JP2019534700A - タンパク質の発現および送達のための組成物および方法 - Google Patents

タンパク質の発現および送達のための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、タンパク質の発現および/またはフォールディングの向上を促進するための環境を提供するための方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリであって、少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含み、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、野生型フェリチンサブユニットに存在する一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損していること、および前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリが、低塩濃度下で野生型フェリチンアセンブリよりも安定であることを特徴とする遺伝子組換えフェリチンアセンブリを提供する。また、本発明は、超好熱性細菌Archaeoglobus fulgidusに由来するフェリチンアセンブリによって例示される。さらに、ポリペプチドを前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリに封入して、該フェリチンアセンブリを対象に送達および投与するための核酸、組成物、キットおよび方法を請求する。

Description

本発明は、タンパク質の発現および/またはフォールディングの向上を促進する環境を提供するための方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、ポリペプチドおよび核酸を封入することができる遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリを提供する。さらに本発明は、タンパク質治療薬を送達するための方法および組成物を提供する。
新生ポリペプチドから機能性タンパク質構造物へと変換される経路は、様々な因子のバランスによって左右される。このような因子のいくつかは、最終産物のフォールディングの成功に貢献するが、フォールディングを妨害する因子も多数存在する(Hartl, F.U. and Hayer-Hartl, M., Nat. Struct. Mol. Biol.16, 574-581 (2009); Daggett, V. and A. Fersht, A. Nat. Rev. Mol. Cell. Biol.4, 497-502 (2003))。天然のシャペロンは、フォールディングしていない中間体または部分的にフォールディングした中間体の凝集を阻止し、エネルギー消費を伴う生産経路を利用してフォールディングを促す特異的な相互作用を起こし、非常に様々な時間スケールでフォールディングを誘導する速度論的な効果を発揮する(Hartl, F.U. et al., Nature. 475, 324-332 (2011); Kim, Y.E. et al., Annu. Rev. Biochem.82, 323-355 (2013))。また、組換えタンパク質の発現は、基礎生物学および応用生物学のいずれでも非常に重要な部分を占めている。しかしながら、フォールディングしていない中間体の凝集を阻止しつつ、寛容なフォールディング環境を提供する方法は、いまだ主要な課題として残されている。
過去の研究では、420コピーの外被タンパク質と130〜300コピーの足場タンパク質から構築されたP22 VLPバクテリオファージを使用して、その内腔面に組換えタンパク質を封入できることが示されている(Patterson, D.P. et al. Chem. Commun. (Camb).49, 10412-10414 (2013))。しかし、このようなカプシドからのタンパク質の回収はさらに難しく、苛酷な条件が使用されることから、回収されるタンパク質がダメージを受けてしまう(Comellas-Aragones, M. et al., Nat Nanotechnol.2, 635-639 (2007))。
したがって、寛容なフォールディング環境を提供することによってタンパク質の発現を向上させる方法は、いまだ満たされていない重要なニーズの1つである。
本発明は、遺伝子組換えナノサイズ封入(NE)シェル、すなわち24個のサブユニットから構成される遺伝子組換えフェリチンアセンブリで新生ポリペプチドを取り囲むことによって、機能性ポリペプチドを発現させる方法の開発に一部基づく。本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、封入されたポリペプチドを細胞内凝集から保護すると同時に機能性ポリペプチドの生成を誘導するナノ環境を提供する。特定の理論に拘束されるものではないが、内包化された基質に対する立体化学的相補性および静電的相補性を厳密に設定することによって、フォールディング過程における凝集を阻止すると同時に、正しくフォールディングした三次構造を安定化させることができると考えられる。さらに、本発明のナノサイズ封入(NE)シェルは、様々な種類の変性因子に対して保護作用を有し、耐熱性の向上を提供する。発現宿主(たとえば大腸菌)を使用することによって、目的の可溶性タンパク質(POI)-NE複合体を精製し、水性緩衝液中において、たとえば大腸菌の細胞質ゾル中などでは通常達成不能な機能(ジスルフィドの酸化、タンパク質分解からの保護、封入体形成の阻止など)を発揮させるための操作を行うことができる。また、本明細書で示されるように、封入されたポリペプチドが制御放出されるように、遺伝子組換えフェリチンアセンブリを設計することもできる。さらに、遺伝子組換えフェリチンアセンブリを使用して、封入されたポリペプチドを標的細胞に送達することができる。さらに、遺伝子組換えフェリチンアセンブリを使用して、核酸または小分子を封入し送達することができる。
ナノサイズでの封入は、新生ポリペプチドのナノ環境を決定するプラットフォームとして、タンパク質のフォールディングの基礎研究とタンパク質の作製への適用との両方に利用可能である。熱安定性シェル内に単一のポリペプチドを封入できることから、ナノテクノロジー、治療用タンパク質の送達、および酵素やその他の機能性タンパク質の一般的な操作に利用できると考えられる。
本発明の様々な態様は、遺伝子組換えナノサイズ封入(NE)シェルで核酸を取り囲むことを含む。
ナノサイズ封入(NE)シェルの構築を示す。図1A:24個のサブユニットからなるAfFtnアセンブリのサーフェスモデルであり、外殻(external shell)と、4個ある約4.5nmの孔のうちの1個を示す。また、デジタル加工により6個のサブユニットを取り除き、NEシェルの親水性の内部空間内の西洋ワサビペルオキシダーゼアイソザイムC(HRPC)の表面をレンダリングした別のサーフェスモデルを示す。図1B:C末端切断による安定化効果を動的光散乱法によって測定した結果を示す。図1C:C末端を切断して安定化させ、F残基をH残基に置換してさらに変異を加えて、pH依存的にアセンブリの形成と分解が可能な変異体を作製した。組換え発現させた7種のシェルおよび遺伝子組換え変異体をまとめたデータを表に示す。WT=野生型、ΔC=C末端切断変異体、(+)=正味の内部電荷が正の変異体、(-)=正味の内部電荷が負の変異体、“(+/-)”=正味の内部電荷が中性の変異体、F116H=pH感受性の変異体である。pH依存的にアセンブリの形成と分解が調節可能なシェルは、いずれもそれぞれに対応するΔC変異体に由来する。
POIの可溶性発現に対するNEシェルの効果を示す。図2A:用語を説明するための概略図を示す。図2B:Hisタグ付加タンパク質として発現させたGFPuv、(NEサブユニット[リンカー]と融合することなく)NEシェルと共発現させたHisタグ付加GFPuv、シェルを形成していないNEサブユニットに融合したGFPuv、および内部電荷が正、中性または負のシェルと共発現させたNEサブユニット融合Hisタグ付加GFPuv(O.D.600=0.8で発現誘導)のSDSゲル電気泳動図である。POI(GFPuv、HRPCまたはルシフェラーゼ)のC末端の遺伝子組換えcMycエピトープに対する抗体を使用して、SDSゲルのウエスタンブロットを行ったところ、リンカーおよびシェルの存在下でのみ可溶性発現が示された。図2C:POIとしてGFPuv、HRPCまたはルシフェラーゼを使用した場合の、精製した複合体のサイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示す。いずれの場合も、Hisタグ付加サブユニットとNEシェルが同時に精製され、アセンブリが形成されたことが示されている。図2D:精製したGFPuv、HRPCまたはルシフェラーゼのSDSゲル電気泳動図であり、h6NE-POIのバンドとNEサブユニットのバンドが示されている。
POIの機能発現に対するNEシェルの効果を示す。図3A:蛍光分光学法によるGFPuv発現の機能分析を示す(励起光:395nmおよび蛍光:415〜600nm)。図3B:D−ルシフェリン、ATPおよびMg2+を使用した、3種のケージ(500nM)間でのルシフェラーゼ活性の比較を示す。組換えルシフェラーゼ(600pM)をポジティブコントロールとして使用し、AfFtnΔC(-)(500nM)をネガティブコントロールとして使用した。組換えルシフェラーゼ(図3C)およびh6NE-ルシフェラーゼ(+/-)(図3D)のルシフェラーゼ活性の速度論的解析を示す。反応速度論的パラメーターKmおよびVmaxを測定した。図3E:3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して450nmでHRPC活性を測定したHRPC発現の機能解析を示す。図3F:NE内部でのHRPC活性に対する補因子/添加剤の効果を示す。HRPC活性は、補因子であるカルシウムおよびヘミン、ならびに様々な添加剤(酸化剤および還元剤)の存在下において同一条件で処理した細胞溶解物を使用して評価した(n=3、エラーバーは±S.D.を示す)。
内包化された機能性ペプチドの収率に対するtESバリアントの効果を示す。図4Aは、インビトロフォールディングを利用した場合のGFPuv活性に対して、tES(+)サブユニットとtES-GFPuvのモル比が及ぼす効果を、様々なモル比で調査した結果を示す。図4Bは、tESの存在下または非存在下においてインビトロでフォールディングさせたGFPuv、HRPCおよびrLucを、蛍光測定、吸光度測定およびルミネッセンス測定により機能解析した結果を示す。図4Cは、共発現条件を組み合わせて発現させたGFPuv、HRPCおよびrLucを、蛍光測定、吸光度測定およびルミネッセンス測定によって解析した結果を示す(図1Bに詳細を示す)。
NEシェルへの活性タンパク質の内包化およびNEシェルからの活性タンパク質の回収を示す。図5A:pH8.0およびpH5.8におけるF116HNE-GFPuv(+)およびF116HNE-HRPC(+)のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。各画分のGFPuv活性またはHRPC活性を分析し、クロマトグラフィーの結果と重ね合わせた。ピーク2は、放出されたh6NE-GFPuvおよびh6NE-HRPCを示す。図5B:GFPまたはHRPの内包化を調べるため、ELISAを使用したエピトープ保護アッセイを行った。ELISAにおけるピーク2の画分の測定値は、ピーク1の画分の測定値よりも高く、シェル内においてPOIが発現されていることが示された。図5C:TEVプロテアーゼを使用したプロテアーゼ保護アッセイの結果を示す。h6NE-GFPuvTEV(+)およびh6NEGFPuvTEVをTEVプロテアーゼで処理した。ウエスタンブロット分析を行ったところ、プロテアーゼによってh6NE-GFPuvTEVが切断されたが、h6NE-GFPuvTEV(+)は切断されず、GFPuvが内包化されていることが示された。図5D:抗c-Myc抗体を使用した共免疫沈降法の結果を示す。h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)、AfFtnΔC(+)(ネガティブコントロール)およびh6NE-ルシフェラーゼ(ポジティブコントロール)のSDSゲル電気泳動図を示す。「FT」は素通り画分を示し、「E」は溶出画分を示す。SDSゲルのウエスタンブロット(下パネル)を行ったところ、h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)では素通り画分においてルシフェラーゼのバンドが示され、h6NE-ルシフェラーゼでは溶出画分においてルシフェラーゼのバンドが示された。図5E:NEからの活性タンパク質の回収を示す。F116HNE-GFPuv(+)、F116HNE-HRPC(+)およびF116HNE-rLuc(+)のケージをpH5.8において分解した。放出されたPOIをFXaでタンパク質分解し、GFPuv、HRPCまたはrLucを分離した。ウエスタンブロットによって、NE(+)からのPOIの分離が確認された。(n=3、エラーバーは±S.D.を示す。)
封入されたPOI(HRPCまたはrLuc)の安定性に対するtESの効果を示す。(a)封入されたPOIおよび封入されていないPOIはいずれも透析緩衝液に対して安定である。(b)0.4%トリプシン、(c)20%メタノール、(d)8M尿素および(e)30%アセトニトリル中におけるtES-POIの安定性は、tES内に封入したことによって向上した。(f)tES(+)F116H/tES-POIは15分間の熱変性に対して抵抗性を有する。(g)tES(+)F116H/tES-rLucは、加熱サイクルの繰り返し(80℃×5分×10サイクル)に対して高い抵抗性を有し、rLucよりも3桁高い活性を示した。
制限部位を含む様々な構築物の概略図を示す。図7A:アセンブルした場合に正味の内部電荷が負となるC末端切断型AfFtn[AfFtnΔC(-)]。図7B:アセンブルした場合に正味の内部電荷が正となる、4個の点突然変異(E65K、E128K、E131KおよびD138A)を有するC末端切断型AfFtn[AfFtnΔC(+)]。図7C:アセンブルした場合に正味の内部電荷が中性となる、2個の点突然変異(E65QおよびD138A)を有するC末端切断型AfFtn[AfFtnΔC(+/-)]。図7D:ケージの分解に対するpHの効果を調査するために使用した、F116H変異を有する内部電荷が正のC末端切断型AfFtn[F116H(+)]。図7A〜7Dに示した構築物はpRSF1bベクターにクローニングした。図7E:C末端切断型AfFtnとPOI(GFP/HRP/ルシフェラーゼ)の融合物。N末端のHisタグとC末端のc-Mycエピトープを強調して示している[h6NE-POI]。図7F:AfFtnとPOIの間にプロテアーゼ部位(TEVまたはFXa)を有する、C末端切断型AfFtnとPOIの融合物。N末端のHisタグとC末端のc-Mycエピトープを強調して示している[h6NE-POI-プロテアーゼ]。図7Eの構築物および図7Fの構築物は、pBAD/HisBベクターにクローニングした。
C末端切断型AfFtn[AfFtnΔC](PDBアクセッションコード:1SQ3)の12個のサブユニット分子の表面のレンダリング図を示す。図8A:内面の電荷が負の野生型。図8B:内面の電荷が正のAfFtnΔC(+)。合計48個の変異(1個のサブユニット当たり4個の変異:E65K、E128K、E131KおよびD138A)を強調して示している。図8C:内面の電荷が中性のAfFtnΔC(+/-)。合計24個の変異(1個のサブユニット当たり2個の変異:E65QおよびD138A)を強調して示している。分かりやすく視覚化するため、12個のサブユニットを取り除いてシェルの内部を示している。
遺伝子組換えAfFtnケージの特性を示す。図9A、図9B、図9C、図9Dおよび図9Eは、AfFtnΔC(+)、AfFtnΔC(+/-)、F116HAfFtnΔC(+)、F116HAfFtnΔC(+/-)およびh6NE-GFP(+)を使用した動的光散乱研究の結果をそれぞれ示す。図9F:(O.D.600=0.8で発現誘導した)3種の遺伝子組換えAfFtnケージの発現量を示すSDSゲルである。
鉄アッセイの結果を示す。図10Aは、ウマ脾臓フェリチンをポジティブコントロールとして使用することにより分析した3種の遺伝子組換えAfFtnケージ(濃度:1.6mg/ml)の鉄濃度を示す。ポジティブコントロールと比較すると、遺伝子組換えケージ内の鉄含量は無視できるほど微量であった。図10Bは、硫酸第一鉄アンモニウムを使用したフェリチンシェルの鉄取り込み研究を示す。野生型Afuフェリチンと比較して、遺伝子組換えtESシェルによる鉄の取り込み量は少なかった。実験はすべてn=3で行った。エラーバーは±S.Dを示す。
遺伝子組換えAfFtnケージを使用した、20℃〜90℃における熱アンフォールディング研究の結果を示す。遺伝子組換えAfFtnケージの遠紫外円偏光二色性(CD)スペクトル(図11A:AfFtnΔC(+);図11B:AfFtnΔC(-);図11C:AfFtnΔC(+/-))において、α−らせん構造に典型的に見られるように、208nmおよび224nmで強度が最小となり、195nmで強度が最大となることが示された。タンパク質試料(0.1mg/ml)を10mMリン酸緩衝液に溶解し、Chirascan円二色性分散計と光路長が0.1cmの栓付きキュベットを使用して測定値を記録した。1℃/分の速度でタンパク質溶液を加熱することによって、熱によるタンパク質の変性を誘導し、温度を1℃上げるごとにスペクトルを記録した。
ケージの分解に対するF116H変異の効果を示す。サイズ排除クロマトグラフィー実験はいずれも、25mM Tris-クエン酸緩衝液(pH8.0およびpH5.8)を使用して行った。h6NE-GFPuv(+)から得た画分およびF116HNE-GFPuv(+)から得た画分は、蛍光測定値(励起波長:395nmおよび発光波長:509nm)を分析し、クロマトグラムにプロットした。図12A:AfFtn(PDBアクセッションコード:1SQ3)の全体の構造を示す。α−ヘリックスは緑色の円筒として示す。三量体で構成された界面において、116番目の3個のフェニルアラニン(マゼンタ)を強調して示した。図12BはpH8.0におけるAfFtnΔC(+)のクロマトグラムを示し、図12CはpH5.8におけるAfFtnΔC(+)のクロマトグラムを示す。図12DはpH8.0におけるF116HAfFtnΔC(+)のクロマトグラムを示し、図12EはpH5.8におけるF116HAfFtnΔC(+)のクロマトグラムを示す。ピーク2に示されるように、pH5.8おいてNEシェルは、より小さな単位であるサブユニットに分解する。図12FはpH8.0におけるh6NE-GFPuv(+)のクロマトグラムを示し、図12GはpH5.8におけるh6NE-GFPuv(+)のクロマトグラムを示す。図12HはpH8.0におけるF116HNE-GFPuv(+)のクロマトグラムを示し、図12IはpH5.8におけるF116HNE-GFPuv(+)のクロマトグラムを示す。ピーク2およびピーク3に示されるように、pH5.8においてNEシェルは、より小さな単位であるサブユニットに分解する。ピーク2は、h6NE-GFPuvの溶出を示し、ピーク3はNEサブユニットの溶出を示す。
GFPの機能発現に対するL−アラビノースの効果を示す。図13Aは0.01%のL−アラビノースによる結果を示す。図13Bは0.1%のL−アラビノースによる結果を示す。図13Cは1%のL−アラビノースによる結果を示す。細菌ペレット10mgを1mlの溶解緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.4、300mM NaCl、0.1%Tween-20)に溶解し、超音波処理し、10,000rpmで20分間遠心分離した。上清(200μl)を回収して96ウェル黒色ポリスチレンプレートに入れ、蛍光発光を415〜600nmでスキャンした。励起波長は395nmで固定した。図13D:3種のL−アラビノース濃度で発現させた様々なGFPuvバリアント間での509nmにおける最大蛍光強度の比較を示す。実験はすべてn=4で行った。エラーバーは±S.Dを示す。
セラノスティクス実験のフローの概要を示す。このアプローチは、多段階プロセスであり、まず、標的に変換剤(封入された酵素)を結合させ、この変換剤によって、毒性のないプロドラッグを毒性のある生成物(化学療法治療薬)に変換する。この化学療法治療薬は、治療標的部位である器官または腫瘍の近傍で選択的に合成されることから、非常に高い治療指数で腫瘍を治療することができる。
MDA-MB-231がん細胞株によるナノケージの取り込みを示した共焦点画像である。GE11およびD4は、がん細胞上に過剰発現されるEGFRに結合するペプチドである。NP=ナノ粒子。
tESサブユニットのモル比の変化および電荷が、インビトロにおける天然HRPCの封入に与える影響を示す。図16Aは、tES(+)F116Hサブユニットのモル濃度の上昇が天然HRPCの封入およびフォールディングに与える影響を、HRPC活性(OD450)により測定した結果を示す。図16Bは、tESF116Hサブユニットの電荷が天然HRPCの封入およびフォールディングに与える影響を、HRPC活性(OD450)により測定した結果を示す。ポジティブコントロールは、tES(+)F116H:tES-HRPC(1μM)およびtES(-)F116H:tES-HRPC(1μM)である。
tESサブユニットの濃度の変化が、インビトロにおけるHRPCのフォールディングに与える影響を示す。図17Aは、tES(+)F116HサブユニットとHRPCのモル比を様々に変化させた場合のtES(+)F116H:HRPCのサイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示す。いずれのモル比でも、ヒスチジンタグを付加したサブユニットがtESと同時に精製され、tESアセンブリ内にHRPCが封入されたことが示された。試験したすべてのモル比について、各サイズ排除クロマトグラフィー画分のHRPC活性を分析した。図17Bは、tESサブユニットとHRPCのモル比を60:10または60:8とした場合の、tES(+)F116H:HRPCおよびtES(-)F116H:HRPCのサイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示す。試験したすべてのモル比について、各サイズ排除クロマトグラフィー画分のHRPC活性を分析したところ、tES(-)F116HとHRPCの正味の電荷が類似していたことから、tES(-)F116HアセンブリにHRPCが封入されなかったことが示された。図17Cは、tES(+)F116HサブユニットとHRPCのモル比を様々に変化させた場合のtES(+)F116H:HRPCのサーマルシフトアッセイの結果を示す。HRPCの量が増加するほど、tES(+)F116Hの変性温度が上昇する。図17Dは、tES(+)F116H:HRPC(モル比=60:10)のサーマルシフトアッセイの結果、およびtES(-)F116H:HRPC(モル比=60:10)のサーマルシフトアッセイの結果を示す。tES(-)F116HとHRPCのモル比が60:10の場合、変性温度の変化は、tES(+)F116Hと比較して無視できるほどわずかであったことから、tES(-)F116Hアセンブリ内にHRPCが封入されなかったことが示された。
tESサブユニットのモル比の変化および電荷が、インビトロにおける天然GFPuvの封入に与える影響を示す。図18Aは、tES(+)F116Hサブユニットのモル濃度の上昇(モル比=60:1〜60:10)が天然GFPuvの封入およびフォールディングに与える影響を、GFPuvの蛍光強度(508nm)により測定した結果を示す。図18Bは、tESF116Hサブユニット(モル比=60:8および60:10)の電荷が天然GFPuvの封入およびフォールディングに与える影響を、GFPuvの蛍光強度(508nm)により測定した結果を示す。図18Cは、tESサブユニットとGFPuvのモル比を様々に変化させた場合の、tES(+)F116H:GFPuvのサーマルシフトアッセイの結果を示す。GFPuvの量が増加するほど、tES(+)F116Hの変性温度が上昇する。図18Dは、tES(+)F116H:GFPuv(モル比=60:10)のサーマルシフトアッセイの結果、およびtES(-)F116H:GFPuv(モル比=60:10)のサーマルシフトアッセイの結果を示す。tES(-)F116HとGFPuvのモル比が60:10の場合、変性温度の変化は、tES(+)F116Hと比較して無視できるほどわずかであったことから、tES(-)F116Hアセンブリ内にGFPuvが封入されなかったことが示された。図18Aにおいて、ポジティブコントロールはtES:tES-GFPuv(0.5μM)であり、ネガティブコントロールはGFPuvである。図18Bにおいて、ポジティブコントロールはtES(+)F116H:tES-GFPuvおよびtES(-)F116H:tES-GFPuvである。
tES(+)F116Hサブユニットのモル比の変化が、インビトロにおける天然rLucの封入およびフォールディングに与える影響を、rLucのルミネッセンスにより測定した結果を示す。ポジティブコントロールはtES:tES-rLuc(1μM)であり、ネガティブコントロールはrLucである。
目的タンパク質(POI)をインビトロでフォールディングさせるためのプロトコルを示す。6M GuHCl中にtES-POIを溶解し、60℃で加熱して完全に変性させる。変性させた後、pH5.8において、tES-POIとtESサブユニットを一定のモル比で混合する。pHを徐々に8まで上げることによって、変性タンパク質をtES(+)F116Hアセンブリの内部に封入させる。25mM Tris緩衝液(pH8)を使用してPOIを透析し、tES(+)F116Hアセンブリの内部に封入された変性タンパク質をフォールディングさせる。
tES(+)F116Hサブユニットのモル比の変化が、インビトロにおけるnaked ssDNAの封入に与える影響を示す。図21Aは、tES(+)F116Hサブユニットのモル濃度の上昇(10:1〜60:1)がssDNAの封入およびDNase I消化からのssDNAの保護に与える影響を示す。「B」と印を付けたレーンは、DNase Iを含んでおらず、「A」と印を付けたレーンはDNase Iで消化したものである。レーン1はサイズマーカーを含み、レーン2〜3はnaked ssDNAコントロールである。図21Bは、tES(+)F116H封入タンパク質をクマシー染色したゲルを示す。
プラスミドを添加したtES(+)F116Hの透過電子顕微鏡写真およびプラスミドを添加していないtES(+)F116Hの透過電子顕微鏡写真である。図22Aでは、pRSFプラスミドの添加後に円形斑点状のパターン(囲み枠内の画像を参照されたい)を形成したtES(+)F116Hが示され、pRSFプラスミドにtES(+)F116Hが結合したことが強く示唆された。pRSFプラスミドDNAとtES(+)F116Hサブユニットのモル比を1:1000とした封入混合物中において、インビトロでpRSFプラスミドDNAをtES(+)F116Hサブユニットで封入した後、tES(+)F116HとpRSFプラスミドを1000:1のモル比で混合した。右側のパネルは、左側のパネルの拡大図である。図22Bは、プラスミドを添加していないtES(+)F116Hを示す。円形斑点状のパターンは観察されなかった。
一例としての本発明の実施形態を以下に説明する。
本発明は、ナノサイズ封入シェルを使用して、遺伝子組換えされた親水性の内洞内に、新生タンパク質鎖、核酸または小分子などの積荷分子を封入する方法の開発に一部基づく。本明細書で述べるように、超好熱性細菌Archaeoglobus fulgidusに由来する熱安定性フェリチンアセンブリ(AfFtn)を選択し(図1A)、この熱安定性フェリチンアセンブリ(AfFtn)が、拡散している周囲の溶質に容易に到達できる能力(diffusional accessibility)と、密接に関連したフォールディングしていないタンパク質による変性作用に抵抗性を示す構造安定性とを有することを実証した。
本明細書において「含む(comprising)」または「含む(including)」という用語は、これらの用語によって示される本明細書に記載の特徴、整数、工程または成分の存在を特定するものであると解釈されるが、1つ以上の特徴、整数、工程もしくは成分またはこれらの群の存在または付加を除外するものではない。また、本開示の文脈において、「含む(comprising)」または「含む(including)」という用語は、「からなる(consisting of)」という意味も包含する。したがって、「comprise」や「comprises」などの「含む(comprising)」という用語のバリエーション、および「include」や「includes」などの「含む(including)」という用語のバリエーションも同様に広い意味を有する。
天然のAfFtnアセンブリは24個のサブユニットを含み、各サブユニットは約20kDaであり、4−ヘリックスバンドル構造モチーフを含んでいる。天然のAfFtnアセンブリの外径は12nmであり、内部に直径8nmのケージを有する(Johnson, E. Structure.13, 637-648 (2005))。AfFtnは、他のフェリチンとは異なり、典型的な八面体対称(4:3:2)ではなく四面体対称(2:3)であることから、自体の内部から外部に通じる約4.5nmの三角形の開口/孔を4個持つ(Sana, B. J. Biol. Chem. 288, 32663-32672 (2013))。AfFtnアセンブリは、安定性が非常に高く、最大で90℃の加熱や、8Mもの高い尿素濃度に耐えることができる(Liu, X. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.100, 3653-3658 (2003))。しかし、天然のAfFtnは、低塩濃度下で解離してしまう(Johnson, E. Structure.13, 637-648 (2005))(図1B)。
本明細書に記載のナノサイズの封入シェル(NE)は、低塩濃度下であっても非常に安定であり、遺伝子組換えによって、内部環境の正味の電荷を正、中性または負に調整することができる。本明細書で示されるように、NEを使用することによって、大腸菌における4種の目的タンパク質(緑色蛍光タンパク質、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼアイソザイムC)の機能発現が増加した。さらに、本明細書に記載のNEは、pH依存的にアセンブリの分解と形成が可能となるように遺伝子組換えされており、これによって封入されたタンパク質の制御放出が容易となる。
フェリチンアセンブリ組成物
一態様において、遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリであって、
少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含み、
前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損していること、および
前記フェリチンアセンブリが、低塩濃度下で野生型フェリチンアセンブリよりも安定であること
を特徴とする遺伝子組換えフェリチンアセンブリを提供する。
本明細書において「フェリチンアセンブリ」という用語は、当技術分野で構造が公知の「フェリチン」と同じ意味で使用される。フェリチンは、24個のサブユニット(フェリチンサブユニット)を含んでいる。各サブユニットは、大きさが決まっており(たとえばAfFtnのサブユニットは約20kDaである)、構造モチーフを有する(たとえばAfFtnのサブユニットは、4−ヘリックスバンドル構造モチーフを有する)。天然のフェリチンアセンブリは、外径が決まっており(たとえばAfFtnの外径は12nmである)、内部ケージの直径も決まっている(たとえばAfFtnの内部ケージの直径は8nmである)。フェリチンは、当技術分野においてその特性が詳しく評価されている(たとえばJohnson, E. Structure.13, 637-648 (2005)を参照されたい)。
前述したように、本明細書において「フェリチンサブユニット」は、フェリチンアセンブリを構成する24個のサブユニットのうちの1個を指す。フェリチンアセンブリのサブユニットは構造が決まっており、4−ヘリックスバンドルモチーフを含んでいる。AfFtnにおいて、各サブユニットは約20kDaであり、4−ヘリックスバンドル構造モチーフを含んでいる。
本明細書において「遺伝子改変フェリチンサブユニット」は、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損したフェリチンサブユニットを指す。すなわち、「遺伝子改変フェリチンサブユニット」は、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列の欠損を含む。この遺伝子改変フェリチンサブユニットを、(C末端が欠損したフェリチンサブユニットを指して)総称的に「Ftn-サブユニットΔC」と呼ぶ場合もある。
本明細書において「遺伝子組換えフェリチンアセンブリ」は、本明細書に記載の少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットで形成されたフェリチンアセンブリを指す。遺伝子組換えフェリチンアセンブリを、「ナノシェル」、「ナノケージ」、「ナノサイズ封入シェル(nanoencapsulator)」すなわち「NE」、または「熱安定性外殻(thermostable exoshell)」すなわち「tES」と呼ぶ場合もある。「AfFtnΔC」は、特に、C末端が欠損したArchaeoglobus fulgidusフェリチンサブユニットで形成された遺伝子組換えArchaeoglobus fulgidusフェリチンアセンブリを指す。
特定の実施形態において、野生型フェリチンサブユニットは、熱安定性フェリチンアセンブリの一部を構成する。特定の実施形態において、野生型フェリチンサブユニットは、たとえば、Archaeoglobus fulgidusおよびPyrococcus furiosusなどの超好熱性細菌に由来する熱安定性フェリチンアセンブリの一部を構成する。特定の実施形態において、熱安定性フェリチンアセンブリは、該アセンブリの内部から外部に通じる開口/孔を有する。特定の実施形態において、前記孔の幅は約2nm〜約4.5nmである。より好ましい実施形態において、前記孔の幅は約4.5nmである。特定の実施形態において、野生型フェリチンサブユニットは、配列番号1に示されるAfFtnの配列を含む。
本明細書において「一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列」は、不規則な構造(たとえば、らせん構造を持たない不規則な構造)を有することが知られている、野生型フェリチンサブユニットのC末端残基配列を指す。野生型フェリチンサブユニットのこのような残基配列は当技術分野で知られており、当業者であれば、一定の構造をとっていない(unstructured)領域がどこから始まり、どこで終わるのかを特定することができる。たとえば、「一定の構造をとっていない(unstructured)」配列は、通常、X線結晶解析などの方法を使用して可視化することはできない。たとえば、別の方法として、分子動力学モデリングを使用して求められる残基または一連の残基のb-factorが2を超える場合、「一定の構造をとっていないこと(unstructured)」または「不規則な構造であること(disordered)」を特定することができる。AfFtnサブユニットにおいて、一定の構造をとっていないカルボキシ末端配列は、配列番号1の165番目〜173番目の残基(FTPPAEEEK)を含む。特定の実施形態において、少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号1の1番目〜164番目の残基、1番目〜165番目の残基、1番目〜166番目の残基、1番目〜167番目の残基、1番目〜168番目の残基、1番目〜169番目の残基、1番目〜170番目の残基、1番目〜171番目の残基、または1番目〜172番目の残基を含む。1番目〜164番目の残基を含む遺伝子改変フェリチンサブユニットの一例を配列番号2に示す。遺伝子改変フェリチンサブユニットの最後の残基以降に、たとえばクローニング部位などに由来し、遺伝子組換えフェリチンアセンブリの機能に影響を与えない残基が存在していてもよいことは、当業者であれば容易に理解できるであろう。たとえば、表1に示すように、一定の構造をとっていないC末端が切断されたAfFtnサブユニットは、クローニングプラスミドのクローニング部位(制限部位)に由来する「TS」残基を含む。本明細書に記載の配列を表1にまとめる。一定の構造をとっていないカルボキシ末端配列を取り除くことによって、遺伝子組換えフェリチンアセンブリの内部空間を広くするだけでなく、低塩濃度下(たとえば30mM NaClといった低い塩濃度)における安定性をアセンブリに付与することができる。
別の方法として、サブユニット同士の化学的架橋によって、遺伝子組換えフェリチンアセンブリを低塩濃度下で安定させることができる。
遺伝子改変フェリチンサブユニットは、そのアミノ酸配列に1個以上のさらなる改変(たとえばアミノ酸置換)を含むことができる。本明細書で述べるように、少なくとも1個のフェリチンサブユニットは、フェリチンアセンブリの内面の正味の電荷が変化するように(たとえば正、負または中性になるように)遺伝子改変することができる。本明細書で述べるように、フェリチンアセンブリの正味の内部電荷を正、負または中性とするために、フェリチンサブユニット内のどの残基を遺伝子改変する必要があるのかを決定する方法は、当技術分野で知られている。
特定の実施形態において、フェリチンアセンブリの正味の内部電荷が正となるように、フェリチンサブユニットを遺伝子改変することができる。特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号1に示されるAfFtnサブユニットのE65、E128、E131およびD138から選択される1箇所以上の位置にアミノ酸置換を含む。特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、E65K、E128K、E131KおよびD138Aから選択される1つ以上の置換を含む。このようなフェリチンサブユニットの一例を配列番号3に示す。
特定の実施形態において、フェリチンアセンブリの正味の内部電荷が中性となるように、フェリチンサブユニットを遺伝子改変することができる。特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号1に示されるAfFtnサブユニットのE65もしくはD138、またはこれらの両方にアミノ酸置換を含む。特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、E65QもしくはD138A、またはこれらの両方を含む。このようなフェリチンサブユニットの一例を配列番号4に示す。
本明細書で述べるように、天然のAfFtnフェリチンサブユニットの末端切断によって作製された遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、正味の電荷が負である。また、特定の実施形態において、遺伝子組換えフェリチンアセンブリの正味の内部電荷が負となるように、フェリチンサブユニットを別の方法で遺伝子改変することができる。たとえば、別の変異として、負電荷を有する1個以上の天然の残基を、負電荷を有する変異残基に置換することができる。このような改変は、天然配列による鉄の取り込みを低下させることができるという点で望ましい場合がある。正味の内部電荷を負にする天然の残基を特定する方法、および天然の残基を、負電荷を有する別の残基に置換する方法は当技術分野で知られている。
本明細書で述べるように、特定の実施形態において、本発明の方法に従って、少なくとも1個のフェリチンサブユニットを遺伝子改変することができる。融合ポリペプチドの効率的な発現および/または効率的なフォールディングが可能となる遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成するために、24個のサブユニットのうち、任意の数のサブユニットを本発明の方法により遺伝子改変することができることを、当業者であれば容易に理解できるであろう。すなわち、融合ポリペプチドの効率的な発現および/または効率的なフォールディングが可能となる遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成するために、本発明の方法に従って、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個もしくは23個のサブユニット、またはすべてのサブユニットを遺伝子改変することができる。融合ポリペプチドの効率的な発現および/または効率的なフォールディングが可能となる遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成するために、本発明の方法に従って遺伝子改変されたサブユニットをどのように組み合わせてもよいことを、当業者であれば容易に理解できるであろう。
特定の実施形態において、本明細書の記載に従ってフェリチンサブユニットを遺伝子改変することによって、融合ポリペプチドの発現に最適な環境を提供する。たとえば、遺伝子組換えフェリチンケージの容積を適切に最大化し、かつ/または遺伝子組換えフェリチンケージの正味の内部電荷を適切に正、負または中性に調整することによって、所定のポリペプチドの発現を最適化する。前記遺伝子組換えフェリチンケージの正味の内部電荷は、正または中性であることが好ましい。したがって、本明細書に記載の方法は、所定のポリペプチドの発現に適するように調整することができる。
特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、ポリペプチドと融合している。本明細書において「融合」とは、遺伝子改変フェリチンサブユニットとポリペプチドが連結されて融合体を形成するように、遺伝子改変フェリチンサブユニットが目的のポリペプチドにインフレームで接合されていることを指し、この融合によって、遺伝子改変フェリチンまたはポリペプチドの形成やその機能(たとえばフェリチンアセンブリを形成する能力)が妨害されることはない。特定の実施形態において、前記ポリペプチドは、遺伝子改変フェリチンサブユニットのカルボキシ末端に融合される。遺伝子組換え技術により融合分子を作製する方法は当技術分野でよく知られている。
特定の実施形態において、前記ポリペプチドは、連結配列を介して、前記遺伝子改変フェリチンサブユニットと融合している。特定の実施形態において、前記連結配列は、プロテアーゼ認識配列、リンカー配列、公知のエピトープ(たとえばMycエピトープ(対応するc-myc遺伝子産物に由来するmycタグ))、切断配列、自己切断配列、特定の化学修飾および/または架橋を可能とする配列、クローニング部位(たとえば制限酵素認識配列)に由来する配列、化学的リンカーおよびビオチン−ストレプトアビジンなどの非共有結合リンカー、ならびにこれらの任意の組み合わせのうちの1種以上から選択される。当技術分野で公知の様々な適切なプロテアーゼ認識配列を使用することができ、このようなプロテアーゼ認識配列として、たとえば、本明細書に記載のTEVプロテアーゼ/FXa、および/またはトロンビンが挙げられる。当技術分野で公知の様々なリンカー配列を使用することができ、たとえば、グリシン/セリンからなるリンカーが挙げられる。このような配列を含む連結領域を設計する方法は当技術分野でよく知られている。
本明細書において「タンパク質」という用語および「ポリペプチド」という用語は、同じ意味で使用され、長さや翻訳後修飾(たとえばグリコシル化またはリン酸化)に関係なく、アミド結合によって共有結合された少なくとも2個のアミノ酸からなるポリマーを指す。「タンパク質」は、天然の完全長タンパク質および人工の完全長タンパク質(たとえば遺伝子組換え完全長タンパク質や完全長タンパク質のバリアント)、ならびにこれらのタンパク質の機能性断片を含む。
「機能性断片」は、完全長タンパク質の活性または機能(たとえば酵素活性などの生物学的活性または生物学的機能)のすべてまたはその一部を保持するタンパク質の一部を指す。保持される活性または機能として、たとえば、別のタンパク質または核酸と結合および/もしくは相互作用する能力、または別のタンパク質または核酸を調節する能力が挙げられる。機能性断片は、たとえば、別のタンパク質または核酸と結合して相互作用する能力を保持している限り、どのような大きさであってもよい。
本明細書で述べるように、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内にポリペプチドが封入される。すなわち、遺伝子改変フェリチンサブユニットが遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成すると、ポリペプチドを取り囲むケージが形成される。特定の実施形態において、ポリペプチドと融合した遺伝子改変フェリチンサブユニットは、ポリペプチドと融合していない他の遺伝子改変フェリチンサブユニットと一緒にアセンブルして、該ポリペプチドが封入された遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成する。特定の実施形態において、ポリペプチドと融合した1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、ポリペプチドと融合していない他の23個の遺伝子改変フェリチンサブユニットと一緒にアセンブルして、該1個のポリペプチドが封入された1個の遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成する。
本明細書で述べるように、遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、封入されたポリペプチドが制御放出されるように設計することができる。特定の実施形態において、本発明の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号1に示されるAfFtnのF116に置換を含むか、またはAfFtn以外のフェリチンサブユニットの同じ位置に置換を含む。特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、置換としてF116Hを含む。このようなフェリチンサブユニットの一例を配列番号5に示す。F116H変異を有する遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、酸性pH(すなわちpH7.0未満)、好ましくはpH約4.0以上pH7.0未満、より好ましくはpH約5.8において可逆的に解離し、塩基性pH(すなわち7.0を超えるpH)、好ましくはpH約8.0において安定に再アセンブルすることが本明細書において示されている。
特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、置換としてF116Hを含み、正味の内部電荷が正である。このようなフェリチンサブユニットの一例を配列番号8に示す。
特定の実施形態において、F116に置換を含むことによって、共有結合修飾因子に依存的な遺伝子組換えフェリチンアセンブリの形成および/または分解が可能となる。
遺伝子組換えフェリチンアセンブリの使用方法
一態様において、本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、ポリペプチドの発現を向上させる方法において使用される。ポリペプチドを封入する前記方法は、a)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損した遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする第1の配列と、b)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損し、かつポリペプチドと融合した遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする第2の配列とを含む核酸を細胞に導入することを含む。すなわち、本明細書で述べるように、第1の配列は、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列の欠損を含む遺伝子改変フェリチンサブユニット(Ftn-サブユニットΔCと呼ぶ)をコードし、第2の配列は、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列の欠損を含む遺伝子改変フェリチンサブユニットとポリペプチドの融合タンパク質をコードする。前記方法は、第1の配列および第2の配列を発現させること、ならびに前記ポリペプチドが封入されたフェリチンアセンブリを形成させることをさらに含み、これによって前記ポリペプチドの発現を向上させる。
特定の実施形態において、前記野生型フェリチンサブユニットは、配列番号1に示される配列を含む。特定の実施形態において、前記遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号2に示される配列、配列番号3に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列および配列番号8に示される配列を含む群から選択されるいずれか1つの配列を含む。
本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、ポリペプチドの効率的なフォールディングを可能とし、これによって機能性ポリペプチドの産生を全体的に増加させることができる。本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、封入されたポリペプチドが機能性構造をとるためのフォールディングを向上させることができる最適な環境を提供する。本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、該遺伝子組換えフェリチンアセンブリで封入せずに発現させた場合に起こりうるポリペプチドのミスフォールディングおよび/または凝集を阻止または最小限に抑えることができる。したがって、本明細書において「発現の向上」とは、フォールディングの向上、凝集の減少、発現の増加もしくはその他のプロセス、またはこれらの組み合わせが達成されることによって、機能性ポリペプチド(たとえば意図した生物学的機能を担うポリペプチド)の産生が増加することを指す。
本明細書において「核酸」は、複数個のヌクレオチドモノマー(たとえばリボヌクレオチドモノマーまたはデオキシリボヌクレオチドモノマー)を含むポリマーを指す。「核酸」としては、たとえば、ゲノムDNA、cDNA、RNAおよびDNA-RNAハイブリッド分子が挙げられる。核酸分子は、天然の核酸分子、組換え核酸分子、合成核酸分子のいずれであってもよい。さらに、核酸分子は、一本鎖、二本鎖、三本鎖のいずれであってもよい。特定の実施形態において、核酸分子を修飾することができる。二本鎖ポリマーの場合、「核酸」は、二本鎖の一方を指してもよいし、二本鎖の両方を指してもよい。
本明細書で述べるように、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内に核酸を封入することができる。すなわち、遺伝子改変フェリチンサブユニットが遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成すると、核酸を取り囲むケージが形成される。特定の実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、核酸と融合している。特定の実施形態において、本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、封入された核酸に、分解に対する抵抗性を付与することができる。核酸とタンパク質の間で化学的に架橋させる方法はよく知られている。
本明細書で述べるように、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内に小分子を封入してもよい。すなわち、遺伝子改変フェリチンサブユニットが試料中で遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成すると、試料中の1個以上の小分子を取り囲むケージが形成される。特定の実施形態において、本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、封入された小分子の、分解に対する抵抗性を増加させることができ、かつ/または封入された小分子の制御放出を可能とする。
特定の実施形態において、前記封入されたポリペプチドまたは核酸の変性に対する抵抗性は、封入されていない場合よりも増加している。
核酸に関して使用される用語である「ヌクレオチド配列」は、リン酸結合(たとえば、ホスホジエステル結合、アルキルホスホン酸結合、アリールホスホン酸結合、ホスホロチオエート結合またはホスホトリエステル結合)および/または非リン酸結合(たとえば、ペプチド結合および/またはスルファミン酸結合)などの共有結合によって連結された連続した一連のヌクレオチドを指す。特定の実施形態において、たとえば局在ドメインに結合した標的結合性分子をコードするヌクレオチド配列は、異種配列(たとえば異種生物の遺伝子または異種細胞由来の遺伝子)である。
「ヌクレオチド」および「ヌクレオチドモノマー」は、天然のリボヌクレオチドモノマーまたは天然のデオキシリボヌクレオチドモノマー、ならびに非天然の誘導体および類似体を指す。したがって、ヌクレオチドはとしては、たとえば、天然の塩基(たとえば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、イノシン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンまたはデオキシシチジン)を含むヌクレオチド、および当技術分野で公知の修飾塩基を含むヌクレオチドを挙げることができる。
当業者であれば容易に理解できるように、特定の実施形態において、前記核酸はプラスミド配列をさらに含む。該プラスミド配列は、たとえば、プロモーター配列、選択マーカー配列、または特定の遺伝子座を標的とする配列のうちの1種以上の配列を含んでいてもよい。核酸組成物を細胞に導入する方法は当技術分野でよく知られている。
特定の実施形態において、前記核酸は、インビトロで細胞に導入される。特定の実施形態において、前記核酸は、インビボで細胞に導入される(たとえば、遺伝子組換えされた動物および/またはウイルスで形質転換された動物の器官の細胞に導入されるか、または昆虫の体全体の細胞に導入される)。
特定の実施形態において、前記細胞は、細菌細胞、植物細胞、哺乳動物細胞または昆虫細胞である。
特定の実施形態において、第1の配列および第2の配列は、別々のプラスミドに挿入して前記細胞に導入する。様々な適切なプラスミドは、容易に入手可能であり、当技術分野で知られている。特定の実施形態において、第1の配列および第2の配列は、単一のプラスミドに挿入して前記細胞に導入され、第1の配列および第2の配列は別々のプロモーターの制御下で発現される。
特定の実施形態において、単離されたプラスミド核酸またはベクター核酸であって、
a)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損した遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする配列;および/または
b)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損し、かつポリペプチドと融合した遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする配列
を含む、単離されたプラスミド核酸またはベクター核酸を提供する。
特定の実施形態において、前記単離されたプラスミドまたはベクターは、本発明の態様のいずれかによる少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする。特定の実施形態において、前記単離されたプラスミドまたはベクターは、配列番号2に示される配列、配列番号3に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列および配列番号8に示される配列を含む群から選択されるいずれか1つの配列を含む少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする。
特定の実施形態において、第1の配列は、第2の配列よりも過剰に発現される。たとえば、第1の配列と第2の配列は、(第1の配列:第2の配列=)約23:1の比率、約11:1の比率、約7:1の比率、約5:1の比率、約19:5の比率、約3:1の比率、約17:7の比率、約2:1の比率、約5:3の比率、約7:5の比率、約13:11の比率または約1:1の比率で発現する。したがって、通常、ポリペプチドに融合していない遺伝子改変フェリチンサブユニットは、ポリペプチドに融合した遺伝子改変フェリチンサブユニットよりも過剰に発現される。前記発現比率は、たとえば融合ポリペプチドの特性(たとえばポリペプチドの大きさ)などの様々な要因によって変動することを当業者であれば容易に理解できるであろう。したがって、2個以上のポリペプチドを遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内に封入することができる。特定の実施形態において、(たとえば、第1の配列と第2の配列の比率を約23:1としてアセンブルさせた場合)1個のポリペプチドが遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内に封入される。
本明細書で述べるように、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列の欠損を含む少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含む。したがって、当業者であれば、様々な長さの遺伝子改変フェリチンサブユニットによって遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成することができることを容易に理解するであろう(たとえば、遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号1の1番目〜164番目の残基、1番目〜165番目の残基、1番目〜166番目の残基、1番目〜167番目の残基、1番目〜168番目の残基、1番目〜169番目の残基、1番目〜170番目の残基、1番目〜171番目の残基、または1番目〜172番目の残基を含む)。特定の実施形態では、融合したポリペプチドおよび任意の連結配列の分だけ残基数が多いポリペプチド融合遺伝子改変フェリチンサブユニットを除いて、同じ長さの遺伝子改変フェリチンサブユニットによって遺伝子組換えフェリチンアセンブリが形成される。たとえば、本明細書で述べるように、配列番号1の1〜164番目の残基を含み、かつポリペプチドと融合していない23個のサブユニットと、配列番号1の1〜164番目の残基を含み、ポリペプチドと融合した1個のサブユニットとを使用して、遺伝子組換えフェリチンアセンブリを形成することができる。封入されたポリペプチド(POI)を細胞において産生させるには、遺伝子改変フェリチンサブユニットにポリペプチドを結合させることが必要であることが本明細書において示されている。
インビトロにおけるタンパク質のフォールディングを補助する能力についてtESを試験した。tES(+)F116Hアセンブリは、8M尿素または6M塩酸グアニジニウム(GuHCl)で処理後のSEC溶出プロファイルが、PBSコントロールと類似していたことから、pH8.0において非常に安定であることが分かった。また、tES(+)F116Hサブユニットは、pHの調整によって、目視可能な沈殿物を生じることなく可逆的に結合および解離することができる。次に、本発明者らは、POIが変性する条件下において、tESは基質タンパク質を機能的に封入することができるという仮説を立てた。tESを共発現させない場合、tES融合タンパク質は封入体として発現する。これを踏まえて、tES(+)F116Hを使用し、pHを5.8から8.0まで上昇させて、シェルアセンブリの形成を誘導可能な、tESサブユニットとtES-POIの比率を試験した。tES-GFPuvにtES(+)F116Hサブユニットを加えることによって、機能性ペプチドの収率が約100倍増加し、この収率は、tES(+)F116HサブユニットとtES-GFPuvの比率が90:1において最大となった。特定の実施形態において、tES(+)F116HとtES-POIのモル比が、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1または少なくとも90:1である場合に、インビトロでの封入およびフォールディングが達成される。
有利なことに、tESサブユニットへのポリペプチド(POI)または核酸の結合にリンカーを必要とすることなく、細胞を使用しない系において遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内にポリペプチド(POI)または核酸を封入できることが本明細書において示されている。しかしながら、POIをtESサブユニットに結合する場合、封入を効率的に行うには、tESに対してPOIの量を多くすることが必要である。特定の実施形態において、本発明のフェリチンアセンブリは、tESF116Hサブユニットを含む。特定の実施形態において、本発明のフェリチンアセンブリは、tES(+)F116Hサブユニットを含む。特定の実施形態において、tESF116Hサブユニットは、配列番号5に示される配列または配列番号8に示される配列を含む。特定の実施形態において、酸性pH(すなわちpH7.0未満)、好ましくはpH約4.0以上pH7.0未満、より好ましくはpH約5.8において、tESF116HサブユニットをPOIと混合して共にインキュベートし、次に、この混合物のpHを塩基性pH(すなわち7.0を超えるpH)、好ましくはpH約8に調整することによって、フェリチンアセンブリの形成とPOIの封入を誘導する。特定の実施形態において、tESF116Hサブユニットを、過剰量のPOIと混合する。たとえば、tESF116HサブユニットとPOI分子を、少なくとも60:1のモル比、少なくとも60:3のモル比、少なくとも60:5のモル比、少なくとも60:8のモル比、少なくとも60:10のモル比、少なくとも60:12のモル比、少なくとも60:15のモル比、少なくとも60:30のモル比、または任意の適切なモル比で混合する。
特定の実施形態において、本明細書で述べるように、前記方法は、前記ポリペプチドが封入されたフェリチンアセンブリを単離することをさらに含む。特定の実施形態において、本明細書で述べるように、前記方法は、前記ポリペプチドを単離することをさらに含む(たとえば、遺伝子改変フェリチンサブユニットとポリペプチドを融合している連結配列を切断して、遺伝子改変フェリチンサブユニットからポリペプチドを分離する)。
別の一態様において、本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、ポリペプチドが封入された遺伝子組換えフェリチンアセンブリを細胞に送達することによって該ポリペプチドを細胞に送達する方法において使用される。遺伝子組換えフェリチンアセンブリを細胞に送達するこの方法は、少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含む遺伝子組換えフェリチンアセンブリに細胞を接触させることを含み、前記遺伝子改変フェリチンサブユニットが、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損していること、および前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、ポリペプチドと融合していることを特徴とする。本明細書で述べるように、前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリに前記ポリペプチドが封入される。
特定の実施形態において、前記細胞は病変した細胞である。特定の実施形態において、前記病変した細胞は、たとえば、病変した心臓細胞、病変した肝細胞、病変した神経細胞または病変した免疫細胞である。特定の実施形態において、前記病変した細胞はがん細胞である。
特定の実施形態において、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、細胞を標的とする部分を、たとえばその表面に含む。特定の実施形態において、細胞を標的とする部分は、病変した細胞上の分子(たとえば受容体またはリガンド)に結合する。細胞を標的とする部分が結合する分子の例としては、たとえばEGFRおよび細胞接着分子(たとえば、インテグリンや、膜透過性の向上および集積効果(EPR効果)などの器官レベルでの選択性)が挙げられる。
細胞を標的とする部分として、様々な分子(たとえば、ペプチド、受容体、リガンドおよびこれらの断片)を使用することによって、病変した細胞上の分子を標的化し、この分子に結合させることができることを、当業者であれば容易に理解するであろう。特定の実施形態において、細胞を標的とする部分は、配列番号6(YHWYGYTPQNVI)に示されるアミノ酸配列または配列番号7(LARLLT)に示されるアミノ酸配列を含むペプチドである。
特定の実施形態において、細胞を標的とする部分は、架橋を介してフェリチンアセンブリの表面に結合される。別の分子を介して分子同士(たとえばペプチド同士)を架橋する方法は当技術分野で知られている。たとえば、本明細書で述べるように、架橋剤(たとえばスルホ-SMCCなど)を使用して、遺伝子組換えフェリチンアセンブリの表面に、細胞を標的とする部分を結合することができる。
特定の実施形態において、ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、該遺伝子組換えフェリチンアセンブリと1種以上の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む組成物または製剤の形態で、細胞に送達することができる(たとえばインビボで送達することができる)。適切な医薬担体は、通常、薬剤や核酸と相互作用を起こさない不活性成分を含む。非経口投与に適した医薬担体としては、たとえば、滅菌水、生理食塩水、静菌性生理食塩水(約0.9%(mg/ml)ベンジルアルコールを含む生理食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、乳酸リンゲル液などが挙げられる。製剤は、有効成分の有効性を向上させる少量の物質(たとえば、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤、湿潤剤)をさらに含んでいてもよい。(硬質ゼラチンコーティングまたはシクロデキストランコーティング中に)組成物を封入する方法は、当技術分野で知られている。吸入投与の場合、薬剤を溶解し、適切なディスペンサー(たとえば、噴霧器、ネブライザー、または加圧エアロゾルディスペンサー)に装填して投与することができる。
ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、中性化合物または塩もしくはエステルとして細胞に導入することができる。薬学的に許容される塩としては、遊離アミノ基から形成された塩、たとえば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸または酒石酸から形成された塩;および遊離カルボキシル基から形成された塩、たとえば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−(エチルアミノ)エタノール、ヒスチジン、プロカインなどから形成された塩が挙げられる。アミンまたはその他の塩基性基を含む化合物の塩は、たとえば、塩化水素、臭化水素、酢酸、過塩素酸などの、適切な有機酸または無機酸と反応させることによって得ることができる。第四級アンモニウム基を有する化合物は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオンなどのカウンターアニオンも含んでいる。カルボン酸またはその他の酸性官能基を含む化合物の塩は、適切な塩基(たとえば水酸化物塩基)と反応させることによって調製することができる。酸性官能基の塩は、ナトリウムやカリウムなどの中和物質を含んでいる。
特定の実施形態において、ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、1種以上のさらなる治療剤と組み合わせて細胞に導入することができる。ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリを併用療法において投与する場合、該遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、別の治療法の実施前、実施後または同時に投与することができる。ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリを別の治療法と同時に共投与(たとえば併用投与)する場合、該遺伝子組換えフェリチンアセンブリと別の治療法は、別々の製剤の形態で投与することができ、同じ製剤として投与することもできる。別の方法では、ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリと別の治療法は、別々の組成物の形態として、熟練した臨床医によって決定された適切な時間枠内において(たとえば、各治療法の薬剤効果が同時に発揮されることが可能な十分な時間にわたって)順次に投与することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、対象における疾患の治療に使用するための組成物または組み合わせ物に含まれる。特定の実施形態において、前記疾患はがんである。
特定の実施形態において、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリを含む組成物または組み合わせ物の有効量は、該組成物または組み合わせ物の有効量の投与を必要とする対象を治療または予防する方法において使用される。特定の実施形態において、前記組成物または組み合わせ物は、治療用プロドラッグの変換酵素を含む。
特定の実施形態において、本発明の遺伝子組換えフェリチンアセンブリを含む組成物または組み合わせ物はワクチンである。
本明細書で開示される別の一態様において、遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリ内にポリペプチドまたは核酸を封入するためのキットまたは該キットの使用を提供し、該キットは、本発明の態様のいずれかによる少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含む。好ましい一実施形態において、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットは、配列番号1のF116に置換を含み、この置換により、pHまたは共有結合修飾因子に依存的に前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリの形成および/または分解が可能となる。
別の一態様において、本明細書に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリは、対象における疾患の治療のための医薬品の製造において使用される。特定の実施形態において、前記疾患はがんである。
ポリペプチドが封入された前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリをインビボで送達する場合、該遺伝子組換えフェリチンアセンブリを必要とする対象に、様々な投与経路を介して送達することができ、該投与経路としては、たとえば、経口投与経路、混餌投与経路、局所投与経路、経皮投与経路、非経口投与経路(たとえば動脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射)が挙げられる。投与は、局所投与であってもよく、全身投与であってもよい。治療用ポリペプチドが封入された遺伝子組換えフェリチンアセンブリの実際の用量および治療計画は、治療を受ける状態の特性および患者の特性を考慮に入れて、熟練医師によって決定することができる。
本明細書において「1つの(“a”または“an”)」は、1つまたは1つ以上を意味してもよいが、ただし、これに反する事項が記載されている場合や文脈から明らかである場合を除く。
別段の記載がない限り、または文脈や当業者の知識から明らかでない限り、範囲として記載された数値は、文脈中に明らかな別段の記載がない限り、様々な実施形態において記載された範囲内の任意の特定の数値または部分範囲を想定したものであり、該範囲の下限の単位の10分の1までを含む。また、別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、数値に関して使用される「約」という用語は、通常、±10%以内の数値範囲を指し、いくつかの実施形態では、±5%以内の数値であり、いくつかの実施形態では、±1%以内の数値であり、いくつかの実施形態では、±0.5%以内の数値である。特定の数値の前に「約」が付加された任意の実施形態は、正確な数値が記載された一実施形態も提供するものである。特定の数値の前に「約」が付加されていない任意の実施形態は、数値の前に「約」が付加された一実施形態も提供するものである。特定の範囲の前に「約」が付加されている場合、文脈中に明らかな別段の記載がない限り、該範囲の上限および下限に「約」が付加された実施形態、該範囲の下限に「約」が付加された実施形態、または該範囲の上限に「約」が付加された実施形態も提供される。「少なくとも」、「最大」、「以下」またはこれらに類似した語句などが、一連の数値の前または後に付加されている場合、文脈中に明らかな別段の記載がない限り、様々な実施形態において列記された数値のそれぞれにこれらの語句が付加されているものとする(たとえば特定の数値が割合(%)として示されている場合、文脈に依存して、数値の100%が上限であると理解される場合がある)。たとえば、「少なくとも1つ、2つまたは3つ」は、様々な実施形態において「少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つ」を意味すると理解すべきである。また、あらゆる合理的な下限および上限が明確に記載されているものとして理解される。
本発明の概要を説明してきたが、例証を目的として記載された以下の実施例を参照することによって、本発明をさらに容易に理解することができるであろう。なお、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
本明細書において具体的な説明を省いた当技術分野で公知の標準的な分子生物学的技術は、Sambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (2001)の記載に概ね準じた。
実施例1:材料と方法
プラスミドおよびコンピテント細胞
pRSF1b発現ベクター(メルク)およびpBAD/HisB発現ベクター(ライフテクノロジーズ)をクローニングに使用した。ケミカルコンピテントXL1 Blue大腸菌細胞(Simply Science)およびBL21(DE3)大腸菌細胞(Simply Science)を形質転換に使用した。
試薬および抗体
使用した試薬は、制限酵素NcoI、EagIおよびSpeI(ニュー・イングランド・バイオラボ);Expresslink T4 DNAリガーゼ(ライフテクノロジーズ);Luria-Bertani(LB)寒天(Axil Scientific);カナマイシン(サーモフィッシャー);アンピシリン(Axil Scientific);Omega bio-tekプラスミドミニキットおよびゲル抽出キット(Simply Science);Q5(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kit(ニュー・イングランド・バイオラボ);イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)(Axil Scientific);L−アラビノース(シグマ);Tris-HCl pH8.0(シグマ);塩化ナトリウム(NaCl)(シグマ);Triton-X 100(シグマ);塩化カルシウム(CaCl2)(シグマ);ヘミン(シグマ);β−メルカプトエタノール(シグマ);イミダゾール(シグマ);酸化型L−グルタチオン(シグマ);硝酸(メルク);バソフェナントロリン二スルホン酸(シグマ);亜ジオチン酸塩(シグマ);リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(シグマ);Tween-20(サーモフィッシャー);HRP化学発光基質(ミリポア);3’,3,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質(サーモフィッシャー);硫酸(H2SO4)(シグマ);D−ルシフェリンカリウム塩(サーモフィッシャー);塩化マグネシウム(MgCl2)(シグマ);blotting-grade blocker(バイオ・ラッド);エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(シグマ);アデノシン三リン酸(ATP)(サーモフィッシャー);ウシ血清アルブミン(BSA)(サーモフィッシャー);組換えルシフェラーゼ(サーモフィッシャー);ウシFXa(Axil Scientific);TEVプロテアーゼ(シグマ);Thermo ScientificTM PierceTM c-Myc Tag IP/Co-IP Kit(カタログNo.23620)であった。使用した抗体は、c-Myc(9E10)HRPマウスモノクローナルIgG1(Axil Scientific)、Hisプローブ(H-3)HRPマウスモノクローナルIgG1(Axil Scientific)、ウサギモノクローナルGFP抗体(ライフテクノロジーズ)、HRP標識抗ウサギIgG抗体(ライフテクノロジーズ)、およびHRP標識ホタルルシフェラーゼヤギポリクローナル抗体(Abcam)であった。
クローニング
AfFtn遺伝子は、GenBank AF_RS04235の配列に基づいて選択した。この遺伝子のC末端を切断し、電荷を改変した変異体をGenScript社において合成した。この変異遺伝子を制限酵素NcoIおよびSpeIで消化し、Expresslink T4 DNAリガーゼを使用してpRSF1b発現ベクターにクローニングした。得られたライゲーション反応物をケミカルコンピテントXL1 Blue大腸菌細胞に導入して形質転換し、50mg/mlカナマイシンを添加したLB寒天平板上で培養した。Omega bio-tekプラスミドミニキットおよびゲル抽出キットを使用して、プラスミドDNAを単離し、核酸シーケンシングによって配列を確認した。Q5(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kitを使用して、この遺伝子組換えAfFtn遺伝子からF116H変異体を作製した。目的遺伝子(POI)を発現させるための遺伝子として、GFPuv(F99S、M153TおよびV163Aの3個の変異を有する野生型GFP配列P42212)、HRPC(P00433)およびルシフェラーゼ(P08659)をGenscript社において合成し、制限酵素SpeIおよびEagIで消化し、得られた各断片を、Expresslink T4 DNAリガーゼを使用してpBAD/HisBにライゲートした。POI遺伝子を含むこのpBAD/HisBに、遺伝子組換えAfFtn遺伝子をライゲートした。得られたライゲーション反応物を、ケミカルコンピテントXL1 Blue大腸菌細胞に導入して形質転換した。プラスミドDNAを単離し、配列を決定した。pRSF1b構築物(別のプラスミドによる補完が必要なRSF由来の複製起点とT7プロモータープラスミドを有する)とpBAD/HisB構築物(pBR322由来の複製起点とL−アラビノースプロモーターを有する)を共発現させるため、これらの構築物をBL21(DE3)大腸菌細胞に導入して同時形質転換し、50mg/mlカナマイシンおよび100mg/mlアンピシリンを添加したLB寒天平板上で増殖させた。単離された大腸菌において誘導されたシェル成分は良好に発現され、大腸菌溶解物中の総タンパク質の最大50%を占めた。さらに、Q5(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kitを使用して、遺伝子組換え6×His AfFtnとPOI遺伝子の間にプロテアーゼ部位(TEVプロテアーゼ/FXa)を組み込んだ。
タンパク質の発現および精製
新たに形質転換した大腸菌の寒天平板から1個の陽性コロニーを選択し、15mlのLB液体培地中において37℃で一晩増殖させた。単一のプラスミド構築物であるpBAD/HisBは、アンピシリン(100mg/ml)を使用して発現させ、もう一方の単一のプラスミド構築物であるpRSF1bは、カナマイシン(50mg/ml)を使用して発現させた。二重形質転換構築物では、両方の抗生物質を使用した。12.5mlのスターター培養液を500mlのLB液体培地に植菌し、吸光度(O.D.600)が0.4〜0.5に達するまで増殖させた。pRSF1b構築物に対しては0.5mM IPTGを使用し、pBAD/HisB構築物に対しては0.1% L−アラビノースを使用し、二重形質転換構築物に対してはこれらの両方を使用して、タンパク質の発現を誘導した。封入されたPOI(GFPuvを使用)の厳密な制御下での相対発現の役割を明らかにするため、POIの機能発現に対するL−アラビノース(0.001%、0.01%、0.1%および1%)の効果を評価した。37℃で4時間インキュベーション後、10,000rpmで10分間細胞を遠心分離してペレットを形成させた。得られた細胞ペレットを溶解緩衝液(GFPおよびルシフェラーゼに対しては、25mM Tris-HCl pH8.0、300mM NaCl、0.1%Triton X-100を使用し;HRPに対しては、25mM Tris-HCl pH8.0、300mM NaCl、5mM CaCl2、2.5μMヘミン、10mM β−メルカプトエタノールを使用した)中に再懸濁し、超音波処理し、遠心分離して細胞残渣を分離した。25mMリン酸塩(pH8.0)および300mM NaClを含む緩衝液で平衡化したNi2+ニトリロ酢酸アガロースカラム(Expedeon)に、得られた遠心上清を注入した。25mMリン酸塩(pH8)、300mM NaClおよび250mMイミダゾールを含む溶出緩衝液を使用して、カラムに結合したタンパク質を溶出した。溶出されたタンパク質を濃縮した後、HRPに対しては、25mM Tris-HCl(pH8.0)、5mM CaCl2および0.3mM酸化型L−グルタチオンを含む緩衝液を使用し、GFPおよびルシフェラーゼに対しては、25mM Tris-HCl(pH8.0)を含む緩衝液を使用して、Superdex S-200 10/300 GLカラム(GEヘルスケア)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によりさらに精製した。SEC画分の純度はSDS-PAGEを使用して分析した。
大腸菌におけるタンパク質の発現
各クローンを発現させるため、新たに形質転換した大腸菌の寒天平板から1個の陽性コロニーを選択し、カナマイシン(50μg/mL、pRSF1bベクター上のタンパク質遺伝子選択用)、アンピシリン(100μg/mL、pBAD/HisBベクター上のタンパク質遺伝子選択用)、またはこれらの両方(同時形質転換)を選択マーカーとして使用して、100mLのLB液体培地中で増殖させた。37℃で一晩インキュベートした後、12.5mLのスターター培養液を500mLのLB液体培地に植菌し、吸光度(OD600)が0.4〜0.5に達するまで増殖させた。次いで、0.4mM IPTG(pRSFベクター)、0.1% L−アラビノース(pBADベクター)、またはこれらの両方(同時形質転換)を使用してタンパク質の発現を誘導した。GFPuvの機能発現に対するL−アラビノース(0.01%、0.1%および1%)の効果を評価することによって、封入されたPOIの厳密な制御下での相対発現の役割を調べた。37℃で4時間インキュベーション後、13,750×gで10分間細胞を遠心分離してペレットを形成させた。得られた細胞ペレットを溶解緩衝液(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5)中に再懸濁し、超音波処理し、遠心分離して細胞残渣を分離した。得られた上清を、2段階のクロマトグラフィー操作により精製した。pRSFクローンは、HiPrepTM Phenyl FF (low sub) 16/10(GEヘルスケア)を使用して疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を行った後、Superdex S-200 10/300 GLカラム(GEヘルスケア)を使用してSECを行った。pBADクローンは、Ni-NTAカラム(Expedeon)を使用したカラムクロマトグラフィーを行った後、SECを行った。融合タンパク質は、Ni-NTAおよびSECを使用して精製した。SEC画分の純度は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して分析した。HICには、緩衝液A(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、1M (NH4)2SO4、pH7.5)および緩衝液B(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5)を使用し;Ni-NTAクロマトグラフィーには、緩衝液A(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5)および緩衝液B(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、500mMイミダゾール、pH7.5)を使用し;SECには、25mM Tris-HCl(pH8)を使用した。HRPCクローンの溶解、精製およびアッセイに使用したすべての緩衝液に5mM CaCl2と2.5μMヘミンを加えた(1.4N水酸化アンモニウム1mLにヘミン25mgを溶解することによって、40mMの保存溶液を調製した)。
封入体であるPOIの発現、可溶化および精製
各POIを発現させた後、10,000rpmで10分間細胞を遠心分離してペレットを形成させた。得られた細胞ペレットを溶解緩衝液(1.5%Triton X-100、25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5〜8)中に再懸濁し、超音波処理し、遠心分離して細胞ペレットを分離した。得られた細胞ペレットを洗浄緩衝液(0.5%Triton X-100、25mM Tris-HCl、200mM NaCl、pH8;または25mM Tris-HCl、0.5M NaCl、2M尿素、pH8)中に再懸濁し、遠心分離して細胞ペレットを分離した。得られたペレットを可溶化緩衝液(25mM Tris-HCl、6M GuHCl、0.5M NaCl、pH8)中に再懸濁して封入体を溶解した後、10,000rpmで20分間遠心分離して細胞残渣を分離した。得られた上清は、緩衝液Aで平衡化したNi2+NTAカラムを使用して精製した。カラムに結合したタンパク質は緩衝液Bで溶出した。溶出画分の純度はSDS-PAGEを使用して分析した。
tESを精製するため、前記上清を使用して2段階のクロマトグラフィー操作を行った。pRSFクローンは、HiPrepTM Phenyl FF (low sub) 16/10(GEヘルスケア)を使用して疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を行った後、Superdex S-200 10/300 GLカラム(GEヘルスケア)を使用してSECを行った。pBADクローンは、Ni-NTAカラム(Expedeon)を使用したカラムクロマトグラフィーを行った後、SECを行った。融合タンパク質は、Ni-NTAおよびSECを使用して精製した。SEC画分の純度は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して分析した。
HICには、緩衝液A(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、1M (NH4)2SO4、pH7.5)および緩衝液B(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5)を使用した。
Ni-NTAクロマトグラフィーには、緩衝液A(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.5)および緩衝液B(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、500mMイミダゾール、pH7.5)を使用した。
SECには、25mM Tris-HCl(pH8)を使用した。
HRPCクローンの溶解、精製およびアッセイに使用したすべての緩衝液に5mM CaCl2と2.5μMヘミンを加えた(1.4N水酸化アンモニウム1mLにヘミン25mgを溶解することによって、40mMの保存溶液を調製した)。
タンパク質の濃度、鉄アッセイおよび粒径の測定
タンパク質の濃度は、Nanodrop(DeNovix)で測定した280nmにおける吸光度とモル吸光係数を使用して、ランベルト・ベールの式から決定した。遺伝子組換えナノサイズ封入(NE)シェル中の総鉄含量は分光光度法によって測定した(Sana, B. et al., J. Biol. Chem. 288, 32663-32672 (2013))。簡潔に説明すると、タンパク質試料を50mM硝酸で処理して変性させ、10mMバソフェナントロリンジスルホン酸、20mM亜ジオチン酸塩および250mM Tris緩衝液(pH8.0)と混合した。得られた混合物を一晩インキュベートし、538nm(ε538=22.1mM-1cm-1)におけるNE-鉄複合体の吸光度から鉄濃度を測定した。遺伝子組換えNEおよびWT AfFtnの粒径は、ゼータサイザー(ナノZS90、マルバーン)を使用した動的光散乱(DLS)技術を使用して、使い捨てのキュベットにおいて測定し、10回の測定の算術平均を取ることによって流体力学的直径の平均値を求めた。この測定は、100μMのタンパク質濃度において25℃で行った。
ウエスタンブロット分析
試料(精製されたタンパク質または細胞溶解物)を12%SDSゲル上で分離し、iBlot装置(ライフテクノロジーズ)を使用してニトロセルロース膜に転写した。膜を1×PBSで洗浄し、乾燥させ、PBST(0.05%Tween-20含有PBS)で希釈した5%blotting-grade blockerを使用して一晩ブロッキングした。ブロッキング液を除去し、抗体(c-Myc(9E10)HRPマウスモノクローナルIgG1またはHisプローブ(H-3)HRPマウスモノクローナルIgG1(各1:500希釈))を加えて膜をインキュベートした。ロッカー式シェーカーで30分間インキュベーション後、PBSTで膜を3回洗浄し、HRP化学発光基質でブロットを発色させてタンパク質のバンドを検出した。
熱アンフォールディング研究
遠紫外円偏光二色性(CD)スペクトル(260〜190nm)は、Chirascan円二色性分散計(Applied Photophysics)を使用して記録した。タンパク質試料(0.1mg/ml)を10mMリン酸緩衝液に溶解し、光路長が0.1cmの栓付きキュベットを使用して室温で測定を行った。1℃/分の速度でタンパク質溶液を加熱することによって、熱によるタンパク質の変性を誘導し、温度を1℃上げるごとにスペクトルを記録した。別の試験では、アッセイ緩衝液(25mM Tris-HCl、pH8.0)中の0.5μM tES(+)F116H/tES-HRPC、0.5μM tES(+)F116H/tES rLuc、50μM HRPCおよび80μM rLucの各タンパク質試料を、21.5℃、37℃、55℃、65℃および75℃で15分間インキュベートした。インキュベーション後、各試料を冷却し、各タンパク質の活性を評価した。熱ショック試験では、25mM Tris-HCl(pH8)中の0.5μM tES(+)F116H/tES-rLucおよび80μM rLucの各タンパク質試料を80℃で5分間インキュベートし、0℃で5分間冷却した。この操作を5〜10サイクル繰り返し、タンパク質の活性を評価した。
トリプシンによる消化
0.5μM tES(+)F116H/tES-HRPC、0.5μM tES(+)F116H/tES-rLuc、50μM HRPCおよび80μM rLucの各タンパク質試料を、0.4%トリプシン-EDTA溶液を使用して37℃で0分間、30分間、60分間、90分間、120分間および150分間処理し、各タンパク質の活性を分析した。
尿素、塩酸グアニジン、アセトニトリルおよびメタノールを使用した安定性試験
8M尿素、6M GuHCl、30%ACNまたは20%MeOHを含むアッセイ緩衝液(pH8)を使用して、0.5μM tES(+)F116H/tES-HRPC、0.5μM tES(+)F116H/tES-rLuc、50μM HRPCおよび80μM rLucの各タンパク質試料を、21.5℃(MeOHは45℃)で0分間、10分間、20分間、30分間、40分間および50分間処理することによって、タンパク質の安定性に対する尿素、GuHCl、ACNおよびMeOHの効果を評価した。インキュベーション後、各タンパク質試料の緩衝液をアッセイ緩衝液に交換し、各タンパク質の活性を評価した。
インビトロアッセイの構築
蛍光アッセイ、比色定量アッセイおよびルミネッセンスアッセイによって、細胞溶解物および精製タンパク質のGFP活性、HRPC活性およびrLuc活性を測定した。GFP活性の測定では、96ウェル黒色ポリスチレンプレート(フィッシャー・サイエンティフィック)中で、395nmの固定励起波長で励起したtES(+)F116H/tES-GFPuv、tES-GFPuvおよびGFPuvの蛍光を508nmで読み取るか、または細菌ペレット10mg(OD=0.8で発現誘導し、24時間培養)から得た上清を96ウェル黒色ポリスチレンプレート(フィッシャー・サイエンティフィック)に入れて508nmで蛍光を読み取った。tES(+)F116H/tES-HRPC、tES-HRPCおよびHRPCの活性は、96ウェル透明ポリスチレンプレート(Greiner Bio-One)中でTMB基質を使用して分析した。簡潔に説明すると、25mM Tris-HCl(pH8.0)、5mM CaCl2および2.5μMヘミンを含むアッセイ緩衝液中で各画分を5分間インキュベートした。TMB基質を加えて発色させ、5分後に2M H2SO4で反応を停止させた。450nmで吸光度を記録した。ルシフェラーゼ反応はいずれも、環境温度(24〜27℃)において、内面が白色の96ウェルプレート中で少なくとも三連で行った。クロマトグラフィーで精製後、D−ルシフェリンカリウム塩を基質として使用し、等モル濃度(500nM)の精製したh6NE-ルシフェラーゼ(+)、h6NE-ルシフェラーゼ(-)およびh6NE-ルシフェラーゼ(+/-)のルシフェラーゼ活性を評価した。D−ルシフェリンカリウム塩(最終濃度:200μM)、50mM Tris-Cl(pH7.5)、10mM MgCl2、2mM EDTA、100μM ATPおよび0.1%BSAを含む緩衝液50μlを各タンパク質試料50μlに注入することによって反応を開始した。メーカーの説明書にいくつかの変更を加えてウミシイタケルシフェラーゼキット(プロメガ)を使用することによって、精製したtES(+)F116H/tES-rLuc、tES-rLucおよびrLucを評価した。ウミシイタケルシフェラーゼアッセイ試薬(アッセイ緩衝液で1:1,000に希釈したセレンテラジン)50μLを注入することによって反応を開始した。2秒の遅延時間後、シグナルを1分間積分し、ルミネッセンスを相対発光量(RLU)として測定した。ルシフェリン含有緩衝液は、チューブをアルミホイルで覆うことによって常時遮光した。組換えルシフェラーゼ(10nM)をポジティブコントロールとして使用し、AfFtnΔC(-)をネガティブコントロールとして使用した。酵素速度論研究では、50mM Tris-Cl(pH7.5)、10mM MgCl2、2mM EDTA、100μM ATPおよび0.1%BSAを含む緩衝液中で反応を行った。D−ルシフェリンカリウム塩を様々な濃度で使用して反応を開始することによって、h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)および組換えルシフェラーゼの定常初速度(V0)(RLU/秒)を測定した。シグナルは2秒間の遅延後、1分間積分し、RLUで報告した。Graphpadソフトウェアパッケージ(Windows版GraphPadプリズム5.01)を使用して、ミカエリス定数(Km)を算出した。数値はすべてパーキンエルマー社製プレートリーダーで記録した。実験は三連で繰り返し、結果は平均値の±SEM(n=3)として示した。適切なコントロールを使用して、バックグラウンドを最小限に抑えた。
ケージ破壊研究および機能性タンパク質の放出
過去の報告に従って、POI-GFP、POI-rLucまたはPOI-HRPを含む遺伝子組換えpH応答性NEF116Hシェルを精製した。精製した各タンパク質を、25mM Tris-クエン酸緩衝液(pH5.8)中で30分間かけて酸性化し、ケージを分解した。25mM Tris-クエン酸緩衝液(pH5.8)を使用して、各試料をSEC(Superdex S-200, 10/300 GLカラム)に供し、SDS-PAGE分析を行った。過去の報告に従って、各画分のGFP活性、rLuc活性およびHRP活性を分析した。また、NEサブユニットからの機能性POIの放出を、ウシFXa/TEVプロテアーゼで分解することによって調べた。簡潔に説明すると、SECにおいてh6NE-POIとして溶出されたケージ破壊画分を、FXaで37℃、4時間かけて分解した(TEVプロテアーゼを使用した場合は34℃で5時間かけて分解した)。反応混合物をSDSゲル上で泳動し、分離されたPOIのバンドをウエスタンブロットで分析した。
インビトロにおけるtES(+)F116Hシェル内での融合POIのフォールディング
POI試料(1μM)を60℃で30分間加熱し、6M GuHClを使用してpHを5.8に調整した。(25mM Tris-HCl中の)tES(+)サブユニットの存在下でPOIをインキュベートし、このとき、tES(+)サブユニットとPOIの比率を90:1、60:1、30:1、20:1、10:1または0:1とした。この混合物のpHを8に調整し、室温で30分間インキュベートした。Slide-A-Lyzer(登録商標)Dialysis Cassette G2(サーモサイエンティフィック)を使用して、リフォールディング緩衝液(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH8;HRPCでは、25mM Tris-HCl、0.6M GuHCl、0.35mM酸化型グルタチオン、0.044mM DTT、7%グリセリン、5mM CaCl2、20μMヘム、pH8.5を使用)に対して混合物を透析した。前述と同様にNi-NTAクロマトグラフィーを使用して、リフォールディングしたタンパク質を精製し、SECを行った。溶出ピーク付近の画分を回収して、活性を分析し、POIを含む画分を特定した。
細胞を使用しない系におけるtESF116Hシェルへの非融合POIの封入
封入体の精製プロトコルは、本明細書に記載した通りである。POI試料(HRPC、GFPuvまたはrLuc(ウミシイタケルシフェラーゼ;ウミシイタケ(Renilla reniformis)由来の36kDaのタンパク質)を60℃で30分間加熱し、6M GuHClを使用してpHを5.8に調整した。(25mM Tris-HCl中の)tES(+)F116Hサブユニットの存在下でPOIをインキュベートし、このとき、tES(+)F116HサブユニットとPOIの比率を60:15、60:12、60:10、60:8、60:5、60:3または60:1とした。また、(25mM Tris-HCl中の)tES(-)F116Hサブユニットの存在下でPOIをインキュベートし、このとき、tES(-)F116HサブユニットとPOIの比率を60:10または60:8とした。この混合物のpHを8に調整し、室温で30分間インキュベートした。Slide-A-Lyzer(登録商標)Dialysis Cassette G2(サーモサイエンティフィック)を使用して、リフォールディング緩衝液(25mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH8;HRPCでは、25mM Tris-HCl、0.6M GuHCl、0.35mM酸化型グルタチオン、0.044mM DTT、7%グリセリン、5mM CaCl2、20μMヘム、pH8.5を使用)に対して混合物を透析した。前述と同様にサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、リフォールディングしたタンパク質を精製した。溶出ピーク付近の画分を回収して、活性を分析し、POIを含む画分を特定した。
細胞を使用しない系におけるtESF116Hシェルへの非融合核酸の封入
ssDNAを封入するため、110nMのssDNA(プライマー配列:5’/5Phos/TAT GCT GGC GGG CCC GCA GAT GCA TGG TAC TAG TTC CAT GGT GGT GAA AAT TTG CGG CAT TAA AAG CCT GGA AGA ACT GGA AAT TGT GGA AAA ACA TG -3’)を(25mM Tris-HCl(pH5.8)中の)tES(+)F116Hサブユニットに加えてインキュベートし、このとき、ssDNAとtES(+)F116Hのモル比を、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50または1:60とした。この混合物のpHを8に調整し、4℃で30分間インキュベートした後、使用まで氷上で保存した。ssDNAと再アセンブルしたtES(+)F116Hを、2単位のDNase I(ニュー・イングランド・バイオラボから入手)で37℃、15分間処理した後、50mM EDTA(最終濃度:5mM)を加えて反応を停止させた。同量のnaked ssDNAをコントロールとして使用した。いずれの試料もDNAローディング緩衝液中でインキュベートし、2%アガロースゲルにロードした。ssDNAを可視化した後、前記ゲルにクマシーブルー溶液を加えてインキュベートし、シェルタンパク質を検出した。
プラスミドを封入するため、(25mM Tris-HCl(pH5.8)中の)tES(+)F116HサブユニットにpRSFプラスミドを加えてインキュベートし、このとき、ssDNAとtES(+)F116Hのモル比を1:1000とした。この混合物のpHを8に調整し、4℃で30分間インキュベートした後、使用まで氷上で保存した。同量のtES(+)F116Hをコントロールとして使用した。いずれの試料も透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。
POIの内包化
ELISAを使用したエピトープ保護アッセイ、TEVプロテアーゼアッセイ、および抗c-Myc抗体を使用した共免疫沈降法を行い、NEシェルへのPOIの内包化を調べた。
グルタルアルデヒドによるtES(+)F116Hシェルの架橋
PBS緩衝液(pH7.4)中の精製tES(+)F116H(tES(+)F116Hの濃度:5mg/ml)にグルタルアルデヒド(1%、0.5%、0.1%または0.05%)を加え、得られた試料を室温で6時間インキュベートした。次いで、illustraTM NAPTM 5カラム(GEヘルスケアライフサイエンス)を使用して、過剰なグルタルアルデヒドを除去した。SuperdexTM S-200 10/300 GLカラム(GEヘルスケア)(SEC緩衝液:PBS(pH7.4))を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを行い、tES(+)F116Hを精製した。6.8〜16.8mlのSEC溶出液から1mlの画分を回収し、SDS-PAGEを使用して各画分を分析した。
ELISAを使用したエピトープ保護アッセイ
簡潔に説明すると、(ブロック溶液[4%BSA含有0.05%PBST]で1:500に希釈した)マウス抗cMyc抗体で96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートウォッシャーを使用してプレートをPBSで2回洗浄し、ブロック溶液で処理した。1時間後、ブロック溶液を除去し、タンパク質画分(pH8.0の画分とpH5.8の画分)を加えて、露出した抗原に結合させた。マイクロプレートシェーカーにて1000rpm、室温で5分間インキュベーションした後、PBSでウェルを3回洗浄し、TMB試薬を使用してHRP活性を定量した。GFP活性の測定では、結合した抗原を、(ブロック溶液で1:2000に希釈した)ウサギモノクローナルGFP抗体で処理し、二次抗体としての(ブロック溶液で1:5000に希釈した)HRP標識抗ウサギIgG抗体で処理した。
TEVプロテアーゼを使用したエピトープ保護アッセイ
簡潔に説明すると、TEVプロテアーゼを使用して、h6NE-GFPTEV(+)およびh6NE-GFPTEVを34℃で2時間かけて分解した。プロテアーゼと各タンパク質の比率は1:2とした。インキュベーションの終了後、過去の報告に従って、反応混合物をSDS-PAGEで分離し、ウエスタンブロットを使用して各タンパク質バンドを分析した。
抗c-Myc抗体を使用した共免疫沈降法
Thermo ScientificTM PierceTM c-Myc Tag IP/Co-IP Kit(カタログNo.23620)を使用して、フェリチンケージ内にルシフェラーゼが封入されていることを確認した。簡潔に説明すると、1μM h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)に抗c-Mycアガローススラリー10μlを加えて4℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、0.05%Tween20(TBS-T)でスラリーを3回洗浄し、素通り画分を回収した。溶出緩衝液30μLを加えて、抗c-Mycに結合したタンパク質を溶出させた。h6NE-ルシフェラーゼをポジティブコントロールとして使用し、AfFtnΔC(+)をネガティブコントロールとして使用した。h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)、h6NE-AfFtnΔC(+)およびh6NE-ルシフェラーゼの素通り画分および溶出画分を、15%SDSゲル上で泳動した。HRP標識抗ホタルルシフェラーゼヤギポリクローナル抗体を標準的なプロトコルで使用してウエスタンブロット分析を行った。
インビトロにおいて細胞に標的化するためのNEシェルの表面修飾
簡潔に説明すると、10mg/ml(最終濃度)のスルホ-SMCCと10μM(最終濃度)のAtto647色素をNEシェルに加えて室温で30分間インキュベートした。スルホ-SMCCおよびAtto647はいずれも、NEシェルの表面の第一級アミンを介してNEシェルに結合される。スルホ-SMCCおよびAtto647が付加されたNEシェルをサイズ排除クロマトグラフィーで精製して、結合しなかった過剰なスルホ-SMCCおよびAtto647を除去した。精製したNEシェルを濃縮し、GE11ペプチドまたはD4ペプチドを加えてさらにインキュベートした(これらのペプチドは、C末端に付加されたシステインと架橋剤であるスルホ-SMCCとの間でチオエーテル結合を形成することによって、NEシェルの表面に連結される)。前記ペプチドを結合したNPシェルを、サイズ排除クロマトグラフィーで分離した。GE11ペプチドおよびD4ペプチドは、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合し、有意な細胞分裂促進活性を持たないことが知られている(Zarschler, et al., Nanoscale 6:6046-6056 (2014))。また、EGFRはがん細胞に過剰発現され、腫瘍部位を効率的に選択できる標的部分であると考えられている(Konho, et al., Eur J Cancer. 47:773-783 (2011))。
細胞内取り込み研究
EGFRを過剰発現することが知られているトリプルネガティブ乳癌細胞株MDA-MB-231を使用して、NEの取り込みを調べた。簡潔に説明すると、Nuncホウケイ酸#1カバーグラスチェンバーに入れた完全培地中で細胞を増殖させた。24時間後、培地を除去し、PBSで細胞を洗浄し、1μMのGE11-NPまたはD4-NPを含む新鮮培地を加えて3時間インキュベートした。共焦点顕微鏡下で細胞を観察した。
結果
実施例2:熱安定性外殻(tES)の構築
AfFtnアセンブリの内部は、ケージの容積が最大となり、内包化されたタンパク質のフォールディングに必要な条件が満たされるように構築した。野生型(WT)AfFtnの一次配列および結晶構造を調べたところ、サブユニットの界面残基は主に疎水性であり、内部残基は負に帯電していることが明らかとなった(Johnson, E. et al., Structure. 13,637-648 (2005))。AfFtnアセンブリ全体で見ると、WTサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)C末端によって、AfFtnアセンブリの内部容積は約25kDaとなり、内部電荷は−72の負電荷となっている。本明細書に記載の遺伝子組換えNEは、164番目の残基でC末端を切断した変異体である(図7A〜7F)。末端切断型AfFtnとWT型AfFtnで、サイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを比較したところ、前記位置でC末端を切断しても、ナノケージのアセンブリには影響を及ぼさないことが示された。驚くべきことに、光散乱法による分析を行ったところ、C末端を除去したことによって、低塩濃度下であってもAfFtnアセンブリが安定化したことが明らかとなった(図1B)。
構築したアセンブリをさらに遺伝子組換えして、ナノ環境における電荷が、タンパク質の発現とフォールディングに及ぼす効果を試験した。タンパク質の外側の荷電残基と内側の荷電残基を調整する手段として、親水性を一致させることが提案されている(Seebeck, F.P. et al., K.J. J. Am. Chem. Soc. 128, 4516-4517 (2006))。電荷的相補性によって高分子量タンパク質をフォールディングさせる方法を試験するため、アセンブリの内洞に面した残基を変異させて、内洞の表面の正味の電荷を正、負または中性に調整した(図7A〜7Fおよび図8A〜8C)。内洞の表面の正味の電荷が正のシェルは、電荷が中性や負のシェルよりも高い発現を示し、推定収率はそれぞれtES(+)が412mg/Lであり、tES(+/-)が402mg/Lであり、tES(-)が237mg/Lであった(ImageJソフトウェアを使用した濃度解析により推定したところ、細菌タンパク質の総量のうち、tES(+)が約36%を占め、tES(+/-)が約35.23%を占め、tES(-)が約20.76%を占めていた)。一方、これらのNEの流体力学的直径はほぼ同じであった(図9A〜9F)。
実施例3:tESの鉄取り込み特性
天然のAfFtnシェルは鉄貯蔵機能を持つ生理的タンパク質であることから、本発明者らが精製した調製物において各tESバリアントが鉄を貯蔵することができるかどうか、またはインビトロ鉄取り込みプロトコル(Macara IG, et al., The Biochemical journal 126, 151-162 (1972))に供した場合に、各tESバリアントが鉄を貯蔵することができるかどうかを調査した。等モル量(1μM)のtES(+)、tES(-)、tES(+/-)および市販のウマ脾臓フェリチンを比較したところ、精製された各tESバリアントでは検出可能な鉄コアは認められなかった(図10A)(Johnson, E. et al., Structure. 13,637-648 (2005))。次に、等モル量(1μM)の野生型AfFtn、tES(+)、tES(-)、tES(+/-)、tES(+)F116H、tES(+)F116H/tES-GFPuv、tES(+)F116H/tES-HRPCおよびtES(+)F116H/tES-rLucを使用して鉄取り込み試験を行った。野生型AfFtnは、インビトロにおける鉄取り込み量が最も多いことが示された。これに対して、空のtESシェルでも鉄の蓄積が認められたが、その量は野生型よりも少なく、これは、フェロキシダーゼ中心の近傍にアミノ酸置換(E128およびE131)を有していたことによると考えられた(Klenk HP, et al. Nature 390, 364-370 (1997))。tES(+)による鉄の取り込み量とtES(+)F116Hによる鉄の取り込み量を比較したところ、その特性はよく似ており、F116H変異は、鉄の取り込みに対してほとんど影響を及ぼさないことが示された。3種のtES(+)F116H/tES-POIでは、野生型AfFtnおよび空のtESバリアントと比較して、いずれでも鉄の取り込み量が大幅に減少した(約1〜2%)(図10B)。
実施例4:シェルアセンブリに対するF116H変異の効果
NEシェルアセンブリの安定性が高いことが示されたことから(図11A〜11C)、積荷分子を封入することができ、pHのわずかな変化に応じて、内包化した積荷分子を放出することが可能な応答性シェルを作製した。NEシェルは弱酸性条件(pH5〜6)下で安定である(図12A〜12I)。(配列番号1の)116番目のフェニルアラニンは、サブユニット同士の接触に重要であることが特定されたことから、ヒスチジンと置換した(図12A)。このF116H変異は、3回対称軸チャネル内に位置することから、pH5.8に曝露されることによって、互いに反発し合う相互作用が界面に生じると予測された。得られた各シェル、すなわち、tES(+)F116H、tES(-)F116HおよびtES(+/-)F116Hは、pH5.8においてほぼ完全に分解し、pH8において安定したアセンブリを可逆的に形成した(図1Cおよび図12A〜12I)。ナノスケールの熱安定性シェルで組換えタンパク質を取り囲むことによって、内包化された機能性タンパク質の可溶性、機能性フォールディングおよび制御放出を改善できるかどうかを、前記6種のバリアントを使用して評価した。
実施例5:プラスミド発現系を使用したタンパク質の封入
概念実証を行うため、様々なタンパク質基質を使用して4種の融合タンパク質を作製した(図2A)。封入された融合タンパク質とシェル成分の化学量論的比率は1:23であると推定される。したがって、2種のプラスミド系を使用して、周囲のシェル成分全体を過剰発現するとともに、融合タンパク質の発現量を厳密に調節した。封入するポリペプチドとして、以下のポリペプチドを選択した。
(1)GFPuv(28kDa)−紫外線によって励起するように最適化された緑色蛍光タンパク質バリアント。大腸菌において非常に様々な程度で自然発現することから、全細胞溶解物において容易に分析でき、外来因子を必要とすることなく蛍光色素を生成することができる(Penna, T.C.V. et al., African J. Biotechnol. 3,105-111 (2004))。
(2)ホタルルシフェラーゼ(61kDa)−アデニレート体を形成する発光酵素。活性を発揮するためにドメイン同士のアロステリックな相互作用を必要とする比較的大きな酵素について試験するために使用した(Branchini, B.R. et al., J. Am. Chem. Soc.133,11088-11091 (2011))。
(3)西洋ワサビペルオキシダーゼアイソザイムC(HRPC、36kDa)−広く使用されている工業的酵素。HRPCは、大腸菌において可溶性発現できたという報告がこれまでにないことから、より難易度の高いPOIとして使用した。4個のジスルフィド結合(活性を発揮するためには正確なジスルフィド架橋が必須である)を含み、補欠分子族としてヘムを必要とする(Krainer, F.W. and Glieder, A. Appl. Microbiol. Biotechnol.99, 1611-1625 (2015);Ren, G. and Bardwell, J.C. Antioxid. Redox. Signal.14, 2399-2412 (2011))。
(4)ウミシイタケルシフェラーゼ(rLuc、36kDa)−インビトロにおけるリフォールディングに成功したという過去の報告がなく、熱不安定性が比較的高く、機能アッセイにおいて生物発光レポーター酵素として容易に利用できることから使用した。
算出されたNEの内容積(8nm3)から、最大で約120kDaの大きさを封入できることが判明し、球状の高分子量タンパク質であると推定された(Erickson, H. Biol Proced Online.15, 32-51 (2009))。
大腸菌において、指数増殖期初期(O.D.600=0.4)にGFPuvを発現誘導した場合、GFPuvの発現は容易に検出できたが、対数期後期(O.D.600=0.8)にGFPuvを発現誘導した場合、発現は非常に低かった。Hisタグ付加GFPuv(h6GFPuv)および1個のNEサブユニットと融合したGFPuv(h6NE-GFPuv)を対数期後期に発現誘導した場合、ウエスタンブロットによる分析で検出可能な可溶性タンパク質は産生されなかった。しかし、この融合タンパク質を、内部電荷が正、中性または負のNE(フェリチンサブユニット)とともに共発現させた場合、ウエスタンブロット(図2B、右パネル)およびクマシー染色したSDSゲル(図2B、左パネル)において明瞭なバンドが認められたことから、可溶性発現が有意に増加したことが示された。この中でも、h6NE-GFPuv(+)の可溶性発現が最も高かった。HRPCおよびルシフェラーゼでも、タグ付加形態や融合形態では検出可能な可溶性発現が認められず、NEの共発現下では明瞭なバンドが認められるという、類似した結果が得られた(ただし、大腸菌において可溶性発現することが過去に報告されているrLucを除く)。融合タンパク質を封入することの重要性をより詳しく試験するため、サブユニットと融合していないPOIをNEと共発現したところ[h6POI+NE(+)]、無視できるほどわずかな量の発現しか見られなかった(図2B;右パネル、第2レーン)。Ni2+アフィニティークロマトグラフィーにおいて、融合したサブユニットに付加されたN末端Hisタグにより、Hisタグが付加されていないサブユニットシェルがプルダウンされ、サイズ排除クロマトグラフィーでは480kDaの予測分子量でアセンブリが共溶出され、SDSゲルではNEサブユニットおよびNE-POIサブユニットと一致する精製バンドが示されたことから、NEサブユニットとNE-POI融合タンパク質からアセンブリが形成されたことが確認された(図2Cおよび図2D)。
実施例6:POIの機能発現
POIの機能発現に対するNEの効果を評価した。GFPuvの蛍光強度は観察された発現量と一致しており、h6GFPuv、h6NE-GFPuvおよびh6GFPuv+NE(+)の溶解物では有意な蛍光強度は観察されなかった。L−アラビノースで発現量を調節可能なプロモーター系を使用し、POIの一例としてGFPuvを使用して、POIの機能発現に対するL−アラビノースの効果を評価した(図13A〜13D)。0.01%のL−アラビノースを使用した場合、封入されたGFPuvにおいて最大の蛍光強度が観察され、NE(+)に封入されたGFPuvにおいてで最大活性が示された(図3A)。内部電荷が正、中性または負のNEに封入された等モル濃度の精製ルシフェラーゼのルシフェラーゼ活性を、D−ルシフェリンを基質として使用して評価した。h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)は、内部電荷が負のケージよりも高い活性を示すとともに(>10倍)、内部電荷が正のケージよりも高い活性を示した(>100倍)(図3B)。可溶性生成物の相対濃度はNE(+)シェルが最も高く、ImageJソフトウェアを使用して濃度解析を行ったところ、収率はそれぞれ、GFPuvが79.5mg/L、HRPCが74mg/L、rLucが57mg/Lとなった。これは、正味の電荷が負であるPOIの表面と、正味の電荷が正であるNE(+)の内面との間での電荷的相補性によるものであると仮定された。tES(+)/tES-POIのアセンブリの形成は、ヒスチジンタグを付加した融合サブユニットによるシェル成分のプルダウンによって確認され、その後に実施したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)でも確認された。精製したタンパク質画分を泳動したゲルの濃度解析を行ったところ、tES-GFP、tES-HRPまたはtES-rLucとこれらを封入するtESサブユニットの比率は、1:23の推定値でほぼ一致した(tES-GFPとtESサブユニットの比率は1:32であり、tES-HRPとtESサブユニットの比率は1:19であり、tES-rLucとtESサブユニットの比率は1:20であると推定された)。
これを踏まえ、h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)の触媒作用による発光反応の速度論的研究を実施し、組換えルシフェラーゼと比較した(図3Cおよび図3D)。反応速度論的パラメーターであるKmおよびVmaxを求めたところ、遊離ルシフェラーゼのKmは8.1±0.15μM、Vmaxは14943±3889μM/sであり、h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)のKmは16.21±0.819μM、Vmaxは2412±295μM/sであった。Vmaxの低下(6分の1)およびKmの上昇(2倍)は、周囲を取り囲むケージによって生成物と基質の拡散が制限されたことによると考えることができる。さらに、このVmaxおよびKmの変化は、NE内の限られた空間において酵素の構造の柔軟性が制限されたことによるものであると考えられる(Sundlov, J.A. et al., Biochemistry 51,6493-6495 (2012))。
大腸菌内の還元環境では、通常、ジスルフィド結合を形成することはできず、大腸菌において自然発現されたヘムでは、タンパク質を過剰発現させるのに不十分である可能性があることから、HRPCが活性を発揮するには様々な困難がある。大腸菌におけるHRPCの機能発現は過去に報告されていない。酸化添加剤と公知の補因子であるカルシウムおよびヘムを添加することによって、NEを使用して大腸菌においてHRPCを機能発現させることができた(図3E)。過去の報告では、8M尿素を使用して封入体をリフォールディングさせる方法が実施されたが、本発明では、発現させた後のHRPCの添加はすべて水性緩衝液中で行われたことには注目すべきである。NEシェル内でのHRPCの活性に対する補因子/添加剤の効果も評価した。HRPC活性は、補因子であるカルシウムおよびヘミンならびに様々な添加剤(酸化剤および還元剤)の存在下において同一条件で処理した細胞溶解物を使用して評価した。HRPC活性は、還元条件下で最小となり、酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの1:1混合物または酸化型グルタチオンを加えた場合に最大となった。同様に、両方の補因子の存在下でのみ最大活性を得ることができた(図3F)。
実施例7:tESとtES-GFPuvの比率を様々に変化させた場合の、インビトロフォールディングに対する効果
インビトロにおけるタンパク質のフォールディングを補助する能力についてtESを試験した。tES(+)F116Hアセンブリは、8M尿素または6M塩酸グアニジニウム(GuHCl)で処理後のSEC溶出プロファイルが、PBSコントロールと類似していたことから、pH8.0において非常に安定であることが分かった。また、tES(+)F116Hサブユニットは、pHの調整によって、目視可能な沈殿物を生じることなく可逆的に結合および解離することができる。次に、本発明者らは、POIが変性する条件下において、tESは基質タンパク質を機能的に封入することができるという仮説を立てた。tESを共発現させない場合、tES融合タンパク質は封入体として発現する。これを踏まえて、tES(+)F116Hを使用し、pHを5.8から8.0まで上昇させて、シェルアセンブリの形成を誘導可能な、tESサブユニットとtES-POIの比率を試験した。tES-GFPuvにtES(+)F116Hサブユニットを加えることによって、機能性ペプチドの収率が約100倍増加し、この収率は、tES(+)F116HサブユニットとtES-GFPuvの比率が90:1において最大となった(図4A)。また、最終収率を最大にするためには、6M GuHClおよび10μM β−メルカプトエタノールの存在下において、封入体懸濁液を60℃に加熱することが極めて重要であることを見出した。
実施例8:インビトロフォールディングにより機能性タンパク質を得るためにtESに必要とされる条件
pHを調整することによってアセンブリを形成させた実験の結果(図4A)を踏まえ、pH5.8の6M GuHCl中にすべての成分を添加し、tES(+)F116HとtES-POIの比率を60:1として反応を開始させる標準プロトコルを構築した。翻訳後に必要とされるタンパク質特異的薬剤を加えた後、得られた溶液をpH8.0のGuHCl非含有緩衝液に対して透析した(図20)。このプロトコルを実施することによって、インビトロフォールディングにより機能性を持ったtES-GFPuv、tES-rLucおよびtES-HRPCを得るためにtESに必要とされる絶対条件と言えるものが示された。tESの非存在下において同じプロトコルを実施した場合、機能性を持ったGFPuv、HRPCまたはrLucは、ほとんど得ることができなかったか、全く得ることができなかった(図4B)。また、大腸菌において可溶性タンパク質として発現することが知られているrLuc以外のタンパク質を含む大腸菌の溶解物でも、類似したタンパク質活性パターンが観察された(図4C)(Lorenz WW, et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 88, 4438-4442 (1991))。
実施例9:POIの内包化
アセンブリの形成と分解をpHで調節可能なNEシェルを使用してPOIを内包させ、このNEシェルがPOIのエピトープを隠して、タンパク質分解から保護する能力を有することを示すことによりPOIの内包化を実証した。このPOIは、アセンブリの内洞に面したEヘリックスのC末端に融合しており、この残基に融合していることによって、アセンブリの内洞に配置されると推測される。試験したアセンブリはいずれも同じ拡散係数相当径(約12nm)を有しており(図9A〜9E)、pH8.0において、POIを封入したNEの直径に相当する予想された流体力学的直径を示すピークとして溶出された(図9A〜9E)。さらに、このピークにおいてGFPuv活性およびHRPC活性を観察することができた。pH5.8では、タンパク質活性はアセンブリとは異なるピークにシフトし、予測された分子量に相当する融合タンパク質を示した(図5A)。また、POIの内包化を試験するため、POIに特異的な抗体を使用したエピトープ保護アッセイを構築した。アセンブリの形成と分解をpHで調節可能なNEシェルを使用してアッセイを行ったところ、同じ試料中でアセンブリを形成した状態よりもケージの分解後において有意に高いシグナルが観察された。(図5B)。GFPuvを使用した別のアッセイでは、封入された状態においてプロテアーゼからの保護が示されたが、単離された融合タンパク質ではプロテアーゼからの保護は観察されなかった(図5C)。プルダウンアッセイを使用してルシフェラーゼの封入を調べたところ、h6NE-ルシフェラーゼが特異的にプルダウンされたことが示された(素通り画分では検出されず、溶出液中に検出された)。一方、h6NE-ルシフェラーゼ(+/-)はプルダウンされずに、素通り画分において明瞭に観察された(図5D)。さらに、融合タンパク質からPOIを分離して、単独でフォールディングした可溶性タンパク質を産生する能力についても試験した。ウエスタンブロット分析を行ったところ、タンパク質分解によりPOI(GFPuvまたはHRPC)の分離に成功し、天然POIと一致するバンドが形成されたことが示された(図5E)。
実施例10:遺伝子組換えフェリチンアセンブリによる細胞の標的化
図15は、効率的な細胞の標的化と、MDA-MB-231がん細胞株による遺伝子組換えフェリチンアセンブリ(ナノシェル)の取り込みとを示す。この研究では、ナノシェル内にポリペプチドを封入しなかった。内包化された粒子が小胞内および細胞質内に存在することが分かる。
実施例11:tESを使用したPOI(HRPCまたはrLuc)の安定化
内包化したタンパク質に対して熱安定性を付与する能力についてtESを試験した。天然型のGFPuvは非常に安定である。したがって、封入したrLucまたはHRPCと、封入していないコントロールとを比較した試験を行うことによって、tESへの封入による安定化効果を調べた。rLucまたはHRPCを使用した場合のいずれにおいても、tESは、0.4%トリプシン、30%アセトニトリル、20%メタノール、8M尿素、6M GuHClおよび熱変性に対する保護作用を有していた(図6a〜g)。
実施例12:細胞を使用しない系におけるtESF116Hシェルへの非融合POIの封入
インビトロのフォールディングプロトコルを使用して、天然のHRPC(34kDa)がtES(+)F116Hアセンブリ内に封入され、フォールディングするかどうかを試験した。このとき、NEサブユニットと変性HRPCを、60:1、60:3、60:5、60:8、60:10、60:12または60:15の固定モル比で混合した。HRPC活性およびサーマルシフトアッセイのデータ(図16A、図17Aおよび図17C)から分かるように、HRPC濃度が高いほど、より多くのHRPCがtES(+)F116Hアセンブリ内に封入され、フォールディングすることが観察された。しかし、60:10よりも変性HRPCの比率を高くすると、tES(+)F116Hアセンブリ内に封入されたHRPCの量は一定となった。これは、恐らく、この濃度においてすべてのNEにHRPCが充填され、HRPCを封入可能な空のNEサブユニットが残っていなかったことによると考えられる。また、HRPC活性およびサーマルシフトアッセイのデータ(図17Bおよび図17D)から分かるように、tES(-)F116Hでは、60:8や60:10といった高いモル比を使用した場合であっても、HRPCは封入されなかったことが観察された。これは、恐らく、HRPCの正味の電荷が負であり、tES(-)F116Hの電荷と類似していることから、tES(-)F116HがHRPCを封入することができなかったためだと考えられる。GFPuv(27kDa)(図18A〜18D)およびrLuc(図19)の封入でも、類似の観察結果が得られた。
実施例13:細胞を使用しない系におけるtESF116Hシェルへの非融合核酸の封入
インビトロの封入プロトコルを使用して、ssDNA(98塩基)がtES(+)F116Hアセンブリ内に封入されるかどうかを試験した。このとき、tES(+)F116HサブユニットとssDNAを、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1または60:1の固定モル比で混合した。「A」と印を付けたレーンから分かるように(図21A)、いずれのモル比(サブユニット:DNA)においても、tES(+)F116Hアセンブリは核酸を封入し、DNaseによる分解から核酸を保護したことが観察された。また、電荷の相補的効果によってフェリチンがプラスミドに結合するかどうかを試験した。pRSFプラスミド(4113塩基対)をこの実験に使用した。tES(+)F116Hサブユニットとプラスミドを1000:1の固定比率で混合した。プラスミドと混合したtES(+)F116Hは、凝集して円形斑点状のパターンを形成したことが観察された(図22B)。一方、プラスミドを添加しなかった同じ濃度のtES(+)F116Hナノケージでは、円形斑点状のパターンは観察されなかった(図22A)。この結果から、電荷の相補的効果によって、pRSFプラスミドの周囲にtES(+)F116Hが結合したことが強く示唆された。
まとめ
新生ポリペプチドから機能性タンパク質構造物へと変換される経路は、様々な因子のバランスによって左右される。このような因子のいくつかは、最終産物のフォールディングの成功に貢献するが、フォールディングを妨害する因子も多数存在する。天然のシャペロンは、フォールディングしていない中間体または部分的にフォールディングした中間体の凝集を阻止し、エネルギー消費を伴う生産経路を利用してフォールディングを促す特異的な相互作用を起こし、非常に様々な時間スケールでフォールディングを誘導する速度論的な効果を発揮する。また、大腸菌細胞において組換え発現を行う場合、新たに生成された組換えタンパク質の大部分はフォールディングしておらず、内在性シャペロンの量を大きく上回ることがある。この仮説を踏まえ、Hsp70やGroEL/GroES複合体などの天然シャペロンを過剰発現させることによって、組換えタンパク質の発現を補助することが試みられた(Saibil H. Chaperone machines for protein folding, unfolding and disaggregation. Nature reviews Molecular cell biology 14, 630-642 (2013)).しかし、シャペロンの過剰発現は、その適用に限界があることが示されており、特に、DnaJ、DnaKおよびGrpEをHRPと共発現させると宿主細胞の増殖が抑制されたり(Kondo A, et al., Journal of bioscience and bioengineering 90, 600-606 (2000))、DnaKの補助によりGFPを発現させると標的タンパク質の収率および立体構造の質が低下することが報告されている(Martinez-Alonso M, Vera A, Villaverde A. FEMS microbiology letters 273, 187-195 (2007);Garcia-Fruitos E, et al., Journal of molecular biology 374, 195-205 (2007))。
P22 VLPバクテリオファージを使用した研究では、ファージの内腔面に組換えタンパク質を封入できることが示されている。しかし、約450コピーの外被タンパク質が必要であること、別の足場タンパク質が必要であること、およびカプシドの分解に苛酷な条件が必要とされることから、組換え発現においてP22を使用することは難しい(Marta Comellas-Aragones HE, et al., Nature Nanotechnology 2, 635-639 (2007))。
今回、本発明者らは、1種類の熱安定性サブユニットを23コピー使用して、保護作用を有するtESシェルでタンパク質を内包化し、それによって、発現、インビトロフォールディングおよび生成物の安定化を向上することができることを本明細書において報告した。tES(+)F116Hは、穏やかなpHの調整(pH5.8〜6.0)によって、封入されたタンパク質を放出することができ、放出された可溶性融合タンパク質は、選択的に加水分解されて単量体タンパク質を生成することができる。
さらに、本発明者らは、細胞を使用したタンパク質の産生および封入では、タンパク質とtESサブユニットとの間での融合またはリンカーが必要とされるが、細胞を使用しない環境下では、tESF116Hサブユニットを使用し、tESF116Hサブユニットとタンパク質の比率を適切に調整して、pH8でアセンブリを形成させることによって、目的タンパク質をtES内に封入することができることを示した。特定の理論に拘束されるものではないが、リンカーを使用しない場合、tESの内部電荷は非常に重要であると見られ、POIの電荷と反対または中性である必要がある。
本研究では、フォールディングを促すための代替としてタンパク質の機能を利用したことに注目されたい。ナノ環境の構築がタンパク質基質のフォールディングに与える効果を正確に理解するためには、示差走査熱量分析、重水素交換法、低温電子顕微鏡法などによるさらなる検討が必要であると考えられる。各POI基質はtESに封入されて、フォールディングしていない他のタンパク質から物理的に隔絶されるということを踏まえ、凝集を起こすことなく高濃度でフォールディング研究を実施できるという仮定を立てた。
真核生物ゲノムにおいて翻訳されるタンパク質の約80%は80kDa以下であるが、これよりも大きい内容積を持つtESバリアントを使用することによってtESの用途を拡大することができると考えられる。これは特に、最適活性を発揮するために多量体化を必要とするPOIにとって重要である。tES内で熱不安定基質を安定化することができるという能力は、バイオナノテクノロジーや合成生物学の様々な用途において有用であると考えられる。たとえば、細胞による酵素の取り込みを媒介するものとして本発明のシェルを使用し、かつ工業的条件でtES基質の安定した品質を活用することによって、フォールディングが困難なタンパク質の作製などを行うことができると考えられる。
本明細書において引用された特許文献、公開出願および引用文献の教示はいずれも、本明細書の一部を構成するものとしてその全体が援用される。
一例としての実施形態を参照することによって、本発明を具体的に説明してきたが、添付の請求項に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細を様々に変更してもよいことは、当業者であれば容易に理解できるであろう。
引用文献
本明細書で引用された過去に出版された一連の文献およびこれらに記載の考察は、当技術分野の技術水準や技術常識の一部を構成するものであると認識する必要は必ずしもない。

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Claims (39)

  1. 遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリであって、
    少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含み、
    前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損していること、および
    前記フェリチンアセンブリが、低塩濃度下で野生型フェリチンアセンブリよりも安定であること
    を特徴とする遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  2. 前記野生型フェリチンサブユニットが、Archaeoglobus fulgidusおよびPyrococcus furiosusを含む群から選択される超好熱性細菌に由来するものである、請求項1に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  3. 前記遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリの内部から外部に通じる孔を含む、請求項1または2に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  4. 前記野生型フェリチンサブユニットが、配列番号1に示される配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  5. 前記一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列が、配列番号1の165番目〜173番目の残基を含む、請求項4に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  6. 正味の内部電荷が正または中性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  7. 前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、E65、E128、E131およびD138から選択される1箇所以上の位置にアミノ酸置換を含む、請求項6に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  8. 前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、配列番号1のF116に置換を含み、この置換により前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリのpH依存的な形成および/または分解が可能となる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  9. 前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、配列番号2で示されるアミノ酸配列、配列番号3で示されるアミノ酸配列、配列番号4で示されるアミノ酸配列、配列番号5で示されるアミノ酸配列および配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む群から選択されるいずれか1つを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  10. 前記フェリチンアセンブリ内に、ポリペプチド、核酸または小分子が封入される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  11. 前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、ポリペプチドまたは核酸と融合しており、該ポリペプチドまたは核酸が前記フェリチンアセンブリ内に封入される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  12. 前記ポリペプチドが、連結配列を介して、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットと融合している、請求項11に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  13. 前記封入されたポリペプチドまたは核酸の変性に対する抵抗性が、封入されていない場合と比較して増加している、請求項10〜12のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  14. 低塩濃度下における前記安定性が、サブユニット同士の化学的架橋によってもたらされる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の遺伝子組換えフェリチンアセンブリ。
  15. 少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含む遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリをインビトロで形成させる方法であって、
    請求項8に記載の少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットを含む試料のpHを、酸性pHから塩基性pHに調整することを含む方法。
  16. 前記遺伝子改変フェリチンサブユニットが、配列番号5に示される配列または配列番号8に示される配列を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリの正味の内部電荷が正または中性である、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記試料中にポリペプチドまたは核酸をさらに含み、該試料を塩基性pHにすることによって、該ポリペプチドまたは核酸が前記遺伝子組換えフェリチンアセンブリ内に封入される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記試料の前記酸性pHが少なくとも約4.0であり、かつ/または前記試料の前記塩基性pHが約8.0である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記ポリペプチドまたは核酸が、前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットと融合している、請求項18または19に記載の方法。
  21. 前記試料中の前記遺伝子改変フェリチンサブユニットと前記ポリペプチドのモル比が、約60:1〜約60:30である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリ内にポリペプチドを封入する方法であって、
    1)a)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損した遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする第1の配列と、
    b)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損し、かつポリペプチドと融合した遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする第2の配列と
    を含む核酸を細胞に導入すること;
    2)第1の配列および第2の配列を発現させること;ならびに
    3)前記ポリペプチドが封入されたフェリチンアセンブリを形成させること
    を含む方法。
  23. 前記細胞が、細菌細胞、植物細胞、哺乳動物細胞または昆虫細胞である、請求項22に記載の方法。
  24. 第1の配列および第2の配列を別々のプラスミドに挿入して前記細胞に導入する、請求項22または23に記載の方法。
  25. 第1の配列と第2の配列を、約23:1の比率、約11:1の比率、約7:1の比率、約5:1の比率、約19:5の比率、約3:1の比率、約17:7の比率、約2:1の比率、約5:3の比率、約7:5の比率、約13:11の比率および約1:1の比率を含む群から選択される比率で発現させる、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記フェリチンアセンブリおよび前記封入されたポリペプチドを単離することをさらに含む、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の遺伝子改変フェリチンサブユニットである、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. 遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリを細胞に送達する方法であって、
    請求項1〜14のいずれか1項に記載のフェリチンアセンブリを細胞に接触させることを含む方法。
  29. 前記フェリチンアセンブリが、細胞を標的とする部分を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記細胞を標的とする部分が、病変した細胞上の分子と結合する、請求項29に記載の方法。
  31. 単離されたプラスミド核酸またはベクター核酸であって、
    a)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損した遺伝子改変熱安定性フェリチンサブユニットをコードする配列;および/または
    b)野生型フェリチンサブユニットが持つ、一定の構造をとっていない(unstructured)カルボキシ末端配列を欠損し、かつポリペプチドと融合した遺伝子改変熱安定性フェリチンサブユニットをコードする配列
    を含む、単離されたプラスミド核酸またはベクター核酸。
  32. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニットをコードする、請求項31に記載の単離されたプラスミドまたはベクター。
  33. 対象における疾患の予防または治療において使用するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1個の遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリを含む組成物または組み合わせ物。
  34. 前記少なくとも1個の遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリが、プロドラッグ変換酵素を含む、請求項33に記載の組成物または組み合わせ物。
  35. 1種以上のさらなる治療剤を含む、請求項33または34に記載の組み合わせ物。
  36. ワクチンである、請求項33または35に記載の組成物または組み合わせ物。
  37. 対象における疾患の予防または治療のための医薬品の製造における、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1個の遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリの使用。
  38. 請求項33〜36のいずれか1項に記載の組成物または組み合わせ物の有効量を、治療または予防を必要とする対象に投与することを含む、治療または予防する方法。
  39. 遺伝子組換え熱安定性フェリチンアセンブリ内にポリペプチドまたは核酸を封入するためのキットであって、
    a)請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1個の遺伝子改変フェリチンサブユニット、または
    b)請求項31もしくは32に記載のプラスミド核酸もしくはベクター核酸
    を含むキット。
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