JP2020000071A - L−システインの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、従来の発酵法に代わる新たなL−システインを製造する方法を提供することを課題とする。より具体的には、耐熱性酵素の組み合わせにより、L−システインの製造方法を提供する。特に、3-ホスホグリセリン酸(3PG)からホスホヒドロキシピルビン酸(HPV)を経由してO-ホスホセリンを合成する経路をRhodothermus marinus由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)と好熱菌由来の3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)を使用して効率的に製造する方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、3PGに、Rhodothermus marinus由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)及び好熱菌由来の3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)を作用させて、O-ホスホセリンを生成させる、O-ホスホセリンの製造方法及び、当概工程を含むL−システインの製造方法により課題を解決した。【選択図】 なし
Description
本発明は、アミノ酸の一種である、L−システインの製造方法に関する。
L-システインは、近年市場を急拡大させているアミノ酸であり、世界人口の増加により、その市場は今後も拡大を続けることが予想される。L−システインの主な用途は、食品添加物、医薬品、化粧品やグルタチオン、N-アセチル-システイン、コエンザイムAの合成前駆体としての利用である。
L−システインの製造方法としては毛髪や羽毛などの酸加水分解物からの分離抽出が中心であるが、近年では微生物による発酵法による製造も開始されている。しかし、微生物による発酵法は、次のような課題がある。L-システインは細胞内濃度の上昇に伴い、(1)微生物への増殖阻害と(2)生合成酵素へのフィードバック阻害を引き起こすことが知られている。(1)については、L-システイン細胞外排出ポンプタンパク質の同定と当該遺伝子の発現強化、(2)については、L-システイン生合成酵素の立体構造解析とフィードバック阻害メカニズムの解明、及びそれに基づく非感受性変異酵素の創出という育種戦略によって解決がはかられている。このように、微生物の代謝機能を活用し、遺伝子改変、育種などにより、生産性を向上させることが試みられているが、前述のような課題により、充分な生産性を得られないことがあった。(特許文献1〜5)
また、微生物由来の酵素を用いて、各種有用物質の製造がおこなわれている(特許文献6、7)。このような手法でL−システインを製造した場合、その中間において、O-ホスホセリンが合成される。このO-ホスホセリンは3-ホスホグリセリン酸 (以下、原則「3PG」) からホスホヒドロキシピルビン酸 (以下、原則「HPV」) を経由して合成される。非特許文献1にて超好熱菌アーキアであるSulfolobus tokodaii由来の3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(以下、原則「PGDH」)は報告されているが、pH11といった極めて極端な条件かつジスルフィド結合を促進するよう設計した大腸菌にて過剰発現させたPGDHでしか酵素活性は確認することができず、本来菌体が生存しうる中性付近であるpH8.0では活性がほぼ見られていない。本発明者らはこれまでにPGDHにホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(以下、原則「PSAT」)を組み合わせることによって、活性が見出すことに成功した(特許文献8)。しかしながら、PGDHに比べてPSATは酵素活性が低く、L−システインの製造で律速酵素となっていた。
1: Shimizu Y, Sakuraba H, Doi K, Ohshima T (2008) Molecular and functional characterization of D-3-phosphoglycerate dehydrogenase in the serine biosynthetic pathway of the hyperthermophilic archaeon Sulfolobus tokodaii. Arch Biochem Biophys. 470(2):120-8.
本発明は、従来の発酵法に代わる新たなL−システインを製造する方法を提供することを課題とする。より具体的には、耐熱性酵素の組み合わせにより、L−システインの製造方法を提供する。特に、HPVからO−ホスホセリンを合成するPSATの活性がより高い酵素を利用することによって、L−システインを効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、耐熱性酵素を組み合わせ、任意の人工代謝経路をin vitroで構築する技術によるL-システインの製造方法を見出した。本発明の概要は、好熱菌/超好熱菌に由来する耐熱性酵素遺伝子を大腸菌のような汎用的かつ中温性の微生物宿主内で発現させる。得られた組換え菌体又は菌体からの抽出液を60〜90℃程度の熱処理に供し、宿主由来の酵素を失活させるとともに、宿主の細胞構造を部分的に破壊することで基質/生産物の透過性を高めた触媒モジュールとする。これらのモジュールを組み合わせ、in vitro人工代謝経路を構築する。
また、今回新しく同定したRhodothermus marinus由来のPSATは当初使用を想定していたThermococcus kodakarensis由来のPSATに比べて活性が十分に強いため、L−システインの生産速度を向上させることができる。
このように本発明者らは、3PGに好熱菌由来のPGDHとRhodothermus marinus由来のPSATを作用させて、O-ホスホセリンを生成させる工程を有する、好熱菌由来の酵素により合成されるL−システインの製造方法を見出した。
より具体的に、以下のような発明を提供する。
より具体的に、以下のような発明を提供する。
(1)3PGに好熱菌由来のPGDHならびにRhodothermus marinus由来のPSATを作用させて、O-ホスホセリンを生成させる、O-ホスホセリンの製造方法。
(2)L−システインを製造する方法であって、(1)の製造工程を含む、L−システインの製造方法
(2)L−システインを製造する方法であって、(1)の製造工程を含む、L−システインの製造方法
本発明によれば、in vitroでL−システインを製造することが可能なため、微生物から粗精製した耐熱性酵素を用いることができる。そのため、発酵法で、課題となっていたL-システインによる生育阻害は問題とならない。また、本発明では酵素を組み合わせることによって経路を自由にデザインすることが可能であるため、L-システインによるフィードバック阻害を被る酵素反応を経由しないように設計できる(図1)
本発明は3PGに好熱菌由来のPGDHとRhodothermus marinus由来のPSATを作用させて、O-ホスホセリンを生成させる、O-ホスホセリンの製造方法である。更に、前述の工程を含むL-システインの製造方法である。
O-ホスホセリンは3PGからHPVを経由して合成される。この経路で使用する酵素は、PGDH及びPSATである。
O-ホスホセリンは3PGからHPVを経由して合成される。この経路で使用する酵素は、PGDH及びPSATである。
本発明で使用される、3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)は、3PGをHPVへ変換する酸化還元酵素である。当該酵素は、好熱菌由来であれば、構造等は特に限定されない。本発明において、好熱菌とは、60℃以上、特に70〜110℃において、変性することなく、活性を保持できる酵素を発現する菌である。好熱菌としては、例えば、サーマス属(Thermus thermophilus、Thermus aquaticus等)、サーモトーガ属(Thermotoga lettingae、Thermotoga neapolitana、Thermotoga petrophila、 Thermotoga maritima等)、サーモコッカス属(Thermococcus profundus、Thermococcus kodakarensis 、Thermococcus gammatolerans等)、パイロコッカス属(Pyrococcus horikoshii、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus glycovorans、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus wosei等)、スルフォロバス属(Sulfolobus tokodaii、Sulfolobus acidocaldarius、Sulfolobus islandicus、Sulfolobus solfataricus)、パイロディクティム属(Pyrodictium occultum、Pyrodictium abyssi、Pyrodictium brockii等)、パイロバキュラム属(Pyrobaculum aerophilum、Pyrobaculum arsenaticum、Pyrobaculum organotrophum等)、ハイパーサーマス属(Hyperthermus butylicus等)、アクイフェックス属(Aquifex pyrophilus等)、サーモデスルフォバクテリウム属(Thermodesulfobacterium commune等)、メタノパイラス属(Methanopyrus kandleri等)、パイロロバス属(Pyrolobus fumarii等)、テルモフィルム属(Thermoproteus tenax、Thermoproteus naphthophila)、サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus elongates )、シネココッカス属 (Synechococcus lividus) 、オーシャニサーマス属(Oceanithermus profundus)、ロドサーマス属(Rhodothermus?marinus)、サーモビブリオ属(Thermovibrio ammonificans)、デスルフロバクテリウム属(Desulfurobacterium thermolithotrophum)、サーモデスルファテイター属(Thermodesulfatator indicus)などである。
次に、本発明のPSATは配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び配列番号1に対して、少なくとも90%以上配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、PSAT活性を有するポリペプチドである。
より好ましくは、Rhodothermus marinus由来のPSATである。
より好ましくは、Rhodothermus marinus由来のPSATである。
本発明で使用される、PGDH及びPSATを取得する方法は特に限定されない。 遺伝子工学の手法を用いて得る場合は、目的の酵素をコードする遺伝子を適当なベクターに挿入し、組換えベクターを構築する。当該組換えベクターを酵素生産可能な宿主細胞に形質転換し、酵素を発現製造することができる。本発明では、複数の酵素を用いるため、簡便に形質転換可能な、DH5α、MG1655株等の大腸菌、Pseudomonas属などのグラム陰性菌、Corynebacterium属やBacillus属、Rhodococcus属などのグラム陽性菌が適している。具体的には、PGDHとPSATは各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、例えば、pET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させる。各微生物のゲノムDNAは、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター、国立環境研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター(NBRC)、公益財団法人かずさDNA研究所などから入手可能である。また、使用するDNAは、配列情報から合成したDNAでも使用可能であり、アミノ酸配列が同じであれば、配列情報と完全一致していなくても良い。合成DNAとはアミノ酸配列を大腸菌のコドン使用頻度に合わせて設計したDNA配列である。これら のDNAから、当概遺伝子を前述のように調製した発現ベクターをNovagen社製 Rosetta BL21 2 (DE3) pLysS 等の宿主に導入し、大腸菌に形質転換する。または、相同組み換えやトランスポゾンによりDNA断片を挿入してもよい。形質転換方法は、一般的な方法で良い。
本発明では3PGからO-ホスホセリンを製造する際に使用する酵素はPGDHおよびPSATである。前段までに記載の好熱菌由来の酵素を適宜選択して使用することができるが、Rhodothermus marinus由来のPSATは高活性を示すため、システインの生産性の向上のためには望ましい。
本願発明で必要な酵素は、DH5α、MG1655株等の大腸菌、Pseudomonas属などのグラム陰性菌、Corynebacterium属やBacillus属、Rhodococcus属などのグラム陽性菌などから選択した菌類に、複数同時に発現させて、得ることができる。本段落で使用する菌類は、後述のように、宿主由来のタンパク質を容易に除去するため、好熱性菌である必要はない。必要な酵素をすべて同時に発現させても良いが、通常は、発現効率等から、実施例記載のように、複数の大腸菌等に分けて、酵素を得ることもできる。また、それぞれの酵素を個々の大腸菌等に発現させて得ても良い。 本願は、好熱菌由来の酵素を大腸菌等で発現させて得るため、大腸菌等の宿主由来のタンパク質を容易に除去することができる。例えば、大腸菌で発現後、高温、60℃〜80℃で熱処理をすることで、大腸菌由来のタンパク質は変性し、目的の酵素は、好熱菌由来の酵素であるため、熱変性しない。このように、熱処理で変性したタンパク質を除去することで、必要な粗酵素液を容易に得ることができる。熱処理は、培養後、培養後の菌体を直接熱処理しても良い。又は、菌体抽出液を熱処理しても良い。抽出方法は、特に制限なく選択できる。菌体を超音波破砕等により破砕後、抽出した液を熱処理してもよい。 具体的には、例えば、組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁し、懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得る。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行う。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り取り除くことで、上清を粗酵素液として、L-システインの製造に用いることができる。
本発明では、L-システインを製造する工程のうち、O-ホスホセリンを得る工程で、3PGから、上記のPGDHとPSATによりO-ホスホセリンを得る工程を含む。PGDHとPSATは、単独では、機能しないため、両酵素を同時に用いる必要がある。両酵素は、前述の好熱菌由来のものを用いるが、PSATは活性の高いRhodothermus marinus由来のPSATを用いることが望ましい。
本発明のL-システインを製造する工程の内、前段の3PGからO-ホスホセリンを得る工程以外の工程で必要な酵素も、PGDH及びPSATと同様に好熱菌由来の酵素を用いる。好熱菌由来であれば、適宜選択し、用いることができる。用いる酵素は、原料により異なるが、グルコースを原料とした場合に必要となる酵素群の例を、表1に示す。その他原料は、グリセロール、デンプン等の糖類であり、解糖系により代謝可能な原料であれば良い。本願は、PGDHとPSATによりO-ホスホセリンを得る工程を有していれば、前記の原料は、制限なく使用できる。グルコース以外の原料を用いた時の酵素は、当業者であれば、適宜選択できる。必要な酵素は、本明細書で例示した、好熱菌由来の酵素を用いる。
表1の酵素の取得方法は、前段の記載の方法と同様に行う。すべての酵素は、同種の好熱菌でもよく、異種の好熱菌でも良い。酵素遺伝子は、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター、国立環境研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター(NBRC)、公益財団法人かずさDNA研究所等から入手可能なものを用いることができる。入手したDNAから目的遺伝子をPCR等で増幅し使用することができる。また、入手した遺伝子情報から合成したDNAでも良い。本発明では、前述のように大腸菌等に導入し発現させるため、各酵素遺伝子を大腸菌など、選択した菌類での発現に最適化して使用しても良い。
このようにして得られた遺伝子は、大腸菌発現ベクターに一般的な方法で組込むことができる。使用するすべての遺伝子を一つの発現ベクターに組み込むこともできるが、使用する遺伝子の微生物由来、プロモーター選択等の最適性によって、必要な発現ベクターに分けて導入しても良い。例えば、Rhodothermus marinas由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (RmPSAT) とThermococcus thermophilus HB8由来のNADHオキシダーゼ (TtNOX)は、各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO-ホスホセリンスルフヒドラーゼ (ApCysS) は合成DNAをpET21aに連結し、T. thermophilus HB8由来のグルコキナーゼ (TtGK)、グルコースリン酸イソメラーゼ (TtGPI)、ホスホフルクトキナーゼ (TtPFK)、フルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ(TtFBA)、トリオースリン酸イソメラーゼ (TtTIM)、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(TtGAPDH)、ホスホグリセレートキナーゼ(TtPGK)とThermococcus kodakarensis KOD1由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ (TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(TkPSAT)とThermoproteus tenax由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH)は合成DNAをpRCI (※)にそれぞれ導入するなど、使用する遺伝子によって、当業者が最適なベクターを複数選択しても良い。
※ Ninh PH, Honda K, Sakai T, et al. (2015) Assembly and multiple gene expression of thermophilic enzymes in Escherichia coli for in vitro metabolic engineering. Biotechnol Bioeng 112, 189-196
このようにして得られた発現ベクターを前段に記載の大腸菌などに導入する。導入する方法に特に制限はなく、一般的な方法を用いることができる。大腸菌などの培養は、一般的な方法で良い。使用するプロモーターにより、発現誘導が必要な場合は、発現の誘導を行う。
大腸菌の培養後、前段の方法と同様に粗酵素液を得る。使用した菌類が異なる場合には、それぞれ別々に調製しても、まとめて調製しても良い。好熱菌由来の酵素を用いているため、熱処理により、大腸菌などの宿主由来のタンパク質は、熱変性により容易に除去することができる。また、本発明では、変性したタンパク質の除去のみの精製操作で得られた粗酵素液を使用することができる。また、さらに精製して使用しても良い。
このようにして得られた粗酵素液をL-システインの製造に用いる。緩衝液に必要な補酵素及び基質を添加し、製造する。添加する補酵素及び基質は、使用する原料(糖類の種類)により異なるが、グルコースを原料とする場合には、前記の方法で得られた粗酵素液に酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、アデノシン三リン酸(ATP)、グルタミン酸、硫化ナトリウム、硫酸アンモニウムを加え、ここにグルコースを加えてL-システインを製造する。グリセロールを原料とする場合にもグルコースに代わり、グリセロールを加えて製造する。本発明では、製造の反応は、50℃〜80℃で行われる。これにより、原料の溶解性の向上、反応速度の増大、汚染リスクの低減などの利点がある。デンプンを原料とする場合、デンプン分解に必要な酵素を添加する。
前述までの酵素反応終了後、L-システインは、酵素反応液から回収することにより得ることができる。この反応液から、アミノ酸の単離精製に用いられる一般的な方法により、L−システインを単離精製することができる。具体的には、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて行うことができる。
以下に本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の方法に限定されない。
(3PGからO-ホスホセリン工程の検討)
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
T. kodakarensis (Tk) 由来のPGDHおよびPSATは合成DNAをpRC1に連結し、熱誘導によって発現させた。一方で、R. marinus (Rm) 由来のPSATは微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子をpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。前者はE. coli DH5αに後者はNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Luria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液を42℃に変更し、目的酵素遺伝子の誘導を行った。Rosetta2 (DE3) pLysSでは100 mg/Lのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加し、目的酵素遺伝子の誘導を行った。
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
T. kodakarensis (Tk) 由来のPGDHおよびPSATは合成DNAをpRC1に連結し、熱誘導によって発現させた。一方で、R. marinus (Rm) 由来のPSATは微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子をpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。前者はE. coli DH5αに後者はNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Luria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液を42℃に変更し、目的酵素遺伝子の誘導を行った。Rosetta2 (DE3) pLysSでは100 mg/Lのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加し、目的酵素遺伝子の誘導を行った。
・酵素液の調製
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
・TkPGDHとTkPSATの活性確認
3PGを除いた表2の組成で反応液を作製した。70℃で1 分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。反応はNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。結果を図2にて記載する。なお、NADHの濃度は340 nmの分子吸光係数6.3×103 mol-1 L-1 cm-1にて算出した。PGDHはNAD+をNADHに変換する反応であり、NADHの生成がPGDHの活性と同義とみなせる。また、PGDHはPSATと組み合わせることでしか活性を確認できない。よってNADHの生成をPSATの活性と同義とみなせる。1と2を比較した際にNADHの生産速度が低下している。従って、TkPSATの添加量に活性が依存していることから、この反応においてTkPSATが律速段階である。
3PGを除いた表2の組成で反応液を作製した。70℃で1 分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。反応はNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。結果を図2にて記載する。なお、NADHの濃度は340 nmの分子吸光係数6.3×103 mol-1 L-1 cm-1にて算出した。PGDHはNAD+をNADHに変換する反応であり、NADHの生成がPGDHの活性と同義とみなせる。また、PGDHはPSATと組み合わせることでしか活性を確認できない。よってNADHの生成をPSATの活性と同義とみなせる。1と2を比較した際にNADHの生産速度が低下している。従って、TkPSATの添加量に活性が依存していることから、この反応においてTkPSATが律速段階である。
・RmPSATとTkPSATの比較
3PGを除いた表3の組成で反応液を作製した。70℃で1 分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。反応はNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。反応の結果、単位粗酵素液量当たりの単位時間当たりのNADHの生産速度は1のTkPSATを用いた場合、0.030 mM/min/μLとなり、2のRmPSATを用いた場合0.100 mM /min/μL/hとなった。この結果より、今回新規同定したRmPSATは従来のTkPSATと比較して単位酵素液あたりの活性が3倍程度高いことを意味する。
3PGを除いた表3の組成で反応液を作製した。70℃で1 分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。反応はNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。反応の結果、単位粗酵素液量当たりの単位時間当たりのNADHの生産速度は1のTkPSATを用いた場合、0.030 mM/min/μLとなり、2のRmPSATを用いた場合0.100 mM /min/μL/hとなった。この結果より、今回新規同定したRmPSATは従来のTkPSATと比較して単位酵素液あたりの活性が3倍程度高いことを意味する。
(3PGからL-システインを製造する工程)
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
Rhodothermus marinus由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (RmPSAT) は、微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO-ホスホセリンスルフヒドラーゼ (ApCysS) は合成DNAをそれぞれpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。T. thermophilus HB8由来のNADHオキシダーゼ (TtNOX) は理研より提供を受けた同菌の1遺伝子発現プラスミドライブラリー (※3) に含まれるものである。同ライブラリーの発現ベクターはNovagen社製pET11aおよびその誘導体をバックボーンとして作成されたものである。これらの遺伝子発現ベクターは全てNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。Thermococcus kodakarensis由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(TkPSAT)とThermoproteus tenax由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH) は合成DNAをpRCI のlamnbda PRプロモーター制御下に連結し、E. coli DH5α株に導入した。E. coli DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Rosetta (DE3) pLysSでは100 mgのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加もしくは熱誘導 (42℃) にて目的酵素遺伝子の誘導を行った。
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
Rhodothermus marinus由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (RmPSAT) は、微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO-ホスホセリンスルフヒドラーゼ (ApCysS) は合成DNAをそれぞれpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。T. thermophilus HB8由来のNADHオキシダーゼ (TtNOX) は理研より提供を受けた同菌の1遺伝子発現プラスミドライブラリー (※3) に含まれるものである。同ライブラリーの発現ベクターはNovagen社製pET11aおよびその誘導体をバックボーンとして作成されたものである。これらの遺伝子発現ベクターは全てNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。Thermococcus kodakarensis由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(TkPSAT)とThermoproteus tenax由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH) は合成DNAをpRCI のlamnbda PRプロモーター制御下に連結し、E. coli DH5α株に導入した。E. coli DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Rosetta (DE3) pLysSでは100 mgのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加もしくは熱誘導 (42℃) にて目的酵素遺伝子の誘導を行った。
※3. Yokoyama S, Matsuo Y, Hirota H, et al. (2000) Structural genomics projects in Japan. Nat Struct Biol 7, 943-945
・酵素液の調製
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
・酵素活性測定
3PGを除いた表4の組成で反応液を作製した。70℃で1 分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。L−システイン濃度はニンヒドリン反応にて測定した。結果を図3にて記載する。これよりL−システインの生産性はTkPSATに比べてRmPSATの方が高いと言える。
3PGを除いた表4の組成で反応液を作製した。70℃で1 分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。L−システイン濃度はニンヒドリン反応にて測定した。結果を図3にて記載する。これよりL−システインの生産性はTkPSATに比べてRmPSATの方が高いと言える。
(グルコースからL-システインを製造する工程)
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
表5に実施例で用いた酵素遺伝子のリストを示す。Rhodothermus marinus由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (RmPSAT) は、各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO-ホスホセリンスルフヒドラーゼ (ApCysS) は合成DNAをpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。T. thermophilus HB8由来のNADHオキシダーゼ (TtNOX) は理研より提供を受けた同菌の1遺伝子発現プラスミドライブラリー (※3) に含まれるものである。同ライブラリーの発現ベクターはNovagen社製pET11aおよびその誘導体をバックボーンとして作成されたものである。これらの遺伝子発現ベクターは全てNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。T. thermophilus HB8由来のグルコキナーゼ (TtGK)、グルコースリン酸イソメラーゼ (TtGPI)、ホスホフルクトキナーゼ (TtPFK)、フルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ(TtFBA)、トリオースリン酸イソメラーゼ (TtTIM) グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(TtGAPDH)、ホスホグリセレートキナーゼ(TtPGK)とThermococcus kodakarensis由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(TkPSAT)とThermoproteus tenax由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH) は合成DNAをpRCI のlamnbda PRプロモーター制御下に連結し、E. coli DH5α株に導入した。E. coli DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Rosetta (DE3) pLysSでは100 mgのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加もしくは熱誘導 (42℃) にて目的酵素遺伝子の誘導を行った。
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
表5に実施例で用いた酵素遺伝子のリストを示す。Rhodothermus marinus由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (RmPSAT) は、各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO-ホスホセリンスルフヒドラーゼ (ApCysS) は合成DNAをpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。T. thermophilus HB8由来のNADHオキシダーゼ (TtNOX) は理研より提供を受けた同菌の1遺伝子発現プラスミドライブラリー (※3) に含まれるものである。同ライブラリーの発現ベクターはNovagen社製pET11aおよびその誘導体をバックボーンとして作成されたものである。これらの遺伝子発現ベクターは全てNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。T. thermophilus HB8由来のグルコキナーゼ (TtGK)、グルコースリン酸イソメラーゼ (TtGPI)、ホスホフルクトキナーゼ (TtPFK)、フルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ(TtFBA)、トリオースリン酸イソメラーゼ (TtTIM) グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(TtGAPDH)、ホスホグリセレートキナーゼ(TtPGK)とThermococcus kodakarensis由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(TkPSAT)とThermoproteus tenax由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH) は合成DNAをpRCI のlamnbda PRプロモーター制御下に連結し、E. coli DH5α株に導入した。E. coli DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Rosetta (DE3) pLysSでは100 mgのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加もしくは熱誘導 (42℃) にて目的酵素遺伝子の誘導を行った。
※3. Yokoyama S, Matsuo Y, Hirota H, et al. (2000) Structural genomics projects in Japan. Nat Struct Biol 7, 943-945
実施例で用いた酵素遺伝子を表5に示す。
・酵素液の調製
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
・酵素活性
活性測定には100 mM HEPES-NaOH (pH8.0)を使用し、反応は全て70℃で実施した。TtGKは下流のTtGAPDHまでの経路とカップリングさせることによって生じるNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TteGAPNも同様の手法で測定した。TtPGKは可逆反応であるので、TtGAPDHとカップリングさせ、NADHの濃度を340 nmにてモニターすることによって測定した。TkPGDHはTkPSATまたはRmPSATとカップリングさせることで生じるNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。ApCysSは※4の文献を一部改良したニンヒドリン試験を行うことでL-システインの濃度を測定した。具体的には反応液と等量の20%トリクロロ酢酸を加えることによって酵素反応を停止させ、遠心分離した上清を適宜希釈し、1 M Tris-HCl (pH8.5) を等量加え、シスチンを還元した。その後、等量のニンヒドリン試薬(酢酸:塩酸=3:2の溶液に2.5%のニンヒドリンを加えた溶液) と酢酸を添加し、100℃で10分間加熱した後、on iceで冷却する。この反応液30μlに対してエタノールを150μl添加し、吸光度560 nmにて測定した。従って本試験でのシステインはシステインとシスチンの生成を意味する。TpNOXは反応によって減少するNADHの濃度を340 nmの吸光をモニターすることによって測定した。TteGDHは反応によって蓄積するNADHの濃度を340 nmの吸光をモニターによって測定した。これらの測定結果より、必要量の粗酵素液を添加することによってグルコースを基質にL-システインの生産量を測定した。なおL-システインの定量はニンヒドリン試験にて実施した。
活性測定には100 mM HEPES-NaOH (pH8.0)を使用し、反応は全て70℃で実施した。TtGKは下流のTtGAPDHまでの経路とカップリングさせることによって生じるNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TteGAPNも同様の手法で測定した。TtPGKは可逆反応であるので、TtGAPDHとカップリングさせ、NADHの濃度を340 nmにてモニターすることによって測定した。TkPGDHはTkPSATまたはRmPSATとカップリングさせることで生じるNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。ApCysSは※4の文献を一部改良したニンヒドリン試験を行うことでL-システインの濃度を測定した。具体的には反応液と等量の20%トリクロロ酢酸を加えることによって酵素反応を停止させ、遠心分離した上清を適宜希釈し、1 M Tris-HCl (pH8.5) を等量加え、シスチンを還元した。その後、等量のニンヒドリン試薬(酢酸:塩酸=3:2の溶液に2.5%のニンヒドリンを加えた溶液) と酢酸を添加し、100℃で10分間加熱した後、on iceで冷却する。この反応液30μlに対してエタノールを150μl添加し、吸光度560 nmにて測定した。従って本試験でのシステインはシステインとシスチンの生成を意味する。TpNOXは反応によって減少するNADHの濃度を340 nmの吸光をモニターすることによって測定した。TteGDHは反応によって蓄積するNADHの濃度を340 nmの吸光をモニターによって測定した。これらの測定結果より、必要量の粗酵素液を添加することによってグルコースを基質にL-システインの生産量を測定した。なおL-システインの定量はニンヒドリン試験にて実施した。
※4: Gaitonde MK (1967) A spectrophotometric method for the direct determination of cysteine in the presence of other naturally occurring amino acids. Biochem J. 104(2):627-633
・L-システインの生産試験
酵素活性によって測定した結果に基づき、必要量の粗酵素液を添加することによってグルコースからL-システインの生産性を測定した。反応組成は100 mM HEPES、5 mM MgCl2、4 mM NAD+、1 mM ATP、5 mM グルコース、2 mM グルタミン酸、10 mM 硫化ナトリウム、20 mM 酢酸アンモニウム、5 mMリン酸バッファー (pH8.0)からなる反応液中で実施した。ニンヒドリン試験にてL-システインを定量した。
酵素活性によって測定した結果に基づき、必要量の粗酵素液を添加することによってグルコースからL-システインの生産性を測定した。反応組成は100 mM HEPES、5 mM MgCl2、4 mM NAD+、1 mM ATP、5 mM グルコース、2 mM グルタミン酸、10 mM 硫化ナトリウム、20 mM 酢酸アンモニウム、5 mMリン酸バッファー (pH8.0)からなる反応液中で実施した。ニンヒドリン試験にてL-システインを定量した。
[結果]
・L-システインの生産試験
L-システインの生産試験を行った。今回の試験の使用酵素はTtGK、TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TtGAPDH、TtPGK、TkPGDH、TkPSAT、RmPSAT、ApCysS、TtNOX、TteGDHである。反応組成は表6を用い、70℃で実施した。グルコースを除いた反応液に全ての酵素を加えたものに、グルコースを加え反応を開始させた。図4に結果を示すが、RmPSATを使用した方がTkPSATよりもL-システインの生産速度が向上することが明らかになった。
・L-システインの生産試験
L-システインの生産試験を行った。今回の試験の使用酵素はTtGK、TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TtGAPDH、TtPGK、TkPGDH、TkPSAT、RmPSAT、ApCysS、TtNOX、TteGDHである。反応組成は表6を用い、70℃で実施した。グルコースを除いた反応液に全ての酵素を加えたものに、グルコースを加え反応を開始させた。図4に結果を示すが、RmPSATを使用した方がTkPSATよりもL-システインの生産速度が向上することが明らかになった。
以上から、本発明において、耐熱性酵素を組み合わせることにより例えばグルコース若しくはグリセロール、又はデンプンなど、解糖系により代謝が可能な原料を用いたL−システインの製造することができる。特にo-ホスホセリンは3PGからHPVを経由して合成される経路をRhodothermus marinus由来のRmPSATと好熱菌由来のPGDHを使用することによって効率的に生産でき、L-システインを高い生産速度で製造できる。
Claims (3)
- 3-ホスホグリセリン酸(3PG)に、配列番号1のアミノ酸配列を有するホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)活性を有する酵素、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するホスホセリンアミノトランスフェラーゼ活性を有する酵素、及び好熱菌由来の3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)活性を有する酵素を作用させて、O-ホスホセリンを生成させる、O-ホスホセリンの製造方法。
- 請求項1のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)活性を有する酵素が、Rhodothermus marinus由来の酵素である請求項1のO-ホスホセリンの製造方法。
- L−システインを製造する方法であって、請求項1又は2の製造工程を含む、L−システインの製造方法。
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