JP2019502685A - 熱安定性ロタウイルスワクチン製剤およびその使用方法 - Google Patents
熱安定性ロタウイルスワクチン製剤およびその使用方法 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株、医薬上許容されるカルシウム塩、アジピン酸、スクロースおよびリン酸ナトリウムを含む熱安定性経口ロタウイルスワクチン製剤に関するものであり、ここで、前記の1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株のそれぞれは37℃で7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年以上にわたって安定である。本発明のカルシウム含有製剤は、ロタウイルス粒子を安定化するための、溶液中で遊離したカルシウムイオンを最適化するのに有効な量で存在する1以上の賦形剤を更に含みうる。本発明の実施形態においては、該製剤は界面活性剤、例えばポリソルベート80を含む。本発明はまた、ロタウイルス感染を予防するための、または感染の可能性を低減するための、またはその臨床症状を予防し、改善し、またはその開始もしくは進行を遅延させるための、本発明のロタウイルスワクチン組成物の使用方法に関する。【選択図】図3
Description
発明の分野
本発明は、対象におけるロタウイルス感染および/またはその臨床症状の予防および/または治療に有用な、ロタウイルスに対する免疫学的応答を惹起する熱安定性ロタウイルスワクチン製剤に関する。
本発明は、対象におけるロタウイルス感染および/またはその臨床症状の予防および/または治療に有用な、ロタウイルスに対する免疫学的応答を惹起する熱安定性ロタウイルスワクチン製剤に関する。
関連出願に対する相互参照
本出願は、2016年12月18日付け出願の米国仮特許出願第62/269,419号(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
本出願は、2016年12月18日付け出願の米国仮特許出願第62/269,419号(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
ロタウイルス感染は幼児の下痢および嘔吐に関連しており、これらは重篤な脱水および電解質障害を、そして場合によってはショックおよび死を招きうる。ロタウイルスは2歳未満の小児における重篤な急性下痢疾患の最も一般的な病原体である。より年長の小児および成人もロタウイルスに感染し、関連病状を発症しうる。ロタウイルスに関連した罹患および死亡の頻度は、開発途上国の子供たちに、それらの不十分な医療制度ゆえに、過大な影響を及ぼす。ロタウイルス関連死の約90%はアフリカおよびアジアの低所得国において生じる(World Health Organization−Rotavirus Vaccines WHO Position Paper,WHO Weekly Epidemiological Record 88:49−64(2013))。
2つの生弱毒化経口ロタウイルスワクチン、すなわち、RotaTeq(登録商標)[生経口5価ロタウイルスワクチン(Rotavirus Vaccine,Live,Oral,Pentavalent);Merck and Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ]およびRotarix(登録商標)[生経口ロタウイルスワクチン(Rotavirus Vaccine,Live,Oral),GlaxoSmithKline Biologicals,Rixensart,Belgium]が世界中の種々の国で商業的に入手可能である。これらのワクチンの導入は高所得国および中所得国における疾病負荷の大幅な減少をもたらしている(Patelら,PLoS Medicine,9(10):e1001330,p1−10(2012);Giaquintoら,Human Vaccines 7:734−748(2012))。このため、WHOは、全ての国家主導予防接種プログラムにおいて、ロタウイルスに対するワクチン接種およびロタウイルスワクチンの導入を推奨している。WHO Weekly Epidemiological Record,前掲,62(2013)を参照されたい。しかし、ロタウイルス感染およびそれに関連した疾患の可能性を低下させるワクチンが利用可能であるにもかかわらず、ロタウイルスは依然として、特に開発途上国において、5歳未満の毎年約450,000人の小児の死亡原因である(前掲,50)。
ロタウイルスワクチンの世界的な流通のためには、ワクチンが種々の環境条件下で安定となるようにワクチンを製剤化(処方)する必要がある。開発途上国における頻繁なコールドチェーン障害のため、熱に安定である改良されたワクチン製剤が必要とされている。また、頑強なコールドチェーンを有する国においては、熱安定性ワクチンの開発は、温度上昇に対する偶発的な暴露に耐える能力をもたらすであろう。
発明の概括
本発明は、37℃で7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年以上にわたって安定である(すなわち、後記のVVM7要件を満たしている)、経口投与に適した熱安定性液体ロタウイルスワクチン製剤に関する。本発明の製剤は、薬学的有効量の少なくとも1つのロタウイルス再集合体(リアソータント(reassortant))または弱毒化ロタウイルス株、医薬上許容されるカルシウム塩、スクロース、アジピン酸およびリン酸ナトリウムを含み、ここで、該製剤のpHは約6.2〜約6.7である。本発明の好ましい実施形態においては、該ロタウイルスワクチン製剤は、約1.0mM〜約3.5mMの医薬上許容されるカルシウム塩、約0.5M〜約2.0Mのスクロース、約260mM〜約700mMのアジピン酸、および約10mM〜約100mMのリン酸ナトリウムを含む。特定の実施形態においては、該製剤は更に、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80を含む。追加的な実施形態においては、該製剤は組織培養培地を含む。本発明の製剤は、好ましくは、亜鉛を全く含有しない。
本発明は、37℃で7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年以上にわたって安定である(すなわち、後記のVVM7要件を満たしている)、経口投与に適した熱安定性液体ロタウイルスワクチン製剤に関する。本発明の製剤は、薬学的有効量の少なくとも1つのロタウイルス再集合体(リアソータント(reassortant))または弱毒化ロタウイルス株、医薬上許容されるカルシウム塩、スクロース、アジピン酸およびリン酸ナトリウムを含み、ここで、該製剤のpHは約6.2〜約6.7である。本発明の好ましい実施形態においては、該ロタウイルスワクチン製剤は、約1.0mM〜約3.5mMの医薬上許容されるカルシウム塩、約0.5M〜約2.0Mのスクロース、約260mM〜約700mMのアジピン酸、および約10mM〜約100mMのリン酸ナトリウムを含む。特定の実施形態においては、該製剤は更に、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80を含む。追加的な実施形態においては、該製剤は組織培養培地を含む。本発明の製剤は、好ましくは、亜鉛を全く含有しない。
本発明の特定の実施形態においては、該製剤は、G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される1以上のロタウイルス再集合体を含む。更に詳細な実施形態においては、該ロタウイルスワクチン製剤はG1、G2、G3、G4およびP1Aロタウイルス再集合体を含む。
本発明の1つの好ましい実施形態は、a)G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される1以上のロタウイルス再集合体;b)約1.5Mのスクロース;c)約465mMのアジピン酸;d)約10mMのリン酸ナトリウム;ならびにe)約3mMの医薬上許容されるカルシウム塩を含むロタウイルスワクチン製剤に関するものであり、ここで、該製剤のpHは25℃で約6.4である。更に詳細な実施形態においては、該製剤は更に、約0.01%のポリソルベート80を含む。
本発明はまた、小児におけるロタウイルス感染の可能性を低減する、またはロタウイルス胃腸炎の可能性もしくは重症度を予防もしくは低減するための方法に関するものであり、該方法は、本発明の製剤を小児に投与することを含む。本発明のこの態様の特定の実施形態においては、該製剤を6〜12週齢の乳児に経口投与する。本発明の幾つかの実施形態においては、該方法は更に、(a)所定の時間が経過するのを待ち、(b)該製剤の追加用量を小児に投与し、ならびに(c)任意に、工程(a)および(b)を1回以上繰り返す工程を含む。1つの好ましい実施形態においては、該方法は、該ロタウイルスワクチン製剤を3回投与方式(3−dose series)で小児に投与し、ここで、該小児は該3回投与方式の完了時に32週齢以下である。
本発明はまた、ロタウイルス感染に関連した疾患の治療または予防、例えば、ロタウイルス胃腸炎の予防のための、本発明のロタウイルスワクチン製剤の使用に関する。
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体において用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、複数対象物を含む。
「または」なる語は、文脈に明らかに矛盾しない限り、示されている可能性の一方または両方を示す。幾つかの場合においては、一方または両方の可能性を強調するために「および/または」を用いた。
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体を通じて、以下の定義および略語が適用される。
「治療」なる語は治療的治療および予防的または防御的手段の両方を意味する。治療を「要する」個体または患者には、いずれかの臨床症状を示しているか否かにかかわらず、ロタウイルス感染を既に有する者、およびロタウイルスに感染するリスクを有する者が含まれる。本発明のロタウイルスワクチン製剤での患者の治療は以下のうちの1以上を含む:患者においてロタウイルスに対する免疫応答を誘導/増強すること、1以上のロタウイルスに対するウイルス中和抗体応答を誘導すること、ロタウイルスに感染した患者におけるロタウイルスの臨床症状発現の可能性を予防、改善、阻止または低減すること、ロタウイルス感染に関連した胃腸炎または他の疾患または合併症を発症する可能性を予防または低減すること、ロタウイルス感染の臨床症状、例えば下痢、嘔吐、発熱および腹痛の重症度または持続期間を低減すること、ならびにロタウイルス感染の可能性を予防または低減すること。
「薬学的有効量」または「有効量」なる語は、所望の効果(患者においてロタウイルスに対する免疫応答を誘導/増強すること、患者においてロタウイルスに対するウイルス中和抗体応答を誘導/増強すること、ロタウイルスに感染した患者におけるロタウイルス感染の臨床症状発現の可能性を予防、改善または阻止すること、あるいは、ロタウイルスに関連した疾患の重症度または持続期間を低減することを含むが、これらに限定されるものではない)を得るために十分なワクチン組成物が患者に導入されることをもたらす量を意味する。このレベルは予防用なのか治療用なのかによって変動する可能性があり、年齢、体重などのような患者の特徴によって変動しうる、と当業者に認識される。
「免疫応答」なる語は細胞性(T細胞)免疫応答および/または抗体(B細胞)応答を意味する。
「患者」なる語は、ロタウイルスに感染しうる、すなわち、本明細書に記載されているロタウイルスワクチン製剤が投与されうる哺乳動物、例えばヒトを意味する。好ましい実施形態においては、患者は小児患者である。1つの好ましい実施形態においては、患者は6〜32週齢である。本明細書での定義においては、「患者」は、ロタウイルスに既に感染している者、および後に曝露されうる者、すなわち、曝露のリスクを有する者を含む。患者は予防的または治療的に治療されうる。予防的治療は、ロタウイルス感染またはその影響、例えば胃腸炎の可能性または重症度を低下させるのに十分な防御免疫を付与する。治療的治療は、ロタウイルス感染またはその臨床的影響の重症度を低下させるために行われうる。
「約」なる語は、物質または組成物の量(例えば、mMまたはM)、製剤(処方)成分の百分率(v/vまたはw/v)、溶液/製剤のpH、または方法における工程を特徴づけるパラメータの値などを修飾している場合、例えば、物質または組成物の製造、特徴づけおよび/または使用に伴う典型的な測定、取り扱いおよびサンプリング操作により生じるうる数量における変動;これらの操作における偶発的エラーにより生じうる数量における変動;該組成物を製造または使用するために或いは該操作を行うために使用される成分の製造、起源または純度における差異により生じうる数量における変動などを意味する。特定の実施形態においては、「約」は適切な単位の±0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0または5.0の変動を意味しうる。特定の実施形態においては、「約」は±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%の変動を意味しうる。
「VVM7製剤」、または「VVM7RotaTeq(商標)」は、37℃で少なくとも7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年以上安定である本発明のロタウイルスワクチン製剤を意味する。本発明のワクチン製剤は、安定であるとみなされるためには、各温度に関して特定されている期間にわたって、その臨床的に決定される失効限界を超える効力、すなわち、臨床試験において定められる有効性に必要な最小効力を維持しなければならない(以下の表1を参照されたい;また、RotaTeq Package Insert,Initial U.S.Approval 2006,Revised 06/2013,Merck & Co.,Inc.Whitehouse Station,NJ,USAの表7も参照されたい)。
「RotaTeq(商標)市販製剤」は、Merck & Co.,Inc.(Whitehouse Station,NJ)により製造されるワクチンRotaTeq(商標)(生経口5価ロタウイルスワクチン)を意味し、6〜32週齢の乳児においてG1、G2、G3およびG4ロタウイルス血清型により引き起こされるロタウイルス胃腸炎の予防のために2006年に最初に承認された。
本明細書においては以下の略語が用いられ、以下の意味を有する:ANC=酸中和能、CI=信頼区間、GMT=幾何平均力価、PS80=ポリソルベート80、SNA=血清中和抗体、v/v=体積/体積、VVM=ワクチンバイアルモニター、VVMC=ワクチンバイアルモニターコンパチブル、VVM=ワクチンバイアルモニタカテゴリ7(後記のとおり)、WFI=注射用水、w/v=重量/体積。
発明の詳細な説明
本発明は、従来のロタウイルスワクチン製剤と比較して増強した熱安定性を有する熱安定性ロタウイルスワクチン製剤に関する。特に、本発明は、1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株を含むロタウイルスワクチン製剤に関するものであり、ここで、前記の1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株のそれぞれは37℃で7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年間以上にわたって安定である。
本発明は、従来のロタウイルスワクチン製剤と比較して増強した熱安定性を有する熱安定性ロタウイルスワクチン製剤に関する。特に、本発明は、1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株を含むロタウイルスワクチン製剤に関するものであり、ここで、前記の1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株のそれぞれは37℃で7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年間以上にわたって安定である。
ワクチンバイアルモニター(VVM)は、ワクチンのバイアルを使用するべきか否かに関して、現場の医療従事者が情報に基づいた決定を下すことを可能にする(WHO,2002,Technical Review of Vaccine Vial Monitor Implementation 27Mar2002, 1−47)。VVMは、各ワクチン単位に貼付されたラベルであり、経時的な累積熱暴露をモニターするための温度感受性物質を含有する。そのような累積熱曝露は経時的にラベルの内側部分を暗くし、それは、ワクチンが受けた熱ストレスの視覚的指標となる。変色の速度(率)は温度と共に増加する。ラベルの内側部分の色がラベルの外側部分と同等であるか又はそれより暗い場合には、ワクチンは許容累積熱暴露を超えており、廃棄されるべきである。過度の熱暴露ゆえにワクチンが廃棄されるべきであることを容易に確認しうることは、コールドチェーン障害が生じうる地域において特に重要である。なぜなら、VVMは、ワクチンの流通から貯蔵および投与までにおいて存在する唯一の温度モニターであるからである。VVMの有用性の結果として、WHOの仕様を満足するVVMを含めるようにワクチン購入国が製造業者に要求することを推奨する政策声明を、ユニセフ(UNICEF)およびWHOは1999年に発表した。Quality of the cold chain:WHO/UNICEF policy statement on the use of vaccine vial monitors in immunization services(WHO/V&B/99.18)を参照されたい。
現在、WHOによって指定された4つのワクチンバイアルモニターカテゴリーが存在し、これらは、エンドポイントに達するのにかかる37℃での日数に基づいて分類されている(表2)。商業的VVMの利用可能性は限られたものであるため、該VVMにより特定された安定性プロファイルに合致するようにワクチンを製剤化する必要がある。ワクチンがVVM安定性基準を満たすためには、それは、その臨床的に決定される失効限界を超える効力を、2〜8℃、25℃および37℃に関して特定された期間にわたって維持しなければならない。RotaTeq(商標)の失効限界に関しては、前記の表1を参照されたい。
本発明は、ワクチンバイアルモニターカテゴリーVVM7(37℃で7日間、25℃で45日間および2〜8℃で2年間)に適合する安定性プロフィールを有する熱安定性経口ロタウイルスワクチン製剤に関する。VVM7安定性要件を満たす新規ロタウイルスワクチン製剤を開発するための本発明者らの戦略は、該ワクチンの熱安定性を増強するために遊離カルシウム濃度を増加させることを含むものであった。本発明者らは、現在の市販RotaTeq(商標)製剤におけるものより低いカルシウム結合定数を有する賦形剤の選択とカルシウムの添加との両方により、これを達成した。本発明の製剤はカルシウムおよび追加的賦形剤を含み、ここで、該追加的賦形剤は、ロタウイルス粒子を安定化するために、溶液中に遊離するカルシウム量を最大にする量で存在する。該製剤において使用される賦形剤のカルシウム結合アフィニティは安定性に直接的な影響を及ぼすことが本明細書に示されている。本発明の製剤はカルシウム溶解性とロタウイルス安定性とのバランスをもたらす。本発明の好ましい実施形態においては、該ロタウイルス製剤は亜鉛を含まない。
本発明の特定の実施形態においては、該経口ロタウイルス製剤は(ロタウイルス成分に加えて)アジピン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カルシウムおよびポリソルベート80を含む。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、該経口ロタウイルスワクチン製剤は0.465M アジピン酸二ナトリウム(アジピン酸を水酸化ナトリウムで中和することにより溶液中で生成する)、10mM リン酸ナトリウム、3mM 塩化カルシウムおよび0.01%(w/v) PS−80をpH6.4で含む。本発明の経口ロタウイルスワクチン製剤は、ロタウイルス感染Vero(ベロ)細胞培養の回収および凍結−融解細胞溶解ならびにそれに続くライセートの濾過および濃縮により得られる生ロタウイルス一価ワクチンバルクの無細胞調製物を使用して製造されうる。所望の有効成分(すなわち、ロタウイルス再集合体および/または弱毒化ロタウイルス株)のための個々のロタウイルス一価ワクチンバルクは、最終医薬品を製造するための製剤化用バッファーと混合することにより一緒にされうる。
種々のロタウイルスワクチン製剤が記載されている。しかし、世界保健機関の方針に合致したVVM7要件を満たすロタウイルスワクチン製剤が必要とされている。そのような製剤は、開発途上国における頻繁なコールドチェーン障害による効力低下および/または安全性低下を受けにくく種々の環境条件下で安定であるロタウイルスワクチンを世界中に安全に流通させることを可能にすることにより、全世界の保健衛生に好影響をもたらす。
本発明者らは、カルシウムの添加がロタウイルスワクチン製剤の熱安定性に有益な影響を及ぼしうると仮定した。しかし、先行技術における開示は、カルシウムは個々のロタウイルス製剤の安定性に何ら影響を及ぼさない可能性があり、または特定の条件下でのみ安定性に影響を及ぼしうることを示している。Burkeら(米国特許第6,616,931号および第5,932,223号)は、10mM カルシウムの添加が、組織培養培地を含有しない製剤に添加された場合、ロタウイルス再集合体P1およびG1の安定性を改善したことを開示している。G1およびP1ロタウイルス再集合体の両方に関する効力低下が塩化カルシウムの存在下および非存在下で評価された。該ロタウイルス再集合体が、100mM 塩化ナトリウムを含有する10mM Tris中へ透析された場合、10mM 塩化カルシウムの添加による37℃での安定性の改善が観察された。37℃で3日間の後の効力対数低下は、P1に関しては4倍以上(2.2対0.5)、G1に関しては12倍以上(2.5対0.2)減少した。これとは対照的に、G1およびP1ロタウイルス再集合体がウィリアム(William’s)培地Eバックグラウンド中に存在した場合には、10mM 塩化カルシウムの添加による安定性の改善は観察されなかった。また、WO2006/087205は、カルシウムが安定性に有益な影響を及ぼさなかったロタウイルスワクチン製剤を開示している。
本発明においては、特定の量のカルシウムが、沈降を誘発することなく、ロタウイルスウイルス粒子の安定性を増強して、VVM7要件を満たす熱安定性製剤の製造を可能にすることが示されている。本発明における製剤においては、カルシウムは、医薬上許容されるカルシウム塩として存在する。本明細書中で用いる「医薬上許容される」なる語は、ヒトへの投与の適した、本発明の有効成分(例えば、ロタウイルス再集合体)と混合される、本明細書の全体にわたって記載されている物質を意味する。医薬上許容されるカルシウム塩は所望の目的(すなわち、安定性の増強)に安全かつ有効である。本発明の製剤に有用な医薬上許容されるカルシウム塩の例には、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムおよび硫酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。カルシウム塩は本発明の製剤においてはリン酸カルシウムではないことが好ましい。なぜなら、それは、特に、酸中和能を増強するために本発明において含有されるリン酸ナトリウムの存在下では、低い溶解度を示すからである。好ましい実施形態においては、医薬上許容されるカルシウム塩は塩化カルシウムの形態である。
WO 2013/02933(「‘933出願」)は、ロタウイルスワクチン製剤における過剰のカルシウムイオンが昇温状態でのワクチン生存性を確保することを開示している。ウイルス安定性を確保するためのロタウイルス製剤におけるカルシウムの好ましい量は少なくとも4mMである、と‘933出願は記載している。本発明においては、4mM未満の量のカルシウム、すなわち、約1.0mM〜約3.8mMのカルシウムは、沈殿を誘発することなく、ロタウイルスワクチンを安定化しうることが示されている。更に、4mM以上の量のカルシウムは、カルシウムが溶液から析出するため、好ましくないことが、本明細書に示されている。実施例1および4を参照されたい。
その目的のために、本発明は、ワクチン製剤、例えば、1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株を含むロタウイルスワクチン製剤を提供し、ここで、製剤成分は前記実施形態のいずれかに記載されているとおりであり、カルシウムは以下の量のいずれかで存在する:約1.0〜約3.8mM、約1.25〜約3.8mM、約1.75〜約3.8mM、約2.0〜約3.8mM、約2.25〜約3.8mM、約2.5〜約3.8mM、約2.75〜約3.8mM、約3.0〜約3.8mM、約1〜約3.5mM、約1.25〜約3.5mM、約1.75〜約3.5mM、約2.0〜約3.5mM、約2.25〜約3.5mM、約2.5〜約3.5mM、約2.75〜約3.5mM、約3.0〜約3.5mM、約1〜約3.0mM、約1.25〜約3.0mM、約1.75〜約3.0mM、約2.0〜約3.0mM、約2.25〜約3.0mM、約2.5〜約3.0mM、および約2.75〜約3mM。本発明の別の実施形態においては、ワクチン製剤成分は前記実施形態のいずれかに記載されているとおりであり、カルシウムの量は約1mM、約2mM、約2.5mM、約2.75mM、約3.0mM、約3.5mMまたは約3.75mMである。好ましい実施形態においては、該組成物は3.0mM カルシウムを含む。
医薬上許容されるカルシウム塩を前記量(例えば、約1.0〜約3.8mM)で含む本発明のロタウイルスワクチン製剤は、該製剤が希釈剤として組織培養培地を含む場合でさえも、安定であることが、本明細書に示されている。したがって、本発明の製剤は、所望により、約2〜約30% v/vの量の組織培養培地を含んでいてもよい。医薬製剤における使用に適した任意の組織培養培地、例えば、ウィリアム(William’s)培地E、ダルベッコ改変イーグル培地、米国特許第6,656,719号に記載されている培地が本発明の製剤において使用されうる。先行技術における開示(米国特許第6,616,931号および第5,932,223号)は反対に、カルシウムは、組織培養培地を含有しない製剤に添加された場合には、特定のロタウイルス再集合体P1およびG1の安定性を改善したが、該製剤がウィリアム培地Eを含んでいた場合には、G1およびP1ロタウイルス再集合体を安定化しなかったことを示している。
本発明のワクチン製剤は、有効成分として、少なくとも1つのロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株(本明細書においては「ロタウイルス有効成分」と称される)の薬学的有効量を含む。前記の実施形態のいずれかを含む本発明の実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は1以上のロタウイルス再集合体を含む。別の実施形態においては、ロタウイルス製剤は少なくとも1つの弱毒化ロタウイルス株を含む。
再集合体のロタウイルス親株は適切なヒトおよびウシ宿主から単離されうる。例えば、ヒトロタウイルス親株は、WI78、WI79、BrBまたはSC2でありうる。ウシロタウイルス親株は例えばWC3株でありうる。ロタウイルス再集合体は、ヒトロタウイルス親株由来の外側カプシドタンパク質およびウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質を発現する再集合体ロタウイルスでありうる。
本発明の1つの実施形態において、該製剤は、ヒトロタウイルス親株由来の外側カプシドタンパク質G1およびウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質を発現する再集合体ロタウイルスを含む。特定の実施形態においては、ウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質は血清型P7由来である。本明細書中で用いる「G1」または「G1再集合体」なる語は、ヒトロタウイルス株由来のG1外表面タンパク質およびウシ親株由来の血清型P7由来の付着タンパク質を含む再集合体を意味する。
本発明のもう1つの実施形態においては、該製剤は、ヒトロタウイルス親株由来の外側カプシドタンパク質G2およびウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質を発現する再集合体ロタウイルスを含む。特定の実施形態においては、ウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質は血清型P7由来である。本明細書中で用いる「G2再集合体」なる語は、ヒトロタウイルス株由来のG2外表面タンパク質およびウシ親株由来の血清型P7由来の付着タンパク質を含む再集合体を意味する。
もう1つの実施形態においては、該製剤は、ヒトロタウイルス親株由来の外側カプシドタンパク質G3およびウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質を発現する再集合体ロタウイルスを含む。特定の実施形態においては、ウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質は血清型P7由来である。本明細書中で用いる「G3再集合体」なる語は、ヒトロタウイルス株由来のG3外表面タンパク質およびウシ親株由来の血清型P7由来の付着タンパク質を含む再集合体を意味する。
更にもう1つの実施形態においては、該製剤は、ヒトロタウイルス親株由来の外側カプシドタンパク質G4およびウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質を発現する再集合体ロタウイルスを含む。特定の実施形態においては、ウシロタウイルス親株由来の付着タンパク質は血清型P7由来である。本明細書中で用いる「G4再集合体」なる語は、ヒトロタウイルス株由来のG4外表面タンパク質およびウシ親株由来の血清型P7由来の付着タンパク質を含む再集合体を意味する。
更にもう1つの実施形態においては、該製剤は、ヒトロタウイルス親株由来の付着タンパク質P1A(遺伝子型P[8])(本明細書においては血清型P1A[8]と称される)およびウシロタウイルス親株由来の血清型G6の外側カプシドタンパク質を発現する再集合体ウイルスを含む。本明細書中で用いる「P1A[8]再集合体」なる語は、ウシロタウイルス株由来の外表面タンパク質およびヒト親株由来の付着タンパク質P1A(遺伝子型P[8])を含む再集合体を意味する。
本発明の製剤においては、各ロタウイルス有効成分は個々に薬学的有効量で存在する。好ましい実施形態においては、全てのロタウイルス有効成分の総量は約1×106感染単位/mL〜約50×106感染単位/mLである。好ましい実施形態においては、該ワクチン製剤中の各再集合体の個々の量は、有効期限の終了時の再集合体当たりの量が少なくとも2×106感染単位/mLとなるよう、約2×106〜約20×106である。幾つかの実施形態においては、該製剤は個々の再集合体用量当たり少なくとも2.0〜2.8×106感染単位を含む。
選択された実施形態においては、該製剤は、G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される少なくとも1つのロタウイルス再集合体を含む。幾つかの実施形態においては、該製剤は、G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される2以上のロタウイルス再集合体を含む。他の実施形態では、該製剤は、G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される3以上のロタウイルス再集合体を含む。他の実施形態においては、該製剤は、G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される4以上のロタウイルス再集合体を含む。更に他の実施形態においては、該製剤はG1、G2、G3、G4およびP1Aロタウイルス再集合体を含む。
該ロタウイルス再集合体は、抗真菌剤の非存在下の標準的な細胞培養技術、例えばVero細胞における増殖を用いて増殖可能である。
前記のとおり、VVM7安定性要件を満たすロタウイルスワクチン製剤を開発する際の1つの目標は、該ワクチンの熱安定性を増強するために遊離カルシウム濃度を増加させることであった。第2の目標は、活性医薬成分(すなわち、ウイルス再集合体)が無傷で小腸に到達することを保証するために、十分な酸中和能(ANC)を有する製剤を開発することであった。意図されるロタウイルスワクチン製剤は経口投与用であるため、活性再集合体のそれぞれは、小腸に進入するために胃の過酷な環境を生き抜く必要がある。これまでの研究は、現在のRotaTeq(商標)製剤におけるヒト−ウシ再集合体のバックボーンであるWC3を含む幾つかのウシロタウイルス株が、酸性条件(pH4.0未満)中で急速に不活性化されることを示した。Weiss,S.,Clark,H.F.“Rapid Inactivation of Rotaviruses by Exposure to Acid Buffer or Acidic Gastric Juice”Journal of General Virology 66:2725−2730(1985)。
前記のとおりの十分なANCが要求されるため、RotaTeq(商標)の市販製剤は、ウイルスが分解しないで小腸に到達して防御免疫応答の生成を可能にするように、幼児の胃酸を中和するためにクエン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムの両方を含む。本発明におけるVVM7製剤の開発においては、クエン酸ナトリウムの配合は、それが他のカルボン酸と比較して比較的高いカルシウム結合定数を有するため、最適ではない、と本発明者らは判断した。本発明者らは、シトラート(クエン酸塩)をより低いカルシウムアフィニティのカルボン酸で置換して、要求される酸中和をもたらす一方で、より多量のカルシウムを溶液中に残すことによりウイルス安定性を改善させることにした。
この目的のために、本発明の実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は、RotaTeq(商標)製剤におけるトリカルボキシラートであるクエン酸ナトリウムの代わりに、ジカルボキシラートであるアジピン酸を含む。なぜなら、アジピン酸は、クエン酸ナトリウムより低いカルシウム結合定数を有し、許容される安全性プロファイルを有するからである。本発明の特定の実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は、いずれかの前記実施形態またはいずれかの後記実施形態に記載されている成分(およびそれらの組合せ)を含み、更に、約260mM〜約700mMのアジピン酸を含む。
幾つかの実施形態においては、該製剤は、約275mM〜約700mM、約300mM〜約700mM、約325mM〜約700mM、約350mM〜約700mM、約400mM〜約700mM、約425mM〜約700mM、約450mM〜約700mM、約275mM〜約650mM、約300mM〜約650mM、約325mM〜約650mM、約350mM〜約650mM、約400mM〜約650mM、約425mM〜約650mM、約275mM〜約600mM、約300mM〜約600mM、約325mM〜約600mM、約350mM〜約600mM、約400mM〜約600mM、約425mM〜約600mM、約450mM〜約600mM、約275mM〜約550mM、約300mM〜約550mM、約325mM〜約550mM、約350mM〜約550mM、約400mM〜約550mM、約425mM〜約550mM、約450mM〜約550mM、約275mM〜約500mM、約300mM〜約500mM、約325mM〜約500mM、約350mM〜約500mM、約400mM〜約500mM、約425mM〜約500mM、または約450mM〜約500mMの量のアジピン酸を含む。1つの特定の好ましい実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は約465mMのアジピン酸を含む。
本発明の特定の実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は、いずれかの前記実施形態またはいずれかの後記実施形態に記載されている成分(およびそれらの組合せ)を含み、更に、約0.5M〜約2.0Mのスクロースを含む。スクロースは、全体的なウイルス安定性を増強するために該製剤に添加される。追加的な実施形態においては、該組成物中のスクロースの濃度は約0.5M〜約1.9M、約0.5mM〜約1.8M、約0.5mM〜約1.75M、約0.5M〜約1.6M、約0.5M〜約1.5M、0.75mM〜約1.9M、約0.75mM〜約1.8M、約0.75mM〜約1.75M、約0.75M〜約0.75、約0.75〜約1.5M、1.0M〜約1.9M、約1.0mM〜約1.8M、約1.0mM〜約1.75M、約1.0M〜約1.6M、約1.0M〜約1.5M、1.25mM〜約1.75M、約1.25M〜約1.6M、または約1.25M〜約1.5Mである。
別の実施形態においては、該ワクチン組成物は約0.5M、約1.0M、約1.25M、約1.5M、約1.75Mまたは約2Mのスクロースを含む。1つの好ましい実施形態において、該ワクチン製剤は約1.5Mのスクロースを含む。
本発明の製剤はまた、リン酸ナトリウムを含んでいてもよく、これは溶液のANCに寄与する。リン酸ナトリウムはリン酸一ナトリウム一水和物の形態でありうる。したがって、本発明の更に詳細な実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は、いずれかの前記実施形態またはいずれかの後記実施形態に記載されている賦形剤(およびそれらの組合せ)を含み、更に、約10mM〜約100mMのリン酸ナトリウムを含む。約1.0〜約3.8mMのカルシウム塩および約275mM〜約700mMのアジピン酸と組合された約10mM〜約100mMのリン酸ナトリウムの使用は、沈殿を誘発することなく可溶性カルシウム濃度を最大にして、該製剤がVVM7要件を満たすことを可能にする。本発明の好ましい実施形態においては、該製剤は約10mMのリン酸ナトリウムを含む。更に詳細な実施形態においては、該製剤は約5mM リン酸ナトリウム、約15mM リン酸ナトリウム、約20mM リン酸ナトリウム、約25mM リン酸ナトリウム、約50mM リン酸ナトリウム、約75mM リン酸ナトリウムまたは約100mM リン酸ナトリウムを含む。
本明細書に記載されている任意のワクチン製剤は、所望により、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、精製、濾過、凍結乾燥、輸送、貯蔵および送達のような加工条件において、安定性をもたらすために、あるいは凝集を低減および/または予防するために、あるいはタンパク質損傷を予防および/または抑制するために、ワクチン製剤に添加されうる。本発明においては、界面活性剤は、ロタウイルス有効成分に更なる安定性を付与するのに有用でありうる。
本発明の製剤において有用でありうる界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名Tween(登録商標)(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE)として販売されているポリソルベート(Polysorbate))、例えばポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート)およびポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート);ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばBrij(登録商標)58(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE)およびBrij(登録商標)35;ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton(登録商標)X−100(Union Carbide Corp.,Houston,TX)およびTriton(登録商標)X−114;NP40;スパン(Span)20、スパン40、スパン60、スパン65、スパン80およびスパン85;エチレンとプロピレングリコールとの共重合体(例えば、pluronic(プルロニック)(登録商標)系の非イオン性界面活性剤、例えばpluronic(登録商標)F68、pluronic(登録商標)10R5、pluronic(登録商標)F108、pluronic(登録商標)F127、pluronic(登録商標)F38、pluronic(登録商標)L44、pluronic(登録商標)L62(BASF Corp.,Ludwigshafen,Germany);ならびにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明の製剤中に含まれるべき界面活性剤の量は、所望の機能を達成するのに十分な量、すなわち、該製剤におけるロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株を安定化するのに必要な最小量である。典型的には、界面活性剤は約0.008%〜0.04% w/v(wt/vol)の濃度で存在する。本発明のこの態様の幾つかの実施形態においては、界面活性剤は該製剤中に約0.01%〜約0.04%、約0.01%〜約0.03%、または約0.01%〜約0.02%の量で存在する。特定の実施形態においては、界面活性剤は約0.01%の量で存在する。別の実施形態においては、界面活性剤は0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%または0.04%の量で存在する。
本発明の典型的な実施形態においては、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Brij(登録商標)35、pluronic(登録商標)F−68およびTriton(登録商標)からなる群から選択される非イオン性界面活性剤である。幾つかの実施形態においては、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。特定の実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は約0.01%のPS80を含む。
いずれかの前記実施形態またはいずれかの後記実施形態に記載されているとおり、25℃での本発明のワクチン組成物のpHは、好ましくは、約6.2〜約6.7の範囲である。本明細書に記載されている安定性試験(実施例2を参照されたい)は、特定のロタウイルス再集合体に関して、僅か6.0の低さのpHおよび7.0もの高さのpHにおいて、より大きな効力低下率が観察されたことを示している。特に、G1、G4およびP1再集合体は、pH6.0およびpH7.0において、より大きな低下を示した。したがって、本発明の製剤は、全てのロタウイルス有効成分に関して、より低い効力低下率をもたらすために、6.0より高く且つ7.0より低いpHに維持される。本発明の特定の実施形態においては、該組成物のpHは約6.2〜約6.6、約6.2〜約6.5、約6.2〜約6.4、約6.2〜約6.3、約6.3〜約6.7、約6.3〜約6.6、または約6.3〜約6.5である。追加的な実施形態においては、pHは約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6または約6.7である。特定の実施形態においては、25℃での該製剤のpHは約6.4である。
本発明の製剤のpHは、該製剤のpHをそれぞれ低下または上昇させる酸性化剤およびアルカリ化剤として有用である種々の医薬上に許容される賦形剤の添加により、最適レベルに調節されうる。該製剤のpHを上昇させるのに有用なアルカリ化剤には、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびトロラミンが含まれる。本発明の幾つかの実施形態においては、水酸化ナトリウムの添加によりpHを調整する。本発明の幾つかの実施形態においては、水酸化ナトリウムの量は約750mM〜約1.25Mである。特定の実施形態においては、水酸化ナトリウムの量は約900mM〜約950mMである。追加的な実施形態においては、水酸化ナトリウムの量は約924mMである。
WO2006/042202は、亜鉛が、本明細書に記載されているロタウイルスワクチン製剤に安定性を付与するための重要な賦形剤であったことを報告している。同様に、WO2013/029033は、ロタウイルスワクチン製剤中に亜鉛を含有させることが好ましいと記載している。驚くべきことに、亜鉛は実際には本発明におけるロタウイルス製剤の安定性に有害であることを本発明者らは見出した(実施例5を参照されたい)。465mM アジピン酸、100mM リン酸ナトリウム、1.5M スクロース、0.01% PS80および2mM 塩化カルシウムをpH6.7で含有する典型的な5価ロタウイルスワクチン製剤の安定性を1mM 塩化亜鉛の存在下および非存在下で評価した。ロタウイルス効力データを用いて、試験製剤における各再集合体の効力低下率を計算した。データは、該製剤中に1mM 亜鉛が含まれている場合、5つ全ての再集合体が37℃で7日間の後に大きな効力低下を示すことを示した。したがって、本発明の製剤は亜鉛を含まないことが好ましい。
使用方法
本発明はまた、本明細書に開示されるワクチン製剤の投与を含む、ロタウイルスによるヒト患者の感染の可能性を予防または低減する方法を提供する。本発明はまた、本明細書に開示されているワクチン製剤の投与を含む、ロタウイルス胃腸炎の可能性を予防または低減する、あるいはその持続期間または重症度を低減する方法を提供する。本発明で提供される方法の特定の実施形態においては、患者に投与される医薬組成物は1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株を含む。1つの実施形態においては、該ワクチン製剤は少なくとも1つのロタウイルス再集合体を含む。もう1つの実施形態においては、該ワクチン製剤はG1、G2、G3、G4およびP1Aロタウイルス再集合体を含む。
本発明はまた、本明細書に開示されるワクチン製剤の投与を含む、ロタウイルスによるヒト患者の感染の可能性を予防または低減する方法を提供する。本発明はまた、本明細書に開示されているワクチン製剤の投与を含む、ロタウイルス胃腸炎の可能性を予防または低減する、あるいはその持続期間または重症度を低減する方法を提供する。本発明で提供される方法の特定の実施形態においては、患者に投与される医薬組成物は1以上のロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株を含む。1つの実施形態においては、該ワクチン製剤は少なくとも1つのロタウイルス再集合体を含む。もう1つの実施形態においては、該ワクチン製剤はG1、G2、G3、G4およびP1Aロタウイルス再集合体を含む。
本発明の幾つかの実施形態においては、本明細書に開示されているロタウイルス医薬製剤を、増強した持続的な免疫応答を誘導するために、種々の初回/追加投与の組合せで患者に経口投与する。この場合、2以上の医薬組成物または製剤を「初回および追加」レジメンで投与する。例えば、第1の組成物を1回以上投与し、ついで所定の期間、例えば2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月または他の適当な間隔の後、第2の組成物を1回以上投与する。好ましくは、臨床レジメンで使用される2以上のロタウイルス医薬組成物を4〜10週間隔で投与し、この場合、第1の投与は6〜12週齢で投与する。本発明の特定の実施形態においては、該ワクチン組成物を3回投与し、第3の投与は32週齢以下で投与する。
したがって、本発明は、小児におけるロタウイルス感染の可能性を低減する、または小児におけるロタウイルス胃腸炎の可能性またはその重症度もしくは持続期間を予防もしくは低減するための方法に関するものであり、該方法は、本発明のいずれかのロタウイルスワクチン製剤を小児に経口投与することを含む。本発明のこの態様の特定の実施形態においては、小児は6〜32週齢の乳児である。他の実施形態においては、小児は6〜12週齢の乳児である。
本発明のもう1つの実施形態においては、前記方法は更に、(a)所定の時間が経過するのを待ち、(b)該製剤の追加用量を小児に投与し、ならびに(c)任意に、工程(a)および(b)を繰り返す工程を含む。本発明のロタウイルスワクチン組成物の第1用量(第1投与)および本発明のロタウイルスワクチン組成物の第2用量(第2投与)またはその後の任意の用量(投与)の間の時間は様々でありうる。特定の実施形態においては、第1投与は約6〜約12週齢の小児に投与される。更に詳細な実施形態においては、該方法は、ロタウイルスワクチン製剤を3回投与方式(3−dose series)で小児に投与し、ここで、該小児は該3回投与方式の完了時に32週齢以下である。
本発明の方法の任意の実施形態においては、ロタウイルスワクチン製剤は、所望により、ジフテリアおよび破傷風トキソイドおよび無細胞百日咳(DTaP)、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)b型コンジュゲート(Hib)、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌コンジュゲートワクチンの1以上を含む1以上の追加的ワクチンと付随して小児に投与される。
本発明はまた、ロタウイルス感染に関連した疾患の治療または予防のための、本明細書に記載されているいずれかの実施形態のロタウイルスワクチン製剤の使用に関する。本発明はまた、ロタウイルス胃腸炎の予防のための、本発明のロタウイルスワクチン製剤の使用に関する。
本発明の幾つかの実施形態はまた、(a)治療(例えば、人体の治療)、(b)医薬、(c)ロタウイルスの複製の抑制、(d)ロタウイルスに対する免疫応答または防御免疫応答の誘導、(e)ロタウイルスに対するウイルス中和抗体応答の誘導、(f)ロタウイルスによる感染の治療または予防、(g)ロタウイルス感染に関連した病的症状の進行、開始もしくは重症度の低減、および/またはロタウイルス感染の可能性の低減、あるいは(h)ロタウイルス関連疾患(限定的なものではないが、胃腸炎を含む)の治療、予防、またはその発症、重症化もしくは進行の遅延(i)における使用のための、(ii)のための医薬または組成物としての使用のための、あるいは(iii)のための医薬の製造における使用のための、本明細書に記載されているロタウイルスワクチン製剤の1以上を含む。
したがって、本発明は、ロタウイルス感染またはロタウイルス関連疾患の予防および/または治療を要する患者に本発明の製剤の1以上を投与することを含む、ロタウイルス感染またはロタウイルス関連疾患の予防および/または治療方法を提供する。
予防(予防的処置)は、本明細書に記載されている本発明のロタウイルスワクチン製剤を使用して行われうる。本発明の製剤は、一般集団またはロタウイルス感染のリスクの高い者に投与されうる。
したがって、本発明は、本明細書に記載されているロタウイルスワクチン製剤のいずれかの薬学的有効量を患者に投与する工程を含む、患者においてロタウイルス感染に対する防御免疫応答を誘導するための方法を提供する。
本明細書に挙げられている全ての刊行物を、本発明に関連して使用されうる方法および材料を記載し開示する目的で、参照により本明細書に組み入れることとする。
添付図面を参照して本発明の種々の実施形態が本明細書に記載されているが、本発明はそれらの厳密な実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲に定められている本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の変更および修飾が本発明において当業者により施されうると理解されるべきである。
実施例1
VVMCロタウイルス製剤の賦形剤の選択
市販のワクチン製剤(Rotateq(商標))が最小放出効力から失効(expiry potency)に達するまでの時間を評価した。ワクチン中の各再集合体は、5℃で保存された場合には、VVM7を満たすのに必要な期間にわたって安定であったが、25℃および37℃では5つ全ての再集合体が最低限度のVVM7要件を満たさないことが確認された。したがって、VVM7要件に合致するように該製品の熱安定性プロファイルを向上させるために市販ロタウイルスワクチンを再製剤化するための研究を行った。該VVM7要件は、5つ全ての再集合体に関して、37℃で7日間、25℃で45日間または2〜8℃で2年間の貯蔵の後、ワクチン効力が失効限界を超えて維持されることを要する。
VVMCロタウイルス製剤の賦形剤の選択
市販のワクチン製剤(Rotateq(商標))が最小放出効力から失効(expiry potency)に達するまでの時間を評価した。ワクチン中の各再集合体は、5℃で保存された場合には、VVM7を満たすのに必要な期間にわたって安定であったが、25℃および37℃では5つ全ての再集合体が最低限度のVVM7要件を満たさないことが確認された。したがって、VVM7要件に合致するように該製品の熱安定性プロファイルを向上させるために市販ロタウイルスワクチンを再製剤化するための研究を行った。該VVM7要件は、5つ全ての再集合体に関して、37℃で7日間、25℃で45日間または2〜8℃で2年間の貯蔵の後、ワクチン効力が失効限界を超えて維持されることを要する。
RotaTeq(商標)は経口投与されるため、該活性再集合体のそれぞれは胃の過酷な環境に耐えて、小腸に進入することを必要とする。RotaTeq(商標)において使用されるヒト−ウシ再集合体のバックボーンであるWC3を含む幾つかのウシロタウイルス株は酸性条件(pH4.0未満)中で急速に不活性化されることが、これまでに示されていた。Weiss,S.,Clark,H.F.“Rapid Inactivation of Rotaviruses by Exposure to Acid Buffer or Acidic Gastric Juice”Journal of General Virology 66:2725−2730(1985)。したがって、RotaTeq(商標)の市販製剤は、ウイルスが分解しないで小腸に到達して防御免疫応答の生成を可能にするように、幼児の胃酸を中和するためのクエン酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムの両方を含む。VVM7製剤を開発する際の1つの目標は、活性医薬成分(すなわち、ウイルス再集合体)が無傷で小腸に到達することを保証するために、市販のRotaTeq(商標)製剤の酸中和能力(ANC)(これは0.86mEQ/用量である)を満たす又は上回ることであった。
VVM7安定性要件を満たす新規RotaTeq(商標)製剤を開発するための本発明者らの戦略は、該ワクチンの熱安定性を増強するために遊離カルシウム濃度を増加させることを含むものであった。本発明者らは、市販RotaTeq(商標)製剤におけるものより低いカルシウム結合定数を有する賦形剤の選択と塩化カルシウムの添加との両方により、これを達成した。酸中和のために市販RotaTeq(商標)製剤において使用されているクエン酸ナトリウムは、他のカルボン酸と比較して比較的高いカルシウム結合定数を有する。本発明者らは、クエン酸ナトリウムをより低いカルシウムアフィニティのカルボン酸で置換して、要求される酸中和をもたらす一方で、より多量のカルシウムを溶液中に残すことによりウイルス安定性を改善させることにした。RotaTeq(商標)製剤におけるトリカルボン酸であるシトラート(クエン酸塩)の代わりに、ジカルボン酸であるアジピン酸を、そのより低いカルシウム結合定数およびその安全性プロファイルに基づいて選択した。アジピン酸のカルシウム結合定数(log(K)は2.19であり、Kは〜155である)はクエン酸のもの(log(K)は3.5であり、Kは3162である)より約20倍低い。
感染性ロタウイルス粒子を安定化するために利用可能な、製剤中の遊離カルシウムを最大にするために利用される第2のアプローチは、塩化カルシウムを製剤に添加することであった。しかし、ホスファートをも含有する製剤においてカルシウムの濃度を増加させるとリン酸カルシウム沈殿が生じうるため、本発明者らは、カルシウム、ホスファートおよびアジピン酸の濃度のどの組合せが、沈殿のリスクを伴うことなく、可溶性カルシウムを最大にするのかを決定するための一連の沈殿スクリーニング研究を開始した。
製剤開発中に465mMおよび250mMの2つの濃度のアジピン酸を最初に試験した。465mMのアジピン酸の使用は、市販製剤と比較して有意に高いANCを有する製剤を与えた。市販RotaTeq(商標)製剤のものに類似したレベルまで製剤のANCを低下させると思われる250mMのアジピン酸の濃度も試験した。250mMのアジピン酸を含む試験製剤で、カルシウム溶解度の(3.0mMから1.5mMへの)有意な減少が観察された。したがって、465mMのアジピン酸を目標濃度として選択した。
ホスファート含有製剤中の可溶性カルシウム濃度を最大にするための最初の研究は、市販RotaTeq(商標)製剤における濃度に合致するリン酸ナトリウムを使用して行った。これらの研究は、465mM アジピン酸、100mM リン酸ナトリウム、1.5M スクロースおよび0.01%(w/v)ポリソルベート80の基礎製剤を使用した。pHが6.0から6.7まで変動し、カルシウム濃度が1.0、2.0または3.0mMである試験製剤を調製した。25および37℃でのインキュベーションの際の沈殿の形成に関して製剤を観察した。pH6.5および6.7で2および3mMのカルシウムを含有する製剤は両方のインキュベーション温度で常に沈殿を示した。これらの観察は、1mMのカルシウムが、100mMのホスファートを含有する製剤に添加されうるカルシウムの最大濃度であることを示した。まず、37℃でインキュベートされたpH6.7のサンプルにおいて、沈殿が観察された。したがって、後続のスクリーニングは37℃でのインキュベーションによりpH6.7での沈殿形成を評価することに焦点を合わせた。
一連の第2の実験においては、可溶性カルシウムを最大にする組合せを特定する目的で、製剤中のホスファートの濃度をカルシウム濃度と共に変動させた。これらの研究で使用した基礎製剤は465mM アジピン酸、1.5M スクロースおよび0.01%(w/v)ポリソルベート80を6.5および6.7のpH値で含有していた。調べたリン酸ナトリウム濃度は100mM、50mMおよび10mMを含んでいた。このスクリーニングで試験したカルシウムの濃度は1mMから4mMまで変動した。再度、カルシウム濃度が1mMを超えると、100mMのホスファート濃度の製剤において沈殿が観察された。ホスファート濃度を50mMに低下させた場合、1mMを超えるカルシウムを含有する製剤において沈殿が観察されたため、カルシウム溶解性の顕著な改善は達成されなかった。これとは対照的に、僅か10mMのホスファートを含有する製剤においては、カルシウム溶解性の有意な改善が観察され、この場合、4.0mMのカルシウムが添加されるまで沈殿は観察されなかった。これらの研究は、ホスファート濃度を10mMまで低下させた場合に、有意に、より高い可溶性カルシウム濃度が得られうることを示している。
実施例2
安定性に対するpHの影響
465mM アジピン酸、100mM ホスファート、1.5M スクロース、0.01% PS−80および1mM カルシウムの製剤に関して、6.0〜7.0のpH範囲にわたる安定性データを得るために、安定性試験を行った。簡潔に説明すると、5価ロタウイルス製剤をpH6.0、6.2、6.5、6.7および7.0で調製し、経口投与チューブ内に充填した。37℃で0、1、2、3、6、7、8および10日間のインキュベーションの後、5つ全ての再集合体の安定性を評価した。時間(日)により自然対数変換効力に対して線形回帰を行うことにより、試験した5つのpH値における各再集合体の効力低下率を計算するために、ロタウイルス効力データを使用した。37℃で7日間の貯蔵の後の平均効力低下の自然対数値を以下に示す(表3)。G1、G4およびP1再集合体は、試験したpH範囲の両端で、より大きな効力低下を示した。
安定性に対するpHの影響
465mM アジピン酸、100mM ホスファート、1.5M スクロース、0.01% PS−80および1mM カルシウムの製剤に関して、6.0〜7.0のpH範囲にわたる安定性データを得るために、安定性試験を行った。簡潔に説明すると、5価ロタウイルス製剤をpH6.0、6.2、6.5、6.7および7.0で調製し、経口投与チューブ内に充填した。37℃で0、1、2、3、6、7、8および10日間のインキュベーションの後、5つ全ての再集合体の安定性を評価した。時間(日)により自然対数変換効力に対して線形回帰を行うことにより、試験した5つのpH値における各再集合体の効力低下率を計算するために、ロタウイルス効力データを使用した。37℃で7日間の貯蔵の後の平均効力低下の自然対数値を以下に示す(表3)。G1、G4およびP1再集合体は、試験したpH範囲の両端で、より大きな効力低下を示した。
実施例3
アジピン酸濃度
ロタウイルス再集合体の安定性に対するアジピン酸濃度の影響を、pH6.4における10mM ホスファート、1.5M スクロース、0.01% PS80および3mM カルシウムの存在下、250mM、350mM、465mMおよび700mMのアジピン酸で評価した。簡潔に説明すると、5価ロタウイルス製剤を調製し、経口投与チューブ内に充填した。37℃で0、3、7および10日間のインキュベーションの後、5つ全ての再集合体の安定性を評価した。時間(日)により自然対数変換効力に対して線形回帰を行うことにより、試験した4つのアジピン酸濃度における各再集合体の効力低下率を計算するために、ロタウイルス効力データを使用した。各再集合体に関して、37℃で7日間の貯蔵の後の平均効力低下の自然対数値を以下に示す(表4)。37℃で7日間の後の効力低下は、G1、G2およびG3再集合体に関しては、試験したアジピン酸濃度の範囲にわたって一貫していた。この観察は予想外であった。なぜなら、アジピン酸は、その濃度が高くなるほど、より多量のカルシウムをキレート化し、安定性の低下をもたらしうるからである。理論に拘束されることを望むものではないが、この結果の1つの解釈は、700mMのアジピン酸においてさえも、十分なカルシウムが溶液中に残存し、またはウイルス粒子と会合していて、安定性に対する影響は存在しない、というものである。G4再集合体に関しては、より高い濃度のアジピン酸においては、効力低下は僅かに高かった。
アジピン酸濃度
ロタウイルス再集合体の安定性に対するアジピン酸濃度の影響を、pH6.4における10mM ホスファート、1.5M スクロース、0.01% PS80および3mM カルシウムの存在下、250mM、350mM、465mMおよび700mMのアジピン酸で評価した。簡潔に説明すると、5価ロタウイルス製剤を調製し、経口投与チューブ内に充填した。37℃で0、3、7および10日間のインキュベーションの後、5つ全ての再集合体の安定性を評価した。時間(日)により自然対数変換効力に対して線形回帰を行うことにより、試験した4つのアジピン酸濃度における各再集合体の効力低下率を計算するために、ロタウイルス効力データを使用した。各再集合体に関して、37℃で7日間の貯蔵の後の平均効力低下の自然対数値を以下に示す(表4)。37℃で7日間の後の効力低下は、G1、G2およびG3再集合体に関しては、試験したアジピン酸濃度の範囲にわたって一貫していた。この観察は予想外であった。なぜなら、アジピン酸は、その濃度が高くなるほど、より多量のカルシウムをキレート化し、安定性の低下をもたらしうるからである。理論に拘束されることを望むものではないが、この結果の1つの解釈は、700mMのアジピン酸においてさえも、十分なカルシウムが溶液中に残存し、またはウイルス粒子と会合していて、安定性に対する影響は存在しない、というものである。G4再集合体に関しては、より高い濃度のアジピン酸においては、効力低下は僅かに高かった。
実施例4
リン酸カルシウム沈殿の改善
本発明者らは、カルシウム沈殿が最初に観察される濃度(3〜4mMの間)を決定することを主目的とする一連のもう1つの実験を行った。この一連の実験においては、465mM アジピン酸、10mM リン酸ナトリウム、1.5M スクロースおよび0.01%(w/v)ポリソルベート80の基礎製剤を使用した。37℃で3、7、10、14、18および39日間のインキュベーションの後、種々のレベルのカルシウムを含有するロタウイルス製剤を沈殿(PPT)の徴候に関して視覚的に観察した。これらの研究で試験した塩化カルシウム濃度は1〜4mMの範囲であり、特に3〜4mMの濃度に重点を置いた。完全のために、製剤のpHを6.2から6.7まで変化させ、37℃でのインキュベーションにより沈殿の発生をモニターした。サンプルが3.5mM以下のカルシウムを含有する場合、試験したpH値のいずれにおいても、39日間のインキュベーションの後でさえも、沈殿は観察されないことを、結果は示した(図1を参照されたい)。以下の表に示されるとおり、pH6.2または6.4のいずれにおいても、4mMのCaを含む製剤において、沈殿の問題が観察された。pH6.7では、3.75および4mMを含有する製剤において沈殿が観察された。したがって、安定性および沈殿のリスクに基づく安定性のための最適カルシウム濃度は3mMであると選択された。
リン酸カルシウム沈殿の改善
本発明者らは、カルシウム沈殿が最初に観察される濃度(3〜4mMの間)を決定することを主目的とする一連のもう1つの実験を行った。この一連の実験においては、465mM アジピン酸、10mM リン酸ナトリウム、1.5M スクロースおよび0.01%(w/v)ポリソルベート80の基礎製剤を使用した。37℃で3、7、10、14、18および39日間のインキュベーションの後、種々のレベルのカルシウムを含有するロタウイルス製剤を沈殿(PPT)の徴候に関して視覚的に観察した。これらの研究で試験した塩化カルシウム濃度は1〜4mMの範囲であり、特に3〜4mMの濃度に重点を置いた。完全のために、製剤のpHを6.2から6.7まで変化させ、37℃でのインキュベーションにより沈殿の発生をモニターした。サンプルが3.5mM以下のカルシウムを含有する場合、試験したpH値のいずれにおいても、39日間のインキュベーションの後でさえも、沈殿は観察されないことを、結果は示した(図1を参照されたい)。以下の表に示されるとおり、pH6.2または6.4のいずれにおいても、4mMのCaを含む製剤において、沈殿の問題が観察された。pH6.7では、3.75および4mMを含有する製剤において沈殿が観察された。したがって、安定性および沈殿のリスクに基づく安定性のための最適カルシウム濃度は3mMであると選択された。
実施例5
安定性に対する亜鉛の影響
ロタウイルスワクチン製剤に亜鉛を配合することに利益があるかどうかを評価するために、安定性試験を行った。pH6.7で465mM アジピン酸、100mM ホスファート、1.5M スクロース、0.01% PS80および2mM 塩化カルシウムを含有する5価ロタウイルスワクチン製剤の安定性を1mM 塩化亜鉛の存在下および非存在下で評価した。37℃で0、3、7および8日間のインキュベーションの後、5つ全ての再集合体の安定性を評価した。時間(日)により自然対数変換効力に対して線形回帰を行うことにより、試験した2つの製剤における各再集合体の効力低下率を計算するために、ロタウイルス効力データを使用した。各再集合体に関して、37℃で7日間の貯蔵の後の平均効力低下の自然対数値を以下に示す(表5)。1mM 亜鉛を製剤に配合した場合には、5つ全ての再集合体が、37℃で7日間の後、大きな効力低下を示した。
安定性に対する亜鉛の影響
ロタウイルスワクチン製剤に亜鉛を配合することに利益があるかどうかを評価するために、安定性試験を行った。pH6.7で465mM アジピン酸、100mM ホスファート、1.5M スクロース、0.01% PS80および2mM 塩化カルシウムを含有する5価ロタウイルスワクチン製剤の安定性を1mM 塩化亜鉛の存在下および非存在下で評価した。37℃で0、3、7および8日間のインキュベーションの後、5つ全ての再集合体の安定性を評価した。時間(日)により自然対数変換効力に対して線形回帰を行うことにより、試験した2つの製剤における各再集合体の効力低下率を計算するために、ロタウイルス効力データを使用した。各再集合体に関して、37℃で7日間の貯蔵の後の平均効力低下の自然対数値を以下に示す(表5)。1mM 亜鉛を製剤に配合した場合には、5つ全ての再集合体が、37℃で7日間の後、大きな効力低下を示した。
実施例6
VVM7要件に対する製剤の適合性の判定
必要なVVM温度(37℃、25℃および2〜8℃)で効力低下率を評価するための正式な安定性試験を行った。評価する各温度に関して、サンプルを種々の時間にわたってインキュベートし、残存効力を測定した。測定効力値を用いて、95% CIを有する低下率を決定した。表6および表7に示されているデータは、それぞれ37℃および25℃での市販RotaTeq(商標)製剤(これは高いカルシウム結合アフィニティを有する)およびVVMC製剤(低いカルシウム結合アフィニティ)に関する効力低下率を要約したものである。安定性における大きな改善が37℃で観察され、G3再集合体において最大の改善が見られた(362倍の増強)。より控えめな安定性の増強が25℃で観察され、この場合、全ての再集合体が1.7〜51.1倍の範囲の効力低下率の改善を示した。要約すると、ウイルス粒子を安定化するために利用可能な溶液中の遊離カルシウムを最大にすることにより、RotaTeq(商標)中に存在する5つ全てのロタウイルス再集合体の安定性が昇温状態で改善され、VVM7適合製剤が得られた。
VVM7要件に対する製剤の適合性の判定
必要なVVM温度(37℃、25℃および2〜8℃)で効力低下率を評価するための正式な安定性試験を行った。評価する各温度に関して、サンプルを種々の時間にわたってインキュベートし、残存効力を測定した。測定効力値を用いて、95% CIを有する低下率を決定した。表6および表7に示されているデータは、それぞれ37℃および25℃での市販RotaTeq(商標)製剤(これは高いカルシウム結合アフィニティを有する)およびVVMC製剤(低いカルシウム結合アフィニティ)に関する効力低下率を要約したものである。安定性における大きな改善が37℃で観察され、G3再集合体において最大の改善が見られた(362倍の増強)。より控えめな安定性の増強が25℃で観察され、この場合、全ての再集合体が1.7〜51.1倍の範囲の効力低下率の改善を示した。要約すると、ウイルス粒子を安定化するために利用可能な溶液中の遊離カルシウムを最大にすることにより、RotaTeq(商標)中に存在する5つ全てのロタウイルス再集合体の安定性が昇温状態で改善され、VVM7適合製剤が得られた。
実施例7
ポリソルベート80の濃度範囲の決定
RotaTeq(商標)の市販製剤はPS80を含む。37℃でのRotaTeq(商標)VVM7製剤の安定性に対するPS80濃度の影響を評価するために、安定性試験を行った。最終製剤においては、PS80はウイルスバルクおよび製剤緩衝液の両方からのものとして存在する。ウイルスバルクの添加により最終容器におけるPS80濃度が現在の市販製剤の範囲(0.008〜0.04%(w/v))に及ぶように、種々の濃度のPS80を含有する製剤バッファーを調製した。特有のバルクロットを有する3ロットの充填容器を、各製剤バッファーを使用して調製し、全12ロットをPS80試験のために提出した。表8は、各安定化剤に関する理論的PS80濃度、および最終容器ロットにおける実験的に決定された濃度を要約したものである。
ポリソルベート80の濃度範囲の決定
RotaTeq(商標)の市販製剤はPS80を含む。37℃でのRotaTeq(商標)VVM7製剤の安定性に対するPS80濃度の影響を評価するために、安定性試験を行った。最終製剤においては、PS80はウイルスバルクおよび製剤緩衝液の両方からのものとして存在する。ウイルスバルクの添加により最終容器におけるPS80濃度が現在の市販製剤の範囲(0.008〜0.04%(w/v))に及ぶように、種々の濃度のPS80を含有する製剤バッファーを調製した。特有のバルクロットを有する3ロットの充填容器を、各製剤バッファーを使用して調製し、全12ロットをPS80試験のために提出した。表8は、各安定化剤に関する理論的PS80濃度、および最終容器ロットにおける実験的に決定された濃度を要約したものである。
12個の最終容器ロットのそれぞれを37℃で0または9日間静置し、ついで、5つ全ての再集合体の効力を測定した。PS80の濃度および効力の結果を分析して、調べた範囲のPS80濃度によって安定性が影響されるかどうかを判定した。簡潔に説明すると、効力データを混合効果回帰モデルにフィットさせて、相互作用項時間製剤(interaction term time formulation)の統計的有意性を検定した。この項の有意性は製剤全体にわたる低下率の潜在的な差を示す。結果は、再集合体G1、G2、G3およびG4が、0.05より大きな相互作用項p値を有することを示した。このことは、有意性が見出されなかったことを示している。再集合体P1は0.049の相互作用項p値を有し、これはボーダーラインの有意性を示した。したがって、個々の勾配値を各ロットおよび製剤に関して計算した。この更なる分析は、製剤#4が、3つのロットにわたって、一貫して、より大きな勾配値を有することを示した。高いPS80濃度での安定性の改善に起因するボーダーラインの有意差を伴って、試験したPS80濃度にわたって全再集合体が安定であったと結論づけられた。
実施例8
VVM7−RotaTeq(商標)の安全性、耐容性および免疫原性を評価するための二重盲検無作為対照試験
この研究の主目的は、免疫原性に基づいてRotaTeq(商標)の市販製剤と比較された場合のVVM7RotaTeq(商標)の非劣性を実証することであった。この研究の主な目的は、VVM7RotaTeq(商標)の投与を受けた被験者と、RotaTeq(商標)の市販製剤の投与を受けた被験者との比較において、3回目の投与後の第42日におけるワクチン誘導性抗体応答が類似している(非劣性である)かどうかを決定することであった。
VVM7−RotaTeq(商標)の安全性、耐容性および免疫原性を評価するための二重盲検無作為対照試験
この研究の主目的は、免疫原性に基づいてRotaTeq(商標)の市販製剤と比較された場合のVVM7RotaTeq(商標)の非劣性を実証することであった。この研究の主な目的は、VVM7RotaTeq(商標)の投与を受けた被験者と、RotaTeq(商標)の市販製剤の投与を受けた被験者との比較において、3回目の投与後の第42日におけるワクチン誘導性抗体応答が類似している(非劣性である)かどうかを決定することであった。
6〜12週齢の適格被験者を2つのワクチン接種群に1:1の比で無作為に割り当てた。群1はVVM7 RotaTeq(商標)の3回(3用量)の経口投与を受け、群2はRotaTeq(商標)の市販製剤の3回(3用量)の経口投与を受けた。血清を2つの時間間隔(第1投与の前および第3投与の42日後)で採取し、ヒトロタウイルス血清型G1、G2、G3、G4およびP1A[8]に対する血清中和抗体(SNA)ならびに血清抗ロタウイルスIgAにより試験した。新規製剤の安全性および忍容性も評価した。ワクチン接種の14日以内に中等度ないし重度の下痢および/または嘔吐を示した被験者においては、便サンプルを採取し、ロタウイルスに関して試験した。
合計1020名の被験者を無作為化し、1014名の被験者にワクチン接種した。そのうち510名が新規製剤の投与を受け、504名がRotaTeq(商標)の現行製剤の投与を受けた。それらの2つの群は概ね同等のベースライン特性を有していた。
免疫原性の一次仮説は、3用量の試験ワクチンの投与を受けた被験者において、ヒトロタウイルス血清型G1、G2、G3、G4およびP1Aに対するワクチン誘導性SNA応答のGMTに関して群間の非劣性を実証することであった。成功基準は、GMT比の95%CIの下限が>0.67であることを要した(現行製剤と比較して新規製剤のGMTにおける1.5倍以下の減少に相当する)。VVM7 RotaTeq(商標)製剤は、5つ全ての血清型の免疫原性に関して、RotaTeq(商標)の市販製剤と比較して非劣性であった(図2を参照されたい)。G3のGMTは、新規製剤群においては、現行製剤群と比較して高かった。また、血清抗ロタウイルスIgAに関する免疫原性は新規製剤群および現行製剤群において類似していた(図3を参照されたい)。
両群の被験者の安全性に関するデータを収集した。いずれかの投与の後の腸重積、下痢、嘔吐、昇温(直腸温38.1℃[100.5°F]または等価体)および過敏性は関心事象として予め特定された。結果は、VVM7製剤が良好な忍容性を示し、これらの事象に関する市販のRotaTeq製剤と同等の安全性プロファイルを有することを示した。該試験において、ワクチン関連の重篤な有害事象はなく、死亡もなかった。有害事象ゆえに、2名の被験者のみが試験を中断した。
Claims (21)
- 薬学的有効量の少なくとも1つのロタウイルス再集合体または弱毒化ロタウイルス株、約1.0mM〜約3.5mMの医薬上許容されるカルシウム塩、約0.5M〜約2.0Mのスクロース、約260mM〜約700mMのアジピン酸、および約10mM〜約100mMのリン酸ナトリウムを含む液体ロタウイルスワクチン製剤であって、該製剤のpHが約6.2〜約6.7である、液体ロタウイルスワクチン製剤。
- カルシウムが塩化カルシウムからのものである、請求項1記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 非イオン性界面活性剤を更に含む、請求項1または請求項2記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 非イオン性界面活性剤がポリソルベート80であり、これが0.008%〜0.04% w/vの濃度で存在する、請求項3記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 該製剤が、G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される1以上のロタウイルス再集合体を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 該製剤がG1、G2、G3、G4およびP1Aロタウイルス再集合体を含む、請求項5記載のロタウイルスワクチン製剤。
- ロタウイルス再集合体の総量が約1.0×106〜約50×106感染単位/mLである、請求項5または請求項6記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 組織培養培地を更に含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 組織培養培地が約2〜約30% v/vの量で存在する、請求項8記載のロタウイルスワクチン製剤。
- カルシウムの量が約3.0mMである、請求項1〜9のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 該製剤が、
a)G1、G2、G3、G4およびP1Aからなる群から選択される1以上のロタウイルス再集合体;
b)約1.5Mのスクロース;
c)約465mMのアジピン酸;
d)約10mMのリン酸ナトリウム;ならびに
e)約3mMの医薬上許容されるカルシウム塩
を含み、ここで、該製剤のpHが25℃で約6.4である、請求項1記載のロタウイルスワクチン製剤。 - 約0.01%のポリソルベート80を更に含む、請求項11記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 該製剤が37℃で少なくとも7日間、25℃で少なくとも45日間および2〜8℃で少なくとも2年間にわたって熱的に安定である、請求項1〜12のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤。
- 請求項1〜13のいずれか1項記載の製剤を小児に経口投与することを含む、小児におけるロタウイルス感染の可能性を低減する、またはロタウイルス胃腸炎の可能性もしくは重症度を予防もしくは低減する方法。
- 小児が6〜12週齢の乳児である、請求項14記載の方法。
- (a)所定の時間が経過するのを待ち、(b)該製剤の追加用量を小児に投与し、ならびに(c)任意に、工程(a)および(b)を1回以上繰り返す工程を更に含む、請求項14または15記載の方法。
- 該方法が、該ロタウイルスワクチン製剤を3回投与方式で小児に投与し、ここで、該小児が該3回投与方式の完了時に32週齢以下である、請求項16記載の方法。
- 該ロタウイルスワクチン製剤を、ジフテリアおよび破傷風トキソイドおよび無細胞百日咳(DTaP)、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)b型コンジュゲート(Hib)、B型肝炎ワクチンおよび肺炎球菌コンジュゲートワクチンならびにそれらの組合せからなる群から選択される第2のワクチンと付随して小児に投与する、請求項14または15記載の方法。
- ロタウイルス感染に関連した疾患の治療または予防のための、請求項1〜13のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤の使用。
- ロタウイルス胃腸炎の予防のための、請求項1〜13のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤の使用。
- ロタウイルス感染の可能性の低減またはロタウイルス胃腸炎の可能性もしくは重症度の低減における使用のための、請求項1〜13のいずれか1項記載のロタウイルスワクチン製剤。
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