相互参照
本出願は、2017年6月16日に出願の米国仮出願第62/351,046号に優先権を要求し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、多官能性分子、及びそのような多官能性分子を調製及び使用する方法に関する。本発明は更に、標的分子に結合する、又は標的分子選択性若しくは細胞透過性のような他の望ましい特性を有することができるコード分子を同定するために多官能性分子を使用する方法を提供する。
例えば薬物のような所望の機能を有する分子が発見されるという基本的に3つの方法がある。それらは自然界で発見され、合理的に設計され、かつ試行錯誤によって発見される。多くの場合、試行錯誤の方法は間違いなく最も有望であるが、それは驚くほど非効率的なことがある。試行錯誤の方法をより効率的にするための手がかりは、膨大な数の合成が可能で、所望の特性を有することが検査された分子のコンビナトリアルライブラリーを作製することであった。試行錯誤により新しい分子を効率的に発見する必要性は、コンビナトリアルケミストリーの分野を生み出した。
コンビナトリアルライブラリーの合成及び検査には3つの大きな問題がある。第1に、コンビナトリアルライブラリーからプローブ分子を調製するための多くの方法は、組み立てることができる連続した化学サブユニット又はビルディングブロックのタイプ及び数によって制限される。第2に、連続するビルディングブロックを組み立てる方法の多くは、各工程の反応効率によって制限される。第3に、効率を維持するために、膨大な数のプローブ分子を同時に所望の特性を有するかどうか試験する必要があることが理解される。分子形状の十分な多様性を有するライブラリーは、任意の所与の分子の数個のコピーのみを有し得ることも理解される。低いコピー数は、所望の性質を有するプローブ分子の同定を妨げる。したがって、各プローブ分子は、研究者が所望のプローブ分子を同定できるように、固有の識別子で標識されるべきである。
研究者は、これらの問題のいくつかを解決するために、DNAコードプローブ分子を開発している。何人かの研究者は、コンビナトリアル合成の1以上の工程を指示する鋳型としてDNAオリゴヌクレオチドを使用してきた。他の研究者は、コンビナトリアル合成を記録し、プローブ分子に固有に標識するDNAオリゴヌクレオチドを使い、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)増幅を用いて標的分子に結合したままである分子プローブを同定することができるようにした。さらに、他の研究者らは、DNAオリゴヌクレオチドを用いてコンビナトリアル合成の1つ以上の工程を指示し、プローブ分子を固有の識別子で標識する。
これらの方法の多くが成功したにもかかわらず、いくつかの問題が依然として残っている。既存の方法は、依然として、プローブ分子を合成するための逐次反応工程の効率が低いという問題がある。既存の方法はまた、標的分子をしっかりと結合するプローブ分子を検出するのが困難であるが、少ない数で存在する。この難しさは、偽陰性をもたらす可能性がある。連続した反応工程の反応効率を高めるオリゴヌクレオチドプローブ分子を製造する方法が必要である。たとえそれらのプローブ分子が少ない数で存在しても、標的分子に結合するプローブ分子を同定することができる必要がある。
本開示は、コードされた分子に関する。特定の実施形態において、コードされる分子は、式(I)による分子である。
(I) ([(B1)M-D-L1]Y-H1)o-G-(H2-[L2-E-(B2)K]W)P
ここで、
Gはオリゴヌクレオチドであり、オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域を含み、少なくとも2つのコード領域は一本鎖であり、少なくとも1つの末端コード領域は一本鎖又は二本鎖であり;
H1はオリゴヌクレオチドを含むヘアピン構造であり、H1は5’末端で終結し、オリゴヌクレオチドGの末端に結合しており;
H2は、オリゴヌクレオチドを含むヘアピン構造であり、ここでH2は3’末端で終結し、オリゴヌクレオチドGの末端に結合しており;
Dは第1ビルディングブロックであり;
Eは第2ビルディングブロックであり、D及びEは同一又は異なっており;
B1は位置ビルディングブロックであり、Mは1〜20の整数であり;
B2は位置ビルディングブロックであり、Kは1〜20の整数を表し、B1及びB2は同一又は異なっており、M及びKは同一又は異なっており;
L1はH1をDに作動可能に連結するリンカーであり;
L2は、H2をEに作動可能に連結するリンカーであり;
Oは0〜1の整数であり;
Pは0〜1の整数であり;
ただし、O及びPの少なくとも1つは1であり;
Yは1〜5の整数であり;
Wは1〜5の整数であり;
位置MのB1及び位置KのB2の、各位置ビルディングブロックの少なくとも1つがコード領域の1つによって同定され、第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの少なくとも1つが、少なくとも1つの末端コード領域によって同定されている。
式(I)の分子の特定の実施形態において、Gは、式(CN−(ZN−CN+1)A)で表される配列を含み、式中、Cはコード領域であり、Zは非コード領域であり、Nは1〜20の整数であり、Aは1〜20の整数であり、各非コード領域は4〜50個のヌクレオチドを含み、任意で二本鎖である。式(I)の分子の特定の実施形態において、O又はPの一方はゼロである。式(I)の分子の特定の実施形態では、Y及びWの少なくとも1つは1〜2の整数である。式(I)の分子の特定の実施形態では、各コード領域は6〜50個のヌクレオチドを含む。式(I)の分子の特定の実施形態において、H1及びH2の少なくとも1つは、20〜90個のヌクレオチドを含む。式(I)の分子の特定の実施形態では、各コード領域は12〜40個のヌクレオチドを含む。式(I)の分子の特定の実施形態では、Pはゼロであり、Yは1〜2の整数であり、各コード領域は12〜40個のヌクレオチドを含む。式(I)の分子の特定の実施形態では、Oはゼロであり、Wは1〜2の整数であり、各コード領域は12〜40個のヌクレオチドを含む。
本開示は、標的分子を結合又は選択することができるプローブ分子を同定する方法に関し、標的分子をプローブ分子のプールに曝露することを含み、プローブ分子は上記式(I)に従い、標的分子に結合しない少なくとも1つのプローブ分子を除去し、コピー配列を形成する標的分子から除去されなかった少なくとも1つのプローブ分子から少なくとも1つのオリゴヌクレオチドGを増幅し、コピー配列の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドGの配列を決定して、プローブ分子の少なくとも2つのコード領域を同定し、位置MのB1及び位置KのB2の各位置ビルディングブロックの少なくとも1つを更に同定し、次いでコピー分子の少なくとも1つの末端コード領域を同定し、プローブ分子の第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの少なくとも1つを更に同定することができる。
本開示は、式(I)の分子を形成する方法に関する。特定の実施形態において、式(I)の分子を形成する方法は、
少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイを提供し、上記少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイは、少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイ上に固定化された少なくとも1つの一本鎖アンチコドンオリゴマーを含み、少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイ上に固定された少なくとも1つの一本鎖アンチコドンオリゴマー配列は、式(II)の分子のコード領域にハイブリダイズすることができ:
(II)([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)O−G−(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W)P
ここで、
Gはオリゴヌクレオチドであり、オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域を含み、少なくとも2つのコード領域は一本鎖であり、少なくとも1つの末端コード領域は一本鎖又は二本鎖であり;
H1はオリゴヌクレオチドを含むヘアピン構造であり、H1は5’末端で終結し、オリゴヌクレオチドGの末端に結合しており;
H2は、オリゴヌクレオチドを含むヘアピン構造であり、ここでH2は3’末端で終結し、オリゴヌクレオチドGの末端に結合しており;
Dは第1ビルディングブロックであり;
Eは第2ビルディングブロックであり、D及びEは同一又は異なっており;
B1は位置ビルディングブロックであり、Mは1〜20の整数を表し;
B2は位置ビルディングブロックであり、Kは1〜20の整数を表し、B1及びB2は同一又は異なっており、M及びKは同一又は異なっており;
L1はH1をDに作動可能に連結するリンカーであり;
L2は、H2をEに作動可能に連結するリンカーであり;
Oは0〜1の整数であり;
Pは0〜1の整数であり;
ただし、O及びPの少なくとも1つは1であり;
Yは1〜5の整数であり;
Wは1〜5の整数であり;そして
位置MのB1及び位置KのB2の各位置ビルディングブロックの少なくとも1つはコード領域の1つによって同定され、第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの少なくとも1つは、少なくとも1つの末端コード領域によって同定されており;
少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイ上に固定された少なくとも1つの一本鎖アンチコドンオリゴマーに式(II)の分子のサブプールのコード領域をハイブリダイズさせることにより、式(II)の分子のプールをサブプールに分類し;
式(II)の分子のサブプールを少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイから別々の容器に任意に放出し;
ビルディングブロックB1及びB2の少なくとも1つを提供し;そして
ビルディングブロックB1及びB2の少なくとも1つを式(II)の分子と反応させて、式(I)の分子のサブプールを形成する工程を含む:
(I) ([(B1)M-D-L1]Y-H1)o-G-(H2-[L2-E-(B2)K]W)P
ここで、
Gはオリゴヌクレオチドであり、オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域を含み、各コード領域は一本鎖であり、少なくとも1つの末端コード領域は一本鎖又は二本鎖であり;
H1はオリゴヌクレオチドを含むヘアピン構造であり、H1は5’末端で終結し、オリゴヌクレオチドGの末端に結合しており;
H2は、オリゴヌクレオチドを含むヘアピン構造であり、ここでH2は3’末端で終結し、オリゴヌクレオチドGの末端に結合しており;
Dは第1ビルディングブロックであり;
Eは第2ビルディングブロックであり、D及びEは同一又は異なっており;
B1は位置ビルディングブロックであり、Mは1〜20の整数であり;
B2は位置ビルディングブロックであり、Kは1〜20の整数を表し、B1及びB2は同一又は異なっており、M及びKは同一又は異なっており;
L1はH1をDに作動可能に連結するリンカーであり;
L2は、H2をEに作動可能に連結するリンカーであり;
Oは0〜1の整数であり;
Pは0〜1の整数であり;
ただし、O及びPの少なくとも1つは1であり;
Yは1〜5の整数であり;
Wは1〜5の整数であり;
位置MのB1及び位置KのB2の、各位置ビルディングブロックの少なくとも1つがコード領域の1つによって同定され、第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの少なくとも1つが、少なくとも1つの末端コード領域によって同定されている。
式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、式(II)の分子は、
オリゴヌクレオチドのプールを提供し、上記オリゴヌクレオチドG’は少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域を含み、少なくとも2つのコード領域は一本鎖であり、少なくとも1つの末端コード領域は一本鎖であり、オリゴヌクレオチドG’の5’末端及び/又は3’末端の少なくとも1つの末端コード領域が異なり;
少なくとも1つの荷電キャリア(charged carrier)アンチコドンを提供し、上記少なくとも1つの荷電キャリアアンチコドンは式([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)及び/又は(H2−[L2−E−(Β2)(K−1)]W)を有し;
オリゴヌクレオチドG’のプールと少なくとも1つの荷電キャリアアンチコドンとを組み合わせ;
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドG’の5’末端をH1の3’末端に結合させ、及び/又は少なくとも1つのオリゴヌクレオチドG’の3’末端をH2の5’末端に結合させて式(II)の分子のプールを形成することにより調製する:
(II)([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)O−G−(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W)P
G、H1、H2、D、E、B1、B2、L1、L2、O、P、Y及びWは上記式(I)で定義した通りであり、M及びKは1である。
式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、この方法は、式(I)又は(II)の分子の少なくとも1つの末端コード領域からオリゴヌクレオチドの一部を除去することを更に含む。式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、この方法は、H1のGへの及びH2のGへの少なくとも1つのライゲーションを更に含む。式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態において、Gは式(CN−(ZN−CN+1)A)で表される配列を含み、Cはコード領域であり、Zは非コード領域であり、Nは1〜20の整数であり、Aは1〜20の整数であり;各非コード領域は4〜50個のヌクレオチドを含み、任意で二本鎖である。式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、O又はPの一方は0である。式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、Y及びWの少なくとも1つは1〜2の整数である。式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、H1及びH2の少なくとも1つは、20〜90個のヌクレオチドを含む。式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、Pは0であり、Yは1〜2の整数であり、各コード領域は12〜40個のヌクレオチドを含み;又はOは0であり、Wは1〜2の整数であり、各コード領域は12〜40個のヌクレオチドを含む。
前述の概要、並びに実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解されるであろう。説明のために、図面には好ましいいくつかの実施形態が示されている。示された実施形態は、示された正確な詳細に限定されないことを理解されたい。
図1は、多官能性分子を調製する方法の実施形態を示す図である。
図2は、複数の多官能性分子を調製する方法の実施形態の説明図である。
図3は、式(I)の分子を形成するための方法の実施形態を説明する流れ図である。
図4は、式(I)の分子を形成するための方法の実施形態を説明する流れ図である。
詳細な説明
他に注記がない限り、全ての測定値は標準メトリック単位である。
他に注記がない限り、単語「a」、「an」、又は「the」の全てのインスタンスは、それらが修飾する単語の1つ又は1つ以上に言及することができる。
他に注記がない限り、「少なくとも1つ」の語句は、1つ又は1以上の対象物を意味する。例えば「H1及びH2の少なくとも1つ」は、H1、H2、又はその両方を意味する。
他に注記がない限り、用語「約」は、記載されている百分率ではない数の±10%を指し、最も近い整数に丸められる。例えば、約100mmは、90〜110mmを含む。他に注記がない限り、用語「約」は、百分率の±5%を意味する。例えば、約20%は、15〜25%を含む。「約」という用語が範囲に関して論じられている場合、この用語は、下限よりも少なく、上限よりも多い適切な量を指す。例えば、約100〜約200mmは、90〜220mmを含む。
他に注記がない限り、用語「ハイブリダイズする」、「ハイブリダイズ」及び「ハイブリダイズされた」は、ワトソン−クリック塩基対合を含み、DNAペアリングのグアニン−シトシンとアデニン−チミン(G−CとA−T)、及びRNAのペアリングのグアニン−シトシンとアデニン−ウラシル(G−CとA−U)を含む。これらの用語は、アンチコドン又はアンチコーディング領域と呼ばれる相補鎖のヌクレオチドのためのヌクレオチド鎖の選択的認識の文脈で使用される。
「選択的にハイブリダイズする」、「選択的ハイブリダイゼーション」及び「選択的に選別する」という語句は、非相補鎖と比較して5:1から100:1又はそれ以上の相補鎖の選択性を意味する。
「多官能性分子」という用語は、オリゴヌクレオチド及び少なくとも1つのコードされた部分を含む本開示の分子を意味する。
用語「コードされた部分」は、第1ビルディングブロック、第2ビルディングブロック、及び位置ビルディングブロックB1及びB2等のビルディングブロックのみを含む多官能性分子の1以上の部分を意味する。「コードされた部分」という用語は、コードされた部分を合成する過程の一部として付加され得るとしても、ヘアピン構造又はリンカーを含まない。
「コードされた分子」という用語は、多官能性分子のコードされた部分が、多官能性分子の残りから除去若しくは分離された場合におそらく形成されるか、又は形成される分子を意味する。
「プローブ分子」という用語は、多官能性分子又はコードされた分子のコードされた部分が標的分子に結合することができるか、又は標的分子選択性又は細胞透過性のような望ましい特性を選択することができるかを決定するために使用される分子を指す。
「標的分子」という用語は、分子又は構造を指す。例えば、構造は、リボソームのような多巨大分子複合体及びリポソームを含む。
用語「プローブ分子」は、多官能性分子を含むことができる。
「コードされたプローブ分子」という用語は、多官能性分子という用語と同じ意味で用いられる。
用語「ポリディスプレイ(polydisplay)」は、少なくとも2つのコードされた部分を有する多官能性分子を示す。
本開示において、分子式中のハイフン又はダッシュは、式のその部分が共有結合又はハイブリダイゼーションによって互いに直接的に結合されていることを示す。
他に注記がない限り、ヌクレオチド及び整数値のすべての範囲は、すべての中間整数及び終点を含む。例えば、5〜10個のオリゴヌクレオチドの範囲は、5,6,7,8,9、及び10個のヌクレオチドを含むと理解されるであろう。
特定の実施形態では、本開示は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド部分及び少なくとも1つのコード部分を含む多官能性分子に関し、上記オリゴヌクレオチド部分が、コンビナトリアル化学を使用して少なくとも1つのコード部分の合成を指令又はコードする。特定の実施形態では、多官能性分子のオリゴヌクレオチド部分は、多官能性分子の少なくとも1つのコードされた部分を同定することができる。特定の実施形態において、多官能性分子は、多官能性分子の少なくとも1つの末端に結合したヘアピン構造を含み、ヘアピン構造は、多官能性分子の複数のコードされた部分のポリディスプレイを可能にする。理論に縛られることを望むものではないが、複数のコードされた部分のポリディスプレイは、多官能性分子が少数、低濃度、他のプローブ分子に対する低い相対濃度、又は所望の特性の程度がより低くても、本開示の多官能性分子を所望の特性を有するものとしてより効率的に選択することができる。特定の実施形態では、本開示の多官能性分子は、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド部分を含み、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域は、エンコードされた部分のビルディングブロックの配列に相当し、かつエンコードされた部分のビルディングブロックの配列を同定するために使用することができる。特定の実施形態において、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド部分は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド部分のコピーを生成するためにPCRによって増幅され得、そしてオリジナル又はコピーは、多官能性分子の少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域の同一性を決定するために配列が決定される。特定の実施形態では、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域の同一性は、PCRコピーが対応する多官能性分子のコードされた部分を合成するために使用される一連のコンビナトリアル化学工程と相関し得る。
特定の実施形態では、本開示は、多官能性分子を形成する方法、及び標的分子を多官能性分子に曝露して、1つの標的分子又は複数の分子に結合する性質、他の抗標的分子に結合しない性質、酵素によって形成される化学変化に対して耐性である性質、酵素によって容易に化学的に変化する性質、水溶性を有する性質、細胞透過性である性質を含むがこれに限定されない所望の特性を示すコードされた部分、ひいてはコードされた分子を同定する方法に関する。
特定の実施形態において、式(I)の分子は、多官能性分子である。式(I)の分子の特定の実施形態では、Gは、コードされた部分の合成のために指令又は選択されるオリゴヌクレオチドである。式(I)の分子の特定の実施形態において、(B1)M−D及びE−(B2)Kはそれぞれ、コードされた部分を表す。式(I)の分子の特定の実施形態では、分子はオリゴヌクレオチド部分及び少なくとも1つのコードされた部分を含む。オリゴヌクレオチドGの多くの構造的特徴は、それらが式(I)の分子の少なくとも1つのコードされた部分の合成を指令又はコードしている点で、本明細書で考察されることが理解される。式(I)の分子のオリゴヌクレオチドGの多くの構造的特徴は、式(I)の分子を調製するために使用される合成工程を同定するための、オリゴヌクレオチドG又はそのPCRコピーの能力、ひいては式(I)の分子のコードされた部分を形成するために使用されるビルディングブロック及び化学反応の配列及び/又は同一性に関して論じられていることが理解される。
式(I)の分子の特定の実施形態において、Gはオリゴヌクレオチドを含むか、又はオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つのコード領域を含み、例えば約50%〜約100%を含み、また例えば約90%〜約100%を含む、コード領域の約1%〜約100%が一本鎖である。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは少なくとも1つの末端コード領域を含み、末端コード領域の1つ又は2つは一本鎖である。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは、少なくとも1つの末端コード領域を含み、末端コード領域の1つ又は2つは二本鎖である。
式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは、少なくとも2個のコード領域、例えば2〜約21個のコード領域、例えば3〜10個のコード領域、例えば3〜5個のコード領域を含む。特定の実施形態では、コード領域の数が2を下回ると、合成可能なコード部分の数が少なくなりすぎて実用的ではない。特定の実施形態では、コード領域の数が20を超える場合、合成の非効率性が正確な合成を妨害する。
式(I)の分子の特定の実施形態では、少なくとも2つのコード領域は、約6〜約50個のヌクレオチド、例えば約12〜約40個のヌクレオチド、例えば約8〜約30個のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、コード領域が約6個未満のヌクレオチドを含む場合、コード領域はコードされた部分の合成を正確に指示できない。特定の実施形態では、コード領域が約50個を超えるヌクレオチドを含む場合、コード領域は交差反応性になり得る。そのような交差反応性は、式(I)の分子のコードされた部分を合成するために使用される合成ステップを、コード領域が正確に指示し同定する能力を妨害する。
式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGの目的は、相補的なアンチコード鎖に選択的にハイブリダイズすることによって式(I)の分子の少なくとも1つのコードされた部分の合成を指示することである。特定の実施形態において、コード領域は、相補鎖とのハイブリダイゼーションを促進するために一本鎖である。特定の実施形態では、コード領域の70%〜100%、例えば80%〜99%、例えば80〜95%、が一本鎖である。コード領域のための相補鎖は、存在する場合、合成の間に式(I)の分子のコードされた部分をコードする工程の後に付加され得ることが理解される。
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは天然及び非天然のヌクレオチドを含むことができる。適切なヌクレオチドとしては、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、及びチミン(T)を含むDNA(デオキシリボ核酸)の天然ヌクレオチド、並びにRNA(リボ核酸)の天然ヌクレオチドであるアデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、及びシトシン(C)が挙げられる。他の適切な塩基には、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、イノシン、ジアミノプリン等の天然塩基;例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピオニルシチジン、C5−プロピオニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、4−((3−(2−(2−(3−アミノプロポキシ)エトキシ)プロピル)アミノ)ピリミジン−2(1H)−オン、4−アミノ−5−(ヘプタ−1,5−ジイン−1−イル)ピリミジン−2(1H)−オン、6−メチル−3,7−ジヒドロ−2H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン、3H−ベンゾ[b]ピリミド[4,5−e][1,4]オキサジン−2(10H)−オン及び2−チオシチジン等の塩基誘導体;2’−O−メチル化塩基及び2’−フルオロ塩基を含む2’−置換ヌクレオチド等の修飾ヌクレオチド;2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、ヘキソース等の修飾糖;及び/又はホスホロチオエート及び5’−N−ホスホラミダイト結合等の修飾リン酸基が挙げられる。オリゴヌクレオチドはヌクレオチドのポリマーであることが理解される。用語「ポリマー」及び「オリゴマー」は、本明細書では同じ意味で使用される。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、連続した塩基を含む必要がない。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、リンカー部分又は非ヌクレオチド分子に散在し得る。
式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは、約60%〜100%、例えば約80%〜99%、例えば約80%〜95%を含む、のDNAヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約60%〜100%、例えば約80%〜99%、例えば約80%〜95%のRNAヌクレオチドを含む。
式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは少なくとも2つのコード領域を含み、重複コード領域が同じヌクレオチドの約30%〜1%、例えば約20%〜1%、例えば約10%〜2%のみ共有するのであれば、上記少なくとも2つのコード領域は、同一の外延を持つように重複する。式(I)の分子の特定の実施形態では、末端コード領域を除いて、オリゴヌクレオチドGは、約40%〜100%、例えば約60%〜100%、例えば約80%〜100%が、一本鎖である。式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは少なくとも2つのコード領域を含み、コード領域の少なくとも2つは隣接している。式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGは少なくとも2つのコード領域を含み、少なくとも2つのコード領域は、式(I)の分子のコードされた部分の合成を指示又は記録しないヌクレオチドの領域によって分けられている。
「非コード領域」という用語は、存在する場合、式(I)の分子のコードされた部分の合成を指示するためにヌクレオチドの相補鎖とハイブリダイズすることができないか、又は、合成中に式(I)の分子を選別するために使用される任意のアンチコーディングオリゴヌクレオチドに対応しないオリゴヌクレオチドの領域を意味する。特定の実施形態では、非コード領域は任意である。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1〜約20個の非コード領域、例えば2〜約9個の非コード領域、例えば2〜約4個の非コード領域を含む。特定の実施形態では、非コード領域は、約4〜約50個のヌクレオチド、例えば約12〜約40個のヌクレオチド、例えば約8〜約30個のヌクレオチドを含む。
式(I)の分子の特定の実施形態では、非コード領域の1つの目的は、コード領域を分離してクロスハイブリダイゼーションを回避又は低減することであり、クロス−ハイブリダイゼーションが式(I)の分子のコードされた部分の正確なコード化を妨げるからである。特定の実施形態では、非コード領域の1つの目的は、式(I)の分子に、単にハイブリダイゼーション又はコード化以外の官能性を付加することである。特定の実施形態では、1以上の非コード領域は、蛍光標識又は放射性標識のような標識で修飾されたオリゴヌクレオチドの領域であってもよい。そのような標識は、式(I)の分子の視覚化又は定量化を容易にすることができる。特定の実施形態では、1つ以上の非コード領域が、処理を容易にする官能基又はテザーで修飾される。特定の実施形態では、1つ以上の非コード領域が二本鎖であり、クロスハイブリダイゼーションを低減する。特定の実施形態において、非コード領域は任意であると理解される。特定の実施形態では、適切な非コード領域は、オリゴヌクレオチドのPCR増幅を妨害しない。
特定の実施形態では、1以上のコード領域又は末端コード領域は、蛍光標識又は放射性標識のような標識で修飾されたオリゴヌクレオチドGの領域であってもよい。そのような標識は、式(I)の分子の視覚化又は定量化を容易にすることができる。特定の実施形態では、1以上のコード領域又は末端コード領域は、処理を容易にする官能基又はテザーで修飾される。
式(I)の分子の特定の実施形態では、Gは、式(CN−(ZN−CN+1)A)(式中、Cはコード領域であり、Zは非コード領域であり、Nは1〜20の整数であり、Aは1〜20の整数である)で表される配列を含む。特定の実施形態では、約70%〜100%、例えば約80%〜99%、例えば約80%〜95%、の非コード領域が4〜50個のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、Gが含む、約70%〜100%、例えば約80%〜99%、例えば約80%〜95%、の非コード領域が二本鎖である。
式(I)の分子の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個、例えば1〜2個の、末端コード領域を含む。特定の実施形態では、末端コード領域は、ヘアピン構造に直接結合せず、5’末端又は3’末端で終結するヌクレオチドの配列である。特定の実施形態では、末端コード領域は、ヘアピン構造に直接結合しているヌクレオチドの配列である。オリゴヌクレオチドの両末端がヘアピン構造によって結合されていても、オリゴヌクレオチドはヌクレオチドの基本的な幾何学的配置に基づいて5’及び3’方向を有することが理解される。
特定の実施形態では、末端コード領域の1つの目的は、式(I)の分子の合成中にオリゴヌクレオチドの末端に対する相補的配列を含むヘアピン構造の選択的ハイブリダイゼーションを容易にすることである。特定の実施形態では、末端コード領域は、約6〜約50ヌクレオチド、例えば約12〜約40ヌクレオチド、例えば約8〜約30ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、末端コード領域が約6未満のヌクレオチドを含む場合、その結果、利用可能な数、非交差反応性配列が低すぎて、式(I)の分子のコードされた部分の正確なコード化を妨害する。特定の実施形態では、末端コード領域が約50以上のヌクレオチドを含む場合、末端コード領域は交差反応性になり、1つのヘアピン構造のみに選択的にハイブリダイズするにはあまりにも多くの特異性を失う可能性がある。このような交差反応性は、第1ビルディングブロックD及び/又は第2ビルディングブロックEの付加を正確にコードするためのコード領域の能力を妨害するであろう。式(I)の分子の特定の実施形態では、末端コード領域は一本鎖又は二本鎖である。
式(I)の分子の特定の実施形態では、H1及びH2は、それぞれ独立してヘアピン構造である。本開示において使用される「ヘアピン構造」という用語は、60質量%〜100質量%のヌクレオチドを含む分子構造を意味し、オリゴヌクレオチドGの末端コード領域にハイブリダイズすることができる。ヘアピン構造の特定の実施形態では、ヘアピン構造は、単一の連続的なポリマー鎖を形成し、少なくとも1つの重複部分(一般に「ステム」と呼ばれる)を含み、重複部分は、同じヘアピン構造の相補的配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。ヘアピン構造の特定の実施形態では、ブリッジ構造は、2つの別々のオリゴヌクレオチド鎖と結合する;前記ブリッジ構造は、2〜20個のPEG単位、例えば3〜15個のPEG単位、例えば6〜12個のPEG単位のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを含むことができる。ヘアピン構造の特定の実施形態において、架橋構造は、炭素数30までのアルカン鎖、又は20単位までのポリグリシン鎖からなるか、又は反応性官能基を有する他の鎖からなっていてもよい。式(I)の分子の特定の実施形態において、H1及び/又はH2の重複部分は、オリゴヌクレオチドGの末端コード領域に結合又は接着される。特定の実施形態において、H1及びH2はそれぞれ独立して1つ、2つ、3つ、又は4つのループを含む。
式(I)の分子の特定の実施形態において、H1及びH2はそれぞれ独立して約20〜約90ヌクレオチド、例えば約32〜約80ヌクレオチド、例えば約45〜約80ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、H1及びH2は、それぞれ独立して、1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10個、例えば1〜5個、例えば2〜4個、例えば2〜3個の、リンカー分子又は任意にビルディングブロックとの反応を促進するための適切な官能基で修飾されたヌクレオチドを含み、H1及びH2がそれぞれ独立して、5’−ジメトキシトリチル−5−エチニル−2’−デオキシウリジン、3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(5−エチニル−dU−CEホスホラミダイトとも呼ばれ、Glen Research、Sterling VAから購入)に限定されないが、これらのような塩基を用いて合成された場合を含む。特定の実施形態では、H1及びH2は、それぞれ独立して、リンカー分子又は任意にビルディングブロックとの反応を促進するための適切な官能基を有する非ヌクレオチドを含み、限定されないが、3−ジメトキシトリチルオキシ−2−(3−(5−ヘキシナミド(hexynamido))プロパナミド(propanamido))プロピル−1−O−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(アルキン−モディファイアセリノールホスホラミダイトとも呼ばれ、Glen Research、Sterling VAから購入)及び脱塩基アルキンCEP(IBA GmbH、Goettingen、Germany)を含む。特定の実施形態では、H1及びH2は、それぞれ独立して、既にリンカーを持つ修飾塩基を有するヌクレオチドを含み、例えば、H1及びH2はそれぞれ独立して、限定されないが、5’−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−N8−[6−(トリフルオロアセチルアミノ)−ヘキサ−1−イル]−8−アミノ−2’−デオキシアデノシン−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(アミノ修飾剤C6dAとも呼ばれ、Glen Research、Sterling VAから購入)、5’−ジメトキシトリチル−5−[3−メチル−アクリレート]−2’−デオキシウリジン、3’−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(Carboxy dTとも呼ばれ、Glen Research、Sterling VAから購入)、5’−ジメトキシトリチル−5−[N−((9−フルオレニルメトキシカルボニル)−アミノヘキシル)−3−アシルイミド]−2’−デオキシウリジン、3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(Fmoc−アミノ修飾剤C6dTとも呼ばれ、Glen Research、Sterling、VA)、5’−ジメトキシトリチル−5−(オクタ−1,7−ジイニル)−2’−デオキシウリジン、3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(C8アルキンdTとも呼ばれ、Glen Research、Sterling、VA)、5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−5−[N−(6−(3−ベンゾイルチオプロパノイル)−アミノヘキシル)−3−アクリルアミド]−2’−デオキシウリジン、3’−[(2−シアノエチル)−(N、N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(S−Bz−チオール修飾剤C6−dTとも呼ばれ、Glen Research、Sterling VA)、及び5−カルボキシ dC CEP(IBA GmbH、Goettingen、Germanyから)、N4−TriG1−アミノ2’デオキシシチジン(IBA GmbH、Goettingen、Germanyから)。H1及びH2における修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドのための適切な官能基としては特に限定されないが、第一級アミン、第二級アミン、カルボン酸、第一級アルコール、エステル、チオール、イソシアネート、クロロギ酸エステル、スルホニル塩化物、チオノ炭酸、ハロゲン化ヘテロアリール、アルデヒド、クロロアセテート、ハロゲン化アリール、ハロゲン化物、ボロン酸、アルキン、アジド、及びアルケンが含まれる。
特定の実施形態では、1以上のヘアピン構造H1及びH2は、蛍光標識又は放射性標識等の標識で修飾することができる。このような標識は、式(I)の分子の視覚化又は定量を容易にすることができる。特定の実施形態では、1以上のヘアピン構造H1及びH2は、処理を容易にする官能基又はテザーで修飾される。
式(I)の分子の特定の実施形態において、H1及びH2のヘアピン構造の利点は、一方又は両方が、式(I)の分子の一方又は両方の末端に複数コードされた部分のポリディスプレイを可能にし得ることである。理論に縛られることを望むものではないが、本開示の多官能性分子の一方又は両方の末端に複数のコードされた部分のポリディスプレイは、特定の条件下で改善された選択特性を提供すると考えられる。
式(I)の分子の特定の実施形態において、Y及びWはそれぞれ独立して1,2,3,4又は5である。特定の実施形態において、Oがゼロである場合、Wは2−5の整数であり、例えば2,3,4又は5である。特定の実施形態において、Pがゼロである場合、Yは2〜5の整数であり、例えば2,3,4又は5である。特定の実施形態において、O及びPが1である場合、Wは及びYはそれぞれ独立して1−5の整数であり、例えば1、2,3,4又は5である。特定の実施形態において、W及びYがそれぞれ独立して、式(I)の分子のコードされた部分のポリディスプレイの尺度又は指標であり、コードされた部分は(B1)M−D及びE−(B2)K単位であると理解される。一般に、Y及びWの総計値が高いほど、式(I)の分子のポリディスプレイが高くなる。
式(I)の分子の特定の実施形態では、Dは第1ビルディングブロックである。特定の実施形態では、Dが存在する場合、Dは、H1に直接結合しているGの末端コード領域にコードされるか、又は選択される。特定の実施形態では、Dに最も近接して位置するGの末端コード領域は、第1ビルディングブロックDを同定するために対応し、かつ使用することができる。
式(I)の分子の特定の実施形態において、Eは第2ビルディングブロックである。特定の実施形態では、Eが存在する場合、Eは、H2に直接結合しているGの末端コード領域をコードするか、又は選択される。特定の実施形態において、Eに最も近接して位置するGの末端コード領域は、第1ビルディングブロックEを同定するために対応し、かつ使用することができる。特定の実施形態において、第1ビルディングブロックと第2ビルディングブロックは、同一であっても異なっていてもよい。第1ビルディングブロックと第2ビルディングブロックは、両方ともビルディングブロックであると理解される。
式(I)の分子の特定の実施形態において、Bは、位置ビルディングブロックを表す。本開示において使用される語句「位置ビルディングブロック」は、より大きな分子を形成するサブユニットとして一緒に結合された一連の個々のビルディングブロック単位中の1つの単位を意味する。特定の実施形態では、(B1)M及び(B2)Kは、それぞれ独立して、結合してM及びK個の単位を有するポリマー鎖を形成する一連の個々のビルディングブロック単位をそれぞれ表す。例えば、Mが10である場合、(B)10は、ビルディングブロック単位:B10−B9−B8−B7−B6−B5−B4−B3−B2−B1の鎖を指す。例えば、Mが3であり、Kが2である場合、式(I)は、以下の式によって正確に表すことができる。
([((B1)3−(B1)2−(B1)1−D−L1]Y−H1)O−G−(H2−[L2−E−(B2)1−(B2)2]W)P
M及びKは、それぞれ独立して、Bの個々のユニットの位置識別子として機能することが理解される。
本開示における用語「ビルディングブロック」の正確な定義は、その文脈に依存する。「ビルディングブロック」は、他の化学構造単位と化学的に結合することができる化学構造単位である。特定の実施形態において、ビルディングブロックは、ビルディングブロックを他の化学構造単位に連結する化学反応を受けることを可能にする1,2、又はそれ以上の反応性化学基を有する。ビルディングブロックが化学結合を形成する反応を受けると、ビルディングブロックの反応性化学基の一部又は全部が失われる可能性があることが理解される。例えば、溶液中のビルディングブロックは2つの反応性化学基を有していてもよい。この例では、溶液中のビルディングブロックを、ビルディングブロックの鎖の一部であるビルディングブロックの反応性化学基と反応させて、鎖の長さを増やしたり、鎖から分岐を拡張することができる。ビルディングブロックが溶液又は反応物の意味で参照される場合、ビルディングブロックは、少なくとも1つの反応性化学基を含むと理解されるであろうが、2つ以上の反応性化学基を含み得る。ビルディングブロックが、ビルディングブロックよりも大きいポリマー、オリゴマー又は分子を自身で意味する場合、ビルディングブロックは、ビルディングブロックの構造をより大きな分子の(モノマー)単位として有すると理解され、たとえ1つ以上の化学反応基が反応したとしても、より大きな分子である。
ビルディングブロックとして使用することができる分子又は化合物のタイプは、1つのビルディングブロックが別のビルディングブロックと一緒に反応して共有結合を形成することができる限り、一般に限定されない。特定の実施形態では、ビルディングブロックは、末端単位として機能する1つの化学反応基を有する。特定の実施形態において、ビルディングブロックは、1,2,3,4,5又は6個の適切な反応性化学基を有する。特定の実施形態において、第1ビルディングブロックD、第2ビルディングブロックE、及びBの位置ビルディングブロックは、それぞれ独立して、1,2,3,4,5又は6個の適切な反応性化学基を有する。ビルディングブロックに適した反応性化学基には、第1級アミン、第2級アミン、カルボン酸、第1級アルコール、エステル、チオール、イソシアネート、クロロギ酸エステル、スルホニルクロライド、チオノカーボネート、ハロゲン化ヘテロアリール、アルデヒド,ハロアセテート、ハロゲン化アリール、アジド、ハロゲン化物、トリフレート、ジエン、ジエノフィル、ボロン酸、アルキン、及びアルケンが挙げられる。
カップリング化学がオリゴヌクレオチドの存在と適合していれば、任意のカップリング化学を用いて構築ブロックを結合させることができる。例示的なカップリング化学としては、DNA連結アミン等のアミンとFmoc保護アミノ酸又は他の様々に置換されたカルボン酸との反応によるアミドの形成;DNA結合アミンを含むアミンとイソシアネート及び他のアミンとの反応による尿素の形成(尿素化);DNA結合アミンを含むアミンとクロロホルメート(カルバモイル化)及びアルコールとの反応によるカルバメートの形成;DNA結合アミンを含むアミンと塩化スルホニルとの反応によるスルホンアミドの形成;DNA結合アミンを含むアミンとチオノカーボネート及び他のアミンとの反応によるチオ尿素の形成(チオウレア化);DNA結合アミンを含むアミンとハロゲン化ヘテロアリール(SNAr)との反応によるアニリンの形成;DNA結合アミンを含むアミンとアルデヒドとの反応、続いて還元による第2級アミンの形成(還元アミノ化);DNA連結アミンを含むアミンのクロロアセテートによるアシル化、続いて別のアミンによる塩化物置換(SN2反応)によるペプトイドの形成;ハロゲン化アリールで置換されたカルボン酸を用いるDNA結合アミンを含むアミンのアシル化、続いて置換アルキンによるハロゲン化物の置換(薗頭反応)によるアルキン含有化合物の形成;ハロゲン化アリールで置換されたカルボン酸とDNA結合アミンを含むアミンのアシル化、続いて置換ボロン酸によるハロゲン化物の置換(鈴木反応)によるビアリール化合物の形成;DNA結合アミンを含むアミンと塩化シアヌルとの反応、続いて別のアミン、フェノール又はチオールとの反応(シアヌリル化(cyanurylation)、芳香族置換)による置換トリアジンの形成;ハロゲン化物又はトリフレートのような適切な脱離基で置換されたカルボン酸とのDNA結合アミンを含むアミンのアシル化、続いて脱離基の別のアミンによる置換(SN2/SN1反応)による第2級アミンの形成;及びアミンをアルケン又はアルキンを有する化合物で置換すること、及び生成物をアジド又はアルケンと反応させること(Diehls−Alder及びHuisgen反応)による環状化合物の形成が挙げられる。反応の特定の実施形態では、第1級アミン、第2級アミン、カルボン酸、第1級アルコール、エステル、チオール、イソシアネート、クロロギ酸、スルホニルクロライド、チオカーボネート、ハロゲン化ヘテロアリール、アルデヒド、クロロアセテート、ハロゲン化アリール、アルケン、ハライド、ボロン酸、アルキン、及びアルケンを含むアミノ基と反応する分子は、約30〜約330ダルトンの分子量を有する。
カップリング反応の特定の実施形態では、アミン、チオール、ハロゲン化物、ボロン酸、アルキン又はアルケンのような第2の反応性基を有する分子で、上記の化学反応のいずれかを用いて、DNA結合アミンを含むアミンで置換することによって、第1ビルディングブロックが付加されるかもしれない。次いで、第2の反応性基は、適切な反応性基を有するビルディングブロックと反応させることができる。例示的な第2の反応性基カップリング化学としては、DNA連結アミンを含むアミンのFmoc−アミノ酸によるアシル化、続いて保護基の除去、並びに、アルデヒド及びボロヒドリドによる新たに脱保護されたアミンの還元的アミノ化;アルデヒドと水素化ホウ素との、DNA結合アミンを含むアミンの還元アミノ化、続いて、今置換されたアミンを塩化シアヌルと反応させた後、チオール、フェノール又は別のアミンでトリアジンから別の塩化物を置換する;DNA結合アミンを含むアミンとハロゲン化ヘテロアリールで置換されたカルボン酸とのアシル化、続いて別のアミン又はチオールとのSNAr反応によるハライドの置換、及びアニリン又はチオエーテルの形成;ハロ芳香族基で置換されたカルボン酸とのDNA結合アミンを含むアミンのアシル化、続いて薗頭反応におけるアルキンによるハロゲン化物の置換;又はボロン酸エステル媒介鈴木反応におけるアリール基によるハロゲン化物の置換、が挙げられる。
特定の実施形態では、カップリング化学は、当業者に公知の適切な結合形成反応に基づく。例えば、March、Advanced Organic Chemistry、forth edition、New York:John Wiley and Sons(1992)、Chapters 10 to 16;Carey and Sundberg、Advanced Organic Chemistry、Part B、Plenum(1990)、Chapters 1−11;及びColtman et al.,Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry、 University Science Books、Mill Valley、Calif.(1987)、Chapters 13〜20;これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、ビルディングブロックは、ビルディングブロックを付着させるために使用される1つ又は複数の反応性基に加えて、1以上の官能基を含むことができる。1つ以上のこれらの追加の官能基は、これらの官能基の望ましくない反応を妨げるために保護することができる。適切な保護基は、様々な官能基について当業者に公知である(Greene and Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、second edition、New York:John Wiley and Sons(1991)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。特に有用な保護基としては、t−ブチルエステル及びエーテル、アセタール、トリチルエーテル及びアミン、アセチルエステル、トリメチルシリルエーテル、トリクロロエチルエーテル及びエステル及びカルバメートが挙げられる。
ビルディングブロックのタイプは、ビルディングブロックが他のビルディングブロックと共有結合を形成することができる1つ以上の反応性基と適合する限り、一般に限定されない。適切なビルディングブロックは、限定されないが、ペプチド、糖類、糖脂質、脂質、プロテオグリカン、糖ペプチド、スルホンアミド、核タンパク質、尿素、カルバメート、ビニル系ポリペプチド、アミド、ビニルスルホンアミドペプチド、エステル、サッカライド、カーボネート、ペプチジルホスホネート、アザチド、ペプトイド(オリゴN−置換グリシン)、エーテル、エトキシホルムアセタールオリゴマー、チオエーテル、エチレン、エチレングリコール、ジスルフィド、アリーレンスルフィド、ヌクレオチド、モルホリノ、イミン、ピロリノン、エチレンイミン、アセテート、スチレン、アセチレン、ビニル、リン脂質、シロキサン、イソシアニド、イソシアネート及びメタクリレートが挙げられる。特定の実施形態では、式(I)の(B1)M又は(B2)Kは、それぞれ独立して、M又はK単位を有するこれらのビルディングブロックを表し、それぞれ、ポリペプチド、多糖類、ポリグリコ脂質、ポリ脂質、ポリプロテオグリカン、ポリ糖ペプチド、ポリスルホンアミド、ポリ核タンパク質、ポリ尿素、ポリカルバメート、ポリビニル系ポリペプチド、ポリアミド、ポリビニルスルホンアミドペプチド、ポリエステル、ポリサッカライド、ポリカーボネート、ポリペプチジルホスホネート、ポリアザチド、ポリペプトイド(オリゴN−置換グリシン)、ポリエーテル、ポリエトキシホルムアセタールオリゴマー、ポリチオエーテル、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリジスルフィド、ポリアリーレンスルフィド、ポリヌクレオチド、ポリモルホリノ、ポリイミン、ポリピロリノン、ポリエチレンイミン、ポリアセテート、ポリスチレン、ポリアセチレン、ポリビニル、ポリリン脂質、ポリシロキサン、ポリイソシアニド、ポリイソシアネート及びポリメタクリレートが挙げられる。式(I)の分子の特定の実施形態では、ビルディングブロックの約50〜約100、例えば約60〜約95、例えば約70〜約90%は、約30〜約500ダルトン、例えば約40〜約350ダルトン、例えば約50〜約200ダルトンの分子量を有する。
2つの反応性基を有するビルディングブロックは、各ビルディングブロックを単位として含む線状オリゴマー若しくはポリマー構造、又は線状非ポリマー分子を形成することが理解される。3つ以上の反応性基を有するビルディングブロックは、3つ以上の反応性基を有する各ビルディングブロックで分岐を有する分子を形成し得ることも理解される。
式(I)の分子の特定の実施形態において、L1及びL2はそれぞれ独立してリンカーを表す。「リンカー分子」という用語は、反応してリンカーを形成することができる2つ以上の反応基を有する分子を意味する。「リンカー」という用語は、ヘアピン構造をビルディングブロックに作動可能に連結又は共有結合する分子の一部分を指す。「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上の化学構造が、PCR増幅を含む多官能性分子が受けると予測される種々の操作を通して付着したままになるような方法で一緒に付着又は共有結合することを意味する。
式(I)の分子の特定の実施形態では、L1は、H1をDに作動可能に連結するリンカーである。式(I)の分子の特定の実施形態では、L2は、H2をEに作動可能に連結するリンカーである。特定の実施形態では、L1及びL2は、互いに独立して、L1の反応性官能基の1つをH1の反応性基に反応させ、L1の他の反応性官能基をDの反応性官能基と反応させてH1がDに結合し、L2の反応性官能基の1つをH2の反応性基に反応させ、L2の他の反応性官能基をEの反応性官能基と反応させて、H2がEに結合する二官能性分子である。式(I)の分子の特定の実施形態では、L1及びL2は、互いに独立してリンカーであり、H1及びD又はH2及びEの化学反応性基を、商業的に入手可能なリンカー分子、例えば、PEG(例えば、アジド−PEG−NHS、又はアジド−PEG−アミン、又はジアジド−PEG)、又はアルカン酸鎖部分(例えば、5−アジドペンタン酸、(S)−2−(アジドメチル)−1−Boc−ピロリジン、4−アジドアニリン、又は4−アジド−ブタン−1−酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル);PEG等(例えば、SM(PEG)n NHS−PEG−マレイミド)、アルカン鎖(例えば、3−(ピリジン−2−イルジスルファニル)−プロピオン酸−Osu又はスルホスクシンイミジル 6−(3’−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド)ヘキサノエート))等のチオール反応性リンカー;及び、アミノ修飾剤(例えば、6−(トリフルオロアセチルアミノ)−ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト)、チオール修飾剤(例えば、5−トリチル−6−メルカプトヘキシル−1−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト、又は化学的に共反応性の対の修飾剤(例えば、6−ヘキシン−1−イル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホラミダイト、3−ジメトキシトリチロキシ−2−(3−(3−プロパルギルオキシプロパンアミド)プロパンアミド)プロピル−1−O−スクシノイル、長鎖アルキルアミノCPG、又は4−アジド−ブタン−1−酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)等のオリゴヌクレオチド合成用のアミダイト;及びそれらの適合する組み合わせ等、と反応させて形成される。
特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−A)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−A)[(B1)M−D−L1]Y−H1−G
式中、G、H1、D、B1、M、L1及びYは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態では、多官能性分子は式(I−B)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−B)[(B1)M−D−L1]Y−H1−G−H2
式中、G、H1、H2、D、B1、M、L1、及びYは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−C)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−C)[(B1)M−D−L1]Y−H1−G−H2−[L2]W
式中、G、H1、H2、D、B1、M、L1、L2、W及びYは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−D)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−D)[(B1)M−D−L1]Y−H1−G−H2−[L2−E]W
式中、G、H1、H2、D、B1、E、M、L1、L2、W及びYは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−E)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−E)G−H2−[L2−E−(B2)K]W
式中、G、H2、E、B2、K、L2及びWは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−F)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−F)H1−G−H2−[L2−E−(B2)K]W
G、H1、H2、E、B2、K、L2、P及びWは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−G)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−G)[L1]Y−H1−G−H2−[L2−E−(B2)K]W
式中、G、H1、H2、E、B2、K、L1、L2、Y及びWは、式(I)について上記で定義した通りである。特定の実施形態において、多官能性分子は式(I−H)の分子であり、式(I)の分子の亜種である。
(I−H)[D−L1]Y−H1−G−H2−[L2−E−(B2)K]W
式中、G、H1、H2、D、E、B、M、L1、L2、P、Y及びWは、式(I)について上記で定義した通りである。
本開示は、式(I)の分子等の多官能性分子を合成する方法に関する。この方法の特定の実施形態では、G’のようなオリゴヌクレオチド上の少なくとも1つの末端コード領域は、[(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1及び/又はH2−[L2−E−(B2)(K−1)]W等の少なくとも1つの荷電キャリアアンチコドンとハイブリダイズすることができ、式(II)の分子を形成する。
(II)([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)O−G−(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W)P
(式中、B1、M、D、L1、Y、H1,O,H2,L2,E,B2,K,W及びPは式(I)について上記で定義した通りであり、G’は、少なくとも2つのコード領域及び少なくとも1つの末端コード領域を含むオリゴヌクレオチドであるか、又はそれを含むオリゴヌクレオチドであり、少なくとも2つのコード領域は一本鎖であり、少なくとも1つの末端コード領域は一本鎖であり、オリゴヌクレオチドG’の5’末端及び/又は3’末端の少なくとも1つの末端コード領域は異なっている。
[(B1)(M−1)−D−L1]Y−H-は(D−L1)Y−H1であることが理解され、ここでMは1である。H2−[L2−E−(B2)(K−1)]WはH2−(L2−E)Wであることが理解され、ここでKは1である。
図1及び3に示すように、特定の実施形態では、式(II)の分子を形成するこの方法の利点は、G’の末端コード領域が、第1ビルディングブロック及び/又は第2ビルディングブロック等の分子のコード領域の第一の部分をコードするか、又は付加を指示する。例えば、式(I)の分子中の各末端コード領域は、第1ビルディングブロックD及び/又は第2ビルディングブロックを特異的に同定するであろう。その理由は、末端コード領域に選択的にハイブリダイズすることができる荷電キャリアアンチコドンの第1ビルディングブロックD及び/又は第2ビルディングブロックEの同一性が分かっているからである。
図2に示すように、式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、この方法は一連の「選別及び反応」工程を使用し、コード領域の異なる組合せを含む多官能性分子の混合物は、多官能性分子の1以上のコード領域とハイブリダイゼーションアレイ上に固定化されたアンチコーディングオリゴマーとの選択的ハイブリダイゼーションによって、サブプールに選別される。この方法の特定の実施形態では、多官能性分子をサブプールに選別する利点は、多官能性分子のサブプールがさらなる化学処理のために結合又は混合される前の別の反応条件下で、この分離によって、各サブプールがB1及び/又はB2を含む位置ビルディングブロックBと反応する。この方法の特定の実施形態では、選別及び反応プロセスを繰り返して、一連の位置ビルディングブロックを追加することができる。この方法の特定の実施形態では、選別及び反応法を使用してビルディングブロックを追加する利点は、分子のコードされた部分の各位置ビルディングブロックの同一性を、ビルディングブロックを付加する前の多官能性分子を選択的に分離又は分類するために使用されるコード領域と関連づけることができることである。特定の実施形態では、各コード領域は、その位置に従ってビルディングブロックを特異的に同定する。なぜなら、コード領域の同一性は、付加された位置ビルディングブロック同一性を含む、各ビルディングブロックを追加するために使用される反応プロセスの同一性と関連づけることができるからである。特定の実施形態では、本方法は、式(I)の分子を含む多官能性分子を合成することができ、第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの少なくとも1つの少なくとも1つは、末端コード領域の少なくとも1つに同定されるか又は相当し、位置Mにおける位置ビルディングブロックB1及び位置Kにおける位置ビルディングブロックB2のそれぞれの少なくとも1つは、コード領域の1つによって同定されるか又はそれに相当する。式(I)及び(II)の分子は、プール中の分子間又は分子の中で同一である1以上のコード領域及び末端コード領域を含むことができると理解されるが、プール中の分子は、全てではなくても大多数が、コード領域と末端コード領域の異なる組み合わせを有するであろうと理解される。この方法の特定の実施形態では、コード領域と末端コード領域との異なる組み合わせを有する分子プールの利点は、異なる組み合わせが、多数の異なるコード部分を有する多官能性分子をコードできることである。
式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、上記方法には少なくとも1つの荷電キャリアアンチコドンを提供する工程が含まれ、少なくとも1つの荷電キャリアアンチコドンは、次の式を有する:
([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)及び/又は(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W
式中、B1、M、D、L1、Y、H1、H2、L2、E、B2、K、及びWは、式(I)について上述した通りである。「提供する(providing)」という用語は、一般に限定されず、このような分子の合成又は商業的購入が含まれる。「荷電キャリアアンチコドン」という用語は、リンカーによって第1ビルディングブロック又は第2ビルディングブロックに作動可能に連結され、かつ、オリゴヌクレオチドG’又はGの少なくとも1つの末端コード領域と選択的に結合することができるオリゴヌクレオチドアンチコード領域を有するヘアピン構造を意味する。この方法の特定の実施形態では、荷電キャリアアンチコドンの目的は、末端コード領域が第1ビルディングブロック及び/又は第2ビルディングの付加をコードする、指示する、又は選択するようにすることである。この方法の特定の実施形態では、荷電キャリアアンチコドンの目的は、第1又は第2のビルディングブロックを含むビルディングブロックを、式(II)の分子を形成するために、オリゴヌクレオチドG’の少なくとも1つの末端に結合又は付着させることであり、オリゴヌクレオチドGが位置ビルディングブロックB1及び/又はB2の合成をコードし又は合成することを可能にする。
式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドG’及び少なくとも1つの荷電キャリアアンチコドンのプールが選択的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で相互作用又は混合することが可能であれば、結合工程(combining step)は一般に限定されない。
式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドG’の5’末端をH1の3’末端に結合させる工程は、G’の5’末端で末端コード領域をH1のアンチコドンに選択的にハイブリダイズすることを含む。式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドG’の3’末端をH2の5’末端に結合させる工程は、末端コード領域をG’の3’末端でH2のアンチコドンに選択的にハイブリダイズさせることを含む。
式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、この方法は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドGの5’末端をH1の3’末端に結合して共有結合を形成し、及び/又は少なくとも1つのオリゴヌクレオチドGの3’末端をH2の5’末端に結合することを含む。このライゲーション工程は、式(II)の分子の形成中又は形成後に行うことができる。この方法の特定の実施形態では、結合工程(bonding step)の間又は後に共有結合を形成する利点は、他の化学処理工程中の改善された処理が挙げられる。
式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、この方法は、式(II)の分子の形成中又は形成後に、式(I)又は(II)の分子の少なくとも1つの末端コード領域からオリゴヌクレオチドの全部を除去するステップを更に含むことができる。式(I)の分子を合成する方法の特定の実施形態では、この方法は、式(I)又は(II)の分子の少なくとも1つの末端コード領域からオリゴヌクレオチドの全ての部分を除去する工程を更に含むことができ、少なくとも1つの末端コード領域は二本鎖であり、かつ、H1及び/又はH2のヘアピン構造のアンチコドン等のH1及び/又はH2のヘアピン構造、或いは、G又はG’の末端コード領域からオリゴヌクレオチドを除去することができる。1つの特定の実施形態において、式(I)又は(II)の分子の少なくとも1つの末端コード領域からオリゴヌクレオチドの全部又は一部を除去する利点は、後の工程中の化学的処理を改善することが挙げられる。
図3及び図4に概略的に示すように、式(I)の分子を形成する方法の特定の実施形態では、式(I)の分子は、処理工程の順序を変えることにより複数の合成ルートで合成することができる。例えば、図3では、2つの荷電キャリアアンチコドンを同じ工程中に添加することができる。その後、同じ反応条件の下で、ビルディングブロックB1及びB2を追加するために、次の選別及び反応工程を行うことができる。この実施形態では、(B1)M及び(B2)Kのコード領域は、B1=B2かつM=Kの場合、おそらく同一である。
あるいは、図4において、1つの荷電キャリアアンチコドン([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)をG’と組み合わせ、かつ結合させて、式(I)の分子を形成することができ、ここでPはゼロである。その後、ビルディングブロックB1を追加するために、次の選別及び反応工程を実行することができる。(B1)Mのコードされた部分の形成が完了すると、第2の荷電キャリアアンチコドン、(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W)をGと組み合わせ、かつ結合させて式(I)の異なる分子を形成することができ、ここでPは1である。その後、同じ又は異なる位置ビルディングブロック及び反応条件を使用して、ビルディングブロックB2を追加するために、次の選別及び反応工程を行うことができる。特定の実施形態では、式(II)及び(I)の分子のプールを選択及び選別するために使用される反応のタイプ及び順序がそれぞれ異なるため、(B1)M及び(B2)Kは異なる。ある特定の実施形態では、(B1)Mを形成するために([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)を付加する前に、(B2)Kを形成するために荷電キャリアアンチコドン(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W)を最初に追加することが理解される。
(B1)M又は(B2)Kの完全な形成又はコードの後に、後で添加された荷電キャリアアンチコドンの添加を加える必要がないことも理解される。その代わりに、荷電キャリアアンチコドンの後の添加は、B1又はB2の少なくとも1つが前に添加された荷電キャリアアンチコドンに加えられた後に起こり得る。第2の荷電キャリアアンチコドンの添加後、ビルディングブロックB1及びB2を加えて(B1)M又は(B2)Kを形成するために、次の選別及び反応工程を行うことができる。これらの実施形態では、第1のコードされた部分の少なくとも一部は、後に追加されたコードされた部分と一致するであろうが、2つのコードされた部分(B1)M又は(B2)Kは、後で追加された荷電キャリアアンチコドンに結合する前に追加された少なくとも位置ビルディングブロックによって異なるであろう。
特定の実施形態において、式(I)の分子を形成する方法は、式(II)の分子:
(II)([(B1)(M−1)−D−L1]Y−H1)O−G−(H2−[L2−E−(B2)(K−1)]W)P
を1以上の位置ビルディングブロックB1及び/又はB2と反応させて式(I)の分子を形成することを含む:
(I)([(B1)M−D−L1]Y−H1)O−G−(H2−[L2−E−(B2)K]W)P
式中、H1、H2、D、E、B1、M、B2、K、L1、L2、O、P、Y及びWは式(I)について定義した通りである。
特定の実施形態では、この方法は、少なくとも1つのハイブリダイゼーションアレイを提供することを含む。ハイブリダイゼーションアレイを提供する工程としては、一般に限定されず、当業者に公知の技術を用いてハイブリダイゼーションアレイを製造すること、又はハイブリダイゼーションアレイを商業的に購入することが挙げられる。この方法の特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションアレイは、その表面上に固定化されたアンチコドンオリゴマーを有する少なくとも2つの離れた領域の基質を含む。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションアレイの各領域は、異なる固定化されたアンチコドンオリゴマーを含み、アンチコドンオリゴマーは、式(I)又は(II)の分子の1つ以上のコード領域とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド配列である。この方法の特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションアレイは、2つ以上のチャンバーを使用する。この方法の特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションアレイのチャンバーは、粒子の表面に固定化されたアンチコドンオリゴマーを有する粒子、例えばビーズを含む。この方法の特定の実施形態では、式(I)又は(II)の分子をアレイ上に固定化することの利点は、このステップにより、各コード領域の特定のオリゴヌクレオチド配列に基づく分子のサブプールに、分子を選別又は選択的に分離することができるということである。特定の実施形態では、分子の分離されたサブプールは、その後、別の化学処理のために、アレイから別々に放出されるか、又は反応チャンバーに取り出される。特定の実施形態では、放出工程は任意であり、一般的に限定されず、加熱、変性剤の使用、又はpH≧12の緩衝液に暴露することによって分子を脱ハイブリダイズすることが含まれる。特定の実施形態では、異なる固定化されたオリゴヌクレオチドを含有するチャンバー又はアレイの領域は、更なる化学処理のために、各チャンバー又は領域の内容物をウェルのアレイに流入させる溶液をことができるように位置する。
特定の実施形態において、この方法は、式(I)又は(II)の分子のサブプールを形成するために、B1及び/又はB2等の少なくとも1つのビルディングブロックBを、式(II)の分子と反応させることを含み、ここでB1及び/又はB2は、式(I)について上記で定義したとおりである。特定の実施形態では、ビルディングブロックB1及び/又はB2は、式(I)又は(II)の分子の前、間又は後に容器に添加することができる。ビルディングブロックB1及び/又はB2を式(II)又は(I)の分子と反応させるために使用されるカップリング化学に依存して、容器は、酸性、塩基性又は中性条件下で、溶媒及び共反応物を含み得ることが理解される。
標的分子を結合又は選択することができるプローブ分子を同定する方法が開示される。特定の実施形態では、この方法は、多官能性分子の1つが標的分子に結合することができるかどうかを決定するために、標的分子を、式(I)の分子のような多官能性分子のプールに曝露することを含む。特定の実施形態では、「暴露する」という用語は、標的分子を式(I)の分子等のプローブ分子と接触させる任意の方法を含む。特定の実施形態では、標的分子に結合しないプローブ分子は、過剰の溶媒を用いて標的分子から離れた非結合プローブ分子を洗浄する等の除去方法によって除去される。特定の実施形態では、標的分子は表面上に固定化される。特定の実施形態では、標的分子は、タンパク質、酵素、脂質、オリゴ糖、及び三次構造を有する核酸を含む。
本方法の特定の実施形態において、増幅工程は、当業者に公知のPCR技術を用いて、式(I)のオリゴヌクレオチドGのコピー配列を作製することを含む。本方法の特定の実施形態では、コピー配列は、式(I)の少なくとも2つのコード領域及び(I)の少なくとも1つの末端コード領域のコピーを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのプローブ分子からオリゴヌクレオチドGを増幅する1つの利点は、多官能性分子が標的から容易に除去できない場合でも、多官能性分子のコードされた部分が標的分子に結合することができることを検出する能力が挙げられる。特定の実施形態では、増幅の利点は、広範な多様性を有する分子のライブラリーが生成されることを可能にすることである。この広範な多様性は、与えられた式(I)の分子の数が少ないことを犠牲にして生じる。PCRによる増幅は、容易に検出可能な数に達するまで数を増加させることによって、オリゴヌクレオチド配列の同一性が非常に少数で見つかることを可能にする。次いで、コピー配列のDNAシークエンシング及び分析は、標的に結合することができる式(I)の多官能性分子のコードされた部分を同定又は相関させることができる。
課題に関するさらなる詳細
薬品発見の高コストと、医学、研究、バイオテクノロジー、農業、食品生産、及び産業における使用のための特有で望ましい特性を有する分子を発見する必要性の増大は、コンビナトリアル化学の分野を生み出してきた。
特定の所望の用途のための非常に望ましい特性を有する分子の発見は、必ずしも直接的ではない場合がある。例えば、標的タンパク質又は生物学的巨大分子又は多分子構造に結合する分子は、合理的に設計することが非常に困難である。第一原理から確認された構造設計が不可能であるか非効率的である分子を発見するという課題に直面した場合、コンビナトリアル化学は実行可能なツールとして提示されている。コンビナトリアル化学は、以下の一般的なプロセスを通じて発見することができる:(a)研究者は、所望の用途のための基準に合うように分子が有するより一般的な性質及び構造について最良の仮説を利用可能にし、(b)研究者は、ライブラリーと呼ばれる、仮定した一般的な性質及び構造を有する非常に数多くの分子を設計及び合成し、(c)ライブラリーは、ライブラリーメンバーのいずれかが、所望の用途の特徴を有するかどうかを判定するために試験される。
情報が限定されている場合、所望の分子の構造についてなされ得る仮説は、それらの仮説を与えるための大きな知識体がある場合よりも、より緩く、あまり明確ではない。より多くのデータが構造仮説を与える場合、望ましい構造が豊富であると仮定された化学形状空間の領域に密接に焦点を合わせることにより、複雑さ又は多様性がより小さいライブラリー、例えばle4−1e7特有メンバーがより成功する可能性がある。データがほとんど又はまったく存在しない場合、より多くの複雑さを有し、形状空間のより大きな領域をサンプリングし、それをより深くサンプリングするライブラリー、例えば、1e5−le14特有のメンバーは、成功のために必要とされる。
コンビナトリアル化学は、スプリットアンドプール又は選別及び反応の化学合成法によって、このスケールで化合物のライブラリーを合成することを可能にする。典型的なスプリットアンドプールライブラリーは、ポリスチレンビーズのような高分子固体支持体の鎖に組み込まれた官能基で始まる。数千から数百万のビーズ群を一連の容器に分割し、各容器のビーズを異なる化学サブユニット又はビルディングブロックと反応させる。反応が完了したら、すべてのビーズをプールし、よく混合し、同じ又は異なるセットのビルディングブロックを用いて化学合成の第2のステップのための新しい一連の反応容器に再分割する。スプリットアンドプール反応プロセスは、合成が完了するまで繰り返される。この方法によって製造される化合物の数は、工程中に取り扱うことができるビーズの数及び各工程で使用されるビルディングブロックの数によってのみ制限される。これらの2つのパラメータは、そのようなライブラリーの複雑さを定義します。例えば、4つのステップごとに5つの化学サブユニットがある場合、54=625のメンバーがライブラリーを構成する。同様に、第1ステップに52のビルディングブロック、第2ステップに3、第3ステップに384、第4ステップに96あれば、52×5×384×96=3,833,856のライブラリーメンバーが作成される。
次いで、分子ライブラリーを試験して、それらのうちのどれが選択された用途に望ましい特性を有するかを確認することができる。単一のビーズ上に生成される分子の量が非常に少なく、故に同定が難しいので、そのような分子の同定は困難である。コンビナトリアル化学の共同体では、ライブラリーの設計を導くために利用できる構造的データの量に適切に調整されたライブラリーについて、より大きなライブラリーが、非常に望ましいメンバーを所有する大きな可能性を満たすことが期待されることが、一般に理解されている。
しかしながら、産生されたライブラリーの任意の量について、複雑さが増大するほど、又はライブラリー中の固有分子の数が多いほど、コピー数が少なくなり、又は各メンバーのコピー数が低くなる。従って、ライブラリーの複雑性、及び成功するメンバーがいる確率が増すにつれて、成功するメンバーの合計量は、コンビナトリアル化学者がそれを正しく同定する能力と共に減少する。
コンビナトリアル化学者が直面する制約された最適化は、所望のメンバーを確実に保持するのに十分な複雑さを有するライブラリーを作製することであり、その一方でライブラリーの各メンバーの十分なコピーを作製して、所望のメンバーが正確に同定されることを確実にする。一般に、ライブラリーの複雑さが増すにつれて、固体支持体のサイズも減少しなければならず;そのサポートサイズが減少するにつれて、分析及び同定に利用可能なサンプル量も減少する。
一般に、十分な資源があれば、1ビーズ−1化合物ライブラリー中のポリスチレンビーズ上の1010個の固有なメンバーの非常に大きなコンビナトリアルライブラリーを合成することができる。しかし、各ポリスチレンビーズが0.1マイクロリットルの容積の球である場合、1010のメンバーライブラリーの容積は、1立方メートルを超え、通常の浴槽又は風呂を満たすのに十分であり、おそらくあふれる。工業化学プロセスはしばしばこの規模で行われるが、この複雑さのプロセスはこのスケールではめったに実行されない。この規模のライブラリーはまた、このようなライブラリーを試験し、それらの試験のための分子標的を作り出す問題を引き起こす。そのような試験は、1キログラムの精製タンパク質を優に必要とすることがあり、その多くの薬品標的タンパク質を製造するコストは、多くの薬物標的タンパク質にとって天文学的であろう。
DNAコードコンビナトリアル化学ライブラリーは、この状況を改善しようとする。PCRはDNAの単一鋳型鎖を非常に正確に増幅することができ、増幅された鎖を容易に配列決定することができるという事実により、固体支持体のサイズをDNAの単一分子にまで下げる可能性がある。したがって、非常に広大なライブラリー(例えば、106−1014個の固有なメンバー)を作製する能力と、その集団から成功した分子を同定する能力は、コンビナトリアル化学ライブラリーメンバーをDNA鎖にテザーして、DNA配列とライブラリーメンバーの同一性の間にある対応を確立することによって達成することができる。その後、選択実験が行われる。「選択」とは、所望の形質を有するライブラリー集団のメンバーを、そうでないメンバーから物理的に単離する実験である。次いで、形質−陽性ライブラリーメンバーをコードするDNAをPCRにより増幅し、DNAの配列決定により形質−陽性ライブラリーメンバーを同定する。この方法で膨大な複雑さのライブラリーを合成することができ、特徴的に小さいサンプルサイズから同定された形質陽性個体が得られた。
106〜108個の固有な配列を戻すことができる新しいDNA配列決定技術は、DNAコードライブラリーの顕著に改善された分析を容易にする。「ディープシークエンシング」データは、非常に複雑な化学ライブラリーの安定した統計分析を可能にします。この種の分析は、選択された用途に適したライブラリーの特定の個々のメンバーを同定するだけでなく、ライブラリーメンバーの用途に「適応度」を与える未知の一般的な形質を明らかにすることもできる。典型的には、あまり適合していない個体から身近な用途により適合した個体を物理的に分離するように設計された選択実験の前に、DNAライブラリーにディープシークエンスを行う。実験後の集団にディープシークエンスを行い、2つのデータセットの比較は、集団における相対頻度が増加するため、どの個体がより適合しているかを示す。あまり適合しない個体は、集団における相対頻度が減少するため、同定される。しかし、DNAコードコンビナトリアル化学法は、最も強力な現在のディープシークエンス技術をはるかに凌駕する複雑さを有するライブラリーを作製することができる。ディープシークエンシングは、DNAコードコンビナトリアルライブラリーの有用性及び成功の大幅な進歩を可能にするが、理論的に利用可能なデータの統計的アンダーサンプリングしか提供しない。
このアンダーサンプリングデータの問題は、コンビナトリアル化学プロセスのすべての工程が完全な効率で進行するわけではないという事実によって悪化する。一部の反応が完了せず、一部の反応が副生成物を形成するため、忠実度の喪失が観察される。従って、ディープシークエンシングによって戻されたDNA配列は、それがコードする実際の分子を表すが、時には欠失生成物又は副反応によって変化する生成物を表すことがあるという完全な明確性は必ずしもない。
アンダーサンプリングの問題の悪化は、合成忠実度の問題である。コンビナトリアルライブラリーの作成に使用される反応のすべてが完全に効率的ではない。これは、DNAコードライブラリー中のいくつかのDNAが、それらがコードする分子に繋がれていないが、むしろ1つ以上のビルディングブロックの不完全な組み込みに起因する欠失生成物に繋がれているか、副生成物又は副反応の組込みに起因する類似体につながれていることを意味する。従って、生存選択であると観察された遺伝子型のいくつかは、それらがコードする分子以外の分子を表すので、データ分析は弱点がある。
指向進化
本開示の目的は、現在の配列決定技術を最大限にし、多世代選択によるアンダーサンプリング問題を克服するために、非常に複雑で高い忠実度のDNAコードライブラリーの作製によって所望の用途に適合する分子を同定することである。本開示の別の目的は、ライブラリーの合成の第1工程を精製することを可能にすることにより、より正確な合成を可能にすることである。
一般に、本開示の方法は以下のように働く。分子の集団は、DNA遺伝子のプール(オリゴヌクレオチドG又はG’)でコードされる。次いで、DNA配列(オリゴヌクレオチドG又はそのコピー)は、小分子ライブラリーメンバー(コードされた部分)の合成又は翻訳の鋳型となり、DNA遺伝子型とそれらの対応する小分子表現型との間の共有テザー(リンカー)を確立する。次いで、遺伝子型−表現型融合(式(I)の分子のライブラリー)の集団を選択圧にかけることができ、選択を生き延びた個体のDNA(少なくとも2つのコード領域及び少なくとも2つの末端コード領域)をPCRにより増幅した。生存物(コピー配列)の第2世代集団は、(a)ぴったりの個体(所望の特性を有するコード部分)を同定するためのディープシークエンシング及び分析に供され、及び/又は(b)集団が再翻訳され、同じ性質又は異なる性質のためのよりストリンジェントな選択の2回目に供される。適切な適応度の分子が獲得されるまで、選択の第2世代の生存物は、(a)適合した個体を同定するためにディープシークエンス及び分析され、及び/又は(b)再翻訳され、選択、配列決定及び分析の、更にもう1回のラウンドに供される。
多世代で再翻訳及び再選択することができる式(I)の分子のライブラリーを生成する本開示の方法の能力は、多世代“進化”の指示を可能にするので、際立った利点である。十分な複雑性の最初の集団及び選択の第1ラウンド後の生存物の集団の両方は、最良の最新の手頃な価格のディープシークエンシング法によってアンダーサンプリングされ、かつ適合する個体を同定するための配列決定データの統計分析は、そのアンダーサンプリングに悩まされるが、複数の世代選択は、集団の完全な分析を可能にする。多くの固有で適合度の低い個体は、選択の各連続ラウンドで集団から排除されるため、より適合する個体数が増えるにつれて集団の実際の複雑さは減少する。したがって、シーケンシングの各ラウンドではますます重要なサンプリングが得られ、非常に安定した計算分析が可能になる。複数世代の選択を実行する能力は、この種の分析を大幅に改善する。
ライブラリーを含むDNA「遺伝子」又はオリゴヌクレオチドGは、幾分見慣れた構造を有する。細胞内の遺伝子と同様に、情報は線状配列に沿って配列される。しかし、典型的な遺伝子とは異なり、この合成生物系では、「コドン」又はコード領域は、典型的には約20塩基長である。自然なシステムでは、コドンは、遺伝子の一方の末端から開始し、他方の末端に向かって直線的な順序で読み取られる。本開示の一実施形態では、遺伝子を含むコード領域は、(a)末端コドンから開始し、(b)予め決定され、(c)その選択行動の全ての連続世代において所定の順序が維持される限り、任意の順序で読み取られ得る。さらに、遺伝子はまた、任意に、各コード領域の間に非コード領域を組み込む。これらの非コード領域は、非コード領域が固有の制限部位を有する場合、ライブラリーの正確な翻訳、及びライブラリーの突然変異誘発又は遺伝子シャフリングを促進する。所与のライブラリー中のオリゴヌクレオチドGは、典型的には、同様の配置で同じ数のコドンを完全に有する。
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドGの所与のライブラリーについて、典型的には、各コード領域で使用される配列の所定のセット及び数が存在する。特定の実施形態では、1つのコード領域で使用されるコード配列は、他のコード領域では使用されない。いくつかの実施形態において、コード配列は、コード配列のすべての可能な組み合わせが表されるように、コンビナトリアルな方法で遺伝子に組み立てられる。他の実施形態では、コード配列の組み合わせの数は、最初の遺伝子ライブラリーにおいて有意に減少し、選択事象の後、集団の一部は、新しい表現型の進化及び選択を可能にするために、遺伝子シャフリング又は交差処理を経る。
特定の実施形態では、これらの「交差」事象は、非コード領域内に固有の制限部位を配置することによって促進される。1つ以上の非コード領域における集団の部分分解とその後の再連結は、分解が行われた2つのコード領域間のコード配列のコンビナトリアル再集合(re−assortment)を可能にする。このシャフリング又は交差事象は、単一のコード領域のペア間で、又は複数のコード領域のペア間で実行することができ、又は、ライブラリーをプールに分割し、各プールはコード領域の異なる組み合わせ間の交差事象を経る。特定の実施形態では、この能力は、生存選択によって適合性を実証した2人の個体が、いずれかの親とは異なる子孫表現型をコードするように遺伝的に組み替えることを実質的に可能にする。
一般に、適合遺伝子型の組換えにより、新しいより適合した子孫表現型が選択のために産生される。
コードされた部分の識別
いくつかの実施形態では、本開示は、オリゴヌクレオチドG中のDNA遺伝子配列と、コード部分又は遺伝子がコードする分子の同一性との間の対応を有する分子プローブである多官能性分子を提供する。
いくつかの実施形態では、対応は以下のように確立される。遺伝子ライブラリーは、コード領域が一本鎖になるように、かつ任意の非コード領域が二本鎖になるように調製される。
別途、反応部位アダプターを調製する。反応部位アダプター(ヘアピン構造)は、以下に詳細に記載される。簡潔には、特定の実施形態において、反応部位アダプターは、典型的には、反応性官能基で官能化され、ステム領域及びアンチコード領域を含むDNAヘアピンである。特定の実施形態では、ライブラリーに末端コード領域があるので、同数の異なるアンチコード配列を有する同数の反応部位アダプターが提供され、調製される。特定の実施形態では、反応部位アダプターは、末端コード領域配列のそれぞれに相補的なアンチコード配列を用いて調製される。特定の実施形態では、各反応部位アダプター上の反応性官能基反応部位とそれ自身の配列とを、第1ビルディングブロックと反応させて、荷電反応部位アダプター(荷電キャリアアンチコドン)を生成させ、場合により精製して未反応の反応部位アダプターを除去し、翻訳忠実性に著しい利点をもたらす。したがって、反応部位アダプターのアンチコード配列は、特定のビルディングブロックに対応する。この化学的性質について以下にさらに詳細に説明する。荷電反応部位アダプターのプールを遺伝子ライブラリーとともにインキュベートして、荷電反応部位アダプター(荷電キャリアアンチコドン)を、相補的である末端コード配列に特異的にアニールさせることができる。次に、アニールしたアダプター/ライブラリー複合体を、例えばT4 DNAリガーゼを用いて共に連結することができる。このようにして、遺伝子の末端コード領域は特定のビルディングブロックに相当する。
特定の実施形態では、次の選択されたコード領域配列と次のビルディングブロックとの間の対応を確立することは、選択されたコード領域のコード配列に基づいてサブプールにライブラリーを選別することによって達成される。特定の実施形態では、この選別は、
ハイブリダイゼーションアレイと呼ばれる固体支持体のアレイ上に固定化された相補的オリゴへの一本鎖コード配列の配列特異的ハイブリダイゼーションによって達成される。
ハイブリダイゼーションアレイの構築を以下に記載する。簡潔には、特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションアレイは、固体支持体を含有する空間的に分離された特性のアレイである。特定の実施形態において、これらの支持体上には、選別されるコード領域の配列に相補的な配列を有する共有結合されたssDNAオリゴがある。特定の実施形態では、所与のアンチコード配列を有する固体支持体の上又は隅々に複数のコード配列を有する式(I)又は式(II)の分子のライブラリーを流すことにより、相補的なコード配列を有するライブラリーのメンバーを特異的に固定することができる。特定の実施形態では、それぞれに固定化された異なるアンチコード配列を有する固体支持体のアレイの上又は隅々にライブラリーを流し、コード配列に基づいてライブラリーをサブプールに選別する。特定の実施形態では、次いで、各配列特異的サブプールは、ビルディングブロック対応の配列を作るために、特定のビルディングブロック(位置ビルディングブロック)と独立して反応させることができる。この合成は、以下により詳細に記載され、ハイブリダイゼーションアレイ上で、又はサブプールがアレイのサブプール内で別の容器のような適切な環境中に溶出されて反応が行われた後に行うことができる。
全ての他の内部の非末端コード領域に対するビルディングブロック対応のコード配列の確立は、同じ方法で達成することができ、異なるセットのアンチコード配列を有する異なるハイブリダイゼーションアレイが適切に使用されるという点のみが異なる。
オリゴヌクレオチドG中のコード領域は、他の情報もコードすることができる。特定の実施形態では、ライブラリーの翻訳が完了した後、インデックスコード領域配列に基づいてライブラリーを分類することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、インデックスコード領域配列は、意図された目的、又はライブラリーのその対応するサブプールの選択履歴をコードすることができる。例えば、複数のターゲットのライブラリーを同時に並行して翻訳し、インデックスコード領域でサブプールに選別することができる。従って、異なるターゲットを対象とするサブプール及び/又は異なる条件の選択のためのサブプールは、互いに分離され、それぞれの用途で使用する準備ができる。従って、様々な特性について複数ラウンドの選択を経るライブラリーメンバーの選択履歴をインデックス領域に記録することができる。
反応部位アダプターの1つの意図された目的は、オリゴヌクレオチドGの遺伝子ライブラリー中の配列と特定のビルディングブロックとの間の対応を確立することである。概して、これは上述したように達成される。一般に、反応部位アダプターの重要な要素は、アダプターがオリゴヌクレオチドGの特定のコード領域にハイブリダイズすることを可能にするアンチコード配列、第1又は第2のビルディングブロックD又はEが共有結合できる反応性官能基、そのようなビルディングブロックを反応部位アダプターに共有結合させるリンカー、及びビルディングブロックを含む反応部位アダプター又は荷電反応部位アダプターを遺伝子(オリゴヌクレオチドG)に直接的又は間接的に共有結合させる手段である。いくつかの実施形態において、反応部位アダプターは、ステム、ループ、及びそれ自身がアンチコード配列を含む3’又は5’オーバーハングのいずれかを含むDNAヘアピンである。いくつかの実施形態では、ステムは、制限酵素による切断の際に標的からの非常に強力な結合の放出を容易にすることができる1以上の固有の制限部位を含み、又はPCRによる遺伝子のよりクリーンな増幅を可能にする良好なプライミング配列を含む。
特定の実施形態では、ループ領域は、反応部位アダプター鎖の方向性の変化を作成して、オリゴヌクレオチドG鎖の方向性と一致させる作業を行い、オリゴヌクレオチドGの末端に連結することができる。DNAの性質のため、オリゴヌクレオチドG中のコード配列は、反応部位アダプター中のアンチコード配列の反対の方向性を有する。DNA連結は、同じ方向性を有する核酸鎖の2つの末端の間でのみ生じる。すなわち、5’から3’に配向した鎖は、5’から3’に配向した別の鎖に連結することができる。ループ領域は、反応部位アダプターの方向性に変化を生じさせてオリゴヌクレオチドG鎖の方向性と一致させる作業を行い、オリゴヌクレオチドGの末端に連結させることができる。いくつかの実施形態では、ヘアピン構造H1及び/又はH2のループは、3〜12個のDNA塩基を含む。いくつかの実施形態では、6〜12個のPEG単位を含むポリエチレングリコールリンカーである。いくつかの実施形態では、反応部位アダプターはオリゴヌクレオチドGに酵素的に連結される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドGの末端はアジド又はアルキンで官能化され、反応部位アダプターの末端はアルキン又はアジドで官能化され、連結は銅触媒による「クリック」ケミストリーによって達成される。多数の同等の化学が、反応部位アダプターをオリゴヌクレオチドGに共有結合的につなぎ合わせるのに適切であることは、当業者には評価されるであろう。
いくつかの実施形態では、反応部位は、PEGリンカー若しくはアルキル鎖リンカーによって、又はホモポリマー若しくはヘテロポリマー鎖リンカーによって修飾された核酸塩基につながれた遊離アミンを含む。反応部位アダプターヘアピン上の任意の点で結合された場合、反応部位は機能的である。いくつかの実施形態では、反応部位は、ループの5’の位置でステム上に結合される。いくつかの実施形態では、反応部位はループの3’に結合される。いくつかの実施形態では、反応部位は、アンチコード配列としてループの同じ側で、かつアンチコード配列の初期塩基の近くに結合される。いくつかの実施形態では、反応部位は、アンチコード配列からのループの反対側で、かつステムに沿う遠位に結合される。いくつかの実施形態では、2つ以上の反応部位がアダプター上で結合される。2つ以上の反応部位を有する1つの利点は、正しく合成されたコード部分の確率が増加することである。2つ以上の反応部位を有する別の利点は、選択の間に、コード部分の多重度が親和性を生じ、より弱いバインダーが選択において見出されることがある。2つ以上の反応部位を有するいくつかの実施形態では、反応部位は、ループの同じ側及びステムの反対側の端部の近くで結合される。いくつかの実施形態では、反応部位は、ループの反対側に、及びステムの反対側の端部近くに配置される。2つ以上の反応部位を有するいくつかの実施形態では、両方の反応部位がループ領域に存在する。いくつかの実施形態では、反応部位アダプターは、2つ以上のステム及び2つ以上のループを含む。このような実施形態では、複数の反応部位が、ステムに沿って、又はループ上に、又は両方の組み合わせで結合される。いくつかの実施形態では、反応部位の配置及び位置決めは、反応部位間の距離を調整して、問題の標的の大きさに基づいてより良好な結合活性を促進することによって、選択においてより良い結果を促進するように設計される。
いくつかの実施形態では、反応部位アダプターは、より小さな断片に容易に分解する手段を有する。このような断片化は、ライブラリーのより良好な下流プロセシングを促進し、例えば、鋳型ライブラリー鎖の一方又は両方の末端における連結ヘアピンの存在は、式(I)の分子に正しくアニールするプライマーの能力を妨害することによってPCR増幅を複雑にし得る。別の例では、ライゲーション後の荷電反応部位アダプターの断片化は、反応部位付近の立体的バルクを減少させ、化学的性質を改善するか、又はハイブリダイゼーション中の収率を改善し得る。断片化の手段としては、特に限定されないが、ステム領域内の固有の制限部位での制限消化、又は反応部位アダプターの合成におけるdU塩基の組み込み、続いてウラシルDNAグリコシダーゼでの処理によってアピリミジン部位を生成すること、及びその後の鎖のアルカリ加水分解が挙げられる。断片化の手段は、鋳型鎖に直接的又は間接的に繋がれた反応部位を残すか、鋳型鎖から除去することができる。
いくつかの実施形態において、荷電反応部位アダプターは、特異的にハイブリダイズし、鋳型鎖の両端の末端コード領域に連結される。末端コード領域が同一の第1及び第2のビルディングブロックをコードする場合、これらの実施形態は、正しいコード部分が合成されるための複数の可能性を提供するという利点を有する。加えて、これらの実施形態は、特により弱いバインダーの場合に、多数のコードされた部分に親和性を生じさせ、選択効率を改善する機会を提供することができる。第1及び第2のビルディングブロックが異なる場合、これらの実施形態は、同数の遺伝子鋳型鎖について合成される固有なコード部分を2倍にする。第1及び第2ビルディングブロックが式(I)のいくつかの分子については同じであり、式(I)の他の分子については異なる場合、2つの異なるビルディングブロックが全てのコード部分に与える全体的な適合性に対する相対的寄与の分析を可能にする。
多くの種類の化学が本発明での使用に利用可能である。理論的には、DNAを化学的に変化させない任意の化学反応を用いることができる。DNAに適合することが知られている反応としては、特に限定されず:Wittig反応、Heck反応、homer−Wads−worth−Emmons反応、Henry反応、鈴木カップリング、薗頭カップリング、Huisgen反応、還元アミノ化、還元アルキル化、ペプチド結合反応、ペプトイド結合形成反応、アシル化、SN2反応、SNAr反応、スルホニル化、尿素化、チオウレア化、カルバモイル化、ベンズイミダゾール、イミダゾリジノン、キナゾリノン、イソインドリノン、チアゾール、イミダゾピリジンの形成、グリオキサール形成のジオール開裂、Diels−Alder反応、インドール−スチレンカップリング、マイケル付加、アルケン−アルキン酸化カップリング、アルドール反応、Fmoc脱保護、トリフルオロアセトアミド脱保護、Alloc脱保護、Nvoc脱保護及びBoc脱保護が挙げられる。(参照、Handbook for DNA−Encoded Chemistry (Goodnow R. A., Jr., Ed.) pp 319−347, 2014 Wiley, New York. March, Advanced Organic Chemistry, fourth edition, New York: John Wiley and Sons (1992), Chapters 10 to 16; Carey and Sundberg, Advanced Organic Chemistry, Part B, Plenum (1990), Chapters 1−1 1 ; and Coltman et al, Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry, University Science Books, Mill Valley, Calif. (1987), Chapters 13 to 20;それぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
本開示の多官能性分子に広範な種々のコンビナトリアルスカフォールド(scaffolds)が組み込まれることは、当業者には理解されるであろう。スカフォールドの一般的な綱(classes)の種類の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:(a)端と端とが連結された二官能性ビルディグブロックの鎖、ペプチド及びペプトイドがこの種のスカフォールドの2つの例である;鎖中の二官能性ビルディングブロックの全てが同じ対の官能基を有するわけではなく、いくつかのビルディングブロックがただ1つの官能基、例えば末端ビルディングブロック、を有することができることが理解されよう、(b)いくつかの三官能性ビルディングブロックを含む二官能性ビルディングブロックの分岐鎖が、一官能性ビルディングブロックを含んでも含まなくてもよい、(c)単一の多官能性ビルディングブロックからなる分子、及び単官能性ビルディングブロックのセット;一実施形態では、そのような分子は、中心コアとして作用する多官能性ビルディングブロックを有し、それに他の単官能性ビルディングブロックが多様性要素として付加される、(d)多様性要素として単官能性又は二官能性ビルディングブロックのセットが連結される、2つ以上の多官能性ビルディングブロックを含む分子、(e)リンカー上の部分又はより早い工程で導入されたビルディングブロックとビルディングブロック上の部分又は後の工程で導入されたリンカーとを反応させることによる環の形成を含む上記のスカフォールドのいずれか。他のスカフォールド又は化学構造門(phyla)も組み込むことができ、これらの一般的な構造スカフォールドは、それらを合成する化学経路を設計する際の実務者の工夫によってのみ制限される。
特定の実施形態において、イオン交換クロマトグラフィーは、2つの方法でDNAにつながれた基質に対して行われる化学反応を促進する。水性溶媒中で行われる反応の場合、DEAE−SEPHAROSE(登録商標)又はTOYOPEARL(登録商標)SuperQ 650Mのようなイオン交換樹脂上に反応を注入することにより、精製を容易に達成することができる。特定の実施形態では、DNAはイオン交換によって樹脂に結合し、未使用の反応物、副生成物及び他の反応成分は、水性緩衝液、有機溶媒又は両方の混合物で洗い流される。有機溶媒中で最も良好に作用する反応について、実際の問題が存在する:DNAは有機溶媒への溶解性が非常に乏しく、このような反応は収率が低い。これらの場合、ライブラリーDNAはイオン交換樹脂に固定され、残留水が水混和性有機溶媒で洗い流され、反応が水混和性であってもなくてもよい有機溶媒中で行われてもよい。例えば、R.M. Franzini、et.al. Bioconjugate Chemistry 2014 25(8)、1453−1461及びその中の参考文献を参照。種々の化学的性質又は用途により適するか又はあまり適さない異なる性質を有する、多くの型及び種類のイオン交換媒体が存在し、これらはTHERMOFISHER(登録商標)、SIGMA ALDRICH(登録商標)、DOW(登録商標)、DIAION(登録商標)及びTOYOPEARL(登録商標)のように、ごくわずかが命名されており、多数の企業から市販されている。ビルディングブロックを導入するため、又は保護基を除去するため、又はさらなる修飾のための部分を活性化するために、化学反応を行う目的でライブラリーDNAを固定又は可溶化することができる、ここには記載されていない多くの可能な手段及び媒体があることは理解されよう。
特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションアレイはssDNA配列の異種混合物を選別するための装置を含み、選別は、位置指定可能なフォーマットに固定化された相補的オリゴへのこれらの配列の配列特異的ハイブリダイゼーションによる。例えば、米国特許第5,759,779号明細書を参照されたい。ハイブリダイゼーションアレイは多くの物理的形態をとってもよいことが理解される。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションアレイは、アレイの表面上に固定された相補的オリゴと接触するようになる異種のサンプル又はssDNA(すなわち、式(I)の化合物のライブラリー)に対する能力を有する。相補的オリゴは、ssDNAの固定化オリゴへの配列特異的ハイブリダイゼーションを可能にする、許可する、又は促進するようにアレイの表面上に固定化され、それによってssDNAも固定化される。特定の実施形態では、共通配列を介して固定化されたssDNAを、アレイから独立して除去してサブプールを形成することができる。
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションアレイは、0.1〜100mmの厚さのプラスチックの矩形シートを含み、「フィーチャー」と呼ばれる一連の穴が切取られたシャーシとなる。特定の実施形態では、シートの下面及び上面に、ろ過膜が接着される。特定の実施形態では、ろ過膜の間に封入されたフィーチャーにおいて、「固体支持体」と呼ばれる固体表面又は固体表面の集合体となる。特定の実施形態では、任意の所定のフィーチャーにおいて、オリゴの単一の配列が固体支持体上に固定される。
特定の実施形態において、式(I又はII)の分子のライブラリーは、ライブラリーの水溶液をフィーチャーの表面及び中を通って流れるようにすることによってアレイ上で選別することができる。特定の実施形態では、ライブラリーのメンバーが、相補的配列を有するフィーチャー中のオリゴと接触すると、フィーチャー内で固定されるようになる。特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションが完了した後、アレイのフィーチャーを、96ウェルプレート又は384ウェルプレートのような受け容器上に配置することができる。特定の実施形態では、DNAの脱ハイブリダイゼーションを引き起こすアルカリ性溶液の添加を各フィーチャーに加えることができ、溶液は、今や可動性であるライブラリーを受け容器に運ぶ。ホットバッファー、又は変性剤の使用のように、他の脱ハイブリダイズ方法も可能である。したがって、特定の実施形態では、分子のライブラリーを配列特異的方法でサブプールに選別することができる。
上述したシャーシは、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリマー又は金属で構成され得ることが理解される。固体支持体は、樹脂、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー又はセラミックからなり、支持体は多孔質又は非多孔質であり得ることが理解される。固体支持体上のより高い表面区域は、より多くの量の相補的オリゴを固定化することを可能にし、より多くの量のライブラリーサブプールをフィーチャーに取り込まれることが理解されよう。固体支持体は、ナイロン、プラスチック、布、ポリマー、ガラス、セラミック又は金属で作られたろ過膜によってそれらのそれぞれのフィーチャーに保持され得ることが理解される。固体支持体は、のり(glue)、接着剤、又はシャーシ及び/又は他の支持体への支持体の共有結合のような、ろ過膜以外の手段によってそれらのそれぞれのフィーチャー内に保持され得ることが理解される。フィーチャーは、シャーシの穴であっても穴でなくても構わないが、シャーシから取り出したり、シャーシに置くことができる独立した構造物であることは理解される。シャーシの形状は、2次元に配列されたフィーチャーを有する矩形である必要はないが、1次元又は3次元に配列されたフィーチャーを有する円筒形又は矩形の角柱であり得ることが理解されよう。例えば、米国特許第5,759,779号明細書を参照されたい。
式(I)の分子のライブラリーは、それぞれの遺伝子型に拘束された表現型の集団と考えることができる。そのような集団は、集団からあまり適合しない個体を除去する選択圧力にさらされ、より適合したメンバーが生き残ることを可能にする。第2世代集団のオリゴヌクレオチドG遺伝子型−それらの生き残った選択−は、PCRによって増幅され、再翻訳され、同じ形質について別のよりストリンジェントな選択に供されるか、又はいくつかの直交形質に対して選択され得る。選択された生き残った部分集団は、典型的にはディープシークエンシング又は次世代シークエンシング技術を用いて配列決定することができ、シークエンシングデータを解析して最も適合するコード部分(表現型)を同定することができる。
数多くの種類の選択を行うことができる。最も典型的な選択は、標的タンパク質に結合することができる集団中の個体を見出すために行われる。特定の実施形態では、このような選択を行う方法は、NUNC MAXISORP(登録商標)プレート中のウェルの表面のような固体支持体上に標的タンパク質を固定するか、又は標的をビオチニル化し、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズ上に固定化することによる。特定の実施形態では、標的の固定化後、式(I)の分子の集団を、支持体上の標的と共にインキュベートする。標的を結合することができるこれらの個体はすべてそれを行い、それら自体が固定化される。適切な緩衝液で固体支持体を洗浄し、非バインダーを除去する。特定の実施形態では、バインダーをコードするDNAはPCRによって増幅され、再翻訳のための配列決定のために送られ、かつ別の選択ラウンドに供される。
特定の実施形態では、選択は、1つの標的タンパク質に結合する個体を、異なる、抗標的、タンパク質、又は1組の抗標的タンパク質を除いて選択する方法で行うことができる。そのような場合、選択の1つの方法は、標的及び抗標的の両方を別の容器中の固体支持体上に固定化することを必要とする。特定の実施形態では、ライブラリーは最初に抗標的とインキュベートされ、抗標的に結合することができる個体はそのようにする。特定の実施形態では、非バインダーを容器から注意深く取り出し、標的を含む容器に移す。このようにして、標的に結合する能力について選択された集団は、抗標的と結合することができる個体において最初に枯渇し、その選択は、標的に結合する能力又は抗標的の排除として特徴づけられる適応性を有する個体を生み出す。
特定の実施形態において、ある標的を別の標的に選択的に結合するコード部分を同定する第2の方法は、両方の標的について同様の選択を行い、次に配列決定データの分析中に両方の標的に対して親和性を示すコード部分を排除する。
特定の実施形態では、固定化された標的と遊離の標的との混合物を用いることにより、長いオフレート(off−rates)を有するバインダーを選択する選択を行うこともできる。特定の実施形態において、ライブラリーは、固定化された標的とインキュベートされ、バインダーが結合することを可能にする。次いで、過剰の遊離標的を添加し、所定の時間インキュベートする。その間、固定化された標的から遊離し、次いで再結合するバインダーは、遊離の標的に再結合する可能性が高い。非バインダーを洗い流すと、自由な標的とそれに結合されたものも洗い流される。自由標的上に残された唯一のバインダーは、そのオフレートが遊離標的の所定のインキュベート時間よりも長いバインダーである。
前のパラグラフに記載されている選択方法は、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、及びmRNAディスプレイに関する文献に見出すことができる。例えば、Amstutz、Patrick,et al.,Cell biology:a laboratory handbook,3rd ed.ELSEVIER、Amsterdam(2006):497−509及びその中の参考文献。
原則的には、特性を有さない個体に比べて特性を有する集団内の個体を選択的に増幅し、手段を構築することができるという条件で、任意の特性について選択を行うことができる。標的結合以外の特性が関連する薬理学的選択は原理的に可能であり、その例には、水溶性、細胞膜透過性、及び非毒性の選択が挙げられるが、これらに限定されない。
十分な量のライブラリーを合成することにより、所定のラウンドで複数の選択が行われることも理解されよう。特定の実施形態では、標的に対する親和性の選択後の生存体の亜集団を単離し、必要に応じて精製し、同じ標的又は異なる標的に対する親和性についての第2の選択に供するか、又は直交性に関して選択する。特定の実施形態において、生存体のサブプールは、次いで、PCRによって増幅され、配列決定されるか、又はさらなる選択のために増幅及び再翻訳される。
特定の実施形態において、配列決定データは、選択の前後の集団中のライブラリーメンバーの表示を比較することによって分析される。特定の実施形態では、選択後にあまり表されていないメンバーは、典型的にはあまり適合していないと考えられ、選択後により多く表されるメンバーは、より適合していると考えられる。さらに、データは、同じコード部分に結合された場合に、どの個々のビルディングブロックが適合性を与えるか、ビルディングブロックのどのペアが適合性を与えるか、ビルディングブロックのどのトリプレットが適合性を与えるかを決定するために分析される。特定の実施形態では、データを任意に分析して、異なるビルディングブロック内で、かつ異なるコード部分内のどの構造要素が、ライブラリーの選択されたメンバーに適合性を与えるかを決定する。特定の実施形態において、これらの分析は、どのメンバーが独立した試験のために合成されるべきか情報を与え、ライブラリーの元のメンバーではない可能性のある作製及び試験されるべき類似の分子を示唆する。特定の実施形態では、三次元ドッキングアルゴリズムは、これらのプロセスにも情報を与えることができる。
特定の実施形態では、データ分析において同定されたライブラリーメンバーは、典型的には、ライブラリーを作製する際に使用されたものと同じ又は類似の合成条件を用いて、オリゴヌクレオチド部分を伴って又は伴わずに合成することができる。特定の実施形態では、これら独立して合成された試料は、その物理的及び化学的特性を特徴付ける様々な試験に供され、所望の作業のためのその一般的な適合性を示唆する。特定の実施形態では、これらの特性としては特に限定されるものではないが、その標的へのライブラリーメンバーの結合の緊密さを測定する解離定数又はKD、水:オクタノール分画によって測定されるその水溶性、及びCaCo細胞で測定される浸透率、が挙げられる。
特定の実施形態では、生体分子に結合する同定されたライブラリーメンバーを用いて、その生体分子の生物学的機能を確認することができる。特定の実施形態において、多くのタンパク質の機能は知られておらず、本開示の方法は、それらの機能の解明を助ける分子プローブの発見への素早い経路を提供する。特定の実施形態では、本開示の方法によって同定されたライブラリーメンバーは、生体分子が小分子発見及び薬物療法のターゲティングに特異的に適しているかどうかを判断するのを助けるために使用され得る。
特定の実施形態において、ライブラリーメンバーをそれに結合させる生体分子機能への影響は、インビトロアッセイ又はインビボアッセイ、細胞ベースアッセイ又は非細胞ベースアッセイにおいて分析することができる。既知の機能を有する生体分子について、その機能に対する同定されたライブラリーメンバーの効果を評価することができる。生体分子が酵素である場合、その活性速度に対する効果を評価することができる。それがシグナル伝達タンパク質である場合、細胞生存能力、細胞遺伝子発現又は細胞表現型発現等の細胞機能への効果を評価することができる。標的がウイルスタンパク質である場合、ウイルス増殖及び生存能力に対するライブラリーメンバーの効果を評価することができる。
特定の実施形態では、選択を通じて同定されたライブラリーメンバーは、インビボ実験において、動物及びヒト並びに植物の健康に対するそれらの効果について評価することもできる。
特定の実施形態では、選択を通じて同定されたライブラリーメンバーもまた、生体分子標的の精製のための親和性試薬として使用することができる。特定の実施形態では、同定されたコード部分を固体支持体上に固定化することができ、標的を含む不均質溶液を固体支持体上に流すことができる。特定の実施形態では、標的はコード部分に結合され、固定化される。特定の実施形態では、混合物の他の全ての成分を洗い流して、標的の精製試料を残すことができる。
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これに限定されるものではない。当業者であれば、本明細書で列挙した工程又は工程の部分を達成するための多くの同等の技術を認識するであろう。
式(I)の分子の実施形態は、以下のように構築される。
実施例1:8×109メンバー遺伝子ライブラリーの構築
遺伝子ライブラリーのコドンの提供。96の二本鎖DNA(「dsDNA」)配列は、ニュージャージー州ピスカタウェイのGenscript、ニュージャージー州モンマス・ジャンクションのSynbio Technologies、デラウェア州ウィルミントンのBiomatik、テキサス州シュガーランドのEpoch Life Sciences等の遺伝子合成会社から提供又は購入される。これらの配列は、それぞれ20塩基の5つのコード領域を含む。各コード領域は、20塩基の非コード領域(合計6つの非コード領域を形成する)が両側に配置されている。全てのコード領域配列は固有であり、他のコード領域及び非コード領域と交差反応しないように選択される。DNA分子中の5つの非コード領域は異なる配列を有するが、各位置の配列は全てのDNAにわたって保存されている。全てのコード領域と非コード領域は、同様の融解温度(58℃〜62℃)を有するように設計されている。コード領域及び非コード領域は、以下のようにインシリコで設計される。DNA配列は無作為にインシリコで生成される。
いったん生成されると、配列の融解温度及び熱力学的特性(融解のデルタH、デルタS及びデルタG)が最近隣法を用いて計算される。計算されたTm及び他の熱力学的特性がライブラリーに所望される所定の範囲内にない場合、配列は拒絶される。受容可能な配列は、配列類似性アルゴリズムによる分析に供される。十分に非相同であることがアルゴリズムによって予測された配列は、非交差反応性であると推定され、保持される。他は拒絶される。コード領域及び非コード領域は、非交差スハイブリズすることが示されたオリゴの実験に基づいたリストから時々選択される。Giaever G,Chu A,Ni L,Connelly C,Riles L,et al.(2002)Functional profiling of the Saccharomyces cerevisiae genome. Nature 418:387−391を参照。この参考文献は、10,000個の非交差反応性オリゴを列挙する。それぞれのTmが計算され、所定の範囲内に入るものが配列相同性アルゴリズムによって分析される。十分に非相同なものは保持される。
各非コード領域は、固有の制限部位を含む。鋳型鎖の5’末端の非コード領域は、5’末端から塩基13−18にSacI認識部位を含む。コード鎖の3’末端の非コード領域は、鋳型鎖の3’末端から塩基14−19にEcoRI制限部位を含む。鋳型鎖の5’末端からの第2、第3、第4及び第5の非コード領域は、塩基8−13にそれぞれHindIII、NcoI、NsiI及びSphI認識部位を有する。
DNAを制限消化して、全てのコドンを互いに脱結合する。DNA配列をプールし、約20μg/mlの濃度でNew England Biolabs(NEB、マサチューセッツ州)が提供するCUTSMART(登録商標)緩衝液に溶解する。NEBが提供する内部制限酵素HINDIII−HF(登録商標)、NCOI−HF(登録商標)、NSII−HF(登録商標)及びSPHI−HF(登録商標)を添加し、酵素を製造業者のプロトコルに従って37℃、1時間で消化する。酵素を80℃、20分間で加熱不活性化する。不活性化後、反応を60℃で30分間保持し、次いで45℃に冷却し、30分間保持し、次いで16℃に冷却する。
コドンをコンビナトリアル再集合して、遺伝子ライブラリーを作製する。消化反応で作製された個々のコドンを全長遺伝子に再集合させるために、NEB製のT4 DNAリガーゼを50U/mlまで添加し、ジチオスレイトール(DTT、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ)を10mMまで添加し、及びアデノシン5’−三リン酸(ATP、NEB製)を製造業者のプロトコルに従って1mMまで添加する。ライゲーション反応を2時間行い、生成物をアガロースゲル電気泳動で精製する。提供された遺伝子の1つの部位での消化により生成された付着末端は、同じ部位の他のすべての消化産物の付着末端にアニールするので、完全なコンビナトリアル再集合が起こる。したがって、96個の提供された遺伝子がそれぞれ5個のコドンからなると、965個の遺伝子が生成される。5つのコード位置のそれぞれに96個のコード配列があるので、965=8×109の組み合わせ又はライブラリーメンバーが存在する。
遺伝子ライブラリーは、翻訳のために調製される。
PCRによって遺伝子ライブラリーを増幅する。T7プロモーターは、50μL反応のためのこれらの反応物を使用する伸長PCRによって非鋳型鎖の5’末端に付加される:5×PHUSION(登録商標)High−Fidelity DNAポリメラーゼ(「PHUSION(登録商標)ポリメラーゼ」、NEB)、10μL;デオキシヌクレオチド(dNTP)溶液混合物200μM最終濃度;フォワードプライマー、最終濃度750nM;リバースプライマー最終濃度、750nM;鋳型(ライブラリーを適切にオーバーサンプリングするために十分な鋳型を使用する必要がある);ジメチルスルホキシド(DMSO)、2.5uL;「PHUSION(登録商標)ポリメラーゼ」、2μl。57℃のアニーリング温度及び72℃の伸長温度を用いてPCRを行う。各サイクルで5秒間アニールし;各サイクルで5秒間伸長する。生成物をアガロースゲルによる電気泳動で分析する。
DNAをRNAに転写する。PCR産物を精製せずに、250μL転写反応は、以下の反応物と共に行われる:PCR産物、25μL;RNAseを含まない水、90μL;ヌクレオシド三リン酸(NTP)、各6mM最終濃度;5×T7緩衝液、50μL;NEB T7 RNAポリメラーゼ250単位;任意でRNasin(登録商標)リボヌクレアーゼ阻害剤(Promega Corporation、WI)を200U/mlまで添加することができ;任意でピロホスファターゼを10μg/mlまで添加することができる。5×T7緩衝液は、1MのHEPES−KOH(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)pH 7.5;150mMの酢酸マグネシウム;10mMのスペルミジン;200mMのDTT、を含む。反応は37℃で4時間行う。塩化リチウム沈殿によりRNAを精製する。1倍量の水で転写反応物を希釈する。LiClを3Mまで加える。最大gで、4℃で少なくとも1時間回転する。上清を静かに移して保管する。きれいなペレットは、溶解しにくい透明なガラス状のゲルである。穏やかな加温(70℃で1分)と穏やかなボルテックスとを交互に繰り返すことでペレットが再懸濁する。アガロースゲル電気泳動で分析し、分解を避けるためにできるだけ早く定量及び凍結する。例えば、Analytical Biochemistry 195、p207−213(1991)、及びAnalytical Biochemistry 220、p420−423、(1994)を参照されたい。
RNAをDNAに逆転写する。一本鎖RNA(「ssRNA」)を、Thermo Fisher Scientific製のSUPERSCRIPT(登録商標)III逆転写酵素及び供給されたFirst Strand Bufferを用いて2段階手順で逆転写する。最初のステップは、以下の成分のこれらの最終濃度で行われる:dNTP’s、それぞれ660μM;RNA鋳型、〜5μM;プライマー、5.25μM。ステップ1の成分を65℃で5分間加熱し、次いで少なくとも2分間氷冷させる。ステップ2の成分の最終濃度は、First Strand Buffer、1x;DTT、5mM;RNアーゼ阻害剤(NEB)、0.01U/μL、SUPERSCRIPT(登録商標)III逆転写酵素、0.2U/μl。ステップ2の成分を混合し、37℃に温め、ステップ1の成分を2分間氷冷した後、ステップ2の混合物をステップ1の混合物に加える。合わせた部分を37℃で12時間反応させる。反応後、アガロースゲル電気泳動を行う。既知の出発物質RNA及び既知の生成物、又はPCR産物ライブラリーのような既知の生成物類似体の反応のサンプルを採取する。全てのサンプルにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加し、65℃で2分間加熱し、急冷し、次いでアガロースゲル上で泳動する。ssRNAは、相補DNA(「cDNA」)産物から分解するはずである。1.5倍体積のイソプロパノール及び酢酸アンモニウムを2.5Mまで添加し、続いて48,000gで1時間遠心分離することにより、cDNA産物を精製する。cDNAペレットを蒸留水(「dH2O」)に再懸濁し、pH13までLiOHを加えることによってRNA鎖を加水分解する。溶液を95℃で10分間加熱する。非コード領域に特異的なプライマーの1.05当量を添加し、pHを、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「Tris」)及び酢酸で中性にし、そして反応物をゆっくりと室温まで冷却し、すぐに濃縮して緩衝液をNEB CUTSMART(登録商標)緩衝液に交換した。
末端非コード領域の除去。非コード領域二本鎖を作成する相補的オリゴを有する逆転写のssDNA産物をNEB CUTSMART(登録商標)緩衝液に100μg/mlの濃度で懸濁する。NEB製の制限酵素SACI−HF(登録商標)及びECORI−HF(登録商標)をDNAの1U/μgの濃度まで添加する。消化物を37℃で1時間インキュベートし、次いで酵素を65℃で20分間加熱不活性化する。
反応部位アダプターは翻訳のために準備される。
反応サイトアダプターの提供。2組の96反応部位アダプターが提供され、各々は、ヘアピンループ、ステム、及びアンチコード配列を含むオーバーハングを含む。1つのセットは、3’末端非コード領域の除去後に現れるが、鋳型鎖の3’末端コード領域に特異的にハイブリダイズする3’オーバーハングアンチコード配列を有する;他のセットは、5’末端非コード領域の除去後に現れるが、鋳型鎖の5’末端コード領域に特異的にハイブリダイズする5’オーバーハングアンチコード配列を有する。3’オーバーハングを有するセットには、5’ホスホリル基が提供される。この例において、各セットのステム領域は、予め制限消化によって除去された対応する末端非コード領域の同一の配列を有する。各セットのループ領域は、リンカー反応部位、N4−TriG1−アミノ2’デオキシシチジン(IBA製、Goettingen、ドイツ)で修飾された塩基を有する。ここに記載されたアダプターは、Sigma Aldrich、アイオワ州コーラルビルのIntegrated DNA Technologies、又はケンタッキー州ルイビルのEurofins MWGのようなDNAオリゴ合成会社から購入することができる。
反応部位アダプターの荷電6組の反応部位アダプターの2つのセットを別々のウェルに入れ、TEバッファー(Promega、MA)に溶解する。15μlのTOYOPEARL(登録商標)SuperQ−650M(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)イオン交換樹脂をフィルタープレートの各ウェルに入れ、100μlの10mM HOAcで洗浄する。鋳型鎖の量に比例する各反応部位アダプターのアリコートをフィルタープレートの別々のウェルに移し、それらを樹脂上に固定化する。樹脂上に固定化されたアダプターをdH2Oで、次にピペリジンで、次にジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄する。96個の反応溶液が別々に作成され、各々が、DMF50μl、Fmoc保護アミノ酸75mM、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムテトラフルオロボレート75mM、90mMのN−メチルモルホリン、を含む。これらの混合物は、室温で10分間酸を活性化させ、次いで樹脂に添加し、30分間反応させる。次いで、樹脂を4×100μlDMFで洗浄し、新たに調製した反応混合物でカップリング工程を繰り返し、DMFで再度洗浄し、DMF中20%ピペリジン50μlを各ウェルに添加してFmoc保護基を除去し、室温で2時間インキュベートする。樹脂を4×100μlDMFで、次いで3×100μl dH2Oで再度洗浄する。荷電部位アダプターは、1.5M NaCl、50mM KOH、0.01%TRITON(登録商標)X−100を用いて樹脂から溶離する。溶液は、Trisを15mMまで、及びHOAcをpH7.4まで添加することにより中和する。次いで、荷電反応部位アダプターをプールし、ZEBA(登録商標)7K MWCO(Thermo Fisher Scientific、MA)脱塩カートリッジを通過させることにより脱塩する。
ライブラリーの翻訳
荷電反応部位アダプターのライブラリーへのライゲーション。制限消化された鋳型ライブラリーは、ZEBA(登録商標)30K MWCO(Thermo Fisher Scientific、MA)遠心濃縮器で50mM Tris−HCl、10mM MgCl2、25mM NaClを用いて、pH7.5、25℃で緩衝液交換をする。鋳型鎖の3’末端に特異的な荷電反応部位アダプターの1.1当量を添加する;鋳型鎖の5’末端に特異的な荷電反応部位アダプターの1.1当量を加え、混合物を同じ緩衝液で1μMの鋳型鎖濃度に希釈する。反応物を65℃で10分間加温し、1時間かけて45℃に冷却し、45℃で4時間保持する。室温に冷却した後、DTTを10mMまで添加し、ATPを1mMに添加し、T4 DNAリガーゼを50U/mLまで加える。ライゲーション反応を室温で12時間実施し、次いで酵素を65℃で10分間加熱不活性化し、反応をゆっくりと室温まで冷却する。この反応物を緩衝液交換し、150mM NaCl、20mMクエン酸塩、15mMトリス、0.02%ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、0.05%Tween20(Sigma−Aldrich製)にpH7.5で30K分画分子量(MWCO)遠心濃縮器で濃縮する。
ハイブリダイゼーションアレイの調製。ハイブリダイゼーションアレイは、厚さ2mmまでのTECAFORM(登録商標)(Acetal Copolymer)シャーシから構成され、コンピュータの数値制御装置で穴が切られている。ELKO FILTERING製ナイロン40ミクロンメッシュが日東電工製のNP200両面テープを使用して、シャーシの底面に接着されている。次いで、アジド基で官能化されたCMセファロース(登録商標)樹脂(Sigma Aldrich)の固体支持体で穴を充填する。樹脂は、Broadpharm(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した8個のPEG単位を有するアジド−PEG−アミンを用いて官能化される。充填されたCMセファロース(登録商標)45mlをフリット漏斗に入れ、DMFで洗浄する。次いで、樹脂を90mlのDMFに懸濁させ、4.5mMのアジド−PEG−アミン、75mMのEDC、7.5mMのHOAtと共に室温で12時間反応させる。樹脂をDMF、水、イソプロパノールで洗浄し、エタノール20%中4℃で保存する。その後、ナイロン40ミクロンメッシュをシャーシの上部に接着する。アジド基は、アルキン結合オリゴをクリックケミストリーを用いて固体支持体に繋ぐことを可能にする。アレイをアレイ/ウェルプレートアダプターに配置し、ウェルプレート上にアダプターを置くことにより、アジド−SEPHAROSE(登録商標)上のオリゴを捕捉してレジスターに「クリックされた状態に」することができる。1nmolのアルキニルオリゴ、硫酸銅、625μMのトリス(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(「THPTA」)(リガンド)、3.1mMのアミノグアニジン、12.5mMのアスコルビン酸塩、12.5mMのリン酸緩衝液pH7,100mMを含む溶液を、アレイ/ウェルプレートアダプターの各ウェルに添加し、SEPHAROSE(登録商標)支持体上に吸着させる。10分後、溶液を遠心分離機でアレイからプレート中に回転させ、その後すぐ、反応で2回目の通過のためにアレイ上に再びレジスターを再分注する。2回目の10分間の反応後、反応溶液をウェルプレート内に回転させ、ウェルプレートを脇に置く。アレイを1mM EDTAでよく洗浄し、0.05%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液(「PBS」)中に保存する。反応溶液をそれぞれdH2Oで100μLに希釈し、ジエチルアミノエチル(DEAE)イオン交換樹脂上に負荷し、dH2Oで洗浄して、取り込まれていないオリゴを除くすべての試薬及び反応副生成物を除去する。これらの溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して、出発物質の消失による取り込みの程度を確認する。1つのアレイは、鋳型ライブラリーの1つのコード位置に相補的なオリゴを有する。各コーディング位置に対して別個のアレイが作られる。
配列特異的ハイブリダイゼーションによるライブラリーの選別。ハイブリダイゼーション対応のライブラリーを、1×ハイブリダイゼーションバッファー(2×クエン酸ナトリウム塩(SSC)、+15mMトリスpH7.4 + 0.005%TRITON(登録商標)X100,0.02%SDS、0.05%アジ化ナトリウム)で13mlに希釈する。10μgのトランスファーRNA(「tRNA」)を添加して、非特異的な核酸結合部位をブロックする。アレイは、鋳型ライブラリー内の所望のコード位置に対応して選択される。アレイを、いずれかの側に1〜2mmの隙間を提供するチャンバー内に置き、13mlのライブラリー溶液を注入する。チャンバーを密封し、37℃で48時間穏やかに振盪する。任意で、アレイ上のライブラリーをより速く選別する手段として、予めパターン化された経路内の様々な特徴を介して指示された形でライブラリーを含む溶液を送ることを可能にする装置にアレイを配置する。
ハイブリダイゼーションアレイから選別されたライブラリーを溶離する。アレイを、チャンバーを開封してハイブリダイゼーション溶液を新鮮な1×ハイブリダイゼーション緩衝液と交換し、続いて37℃で30分間振盪することによって洗浄する。洗浄をハイブリダイゼーション緩衝液で3回、次いで1/4×ハイブリダイゼーション緩衝液で2回繰り返す。その後、ライブラリーはアレイから溶出される。アレイをアレイ/ウェルプレートアダプターに入れ、10mM NaOH、0.005%TRITON(登録商標)X−100の30μlを各ウェルに加え、2分間インキュベートする。この溶液を、アレイを通ってウェルプレートに遠心分離する。溶出手順は3回行う。選別されたライブラリー溶液は、9μlの1M Tris pH7.4及び9μlの1M HOAcをこの順序で各ウェルに加えることによって中和する。
ソートされたライブラリーに対するペプトイドカップリング化学ステップを実施する。SuperQ 650M樹脂の15μlアリコートをフィルタープレートの各ウェルに添加し、100μlの10mM HOAcで洗浄する。選別されたライブラリーは、イオン交換樹脂を有するウェルプレートへのハイブリダイゼーションアレイの溶離中に回転するウェルプレートからレジスターに移される。樹脂及びライブラリーを、1×90μlの10mM HOAc、2×90μlのdH2O、2×90μlのDMF、1×90μlのピペリジンで1×90μlで洗浄する。別に、100mMのクロロ酢酸ナトリウムと150mMの4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロライドをメタノール中に含む溶液を調製する。この溶液40μlを樹脂の各ウェルに加え、室温で30分間反応させる。樹脂を3×90μlのメタノールで洗浄し、カップリングを繰り返し、3×90μlのメタノール、3×90μlのDMSOで洗浄する。別に、第一アミンの2M(又は必要に応じて飽和した)をDMSO中に含む溶液を調製する。40μlの第一アミン溶液の1つを樹脂の各ウェルに添加し、37℃で12時間反応させる。樹脂を3×90μlのDMSO、3×90μlの10mM酢酸(HOAc)、3×90μlのdH2Oで洗浄する。1.5M NaCl、50mM NaOH、0.005%TRITON(登録商標)X−100を用いてイオン交換樹脂からDNAライブラリーを3×30μl部分に溶出させる。すべての反応をプールし、Trisを15mMまで、かつHOAcをpH7.4まで添加することによって溶液を中和する。1×ハイブリダイゼーション緩衝液へ濃縮及び緩衝液交換を行う。
ライブラリーの合成を完了する。上記のプロトコルを用いてハイブリダイゼーションアレイ上でライブラリーを選別し、ペプチド又はペプトイド化学を実施するための上記プロトコル、又は他の化学工程を行うために以下の実施例10〜32のプロトコルを使用し、更に3つの選別及び合成工程を行い、ライブラリーを完全に翻訳する。
選択のためにライブラリーを調製する。ライブラリーの翻訳が完了したら、1.0μM以下のdH2O、1xのDREAMETAQ(登録商標)バッファー、10000xのdNTP[鋳型]、0.2U/μLのDREAMTAQ(登録商標)ポリメラーゼ、及び各dNTPについて等量のMgCl2を補充した中で、鋳型としてのライブラリーを組み合わせて一本鎖領域が任意で二本鎖を形成する。3’末端の反応部位アダプターがこの反応のためのプライマーとして作用することに留意されたい。混合物を95℃で2分間加熱し、次いで57℃で10秒間アニールし、72℃で10分間伸長する。エタノール沈殿により反応物を精製する。
目的のタンパク質標的に結合するリガンドを選択する。100μlのPBS中の5μgのストレプトアビジンをMAXISORP(登録商標)プレートの4つのウェルに4℃で一晩振盪して固定する。ウェルをPBST 4×340ulで洗浄する。2つのウェルを200μlのカゼインで封鎖し、他の2つはBSA 5mg/mlで室温で2時間封鎖する。ウェルをPBST 4×340μlで洗浄する。100μlのPBS中の5μgのビオチン化標的タンパク質を、カゼインで封鎖したウェル及びBSAで封鎖したウェルに添加し、室温で1時間振盪してインキュベートする(タンパク質のビオチン化に関するプロトコルについては、Elia、G.2010.Protein Biotinylation、Current Protocols in Protein Science、60:3.6:3.6.1−3.6.21を参照)。Tween20(PBST)を含むPBS中の翻訳されたライブラリーの100μlアリコートを、標的タンパク質を中に入れていない各ウェルに添加し、100μlのPBSTを、標的タンパク質を中に入れた2つのウェルに添加する。サンプルを室温で1時間振盪しながらインキュベートする。緩衝液は、固定化された標的タンパク質及びPBSTのみを含むウェルから注意深く吸引される。標的を含まないウェル中のライブラリーを含む緩衝液は、標的含有ウェルに注意深く移される。100μlのPBSTを、標的を含まないウェルに添加する。全てを室温で振盪しながら4時間インキュベートする。ライブラリーをピペットで慎重に取り出して保存する。ウェルを4×340μlのPBSTで洗浄する。標的タンパク質に強く結合するライブラリーメンバーを溶出するために、100μlのPBST中の過剰のビオチンをウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートする。緩衝液を注意深く吸引し、PCR反応の鋳型として用いる。
選択結果を分析する。選択の前後のライブラリーからのPCR産物を、DNA配列決定サービス業者が必要とするプライマー及びプロトコルを用いてディープシークエンシングのために提出する。業者は、カリフォルニア州フリーモントのSeqmatic、カリフォルニア州ヘイワードのElim BioPharmが挙げられる。各配列鎖の末端及び内部コード領域のコード配列を分析して、コード部分の合成に使用されるビルディングブロックを推定する。選択前及び後の同定されたライブラリーメンバーの相対頻度は、ライブラリーメンバーが選択によって集団において富化される度合いを示唆する。ライブラリーメンバー生存選択を含む様々な化学サブグループの分析は、これらの部分がライブラリーメンバーに適合性を与える程度を示し、より適合した分子を進化させるために、又は独立した合成及び分析のために類似分子を予測するために使用される。
実施例2:単一の反応部位アダプターを有するライブラリーを調製及び翻訳する。
単一の反応部位アダプターを有するライブラリーは、(a)末端非コード領域の1つの除去、及び(b)対応する反応部位アダプターのライゲーションの工程が省略されていることを除いて、実施例1と全く同様に調製される。
実施例2a:Gの5’末端に単一の反応部位アダプターを有するライブラリーを調製し、翻訳する。Gのコード鎖の5’末端に単一の反応部位アダプターを有するライブラリーを調製するために、ライブラリーは、「末端非コード領域の除去」工程を除いて実施例1と全く同様に調製することができるが、唯一の追加される制限エンドヌクレアーゼはSacIでなければならない。そうすることにより、5’末端非コード領域が除去され、5’荷電反応部位アダプターが適切にハイブリダイズし、鋳型鎖に結合することができる。5’末端非コード領域の認識部位に特異的な制限エンドヌクレアーゼのみを使用し、3’末端非コード領域の認識部位に特異的な制限エンドヌクレアーゼを除くと、3’末端非コード領域がそのまま残り、3’反応部位アダプターのその末端への連結を不可能にする。この工程における5’荷電反応部位アダプターの付加、「ライブラリーへの荷電反応部位アダプターの結合」は実施例1と同様に行われる。この工程における3’荷電反応部位アダプターの付加は省略される。この実施例の反応部位アダプターは、実施例3、実施例4a及び実施例4bに記載されるように、2以上のステム、2以上のループ及び2以上のリンカーを含有し得る。上記の5’末端非コード領域の除去は、実施例6a及び6bに記載の方法を用いて行うことができることは、当業者には理解されよう。他の制限部位を5’末端コード領域に設計することができ、この目的のために異なる制限酵素を使用できることが当業者に理解されよう。
実施例2b:Gの3’末端に単一反応部位アダプターを有するライブラリーを調製及び翻訳する。Gのコード鎖の3’末端に単一反応部位アダプターを有するライブラリーを調製するために、ライブラリーは、「末端非コード領域の除去」工程を除いて、実施例1と全く同様に調製され、唯一の追加される制限エンドヌクレアーゼはEcoRIでなければならない。そうすることにより、3’末端非コード領域が除去され、3’荷電反応部位アダプターが適切にハイブリダイズし、鋳型鎖に結合することができる。3’末端非コード領域の認識部位に特異的な制限エンドヌクレアーゼのみを使用し、5’末端非コード領域の認識部位に特異的な制限エンドヌクレアーゼを省略すると、5’末端非コード領域がそのまま残り、5’反応部位アダプターのその末端への結合を不可能にする。この工程での3’荷電反応部位アダプターの付加、「ライブラリーへの荷電反応部位アダプターの結合」は実施例1と同様に行われる。その工程における5’荷電反応部位アダプターの付加は省略される。この実施例の反応部位アダプターは、実施例3、実施例4a及び実施例4bに記載されるように、2以上のステム、2以上のループ及び2以上のリンカーを含有し得る。上記のように3’末端非コード領域を除去することは、実施例6bに記載の方法を用いて行うことができることは、当業者には理解されるであろう。他の制限部位を3’末端コード領域に設計することができ、この目的のために異なる制限酵素を使用できることを、当業者には理解されるであろう。
実施例2c。合成中に反応部位アダプターを異なる位置に連結したライブラリーを調製し翻訳する。1つの反応部位アダプターを鋳型オリゴヌクレオチドGに連結し、いくつかの位置ビルディングブロックをその上に設置し、次いで第2の反応部位アダプターをGに連結する、2つの反応部位アダプターを有するライブラリーを調製することができる。実施例2a又は実施例2bのいずれかの方法を用いて実施した。次いで、実施例1の工程を用いて1つ以上の位置ビルディングブロックを設置し、「配列特異的ハイブリダイゼーションによるライブラリーの選別、及びハイブリダイゼーションアレイからの選別されたライブラリーの溶出」及び、ペプチドカップリング又はペプトイドカップリングのような実施例1に記載された位置ビルディングブロックを設置するための化学的工程、又は実施例10〜32に記載の化学工程のいずれかと同様である。次いで、第2の反応部位アダプターをGに連結する。第2の末端非コード領域を除去することは、第2の反応部位アダプターの結合の直前に行うことができ、第2の末端非コード領域の除去と第2の反応部位アダプターの結合との間に、位置ビルディングブロックを設置するための化学工程を介在することができることを、当業者には理解されるであろう。
実施例3:反応部位アダプター当たり2つ以上の反応部位を有するライブラリーを調製し翻訳する。
単一のアダプター上に複数の反応部位を有するライブラリーは、実施例1又は実施例4aと全く同様にして調製することができるが、但し、実施例1又は4aに記載のような反応部位で修飾された、2(以上)の塩基を有する反応部位アダプターヘアピンが提供されることを除く。反応部位修飾塩基のいくつかの配置が可能であり、例えばステムの末端、又はループ領域の両方の反応部位近くに反応部位を有する塩基の配置が挙げられる。1つのアダプターのみが使用されている場合、又は2つのアダプターが使用されている場合、複数の反応部位をアダプターに配置することができる。このような反応部位アダプターは合成されるか、又はアイオワ州コーラルビルのIDT、又はケンタッキー州ルイビルのEurofins MWGのようなDNAオリゴ合成会社から購入される。
実施例4a:反応部位アダプターに別のヘアピンを有するライブラリーを調製し、翻訳する。
実施例1に記載したのと同じプロトコルを用いて多数の型のヘアピンを作製し、様々な状況で用いることができる。より小さなヘアピンが有利である場合、ステムはわずか5塩基対を含むことができる。また、相補的なステム配列間の6−PEGリンカーを含むヘアピンは、より大きなDNAループを置換することができる。Durand,M.,et al.“Circular dichroism studies of an oligodeoxyribonucleotide containing a hairpin loop made of a hexaethylene glycol chain:conformation and stability.” Nucleic acids research 18.21(1990):6353−6359)を参照。ポリディスプレイが有利な場合には、所定のヘアピン上の複数のコード部分間の距離、及びそれらのコード部分の配置が重要となる。
コード部分の間の距離は、個々のプロジェクトのニーズに応じて変更され適合される。ヘアピンのループ領域内又はその近傍に1つのリンカーを、及びアンチコード配列内若しくはその近傍に、又は二本鎖ステム領域のいずれかの鎖のアンチコード配列の近くに第2のリンカーを設置することによって、コード部分間の距離を、ステムを構成する塩基の数を増減させて、より大きく又はより小さくする。同様に、ステム内のヌクレオチドの数を一定に保ちながらステムの長さに沿って第2のリンカーの位置を変えることにより、ループ領域内又はその近傍に1つのリンカーを配置することによって、コード部分間の距離をより大きく又はより小さくする。任意に、両方のリンカーがステム領域に配置される場合、それらを分離するヌクレオチドの数は、プロジェクトのニーズに合わせて変化する。両方のリンカーを任意でループ領域内に配置することもでき、その間の塩基数はプロジェクトに合わせて変更することができる。
例えば、ステムに沿って配置されたコード部分が、ループ内に配置されたコード部分と異なる標的分子へのアクセスを有する場合、ヘアピン上のコード部分の配置が重要である場合、複数のループ及びステムを有するヘアピン使用される。一実施形態では、ヘアピンは、2又は3のループ及び2つのステムを有し得る。このヘアピンは、任意に第3ループ領域に、次に第1ステム領域の第2鎖に、又は第1ステム領域の第2鎖に直接連結された、第2のステム領域の第2の鎖に連結された第2ループ領域に連結された第2ステム領域の第1鎖に連結された第1ループ領域に連結された第1ステム領域の第1鎖に連結されたアンチコーディング領域を含むことができる。1以上のリンカーは、特定のプロジェクトに必要な、1以上のループ内、及び1以上のステム領域内に配置される。
Svoboda,P.et al.Cellular and Molecular Life Sciences CMLS,April 2006,Volume 63,Issue 7,pp 901−908,及びBikard,et al,Microbiology And Molecular Biology Reviews,Dec.2010,p.570−588,及びKari,et al,DNA Computing Volume 3892 of the series Lecture Notes in Computer Science pp 158−170,及びDomaratzki,Theory Comput Syst (2009)44:432−454,Brazda,et al,BMC Molecular Biology 2011 12:33に記載されているような内部ループ、バルジ(bulges)、及び十字構造が挙げられ、これらに限定されない多くの二次構造を組み込んだ多数のヘアピン三次構造が可能であることは、当業者には理解されるであろう。このような二次構造及び三次構造を組み込んだヘアピンオリゴ配列は、Sigma−Aldrich、Integrated DNA Technologies(アイオワ州コーラルビル)、Eurofins MWG(ケンタッキー州ルイビル)のような多くのDNA合成会社によって合成されることが、当業者には理解されよう。リンカーを設置するための反応部位を有するか、又はリンカー及び反応部位を有する修飾された塩基を、合成の過程でヘアピンの任意の望ましい位置に配置することができることは理解されよう。より多くの二次構造及び/又はより多くの情報を有するヘアピンは、より長いヌクレオチド配列を含む傾向があることは、当業者には理解されるであろう。
実施例4b:反応部位アダプター内に別のヘアピンを有するライブラリーを調製及び翻訳する。
実施例1に記載されたのと同じプロトコルを用いて、ヘアピンの多数の型が作製され、様々な状況で使用される。反応部位アダプターのステム領域の配列は、ステム領域内又はその近傍での切断を可能にする1以上の制限部位を含む。これらの部位での制限消化は、固定標的への非常に強いバインダーの放出を可能にし、プライマーの適切なアニーリングを可能にするループ領域の除去によるPCR増幅を促進する。他の情報もまた、反応部位アダプターヘアピンDNAにコードされ得る。1つの例は、ループ領域に組み込まれた一連の多様な塩基である。選択後に増幅される場合、これらの様々な塩基は、増幅バイアス又は人工物のために選択が豊富なライブラリーメンバーを同定するのに役立つであろう。別の例は、実施例7に記載されるようなインデックス配列のような分子の選択又は合成履歴に関する情報を示す特定の配列である。ヘアピンはまた、蛍光標識された塩基又は塩基類似体、放射性標識塩基又は塩基類似体を含み、ライブラリーとその合成又はパフォーマンスのさまざまな側面を定量及び分析する。ヘアピンはまた、ビオチンのような処理を容易にする官能基を有する塩基又は修飾された塩基を含むことができる。そのようなヘアピンは、アイオワ州コーラルビルのIDT、Sigma Aldrich又はケンタッキー州ルイビルのEurofins MWGのような特別なDNAオリゴの評判の良い業者から購入することができる。
実施例4c。反応部位アダプターを他の化学的性質を有する鋳型鎖に連結する。反応部位アダプターを鋳型遺伝子の末端コード領域にアニールさせ、実施例1のようにT4 DNAリガーゼで連結する。反応部位アダプターを共有結合的に結合する他の方法を使用することができ、化学的又は酵素的方法が含まれる。荷電反応部位アダプターを、Shabarova,et al.(1991)Nucleic Acids Research,19,4247−4251),Fed−erova,et al.(1996)Nucleosides and Nucleotides,15,1137−1147,GryaZnov,Sergei M.et al.J.Am.Chem.Soc,vol.115:3808−3809(1993),及びCarriero and Damlia(2003)Journal of Organic Chemistry,68,8328−8338によって行われたように、水溶性カルボジイミド及び臭化シアンのような試薬を用いて化学的手段により連結する。化学的ライゲーションは、pH7.6で1M MES及び20mM MgCl2を含有する緩衝液中で5’リン酸化DNAを用いてアセトニトリル中の5M臭化シアン、1:10v/v比で、任意で行われ、反応は0度、5分で行われる。ライゲーションは、製造者のプロトコルを用いて、トポイソメラーゼ、ポリメラーゼ及びリガーゼによって行うこともできる。
実施例5:一本鎖末端コード領域を有するライブラリーを調製し翻訳する。
立体的なかさの低いライブラリーは、反応部位アダプターの末端コード領域からオリゴヌクレオチドを除去して、末端コード領域及び任意でステム領域の全部又は一部を一本鎖にすることによって調製される。これは、以下の例外を除いて、実施例1と全く同様に行われる。デオキシウリジンは、アンチコード配列中の位置の提供された反応部位アダプター内、及びアンチコード領域の末端と最も近いリンカーとの間のステムの位置に組み込まれる。配列特異的ハイブリダイゼーション及び荷電反応部位アダプターの鋳型鎖へのライゲーションの後、ライブラリーをNEBから1×UDG反応緩衝液に緩衝液交換し、ウラシル−DNAグリコシラーゼ(「UDG」)を20U/mlの濃度で添加し、製造業者のプロトコルに従って37℃で30分間インキュベートした。続いて、pH12で95℃まで20分間加熱して、ヘアピンのアピリミジン部位を加水分解した。生成された小さなssDNAフラグメントを、65℃に保たれたバッファーを用いてサイズ排除することによって除去する。
実施例5a。反応部位アダプターの末端コード領域からオリゴヌクレオチドを除去することは、実施例1の実行中のいくつかの時点で任意に実施する。実施例5の手順を荷電反応部位アダプターのライゲーション後であるが、第1の位置ビルディングブロックの追加前に実施することを除いて、実施例1と全く同様にして、オリゴヌクレオチドを任意で除去し得る。第1位置ビルディングブロックの添加後であるが、その後の任意の位置ビルディングブロックの添加の前に実施例5の手順が実施されることを除いて、実施例1と全く同様にして、オリゴヌクレオチドを任意で除去することができる。オリゴヌクレオチドは、実施例5の手順が全ての位置ビルディングブロックの添加後に実施されることを除いて、実施例1と全く同様に、任意で除去することができる。所望の位置でDNA鎖を切断する作業は多くの方法で達成され、この作業を容易にする多数の商業的に入手可能な酵素及び公開されたプロトコルが存在することは、当業者には理解されると思われ、例えば、New England Biolabsは、少なくとも10個のニッキングエンドヌクレアーゼを販売し、それらの使用のためのプロトコルを公表する。ここに示した特定の例は例示的なものであり、末端コード領域及び任意でヘアピン一本鎖の一部を作製する作業を達成する他の方法を排除するものではない。
実施例6a:UDGを用いて5’末端非コード領域を除去する。
実施例1の5’末端非コード領域を除去するために使用される制限消化を排除し、UDGでの処理及びその後のアピリミジン部位のアルカリ加水分解によって置き換えた。ライブラリーは実施例1と全く同様に調製されるが、逆転写をプライミングするオリゴが、プライマーの3’末端又はその近くのdU塩基を取り込む。逆転写及びRNA鎖の塩基加水分解の後、UDGはウラシルを除去して、荷電反応部位アダプターのライゲーションの準備ができている末端コード領域を産生する熱及びアルカリ(UDG及び反応条件の使用については実施例5参照)によって後に切断されるアピリミジン部位を作製することができる。所望の位置でDNAの一本鎖又は二本鎖を切断する多数の方法があり、この作業を促進する多数の市販の酵素及び公開されたプロトコルが存在することは、当業者には理解されるであろう。ここに示した具体例は例示であり、5’末端非コード領域を除去する作業を達成する他の方法を排除するものではない。
実施例6b:制限酵素NdeIを用いて5’末端非コード領域又は3’末端非コード領域を除去する。
5’末端コード領域若しくは3’末端コード領域、又はその両方を除去するために使用される制限消化は、末端非コード領域にNdeIの認識部位を含めること、及び逆転写工程の後に制限消化を行うことによって達成される。NdeIには、RNA/DNAハイブリッドを切断する機能と、一本鎖DNAを切断する機能がある。従って、NdeIは、RNA鎖の塩基加水分解の前若しくは後のいずれか、又はその両方で切断するために使用される。
実施例6c:逆転写プライマーのRNA塩基を用いて5’末端非コード領域を除去する。5’末端非コード領域は、「RNAをDNAに逆転写する」工程に使用されるプライマーがRNA塩基を含むことを除いて、実施例1の正確なプロトコルを用いて除去される。実施例1のように逆転写産物のRNA鎖が加水分解されると、DNAプライマー中のRNA塩基も加水分解され、RNA塩基の5’であるDNAプライマーの部分が除去される。
実施例7:式(I)のインデックス分子。
コード領域は、インデックス領域として使用するために残しておくか、又は追加する。実施例1のようにライブラリーの調製及び翻訳の後、ライブラリーは、ハイブリダイゼーションアレイ上で、インデックスを付けるために確保されたコード領域によって分類される。このような選別によって生成されたサブプールは、異なる目的のために使用され、異なる性質、異なる標的、又は異なる条件の同じ標的に対して選択される。異なる選択の産物は、任意でPCRによって独立して増幅され、他のサブプールと再プールされ、実施例1のように再翻訳される。
実施例8a:遺伝子ライブラリーを別の方法で調製する。
実施例1は、提供されたライブラリー遺伝子配列の全ての内部非コード領域での制限消化とその後のライゲーションによって、全てのコドンのコンビナトリアル再集合を同時に説明する。このプロセスは、任意で、同時にではなく段階的に実行される。全てのエンドヌクレアーゼの代わりに、単一の制限エンドヌクレアーゼが添加されていることを除いて、実施例1の「全てのコドンを互いに脱結合させるために制限消化されたDNA」という工程に見られるのと同じ反応条件が使用される。次に、実施例1の「コドンをコンビナトリアル再集合して遺伝子ライブラリーを作製する」工程に見られるのと同じ反応条件を用い、制限消化産物を一緒に再連結する。ライゲーション産物をアガロースゲル電気泳動で精製し、PCRで増幅し、次の制限酵素で切断する。このプロセスは、遺伝子ライブラリーが完成するまで繰り返す。
実施例8b:別の方法で遺伝子ライブラリーを調製する。
実施例1及び8aは、全ての内部非コード領域における制限消化とその後のライゲーションによる全てのコドンのコンビナトリアル再集合を説明する。いくつかの実施形態では、著しく低い複雑性を有する集団を生成するためのコドンの不完全なコンビナトリアル再集合が有利であろう。そのような遺伝子ライブラリーは、実施例1に記載の96個の遺伝子配列の混合物をいくつかのアリコートに分割することによって産生される。次いで、各アリコートを、実施例1の「DNAを制限消化して全てのコドンを互いに脱結合させる」工程、又は実施例8aに見られる反応条件を用いて、1−3の制限酵素の異なる組合せによって制限消化する。制限酵素の熱不活性化の後、独立した消化産物を、工程の実施例1のプロトコルに従って再連結し、コドンをコンビナトリアル再集合して遺伝子ライブラリーを作製する。生成物をプールし、アガロースゲル電気泳動により精製し、PCRにより増幅し、残りのライブラリー調製及び翻訳及び選択を実施例1に従って行う。
実施例8c:ライブラリーに対して遺伝子シャッフリング又は交差反応を実施する。実施例1又は実施例8a又は実施例8bに記載のもののようなライブラリーを翻訳して選択した後、遺伝子シャッフリングを行うことにより、ライブラリーに以前に存在しなかった新しい子孫表現型が産生され、又は選択を生き抜いた表現型を再サンプリングする子孫表現型が産出される。後の選択のライブラリーは、PCRによって増幅される。PCR産物をいくつかのアリコートに分割し、各アリコートを実施例8に記載のプロトコル、又は任意でステップの実施例1に記載したプロトコルに供する。DNAを制限消化して全てのコドンをそれぞれ脱結合するし、コドンはコンビナトリアル再集合して遺伝子ライブラリーを生成する。実施例1又は8bに記載されているように、消化/再結合生成物をプールし、精製し、かつ増幅し、ライブラリー調製、翻訳及び選択のその後のラウンドを実施例1に従って行う。
実施例9:別の反応部位官能基及びリンカーを有するライブラリーを調製及び翻訳する。
遊離アミンからの異なる初期反応部位を用いるライブラリーは、いくつかの方法で作製される。1つの方法は、既存の初期反応部位官能基を、所望の初期反応部位官能基を有する二官能性分子でキャップ(cap)することである。「反応部位アダプターを荷電する」工程において、その工程に列挙されたペプチドカップリング反応条件を用いて、異なる初期反応部位が所望される各反応部位アダプター、ペプチド結合が、カルボン酸及び所望の初期反応部位官能基を有する二官能性化合物を伴う最初の反応部位官能基アミンに形成されることを除いて、実施例1と全く同様にライブラリーを調製する。例えば、5−ヒドロキシペンタン酸を遊離アミンと反応させてペプチド結合を形成させ、ライブラリーを合成するための初期反応部位としてヒドロキシル官能基を作ることができる。
第2の方法は、他の所望の初期反応部位官能基の導入を可能にするか又は容易にする異なる反応部位で修飾された異なる塩基を組み込むことである。かかる塩基の1つは、バージニア州のGlen Researchによって販売されている5−エチニル−dU−CEホスホラミダイト(「エチニル−dU」)である。これは、アジド及び所望の初期反応部位官能基を有する二官能性リンカー化合物で任意に修飾される。例えば、5−アジドペンタン酸を、実施例25に見られる条件で「クリック」反応(Huisgen反応)でアルキニル部分と反応させ、最初の反応部位官能基としてカルボン酸を確立することができた。代表的であるが非包括的な別の例として、5−アジド1−ペンタナールは、「クリック」反応(Huisgen反応)においてアルキニル部分と反応して、初期反応部位官能基としてアルデヒドを作ることができた。別の代表的な例として、4−アジド、1−ブロモメチルベンゼンを「クリック」反応(Huisgen反応)でアルキニル部分と反応させて、初期反応部位官能基としてベンジルハライドを作ることができた。この塩基は、実施例10〜33から選択されたアルキンに適した化学的性質を用いたライブラリー合成のためのアルキニル初期反応部位として任意に使用される。望ましい初期反応部位としては、アミン、アジド、カルボン酸、アルデヒド、アルケン、アクリロイル基、ベンジルハライド、カルボニル基のα位のハロゲン化物、及び1,3−ジエンが挙げられるが、これらに限定されない。
第3の方法は、反応部位アダプターヘアピンの合成の間に、リンカー及び初期反応部位官能基の両方で修飾された塩基を組み込むことである。例えば、5’−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−N8−[6−(トリフルオロアセチルアミノ)−ヘキサ−1−イル]−8−アミノ−2’−デオキシアデノシン−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(バージニア州スターリングのGlen Researchから購入したアミノ−修飾剤C6dAとも呼ばれる)を、ヘアピンの合成中の極めて重要な位置で取り入れると、最初の反応部位官能基として遊離アミン、リンカーとしてC6アルキル鎖を作り、5’−ジメトキシトリチル−N2−[6−(トリフルオロアセチルアミノ)−ヘキサ−1−イル]−2’−デオキシグアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−(ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(アミノ修飾剤C6dGとも呼ばれ、バージニア州スターリングのGlen Researchから購入)も取り入れるであろう。5’−ジメトキシトリチル−5−[3−メチル−アクリレート]−2’−デオキシウリジン、3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(Carboxy dTとも呼ばれ、バージニア州スターリングのGlen Researchから購入)を、ヘアピンの合成中の極めて重要な位置で取り入れると、最初の反応部位官能基としてカルボン酸を、リンカーとして2炭素鎖を作るであろう。5’−ジメトキシトリチル−5−[N−((9−フルオレニルメトキシカルボニル)−アミノヘキシル)−3−アクリルイミド]−2’−デオキシウリジン,3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(Fmoc−アミノ修飾剤C6dTとも呼ばれる、バージニア州スターリングのGlen Research)をヘアピンの合成中の極めて重要な位置で取り入れると、初期反応部位官能基としてFmoc保護アミンを、リンカーとして6炭素鎖を作るであろう。5’−ジメトキシトリチル−5−(オクタ−1,7−ジニニル)−2’−デオキシウリジン,3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(C8alkyne dTとも呼ばれる、Sterling VA Glen Research)をヘアピンの合成中の極めて重要な位置で取り入れると、最初の反応部位官能基としてアルキンを、リンカーとして8炭素鎖を作るであろう。5’−(4,4’−ジメトキシトリチル)−5−[N−(6−(3−ベンゾイルチオプロパノイル)−アミノヘキシル)−3−アクリルアミド]−2’デオキシウリジン,3’−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト(S−Bz−チオール修飾剤 C6−dTとも呼ばれる、バージニア州スターリングのGlen Research)をヘアピンの合成中の極めて重要な位置で取り入れると、最初の反応部位官能基としてチオールを、リンカーとして14原子鎖を作るであろう。ヘアピンの合成中の極めて重要な位置にN4−TriGl−アミノ 2’デオキシシチジン(独国ゲッティンゲンのIBA GmbHから)を組み込むと、最初の反応部位官能基としてのアミン及びリンカーとして3−エチレングリコール単位鎖を作るであろう。
適切なリンカーは、(i)それらが共有結合してヘアピンをビルディングブロックにつなぎ、(ii)それらが式(I)の分子の合成又は使用において他の重要な機能を妨害しないという2つの重要な機能を果たす。したがって、いくつかの実施形態では、リンカーはアルキル鎖又はPEG鎖であり、その理由は(a)それらが高度に可撓性であり、選択中に標的分子にコード部分を適切かつ自由に提示すること、及び(b)それらが比較的化学的に不活性であり、通常は式(I)の分子の合成中に副反応を起こさないからである。全てではないが、ほとんどの作業を適切に行うために、リンカーは、約8PEG単位を超える全長を含む必要はない。ライブラリーDNAを標的分子又は標的構造又は標的表面から可能な限り遠くに保たなければならない選択を実施する場合、そのかなり長いリンカー及び/又はペプチドαヘリックスのような相当に剛性のリンカーが有用で魅力的であろうことは、当業者には理解されるであろう。他の望ましいリンカーとしては、ポリグリシン、ポリアラニン、又はポリペプチドが挙げられる。また、コード部分との結合に直交する様式で、又はコード部分の結合に相補的な様式で式(I)の分子の結合に使用されるフルオロフォア、放射性標識、又は官能的部分を組み込むリンカーも使用される。例えば、いくつかの状況においてライブラリーを固定化するためにリンカーにビオチンを組み込むことが必要な場合がある。同じ標的分子の第2の結合ポケットに結合することができるコード部分の選択を行う手段として、既知のリガンドを標的分子の1つの結合ポケットに組み込むことも有用な場合がある。
ライブラリーは、異なる反応部位アダプター上の異なるリンカー及び異なる化学反応を用いて任意に調製することができる。5’反応部位アダプター上の1つ又は複数のリンカーは、1つのタイプのリンカー及び1つのタイプの反応部位官能基を有することができ、3’反応部位アダプターは異なるリンカー及び同じ反応部位官能基を有するか、又は異なるリンカー及び異なる反応部位官能基を有する。本明細書で命名されたリンカー及び官能基のいずれも、もし位置ビルディングブロックのその後の導入に必要な化学的性質が、第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの官能基に適合し、それらの各々のヘアピン上の反応部位官能基と反応するのであれば、この実施例での使用に適切である。
この適合性は2つの様式を有する。第1の様式では、異なる化学的性質が反応部位アダプターを荷電させるために使用されるが、第1ビルディングブロックD及び第2ビルディングブロックEの両方が、次の、又は後続の下流工程において同じ化学変換を受けることができる。第2の様式では、異なる化学的性質が反応部位アダプターを荷電させるために使用され、異なる化学的性質が後続の下流工程に必要とされる。この第2の様式では、新生5’コード部分上の官能基、5’末端用の次の位置ビルディングブロック上の官能基及びそのカップリングに使用される化学的性質が、新生3’コード部分の上に存在する官能基と非反応性であることが必要である。同様に、この第2の様式は、新生3’コード部分上の官能基、3’末端用の次の位置ビルディングブロック上の官能基及びそのカップリングに使用される化学的性質が、新生5’コード部分に存在する官能基と非反応性であることが必要である。3’及び5’反応部位アダプター上の直交化学を用いてビルディングブロックを導入する工程は、任意の順序で行うことができる。さらに、合成の所与の段階で導入された多様なビルディングブロックの中で、いずれのビルディングブロックの導入も行わないことが重要な多様性要素であることは、当業者には理解されるであろう。これらのステップのための適切な化学的性質は、これらに限定されないが、実施例10〜32及び実施例1に記載の化学的性質を含む。
実施例10:鈴木カップリング化学を用いてコード部分を合成する。
反応サイトアダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アリールヨウ化物を有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解する。これに、ジメチルアセトアミド中200mMストック溶液として50当量のボロン酸、200mM水溶液として300当量の炭酸ナトリウム、20当量の3,3’,3’’ホスファントリイルトリス(ベンゼンスルホン酸)三ナトリウム塩を100mM水溶液として予備混合したジメチルアセトアミド中の10mMストック溶液として0.8当量の酢酸パラジウムを添加した。混合物を65℃で1時間反応させ、エタノール沈殿により精製する。このDNAライブラリーを緩衝液に1mMまで溶解し、400mM水溶液として硫化ナトリウム120当量を加え、65℃で1時間反応させる。生成物をdH2Oで200μlに希釈し、イオン交換クロマトグラフィーで精製する。(Gouliaev,A.H.,Franch,T.P.O.,Godskesen,M.A.,and Jensen,K.B.(2012)Bi−functional Complexes and methods for making and using such complexes.特許出願WO2011/127933A1を参照)。
実施例11:薗頭カップリング化学を用いてコード部分を合成する。
反応サイトアダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アリールヨウ化物を有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解する。これにジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液として100当量のアルキン、ジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液として300当量のピロリジン、ジメチルアセトアミド中の10mMストック溶液として0.4当量の酢酸パラジウム、100mM水溶液として2当量の3,3’,3’’ホスファントリイルトリス(ベンゼンスルホン酸)三ナトリウム塩を添加した。65℃で2時間反応させた後、エタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。((1)Liang,B.,Dai,M.,Chen,J.,and Yang,Z.(2005)Cooper−free sonogashira coupling reaction with PdCl2 in water under aerobic conditions.J.Org.Chem.70,391−393;(2)Li,N.,Lim,R.K.V.,Edwardraja,S.,and Lin,Q.(2011)Copper−free Sonogashira cross−coupling for functionalization of alkyne encoded proteins in aqueous medium and in bacterial cells.J.Am.Chem.Soc.133,15316−15319;(3)Marziale,A.N.,Schliiter,J.,and Eppinger,J.(2011)An efficient protocol for copper−free palladium−catalyzed Sonogashira crosscoupling in aqueous media at low temperatures.Tetrahedron Lett.52,6355−6358;(4)Kanan,M.W.,Rozenman,M.M.,Sakurai,K.,Snyder,T.M.,and Liu,D.R.(2004)Reaction discovery enabled by DNA−templated synthesis and in vitro selection.Nature 431,545−549を参照)。
実施例12:カルバミル化を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子の何れかとして、アミンを有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解する。これに、1:4v/vトリエチルアミン、ジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液として50当量のジ−2−ピリジルカーボネートを添加する。室温で2時間反応させた後、ジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液としてのアミン40当量を室温で2時間加える。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。((1)Artuso,E.,Degani,I.,and Fochi,R.(2007)Preparation of mono−,di−,and trisubstituted ureas by carbonylation of aliphatic amines with S,S−dimethyl dithiocarbonate.Synthesis 22,3497−3506;(2)Franch,T.,Lundorf,M.D.,Jacobsen,S.N.,Olsen,E.K.,Andersen,A.L.,Holtmann,A.,Hansen,A.H.,Sorensen,A.M.,Goldbech,A.,De Leon,D.,et al.Enzymatic encoding methods for efficient synthesis of large libraries.WIPO WO2007/062664 A2、2007を参照)。
実施例13:チオウレーション(thioureation)を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子の何れかとして、アミンを有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解する。これにジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液として20当量の2−ピリジルチオノカーボネートを室温で30分間添加する。次いで、40当量のアミンを室温でジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液として添加し、ゆっくりと60μCに温め、18時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Deprez−Poulain,R.F.,Charton,J.,Leroux,V.,and Deprez,B.P.(2007)Convenient synthesis of 4H−l,2,4−triazole−3−thiols using di−2−pyridylthionocarbonate.Tetrahedron Lett.48,8157−8162を参照)。
実施例14:アミンの還元的モノアルキル化を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アミンを有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解する。これにジメチルアセトアミド中の200mMストックとして40当量のアルデヒドを加え、室温で1時間反応させる。次いで、40当量の水素化ホウ素ナトリウムをアセトニトリル中の200mMのストック溶液として加え、室温で1時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Abdel−Magid,A.F.,Carson,K.G.,Harris,B.D.,Maryanoff,C.A.,and Shah,R.D.(1996)Reductive amination of aldehydes and ketones with sodium triacetoxyborohydride.J.Org.Chem.61,3849−3862を参照)。
実施例15:ヘテロアリール化合物と共にSNArを用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アミンを有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解する。それにジメチルアセトアミド中の200mMストックとして60当量のハロゲン化ヘテロアリールを加え、60℃で12時間反応させた。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。(Franch,T.,Lundorf,M.D.,Jacobsen,S.N.,Olsen,E.K.,Andersen,A.L.,Holtmann,A.,Hansen,A.H.,Sorensen,A.M.,Goldbech,A.,De Leon,D.,et al.Enzymatic encoding methods for efficient synthesis of large libraries.WIPO WO 2007/062664 A2,2007を参照)。
実施例16:Horner−Wadsworth−Emmons化学を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アルデヒドを有するDNAライブラリーを、1mMのpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これにジメチルアセトアミド中の200mMストックとして50当量のエチル2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、及び200mM水溶液として50当量の炭酸セシウムを添加し、室温で16時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Manocci,L.,Leimbacher,M.,Wichert,M.,Scheuermann,J.,and Neri,D.(2011)20 years of DNA−encoded chemical libraries.Chem.Commun.47,12747−12753を参照)。
実施例17:スルホニル化を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子の何れかとして、アミンを有するDNAライブラリーを、1mMのpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これにジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液として40当量の塩化スルホニルを加え、室温で16時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Franch,T.,Lundorf,M.D.,Jacobsen,S.N.,Olsen,E.K.,Andersen,A.L.,Holtmann,A.,Hansen,A.H.,Sorensen,A.M.,Goldbech,A.,De Leon,D.,et al.Enzymatic encoding methods for efficient synthesis of large libraries.WIPO WO2007/062664 A2、2007を参照)。
実施例18:トリクロロ−ニトロ−ピリミジンを用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、アミンを有するDNAライブラリーを、1mMのpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これにジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液としてトリクロロ−ニトロ−ピリミジン(TCNP)20当量を5℃で添加する。反応物を室温まで1時間かけて加温し、エタノール沈殿により精製する。DNAライブラリーをホウ酸塩緩衝液pH9.4中に1mMで溶解し、40当量のアミンをジメチルアセトアミド中の200mMストック溶液、100当量の純粋なトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させる。ライブラリーをエタノール沈殿により精製する。DNAライブラリーは、直ちに反応させるためにホウ酸塩緩衝液に直ちに溶解するか、プールし、アレイ上で再選別し、次いでホウ酸緩衝液に溶解し、ジメチルアセトアミド中の200mMストックとして50当量のアミン及び100当量のトリエチルアミンと反応させ、室温で24時間反応させた。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Roughley, S. D., and Jordan, A. M. (2011) The medicinal chemist’s toolbox: an analysis of reactions used in the pursuit of drug candidates. J. Med. Chem. 54, 3451−3479を参照)。
実施例19:トリクロロピリミジンを用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アミンを有するDNAライブラリーを、1mMのpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これにDMA中200mMのストックとして50当量の2,4,6トリクロロピリミジンを添加し、室温で3.5時間反応させる。DNAをエタノール中で沈殿させ、次いでpH9.4のホウ酸緩衝液に1mMで再溶解する。これに、200mMアセトニトリルストックとして40当量のアミンを加え、60〜80℃で16時間反応させる。生成物をエタノール沈殿により精製し、次いでDNAライブラリーを即時反応のために直ちにホウ酸緩衝液に溶解させるか、又はプールし、アレイ上で再選別した後、ホウ酸緩衝液に溶解し、ジメチルアセトアミド(DMA)中の200mMストックとしての60当量のボロン酸及び500mM水溶液としての200当量の水酸化ナトリウム、10mM DMAストックとしての2当量の酢酸パラジウム及び100mM水溶液としての20当量のトリス(3−スルホフェニル)ホスフィントリナトリウム塩(TPPTS)と反応させ、75℃で3時間反応させた。DNAをエタノール中で沈殿させ、次いで1mMの水に溶解し、水中400mMのストックとして120mMの硫化ナトリウムと65℃で1時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。
実施例20:Boc−脱保護を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、Boc保護アミンを有するDNAライブラリーを、pH9.4のホウ酸塩緩衝液に0.5mMで溶解し、90℃で16時間加熱した。生成物をエタノール沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Franch,T.,Lundorf,M.D.,Jacobsen,S.N.,Olsen,E.K.,Andersen,A.L.,Holtmann,A.,Hansen,A.H.,Sorensen,A.M.,Goldbech,A.,De Leon,D.,et al.Enzymatic encoding methods for efficient synthesis of large libraries.WO2007/062664A2,2007を参照。)
実施例21:t−ブチルエステルの加水分解を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、t−ブチルエステルを有するDNAライブラリーを、1mMのホウ酸緩衝液に溶解し、80℃で2時間反応させる。生成物をエタノール沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Franch,T.,Lundorf,M.D.,Jacobsen,S.N.,Olsen,E.K.,Andersen,A.L.,Holtmann,A.,Hansen,A.H.,Sorensen,A.M.,Goldbech,A.,De Leon,D.,et al.Enzymatic encoding methods for efficient synthesis of large libraries.WIPO WO2007/062664A2,2007を参照。)
実施例22:Alloc−脱保護を用いてコードされた部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、Alloc保護アミンを有するDNAライブラリーを、pH9.4のホウ酸塩緩衝液に1mMで溶解する。これに10mMのDMAストックとして10当量のパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン、200mMアセトニトリルストックとして10当量の水素化ホウ素ナトリウムを添加し、室温で2時間反応させた。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Beugelmans,R.,Neuville,M.B.−C,Chastanet,J.,and Zhu,J.(1995)PalladiμM catalyzed reductive deprotection of Alloc:Transprotection and peptide bond formation.Tetrahedron Lett.36,3129を参照)
実施例23:メチル/エチルエステルの加水分解を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、メチル又はエチルエステルを有するDNAライブラリーを、1mMのホウ酸緩衝液に溶解し、100当量のNaOHと60℃で2時間反応させた。生成物をエタノール沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Franch,T.,Lundorf,M.D.,Jacobsen,S.N.,Olsen,E.K.,Andersen,A.L.,Holtmann,A.,Hansen,A.H.,Sorensen,A.M.,Goldbech,A.,De Leon,D.,et al.Enzymatic encoding methods for efficient synthesis of large libraries.WIPO WO2007/062664 A2、2007を参照)
実施例24:ニトロ基の還元を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、ニトロ基を有するDNAライブラリーを1mMの水に溶解した。これに10%体積当量のラネーニッケルスラリー、10%体積当量のヒドラジンを400mM水溶液として添加し、室温で2〜24時間振盪しながら反応させた。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Balcom,D.,and Furst,A.(1953)Reductions with hydrazine hydrate catalyzed by Raney nickel.J.Am.Chem.Soc.76,4334−4334を参照)。
実施例25:「クリック」化学を用いてコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、アルキン又はアジド基を有するDNAライブラリーを、100mMリン酸緩衝液1mMに溶解する。これに硫酸銅を625μM、THPTA(リガンド)を3.1mM、アミノ−グアニジンを12.5mM、アスコルビン酸を12.5mM、及びアジドを1mM(DNAがアルキンを有する場合)又はアルキンを1mM(DNAがアジドを有する場合)添加する。反応を室温で4時間行う。生成物をエタノール沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Hong,V.,Presolski,Stanislav I.,Ma,C.and Finn,M.G.(2009),Analysis and Optimization of Copper−Catalyzed Azide− Alkyne Cycloaddition for Bioconjugation.Angewandte Chemie International Edition,48:9879−9883を参照)。
実施例26:ベンズイミダゾールを組み込んだコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、アリールビシナルジアミンを有するDNAライブラリーを、pH9.4のホウ酸緩衝液に1mMで溶解する。これに、200mMのDMAストックとして60当量のアルデヒドを添加し、60℃で18時間反応させた。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。((1)Mandal,P.,Berger,S.B.,Pillay,S.,Moriwaki,K.,Huang,C,Guo,H.,Lich,J.D.,Finger,J,Kasparcova,V.,Votta,B.,et al.(2014)RIP3 induces apoptosis independent of pronecrotic kinase activity.Mol.Cell 56,481−495;(2)Gouliaev,A.H.,Franch,T.P.−O.,Godskesen,M.A.,and Jensen,K.B.(2012)Bi−functional Complexes and methods for making and using such complexes.特許出願WO2011/127933 Al;(3)Mukhopadhyay,C,and Tapaswi,P.K.(2008)Dowex 50W:A highly efficient and recyclable green catalyst for the construction of the 2−substituted benzimidazole moiety in aqueous medium.Catal.Commun.9,2392−2394を参照)。
実施例27:イミダゾリジノンを組み込んだコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、アルファ−アミノ−アミドを有するDNAライブラリーを、pH9.4の1:3のメタノール:ホウ酸緩衝液に1mMで溶解する。これに200mMのDMAストックとして60当量のアルデヒドを添加し、60℃で18時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。((1)Barrow,J.C,Rittle,K.E.,Ngo,P.L.,Selnick,H.G,Graham,S.L.,Pitzenberger,S.M.,McGaughey,G.B.,Colussi,D.,Lai,M.−T.,Huang,Q.,et al.(2007)Design and synthesis of 2,3,5−substituted imidazolidin−4−one inhibitors of BACE−1.Chem.Med.Chem.2,995−999;(2)Wang,X.−J,Frutos,R.P.,Zhang,L.,Sun,X.,Xu,Y.,Wirth,T.,Nicola,T.,Nummy,L.J,Krishnamurthy,D.,Busacca,C.A.,Yee,N.,and Senanayake,C.H.(2011)Asymmetric synthesis of LFA−1 inhibitor BIRT2584 on metric ton scale.Org.Process Res.Dev.15,1185−1191;(3)Blass,B.E.,Janusz,J.M.,Wu,S.,Ridgeway,J.M.II,Coburn,K.,Lee,W.,Fluxe,A.J.,White,R.E.,Jackson,C.M.,and Fairweather,N.4−Imidazolidinones as KV 1.5 Potassium channel inhibitors.WIPO WO2009/079624 A1、2009を参照)。
実施例28:キナゾリノンを組み込んだコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、2−アニリノ−1−ベンズアミドを有するDNAライブラリーを、pH9.4のホウ酸緩衝液に1mMで溶解する。これに、水中1M溶液として200当量NaOH、及びDMA中200mMストック溶液としてアルデヒドを添加し、90℃で14時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Witt,A.,and Bergmann,J.(2000)Synthesis and reactions of some 2−vinyl−3H−quinazolin−4−ones.Tetrahedron 56,7245−7253を参照)。
実施例29:イソインドリノンを組み込んだコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、アミンを有するDNAライブラリーを、1mMのpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これにDMA中の200mMストック溶液として4−ブロモ,2−エンメチルエステルを添加し、60℃で2時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Chauleta,C,Croixa,C,Alagillea,D.,Normand,S.,Delwailb,A.,Favotb,L.,Lecronb,J.−C,and Viaud−Massuarda,M.C.(2011)Design,synthesis and biological evaluation of new thalidomide analogues as TNF−α and IL−6 production inhibitors.Bioorg.Med.Chem.Lett.21,1019−1022を参照)。
実施例30:チアゾールを組み込んだコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子として、チオ尿素を有するDNAライブラリーを、1mMでpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これにDMA中200mMストックとして50当量のブロモケトンを添加し、室温で24時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。(Potewar, T. M., Ingale, S. A., and Srinivasan, K. V. (2008) Catalyst−free efficient synthesis of 2−aminothiazoles in water at ambient temperature. Tetrahedron 64,5019−5022を参照)
実施例31:イミダゾピリジンを組み込んだコード部分を合成する。
反応部位アダプター上の反応部位として、荷電反応部位アダプター上のビルディングブロックとして、又は部分的に翻訳された分子のいずれかとして、アリールアルデヒドを有するDNAライブラリーを、1mMでpH9.4のホウ酸緩衝液に溶解する。これに、DMA中の200mMストック溶液として50当量の2−アミノピリジンを添加し、かつ1M水溶液として2500当量のNaCNを添加し、90℃で10時間反応させる。生成物をエタノール沈殿又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。((1)Alexander Lee Satz,Jianping Cai,Yi Chen,Robert Goodnow,Felix Gruber,Agnieszka Kowalczyk,Ann Petersen,Goli Naderi−Oboodi,Lucja Orzechowski,and Quentin Strebel.DNA Compatible Multistep Synthesis and Applications to DNA Encoded Libraries Bioconjugate Chemistry 2015 26(8),1623−1632;(2)Beatch,G.N.,Liu,Y.,and Plouvier,B.M.C.PCT Int. Appl.2001096335,Dec 20,2001;(3)Inglis,S.R,Jones,R.K.,Booker,G.W.,and Pyke,S.M.(2006)Synthesis of N−benzylated−2−aminoquinolines as ligands for the Tec SH3 domain.Bioorg.Med.Chem.Lett.16,387−390を参照)。
実施例32:様々な他の化学的性質を用いてコードされた部分を合成する。
適合する化学反応の31のタイプが、Handbook for DNA−Encoded Chemistry(Goodnow R.A.,Jr.,Ed.)pp 319−347,2014 Wiley,New Yorkに記載されている。これらには、トリクロロトリアジンのSNAr反応、グリオキサール化合物へのジオール酸化、Msec脱保護、Ns脱保護、Nvoc脱保護、ペンテノイル脱保護、インドール−スチレンカップリング、ディールス・アルダー反応、ウィッティヒ反応、マイケル付加、ヘック反応、ヘンリー反応、カッセイアルケンを有するニトロン1,3−双極性付加環化、オキサゾリジンの形成、トリフルオロアセトアミド脱保護、アルケン−アルキン酸化カップリング、閉環メタセシス及びアルドール反応が挙げられる。DNAの存在下で作用する可能性を有し、使用に適切である他の反応がこの参考文献に掲載されている。
実施例33:ライブラリー調製において異なる制限酵素を使用する。
他の実施例に挙げられた制限酵素が代表的であり、他の制限酵素も安定又は利点をもって同じ目的を果たし得ることは理解されるであろう。
実施例34.遺伝子ライブラリーを調製する別の方法。約4〜約40ヌクレオチドのコード領域を有するライブラリーが調製される。以下の例外を除いて、ライブラリーは実施例1に従って調製及び翻訳される。ライブラリーは、2組のオリゴ、オリゴのコード鎖セット及びオリゴのアンチコード鎖セットを購入することによって構築される。各セットは、コード領域が存在するのと同数のサブセットを含み、コード領域に異なるコード配列があるのと同数の異なる配列が各サブセットにある。コード鎖オリゴの各サブセットにおける各オリゴは、コード配列及び任意で5’非コード領域を含む。アンチコード鎖オリゴの各サブセットにおける各オリゴは、アンチコード配列及び任意で5’非コード領域相補体を含む。このプロセスの下流でのライゲーションを容易にするために、コード鎖及びアンチコード鎖の5’末端のオリゴを除く全てのオリゴを5’リン酸化反応で購入するか、又は製造業者のプロトコルに従ってNEBからT4 PNKでリン酸化する。コード鎖5’末端コード配列を有するオリゴのサブセットは、3’末端アンチコード配列を有するサブセットを有するNEB由来のT4 DNA Liagse緩衝液中で組み合わされ、2つのセットはハイブリダイズされる。これにより、コード鎖上の一本鎖5’オーバーハング非コード領域、二本鎖コード領域、及び非コード鎖上の任意の一本鎖5’オーバーハング非コード領域を含む生成物が生成される。このハイブリダイゼーション手順は、オリゴサブセットの各コード/非コード対について別々に実施される。例えば、5’末端から第2のコード領域をコードする配列のサブセットは、その相補的非コードサブセット、5’末端から第3のコード領域をコードするサブセット及びその相補的サブセット等とハイブリダイズする。ハイブリダイズしたサブセット対をプールし、任意でアガロースゲル電気泳動により精製する。ライブラリー中の遺伝子が長さが1塩基以上の非コード領域を有し、かつ、コード領域間の非コード領域が固有である場合、各ハイブリダイズしたサブセット対の等モル量を単一の容器に加える。一本鎖非コード領域はハイブリダイズし、製造者のプロトコルを用いてNEBのT4 DNAリガーゼによって互いに連結される。非コード領域が1塩基以上の長さであるが固有でない場合、2つの隣接するハイブリダイズしたサブセットを1つの容器に加え、一本鎖非コード領域をアニーリングし、T4 DNAリガーゼで連結する。反応が完了すると、生産物はアガロースゲル電気泳動により任意に精製され、連結産物の末端の1つに隣接する第3のハイブリダイズされたサブセットが添加され、アニーリングされ、連結される。このプロセスは、ライブラリーの構築が完了するまで繰り返される。任意の数のコード領域を含むライブラリーがこの方法によって構築されることは理解されるであろう。現在の目的のために、20を超えるコード領域のライブラリーは、ライブラリー構築とは無関係の理由で実用的でないかもしれない。平滑ライゲーションは当業者によって一般的に行われ、そしてコード領域は介在非コード領域なしで連結するが、どちらか一方の端に非コード領域を持たないハイブリダイズされたサブセットの場合、ライゲーションはセンス及びアンチセンス生産物の両方を提供する。正しいセンスを有する生産物は、ライブラリーを調製し、それをすべてのハイブリダイゼーションアレイ上で順次ソートすることによって、アンチセンスを有する産物から精製される。各ハイブリダイゼーション工程でアレイ上に捕捉されるライブラリーの部分は、正しいセンスを有する。固有の制限部位配列のみからなる非コード領域がこの方法の魅力的な選択肢であることは理解されよう。
実施例34.対応する末端コード領域を有する遺伝子ライブラリーを構築する。5’末端コード領域及び3’末端コード領域が同じビルディングブロック又は異なるビルディングブロックの同じ対をコードするライブラリーが構築される。これは、所与の5’末端コード配列を有する遺伝子ライブラリーの各メンバーが1つの3’末端コード配列のみを有する場合に達成される。そのようなライブラリーは、5’末端コード領域のハイブリダイズされたサブセット対がプールされず、かつ3’末端コード領域がプールされないことを除いて、実施例33の方法を用いて構築される。全ての内部コード領域をプールし、実施例33のようにライゲートする。すべての内部コード領域をライゲーションした産物をアリコートに分割し、1つのアリコートを各5’末端ハイブリダイズサブセット配列に加え、ライゲーションする。各ウェルのライゲーション産物は、すべての内部コード領域においてすべての配列のコンビナトリアル混合物を除いて、単一の5’末端コード配列を有する。単一の5’末端コード配列を有するこれらのライゲーション産物は、単一の3’末端ハイブリダイズサブセット配列を含むウェルに独立して移され、連結される。各ウェルの産物は、単一の5’末端コード配列、単一の3’末端コード配列、及びすべての内部コード領域におけるすべての配列のコンビナトリアル混合物を含む遺伝子である。同一の合成ライブラリーを作製する他の方法があることは理解されよう。
実施例35.代替手段を用いて標的分子に結合するための選択を行う。標的分子を結合可能なライブラリーメンバーを同定するための選択は、標的分子がIMMULON(登録商標)プレート、MAXISORP(登録商標)プレート又はELISAのための生物学的高分子を固定化するために一般的に使用される他のプレートのようなプラスチックプレートの表面上に固定化される以外は実施例1のように実施され、又は標的分子をビオチン化し、ストレプトアビジン被覆表面若しくはニュートラビジン被覆表面、若しくは磁気ビーズ、合成ポリマー製のビーズ、多糖類若しくは修飾多糖類製のビーズ、プレートウェル、チューブ、及び樹脂等のアビジン被覆表面上に固定化する。所望の形質を有するライブラリーメンバーを同定するための選択は、DNAに適合性があり、任意の標的分子を未変性コンホメーションに保持する適合性があり、選択又は増幅プロセスで使用される任意の酵素と適合性があり、かつ形質陽性ライブラリーメンバーの同定に適合性がある緩衝液中で行われる。そのような緩衝液としては、リン酸塩、クエン酸塩、及びTRISで作製された緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。そのような緩衝剤はまた、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及び他のカチオンの塩、並びに塩化物、ヨウ化物、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩及び他のアニオンの塩を含むことができるが、これらに限定されない。そのような緩衝剤には、TWEEN(登録商標)、TRITON(商標)、及びChaps(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートのような)界面活性剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
実施例36.長時間のオフレートを有するバインダーの選択。選択を実施して、実施例1に記載のように標的分子に結合する能力を有するライブラリー集団の個体を同定する。長いオフレートで標的分子に結合する個体は以下のように選択される。標的分子は、ビオチン化され、かつストレプトアビジン被覆表面とインキュベートされることで固定するか、又はMAXISORP(登録商標)プレート若しくはELISAのようなアッセイのためのタンパク質結合に適した他のプレートのようなプラスチック表面上のビオチン化なしに任意で固定するか、又は実施例35に記載の方法、又は別の方法で固定する。ライブラリー集団を、適切な緩衝液中で固定された標的と共に0.1〜8時間インキュベートする。インキュベーションの持続時間は、サンプル中の個々のライブラリーメンバーの推定コピー数及び固定された標的分子の数に依存する。個体のコピー数が増加し、標的分子の負荷が高くなると、持続時間が減少する可能性がある。より小さなコピー数及び/又はより小さい標的分子の負荷では、持続時間が延びる可能性がある。目的は、集団の各個体が標的と完全に相互作用する機会を確保することである。ライブラリーを固定された標的とインキュベートした後、ライブラリー中のバインダーは標的に結合していると推定される。この時点で、過剰の非固定標的を系に加え、インキュベーションを約1〜約24時間続ける。短いオフレートを有する固定された標的に結合した個体は、固定された標的から遊離し、再結合すると遊離の標的及び不動の標的に結合されるように分配する。長いオフレートで結合する個体は、固定された標的に結合したままである。固定化表面を洗浄することにより、速い解離速度で非バインダー及びバインダーが選択的に除去され、従って長いオフレートを有する個体を選択する。長いオフレートバインダーをコードするDNAの増幅は、実施例1に従って行われる。
実施例37.移動標的を用いた選択。標的分子をビオチン化し、次いで適切な期間、ライブラリーと共にインキュベートする選択を行う。次いで、混合物を例えばストレプトアビジン表面上に固定化すると、標的が固定化され、標的に結合したいずれのライブラリーメンバーも同様に固定化される。表面を洗浄することにより、非バインダーが除去される。バインダーをコードするDNAの増幅は、実施例1に従って行われる。
実施例38.標的特異性の選択。選択は、他の抗標的分子を除いて、所望の標的分子に結合するライブラリー集団の個体を同定するために行われる。抗標的分子(molecule)(又は複数存在する場合にはmolecules)はビオチン化され、ストレプトアビジンで被覆された表面上に固定されるか、又はMAXISORP(登録商標)プレート若しくはELISAのようなアッセイのためのタンパク質結合に適したいくつかの他のプレートのようなプラスチック表面上に任意で固定される。別の容器で、標的分子をビオチン化し、ストレプトアビジン被覆された表面でインキュベートすることによって固定するか、又はMAXISORP(登録商標)プレート若しくはELISAのようなアッセイのためのタンパク質結合に適したいくつかの他のプレートのようなプラスチック表面に任意に固定する。ライブラリーを最初に抗標的とインキュベートする。これは、抗標的分子に結合する個体の集団を激減させる。抗標的とのこのインキュベーションの後、ライブラリーを所望の標的を有する容器に移し、適切な期間インキュベートする。洗浄により非バインダーを除去する。長いオフレートのバインダーをコードするDNAの増幅は、実施例1に従って行われる。同定された標的バインダーは、標的を抗標的に選択的に結合する改善された確率を有する。任意で、標的に対する親和性の選択は、標的を固定化し、遊離の可動性の抗標的を過剰に加え、次いでライブラリーを添加し、適切な期間インキュベートすることによって実施される。この状況の下では、抗標的に親和性を有する個体は、それが過剰に存在するので、抗標的によって優先的に結合され、従って表面の洗浄中に除去され得る。バインダーをコードするDNAの増幅は、実施例1に従って行われる。
実施例39:微分移動度に基づく選択。選択は、標的分子又は多高分子(polymacromolecular)構造がライブラリーメンバーと相互作用している場合に形成された複合体中のライブラリーメンバーの移動度の差に基づいて、標的分子又は多高分子構造と相互作用するライブラリー集団における個体の能力に基づいて行われる。標的分子又は構造とライブラリーメンバーとの相互作用を可能にし、次いで混合物をサイズ排除培地に通すことにより、標的分子又は構造と相互作用していないライブラリーメンバーが、相互作用しているライブラリーメンバーから物理的に分離される。その理由は、相互作用するライブラリーメンバー及び標的分子又は構造の複合体は、非相互作用ライブラリーメンバーよりも大きくなり、故に、異なる移動性を有する媒体を通って移動するからである。移動度の差は、サイズ排除培地の非存在下での拡散の関数であり、移動度は、重力流、電気泳動及び拡散等が挙げられるが、これに限定されない様々な手段によって誘導され得ることが理解される。
実施例40.他の選択のための一般的な戦略。アッセイが、(a)ライブラリー集団において、所望の特性を有する個体を、それを所有しない個体から物理的に分離するか、又は(b)所望の特性を有するライブラリー集団の個体をコードするDNAを、その特性を持たないライブラリーメンバーをコードするDNAよりも優先的に増幅させるか、どちらか一方のように設計されていれば、選択がほとんどすべての特性について行われることが当業者に理解されるであろう。標的分子を固定する多くの方法が当業者に公知であり、標的分子をHisタグでタグ付けしニッケル表面に固定すること、標的分子をフラッグタグでタグ付けしアンチフラッグ抗体で固定すること、又は標的分子をリンカーでタグ付けし、共有結合的に表面に固定すること等が挙げられる。ライブラリーメンバーが標的に結合することを可能にし、標的を固定することを可能にする事象の順序は、使用される固定方法によって決定され又は使用可能になるように、様々な順序で行われることが理解されよう。形質陰性個体から形質陽性個体の固定又は物理的分離が必要とされない選択が行われることは理解されよう。例えば、形質陽性個体は、形質陰性個体が存在しない場合、DNAの増幅を可能にする因子を募集する。形質陽性個体はPCRプライマーでタグ付けされるが、形質陰性個体はタグ付けされない。形質陽性個体を特異的に増幅する任意のプロセスが、使用に適している。
実施例41a.反応部位アダプターを荷電するための化学反応。実施例10〜32に記載の化学のいずれも、反応部位アダプターを荷電する際の使用に適切であると理解される。反応部位アダプターは、水溶液中、水性/有機混合物中、又は固体支持体上に固定されたビルディングブロックで荷電される。ビルディングブロックを有する反応部位アダプターを荷電するために使用される化学は、反応部位アダプターがDEAE又はSuper Q650Mのような固体支持体上に固定されている間に行われる反応に限定されないし、溶液相で行われる反応にも限定されない。
実施例41b.ビルディングブロックが存在しないことは、コード可能な多様性要素である。ライブラリー合成の過程で、異なる配列を有する様々なライブラリーサブプール上に多数のビルディングブロックが独立して導入される場合、多様性が発生する。ビルディングブロックが存在しないことは、任意的な多様性要素です。ビルディングブロックが存在しないことは、所望の化学工程において、ライブラリーの1以上の配列特異的サブプールがビルディングブロックを導入するための化学反応で処理されないことを除いて、実施例1と全く同様にコードされる。そのような場合、それらのサブプールの配列は、従ってビルディングブロックが存在しないことをコードする。
実施例42.ハイブリダイゼーションアレイは他の材料を含んでいた。ハイブリダイゼーションアレイは、2つの重要な作業を達成することができる:(a)配列特異的ハイブリダイゼーションを通して少なくとも部分的に一本鎖のDNAの異種混合物を分類することができ、かつ(b)アレイは、分類されたサブプールをアレイから独立して除去を可能にするか、又はすることができる。アンチコードオリゴヌクレオチドが固定されるアレイのフィーチャーは、上記の基準を満たす任意の3次元方向に配置することができるが、2次元の長方形のグリッドアレイが、市販されている実験機器の多数は既にそのフォーマットで大量生産されているので(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート)、現在最も魅力的である。
アンチコードオリゴが固定されているアレイのフィーチャーにおける固体支持体は、4つの作業を達成することができる:(a)アンチコードオリゴを永久的に付着させることができる、(b)固定されたオリゴに対する配列特異的ハイブリダイゼーションによってライブラリーDNAの捕獲を可能にし、又はすることができる、(c)ライブラリーDNAの低いバックグラウンド又は非特異的結合を有することができ、そして(d)高pHで実施される工程を含む、プロセシング条件に対して化学的に安定であり得る。CM SEPHAROSE(登録商標)は、アジド−PEG−アミンのアミンとCM SEPHAROSE(登録商標)樹脂の表面上のカルボキシル基との間のペプチド結合形成によってアジド−PEG−アミン(9個のPEG単位を有する)で官能化されている。アルキニル修飾剤を有するアンチコードオリゴは、銅媒介1,3−双極子環状付加(Huisgen)においてアジドに「クリック」される。
他の適切な固体支持体としては、親水性ビーズ、又は親水性表面コーティングを有するポリスチレンビーズ、親水性表面コーティングを有するポリメチルメタクリレートビーズ、及びカルボン酸塩、アミン又はエポキシドのような反応性官能基をも有する親水性表面を有する他のビーズが挙げられ、適切に官能化されたアンチコードオリゴが固定化される。他の適切な支持体には、モノリス及びヒドロゲルが挙げられる。例えば、J Chromatogr A.2002 Jun 14;959(l−2):121−9,J Chromatogr A.2011 Apr 29;1218(17):2362−7,J Chromatogr A.2011 Dec 9;1218(49):8897−902,Trends in Microbiology,Volume 16,Issue 11,543−551,J.Polym.Sci.A Polym.Chem,35:1013−1021,J.Mol.Recognit.2006;19:305−312,J.Sep.Sci.2004,27,828−836を参照。一般に、より大きな表面積を有する固体支持体は、より多くの量のライブラリーDNAを捕捉し、より小さい直径を有するビーズは、はるかに高い背圧及び流動抵抗を生じる。これらの制約は、表面積が非常に大きいが背圧が低い多孔質支持体又はヒドロゲルの使用によって部分的に改善される。一般に、正電荷を有するビーズは、DNAの非特異的結合の程度がより大きくなる。
ハイブリダイゼーションアレイのシャーシは、3つの作業を達成することができる:(a)フィーチャー間の物理的分離を維持しなければならず、(b)ライブラリーをフィーチャー上に若しくはフィーチャーを通過して流すことを可能にするか、又はさせるか、(c)異なるフィーチャーから独立して選別されたライブラリーDNAを除去することを可能にする、又はさせる。シャーシは、加工条件下で十分に剛性であり化学的に安定であり、フィーチャー内に支持体を固定するために必要な任意の手段と適合する任意の材料を含む。シャーシの代表的な材料には、DELRIN(登録商標)、TECAFROM(登録商標)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のプラスチック、セラミックス、アルミニウムやステンレス鋼等の金属が含まれる。
実施例43.遺伝子ライブラリーパラメーター。遺伝子ライブラリーは、2〜20個のコード領域を含む。各内部コード領域における使用可能なコード配列の数は、利用可能な固定されたアンチコード配列を有するフィーチャーの数によってのみ制限される。24ウェル、96ウェル、及び384ウェルのフォーマットという、業界標準消耗実験機器が非常に多いので、これらの数のコード配列をコード領域で使用すると便利であるが、例えば768又は1536のコード配列を有するコード領域もまた実用的であろう。末端コード配列はアレイ上でソートされないので、末端コード領域で使用される配列の数は、業界標準プレート及び実験機器のウェルの数に応じる必要が少なくなります。原理的には、末端コード領域で96又は960以上の異なるコード配列を使用することが実用的であろう。