少なくとも70年の間、遠位端近くに配置された膨張可能なバルーンを有する細長いチューブを備えている気管内チューブ(endotracheal tube:ETT)が、意識不明の患者における気道を確保するために使用されてきた。動作中、気管内チューブの遠位端は、患者の口を通して患者の気管に挿入される。一度配置されると、気管の内側層と封止部を形成するようにバルーンが膨張する。この封止部が確立された後、患者の肺を換気するためにチューブの近位端に陽圧が加えられうる。また、バルーンと気管の内膜との間の封止部は、肺を吸引から保護する(例えば、封止部は、胃から逆流した物質が患者の肺の中に吸引されるのを防ぐ)。
それらは成功しているが、気管内チューブはいくつかの大きな欠点を抱えている。気管内チューブの基本的な欠点は、このチューブを適切に挿入する困難さにある。気管内チューブを患者に挿入することは高度な技術を必要とする処置である。また、熟練した開業医にとってさえ、気管内チューブの挿入は困難であり又は不可能である場合がある。多くの場合、気管内チューブを挿入する困難さが、悲劇的に患者の死をもたらしたが、それは患者の気道を十分迅速に確保することが不可能であったためである。また、気管内チューブを挿入することは、通常、患者の頭頸部の操作を必要とし、さらに患者の顎を強制的に広く開く必要がある。これらの必要な操作は、頸部損傷を患っている可能性がある患者に気管内チューブを挿入することを困難又は望ましくないものにする。
幼児への気管内チューブの使用は特に困難な場合がある。統計によると、一般に、麻酔に関連する罹患率及び死亡率のレベルは、成人よりも小児患者の方が高く、年長よりも年少の子供の方が高く、これは年少乳児に見られる気道合併症が原因であることが多い。重大事例は2kg未満の乳児で最も高い(Tay et. al. Paediatr Anaesth 11:711, 2001)。小児患者の舌は比較的大きく、一般に成人患者よりも気道閉塞を引き起こしやすい。小児患者は、成人よりも肺の予備量が少ないことが多く、著しく多くの酸素摂取量を必要とし、このため直接喉頭鏡検査中に無呼吸になりがちである。後部交連は比較的頭側であるので、前喉頭下気道はETTによる外傷を受けやすく、幼児気道の最も狭い部分は輪状軟骨であり、これはETTを通した後にコードによる抵抗をもたらしうる。
URI(upper respiratory infection:上気道感染症)から回復中の子供達は、呼吸器合併症の危険性が高くなる。マスクを介しての短い処置の場合、リスクの増加は最小限である。反応性気道が感染を伴う場合、URIの影響は2〜7週間続きうる。特に、すでに喘息、気管支肺異形成症、鎌状赤血球症、又は喫煙者の家庭に住んでいる人はリスクが高く、「2ヒット」現象を示唆している(Tait et. al.Anesthesiology 95:299,2001)。気管支機能亢進は、URIの7週間後まで続く場合がある(Collier et. al. Am Rev Resp Dis 117:47,1978)。これらの患者において、マスク麻酔薬はETTよりも合併症が顕著に少ないことに注意されたい。
ETTが必要とされる場合に、幼児における麻酔のリスクは、URIに罹らず且つETTの使用を必要としない幼児と比較すると、10倍も増加する可能性がある。LMA(喉頭マスク気道装置)を使用するリスクは、フェイスマスクとETTの中間程度である。
喉頭マスク気道装置は、無意識の患者の気道を確保するのに有用である周知の装置であり、気管内チューブに関するいくつかの既知の欠点に対処しようとしている。
気管内チューブとは対照的に、喉頭マスク気道装置を患者に挿入し、それによって気道を確保することは比較的容易である。また、喉頭マスク気道装置は、たとえそれが不適切に挿入されたとしても依然として気道を確保する傾向があるという点で「許容できる」装置である。従って、喉頭マスク気道装置は、しばしば「命を救う」装置と考えられている。また、喉頭マスク気道装置は、患者の頭、首、及び顎を比較的わずかに操作するだけで挿入することができる。さらに、喉頭マスク気道装置は気管の敏感な内側層との接触を必要とせずに患者の肺の換気を提供し、気道管の内径は典型的には気管内チューブの内径よりもかなり大きい。また、喉頭マスク気道装置は、気管内チューブと同程度まで咳を妨げることはない。主にこれらの利点のために、喉頭マスク気道装置は近年人気が高まっている。
米国特許第4,509,514号は、全てではないにしても大部分の喉頭マスク気道装置を構成する基本部分、即ち、患者の喉頭の後で容易に適合するように形作られた中空マスク部分の内部に一端で開口する気道管で構成する喉頭マスク気道装置を記載する。マスクの周辺部は、使用時に喉頭の開口部の周りで封止部を形成するところのカフによって形成されている。これは、気道を効果的に確保することを可能にする。最近では、喉頭マスクは、それらの基本的な機能を改善し且つ又新たな機能を加える追加的特徴を備えている。
米国特許第4,995,388号、米国特許第5,241,956号、及び米国特許第5,355,879号に例示されているように、胃内物排出ドレナージを特別に備えた喉頭マスク気道装置が開発されている(図7〜10)。これらの装置は一般に、マスクが定位置にあるときに上部食道括約筋の上端に当たるように、マスクの遠位端に位置する端部を有する小径ドレナージ管を組み込んでおり、この管は上部食道括約筋からの胃分泌物の能動的又は受動的な除去を可能にするために、患者の口から外に延びるために十分な長さである。別の提案によれば、ドレナージ管はマスクの遠位端を越えて食道それ自体の中に延在しうる(米国特許第4,995,388号、図7及び図11)。
喉頭マスク気道装置は、気管内チューブの挿入を補助するために今や一般的に用いられており、そのような装置は挿管喉頭マスクと呼ばれ、その一例は出願人自身の「Fastrach」(商標)装置である。
喉頭マスク気道は、使用時に気道を正しい位置に維持するために、患者への気道の固定を容易にする装置によって今では日常的に提供されている。そのような装置の例は、例えば本出願人自身の欧州特許第1663364B号に示されており、これはとりわけ、いかに固定手段及び構造体が気道管の近位端で又は近接して、装置のコネクタと関連して好都合に提供されうるかを示している。喉頭マスク気道装置が完全に挿入された配置状態を安定して維持することを保証することは特に重要である。何故ならそうでなければそれらの正しい機能が損なわれる可能性があるからである。カフによって提供される喉頭入口の周囲の封止が乱される場合、気道開通性が影響を受け、胃液が吸引される可能性がある。これは、他の場合を排除するものではないが、特に小児患者を治療するときに問題である。なぜなら、気道装置と患者の両方のスケールが小さいために、例え小さな不注意な動き(例えば気道装置の近位端での)でさえもマスクひいては封止の擾乱をもたらす可能性があるからである。
以下の例示的な実施形態の説明において、一般に同様の部分には、説明全体を通して同じ参照符号が与えられている。
説明の便宜上、図1〜図4を参照するとき、参照文字Aは装置の背面を示す。参照文字Bは装置の腹面を示す。標準的な慣例に従って、使用時に患者から延びる装置1のその部分は、本明細書では(使用者に最も近いという意味で)近位端と呼ばれ、他端は遠位端と呼ばれる。図2において、参照文字Cは右側を表し、参照文字Dは左側を表す。
図面を参照すると、患者の肺換気を容易にするための人工気道装置1が示されており、この人工気道装置1は気道管2を備え、この気道管2は気道管内腔3と気道管の一端にあるマスク4とを含んでいる。上記マスクは背面プレート5を含み、且つ喉頭入口の周囲に封止部を形成しうる周辺形成部6を有する。上記周辺形成部は、マスクの中空内部空間又は内腔7を囲み、上記気道管2は、マスク4の内腔に開口している。さらに上記装置は、上記装置の使用中に上記装置を患者に固定するための固定手段8cを含み、上記固定手段は、患者の解剖学的構造に対して上記装置を正しく位置決めすることを可能にするように気道管に対して移動可能である。
本明細書に記載されているように、本発明は、特定の種類の喉頭マスク気道装置、即ち、いくつかの点で特に小児用に適合され、また胃内物の除去のための設備又は胃内物へのアクセスを提供するための設備を含む装置において実証されていることが理解されよう。当業者は、本発明が特にこのタイプの装置への適用性に限定されるものではないことを理解するだろう。
装置1は、気道管2の近位端に配置されたコネクタ8を含み、このコネクタ8は、気道管内腔3へのガスの通過のための主孔9を含み、この主孔9は、周囲を画定する壁10を含み、且つ主孔へのガスの通過を可能にするための複数のポート12を含む。少なくとも1つのポート12が、主孔9の周りの円周方向の回転運動のために配置されている。
コネクタ8は、図32〜図35に詳細に示されている。図32及び図33を参照すると、コネクタ8は5つの部分、即ちアクセスポート部8a、主孔部8b、固定手段8c、挿入部8d、及びプラグ8eを含む。プラグ8eを除いて、各部分はポリプロピレン又はポリエチレンから射出成形されうる。好ましくは、プラグ8eは、液体射出成形、トランスファー成形、又は圧縮成形によってシリコーンから形成される。
アクセスポート部8aは、孔19を有する通常は円筒形の壁10と、それぞれ外側大径部15と、内側小径部16と、分岐管17とを含む主管13を備える。分岐管17は、分岐孔18を画定し、且つ分岐孔18が孔19と流体連絡するように内側小径部16へ取り付けられている。分岐管17は、標準的なガス供給源に接続するように寸法決めされた外側定径区画20を含む。定径区画20は円錐台形部分21に接続され、この円錐台形部分は次に壁10に接続されている。内側小径部16は遠位端に隣接する内周溝22を含む。
主孔部8bは、孔24並びに近位端25及び遠位端26を画定する管状壁23を含む。近位端25は、アクセスポート部8aの孔19内に受け取られるように寸法を取られ、且つアクセスポート部8aの内周溝22にフィットするように寸法を取られた外周リッジ27を含んでいる。
固定手段8cは、通常は長方形の固定プレート28と、この第1実施形態においては固定タブ29の形態をとる固定構造体とを備えている。
プレート28は、中央貫通孔30と、プレートの複数の主表面の間に延在する2つの側貫通孔31とを含む。固定タブ29は、プレート28の副端面から延在し、薄いプラスチックウェブ32によってヒンジ結合されている。各固定タブ29は、コネクタプレート33、下部プレート34、及びタブ35を含む。図32〜図35に見られるように、患者に用いられるとき、コネクタプレート33は、プレート28の副端面でのその近位のヒンジ付き取り付け点から、それに対して90度を超える静止角度で下方に垂下する。その遠位端で、各コネクタプレート33は、下部プレート34にさらにヒンジ結合され、その下部プレート34の表面はプレート28の表面と実質的に平行であるがそれよりも低い高さに静止して配置されている。各下部プレート34は2つの副タブ35を含み、これら副タブ35は、静止しているプレート34と同一平面上にあり且つヒンジ点36を介してプレート34にヒンジで取り付けられている(図35)。
図35を参照すると、挿入部8dは、周囲壁38及び垂下脚11を有する楕円状取付けリング37を備える。各垂下脚11は弓形壁を備えている。
図33を参照すると、プラグ8eは、締まりばめを介してアクセスポート部8aの孔19に嵌合するように寸法を取られた円形カップ挿入体39を含む。挿入体39は、中央に配置された貫通孔41と周囲壁42とを有する底面40を含む。壁42は、縁部44から見て上方から垂下する周囲裾部43を含み、それによって裾部と壁との間に下方に開いたチャネル45を画定する。プラグ8eは、保持ストラップ47によって裾部43に取り付けられ、カップ挿入体39内に嵌合するように寸法取りされたキャップ46をさらに含む。キャップ46は、キャップがプラグ内の所定位置にあるときに貫通孔41内に嵌合する垂下ノブ48を含む。
これらの部分は、アクセスポート部8a、主孔部8b、固定手段8c、及び挿入部8dを含むコネクタ8を形成することによって組み立てられている。コネクタのプラグ8eの構成要素は、締まりばめを介してアクセスポート部8aの孔19に嵌合するように寸法を取られた円形カップ挿入体39を含む。プラグ8eは保持ストラップ47によって裾部43に取り付けられ、カップ挿入体39内に嵌合するように寸法を取られている。キャップがプラグ内の所定位置にあるとき、垂下ノブ48を含むキャップ46は、貫通孔41内に嵌合する。
コネクタ8は、挿入部8dを気道管2の遠位端に設けられた凹部内に挿入することによって、気道管内に挿入される。挿入部8dは垂下脚11を含み、各垂下脚11は弓形壁を含み、挿入部8dが気道管の凹部内に嵌合するように寸法を取られている。コネクタの挿入部は、固定手段8cの中央貫通孔30を貫通している。固定手段8cは気道管の近位端に配置され、固定プレート28の主面は、喉頭マスク気道装置の長手方向軸に対して実質的に垂直である長さに沿って延在している。固定タブ29はプレート28の副表面から延在し、ウェブ32によってそこにヒンジで取り付けられている。各固定タブは、コネクタプレート33、下部プレート34、及びタブ35を含む。図32〜図35を参照し、且つ患者に使用される場合、コネクタプレート33は、プレート28の副端面でのその近位のヒンジ付き取付け点から90度を超える静止角度で下方に垂下する。各コネクタプレートは、その遠位端で下部プレート34にヒンジ結合され、その表面はプレート28の表面と実質的に平行であるがプレート28の表面よりも低い高さに静止して配置される。各下部プレートは、2つのタブ35を含み、それらタブ35は、静止しているプレート34と同一平面上にあり、ヒンジ点を介してそれにヒンジで取り付けられている(図35)。
特に図1〜図5を参照すると、図示された装置1は、気道管2及び気道管の一端に設けられたマスク4を備え、このマスクは背面プレート5を含み、喉頭注入口の周囲を囲む封止部を形成しうる周辺形成部6を有し、この周辺形成部は、マスクの中空内部空間又は内腔7を取り囲み、且つこの気道管はマスク4の内腔に開口している。そしてコネクタ8が気道管の近位端に配置され、このコネクタ8は気道管内管腔3へのガスの通過のための主孔9を含み、この主孔は、周囲を画定する壁を含み、この主孔への通過を可能にする複数のポート12を含み、少なくとも1つのポート12は主孔9の周りの回転運動用に配置されている。
その遠位端で、気道管2はマスク4に取り付けられている。気道管2及びマスク4は、一体的に又は別々に形成されうる。気道管2は、マスク4の近位端の方に終端していることに留意されたい。従って、マスク4は、気道管の材料によって余りに硬く作られているという点に関しては弱点ではない。本発明の1つの注目すべき特徴は、背面プレート5の構造である。当業者は理解するように、用語「背面プレート」は、本技術分野で使用されるとき、組み立てられた装置内のカフによって囲まれているマスクの部分を指すようになっており、装置が患者の体内にあるときに喉頭領域と咽頭領域との間に分離を与える。ガスの供給は、開口部を画定する背面プレートの部分と気道管との間の流体密封接続部を介して、背面プレートの開口部を介して行われる。1つの既知の構成において、背面プレートと気道管とは一体的に形成されており、これは特に便利な構成である。従来技術において、背面プレートは平らな構造ではなく通常は椀又はドーム形状の構造であり、したがってこの用語はその形状を完全に説明するものではない。
装置は、カフが正しく膨張したことを確認するためにカフの圧力を監視するための構成要素240をさらに含む。
図1〜図5に示されたように実施形態において、上記装置は、気門58内に遠位端で終端する、柔らかく曲げやすいスリーブの形態での二つの胃内物排出部60を含んでいる。このようにして、図1〜5の装置は2つの胃内物排出管60を含む。
現在説明されている実施形態において、背面プレート5は、図5a〜5fに概略的に示されているように、内側スキン5a、及び外側スキン5bを備え、それらは一緒にそれらの間に空間を画定する。そのように画定された空間が気門58であり、そこから近位に排出管60が引き出され、遠位に流入口58aが入る。気門は、単一の胃内物入口58aと胃内物排出管60とを接続するマニホールドと見なすことができる。胃内物排出管60及び背面プレートは一体的に形成されうる。
気道管2は、図1に示されたように、折り畳み可能ではなく且つ予め形成された固定曲線を有するように材料から形成されている。一例として、気道管2は、ASTM 2240に従う80ショアAデュロメータでありうる。PVC又はシリコーンのような何らかの既知の適切な材料から形成されうる。
上述のように、マスク4は、本実施形態において一般に既知の形態の膨張可能なカフの形態をとる周辺囲形成部6を含む。カフ6はその近位端に膨張ライン6aを含み、その遠位端に胃内物の入口開口部6bを有する(図3)。図5の分解図を参照すると、カフ6の背面は、カフ6の背面の材料が内側スキン5aと外側スキン5bとの間にブリッジを形成し、従って胃内物入口開口部6bがカフに入る場所を除いて気門58の腹側を閉じるように、背面プレート5に接着されていることが分かる。かくして、胃内物の入口6bが気門58と流体連通していることが分かる。別の構成法において、カフ6は、その開口部を隔てた、気門58の腹側表面をそれ自体で形成するところのウェブによって形成されうる。
図6は、図1〜図5の装置の分解図を示し、この装置の部分がどのようにして互いに嵌合するかを表している。図6の分解図から、装置1は3つの主要部分、すなわち胃内物排出管と気道管と背面プレートとの組み合わせ部分2、60、5aを含むことが分かる。これらから、外側背面プレート部分5aと内側背面プレート壁5bとが組み合わされて背面プレート5を形成し、それによって背面プレート5内にチャンバー又は気門58の形態での導管を画定していることが分かる。周辺形成部6(この実施形態においては膨張可能なカフである)は、背面プレート5がその中に着座するように取り付け面122に接着することによって背面プレート5に取り付けられている。
胃内物排出部と気道管と背面プレートとの組み合わせ部分2、60、5aは、予め湾曲された管101から成る。この管101は、従来の特許で教示されているように、挿入及び歯間ギャップを通しての嵌合を容易にするために、断面が円形ではなく平坦な部分を有する。この管101は、平坦な背面及び腹面101a、101bと、近位端101dから遠位端101eまで延在する湾曲した側壁101cとを有する。その遠位端で、組み合わせ部分2、60、5aは、その長手方向軸に対してある角度で切断されて、例えば成形によってそれと一体的に形成されうる外側背面プレート部分5aを提供する。代りに、外側背面プレート部分5aは、他と独立して例えば透明又は半透明の材料から形成されうる。外側背面プレート部分5aは、周方向リップを含みうる。最後に、図11を参照すると、胃内物排出部、気道管、及び背面プレートの組み合わせ部分は、遠位端から近位端まで延在する実質的に同軸的に配置された内部管を含み、この内部管は、2つの胃内物導管106及び気道導管107への内部空間の分離を効果的に確立することに注目されよう。この構成はさらに、図12及び13並びに図14〜16bに示されており、図12は、図11の断面D−Dを通る図を示し、図13は、図12の断面E−Eを通る図を示している。
ここで図8a〜図8d並びに図9及び図10を参照すると、内側背面プレート壁5bが示されている。内側背面プレート壁5bは、側壁111及び床部112を含む浅い皿の形をした通常は楕円形の本体を含む。楕円形皿の遠位端又はより狭い端で、側壁111は、その中に形成された円筒形開口部111aを有し、この円筒形開口部111aは床部112の中線と通常は一致して遠位に延びている。円筒形開口部111aは、円筒形開口部の孔の軸の角度が床部112の平面対して約20度であるように、床部112の平面に対して上向きに傾斜されうることが分かるであろう。その中線に沿って、皿の床部112は、より広い近位端に向かって長手方向に延びる凸表面(これは管継手113と呼ばれうる円筒形構造で終わる)を形成するように持ち上げられている。管継手113は、床部112の(見られるように)上側表面と下側表面との間の接続通路を提供する孔113aを含む。管継手113は、図9に示されたように、側壁111と合流してこれを二等分し、床部112に対して約45度の角度で上向きに傾斜し、側壁111を超えていくらかの距離で、近位で終端する。
ここで図7a〜7eを参照すると、この実施形態では膨張可能なカフの形態をとる周辺形成部6が示されている。多くの他の喉頭マスク気道装置とは異なり、カフ6は、装置の他の部分とは独立した部品として一体的に形成され、製造及び装置1への取り付けの両方をより容易にすることが分かるであろう。カフ6は、より狭い遠位端120a、より広い近位端120b、及び中央の楕円形貫通開口120cを有する通常は楕円形の本体を備えている。そのように、カフはリングに似ていることが理解されよう。図7cにおける断面図から分かるように、楕円形の本体は、遠位端で断面が通常は円形であるが、近位端部120bでの背面に形成された一体的形成延長部121によって近位端でより深く且つ不規則な形状の壁123を含む。この背面の延長部121は、取り付け面122の近位部を画定する(図6及び図7a)。取り付け面122は、リングの背側内周全体の周りで近位端から遠位端まで延在する。その遠位端120aで、カフは、円筒形貫通孔121を有し、その軸は楕円の中心線と一致して延びており、本体の平面に対して図7cに見られるように上向きに、換言すれば腹側から背側へ、又は装置1が使用されている場合の解剖学的構造の喉頭から咽頭側(図7cのL及びP)に角度を付けられている。その結果、カフ壁123を通る円形断面開口部が得られる。カフの近位端120bは、孔及びカフの内部に通じるポート124を含む。例えば、図7a、7b、及び7dに示されるように、カフは、患者の解剖学的構造を支持することによって気道の閉塞を防止するのを助ける側面突出部160を備える。
このようにして、本装置において、気道管と胃内物排出部と背面プレートとの組み合わせ部分は、気道管及び胃内物排出管を備える。予想に反して、胃内物用管を有する装置においては、胃内物の流れが妨げられるべきではなく、上部食道括約筋の周りに形成された封止部が破壊されないことが最も重要であることが見出された。この配置は、この目的を達成するために解剖学的構造内の利用可能な空間を最もよく利用する。同様に、従来の装置の単純な一様区画導管とは対照的に、胃内物流出物を受け取るための気門58を設けることは、上部食道括約筋に対する事実上中空で漏れのない栓であって、低流量で大容量の逃れ経路を有するところのマスクを提供する。本発明のこの実施形態の装置1は、出現する流体のために十分に余裕のある逃れ経路を提供しながら、使用者がそのような栓を適切な位置に入れて、そこに保持することを可能にする。さらにまた、上述のように背側に傾斜した胃内物入口ポートを設けることは、特に気門がそこから直接上流に設けられているときに、重い負荷下でも上部食道括約筋の周囲の封止が損なわれないままであることを保証するのに役立つことが見出された。
使用中、装置1は、従来技術の装置と同様に患者に挿入されて気道を確保する。挿入は、胃内物の入口開口部6bが患者の食道括約筋と出会う点まで行われ、それによってそれらの間の流体連絡を確立する。従来の胃内物アクセス喉頭マスクのように嘔吐又は逆流が起こると、食道からの物質は胃内物入口開口部6bへ入る。装置1が所望の位置にくると、固定手段8cは、それ以上の動きに対して装置1を固定するように使われる。固定構造体29は、固定構造体の表面が可能な限り皮膚の表面に対して平らに配向されるように、接続点を用いて患者の口の両側で患者の頬に対して位置決めされる。その後、固定構造体は、装置1をしっかりと定位置に保つように、所定の位置にテープで固定するか、又は患者の頭の周りを通されたテープを用いて固定される。
ここで図17〜図31を参照すると、本発明による更に別の実施形態の装置400が示されている。
図17を参照すると、装置400は、他の喉頭マスク気道装置に似ていることが分かる。図17の装置は、前述の実施形態と同様であり、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分を含む。しかし、前述された実施形態のように一体的に形成されるのではなく、図17の実施形態においては、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分は2つの部分、すなわち外側シース部と内側コアとを含み、内側コアは気道内腔を含む。図17の分解図から、装置400は、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200、内側コア要素202、内側背面プレート壁部分5b、周辺形成部6、及びコネクタ8を含むことが分かる。本実施形態において、気道管は、外側部分200と内側コア202とを含み、内側コアは、気道内腔210を画定する。少なくとも1つの胃内物用導管260は、内側コア202、又は内側コア202と外側管部分200との組み合わせによって画定される。
この実施形態の周辺形成部6は、先の実施形態に記載されたような特徴を備えている。気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200は、外側シース部又は管構成要素を形成し、その中に、内側コア要素202及び内側背面プレート壁5bが挿入されうる。図17に示された実施形態において、内側コア要素202及び内側背面プレート壁5bは一体的に形成されてもよい。しかし他の実施形態において、内側コア要素202及び内側背面プレート壁5bは別々に形成され、その後に取り付けられてもよい。
内側コア要素202は、気道内腔210を画定する(図23参照)。内側コア要素202は、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200の内側に収まるように寸法を取られている。内側コア要素202は、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200の全長に実質的に沿って延在する。内側コア要素が気道管と背面プレートとの組み合わせ部分に挿入される場合、内側コア要素は、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分に強度と剛性を提供する。加えて、内側コア要素202は、使用の柔軟性を可能にし、胃内物の通過、センサの導入、観察装置の導入などを可能にするために、コア要素内に複数の導管が画定されることを可能にする。
内側コア要素は2つの溝212をさらに備え、各溝は内側コア要素202の左右両側の各々に沿って延在している。内側コア要素が気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200の外側シース構成要素内に挿入されるという実施形態においては、内側コア要素202と外側管部分200との組み合わせは、胃内物の通過のための胃内物用導管を形成する。図17に示された実施形態において、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分への内側コアの挿入は、2つの胃内物用導管の形成をもたらす。
例えば、図27、30、及び31に示されるように、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200の内面は、内側コア202の挿入を容易にするために少なくとも1つのトラック220を備えている。有利には、気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200の内面上の少なくとも1つのトラック220は、内側コア要素202の挿入を案内しかつ容易にする。気道管と背面プレートとの組み合わせ部分200の内面上に少なくとも1つのトラック220を設けることは、装置の使用中に内側コア202を適切な位置に固定するための手段をさらに提供しうる。
別の実施形態において、内側コア要素202は、例えば図21に示されるように、センサ又は観察装置(224)を受容するように構成された追加の内腔をさらに画定する。1実施形態において、センサは温度センサでありうる。1実施形態において、本発明の装置は、気管内チューブと共に使用されうる。
ここで図37〜図39を参照すると、別の形態の固定手段8cが示されている。ここに示されたように、固定手段8cはまた、通常は長方形の固定プレート28と固定構造体とを含むが、ここでは固定構造体はタブ50と湾曲棒51の形態をとる。
プレート28はまた、中央貫通孔30及びプレートの主表面の間に延在している2つの側孔31を含む。通常は平面状の固定タブ50が、プレート28の副端面から延在し、薄いプラスチック製の複数の結束具52によってヒンジ式に/旋回可能にそれに取り付けられる。各結束具は、タブとプレートとの間であって、それらの間の間隙の中央又はその近傍に延在する狭い短い小片状のプラスチックを備えている。結束具は、固定構造体29と最終的には気道管との間の相対運動が可能であるように、十分に柔軟に寸法を取られている。このように互いに連結されたプレートの衝突しそうな副端面とタブはさらに、各結束具52の各側にそれらの長さを増加させる効果を有する刻み目53を含む。各タブ50は貫通孔54を含み、その遠位副端面で固定棒51がしっかりと取り付けられている。各棒51は、断面が通常は円形であり、それぞれのタブ50から浅い弧で離れるように湾曲している。各棒51の各端部55は滑らかにされ且つ角を丸められている。
使用中、この形態の固定手段8cを有する本発明による装置1は、従来技術の装置と同様に気道を確保するために患者に挿入される。挿入は、胃内物入口開口部6bが患者の食道括約筋と出会う点まで行われ、それによってそれらの間の流体連通を確立する。従来の胃内物アクセス喉頭マスクのように嘔吐又は逆流が起こると、食道からの物質は胃内物入口開口部6bに入る。一度、装置1が所望の位置にくると、固定手段8cは、それ以上の動きに対して装置1を固定するために使用される。固定構造体29は、固定構造体の表面が可能な限り皮膚の表面に対して平らに配向されるように、接続点を用いて患者の口の両側で患者の頬に対して位置決めされる。この場合、理解されるように、各結束具52は、矢印X、Y、及びZによって示されるように、第1ヒンジ軸、第1ヒンジ軸に垂直な第2ヒンジ軸、及び第1及び第2ヒンジ軸に垂直な第3ヒンジ軸とについてのそれぞれの固定構造体29と気道管との間の相対移動をもたらし、各棒51の配向の完全な自由を与える。
次に、固定構造体29は、装置1を確実に適切な位置に保持するために、適切な位置にテープで固定されうるか、又は患者の頭の周りを通るテープを用いて固定されうる。
上述の実施形態の特徴は、本発明の範囲内に含まれる別の実施形態に再結合されてもよい。さらに、本発明は、例示的な実施形態に関連して上で概説された例示的なもの及び構成方法に限定されるものではなく、任意の適切なもの又は構成方法が採用されうる。例えば、カフは軟質可撓性シリコーンゴムのシートを用いて形成されてもよいが、他の材料、例えばラテックス又はPVCが使用されてもよい。材料としてのPVCは、使い捨てを意図された実施形態に特に適しており、一方、シリコーンゴムの使用は、多くの医療処置に再使用することを意図された実施形態において必須ではないけれども好ましい。
さらに、当業者には理解されようが、本発明の様々な特徴は、広範囲の異なる喉頭マスク気道装置に適用可能であり、そして本発明は、上述された種類のマスクの例示的な実施形態に限定されない。例えば、本発明の態様は、気道管を通して挿入された気管内チューブ又は別の長手方向に延在する要素の挿入に際して、マスク開口部を通してマスクの中空又は内腔に現れるように、開口部から患者の喉頭蓋を持ち上げるように動作可能な喉頭蓋持ち上げ棒をマスク開口部上に備えた喉頭マスク気道装置に適用されうる。本発明の態様は、本発明の範囲を制限し又は制限することなく、例えば、一回又は再使用可能な装置に、開口棒を備え又は備えていない装置に、気管内チューブ又は類似物をマスクの気道管を介して喉頭に導入することを可能にする「挿管」装置、及び光ファイバ観察装置等を組み込んだ装置などに適用されうる。