR: タバコ由来アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の改変5’-非翻訳領域 SP: タバコのβ-Dグルカンエキソヒドロラーゼ由来分泌シグナルペプチド HA: HA ペプチドタグ HDEL: 小胞体残留シグナルペプチド MCS:マルチクローニングサイト 35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタス系統における各世代での組換えタンパク質の発現量を示す図。 UBQ::Stx2eB-Stx2eB導入レタス系統2系統(A:18-1、B:5-1)における後代での組換えタンパク質の発現量を示す図。 各レタス系統での成熟種子採種数を示す図。各系統について、後代(T5世代)に渡る複数株(個体)から採種し、成熟種子採種数の平均と標準偏差を示す。同じアルファベットの間では有意差(p<0.05)が無いことを示す。比較対象として、野生型(WT)のレタスも同条件で採種した。 35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタスの種子の形態を示す図(写真)。左は成熟種子、右は未成熟種子である。 各系統における、集合花あたりの成熟種子数を示す図。同じアルファベットの間では有意差(p<0.05)が無いことを示す。比較対象として、野生型(WT)のレタスも同条件で採種し計測した。 各種融合タンパク質遺伝子導入レタスにおける成熟種子採種数を示す図。各発現カセット導入レタスのT0世代の数系統について採種を行った。株(個体)あたりの成熟種子数を計測し、同一発現カセットの系統間の平均値と標準偏差を示す。
以下、本発明の形態について説明する。
<レタスユビキチンプロモーター>
レタスユビキチンプロモーターは、レタスゲノム配列においてレタスユビキチン遺伝子の転写開始点よりも上流に存在し、レタスユビキチン遺伝子の発現を誘導する配列を意味するが、例えば、米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供する塩基配列データベースであるGenBankにアクセションNO.AB500086.1で登録されている配列又はその一部を含むDNAが挙げられる。
また、配列番号1の塩基配列を含むDNAが挙げられるが、植物体内でプロモーター活性を有するDNAである限りにおいて、配列番号1の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、挿入及び/又は付加された塩基配列を有するDNAでもよい。ここで、「1又は複数の塩基」とは、例えば、1〜50個、1〜30個、1〜10個、又は1〜5個の塩基を意味する。このようなDNAには、配列番号1の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、植物体内でプロモーター活性を有するDNAが含まれる。
ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、同一性が高い二つのDNA同士、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有する2つのDNAがハイブリダイズするが、それより同一性の低い2つのDNAがハイブリダイズしない条件が挙げられる。例えば60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。すなわち、レタスユビキチンプロモーターは、プロモーター活性を有する限り、配列番号1の塩基配列と80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列を有するものであってもよい。
なお、プロモーター活性は、プロモーター配列の3’側に目的遺伝子を連結し、宿主細胞に導入して目的遺伝子の発現を調べることによって検出することができる。
レタスユビキチンプロモーターは、レタスのゲノムを鋳型にしてPCRなどの手法によって得ることができる。また、プロモーターに置換や欠失を導入することは、公知の部位特異的変異導入法等によって行うことができる。
<シロイヌナズナHSP18.2ターミネーター>
シロイヌナズナHSP18.2ターミネーターは、シロイヌナズナゲノム配列においてHSP18.2遺伝子の終止コドンよりも下流に存在し、HSP18.2遺伝子の転写を終結させる配列を意味するが、例えば、配列番号2の塩基配列を含むDNAが挙げられる。ただし、植物体内でターミネーター活性を有するDNAである限りにおいて、配列番号2の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、挿入及び/又は付加された塩基配列を有するDNAでもよい。ここで、「1又は複数の塩基」とは、例えば、1〜50個、1〜30個、1〜10個、又は1〜5個の塩基を意味する。このようなDNAには、配列番号2の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、植物体内でターミネーター活性を有するDNAが含まれる。なお、ストリンジェントな条件は上述した通りである。HSP18.2ターミネーターには核マトリクス結合ドメイン(matrix attachment region, MAR)が含まれると推定され、効率よく転写終結が起こると考えられる。
シロイヌナズナHSP18.2ターミネーターは、シロイヌナズナのゲノムを鋳型にしてPCRなどの手法によって得ることができる。また、ターミネーターに置換や欠失を導入することは、公知の部位特異的変異導入法等によって行うことができる。
本発明の遺伝子構築物は、上記レタスユビキチン(UBQ)プロモーターと、その下流
(3’側)にシロイヌナズナHSP18.2ターミネーターを含むものであればよいが、目的タンパク質をコードする遺伝子(目的遺伝子)をUBQプロモーターとHSP18.2ターミネーターの間に配置するために、該プロモーターと該ターミネーターの間にマルチクローニングサイト(複数の制限酵素認識配列を含む部位)を含むことが好ましい。
前記プロモーターと前記ターミネーターの間に目的タンパク質をコードする遺伝子(目的遺伝子)を発現可能な状態で連結し、ベクターなどを利用して宿主細胞に導入することにより、目的タンパク質を宿主細胞で発現させることができる。すなわち、本発明の遺伝子構築物は目的遺伝子を含むものであってもよい。
<目的タンパク質>
目的タンパク質の種類は宿主細胞で発現しうるものであれば特に制限されないが、成長因子、ホルモン、サイトカイン、血液タンパク質、酵素、抗原、抗体、転写因子、受容体又はそれらの部分ペプチドなどが挙げられる。タンパク質の由来は特に制限されず、例えば、ヒトなどの哺乳動物由来でもよいし、植物由来でもよいし、細菌や酵母由来でもよい。
酵素としては、例えば、リパーゼ、プロテアーゼ、ステロイド合成酵素、キナーゼ、フォスファターゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、酸化酵素、還元酵素、セルラーゼ、アロマターゼ、コラゲナーゼ、トランスグルタミナーゼ、グリコシダーゼ及びキチナーゼが挙げられる。
成長因子としては、例えば、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)が挙げられる。
ホルモンとしては、例えば、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レプチン、カルシトニンが挙げられる。
サイトカインとしては、例えば、インターロイキン、インターフェロン(IFNα、IFNβ、IFNγ)、腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
血液タンパク質としては、例えば、トロンビン、血清アルブミン、VII因子、VIII因子、IX因子、X因子、組織プラスミノゲン活性化因子が挙げられる。
抗体としては、例えば、完全抗体、Fab、F(ab')、F(ab')、Fc、Fc融合タンパク質、重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、単鎖Fv(scFv)、sc(Fv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Diabodyが挙げられる。
ワクチンとして使用される抗原タンパク質は、投与対象において免疫応答を惹起できるものであれば特に制限されず、想定する免疫応答の対象に応じて適宜選択すればよいが、例えば、病原性細菌由来のタンパク質や病原性ウイルス由来のタンパク質が挙げられる。
病原性ウイルス由来のタンパク質としては、特に限定されないが、パルボウイルスのカプシドタンパク質VP2、ネコ免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質gp120、ブタ流行性下痢ウイルスのスパイクタンパク質、又はロタウイルスのカプシドタンパク質VP7などが挙げられ(国際公開WO 2017/094793号パンフレット)、これらの部分配列でもよい。ま
た、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスのGlycoprotein 5 (GP5)のウイルス外領域(ectGP5)でもよい(国際公開WO2016/021276号パンフレット)。
病原性細菌由来のタンパク質としては、特に限定されないが、大腸菌耐熱性毒素(ST)由来ペプチド、志賀毒素由来ペプチド、大腸菌易熱性毒素由来ペプチド及びコレラ毒素由来ペプチドが例示される。
<Stx2eB>
志賀毒素(Stx)は、浮腫病の原因となる腸管出血性大腸菌(EHEC, STEC)が産生するタンパク質性毒素で、1型(Stx1)及び2型(Stx2)に分けられる。Stx1は、a〜dのサブクラスに、Stx2はa〜gのサブクラスにそれぞれ分類される。毒性本体であるAサブユニット1分子と腸管粘膜への結合に働くBサブユニット5分子からなるホロ毒素で、真核細胞のリボソームに作用して、タンパク質合成を阻害する働きを持つ。
この中では、Stx2eのBサブユニット(Stx2eB)が好ましく、Stx2eBは、例えば、配列番号4のアミノ酸配列で表され、Stx2eBをコードする塩基配列は配列番号3で表される。また、Stx2eBは、Asn73(すなわち、配列番号4のアミノ酸配列の55位のAsn残基)がSer残基に置換されている変異型でもよい。野生型のStx2eBはこのAsn残基においてN−結合型の糖鎖修飾を受けるが、この変異体はN−結合型の糖鎖修飾を受けない。
また、Stx2eBは、配列番号4のアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有し、かつブタや鶏等の動物に投与して免疫応答を引き起こすことができるものであってもよい。
<LTB>
大腸菌性下痢症は、毒素原性大腸菌(ETEC)が生産するタンパク質性毒素LTが原因であり、LTは大腸菌易熱性毒素とも呼ばれる。LTは、毒性本体であるAサブユニット1分子とBサブユニット5分子からなるホロ毒素である。LTのAサブユニット(LTA)は細胞質内に侵入し、細胞内cAMP濃度を上昇させ、細胞膜クロライドチャネルを活性化することで腸管内への水の漏出すなわち下痢の病態を引き起こす。LTのBサブユニット(LTB)は無毒であり、LT毒素と腸管細胞との接着に関与する。
この中ではLTBが好ましく、LTBは、例えば、配列番号6のアミノ酸配列で表され、LTBをコードする塩基配列は配列番号5で表される。また、LTBは、配列番号6で表されるアミノ酸配列と、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有し、かつブタや鶏等の動物に投与して免疫応答を引き起こすことができるものであってもよい。
LTBには糖鎖が付加されていてもよい。例えば、LTBの90位(すなわち、配列番号6の90位)のAsn残基にN−結合型の糖鎖が付加される。一方、配列番号6の90位がSer残基に置換された変異型LTBはN−結合型の糖鎖修飾を受けない。
<CTB>
コレラ毒素(CT)タンパク質は、毒性本体である1つのAサブユニット(CTA)と、腸管粘膜への侵入へ関与する5つのBサブユニット(CTB)からなる。
この中ではCTBが好ましく、CTBは、例えば、配列番号8のアミノ酸配列で表され、CTBをコードする塩基配列は配列番号7で表される。また、CTBは、配列番号8で表されるアミノ酸配列と、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有し、かつブタや鶏等の動物に投与して免疫応答を引き起こすことができるものであってもよい。
上記の細菌毒素タンパク質やウイルス由来タンパク質などのタンパク質は、2つ以上のタンパク質が結合した融合タンパク質であってもよい。2以上としては、好ましくは、2〜5であり、より好ましくは2〜3であり、さらに好ましくは2である。
2つ以上のタンパク質の融合タンパク質としては、2つ以上の異種タンパク質の融合タンパク質でもよいし、2つ以上の同種タンパク質の融合タンパク質でもよい。
例えば、志賀毒素2eのBサブユニット(Stx2eB)、大腸菌易熱性毒素のBサブユニット(LTB)及びコレラ毒素のBサブユニット(CTB)から選択される2以上の毒素Bサブユニットの融合タンパク質を含む。これらの毒素タンパク質から選択される2種以上の異種タンパク質の融合タンパク質とすることで、複数の毒素に対するワクチンとすることができる。
また、これらの細菌毒素タンパク質と上記ウイルス由来のタンパク質の融合タンパク質でもよい。毒素タンパク質とウイルス由来のタンパク質の融合タンパク質とすることで、細菌毒素とウイルスに対するワクチンとすることができる。
融合タンパク質の好ましい実施形態では、融合タンパク質を構成する各タンパク質は、ペプチドリンカーを介してタンデムに連結される。
ペプチドリンカーのアミノ酸の個数は、例えば5〜30個、好ましくは10〜25個、さらに好ましくは10〜22個、より好ましくは12〜22個である。また、ペプチドリンカーにおけるプロリンの含有率が好ましくは20〜27%、より好ましくは、20〜25%である。ペプチドリンカーにおいて、プロリンは、好ましくは2つ置き、又は3つ置きに(2又は3個の他のアミノ酸を挟んで)配置される。プロリンの間に配置されるアミノ酸は、好ましくは、グリシン、セリン、アルギニンから選択される。但し、ペプチドの一方又は両方の末端においては、プロリン以外のアミノ酸が、5つ以内、好ましくは4つ以内の範囲で付加されていてもよい。このような好ましいペプチドリンカーは、例えば、国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されている。また、国際公開WO 2017/115853号パンフレットに記載されたペプチドリンカーも好ましく用いることができる。
本発明において、ペプチドリンカーは、好ましくは、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG12)や配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PG12-20v7)である。ペプチドリンカーは、好ましくは、配列番号10又は12で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと80%以上、好ましくは90%以上の同一性を有するペプチドであってもよい。
目的タンパク質は、分泌生産用に、植物細胞で機能する分泌シグナルペプチドが付加されていてもよい。例えば、ナス科(Solanaceae)、バラ科(Rosaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)に属する植物、さらに好ましくはタバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、オランダイチゴ属(Fragaria)、アキノノゲシ属(Lactuca)等に属する植物、好ましくはタバコ(Nicotiana tabacum)、シロイヌナズナ(Arabidopsisthaliana)、オランダイチゴ(Fragaria×ananassa)、レタス(Lactuca sativa)等に由来する分泌シグナルが挙げられる。
より具体的には、分泌シグナルペプチドは、タバコのβ-Dグルカンエキソヒドロラーゼに由来し、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有しているペプチドが挙げられる。タバコのβ-DグルカンエキソヒドロラーゼをコードするDNAの塩基配列は、例えば配列番号13で表される。
さらに、目的タンパク質は、特定の細胞区画で発現させるために、小胞体残留シグナルペプチド、液胞移行シグナルペプチド等の輸送シグナルペプチドが付加されていてもよい。
好ましい小胞体残留シグナルペプチドは、例えば、国際公開WO2009/004842号パンフレット及び国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されているが、HDEL配列(配列番号15)を利用することができる。
液胞移行シグナルペプチドは、例えば、国際公開WO2009/004842号パンフレット及び国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されている。
葉緑体移行シグナルペプチドは、例えば、国際公開WO2009/004842号パンフレット及び
国際公開WO2009/133882号パンフレットに記載されている。
また、目的タンパク質には、検出や精製の目的でHisタグ、HAタグ(配列番号20)、FLAGタグ、GSTタグなどのタグ配列が付加されていてもよい。
目的タンパク質をコードするDNA(目的遺伝子)は、例えば、公知の塩基配列に基づいて、一般的な遺伝子工学的な手法により得ることができる。また、目的タンパク質をコードするDNAは、該タンパク質を生産させる宿主細胞に応じて、タンパク質の翻訳量が増大するように、タンパク質を構成するアミノ酸を示すコドンが適宜改変されてもよい。コドン改変の方法としては、例えばKang et al. (Protein Expr Purif. 2004 Nov;38(1):129-35.)の方法を参考にすることができる。また、宿主細胞において使用頻度の高いコドンを選択したり、GC含量が高いコドンを選択したり、宿主細胞のハウスキーピング遺伝子において使用頻度の高いコドンを選択したりする方法が挙げられる。
また、遺伝子構築物は、宿主細胞における遺伝子発現を向上させるために、宿主細胞において機能する翻訳エンハンサー配列等をプロモーターに連結して使用してもよい。翻訳エンハンサーとしては、Kozak配列や植物由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’−非翻訳領域(5’−UTR)が挙げられる。
前記アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域としては、例えばタバコ(Nicotiana tabacum)由来のアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域(NtADH5'UTR)(配列番号16)を用いることができ、翻訳開始点上流3塩基を改変したNtADH5'UTR領域(NtADHmod 5'UTR)(配列番号17)を用いることでさらに高翻訳が期待できる。
本発明の遺伝子構築物は、一般的な遺伝子工学的手法により取得・作製することができる。例えば、プロモーター及びターミネーターをコードするDNAをレタスゲノムDNA等からPCR等の手法で取得し、目的有用タンパク質をコードするDNA等をPCRやDNAリガーゼ等を用いて連結することで本発明の遺伝子構築物を得ることができる。
本発明の組換えベクターは、本発明の遺伝子構築物を含み、目的遺伝子を宿主細胞で発現させるために使用される。本発明の組換えベクターは、好ましくは、前述したような目的遺伝子を含む。また、本発明の組換えベクターは薬剤耐性遺伝子等の選択マーカーを含むことが好ましい。
本発明の組換えベクター作製に用いる発現ベクターとしては、宿主細胞内で複製増殖可能であれば特に制限されるものではないが、プラスミドベクター、シャトルベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。
植物細胞又は植物体で発現させる場合、染色体挿入型のベクターやタバコモザイクウイルスなどのウイルスベクターなどが使用できる。また、アグロバクテリウム属細菌を使用した形質転換の場合は、pBI121、pBI221、pBI101、pIG121Hm、pRI909、pRI910など、アグロバクテリウム属細菌において複製可能なプラスミドベクターも使用できる。
本発明の形質転換植物(遺伝子組換え植物)は、前記遺伝子構築物又は組換えベクターで形質転換されていることを特徴とする。形質転換に用いられる植物細胞としては特に制限されないが、ナス科(Solanaceae)、バラ科(Rosaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、キク科(Asteraceae)、又はアカザ科(Chenopodiaceae)等に属する植物が例示され、例えば、ヒマワリ、トマト、イチゴ、レタス、シロツメクサ、アブラナ、綿、ナタネ、ポプラ、シロイヌナズナ、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコ、ダイズなどの細胞が挙げられる。植物細胞は、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラス
ト、不定胚、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。
本発明の形質転換植物は、一般的な遺伝子工学的手法を用いて、本発明の組換えベクターを宿主細胞に導入することにより作製することができる。例えば、エレクトロポレーション法(Tada, et al., 1990, Theor.Appl.Genet, 80:475)、プロトプラスト法(Gene, 39, 281-286(1985))、ポリエチレングリコール法(Lazzeri, et al., 1991, Theor. Appl. Genet. 81:437)、アグロバクテリウムを利用した導入方法(Hood, et al., 1993, Transgenic, Res. 2:218,Hiei, et al.,1994 Plant J. 6:271)、パーティクルガン法(Sanford, et al., 1987, J. Part. Sci.tech. 5:27)、ポリカチオン法(Ohtsuki, et al., FEBS Lett. 1998 May 29;428(3):235-40.)などの方法を用いることが可能である。
本発明の組換えベクターを宿主細胞に導入した後、選択マーカーの表現型等を指標として形質転換体を選抜することができる。選抜した植物細胞を常法(例えば、Toki et al. (1995) Plant Physiol. 100:1503-1507)に従って培養することにより、植物体を再生することができる。
形質転換で得られた植物を栽培することにより、植物細胞内又は植物細胞の細胞膜外に目的タンパク質を蓄積させて、目的タンパク質を生産することができる。栽培条件は、形質転換植物の種に応じて適宜選択することができるが、水耕栽培が好ましい。また、遺伝子組換え植物を栽培するため、植物工場などの閉鎖系で栽培することが好ましい。植物工場であれば、温度や光強度や光照射時間などを制御できるので好ましい。栽培期間は目的タンパク質の蓄積に十分な期間であれば特に制限されない。
なお、本発明の遺伝子構築物で形質転換された植物体は、高光強度下においても目的遺伝子の発現低下が起こりにくいので、高光強度下での栽培にも適している。ここで、高光強度とは、好ましくは、300〜600 PPFD、さらに好ましくは300〜400 PPFDである。一日当たりの光照射時間は例えば、10〜16時間である。
なお、高光強度下においても目的遺伝子の発現低下が起こりにくいという効果は、レタスユビキチンプロモーター単独でも発揮されうるので、高光強度下(例えば、300〜600 PPFD)で栽培を行って目的タンパク質を生産させる態様においては、形質転換植物を得るために使用される遺伝子構築物はレタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物であればよく、該遺伝子構築物はシロイヌナズナHSP18.2ターミネーター以外のターミネーターを含んでもよい。
蓄積した目的タンパク質は、当業者によく知られた方法に従って分離精製することができる。例えば、塩析、エタノール沈殿、限外濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニーティークロマトグラフィー、中高圧液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等の既知の適切な方法、又はこれらを組み合わせることにより分離精製することができる。ただし、目的タンパク質を蓄積した植物体を直接使用する場合は、目的タンパク質の精製は不要である。
本発明の植物体からは成熟種子を得ることができる。当該種子を利用することで、本発明の遺伝子構築物を含む植物体を安定して維持・保存することができる。本発明の植物体は成熟種子の採種量が多いので、本発明の植物体を栽培、自家受粉させ、大量の組換え種子を作出することができる。
なお、遺伝子組換え植物の成熟種子の採種量が増加するという効果は、レタスユビキチンプロモーター単独でも発揮されうるので、本発明の一態様においては、形質転換植物を得るために使用される遺伝子構築物はレタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物であればよく、該遺伝子構築物はシロイヌナズナHSP18.2ターミネーター以外のターミネーターを含んでもよく、ター
ミネーターを含んでいなくともよい。すなわち、本発明の一態様においては、目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物において、該植物から得られる成熟種子の量を増加させる方法であって、レタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物を用いて植物を形質転換し、該形質転換植物を栽培することを特徴とする方法が提供される。ここで、成熟種子の採種量の指標としては、植物の一株(個体)あたりの成熟種子数(成熟種子数/株(個体))、植物の一集合花あたりの成熟種子数(成熟種子数/集合花)などが挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
(1)発現ベクターの構築
カリフラワーモザイクウイルス35S RNA プロモーター(CaMV 35S pro.)又はレタスユビキチンプロモーター(LsUBQ pro.)を用いて細菌毒素タンパク質どうし、又は細菌毒素タンパク質とウイルス由来タンパク質をペプチドタグで連結した融合タンパク質発現用遺伝子構築物を作製した。
その構築図を図1に示す。
35S::Stx2eB-Stx2eBは、カリフラワーモザイクウイルス35S RNA プロモーターを用いた。発現させるタンパク質は志賀毒素の無毒Bサブユニット(Stx2eB)をPG12リンカーを介して二連結した。この遺伝子発現カセットは、非特許文献(Matsui et al., Transgenic Res. 2011 Aug;20(4):735-48.)の2BHと同一のものであり、本文献に記載の方法で構築した。なお、シロイヌナズナヒートショックタンパク質18.2遺伝子ターミネーターは250bpのものを使用した(HSPT250)。
UBQ::Stx2eB-Stx2eBは、転写プロモーターとしてLsUBQ pro.を、ターミネーターとして長鎖型のシロイヌナズナヒートショックタンパク質18.2遺伝子ターミネーター(HSPT878)(Matsui et al., Plant Biotechnol. 2014 31, 191-194)を用いた。UBQ-Fプライマー(5’-TCTAGAGGCGCGCCAAGCTTCTCGAGGAAACAAGTG-3’(配列番号18), 下線はXbaIサイト)及びUBQ-R(5’-GGTACCAACCATAATTAAAACATATTAA-3’ (配列番号19),下線はKpnIサイト)プライマーを用いてLsUBQ pro.を増幅した。得られた断片をpCR2.1-TOPO(Thermo Fisher Scientific Inc.)に挿入して塩基配列確認を行った後、35Sプロモーター及びHSPT878を含むStx2eB-Stx2eB発現用プラスミド(Matsui et al., Plant Biotechnol. 2014)のXbaI-KpnI断片に挿入し、プロモーターを置換した。
LsUBQ pro.の制御下でStx2eBと大腸菌易熱毒素(LTB)がPG12を介してタンデムに連結されたワクチンを発現させる遺伝子(UBQ::Stx2eB-LTB及びUBQ:: LTB-Stx2eB)は以下の通り構築した。35Sプロモーター及びHSPT878を含むE-L+、L+E-のプラスミド(WO2015/080100)のそれぞれにおいて、35Sプロモーターの代わりにLsUBQ pro.をXbaIとKpnIを用いて挿入した。
PRRS中和エピトープであるectGP5領域(北米型PRRSウイルスGP5の中和エピトープ:NAectG)をLTBに融合したワクチン抗原発現カセットは以下の通り構築した。WO2016/021276に記載の植物発現用もしくは酵母発現用の遺伝子カセットを元に、LsUBQ pro、翻訳開始コドン近傍配列を改変したアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域(NtADHmod
5'UTR)、分泌シグナルペプチド(SP)及びHSPT878を融合した遺伝子発現カセットを構築した(UBQ:: LTB-NAectG)。また、UBQ:: LTB-Stx2eBにさらにNAectGとEUectG(欧州型PRRSウイルスの中和エピトープ)を融合した遺伝子発現カセットを構築した(UBQ:: LTB-Stx2eB-NAectG-EUectG)。
イヌパルボウイルスコートタンパク質VP2の中和エピト−プ(CP)をLTB-Stx2eBに融合したワクチン抗原発現カセットは以下の通り構築した(UBQ:: LTB-Stx2eB-CP)。WO2017/094793に記載の酵母発現用の遺伝子カセットを元に、LsUBQ pro、翻訳開始コドン近傍配列を改変したアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’-非翻訳領域(NtADHmod 5'UTR)、分泌シグナルペプチド(SP)及びHSPT878を融合した遺伝子発現カセットを構築した。
改変リンカーで連結したタンデムStx2eB発現カセットは以下の通り構築した(UBQ:Stx2eB-Stx2eB(v7))。PG12-20v7リンカーでStx2eBを2連結したタンパク質(WO2017/217460)(Stx2eB-Stx2eB(v7))を、LsUBQ pro、NtADHmod 5'UTR、SP及びHSPT878に融合した。
(2) 遺伝子組換えレタスの作出
非特許文献(Matsui et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 2009 Volume 73, Issue 7
Pages 1628-1634)に従って実施した。
(3) レタスの採種栽培条件
大塚A処方を用いた水耕栽培を行った。メタルハライドランプを16時間明期-8時間暗期の周期で照射した。二酸化炭素濃度は1000 ppm、温度は22.5℃で栽培した。
結果
後代安定発現
2連結したStx2eBタンパク質を35Sプロモーターを用いて組換えレタスで発現した。当該レタスではワクチンタンパク質が高蓄積することは報告済みである(Matsui et al., Transgenic Res. 2011 Aug;20(4):735-48.)。得られた組換えレタスのうち、組換え遺伝子をシングルコピーで保有する系統を選抜し、後代でホモ化した。優良系統(21-5)の後代の、各世代でのワクチン蓄積量を図2に示す。その結果、35Sプロモーターを用いた組換えレタスでは、世代を経るに従い、ワクチン蓄積量の低下(サイレンシング)が確認された。
レタスユビキチンプロモーターの使用によりレタス後代での安定発現が報告されている。レタスユビキチンプロモーターを組み込んだ発現カセット(UBQ::Stx2eB-Stx2eB)を作製して組換えレタスを作出し、シングルコピー挿入系統2系統を選抜した(18-1系統及び5-1系統)。T1世代で挿入遺伝子がホモ化された株(個体)を選抜し、それらの後代の種子を取得した。各世代でのワクチン蓄積量を図3に示す。その結果、18-1系統では少なくともT6世代まで、5-1系統では少なくともT3世代まで安定的にワクチンが蓄積することを確認し、レタスユビキチンプロモーターの使用により後代安定発現効果が得られた。
後代種子の取得
35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタスの2系統、UBQ::Stx2eB-Stx2eB導入レタスの2系統について、後代種子の成熟種子の採種数を計測した(図4)。その結果、35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタスでは両系統とも、野生型よりも有意に成熟種子の採種量が少なくなることが判明した。一方で、UBQ::Stx2eB-Stx2eB導入レタスの2系統では、野生型並みの採種量であった。
次に成熟種子の採種数が少ない原因について調査した。35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタスでは植物体の生育及び開花には異常は確認されなかった。このレタス品種(グリンウェーブ)では約20個の花が集まり集合を形成しているが、ある割合で成熟種子と未成熟な種子が形成される(図5)。集合花あたりの成熟種子数が35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタスでは少ないことが確認された。一方で、UBQ::Stx2eB-Stx2eB導入レタスでは成熟種子数が野生型並みであった(図6)。
UBQプロモーターを用いた他のワクチン発現カセットについても成熟種子の採種数を確認した(図7)。各発現カセット導入レタスのT0世代の数系統について採種を行った。T0世代は組換えした当代で、無菌培養で再生した株(個体)から栽培を開始しているために大きく育てることが難しく、種子から生育させた後代のレタスよりも成熟種子の採種数は少ない傾向があるが、前述の35S::Stx2eB-Stx2eB導入レタスよりも採種数は多かった。このことから、UBQ proを用いた場合に、生産する目的タンパク質の種類によらず安定的に採種可能であることを確認した。
高光強度条件下での組換え遺伝子の発現量の評価
レタスの栽培においては、高光強度でレタス重量が増加することが報告されている(畑ら, 植物環境工学, 2011, 23 (4):127-36)。一方で、従来技術の35Sプロモーターを用いた場合には、高光強度条件下で発現が低下することが報告されており(Elliott et al., Plant Cell 1989,1:691-8)、高光条件でも活性が低下しないプロモーターを用いることで効率的な組換えタンパク質生産が可能になると考えられた。160 PPFD及び400 PPFDの条件で栽培したレタスにおける、内在性UBQ遺伝子の発現を次世代シーケンサー(Illumina社、HiSeq2500)で調べた結果を表1に示す。
この結果、UBQプロモーターを外来遺伝子発現カセットに組み込むことで、高光強度下で栽培することによる効率的な組換えタンパク質発現が可能になることが分かった。

Claims (22)

  1. レタスユビキチンプロモーターとシロイヌナズナ熱ショックタンパク質18.2(HSP18.2)ターミネーターを含む、組換えタンパク質発現用遺伝子構築物。
  2. レタスユビキチンプロモーターが、配列番号1の塩基配列を含むDNA、又は配列番号1の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、植物細胞内でプロモーターとして機能するDNAである、請求項1に記載の遺伝子構築物。
  3. シロイヌナズナHSP18.2ターミネーターが、配列番号2の塩基配列を含むDNA、又は配列番号2の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、植物細胞内でターミネーターとして機能するDNAである、請求項1又は2に記載の遺伝子構築物。
  4. さらに、翻訳エンハンサー配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
  5. 目的タンパク質をコードするDNAを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
  6. 目的タンパク質が、細菌毒素タンパク質及び/又はウイルス由来タンパク質である、請求項5に記載の遺伝子構築物。
  7. 目的タンパク質が、2つ以上のタンパク質の融合タンパク質である、請求項5又は6に記載の遺伝子構築物。
  8. 融合タンパク質が、2つ以上のタンパク質がペプチドリンカーで連結された融合タンパク質である、請求項7に記載の遺伝子構築物。
  9. 目的タンパク質が分泌シグナルペプチドを含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
  10. 目的タンパク質がペプチドタグを含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
  11. 目的タンパク質が小胞体残留シグナルペプチドを含む、請求項5〜10のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む、ベクター。
  13. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の遺伝子構築物、又は請求項12に記載のベクターで形質転換された、遺伝子組換え植物。
  14. レタスである、請求項13に記載の遺伝子組換え植物。
  15. 請求項13又は14に記載の遺伝子組換え植物から得られる種子。
  16. 請求項13又は14に記載の遺伝子組換え植物であって、目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物を栽培する工程を含む、目的タンパク質の製造方法。
  17. 栽培を300〜600 PPFDの光強度下で行う、請求項16に記載の目的タンパク質の製造方法。
  18. レタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物で形質転換され、目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物を300〜600 PPFDの光強度下で栽培する工程を含む、目的タンパク質の製造方法。
  19. 目的タンパク質を発現する遺伝子組換え植物において、該植物から得られる成熟種子の量を増加させる方法であって、レタスユビキチンプロモーターに発現可能に連結された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子構築物を用いて植物を形質転換し、該形質転換植物を栽培することを特徴とする方法。
  20. 前記形質転換植物は水耕栽培により栽培される、請求項19に記載の方法。
  21. 前記植物から得られる成熟種子の量は植物の一株(個体)あたりの成熟種子数である、請求項19又は20に記載の方法。
  22. 前記植物から得られる成熟種子の量は植物の一集合花あたりの成熟種子数である、請求項19又は20に記載の方法。
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