JP2008531007A - ヒト造血幹細胞集団を取得する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、多数の造血幹細胞を単離するための方法に関する。特に、本発明は、胎盤から生存可能な造血幹細胞を単離するための方法に関する。種々の用途でのこれらの単離された細胞の使用も記載される。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、多数の造血幹細胞を単離するための方法に関する。特に、本発明は、胎盤から、生存可能な造血幹細胞を単離するための方法に関する。通常は廃棄される胎盤は、強力で移植可能な造血幹細胞の豊富な供給源である。臨床移植治療のためのこれらの単離された細胞の使用も記載される。
造血系は、様々な成熟細胞系列の細胞の複雑な階層である。これらのものとしては、特に、病原体の侵入からの防御を提供する免疫系の細胞、体を通して酸素を運搬する細胞および創傷治癒に関与する細胞が挙げられる。これらの成熟細胞は全て、成体においては、骨髄中に存在し、自己再生することができ、任意の血液系列に分化することができる造血幹細胞(HSC)のプールに由来する。これらの細胞は、いくつかの血液関連疾患および/または悪性腫瘍をもたらす突然変異の標的であることも多い。従って、これらの細胞が臨床適用におけるその非常に大きな可能性のため、熱心な研究の対象であることは驚くべきことではない。研究は、様々な供給源からHSCを回収する方法、それらを濃縮する方法、体外でその限定数を増殖させる方法、それらを保存する方法、およびそれらを操作する方法に焦点を当ててきた。これらの細胞は、造血系全体を活性化する能力を有するため、放射線療法もしくは化学療法などの血液毒損傷後の移植または白血病細胞の置換に現在用いられているだけでなく、HSCにおいて行われた遺伝子操作をこれらの細胞が分化する際に全ての血液系列に伝えることができるため、遺伝子治療の魅力的な標的でもある。また、HSCが造血子孫を産生することに限定されるだけでなく、肝臓、筋肉、腸および可塑性と呼ばれるプロセスに関わる脳の細胞に分化することもできると主張するいくつかの報告がここ数年であった。これらの主張を立証することができるとすれば、筋肉疲労疾患または神経変性疾患などの疾患のためのありとあらゆる新しいHSCに基づく治療法が開けるであろう(de Vriesら、2004;Pamphilon, 2004;Peterson, 2004に概説されている)。
従来は、HSCはドナー(自己由来または同種異系)の骨髄から取得されてきた。比較的多数のHSCをこの方法で取得することができるという事実にも関わらず、それはドナーの全身麻酔ならびにさらなる取り扱いおよび精製プロセスを必要とするむしろ厄介で侵襲的なプロセスである(Pamphilon, 2004)。従って、HSCの他の考えられる供給源が探索されてきた。骨髄中に存在することとは別に、HSCは末梢血中に循環することも観察されている。これらの循環するHSCの数を、造血系への損傷またはG−CSFなどの動員因子(mobilising factor)を投与することにより増加させることができる。この供給源のHSCは、骨髄由来のHSCよりも入手しやすいが、それは、特に収率がより低いため、ドナーの予備処理を必要とし、かなり多量の血液をドナーから取得する必要もある(de Vriesら、2004;Pamphilon, 2004)。
第3の供給源のHSCは、近年ますます注目を浴びるようになってきた(Rochaら、2004に概説されている)。新生児の臍帯血管がHSCを含むことが見出された(Benitoら、2004;CohenおよびNagler, 2004;de Vriesら、2004;Pamphilon, 2004)。この組織は通常は廃棄されてしまい、従って、この組織を取得するにはドナーにとって侵襲的な手順は必要ではない。臍帯血(CB)のHSCは、成体のHSCよりもナイーブであることも観察され、このことは、HLAマッチングに関する厳格さの低い基準をもたらす(1〜2遺伝子座の不一致を許容する)(Benitoら、2004;CohenおよびNagler, 2004;de Vriesら、2004)。つまり、血縁関係のない、部分的にマッチするレシピエントおよび、従ってより広い集団がこれらの細胞を利用できる。マッチしない移植片を使用する結果は、移植片対宿主病(GVHD)として知られる合併症であり、これは移植片拒絶をもたらすだけでなく、重大な健康への影響を有する場合もある。これらのよりナイーブなCBのHSCを使用することにより、GVHDの発生率を低下させることができることが観察された。CBのHSCの他の利点としては、それらのより高い増殖能力、感染性疾患および遺伝子疾患のより低い伝播率、生成物の即時的利用可能性、従って、ドナーに対する危険性および登録者の低下の回避、HSCをCBから取得することができることに関する相対的容易性が挙げられる(Benitoら、2004;de Vriesら、2004)。CBのHSCの凍結を可能にし、従って長期間の保存(15年以上)を可能にするプロトコルも確立され、世界中で多数のCBバンクの確立に至っている(Benitoら、2004;de Vriesら、2004;Pamphilon, 2004)。これらの細胞は、保存期間中でもその幹細胞の潜在能力を保持する。これは、マッチする移植片を発見する機会を大きく増加させるだけでなく、個体自身のHSCを長期間保存することを可能にし、従って、必要になった場合にその個体の生涯において後にそれらを利用可能にする。85,000を超える凍結保存されたCB単位が臨床使用できる状態にあるが、CBのHSCの主要な欠点は、CB単位あたりのそれらの数が少ないことであり
、これは1つの骨髄単位から取得することができるものよりも10倍低い(Benitoら、2004;CohenおよびNagler, 2004;de Vriesら、2004)。これは、移植の失敗のより高い危険性および造血回復の遅延をもたらし得る。この理由のため、CB移植片は主に小児科の患者のために用いられている。経験豊富なCBバンクの協働ネットワークであるNetcord(Rochaら、2004)により最近目録に記載されたように、1815人の小児および982人の成人にCB細胞が移植されている。
、これは1つの骨髄単位から取得することができるものよりも10倍低い(Benitoら、2004;CohenおよびNagler, 2004;de Vriesら、2004)。これは、移植の失敗のより高い危険性および造血回復の遅延をもたらし得る。この理由のため、CB移植片は主に小児科の患者のために用いられている。経験豊富なCBバンクの協働ネットワークであるNetcord(Rochaら、2004)により最近目録に記載されたように、1815人の小児および982人の成人にCB細胞が移植されている。
臍帯血と同様、胎盤は胎児の細胞に由来し、造血細胞を含む。胎盤の造血能力に関する多くの研究は、マウスモデルにおいて行われてきた。漿尿膜胎盤は、尿膜と絨毛膜の接続部で形成され、その後、尿膜は、臍帯血管などの胎児の血管および関連する間質成分に寄与する(Downsら、1998)。ニワトリ胚においては、尿膜が造血部位であると同定されている(Caprioliら、1998)。しかしながら、マウスの胚においては、尿膜が造血性であるかどうかは依然として明らかではない(DownsおよびHarmann, 1997)。マウスの尿膜は、マウス胚の後端の中胚葉に由来し、E8.5で絨毛膜と接触するようになる(Cross, 1998;Crossら、2003a;Crossら、2003b;HanおよびCarter, 2001;RossantおよびCross, 2001に概説されている)。マウス胎盤が、CFU−GM、CFU−GEMM、BFU−EおよびHPP−CFCなどのクローン原性造血前駆体の形態でその最初の造血活性を有するのは、この時点である(Alvarez-Silvaら、2003)。さらに、E10とE12の間では、これらの前駆体は、胎児の他の造血生成部位、卵黄嚢、大動脈−性腺−中腎(AGM)および胎児の肝臓において認められるものよりも多い数で存在する。前駆体数は、誕生直前のE17まで増加する。しかしながら、これらの研究においては、胎盤もHSCを含むかどうかについては調査されなかった。
American Society for Hematology meetingの最近の要約において(Mikkolaら、2004)、マウス胎盤がHSCを含むことが報告された。胎盤におけるHSC活性の開始は、E10.5/11.0で起こり、E12.5/13.5まで増大する。胎盤のHSCの増殖は、E11.5/12.5でのクローン原性前駆体の2倍の増殖と比較して、17倍である。しかしながら、HSC細胞活性は妊娠の終わりに向かって減少することが著者らにより見出された。そうすると、マウス胎盤はHSCの供給源として不適切になる。
このように、治療的使用および他の使用にとってHSCの豊富な供給源の必要性が当該技術分野に依然として存在する。
発明の概要
本発明者らは驚くべきことに、マウス胎盤に関する先行する示唆と対照的に、個体の誕生時のヒト胎盤がHSCの豊富な供給源であることを見出した。さらに、本発明者らは、胎盤から単離されたHSCが、末梢血または骨髄から単離されたHSCよりも高い増殖能力を有するよりナイーブな性質のものであることを見出した。
本発明者らは驚くべきことに、マウス胎盤に関する先行する示唆と対照的に、個体の誕生時のヒト胎盤がHSCの豊富な供給源であることを見出した。さらに、本発明者らは、胎盤から単離されたHSCが、末梢血または骨髄から単離されたHSCよりも高い増殖能力を有するよりナイーブな性質のものであることを見出した。
従って、第1の態様においては、本発明は分娩後のヒト個体の胎盤から、造血幹細胞(HSC)を取り出すことを含む、これらの細胞の集団を取得する方法を提供する。
胎盤からのHSCの単離は、よく確立されたプロトコルに従うものであり、当業者であれば精通しているであろうし、臍帯血(CB)のHSC単離よりも多い取り扱いステップを必要とするものの、より多い数のHSCが得られる。臍帯血のHSCと同様、HLA型を維持する日常的な記録、保存およびバンクのネットワークは容易に確立することができ、従って、危険性の低いHSC移植の即時利用可能性をもたらすことができる。
従って、さらなる態様において、本発明は、分娩後のヒト個体の胎盤から単離された造血幹細胞(HSC)の集団を提供する。
本発明の上記態様に従えば、分娩後のヒト胎盤から単離されたHSCは、末梢血もしくは骨髄から単離されたHSCよりもナイーブな性質および/または高い増殖能力を有する。
本発明による胎盤HSCは、よく確立されたプロトコルに従い、当業者であれば精通しているであろう凍結方法による保存にとって好適である。臍帯血と同様、ヒト胎盤HSCは、液体窒素中での保存後にも生存能力および機能を維持している。
かくして、さらなる態様において、本発明は、保存後にも生存能力および機能を維持している、分娩後のヒト個体の胎盤から単離された造血幹細胞の集団を提供する。
本発明者らは、ヒト胎盤から単離されたHSCの集団を、以下のもの:IL−3、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβからなる群に含まれるいずれか1以上の増殖因子を用いて、ex vivoでこれらの細胞を処理することにより、増殖(すなわち、数を増加)させることができることを見出した。このリストは、非限定的なものである。さらに、当業者であれば、HSCの増殖にとって好適な他の増殖因子を知っているであろう。
従って、さらなる態様において、本発明は、
(a)分娩後のヒト胎盤からHSCの集団を取り出すステップ、および
(b)IL−3、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβからなる群に含まれる1以上の増殖因子を用いて、該細胞集団を処理するステップ;
(c)必要に応じて、胎盤由来の体外培養物を用いて、および/もしくは大動脈性腺中腎(AGM)由来の体外培養物ならびに/またはこれらの組織由来の間質細胞株を用いて、該細胞集団を処理するステップ、
を含む、HSCの集団を提供する方法を提供する。
(a)分娩後のヒト胎盤からHSCの集団を取り出すステップ、および
(b)IL−3、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβからなる群に含まれる1以上の増殖因子を用いて、該細胞集団を処理するステップ;
(c)必要に応じて、胎盤由来の体外培養物を用いて、および/もしくは大動脈性腺中腎(AGM)由来の体外培養物ならびに/またはこれらの組織由来の間質細胞株を用いて、該細胞集団を処理するステップ、
を含む、HSCの集団を提供する方法を提供する。
上記のこれらの処理(b)および(c)を、個別に(すなわち、いずれか一方もしくは他方の処理)、または組合わせて実施することができる。さらに、組合わせて施す場合、この処理を、連続的または同時に施すことができる。
さらに別の態様において、本発明は、本発明に従ってヒト胎盤から取り出されたHSCの集団であって、その集団内のHSCの数を、以下のもの:IL−3、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβからなる群に含まれるいずれか1以上の増殖因子を用いて該細胞集団を処理することにより増加させた細胞集団を提供する。さらに、本発明によるヒトHSCを、胎盤由来の体外培養物、および/もしくは大動脈性腺中腎(AGM)由来の体外培養物ならびに/またはこれらの組織由来の間質細胞株を用いて処理することができる。これらの処理(増殖因子および体外培養物/間質細胞を用いる処理)を、個別に(すなわち、いずれか一方もしくは他方の処理)、または組合わせて実施することができる。さらに、組合わせて施す場合、この処理を連続的または同時に施すことができる。
さらに別の態様において、本発明は、治療における、分娩後の個体のヒト胎盤から単離されたHSCの使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、造血幹細胞を個体に定着させることにおける、分娩後の個体のヒト胎盤から単離されたHSCの使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、造血幹細胞を個体の様々な非造血組織に定着させることにおける、分娩後のヒト個体の胎盤から単離されたHSCの使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、ex vivoで処理/操作された造血幹細胞を個体の様々な非造血組織に定着させることにおける、分娩後のヒト個体の胎盤から単離されたHSCの使用を提供する。
定義
造血幹細胞(HSC):多能性幹細胞は、骨髄および臍帯血などの体の特定の器官に認められる。これらの幹細胞は、全ての成熟な血液細胞系列の細胞を形成し、従って、骨髄、脾臓、胸腺などの全ての造血組織中の全免疫系ならびに赤血球および骨髄細胞系列を、再コロニー化することができる。さらに、これらの細胞は、自己再生することができる。それらは、全ての系列の造血細胞の一生涯続く産生を提供する。これらの細胞はまた、多くの血液関連疾患および/または悪性腫瘍をもたらす突然変異の標的であることも多い。そのような造血幹細胞は、典型的には、フローサイトメトリー手順によれば、低い前方散乱および側方散乱プロフィールのものである。ミトコンドリア活性の測定を可能にするローダミン標識により証明されるように、いくつかは代謝的に休止している。造血幹細胞は、CD34、CD45、c−kit、Sca−1、PLCP、Flk−1、Mac−1、CD31、VE−カドヘリン、エンドグリンなどの特定の細胞表面マーカーを含む。これらを、例えば、細胞表面CD38マーカーの発現を欠く細胞として定義することもできる。しかしながら、これらのマーカーのいくつかの発現は、発生段階およびHSCの組織特異的背景に依存する。「副集団細胞」と呼ばれる一部のHSCは、フローサイトメトリーにより検出されるHoechst33342を含まない。従って、HSCは、その同定および単離を可能にする記述的特徴を有する。
造血幹細胞(HSC):多能性幹細胞は、骨髄および臍帯血などの体の特定の器官に認められる。これらの幹細胞は、全ての成熟な血液細胞系列の細胞を形成し、従って、骨髄、脾臓、胸腺などの全ての造血組織中の全免疫系ならびに赤血球および骨髄細胞系列を、再コロニー化することができる。さらに、これらの細胞は、自己再生することができる。それらは、全ての系列の造血細胞の一生涯続く産生を提供する。これらの細胞はまた、多くの血液関連疾患および/または悪性腫瘍をもたらす突然変異の標的であることも多い。そのような造血幹細胞は、典型的には、フローサイトメトリー手順によれば、低い前方散乱および側方散乱プロフィールのものである。ミトコンドリア活性の測定を可能にするローダミン標識により証明されるように、いくつかは代謝的に休止している。造血幹細胞は、CD34、CD45、c−kit、Sca−1、PLCP、Flk−1、Mac−1、CD31、VE−カドヘリン、エンドグリンなどの特定の細胞表面マーカーを含む。これらを、例えば、細胞表面CD38マーカーの発現を欠く細胞として定義することもできる。しかしながら、これらのマーカーのいくつかの発現は、発生段階およびHSCの組織特異的背景に依存する。「副集団細胞」と呼ばれる一部のHSCは、フローサイトメトリーにより検出されるHoechst33342を含まない。従って、HSCは、その同定および単離を可能にする記述的特徴を有する。
ナイーブな造血幹細胞:胚、胎児および分娩後早期の供給源に由来する造血幹細胞を、ナイーブ(naive)であると考えることができる。ナイーブとは、これらのHSCを、非造血細胞の直接的な(またはほとんど直接的な)子孫、例えば、造血能力を有する血管芽細胞(内皮および造血系列の共通前駆細胞)または内皮細胞の直接的子孫であると定義する。ナイーブなHSCは、それらが若いため、最も大きな増殖能力を有する。これらを、より古い骨髄に由来するHSCよりも多い数の子孫に増幅することができる。これらは、より広い範囲の分化能力を有し、例えば、成人の骨髄のHSCが生成することができない特殊なTリンパ球およびBリンパ球を生成することができる。重要なことには、ナイーブなHSCは移植片対宿主応答を引き出す可能性が低く、従って、適合したドナーが利用可能でない移植に臨床的に用いることができる。
造血幹細胞の集団:本発明に従えば、造血幹細胞の集団とは、2個以上の幹細胞を指す。好ましくは、それは2、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000または10,000、20,000または50,000個を超える細胞を指す。
造血幹細胞での個体の定着/再生:本明細書に記載の本発明に従えば、この用語は、個体における造血幹細胞の数および/または機能的活性を増加させることを指す。本発明の好ましい実施形態においては、この個体はヒトである。
用語「これらの細胞を取り出すこと」(ヒト個体の胎盤から)とは、ヒト胎盤組織からこれらのHSCを実質的に分離するプロセスを指す。当業者であれば、取り出しプロセスの結果として、得られたHSC細胞集団は100%純粋でなくてもよいことが理解できるであろう。例えば、他の細胞型、細胞および組織マトリックス材料などが存在してもよい。有利には、取り出しプロセスは、他の細胞型と比較して、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、89%、90%、92%、94%、96%、98%、99%のHSCを含むHSC細胞集団をもたらすであろう。最も有利には、取り出しプロセスは、他の細胞型と比較して、100%のHSCを含むHSC細胞集団をもたらすであろう。
発明の詳細な説明
(A)ヒトの分娩後(誕生後)の胎盤からのHSCの取り出し
第1の態様において、本発明は、分娩後のヒト個体の胎盤から造血幹細胞(HSC)を取り出すことを含む、該細胞の集団を取得するための方法を提供する。
(A)ヒトの分娩後(誕生後)の胎盤からのHSCの取り出し
第1の態様において、本発明は、分娩後のヒト個体の胎盤から造血幹細胞(HSC)を取り出すことを含む、該細胞の集団を取得するための方法を提供する。
本発明に従えば、用語「これらの細胞を取り出すこと」(個体の胎盤から)とは、胎盤組織からこれらのHSCを実質的に分離するプロセスを指す。当業者であれば、取り出しプロセスの結果として、得られたHSC細胞集団が100%純粋でなくてもよいことを理解できるであろう。例えば、他の細胞型、細胞および組織マトリックス材料などが存在してもよい。有利には、取り出しプロセスは、他の細胞型と比較して、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、88%、89%、90%、92%、94%、96%、98%、99%のHSCを含むHSC細胞集団をもたらすであろう。最も有利には、取り出しプロセスは、他の細胞型と比較して、100%のHSCを含むHSC細胞集団をもたらすであろう。
取り出し技術
(i)FACSソーティング
FACS(蛍光活性化細胞ソーティング)解析を用いて、HSCの表面上に認められ、有利には、胎盤組織に存在する他の細胞型の表面上には存在しないか、またはその逆の1個以上の細胞表面マーカーに基づいて、他の細胞型から胎盤中のHSCを選別および分離することができる。
(i)FACSソーティング
FACS(蛍光活性化細胞ソーティング)解析を用いて、HSCの表面上に認められ、有利には、胎盤組織に存在する他の細胞型の表面上には存在しないか、またはその逆の1個以上の細胞表面マーカーに基づいて、他の細胞型から胎盤中のHSCを選別および分離することができる。
本発明の上記態様の好ましい実施形態においては、細胞表面マーカーは、以下のもの:CD34、CD38、CD31、c−kit、Flk−1、KDR、Mac−1、CD45、Sca1、Hoechst33342排除、エンドグリン、PLCP(Robinら、2004)からなる群に含まれるもののいずれか1つである。
FACSにより、タグ付抗体、抗免疫グロブリン、または他の結合タンパク質もしくは結合部分の使用を介して細胞を分離および単離することができる。サンプル混合物を、細胞を単離し、それらを帯電させるノズルを通して流し込む。FACSの底部には、2個の可変的に帯電した偏向板および細胞回収装置がある。FACSを実行するためには、残りのリンパ球プールと同様の大きさおよび密度を有する個々の細胞を単離しなければならない。これを、細胞を液体(例えば、生理食塩水)中に懸濁することにより達成する。次いで、この細胞の懸濁液を、微細な、高圧ノズルまたは液体希釈系を通して力をかけ、細胞を一列縦隊のラインまたはフローセル中に分布させる(KiddおよびNicholson 2292)。光は、FACS技術の不可欠な部分である。各セルに当たった光は散乱する。散乱光および蛍光を測定する電子機器を用いることにより、様々な型の細胞およびその大きさを明らかにすることができる。FACSは2つのタイプのデータ収集ハードウェアを有する:光散乱センサーおよび光電子増倍管(PMT)である。光散乱センサーは、2つの異なる角度から各セルにより散乱される光を測定するものである。前方角光散乱センサー(FALS)は、前方方向に散乱した光を集める。このタイプの散乱光は、細胞の大きさに対する手がかりを与える。右側角、直角、または側方光散乱(SS)センサーは、光源の元の方向から90°に散乱した光を集める。この光は、細胞の粒度、屈折性、および光を反射する細胞内構造の存在を示す(Darzynkiewiczら、335)。散乱センサーは、細胞の異なる構造に基づいて細胞を区別するのに有用である。例えば、好中球は、リンパ球よりも大きなSSを示す(KiddおよびNicholson 229)。さらに、様々な細胞系列または様々な発生段階の細胞(すなわち、プレB細胞と血漿B細胞)を、その前方散乱および側方散乱に基づいて区別することができる(Kantor, Merrill,およびHillson 13.1)。最後に、PMTは、細胞に結合した抗体上の蛍光色素から、または細胞の自己蛍光からの蛍光放出を検出する。選択された細胞を回収するために、逆に帯電したプレートにより生成された電界に細胞を通過させる。プレート間の電界の方向を変化させることにより、選択された細胞を正確な回収領域に向かわせることができる(「フローサイトメトリーによるアポトーシス(Apoptosis by Flow Cytometry)」、Manual of Clinical Laboratory Immunology、第5版、Noel R. Rose, Everly Conway deMacario, James D. Folds, H. Clifford Lane, Robert M. Nakamura(編)、Washington, D.C.:American)。
(ii)MACS解析
磁気細胞ソーティング(MACS)のプロセスは、当業者にはよく知られているであろう。そのような技術を、分娩後の胎盤からHSCの集団を取り出す場合に、FACSソーティングに加えて、またはその代替として用いることができる。
磁気細胞ソーティング(MACS)のプロセスは、当業者にはよく知られているであろう。そのような技術を、分娩後の胎盤からHSCの集団を取り出す場合に、FACSソーティングに加えて、またはその代替として用いることができる。
(iii)分娩後の胎盤からのHSCの取り出しのための他の方法
ヒトの分娩後の胎盤からのHSCの取り出しにとって好適な他の方法としては、プラスチック、タンパク質をコーティングしたプレートまたはマトリックスへの接着、密度勾配分画からなる群より選択される技術のいずれか1つ以上が挙げられる。
ヒトの分娩後の胎盤からのHSCの取り出しにとって好適な他の方法としては、プラスチック、タンパク質をコーティングしたプレートまたはマトリックスへの接着、密度勾配分画からなる群より選択される技術のいずれか1つ以上が挙げられる。
(B)分娩後の胎盤から取り出された造血幹細胞
本発明者らは、E11で始まり、その後、数が増加するマウス胎盤中の強力なHSCを見出した。本発明者らは、よく知られたHSCマーカー(Sca1)を利用して、胎盤のHSCを選別し、胎盤のHSCが骨髄のHSCの表現型特性の多くを有することを見出した。最も重要なことに、それらを放射線照射した成体レシピエントマウスに移植した場合、強力な再生活性を有し、長期間の、高いレベルの、複数系列の造血再生をもたらす。
本発明者らは、E11で始まり、その後、数が増加するマウス胎盤中の強力なHSCを見出した。本発明者らは、よく知られたHSCマーカー(Sca1)を利用して、胎盤のHSCを選別し、胎盤のHSCが骨髄のHSCの表現型特性の多くを有することを見出した。最も重要なことに、それらを放射線照射した成体レシピエントマウスに移植した場合、強力な再生活性を有し、長期間の、高いレベルの、複数系列の造血再生をもたらす。
一方で、Mikkolaらの研究(Mikkolaら、2004)と異なり、本発明者らは、妊娠後期のマウス胎盤中にHSCを見出した。より重要なことに、本発明者らは、分娩後のヒト胎盤中に豊富なHSCを見出した。これらの細胞は、ヒト臍帯血造血幹細胞と同程度に強力である。従って、分娩後(誕生後)のヒト胎盤は、HSCの豊富な供給源であり、臨床移植の目的のために活用することができる。さらに、これらはHSCの重要な供給源であり、将来の臨床治療的使用のために臍帯血と共に保存することができる。
造血性である胚の中の組織により共有されるよく認識された特徴は、血管系の連携した発達である。幅広い知見が、出現する造血細胞に対する推定される前駆体としての血管芽細胞(内皮および造血系列の両方の共通の中胚葉前駆体)ならびに血管内皮を支持してきた(Dieterlen-Lievre, 1998; Nishikawa, 2001に概説されている)。胎盤は、実際によく血管新生される組織であり、従って、内皮および造血系列の両方を並行して、おそらくは共通の前駆体から生成することもありうる。この場合、胎盤は発生を通して成長するため、血管形成および造血幹細胞が出現するであろうし、また、HSC活性が両方の細胞系列において単離されるはずである。
これまでに、本発明者らは、HSCマーカーSca−1の調節エレメントの下で、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するLy−6A(Sca−1)GFPトランスジェニックマウスを作製している。これらの研究において、全てのHSC活性がAGM、胎児肝臓および成体骨髄組織中のGFP+画分で確認されることが証明された(de Brujinら、2002;Maら、2002)。さらに、GFP発現が、背部大動脈、卵黄動脈およびYS(卵黄嚢)の主要血管の内皮層に局在することが、E9−11胚の免疫組織学的分析により示された。内皮細胞およびAGMのHSCにおける、このトランスジーン、ならびに他のマーカーの共通する発現は、これらの2つの細胞型の間の密接な関係を強調し、HSCが妊娠中期、ならびにおそらく妊娠の後期段階および分娩後早期の少なくとも一定の期間存在する特殊化された「造血」内皮細胞を生じさせるという考えを支持している。
発生の初期の時点、E6〜E7.5でのこれらのHSCマーカートランスジェニック胚の分析を進める際、高いGFP発現が、胚体外組織;栄養膜円錐(ectoplacental cone)および胚体外外胚葉に限定されることが見出された。これらの部位は胎盤に寄与するので、その一時的な発現を、E9(絨毛膜と尿膜の融合の直後)から、胎盤において試験した。試験した全てのステージで、本発明者らは、高レベルのGFP発現が、胎盤迷路層(胚循環系が母体循環系と接触する胎盤の層)の胚/胎児血管に限定されることを見出した。本発明者らは、この観察に促されて、胎盤におけるHSC活性を試験した。本発明者らは、成体型のHSCが、実際にはE11から胎盤中に存在し、これらが再び専らLy−6A(Sca−1)GFP+画分中に認められることを見出した。さらに、他のHSCマーカーは、迷路領域中でGFP+細胞と共に局在する。これらの結果は、造血幹細胞の強力な生成源としての胎盤に関係し、これらの細胞が胎盤の血管内皮から生じ得ることを示している。さらに、これらのHSCは、母体由来ではない。これらは胚に由来し、従って、これらの細胞は、高い増殖能力、強力な再生能力を有し、血縁関係のないレシピエントへの移植にとって有用である。
ヒト胚における造血幹細胞の発達は、マウス胚のものと密接に類似している。いくつかの素晴らしい研究(MarshallおよびThrasher, 2001; Peault, 1996に概説されている)が行われ、ヒトHSCの起源が試験された。マウスにおけると同様、正常な胚と卵黄嚢の間の循環の開始前に、胚内内臓葉(妊娠3〜4週から)は、多系列化能を有する細胞(リンパ性および骨髄性の両方)を含み、卵黄嚢は骨髄性の能力のみを有する細胞を含む(Tavianら、2001)。正確に妊娠の27日目に始まり(Labastieら、1998;Tavianら、1996)、肝臓造血の確立の直前に、造血細胞クラスターが背部大動脈の腹側壁に接着することが見出された。これらの細胞は、造血前駆細胞に特徴的な表面マーカーを発現し、これらの細胞は胎児肝臓をコロニー形成し、従って、ヒト成体の造血系の創始細胞であると考えられる(Tavianら、1999)。さらに、造血クラスターの下にある腹部大動脈間充組織は、形態学的細胞極性を有する造血間質層に類似している(Marshallら、1999)。重要なことに、ヒト胚内に出現する造血細胞の少なくとも一部は、血管壁中の細胞に由来するようである(Oberlinら、2002)。YSおよびAGMの内皮細胞の造血能力を直接分析するために、Oberlinらは、CD31/CD34およびCD45発現に基づいて、細胞ソーティングにより、これらの組織から内皮細胞および造血細胞を精製した。重要なことに、AGMから単離され、MS−5間質細胞上で培養された内皮のCD31+/CD34+CD45−細胞は、骨髄細胞、NK細胞およびB細胞などの造血性子孫を生じる。対照的に、YSから選別された細胞は、骨髄細胞およびNK細胞のみを生成する。あわせて考えると、これらの結果は、胚内血管内皮の造血能力の存在を強く支持する。ヒト胚における造血細胞の出現とマウス胚におけるそれとの間の類似性により、本発明者らは、HSCに関するヒト胎盤の試験を行うに至った。
これまでに、ヒト胎盤は、造血前駆細胞またはHSCについてではなく、メセンジェニック(mesengenic)細胞(Wulfら、2004)および間葉幹細胞(Fukuchiら、2004;Romanovら、2003;Zhangら、2004)について試験されている。メセンジェニック細胞は満期の胎盤から得られたものであり、3回の継代によりin vitroで増殖させたものであった。これらの細胞は専ら母体起源であり、骨原性、軟骨形成性、脂質生成性および筋原性系列に沿った分化能力を示し、これらは間葉細胞に特徴的なマーカー:CD9、CD29およびCD73を発現していた(Wulfら、2004)。間葉幹細胞/前駆細胞は、胎盤(Fukuchiら、2004;Zhangら、2004)およびまた臍帯中の臍帯内皮の下にある間葉層(Romanovら、2003)から単離されている。これらの細胞は、線維芽細胞様形態を示し、以下の表面マーカーを発現していた:CD73、CD105、CD29、CD44、HLA−ABCおよびCD166。これらはCD14、CD31、CD34、CD45およびHLA−DRについては陰性である。メセンジェニック細胞と同様、それらは脂肪生成系列および骨原性系列に分化し、さらに、軟骨形成性系列に分化する。これらの細胞は表現型およびHSCへの機能の両方において明確に異なり、HSCの支持的微小環境として働き、その増殖および維持を提供し得る。
本発明者らは、HSCの存在について分娩後のヒト胎盤を試験した。本発明者らは、ヒト胎盤中の本物の機能的HSCの存在を、SCID−NODin vivo造血再生アッセイにより証明した。この異種移植アッセイは、骨髄、動員された末梢血および臍帯細胞集団におけるヒトHSCの同定のための信頼できる標準として日常的に用いられている。
分娩後の胎盤を、同意している健康な個体から取得した。妊娠中に、個体をスクリーニングして、ウイルス感染の非存在について検証した。胎盤を回収し、出産後すぐに処理した。胎盤をよく洗浄して、胎盤の血管中に残存する血液を除去し、また、母体の血液の汚染物を除去した。母体の組織成分を分離除去した。胎盤細胞を、機械的方法および酵素的方法により分散させ、単一細胞の懸濁物を得た。一部の場合には、胎盤を2つの部分:胎盤絨毛から構成される部分および主要な胎盤血管に由来する部分(徹底的なコラゲナーゼ処理)に分割した(図7A)。所定のHSCマーカーに関するFACS分析は、両方の胎盤部分における高い割合のC34+およびCD34+38−を示した(図7B)。これらの割合は、臍帯血に認められるものよりも10倍高く、従って、胎盤が豊富で未熟な造血細胞(前駆細胞および幹細胞)を含むことを示唆している(表4)。CD34+胎盤細胞を選別し、単一および複数系列の造血前駆細胞活性について試験した。胎盤の血管部分および絨毛部分は共に、CFU−G、CFU−M、BFU−E、CFU−GMおよびCFU−GEMM(図8)を含んでいたが、これは実際に胎盤のCD34+画分が造血前駆細胞を含むことを示唆している。全ての造血前駆細胞は胎盤細胞のCD34+画分に認められたが、これは100個のCD34+胎盤細胞あたり7.6CFUの頻度で表される。白血球(CFU−G、CFU−M、CFU−GM)および赤血球(BFU−E)細胞系列の両方の前駆細胞は、複数系列(CFU−GMおよびCFU−GEMM)の能力を有する前駆細胞であると認められ、これは胎盤における最も未熟な造血細胞の存在を示唆している。
ヒトHSC機能に関する最も厳格な試験は、免疫欠損SCID−NODマウスレシピエント中への推定されるHSC集団のin vivoでの異種移植である(図9A)。胎盤細胞を、致死未満まで放射線照射されたSCID−NODレシピエントに静脈内注入した場合、ヒトCD45+造血細胞は、早くも移植後3週間の末梢血中に観察された(図9B)。胎盤のHSC再生能力は、臍帯血中に認められるものと等価であるか、またはそれより良好であった(図9B)。胎盤は起源が男性であるので、母体のHSCではなくドナー男性の胎盤HSCが造血再生に寄与したかどうかを決定することが可能であった。ヒトYおよびX染色体PCR法を用いた。図9Cに示されるように、ヒト男性の胎盤細胞を投与された雌のSCID−NODマウスレシピエントの末梢血DNAのPCR(レーン2)は、ヒトY染色体マーカーの存在を示した。等モル濃度のYおよびX染色体マーカーの存在は、再生するHSCがヒト男性の胎盤細胞由来であり、従って、胎盤がin vivoで再生するHSCにおける機能の強力な供給源であることを示している。
(C)分娩後の胎盤から単離されたHSCの表面上で検出される細胞表面マーカー
本発明者らは、以下の細胞表面マーカーを用いて、マウスおよび/またはヒト胎盤から単離されたHSCを検出した:Sca−1、CD34、CD38、CD45、c−kit3。
本発明者らは、以下の細胞表面マーカーを用いて、マウスおよび/またはヒト胎盤から単離されたHSCを検出した:Sca−1、CD34、CD38、CD45、c−kit3。
(D)分娩後の胎盤から単離された造血幹細胞の濃縮
治療的使用および/または機能分析のために分娩後の胎盤から単離/抽出されたHSCの濃縮は、密度勾配遠心分離、活性化、サイズおよび/もしくは細胞周期状態に基づくフローサイトメトリーソーティングならびに組み合わせた表面抗原発現などの様々な技術を介して可能である。当業者であれば、これらの方法に精通しているであろう。しかしながら、現在まで、HSCを特異的に単離するためのユニークな単一表現型特性は見つかっていない。代わりに、いくつかの細胞表面タンパク質マーカーのためのソーティングを、上記の技術と組合わせて、HSCの濃縮において共通に用いる。
治療的使用および/または機能分析のために分娩後の胎盤から単離/抽出されたHSCの濃縮は、密度勾配遠心分離、活性化、サイズおよび/もしくは細胞周期状態に基づくフローサイトメトリーソーティングならびに組み合わせた表面抗原発現などの様々な技術を介して可能である。当業者であれば、これらの方法に精通しているであろう。しかしながら、現在まで、HSCを特異的に単離するためのユニークな単一表現型特性は見つかっていない。代わりに、いくつかの細胞表面タンパク質マーカーのためのソーティングを、上記の技術と組合わせて、HSCの濃縮において共通に用いる。
この文脈においては、マウス成体の骨髄HSCが、最もよく特性評価されている。成熟造血系列特異的マーカーの非存在(Lin−)に加えて、この細胞は2種類のグリコホスファチジルイノシトール結合免疫グロブリンスーパーファミリー分子であるSca−1(Ly6A/E)およびThy−1(低レベルで)を発現し(Spangrudeら、1988)、また、c−kit受容体チロシンキナーゼも高レベルで発現している(IkutaおよびWeissman, 1992)。従って、マウスc−kit+Thy−1lowSca−1+Lin−骨髄細胞集団は、ほとんどの/全てのHSCを明確に包含する。最も最近では、成体の骨髄HSCが、ローダミンを用いたその染色および高いエンドグリン発現に基づいて、効率的に選別されている(Chenら、2003)。
いくつかのHSCマーカーは、種の壁を越えて高度に保存されており(CD34など)、いくつかは動物種(Thy−1、CD38)、対立遺伝子(Thy−1.1/1.2、Ly−6A/E)、発生段階および/または解剖学的な存在部位により変化する(Lansdorpら、1993;Morrisonら、1996;Sanchezら、1996;Spangrudeら、1988)。空間的および時間的な発現の差異に関しては、成体の骨髄HSCはCD34+またはCD34−であってよいが(Itoら、2000;Ogawa, 2002; Osawaら、1996)、全てのAGMおよび胎児肝臓のHSCはCD34+である。従って、HSCを特徴付ける分子プロフィールは可変的であり、胚でのHSCは、その局在ではなく、おそらくそれらが幹細胞の運命を獲得する新たに出現する細胞であるという事実に起因して、その成体の対応物とはいくらか表現型が異なっている。
特に、AGMのHSCは、ユニークな誘導的微小環境において胚の主要血管と密接に関連することが見出されている。この共局在化により示唆される造血系列と内皮系列の間の発生系列的関係は、マウス胚中の両方の関連する細胞型におけるFlk1、tie−2、CD31、CD34、c−kit、AA4.1、Flt−3リガンド、VEGFR1/2、Sca−1、VCAM1などの表面マーカーならびにSCL、GATA−2、Runx1およびLmo2などの転写因子の共通の発現を示す分子発現研究を介して強化されている(Garcia-Porreroら、1998; Kellerら、1999; Nishikawa, 2001; Shivdasaniら、1995; ZhuおよびEmerson, 2002)。ヒトの胚においては、CD34およびCD31は、血管内皮細胞、造血前駆細胞および幹細胞により発現されている(Bonnet, 2002; MarshallおよびThrasher, 2001)。両方の動物種において、CD45は専ら、HSCなどの造血細胞により発現される。従って、CD34(または内腔に最も近い細胞に限定されることが多いCD31)およびCD45の示差的発現により、近くの内皮細胞(CD34/31+CD45−)からの大動脈内造血細胞クラスター(CD34/31+CD45+)の識別が可能になる(Garcia-Porreroら、1998;Jaffredoら、1998;Marshallら、1999;Tavianら、1996)。前記クラスター中のヒト大動脈内CD34+細胞は、いくつかの造血転写因子(SCL、GATA−2、Runx1およびc−myb)ならびにまたホーミングおよび接着に関与する多くの分子(CD44/HCAM、WASP、CD106/V−CAM1、VE−カドヘリン、CD31)を発現している(Bernexら、1996;Garcia-Porreroら、1998;Labastieら、1998;Marshallら、1999)。前記クラスター中の大多数の細胞は、フォン・ウィルブラント因子(vWf)−であり、BSLB4−であるが、造血クラスターの下にある領域はvWf+である。ヒト胎児の肝臓においては、内皮細胞とHSCとの間の識別は、CD34発現が造血細胞に限定され、CD31発現が内皮細胞に限定されるため、より容易である。いくつかの内皮マーカーの発現が発生中に変化しうるものであり、血管の局在および大きさにも依存することを理解することが重要である。例えば、全ての内皮細胞はCD34+かつCD31+であるが、vWfおよびFGF−R発現は大型の血管に限定され、BSLB4発現は毛細血管に限定される。いくつかのマーカー(CD31、vWfまたはレクチンBSLB4)は血管の発達の開始時から存在する。
機能研究のためのマウス胚からのHSCの単離は、主にc−kit、CD34、Sca−1およびRunx1マーカーに頼ってきた。成体の骨髄HSCおよび造血前駆細胞を選別するのに一般的に用いられるc−kitマーカーは、妊娠中期のマウスAGM細胞の10〜15%で発現される(Sanchezら、1996)。全ての妊娠中期のAGMのHSCは、c−kit選別細胞によるin vivoでの再生により決定されるように、高レベルでc−kitを発現する。CD34はc−kit+AGM細胞の25%のみにおいて発現されているため、c−kitおよびCD34発現の両方に基づくソーティングにより、HSCのさらなる濃縮が達成される(全細胞の約2%である)。興味深いことに、成体における成熟マクロファージ系列マーカーであるMac−1(成体の骨髄HSC上では発現されない)は、AGMのc−kit+HSCの50%において発現される(Sanchezら、1996)。全ての胎児肝臓のHSCでのMac−1の公知の発現と共に、この発現は、このマーカーが、胎児肝臓に移動し、コロニー形成するHSCを示すことを示唆している。また、E11マウスAGMにおいては、約2%の細胞がSca−1+である。Sca−1選別細胞を用いた長期移植実験により、HSCが、成体の骨髄および胎児肝臓選別から予想されるように、Sca−1+画分においてのみではなく、両方のAGM細胞画分、Sca−1+およびSca−1−に局在することが示された(de Bruijnら、2002)。それらはAGM領域において活発に生成されるため、この結果を、HSCによるSca−1の低いか、または陰性の発現により説明することができる。この考えは、Sca−1(Ly−6A)遺伝子調節配列の制御下でGFPレポーター遺伝子を発現するトランスジェニックマウスから得られる結果により支持される。これらのマウスにおいては、全ての成体骨髄HSCは、Ly−6A GFPトランスジーンを発現し、GFP発現に基づいてソーティングする(HSCの100倍の濃縮が達成される)(Maら、2002)。重要なことに、2%のE11 AGM細胞がGFPを発現し、Sca−1マーカーと違って、Ly−6A GFPトランスジーン発現はAGM領域における全てのHSCをマークする。これらのHSCの表面上のSca−1タンパク質は限定的であってよいが、8コピーのLy−6A GFPトランスジーンにより生成される細胞質蛍光シグナルにより、より高い感度の検出が可能になる。これらのGFP+細胞は、特に大動脈内皮およびAGMの結合した造血クラスター中に認められる。従って、全てのAGM HSCがGFP+であるという知見と共に、Ly−6A GFPの時間的および空間的な発現パターンは、妊娠中期のマウス胚における大動脈内皮および/または結合した造血クラスターにこれらの最初の幹細胞を局在化させる。これは、大動脈内皮および造血クラスターにおけるc−kitおよびCD34の発現パターンと一致している。さらに、全てのAGM HSCはCD31+、VE−カドヘリン+であり、50%はFlk−1+である(Northら、2002)。
また、AGM HSCに関する徹底的なソーティング実験を、lacZレポーター遺伝子をRunx1転写因子遺伝子中に組みいれた胚を用いて実施した。Runx1を欠損したマウスは、最終的な造血の完全な遮断を有するが、初期のYS造血は影響を受けない(Okudaら、1996;Wangら、1996)。E10.5 AGM領域におけるRunx1発現(突然変異対立遺伝子におけるlacZレポーターの発現により追跡される)は、背部大動脈の内腔中の造血細胞ならびに内皮に付着した細胞中にある(Northら、1999)。背部大動脈中の内皮細胞は陽性であり、その大部分は大動脈の腹部側に位置する。ソーティングされ、放射線照射された成体マウスレシピエント中に移植された場合、全ての妊娠中期のAGM HSCはRunx1 lacZ+であることが判明した(Northら、2002)。従って、HSCを、胚の内皮および造血クラスターに局在する限定数の細胞におけるいくつかの細胞表面マーカーおよび分子マーカーの発現に基づいて効率的に単離することができる。
(E)分娩後の胎盤から単離された造血幹細胞の濃縮
いくつかの培養系は、HSCの生育および増殖の機会を提供する。全AGM組織の体外培養物により、3日以内にHSC活性が16倍増加する(Medvinskyら、1996)。胎盤の体外培養物を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる。あるいは、AGMおよび/または胎盤から単離された間質細胞を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる。造血性増殖因子のカクテルの添加も、そのような増殖培養物においては有用であり、IL−3(表3)、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβが挙げられる(図6)。本発明者らは、胎盤のHSCを、造血性増殖因子IL−3におけるex vivo培養により増加させることができる。マウスの胎盤組織を、IL−3の非存在下または存在下で3日間、外植片として培養した。これらのex vivo処理された胎盤に由来する細胞を、放射線照射された成体レシピエントマウスに注入して、HSC再生について試験した。ドナー細胞再生を比較した。図10に示されるように、ex vivoでIL−3により処理された胎盤は、より多くのレシピエントを再生させた。実際、IL−3中での培養により、HSC活性が1.8〜5倍増加した。従って、胎盤組織のex vivoでの処理は、強力なHSCの生育および増殖のための多くの機会を提供する。
いくつかの培養系は、HSCの生育および増殖の機会を提供する。全AGM組織の体外培養物により、3日以内にHSC活性が16倍増加する(Medvinskyら、1996)。胎盤の体外培養物を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる。あるいは、AGMおよび/または胎盤から単離された間質細胞を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる。造血性増殖因子のカクテルの添加も、そのような増殖培養物においては有用であり、IL−3(表3)、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβが挙げられる(図6)。本発明者らは、胎盤のHSCを、造血性増殖因子IL−3におけるex vivo培養により増加させることができる。マウスの胎盤組織を、IL−3の非存在下または存在下で3日間、外植片として培養した。これらのex vivo処理された胎盤に由来する細胞を、放射線照射された成体レシピエントマウスに注入して、HSC再生について試験した。ドナー細胞再生を比較した。図10に示されるように、ex vivoでIL−3により処理された胎盤は、より多くのレシピエントを再生させた。実際、IL−3中での培養により、HSC活性が1.8〜5倍増加した。従って、胎盤組織のex vivoでの処理は、強力なHSCの生育および増殖のための多くの機会を提供する。
(F)分娩後のヒト胎盤造血幹細胞の保存
ヒト臍帯血造血細胞を、GMP条件の下でよく確立されたプロトコルにより、成分既知の凍結培地中で保存する臍帯血バンクが確立されている。細胞を液体窒素中で無期限に保存したが、この細胞はHSC活性を保持することが示された。本発明者らは、ヒトのCD34+胎盤細胞の維持について試験し、そのような細胞が生存能力を保持し、保存後にも機能的であり、濃縮されてさえいることを見出した(表5)。従って、胎盤のHSCは、バンク保存および臨床治療における将来の使用のための優れた候補幹細胞である。
ヒト臍帯血造血細胞を、GMP条件の下でよく確立されたプロトコルにより、成分既知の凍結培地中で保存する臍帯血バンクが確立されている。細胞を液体窒素中で無期限に保存したが、この細胞はHSC活性を保持することが示された。本発明者らは、ヒトのCD34+胎盤細胞の維持について試験し、そのような細胞が生存能力を保持し、保存後にも機能的であり、濃縮されてさえいることを見出した(表5)。従って、胎盤のHSCは、バンク保存および臨床治療における将来の使用のための優れた候補幹細胞である。
(G)本発明の顕著性
本発明者らは、胚と母体の間での酸素および栄養素の交換にとって必要な高度に血管形成された組織である胎盤が、強力な成体再生性HSCを含むことを本明細書において示した。これらは、マウスにおけるヒトβ−グロビンおよびLy−6A GFPトランスジェニックマーカー(表1)およびSCID−NOD移植マウスにおけるヒト男性Y染色体マーカー陽性細胞(図9C)の存在により証明されるように、母体由来のHSCではなく、受胎産物に由来するものである。さらに、HSCの割合(CD34+38−表現型により定義される)は、臍帯血におけるよりもヒト胎盤においてより高い(表4)。これらは、放射線照射された成体レシピエントの長期間、高レベルの複数系列の造血移植をもたらすという点で、成体の骨髄に由来するHSCと同じぐらい強力である。胎盤のHSCはまた、それらが二次レシピエントを再生することができるのであるから、自己再生もできる。マウスおよびヒト動物種におけるこれらの新規データは今や、AGMおよびYSと共に、胎盤が胎児の肝臓および骨髄に連続的に移動し、コロニー形成するHSCのさらなる生成源であるという知見を提供する(図5)。さらに、胎盤のHSCを、造血性増殖因子によるex vivoでの処理により増加させることができる。胎盤のHSCを保存し、移植における後の使用のためにその生存能力および機能を維持させることができる。従って、胎盤のHSCは、バンク保存および臨床移植および細胞置換治療における使用にとって大きな利益を提供する。
本発明者らは、胚と母体の間での酸素および栄養素の交換にとって必要な高度に血管形成された組織である胎盤が、強力な成体再生性HSCを含むことを本明細書において示した。これらは、マウスにおけるヒトβ−グロビンおよびLy−6A GFPトランスジェニックマーカー(表1)およびSCID−NOD移植マウスにおけるヒト男性Y染色体マーカー陽性細胞(図9C)の存在により証明されるように、母体由来のHSCではなく、受胎産物に由来するものである。さらに、HSCの割合(CD34+38−表現型により定義される)は、臍帯血におけるよりもヒト胎盤においてより高い(表4)。これらは、放射線照射された成体レシピエントの長期間、高レベルの複数系列の造血移植をもたらすという点で、成体の骨髄に由来するHSCと同じぐらい強力である。胎盤のHSCはまた、それらが二次レシピエントを再生することができるのであるから、自己再生もできる。マウスおよびヒト動物種におけるこれらの新規データは今や、AGMおよびYSと共に、胎盤が胎児の肝臓および骨髄に連続的に移動し、コロニー形成するHSCのさらなる生成源であるという知見を提供する(図5)。さらに、胎盤のHSCを、造血性増殖因子によるex vivoでの処理により増加させることができる。胎盤のHSCを保存し、移植における後の使用のためにその生存能力および機能を維持させることができる。従って、胎盤のHSCは、バンク保存および臨床移植および細胞置換治療における使用にとって大きな利益を提供する。
HSCを増殖させるか、またはその生成のための容器としての胎盤
本発明者らにより提供されたデータは、マウスのE11の前には、胎盤のHSC活性は限定的であるようであることを示す。E9またはE10ではマウス胎盤においてHSCが認められなかった(表1)。E11では、胎盤細胞の2組織等量を投与された5匹の移植レシピエントのうちの1匹のみが、HSC移植される。E12では、胎盤あたり12個のHSCが認められたが、これらの数はその後増加する。従って、マウス胎盤におけるHSCの数は、発生期と共に急速に増加する。実際に、多数の未熟な前駆細胞がマウス胎盤においてこれまでに認められているが、これは胎児の肝臓において認められた数を大きく超えている(Alvarez-Silvaら、2003)。ここで、本発明者らは、分娩後のヒト胎盤が、放射線照射されたレシピエントを機能的に再生することができる強力なHSCを含むことを示した。他の者は、ヒト胎盤が、造血コロニー形成を刺激する造血性増殖因子を分泌することを示している(Burgessら、1977)。より最近の研究は、ヒト胎盤から単離された間葉前駆細胞が、臍帯血に由来する長期間の培養開始細胞を増殖させることができることを証明している(Zhangら、2004)。従って、胎盤の造血性増殖能力は非常に高く、それがHSCのための強力な造血性微小環境であることを証明している。
本発明者らにより提供されたデータは、マウスのE11の前には、胎盤のHSC活性は限定的であるようであることを示す。E9またはE10ではマウス胎盤においてHSCが認められなかった(表1)。E11では、胎盤細胞の2組織等量を投与された5匹の移植レシピエントのうちの1匹のみが、HSC移植される。E12では、胎盤あたり12個のHSCが認められたが、これらの数はその後増加する。従って、マウス胎盤におけるHSCの数は、発生期と共に急速に増加する。実際に、多数の未熟な前駆細胞がマウス胎盤においてこれまでに認められているが、これは胎児の肝臓において認められた数を大きく超えている(Alvarez-Silvaら、2003)。ここで、本発明者らは、分娩後のヒト胎盤が、放射線照射されたレシピエントを機能的に再生することができる強力なHSCを含むことを示した。他の者は、ヒト胎盤が、造血コロニー形成を刺激する造血性増殖因子を分泌することを示している(Burgessら、1977)。より最近の研究は、ヒト胎盤から単離された間葉前駆細胞が、臍帯血に由来する長期間の培養開始細胞を増殖させることができることを証明している(Zhangら、2004)。従って、胎盤の造血性増殖能力は非常に高く、それがHSCのための強力な造血性微小環境であることを証明している。
近年、妊娠中期のマウスにおける様々な造血組織および循環中に存在するHSC数に関する定量データが提供された。Kumaraveluらは、E12で、循環中に3.2個のHSCが存在することを見出した(Kumaraveluら、2002)。循環に起因して組織中のHSCの数を補正すると、マウスのAGMは2.7個のHSC、YSは1.8個、肝臓は53個および臍帯血は0.8個のHSCを含むことが見出された。E12マウス胎盤が12個のHSCを含む(胎児血の全部におけるよりも4倍多いHSC)ことを考慮し、胎児肝臓がE12で53個のHSCを含むことを考慮すれば、胎盤はAGMおよびYSと共に、胎児肝臓のコロニー形成に対する強力なHSC寄与因子である可能性が極めて高い。
胎盤中のHSCが内因性または外来性のいずれで生成されるかは依然として不確かである。胎盤がE10またはそれ以前でHSCを含むことが認められた場合、胎盤がマウス胚におけるHSCの出現の最初の部位であることを意味するであろう。これまでは、E10のAGM領域におけるHSC活性の開始を検出するためには、96体の成体レシピエントに、合計112個のAGM組織等量の細胞を移植して、3体のレシピエントの長期間、高レベルの複数系列の再生を観察することが必要であった(Mullerら、1994)。この研究においてE10の胎盤細胞を移植されたマウスの数が限定されていることを考慮すれば、胎盤がこれより早い時点でHSCを含む可能性も残されている。従って、胎盤におけるHSCの起源は不確かであり、系列マーキング手法の結果が待たれる。
胎盤のHSCと血管系の連携
HSCなどのマウス胚中の最も早い造血細胞に対する造血マーカーおよび内皮マーカーの強い関連は、胎盤に関する本発明者らの研究を促した。Ly−6A GFPトランスジェニックマーカーは、胎盤の主要血管に並ぶ内皮細胞中で発現されることが見出された。さらに、全てのHSC活性は、胎盤のGFP+画分に起因すると考えられた。従って、これまでのデータと一致して、Ly−6A GFP発現は再び、全てのHSCをマークする。胎盤中のGFP+細胞の数はHSCの数を大きく超えるが、他のマーカー(CD34、CD31、c−kitなど)を用いて、胎盤のHSCをさらに局在化させた。AGMに関する以前の研究により、全てのAGMのHSCはc−kit+CD34+であり(Sanchez, 1996)、CD31+である(Northら、2002)ことが示されている。本発明者らの多色フローサイトメトリー解析は、胎盤のHSCがGFP+c−kit+CD34+であることを強く示唆している(表2)。
HSCなどのマウス胚中の最も早い造血細胞に対する造血マーカーおよび内皮マーカーの強い関連は、胎盤に関する本発明者らの研究を促した。Ly−6A GFPトランスジェニックマーカーは、胎盤の主要血管に並ぶ内皮細胞中で発現されることが見出された。さらに、全てのHSC活性は、胎盤のGFP+画分に起因すると考えられた。従って、これまでのデータと一致して、Ly−6A GFP発現は再び、全てのHSCをマークする。胎盤中のGFP+細胞の数はHSCの数を大きく超えるが、他のマーカー(CD34、CD31、c−kitなど)を用いて、胎盤のHSCをさらに局在化させた。AGMに関する以前の研究により、全てのAGMのHSCはc−kit+CD34+であり(Sanchez, 1996)、CD31+である(Northら、2002)ことが示されている。本発明者らの多色フローサイトメトリー解析は、胎盤のHSCがGFP+c−kit+CD34+であることを強く示唆している(表2)。
Ly−6A GFPトランスジェニック胎盤の免疫染色は、これらのHSCがCD34+であるという考えをさらに支持してきた。CD34とGFPを同時発現する細胞が、迷路領域中に認められた(図3)。この高度に血管形成された領域は、胎児血管を裏打ちする同時発現細胞を示した。同様に、低い頻度であるが、CD31とGFPを同時発現する細胞が迷路の血管を裏打ちする内皮細胞中にも認められた。さらに、c−kit発現が、in situ転写解析により、この領域中のいくつかの細胞中に認められた(図4A)。本発明者らが、これらの表現型特性を有する顕著な造血クラスターを見出した切片はなかった。しかしながら、本発明者らは、より大きな血管の内腔表面に緊密に接着する稀な単一のGFP+細胞を観察した。従って、GFPおよびCD34/CD31が腹部大動脈の内皮細胞および結合した造血クラスターの一部の細胞中で同時発現されるAGM領域と類似して、これらのマーカーも、胎盤の推定される造血内皮中でのこれらの2つの系列の関連を示唆し得る。同様に、ヒトCD34マーカー(図7B)は、ヒト胎盤における造血内皮とHSCとの間の関連を示唆している。
胎盤造血における転写因子GATA2およびRunx1の役割
以前、GATA2およびGATA3が、妊娠中期の胎児−母体境界に位置する栄養膜巨細胞中、胎盤中で高度に発現されることが報告された(Ngら、1994)。GATA転写因子は、プロラクチンホルモン胎盤ラクトーゲンIおよび血管新生因子プロリフェリンなどのいくつかの栄養膜特異的遺伝子の発現を調節する(Maら、1997;Ngら、1994)。これらの分子は、境界領域における胎盤の新血管形成において重要な役割を果たすようである(Maら、1997)。本発明者らも、栄養膜巨細胞におけるこれらの転写因子の発現を見出した。彼らが見出したより低い頻度のGATA3を発現する栄養膜細胞(図4E−F)は、標的対立遺伝子の欠損に起因するGATA3のハプロ不全を反映するものである可能性が最も高かった。にもかかわらず、GATA3はその発現においてこれらの細胞に限定されたが、これはE10後にその発現を迅速に減少させることが知られている(Ngら、1994)。
以前、GATA2およびGATA3が、妊娠中期の胎児−母体境界に位置する栄養膜巨細胞中、胎盤中で高度に発現されることが報告された(Ngら、1994)。GATA転写因子は、プロラクチンホルモン胎盤ラクトーゲンIおよび血管新生因子プロリフェリンなどのいくつかの栄養膜特異的遺伝子の発現を調節する(Maら、1997;Ngら、1994)。これらの分子は、境界領域における胎盤の新血管形成において重要な役割を果たすようである(Maら、1997)。本発明者らも、栄養膜巨細胞におけるこれらの転写因子の発現を見出した。彼らが見出したより低い頻度のGATA3を発現する栄養膜細胞(図4E−F)は、標的対立遺伝子の欠損に起因するGATA3のハプロ不全を反映するものである可能性が最も高かった。にもかかわらず、GATA3はその発現においてこれらの細胞に限定されたが、これはE10後にその発現を迅速に減少させることが知られている(Ngら、1994)。
GATA2は、以前に記載されたものよりもかなり多い幅広い発現パターンを有していた(図4B−D)。GATA2は、迷路の血管を裏打ちするいくつかの内皮細胞、ならびに血管周囲の多くの細胞において発現されていた。発現の強度は、胎盤の絨毛膜板に近くなるにつれて増加した。迷路領域と絨毛膜板との境界で、GATA2発現が最も高かった。従って、GATA2は、血管新生因子の発現を調節することにより、迷路の新血管形成にとって必要でありうる。さらに、それは、迷路中の造血内皮細胞からのHSCの生成および/または増殖にも関与している可能性がある。
これまでに、胎盤におけるRunx1の発現がRT−PCRにより見出された(Alvarez-Silvaら、2003)が、胎盤内でのその発現パターンは研究されなかった。最も重要なHSC転写因子の1つとして、Runx1が、妊娠中期の胚におけるHSCの出現にとって必要であり、大動脈造血クラスター、内皮細胞および下にある間葉細胞中で発現されている(Northら、1999)。胎盤におけるRunx1 lacZの発現パターンは、このパターンに類似している(図4G−J)。本発明者らは、迷路の血管系の内腔ならびに血管を裏打ちする内皮細胞の一部において高レベルのRunx1を発現する細胞を見出した。内皮の一部の下にあるより低いレベルの発現細胞が見出された。従って、AGM領域におけるのと同様、Runx1は、HSCの出現において役割を果たす可能性が最も高い。
最後に、本発明者らは、胎盤のHSC生成における癌遺伝子c−fosの役割の可能性も調査した。高レベルのc−fosが胎盤中で以前に観察され(Mullerら、1983)、c−fos−/−胚における胎盤の欠陥が比較的低い胎盤重量に基づいて示唆されたが、結論的な知見は提供されなかった(Johnsonら、1992)。本発明者らは、c−fos−/−胚からE12胎盤を移植し、いくらか低レベルのHSC活性が依然として存在することを見出した(データは示していない)。
まとめると、本発明者らは、マウスおよびヒトの胎盤は高度に造血性のある組織であることを見出し、これは強力なin vivo再生性HSCの増殖および/または出現を支持している。フローサイトメトリー解析および組織学的解析により見出されたように、胎盤は造血内皮を有するようである。にもかかわらず、これを、胚の主要な血管系内のHSC発達についての繰り返されるテーマの別の例として取ることができ、Ly−6A GFPトランスジーンが胚における造血内皮の有用なマーカーとして役立つことを示唆している。従って、結果はここで、HSCを含む胚組織の一覧に胎盤を加え(図5)、それが成体の造血系の長期間の発達およびHSCを含む骨髄のコロニー形成において重要な役割を果たすことが提唱される。
ここで、本発明を、以下の実施例により説明するが、いかなる意味でも本発明を限定すると考えないものとする。
実施例1:材料および方法
ヒト胎盤を、エラスムスメディカルセンター(Erasmus MC)および医学倫理審理会の規則に従って、通常の満期妊娠(同意しているドナー)から回収する。羊膜嚢および脱落膜などの余分な組織ならびに他の母体成分を、胎盤から除去する。全胎盤ならびに血管迷路を、EDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で十分に洗浄する。0.125%のI型コラゲナーゼ(またはジスパーゼもしくはトリプシンなどの他の酵素)を含む培地を、血管迷路の内側に注入して、緊密に接着し、出現している造血細胞および造血内皮を分離する。培地を注入された胎盤を37℃で1時間インキュベートする。インキュベーション後、溶液を回収し、迷路を十分に洗浄する。洗浄液をプールし、細胞を1000rpmで5分間、遠心分離する。単核細胞を、FicollまたはPercoll中での密度勾配遠心分離後に回収する。
ヒト胎盤を、エラスムスメディカルセンター(Erasmus MC)および医学倫理審理会の規則に従って、通常の満期妊娠(同意しているドナー)から回収する。羊膜嚢および脱落膜などの余分な組織ならびに他の母体成分を、胎盤から除去する。全胎盤ならびに血管迷路を、EDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で十分に洗浄する。0.125%のI型コラゲナーゼ(またはジスパーゼもしくはトリプシンなどの他の酵素)を含む培地を、血管迷路の内側に注入して、緊密に接着し、出現している造血細胞および造血内皮を分離する。培地を注入された胎盤を37℃で1時間インキュベートする。インキュベーション後、溶液を回収し、迷路を十分に洗浄する。洗浄液をプールし、細胞を1000rpmで5分間、遠心分離する。単核細胞を、FicollまたはPercoll中での密度勾配遠心分離後に回収する。
到着したばかりのヒト満期胎盤からの絨毛部分を冷却したPBS中で切り出し、細かく刻み、ステンレススチール製の大きな網状格子を通過させる。細胞を、冷却したハンクス平衡化塩溶液(HBSS)またはEDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でよく洗浄する。次いで、残りの組織断片を、10%ウシ胎仔血清(または他の無血清添加物)およびペニシリン/ストレプトマイシン(または他の好適な抗生物質)を添加したPBS(または199培地)中の0.125%のI型コラゲナーゼ(Sigma-Aldrich Chemie, Gmbh, Germany)で1.5〜2時間処理する。次いで、繰り返しピペッティングすることにより組織を分散させ、遠心管に移す。沈降後、懸濁された細胞を新鮮な遠心管に移し、大きな断片の残りのペレットを、10%ウシ胎仔血清(または他の無血清添加物)およびペニシリン/ストレプトマイシン(または他の好適な抗生物質)を添加した冷却PBS(またはHBSS)で数回洗浄する。各洗浄液に由来する懸濁された細胞をプールする。より小さい細胞塊を、懸濁された細胞の最大収量のために酵素的消化(例えば、0.2%トリプシン/0.1%IV型Dnase)を用いてさらに処理する。次いで、プールした細胞を、コース滅菌綿メッシュおよび/または56〜100μmナイロンメッシュを通して濾過する。多数の赤血球を、細胞懸濁液を密度勾配遠心分離にかけることにより除去する。これらのステップにより、既に高レベルの濃縮物が得られる。
生きた細胞の計数を、さらなる濃縮手順、アッセイまたは保存の前にトリパンブルー排除により行う。
胎盤細胞型からの他の細胞の排除
胎盤中の様々な細胞集団を、陰性選択することができる。これらのものとしては、間葉幹細胞(MSC)および栄養膜細胞が挙げられる。栄養膜細胞を、Klimanらの方法(Klimanら、1986)により排除することができる。ヒト胎盤間葉幹細胞/前駆細胞を、これらの細胞上で発現される細胞表面マーカーに基づいて抗体を介した選択によって排除することができる。この方法により、母体の細胞を排除するか、または胎児の細胞を濃縮することもできる。これらのものとしては、CD73、CD29、CD44、HLA−ABCなどの抗原に対する抗体が挙げられる。1個以上のこれらのマーカーを、胎盤細胞プールからこれらの細胞を排除する陰性選択手順において用いることができる。これらの抗体を、磁気ビーズ、パニングまたはフローサイトメトリー法による陰性選択に用いることができる。さらなる予備濃縮ステップは、プラスチックまたは試薬でコーティングされたプレートへの接着を含んでもよい。例えば、このより単純な手法により、線維芽細胞型の細胞が排除される。
胎盤中の様々な細胞集団を、陰性選択することができる。これらのものとしては、間葉幹細胞(MSC)および栄養膜細胞が挙げられる。栄養膜細胞を、Klimanらの方法(Klimanら、1986)により排除することができる。ヒト胎盤間葉幹細胞/前駆細胞を、これらの細胞上で発現される細胞表面マーカーに基づいて抗体を介した選択によって排除することができる。この方法により、母体の細胞を排除するか、または胎児の細胞を濃縮することもできる。これらのものとしては、CD73、CD29、CD44、HLA−ABCなどの抗原に対する抗体が挙げられる。1個以上のこれらのマーカーを、胎盤細胞プールからこれらの細胞を排除する陰性選択手順において用いることができる。これらの抗体を、磁気ビーズ、パニングまたはフローサイトメトリー法による陰性選択に用いることができる。さらなる予備濃縮ステップは、プラスチックまたは試薬でコーティングされたプレートへの接着を含んでもよい。例えば、このより単純な手法により、線維芽細胞型の細胞が排除される。
胎盤造血幹細胞を含む細胞の陽性選択
内皮細胞および造血幹細胞は表現型を共有するため、また両集団内の臨床的に同等な再生幹細胞の最適な単離のため、濃縮プロセスはこれらの細胞系列の両方の単離を狙ったものである。内皮細胞は、内皮内のそれらの強い結合を破壊し、単一細胞懸濁液を取得するためにさらなる処理を必要とするため、組織調製物を酵素的灌流にさらに供して、小型の胎盤血管から内皮細胞を放出させることができる。次いで、さらなる精製ステップは、単核細胞を単離するための密度勾配における遠心分離を含む。再生性HSCについての濃縮における最終ステップは、特異的抗体を介する細胞ソーティング、パニングまたはプレート接着手順であってよい。最初に、系列マーカー(CD19、CD8、CD4、CD15、CD11b、CD56などの成熟造血細胞マーカー)はHSC上には認められないため、これらのマーカーを発現する細胞の陰性選択により、HSCを成熟造血細胞から分離することができる。系列マーカーに対する抗体のカクテルを用いて、単一ステップで成熟造血細胞を除去することができる。陽性濃縮ステップとして、HSC活性をCD34+CD38−およびCD34+CD38−−集団中で取得することができる。あるいは、Hoechst33342染色された細胞の副集団およびより具体的には、副集団の一部は、非常に濃縮されたHSC集団をもたらすことができる。
内皮細胞および造血幹細胞は表現型を共有するため、また両集団内の臨床的に同等な再生幹細胞の最適な単離のため、濃縮プロセスはこれらの細胞系列の両方の単離を狙ったものである。内皮細胞は、内皮内のそれらの強い結合を破壊し、単一細胞懸濁液を取得するためにさらなる処理を必要とするため、組織調製物を酵素的灌流にさらに供して、小型の胎盤血管から内皮細胞を放出させることができる。次いで、さらなる精製ステップは、単核細胞を単離するための密度勾配における遠心分離を含む。再生性HSCについての濃縮における最終ステップは、特異的抗体を介する細胞ソーティング、パニングまたはプレート接着手順であってよい。最初に、系列マーカー(CD19、CD8、CD4、CD15、CD11b、CD56などの成熟造血細胞マーカー)はHSC上には認められないため、これらのマーカーを発現する細胞の陰性選択により、HSCを成熟造血細胞から分離することができる。系列マーカーに対する抗体のカクテルを用いて、単一ステップで成熟造血細胞を除去することができる。陽性濃縮ステップとして、HSC活性をCD34+CD38−およびCD34+CD38−−集団中で取得することができる。あるいは、Hoechst33342染色された細胞の副集団およびより具体的には、副集団の一部は、非常に濃縮されたHSC集団をもたらすことができる。
胎盤のHSCの生育および増殖の増強
いくつかの培養系は、HSCの生育および増殖の機会を提供する。全AGM組織の体外培養物は、3日以内にHSC活性を16倍まで増大させる(Medvinskyら、1996)。胎盤の同様の培養物を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる。あるいは、AGMおよび/または胎盤から単離された間質細胞を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる(図6)。造血性増殖因子のカクテルの添加も、そのような増殖培養物において有用であり、IL−3(表3)、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβ(図6)が挙げられる。
いくつかの培養系は、HSCの生育および増殖の機会を提供する。全AGM組織の体外培養物は、3日以内にHSC活性を16倍まで増大させる(Medvinskyら、1996)。胎盤の同様の培養物を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる。あるいは、AGMおよび/または胎盤から単離された間質細胞を用いて、胎盤のHSCを増殖させることができる(図6)。造血性増殖因子のカクテルの添加も、そのような増殖培養物において有用であり、IL−3(表3)、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβ(図6)が挙げられる。
実施例2
結果
胚の高度に血管形成された組織におけるLy−6A GFPの発現
これまでに、本発明者らは、妊娠中期のマウス胚のAGM領域中の全てのHSCが、Ly−6A GFP+大動脈細胞画分に局在することを示した(de Bruijnら、2002)。GFP発現は背部大動脈の一部の内皮細胞で認められ、卵黄動脈を裏打ちする内皮細胞においては、より強い発現でさえ認められる(図1A)。大動脈および卵黄動脈の内腔に沿う造血クラスターも、GFP+細胞を含む(図1B)。さらに、強いGFP発現は、臍動脈(図1E)およびYSの主要血管(de Bruijnら、2002)において認められる。これらの部位は全て、放射線照射された成体レシピエントへのin vivoでの移植により決定されるように、強力なHSC活性を有する(de Bruijnら、2000;Medvinskyら、1996)。
結果
胚の高度に血管形成された組織におけるLy−6A GFPの発現
これまでに、本発明者らは、妊娠中期のマウス胚のAGM領域中の全てのHSCが、Ly−6A GFP+大動脈細胞画分に局在することを示した(de Bruijnら、2002)。GFP発現は背部大動脈の一部の内皮細胞で認められ、卵黄動脈を裏打ちする内皮細胞においては、より強い発現でさえ認められる(図1A)。大動脈および卵黄動脈の内腔に沿う造血クラスターも、GFP+細胞を含む(図1B)。さらに、強いGFP発現は、臍動脈(図1E)およびYSの主要血管(de Bruijnら、2002)において認められる。これらの部位は全て、放射線照射された成体レシピエントへのin vivoでの移植により決定されるように、強力なHSC活性を有する(de Bruijnら、2000;Medvinskyら、1996)。
これらの公知の造血組織に加えて、胎盤も高度に血管形成されており、従って、本発明者らはLy−6A GFPマーカーの発現についてこの組織を調べた。胎盤は母体および胎児に由来する細胞の両方から形成されるので、Ly−6A GFPトランスジーンを、雄の生殖腺を介してのみ伝達させた。既に発生初期ステージの胚に認められるように、強いGFP発現が胚外外胚葉および栄養膜円錐において認められる(図1C、D)。最も強い強度のGFP発現は、胚外外胚葉が初期の栄養膜に接する場所に認められる。E7.25で、胚外外胚葉はGFP+のままである(図1F−H)。このステージでは、外体腔が形成され、胚外外胚葉がGFP+栄養膜円錐に向かって進行しているようである。最も驚くべきことに、E12で、高レベルのGFP発現が、胎盤の胎児血管において認められる(図1I)。従って、胎児中の他の主要な造血組織と同様、胎盤の血管系はLy−6A GFPを発現し、これは潜在的な造血活性を示唆している。
胎盤は妊娠中期から強力なHSCを含む
これまでに、Alvarez-Silvaらは、胎盤における造血前駆細胞活性を見出している(Alvarez-Silvaら、2003)。しかしながら、HSC活性の存在は試験されなかった。成体に定着する能力のあるHSCについて胎盤を試験するために、本発明者らは、E9〜E12の胚(ヒトβ−グロビントランスジェニック)を取得し、胎盤を切り出し(脱落膜または臍帯血管を含まない)、単一細胞懸濁液を作製し、放射線照射した成体レシピエント中に様々な用量の細胞(胎盤組織等量)を注入した。移植後1ヶ月および4ヶ月超でのドナー(ヒトβ−グロビン)マーカーの存在についての、末梢血DNA PCRにより定着を試験した。表1に示されるように、E9またはE10胎盤細胞を移植した場合、定着したマウスは認められなかった。しかしながら、有効な定着(10%を超えるドナー細胞の寄与)がE11で開始することが見出され、E12で高レベルで存在した。本発明者らは、複数系列の定着についてこれらのレシピエントを試験した。E11(データは示していない)およびE12胎盤細胞(図2A)を移植したレシピエント中の全ての造血組織ならびに選別された脊髄細胞、Tリンパ球およびBリンパ球において、高レベルの定着が観察された。さらに、これらの一次レシピエントから二次成体放射線照射レシピエントへの骨髄の移植により、移植後4ヶ月を超える時点で同様の高レベルの再生がもたらされた(陽性6/注入6、再生範囲75〜98%)。E12胎盤内のHSCの頻度分析により、49,713個の細胞あたり1個のHSC、胎盤あたり約12個のHSC(ポワソン統計により決定)が示された。従って、胎盤は、HSCの確立された機能的基準を全て満たす強力な再生性細胞を含む。
これまでに、Alvarez-Silvaらは、胎盤における造血前駆細胞活性を見出している(Alvarez-Silvaら、2003)。しかしながら、HSC活性の存在は試験されなかった。成体に定着する能力のあるHSCについて胎盤を試験するために、本発明者らは、E9〜E12の胚(ヒトβ−グロビントランスジェニック)を取得し、胎盤を切り出し(脱落膜または臍帯血管を含まない)、単一細胞懸濁液を作製し、放射線照射した成体レシピエント中に様々な用量の細胞(胎盤組織等量)を注入した。移植後1ヶ月および4ヶ月超でのドナー(ヒトβ−グロビン)マーカーの存在についての、末梢血DNA PCRにより定着を試験した。表1に示されるように、E9またはE10胎盤細胞を移植した場合、定着したマウスは認められなかった。しかしながら、有効な定着(10%を超えるドナー細胞の寄与)がE11で開始することが見出され、E12で高レベルで存在した。本発明者らは、複数系列の定着についてこれらのレシピエントを試験した。E11(データは示していない)およびE12胎盤細胞(図2A)を移植したレシピエント中の全ての造血組織ならびに選別された脊髄細胞、Tリンパ球およびBリンパ球において、高レベルの定着が観察された。さらに、これらの一次レシピエントから二次成体放射線照射レシピエントへの骨髄の移植により、移植後4ヶ月を超える時点で同様の高レベルの再生がもたらされた(陽性6/注入6、再生範囲75〜98%)。E12胎盤内のHSCの頻度分析により、49,713個の細胞あたり1個のHSC、胎盤あたり約12個のHSC(ポワソン統計により決定)が示された。従って、胎盤は、HSCの確立された機能的基準を全て満たす強力な再生性細胞を含む。
全ての胎盤HSCはGFP + 画分内に含まれる
本発明者らは次に、フローサイトメトリー分析を実施して、妊娠中期の胎盤中のGFP+細胞の数および表現型特性を決定した。E12胎盤細胞を、CD31(内皮、マクロファージおよびAGM HSCマーカー(Northら、2002))、CD34(内皮およびAGM HSCマーカー(Sanchezら、1996))、c−kit(HSCおよび未熟な造血前駆細胞マーカー(Sanchezら、1996))、CD45(全造血マーカー(Morrisonら、1997))、Ter119(赤血球前駆細胞マーカー(Kinaら、2000))およびCD41(造血前駆細胞および巨核球マーカー(Mikkolaら、2003))に特異的な抗体を用いて染色した。GFP+細胞(図2B)は、全生存有核細胞集団の3.09%である(胎盤あたりの絶対数=1.8×104GFP+細胞)ことが見出された。母体由来の脱落膜中ではGFP+細胞は検出されなかった(図2C)。これは、トランスジーンの父性伝達に起因するものであり、GFP+細胞が胎児由来であることを確認するものである。さらに、E12脱落膜細胞を移植した場合、HSC活性は検出されなかった(移植後1ヶ月)。驚くべきことではないが、胎盤は、Ter119染色により決定されたように、36%が赤血球であり(図2H)、胎盤細胞の40%がCD31+であるという事実により判定されるように、高い内皮細胞含量を有するようである(図2D)。しかしながら、CD31は、栄養膜系列の細胞もマークする(Crossら、2003a)。非赤血球造血細胞は、胎盤の5.7〜7.6%を構成する(CD41およびCD45陽性細胞;それぞれ図2IおよびE)。Ter119およびLy−6A GFP発現においてはほとんど重複はなかった。しかしながら、CD31+、c−kit+、CD45+およびCD34+集団のそれぞれ7%、13%、15%および78%がLy−6A GFP+である。最も興味深いことに、75%、66%および56%のGFP+細胞が、それぞれCD31、c−kit(図2F)およびCD34(図2G)を発現している。
本発明者らは次に、フローサイトメトリー分析を実施して、妊娠中期の胎盤中のGFP+細胞の数および表現型特性を決定した。E12胎盤細胞を、CD31(内皮、マクロファージおよびAGM HSCマーカー(Northら、2002))、CD34(内皮およびAGM HSCマーカー(Sanchezら、1996))、c−kit(HSCおよび未熟な造血前駆細胞マーカー(Sanchezら、1996))、CD45(全造血マーカー(Morrisonら、1997))、Ter119(赤血球前駆細胞マーカー(Kinaら、2000))およびCD41(造血前駆細胞および巨核球マーカー(Mikkolaら、2003))に特異的な抗体を用いて染色した。GFP+細胞(図2B)は、全生存有核細胞集団の3.09%である(胎盤あたりの絶対数=1.8×104GFP+細胞)ことが見出された。母体由来の脱落膜中ではGFP+細胞は検出されなかった(図2C)。これは、トランスジーンの父性伝達に起因するものであり、GFP+細胞が胎児由来であることを確認するものである。さらに、E12脱落膜細胞を移植した場合、HSC活性は検出されなかった(移植後1ヶ月)。驚くべきことではないが、胎盤は、Ter119染色により決定されたように、36%が赤血球であり(図2H)、胎盤細胞の40%がCD31+であるという事実により判定されるように、高い内皮細胞含量を有するようである(図2D)。しかしながら、CD31は、栄養膜系列の細胞もマークする(Crossら、2003a)。非赤血球造血細胞は、胎盤の5.7〜7.6%を構成する(CD41およびCD45陽性細胞;それぞれ図2IおよびE)。Ter119およびLy−6A GFP発現においてはほとんど重複はなかった。しかしながら、CD31+、c−kit+、CD45+およびCD34+集団のそれぞれ7%、13%、15%および78%がLy−6A GFP+である。最も興味深いことに、75%、66%および56%のGFP+細胞が、それぞれCD31、c−kit(図2F)およびCD34(図2G)を発現している。
AGM HSCはc−kitおよびCD34を同時発現するため、本発明者らは、胎盤細胞中でGFPを用いてこれらのマーカーの発現における重複を試験した。表2に示されるように、50%を超えるGFP+細胞がc−kit+CD34+である。同様に、50%を超えるGFP+細胞がc−kit+CD31+であり、より低い割合のGFP+細胞がc−kit+CD41+およびc−kit+CD45+である。GFP+胎盤細胞集団内のこのマーカーの分布は、AGM HSC(de Bruijnら、2002)について観察されるものと似ており、従って、少なくとも一部の胎盤のGFP+細胞がHSCであることを示唆している。
胎盤のHSC活性が細胞のGFP+画分内にあるかどうかを決定するために、本発明者らは、E12トランスジェニック胎盤からGFP+およびGFP−細胞を選別した。1および0.25の胎盤等量の細胞を、放射線照射された成体レシピエントに注入し、ドナー細胞定着について1および/または4ヶ月後に解析した。表1に示されるように、全てのHSC活性はGFP+画分中に認められた。これらの細胞は、高レベルで長期間の再生をもたらし、全ての造血系列に寄与した(データは示していない)。さらに、骨髄の二次移植により、GFP+胎盤HSCが自己再生することが示された(陽性4/注入6、移植後1ヶ月)。従って、全ての胎盤HSCは、Ly−6A GFPを発現している。しかしながら、頻度分析はE12胎盤あたり約12個のみのHSCが存在することを示しているため、全てのGFP+細胞がHSCではない。これらの結果は、GFP+細胞のAGM領域における以前の知見と一致している。
GFP + 細胞は血管迷路に局在する
フローサイトメトリー分析により、GFP+細胞が内皮および造血幹/前駆細胞マーカーの両方を特徴とする細胞画分の間に分布することが示されたため、本発明者らは、これらの細胞の特異的な局在を試験するために時間的および空間的な免疫染色手法を採った。本発明者らは、E9(データは示していない)およびE10〜E12胚(図3)に由来するLy−6A GFPトランスジェニック胎盤を、CD31、CD34およびCD41に特異的な抗体を用いて染色した。方向を定める目的で、胎盤の横断面および冠状断面の模式図を示す(図3P)。3つの表面マーカーの発現パターンにおける明らかな差異が、冠状断面(図3M−O)と横断面(図3A−C、E−GおよびI−K)の両方において明確に観察された。CD31は、胎盤の外側の海綿状栄養膜層の多くの細胞中で発現されている(図3A−CおよびM)。それは、拡張した母体の血管の細胞では高レベルで発現され、迷路中の内皮細胞では低レベルで発現されている。また、絨毛膜板中の血管を裏打ちする数個の内皮細胞によっても発現されている(図3D)。発現はE9で外側の層までに始まり、E12により胎盤内部においても、低レベルであるが認められる。CD34は専ら胎盤内部の細胞において発現され(図3E−G、N)、そこでは胎児血管の輪郭を形成しているようである(図3H)。発現はE9およびE10では低レベルであり、その後増大する。CD31およびCD34とは完全に対照的に、CD41は主に胎盤内部においては点状の発現パターンを示し(図3I−K、O)、そこでは血管内の細胞を主にマークする(図3L)。
フローサイトメトリー分析により、GFP+細胞が内皮および造血幹/前駆細胞マーカーの両方を特徴とする細胞画分の間に分布することが示されたため、本発明者らは、これらの細胞の特異的な局在を試験するために時間的および空間的な免疫染色手法を採った。本発明者らは、E9(データは示していない)およびE10〜E12胚(図3)に由来するLy−6A GFPトランスジェニック胎盤を、CD31、CD34およびCD41に特異的な抗体を用いて染色した。方向を定める目的で、胎盤の横断面および冠状断面の模式図を示す(図3P)。3つの表面マーカーの発現パターンにおける明らかな差異が、冠状断面(図3M−O)と横断面(図3A−C、E−GおよびI−K)の両方において明確に観察された。CD31は、胎盤の外側の海綿状栄養膜層の多くの細胞中で発現されている(図3A−CおよびM)。それは、拡張した母体の血管の細胞では高レベルで発現され、迷路中の内皮細胞では低レベルで発現されている。また、絨毛膜板中の血管を裏打ちする数個の内皮細胞によっても発現されている(図3D)。発現はE9で外側の層までに始まり、E12により胎盤内部においても、低レベルであるが認められる。CD34は専ら胎盤内部の細胞において発現され(図3E−G、N)、そこでは胎児血管の輪郭を形成しているようである(図3H)。発現はE9およびE10では低レベルであり、その後増大する。CD31およびCD34とは完全に対照的に、CD41は主に胎盤内部においては点状の発現パターンを示し(図3I−K、O)、そこでは血管内の細胞を主にマークする(図3L)。
c−kit特異的抗体を用いた場合、高いバックグラウンド染色が観察されたので、in situハイブリダイゼーションを行って、胎盤中のc−kit発現細胞の局在を調べた。図4A中に示されるように、c−kit発現は絨毛膜板の間葉細胞(黒矢印)および迷路中の間葉細胞の島(白矢印)中に認められる。多くの血管もc−kitを発現する内皮細胞を含んでいた(矢頭)。本発明者らはまた、一部の栄養膜巨細胞中での発現も検出した(データは示していない)。c−kitの発現は、胎盤の胎児側表面上で最も高かった。
Ly−6A GFPの一般的な発現パターンは、フローサイトメトリー分析の結果から予想される通り、CD34のものと非常に類似している(78%のCD34+細胞がGFP+である)。迷路の細胞の一部においては、発現はE9で始まり、その後増大する。GFP+細胞は絨毛膜板および臍帯血管中の胎児血管を裏打ちしていることも見出された(図3AおよびE中の矢頭)。CD34とGFPの発現における多くの重複は、迷路領域中で、この領域を介してネットワークを形成する胎児血管を裏打ちする内皮細胞中に存在する(図3F)。CD31とGFPを発現する細胞のほんの少量の重複はフローサイトメトリーデータを確認しているようである(わずか7%のCD31+細胞がGFP+である)。これらの細胞は、絨毛膜板内およびまた臍帯動脈中の大型の胎児血管中に認められる(図3AおよびDならびに図1E)。CD41およびGFPの発現における重複は観察されなかった(図3JおよびL)。従って、多色フローサイトメトリー分析と共に取得されたこれらの免疫染色およびin situ転写解析の結果ならびに全てのHSCがGFP+であるという知見は、胎盤のHSCが絨毛および迷路領域中の胎児血管の内皮内に局在することを強く示唆している。
胎盤の胎児血管内皮は造血転写因子を発現する
胎盤中のHSCがその場で(in situ)生成されるかどうかをさらに調べるために、本発明者らは、3つの造血転写因子;HSC/前駆細胞の発達にとって重要であることが知られているGATA2、GATA3およびRunx1の発現パターンを調べた。簡単に述べると、GATA2を欠損する胚はE10.5で死亡し、重篤な貧血を示し、HSCを欠く(Tsaiら、1994)。GATA2の半数体は、AGM中で欠陥的なHSCの増殖に至った(Lingら、2004)。関連する転写因子GATA3の破壊は、YSの赤血球生成に大きく影響を与えないが、造血コロニー形成の減少により証明されるように、胎児肝臓の造血の欠陥をもたらす(Pandolfiら、1995)。Runx1の欠損はE12.5での致死、胎児肝臓の貧血およびHSCの不在をもたらす(Okudaら、1996;Wangら、1996)。Runx1の半数体は、胚におけるHSC出現の正常なパターンを破壊する(Caiら、2000)。
胎盤中のHSCがその場で(in situ)生成されるかどうかをさらに調べるために、本発明者らは、3つの造血転写因子;HSC/前駆細胞の発達にとって重要であることが知られているGATA2、GATA3およびRunx1の発現パターンを調べた。簡単に述べると、GATA2を欠損する胚はE10.5で死亡し、重篤な貧血を示し、HSCを欠く(Tsaiら、1994)。GATA2の半数体は、AGM中で欠陥的なHSCの増殖に至った(Lingら、2004)。関連する転写因子GATA3の破壊は、YSの赤血球生成に大きく影響を与えないが、造血コロニー形成の減少により証明されるように、胎児肝臓の造血の欠陥をもたらす(Pandolfiら、1995)。Runx1の欠損はE12.5での致死、胎児肝臓の貧血およびHSCの不在をもたらす(Okudaら、1996;Wangら、1996)。Runx1の半数体は、胚におけるHSC出現の正常なパターンを破壊する(Caiら、2000)。
本発明者らは、E11のGATA2 lacZ、GATA3 lacZおよびRunx1 lacZ胚を取得し、胎盤を染色および切片化した。GATA2 lacZ胚は、内因性GATA2遺伝子発現パターンを再現するlacZレポータートランスジーンを有する(Zhouら、1998)。GATA3 lacZおよびRunx1 lacZ胚は、内因性遺伝子をターゲティングしたlacZレポーターを含む(Northら、1999;van Doorninckら、1999)。
3つ全ての転写因子の発現パターンは異なっていた。GATA2 lacZトランスジェニック胎盤切片において、以前に報告されたように、栄養膜巨細胞におけるいくらかの発現が見られた(図4B中の矢頭)。しかしながら、迷路においては、より高いレベルのβ−ガラクトシダーゼ染色が認められた(図4BおよびC)。増加する強度の染色が、胎盤の胎児側に向かって、特に、絨毛膜板と迷路領域の境界上で観察された。GATA2は、一部の内皮細胞および胎児の血管を取り囲む下層の細胞中で発現される(図4D)。GATA2と同様、GATA3は、より高いレベルであるが、栄養膜巨細胞中で発現される(図4EおよびF、矢頭)。GATA2と対照的に、GATA3発現は、胎児−母体境界のこれらのわずかな細胞のみに限定されている。この発現パターンは、in situ転写解析を用いて他者により見られた以前のパターンを確認するものである(Ngら、1994)。GATA2(GATA3ではない)の内皮発現は、妊娠中期の大動脈におけるHSC出現の開始時のGATA2の発現に類似している(Minegishiら、1999;Zhouら、1998)。
Runx1の発現は、迷路の血管内の細胞(循環中、ならびに内皮の内腔側に付着した細胞)、内皮細胞(図4H−J)および内皮のすぐ下に位置する細胞(図4I中の矢印)に局在するようである。時々、循環内または内皮に付着したβ−ガラクトシダーゼ陽性細胞のクラスターが見出される。また、絨毛膜板中の陽性細胞の蓄積も存在するようである(図4G)。これらのRunx1発現細胞は、血管の壁の中および臍帯血管とのその接続部での主要な血管の周囲の両方に位置する(図4G)。従って、Runx1発現細胞、特に、造血細胞、内皮細胞および間葉細胞の分布は、AGM中のRunx1発現細胞について報告されたものと類似しており、Runx1が胎盤中でのHSCの生成に関与している可能性があることを示唆している(Northら、1999;Northら、2002)。
ヒト胎盤細胞を取得し、CD34発現についてFACSにより分析した。その後、細胞を、標準的な手順に従って、液体窒素中で凍結させた。数週間保存した後、細胞を解凍し、CD34発現についてFACSにより分析した。保存後の胎盤におけるCD34+細胞の割合は、保存前と比較して増加するが、これは凍結がヒト胎盤のCD34+細胞にネガティブに影響しないことを示唆している。代わりに、凍結はこれらの細胞の濃縮をもたらし得る。
上記で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書中に組み入れられる。本発明の記載された方法およびシステムについての種々の改変および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態との関連で説明してきたが、特許を受けようとする発明がそれらの具体的な実施形態に不当に制限されるべきではないことを理解する必要がある。実際に、生化学、分子生物学およびバイオテクノロジーまたは関連する分野の当業者には明白な、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
Claims (14)
- 分娩後のヒト個体の胎盤から細胞を取り出すことを含む、ヒト造血幹細胞(HSC)集団を取得する方法。
- 胎盤からHSCを取り出すステップが、HSC細胞表面マーカーを用いて細胞をソーティングするプロセスを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞表面マーカーが、以下のもの:Sca1、CD34、CD38およびThy1からなる群に含まれるもののうちいずれか1以上である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記ソーティング方法がフローサイトメトリーの使用を含む、請求項2または3に記載の方法。
- 分娩後のヒト個体の胎盤から単離された、造血幹細胞(HSC)集団。
- 複数系列の細胞への強い再生活性を有する、請求項5に記載の造血幹細胞(HSC)集団。
- 以下のもの:臍帯血、骨髄および末梢血からなる群より選択されるHSCの1以上の供給源から取り出された同等の数のHSCよりも強い、複数系列の細胞への再生活性を有する、請求項6に記載のヒト造血幹細胞(HSC)集団。
- 以下のもの:IL−3、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβからなる群に含まれるいずれか1以上の増殖因子を用いて前記細胞集団を処理することにより、あるいは胎盤由来の体外培養物を用いて該細胞集団を処理すること、および/またはAGM由来の体外培養物および/もしくは再集合培養物および/もしくは間質細胞共培養物を用いて該細胞集団を処理することにより、該集団内のHSCの数を増加させてある、請求項5〜7のいずれか1項に記載のヒト造血幹細胞(HSC)集団。
- (d)ヒトの分娩後胎盤からHSC集団を取り出すステップ、および(b)以下のもの:IL−3、IL−6、Tpo、OSM、SCF、GM−CSF、MIP1γ、Wnt、BMP、NGFβからなる群に含まれる1以上の増殖因子を用いて細胞集団を処理するステップ;胎盤由来の体外培養物を用いて細胞集団を処理するステップ、および/またはAGM由来の体外培養物および/もしくは再集合培養物および/もしくは間質細胞共培養物を用いて細胞集団を処理するステップを含む、ヒトHSC集団を提供する方法。
- 分娩後のヒト個体の胎盤から単離された造血幹細胞(HSC)の、治療での使用。
- 前記細胞が、請求項5〜8に記載の1以上の特徴を有する、請求項10に記載の造血幹細胞の使用。
- 造血幹細胞をヒト個体に定着させることにおける、請求項5〜8のいずれか1項に記載の1以上のヒト造血幹細胞(HSC)の使用。
- 保存後に生存能力と機能を維持している、分娩後のヒト個体の胎盤から単離された造血幹細胞集団。
- 個体の種々の非造血組織に造血幹細胞および/またはex vivo培養後の該細胞の子孫を定着させることにおける、分娩後のヒト個体の胎盤から単離されたHSCの使用。
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