詳細な説明
本開示は、RA患者からの試料中の抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(抗PAD4)自己抗体の存在または非存在をバイオマーカーとして使用して、適切な治療過程、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体アルファ(GM−CSFRα)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与するか否か、を決定することに関する。したがって、本開示は、患者を診断するための方法、患者を(例えば、マブリリムマブなどの抗体を用いて)治療する方法、(例えば、マブリリムマブなどの抗体を用いて)治療する患者を選択もしくは非選択する、特定の治療(例えば、マブリリムマブ)を選択する、一時的もしくは永続的に治療を中断する、患者の予後を判定する、または治療の効果をモニターする方法を提供し、これらの方法は、抗PAD4自己抗体の存在または非存在を決定すること、及び/または患者から採取した試料中の抗PAD4自己抗体のレベルを定量することを含む。特定の実施形態において、抗PAD4の存在または非存在は、本明細書に教示されるアッセイを用いて決定される。
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明の全体を通して説明される。
I.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」及び「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。用語「一つ(a)(または一つ(an))」並びに、「一つ以上」及び「少なくとも一つの」は、本明細書では交換可能に使用することができる。
さらに、本明細書で使用される「及び/または」は、二つの特定された特徴または構成要素のそれぞれが、他の特定された特徴または構成要素を有するか否かの具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書中の「A及び/またはB」のような語句で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むことが意図されている。同様に、「A、B及び/またはC」のような語句で使用される「及び/または」という用語は、以下の態様のそれぞれを包含するように意図されている:A、B及びC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);C(単独)。
用語「含む」を用いて本明細書に記載されているいかなる態様も、「からなる」及び/または「から本質的になる」という用語で記載された他の類似の態様もまた提供される。
本明細書及び特許請求の範囲を通じて数値と関連して使用される「約」という用語は、当業者によく知られていて許容される精度の間隔を示す。一般に、そのような精度の間隔は±15%である。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei− Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示において使用される一般的な辞書の多くの用語を当業者に提供する。
単位、接頭辞、及び記号は、Systeme International de Unites(SI)に受け入れられる形式で示される。数値範囲は、範囲を定義する数字を含む。別途の表示がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの向きで左から右に書かれている。本明細書で提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって得ることができる本開示の態様または様々な態様の限定ではない。したがって、すぐ下に定義された用語は、明細書全体を参照することにより完全に定義される。
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、例えば、B細胞によって産生される典型的な抗体との関連で、抗原、少なくとも重鎖(VH)の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメイン(VL)に結合することができる抗体の少なくとも最小部分を指す。脊椎動物系における基本的な抗体構造は比較的よく理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)を参照されたい。抗体またはその抗原結合性断片、変異体または誘導体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えばFab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生された断片を含むが、これらに限定されない。ScFv分子は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。本開示に包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリンのサブクラスまたは任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)であり得る。したがって、「抗体」という用語のこの定義がマブリリムマブのような抗体への参照は、マブリリムマブ抗体及びその抗原結合性断片、変異体及び誘導体を指す。
「特異的に結合する」とは、概して、その抗体またはその断片、変異体または誘導体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及びその結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間にいくらかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、抗体は、抗原結合ドメインを介してそのエピトープに、ランダムに、関連性のないエピトープに結合するよりも容易に結合するとき、エピトープに「特異的に結合する」と言われる。
抗体またはその抗原結合性断片、変異体または誘導体は、参照抗体または抗原結合性断片のエピトープへの結合をある程度阻害する程度まで、そのエピトープに優先的に結合する場合には、参照抗体または抗原結合性断片が所与のエピトープに結合するのを競合的に阻害すると言われている。競合的阻害は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば競合ELISAアッセイによって決定することができる。結合分子は、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%まで、所与のエピトープへの参照抗体または抗原結合性断片の結合を競合的に阻害するといえる。
本明細書で開示される抗体またはその抗原結合性断片、変異体または誘導体は、抗原のエピトープまたは部分(例えば、それらが認識または特異的に結合する標的多糖類)に関して記載または特定することができる。例えば、抗GM−CSFR抗体(例えば、マブリリムマブ)の抗原結合ドメインと特異的に相互作用するGM−CSFRの部分は、「エピトープ」である。
本明細書で使用される用語「自己抗体」(例えば、抗PAD4自己抗体を指す)は、対象の免疫系によって産生され、自己抗原に対して指向される抗体を指す。自己抗体は、自己の細胞、組織、及び/または器官を攻撃し、炎症及び損傷を引き起こす可能性がある。本明細書で使用される「自己抗原」という用語は、自己免疫反応におけるように、対象の体内で自己抗体の産生を刺激する内因性抗原(例えば、PAD4)またはその活性断片を指す。この用語はまた、対象または対象から得られる生物学的試料中に存在する自己抗体と抗原−抗体複合体を形成し得る任意の物質を包含する。
「治療」という用語は、本明細書では、疾患または状態(例えば、RA)の発症を遅延または防止すること、状態の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止させること、状態の症状または改善をもたらすこと、及び/または該状態を治癒することを目的とする方法を特徴付けるために使用される。予防的または防止的処置のために、疾患の発症前に治療を施すことができる。それは、治療作用のために、疾患の開始後に投与されてもよい。
本明細書中で使用される「対象」または「患者」という用語は、RAの診断、予後または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を指す。本明細書中で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、クマ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳動物などの全ての脊椎動物が含まれる。
本明細書中で使用される場合、「関節リウマチ炎患者」または「RA患者」のような語句は、RAの治療、診断処置または予防処置の投与から利益を得る哺乳動物対象などの対象を含む。いくつかの態様では、「RA患者」という用語は、RA(例えば、関節の痛み、硬直または腫脹)を示す一つ以上の症状を示す対象、またはRAについてスクリーニングされる対象(例えば、身体検査中)を指す。代替的または追加的に、用語「RA患者」は、RAを有する疑いのある対象または一つまたは複数の危険因子(例えば、年齢、性別、家族歴、喫煙など)を有し得る対象を包含する。この用語は、RAについて試験されていない対象及び初期診断を受けた対象を包含する。
本開示のいくつかの態様では、対象はナイーブな対象である。ナイーブ対象は、RA療法、例えばDMARDのような治療薬を投与されていない対象である。いくつかの態様では、ナイーブ対象は、RAと診断される前に治療薬で治療されていない。別の態様において、対象は、RAを有すると診断される前に、治療及び/または一つ以上の用量の治療剤(例えば、DMARD)を受けている。治療剤は、小分子薬物、抗体、融合タンパク質、コルチコステロイド、NSAID(例えば、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、DMARD(例えば、メトトレキセート、レフルノミド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、シクロスポリン、D−ペニシラミン、スルファサラジン、ミノサイクリンなど)、生物学的物質(例えば、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セツリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、トファシチニブ、またはメブラリムナブ)、またはそれらの組み合わせであり得る。
一態様では、本明細書に開示される方法に従って使用される治療剤は、抗体、例えばマブリリムマブなどの抗GM−CSFRα抗体である。したがって、いくつかの態様では、対象は、抗体(例えば、マリブリムマブ)の少なくとも一つの治療的に有効な用量を投与されたことがあるか、またはそれを投与される候補である。対象の抗PAD4レベルが所定の抗PAD4閾値レベルを下回る場合、または抗PAD4自己抗体が存在しないかもしくはそれらのレベルが一つもしくは複数の対照試料における抗PAD4レベルと比較して低い場合、対象は、少なくとも一つの治療上有効な用量の抗GM−CSFRα抗体を投与され得る。また、対象の抗PAD4自己抗体レベルが所定の抗PAD4自己抗体閾値レベルを下回る場合、または抗PAD4自己抗体が存在しないかもしくはそれらのレベルが一つもしくは複数の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して低い場合、対象は、本明細書中に開示される抗GM−CSFRα抗体の少なくとも一つの治療上有効な用量を投与されるのに適格であるとみなされ得る。
いくつかの態様では、抗PAD4自己抗体の存在または非存在は、使用されるアッセイの定量下限(LLOQ)に基づく。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるアッセイが教示される。生物分析のパラメータである「定量下限」または「LLOQ」は、「適切な正確さ及び精度で定量的に測定できる試料中の分析物の最低量」として定義される(FDA.:Guidance for Industry,Bioanalytical Method Validation,May 2001)。
対象に適用される場合の用語「正常」及び「健康な」は、本明細書では交換可能に使用される。それらは、RA症状を示さず、RAまたは軟骨または骨損傷と診断されていない対象を指す。好ましくは、正常な対象は、RAに影響を与える薬物を飲んでおらず、他の疾患(特に、自己免疫炎症性疾患)と診断されていない。特定の実施形態では、正常な対象は、試験されるべき生物学的試料が得られた対象と比較して、類似の性別、年齢、及び/または肥満度指数を有し得る。「正常」という用語はまた、健常な対象から得られた試料を識別するために本明細書中で使用される。
本明細書で使用される「治療」という用語は、例えば、治療剤、器具、支持措置、及び外科手術またはリハビリテーション処置を含む、RAを治癒、緩和または予防するための任意の手段を含む。この点において、治療という用語は、RAの予防、管理、治療及び/または改善に使用することができる任意のプロトコル、方法及び/または治療または診断を包含する。
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、RAを有する対象に投与されて所望の、通常有益な効果を生じる任意の治療的に活性な物質を指す。治療薬という用語は、例えば、小分子薬物及び生物製剤(抗体またはその活性断片、ペプチド、タンパク質薬物、タンパク質複合体薬物などを含むがこれらに限定されない)と一般に呼ばれる古典的低分子量治療薬を含む。治療剤は、対象に投与されたときに所望の治療活性物質に代謝されるプロドラッグであってもよい。いくつかの態様では、治療剤は予防剤である。加えて、治療剤を薬学的に製剤化することができる。
本明細書で使用される「治療上有効な」量は、RAを有する対象にいくらかの改善または利益をもたらす治療薬の量である。したがって、「治療上有効な」量は、RAの少なくとも一つの臨床症状においていくらか緩和、鎮静及び/または減少をもたらす量である。本開示の方法及びシステムによって治療することができるRAに関連する臨床症状は、当業者に周知である。さらに、当業者は、何らかの利益が対象に提供される限り、治療効果が完全である必要はなく、治癒的である必要もないことを理解するであろう。
本明細書中で使用される場合、RAを有する患者における特定の結果を達成するための「十分量」または「〜に対して十分な量」は、任意に治療効果(すなわち、治療有効量の投与による)である所望の効果を生じるのに有効な治療薬(例えば、マブリリムマブなどの抗体)の量をいう。
「生物学的試料」という用語は、本明細書中で最も広い意味で使用される。生物学的試料は、一般に、対象から得られる。試料は、本開示のバイオマーカーをアッセイすることができる任意の生物学的組織または体液であり得る。しばしば、試料は「臨床試料」、すなわち患者由来の試料である。そのような試料には、例えば、血液(例えば、全血、血清または血漿)、尿、滑液、唾液、組織または細針生検試料などの細胞を含むまたは含まない体液、及び既知の診断、治療及び/または結果の履歴を有するアーカイブ試料が含まれるが、これらに限定されない。生物学的試料は、組織学的目的のために採取された凍結切片などの組織切片も含むことができる。「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料を処理することによって得られる任意の物質を包含する。得られた物質には、試料から抽出されたタンパク質が含まれるが、これに限定されない。生物学的試料の処理は、濾過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加などのうちの一つ以上を含み得る。いくつかの態様では、生物学的試料は血清学的試料であり、対象から得られた全血、血清または血漿である(またはそれに由来する)。
本明細書中で使用される場合、用語「対照」は、対象を特徴付けるために使用される場合、健康である対象、またはRA以外の特定の疾患と診断された対象をいう。用語「対照試料」は、健康な対象またはRA以外の疾患と診断された患者から得られた一つまたは複数の生物学的試料を指す。
本開示の方法及びシステムを適用するために、患者からの試料は、RAを治療するための療法の投与の前または後に得ることができる。場合によっては、治療が開始された後または治療が終了した後に、連続した試料を患者から得ることができる。試料は、例えば、医療提供者(例えば、医師)または医療給付提供者によって要求され得、同じまたは異なる医療提供者(例えば、看護師、病院)または臨床検査室によって採取され及び/または処理され、処理後、結果が元の医療提供者もしくはさらに別の医療提供者、医療給付提供者、または患者に送付され得る。同様に、バイオマーカーの存在または非存在(例えば、抗PAD4自己抗体の非存在または存在)の決定は、及び/またはバイオマーカーのレベルの定量(例えば、抗PAD4自己抗体の量の定量化)、バイオマーカーのレベル間の比較、バイオマーカーの非存在/存在またはレベルの評価、並びに治療の決定を、一人または複数の医療提供者、医療給付提供者、及び/または臨床検査室によって行うことができる。
本明細書で使用される場合、「医療提供者」という用語は、生きている対象、例えばヒト患者に直接的に相互作用し投与する個人または施設を指す。医療提供者の非限定的な例には、医師、看護師、技術者、セラピスト、薬剤師、カウンセラー、代替医療従事者、医療施設、医院、病院、救急室、クリニック、緊急ケアセンター、代替医療クリニック/施設、一般治療、専門治療、外科的、及び/または他のタイプの治療、評価、維持、セラピー、投薬及び/またはアドバイスを含むが、これらに限定されない、すべてのまたは患者の健康状態の任意の部分に関する、一般及び/または専門治療、評価、維持、セラピー、投薬及び/またはアドバイスを提供する他の任意の存在を含む。
本明細書で使用される場合、用語「臨床検査室」は、例えば、ヒトなどの生体由来の物質の検査または処理のための施設を指す。処理の非限定的な例は、ヒトなどの生存対象の、任意の疾患または障害の診断、予防または治療、または健康の評価についての情報を提供する目的で、人体由来の材料の生物学的、生化学的、血清学的、化学的、免疫学的、血液学的、生物物理学的、細胞学的、病理学的、遺伝学的または他の検査を含む。これらの検査はまた、試料の収集や採取、準備、決定、測定、あるいはそうでなければ生きている対象、例えばヒトの体内の様々な物質の存在または不存在、もしくは生きている対象の身体、例えば人間から得られた試料を記述するための手順を含むことができる。
本明細書で使用される場合、「医療給付提供者」という用語は、その全体または一部を提供し、提示し、オファーし、支払っている個々の当事者、組織、またはグループ、あるいはそうでなければ患者が一つまたは複数の医療給付、給付計画、健康保険、及び/または医療費経費プログラムにアクセスできるようにすることに関連するものを含む。
いくつかの態様では、医療提供者は、RAを治療するための療法を投与するために他の医療提供者を管理または指示することができる。医療提供者は、以下の行為の実施を実行または別の医療提供者または患者に指示することができる:試料を採取する、試料を処理する、試料を提出する、試料を受け取る、試料を移す、試料を分析または測定する、試料を定量化する、試料を分析/測定/定量した後に得られた結果を提供する、試料を分析/測定/定量した後に得られた結果を受け取る、一つ以上の試料を分析/測定/定量した後に得られた結果を比較/スコアリングする、一つまたは複数の試料からの比較/スコアを提供する、一つまたは複数の試料からの比較/スコアを得る、治療(例えば、RAを治療する治療薬)を投与する、治療の投与を開始する、治療の投与を中止する、治療の投与を継続する、一時的に治療の投与を中断する、投与される治療剤の量を増加させる、投与される治療剤の量を減少させる、ある量の治療剤の投与を継続する、治療剤の投与頻度を増加させる、治療剤の投与頻度を減少させる、治療剤に同じ投薬頻度を維持する、療法または治療剤を少なくとももう一つの療法または治療剤で置き換える、療法または治療剤を少なくとももう一つの療法または追加の治療剤と組み合わせる。
いくつかの態様では、医療提供者は、例えば、試料の収集、試料の処理、試料の提出、試料の受領、試料の移送、試料の分析または測定、試料の定量化、試料の分析/測定/定量後に得られた結果の提供、試料の分析/測定/定量後に得られた結果の転送、一つ以上の試料を分析/測定/定量化した後に得られた結果の比較/スコア化、一つもしくは複数の試料からの比較/スコアの転送、療法もしくは治療剤の投与、療法もしくは治療剤の投与の開始、療法もしくは治療剤の投与の中断、療法もしくは治療剤の投与の継続、療法もしくは治療剤の投与の一時的中断、投与される治療剤の量の増加、投与された治療剤の量の減少、ある量の治療剤の投与の継続、治療剤の投与頻度の増加、治療剤の投与頻度の減少、治療剤での同じ投薬頻度を維持、療法または治療剤を少なくとも別の療法または治療剤で置き換え、または療法もしくは治療剤を少なくとも別の治療剤または追加の治療剤と組み合わせることを認可または拒否することができる。
さらに、医療給付提供者は、例えば、療法の処方を許可または却下する、療法の適用範囲を認可または却下する、治療費の払戻しを認可または却下する、治療等の適格性を決定または拒否すること等ができる。
いくつかの態様では、臨床検査室は、例えば、試料を収集または取得する、試料を処理する、試料を提出する、試料を受け取る、試料を転送する、試料を分析または測定する、試料を定量化する、試料を分析/測定/定量した後に得られた結果を提供する、試料を分析/測定/定量した後に得られた結果を受け取る、一つ以上の試料を分析/測定/定量した後に得られた結果を比較/スコア化する、一つ以上の試料から比較/スコアを提供する、一つ以上の試料から比較/スコアを得る、または他の関連する活動を提供することができる。
用語「バイオマーカー」及び「マーカー」は、本明細書では交換可能に使用される。それらは、生物学的プロセス、生物学的事象、及び/または病的状態の特徴的な指標である予測因子を指す。本明細書では、バイオマーカーという用語は、臨床マーカー及び生物学的マーカーの両方を包含する。したがって、本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、抗PAD4自己抗体並びにカルパスタチン、BRAF、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリックスメタロプロテアーゼ1、マトリックスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、骨、軟骨、または滑膜代謝の産物、血液または滑膜中のEYA4、PDZD2、TNF、IL−1b、IL−17、リウマチ因子(RF)、抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)及びそれらの組み合わせなどのタンパク質を含む他のRA「生物学的バイオマーカー」を包含する。本明細書に開示される生物学的マーカーには、これらのタンパク質(DNA及び/またはRNA)並びに代謝産物をコードする遺伝子も含まれる。
「標識された」、「検出可能に標識された」、「検出可能な試薬で標識された」及び「検出可能な部分で標識された」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。これらの用語は、例えば、別の実体(例えば、抗PAD4自己抗体)への結合後に実体(例えば、全長PAD4または自己抗体により標的とされるPAD4−ペプチド)を視覚化することを特定するために使用される。好ましくは、検出可能な作用物質または部分は、測定可能なシグナルを生成し、その強度が結合した実体の量に関連するように選択される。アレイに基づく方法では、検出可能な作用物質または部分も好ましくは、局在化シグナルを生成するように選択され、アレイ上の各スポットからのシグナルの空間分解能を可能にする。タンパク質及びポリペプチドを標識するための方法は、当技術分野で周知である。標識されたポリペプチド、例えば、標識されたPAD4またはその断片は、標識の組み込みまたは結合によって調製され得、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段、または任意の他の適切な手段によって直接的または間接的に検出可能である。適切な検出可能な試薬には、種々のリガンド、放射性核種、蛍光色素、化学発光剤、微粒子、酵素、比色標識、磁気標識及びハプテンが含まれるが、これらに限定されない。本開示のいくつかの態様では、組換えPAD4またはその断片をルテニウムで標識して発光Ru(II)金属錯体を得ることができる。
「マブリリムマブ」という用語は、その全てがそれらの全体において参照により組み込まれる、例えば、米国特許第8263075号及び米国特許第8506960号、並びに米国公開公報のUS20090130093、US20120141464、及びUS20140079708に記載されているように、GM−CSFRαを標的とすることによってマクロファージの活性化、分化及び生存を調節するように設計されたヒトIgG4モノクローナル抗体を指す。US20140335081は、RAを治療するためのマブリリムマブの使用を記載している。本明細書中で使用される場合、マブリリムマブは、配列番号2の重鎖及び配列番号3の軽鎖を含むマブリリムマブ抗体、並びにその抗原結合性断片を包含する。
マブリリムマブは、GM−CSFRαの生物活性の強力な中和剤であり、理論に縛られることを望むものではないが、RA患者の滑膜関節内の白血球上のGM−CSFRαに結合することによって治療効果を発揮することができ、減少した細胞生存及び活性化を導く。米国特許第8263075号は、GM−CSFRαの生物学的活性を高い効力で中和する能力を共有するマブリリムマブ及びその変異体の単離及び特徴付けを報告している。これらの抗体の機能的特性は、少なくとも部分的に、ヒトGM−CSFRαの226位〜230位のTyr−Leu−Asp−Phe−Glnモチーフ(このアミノ酸配列は配列番号12に記載されている)に結合し、それによってGM−CSFRαとそのリガンドでるGM−CSFとの間の会合を阻害することの結果であると考えられる。マブリリムマブ重鎖(HC;配列番号2に記載)のアミノ酸配列;軽鎖(LC;配列番号3に記載);重鎖可変領域(VH;配列番号4に記載);軽鎖可変領域(VL;配列番号5に記載);重鎖可変領域相補性決定領域(それぞれ、配列番号6,7及び8に示されるVH−CDR1、VH−CDR2及びVH−CDR3)及び軽鎖可変領域CDR(VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3;それぞれ配列番号9、10及び11に示される)。
本明細書で使用される「PAD4」という用語は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ、IV型及びそのアイソフォームを指す。ヒトPAD4のアミノ酸配列はUniprot:Q9UM07に見出され、配列番号13に記載されている。ヒトでは、このタンパク質はPADI4遺伝子及びその断片によってコードされる(Jones et al.Curr Opin Drug Discov Devel.12:616 627(2009))。RAにおける重要な自己抗体は、フィブリン、フィラグリン、フィブロネクチン、エノラーゼ及びビメンチンなどの異なるタンパク質上のシトルリン化残基に向けられる。シトルリン化タンパク質は、カルシウム依存性ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によって触媒されるプロセスである、アルギニン残基のシトルリンへの翻訳後変換によって生成される。
PAD4遺伝子のRA関連変異は様々な集団において同定されているため、PAD4はRA疾患発症及び進行において役割を果たすと広く考えられている。例えば、Suzuki et al.,Nat.Genet.34:395−402(2003,);Iwamoto et al.,Rheumatology 45:804−807(2006);Harney et al.,Rheumatology 44:869−872(2005);及びCantaert et al.,Ann.Rheum.Dis.64:1316−1320(2005)を参照されたい。PAD4は、シトルリン化エピトープの生成に関与するばかりでなく、それ自体がRA特異的抗体の標的である。RA患者におけるPAD4に対する自己抗体が記載されている。例えば、Takizawa et al.,Scand.J.Rheumatol.3:212−215(2005);Roth et al.,Clin.Exp.Rheumatol.1:12−18(2006);Halvorsen et al.,Ann.Rheumatol.Dis.67:414−417(2008);and Zhao et al.,J.Rheumatol.,35:969−974(2008)を参照されたい。
本明細書で使用される「PAD3」という用語は、タンパク質アルギニンデイミナーゼ3型及びそのアイソフォームを指す。ヒトPAD3のアミノ酸配列はUniprot Q9ULW8に見出される。このタンパク質は、ヒトにおいてPADI3遺伝子によってコードされる。
本明細書中で使用される「GM−CSFR」という用語は、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)受容体を指す。GM−CSFRは、高度に保存されたサイトカイン受容体スーパーファミリーのメンバーである。GM−CSFRは、いくつかの造血細胞で観察されるGM−CSFに対して異なる親和性をもたらす二つのサブユニットを含む。第一のサブユニットは一般にα1サブユニットと呼ばれ、それ自身でGM−CSFと低親和性で結合することができる85Kdのタンパク質である。GM−CSFRα鎖のいくつかの他のアイソフォーム、いくつかの膜結合型及びいくつかの可溶性型が記載されているが、α1アイソフォームは好中球及びマクロファージの細胞表面上に発現する優性型であるようである(Crosier et al.,Br J Haematol.98:540−548(1997))。GM−CSFRα1の細胞外部分は高度にグリコシル化されている。この受容体は第二のサブユニットであるβ鎖を有し、これはそれ自身ではGM−CSFに結合しない。むしろ、それがα1受容体に結合しているときにGM−CSFに結合する。用語「GM−CSFRa」、「GM−CSFRα」、「GM−CSFRアルファ」及びそれらの文法上の変異体はGM−CSFRのα1サブユニットを指し、このタンパク質は配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し得る。
II.臨床応答バイオマーカーとしての抗PAD4自己抗体
RAは、いくつかのタイプの自己抗体の存在によって特徴付けられる。PAD4に対する自己抗体は、RA患者の約3分の1に存在する。しかしながら、現在のところ、抗PAD4自己抗体がRAにおいて有するかもしれない機能及び潜在的な病因的役割の理解が不十分である。マブリリムマブのようなヒトGM−CSFRαに特異的に結合する治療抗体を含む新しい治療選択肢は、RA患者の満たされていない医学的ニーズに対処するために重要である。これらの抗体、すなわち診断または臨床応答バイオマーカーに対する良好な臨床応答を有する可能性が高いRA患者を同定する手段は、この新規な治療薬の有用性を大幅に増強することができる。
本発明者らは、マブリリムマブによる治療の開始前にRA対象の血清中に抗PAD4自己抗体が存在することが臨床応答の予測因子であることを見出した。抗PAD4自己抗体レベルは、PAD4に結合する能力によって抗PAD4抗体を検出する新規アッセイを用いて血清中で測定されている。このアッセイを使用して、臨床試験に入ったRA対象のベースライン血清試料中の抗PAD4自己抗体レベルを定量化した。統計学的分析は、アッセイの定量下限(LLOQ)未満の抗PAD4自己抗体レベルを有するRA対象が、プラセボと比較してマブリリムマブに対する臨床応答が有意に増加したことを示し、一方、検出可能な抗PAD4自己抗体レベルを有する対象によるマブリリムマブへの応答は、プラセボに対する応答に、より類似した。この知見は、マブリリムマブ療法の開始前に抗PAD4自己抗体の存在を試験することの有用性を支持し、DMARD標準治療と比較してマブリリムマブで治療した場合に陽性の臨床転帰を有する患者を同定する。さらに、RA患者を治療するための選択肢の選択を支援するリウマチ専門医の診断テストは現在のところ行われていない。DMARDのみで治療した場合よりもマブリリムマブで治療した場合、患者がより良い結果を示す可能性が高いことを示すために、抗PAD4自己抗体レベルを(血液検査を介して)測定することは、この疾患の治療パラダイムにおいて著しい進歩である。いくつかの実施形態において、抗PAD4自己抗体レベルは、本明細書に教示された新規な方法を用いて測定される。
「抗PAD4自己抗体レベル」、「抗PAD4自己抗体レベル」、「抗PAD4自己抗体のレベル」、「患者の抗PAD4自己抗体のレベル」などの用語「レベル」、及びその文法上の変化形は、生物学的試料中の抗PAD4自己抗体の存在または発現を検出するための任意の分析方法を用いて成された測定を指し、生物学的試料中の抗PAD4自己抗体またはそれに対応するものの存在、非存在、絶対量または濃度、相対量または濃度、力価、発現レベル、測定レベルの比などを示す。「値」または「レベル」の正確な性質は、抗PAD4自己抗体を検出するために用いられる特定の分析方法の特定の設計及び成分に依存する。
対象から得られた試料中の抗PAD4自己抗体の検出に関して本明細書で使用される場合、用語「存在しない」または「存在する」は、抗PAD4自己抗体のレベルが、生物学的試料中の抗PAD4自己抗体を検出するために使用される分析方法の定量下限値(LLOQ)を下回るか上回るかどうかを指す。
抗PAD4自己抗体に関して本明細書中で使用される場合、用語「上昇したレベル」、「高レベル」及びそれらの改変体は、対照レベルまたは範囲よりも高い生物学的試料(例えば、血清)におけるレベルを指す。したがって、特定の生物学的試料において測定されたレベルは、同様の対照試料において決定されたレベルまたはレベルの範囲と比較され得る。いくつかの態様では、対照試料は、検出可能なRA症状のない対象から得られた試料である。他の態様では、対照試料は、抗PAD4自己抗体(例えば、マブリリムマブによる治療に対して反応しないと判定された血清中の抗PAD4自己抗体のレベルを有する対象)に対して血清反応陽性である対象から得られた試料である。抗PAD4自己抗体のレベルは、抗PAD4自己抗体が対照試料中よりも高いレベルまたは範囲で試験試料中に存在する場合に上昇すると言われている。逆に、抗PAD4自己抗体に関連して本明細書で使用される「より低レベル」、「低レベル」及びそれらの変化形の用語は、対照レベルまたは範囲よりも低い生物学的試料(例えば、血清)におけるレベルを指す。したがって、抗PAD4自己抗体のレベルは、低レベルまたはより低レベルであると言われ、ここで、抗PAD4自己抗体は、対照試料よりも低いレベルまたは範囲で試験試料中に存在する。
本明細書に開示される方法は、抗PAD4自己抗体を含み得る任意の試料を用いて実施することができる。利用しやすい試料には、例えば、全血、血清、血漿、末梢血単核球試料、または滑液または滑膜組織が含まれる。いくつかの態様では、滑膜組織試料は、膝関節または足首関節から得ることができる。いくつかの態様では、抗PAD4自己抗体は、血清試料中で測定される。
いくつかの態様において、試料は、生理学的pHで、リン酸、トリスなどの適切な緩衝液中での濃縮または希釈によって、必要に応じて前処理することができる。
抗PAD4自己抗体は、当業者に周知の多くの方法のいずれかによって検出及び定量することができる。これらの方法には、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高ジフルフュージョンクロマトグラフィー、質量分光法などの分析的生化学的方法、または流体またはゲル沈降反応、免疫拡散(一重または二重)、免疫組織化学、アフィニティークロマトグラフィー、免疫電気泳動法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロッティングなどの種々の免疫学的方法が挙げられる。
特定の態様において、抗PAD4自己抗体は、イムノアッセイを用いて生物学的試料中で検出及び/または定量される。抗PAD4自己抗体を検出するためのイムノアッセイは当技術分野で公知であるが、抗PAD4自己抗体の検出のためのイムノアッセイが本明細書に記載されている。
特定の態様において、イムノアッセイは、サンドイッチイムノアッセイ、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)またはサンドイッチ電気化学発光(ECL)アッセイを含み、第一のPAD4分子(「捕捉PAD4」)を固体支持体に結合させ、試料または標準からの抗PAD4自己抗体を捕捉PAD4に結合させ、そして次いで第二のPAD4分子(「検出PAD4」)が添加され、酵素反応、ECL反応、放射能、または他の検出方法のいずれかによって検出される。したがって、イムノアッセイは、「捕捉PAD4」及び「検出PAD4」の抗PAD4自己抗体誘発性架橋を測定するであろう。イムノアッセイの特定の態様では、捕捉PAD4分子は固体支持体に結合していない。
「固体支持体に結合した」という用語は、吸着、共有結合または特異的結合対により、例えば、ビオチン/アビジンのような適切な特異的結合対の特異的相互作用により、基材(例えば、プレート中のウェルの表面)への付着によって起こる固定化を指す。
検出PAD4は酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼで直接標識することができ、または酵素を結合させることができるタグで標識することができる。酵素標識の例は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びガラクトシダーゼである。例えば、検出PAD4をビオチンに結合させることができ、酵素結合ストレプトアビジンをビオチンタグに結合させることにより、酵素を次の工程で結合させることができる。あるいは、検出PAD4を化学発光性、蛍光性、またはECLタグに結合させることができる。後者の例は、ルテニウムキレートである。インキュベーション後、プレートを洗浄して、結合していない検出PAD4を除去することができる。
検出PAD4の検出は、使用される検出システムのタイプに基づいて変化する方法によって達成され得る。検出PAD4がビオチンで標識されている場合には、酵素結合ストレプトアビジンを添加し、結合していないストレプトアビジンを洗い流し、例えば分光光度計で読み取ることができる比色反応を示す基質を添加する。
発光金属キレートは、検出可能な発光反応を生成する金属キレートである。この発光反応の検出は、例えば、蛍光の測定(すなわち、検出PAD4がルテニウムキレートにコンジュゲートされている場合、蛍光が測定される)による、または電気化学発光(すなわち、検出PAD4がルテニウムキレートにコンジュゲートされている場合、プレートに電流が印加され、発光が測定される)によるものである。
これらの金属キレートの金属は、例えば、遷移金属または希土類金属である。金属は、例えば、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、インジウム、パラジウム、モリブデン、テクネチウム、銅、クロムまたはタングステンであり得る。金属と一緒に金属キレートを形成する配位子は、通常、多座配位子、すなわち、いくつかの配位位置を有する配位子である。多座配位子は、例えば、芳香族及び脂肪族配位子を含む。
特定の態様では、この方法は、患者試料中の抗PAD4自己抗体レベルを直接測定し、イムノアッセイ結果を標準曲線上にプロットすることによって絶対レベルを計算する。次いで、検出されたシグナルは、様々な標準及び/または対照に基づいて定量化され得る。結果を標準曲線上にプロットすることにより、試料中の抗PAD4自己抗体の絶対レベルを、例えば、ng抗PAD4/mLまたは抗PAD4ユニット/mL(U/mL)で計算することができる。
既知の対照試料との比較に基づいて、「閾値レベル」を測定することができ、その抗PAD4自己抗体閾値レベルを上回る試験試料は、例えば、試料を採取した患者が、マブリリムマブのようなGM−CSFRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片での治療の恩恵を受ける可能性があることを示す。抗PAD4自己抗体閾値レベルは、予め決定することができ、その場合、それらは試料のタイプ(例えば、血清または滑液)、RAのタイプ(例えば血清陽性または血清陰性RA)、及び場合によっては使用されるアッセイに関してマッチされなければならない。
いくつかの態様では、所定の閾値レベルは、試料中の抗PAD4自己抗体の存在を検出するために用いられるアッセイの定量下限(LLOQ)である。いくつかの態様では、LLOQは、本開示の実施例1に提示されるアッセイのLLOQである。いくつかの態様では、試料中の抗PAD4自己抗体の存在を検出するために用いられるアッセイのLLOQは、少なくとも1,000U/mL、少なくとも1,100U/mL、少なくとも1,200U/mL、少なくとも1,300U/mL、少なくとも1,400U/mL、少なくとも1,500U/mL、少なくとも1,600U/mL、少なくとも1,700U/mL、少なくとも1,800U/mL、少なくとも1,900U/mL、少なくとも2,000U/mL、少なくとも2,100U/mL、少なくとも2,200U/mL、少なくとも2,300U/mL、少なくとも2,400U/mL、少なくとも2,500U/mL、少なくとも2,600U/mL、少なくとも2,700U/mL、少なくとも2,800U/mL、少なくとも2,900U/mL、少なくとも3,000U/mL、少なくとも3,100U/mL、少なくとも3,200U/mL、少なくとも3,300U/mL、少なくとも3,400U/mL、少なくとも3,500U/mL、少なくとも3,600U/mL、少なくとも3,700U/mL、少なくとも3,800U/mL、少なくとも3,900U/mL、少なくとも4,000U/mL、少なくとも4,100U/mL、少なくとも4,200U/mL、少なくとも4,300U/mL、少なくとも4,400U/mL、少なくとも4,500U/mL、少なくとも4,600U/mL、少なくとも4,700U/mL、少なくとも4,800U/mL、少なくとも4,900U/mL、少なくとも5000U/mL、少なくとも5500U/mL、少なくとも6000U/mL、または少なくとも6500U/mLである。
いくつかの態様では、試料、例えば血清試料中の抗PAD4自己抗体の所定の閾値レベルは、イムノアッセイを用いて試料(例えば、血清)で測定される際、少なくとも約5,000U/mL、少なくとも約10,000U/mL、少なくとも約15,000U/mL、少なくとも約20,000U/mL、少なくとも約25,000U/mL、少なくとも約30,000U/mL、少なくとも約35,000U/mL、少なくとも約40,000U/mL、少なくとも約45,000U/mL、少なくとも約50,000U/mL、少なくとも約55,000U/mL、少なくとも約60,000U/mL、少なくとも約65,000U/mL、少なくとも約70,000U/mL、少なくとも約75,000U/mL、少なくとも約80,000U/mL、少なくとも約85,000U/mL、少なくとも約90,000U/mL、少なくとも約95,000U/mL、少なくとも約100,000U/mL、少なくとも約110,000U/mL、少なくとも約120,000U/mL、少なくとも約130,000U/mL、少なくとも約140,000U/mL、少なくとも約150,000U/mL、少なくとも約160,000U/mL、少なくとも約170,000U/mL、少なくとも約180,000U/mL、少なくとも約190,000U/mL、少なくとも約200,000U/mL、少なくとも約210,000U/mL、少なくとも約220,000U/mL、少なくとも約230,000U/mL、少なくとも約240,000U/mL、少なくとも約250,000U/mL、少なくとも約260,000U/mL、少なくとも約270,000U/mL、少なくとも約280,000U/mL、少なくとも約290,000U/mL、または少なくとも約300,000U/mLであり得る。いくつかの態様では、イムノアッセイは、本開示の実施例1に提示されるアッセイである。
抗PAD4自己抗体閾値レベルは、アッセイの性質、例えば、使用される捕捉PAD4及び検出PAD4、標準の供給源、純度及び組成などに基づいて変化し得る。一つの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片(例えば、マブリリムマブ)での治療から恩恵を受けることができるかどうかを決定するためのアッセイの任意の閾値レベルまたはLLOQを使用する代わりに、患者の抗PAD4自己抗体レベルを一つ以上の対照抗PAD4自己抗体レベルと比較することができる。この態様によれば、試験試料(例えば、RAに罹患している患者由来の試料)を一つ以上の対照試料(例えば、正常な健康な個体から採取された試料、同じ患者から採取された初期の試料、患者の疾患のサブセットを有する患者から採取された試料、単離された抗PAD4抗体の所定の標準量、またはそれらの組み合わせ)と比較する。
いくつかの態様では、対照レベルと比較した対象の抗PAD4抗体レベルの変動を決定するために、結果を対照試料との比として表すことができる。この態様によれば、対照試料は、例えば患者試料が全血である場合は全血、患者試料が血清である場合は血清、患者試料が血漿である場合は血漿、または患者試料が滑液である場合は滑液、のうちの一つまたは複数である、患者試料と一致した対であり得る。
抗PAD4抗体検出アッセイは、当業者に周知の標準的な方法に従って(陽性または陰性または検体の量として)スコアリングすることができる。特定のスコアリングの方法は、アッセイ形式および標識の選択に依存する。例えば、イムノアッセイは、検出可能に標識された成分(例えば、実施例1に記載のイムノアッセイにおいてルテニル化PAD4)を視覚化することによりスコアリングすることができる。検出可能なシグナル(例えば、対照レベルまたはバックグラウンドレベルを上回る発光シグナル)は、陽性結果としてスコア化されるが、明確に検出可能なシグナルの非存在は、陰性としてスコア化され、アッセイのLLOQとして知られる。検出可能なシグナルの強度は、分析物濃度の定量的尺度を提供することができる。
一度決定されると、抗PAD4抗体レベルを患者の医療記録に記録することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、抗PAD4抗体レベルに少なくとも部分的に基づいて、診断(しばしば鑑別診断)を行うことを含む。
本明細書で使用される場合、用語「鑑別診断」は、患者が治療可能であるかどうか、治療に反応する可能性が高いかどうか、または患者試料由来の試料中の測定された抗PAD4抗体レベルが所定の閾値レベルを下回るかどうか、または一つもしくは複数の対照試料中の抗PAD4抗体レベルと比較して低いかどうかに応じて、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片での治療の候補であるかどうか(例えば、いくつかの態様では、抗PAD4抗体のレベルが所定の閾値レベル未満である限り、患者が抗PAD4抗体について陽性であるとしても、患者はマブリリムマブ治療に応答し得る)、の判定を指す。特定の態様において、抗PAD4自己抗体の所定の閾値レベルは、アッセイのLLOQである。
特定の態様において、本明細書中に開示される方法は、抗PAD4抗体を検出するアッセイの結果及び/または抗PAD4自己抗体のレベルに少なくとも部分的に基づく診断を対象に通知することを含む。口頭で、書面で、及び/または電子的に、患者に通知することができる。
この診断は、患者の医療記録に記録することもできる。例えば、様々な態様において、RA患者が、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する特定の抗体またはその抗原結合性断片による治療によって利益を得るかどうかの診断は、医療記録に記録される。用語「医療記録」または「患者医療記録」は、典型的には以下の一つまたは複数を含む患者の検査及び/または治療の記述を指す:患者の病歴及び苦情、医師の身体的所見、診断テストの手順と結果、及び患者の薬物療法及び治療手順。医療記録は、典型的には一人以上の医師及び/または医師の助手によってなされ、医療を必要とする様々な病気または怪我の記録及び/または履歴、及び/または接種、及び/またはアレルギー、及び/または治療、及び/または予後、及び/または親、兄弟に関する健康情報、及び/または職業を記載され、書き写され、そうでなければ記録される。記録は、状態を診断する際に医師によって見直されてもよい。
医療記録は、紙の形態であってもよく、及び/またはコンピュータ可読媒体で維持されてもよい。医療記録は、検査室、医院、病院、医療保守組織、保険会社、及び/または個人医療記録ウェブサイトによって維持することとしてもよい。いくつかの態様では、患者からの試料中の抗PAD4自己抗体のレベルに少なくとも部分的に基づいて、診断は、カード、着用物品、及び/または無線周波数識別(RFID)タグなどのメディカルアラート物品上またはそれらの中に記録される。本明細書で使用される場合、用語「着物品」は、タグ、ブレスレット、ネックレス、アームバンド、またはヘッドバンドを含むがこれに限定されない対象の身体に着用することができる任意の物品を指す。
また、本明細書中に開示される方法は、RAの予防及び/または治療を処方、開始、及び/または変更することを含む(特に、患者が試験で抗PAD4自己抗体などの自己抗体の存在についてそれぞれ陽性または陰性である血清陽性RAまたは血清陰性RAなどのRAのサブタイプに関する)。いくつかの実施形態において、抗PAD4自己抗体の存在は、本明細書に教示される方法を用いて決定される。
特定の態様では、方法は、一つまたは複数のさらなるアッセイの順序付け及び/または実行を伴い得る。例えば、アッセイが、患者の試料が抗PAD4自己抗体の存在について陰性であることを示す場合、アッセイは、偽陰性の結果を除外するために反復されてもよく、及び/または対象の状態を確認するために、抗PAD4自己抗体の存在または非存在を決定するための一つ以上のさらなるアッセイを実施してもよい。逆に、抗PAD4自己抗体のレベルが上昇していると判定された場合、偽陽性の結果を除外するためにアッセイを繰り返すことが望ましい場合がある。
当業者は、抗PAD4自己抗体レベルが、(i)ポジティブセレクター、すなわち、患者から採取された試料中の抗PAD4自己抗体のレベルが、使用される検出アッセイのLLOQを下回り、所定の閾値レベルを下回る場合、もしくは、一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して低い場合、特定のアクションが行われる(例えば、RAを有する患者をマブリリムマブで治療する)、または、(ii)ネガティブセレクター、すなわち、患者から採取された試料中の抗PAD4自己抗体のレベルが、使用される検出アッセイのLLOQを上回り、所定の閾値レベルを上回る場合、もしくは、一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して高い場合、特定のアクションが行われる(例えば、RAを有する患者をマブリリムマブで治療することを中断する)、または、(iii)ポジティブセレクターとネガティブセレクターの両方、例えば、患者から採取された試料中の抗PAD4自己抗体レベルが、使用される検出アッセイのLLOQを上回る/下回る、所定の閾値レベルを上回る/下回る場合、もしくは、一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルに対して高い/低い場合、特定の治療を中断することができ(例えば、DMARD)、異なる治療を開始することができる(例えば、マブリリムマブによる治療)ことができる、として、治療、診断及びモニタリング方法を含むがこれらに限定されない本明細書中に開示される方法に従って使用され得ることを理解するであろう。
III.抗PAD4バイオマーカーレベルに基づくRAの診断及び治療の方法
この開示は、RA患者(またはRAに罹患している疑いのある対象)を治療する方法であって、患者から採取された試料中の抗PAD4自己抗体のレベルが、使用される検出アッセイ(例えば、イムノアッセイ)の定量下限(LLOQ)を下回る場合、所定の閾値レベルを下回る場合、または一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して低い場合、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む方法を提供する。また、(a)患者から採取された試料中の抗PAD4自己抗体のレベルが、使用された検出アッセイのLLOQを下回る場合、所定の閾値レベルを下回る場合、または一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して低い場合、及び(b)所定のバイオマーカー閾値レベルを上回るか下回る、または一つ以上の対照試料のバイオマーカーレベルを上回るか下回る、患者から採取された試料中における少なくとも一つの追加のバイオマーカーのレベルを患者が提示する場合、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、RA患者(またはRAに罹患していると疑われる対象)を治療する方法も提供される。いくつかの態様では、本方法は、患者から試料を得ること、及び試料中の抗PAD4自己抗体レベルの測定のために試料を提出することをさらに含む。一態様では、試料中の抗PAD4自己抗体の存在または非存在を、イムノアッセイ、例えば基質及び検出可能に標識されたPAD4(例えば、ルテニル化PAD4)に結合したPAD4を用いる化学発光アッセイで測定する。
この開示はまた、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片での治療の恩恵を患者が受けるかどうかについて、医療提供者、医療給付提供者、または臨床検査機関による決定を容易にする方法、アッセイ、及びキットを提供する。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片は、マブリリムマブ、マブリリムマブと同じGM−CSFRαエピトープに結合する抗体もしくはその断片、またはGM−CSFRαに対するマブリリムマブの結合を競合的に阻害する抗体もしくは断片である。本明細書で提供される方法、アッセイ及びキットはまた、患者が、本明細書中に開示されるGM−CSFRαに特異的に結合するか、または当業者に公知である抗体またはその抗原結合性断片での治療から利益を受けるかどうかについて、医療提供者、医療給付提供者、または臨床検査機関による決定を容易にするであろう。
本開示は、RA患者(またはRAに罹患していると疑われる対象)を治療する方法であって、RAを有する患者から得られた試料(例えば、血清試料)中の抗PAD4自己抗体のレベルを測定すること;試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルが、アッセイ(例えば、イムノアッセイ)のLLOQを上回るか下回るかを判定すること;及び患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するように医療提供者に助言することを含む方法を提供する。逆に、本方法は、患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の患者への投与を中断するように医療提供者に助言することを含む。特定の実施形態において、抗PAD4自己抗体レベルは、本明細書に教示されるアッセイを用いて決定される。
本開示はまた、RA患者(またはRAに罹患している疑いのある対象)を治療する方法であって、試料中の抗PAD4自己抗体のレベルの測定のために患者から採取した試料を提出すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む方法も提供する。また、RA患者を治療する方法であって、試料中の抗PAD4自己抗体のレベルの測定のために患者から採取した試料を提出すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の患者への投与を中断することを含む方法も提供する。
本開示はまた、RAと診断された患者(またはRAに罹患している疑いのある患者)をGM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンで治療するかどうかを決定する方法であって、RAと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体のレベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンで患者を治療すること、または治療するように医療提供者に指示することを含む方法も提供する。また、RAと診断された患者をGM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンで治療するかどうかを決定する方法であって、関節リウマチと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4レベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンによる患者の治療を中断すること、または治療を中断するように医療提供者に指示することを含む方法も提供される。
本開示はまた、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片による治療の候補として、RAと診断された患者(またはRAに罹患している疑いのある対象)を選択する方法であって、RAと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体のレベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片により患者を治療すること、または治療するように医療提供者に指示することを含む方法も提供する。また、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片による治療のための候補または代替的なRA治療のための候補として、RAと診断された患者を選択する方法であって、関節リウマチと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4レベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片による患者の治療を中断するか、または代替療法を選択するように医療提供者に指示することを含む方法も提供される。
上記の方法のいくつかの態様において、治療の決定を行う基準としてアッセイのLLOQを使用する代わりに、抗PAD4自己抗体の測定レベルが所定の閾値レベルを上回るか下回るか、またはそれらが一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して高いか低いかを決定するような別の基準を使用することができる。
いくつかの態様では、RA患者またはRAを有すると疑われる対象から得られた試料中の抗PAD4自己抗体のレベルをイムノアッセイで測定する。特定の態様では、例えば、「ポイントオブケア」診断キットとして処方された、本明細書に記載のイムノアッセイを使用して、患者または対象を治療する医療従事者によって、イムノアッセイは、RAを有すると疑われる患者または対象から得られた試料に対して実施される。いくつかの態様では、試料は、患者から得られ、例えば、本明細書に記載されているイムノアッセイを使用して、医療従事者の指示に従って試料中の抗PAD4自己抗体のレベルを測定するために、例えば臨床検査室に提出される。特定の態様では、アッセイを実施する臨床検査室は、患者の抗PAD4自己抗体レベルがイムノアッセイのLLOQを上回るか下回るか、所定の抗PAD4自己抗体閾値を上回るか下回るか、または一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体のレベルと比較して上昇しているかどうかに基づいて、患者が、GM−CSFR(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片による治療から利益を得ることができるかどうかについて医療提供者に助言するか、または代替的な治療を選択するであろう。
特定の態様において、本開示は、RA患者またはRAを有すると疑われる対象をある期間にわたって治療する方法であって、患者/対象から採取された第一の試料中の抗PAD4自己抗体の第一レベルを測定すること、または、抗PAD4の第一レベルの測定のために患者/対象から採取された第一の試料を提出すること、及び患者の抗PAD4自己抗体レベルがイムノアッセイのLLOQよりも上回るか下回る場合、所定の抗PAD4自己抗体閾値を上回るか下回る場合、または一つ以上の対照試料中の抗PAD4自己抗体レベルと比較して上昇している場合に、GM−CSFR(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与することを含む方法を提供する。この試験は、上記のように、医療提供者または臨床検査室によって行うことができる。
本態様によれば、方法は、さらに、患者から採取された第二の試料中の抗PAD4自己抗体の第二レベルを測定すること、または試料中の抗PAD4自己抗体の第二レベルの測定のために患者から採取された第二試料を提出すこと(ここで、患者の抗PAD4自己抗体レベルは、患者における抗PAD4自己抗体の第一及び第二のレベルを比較することによって得られる)、及び用量を変化させること、例えば、患者に投与されるGM−CSFR(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片の量もしくは頻度を増加もしくは維持すること、または第二の試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルが第一の試料中の対応するレベルより高い場合には、GM−CSFR(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片による治療を中断さえすること、または第二の試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルが第一の試料中の対応するレベルよりも低いかまたはほぼ同じである場合は、患者に投与されるGM−CSFR(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片の量もしくは頻度を維持もしくは減少させること、をさらに含み得る。
特定の態様では、本明細書で提供されるイムノアッセイの結果は、患者の保険がGM−CSFR(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片による治療をカバーするかどうかを決定するために、医療給付提供者に提出することができる。
特定の態様では、患者は、GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与前、投与中、または投与後のいずれかで、一つまたは複数の追加の薬物(例えば、DMARDS)で治療されたことがあるか、または治療中である。RAの治療に有用な種々の他の薬剤は、本明細書の他の箇所に記載されているか、または当該分野で公知である。特定の態様では、患者は、例えば、DMARDまたはその組み合わせを含む一つまたは複数の追加の薬物で治療されたことがある、または治療され続けている、または治療される予定である。いくつかの態様では、DMARDは、アバタセプト、アダリムマブ、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、D−ペニシラミン、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、リツキシマブ、スルファサラジン、及びそれらの組み合わせから選択される。
いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、マブリリムマブまたはその抗原結合性断片を含む。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、マブリリムマブまたはその抗原結合性断片からなるかまたは本質的にそれからなる。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、マブリリムマブと同じエピトープに特異的に結合する。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、同じエピトープへの結合について、マブリリムマブマブリリムマブと特異的に競合する。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び/または配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、そのアミノ酸配列が配列番号6〜11に示される相補性決定領域の少なくとも一つを含む。いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、そのアミノ酸配列が配列番号6〜11に示されるCDRを含む。
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法において使用される試料は、患者から採取され、全血、血清、血漿、または滑液のうちの一つ以上を含む。
いくつかの態様では、抗PAD4自己抗体のレベルの決定に加えて、本明細書に開示される方法は、一つもしくは複数の生物学的バイオマーカーの発現レベルもしくは活性を決定すること、一つ以上の臨床バイオマーカー(臨床状態マーカー)を決定すること、もしくはそれらの組み合わせ、これらの決定のために患者から採取された試料を提出すること、またはこれらを決定するように臨床検査室に指示すること、をさらに含み得る。
いくつかの態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、固定用量で投与される。いくつかの特定の態様では、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片はマブリリムマブであり、固定用量は少なくとも30mg/用量、少なくとも100mg/用量、または少なくとも150mg/用量である。いくつかの態様では、GM−CSFRα、例えばマブリリムマブに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、2種類以上の用量で投与される。いくつかの態様では、GM−CSFRα、例えばマブリリムマブに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、毎週、隔週または毎月投与される。いくつかの態様では、GM−CSFRα、例えばマブリリムマブに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、静脈内、筋肉内、皮下、またはそれらの組み合わせで投与される。
IV.抗PAD4自己抗体検出アッセイ及びキット
この開示はまた、RA患者からの試料中の抗PAD4自己抗体を、例えばイムノアッセイ法によって検出するためのキットを提供する。このようなキットは、例えば、標識PAD4及び非標識PAD4及び抗PAD4自己抗体コントロールを含む、本方法で利用される(例えば、濃縮形態の)一つまたは複数の様々な試薬をそれぞれ有する容器を含むことができる。
抗PAD4自己抗体に結合することができるPAD4またはその断片は、既に固体支持体に付着して提供され得る。抗PAD4自己抗体に結合することができる標識されたPAD4またはその断片は、検出可能な標識、例えばビオチンまたはルテニウムキレートに既にコンジュゲートして提供することができる。キットはまた、本明細書で提供されるアッセイの実施を支援する、抗PAD4自己抗体(並びに標識自体)に結合することができるPAD4またはその断片に検出可能な標識をカップリングするための試薬、バッファー及び/または試薬、及び機器を提供することもできる。本開示に従って提供されるキットは、本明細書で提供されるアッセイを実施するのに必要な適切な容器、プレート、及び任意の他の試薬または材料をさらに含み得る。
本開示によるキットはまた、プロセスを記述するパンフレットまたは説明書を含み得る。抗PAD4自己抗体検出イムノアッセイの場合、イムノアッセイプロセスは、抗PAD4自己抗体によって認識され得る第一のPAD4分子またはその断片(「捕捉PAD4」)、及び抗PAD4自己抗体によって認識され得る第二のPAD4分子またはその断片を含み、第二のPAD4は、例えば、蛍光部分(「検出PAD4」)を組み込むことによって検出可能となる。
イムノアッセイは、本明細書で提供される方法、または当業者に周知及び理解される方法によって実施することができる。一つの態様では、イムノアッセイは、捕捉PAD4を支持体に取り付けること;試験試料または対照試料を適用すること;試料中に存在する場合、抗PAD4自己抗体を捕捉PAD4に結合させること;捕捉PAD4に既に結合している抗PAD4自己抗体に結合することができる検出PAD4を適用すること;及び抗PAD4自己抗体に結合した検出PAD4の量を測定することを含む。特定の態様では、アッセイは、洗浄ステップ、ブロッキングステップ及びインキュベーションステップをさらに含むことができる。
試験キットは、一つ以上の抗PAD4自己抗体検出アッセイ、例えば、イムノアッセイを実施するための説明書を含むことができる。キットに含まれる説明書は、包装材料に添付することも、添付文書として含めることもできる。説明書は、典型的には書面または印刷物であるが、これらに限定されるものではない。そのような命令を記憶し、それらをエンドユーザに伝達することができる任意の媒体が企図される。そのような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD−ROM)などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「説明書」という用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
V.コンピュータの方法及びソフトウェア
本明細書中に開示される方法は、生物学的試料を採取するかまたは別の方法で入手すること、及び単独または他のバイオマーカー、例えば生物学的バイオマーカーまたは臨床的バイオマーカーと組み合わせて抗PAD4自己抗体レベルを検出及び測定する分析方法を実施することを含むことができる。
抗PAD4自己抗体レベルと組み合わせることができる生物学的バイオマーカーは、カルパスタチン、BRAF、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリックスメタロプロテアーゼ1、マトリックスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、骨、軟骨または滑膜代謝産物、EYA4、PDZD2、血液または滑膜中のTNF、IL−1b、IL−17、リウマチ因子(RF)、抗ルシリン化ペプチド抗体(ACPA)及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、抗PAD4自己抗体レベルと組み合わせることができる生物学的バイオマーカーは、TNFRSF17;免疫グロブリンJポリペプチド、免疫グロブリンアルファ及びミューポリペプチド(IGJ)のためのリンカータンパク質;POUクラス2関連因子1(POU2AF1);デリ様ドメインファミリー、メンバー3(DERL3);Fc受容体様5(FCRL5);血漿細胞誘導性ERタンパク質1(PACAP);プレプロロシセプチン(PNOC);分泌型リンタンパク質1(SPP1);インターフェロン調節因子4(IRF4);リンパ球膜貫通アダプター1(LAX1);ELL関連因子2(EAF2);pim−2癌遺伝子(PIM2);アクチン、アルファ1、骨格筋(ACTA1);ミオシン、重鎖3、骨格筋、胚(MYH2);ミオシン、重鎖1、骨格筋、成人(MYH1);システイン及びグリシン−リッチタンパク質3(CSRP3);アクチニン、アルファ2(ACTN2);トロポニンI型2(TNNI2);シトクロムP450、ファミリー26、サブファミリーB、ポリペプチド1(CYP26B1)、タイチンキャップ(TCAP)、及びそれらの組み合わせを含む。例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開US20030027136、US20070231791を参照されたい。
測定された抗PAD4自己抗体レベルに由来する抗PAD4自己抗体レベルまたは正規化スコアは、単独で(例えば、治療、診断、予後またはモニタリングの目的のために)または他のバイオマーカー(例えば、遺伝子シグネチャーを誘導するために使用される遺伝子パネル)から得られたレベルまたは正規化されたスコアと組み合わせて使用され得る。これらのスコアは、例えば、診断スコアを得るための(i)性別、(ii)年齢、(iii)体格指数、(iv)喫煙状況、(v)付随する薬物、(vi)健康アセスメント品質(HAQ)、(vii)疾患活動性スコア28関節(DAS28)、または二つ以上の組み合わせなどの臨床バイオマーカーに対応するスコアと組み合わせることもできる。このアプローチでは、診断スコアは、疾患の有無の指標である、予め設定された抗PAD4自己抗体閾値と比較されるすべてのマーカー計算の合計から決定される単一の数であり得る。あるいは、診断スコアは、それぞれがバイオマーカー値を表す一連のバーであってもよく、反応のパターンは、疾患の有無の判定のために予め設定されたパターンと比較されてもよい。
本明細書に記載の方法の少なくともいくつかの態様では、関係する計算の複雑さは、バイオマーカーとしての抗PAD4自己抗体の使用を含む方法がコンピュータの使用によって実施されることを必要とすることがある。いくつかの態様では、コンピュータシステムは、プロセッサ、入力装置、出力装置、記憶装置、コンピュータ可読記憶媒体読取装置、通信システム、処理アクセラレーション(例えば、DSPまたは専用プロセッサ)、及びメモリを含む、バスを介して電気的に結合されるハードウェア要素を備える。コンピュータ可読記憶媒体リーダは、記憶装置、メモリ及び/または他のそのようなアクセス可能なシステム資源を含むことができる、一時的及び/またはより永続的にコンピュータ可読情報を含むために、コンピュータ可読記憶媒体、リモート、ローカル、固定及び/またはリムーバブルストレージデバイスとストレージメディア、メモリなどを包括的に表す組み合わせにさらに結合することができる。
単一のアーキテクチャを利用して、現在望ましいプロトコル、プロトコルのバリエーション、拡張などに従ってさらに構成することができる一つまたは複数のサーバを実装することができる。しかしながら、より具体的なアプリケーション要件に従って実施形態を利用することができることは、当業者には明らかであろう。カスタマイズされたハードウェアもまた利用されてもよく、及び/または特定の要素がハードウェア、ソフトウェア、またはその両方で実装されてもよい。さらに、ネットワーク入出力デバイス(図示せず)のような他のコンピューティングデバイスへの接続を使用することができるが、一方、有線、無線、モデム、及び/または他のコンピューティングデバイスへの他の接続(一つ)または接続(複数)も利用できることを理解されたい。
一態様では、システムは、入力データを一つまたは複数のプロセッサに提供するための一つまたは複数のデバイスをさらに備える。システムはさらに、ランク付けされたデータ要素のデータセットを記憶するためのメモリを含む。別の態様では、入力データを提供するための装置は、例えば、蛍光プレートリーダー、質量分析計、または遺伝子チップリーダーのようなデータ要素の特性を検出するための検出器を含む。
システムはさらに、データベース管理システムを含むことができる。トレーニングセットのデータベースから関連情報を抽出するためにクエリを処理するデータベース管理システムによって理解される適切な言語で、ユーザ要求またはクエリをフォーマットすることができる。システムは、ネットワークサーバと一つまたは複数のクライアントが接続されているネットワークに接続可能であってもよい。ネットワークは、当技術分野で知られているように、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)であってもよい。好ましくは、サーバは、ユーザ要求を処理するためのデータベースデータにアクセスするためのコンピュータプログラム製品(例えば、ソフトウェア)を実行するために必要なハードウェアを含む。システムは、データ要素に関するデータ(例えば、発現値)をシステムに提供するために、入力装置と通信することができる。一態様では、入力装置は、例えば、質量分析計、遺伝子チップまたはアレイリーダーなどを含む遺伝子発現プロファイリングシステムを含むことができる。
本明細書に記載されたいくつかの態様は、コンピュータプログラム製品を含むように実施することができる。コンピュータプログラム製品は、アプリケーションプログラムにデータベースを有するコンピュータ上で実行させるために、媒体に埋め込まれたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ可読媒体を含むことができる。本明細書で使用される場合、「コンピュータプログラム製品」は、あらゆる性質(例えば、書面、電子、磁気、光学またはその他)の物理的媒体に含まれ、かつ、コンピュータまたは他の自動データ処理システムと共に使用することができる自然言語またはプログラミング言語の文の形式で編成された一連の指示を指す。そのようなプログラミング言語ステートメントは、コンピュータまたはデータ処理システムによって実行されると、コンピュータまたはデータ処理システムがステートメントの特定の内容に従って動作する。
コンピュータプログラム製品は、限定はしないが、ソースコード及びオブジェクトコードのプログラム、及び/またはコンピュータ可読媒体に埋め込まれたテストまたはデータライブラリを含む。さらに、コンピュータシステムまたはデータ処理機器装置があらかじめ選択された方法で動作することを可能にするコンピュータプログラム製品は、元のソースコード、アセンブリコード、オブジェクトコード、機械言語、上記の暗号化されたバージョン、及び任意の及びすべての同等物を含むがこれに限定されない、いくつかの形態で提供されてもよい。
一態様では、本明細書に開示される治療、診断、予後、またはモニタリング方法を実施するためのコンピュータプログラム製品が提供され、例えば、抗PAD4自己抗体が患者から採取した試料中に存在する場合、または患者から採取した試料中の抗PAD4自己抗体レベルが所定の抗PAD4自己抗体閾値レベルを上回る場合には、GM−CSFRa(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を、それを必要とする患者に投与するかどうかを決定する。
コンピュータプログラム製品は、コンピューティングデバイスまたはシステムのプロセッサによって実行可能なプログラムコードを具現化するコンピュータ可読媒体を含み、該プログラムコードは、
・対象の生体試料に起因するデータを取得するコードであって、データは、単独で、または生物学的試料中の他のバイオマーカー(例えば、生物学的マーカーまたは臨床マーカー)に対応する値と組み合わせて、抗PAD4自己抗体レベル値(存在/不存在、量、またはそうでなければ、これらのレベル値に由来するデータ)を含む、コードと、
・GM−CSFRα(例えば、マブリリムマブ)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を、それを必要とする患者に投与するかどうかを示す分類方法を実行するコードと、を含む。
様々な態様が方法または装置として説明されているが、態様は、コンピュータに結合されたコード、例えばコンピュータ上に常駐するコードまたはコンピュータによってアクセス可能なコードを介して実施できることを理解されたい。例えば、上述の方法の多くを実現するために、ソフトウェア及びデータベースを利用することができる。したがって、ハードウェアによって達成される態様に加えて、これらの態様は、そこに具体化されたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能媒体からなる製品を使用することによって達成され得、このことが本明細書に開示された機能の実行を可能にすることにも留意されたい。したがって、態様は、それらのプログラムコード手段においても本特許により保護されていると考えられることが望まれる。
さらに、いくつかの態様は、RAM、ROM、磁気媒体、光媒体、または光磁気媒体を含むが、これらに限定されない、事実上あらゆる種類のコンピュータ可読メモリにコードを格納することができる。さらにより一般的には、いくつかの態様は、汎用プロセッサ、マイクロコード、PLA、またはASIC上で動作するソフトウェアを含むが、これに限定されないソフトウェアで、もしくはハードウェアで、またはこれらの任意の組み合わせで実施することができる。
いくつかの態様は、伝送媒体を介して伝播される信号(例えば、電気的及び光学的)だけでなく、搬送波に具現化されるコンピュータ信号として達成され得ることも想定される。したがって、上述の様々なタイプの情報は、データ構造などの構造でフォーマットされ、伝送媒体を介して電気信号として送信されるか、またはコンピュータ可読媒体に格納される。
特定の実施形態
実施形態1:関節リウマチ患者を治療する方法であって、患者から採取した試料中の抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(抗PAD4)自己抗体のレベルがアッセイの下限値(LLOQ)を下回る場合に、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体アルファ(GM−CSFRα)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、方法。
実施形態2:関節リウマチ患者を治療する方法であって、患者から採取した試料中の抗PAD4のレベルがアッセイのLLOQを下回る場合、及び所定のバイオマーカー閾値レベルを上回るか下回る、または一つもしくは複数の対照試料におけるバイオマーカーレベルを上回るか下回る、患者から採取された試料中の少なくとも一つの追加的なバイオマーカーのレベルを患者が提示する場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、方法。
実施形態3:試料が患者から得られ、試料中の抗PAD4自己抗体のレベルの測定のために提出される、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4:関節リウマチ患者を治療する方法であって、試料中の抗PAD4自己抗体レベルの測定のために患者から採取した試料を提出すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、方法。
実施形態5:関節リウマチ患者を治療する方法であって、試料中の抗PAD4自己抗体レベルの測定のために患者から採取した試料を提出すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の患者への投与を中断することを含む、方法。
実施形態6:関節リウマチ患者を治療する方法であって、関節リウマチを有する患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体レベルを測定すること;試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルが、アッセイの前記LLOQを上回るか下回るかを判定すること;及び患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するように医療提供者に助言することを含む、方法。
実施形態7:関節リウマチ患者を治療する方法であって、関節リウマチを有する患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体レベルを測定すること;試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルが、アッセイのLLOQを下回るかどうかを決定すること;及び患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の患者への投与を中断するように医療提供者に助言することを含む、方法。
実施形態8:関節リウマチ患者を治療する方法であって、試料中の抗PAD4自己抗体レベルの測定のために患者から採取した試料を提出すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、方法。
実施形態9:関節リウマチ患者を治療する方法であって、試料中の抗PAD4自己抗体レベルの測定のために患者から採取した試料を提出すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の患者への投与を中断することを含む、方法。
実施形態10:関節リウマチと診断された患者を、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンで治療するかどうかを決定する方法であって、関節リウマチと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体レベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンにより患者を治療すること、または治療するように医療提供者に指示することを含む、方法。
実施形態11:関節リウマチと診断された患者を、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンで治療するかどうかを決定する方法であって、関節リウマチと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体レベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与を含む治療レジメンによる患者の治療を中断すること、または治療を中断するように医療提供者に指示することを含む、方法。
実施形態12:関節リウマチと診断された患者を、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片での治療の候補として選択する方法であって、関節リウマチと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体レベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4レベルがアッセイのLLOQを下回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片で患者を治療すること、または治療するように医療提供者に指示することを含む、方法。
実施形態13:関節リウマチと診断された患者を、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片での治療の候補として選択する方法であって、関節リウマチと診断された患者から得られた試料中の抗PAD4自己抗体レベルを測定すること、または測定するように臨床検査室に指示すること;及び試料中の患者の抗PAD4自己抗体レベルがアッセイのLLOQを上回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片による患者の治療を中断するか、または代替治療を選択するように医療提供者に指示することを含む、方法。
実施形態14:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、マブリリムマブまたはその抗原結合性断片を含む、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態15:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、マブリリムマブまたはその抗原結合性断片からなる、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態16:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、マブリリムマブと同じエピトープに特異的に結合する、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態17:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、同じエピトープへの結合についてマブリリムマブと特異的に競合する、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態18:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び/または配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態19:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号6〜11に記載のアミノ酸配列を有する相補性決定領域の少なくとも一つを含む、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態20:GM−CSFRαに特異的に結合するその抗原結合性断片の抗体が、配列番号6〜11に記載のアミノ酸配列を有するCDRを含む、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態21:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の投与前、投与中、または投与後に、一種類以上の追加の疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)で患者が治療されたことがある、実施形態1〜20のいずれか一つに記載の方法。
実施形態22:DMARDが、アバタセプト、アダリムマブ、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、D−ペニシラミン、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、レフルノミド、メトトレキセート、ミノサイクリン、リツキシマブ、スルファサラジン、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態21に記載の方法。
実施形態23:患者から得られた試料が、全血、血清、血漿、または滑液のうちの一つ以上を含む、実施形態1〜22のいずれか一つに記載の方法。
実施形態24:患者から得られた試料が血清である、実施形態23に記載の方法。
実施形態25:一つもしくは複数の追加のバイオマーカーの発現レベルもしくは活性を決定すること、もしくは少なくとも一つの臨床状態マーカーを決定すること、もしくはそれらの組み合わせ、これらの決定のために患者から採取した試料を提出すること、またはこれらを決定するように臨床検査室に指示すること、をさらに含む、実施形態1〜24のいずれか一つに記載の方法。
実施形態26:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が固定用量で投与される、実施形態1〜25のいずれか一つに記載の方法。
実施形態27:GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、少なくとも150mg/用量の固定用量で投与される、実施形態26に記載の方法。
実施形態28:患者の抗PAD4自己抗体レベルが、イムノアッセイ、凝集アッセイまたは均一系アッセイにおいて測定される、実施形態1〜27に記載の方法。
実施形態29:患者の抗PAD4自己抗体レベルが、イムノアッセイで測定され、イムノアッセイが検出可能に標識されたPAD4を使用する、実施形態28に記載の方法。
実施形態30:検出可能に標識されたPAD4がルテニル化PAD4である、実施形態29に記載の方法。
実施形態31:イムノアッセイが、PAD4に結合した抗PAD4−自己抗体を検出する、実施形態28〜30のいずれか一つに記載の方法。
実施形態32:抗PAD4自己抗体の検出のためのアッセイであって、抗PAD4自己抗体によって認識され得る第一のPAD4分子またはその断片と、抗PAD4自己抗体を認識することができる第二のPAD4分子またはその断片とを含み、第二のPAD4分子が検出可能である、アッセイ。
実施形態33:蛍光部分が検出可能なPAD4に組み込まれている、実施形態32に記載のアッセイ。
実施形態34:蛍光部分がルテニウムである、実施形態33に記載のアッセイ。
実施形態35:関節リウマチ患者を治療する方法であって、実施形態32〜34のいずれか一つに記載のアッセイを用いることにより、患者からの試料中の抗PAD4自己抗体のレベルを測定すること;及び患者からの試料中の抗PAD4自己抗体のレベルが、アッセイの定量下限(LLOQ)を下回る場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、方法。
実施形態36:関節リウマチ患者を治療する方法であって、患者から採取した試料中の抗PAD4のレベルが実施形態32〜34のいずれか一つのアッセイのLLOQを下回る場合、及び所定のバイオマーカー閾値レベルを上回るか下回る、または一つ以上の対照試料におけるバイオマーカーレベルを上回るか下回る、患者から採取された試料中の少なくとも一つの追加のバイオマーカーのレベルを患者が提示する場合に、GM−CSFRαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む、方法。
実施形態37:捕捉PAD4を試験試料または対照試料に接触させること、試料中に存在する場合、抗PAD4自己抗体を捕捉PAD4に結合させること;捕捉PAD4にすでに結合している抗PAD4自己抗体に結合することができる検出PAD4を適用すること;及び抗PAD4自己抗体に結合した検出PAD4の量を測定することによって、試料中の抗PAD4自己抗体の量を決定するための方法。特定の態様では、アッセイは、洗浄ステップ、ブロッキングステップ及びインキュベーションステップをさらに含むことができる。
本明細書で言及されるすべての特許及び刊行物は、その全体が参照により明示的に組み込まれる。
本開示の態様は、抗PAD4自己抗体の検出のためのアッセイ及び臨床検体中の抗PAD4自己抗体の存在を検出するためのアッセイの使用を詳細に記載する以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに定義することができる。本開示の範囲から逸脱することなく、材料及び方法の両方に対する多くの改変が実施され得ることは、当業者には明らかであろう。
実施例1
抗PAD4自己抗体アッセイプロトコル
MSD標準プレート(Meso Scale Discoveryから入手可能)を組換えPAD4(PBS中2μg/mL;50μL/ウェル;Cayman Chemical Company、Ann Arbor、MIから入手可能)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液(PBS/0.05%TWEEN−20(登録商標))で三回洗浄した。洗浄後、150μL/ウェルのブロック緩衝液(例えば、PBS/0.05%TWEEN−20(登録商標)/0.2%I−ブロック緩衝液(Applied Biosystems、Carlsbad、CAから入手可能)を各ウェルに添加し、プレートを室温で1〜4時間インキュベートした。次いで、プレートを上記のように三回洗浄した。
標準曲線については、抗PAD4自己抗体EIA標準(Cayman Chemical Companyから入手可能)をブロック緩衝液中に連続希釈した。抗PAD4自己抗体レベルについて試験される血清試料をブロック緩衝液で希釈した。例えば、対象由来の血清試料をブロック緩衝液中に例えば1:16に希釈した。25マイクロリットル(25μL)の各標準試料または希釈試料をプレートに添加し、プレートを振とう機上で穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。再度、プレートを上記のように三回洗浄した。洗浄後、ルテニル化組換えPAD4(25μLの2μg/ml溶液)を各ウェルに添加し、プレートを振とう機上で穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。再度、プレートを上記のように三回洗浄した。洗浄後、1X MSD読み取りバッファー(Meso Scale Discovery、Rockville、MDから入手可能)150μLを各ウェルに添加した。最後に、プレートをMSDプレートリーダー(Meso Scale Discoveryから入手可能)で読み取った。
実施例2
関節リウマチ対象の血清中の抗PAD4自己抗体の検出
この実施例は、本開示において提供される抗PAD4自己抗体アッセイが、関節リウマチを有する対象の血清中の抗PAD4自己抗体を検出するために使用され得ることを実証する。マブリリムマブの三回の独立した臨床試験における対象のベースライン時(試験開始時)に集めた血清試料を、実施例1の抗PAD4自己抗体アッセイを用いて試験した。図は、三つの臨床試験のそれぞれからの、試験したすべての対象における抗PAD4自己抗体の測定されたレベルを示す。同様の頻度の対象が、三つの試験において検出可能な抗PAD4自己抗体(アッセイのLLOQである5000U/mLを上回るとして定義される)を有しており、32%(試験A)、39%(試験B)及び42%(試験C)の対象が、以下の表1に示すように試験で陽性と判定された。
(表1)RA対象の血清中の抗PAD4自己抗体レベル
実施例3
抗PAD3自己抗体アッセイプロトコル
組換えPAD3(PBS中2μg/mL;25μL/ウェル;SignalChem、Richmond、British Columbia、Canadaから入手可能)を用いてMSD標準プレート(Meso Scale Discoveryから入手可能)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液(PBS/0.05%TWEEN−20(登録商標))で三回洗浄した。洗浄後、150μL/ウェルのブロック緩衝液(例えば、PBS/0.05%TWEEN−20(登録商標)/0.2%I−ブロック緩衝液(Applied BioSystems、Carlsbad、CAから入手可能)を各ウェルに添加し、プレートを室温で1〜4時間インキュベートした。次いで、プレートを上記のように三回洗浄した。
標準では、抗PAD3自己抗体陽性のRA血清試料をブロック緩衝液で1:64に希釈した。抗PAD3自己抗体レベルについて試験される血清試料をブロック緩衝液中に希釈した。例えば、対象からの血清試料をブロック緩衝液で1:4または1:64または1:1024に希釈した。25マイクロリットル(25μL)の各標準または希釈試料をプレートに添加し、プレートを振とう機上で穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。再度、プレートを上記のように三回洗浄した。洗浄後、ビオチン化ヒトHis10xAvitag_Human PAD3(25μLの2μg/ml溶液)を各ウェルに添加し、プレートを振とう機上で穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。再度、プレートを上記のように三回洗浄した。洗浄後、ストレプトアビジンスルホタッグ(15μLの0.5μg/ml溶液)を各ウェルに加え、室温で30分間インキュベートした。再度、プレートを上記のように三回洗浄した。洗浄後、150μLの1X MSD Read Buffer(Meso Scale Discovery、Rockville、MDから入手可能)を各ウェルに添加した。最後に、プレートをMSDプレートリーダー(Meso Scale Discoveryから入手可能)で読み取った。試験試料は、その試料について検出されたECLカウントがアッセイのLLOQを上回っていれば陽性であると判定された(試験した血清試料中の検出されたECLカウント:陰性対照試料中のECLカウントの比≧1.37)。
実施例4
関節リウマチ対象の血清中の抗PAD3自己抗体の検出
この実施例は、本開示において提供される抗PAD3自己抗体アッセイが、関節リウマチを有する対象の血清中の抗PAD3自己抗体を検出するために使用され得ることを実証する。マブリリムマブの三回の独立した臨床試験における対象のベースライン時(試験開始時)に収集した血清試料を、実施例3の抗PAD3自己抗体アッセイを用いて試験した。表2は、三つの臨床試験のそれぞれからの、試験した全ての対象における抗PAD3自己抗体検出の結果を示す。これらの試験の三つ全てにおいて、試験された対象のうち少数が、検出可能な抗PAD3自己抗体(アッセイのLLOQを上回るとして定義され、試験した血清試料中の検出されたECLカウント:陰性対照試料中のECLカウントの比が≧1.37)を有しており、16%(試験A)、24%(試験B)及び31%(試験C)の対象が、以下の表2に示すように試験で陽性と判定された。
実施例5
中程度から重度の関節リウマチの対象におけるマブリリムマブの有効性と安全性を評価するためのフェーズ2b、無作為化二重盲検試験
試験Aは、成人発症RA(2010年米国リウマチ学会(American College of Rheumatology[ACR])及び欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism[EULAR])分類基準によって定義される)を有し、一つ以上の従来の疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)に対する不適切な応答、並びにMTXによる治療にもかかわらず少なくとも中程度に活性な疾患(28関節における疾患活動性スコア[DAS28]≧3.2 C−反応性タンパク質[CRP]/赤血球沈降速度[ESR]によって定義される)及び少なくとも四つの関節腫脹を有する、18〜80歳の対象において、メトトレキセート(MTX)と併用した三回の皮下(SC)用量のマビリムマブの有効性及び安全性を評価する、フェーズ2b無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間多施設共同試験であった。
選択基準は、以下であった。
・2010年のACR/EULAR分類基準(Aletaha et al、2010)によって定義される成人発症RAの診断
・スクリーニング時にDAS28(CRP)≧3.2、1日目にDAS28(ESR)≧3.2(van Gestel et al、1998)によって定義される、少なくとも中程度に活動性の疾患
・スクリーニング及び1日目に少なくとも四つの関節腫脹
・一つまたは複数の従来のDMARDに不適切な応答を持つ対象
・安定した用量でスクリーニングする前の少なくとも最後の4週間のスクリーニングの前に、経口または注射可能なMTX(7.5〜25.0mg/週)を12週間投与する
合計326人の対象を1:1:1:1の比率で無作為化して、マブリリムマブの3種類のSC用量(30、100、または150mg)のうちの一つ、またはプラセボをQ2Wで24週間、固定用量の経口または注射可能なMTX(7.5 25.0mg/週)と共に以下のように投与した:
・治療アーム1:30mgSCマブリリムマブQ2W+MTX(n=70)
・治療アーム2:100mgSCマブリリムマブQ2W+MTX(n=70)
・治療アーム3:150mgSCマブリリムマブQ2W+MTX(n=70)
・治療アーム4:SCプラセボQ2W+MTX(n=70)
対象は、SC注射による治験薬(マブリリムマブまたはプラセボ)の投与が0週目(一日目)から開始され、治験薬の投与はQ2Wで24週間続いた。この試験の主要な解析は、試験の最後の対象が24週目の来院を完了した時に実施された。この試験の主要評価項目は、12週目(85日目)での1日目DAS28(CRP)スコアからの変化及び24週目(169日目)でのACR20%改善基準(ACR20)であった。12週目(85日目)でのベースラインDAS28(CRP)からの変化を、1日目のDAS28(CRP)のために調整した反復測定モデルを用いて分析した。ロジスティック回帰を用いて、各来院時のACR20、ACR50%改善基準(ACR50)、及びACR70%改善基準(ACR70)の応答率によって有効性を評価した。
サブグループ解析:ベースライン抗PAD4自己抗体
マブリリムマブに対する臨床応答と好中球及びマクロファージ生物学に関連する末梢血バイオマーカーとの関係を調べるために、検出可能な抗PAD4自己抗体のベースラインの陽性または陰性によって定義されるサブグループを分析した。抗PAD4自己抗体の陽性は、アッセイのLLOQを上回る測定された抗PAD4自己抗体レベルを有するとして定義された。ベースライン血清試料は、試験中の326人の対象のうちの323人から入手可能であり、これらを抗PAD4自己抗体について試験した。全体として、対象の32%が抗PAD4自己抗体について陽性であり、以下の表3に示すように、各治療アームにおいて、同様の割合で陽性であった。
24週間の治療後の主要評価項目の時点でのACR20、ACR50、ACR70及びDAS28(CRP)を含む、各臨床エンドポイントについて、サブグループ分析を実施した。これらの臨床エンドポイントにわたって、有意な治療*バイオマーカー相互作用が観察された。ACR20エンドポイントについて、抗PAD4陰性サブグループは、プラセボと比較してマブリリムマブに対する応答がはるかに優れているような有意な治療*バイオマーカー相互作用(p=0.045)を示し、一方、抗PAD4陽性サブグループは、全ての用量群にわたって、プラセボと比較したマブリリムマブに対する応答に小さな差を示した(表4の結果を参照)。例えば、抗PAD4陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるACR20応答は77%(プラセボと比較してΔ=60%)であり、一方、抗PAD4陽性サブグループでは、ACR20応答は67%であった(プラセボと比較してΔ=27%)。
(表4)24週目での、抗PAD4自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるACR20応答(%)
ACR50応答についても同様の効果が観察され、ここでも有意な治療*バイオマーカー相互作用が存在した(p=0.024)。例えば、抗PAD4陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるACR50応答は40%(プラセボと比較してΔ=37%)であり、一方、抗PAD4陽性サブグループでは、ACR50応答は41%であった(プラセボと比較してΔ=9%、以下の表56、を参照)。
(表5)24週目での、抗PAD4自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるACR50応答(%)
同様の効果がACR70応答についても観察された。例えば、抗PAD4陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるACR70応答は15%であり(プラセボと比較してΔ=15%)、一方、抗PAD4陽性サブグループでは、ACR70応答は11%であった(プラセボと比較してΔ=−1%、表6)。したがって、プラセボと比較したマブリリムマブに対する応答の差は、ACR20、ACR50及びACR70のエンドポイントにわたって一貫していた。さらに、マブリリムマブ治療群におけるプラセボに対する応答率の差は、より大きな規模の臨床応答尺度(すなわち、ACR50及びACR70)において大きさが増加した。
(表6)24週目での、抗PAD4自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるACR70応答(%)
このバイオマーカーの効果は、臨床応答の第四の尺度であるDAS28(CRP)の変化を用いても試験した。有意な治療*バイオマーカー相互作用(p=0.002)が、DAS28(CRP)エンドポイントのベースライン抗PAD4自己抗体レベルについて観察された。例えば、抗PAD4陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるDAS28(CRP)の変化は−2.15(プラセボと比較してΔ=−1.44)であり、一方、抗PAD4陽性サブグループでは、DAS28(CRP)の変化は−2.24(プラセボと比較してΔ=−0.71)であった。下の表7を参照されたい。
(表7)24週目での、抗PAD4自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるDAS28(CRP)の変化
試験Aで見られたものと同様の傾向が試験Bで見られた。
サブグループ解析:ベースライン抗PAD3自己抗体
マブリリムマブに対する臨床応答と、タンパク質−アルギニンデイミナーゼファミリーにおける第二のタンパク質であるPAD3に対する自己抗体との関係を調べるために、検出可能な抗PAD3自己抗体のベースラインの陽性または陰性によって定義されるサブグループを分析した。抗PAD3自己抗体の陽性は、アッセイのLLOQを上回る測定された抗PAD3自己抗体レベルを有するとして定義した。ベースライン血清試料は、試験中の326人の対象のうち323人から入手可能であり、これらを抗PAD3自己抗体について試験した。以下の表8に示されるように、全体として対象の16%が抗PAD3自己抗体について陽性であり、各治療アームにおいて、同様の割合で陽性であった。
24週間の治療後の主要評価項目の時点でのACR20、ACR50、ACR70及びDAS28(CRP)を含む、各臨床エンドポイントについて、サブグループ分析を実施した。これらの臨床エンドポイントにわたって、有意な治療*バイオマーカー相互作用は観察されなかった。以下の表9に示すように、ACR20エンドポイントについて、抗PAD3陽性及び陰性サブグループがプラセボと比較してマブリリムマブと同様の応答を示すように、有意な治療*バイオマーカー相互作用は存在しなかった。例えば、抗PAD3陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるACR20応答は、74%(プラセボと比較してΔ=50%)であり、一方、抗PAD3陽性サブグループでは、ACR20応答は73%であった(プラセボと比較してΔ=50%)。
(表9)24週目での抗PAD3自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるACR20応答(%)
以下の表10に示すように、ACR50応答について同様の効果が観察され、ここでも有意な治療*バイオマーカー相互作用は存在しなかった。例えば、抗PAD3陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるACR50応答は40%(プラセボと比較してΔ=28%)であり、一方、抗PAD3陽性サブグループでは、ACR50応答は45%であった(プラセボと比較してΔ=30%)。
(表10)24週目での抗PAD3自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるACR50応答(%)
以下の表11に示すように、ACR70応答について同様の効果が観察された。例えば、抗PAD3陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療アームにおけるACR70応答は15%(プラセボと比較してΔ=10%)であり、一方、抗PAD3陽性サブグループでは、ACR70応答は9%であった(プラセボと比較してΔ=9%)。したがって、プラセボと比較したマブリリムマブに対する応答の差は、ACR20、ACR50及びACR70のエンドポイントにわたって一貫していた。さらに、マブリリムマブ治療群のプラセボに対する応答率の差は、より大きな規模の臨床応答尺度(すなわち、ACR50及びACR70)において大きさが変化しなかった。
(表11)第24週での抗PAD3自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるACR70応答(%)
このバイオマーカーの効果はまた、臨床応答の第四の尺度であるDAS28(CRP)の変化を用いても試験した。以下の表12に示すように、DAS28(CRP)エンドポイントのベースライン抗PAD3自己抗体レベルについては有意な治療*バイオマーカー相互作用は観察されなかった。例えば、抗PAD3陰性サブグループにおける150mgのマブリリムマブ治療群におけるDAS28(CRP)の変化は−2.13(プラセボと比較してΔ=−1.15)であり、一方、抗PAD3陽性サブグループでは、DAS28(CRP)の変化は−2.47(プラセボと比較してΔ=−1.73)であった。これらの結果は、抗PAD4抗体について得られた治療*バイオマーカー相互作用が抗PAD4抗体反応性に特異的であり、タンパク質−アルギニンデイミナーゼファミリーの全メンバーに及ぶ一般的な効果ではないことを示している。
(表12)24週目での抗PAD3自己抗体陽性及び陰性サブグループにおけるDAS28(CRP)の変化
概要及び要約書の部分ではなく、詳細な説明の部分は、特許請求の範囲を解釈するために使用されることが意図されていることを理解されたい。概要及び要約書の部分は、発明者によって検討された本発明の一つまたは複数の例示的な実施形態を示すが、本発明及び添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
本発明は、特定の機能の実装及びその関係を示す機能的な構成ブロックの助けを借りて上記で説明されている。これらの機能的ビルディングブロックの境界は、説明の便宜上、本明細書において任意に定義されている。指定された機能とその関係が適切に実行されている限り、代替境界を定義することができる。
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするであろうし、他の人が、当業者の知識の範囲内で知識を適用することによって、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を様々な用途に容易に変更及び/または適合させることができる。したがって、そのような適応及び変更は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味及び範囲内にあるものとする。本明細書の表現または用語は、本明細書の用語または表現が教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく説明のためのものであることを理解されたい。
本発明の広さ及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物に従ってのみ規定されるべきである。