JP2019524985A - 銅−ニッケル−スズ合金、その製造方法、ならびにその使用法 - Google Patents

銅−ニッケル−スズ合金、その製造方法、ならびにその使用法 Download PDF

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Abstract

本発明は、(重量%で)以下の成分:Ni 2.0から10.0%まで、Sn 2.0から10.0%まで、Si 0.01から1.5%まで、Fe 0.01から1.0%まで、B 0.002から0.45%まで、P 0.001から0.15%まで、選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、残部銅および不可避な不純物からなる、鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、‐元素の珪素およびホウ素の、重量%で表示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;‐前記銅−ニッケル−スズ合金は、前記合金の加工特性および使用特性を著しく改善するSi含有およびB含有相ならびにNi−Si−B、Ni−B、Fe−B、Ni−P、Fe−P、Ni−Si系の相および他のFe含有相を有することを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金に関する。さらに本発明は、前記高強度銅−ニッケル−スズ合金の鋳造の形態およびさらに加工した形態、製造方法ならびに前記合金の使用法に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、請求項1から3までのいずれか1項の前提部に記載された、鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された銅−ニッケル−スズ合金、請求項10から11までの前提部に記載されたその製造方法、ならびに請求項17から19までの上位概念に記載されたその使用法に関するものである。
銅−スズ二元合金は、その良好な強度特性、良好な耐食性および熱と電流に対する伝導性に基づき、機械製造および車両製造ならびに他の電子工学および電気工学の分野において大きな意義を持つ。
この材料群は、アブレシブ摩耗に対して高い耐性を有する。その上、銅−スズ合金は良好な滑り特性および高い疲労限度を保証することから、その優れた適性は、エンジン製造や車両製造ならびに一般的な機械製造における摺動部材に対して現れる。
銅−ニッケル−スズ合金は、前記銅−スズ二元材料に比べ、硬度、引張強度および降伏点のような機械特性が改善されている。その際、機械特性値の上昇は、Cu−Ni−Sn合金の硬化性により達成される。
Cu−Ni−Sn合金中に自発的なスピノーダル分解が起こる温度に対する元素ニッケルとスズの比の重要性に加えて、この材料群の特性を調整するためには析出過程が重要である。
特にCu−Ni−Sn合金組織の粒界における不連続な析出物の存在は、文献では、動的応力の際の靭性悪化と関連付けられている。
特許文献1では、Ni8から16重量%、Sn5から8重量%および任意にMn0.3重量%まで、B0.3重量%まで、Zr0.3重量%まで、Fe0.3重量%まで、Nb0.3重量%までおよびMg0.3重量%までを有するCu−Ni−Sn連続鋳造スピノーダル合金を、混錬加工を行なわずに製造することが提案されている。不連続な析出物を含まないスピノーダル分解組織を得るために、鋳造状態の溶体化熱処理の実施後とスピノーダル時効後にその都度合金を水冷によって急速に冷却しなくてはならない。
特許文献2には、それに対し、Ni2から98重量%およびSn2から20重量%を有するCu−Ni−Sn合金に関し、時効処理の間に脆化性の不連続な析出物が発生するのを防ぐために少なくとも加工度ε=75%で冷間加工を実施しなければならない、と記載されている。
特許文献3には、銅−ニッケル−スズ合金から半製品および部品を工業的に大規模生産する際に生じる問題点が挙げられている。つまり、特に鋳造組織の粒界にSnを多く含む偏析が生じることにより、効率的な加工の機会が著しく制限される。Cu−Ni−Sn合金の鋳造状態の熱機械的な加工によっても容易に取り除くことができないSnを多く含む偏析は、基質中の合金成分の均一な分布を妨げている。これは、しかし、この材料群の硬化の前提としてやむを得ない。したがって、Ni4から18重量%およびSn3から13重量%を有する銅合金の溶融物を微細に噴霧し、噴霧粒子を捕集用表面に集めることが提案されている。後続の急速冷却により、Snを多く含む粒界偏析の形成は阻止される。
特許文献4からは、インゴット鋳造とそれに続いて中間焼鈍を含む熱間加工および冷間加工を行なう従来の方法を用いて一連の銅合金を製造するべきではない、あるいは製造しても採算性が悪いだけなのは、粒界析出物、偏析あるいは他の不均質性により熱間加工が困難だからである、ということが公知である。
これらの銅合金には銅−ニッケル−スズ材料も含まれる。したがって、このような合金の鋳造状態の冷間加工を保証するために、溶融物の凝固速度の正確な制御を含む薄いストリップ鋳造法が推奨されている。
最新のエンジン、機械、装置およびユニットの運転温度および運転圧力が高くなるにしたがって、個々のシステム部材で広く異なる損傷メカニズムが発生する。したがって一層、特に摺動部材と差し込みコネクタの材料側および構造上の設計の際には、滑り摩耗の種類の他に振動摩擦摩耗損傷のメカニズムも考慮する必要性がある。
専門用語でフレッティングとも呼ばれる振動摩擦摩耗は、振動する接触面間に生じる摩擦摩耗である。部品の幾何学的摩耗または体積摩耗に加えて、周辺媒体との反応により摩擦腐食が起こる結果となる。材料損傷により、摩耗領域の部分強度、特に耐振動性は明らかに減少し得る。損傷した部品表面からは、振動破壊/摩擦疲労破壊につながる振動亀裂が始まり得る。摩擦腐食の下では、部品の耐振動性は材料の疲労限度特性値より明らかに低下し得る。
振動摩擦摩耗は、そのメカニズムにおいて、一方向の動きを持つ滑り摩耗の種類とは著しく異なる。特に、振動摩擦摩耗では腐食の影響は特に顕著である。
特許文献5からは、滑り軸受の振動摩擦摩耗の損傷結果の記述が見られる。滑り軸受の安定姿勢を保証するために、これらを軸受受容部へ圧入する。この圧入過程により、滑り軸受に高い応力が形成され、これが、負荷が大きくなることにより、熱膨張により、かつ最新エンジン内における動的な軸荷重により、さらに高くなる。応力の過剰上昇により滑り軸受のジオメトリ変化が起こり得、これにより当初の軸受突起部が減少する。これにより、軸受受容部に対して相対的な滑り軸受の微細動作が可能となる。軸受と軸受受容部との間の接触面における振動幅の少ない周期的相対運動により、滑り軸受背面の振動摩擦摩耗/摩擦腐食/フレッティングが生じる。その結果、亀裂が始まり、最終的に滑り軸受の摩擦疲労破壊が起こる。様々な滑り軸受材料を使ったフレッティング試験の結果により、特に、スピノーダル硬化性銅−ニッケル−スズ合金で見られるようなNi含有量が2重量%を超えるCu−Ni−Sn合金は、フレッティング摩耗に対する耐性が不十分である、ということが示されている。
エンジンおよび機械では、電気の差し込みコネクタがしばしば周辺部に配置されており、そこで機械的な振動運動にさらされている。接続装置の部材が、機械的な負荷により相互に相対運動を行なう異なる組立品にあるならば、その接続部材の相応の相対運動となり得る。これらの相対運動により、振動摩擦摩耗が起こり、かつ、差し込みコネクタの接触領域の摩擦腐食が起こる。この接触領域には微小亀裂が形成され、それにより、差し込みコネクタ材料の疲労強度が大幅に減少する。疲労破壊による差し込みコネクタの落下という結果が生じるかもしれない。さらに、摩擦腐食により接触抵抗の上昇が起こる。
振動摩擦摩耗/摩擦腐食/フレッティングに対する十分な耐性にとって重要なのは、したがって、耐摩耗性、延性および耐食性という材料特性の組み合わせである。
銅‐ニッケル−スズ合金の耐摩耗性を高めるために、これらの材料に適切な摩耗支持体を添加することが必要である。硬質粒子の形のこれら摩耗支持体は、アブレシブ摩耗および凝着摩耗の結果を防ぐ。硬質粒子としては、Cu−Ni−Sn合金中の様々な析出形が考慮される。
特許文献6には、Ni0.4から3.0重量%、Sn1から11重量%、Si0.1から1重量%およびP0.01から0.06重量%を有する差し込みコネクタ用銅合金が教示されている。珪化ニッケルおよびリン化ニッケルの細かい析出物が合金の高い強度と良好な耐応力緩和特性を保証する。
鋼からなる基体上に滑り層を製造するために、特許文献7には、肉盛溶接により基体上に塗着される、Cu77から92重量%、Sn8から18重量%、Ni1から5重量%、Si0.5から3重量%およびFe0.25から1重量%を含有する銅合金が挙げられている。摩耗支持体として、ここでは合金元素のニッケルおよび鉄の珪化物およびリン化物が使用される。
特許文献8からは、Si0.4重量%まで、Ni1から10重量%まで、B0.02から0.5重量%まで、P0.1から1重量%までおよびSn4から25重量%までを有する低融点銅合金が公知である。この合金は、溶接添加物として鋳造棒の形で適当な金属製基体表面に塗着することができる。この合金は、従来技術より改善された延性を有し、かつ機械的に加工可能である。肉盛溶接のため以外に、このCu−Sn−Ni−Si−P−B合金は、スプレー法を用いた付着のために使用可能である。リン、珪素およびホウ素の添加により、ここでは、溶融した合金の自己流動性ならびに基体表面の湿潤性が改善され、追加のフラックスの使用が不必要となる。
この文献の教示では、合金のSi含有量をやむを得ず0.05から0.15重量%にした場合に、0.2から0.6重量%という特に高いP含有量が規定される。これは、材料の自己流動性に対する表面的な要求を強調している。この高いP含有量によって、合金の熱間加工性は悪化し、組織のスピノーダル分解性は不十分となる。
特許文献9によれば、銅系合金中に析出した硬質粒子の大きさは、その耐摩耗性に大きな影響を持つ。つまり、5から100μmの大きさに達した元素ニッケルおよび鉄の珪化物錯形成/ホウ化物錯形成により、Ni5から30重量%、Si1から5重量%、B0.5から3重量%およびFe4から30重量%を有する銅合金の耐摩耗性は著しく上昇する。元素のスズはこの材料には含まれない。この材料は、肉盛溶接を用いて適当な基体上に磨耗防止層として塗着される。
特許文献10には、5から15重量%の含有量範囲のスズおよび/または3から30重量%の含有量範囲の亜鉛を追加で含む、前述の特許文献9と同じ銅合金が記載されている。Snおよび/または亜鉛を追加することにより、特に凝着摩耗に対する材料の耐性が高くなる。この材料は、同様に、肉盛溶接を用いて適当な基体上に磨耗防止層として塗着される。
ただし、特許文献9および特許文献10に記載の銅合金は、元素ニッケルおよび鉄の珪化物形成/ホウ化物形成で求められた5から100μmという大きさにより、非常に限定された冷間加工性しか有さない。
析出硬化性銅−ニッケル−スズ合金の開示は、特許文献11に見られる。この銅系合金は、Ni0.1から10重量%、Sn0.1から10重量%、Si0.05から5重量%、Fe0.01から5重量%およびホウ素0.0001から1重量%を含有する。この材料は、拡散分布するNi−Si系金属間相を含有する。この合金の特性は、Feを含有しない実施例でも説明されている。
特許文献12には、6重量%を超えるSn含有量を有するCu−Ni−Snスピノーダル合金は熱間加工可能ではない、と述べられている。理由として、Cu−Ni−Sn合金の鋳造組織の粒界にあるSnを多く含む偏析が記載されている。したがって、開示された高強度針金および薄板用Cu−Ni−Sn多成分合金について、Ni1から8重量%、Sn2から6重量%、およびAl、Si、Sr、TiおよびBの群の2つ以上の元素0.1から5重量%の組成が記載されている。
特許文献13からは、Ni6から25重量%、Sn4から9重量%、および(個々に、または合わせて)0.04から5重量%の含有量の他の添加物を有する銅合金の開示が見られる。これら他の添加物は(重量%で):
Zn 0.03から4%まで、 Zr 0.01から0.2%まで、
Mn 0.03から1.5%まで、Fe 0.03から0.7%まで、
Mg 0.03から0.5%まで、P 0.01から0.5%まで、
Ti 0.03から0.7%まで、B 0.001から0.1%まで、
Cr 0.03から0.7%まで、Co 0.01から0.5%まで
である。合金元素Zn、Mn、Mg、PおよびBは、合金の溶融物の脱酸素のために添加されることが述べられている。元素Ti、Cr、Zr,FeおよびCoは、粒子を細かくし、強度を上げる機能を有する。
例えばホウ素、珪素およびリンのようなメタロイドで合金を作ることにより、加工技術上重要な、比較的高い基礎溶融温度の低下が成功する。したがって、これらの合金添加物の使用は、特に、耐摩耗性の被覆材料および高温材料の分野で行なわれ、そこには例えばNi−Si−BおよびNi−Cr−Si−B系の合金が含まれる。これらの材料では、特にホウ素と珪素の合金元素のおかげでニッケル系硬質合金の溶融温度を大幅に低下することができるので、これらを自己流動性ニッケル系硬質合金として使用することが可能になる。
特許文献14には、Si含有金属溶融物中における合金元素のホウ素の他の機能について重要な記述が含まれている。それによれば、ホウ素の添加により、溶融物中に生じる酸化物の分解と、被膜層表面に現れて酸素がさらに進入することを防ぐホウ珪酸塩の形成が起こる。このようにして、被膜層の滑らかな表面を実現することができる。
特許文献15には、金属間相が存在する拡散はんだ付け箇所における過程が記載されている。拡散はんだ付けを用いて、異なる熱膨張係数を有する部分を互いに結合する。このはんだ付け箇所の熱機械的負荷において、あるいははんだ付け過程自体において、界面に大きな応力が生じ、それが特に金属間相周辺で亀裂を生じさせるかもしれない。対策として、接合材同士の異なる膨張係数を相殺させる粒子とはんだ成分を混合することが提案されている。つまり、ホウ珪酸塩またはリン珪酸塩からなる粒子が、その好適な熱膨張係数に基づいて、はんだ結合における熱機械的応力を最小限にすることができる。その上、すでに生じた亀裂の拡張はこれらの粒子により妨げられる。
特許文献16では、特に、ホウ素0.1から2.0重量%および鉄4から14重量%を有する鋳造用珪素合金の導電性に対する元素ホウ素の影響が強調されている。このSi系合金では、ホウ化珪素と呼ばれる高融点のSi−B相が析出する。
ホウ素含有量により決められるSiB、SiB、SiBおよび/またはSiBの形態に大部分で存在するホウ化珪素は、その性質において珪素とははるかに異なる。これらホウ化珪素は金属的性格を有し、したがって導電性である。これらは、非常に高い耐熱性および耐酸化性を有する。焼結製品に好ましく使用される形態SiBは、その高い硬度と高いアブレシブ摩耗抵抗性により、例えばセラミック製造およびセラミック加工に使用される。
慣用の表面被覆用耐摩耗性硬質合金は、金属の鉄、コバルトおよびニッケルの比較的延性のあるマトリックスと、それに混在する硬質粒子としての珪化物およびホウ化物からなる(非特許文献1)。これらの硬質粒子により摩耗抵抗性が上昇するので、Ni−Cr−Si、Ni−Cr−B、Ni−B−SiおよびNi−Cr−B−Si系硬質合金が広く使用される。Ni−B−Si合金は、珪化物NiSiおよびNiSiの他に、ホウ化物NiBおよびNi−Siホウ化物/Niホウ化珪素NiSiBを含有する。元素のホウ素が存在する場合に珪化物の形成がある程度緩慢であることも報告されている。Ni−B−Si合金系をさらに研究したところ、高融点のNi−Siホウ化物NiSiBおよびNi4.29Si1.43の検出に至った(非特許文献2)。この高融点Ni−Siホウ化物は、ホウ素および珪素の方向の比較的大きな均質範囲に存在する。
頻繁な使用では、金属価格を下げるために、元素の亜鉛を前記銅−ニッケル−スズ合金に添加する。合金元素の亜鉛は、機能的には、溶融物からSnを多く含むあるいはNi−Snを多く含む相の形成を促進する。その上、亜鉛は、Cu−Ni−Snスピノーダル合金中の析出物を増やす。
さらに、多くの用途において、耐ゴーリング性の改善と切削加工性の改良のために、ある程度のPb含有量が銅−ニッケル−スズ合金に添加される。
独国公表特許第833954号 独国特許発明第2350389号明細書 独国公表特許第69105805号明細書 独国特許発明第4126079号明細書 独国特許出願公開第102012105089号明細書 米国特許第6379478号明細書 米国特許第2129197号明細書 米国特許第3392017号明細書 米国特許第4818307号明細書 米国特許第5004581号明細書 米国特許第5041176号明細書 韓国公開特許第1020020008710号公報要約 米国特許第5028282号明細書 独国特許第2033744号明細書 独国特許第10208635号明細書 独国特許第2440010号明細書
O.クノーテック(Knotek, O)、E.ルークシャイダー(Lugscheider, E)、H.ライマン(Reimann, H)著、「耐摩耗性ニッケル−ホウ素−珪素硬質合金の評価についての論文(Ein Beitrag zur Beurteilung verschleissfester Nickel-Bor-Silizium-Hartlegierungen)」、ツァイトシュリフト・フュア・ヴェルクシュトフテヒニーク(Zeitschrift fuer Werkstofftechnik)8巻、10版、1977年、p.331−335) E.ルークシャイダー(Lugscheider, E)、H.ライマン(Reimann, H)、O.クノーテック(Knotek, O)著、「ニッケル−ホウ素−珪素−三元系(Das Dreistoffsystem Nickel-Bor-Silicium)」、モーナーツヘフテ・フュア・ヒェミー(Monatshefte fuer Chemie)106巻、5版、1975年、p.1155−1165
本発明は、それぞれ2から10重量%のニッケル含有量およびスズ含有量の全範囲にわたって優れた熱間加工性を有する高強度の銅−ニッケル−スズ合金を提供するという課題に基づく。熱間加工のためには、スプレー圧縮または薄いストリップ鋳造の実施を絶対的に必要とすることなく慣用の鋳造法を用いて製造された前駆材料が使用可能でなくてはならない。
前記銅−ニッケル−スズ合金は、鋳造後、ブローホールや引け巣ならびに応力亀裂がなく、スズが多い相成分が均一に分布した組織を特徴としていなくてはならない。その上、前記銅−ニッケル−スズ合金の組織中、鋳造後すでに金属間相が含まれていなくてはならない。このことは、合金が鋳造状態ですでに高い強度、高い硬度ならびに十分な耐摩耗性を有するために重要である。さらに、すでに鋳造状態が高い耐食性で優れていなくてはならない。
十分な熱間加工性を得るために、前記銅−ニッケル−スズ合金の鋳造状態を最初に適当な焼鈍処理を用いて均質化する必要はない。
前記銅−ニッケル−スズ合金の加工特性に関して、一方では、その冷間加工性が金属間相の含有量にかかわらず、従来のCu−Ni−Sn合金より基本的に悪くならない、という目的が存在する。他方、前記合金に対して、実施された冷間加工の最小加工度に対する要求はなくなる必要がある。これは、従来技術によれば、不連続な析出物を形成しないでCu−Ni−Sn材料組織のスピノーダル分解を保証できるようにするための前提とみなされる。
従来技術に対応するCu−Ni−Sn材料のさらなる加工に関する他の要求は、前記材料の時効後の冷却速度に関するものである。つまり、不連続な析出物のないスピノーダル分解組織を得るために、スピノーダル時効後に材料を水冷で急速に冷却することが必要であるとみなされる。しかし、時効後のこの冷却法により危険な残留応力が形成されるかもしれないので、本発明は、すでに合金側で、時効を含めた全体の製造プロセスの間に不連続な析出物が形成されるのを防止する、という別の課題に基づく。
少なくとも1回の焼鈍、あるいは少なくとも1回の焼鈍と共に少なくとも1回の熱間加工および/または冷間加工を含むさらなる加工を用いて、高い強度、高い耐熱性、高い硬度、高い耐応力緩和特性および耐食性、十分な導電性ならびに滑り摩耗および振動摩擦摩耗のメカニズムに対する高度な耐性を有する微粒子状の硬質粒子含有組織が調整される。
本発明は、銅−ニッケル−スズ合金については請求項1から3までのいずれか1項に記載の特徴により、製造方法については請求項10から11までの特徴により、かつ使用法については請求項17から19までの特徴により記載されている。その他の従属請求項は、本発明の好適な実施態様および発展形態に関するものである。
本発明は、(重量%で)以下の成分:
Ni 2.0から10.0%まで、
Sn 2.0から10.0%まで、
Si 0.01から1.5%まで、
Fe 0.01から1.0%まで、
B 0.002から0.45%まで、
P 0.001から0.15%まで、
選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、
選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、
選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、
残部銅および不可避な不純物
からなる、
鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、
‐元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;
‐前記銅−ニッケル−スズ合金は、合金の加工特性および使用特性を著しく改善するSi含有およびB含有相ならびにNi−Si−B、Ni−B、Fe−B、Ni−P、Fe−P、Ni−Si系の相および他のFe含有相を有する
ことを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金を包含する。
さらに、本発明は、(重量%で)以下の成分:
Ni 2.0から10.0%まで、
Sn 2.0から10.0%まで、
Si 0.01から1.5%まで、
Fe 0.01から1.0%まで、
B 0.002から0.45%まで、
P 0.001から0.15%まで、
選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、
選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、
選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、
残部銅および不可避な不純物
からなる、
鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、
‐元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;
‐鋳造後、前記合金中には以下の組織成分:
a)組織全体に対して、
a1)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(h+k)/mが2から6である第1の相成分 30体積%まで、
a2)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(p+r)/sが10から15である第2の相成分 20体積%まで、および
a3)銅固溶体の残部
を有するSi含有およびP含有金属性基質;
b)組織全体に対して、
b1)Si含有およびB含有相として0.01から10体積%で、
b2)化学式NiSiB(式中、x=4から6)を有するNi−Siホウ化物として1から15体積%で、
b3)Niホウ化物として1から15体積%で、
b4)Feホウ化物として0.1から5体積%で、
b5)Niリン化物として1から5体積%で、
b6)Feリン化物として0.1から5体積%で、
b7)Ni珪化物として1から5体積%で、
b8)Fe珪化物および/またはFeを多く含む粒子として0.1から5体積%で、
前記組織中に含有されており、これらが単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し、スズおよび/または前記第1の相成分および/または第2の相成分により覆われている相
が存在し;
‐鋳造の際、ホウ化珪素として形成された前記Si含有およびB含有相、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在する前記Ni−Siホウ化物、Niホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子は、溶融物の凝固/冷却の間の均一な結晶化のための核をなし、それにより前記第1の相成分および/または第2の相成分は島状および/または網状に組織中に均一に分布しており;
‐ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成された前記Si含有およびB含有相は、リン珪酸塩と一緒に、前記合金の半製品および部品上で摩耗防止性および腐食防止性被覆の役目を果たしていることを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金を包含する。
好適には、前記第1の相成分および/または第2の相成分は、合金の鋳造組織中少なくとも1体積%で含有されている。
前記第1の相成分および/または第2の相成分を島形状および/または網形状に均一に分布させることにより、前記組織は偏析を有さない。このような偏析とは、粒界偏析として形成されている鋳造組織中の前記第1の相成分および/または第2の相成分の堆積物であると理解され、これらは、鋳造部材を熱的および/または機械的に負荷した際に、亀裂の形で組織の損傷を引き起こし、これらが破壊につながるかもしれない。ここでは、鋳造後の組織には、さらに、ブローホール、引け巣、応力亀裂および不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物は存在しない。この形態で合金は鋳造状態にある。
さらに、本発明は、(重量%で)以下の成分:
Ni 2.0から10.0%まで、
Sn 2.0から10.0%まで、
Si 0.01から1.5%まで、
Fe 0.01から1.0%まで、
B 0.002から0.45%まで、
P 0.001から0.15%まで、
選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、
選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、
選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、
残部銅および不可避な不純物
からなる、
鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、
‐元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;
‐少なくとも1回の焼鈍による、あるいは少なくとも1回の焼鈍と共に少なくとも1回の熱間加工および/または冷間加工による前記合金のさらなる加工後、前記合金中には以下の組織成分:
A)組織全体に対して、
A1)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(h+k)/mが2から6である第1の相成分 15体積%まで、
A2)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(p+r)/sが10から15である第2の相成分 10体積%まで、
A3)銅固溶体の残部
を有する金属性基質;
B)組織全体に対して、
B1)単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し、(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われているSi含有およびB含有相、化学式NiSiB(式中、x=4から6)を有するNi−Siホウ化物、Niホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物として、ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子として2から35体積%で前記組織中に含有されており、
B2)(Cu、Ni)−Sn系連続析出物として80体積%まで前記組織中に含有されており、
B3)単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し、(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われており、かつ3μmより小さい大きさを有するNiリン化物、Feリン化物、Ni珪化物として、ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子として2から35体積%で前記組織中に含有されている

が存在し;
‐ホウ化珪素として形成された前記Si含有およびB含有相、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在する前記Ni−Siホウ化物、Niホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子は、前記合金の前記さらなる加工の間の組織の静的および動的再結晶のための核をなし、それにより均一で微粒子状の組織の調整が可能になり;
‐ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成された前記Si含有およびB含有相は、リン珪酸塩と一緒に、前記合金の半製品および部品上で摩耗防止性および腐食防止性被覆の役目を果たしていることを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金を包含する。
好適には、(Cu、Ni)−Sn系連続析出物は、さらなる加工を施された状態の合金の組織の少なくとも0.1体積%で含まれている。
合金のさらなる加工後も、前記組織は偏析を含まない。このような偏析とは、組織中の、粒界偏析として形成された前記第1の相成分および/または第2の相成分の堆積物であると理解されており、これら粒界偏析が、特に部品の動的負荷の際には、破壊に至るかもしれない亀裂の形で組織損傷を引き起こす。
合金の組織は、さらなる加工後、ブローホール、引け巣および応力亀裂を含まない。本発明の本質的な特徴として、さらなる加工を施された状態の組織は不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物を含まないことを強調すべきである。この第2の形態では、合金は、さらなる加工を施された状態にある。
本発明は、このとき、Si含有およびB含有相を有し、ならびにNi−Si−B,Ni−B、Fe−B、Ni−P、Fe−P、Ni−Si系の相を有し、かつ他のFe含有相を有する銅‐ニッケル−スズ合金を提供する、という考察から始まる。これらの相は、加工特性、鋳造性、熱間加工性および冷間加工性を著しく改善する。さらに、これらの相は、強度と、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性を高めることにより合金の使用特性を改善する。これらの相は、加えて、本発明の他の使用特性としての、耐食性と耐応力緩和特性を改善する。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金は、砂型鋳造法、シェルモールド鋳造法、精密鋳造法、フルモールド鋳造法、ダイカスト法、ロスト・フォーム法およびチル鋳造法あるいは連続または半連続鋳造法を用いて製造することができる。
プロセス工学的に高価で費用がかさむ一次成形技術の使用は確かに可能であるが、本発明による銅−ニッケル−スズ合金の製造にとって絶対的に必要であるとはいえない。つまり、例えばスプレー圧縮法または薄いストリップ鋳造法の使用は省いてもよい。本発明による銅−ニッケル−スズ合金の鋳造形状は、特にSn含有量およびNi含有量の全範囲にわたって、均質化焼鈍を必ずしも実施しないで直接、例えば熱間圧延、押出成形または鍛造により、熱間加工することができる。さらに注目すべきは、本発明による合金からなる形状のチル鋳造あるいは連続鋳造の後に、材料中の空洞や亀裂を溶接すなわち閉鎖するために、費用がかかる鍛造プロセスまたは圧縮プロセスを高い温度で実施する必要がないということである。したがって、今まで銅−ニッケル−スズ合金から半製品および部品を製造する際に存在していた加工技術上の制限は大幅になくなる。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金の組織の金属性基質は、鋳造状態では、前記合金のSn含有量が上昇するのに伴い、鋳造プロセスに依存して、銅固溶体(α相)中に均一に分布するスズを多く含む相の増加分からなる。
前記金属性基質のスズを多く含むこれらの相は、第1の相成分と第2の相成分に分類することができる。第1の相成分は、化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(h+k)/mが2から6である。第2の相成分は、化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(p+r)/sが10から15である。
本発明による合金は、Si含有およびB含有相を特徴とし、これらは2つの群に分類することができる。
第1の群は、ホウ化珪素として形成されSiB、SiB、SiBおよびSiBの形態で存在することができるSi含有およびB含有相に関する。化合物SiBの記号「n」は、珪素格子中の元素ホウ素の溶解度が大きいことを表している。
Si含有およびB含有相の第2の群は、ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩の珪酸塩化合物に関する。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金では、ホウ化珪素としてならびにホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相の組織部分は、最小で0.01かつ最大で10体積%である。
本発明による合金の組織中の第1の相成分および/または第2の相成分の均一に分布された配置は、特に、ホウ化珪素として形成されたSi含有およびB含有相と、大部分がすでに溶融物中に析出している化学式NiSiB(式中、x=4から6)を有するNi−Siホウ化物の作用の結果として生じる。その後、溶融物の凝固/冷却の間、有利にはすでに存在するホウ化珪素およびNi−Siホウ化物において、Niホウ化物およびFeホウ化物が析出することになる。単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在するホウ化物の化合物全体は、溶融物の次の凝固/冷却の間、第1核として使用される。
溶融物の凝固/冷却のさらなる過程で、有利には、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在するホウ化珪素、Ni−Siホウ化物ならびにNiホウ化物およびFeホウ化物のすでに存在する第1核において、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物、Fe珪化物および/またはFeを多く含む粒子が、第2核として析出する。
Ni−Siホウ化物ならびにNiホウ化物は、それぞれ1から15体積%で組織中に含有されている。Niリン化物およびNi珪化物は、それぞれ1から5体積%の組織割合で存在する。Feホウ化物、Feリン化物ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子は、それぞれ0.1から5体積%の組織割合を有している。
したがって、組織中に、ホウ化珪素として形成されたSi含有およびB含有相、化学式NiSiB(式中、x=4から6)を有するNi−Siホウ化物、ならびにNiホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物、Fe珪化物および/またはFeを多く含む粒子が単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在する。これらの相を、以下、結晶核と呼ぶ。
最終的に、金属性基質の元素スズおよび/または第1の相成分および/または第2の相成分は、好ましくは前記結晶核の範囲で結晶化し、それにより前記結晶核は、スズおよび/または第1の相成分および/または第2の相成分により覆われている。スズおよび/または第1の相成分および/または第2の相成分により覆われているこの結晶核を、以下、第1級硬質粒子と呼ぶ。
前記第1級硬質粒子は、本発明による合金の鋳造状態で、80μm未満の大きさを有する。好適には、第1級硬質粒子の大きさは、50μm未満である。
合金のSn含有量が多くなるにつれて、第1の相成分および/または第2の相成分の島状の配置は、組織中で網形状の配置に移行する。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金の鋳造組織では、第1の相成分は30体積%までの割合を有していてよい。第2の相成分は20体積%までの組織割合を有している。好適には、第1の相成分および/または第2の相成分は、合金の鋳造状態の組織中、少なくとも1体積%で含有されている。
合金元素のホウ素を添加することにより、本発明による合金の鋳造中、リン化物および珪化物の生成は妨げられて不完全になる。この理由から、鋳造状態の金属性基質に溶解しているリンおよび珪素の含有は残ったままである。
従来の銅−ニッケル−スズ合金は、比較的長い凝固期間を有する。この長い凝固期間は、鋳造の際には気体を吸収する危険性を増大させ、ならびに不均一な、粗い、たいてい樹枝状の溶融物結晶化を誘発する。その結果は、しばしば、ブローホールやSnを多く含む粗い偏析であり、その相境界では頻繁に引け巣および応力亀裂が生じる。この材料群では、さらに、有利には粒界に、Snを多く含む偏析が生じる。
ホウ素、珪素およびリンの含有量を組み合わせることで、本発明による合金の溶融物の様々な経過が活発になり、それが、従来の銅−ニッケル−スズ合金に比べて凝固挙動を決定的に変化させる。
ホウ素、珪素およびリンの元素は、本発明の溶融物において脱酸機能を果たしている。ホウ素と珪素を添加することにより、溶融物の脱酸強度を下げることなく、リンの含有量を低下させることが可能である。この措置により、リン添加物を用いて溶融物を十分脱酸する際の不利な影響を排除することができる。つまり、高いP含有量は、いずれにせよすでに非常に長い銅−ニッケル−スズ合金の凝固期間をさらに延長し、それにより、この材料タイプの空洞傾向および偏析傾向が上昇する。リン添加の不利な影響は、本発明による合金のP含有量を0.001から0.15重量%までの範囲に限定することにより減少する。
特に元素のホウ素ならびに前記結晶核による基礎溶融温度の低下は、本発明による合金の凝固期間を短くする。これにより、本発明の鋳造状態は、個々の相成分が微細に分布する非常に均一な組織を有する。したがって、本発明による合金中には、特に粒界において、スズが多い偏析は起こらない。
本発明による合金の溶融物において、ホウ素、珪素およびリンの元素はメタロイドを減少させる。これらの元素は、このとき自身で酸化し、大抵は鋳造品の表面まで上昇し、そこでホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩としてならびにリン珪酸塩として、鋳造部品の気体吸収を防ぐ保護膜を形成する。本発明による合金からなる鋳造品の非常に滑らかな表面が確認されたが、これはこのような保護膜の形成を示している。本発明の鋳造状態の組織も、鋳造部品の断面全体にわたってブローホールを含んでいなかった。
前述の文献についての説明の中で、拡散はんだ付けの間に、異なる熱膨張係数を有する相の間の応力亀裂を回避するためにホウ珪酸塩およびリン珪酸塩を投入する利点が挙げられた。
本発明の基本的な考えは、拡散はんだ付けでの接合材同士の異なる熱膨張係数の調整に関するホウ珪酸塩、ホウリン珪酸塩およびリン珪酸塩の作用を、銅−ニッケル−スズ材料の鋳造、熱間加工および熱処理の際の過程に転用することにある。これらの合金の凝固期間が長いことにより、ずれて結晶化するSnが少ない構造範囲とSnを多く含む構造範囲の間で大きな機械的応力が生じ、それにより亀裂および空洞が生じる可能性がある。さらに、これらの損傷特徴は、前記銅−ニッケル−スズ合金の熱間加工および高温焼鈍の場合にも、Snが少ない組織成分とSnを多く含む組織成分の異なる熱間加工挙動や異なる熱膨張係数に基づいて起こるかもしれない。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金にホウ素、珪素およびリンを組み合わせて添加することにより、一方で、溶融物が凝固する間、結晶核の作用によって、金属性基質の第1の相成分および/または第2の相成分が均一に島状および/または網状に分布する組織が生じる。前記結晶核に加えて、溶融物の凝固の間に生じる、ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相が、前記リン珪酸塩と一緒に、金属性基質の第1の相成分および/または第2の相成分および銅固溶体の熱膨張係数の必要な調整を保証する。このようにして、異なるSn含有量を持つ相の間で空洞ならびに応力亀裂が形成されるのを防ぐ。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金の合金含有量は、さらに、鋳造された状態の粒子構造の重要な変化をもたらす。つまり、第1の鋳造組織中に、下部粒子の粒径が30μm未満の下部構造が形成されることが確認できた。
別の方法では、本発明による合金に、焼鈍による、あるいは少なくとも1回の焼鈍と共に熱間加工および/または冷間加工によるさらなる加工を施してもよい。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金の前記さらなる加工の方法は、少なくとも1回の焼鈍と共に少なくとも1回の冷間加工を用いて、鋳造品を要求に合った特性を有する最終形状にすることである。
均一な鋳造組織およびその中に析出した第1級硬質粒子により、本発明による合金はすでに鋳造状態で高い強度を有する。それにより鋳造品は低い冷間加工性を有するが、それが効率的なさらなる加工を困難にしている。この理由から、鋳造素地品の均質化焼鈍は冷間加工の前に実施することが好適であると証明された。
本発明の時効性能を保証するために、均質化焼鈍プロセスの後に冷却を加速させることが好適であると証明された。このとき、析出メカニズムおよび分解メカニズムの緩慢性により、水冷の他に、冷却速度の遅い冷却方法も使用できることがわかった。つまり、本発明の均質化焼鈍の間に、組織中で、析出プロセスおよび分解プロセスによる硬度上昇作用および強度上昇作用を十分低下させるためには、空冷を加速させることが同様に実用的であると証明された。
本発明の組織の再結晶のための結晶核の傑出した作用は、冷間加工後に170から880℃の温度範囲で10分から6時間の焼鈍期間の焼鈍を用いて調整することができる組織において明らかである。再結晶した合金の極めて微細な構造により、たいてい70%を超える加工度εでさらなる冷間加工工程が可能となる。このようにして、最も高い強度の合金状態を製造することができる。
本発明のさらなる加工の際に可能になったこの高い冷間加工度により、引張強度R、降伏強度Rp0.2ならびに硬度について特に高い値を調整することができる。特に、Rp0.2のパラメータの高さは、摺動部材およびガイド部材にとって重要である。さらに、Rp0.2の高い値は、電子工学および電気工学における差し込みコネクタに必要なばね特性の前提である。
銅−ニッケル−スズ材料の加工および特性に関する従来技術を記載している数多くの文献の説明の中では、組織中に不連続の(Cu、Ni)−Sn系析出物が析出するのを防ぐために、例えば75%の最小冷間加工度を維持する必要性が示されている。
それに対し、本発明による合金の組織には、冷間加工の程度に関係なく、不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物が存在しないままである。つまり、本発明の特に好適な実施態様では、20%より低い非常に小さい冷間加工度の場合でさえ本発明の組織には不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物が存在しないままであることが確認できた。
従来のスピノーダル分解性Cu−Ni−Sn材料は、従来技術によれば、非常に熱間加工しにくいか、全く熱間加工できないとみなされている。
結晶核の作用は、同様に、本発明の銅−ニッケル−スズ合金の熱間加工の工程中も観察することができた。とりわけ、結晶核のおかげで、本発明による合金を600から880℃の温度範囲で熱間加工する際に、動的再結晶が有利に行なわれる。それにより、組織の均一性および微粒子性がさらに高まる。
好適には、静かなまたは加速させた空気であるいは水で、熱間加工後の半製品および部品の冷却を行なってよい。
鋳造後と同じように、鋳造品の熱間加工後も、非常に滑らかな部品表面を確認することができた。この観察により、ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相とリン珪酸塩の生成が、熱間加工の間の材料中に生じることが示されている。これら珪酸塩は、結晶核と一緒に、熱間加工の間も、本発明の金属性基質の相の異なる熱膨張係数を調整する。したがって、熱間加工した部分の表面および組織には、鋳造後と同じように、熱間加工の後も亀裂や空洞がなかった。
好適には、本発明の鋳造状態および/または熱間加工した状態を、170から880℃の温度範囲において10分から6時間の期間で少なくとも1回焼鈍処理を行ない、もしくは静かなまたは加速させた空気でのあるいは水での冷却を伴っても行なってよい。
本発明の1つの側面は、鋳造状態あるいは熱間加工された状態あるいは焼鈍された鋳造状態あるいは焼鈍された熱間加工された状態のさらなる加工のための好適な方法に関し、この方法は、少なくとも1回の冷間加工の実施を含む。
有利には、本発明の冷間加工された状態を、170から880℃の温度範囲において10分から6時間の期間で少なくとも1回焼鈍処理を行ない、もしくは静かなまたは加速させた空気でのあるいは水での冷却を伴って行なってもよい。
好適には、170から550℃の温度範囲において0.5から8時間の期間で応力除去焼鈍/時効熱処理を実施してよい。
少なくとも1回の焼鈍による、あるいは少なくとも1回の焼鈍と共に少なくとも1回の熱間加工および/または冷間加工による前記合金のさらなる加工後、(Cu、Ni)−Sn系析出物が、好ましくは前記結晶核の範囲内に形成され、それにより、前記結晶核はこれらの析出物により覆われている。(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われているこれらの結晶核を、以下、第2級硬質粒子と呼ぶ。
本発明による合金の前記さらなる加工により、第2級硬質粒子の大きさは、第1級硬質粒子の大きさに比べ減少する。特に冷間加工度が高くなるにつれ、第2級硬質粒子の細分化は進行する。なぜならば、これらの粒子は、最も硬質な合金成分として、それらを取り巻く金属性基質の形状変化の影響を受けることができないからである。結果として生じる第2級硬質粒子および/または結果として生じる第2級硬質粒子セグメントは、冷間加工度に依存して、40μm未満、それどころかさらに5μm未満の大きさを有する。
本発明のNi含有量とSn含有量は、それぞれ2.0と10.0重量%の間の範囲内で変動する。2.0重量%より低いNi含有量および/またはSn含有量だと、結果として低すぎる強度値と硬度値をもたらす。その上、滑り負荷では合金の走行特性が不十分である。アブレシブ摩耗および凝着摩耗に対する合金の抵抗力は前記要求を満たさない。10.0重量%を超えるNi含有量および/またはSn含有量の場合、本発明による合金の靭性が急速に悪化し、それにより、この材料からなる部品の動的負荷容量が低下する。
本発明による合金からなる部品の最適な動的負荷容量の保証に関して、それぞれ3,0から9.0重量%の範囲のニッケルとスズの含有量が好適であると証明されている。これに関して、本発明にとって元素のニッケルおよびスズの含有量としてそれぞれ4.0から8.0重量%の範囲が特に有利である。
従来技術から、Ni含有およびSn含有銅材料について、組織のスピノーダル分解度は、元素のニッケルおよびスズの重量%で示された元素含有量の比Ni/Snが高くなるにつれ増加することが公知である。これは、Ni含有量およびSn含有量が約2重量%以上の場合に当てはまる。Ni/Sn比が小さくなると、(Cu、Ni)−Sn系析出物形成のメカニズムの重要性がより高まり、それにより、スピノーダル分解された組織割合は減少する。結果として、特にNi/Sn比が減少するにつれて、不連続の(Cu、Ni)−Sn系析出物の形成が一層顕著になる。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金の本質的な特徴には、組織中の不連続析出物の形成に対するNi/Sn比の影響を決定的に排除することが含まれる。つまり、本発明の組織では大幅に、Ni/Sn比と無関係には、ならびに時効条件と無関係には、不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物が析出することはない、ということが確認された。
それに対し、本発明による合金のさらなる加工の間、80体積%までの(Cu、Ni)−Sn系連続析出物が形成される。好適には、(Cu、Ni)−Sn系連続析出物は、さらなる加工を施された合金状態の組織中、少なくとも0.1体積%で含有されている。
元素の鉄は、本発明による合金に0.01から1.0重量%で添加されている。鉄は結晶核の割合の増加に寄与し、したがって、鋳造プロセスの際に微粒子状の組織形成を促進する。組織中のFe含有硬質粒子は、合金の強度、硬度および耐摩耗性を高める。Fe含有量が0.01重量%を下回る場合、組織に及ぼすこれらの影響および合金の特性が不十分な程度でしか見ることができない。Fe含有量が1.0重量%を超える場合、組織は、ますます、Feを多く含む粒子のクラスター様の堆積物を含有する。これらのクラスターのFe割合は、結晶核ならびに硬質粒子を形成するためにはわずかな程度しか使用されない。その上、本発明の靭性は悪化する。0.02から0.6重量%のFe含有量が好適である。0.06から0.4重量%の範囲の鉄含有量が有利である。
元素のニッケルと鉄の間の類似関係により、本発明による合金の組織中、Ni−Siホウ化物に加え、Fe−Siホウ化物および/またはNi−Fe−Siホウ化物が形成されてもよい。Ni−Fe−Siホウ化物は、化学式(Ni、Fe)SiB(式中、x=4から6)で記載することができる。
Feホウ化物およびFeリン化物の他に、本発明の組織中、さらに他のFe含有相が含まれる。
確認されたFe珪化物の析出の緩慢さと、本発明による合金の製造およびさらなる加工の際のプロセス条件に対するFe珪化物の析出の依存性によって、これら他のFe含有相は、Fe珪化物として、および/またはFeを多く含む粒子として組織中に存在する。
溶融物の凝固/冷却中の結晶核の作用、再結晶核としての結晶核の作用ならびに摩耗防止および腐食防止目的の珪酸塩系相の作用は、本発明による合金中、珪素含有量が少なくとも0.01重量%およびホウ素含有量が少なくとも0.002重量%である場合に初めて技術的に重要な程度にまで達することができる。それに対し、Si含有量が1.5重量%を、および/またはB含有量が0.45重量%を超える場合、これが鋳造挙動を悪化させる。結晶核の含有量が高すぎると、溶融物の粘性が決定的に高くなる。その上、本発明による合金の靭性が低くなる結果になる。
Si含有量として0.05から0.9重量%の間の範囲が好適であると評価される。0.1から0.6重量%の珪素の含有量が特に好適であると判明した。
元素のホウ素については、0.01から0,4重量%の含有量が好適であるとみなされる。0.02から0.3重量%のホウ素の含有量が特に好適であると証明された。
Ni−Siホウ化物の、ならびにホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相の十分な含有量を確実にするためには、元素の珪素およびホウ素の元素比の下限が重要であると証明された。この理由から、本発明による合金の元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の最小比Si/Bは、0.4である。本発明による合金にとって、好適には、元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の最小比Si/Bは0.8である。有利には、元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の最小比Si/Bは1である。
本発明の他の重要な特徴として、元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bの上限を8に設定することが重要である。珪素の含分は、鋳造後、金属性基質に溶解し、ならびに第1級硬質粒子に結合している。
鋳造状態に熱によるあるいは熱機械的なさらなる加工を施す間、少なくとも第1級硬質粒子の珪化物成分は部分的に溶解する。これにより、金属性基質のSi含有量が上昇する。これが上限値を超えると、特にNi珪化物の含分が一段と高く、大きさを増して析出する。これにより、本発明の冷間加工性は決定的に低下する。
この理由から、本発明による合金の元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の最大比Si/Bは8である。この措置により、合金の鋳造状態に熱によるあるいは熱機械的なさらなる加工を施している間に形成される珪化物の大きさを3μmより小さくすることができる。さらに、これにより、珪化物の含有量が限定される。これに関し、元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bを最大値6に限定することが特に好適であると証明された。
結晶核の析出は、本発明による合金の溶融物の粘度に影響を及ぼす。この状況は、リンの添加をなぜ省いてはいけないのかを強調している。リンにより溶融物は結晶核にかかわらず十分に粘性が低くなり、このことは本発明の鋳造性にとって大変重要である。本発明による合金のリンの含有量は0.001から0.15重量%である。
0.001重量%を下回るP含有量は、もはや本発明の十分な鋳造性の保証に寄与しない。合金のリン含有量が0.15重量%を上回る値の場合、一方ではリン化物の形のNi含分が多すぎることになり、それにより組織のスピノーダル分解性が低下する。他方では、0.15重量%を上回るP含有量では、本発明の熱間加工性が決定的に悪化する。この理由から、0.01から0.15重量%のP含有量が特に好適であると証明された。0.02から0.09重量%の範囲のP含有量が有利である。
合金元素のリンには、さらに他の理由から大変重要な意味がある。元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の最大比Si/Bが8であることが求められていることと合わせて、合金のリン含有量に起因して、本発明のさらなる加工後に、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われているNiリン化物、Feリン化物、Ni珪化物ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子が最大3μmの大きさで、ならびに2から35体積%までの含有量で組織中に生成することができる。
単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われている、かつ最大3μmの大きさを持つこれらNiリン化物、Feリン化物、Ni珪化物、Fe珪化物および/またはFeを多く含む粒子を、以下、第3級硬質粒子と呼ぶ。
前記第3級硬質粒子は、本発明の特に好適な形態のさらなる加工を施された状態の組織中、1μm未満の大きさを有する。
この第3級硬質粒子は、一方では、前記第2級硬質粒子をその摩耗支持体としての機能において補っている。つまり、これらは、金属性基質の強度および硬度を高め、したがって、アブレシブ磨耗負荷に対する合金の耐性を改善する。他方では、前記第3級硬質粒子は、凝着摩耗に対する合金の耐性を高める。結局、この第3級硬質粒子は、本発明による合金の耐熱性ならびに耐応力緩和特性を決定的に上昇させる。このことは、特に摺動部材ならびに電子工学および電気工学における部材および結合部材に本発明による合金を使用するための重要な前提である。
鋳造状態の組織の第1級硬質粒子およびさらなる加工を施された状態の組織の第2級および第3級硬質粒子の含有量により、本発明による合金は、析出硬化性材料の特徴を有する。好適には、本発明は、析出硬化性かつスピノーダル分解性銅−ニッケル−スズ合金に相当する。
元素の珪素、ホウ素およびリンの元素含有量の合計は、好適には少なくとも0.2重量%である。
本発明による合金の鋳造形態およびさらなる加工を施された形態は、以下の選択元素を有していてもよい。
元素のコバルトは、本発明による銅−ニッケル−スズ合金に、2.0重量%までの含有量で添加してよい。元素のニッケル、鉄およびコバルト間の類似関係によって、かつ、ニッケルおよび鉄に関して同様にSiホウ化物形成性、ホウ化物形成性、珪化物形成性およびリン化物形成性であるコバルトの特性に基づいて、合金の結晶核ならびに第1級、第2級および第3級硬質粒子の形成に参加させるために、合金元素のコバルトを添加することができる。これにより、硬質粒子と結び付いたNi含有量を減少することができる。このようにして、組織のスピノーダル分解のために金属性基質中で効果的に使用されているNi含分の上昇を達成することができる。好適にはCo0.1から2.0重量%を添加することで、本発明の強度および硬度を著しく高めることが可能である。
元素の亜鉛は、本発明による銅−ニッケル−スズ合金に0.1から2.0重量%の含有量で添加してよい。合金元素の亜鉛は、合金のNi含有量およびSn含有量に依存して、本発明の金属性基質の第1の相成分および/または第2の相成分の含分を高め、それにより強度および硬度が高まることが判明した。これについては、Ni含分とZn含分との相互作用に要因がある。Ni含分とZn含分とのこの相互作用により、同様に、第1級および第2級硬質粒子の大きさの減少が確認され、それらはしたがって、組織中、さらに細かく分布して生成した。Znが0.1重量%より低いと、本発明の組織および機械特性に対するこれらの影響は認められなかった。2.0重量%を超えるZn含有量では、合金の靭性がさらに低い水準にまで低下した。その上、本発明による銅−ニッケル−スズ合金の耐食性は悪化した。好適には、本発明に、0.1から1.5重量%の範囲の亜鉛含有量を添加してよい。
選択的に、本発明による銅−ニッケル−スズ合金は、不純物範囲を超える、最大0.25重量%までの少ない鉛含分を有してよい。本発明の特に有利で好適な実施態様では、前記銅−ニッケル−スズ合金は、実際の環境基準に合うように、場合により含まれる不可避な不純物の他には鉛を含有しない。この関係で、鉛含有量は最大Pb0.1重量%までが考えられる。
ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相、ならびにリン珪酸塩の形成は、本発明による合金の組織中の空洞や亀裂の含有量を著しく減少させるだけではない。これらの珪酸塩系相は、部品上で摩耗防止性および腐食防止性被覆の役目も果たしている。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金からなる部品の凝着摩耗負荷の間、合金元素のスズは、摺動部材間のいわゆる摩擦層を形成するのに特に寄与する。特に混合摩擦条件下では、このメカニズムは、材料の耐ゴーリング性を前面に強く押し出す場合に重要である。前記摩擦層により、摺動部材間の純粋に金属製の接触面は小さくなり、それにより、部材の溶接または摺動腐食が防止される。
最新のエンジン、機械およびユニットの効率を上げることにより、ますます高い動作圧力および動作温度が生じる。これは特に、燃料の常時完全燃焼を目指している新開発の内燃機関で見られる。内燃機関の空間内の高い温度に加えて、さらに、滑り軸受系統の動作の間に生じる発熱が見られる。軸受動作中の高い温度によって、本発明による合金からなる部分では、鋳造の場合および熱間加工の場合と似たような、ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相ならびにリン珪酸塩の形成が行なわれる。これらの化合物は、さらに、主に合金元素のスズに基づいて形成される前記摩擦層を強化し、それにより本発明による合金からなる摺動部材の耐凝着摩耗性が高まる結果となる。
したがって、本発明による合金は、耐摩耗性および耐食性という特性の組み合わせを保証する。この特性の組み合わせによって、滑り摩耗のメカニズムに対する、要求に即した高い抵抗力と、摩擦腐食に対する高い材料抵抗が生じる。このようにして、本発明は滑り摩耗および振動摩擦摩耗、いわゆるフレッティング、に対して高度な耐性を有するので、摺動部材および差し込みコネクタとして使用するのに著しく適している。
滑り摩耗のアブレシブおよび凝着メカニズムに対する本発明の耐性を高めるために第3級硬質粒子の寄与が重要であることの他に、第3級硬質粒子は耐振動性の上昇に決定的に寄与する。第3級硬質粒子は、第2級硬質粒子と共に、特に振動摩擦摩耗、いわゆるフレッティングの際に、負荷された部品に入るかもしれない疲労亀裂の拡大に対する障害物となる。したがって、第2級および第3級硬質粒子は、特に、振動摩擦摩耗、いわゆるフレッティングに対する本発明による合金の耐性を高めることに関して、ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成されたSi含有およびB含有相ならびにリン珪酸塩の摩耗防止性および腐食防止性作用を補う。
耐熱性および耐応力緩和特性は、比較的高い温度が生じる用途に使用される合金の別の基本的な特性に属する。十分高い耐熱性および耐応力緩和特性を保証するために、微細な析出物の密度が高いことが好適であるとみなされる。このような析出物は、本発明による合金では、第3級硬質粒子ならびに(Cu、Ni)−Sn系連続析出物である。
広い範囲で空洞がなく、亀裂がなく、偏析がなく、第1級硬質粒子を含有する均一な微粒子状の組織により、本発明による合金は、鋳造状態ですでに、高度な強度、硬度、延性、複合的な耐摩耗性および耐食性を有する。この特性の組み合わせにより、すでに鋳造形態から、摺動部材およびガイド部材を製造することができる。本発明の鋳造状態は、さらに、計器類ケース、ならびにウォータポンプ、オイルポンプおよびフューエルポンプのケーシングの製造に使用することができる。その上、本発明による合金は、船舶製造用プロペラ、翼、船舶スクリューおよびハブのために使用可能である。
特に強い複合的および/または動的な部品負荷を有する使用分野に対しては、本発明のさらなる加工を施した状態を使用することができる。
本発明による銅−ニッケル−スズ合金の優れた強度特性および耐摩耗性ならびに耐食性により、他の使用可能性が考えられる。つまり、本発明は、海水で生存する生物の飼育(水産養殖)用構造物における金属製物品に適している。さらに、本発明から、海洋および化学産業において必要とされるパイプ、ガスケットおよび結合ボルトを製造することができる。
本発明による合金を打楽器の製造に使用するために、材料は大変重要である。特に、高い品質のドラ(英語でシンバル)は、今まで、だいたい鐘状物あるいは鉢状物を用いて最終形状にする前に、大抵はスズ含有銅合金から熱間加工および少なくとも1回の焼鈍によって製造されている。引き続き、シンバルは、切削による最終加工が行なわれる前に、再度焼鈍される。様々なシンバル(例えばライド・シンバル、ハイハット、クラッシュ・シンバル、チャイナ・シンバル、スプラッシュ・シンバルおよびエフェクト・シンバル)のタイプを製造するには、したがって、本発明による合金により保証されている、材料の特別好適な熱間加工性が必要である。本発明の化学組成の範囲内では、金属性基質および異なる硬質粒子の相の様々な組織割合を大変広い範囲で調整することができる。このように、シンバルの響き方に影響を及ぼすことは、合金側ですでに可能である。
特に複合滑り軸受を製造するためには、接合方法を使用して複合相手材上に塗着するために本発明を使用することができる。つまり、170から880℃の温度範囲において少なくとも1回の焼鈍を選択的に実施することを含む、鍛造、はんだ付けまたは溶接を用いて、本発明のディスク、プレートあるいはテープと、好ましくは調質鋼からなる鋼円筒あるいは鋼テープとの間で複合物を製造することが可能である。同様に、例えば軸受−複合シェルまたは軸受−複合ブッシュを、同様に170から880℃の温度範囲において少なくとも1回の焼鈍を選択的に実施することを含む、圧延被覆、誘導または伝導圧延被覆によって、またはレーザ圧延被覆によって製造することができる。
本発明による合金の組織形成によって、軸受−複合シェルまたは軸受−複合ブッシュのような複合摺動部材製造の別の可能性が生じる。つまり、本発明からなる基体上に溶融スズめっきまたは電気スズめっき、スパッタまたはPVD法あるいはCVD法を用いて、スズあるいはSnを多く含む材料からなる被膜を塗着させて、軸受動作時に滑り層として使用することが可能である。
このように、軸受−複合シェルまたは軸受−複合ブッシュのような高性能の複合摺動部材を、鋼からなる軸受背面、本発明による合金からなる本来の軸受およびスズまたはSnを多く含む被膜からなる滑り層を有する三層システムとして製造することもできる。この多層システムは、特に好適には滑り軸受の適合性および挿入性に効果をもたらし、かつ、異物粒子および研磨粒子の埋入性を改善し、その際、熱によりまたは熱機械的に滑り軸受が負荷されても、個々の層の境界範囲の空洞形成および亀裂形成によって層複合システムが解消されることにより損傷が起こる、ということはない。
特に強度、ばね特性および耐応力緩和特性に関する銅−ニッケル−スズ材料の大きな潜在能力は、本発明による合金を使用することにより、電子工学および電気工学におけるスズめっきされた部材、配線部材、ガイド部材および結合部材の使用分野にも利用することができる。つまり、本発明の組織により、本発明による合金とスズめっきとの間の境界範囲における空洞形成および亀裂形成の損傷メカニズムを高い温度でも少なくすることができ、それにより、部材の電気接触抵抗の増加とスズめっきの剥離が阻止される。
Ni含有量およびSn含有量がそれぞれ約10重量%までの従来の銅−ニッケル−スズ展伸用合金からなる半製品および部品の機械的な加工は、その機械加工性が不十分なので、大きな費用をかけた場合のみ可能である。つまり、特に、長いコイル状チップが発生すると、機械の加工範囲からこれらのチップをまず手で除去しなくてはならないので、機械の停止時間が長くなる原因となる。
それに対して、本発明による合金では、様々な硬質粒子がチップブレーカとして用いられる。そのように生じる短い細砕チップおよび/またはスレッドチップは機械加工性を容易にするので、本発明による合金の鋳造状態およびさらなる加工を施された状態からなる半製品および部品は改善された機械加工性を有する。
400℃で時効処理した後の参考材料Rの組織 400℃で時効処理した後の参考材料Rの組織 450℃で時効処理した後の実施例Aの組織 450℃で時効処理した後の実施例Aの組織 450℃で時効処理した後の実施例Aの組織 450℃で時効処理した後の実施例Aの組織 400℃で時効処理した後の実施例Aの組織 400℃で時効処理した後の実施例Aの組織
本発明の重要な実施例を、表1から12によって説明する。本発明による銅−ニッケル−スズ合金(実施例A)ならびに参考材料Rの鋳造プレートを連続鋳造により製造した。さらに、実施例BおよびCから寸法が(92×72)mmのパイプの連続鋳造を行なった。鋳物の化学組成は、表1から明らかである。
実施例AからCは、5.48から6.15重量%のNi含有量、4.94から5.76重量%のSn含有量、0.079から0.22重量%のFe含有量、0.26から0.31重量%のSi含有量、0.14から0.20重量%のB含有量、0.048から0.072重量%のP含有量ならびに残部銅を特徴としている。参考材料Rは、従来技術に相当する、従来の銅−ニッケル−スズ合金に属している。これは、5.78重量%のNi含有量、5.75重量%のSn含有量、約0.032重量%のP含有量および残部銅を有する。
Figure 2019524985
参考材料Rの連続鋳造プレートの組織は、特に粒界に、ブローホールおよび引け巣ならびにSnを多く含む偏析を有する。
参考材料Rとは反対に、実施例AからCの連続鋳造物は、結晶核の作用により、均一に凝固した、空洞や偏析のない組織を有する。
実施例Aの鋳造状態の金属性基質は、化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(h+k)/mが2から6である島状に混在する第1の相成分を組織全体に対して約10から15体積%有する銅固溶体からなる。比(h+k)/mが3.4および4である化合物CuNi14Sn23およびCuNiSn20を検出することができた。その上、金属性基質には、化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(p+r)/sが10から15である第2の相成分が組織全体に対して約5から10体積%島状に混在している。比(p+r)/sが11.5および13.3である化合物CuNiSnおよびCuNiSnが検出された。金属性基質中のこれら第1および第2の相成分は、主に結晶核の範囲で結晶化し、これらを覆う。
実施例Aの鋳造状態の第1級硬質粒子を分析すると、Si含有およびB含有相の代表としての化合物SiB、Ni−Siホウ化物の代表としてのNiSiB、Niホウ化物の代表としてのNiB、Feホウ化物の代表としてのFeB、Niリン化物の代表としてのNiP、Feリン化物の代表としてのFeP、Ni珪化物の代表としてのNiSi、ならびにFeを多く含む粒子が、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として組織中に存在することが示された。加えて、これらの硬質粒子は、金属性基質のスズおよび/または第1の相成分および/または第2の相成分に覆われている。
実施例AからCの鋳造プロセスの間、最初の鋳造粒中に、下部構造が形成された。これらの下部粒子は、本発明の実施例AからCの鋳造組織中、10μm未満の粒径を有する。下部粒子構造と、本発明の実施例AからCの組織中に析出した硬質粒子により、実施例の鋳造状態の硬度HBは明らかにRの連続鋳造物の硬度より高い(表2)。
Figure 2019524985
表2には同様に、330、400および470℃で3時間時効処理した合金AからCおよびRの連続鋳造物において得られた硬度値が表示されている。参考材料Rにおける94から145HBへの硬度上昇が結果として最も大きい。この硬化は、特に、組織中のSnを多く含む相の偏析形成が熱により活発になったことに起因する。スズを多く含む相成分は、実施例AからCの組織中、硬質粒子の範囲で明らかにより微細に析出する。この理由から、合金Aを400℃で時効処理した状態の硬度は169から173HBへとわずかに上昇するだけである。実施例Cの硬度HBも、時効処理によって156から178へと、あまり顕著には上昇しない。
本発明の目的は、硬質粒子の投入にもかかわらず従来の銅−ニッケル−スズ合金の良好な冷間加工性を維持することである。この目的の達成度を検証するために、合金AおよびRの連続鋳造プレートを用いた表3に記載の製造プログラム1を実施した。この製造プログラムは、冷間加工および焼鈍からなるサイクルからなり、それぞれ最大可能な冷間加工度で冷間圧延工程を行なった。
実施例Aの鋳造状態の硬度が高いので、これを740℃の温度で2時間の期間で焼鈍し、その後、水中で冷却を加速した。これにより、強度および硬度に関して鋳造状態AおよびRの特性を適合させた。
実施例Aで達成された、57および91%という冷間加工度εにより、本発明による合金が、硬質粒子を含んでいるにもかかわらず、従来の銅−ニッケル−スズ合金Rの変形特性に達しており、それどころか勝っているかもしれないことが、強調されている。
Snを多く含む偏析の形成に関する参考材料Rの感温性は、両方の冷間加工工程の間の焼鈍の際にも現れた(表3、No.4)。この理由から、冷間圧延した合金Aのプレートの中間焼鈍に使用した740℃の焼鈍温度は、Rのためには690℃まで下げなくてはならなかった。
Figure 2019524985
製造プログラム1を実施した後、最後の冷間圧延の後および時効処理を行なった後の材料AとRのテープの特性値を求めた。これを表4に挙げる。
実施例Aの冷間圧延したテープおよび300℃で時効処理したテープの強度と硬度は、参考材料Rのテープのそれぞれの特性よりも高いことが明らかである。
硬質粒子の含有量が高いために、約400℃の温度から、合金Aの組織の再結晶化が起こる。この再結晶化が強度と硬度の低下につながるので、析出硬化およびスピノーダル分解の作用は使用できない。参考材料Rでは450℃まで組織の再結晶は観察されないので、R、Rp0.2の値ならびに特に400℃での時効処理後の硬度の値は、Rでは実施例Aよりも高い。
さらなる加工を施した実施例Aの組織では、450℃の時効処理後、第2級硬質粒子が含有されている(図3中、3で表記)。
さらに、さらなる加工を施した合金Aの組織には他の相が析出した。これには、図3中、4で表記した(Cu、Ni)−Sn系連続析出物ならびに第3級硬質粒子が含まれる。
さらなる加工を施した本発明による合金では、第3級硬質粒子の大きさが3μm未満であることが特徴である。これは、さらなる加工を施した本発明の実施例Aでは、450℃の時効処理後、1μm未満である(図4中、5で表記)。
Figure 2019524985
個々の合金の特性に及ぼす冷間加工性および再結晶温度の影響を減らすために、別の製造プログラムを実施した。この製造プログラム2は、材料AおよびRの連続鋳造プレートを冷間加工および焼鈍を用いてテープに加工し、その際、冷間加工度および焼鈍温度についてそれぞれ同一のパラメータを使用する目的で行なわれた(表5)。
実施例Aの鋳造状態の硬度が高いので、これを再び最初の冷間圧延工程の前に740℃の温度で2時間の期間で焼鈍し、その後、水中で冷却を加速した。これにより、製造プログラム1の場合と同様に、強度および硬度に関して鋳造状態AおよびRの特性を適合させた。
Figure 2019524985
3.0mmの最終厚さにする最後の冷間圧延工程の後、合金Aのテープは最も高い強度値および硬度値を有する(表6)。
400℃で3時間の時効処理により、組織のスピノーダル分解によって、合金Rで強度R(498から717MPa)およびRp0.2(439から649MPa)ならびに硬度HB(166から230MPa)の上昇が最も明らかである。とはいえ、時効処理した状態の合金Rの組織は、極めて不均一で、5から30μmの間の粒径を有する。その上、時効処理した状態の参考材料Rの組織は、不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物に特徴がある(図1および図2中、1で表記)。さらなる加工を施された状態の参考材料Rの組織には、さらにNiリン化物が含まれている(図1および図2中、2で表記)。
それに対し、時効処理した本発明の実施例Aのテープの組織は、2から8μmの粒径を有し、大変均一である。その上、実施例Aの構造には、450℃で3時間時効処理し、引き続き空気で冷却した後も、不連続な析出物はない。それに対し、組織には、第2級硬質粒子が検出可能である。この相は、図5および図6中、3で表記されている。
さらに、さらなる加工を施した合金Aの組織には他の相が析出した。これには、図5中、4で表記した(Cu、Ni)−Sn系連続析出物ならびに第3級硬質粒子が含まれる。さらなる加工を施した本発明の実施例Aでは、第3級硬質粒子の大きさは、450℃の時効処理後、1μm未満である(図6中、5で表記)。
合金Aのテープの強度RおよびRp0.2は、400℃/3h/空気での時効処理後、組織のスピノーダル分解によって、690および618MPaの値をとる。したがって、RおよびRp0.2は、相当の時効処理をした合金Rの状態の特性値よりも低い。これは、実施例Aでは、組織の強度を上げるスピノーダル分解のための、硬質粒子と結び付いているNiが含有されていないことが理由である。必要な場合にRの強度水準が要求されるならば、本発明による合金に合金元素のニッケルを比較的高い割合で添加することが可能である。
Figure 2019524985
次の工程は、合金AおよびRの連続鋳造物の熱間加工性の試験を含む。これについて、鋳造プレートを720℃の温度で熱間圧延する(表7)。他の冷間加工および中間焼鈍の工程については、製造プログラム2のパラメータを踏襲した。
Figure 2019524985
参考合金Rの鋳造プレートの熱間圧延の間、プレートがわずかに通過した後すでに深い熱亀裂が生じ、これがプレートを破壊させて使用不能にした。
それに対し、本発明の実施例Aの鋳造プレートは、損傷なく熱間圧延することができ、複数の冷間圧延工程および焼鈍工程の後に3.0mmの最終厚さに製造することができた。時効処理したテープの特性(表8)は、熱間加工しないで製造プログラム2を用いて製造したテープの特性(表6)と広範囲で一致する。
熱間加工工程を行なわずに、および、熱間加工工程を行なって製造した本発明による合金の実施例Aからなるテープの組織も同様に比較可能である。つまり、図7および図8からは、熱間加工工程および引き続き400℃/3h/空気冷却の時効処理で製造された実施例Aからなるテープの均一な構造が明らかである。図7および図8には、また、3で表記された第2級硬質粒子が見られる。
さらに、図7からは、4で表記された(Cu、Ni)−Sn系連続析出物ならびに第3級硬質粒子が明らかである。実施例Aのさらなる加工を施した形態の組織中、第3級硬質粒子は、1μm未満の大きさを有する(図8中、5で表記)。
このさらなる加工を施した実施例Aの状態における第2級および第3級硬質粒子を分析すると、Si含有およびB含有相の代表としての化合物SiB、Ni−Siホウ化物の代表としてのNiSiB、Niホウ化物の代表としてのNiB、Feホウ化物の代表としてのFeB、Niリン化物の代表としてのNiP、Feリン化物の代表としてのFeP、Ni珪化物の代表としてのNiSi、ならびにFeを多く含む粒子が単独でおよび付加化合物および/または混合化合物として組織中に存在することが示された。加えて、これらの硬質粒子は、(Cu、Ni)−Sn系析出物に覆われている。
Figure 2019524985
これに続く実験段階は、さらに高い780℃の熱間圧延温度における本発明の実施例Aの熱間加工挙動の試験を含む。その上、製造プログラム3の冷間圧延/焼鈍サイクルの数を減らす目的があった。この方法により、熱間圧延された合金Aのテープ状態の冷間加工性の検査が可能になった。製造プログラム4の個別の工程は、表9から明らかである。
Figure 2019524985
前記のさらに高い熱間圧延温度でも、合金Aの連続鋳造プレートは優れた熱間加工性を示した。熱間圧延されたプレートは、その上、84%という極めて高い冷間加工度εで問題なく冷間圧延することができた。この時効処理結果を前述の製造プログラム3の結果と比較できるようにするために、690℃での再結晶焼鈍の後に最後の冷間圧延工程を14%という同じ冷間加工度εで行なった。
350から500℃の温度範囲でテープを時効処理した後、この大変均一な組織の粒径は5から10μmである(表10)。特に400℃の時効処理温度では、本発明による合金の組織のスピノーダル分解により、強度および硬度が顕著に上昇する。つまり、引張強度Rが、冷間圧延した状態では557MPaであるが、時効処理した状態では692MPaまで増加している。硬度HBも177から210に上昇している。
Figure 2019524985
設備、機器、エンジンおよび機械の製造では、数多く適用するために、比較的大きな寸法の部材が必要となる。例えば、このことは滑り軸受の分野にしばしば当てはまる。対応する部品の製造には、対応して大きな形状の前駆材料が要求される。したがって、任意の大きさの鋳造部品の製造可能性が限られるので、求められる材料特性を小さい冷間加工度でも出来るだけ調整する必要がある。
表11には、製造プログラム5で使用した工程が列挙されている。製造は、冷間加工と焼鈍とからなるサイクルにより行なわれた。また、合金Aの鋳造プレートだけを最初の冷間圧延の前に、740℃で焼鈍した。
合金Rの鋳造プレートおよび合金Aの焼鈍した鋳造プレートの最初の冷間圧延を、16%の加工度εで実施した。690℃で焼鈍した後、冷間圧延を12%のεで行なった。最後に、350、400および450℃の温度でテープの時効処理を行なった。
Figure 2019524985
ε=16%の最初の冷間圧延工程のわずかな冷間加工では、後続の690℃での焼鈍と合わせて参考材料Rの樹枝状で粗粒子状の組織を取り除くには十分ではなかった。その上、この熱機械的な処理により、Snを多く含む偏析による合金Rの粒界の被覆が強化された。
樹枝状構造に沿って、ならびにSnを多く含む偏析により被覆されたRの粒界に沿って、2番目の冷間圧延工程の間に、表面からテープ内部まで深く延びる亀裂が生じた。
実施例Aのテープの亀裂のない均一な組織は、第2級および第3級硬質粒子の配置に特徴がある。前述の製造プログラムの後と同様に、この製造プログラム5の後でも第3級硬質粒子は1μm未満の大きさを有する。
最後の冷間圧延の後および時効処理の後に得られたテープの特性を表12に記載している。亀裂の密度が高かったせいで、材料Rのテープから損傷のない引張試料を取り出すことは不可能であった。したがって、これらのテープでは金属組織の検査と硬度の測定のみが実施できた。
実施例Aは、組織の析出硬化とスピノーダル分解のメカニズムが共同作用することにより現れる高度な時効処理能を有する。つまり、RとRp0.2の特性値は、400℃の時効処理により、518から633MPaへ、および451から575MPaへ上昇している。
Figure 2019524985
結果として、化学組成、冷間加工の加工度の変化により、ならびに時効処理条件の変化により、本発明の組織の析出硬化の程度およびスピノーダル分解の程度を求められる材料特性に適合させることが可能であると説明することができる。このように、本発明による合金の特に強度、硬度、延性ならびに導電性を予め決めた使用分野に合わせて調整することが可能である。
1 不連続な(Cu、Ni)−Sn系析出物
2 Niリン化物
3 第2級硬質粒子
4 (Cu、Ni)−Sn系連続析出物ならびに第3級硬質粒子
5 第3級硬質粒子

Claims (19)

  1. (重量%で)以下の成分:
    Ni 2.0から10.0%まで、
    Sn 2.0から10.0%まで、
    Si 0.01から1.5%まで、
    Fe 0.01から1.0%まで、
    B 0.002から0.45%まで、
    P 0.001から0.15%まで、
    選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、
    選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、
    選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、
    残部銅および不可避な不純物
    からなる、
    鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、
    ‐元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;
    ‐前記銅−ニッケル−スズ合金は、合金の加工特性および使用特性を著しく改善するSi含有およびB含有相ならびにNi−Si−B、Ni−B、Fe−B、Ni−P、Fe−P、Ni−Si系の相および他のFe含有相を有する
    ことを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金。
  2. (重量%で)以下の成分:
    Ni 2.0から10.0%まで、
    Sn 2.0から10.0%まで、
    Si 0.01から1.5%まで、
    Fe 0.01から1.0%まで、
    B 0.002から0.45%まで、
    P 0.001から0.15%まで、
    選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、
    選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、
    選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、
    残部銅および不可避な不純物
    からなる、
    鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、
    ‐元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;
    ‐鋳造後、前記合金中には以下の組織成分:
    a)組織全体に対して、
    a1)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(h+k)/mが2から6である第1の相成分 30体積%まで、
    a2)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(p+r)/sが10から15である第2の相成分 20体積%まで、および
    a3)銅固溶体の残部
    を有するSi含有およびP含有金属性基質;
    b)組織全体に対して、
    b1)Si含有およびB含有相として0.01から10体積%で、
    b2)化学式NiSiB(式中、x=4から6)を有するNi−Siホウ化物として1から15体積%で、
    b3)Niホウ化物として1から15体積%で、
    b4)Feホウ化物として0.1から5体積%で、
    b5)Niリン化物として1から5体積%で、
    b6)Feリン化物として0.1から5体積%で、
    b7)Ni珪化物として1から5体積%で、
    b8)Fe珪化物および/またはFeを多く含む粒子として0.1から5体積%で、
    前記組織中に含有されており、これらが単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し、スズおよび/または前記第1の相成分および/または前記第2の相成分により覆われている相
    が存在し;
    ‐鋳造の際、ホウ化珪素として形成された前記Si含有およびB含有相、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在する前記Ni−Siホウ化物、Niホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子は、溶融物の凝固/冷却の間の均一な結晶化のための核をなし、それにより前記第1の相成分および/または前記第2の相成分は島状および/または網状に組織中に均一に分布しており;
    ‐ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成された前記Si含有およびB含有相は、リン珪酸塩と一緒に、前記合金の半製品および部品上で摩耗防止性および腐食防止性被覆の役目を果たしている
    ことを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金。
  3. (重量%で)以下の成分:
    Ni 2.0から10.0%まで、
    Sn 2.0から10.0%まで、
    Si 0.01から1.5%まで、
    Fe 0.01から1.0%まで、
    B 0.002から0.45%まで、
    P 0.001から0.15%まで、
    選択的に、さらにCo 最大2.0%まで、
    選択的に、さらにZn 最大2.0%まで、
    選択的に、さらにPb 最大0.25%まで、
    残部銅および不可避な不純物
    からなる、
    鋳造性、熱間加工性および冷間加工性に優れ、アブレシブ摩耗、凝着摩耗およびフレッティング摩耗に対する耐性が高く、ならびに耐食性および耐応力緩和特性が改善された高強度銅−ニッケル−スズ合金において、
    ‐元素の珪素およびホウ素の重量%で示された元素含有量の比Si/Bが最小で0.4および最大で8であり;
    ‐少なくとも1回の焼鈍による、あるいは少なくとも1回の焼鈍と共に少なくとも1回の熱間加工および/または冷間加工による前記合金のさらなる加工後、前記合金中には以下の組織成分:
    A)組織全体に対して、
    A1)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(h+k)/mが2から6である第1の相成分 15体積%まで、
    A2)化学式CuNiSnで記載でき、かつ原子%で示された元素含有量の比(p+r)/sが10から15である第2の相成分 10体積%まで、
    A3)銅固溶体の残部
    を有する金属性基質;
    B)組織全体に対して、
    B1)単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し、(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われているSi含有およびB含有相、化学式NiSiB(式中、x=4から6)を有するNi−Siホウ化物、Niホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物として、ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子として2から35体積%で前記組織中に含有されており、
    B2)(Cu、Ni)−Sn系連続析出物として80体積%まで前記組織中に含有されており、
    B3)単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在し、(Cu、Ni)−Sn系析出物により覆われており、かつ3μmより小さい大きさを有するNiリン化物、Feリン化物、Ni珪化物として、ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子として2から35体積%で前記組織中に含有されている

    が存在し;
    ‐ホウ化珪素として形成された前記Si含有およびB含有相、単独でおよび/または付加化合物および/または混合化合物として存在する前記Ni−Siホウ化物、Niホウ化物、Feホウ化物、Niリン化物、Feリン化物、Ni珪化物ならびにFe珪化物および/またはFeを多く含む粒子は、合金の前記さらなる加工の間の組織の静的および動的再結晶のための核をなし、それにより均一で微粒子状の組織の調整が可能になり;
    ‐ホウ珪酸塩および/またはホウリン珪酸塩として形成された前記Si含有およびB含有相は、リン珪酸塩と一緒に、前記合金の半製品および部品上で摩耗防止性および腐食防止性被覆の役目を果たしている
    ことを特徴とする、高強度銅−ニッケル−スズ合金。
  4. それぞれ3.0から9.0%までの元素のニッケルおよびスズが含まれていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金。
  5. 0.05から0.9%までの元素の珪素が含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金。
  6. 0.02から0.6%までの元素の鉄が含まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金。
  7. 0.01から0.4%までの元素のホウ素が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金。
  8. 0.01から0.15%までの元素のリンが含まれていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金。
  9. 前記合金は、場合により含まれる不可避な不純物の他には鉛を含まないことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金から、砂型鋳造法、シェルモールド鋳造法、精密鋳造法、フルモールド鋳造法、ダイカスト法あるいはロスト・フォーム法を用いて最終製品または最終製品に近い形の部品を製造する方法。
  11. 請求項1から9までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金から、チル鋳造法あるいは連続または半連続鋳造法を用いてテープ、薄板、ディスク、ボルト、丸形ワイヤ、異形ワイヤ、丸形バー、異形バー、中空バー、パイプおよび異形材を製造する方法。
  12. 鋳造状態のさらなる加工が、600から880℃の温度範囲における少なくとも1回の熱間加工の実施を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  13. 170から880℃の温度範囲において10分から6時間の期間で少なくとも1回の焼鈍処理が実施されることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
  14. 鋳造状態あるいは熱間加工された状態あるいは焼鈍された鋳造状態あるいは焼鈍された熱間加工された状態のさらなる加工が、少なくとも1回の冷間加工の実施を含むことを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
  15. 170から880℃の温度範囲において10分から6時間の期間で少なくとも1回の焼鈍処理が実施されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
  16. 170から550℃の温度範囲において0.5から8時間の期間で応力除去焼鈍/時効熱処理が実施されることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
  17. 調節ストリップおよび摺動ストリップのための、フリクションリングおよびフリクションディスクのための、内燃機関、バルブ、ターボチャージャー、変速機、排ガス後処理装置、レバー系統、ブレーキ系統および連結系統、油圧式ユニットにおけるあるいは一般的な機械製造の機械および装置における摺動部材およびガイド部材のための、請求項1から9までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金の使用法。
  18. 電子工学/電気工学における構成部材、配線部材、ガイド部材および連結部材のための、請求項1から9までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金の使用法。
  19. 海水で生存する生物の飼育における金属製物品のための、打楽器のための、船舶製造用プロペラ、翼、船舶スクリューおよびハブのための、ウォータポンプ、オイルポンプおよびフューエルポンプのケーシングのための、ポンプおよび水力タービン用ステータ、ロータおよび羽根車のための、歯車、ウォームギア、ヘリカルギア、圧力ナットおよびスピンドルナットのための、ならびに海洋および化学産業におけるパイプ、ガスケットおよび結合ボルトのための、請求項1から9までのいずれか1項に記載の銅−ニッケル−スズ合金の使用法。
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