JP2019509999A - がん及び新生物の治療方法及び治療用組成物 - Google Patents

がん及び新生物の治療方法及び治療用組成物 Download PDF

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Abstract

接着性間質細胞及びそれにより生成される馴化培地を使用した抗腫瘍治療方法が、本明細書に記載される。
【選択図】図18

Description

胎盤細胞を使用した抗腫瘍治療方法が、本明細書に記載される。
要約
以前の研究によって、3D条件下で接着性間質細胞(ASC)を培養することによって、これまでに記載されていなかった特性及び特徴を有するASCが生成されることが確立されている。がん、腫瘍及び新生物の増殖を治療、予防及び阻害するためにASCを使用する方法が、本明細書に記載される。
ある実施形態においては、2次元(2D)培養、3次元(3D)培養又はその組合せにおいて培養することによって、記載されたASCが調製されている。2D及び3D培養条件の非限定的な例が、詳細な説明及び実施例において提供される。代替的又は追加的に、幾つかの実施形態においては、炎症促進性サイトカインを用いて細胞が処理されており;及び/又は該細胞は胎盤細胞調製物である。ある実施形態においては、該胎盤細胞調製物は主に胎児細胞であり;主に母体細胞であり;又はより具体的な実施形態においては、胎児細胞が濃縮されているか、若しくは母体細胞が濃縮されている、胎児細胞と母体細胞の混合物である。別段の記載がない場合、用語「ASC」は、様々な実施形態において、炎症促進性サイトカインを用いたインキュベーション前又は後のいずれかの接着性間質細胞を指す場合がある。更に他の実施形態においては、ASCは、炎症促進性サイトカインを用いてインキュベートされていない接着性間質細胞を指す。
代替的又は追加的に、細胞は間葉系様(mesenchymal-like)ASCであり、間葉系間質細胞に類似するマーカーパターンを示すが、「標準的な」間葉系幹細胞(MSC)が骨細胞に分化する条件下で、骨細胞に分化しない。他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが脂肪細胞に分化する条件下で、脂肪細胞に分化しない。更に他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、間葉系幹細胞が骨細胞又は脂肪細胞にそれぞれ分化する条件下で、骨細胞又は脂肪細胞のいずれにも分化しない。幾つかの実施形態においては、これらのアッセイにおいて比較に使用されるMSCは、骨髄(BM)から採取され、2D条件下で培養されているMSCである。他の実施形態においては、比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養され、続けて3D条件によって培養されている。
様々な実施形態において、記載されたASCは記載された治療効果を発揮することができ、それらはそれぞれ、ASC自身が宿主に生着しているか又は生着していない、別個の実施形態と考えられる。例えば、様々な実施形態において、細胞は、3日間超、4日間超、5日間超、6日間超、7日間超、8日間超、9日間超、10日間超若しくは14日間超で細胞自身が生存することなく、治療効果を発揮することができる場合があり;又は細胞は、3日間超、4日間超、5日間超、6日間超、7日間超、8日間超、9日間超、10日間超若しくは14日間超で生存する。
本明細書における細胞集団の「増殖(growth)」についての言及は、細胞集団の増殖(expansion)と同義語であることを意図する。
別段の記載がない場合、本明細書に言及される全ての範囲は境界を含む。
別段定義される場合を除いて、本明細書で使用された全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。発明の実施又はテストにおいて、本明細書に記載されたものと同様又は同等な方法及び材料が使用され得るが、好適な方法及び材料を以下に記載する。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書によって調整される。更に、材料、方法及び実施例は、例示的なものにすぎず、限定することを意図するものではない。
本発明は、例示の目的でのみ、添付の図面を参照して本明細書に記載される。ここで図面を詳細に具体的に参照して、示される特定のものは、例示の目的であり、発明の実施形態の例示的な検討のためのものに過ぎず、発明の原理及び概念的側面の最も有用かつ容易に理解される記述であると考えられるものを提供するために提示されることが、強調される。この点について、発明の基礎的な理解に必要であるものを超えて、詳細に発明の構造的な詳細を示すことは試みておらず、図面を用いた説明によって、本発明の幾つかの形態を実際にどのように実施し得るかが、当業者に明らかになる。
図面は以下の通り:
図1は、細胞を調製するために使用し得るバイオリアクターの略図である。 図2は、ASC上における刺激性及び共刺激性分子の発現のプロットを含む。左上:CD80の発現。右上:CD86の発現。左下:CD40の発現。右下:HLA-A/B/Cの発現。陰性対照は、適切なアイソタイプ蛍光分子を用いて調製した。点線、細線及び太線は、それぞれ胎盤ASC、BM細胞及び単核細胞(MNC)によるマーカー発現を示す。 図3は、正常酸素又は低酸素条件下での、ASCの分泌プロファイルのグラフである。 図4Aは、蛍光によって測定した、TNF-a+IFN-g(白色バー)又は対照培地(黒色バー)を用いたASCのインキュベーション後の、様々な因子の分泌を示すグラフである。B〜Cは、蛍光によって測定した、対照培地(サイトカインなし)を用いたインキュベーションと比べての、TNF-a単独を用いてASCをインキュベーション後の、GRO、IL-8、MCP-1及びRANTES (B);並びにIL-6、MCP-3、アンギオゲニン、インスリン様増殖因子結合タンパク質-2(IGFBP-2)、オステオポンチン及びオステオプロテゲリン (C)の分泌の増加倍数を示すグラフである。 図5A〜Bは、ELISAによって測定した、対照培地(サイトカインを含まない)と比べての、幾つかの実験におけるMCP-1 (A)及びGM-CSF (B)の分泌における増加倍数を示すグラフである。 図6A〜Bは、FBSの存在下又は非存在下で、TNF-a+IFN-g (A)又はTNF-a単独 (B)による、様々な因子の分泌を示すグラフである。(A)では、灰色、白色及び黒色バーは、それぞれTNF-a+IFN-g;TNF-a+IFN-g+FBS;及び対照(サイトカインや血清なし)を示す。(B)では、灰色、白色及び黒色バーは、それぞれTNF-a単独;TNF-a+FBS;及び対照(サイトカインや血清なし)を示す。 図7は、様々な濃度のサイトカイン(表5に示す)を用いて40時間(左の7群)又は24時間(右の5群)、バイオリアクター中で刺激した細胞における、集団倍化時間(PDT;縦軸)を示すプロットである。 図8Aは、乳がん細胞株マーカー遺伝子分析について、プロファイリングされた各遺伝子のスコアのグラフ表示である。 図8Bは、左に示された2株の応答性の乳がん細胞株(HCC-1395及びMDA-MB-231)、並びに右に示された他の3株の乳がん細胞株(BT474、MCF7及びT47D)を用いて、5株の乳がん細胞株についての、応答性の乳房細胞株において下方制御された遺伝子(スコア<-5)の全ての発現の平均値を示すセントロイドプロットである。エラーバーは標準偏差を示す。 図9A〜Bは、それぞれの応答性の細胞株において、下方制御されたか、及び/又は専ら応答性の細胞株において変異した、MHCクラスI抗原プロセッシング及び提示経路 (A)、並びにサイトカインシグナル伝達経路 (B)における遺伝子をまとめた表である。 図9A〜Bは、それぞれの応答性の細胞株において、下方制御されたか、及び/又は専ら応答性の細胞株において変異した、MHCクラスI抗原プロセッシング及び提示経路 (A)、並びにサイトカインシグナル伝達経路 (B)における遺伝子をまとめた表である。 図9A〜Bは、それぞれの応答性の細胞株において、下方制御されたか、及び/又は専ら応答性の細胞株において変異した、MHCクラスI抗原プロセッシング及び提示経路 (A)、並びにサイトカインシグナル伝達経路 (B)における遺伝子をまとめた表である。 図9A〜Bは、それぞれの応答性の細胞株において、下方制御されたか、及び/又は専ら応答性の細胞株において変異した、MHCクラスI抗原プロセッシング及び提示経路 (A)、並びにサイトカインシグナル伝達経路 (B)における遺伝子をまとめた表である。 図9A〜Bは、それぞれの応答性の細胞株において、下方制御されたか、及び/又は専ら応答性の細胞株において変異した、MHCクラスI抗原プロセッシング及び提示経路 (A)、並びにサイトカインシグナル伝達経路 (B)における遺伝子をまとめた表である。 図10は、階層的クラスタリングによって、乳がん株をLuminal、Basal A又はBasal Bとして特徴づけるために有用な305分類遺伝子(Neveら)の発現を示すヒートマップである。 図11Aは、図10の上の拡大図に対応する分類樹であり、どの乳がん細胞株が、TRAIL感受性及びASC感受性について調べられたかを示す。図はRahmanらのデータも取り込んでいる。無地及び丸付のアスタリスクは、それぞれTRAIL感受性についてテストした乳房細胞株、及びTRAIL非感受性又はTRAIL感受性であることが見出された乳房細胞株を示す。ボックス中に囲われているものは、ASC感受性及びTRAIL感受性の両方についてテストした株を示す(最初のT47Dは正しくは「BT474」である)。 図11Bは、Aでテストした乳がん細胞株のデータを表の形態で示すものであり、臨床サブタイプ、即ち細胞株がER陽性、PR陽性、又はHer2/neuが増幅されているかの情報も含んでいる。 図12Aは、がん細胞株事典(Cancer Cell Line Encyclopedia)(CCLE)のデータを使用した、別の階層的クラスタリングに使用される169プローブセットの発現を示すヒートマップである。 図12Bは、Aの上部の拡大図に対応する分類樹であり、どの乳がん細胞株が、ASC感受性について調べられたかを示す。Bにおいては、以前の分析とは異なるように群分けされた細胞株を丸で囲んでいる。 図12Cは、Bでテストした乳がん細胞株のデータを表の形態で示し、また臨床サブタイプ、即ち細胞株がER陽性、PR陽性、又はHer2/neuが増幅されているか否かの情報も含んでいる。 図13は、先述の階層的クラスタリング分析の各セクションの分類遺伝子が関与する経路の一覧(右側)である。ヒートマップを左側に再現している。 図14Aは、処理していない、又はASC IM若しくはIVで処理したマウス(それぞれ左から1、2及び3番目のバー)における、移植した腫瘍の平均体積 (mm3)を示す棒グラフである。各シリーズの左、真ん中及び右のバーは、それぞれ対照群、IM群及びIV群である。左、中央及び右のデータセットは、それぞれ5、7及び9日目の腫瘍サイズを示す。 図14Bは、IV注射マウスの各時点の平均腫瘍サイズを示す棒グラフであり、Cは、同じデータを示すプロットである。 図14Bは、IV注射マウスの各時点の平均腫瘍サイズを示す棒グラフであり、Cは、同じデータを示すプロットである。 図14Dは、IM注射マウスの各時点の平均腫瘍サイズを示す棒グラフであり、Eは、同じデータを示すプロットである。 図14Dは、IM注射マウスの各時点の平均腫瘍サイズを示す棒グラフであり、Eは、同じデータを示すプロットである。 図15は、IM処理マウスのデータを表す。Aは、時間(日;横軸)に対する、腫瘍体積(mm3;縦軸)のプロットである。B〜Cは、以下の群(横軸、左から右へ):IM-ASC、IM-ビヒクル及びIM-ASC/後期、における82日目の腫瘍体積(mm3;縦軸)の棒グラフである。D〜Eは、時間(日;横軸)に対する、47日目からの腫瘍体積の変化(%;縦軸)のプロットである。C及びEにおいては、異常値を除き、「調整した」数を生成した。 図15は、IM処理マウスのデータを表す。Aは、時間(日;横軸)に対する、腫瘍体積(mm3;縦軸)のプロットである。B〜Cは、以下の群(横軸、左から右へ):IM-ASC、IM-ビヒクル及びIM-ASC/後期、における82日目の腫瘍体積(mm3;縦軸)の棒グラフである。D〜Eは、時間(日;横軸)に対する、47日目からの腫瘍体積の変化(%;縦軸)のプロットである。C及びEにおいては、異常値を除き、「調整した」数を生成した。 図15は、IM処理マウスのデータを表す。Aは、時間(日;横軸)に対する、腫瘍体積(mm3;縦軸)のプロットである。B〜Cは、以下の群(横軸、左から右へ):IM-ASC、IM-ビヒクル及びIM-ASC/後期、における82日目の腫瘍体積(mm3;縦軸)の棒グラフである。D〜Eは、時間(日;横軸)に対する、47日目からの腫瘍体積の変化(%;縦軸)のプロットである。C及びEにおいては、異常値を除き、「調整した」数を生成した。 図16は、IM-ASC、IM-ASC-後期、IV-ASC及びIV/IM-ASC処理マウスにおける、時間(日;横軸)に対する、腫瘍増殖阻害(%;縦軸)のプロットである。 図17は、IV処理マウスのデータを表す。A及びCは、時間(日;横軸)に対する、腫瘍体積(mm3;縦軸)のプロットである。B及びDは、IV-ASC(左のバー)又はIV-ビヒクル(右のバー)を用いて処理したマウスにおける、38日目の腫瘍体積(mm3;縦軸)の棒グラフである。C及びDにおいては、異常値を除き、「調整した」数を生成した。 図17は、IV処理マウスのデータを表す。A及びCは、時間(日;横軸)に対する、腫瘍体積(mm3;縦軸)のプロットである。B及びDは、IV-ASC(左のバー)又はIV-ビヒクル(右のバー)を用いて処理したマウスにおける、38日目の腫瘍体積(mm3;縦軸)の棒グラフである。C及びDにおいては、異常値を除き、「調整した」数を生成した。 図18は、IM-ビヒクル(左のバー)又はIM-ASC-後期(右のバー)を用いて処理したマウスの腫瘍の増殖指数 (縦軸)の棒グラフである。 図19は、IM-ビヒクル(左のバー)又はIM-ASC-後期(右のバー)を用いて処理したマウスの腫瘍において、CD34+細胞によって占有された面積(縦軸)の棒グラフである。 図20は、IV-ビヒクル(左のバー)又はIV-ASC-後期(右のバー)を用いて処理したマウスの腫瘍において、CD34+細胞によって占有された面積(縦軸)の棒グラフである。 図21A〜Bは、プレート中の細胞数に比例する蛍光シグナルを生成するCyQUANT GR染色後の蛍光(縦軸)を示すプロットである。NCI-H460 (A)又はMDA-MB231 (B)細胞を、1500、3000、6000又は12,000細胞/ウェルの初期密度で播種し(各プロットにおいて4データセットで示す、左から右へ)、1日後、増殖培地単独(黒丸)又はASC-CM(アスタリスク、三角及び菱形)に3日間曝露した。播種後、1日凍結したベースラインプレート(四角)の蛍光もプロットする。 図22Aは、例示的な実施形態による担体(又は「3Dボディ」)の斜視図である。Bは、別の例示的な実施形態による担体の斜視図である。Cは、例示的な実施形態による担体の断面図である。 図23は、時間に対する細胞培養の相対的な集団サイズ(対数)の説明目的のためにのみ提供される、理論的プロットである。μmは最大細胞分裂速度であり、λは定常期の終わりを示し、Aは漸近線である。
詳細な説明
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明に記載された又は実施例によって例示された詳細に限定されないことが理解される。本発明は、他の実施形態であることができるか、又は多様な方法で実施若しくは実行することができる。また、本明細書で使用される語句と用語は、説明の目的のためのものであり、限定的なものとしてみなされるべきでないことが理解される。
ある実施形態においては、がんの治療を、それを必要とする対象においてする方法であって、治療有効量の接着性間質細胞(ASC)を対象に投与する工程を含み、それによりがんを治療する、方法が提供される。他の実施形態においては、新生物の治療を、それを必要とする対象においてする方法であって、ASCを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。ASCは、胎盤に、又は他の実施形態においては、脂肪組織に、又は他の実施形態においては、本明細書に記載された他のソースに由来しても良い。本明細書において記述される場合、ASCの投与は、新生物の増殖の治療において有用である。
より具体的には、ASCは、スフェロイド(spheroid)の研究において、様々な腫瘍細胞株の増殖を阻害することが示された(実施例10)。更に、in vivo研究では、ASCの投与によって、移植した腫瘍の増殖が停止又は阻害されることが示された。最初の研究においては(実施例16)、IV投与によって明瞭な統計的有意性のある効果を示した一方で、IM投与によって少なくとも効能は有する傾向を示した。2番目の研究においては(実施例17)、IM投与は持続的な効果を与え、IV投与は腫瘍増殖の少なくとも一時的な阻害は与えた。IM及びIV ASC処理の両方によって、肺転移が完全に予防され、IM処理によって、乳腺脂肪体の最初のドレナージ(primary drainage)リンパ節である、腋窩リンパ節への転移が減少した(Kobayashi Hら)。
他の実施形態においては、新生物の増殖の予防を、それを必要とする対象においてする方法であって、治療有効量のASCを対象に投与する工程を含み、それにより対象における新生物の増殖を予防する、方法が提供される。他の実施形態においては、新生物の増殖の発生の低減を、それを必要とする対象においてする方法であって、ASCを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。様々な実施形態において、新生物の増殖は、がん、腫瘍又は新生物であり得る。
更に他の実施形態においては、腫瘍の増殖の阻害を、それを必要とする対象においてする方法であって、治療有効量のASCを対象に投与する工程を含み、それにより対象における腫瘍の増殖を阻害する、方法が提供される。他の実施形態においては、がんの増殖の阻害方法であって、ASCを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。
更に他の実施形態においては、腫瘍の転移を、そのリスクがある対象において阻害する方法であって、治療有効量のASCを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。他の実施形態においては、がんの転移の阻害方法であって、ASCを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。ある実施形態においては、対象は、手術不可能である原発性腫瘍を有する。他の実施形態においては、原発性腫瘍は手術可能である。
他の実施形態においては、がんの治療を、それを必要とする対象においてする方法であって、ASCに由来する治療有効量のCMを対象に投与する工程を含み、それによりがんを治療する、方法が提供される。他の実施形態においては、新生物の治療を、それを必要とする対象においてする方法であって、CMを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。ASCは、胎盤に、又は他の実施形態においては、脂肪組織に、又は他の実施形態においては、本明細書に記載された他のソースに由来しても良い。
他の実施形態においては、新生物の増殖の予防を、それを必要とする対象においてする方法であって、ASCに由来する治療有効量のCMを対象に投与する工程を含み、それにより対象における新生物の増殖を予防する、方法が提供される。他の実施形態においては、新生物の増殖の発生の低減を、それを必要とする対象においてする方法であって、CMを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。様々な実施形態において、新生物の増殖は、がん、腫瘍又は新生物であっても良い。
更に他の実施形態においては、腫瘍の増殖の阻害を、それを必要とする対象においてする方法であって、ASCに由来する治療有効量のCMを対象に投与する工程を含み、それにより対象における腫瘍の増殖を阻害する、方法が提供される。他の実施形態においては、がんの増殖の阻害方法であって、CMを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。
更に他の実施形態においては、腫瘍の転移を、そのリスクがある対象において阻害する方法であって、ASCに由来する治療有効量のCMを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。他の実施形態においては、がんの転移の阻害方法であって、CMを対象に投与する工程を含む、方法が提供される。ある実施形態においては、対象は手術不可能である原発性腫瘍を有する。他の実施形態においては、原発性腫瘍は手術可能である。より具体的な実施形態においては、腫瘍は、約200 mm3より小さく、50〜200 mm3の間、100〜200 mm3の間、125〜1000 mm3の間、150〜1000 mm3の間、200〜1000 mm3の間、250〜1000 mm3の間、300〜1000 mm3の間、150 mm3超、200 mm3超、又は300 mm3超であっても良い。
各ケースにおいて、記載されたASCは、胎盤に、又は他の実施形態においては、脂肪組織に、又は他の実施形態においては、本明細書に記載された他のソースに由来しても良い。
他に指示がない場合、ASCを用いた処理は、生きたASC全体を用いた、がん細胞の処理を指す。代替的な実施形態においては、がん細胞は、ASCの画分、又はASCに由来する因子を用いて処理される。
他に指示がない場合、馴化培地(CM)を用いた処理は、ASCを用いてインキュベートされている培地用いた、がん細胞の処理を指す。代替的な実施形態においては、がん細胞は、ASCを用いてインキュベートされているCMの画分を用いてか、又はASCを用いてインキュベートされているCMに由来する因子を用いて、処理される。
ある実施形態においては、がんは以下:急性リンパ芽球性白血病、副腎皮質がん、AIDSに関連するリンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫(小児期の小脳又は大脳)、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽細胞種、テント上(supratentorial)原始神経外胚葉腫瘍、視覚経路及び視床下部神経膠腫)、乳がん、気管支腺腫、肺のカルチノイド腫瘍、胃のカルチノイド、他のカルチノイド腫瘍(例、小児性)、バーキットリンパ腫、原発不明のがん、中枢神経系リンパ腫(例、原発性)、小脳星細胞腫、悪性神経膠腫(例、大脳星細胞腫)、子宮頸部がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚胚細胞腫瘍(例、小児性)、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼のがん(例、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(胃)がん、胃腸間質腫瘍、胚胚細胞腫瘍(例、小児性頭蓋外)、妊娠性絨毛腫瘍、毛様細胞白血病、頭部及び頸部のがん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、他のリンパ腫(AIDSに関連する、非ホジキン、原発性中枢神経系)、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞がん、カポジ肉腫、喉頭がん、白血病(例、急性リンパ芽球性、慢性リンパ球性、慢性骨髄性、毛様細胞性)、口唇及び口腔がん、原発性肝臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、マクログロブリン血症(ヴァルデンストレーム)、骨の悪性線維性組織球腫、髄芽細胞種(例、小児性)、眼内黒色腫、他の黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫(例、成人悪性、小児性)、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、口のがん、多発性内分泌腫瘍症候群(例、小児患者における)、形質細胞新生物(例、多発性骨髄腫)、菌状息肉腫、骨髄性白血病(例、慢性)、鼻腔及び副鼻腔のがん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮がん(例、表層上皮性間質性腫瘍)、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵島細胞膵臓がん、他の膵臓がん、副鼻腔及び鼻腔のがん、副甲状腺がん、陰茎のがん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉腫瘍(小児性)、下垂体腺腫、形質細胞新生物、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん(腎臓がん)、腎盂及び尿管移行細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(小児性)、唾液腺がん、軟組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、黒色腫、皮膚がん (例、メルケル細胞)、他の皮膚がん、小腸がん、扁平上皮がん、テント上原始神経外胚葉腫瘍(例、小児性)、精巣がん、喉のがん、胸腺腫(例、小児性)、胸腺がん、甲状腺がん(小児性又は成人性)、尿道がん、子宮内膜性子宮がん、膣のがん、外陰部のがん、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍から選択される。
ある実施形態においては、処理された腫瘍は、TRAIL(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー10又はApo-2L;Uniprotアクセッション番号:P50591、(Uniprotは2015年12月29日に接続された)としても知られる)に対して感受性である。当業者は、細胞又は細胞株のTRAIL感受性が容易に決定され得ることを理解する。それらを行うための例示的なプロトコールは、James MAら及びそこで引用された参考文献に記載されている。腫瘍増殖阻害又は死の誘導がTRAILによって媒介されることを確認するための例示的なプロトコールが、抗TRAIL抗体[75411.11] (ab10516、Abcam)についての製品文献、Rouxら及びそこで引用された参考文献において、記載されている。
他の実施形態においては、がん又は新生物は、骨肉腫、前立腺がん、尿路上皮膀胱がん、腎細胞腺がん、胃腺がん、膵臓腺がん、乳管がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、未分化甲状腺がん、未分化肺がん、黒色腫、結腸直腸腺がん、神経膠芽細胞腫、前立腺がん、卵巣明細胞がん、子宮肉腫、肺腺がん、気管支肺胞がん、大細胞肺がん、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、星細胞腫、及び直腸腺がんから選択される。ある実施形態においては、腫瘍はTRAIL感受性である。
ある実施形態においては、腫瘍は、乳がんであり、より具体的な実施形態においては、がん、又は他の実施形態においては、腺がんである。ある実施形態においては、乳がんは間葉系の表現型を有する。当業者は、間葉系の表現型を有する乳がん細胞は、典型的には、ビメンチン(Uniprotアクセッション番号:P08670);並びにカベオリン-1(Uniprotアクセッション番号:Q03135)及びカベオリン-2(Uniprotアクセッション番号:P51636及びQ712N7)を高いレベルで発現し、E-カドヘリン(Uniprotアクセッション番号:P12830)を低いレベルで発現することを理解する。代替的又は追加的に、乳がんはTRAIL感受性であり、及び/又は三重陰性 (TN)腫瘍である。当業者は、TN乳がん細胞は、エストロゲン(ER;Uniprotアクセッション番号:P03372)及びプロゲステロン(PR;Uniprotアクセッション番号:P06401)に対する受容体を欠いており、ヒト表皮増殖因子受容体2(HER2;Uniprotアクセッション番号:P04626)遺伝子コピー数又は発現において増幅がない、ことを理解する。これらの受容体の存在は、例えば蛍光活性化細胞選別によって、容易に確認し得る。本段落で言及されたUniprot入力内容は、2015年12月29日又は2016年1月3日に接続された。
他の実施形態においては、記載された組成物によって、治療されるがん若しくは新生物、又は他の実施形態においては、予防されるがん若しくは新生物は、化生、異形成、新生組織形成及び白板症から選択される。他の実施形態においては、がん又は新生物は、乳房、皮膚、前立腺、結腸、膀胱、子宮頸部、子宮、胃、肺、食道、咽頭、口腔のがんから選択される。更に他の実施形態においては、がん又は新生物は固形腫瘍であり、ある実施形態においては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ血管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄質がん、気管支がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸部がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星細胞腫、髄芽細胞種、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫から選択される。更に他の実施形態においては、新生物は、粘膜の乳頭腫である。
様々な実施形態において、がんは、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、悪性黒色腫、甲状腺がん、非小細胞肺がん又は肺腺がんである。更に他の実施形態においては、がん又は新生物は、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、悪性黒色腫、甲状腺がん及び非小細胞肺がん(例、肺腺がん)から選択される。
様々な他の実施形態においては、がん又は新生物は、腎細胞がん、黒色腫、乳がん、肝細胞がん、結腸直腸腺がん、乳腺がん、肺腺がん、大細胞肺がん又は横紋筋肉腫である。様々な他の実施形態においては、がん又は新生物は、腎細胞がん、黒色腫、乳がん、肝細胞がん、結腸直腸腺がん、乳腺がん、肺腺がん、大細胞肺がん及び横紋筋肉腫から選択される。より具体的な実施形態においては、がん又は新生物は、腎細胞がん、肝細胞がん及び肺腺がんから選択される。ある実施形態においては、腫瘍はTRAIL感受性である。
固形腫瘍のケースにおいては、記載されたASC若しくはそれを含む医薬組成物は、幾つかの実施形態においては、腫瘍内に投与され;又は他の実施形態においては、腫瘍が位置する体の領域に投与され;又は他の実施形態においては、新生物の再発を予防するために、切除した腫瘍の腫瘍床に投与される。他の実施形態においては、ASC又は組成物は、筋肉内、皮下又は全身に投与される。
別の実施形態においては、がんを治療することが確認された、医薬の製造のためのASCの使用が提供される。別の実施形態においては、新生物を治療することが確認された、医薬の製造のためのASCの使用が提供される。別の実施形態においては、新生物の増殖の発生を抑制又は低減することが確認された、医薬の製造のためのASCの使用が提供される。別の実施形態においては、新生物の増殖の転移を抑制することが確認された、医薬の製造のためのASCの使用が提供される。更に他の実施形態においては、記載されたASCを含む、腫瘍の増殖を阻害するためか、又は新生物の増殖を阻害するための医薬組成物が提供される。ある実施形態においては、腫瘍は、乳房腫瘍であり、より具体的な実施形態においては、がん、又は他の実施形態においては、腺がんである。ある実施形態においては、乳がんは間葉系の表現型を有する。代替的又は追加的に、乳がんはTN腫瘍である。
更に別の実施形態においては、(a)包装材料が、がん、腫瘍又は新生物の治療、予防又はその増殖の阻害における使用を記載するラベルを含む、包装材料;及び(b)ASCを含む医薬組成物、を含む、製造品が提供される。他の実施形態においては、医薬品が包装材料内に含まれ、該医薬品は、がん、腫瘍又は新生物を治療、予防又はその増殖を阻害するために効果的であり;該包装材料は、該医薬品を先述の用途(複数可)のために使用し得ることを示すラベルを含む。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は凍結される。他の実施形態においては、ラベルは、がん、腫瘍又は新生物の治療における用途を示す。更に他の実施形態においては、ラベルは、がん、腫瘍又は新生物の増殖の阻害における用途を示す。更に他の実施形態においては、ラベルは、がん、腫瘍又は新生物の発生の抑制又は低減における用途を示す。ある実施形態においては、腫瘍は、乳がんであり、それは、より具体的な実施形態においては、がん(carcinoma)であり、又は他の実施形態においては、腺がん(adenocarcinoma)である。ある実施形態においては、乳がんは間葉系の表現型を有する。代替的又は追加的に、乳がんはTN腫瘍である。
他の実施形態においては、抗がん治療剤の製造方法であって、ASCを、がん細胞と、又は他の実施形態においては、がん細胞株と共インキュベートし、続いてASCを単離する、又は他の実施形態においては、該共インキュベーションに由来する馴化培地(「CM」)を単離する工程を含み、前記ASC又はCMが抗がん活性を有する、方法が提供される。
他の実施形態においては、抗がん治療剤の製造方法であって、(a)がん細胞、又は他の実施形態においては、がん細胞株を培養し、該培養からCMを単離し(以後「がん細胞CM」として参照される);(b)がん細胞CM中でASCをインキュベートし;及び(c)ASCを単離する(前記ASCは抗がん活性を有する)、工程を含む、方法が提供される。代替的には、工程(c)は、ASCインキュベーションに由来するCM(「ASC CM」)を単離する(該ASC CMは抗がん活性を有する)ことを含む。他の実施形態においては、抗がん治療剤の製造方法であって、(a)がん細胞CM中で、ASCをインキュベートし;(b)ASCを単離する(前記ASCは抗がん活性を有する)か、又は他の実施形態においては、ASC CMを単離する(該ASC CMは抗がん活性を有する)、工程を含む、方法が提供される。
更に他の実施形態においては、抗がん治療剤の製造方法であって、(a)がん細胞、又は他の実施形態においては、がん細胞株を培養し、がん細胞CMの画分、又はがん細胞CMに由来する1以上の因子を単離し;(b)先述の画分又は1以上の因子を、培養培地に添加し;(c)工程(c)に由来する培地中で、ASCをインキュベートし;及び(d)ASCを単離する(前記ASCは抗がん活性を有する)、工程を含む、方法が提供される。
がん細胞の生存率及び複製に対する細胞及び溶液(例、CM)の効果を決定するための方法は、当該分野において周知である。幾つかの実施形態においては、標的がん細胞を収容し、細胞培養物の形成を促進するために、3Dプレートが利用される。好適なプレートの例示的な型は、株式会社クラレ(Tokyo、JP)から市販されているElplasiaTMプレートである。そのようなプレートの使用は、とりわけKobayashi Kら、Nakamuraら、及びそこで引用された参考文献に記載されている。共培養モデルのために、がん細胞及びASCは、例えばCellTrace色素(即ち、CSFE (カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル[Lyonsら]及びCellTraceTM Violet)、又はQtrackerTMキット)(共にThermoFisher Scientificから入手可能)等の様々な試薬を用いて標識され得る。アポトーシスは、例えばアネキシンV-FITC、及びヨウ化プロピジウム(PI)又はTUNEL染色(共にRocheから入手可能)等の試薬を使用して検出し得る。細胞生存率を決定するために、CyQUANT(登録商標)(Invitrogen);カルセインAM (Molecular ProbesTM);並びにRealTime GLO、CellTiter GLO及びアラマーブルー(すべてPromega由来)を使用し得る。CyQUANT(登録商標)は、蛍光光度計を使用して検出し得、CellTiter GLOは、照度計を使用して検出し得る。複製の阻害は、治療効能の証拠である。代替的には、異なる色を使用して、がん細胞及びASCの両方を染色することによって、ASCをがん細胞から区別し得る。更に他の実施形態においては、ASCは、例えば、抗CD73又は抗(ant-)CD105等の公知のMSCマーカーを用いて標識し得る。がん細胞の生存率及び複製に対する細胞及び溶液の効果を決定するためのキットは、例えばBioensis Preclinical Services (Bellevue、WA)等の販売会社から市販されている。がん細胞のスフェロイドを生成する方法は、当該分野において周知であり、例えばPerche Fら、2012、Friedrich Jら、2009、Phung YTら、2011、Korff Tら、1998、Ivascu Aら、2006及びそこで引用された参考文献において記載されている。非限定的なプロトコールにおいては、polyHEMAコートした96ウェルプレートの各ウェルに、10,000細胞を添加する。プレートを、5分間、800 rpmで軽くスピンし、次いで、スフェロイドを形成するまで、5%CO2を含む、37℃加湿インキュベーター内に置く。幾つかの実施形態においては、Ivascu Aら、2006において記載されたように、任意選択で、基底膜抽出MatrigelTMをウェルに添加し得る。別の非限定的なプロトコールにおいては、マイクロモールドによってキャストした(cast by micromolds)非接着性のヒドロゲルを使用して、それぞれ平均250細胞のマイクロスフェロイドを生成し得る。3%アガロースゲル (Ultrapureアガロース;Invitrogen、Carlsbad、CA)が、マイクロモールドを使用することによってキャストされ、ゲル表面のくぼみを生成する。次いで、完全培養培地を用いて、ゲルを終夜、平衡化する。トリプシン処理した細胞を適切な細胞密度に再懸濁し、次いで、ゲル上にピペットで移す。24時間超(H1299)又は48時間超(A549)で、くぼみ内の細胞は、凝集体を形成し、遠心分離によってゲルから回収する。本明細書に記載された他の効能テスト方法も好適である。
追加的には、動物の腫瘍モデルは当該分野において周知であり、とりわけ、異所異種移植モデル、同所異種移植モデル、遺伝学的に操作された腫瘍モデル及び発癌物質誘発性腫瘍モデルが挙げられる。そのようなモデルは、とりわけRuggeri BAら、Walker JDら、Rocha NSら及びそこで引用された参考文献に記載されている。ヒト対象における抗がん治療の効能を決定する方法はまた、当該分野において周知であり、例えばOh WK (Urol. Oncol. 2003)、Ramseyら及びそこで引用された参考文献等に記載されているように、腫瘍画像化、腫瘍マーカータンパク質の測定及び患者の健康状態の評価が挙げられる。in vivoモデルの他の非限定的な例が、本明細書に記載されている。
当業者は、転移抑制のための動物モデルが、当該分野において周知であり、限定されないが、Yang Sら、Bonnomet Aら、及びZhang Fらに記載されたもの、上記記載されたもの並びにJones LMらに記載された誘導性PyVmT乳腺腫瘍モデルが挙げられることを理解する。腫瘍組織の無傷な断片の移植(Zhang Yら)、並びにヒト化マウスの使用(Mortonら、及びそこで引用された参考文献)を含む、患者由来異種移植片(xenograph)(PDX)モデルもまた使用され得る。
ASCの調製方法
幾つかの実施形態においては、ASCは、2次元(「2D」)培養条件、3次元(「3D」)培養条件又はそれらの組合せを使用することによって、増殖させ(propagated)得る。2D及び3D培養において、ASCを増殖させる条件は、以下の本明細書中及びそれに続く実施例の節において更に記載される。これらの工程は、それぞれが別の実施形態と考えられる、培養方法、細胞の特徴、又は治療パラメーターについて記載された他の実施形態のいずれかと自由に組合せても良い。
上述のように、幾つかの実施形態においては、細胞は2D培養条件下で増殖させられている。用語「2D培養」及び「2D培養条件」は、細胞が、細胞増殖に適合している条件に曝され、細胞を、単層中で増殖させることができる、培養を指し、それは、「2次元(2D)培養装置」として参照される。そのような装置は、典型的には、平坦な増殖表面を有し、幾つかの実施形態においては、接着性材料を含み、それは平面又は曲面であっても良い。2D培養用の装置の非限定的な例は、細胞培養ディッシュ及びプレートである。この定義には、各層が単層培養を支持するという条件で、例えば、NuncTMによって製造されるCell FactoryTM等の多層トレイが含まれる。2D装置においてでさえ、細胞は、オーバーコンフルエント(over-confluent)になることが許される場合には、互いに乗り越えて増殖し得ることが理解される。このことは、「2次元」としての装置の分類に影響しない。
他の実施形態においては、細胞は3D培養条件下で増殖させられている。用語「3D培養」及び「3D培養条件」は、細胞が、細胞増殖に適合している条件に曝され、細胞が互いに対して3D方向に増殖することを可能にする、培養を指す。用語「3次元[又は3D]培養装置」は、細胞増殖に適合し、細胞が互いに対して3D方向に増殖することを可能にする条件下で、細胞を培養するための装置を指す。そのような装置は、典型的には、3D増殖表面を有し、幾つかの実施形態においては、接着性材料を含む。ASCの増殖に好適である、3D培養条件のある非限定的な実施形態は、参照によりその全体が完全に本明細書に取り込まれる、PCT出願公開番号第WO/2007/108003号において記載されている。
様々な実施形態において、「接着性材料」は、合成の、又は他の実施形態においては、天然で生じる、又は他の実施形態においては、それらの組合せである、材料を指す。ある実施形態においては、該材料は、細胞毒性がない(又は、他の実施形態においては、生物学的に適合している)。代替的又は追加的に、該材料は繊維性であり、より具体的な実施形態においては、繊維性マトリクス、例、織布の繊維性マトリクス、不織布の繊維性マトリクス、又はそのいずれもであり得る。更に他の実施形態においては、該材料は細胞の接着を可能にする化学構造、例えば帯電した表面露出部分を示す。本態様に従って使用され得る接着性材料の非限定的な例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロ-クロロ-エチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ-L-乳酸、セルロースアセテート、ガラス繊維、セラミック粒子及び不活性金属繊維;又は、より具体的な実施形態においては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート及びポリ-L-乳酸が挙げられる。他の実施形態としては、MatrigelTM、細胞外マトリクス成分(例、フィブロネクチン、コンドロネクチン、ラミニン)及びコラーゲンが挙げられる。より具体的な実施形態においては、材料は、ポリエステル及びポリプロピレンから選択され得る。合成接着性材料の非限定的な例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート、及びポリ-L-乳酸、ガラス繊維、セラミック粒子、並びに不活性金属繊維が挙げられる。より具体的な実施形態においては、合成接着性材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート及びポリ-L-乳酸から選択される。
代替的又は追加的に、記載されたASCは、3D培養の工程に先立って、2D接着性細胞培養装置中でインキュベートされている。幾つかの実施形態においては、細胞は(幾つかの実施形態においては、胎盤、脂肪組織等からの抽出後)、次いで2D接着性細胞培養装置中でのインキュベーションの先立った工程に供され、記載された3D培養工程が続けられる。本工程は、各々が別の実施形態と考えられる、培養方法、細胞の特徴、又は治療パラメーターについて記載された他の実施形態のいずれかと自由に組合せても良い。
他の実施形態においては、3D培養の期間は、少なくとも4日;4〜12日の間;他の実施形態においては、4〜11日の間;他の実施形態においては、4〜10日の間;他の実施形態においては、4〜9日の間;他の実施形態においては、5〜9日の間;他の実施形態においては、5〜8日の間;他の実施形態においては、6〜8日の間;又は、他の実施形態においては、5〜7日の間である。他の実施形態においては、3D培養は5〜15回の細胞倍化、他の実施形態においては、5〜14回の倍化、他の実施形態においては、5〜13回の倍化、他の実施形態においては、5〜12回の倍化、他の実施形態においては、5〜11回の倍化、他の実施形態においては、5〜10回の倍化、他の実施形態においては、6〜15回の細胞倍化、他の実施形態においては、6〜14回の倍化、他の実施形態においては、6〜13回の倍化、又は他の実施形態においては、6〜12回の倍化、他の実施形態においては、6〜11回の倍化、又は他の実施形態においては、6〜10回の倍化の間に行われる。
他の実施形態によれば、記載された3D培養は、少なくとも4回の倍化、少なくとも5回の倍化、少なくとも6回の倍化、少なくとも7回の倍化、少なくとも8回の倍化、少なくとも9回の倍化又は少なくとも10回の倍化の間に行われる。ある実施形態においては、培養が約70〜90%コンフルエンスに達した時、典型的には、3〜5日(例、1〜3回の倍化)後に、細胞を継代する。
ある実施形態においては、3D培養は3Dバイオリアクター中で行われる。幾つかの実施形態においては、3Dバイオリアクターは、培地を保持するための容器及びその中に配置される3D付着基材(担体);並びにpH、温度及び酸素レベル、任意選択で、他のパラメーターを制御するための制御装置を含む。代替的又は追加的に、バイオリアクターは、新鮮な培地及びガスを流入及び流出させるためのポートを含む。
バイオリアクターの例としては、連続撹拌槽バイオリアクター;並びにEppendorf社から入手できるNew BrunswickTMCelliGen(登録商標)及びBIOFLO(登録商標)バイオリアクターシステムが挙げられるが、それらに限定されない。
本明細書において提供される場合、ある実施形態においては、3Dバイオリアクターは、制御条件(例、pH、温度及び酸素レベル)下で、増殖培地の灌流、幾つかの実施形態においては、一定(constant)灌流、他の実施形態においては、グルコース又は他の成分の目標レベルを維持するために調整された灌流を行って、ASCを3D増殖することができる。目標グルコース濃度の非限定的な実施形態は、400〜700 mg/Lの間、450〜650 mg/Lの間、475〜625 mg/Lの間、500〜600 mg/Lの間又は525〜575 mg/Lの間である。代替的又は追加的に、細胞培養は、乳酸、グルタミン、グルタミン酸及びアンモニウムの濃度を直接モニターされ得る。幾つかの実施形態においては、接着性細胞のグルコース消費速度及び乳酸生成速度によって、細胞の増殖速度を概算し、最適な回収時期を決定することが可能になる。
幾つかの実施形態においては、例えばCMが回収されている場合、連続撹拌槽バイオリアクターが使用され、リアクター内の時間で不変の(time-constant)定常状態を維持するために、培養培地はバイオリアクターに連続的に供給され、生成物が連続的に出ていく。繊維性ベッドバスケット(bed basket)を備えた撹拌槽バイオリアクターは、例えばNew Brunswick Scientific社 (Edison、NJ)から入手できる。使用され得る更なるバイオリアクターは、幾つかの実施形態においては、固定床バイオリアクターであり;また、典型的には、エアーが、中央のドラフトチューブ(draught tube)の底部に供給され、気泡を形成しながら上昇し、カラムの上部で排ガスを解放する、エアリフト型(air-lift)バイオリアクターである。更に可能であるものは、ポリアクティブフォーム(polyactive foam)を用いる、細胞播種型(cell-seeding)灌流バイオリアクター[Wendt、D.ら、Biotechnol Bioeng 84:205〜214 (2003)に記載されている]及び管状ポリ-L-乳酸(PLLA)多孔性足場を含むラジアルフロー型(radial-flow)灌流バイオリアクター[Kitagawaら、Biotechnology and Bioengineering 93(5):947-954 (2006)に記載されている]である。使用し得る他のバイオリアクターは、参照により本明細書に取り込まれる、米国特許番号第6,277,151号;第6,197,575号;第6,139,578号;第6,132,463号;第5,902,741号;及び第5,629,186号に記載されている。「固定床バイオリアクター」は、増殖培地の存在下で、細胞の増殖基材が、インキュベーション容器の底から通常は持ち上げられない、バイオリアクターを指す。例えば、基材は、持ち上げられるのを防ぐための十分な密度を有する場合があり、及び/又は持ち上げられるのを防ぐための機械的な圧力によって、詰め込まれる場合がある。基材は、単一物体(single body)又は複数物体(multiple bodies)のいずれであっても良い。典型的には、基材は、バイオリアクターの標準的な灌流速度の間、実質的に定位置に留まる。ある実施形態においては、基材は、異常に速い灌流速度、例えば200 rpm超で、持ち上げられる場合がある。
別の例示的で、非限定的なバイオリアクターである、Celligen 310バイオリアクターを図1に示す。繊維性ベッドバスケット(16)には、ポリエステルディスク (10)が装着される。幾つかの実施形態においては、容器は、外部ポート(1;[他の実施形態においては、本ポートは細胞回収用にも使用され得る])を介して、脱イオン水又は等張なバッファーが充填され、次いで、任意選択で、オートクレーブされる。他の実施形態においては、滅菌に続いて、液は、(9)に示したように、ディスクベッド(disk bed)を満たす増殖培地で置換される。また更なる実施形態においては、植え継ぎに先立って、温度、pH、溶存酸素濃度等が設定される。なお更なる実施形態においては、細胞付着を促進するために、初期に遅い撹拌速度が使用され、次いで、撹拌が速められる。代替的又は追加的に、外部ポート(2)を介して、新鮮な培地を添加することによって、灌流が開始される。必要に応じて、代謝生成物は、バスケット(8)の上の細胞を含まない培地から回収しても良い。幾つかの実施形態においては、インペラーの回転によって、ドラフトチューブ(18)内を陰圧にし、ドラフトチューブ、次いでインペラーポート(19)を通って、リザーバー(15)から細胞を含まない廃液を引き、それによって培地が連続ループ(continuous loop)内で均一に循環(12)する。また更なる実施形態においては、チューブ(6)の調整によって、液面を制御し;幾つかの実施形態においては、本チューブの外部開口部(4)は、回収のために使用される。他の実施形態においては、リングスパージャ(ring sparger)(見えない)は、外部ポート(3)から添加されたガスによって、インペラーを通って流れる培地に酸素を送るために、インペラーエアレーションチャンバー(11)内部に位置し、筺体(5)及びスパージャーライン(7)内部に維持されても良い。代替的又は追加的に、リモートチャンバーに閉じ込められたスパージド・ガス(sparged gas)は、固定化された細胞に打ち寄せる栄養培地によって吸収される。更に他の実施形態においては、ジャケット水を入れる(13)及び排出する(14)ためのポートを備えた、ウォータージャケット(water jacket)(17)が存在する。
ある実施形態においては、灌流チャンバーが担体を含む、灌流バイオリアクターが使用される。より具体的な実施形態においては、担体は、マクロキャリア、マイクロキャリア、又はその両方から選択しても良い。マイクロキャリアは当業者に周知であり、例えば参照により本明細書に取り込まれる、米国特許番号第8,828,720号、第7,531,334号、第5,006,467号に記載されている。マイクロキャリアはまた、例えばCytodexTM(Pharmacia Fine Chemical社から入手可能)、Superbeads (Flow Lab社から市販)として、DE-52及びDE-53 (Whatman社から市販)として市販されている。市販されているマイクロキャリアの他の非限定的な例としては、アルギン酸塩ベース (GEM、Global Cell Solutions)、デキストランベース (Cytodex、GE Healthcare)、コラーゲンベース (Cultispher、Percell)及びポリスチレンベース (SoloHill Engineering)のマイクロキャリアが挙げられる。
幾つかの実施形態においては、灌流バイオリアクター中に担体が充填され、例えば、栄養培地中に浸漬される充填層(packed bed)を形成する。ある実施形態においては、マイクロキャリアは、灌流バイオリアクター内部に充填される。代替的又は追加的に、担体は接着性材料を含み得る。他の実施形態においては、担体の表面は接着性材料を含むか、又は担体の表面は接着性である。更に他の実施形態においては、材料は、例えば細胞の接着を可能にする、表面に露出した帯電した基等の化学構造を示す。本態様に従って使用され得る接着性材料の非限定的な例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート、ガラス繊維、セラミック粒子、ポリ-L-乳酸及び不活性金属繊維が挙げられる。更に特定の実施形態においては、材料はポリエステル及びポリプロピレンから選択され得る。様々な実施形態において、「接着性材料」は、合成か、又は他の実施形態においては、天然で生じるか、又は他の実施形態においては、それらの組合せである材料を指す。ある実施形態においては、材料は細胞毒性がない(又は、他の実施形態においては、生物学的に適合性がある)。合成接着性材料の非限定的な例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート、及びポリ-L-乳酸、ガラス繊維、セラミック粒子及び不活性金属繊維、又はより具体的な実施形態においては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート及びポリ-L-乳酸が挙げられる。他の実施形態としては、MatrigelTM、細胞外マトリクス成分(例、フィブロネクチン、コンドロネクチン、ラミニン)及びコラーゲンが挙げられる。
代替的又は追加的に、接着性材料は繊維性であり、より具体的な実施形態においては、織布の繊維性マトリクス、不織布の繊維性マトリクス、又はその両方であり得る。更に他の実施形態においては、材料は、細胞の接着を可能にする、例えば帯電した表面の基等の化学構造、例、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート及びポリ-L-乳酸を示す。更に特定の実施形態においては、材料は、ポリエステル及びポリプロピレンから選択され得る。
代替的又は追加的に、担体は、任意選択で、接着性の繊維性材料、より具体的な実施形態においては、織布の繊維性マトリクス、不織布の繊維性マトリクス、又はその両方であり得る、繊維性材料を含む。繊維性担体の非限定的な例は、Eppendorf社(Enfield、CT)から市販されているNew Brunswick Scientific Fibracel(登録商標)担体であり、ポリエステル及びポリプロピレンからなり;並びにCESCO BioProducts (Atlanta、GA)から市販されているBioNOC II担体であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる。ある実施形態においては、繊維性マトリクスが指すものは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン又はポリスルホンを含む。更に特定の実施形態においては、繊維性マトリクスは、ポリエステル及びポリプロピレンから選択される。
ある実施形態においては、ASCは、担体、例えば充填された担体上でのインキュベーションに先立って、2D装置、例えば組織培養プレート又はディッシュ中でインキュベートしても良い。他の実施形態においては、ASCは、担体、例えば充填された担体上でのインキュベーションに先立って、2D装置中でインキュベートされない。
他の実施形態においては、細胞は充填層スピナーフラスコを使用して生成される。より具体的な実施形態においては、充填層は、スピナーフラスコ及びマグネティックスターラーを含んでも良い。幾つかの実施形態においては、スピナーフラスコは、CelligenTM Plug Flowバイオリアクターに類似する充填床装置に取り付けても良く、それは、ある実施形態においては、Fibra-cel(登録商標)(又は、他の実施形態においては、他の担体)が充填されている。ある実施形態においては、スピナーは、バッチで供給され(batch fed)(又は、他の代替的な実施形態においては、灌流によって供給される)、1以上の滅菌フィルターが取り付けられ、組織培養インキュベーター内に配置される。更なる実施形態においては、細胞は、培地中で懸濁し、培地を装置に導入することによって、足場に播種される。また更なる実施形態においては、撹拌速度を次第に増加し、例えば40 RPMで4時間から開始し、次いで120 RPMにまで次第に速度を上げる。ある実施形態においては、培地のグルコースレベルを、定期的に(即ち、毎日)テストしても良く、調整された灌流速度は、ある実施形態においては、400〜700 mg/Lの間、450〜650 mg/Lの間、475〜625 mg/Lの間、500〜600 mg/Lの間又は525〜575 mg/Lの間である、許容可能なグルコース濃度を維持する。更に他の実施形態においては、培養プロセスの終わりに、担体を充填層から取り出し、任意選択で、等張なバッファーで洗浄し、撹拌及び/又は酵素による分解によって、細胞は処理され、又は担体から回収される。
ある実施形態においては、3D増殖装置(幾つかの実施形態においては、先述のバイオリアクター)は繊維性ベッド(fibrous bed)を含む。より具体的な実施形態においては、繊維性ベッドは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン又はポリアミド(例、脂肪族ポリアミド)を含み得る。他の実施形態においては、ガラス繊維若しくは金属繊維(例、不活性金属繊維)が存在しても良く;又はセルロース繊維(その非限定的な例は、レーヨンである)が存在しても良い。
他の実施形態においては、装置又はバイオリアクターは、ゲルマトリクスを含む。典型的には、ゲル相を形成する、ゲル捕集水(gels trap water)である。他の実施形態においては、装置又はバイオリアクターは、細胞が繊維の空隙(lumen)内で増殖及び増殖する(grow and proliferate)ように構成された中空繊維マトリックスを含む。更に他の実施形態においては、装置又はバイオリアクターは、細胞増殖のための基材として働く球体、ビーズ又は担体を有する、充填層マトリクス又は流動床マトリクスを含む。様々な実施形態において、球体又はビーズは、微多孔質、多孔質又は非多孔質であっても良く、後者のケースにおいては、細胞はその表面にのみ付着する。更に他の実施形態においては、装置又はバイオリアクターは、スポンジ様の構造を有するマトリクスを含む。
ある実施形態においては、バイオリアクターは、培地1 ml当たり10,000〜2,000,000細胞の間の濃度で、他の実施形態においては、20,000〜2,000,000細胞/ml、他の実施形態においては、30,000〜1,500,000細胞/ml、他の実施形態においては、40,000〜1,400,000細胞/ml、他の実施形態においては、50,000〜1,300,000細胞/ml、他の実施形態においては、60,000〜1,200,000細胞/ml、他の実施形態においては、70,000〜1,100,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜1,000,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜900,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜800,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜700,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜600,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜500,000細胞/ml、他の実施形態においては、80,000〜400,000細胞/ml、他の実施形態においては、90,000〜300,000細胞/ml、他の実施形態においては、90,000〜250,000細胞/ml、他の実施形態においては、90,000〜200,000細胞/ml、他の実施形態においては、100,000〜200,000細胞/ml、他の実施形態においては、110,000〜1,900,000細胞/ml、他の実施形態においては、120,000〜1,800,000細胞/ml、他の実施形態においては、130,000〜1,700,000細胞/ml、他の実施形態においては、140,000〜1,600,000細胞/mlの間の濃度で播種される。
更に他の実施形態においては、担体(基材)1 g (gr)当たり1〜20×106細胞の間で播種され、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり1.5〜20×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり1.5〜18×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり1.8〜18×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり2〜18×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3〜18×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり2.5〜15×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3〜15×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3〜14×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3〜12×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3.5〜12×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3〜10×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり3〜9×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり4〜9×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり4〜8×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり4〜7×106細胞、又は他の実施形態においては、担体1 g当たり4.5〜6.5×106細胞が播種される。
幾つかの実施形態においては、図22A〜Bに準拠し、また参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、2014年3月13日に公開された国際公開第2014/037862号に記載されているように、ASCの増殖及び/又はインキュベーションのために溝付き担体30が使用される。様々な実施形態において、担体は、(例、培養プレート又はディッシュ上での)2Dインキュベーション後、又は前もって2Dインキュベーションを行わずに、使用されても良い。他の実施形態においては、担体上でのインキュベーションに、例えば、充填層基材若しくはマイクロキャリアであり得る、バイオリアクター中の3D基材上でのインキュベーションが続けられる場合があり;又は担体上でのインキュベーションに、3D基材上でのインキュベーションが続けられない場合がある。担体30は、担体30の外部から担体30の内部に向かって伸びる、複数の2次元(2D)表面12を含み得る。示されるように、表面は、離間した一群のリブ14によって形成され、開口部16を形成し、それは、使用の間、細胞及び培養培地 (非表示)が流れるような大きさであり得る。図22Cに準拠して、担体30はまた、担体30の中心の担体軸18から伸び、開口部16を形成するよう離間したリブ14に対してほぼ垂直に伸びる、複数の2D表面12を含み得、複数の2D表面12を創出する。幾つかの実施形態においては、担体30は、国際公開第2014/037862号に記載されているような「3Dボディ」であり;3Dボディに関連する内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
ある実施形態においては、バイオリアクター中で、記載された担体(例、溝付き担体)が使用される。その幾つかにおいては、担体は充填された形態である。
更に他の実施形態においては、複数の2D表面を形成する材料は、少なくとも1つのポリマーを含む。幾つかの実施形態においては、細胞付着又は細胞生物学のパラメーターを制御するために、好適なコーティングを選択しても良い。
ある実施形態においては、記載された方法は、3D培養装置からASCを取り出すことによってASCを回収する(様々な実施形態において、サイトカインの添加あり又は無しであっても良い、記載された3Dインキュベーションに続く)、後続の工程を更に含む。更に特定の実施形態においては、細胞は3Dマトリクスから取り出され得る一方で、マトリクスはバイオリアクター内に残る。ある実施形態においては、バイオリアクターからの回収の時点で、細胞の少なくとも約10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも16%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも22%、少なくとも24%、少なくとも26%、少なくとも28%、又は少なくとも30%が、S及びG2/M期(まとめて)にある。細胞周期のフェーズは、当該分野において公知である様々な方法、例えばFACS検出によってアッセイし得る。典型的には、FACSのケースにおいては、S及びG2/M期の細胞のパーセンテージは、例えば前方散乱/側方散乱ゲートを使用して、生細胞についてゲーティング後、生細胞のパーセンテージで表される。当業者は、これらのフェーズにある細胞のパーセンテージが、増殖している細胞のパーセンテージと相関することを理解する。幾つかのケースにおいては、有意に指数増殖期を経過して、バイオリアクター内に細胞が残るようにすることで、増殖している細胞数における減少が起こる。
ある実施形態においては、抗がん剤として使用されるASCは、がん細胞と、又は他の実施形態においては、がん細胞若しくはがん細胞株に由来する馴化培地(「CM」)中でインキュベートした1以上のがん細胞株と、以前に共インキュベートされているか、或いはがん細胞若しくはがん細胞株に由来するCMの画分を含む培地中でインキュベートされている。他の実施形態においては、抗がん剤としての使用のためのCMを生成するために使用されたASCは、がん細胞と、又は他の実施形態においては、1以上のがん細胞株と、共インキュベートされている。幾つかの実施形態においては、共インキュベーションは、ASCと、がん細胞又は細胞株とが互いに接触する条件下で行われる。そのような条件としては、同じ装置中に、ASCと、がん細胞又は細胞株とを播種することが挙げられ、様々な実施形態において、一緒に播種する、最初にASCを播種する、又は最初にがん細胞若しくは細胞株を播種するのいずれかである。幾つかの実施形態においては、共インキュベーションは組織培養装置中で行われ、又は他の実施形態においては、バイオリアクター中で行われ、それは、幾つかの実施形態においては、3D増殖基材を含んでも良い。
他の実施形態においては、条件は、ASCと、がん細胞又は細胞株とが互いに接触しないが、培地及びその可溶性の成分が2つの細胞集団の間で交換されるような条件である。当業者は、培地の交換を可能にしながら、2つの細胞集団の間での接触を防ぐために、様々な手段が利用可能である(例えばそれに溶解した流体及び因子に対して透過性である膜、又は規定されたサイズよりも小さい可溶性因子がそれを通って拡散することができる半透過性の膜を用いて、細胞集団を分離することによる)ことを理解する。
他の実施形態においては、抗がん剤として使用されるASCは、がん細胞又はがん細胞株に由来するCM中で、前もってインキュベートされている。他の実施形態においては、抗がん剤として使用するためのCMを生成するために使用されるASCは、がん細胞又はがん細胞株に由来するCM中で、インキュベートされている。幾つかの実施形態においては、そのプロセスの第一段階において、がん細胞が培養され、インキュベーションによって生じる培地(「がん細胞CM」)が単離される。様々な実施形態において、第二段階において、ASCは、幾つかの実施形態においては、3D増殖基材を含み得る、培養ウェルを含むがそれに限定されない組織培養装置中、又は他の実施形態においては、バイオリアクター中で、がん細胞CMとインキュベートされる。更に他の実施形態においては、ASCは、がん細胞CM中でのインキュベーションに先立って、炎症性サイトカインに曝露されている。他の実施形態においては、(or)1以上のサイトカイン、ビタミン又は生物学的に活性なタンパク質が、がん細胞CMに添加される。更に他の実施形態においては、ASCのインキュベーションは、例えば低酸素、又はpH若しくは大気圧の変化といった非標準的な条件下で行われる。更に他の実施形態においては、ASCのインキュベーションによって生じるCM(「ASC CM」)、又は他の実施形態においては、ASCそのものが、抗がん剤として使用される。更に他の実施形態においては、ASCは、主に母体細胞、又は胎児細胞、又は胎児細胞と母体細胞の混合物である、胎盤ASCである。
他の実施形態においては、抗がん剤として使用されるASCは、がん細胞又はがん細胞株に由来するCMの画分を含む培地中でインキュベートされている。他の実施形態においては、抗がん剤として使用するためのCMを生成するために使用されるASCは、がん細胞又はがん細胞株に由来するCMの画分を含む培地中でインキュベートされている。幾つかの実施形態においては、第一段階においては、がん細胞が培養され、がん細胞CM画分が単離され、標準的な培養培地に添加される。ある実施形態においては、プロセスは、例えばバイオリアクター中、又は培養ウェル中で、第一段階で生成された培地を用いて、ASCがインキュベートされる、第二段階を含む。
ある実施形態においては、先述のインキュベーションの条件は、共インキュベーションの間に、がん細胞若しくは細胞株がスフェロイドを形成し、又は他の実施形態においては、マイクロスフェロイドを形成するような条件である。
様々な実施形態において、がん細胞若しくはがん細胞株を用いた、又はそれらに由来するCMを用いた、ASCのインキュベーションは、がん細胞、がん細胞株又はそれらに由来するCMの非存在下での、本明細書に記載されるような、ASCの3D増殖後に行われる。他の実施形態においては、ASCの3D増殖の全プロセスは、がん細胞、がん細胞株又はそれらに由来するCMの存在下で行われる。更に他の実施形態においては、がん細胞、がん細胞株又はそれらに由来するCMの非存在下でのASCの増殖は、がん細胞、がん細胞株又はそれらに由来するCMとの、ASCの共インキュベーション後に起こる。ある実施形態においては、がん細胞、がん細胞株又はそれらに由来するCMを用いない、及び/又はそれらを用いた、ASCの3Dインキュベーション前に、ASCの2D増殖が行われる。
ある実施形態においては、ASCは、例えば、がん細胞又はがん細胞株を用いた、追加的なインキュベーションを行うのに先立って、それらを増殖する(expand)ために使用されたバイオリアクター中で、炎症性サイトカインに曝露されている。他の実施形態においては、(i)バイオリアクター中でASCを増殖し、(ii)任意選択で、バイオリアクターからそれらを回収し、(iii)ASCを、がん細胞又はがん細胞株と共に更にインキュベートした後に、ASCは炎症性サイトカインに曝露されている。様々な実施形態において、培養プレート中、任意選択で、例えば低酸素、又はpH若しくは周囲圧力の変化といった非標準的な条件下で、更なるインキュベーションが行われる。
幾つかの実施形態においては、ASCと共に若しくはそれに近接してインキュベートされる先述のがん細胞、又はASCと共にインキュベートされるCM(若しくはその画分)は、治療される患者のものであり;或いは、他の実施形態においては、治療される腫瘍と同じ、がんの種類由来であり;或いは、他の実施形態においては、がんの進行及び/又はその治療の過程において、変化を経ている、がん細胞の亜集団由来である。他の実施形態においては、がん細胞は、任意の他のがん細胞であり;例、ASCに治療因子の分泌を誘導することができる種類である。
更に他の実施形態においては、増殖した細胞は、例えば、参照によって本明細書に取り込まれる、PCT国際特許出願公開番号第WO2012/140519号に記載されているように、振動又は撹拌を含む過程によって、バイオリアクターから回収される。ある実施形態においては、回収している間、任意選択で、カルシウムキレーターも含むプロテアーゼを用いた処理の間、若しくは他の実施形態においては、その処理の間及び後に、細胞は0.7〜6ヘルツの振動によって撹拌され、又は他の実施形態においては、1〜3ヘルツの振動によって撹拌される。ある実施形態においては、細胞を含む担体は、任意選択で、カルシウムキレーターも含む、プロテアーゼを含む溶液若しくは培地に浸漬している間に、0.7〜6ヘルツ、又は他の実施形態においては、1〜3ヘルツで撹拌される。プロテアーゼ及びカルシウムキレーターの非限定的な例は、EDTAを含む、トリプシン、又は任意選択で、他の酵素と組み合わされて同様の活性を有する別の酵素であり、それらの非限定的な例は、I型、II型、III型及びIV型コラゲナーゼである。トリプシンと同様の活性を有する酵素は、当該分野において周知であり;非限定的な例は、Thermo Fisher Scientific (Waltham MA)から市販されている、TrypLETM、真菌トリプシン様プロテアーゼ、並びにI型、II型、III型及びIV型コラゲナーゼである。コラゲナーゼと同様の同様の活性を有する酵素は、当該分野において周知であり;非限定的な例は、Sigma-Aldrichから市販されている、ディスパーゼ(Dispase)I及びディスパーゼIIである。
他の実施形態においては、1以上のサイトカイン、ビタミン、又は生物学的に活性なタンパク質が、共インキュベーションのために使用される培地に添加される。
他の実施形態においては、共インキュベーションは、例えば低酸素、又はpH若しくは大気圧の変化といった、非標準的な条件下で行われる。
ある実施形態においては、共インキュベーションにおいて使用される細胞株は、取得したASC又はCMの治療標的であるがん細胞と同じ種類である必要がない。他の実施形態においては、共インキュベーションにおいて使用される細胞株は、取得したASC又はCMの治療標的であるがん細胞と同じ種類である。
様々な実施形態において、記載された共インキュベーション法の各々で使用されるASCは、主に母体細胞、若しくは主に胎児細胞、又は胎児細胞及び母体細胞の混合物である胎盤ASCを利用しても良い。これらの実施形態の各々を、ASCと、がん細胞若しくはがん細胞株との共インキュベーションの記載された実施形態と自由に組み合わせも良い。
炎症促進性サイトカインを用いた細胞の処理
記載された方法及び組成物のある実施形態においては、細胞を増殖するために使用される培養プロセスの過程において、培地の組成は変化しない。換言すると、因子を添加若しくは除去することによって、又は以前の培地とは異なる組成を有する新鮮な培地を添加することによって、培地組成を意図的に変化させようとはしない。当業者によって理解されるように、培地の組成を変化させることに関する言及には、例えばそれに含まれる細胞による栄養の吸収及び代謝物の分泌のために、長期培養の結果として自動的に生じる培地組成における変化は含まれない。
他の実施形態においては、細胞を調製するために使用される3D培養法は、以下:(a)3D培養装置中、第一の増殖培地中で、ASCをインキュベートし(該第一の増殖培地には炎症性サイトカインが添加されていない);及び(b)その後、3D培養装置中、第二の増殖培地中で、ASCをインキュベートする(該第二の増殖培地には1以上の炎症促進性サイトカインが添加されている)、副工程を含む。当業者は、本開示を踏まえて、培養装置中の培地に単にサイトカインを添加することによって、又は他の実施形態においては、培養装置から培地を除去し、サイトカインを含む培地でそれを置換することによって、第一及び第二の増殖培地中でインキュベートするために、同じ3D培養装置を使用しても良いことを理解する。他の実施形態においては、例えば、サイトカイン含有培地を添加する前に、異なるインキュベーターに細胞を移す(例、継代する)ことによって、サイトカインの存在下でのインキュベーションのために、異なる3D培養装置を使用しても良い。様々な実施形態において、当業者は、本開示を踏まえて、記載された方法において使用されるASCは、本明細書において更に記載されるように、胎盤から、脂肪組織から、又は他のソースから抽出しても良いことを理解する。
本明細書において、交換可能に使用される、1以上の「炎症促進性」サイトカイン又は「炎症性サイトカイン」についての言及は、哺乳動物宿主、例えばヒト宿主における炎症反応を媒介する少なくとも1つのサイトカインが存在することを意味する。非限定的なサイトカインの一覧は、インターフェロン-γ(IFN-γ;UniProt識別子P01579)、IL-22(UniProt識別子Q9GZX6)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ;UniProt識別子P01375)、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(UniProt識別子P01574)、IL-1アルファ(UniProt識別子P01583)、IL-1ベータ(UniProt識別子P01584)、IL-17(UniProt識別子Q5QEX9)、IL-23(UniProt識別子Q9NPF7)、IL-17A(UniProt識別子Q16552)、IL-17F(UniProt識別子Q96PD4)、IL-21(UniProt識別子Q9HBE4)、IL-13(UniProt識別子P35225)、IL-5(UniProt識別子P05113)、IL-4(UniProt識別子P05112)、IL-33(UniProt識別子O95760)、IL-1RL1(UniProt識別子Q01638)、TNF-ベータ(UniProt識別子P01374)、IL-11(UniProt識別子P20809)、IL-9(UniProt識別子P15248)、IL-2(UniProt識別子P60568)、IL-21(UniProt識別子Q9HBE4)、腫瘍壊死因子様リガンド(TL1A;別名TNFリガンドスーパーファミリーメンバー15;UniProt識別子O95150)、IL-12(アルファ及びベータサブユニットについてのそれぞれのUniProt識別子はP29459及びP29460)、並びにIL-18(UniProt識別子Q14116)である。更なるサイトカインとしては(それらに限定されないが):白血病阻害因子(LIF;UniProt識別子P15018)、オンコスタチンM(OSM;UniProt識別子P13725)、毛様体神経栄養因子(CNTF;UniProt識別子P26441)及びIL-8(UniProt識別子P10145)が挙げられる。本段落における全Swissprot及びUniProt入力内容は、2014年7月24日に接続された。特定のサイトカイン、それらの組合せ及び量、並びに特定の方法工程を含む、サイトカインを用いたASCのインキュベーションの様々な実施形態は、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、Eytan Abrahamらの名義のPCT第IB2016/053310号において記載されている。
他に指示がない場合、サイトカイン又は他のタンパク質に関する言及は、タンパク質の全てのアイソフォームを含むことを意図する。例えば、IFN-αは、例えば、IFN-α17、IFN-α4、IFN-α7、IFN-α8及びIFN-α110等(それらに限定されない)の、その全てのサブタイプ及びアイソフォームを含む。IFN-αについての代表的で非限定的なUniProt識別子は、P01571、P05014、P01567、P32881及びP01566である。当業者は、多くの非ヒト(例、動物)サイトカインはヒト細胞に対して活性があるので、ヒト細胞のケースにおいてさえ、先述のサイトカインはヒトサイトカインである必要がないことを理解する。同様に、ネイティブの形態と同様の活性を有する改変サイトカインの使用は、記載された方法及び組成物の範囲に含まれる。
ある実施形態においては、記載された培地中に存在するサイトカインは、又は他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、該サイトカインの少なくとも1つは、先天的な免疫応答に影響する炎症性サイトカインである。更なる実施形態においては、サイトカインは、TNF-α、IL-1-α、IL-12、IFN-α、IFN-ベータ又はIFN-ガンマのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
他の実施形態においては、サイトカインは、又は他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、該サイトカインの少なくとも1つは、適応免疫応答に影響する炎症性サイトカインである。更なる実施形態においては、サイトカインは、IL-2、IL-4、IL-5、TGF-β若しくはIFN-γのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
更に他の実施形態においては、サイトカインは、又は他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、該サイトカインの少なくとも1つは、Th1サイトカインである。更なる実施形態においては、サイトカインは、IFN-γ、IL-22、TNF-α、IL-α若しくはIL-1βのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
更に他の実施形態においては、サイトカインは、又は他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、該サイトカインの少なくとも1つは、Th17サイトカインである。更なる実施形態においては、サイトカインはIL-17、IL-23、IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22、TNF-α若しくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;UniProt識別子P04141)のうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
更に他の実施形態においては、サイトカインは、又は他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、該サイトカインの少なくとも1つは、Th1サイトカイン及びTh17サイトカインから選択される。
更に他の実施形態においては、サイトカインは、又は他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、該サイトカインの少なくとも1つは、Th2サイトカインである。更なる実施形態においては、サイトカインはIL-13、IL-5、IL-4、IL-33、IL-1RL1、TNF-α及びTNF-βのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。他の実施形態においては、サイトカインはIL-13、IL-5、IL-33、IL-1RL1、TNF-アルファ若しくはTNF-ベータのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
更に他の実施形態においては、サイトカイン(複数可)はIL-11、白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、CNTF、GM-CSF及びIL-8のうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。更なる実施形態においては、サイトカイン(複数可)は、IL-11、LIF、OSM、CNTF、GM-CSF又はIL-8のうちの1以上である。他の実施形態においては、サイトカイン(複数可)はIL-9、IL-2及びIL-21のうちの1以上である。
他の実施形態においては、サイトカイン(複数可)は:TNF-α、IL-1β若しくはTL1Aのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
更に他の実施形態においては、サイトカイン(複数可)はIL-12、IL-18、TNF-αのうちの1、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超である。
より具体的な実施形態においては、先述のサイトカインのうちの1は、0.1〜10 ng/ml;0.15〜10 ng/ml;0.2〜10 ng/ml;0.3〜10 ng/ml;0.4〜10 ng/ml;0.5〜10 ng/ml;0.7〜10 ng/ml;1〜10 ng/ml;1.5〜10 ng/ml;2〜10 ng/ml;3〜10 ng/ml;4〜10 ng/ml;5〜10 ng/ml;0.1〜5 ng/ml;0.2〜5 ng/ml;0.3〜5 ng/ml;0.4〜5 ng/ml;0.5〜5 ng/ml;0.7〜5 ng/ml;1〜5 ng/ml;2〜5 ng/ml;0.1〜3 ng/ml;0.2〜3 ng/ml;0.3〜3 ng/ml;0.4〜3 ng/ml;0.5〜3 ng/ml;0.6〜3 ng/ml;0.8〜3 ng/ml;1〜3 ng/ml;1.5〜3 ng/ml;0.1〜2 ng/ml;0.2〜2 ng/ml;0.3〜2 ng/ml;0.4〜2 ng/ml;0.5〜2 ng/ml;0.6〜2 ng/ml;0.8〜2 ng/ml;1〜2 ng/ml;0.5〜1.5 ng/ml;0.6〜1.5 ng/ml;0.6〜1.4 ng/ml;0.7〜1.3 ng/ml;0.8〜1.2 ng/ml;0.1〜0.8 ng/ml;0.1〜0.6 ng/ml;0.1〜0.5 ng/ml;0.1〜0.4 ng/ml;0.2〜1 ng/ml;0.2〜0.8 ng/ml;0.2〜0.6 ng/ml;0.2〜0.5 ng/ml;0.2〜0.4 ng/ml;1〜100 ng/ml;2〜100 ng/ml;3〜100 ng/ml;4〜100 ng/ml;5〜100 ng/ml;7〜100 ng/ml;10〜100 ng/ml;15〜100 ng/ml;20〜100 ng/ml;30〜100 ng/ml;40〜100 ng/ml;50〜100 ng/ml;1〜50 ng/ml;2〜50 ng/ml;3〜50 ng/ml;4〜50 ng/ml;5〜50 ng/ml;7〜50 ng/ml;10〜50 ng/ml;20〜50 ng/ml;1〜30 ng/ml;2〜30 ng/ml;3〜30 ng/ml;4〜30 ng/ml;5〜30 ng/ml;6〜30 ng/ml;8〜30 ng/ml;10〜30 ng/ml;15〜30 ng/ml;1〜20 ng/ml;2〜20 ng/ml;3〜20 ng/ml;4〜20 ng/ml;5〜20 ng/ml;6〜20 ng/ml;8〜20 ng/ml;10〜20 ng/ml;5〜15 ng/ml;6〜15 ng/ml;6〜14 ng/ml;7〜13 ng/ml;8〜12 ng/ml;9〜11 ng/ml;9.5〜10.5 ng/ml;1〜10 ng/ml;1〜8 ng/ml;1〜6 ng/ml;1〜5 ng/ml;1〜4 ng/ml;2〜10 ng/ml;2〜8 ng/ml;2〜6 ng/ml;2〜5 ng/ml;2〜4 ng/ml;10〜1000 ng/ml;20〜1000 ng/ml;30〜1000 ng/ml;40〜1000 ng/ml;50〜1000 ng/ml;70〜1000 ng/ml;100〜1000 ng/ml;150〜1000 ng/ml;200〜1000 ng/ml;300〜1000 ng/ml;400〜1000 ng/ml;500〜1000 ng/ml;10〜500 ng/ml;20〜500 ng/ml;30〜500 ng/ml;40〜500 ng/ml;50〜500 ng/ml;70〜500 ng/ml;100〜500 ng/ml;200〜500 ng/ml;10〜300 ng/ml;20〜300 ng/ml;30〜300 ng/ml;40〜300 ng/ml;50〜300 ng/ml;60〜300 ng/ml;80〜300 ng/ml;100〜300 ng/ml;150〜300 ng/ml;10〜200 ng/ml;20〜200 ng/ml;30〜200 ng/ml;40〜200 ng/ml;50〜200 ng/ml;60〜200 ng/ml;80〜200 ng/ml;100〜200 ng/ml;50〜150 ng/ml;60〜15 ng/ml;60〜14 ng/ml;70〜130 ng/ml;80〜120 ng/ml;10〜100 ng/ml;10〜80 ng/ml;10〜60 ng/ml;10〜50 ng/ml;10〜40 ng/ml;20〜100 ng/ml;20〜80 ng/ml;20〜60 ng/ml;20〜50 ng/ml;又は20〜40 ng/mlの量で、培地中に存在する。更に他の実施形態においては、1超のサイトカインが存在する場合、それらの各々が、独立して、自由に組合せても良い上記の量から選択される量で存在する。様々な他の実施形態においては、存在する各々の炎症促進性サイトカインの量は、各々上記の1の範囲内である。
ある実施形態においては、サイトカインの1以上は、TNF-アルファ(TNF-α)である。より具体的な実施形態においては、TNF-αは、先述の量又は範囲のうちの1で存在する。より具体的な実施形態においては、TNF-αは、存在する唯一のサイトカインであっても良く、又は他の実施形態においては、ある実施形態においては、先述のサイトカインのうちの1であり得る、更なる炎症性サイトカインと一緒に存在しても良い。幾つかの実施形態においては、TNF-αは、IFN-ガンマ(IFN-γ)と一緒に培地中に存在する。これらの2のサイトカインだけが添加されたサイトカインであっても良く、又は他の実施形態においては、更なる炎症促進性サイトカインと共に存在しても良い。
上述のように、幾つかの実施形態においては、TNF-αは、先述のサイトカインのうちの1と、又は他の実施形態においては、それらのうちの2、3、4、5以上と一緒に存在する。更に他の実施形態においては、TNF-αと、更なるサイトカインのうちの1とは、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超とは、先述の量又は範囲のうちの1から独立して選択される量で、各々存在する。各々の組合せは、別の実施形態と考えても良い。
ある実施形態においては、サイトカインの1以上はIFN-γである。より具体的な実施形態においては、IFN-γは存在する唯一のサイトカインであっても良く、或いは他の実施形態においては、1、2、3、4、5、6、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5若しくは1〜6以上の他のサイトカインと一緒に存在しても良い。より具体的な実施形態においては、IFN-γは、先述の量又は範囲のうちの1で存在する。
上述のように、幾つかの実施形態においては、IFN-γは先述のサイトカインのうちの1と一緒に存在する。これらの2のサイトカインは、2つだけが添加されたサイトカインであっても良く、又は他の実施形態においては、更なる炎症促進性サイトカインと共に存在しても良い。更に他の実施形態においては、IFN-γと、更なるサイトカインのうちの1とは、又は他の実施形態においては、それらのうちの1超とは、それぞれ先述の量又は範囲のうちの1から独立して選択される量で存在する。各組合せは、別の実施形態と考えても良い。
他の実施形態においては、先述の工程(a)(添加された炎症性サイトカイン[複数可]の非存在下での3Dインキュベーション)は、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、又は少なくとも7日間行われる。他の実施形態においては、工程(a)は、3〜4日の間、3〜5日の間、3〜6日の間、3〜7日の間、4〜5日の間、4〜6日の間、4〜7日の間、5〜6日の間、5〜7日の間、又は6〜7日の間行われる。更に他の実施形態においては、工程(a)は、少なくとも1回の集団倍化、少なくとも2回の倍化、少なくとも3回の倍化、少なくとも4回の倍化、1〜2回の倍化、1〜3回の倍化、1〜4回の倍化、2〜3回の倍化、2〜4回の倍化、又は3〜4回の倍化の間に行われる。
代替的又は追加的に、先述の工程(b)(添加された炎症性サイトカイン[複数可]の非存在下での3Dインキュベーション)は、6〜48時間、8〜48時間、10〜48時間、12〜48時間、14〜48時間、16〜48時間、20〜48時間、6〜36時間、8〜36時間、10〜36時間、12〜36時間、14〜36時間、16〜36時間、20〜36時間、24〜36時間、28〜36時間、6〜24時間、8〜24時間、10〜24時間、12〜24時間、14〜24時間、16〜24時間、20〜24時間、8〜18時間、10〜18時間、12〜18時間、又は14〜18時間の間行われる。
ある実施形態においては、先述の工程(a)の少なくとも一部は灌流状態で行われる。他の実施形態においては、工程(a)の大部分(添加された炎症性サイトカインの非存在下での3D培養時間の大部分)は灌流状態で行われる。更に他の実施形態においては、工程(a)の全ては灌流状態で行われる。他の実施形態においては、工程(a)の少なくとも一部は回分状態で行われる。
代替的又は追加的に、工程(b)の少なくとも一部は回分状態で行われる。他の実施形態においては、工程(b)の大部分(添加された炎症性サイトカイン[複数可]の存在下での3D培養時間の大部分)は回分状態で行われる。更に他の実施形態においては、工程(b)の全ては回分状態で行われる。他の実施形態においては、工程(b)の少なくとも一部は灌流状態で行われる。ある実施形態においては、工程(a)の大部分が灌流状態で行われ、工程(b)の大部分が回分状態で行われる。
ある実施形態においては、バイオリアクターは、所望の濃度のサイトカインを含む外部培地リザーバー(例、バイオリアクターを灌流するために使用される)に接続される。代替的又は追加的に、バイオリアクター内のサイトカイン濃度を急速に所望の濃度にするために、サイトカインインキュベーションの最初に、1以上のサイトカインをバイオリアクター中の培地に加える。本明細書において提供される場合、バイオリアクター培地への添加によって、サイトカインの存在下でのインキュベーション時間を削減することができ、結果として細胞生存率が高まる。他の実施形態においては、工程(b)は、(i)炎症促進性サイトカイン(複数可)をバイオリアクター中の培地にボーラス添加し、それにより炎症性サイトカインを含む増殖培地を生成し;及び(ii)バイオリアクター中の増殖培地を、炎症性サイトカインを含む更なる量の増殖培地を含む外部リザーバーに操作可能に接続する、の副工程を含む。
幾つかの実施形態においては、インキュベーション時間及び添加(spiking)の先述の実施形態と組合せても良い、更に他の実施形態においては、培養が指数増殖期である場合、工程(b)が開始される。より具体的な実施形態においては、培養が指数増殖期の後半である場合、工程(b)が開始される。幾つかの実施形態においては、培養は、工程(b)の終わりに、なお指数増殖期である。他の実施形態においては、培養は、工程(b)の終わりに、後期指数増殖期である。幾つかの実施形態においては、細胞は、バイオリアクター中にあり、それは、より具体的な実施形態においては、充填層バイオリアクターである。本明細書において提供される場合、指数増殖期におけるASCのサイトカイン処理は、細胞にタンパク質発現プロファイルをもたらす。
別段の記載がない場合、用語「指数増殖期」及び「指数増殖期」は、特定のシステムについて細胞分裂速度が最大値又はほぼ最大値である期間を指し、細胞分裂速度は、相対的な集団サイズの対数(ln(N/N0)、式中、N=細胞数、N0=接種時の細胞数)で表される。より具体的な定義においては、細胞分裂速度は、最大の細胞分裂速度の少なくとも70%である。最大の細胞分裂速度は、時間に対する、相対的な集団サイズの対数のプロットの接線の傾きで定義され得る。説明のためだけに提供される理論的プロットを図23に示す。
当業者は、細胞を培養システム(例えば、バイオリアクター)に播種する場合、遅滞期がしばしばあり、その間は細胞分裂が比較的遅いことを理解する。遅滞期の終わりは、数学的には先述の接線のX軸の切片として定義され得る。遅滞期に指数増殖期が続く。環境因子が制限的になる場合、細胞分裂速度は目に見えて遅くなり始める。例えば、細胞分裂速度は、その最大値の60%未満にまで遅くなる場合がある。このフェーズは、時々、「後期指数期」又は「後期指数増殖期」として参照される。より具体的な定義においては、後期指数増殖期中の細胞分裂速度は、最大の細胞分裂速度の30%〜60%の間である。最終的に、培養は、細胞数において感知できるほどの正味の増加がない、定常期に達する。
ある実施形態においては、サイトカインに曝露されるASCは、胎盤由来、脂肪由来又はBM由来ASCである。代替的又は追加的に、ASCは、間葉系様ASCであり、「標準的な」MSCに類似するマーカーパターンを示すが、「標準的な」MSCが骨細胞に分化する条件下で、骨細胞に分化しない。他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが脂肪細胞に分化する条件下で、脂肪細胞に分化しない。更に他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが骨細胞又は脂肪細胞にそれぞれ分化する条件下で、骨細胞又は脂肪細胞のいずれにも分化しない。一実施形態においては、これらのアッセイにおいて比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養されているMSCである。他の実施形態においては、比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養され、続けて3D条件で培養されている。更に特定の実施形態においては、間葉系様ASCは、母体細胞であり、又は他の実施形態においては、胎児細胞であり、又は他の実施形態においては、胎児細胞及び母体細胞の混合物である。
ある実施形態においては、ASCは、「標準的な」MSCに類似するマーカーパターンを示すが、サイトカインに対するex vivoでの曝露に続き、「標準的な」MSCが骨細胞に分化する条件下で、骨細胞に分化しない。他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが脂肪細胞に分化する条件下で、脂肪細胞に分化しない。更に他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが骨細胞又は脂肪細胞にそれぞれ分化する条件下で、骨細胞又は脂肪細胞のいずれにも分化しない。一実施形態においては、これらのアッセイにおいて比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養されているMSCである。他の実施形態においては、比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養され、続けて3D条件で培養されている。更に特定の実施形態においては、間葉系様ASCは、母体細胞であり、又は他の実施形態においては、胎児細胞であり、又は他の実施形態においては、胎児細胞及び母体細胞の混合物である。
任意の更なる調製工程
ある実施形態においては、ASCの精製又は濃縮の更なる工程を、細胞調製プロセスの一部として行っても良い。そのような方法としては、ASC及び/又は、様々な実施形態において、間葉系間質細胞若しくは間葉系様ASCについてのマーカーを使用した細胞選別が挙げられるが、それらに限定されない。
この文脈において、細胞選別は、1以上のマーカーの発現、1以上のマーカーの発現の欠如、又はそれらの組合せに基づいて細胞を選択する、手動か、自動か等を問わない任意の手順を指す。当業者は、1以上のマーカーのデータを、選別プロセスにおいて、個別に、又は組合せて使用し得ることを理解する。
バッファー
当業者は、様々な等張なバッファーが、細胞を洗浄するため及び同様の用途のために使用し得ることを理解する。Hank's平衡塩溶液(HBSS;Life Technologies)は、使用し得る多くのバッファーの一つに過ぎない。
2D及び3D培養で有用である基礎培地の非限定的な例としては、199培地、CMRL 1415、CMRL 1969、CMRL 1066、NCTC 135、MB 75261、MAB 8713、DM 145、Williams' G、Neuman & Tytell、Higuchi、MCDB 301、MCDB 202、MCDB 501、MCDB 401、MCDB 411、MDBC 153を含む、多くの中でも、とりわけ、Eagle最小必須培地(Minimum Essential Medium)、ADC-1、LPM(ウシ血清アルブミンフリー)、F10(HAM)、F12(HAM)、DCCM1、DCCM2、RPMI 1640、BGJ培地(Fitton-Jacksonの改変あり及びなし)、Eagle基礎培地(Earle's基礎塩を添加したBME)、Dulbecco's改変Eagle培地(血清を含まないDMEM)、Yamane、IMEM-20、Glasgow改変Eagle培地(GMEM)、Leibovitz L-15培地、McCoy's 5A培地、M199培地(Earle's基礎塩(sale base)を含むM199E)、M199培地(Hank's基礎塩を含むM199H)、Eagle最小必須培地(Earle's基礎塩を含むMEM-E)、Eagle最小必須培地(Hank's基礎塩を含むMEM-H)及びEagle最小必須培地(非必須アミノ酸を含むMEM-NAA)が挙げられる。ある実施形態においては、DMEMが使用される。これら及び他の有用な培地は、とりわけGIBCO(Grand Island、N.Y.、USA)及びBiological Industries(Bet HaEmek、Israel)から入手できる。
幾つかの実施形態においては、炎症性サイトカインが添加されるか、されないかに関わりなく、更なる物質を培地に補充しても良い。そのような物質の非限定的な例は、血清であり、それは、幾つかの実施形態においては、ウシ又は他の種の胎児血清であり、それは、幾つかの実施形態においては、培地の体積の5〜15%である。ある実施形態においては、培地は、1〜5%、2〜5%、3〜5%、1〜10%、2〜10%、3〜10%、4〜15%、5〜14%、6〜14%、6〜13%、7〜13%、8〜12%、8〜13%、9〜12%、9〜11%又は9.5%〜10.5%の血清を含み、それは、ウシ胎児血清、又は他の実施形態においては、別の動物の血清であっても良い。更に他の実施形態においては、培地は血清フリーである。
代替的又は追加的に、増殖因子、ビタミン(例、アスコルビン酸)、塩(例、β-グリセロホスフェート)、ステロイド(例、デキサメタゾン)及びホルモン、例、成長ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン3、インターロイキン7、マクロファージコロニー刺激因子、c-kitリガンド/幹細胞因子、オステオプロテゲリンリガンド、インスリン、インスリン様増殖因子、表皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経増殖因子、毛様体神経栄養因子、血小板由来増殖因子及び骨形成タンパク質を、培地に補充しても良い。
更なる成分を培養培地に添加しても良いことが理解される。そのような成分は、抗生物質、抗真菌剤、アルブミン、アミノ酸、及び細胞培養についての技術分野で公知である他の成分であっても良い。
当業者は、動物の血清及び増殖因子の他のソースが、増殖培地にしばしば含まれることを理解する。幾つかのケースにおいては、動物の血清は、炎症性サイトカインを含んでいる場合があるが、一般には、それは大量には存在しない。幾つかの調製物は、存在するサイトカインの殆んど又は全てを除去するために、例えば、木炭を用いて処理されている血清を利用する。いずれにしても、本明細書における「添加されたサイトカイン」「サイトカインを含む培地」等についての言及は、通例、培地に含められる、動物の血清中に存在するサイトカインが存在することを包含しない。
ある実施形態においては、記載されたASCがヒト対象に投与されることを意図する場合、細胞及び培養培地(例、上記の培地添加物を含む)は、実質的にゼノフリー(xeno-free)、即ち、あらゆる動物の混入物質、例、マイコプラズマを含まないことも理解される。例えば、培養培地には、血清代替品、ヒト血清及び/又は合成若しくは組換えによって生成した因子を補充し得る。
本明細書に記載された様々な培地、即ち、(該当する場合)2D増殖培地、第一の3D増殖培地及び/又は第二の3D増殖培地は、培地組成に関して記載された実施形態の各々から独立して、選択しても良い。ある実施形態においては、第一と第二の3D増殖培地の間における違いは、添加されたサイトカインの存在のみである。他の実施形態においては、第一及び第二の3D増殖培地は、他の点において異なる。様々な実施形態において、バイオリアクター中での細胞の増殖に好適な任意の培地を使用しても良い。
組織のソース及び細胞の特徴
ある実施形態においては、(例、該当する場合、炎症性サイトカインを用いたインキュベーション前の)記載されたASCは、間葉系間質細胞(MSC)である。幾つかの実施形態においては、これらの細胞は、例えば胎盤、BM及び脂肪等の多くの成人組織から単離しても良い。更なる実施形態においては、細胞は、3つの基準:1.標準的な培養条件(20%ウシ胎児血清(FBS)を添加した、α最小必須培地)で維持される場合のプラスチック付着性、2.表面分子CD105、CD73及びCD90の発現、並びにCD45、CD34、CD14又はCD11b、CD79α又はCD19、及びHLA-DRの発現の欠如、3.in vitroでの骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨芽細胞への分化、に基づいて、The Mesenchymal and Tissue Stem Cell Committee of the International Society for Cellular Therapy (Dominiciら、2006i)によって定義される、ヒトMSCである。
代替的又は追加的に、記載されたASCは、「標準的な」MSCに類似するマーカーパターンを示すが、「標準的な」MSCが骨細胞に分化する条件下で、骨細胞に分化しない、間葉系様ASC細胞である。他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが脂肪細胞に分化する条件下で、脂肪細胞に分化しない。更に他の実施形態においては、細胞は、MSCに類似するマーカーパターンを示すが、MSCが骨細胞又は脂肪細胞にそれぞれ分化する条件下で、骨細胞又は脂肪細胞のいずれにも分化しない。一実施形態においては、これらのアッセイにおいて比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養されているMSCである。他の実施形態においては、比較に使用されるMSCは、BMから採取され、2D条件下で培養され、続けて3D条件で培養されている。更に特定の実施形態においては、間葉系様ASCは、母体細胞であり、又は他の実施形態においては、胎児細胞であり、又は他の実施形態においては、胎児細胞及び母体細胞の混合物である。
胎盤由来間質細胞
本明細書で他に指示がない場合、用語「胎盤」「胎盤組織」等は、胎盤の任意の部分を指す。様々な実施形態において、胎盤由来ASCは、胎児、又は他の実施形態においては、胎盤の母体領域のいずれか、又は他の実施形態においては、両方の領域から取得しても良い。母体ソースのより具体的な実施形態は、基底脱落膜及び壁側脱落膜である。胎児ソースのより具体的な実施形態は、羊膜、絨毛膜及び絨毛である。ある実施形態においては、組織試料を、生理的バッファー [例、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はHank'sバッファー]中で洗浄する。他の実施形態においては、消化酵素(以下を参照)によって組織を処理すること又は/及び物理的な破砕(その非限定的な例は、ナイロンフィルターを通して組織部分を細かくし洗浄すること、又は洗浄培地を用いてやさしくピペッティングすること(Falcon、Becton、Dickinson、San Jose、CA))によって、単細胞の懸濁液を作製し得る。幾つかの実施形態においては、組織の処理には、DNAse(その非限定的な例はMerckのベンゾナーゼ(Benzonase)である)の使用を含む。他の実施形態においては、胎盤細胞は満期又は前期(pre-term)胎盤から取得しても良い。
幾つかの実施形態においては、細胞を回収する前に、残っている血液を胎盤から除去する。これは、当業者に公知である様々な方法によって、例えば灌流によって、行っても良い。本明細書中で使用する場合、用語「灌流する」又は「灌流」は、器官又は組織の上又は中に、流体を注入又は通過させる行為を指す。ある実施形態においては、胎盤組織は、任意の哺乳動物由来であっても良い一方で、他の実施形態においては、胎盤組織はヒトのである。
胎盤組織の便利なソースは分娩後胎盤(例、誕生後10時間未満)であるが、当業者であれば胎盤組織又は細胞の様々なソースを考慮し得る。他の実施形態においては、胎盤は誕生の8時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、又は1時間以内に使用される。ある実施形態においては、胎盤は細胞の回収に先立って冷蔵で維持される。他の実施形態においては、産前胎盤組織が使用される。そのような組織は、例えば絨毛膜絨毛試料から取得しても良く、又は当該分野において公知である他の方法によって取得しても良い。ある実施形態においては、一旦、胎盤細胞を取得すれば、それらを(例、表面として構成された)接着性材料に付着させ、それにより接着性細胞を単離する。幾つかの実施形態においては、ドナーは35歳以下である一方で、他の実施形態においては、ドナーは出産適齢期の任意の女性であっても良い。
胎児細胞又は母体細胞を濃縮した胎盤細胞調製物
他の実施形態においては、記載されたASCは、母体及び胎児細胞の両方を含む胎盤調製物である。ある実施形態においては、調製物は母体細胞について濃縮されている。多くの標準的な培養条件下では、数代継代後に母体細胞が2D及び3D培養を優占する傾向がある。他の実施形態においては、記載された細胞の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、又は少なくとも99.9%は、母体由来細胞である。陰性発現を定義するための対照のアイソタイプを使用した、フローサイトメトリーによって測定されるように、CD200の発現の欠如は、胎児細胞のマーカーとして使用し得る。
母体由来及び胎児由来ASCを調製し、特徴を調べる方法は、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる国際公開第2011/064669号に記載されている。幾つかの実施形態においては、母体及び胎児胎盤ASCは、遺伝子型及び/又は核型(例、FISH)分析に基づいて特定される。例えば、雄性胚の胎盤由来ASCは、核型分析(即ち、XX細胞は母体である一方、XY細胞は胎児である)に基づいて、胎児細胞と母体細胞に分離し得る。幾つかの実施形態においては、胎盤の胎児部分に由来するASC(例、絨毛膜絨毛からなる又はそれを含む)はCD200を発現する。他の実施形態においては、陰性発現を定義するための対照のアイソタイプを使用した、フローサイトメトリーによって測定されるように、母体胎盤細胞調製物由来のASCの3.5%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下はCD200を発現する。
他の実施形態においては、調製物は胎児細胞について濃縮されている。より具体的な実施形態においては、混合物は少なくとも70%胎児細胞を含む。より具体的な実施形態においては、細胞の少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は胎児細胞である。陰性発現を定義するための対照のアイソタイプを使用した、フローサイトメトリーによって測定されるように、CD200の発現は、幾つかの条件下で、胎児細胞のマーカーとして使用し得る。更に他の実施形態においては、記載された細胞の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、又は少なくとも99.9%は胎児細胞である。
更に他の実施形態においては、調製物は、胎児細胞と母体細胞の混合物である胎盤細胞集団である。より具体的な実施形態においては、混合物は20〜80%胎児細胞;30〜80%胎児細胞;40〜80%胎児細胞;50〜80%胎児細胞;60〜80%胎児細胞;20〜90%胎児細胞;30〜90%胎児細胞;40〜90%胎児細胞;50〜90%胎児細胞;60〜90%胎児細胞;20〜80%母体細胞;30〜80%母体細胞;40〜80%母体細胞;50〜80%母体細胞;60〜80%母体細胞;20〜90%母体細胞;30〜90%母体細胞;40〜90%母体細胞;50〜90%母体細胞;又は60〜90%母体細胞を含む。
脂肪由来間質細胞
本明細書において使用される場合、語句「脂肪組織」は、脂肪(fat)細胞(脂肪細胞)を含む結合組織を指す。様々な実施形態において、脂肪組織由来ASCは、当業者に公知である様々な方法によって、例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許番号第6,153,432号に記載されている方法によって、抽出しても良い。他の実施形態においては、脂肪組織は大網/内臓、乳腺、性腺又は他の脂肪組織の部位に由来しても良い。幾つかの実施形態においては、脂肪は脂肪吸引によって単離し得る。
他の実施形態においては、ASCは消化酵素(その非限定的な例はコラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼ、ヒアルロニダーゼ又はDNAseである);及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いて、組織を処理することによって、脂肪組織に由来しても良い。幾つかの実施形態においては、細胞を、例えば、ナイロン又はチーズクロスメッシュフィルターを使用した物理的な破砕に供しても良い。他の実施形態においては、細胞は、直接、培地中、又はFicollTM、PercollTM若しくは他の粒子勾配(参照により本明細書に取り込まれる米国特許番号第7,078,230号を参照)で、分画遠心分離に供される。
他のソース由来の間質細胞
様々な実施形態において、ASCは、それらの全てがASCを含むことが知られる、例えば、胎盤;脂肪組織;BM;末梢血;臍帯血;滑液;滑膜;脾臓;胸腺;粘膜(例えば鼻粘膜);輪部間質(limbal stroma);靱帯、例えば歯周靭帯;頭皮;毛嚢、睾丸;胚性卵黄嚢;及び羊水に由来しても良い。ある実施形態においては、ASCのソースは、非胎児ソース、例えば、胎盤由来の母体細胞、又は小児若しくは成人ドナー由来の体組織、例えば、脂肪組織、BM、末梢血、臍帯血、滑液、滑膜、及び例えば歯周靭帯等の靱帯である。幾つかの実施形態においては、ASCはヒトASCである一方で、他の実施形態においては、それらは動物のASCであっても良い。特定の実施形態においては、ASCは胎盤組織由来であるか、又は脂肪組織由来である。
特徴の特定
上述のように、幾つかの実施形態においては、記載されたASCは、「標準的な」間葉系幹細胞が骨細胞に分化する条件下で、骨細胞に分化しない。幾つかの実施形態においては、条件は、ビトロネクチン及びコラーゲンでコートしたプレート中における、0.1マイクロモーラー(mcM)デキサメタゾン、0.2 mMアスコルビン酸及び10 mM グリセロール-2-リン酸を含む溶液を用いた、17日間のインキュベーションである。更に他の実施形態においては、条件は、ビトロネクチン及びコラーゲンでコートしたプレート中における、10 mcMデキサメタゾン、0.2 mMアスコルビン酸、10 mMグリセロール-2-リン酸及び10 nMビタミンDを含む溶液を用いた、26日間のインキュベーションである。典型的には、先述の溶液は、当業者によって理解されるように、例えばDMEM+10%血清等の細胞培養培地を含む。
他の実施形態においては、記載されたASCは、間葉系幹細胞が脂肪細胞に分化する条件下で、脂肪細胞に分化しない。幾つかの実施形態においては、条件は、脂肪生成誘導培地、即ち、1、3、5、9、11、13、17、19及び21日目に添加される、1 mcMデキサメタゾン、0.5 mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、10 mcg/mlインスリン及び100 mcMインドメタシンを含む溶液の、合計で25日間のインキュベーションである一方で、該培地は、7及び15日目に、脂肪生成維持培地、即ち、10 mcg/mlインスリンを含む溶液で置換される。更に他の実施形態においては、1 mcMデキサメタゾン、0.5 mM IBMX、10 mcg/mlインスリン及び200 mcMインドメタシンを含む改変脂肪生成誘導培地が使用され、インキュベーションは合計26日間である。典型的には、先述の溶液は、当業者によって理解されるように、例えばDMEM+10%血清等の細胞培養培地を含む。
他の実施形態においては、記載されたASCは、2D条件下で培養された場合に紡錘形を示す。
代替的に又は追加的に、ASCは、MSC又は間葉系様間質細胞に特徴的な、マーカー(例、表面マーカー)又は一群のマーカーを発現しても良い。表面マーカーの例としては、CD105(UniProtKBアクセッション番号:P17813)、CD29(UniProtKBアクセッション番号:P05556)、CD44(UniProtKBアクセッション番号:P16070)、CD73(UniProtKBアクセッション番号:P21589)及びCD90(UniProtKBアクセッション番号:P04216)が挙げられるが、それらに限定されない。間質細胞で欠いていると予想されるマーカーの例は、CD3(UniProtKBアクセッション番号P09693[γ鎖]、P04234[δ鎖]、P07766[ε鎖]及びP20963[ζ鎖])、CD4(UniProtKBアクセッション番号:P01730)、CD34(UniProtKBアクセッション番号:P28906)、CD45(UniProtKBアクセッション番号:P08575)、CD80(UniProtKBアクセッション番号:P33681)、CD19(UniProtKBアクセッション番号:P15391)、CD5(UniProtKBアクセッション番号:P06127)、CD20(UniProtKBアクセッション番号:P11836)、CD11B(UniProtKBアクセッション番号:P11215)、CD14(UniProtKBアクセッション番号:P08571)、CD79-α(UniProtKBアクセッション番号:B5QTD1)、並びにHLA-DR(UniProtKBアクセッション番号P04233[γ鎖]、P01903[α鎖]及びP01911[β鎖])である。別段の記載がない場合、全UniProtKB入力内容は、2014年7月7日に接続された。当業者は、例えばCD3及びHLA-DR等の複合抗原の存在を、例えば、それに限定されないが本明細書に記載されたもの等の、成分部分のいずれかを認識する抗体によって検出しても良いことを理解する。
ある実施形態においては、記載されたASCの90%超はCD29、CD90及びCD54について陽性である。他の実施形態においては、記載されたASCの90%超はCD29、CD90及びCD54について陽性であり、記載された細胞の1%未満はCD14、CD19、CD31、CD34、CD39、CD45、HLA-DR及びGlyAについて陽性である。他の実施形態においては、記載された細胞の85%超はCD29、CD73、CD90及びCD105について陽性であり;記載された細胞の65%超はCD49について陽性である。更に他の実施形態においては、記載された細胞の1%未満はCD14、CD19、CD31、CD34、CD39、CD45、HLA-DR及びGlyAについて陽性であり;細胞の少なくとも30%はCD200について陽性であり;細胞の6%未満はGlyAについて陽性であり;細胞の20%未満はSSEA4について陽性である。より具体的な実施形態においては、記載された細胞の90%超はCD29、CD90及びCD54について陽性であり;細胞の85%超はCD73及びCD105について陽性であり;細胞の65%超はCD49について陽性である。更に他の実施形態においては、(a)記載された細胞の90%超はCD29、CD90及びCD54について陽性であり;(b)細胞の85%超はCD73及びCD105について陽性であり;(c)細胞の65%超はCD49について陽性であり;(d)細胞の1%未満はCD14、CD19、CD31、CD34、CD39、CD45、HLA-DR、GlyAについて陽性であり;(e)細胞の少なくとも30%はCD200について陽性であり;(f)細胞の6%未満はGlyAについて陽性であり;(g)細胞の50%未満はCD56(NCAM1;Uniprotアクセッション番号:P13591 [2017年2月12日に接続された])について陽性であり;及び/又は(h)細胞の20%未満はSSEA4について陽性である。代替的には、細胞の50%超はCD56について陽性である。直前で述べた特徴(a)〜(h)の各組合せは別の実施形態を表す。他の実施形態においては、炎症性サイトカインを用いてインキュベートされている記載されたASCは、先述のマーカーを発現する特徴を示す。特定の細胞表面マーカー、分化能及びそれらの欠如、並びにそれらの組合せを含む、サイトカイン刺激前、刺激後又は刺激なしのASCの様々な実施形態は、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、Eytan Abrahamらの名義のPCT/IB2016/053310号に記載されている。
ASCによる因子、例、c-kitリガンド/幹細胞因子(SCF;Uniprotアクセッション番号P21583);受容体型チロシン-タンパク質キナーゼFLT3(Flt-3;Uniprotアクセッション番号P36888);アルデヒドデヒドロゲナーゼX(ALDH X;Uniprotアクセッション番号P30837);インターロイキン-6(IL-6;UniProt番号P05231);真核翻訳伸長因子2(EEEF2);レティキュロカルビン3;EFハンドカルシウム結合ドメイン(RCN2);カルポニン1、塩基性、平滑筋(CNN1);血管内皮増殖因子(VEGF);MCP-1、MCP2及びMCP-3(単球走化性物質タンパク質1、2及び3/それぞれのUniProt番号P13500、P80075及びP80098);GM-CSF;並びに/又はRANTES(C-Cモチーフケモカイン5;UniProt番号P13501)の発現又は分泌に関する、PCT/IB2016/053310号もまた、(各タンパク質について必要に応じて)参照によって取り込まれる。ある実施形態においては、本明細書において言及されるASCは、例えばSCF、Flt-3、ALDH X、IL-6、EEEF2、レティキュロカルビン3、RCN2、CNN1、VEGF、MCP-1、MCP2、MCP-3、GM-CSF、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子;UniProt番号P09919)及び/又はHGF(肝細胞増殖因子;UniProt番号P14210)等の因子を上昇したレベルで分泌する。ある実施形態においては、ASCは、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、80倍、100倍、150倍、200倍、300倍、500倍又は1000倍のレベルの、1、2、3、4、5、6、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上又は6以上の先述の因子を分泌する。これらの因子の各々、及びそれらの各組合せは、別の実施形態を表す。各レベルの増加倍数は、別の実施形態を表し、これらの実施形態は、因子及びそれらの組合せと自由に組み合わせても良い。各因子、それらの組合せ、及び増加倍数のレベルは、特定の細胞表面マーカー、分化能及びそれらの欠如、並びにそれらの組合せと自由に組み合わせても良い。
他の実施形態においては、細胞は、ビトロネクチン及びコラーゲンでコートしたプレート中における、0.1 mcMデキサメタゾン、0.2 mMアスコルビン酸及び10 mMグリセロール-2-リン酸を含む溶液を用いた、17日間のインキュベーション後に骨細胞に分化しない。更に他の実施形態においては、細胞は、骨細胞への分化の欠如を示し、先述の細胞表面マーカーパターン(patters)の1以上もまた有する。
他の実施形態においては、細胞は、1、3、5、9、11、13、17、19及び21日目における、脂肪生成誘導培地、即ち、1 mcMデキサメタゾン、0.5 mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、10 mcg/mlインスリン及び100 mcMインドメタシンを含む溶液中での、合計25日間のインキュベーション;並びに7及び15日目における、脂肪生成維持培地、即ち、10 mcg/mlインスリンを含む溶液を含む培地の置換、インキュベーション後、脂肪細胞に分化しない。更に他の実施形態においては、細胞は、脂肪細胞への分化の欠如を示し、先述の細胞表面マーカーパターン(patters)の1以上もまた有する。
より具体的な実施形態においては、ASCの50%超、他の実施形態においては、55%超、他の実施形態においては、60%超、他の実施形態においては、65%超、他の実施形態においては、70%超、他の実施形態においては、75%超、他の実施形態においては、80%超、他の実施形態においては、85%超、他の実施形態においては、90%超、他の実施形態においては、95%超、他の実施形態においては、96%超、他の実施形態においては、97%超、他の実施形態においては、98%超、他の実施形態においては、99%超は、CD73、CD90、CD29及びCD105から選択されるマーカー、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの2以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの3以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの4つ全てを組合せて発現する。他の実施形態においては、炎症性サイトカインを用いてインキュベートされているASCは、先述のマーカーを発現する特徴を示す。
幾つかの実施形態によれば、ASCは、CD200を発現するか、又は他の実施形態においては、その発現を欠く。更に他の実施形態においては、ASCの30%未満、25%、20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、又は2%、1%、又は0.5%未満が、CD200を発現する。更に他の実施形態においては、ASCの30%超、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%超が、CD200を発現する。他の実施形態においては、炎症性サイトカインを用いてインキュベートされているASCは、先述のマーカーを発現する特徴を示す。
幾つかの実施形態によれば、ASCの50%超、他の実施形態においては、55%超、他の実施形態においては、60%超、他の実施形態においては、65%超、他の実施形態においては、70%超、他の実施形態においては、75%超、他の実施形態においては、80%超、他の実施形態においては、85%超、他の実施形態においては、90%超、他の実施形態においては、95%超、他の実施形態においては、96%超、他の実施形態においては、97%超、他の実施形態においては、98%超、他の実施形態においては、99%超は、CD3、CD4、CD45、CD80、HLA-DR、CD11b、CD14、CD19、CD34及びCD79-αから選択されるマーカーを発現しないか、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの2以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの3以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの4以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの5以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの6以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの7以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの8以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの9以上、又は他の実施形態においては、これらのマーカーの10全てを発現しない。他の実施形態においては、炎症性サイトカインを用いてインキュベートされているASCは、先述のマーカーを発現する特徴を示す。
ある実施形態においては、記載された細胞は、ある実施形態において、抗腫瘍因子であっても良い、1以上の治療因子を用いてトランスフェクトされている。他の実施形態においては、細胞は、何ら外来遺伝物質を用いてトランスフェクトされている必要はない。
更に他の実施形態においては、ASCは、同種異系であっても良く、又は他の実施形態においては、細胞は自己であっても良い。他の実施形態においては、細胞は新鮮であっても良く、又は他の実施形態においては、凍結(例、凍結保存)されても良い。
記載された治療適応のために、記載された方法によって生成される馴化培地(CM)の使用、他の実施形態においては、記載されたCMを含む医薬組成物も提供される。当業者は、ある実施形態においては、CMを調製するために、プラグフロー型バイオリアクター及び固定床(stationary-bed)バイオリアクター (Kompier Rら、Use of a stationary bed reactor and serum-free medium for the production of recombinant proteins in insect cells. Enzyme Microb Technol. 1991. 13(10):822〜7)を含むが、それらに限定されない、様々なバイオリアクターを使用しても良いことを理解する。CMを含む医薬組成物は、培養方法工程、細胞の特徴又は治療パラメーターについて記載された実施形態のいずれかと自由に組み合わせても良い。
記載されたCMの各実施形態は、治療方法又は医薬組成物に関連する各実施形態と自由に組み合わせても良いことが明らかにされる。
エキソソーム及びその使用
本明細書においては、記載された治療適応のために、細胞外小胞、例、記載されたASCによって分泌されるエキソソームの使用も提供される。エキソソーム及び他の細胞外小胞を単離する方法は、当該分野において周知であり、例えば、Clayton Aら、2001;Mathias RAら、2009;及びCrescitelli Rら、2013に記載されているように、例えば、免疫磁気単離が挙げられる。
幾つかの実施形態においては、細胞外小胞は、ASCがインキュベートされている3Dバイオリアクターから回収される。幾つかの実施形態においては、3Dバイオリアクター中での培養物は、炎症性サイトカインを含む。他の実施形態においては、3D培養は標準的な培地を利用する。代替的又は追加的に、ASCは、胎盤由来ASCであり、より具体的な実施形態においては、胎児細胞と母体細胞の混合物であっても良く、更なる実施形態においては、胎児細胞又は母体細胞について濃縮されても良い(by)。
代替的には、細胞は、3D培養に続いて、又は他の実施形態においては、2D培養に続いて凍結保存され、次いで、解凍され、その後にエキソソーム又は他の細胞外小胞が単離される。幾つかの実施形態においては、解凍後、細胞を2D培養で培養し、そこから細胞外小胞が回収される。ある実施形態においては、2D培養は、炎症性サイトカインの存在下で行われ、それは、様々な実施形態において、本明細書で言及されるサイトカインのいずれかの存在下であり得る。他の実施形態においては、2D培養は標準培地を利用する。代替的又は追加的に、ASCは、胎盤由来ASCであり、より具体的な実施形態においては、胎児細胞と母体細胞の混合物であっても良く、更なる実施形態においては、胎児細胞又は母体細胞中で濃縮されても良い(by)。
他の実施形態においては、がん、腫瘍又は新生物の治療、予防又は増殖の阻害方法であって、記載されたエキソソームを含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、方法が提供される。がん、腫瘍又は新生物を治療、予防又はその増殖を阻害するための組成物であって、記載されたエキソソームを含む組成物も提供される。更に、がん、腫瘍又は新生物を治療、予防又はその増殖を阻害するための医薬品の調製における、記載されたエキソソームの使用が提供される。
記載されたエキソソームの各実施形態は、治療方法又は医薬組成物に関連する各実施形態と自由に組合せても良いことは明らかにされる。
医薬組成物
細胞、それらに由来するCM、又はそれらに由来するエキソソームは、1以上の医薬的に許容される担体を更に含む医薬組成物の一部として投与され得る。以下において、用語「医薬的に許容される担体」は、対象に重篤な刺激を引き起こさず、投与された細胞の生物学的活性及び特性を無効にしない、担体又は希釈剤を指す。担体の限定されない例は、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョン及び有機溶媒と水との混合物である。幾つかの実施形態においては、医薬的な担体は生理食塩水の水溶液である。他の実施形態においては、組成物は、賦形剤、例、医薬的に許容される賦形剤を更に含む。ある実施形態においては、組成物は、がん、新生物、腫瘍及び/若しくは悪性腫瘍の治療に;又は他の実施形態においては、がん及び/若しくは新生物の転移の抑制に処方される。
更なる実施形態においては、賦形剤は、凍結及び氷の形成の有害な影響から細胞を保護する剤である、浸透圧保護剤又は凍結保護剤であり、幾つかの実施形態においては、浸透性化合物であっても良く、その非限定的な例はジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、ホルムアミド、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、アセトアミド、プロピレングリコール及びアドニトールであり;又は他の実施形態においては、非浸透性化合物であっても良く、その非限定的な例はラクトース、ラフィノース、スクロース、トレハロース及びd-マンニトールである。他の実施形態においては、浸透性凍結保護剤及び非浸透性凍結保護剤の両方が存在する。他の実施形態においては、賦形剤は担体タンパク質であり、その非限定的な例はアルブミンである。更に他の実施形態においては、浸透圧保護剤及び担体タンパク質の両方が存在し;ある実施形態においては、浸透圧保護剤及び担体タンパク質は同じ化合物であっても良い。代替的又は追加的に、組成物は凍結される。細胞は本明細書において言及されるASCの任意の実施形態であっても良く、その各々は別の実施形態と考えられる。
幾つかのケースにおいては、対象に投与される場合、非自己細胞は免疫反応を誘導する場合があるので、非自己細胞の拒絶の可能性を低減するために、本明細書において提供される方法に従って、幾つかのアプローチを利用しても良い。幾つかの実施形態においては、これらのアプローチは、移植前に、レシピエントの免疫系を抑制するか、又は非自己細胞を免疫隔離する半透過性の膜に封入するかのいずれかを含む。幾つかの実施形態においては、このことを、ASC自身が宿主に生着するかどうかに関わらずに行っても良い。様々な実施形態において、例えば、細胞の大部分は、移植後3日間超、4日間超、5日間超、6日間超、7日間超、8日間超、9日間超、10日間超、又は14日間超で生存しない場合がある。
本明細書において提供される方法及び組成物において使用しても良い免疫抑制剤の例としては、メトトレキセート(methotrexate)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、シクロスポリン(cyclosporine)、シクロスポリンA(cyclosporine A)、クロロキン(chloroquine)、ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)、スルファサラジン(sulfasalazine)(スルファサラゾピリン(sulphasalazopyrine))、金塩(gold salts)、D-ペニシラミン(D-penicillamine)、レフルノミド(leflunomide)、アザチオプリン(azathioprine)、アナキンラ(anakinra)、インフリキシマブ(infliximab)(REMICADE)、エタネルセプト(etanercept)、TNF-アルファブロッカー、1以上の炎症性サイトカインを拮抗する生物学的な剤、及び非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)が挙げられるが、それらに限定されない。NSAIDsの例としては、アセチルサリチル酸(acetyl salicylic acid)、サリチル酸コリンマグネシウム(choline magnesium salicylate)、ジフルニサル(diflunisal)、サリチル酸マグネシウム(magnesium salicylate)、サルサレート(salsalate)、サリチル酸ナトリウム(sodium salicylate)、ジクロフェナク(diclofenac)、エトドラク(etodolac)、フェノプロフェン(fenoprofen)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、インドメタシン(indomethacin)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ケトロラク(ketorolac)、メクロフェナメート(meclofenamate)、ナプロキセン(naproxen)、ナブメトン(nabumetone)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、ピロキシカム(piroxicam)、スリンダック(sulindac)、トルメチン(tolmetin)、アセトアミノフェン(acetaminophen)、イブプロフェン(ibuprofen)、Cox-2阻害剤(Cox-2 inhibitors)及びトラマドール(tramadol)が挙げられるが、それらに限定されない。
様々な実施形態において、全身投与の様式で医薬組成物を投与しても良い。代替的には、医薬組成物を、局所的に、例、非限定的な実施形態においては、例えば腫瘍内投与等の、患者の組織領域への医薬組成物の直接的な注射を介して投与しても良い。他の実施形態においては、細胞は、筋肉内、静脈内(IV)、皮下(SC)、骨髄内経路によって(例、骨髄内注入によって)、又は腹腔内(IP)に投与され、その各々は別の実施形態と考えられる。更に他の実施形態においては、医薬組成物は、例えば、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる、Eleuterio Lombardo及びDirk Buscherの名義の米国特許番号第8,679,834号に記載されているように、リンパ管内に投与される。
他の実施形態においては、注射のために、記載された細胞を、水溶液、例、任意選択で、凍結保存剤を含む培地と組合せた、例えばHank's溶液、Ringer's溶液又は生理的塩バッファー等の生理的に適合するバッファー中で製剤化しても良い。
治療される新生物の深刻度及び応答性に応じて、投薬は単回、又は他の実施形態においては、2、3、4、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、4超、又は複数回の投与であり得、数日〜数週続く治療期間を伴い、又はそれは、他の実施形態においては、疾患の状態の改善が達成されるまでである。幾つかの実施形態においては、投薬の間隔は、1時間と10日の間であり;換言すれば、投薬は1時間以上及び10日以下の期間によって隔てられる。他の実施形態においては、投薬の間隔は、2時間と10日の間;3時間と10日の間;4時間と10日の間;6時間と10日の間;8時間と10日の間;12時間と10日の間;24時間と10日の間;1〜24時間の間;2〜24時間の間;3〜24時間の間;4〜24時間の間;6〜24時間の間;8〜24時間の間;12〜24時間の間;1〜5日の間;1〜10日の間;1〜15日の間;1〜20日の間;2〜5日の間;2〜10日の間;2〜15日の間;2〜20日の間;2〜30日の間;3〜10日の間;3〜15日の間;3〜20日の間;3〜30日の間;又は5〜30日の間である。
ある実施形態においては、投与に続いて、細胞の大部分、他の実施形態においては、細胞の60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、又は99%超は、投与後1か月でもはや対象内から検出できない。
ある実施形態においては、適合可能な医薬的な担体中で製剤化される、記載された調製物を含む組成物が調製され、好適な容器内に置かれ、表示された状態の治療、例えば、抗がん治療に関するラベルが付される。容器はまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態で、容器に付随する通知によって適合されても良く、通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物用投与についての機関の承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベルのもの、又は承認された製品挿入物(approved product insert)のものであっても良い。
他の実施形態においては、記載されたASCは、製造品として好適にパッケージされ得る医薬組成物として、好適に製剤化される。そのような製造品は、本明細書に記載されるように、抗がん治療、又は抗転移治療における使用に関するラベルを含む、包装材料を含む。
幾つかの実施形態においては、単独で使用される、記載されたASCの典型的な用量は、ヒト対象については、投与毎に、約1000万〜約5億細胞の範囲である。例えば、幾つかの実施形態においては、用量は、1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、1億2500万、1億5000万、1億7500万、2億、2億2500万、2億5000万、2億7500万、3億、3億2500万、3億5000万、3億7500万、4億、4億2500万、4億5000万、4億7500万、若しくは5億細胞、又はこれらの数字の間の任意の量であり得る。約1000万〜約5億細胞、約1億〜約4億細胞、約1億5000万〜約3億細胞を含む、ASCの範囲が使用され得ることが更に理解される。従って、治療方法であって、治療又は予防有効量のASCを対象に投与することを含み、対象に投与される用量が、1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、6000万、7000万、8000万、9000万、1億、1億2500万、1億5000万、1億7500万、2億、2億2500万、2億5000万、2億7500万、3億、3億2500万、3億5000万、3億7500万、4億、4億2500万、4億5000万、4億7500万若しくは5億細胞、又は、他の実施形態においては、1億5000万〜3億細胞の間である、方法が本明細書において開示される。様々な実施形態において、ASC、ASCを含む組成物及び/又はASCを使用して製造される医薬品は、一連の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、1〜10、1〜15、1〜20、2〜10、2〜15、2〜20、3〜20、4〜20、5〜20、5〜25、5〜30、5〜40若しくは5〜50回、又はそれら超の注射で投与され得る。
更に他の実施形態においては、本明細書に記載された医薬品の調製における、記載されたASCを含む、バイオリアクターの使用が提供される。幾つかの実施形態においては、バイオリアクターは、3D基材;及び/又は合成培地;及び/又は炎症性サイトカインである合成材料を更に含む。細胞は、本明細書において言及されるASCの任意の実施形態であっても良く、それらは各々、別の実施形態と考えられる。
記載されたASCの各実施形態は、治療方法又は医薬組成物に関連する各実施形態と自由に組み合わせても良いことは明らかにされる。
更に他の実施形態においては、記載されたCMは、記載された治療方法のいずれかにおいて使用される。馴化培地の各実施形態は、治療方法又は医薬組成物に関連する各実施形態と自由に組み合わせても良い。
ある実施形態においては、記載された方法及び組成物の一部として、更なる治療剤又は細胞を、対象に投与しても良い。
ある実施形態においては、追加的な治療剤は化学療法剤である。より具体的な実施形態においては、化学療法剤は、例えばナイトロジェン・マスタード(例、クロラムブシル(chlorambucil)、クロルメチン(chlormethine)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、イフォスファミド(ifosfamide)及びメルファラン(melphalan))、ニトロソウレア(例、カルムスチン(carmustine)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)及びストレプトゾシン(streptozocin))、プラチナ製剤(即ち、アルキル化様剤)(例、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、BBR3464及びサトラプラチン(satraplatin))、ブスルファン(busulfan)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、テモゾロミド(temozolomide)、チオテパ(thioTEPA)、トレオスルファン(treosulfan)及びウラムスチン(uramustine)等のアルキル化剤並びにアルキル化様剤;例えば葉酸等の代謝拮抗物質(例、アミノプテリン(aminopterin)、メトトレキセート(methotrexate)、ペメトレキセド(pemetrexed)及びラルチトレキセド(raltitrexed));例えばクラドリビン(cladribine)、クロファラビン(clofarabine)、フルダラビン(fludarabine)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、ペントスタチン(pentostatin)及びチオグアニン(thioguanine)等のプリン;例えばカペシタビン(capecitabine)、シタラビン(cytarabine)、フルオロウラシル(fluorouracil)、フロクスウリジン(floxuridine)及びゲムシタビン(gemcitabine)等のピリミジン;例えばタキサン(例、ドセタキセル(docetaxel)、パクリタキセル(paclitaxel)、カバジタキセル(cabazitaxel))並びにビンカ(例、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)及びビノレルビン(vinorelbine))等の紡錘体毒/有糸分裂阻害剤;例えばアントラサイクリン(such anthracyclines)(例、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ピクサントロン(pixantrone)及びバルルビシン(valrubicin))、ストレプトマイセスの様々な種によって天然で生成される化合物(例、アクチノマイシン(actinomycin)、ブレオマイシン(bleomycin)、マイトマイシン(mitomycin)、プリカマイシン(plicamycin))並びにヒドロキシウレア(hydroxyurea)等の細胞毒性/抗腫瘍抗生物質;例えばカンプトテカ(例、カンプトテシン(camptothecin)、トポテカン(topotecan)及びイリノテカン(irinotecan))並びにポドフィルム(例、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide))等のトポイソメラーゼ阻害剤;例えば、抗受容体チロシンキナーゼ(例、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、トラスツズマブ(trastuzumab))、抗CD20 (例、リツキシマブ(rituximab)及びトシツモマブ(tositumomab))、並びに、その他のもの、例えば、アレムツズマブ(alemtuzumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)及びゲムツズマブ(gemtuzumab)等のがん免疫療法用のモノクローナル抗体;例えばアミノレブリン酸(aminolevulinic acid)、メチルアミノレブリン酸塩(methylaminolevulinate)、ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium)及びベルテポルフィン(verteporfin)等の光線感作物質;例えばセディラニブ(cediranib)、ダサチニブ(dasatinib)、エルロチニブ(erlotinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、イマチニブ(imatinib)、ラパチニブ(lapatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、ソラフェニブ(sorafenib)、スニチニブ(sunitinib)及びバンデタニブ(vandetanib)等のチロシンキナーゼ阻害剤;セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(例、AbI阻害剤、c-Kit阻害剤、インスリン受容体ファミリーメンバー(複数可)阻害剤、EGF受容体ファミリーメンバー(複数可)阻害剤、Akt阻害剤、mTOR阻害剤[例、ラパマイシン又はその類似体、mTORC1及び/又はmTORC2の直接の阻害剤]、Rafキナーゼファミリー阻害剤、例えばPI3キナーゼ等のホスファチジルイノシトール(PI)キナーゼ阻害剤、PIキナーゼ様キナーゼファミリーメンバー阻害剤、サイクリン依存性キナーゼファミリーメンバー阻害剤及びオーロラキナーゼファミリー阻害剤)、増殖因子受容体アンタゴニスト、レチノイド(例、アリトレチノイン(alitretinoin)及びトレチノイン(tretinoin))、アルテレタミン(altretamine)、アムサクリン(amsacrine)、アナグレリド(anagrelide)、三酸化二ヒ素(arsenic trioxide)、アスパラギナーゼ(asparaginase)(例、ペガススパルガーゼ(pegaspargase))、ベキサロテン(bexarotene)、ボルテゾミブ(bortezomib)、デニロイキンジフチトックス(denileukin diftitox)、エストラムスチン(estramustine)、イクサベピロン(ixabepilone)、マソプロコール(masoprocol)、ミトタン(mitotane)、及びテストラクトン(testolactone)、Hsp90阻害剤、プロテアソーム阻害剤、HDAC阻害剤、血管新生阻害剤、例、例えば、ベバシズマブ(bevacizumab)又はVEGF-Trap、マトリクス・メタロプロテイナーゼ阻害剤及びプロアポトーシス剤(例、アポトーシス誘導物質)等の抗血管内皮増殖因子剤から選択しても良い。他の実施形態においては、追加的な治療剤は三重陰性乳がんに対する活性を有する。そのような剤の非限定的な例は、アントラサイクリン;パクリタキセル;ドセタキセル;エリブリン(eribulin);イクサベピロン;カペシタビン;ティガツズマブ(Tigatuzumab);3-(フェニルエチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン誘導体 (Zhang CHら);テリフルノミド(Teriflunomide);カルボプラチン、CB(2) カンナビノイドo-キノン化合物 (Moralesら);アラントラクトン(alantolactone);カバジタキセル;及びデュタステリド(dutasteride)である。
対象
ある実施形態においては、記載された方法及び組成物によって治療される対象はヒトである。他の実施形態においては、対象は動物であっても良い。代替的又は追加的に、対象は、がん、新生物及び/又は腫瘍を有する。更に他の実施形態においては、対象は転移のリスクがある原発性腫瘍を有する。より具体的な実施形態においては、原発性腫瘍は手術可能であっても良く、又は他の実施形態においては、手術不可能であっても良い。
本明細書において開示される方法の実施において使用し得る薬剤に関する(that are drawn to reagents)キット及び製品も本明細書において開示される。キット及び製品は、本明細書において検討される、又は開示された方法の実施において必要であるか若しくは役立つことが理解される、ASCを含む、任意の薬剤若しくは薬剤の組合せが挙げられ得る。別の態様においては、キット及び製品は、例えば、腫瘍、がん若しくは新生物の治療に関する;又はそれらの転移の抑制に関する、ラベル、説明書及び包装材料を含んでも良い。
本発明の更なる目的、利点及び新規な特徴は、限定されることを意図しない以下の実施例の試験によって当業者に明らかとなる。追加的には、上記において記載され、以下の特許請求の範囲の節で主張される、本発明の様々な実施形態及び態様の各々は、以下の実施例において実験的な裏付けがあることが見出される。
非限定的な様式で、ある実施形態を説明する上の記載と一緒に、これより以下の実施例が参照される。
実施例1:接着性間質細胞の生成及び培養
細胞生成物を製造するプロセスは、2つの段階からなる:
段階1 中間細胞ストック(ICS)の生成は以下の工程を含む:
1.胎盤からのASCの抽出
2.最大12回まで集団を倍化するための2次元(2D)細胞増殖
3.細胞の濃縮、製剤化、充填及び凍結保存
段階2 ICSの解凍及び更なる培養は、以下の工程を含む:
1.最大8回まで解凍したICSを更に倍化する2D細胞増殖
2.最大10回まで更に倍化するバイオリアクター(複数可)中での3次元(3D)細胞増殖及びバイオリアクター(複数可)からの回収
3.下流の処理:細胞の濃縮、洗浄、製剤化、充填及び凍結保存。
該手順には、増殖培地の無菌性及び混入について定期的にテストすることが含まれる。
参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、Pluristem社の国際公開第2016/151476号の実施例1において更なる詳細が提供される。
実施例2:骨細胞及び脂肪分化アッセイ
方法
骨髄接着性細胞−BM接着性細胞は、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、Esther Lukasiewicz Hagai及びRachel Ofirの国際公開第2016/098061号に記載されるように取得した。骨生成及び脂肪生成アッセイは、国際公開第2016/098061号に記載されるように行った。
結果
骨細胞誘導 陽性アリザリンレッド染色によって示されたように、骨形成誘導培地中でのBM由来接着性細胞のインキュベーションによって、BM細胞の50%超が分化した。反対に、いずれの胎盤由来細胞も骨形成分化の兆候を示さなかった。
次に、ビタミンD及びより高い濃度のデキサメタゾンを含む改変骨形成培地を使用した。BM細胞の50%超が骨細胞への分化を経た一方で、いずれの胎盤由来細胞も骨形成分化の兆候を示さなかった。
脂肪細胞誘導 陽性オイルレッド染色及び典型的な形態的変化(例、細胞質中の油滴の蓄積)によって示されたように、脂肪細胞誘導培地中での胎盤由来又はBM由来接着性細胞の脂肪細胞分化で、BM由来細胞の50%超が分化した。それに対して、いずれの胎盤由来細胞も脂肪細胞に分化しなかった。
次に、より高い濃度のインドメタシンを含む改変培地を使用した。BM由来細胞の50%超が脂肪細胞への分化を経た。それに対して、いずれの胎盤由来細胞も脂肪細胞への典型的な形態的変化を示さなかった。
実施例3:接着性間質細胞のマーカー発現
方法(実施例3〜4)
参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる、国際公開第2016/098061号に記載されているように、膜マーカーのFACS分析を行った。
結果
単離された細胞上での細胞マーカーの発現−モノクローナル抗体を使用して、単離された細胞によって発現される表面抗原を調べた。細胞は、CD73、CD29及びCD105を発現し、CD34、CD45、CD19、CD14及びHLA-DRのマーカーを発現しなかった。より具体的には、細胞の90%超が全ての陽性マーカーを発現し、細胞の3%未満が全ての陰性マーカーを発現した。
更に、2つの内皮マーカーであるCD31及びKDRについての陰性染色によって示されるように、細胞は内皮マーカーを発現しなかった。しかしながら、線維芽細胞に典型的なマーカーであるD7-fibの発現は明白であった。
実施例4:ASCの低免疫原性
実施例1に記載したようにASCを調製し、それらの共刺激性分子の発現を測定した。FACS分析によって、細胞膜上にCD80、CD86及びCD40を欠いていることが示された(図2A〜C)。更に、HLA A/B/Cについての染色によって検出されたように、細胞はHLAクラスI分子を低レベルで発現した(図2D)。ASCはアロ認識(allo-recognition)を免れることも示された。
実施例5:ASCは内皮細胞の増殖を刺激する
プロトコール−内皮細胞増殖 (ECP)アッセイ
実施例1に記載したように胎盤ASCを調製し、凍結保存した。1×106の解凍したASCを2 ml DMEM培地に播種した。24時間 (hr)後、培地をEBM-2培地(Lonza Group社、Basel、Switzerland)で置換し、細胞を、低酸素条件(1%O2)下で更に24時間インキュベートし、その後、馴化培地(CM)を回収した。並行して、750のヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)を播種し、24時間インキュベートし、次いで、正常酸素条件下、37℃で4日間、CMを用いてインキュベートした。CMを除去した後、AlamarBlue(登録商標)蛍光アッセイを使用して、HUVEC細胞の増殖をアッセイした。結果は、ASC非存在下(任意に100%で設定)で観察されたパーセントECP(%ECP)で表す。
結果
サイトカイン(ヒト)抗体アレイCシリーズ4000 (RayBio)を使用して、正常酸素条件又は低酸素条件下で培養したASCをタンパク質分泌についてテストした。図3に示されるように、低酸素条件下で、幾つかの血管新生促進因子の分泌が上方制御された。
更なる実験において、ASCの様々な集団(batches)を、HUVEC細胞と共インキュベートし、ECPに対するそれらの影響をテストした。典型的には、ASC非存在下で観察されたECPの少なくとも135%のレベルまでECPの刺激が観察された。
実施例6:3D培養の間における炎症促進性サイトカインを用いたASCの処理
方法
実験プロトコール全般 3D培養の最終日(典型的には、開始から5日又は6日目)は、10ナノグラム/ミリリットル (ng/ml)腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、10 ng/mlインターフェロン・ガンマ(IFN-γ)及び/若しくは10%FBSを含む(又は含まない [陰性対照])DMEM中で行い(表1を参照)、バイオリアクターで更に1日インキュベートしたこと以外は、全て実施例1に記載したように、胎盤からASCを取得し、2D条件下で培養し、次いで、3D条件下で培養し、次いで、回収した。RayBio(登録商標)ヒトサイトカインアレイキットを使用して、バイオリアクター培地中の分泌されたサイトカインレベルを測定した。
低酸素インキュベーション 1×106の解凍したASCを2 ml DMEM培地に播種した。24時間 (hr)後、培地をEBM-2培地 (Lonza Group社、Basel、Switzerland)で置換し、細胞を低酸素条件(1%O2)下で更に24時間インキュベートし、その後、CMを回収した。
幾つかの実験においては、上記のように、その後の低酸素インキュベーションに由来するCM中で、分泌されたサイトカインレベルを測定した。
分泌されたタンパク質の定量的検出:それぞれのヒト免疫アッセイQuantikine(登録商標)ELISAキット (R&D Systems)を使用して、IL-6及びVEGFを定量的に測定した。
結果
様々な条件を比較(side-by-side)テストする一連の実験において、上記実施例で記載したように、ASCをバイオリアクター中でインキュベートした。バイオリアクターでのインキュベーションの最終日に、培地を、FBSの存在下又は非存在下で、添加されたTNF-α又はTNF-α+IFN-γを含むか又は含まない培地で置換した。ELISAによって、バイオリアクター培地中におけるVEGF及びIL-6の分泌を測定した。IFN-γが存在するか否かに関わらず、TNF-αを含めることによって、VEGFの分泌が有意に増加した(表2)。
別の実験によって、TNF-αを含めることで、IL-6分泌が有意に増加し、それはIFN-γによって更に増加することが示された。
本実施例の終わりまでの以下に記載される実験は全て、血清を含まない培地で増殖させた試料に対して行った。蛍光ベースのサイトカインアレイアッセイを使用して、先述の実験に由来する選択された試料のバイオリアクター培地について、一団の因子の発現を探索した。GRO(CXCL1;Uniprotアクセッション番号:P09341)、IL-6、IL-8、MCP-1、MCP-2、MCP-3、RANTES及びIP-10(Uniprotアクセッション番号:P02778)を含む、幾つかの因子の発現の増加が、サイトカインインキュベーションの後に観察された(図4A)。別の実験においては、TNF-α単独を、サイトカイン添加なしと比較した。GRO、IL-8、MCP-1、RANTESの発現の上昇、より少ない程度に、IL-6、MCP-3、アンギオゲニン、インスリン様増殖因子結合タンパク質-2(IGFBP-2)、オステオポンチン及びオステオプロテゲリンの発現の上昇が示された(図4B〜C)。
幾つかの実験において、定量的ELISAによって、バイオリアクター培地中におけるMCP-1及びGM-CSFの上昇した発現を確認した。その結果によって、MCP-1誘導のためには、TNF-α+IFN-γが、TNF-α単独よりも強力であることが示された(図5A)一方で、GM-CSF誘導のためには、TNF-α単独が僅かに優れているようであることが示された(図5B)。TNF-α+IFN-γ試験に由来する対照培地(サイトカインを含まない)と比べて、サイトカイン濃度及び変化倍数を、以下の表3に示す。
TNF-α+IFN-γ、又はTNF-α単独を使用した幾つかの実験で、先述のサイトカインアレイによって、幾つかの他の因子の誘導を検出した。表4に記載されているように、多くのタンパク質が一貫して上方制御された。
遥かに大きいGM-CSFの上方制御が観察されたこと、G-CSF、HGF及びTRAILの発現をテストして上方制御が見出されたこと、TNF-αが上方制御されなかったこと以外は、サイトカインのボーラス投与(with a bolus of)で刺激されたASCを用いて(以下の実施例9において、本明細書に記載されるように)、実施例中、上記に示されたのと同様の結果を得た。定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、mRNAレベルで本実施例で言及されるタンパク質の発現が増加することも確認した。
実施例7:3D培養中のASCの炎症促進性サイトカイン処理に対する血清の影響
本実験では、TNF-α+IFN-γ(図6A)又はTNF-α単独(図6B)による、先述の一団の因子の誘導に対する、FBSの影響を調べた。FBSの存在下又は非存在下で、類似する一式の主要なタンパク質を誘導した。TNF-アルファ単独については、FBS非存在下よりも存在下において、IL-6が遥かに強く誘導されるようであった。
実施例8:炎症性サイトカインを用いて処理したASCのマーカー表現型
幾つかの実験で、炎症促進性サイトカインを用いて前処理しているASCのマーカー表現型を調べた。一貫して、細胞は、CD29、CD90及びCD54について90%超が陽性であり;CD73及びCD105について85%超が陽性であり;並びにCD49について65%超が陽性であった。追加的には、細胞は、CD14、CD19、CD31、CD34、CD39及びCD45について1%未満が陽性であり;CD200について3%未満が陽性であり;GlyAについて6%未満が陽性であり;並びにSSEA4について20%未満が陽性であった。
実施例9:サイトカイン条件の変更は細胞生存率を改善する
2つの点:1.サイトカインへの曝露は24時間であったこと;及び2.24時間インキュベーションの最初に濃縮されたストック溶液を使用して、サイトカインをバイオリアクター培地に添加し、目標のサイトカイン濃度にまで急速に持っていったことを除き、実施例6において記載されたのと同様の様式で、炎症性サイトカインを用いてASCを刺激した。それに続く24時間に亘って、目標のサイトカイン濃度を含む新鮮な培地をバイオリアクターに灌流した。指数増殖期に対応する、バイオリアクターに播種後5日で、24時間インキュベーションを開始した。サイトカイン処理の結果によって、細胞の増殖は倍化速度が遅くなり始める時点に到達していた。ASCを凍結した。解凍した細胞を組織培養ディッシュに播種し、播種後3日及び4日目に回収したプレート中の細胞密度を測定し比較することによって、集団倍化時間(PDT)を測定した。
24時間刺激した細胞は、PDTにおける有意な減少を示した(図7)。表5は、各試料の条件について記載する。
実施例10:ASC CMは腫瘍細胞の複製及び生存に影響する
方法
CM生成:実施例1及び6において記載したように、バイオリアクターインキュベーション及びその後の凍結保存を行った。これらの工程に続けて、500,000細胞を、マルチウェルプレート中、2 mM L-グルタミン及び10%FBS、幾つかのケースにおいては、1ウェル当たり40 ngのIFN-γを補充した4 ml DMEM中に播種した。24時間後、培地を吸引し、細胞を洗浄し、RPMI(特に断りのない限りFBSを含まない)を添加した。24時間のインキュベーション後、培地を回収し、遠心分離し、5%FBSを培地に添加した。
抗がんアッセイ 59細胞株を、培地(RPMI+10%FBS、2 mM L-アラニル-L-グルタミン及び1 mMピルビン酸ナトリウム)中で増殖させ、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(pHEMA)で予めコートしたマルチウェル3Dプレート(細胞を自己集合させる表面上の微空間を有するElplasiaTMプレート)中でスフェロイドを形成させるために上記の培地(但し、5%FBSを含む)に播種した。CMを2倍で連続希釈し、幾つかの濃度で、3回反復でアッセイした。希釈なしのCM、又は1:2、1:4、若しくは1:8で希釈したCMを、25 μLの体積で、播種後24時間で添加し、3日毎に交換した。全ての細胞株について対照(陽性及び陰性)を含めた。CellTiter-Glo(登録商標)細胞生存率アッセイを使用して、細胞を溶解し、分析し、細胞の生存率及び複製に対するCMの影響を決定した。ビヒクルと比較して20〜40%の阻害は、標準偏差に比較して統計的に有意であり、部分的な阻害と定義した一方で、40%以上の阻害を阻害と定義した。
結果
母体ASC、又は母体/胎児ASCの混合のいずれかをバイオリアクター中で生成し、馴化培地(CM)を調製するために使用した。CMを、母体ASC、及び母体/胎児ASCの集団から調製し、そのうち幾らかをCM生成に先立って又はその最中に処理に供し(表6)、様々ながん細胞株の複製を阻害する能力についてテストした(表7)。
下記の分析は、TNF-アルファ/IFN-ガンマを用いて処理したASCに由来するCMを投与した、実験群1に焦点を当てる。全体:
・ 12細胞株は群1によって阻害された(<60%の増殖)。
・ 14細胞株は群1によって部分的に阻害された(60〜80%の増殖)。
・ 28細胞株はCMによって阻害されなかった。
・ 4細胞株は群1によって部分的に刺激された(120〜140%の増殖)。
・ 1細胞株は群1によって刺激された(>140%の増殖)。
幾つかの種類のがん、即ち、腎細胞がん(テストした4細胞株のうち2細胞株;表8)、黒色腫(1/4株)、肝細胞がん(2/5株;表9)、結腸直腸がん(2/10)、乳がん(2/6株;表10)、肺腺がん(1/1株;表11)、大細胞肺がん(1/1)、及び横紋筋肉腫(1/1株;表12)は、少なくとも最高濃度の群1によって、阻害(増殖における少なくとも40%の低減で定義される)を示した。
実施例11:応答性細胞株と他の細胞株との間で異なって発現される遺伝子の分析
ASC-TNFα/IFNγ処理に対して、応答性及び非応答性のがん細胞株間で、異なって発現されるマーカー遺伝子を特定するために、細胞株を器官によってグループ分けした。それゆえ、マーカー遺伝子選択のために選択されたがん細胞株は、5器官:乳房、大腸、腎臓、肝臓及び肺に由来する。応答性の細胞株RD(横紋筋肉腫)及びCHL-1(黒色腫)は、これらの器官に起源するがんについて、2クラスの各々について、2細胞株を確保するためのデータが不十分であったため、調査から除外した。
2つのクラスを各器官について以下の通り割り当てた(表13):
クラス0:応答性の細胞株(希釈していないCMを用いて、対照の%(POC)≦60%)。
クラス1:希釈していないCMを用いて、POC≧79%である細胞株。
60%<POC<79%であることで定義される、僅かに応答性の細胞株は、両方のクラスから除外した。
1000を超える細胞株について、ゲノムデータへのアクセス、分析及び視覚化を提供する、がん細胞株事典(CCLE;Barretina、J.ら)から、遺伝子発現データを得た。マーカー遺伝子を特定するために、細胞増殖アッセイにおいて使用したがん細胞株についてのmRNA発現アレイデータをダウンロードした。データセットのダウンロードに先立って、ロバストマルチアレイアベレージ(Robust Multi-array Average)(RMA)を使用して、元のAffymetrix U133+2アレイに由来する、加工前の(raw)Affymetrix CELファイルを、各プローブセットについて単一の値に変換し、分位点正規化(quantile normalization)を使用して正規化した。BrainarrayのHGU133Plus2_Hs_ENTREZG_15.0.0パッケージ由来の再定義したカスタムCDFファイルを、要約のために使用した。
マーカー遺伝子を特定し選択するために、GenePatternにおけるComparativeMarkerSelectionモジュール(Reichら)を利用した。
プロファイルされた各遺伝子についての両側t検定の値を計算することによって、遺伝子をスコア化した。検定統計量が>5又は<−5である場合に、マーカー遺伝子を選択した。正及び負の値は、応答性の細胞株において、それぞれ上方制御された遺伝子及び下方制御された遺伝子を示す。表14は、>5及び<−5のスコアを有するマーカー遺伝子の数を示す。
例として、図8Aは、乳がん細胞株分析についてのプロファイリングされた各遺伝子のスコアのグラフ表示を示す。応答性の細胞株において上方制御された遺伝子をグラフの左側に示す一方で、応答性の細胞株において下方制御された遺伝子(他の細胞株において上方制御された)を右側に示す。図8Bは、応答性の乳房細胞株において、下方制御された遺伝子(スコア<-5)の全てについて、5株の乳がん細胞株の平均発現値を示すセントロイドプロットである。その2株の応答性の乳がん細胞株(HCC-1395及びMDA-MB-231)を左に示し、他の3株の乳がん細胞株(BT474、MCF7及びT47D)を右に示す。
実施例12:応答性株において有意に摂動された経路
各器官内のクラス0とクラス1細胞株との間で摂動された(perturbed)関連する生物学的経路を決定するために、各器官内で最も統計的に有意に上方制御及び下方制御された遺伝子を使用して、Reactome Pathway Database V53 (Croftら)を探索した。表15は、少なくとも1つのリアクトーム経路(Reactome pathway)において見出される5器官の各々に由来する、上方制御及び下方制御された遺伝子数を示す。
器官の間で共通した重要な経路について、データを検索した。以下の5経路は、4/5アウトプット一覧において、リアクトーム経路の上位200の一覧にあった:
1.IFN-アルファ/ベータ経路のRIG-I/MDA5媒介性誘導(R-HSA-168928)
2.インターフェロンシグナル伝達(R-HSA-913531)
3.免疫系におけるサイトカインシグナル伝達(R-HSA-1280215)
4.細胞の老化(R-HSA-2559583)
5.ベータ-カテニンのトランス活性化複合体の失活(R-HSA-3769402)
次に、最も統計的に有意な上方制御及び下方制御された遺伝子を、5つのマーカー遺伝子セットの各々からプールし、Reactome Pathway Databaseを探索するために使用した。データベースを三回、探索した:
1.上方制御された全遺伝子
2.下方制御された全遺伝子
3.上方制御及び下方制御された全遺伝子
統計的に有意なものとして生物学的経路を定義するための統計的カットオフは、偽発見率(FDR)≦0.05であった。表16〜18は、それぞれ上方制御された遺伝子、下方制御された遺伝子、及びその両方のために、5器官にまたがり、クラス0と1の間で摂動された、最も統計的に関連する生物学的経路を示す。表17において太字で表した経路は、変異遺伝子を分析に加える場合に選択プロセスで残る(表20)。
分かるように、クラス0の下方制御された遺伝子のプールされたセットによって、データベースを探索する場合に、最も高い統計的有意性を示す生物学的経路が明らかにされる。
実施例13:応答性及び他の細胞株のエキソームの変異分析
(記載された統計的有意性に加えて)生物学的に最も重要な経路を探索するために、COSMICがん細胞株プロジェクト (Forbesら)に由来する完全エキソームシーケンシングによって体細胞変異を分析した。付加、欠失、置換、フレームシフト及びスプライス部位変異を考慮した一方で、CDSサイレント変異を除外した。Hep-G2、AGS、DLD1、LS-174T及びSW480からのデータは、データベース中に現れなかった。これらの細胞株に加えて、11株の応答性の細胞株において合計>10,300変異を考慮し、他の43細胞株において>53,000変異を考慮した。
リアクトームデータベースを以下で探索した:
・専ら11株の応答性の細胞株において変異している全ての遺伝子
・専ら他の43細胞株(僅かな応答性及び非応答性の株)において変異している全ての遺伝子
・専ら応答性の細胞株において変異している全ての遺伝子のプールした一覧;及び応答性の細胞株において下方制御された全ての遺伝子(上記の表15について記載したように)
最後のクエリ(query)は最も有益であり、その結果は以下において記載する。
表19は、専ら応答性株において変異している全ての遺伝子の数を示す。
表20に、最後のクエリの結果を示す。統計的なカットオフは、エンティティFDR≦0.05であった。
本分析によって、応答性のがん細胞株は、2つの重要な経路:MHCクラスI抗原プロセッシング及び提示(それらとしては、エンドソーム/液胞、抗原提示:クラスI MHCのフォールディング、会合及びペプチドローディング、ER-ファゴソーム、並びに抗原プロセッシング交差提示経路が挙げられる)、並びにサイトカインシグナル伝達(それらとしては、インターフェロンアルファ/ベータシグナル伝達、インターフェロンガンマシグナル伝達、及びインターフェロンシグナル伝達経路が挙げられる)における、下方制御又は調節異常を有する細胞株であることが示された。これらの経路は、以前の分析において、統計的に有意であることが見出された経路(表17)と有意に重複する。このことにより、該統計的分析及びこれらの特定の経路の重要性が確認される。
図9A〜Bは、応答性の細胞株の各々において下方制御されたこれらの経路における遺伝子及び/又は専ら応答性の細胞株の各々において変異した遺伝子についてまとめる。Aにおいては、列記された最初の8遺伝子はサイトカインシグナル伝達/インターフェロン経路中にも存在する。UBE2Q1以外の最後の19遺伝子は、ユビキチンリガーゼ経路に関与する。Bにおいては、3つのHLA遺伝子、UBB、及びPSMで始まる3遺伝子は、抗原プロセッシング/提示経路中にも存在する。
結論として、上記のデータは、下方制御された若しくは異常調節されたMHCクラスI抗原プロセッシング及び提示経路並びに/又は下方制御された若しくは異常調節されたサイトカインシグナル伝達経路を有する、がん細胞株は、ASCを用いた処理に対して感受性であることを示す。
実施例14:応答性及び非応答性の乳がん細胞株の更なる性状解析
次に、階層的クラスタリングによって、乳がん株をLuminal、Basal A又はBasal Bとして特徴づけるために有用な305分類遺伝子(Neveら)の発現に基づいて、応答性及び非応答性の乳がん細胞株の表現型を決定した。論文のデータをダウンロードし、GenePatternソフトウェアツール(Reichら)を使用して、再現した(図10)。列及び行の両方についての距離を測定するために、ピアソン相関クラスタリングを使用し、階層的クラスタリング法はペアワイズ平均連結法であった。
図11Aは、図10の上部を示し、どの細胞株が性状解析されたかを示し、それらは、ASC感受性について本明細書でテストした6細胞株のうち、5細胞株を含む。記載された株のうち、HCC38、SUM149PT、MDA-MB-157、BT549、HSS78T、SUM159PT、MDA-MB-436及びMDA-MB-231をTRAIL感受性についてテストした。それらはTNである。
図11Aは、11株の三重陰性(TN)株を含む、20株の乳がん細胞株を、TRAIL感受性についてテストした、Rahmanらのデータも取り込み;これらは、シンプルなアスタリスク(TRAIL非感受性)及び丸で囲ったアスタリスク(TRAIL感受性)によって印を付けている。TRAIL感受性であるTN細胞株の殆んどは、Basal Bのクラスターに入るが、そこから外れた2株がある。Basal Bである全8株のTRAIL感受性TN細胞株は「間葉系の表現型」を有し、Basal Aである全3株のTRAIL非感受性のものは「上皮系の表現型」を有する。
間葉系の表現型は、高レベルのビメンチン、高レベルのカベオリン、及び低レベルのE-カドヘリンを有すると定義される。上皮系の表現型は、高レベルのE-カドヘリン、豊富なケラチン、及び低レベルのビメンチンを有すると定義される。
図11Bは、図11Aからの、テストした乳がん細胞株のデータを表の形態で示し、臨床サブタイプにおける情報、即ち、エストロゲン受容体(ER)又はプロゲステロン受容体(PR)が存在するか否か、及びHer2/neuが増幅されるかも含んでいる。
結論として、TN乳がんは、ASCを用いた治療に対する感受性を示す。
HCC1395は、ASC感受性について本明細書でテストされ、Neveらによる先述の階層的クラスタリング分析において分析されなかった、唯一の乳がん株である。この細胞株を使用し、ASCに対する乳がんの感受性が、TN表現型と並行するという仮説を検証した。HCC1395は、ASC処理に対して感受性であったので、先述の分析によって、三重陰性細胞株のHCC1395はTRAIL感受性であり、Basal Bクラスターに入ることが予想される。本分析は、別のデータセットを必要とした。Neveらによる階層的クラスタリング分析もなされた乳がん細胞株について、がん細胞株事典 (CCLE;Barretinaら)を探索した。37株の乳がん細胞株のAffymetrix遺伝子発現データをダウンロードし、上述のように処理した。
「遺伝子に対するAffyプローブ」の一致を、Neveらのデータセットにおける遺伝子を特定するのに使用し、それを、今度はCCLE由来の37株の関連する遺伝子発現データを選択するために使用した。この処理によって、169のプローブセットを生成して、階層的クラスタリングを行い、Neveらと同様なクラスタリングを生成した(図12A)。HCC-1395は、MDA-MB-231と一緒に、明瞭にTN/Basal Bグループにクラスター化され、従って、このことで、ASCに対する乳がんの感受性がTN表現型と並行するという仮説が確認される。
図12Bは、図12Aの上部を示す。(丸で囲った)2株の細胞株のみが、以前の分析とは異なってクラスター化された。18,000のプローブセット(37株のCCLE細胞株のセットに由来する遺伝子発現データにおけるプローブ数)又は169のプローブセットを使用したかに関わらず、事実上、同一な階層的クラスタリングが得られ、従って、このことで、クラスタリングスキームが確認される(図12C)。
実施例15:乳房腫瘍株のクラスタリングに関与する遺伝子は、抗原提示及びIFNシグナル伝達に関与する
Luminal、Basal A及びBasal Bにクラスタリングするために重要であるとして、Neveらによる先述の階層的クラスタリング分析において特定された遺伝子を、Reactome Pathway Database(各セクション個別)に入力し、分類遺伝子が関与する経路を特定した(図13)。分類遺伝子の真ん中の行の区分としては、HLA及び2、3の他の抗原プロセッシング/提示遺伝子、並びにIFNシグナル伝達経路遺伝子が挙げられ、従って、このことで、先述の分析の正当性が更に確認され、以前、特定された経路が、ASC-TNFα/IFNγによって最初にテストしたよりも、広いスペクトルの乳がん細胞株に当てはまることが確認された。
実施例16:腫瘍移植モデルにおけるASCのIN VIVO抗腫瘍活性
方法
93匹の無胸腺Foxn1nuヌードの右脇の皮下に、0.2 ml PBS中の3×106のMDA-MB-231腺がん細胞を注射した(全群)―この日を0日目とみなした。実験群を表21に示す:
TNF-α+IFN-γで刺激したASCを、筋肉内(IM)又は静脈内(IV)投与のために、それぞれ50 mcl(マイクロリットル)又は250 mclの体積で懸濁した。1日目に、ASCを、群6及び7の各10匹のマウスに、それぞれIM又はIV投与した。9日目に、73匹の未処理マウス(先に、対照群として参照される)から、36〜88mm3の範囲外の腫瘍サイズである23匹のマウスを取り除き、50匹の未処理マウスを残した。50匹の動物を、無作為に群1、2、3、4及び5に割り当てた。各群がおおよそ同じ平均サイズの腫瘍を有するマウスとなるように、腫瘍のサイズに従って無作為に群分けした。従って、最終的に各群に10匹ずつのマウスが存在した。同じ日に、表21に示すように、マウスを、処理しないか、モックのIM若しくはIV注射のいずれかで投与したか(それぞれ群1、2及び3);或いは、IM(それぞれ、最初の若しくは更なる投与を受けた群4及び6)又はIV(それぞれ、最初の若しくは更なる投与を受けた群5及び7)で、ASCを投与した。
電子キャリパーを使用して、腫瘍体積を測定した。
結果
ASCの抗腫瘍効果を、in vivo腫瘍移植モデルでテストした。1日目にASC投与を受けたマウスは、低減された腫瘍サイズを示した。各時点、即ち、5、7及び9日目で、IVを対照と比較した場合、阻害は統計的に有意であった(片側t検定で、それぞれp=0.0055、0.0067及び0.041)(図14A)。有効性の傾向は、IV注射(図14B〜C)及びIM注射(図14D〜E)したマウスの両方で見られた。12〜16日目(表22〜23);9〜28日目(表24);及び9〜16日目(表25)の腫瘍体積における変化倍数を観察した場合、阻害効果が強く見られた。
これらのデータによって、非常に急速に増殖している腫瘍モデルにおいてさえ、ASCがin vivoにおける腫瘍増殖を阻害することが確認される。
実施例17:更なるIN VIVO腫瘍移植モデルにおけるASCのテスト
概要
ASCの抗腫瘍効果を研究するために、別の腫瘍移植モデルを使用した。このケースにおいては、腫瘍細胞を鼠径部乳腺脂肪体(inguinal mammary fat pad)に注射した。その後、0.5若しくは1.0×106のASC、又はPlasmaLyte (陰性対照;「Lyte」)を、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、又はIM及びIV交互(「IV/IM」)に注射した。
方法
処理をしなかった群9を除き、3×106のMDA-MB-231細胞を、第4の(鼠径部)乳腺脂肪体に注射し、0日目とした。表26は、全ての群に施した処理を記載する。研究期間中に、3匹のマウス(8週目に群5の2匹、11週目に群7の1匹)が死亡した。体重に対するASC投与による有意な影響は見られなかった。
組織学:組織試料には、異種移植腫瘍、肺及びリンパ節(腋窩、鼠径部及び腰部)が含まれていた。組織試料を緩衝ホルマリン中で浸漬固定し、パラフィン包埋のために処理した。試料を以下のように処理した:
1.異種移植腫瘍 腫瘍の真ん中を通って、標準的な5マイクロメーターの切片が調製され得るように、腫瘍試料のパラフィンブロックを調製した。一般的な組織病理学的評価のために、腫瘍切片をヘマトキシリン−エオシンを用いて染色した。
1.1. 腫瘍細胞増殖 Ki67抗原に対する抗体を用いた免疫組織化学(IHC)染色のために、腫瘍切片を処理した。切片を脱パラフィンし、0.05%無水シトラコン酸(CA;Aldrich;Cat番号 125318)溶液(pH 7.4)中で20分間煮沸することによって、熱誘導抗原賦活化(HIER)に供した。室温(rt)まで冷却後、TBST(10 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、0.1%Tween-20、pH 7.5)中、1:200で希釈した、Ki67に対するウサギモノクローナル抗体 (クローンSP6;Abcam Cat番号ab16667)を用いて、切片を室温で1時間、インキュベートした。切片をTBST中で洗浄し、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG高分子試薬 (ZytoCem Plus HRP-ポリマー抗ウサギ;ZytoMed、Cat#ZUC032-10)を用いて、30分間インキュベートした。次いで、切片を洗浄し、0.05%ジアミノベンジジン (DABx4HCl [Sigma;Cat番号32750])及び0.015%過酸化水素を含む、TIBSバッファー(0.15 M NaCl、10 mMトリス、5 mMイミダゾール;pH 7.5)中で3分間インキュベートすることによって、HRP活性をアッセイした。スライドをヘマトキシリンで軽く対比染色し、DPXマウント剤 (Sigma;Cat番号06522)を使用してカバースリップをかけ、RGB調整可能な画像化フィルター(CRI)と組み合わせた、QuantiFire XI CCDカメラ(Optronics)を備える、Olympus BX-50顕微鏡を使用して画像を撮影した。腫瘍試料毎に、対物20倍で、3〜5の重複しない画像を取得した。
ImageJを使用して、画像を背景サブトラクション(subtraction)及びカラーデコンボリューション(color deconvolution)に供し、全ての核及びKi67で免疫染色した核をそれぞれ示す、青色及び茶色のモノクローム画像に分離した画像を得た。次いで、自動閾値処理によって、画像を二値化し、核を「分水界(watershed)」コマンドを使用して分離し、「粒子分析」コマンドを使用して自動で計数した。同じ試料に関連する全画像におけるKi67で標識した核のパーセンテージを、増殖指数として使用した。
1.2. 腫瘍細胞のアポトーシス アポトーシス細胞を検出するために、抗活性カスパーゼ抗体を用いて、腫瘍切片を免疫染色した。切片を脱パラフィンし、10 mMクエン酸バッファー(pH 6.0)中で20分間、煮沸することによってHIERに供した。室温で1時間冷却した後、TBST中で1:1000で希釈した、活性カスパーゼ3に対するウサギモノクローナル抗体 (クローンE83-77;Abcam Cat番号ab32042)を用いて、室温で1時間、切片をインキュベートし、抗Ki67抗体については上記のように、インキュベーション、検出及び対比染色を行った。アポトーシスを定量するために、免疫染色細胞の切片を、6〜10高出力(対物40倍)の顕微鏡視野において、手動で計数した。
1.3. 腫瘍血管新生 腫瘍血管新生を定量するために、マウスCD34に対するウサギモノクローナル抗体 (クローンEP373Y、Abcam;Cat番号ab81289;1:1000希釈した)を用いて、切片を免疫染色し、内皮細胞を可視化した。抗活性カスパーゼについては、上記のように免疫染色を行った。CD34+(内皮)細胞の密度が最も高い領域(「ホットスポット」)を、顕微鏡対物20倍を使用して、撮影し、2048×2048ピクセルのカラーのデジタル画像を得た。カラーデコンボリューション、自動閾値化及び二値化の後、ImageJを使用して、DABを用いて茶色に染色した領域(ピクセル数)を決定した。画像サイズ(4.19 Mpi)に関連して、免疫染色の領域のパーセンテージを計算した。
2.肺転移 肺試料を含むパラフィンブロックを、網羅的、体系的な切片化に供し、300μmで分離した切片(肺試料毎に8〜20個)を生成し、ガラススライド上にマウントした。TEバッファー(pH 8.0)中、HIERに供した肺切片における、腫瘍細胞を検出するために、1:600で希釈したウサギモノクローナル抗サイトケラチン18(CK18)抗体 (クローンEPR1626;Abcam、Cat番号ab133263)を用いたIHC染色を使用した。IHCの残りの手順は、上記の通りであった。
3.リンパ節転移 リンパ節(腋窩、鼠径部及び腰部)の各ペアを1個のパラフィンブロックに包埋し、75 μmで分離した切片(リンパ節試料毎に8〜25個)を得るために、網羅的、体系的な切片化に供した。ガラススライド上に、切片をマウントし、肺切片について記載したように、抗CK18抗体を用いて免疫染色した。
P値は、StudentのT検定(両側分析)を使用して計算した。
結果
ASCを用いた後期IM処理(48日目に開始)は、腫瘍増殖を有意に遅くし又は停止し、それは、平均腫瘍体積のプロット(図15A〜C)又は47日目からの腫瘍体積におけるパーセント変化(図15D〜E)であるかに関わらず、明らかであった。図15C及びEにおいては、異常値を除き、「調整した」数を生成した。群2においては0%、群1及び3においては5%であったのと比べ、群4におけるマウスの30%が84日目までに完全に寛解を示した。
IV-ASC処理は、最初に腫瘍増殖を阻害し(図16)、具体的には、38日目に、操作されていないか、又は調整した平均を考慮した場合に、増殖の34%又は29%の阻害であった(それぞれ、図17A〜B及びC〜D)。それより遅い時点では、増殖阻害は検出されなかった。しかしながら、PlasmaLyte処理群における腫瘍は、約55日目の後に増殖を停止し(図17A及びC)、これは、IV-ASC処理によって、持続する腫瘍増殖の阻害が、人為的に(artefactually)マスクされている可能性がある。交互のIV/IM-ASC処理によって、IV処理と同様の結果が得られた。
群2、4、5及び6で組織学分析を行った。後期IM処理は、腫瘍内の細胞の増殖における、統計的に有意な48%の低減(p=0.0056)を誘導した(図18)。IV処理マウスにおいては、増殖における効果は見られなかった。
後期IM処理は、腫瘍の血管新生においても、統計的に有意な58%の低減(p=0.0064)を誘導した(図19)。IV処理マウスも、血管新生が低下する傾向を示した(図20)。いずれの効果も腫瘍の重量や増殖と相関しておらず、このことは血管新生に対する独立した影響を示した。これらのデータは、ASC-IMを用いて予め存在している腫瘍を処理する場合に、腫瘍増殖を阻害するよう一緒に働く、少なくとも2つの別のMOAがあることを示す。
IV処理マウスはまた、腫瘍内のアポトーシスにおいて15%の増加を示した(p=0.064)一方、IM処理マウスでは効果が見られなかった。
更に、後期IM及びIV処理マウスにおいて、肺転移の完全な欠如が観察された一方、両方の対照群では肺転移があった(表27)。腋窩、鼠径部及び腰部リンパ節もまた、転移が観察された。後期-IM処理マウス及びIV処理マウスは、それぞれ腋窩及び腰部に対する転移が低減する傾向を示した(表28)。
実施例18:ASC-CMによる腫瘍細胞増殖阻害のIN-VITROでの更なる確認
実施例6又は実施例9で記載したように調製した、3集団(batches)のASCをテストした。500,000 ASCを、がん細胞増殖培地(RPMI又は高グルコースDMEM、適宜、血清なし)中で24時間インキュベートし、CMを生成した。3株のがん細胞株(TRAIL感受性であるNCI-H460及びMDA-MB-231;並びにTRAIL非感受性であるMCF7)を、1ウェル当たり1500、3000、6000又は12000細胞の初期密度で、48ウェルプレートに播種した。次の日、培地消費による非特異的な増殖阻害を回避するために、CMに5%FBS及び1%グルタミンを添加した後に、細胞を洗浄し、ASC-CMに曝露したか、又は対照として使用した標準の増殖培地+5%FBSに曝露した。ASC-CM又は培地における3日間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、凍結した。細胞を播種した1日後に、各密度で播種したベースラインプレートを洗浄し、凍結し、次いで、他の試料と同等に以降の処理を行った。CyQUANT GRを使用して、生存細胞を定量した。ASC-CMは、NCI-H460(図21A)及びMDA-MB-231(図21B)の増殖を阻害した。
実施例19:転移阻害モデルにおけるASCのIN-VIVOテスト
ルシフェラーゼ標識MDA-MB-231、ヒト乳房腫瘍細胞 (Yangら)を、NOD-SCID免疫不全マウスの乳腺脂肪体に注射し、先述の実施例で記載のように、IV及びIMで与えられるASCを用いてマウスを処理する。肺におけるMDA-MB-231腫瘍細胞のコロニー形成をIVIS画像化システム (PerkinElmer、American Fork、Utah)を用いてモニターする。
明確性のために、別の実施形態の文脈で記載された本発明のある特徴は、一実施形態において、組合せて提供されても良いことが理解される。逆に、簡潔さのために、一実施形態の文脈において記載された本発明の様々な特徴はまた、別にか又は任意の好適なサブコンビネーションで提供されても良い。
本発明はその具体的な実施形態と併せて記載されているが、多くの代替、改変及び変形が当業者に明らかになることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の概念及び広い範囲内に入る、そのような代替、改変及び変形の全てを包含することを意図する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許、特許出願、並びにUniprot及びGenBankアクセッション番号は、個々の刊行物、特許、又は特許出願、又はGenBankアクセッション番号のそれぞれを具体的、かつ個別に、参照により本明細書に取り込まれることが示されるのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。更に、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきでない。
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Claims (46)

  1. がんの治療を、それを必要とする対象においてする方法であって、接着性間質細胞(ASC)を対象に投与することを含み、それにより対象におけるがんを治療する、方法。
  2. がんを治療することが確認された医薬品の製造のための、接着性間質細胞(ASC)の使用。
  3. 腫瘍の増殖の阻害を、それを必要とする対象においてする方法であって、接着性間質細胞(ASC)を対象に投与することを含み、それにより対象における腫瘍の増殖を阻害する、方法。
  4. 腫瘍の増殖を阻害することが確認された医薬品の製造のための、接着性間質細胞(ASC)の使用。
  5. 腫瘍の転移を、そのリスクがある対象において阻害する方法であって、接着性間質細胞(ASC)を対象に投与することを含み、それにより対象における腫瘍の転移を阻害する、方法。
  6. 腫瘍の転移を阻害することが確認された医薬品の製造のための、接着性間質細胞(ASC)の使用。
  7. 前記ASCが3次元(3D)培養から取得されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  8. 前記3D培養が、前記3D培養の過程の間中、組成が変えられない培地を利用する、請求項7に記載の方法又は使用。
  9. 前記3D培養のインキュベーション培地に、炎症促進性サイトカインが添加される、請求項7に記載の方法又は使用。
  10. 前記3D培養が:(a)ASCを3D培養装置中、第一の増殖培地であって、炎症性サイトカインが添加されていない、前記第一の増殖培地中でインキュベートすること;及び、(b)その後、前記ASCを3D培養装置中、第二の増殖培地であって、1以上の炎症促進性サイトカインが添加されている、前記第二の増殖培地中でインキュベートすること、を含む、請求項9に記載の方法又は使用。
  11. 工程(a)が少なくとも3日間行われる、請求項10に記載の方法又は使用。
  12. 工程(b)が6〜48時間の間行われる、請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  13. 前記1以上の炎症促進性サイトカインが腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)を含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  14. 前記1以上の炎症促進性サイトカインがインターフェロン・ガンマ(IFN−ガンマ)を更に含む、請求項13に記載の方法又は使用。
  15. 前記1以上の炎症促進性サイトカインがインターフェロン・ガンマ(IFN−ガンマ)を含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  16. 前記3D培養が、3Dバイオリアクターを含む装置中で行われる、請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  17. 前記3D培養が、線維性ベッドマトリクスを含む装置中で行われる、請求項7〜16のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  18. 前記繊維性ベッドマトリクスが前記装置中に充填されている、請求項17に記載の方法又は使用。
  19. 前記3D培養が、合成接着性材料を含む装置中で行われる、請求項7〜18のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  20. 前記合成接着性材料が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、セルロースアセテート、ガラス繊維及び不活性金属繊維からなる群から選択される、請求項19に記載の方法又は使用。
  21. 前記3D培養装置がマイクロキャリアを含む、請求項7〜20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記マイクロキャリアが前記3D培養装置中に充填されている、請求項21に記載の方法。
  23. 前記ASCを、前記3D培養が行われた装置から取り出すことにより、前記ASCを回収する、後続の工程を更に含む、請求項7〜22のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  24. 前記ASCが、前記3D培養に先立って、2D接着性細胞培養装置中でインキュベートされている、請求項7〜23のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  25. 前記ASCが、担体中でインキュベートされ、前記それぞれの前記担体が、前記担体の外側から前記担体の内側に向かって伸びている複数の2D表面を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記ASCが、がん細胞若しくはがん細胞株と共インキュベートされているか、又はがん細胞若しくはがん細胞株に由来する馴化培地中でインキュベートされているか、又はがん細胞若しくはがん細胞株に由来する馴化培地の画分を含む培地中でインキュベートされている、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  27. 共インキュベーションの工程が、前記ASCと、前記がん細胞若しくはがん細胞株とを接触させることを含む、請求項26に記載の方法又は使用。
  28. 共インキュベーションの工程が、前記ASCと、前記がん細胞若しくはがん細胞株とを接触させることを含まない、請求項26に記載の方法又は使用。
  29. 前記ASCが胎盤組織に起源する、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  30. 前記ASCが胎児細胞と母体細胞の混合物である、請求項29に記載の方法又は使用。
  31. 前記ASCが少なくとも主に母体細胞である、請求項29に記載の方法又は使用。
  32. 前記ASCが少なくとも主に胎児細胞である、請求項29に記載の方法又は使用。
  33. 前記ASCが脂肪組織に起源する、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  34. 前記ASCが、CD73、CD90、CD29及びCD105からなる群から選択されるマーカーを発現する、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  35. 前記ASCが、CD3、CD4、CD45、CD80、HLA−DR、CD11b、CD14、CD19、CD34及びCD79−アルファからなる群から選択されるマーカーを発現しない、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  36. 前記腫瘍又はがんが、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、悪性黒色腫、甲状腺がん、非小細胞肺がん及び肺腺がんから選択される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  37. 前記腫瘍又はがんが以下:腎細胞がん、黒色腫、乳がん、肝細胞がん、結腸直腸腺がん、乳腺がん、肺腺がん、大細胞肺がん又は横紋筋肉腫から選択される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  38. 前記腫瘍又はがんが、骨肉腫、前立腺がん、尿路上皮膀胱がん、腎細胞腺がん、胃腺がん、膵臓腺がん、乳管がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、未分化甲状腺がん、未分化肺がん、黒色腫、結腸直腸腺がん、神経膠芽細胞腫、前立腺がん、卵巣明細胞がん、子宮肉腫、肺腺がん、気管支肺胞がん、大細胞肺がん、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、星細胞腫及び直腸腺がんから選択される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  39. 前記腫瘍又はがんがTRAIL感受性である、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  40. 前記腫瘍又はがんが乳がんである、請求項1〜35及び39のいずれか一項に記載の方法又は使用。
  41. 前記乳がんが間葉系の表現型を有する、請求項40に記載の方法。
  42. 前記乳がんが三重陰性である、請求項40に記載の方法又は使用。
  43. 前記乳がんが間葉系の表現型を有する、請求項42に記載の方法。
  44. 前記ASCが全身に投与される、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
  45. 前記ASCが、筋肉内、静脈内(IV)、皮下(SC)、骨髄内経路によって、又は腹腔内(IP)に投与される、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
  46. 前記ASCが腫瘍内に投与される、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
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