<血栓の形成及び危害>
血栓とは人体または動物が生存期間中においてなんらかの誘因により、血液の有形成分が循環血中において異常が発生した場合の血液凝塊、または心臓内壁または血管壁上に発生する血液沈着物を言う。心筋梗塞、脳梗塞、肺血栓、深部静脈血栓及び末梢血管栓塞などを含み、人類の健康をひどく脅かす疾患であり、その発病率、障害が残る確率、致死率はいずれも大変高いものである。世界保健機関の統計によれば、世界中において毎年血栓疾患で死亡する人数は約2600万人であり、他の死亡原因よりはるかに高く、人類の健康を脅かす最大の敵となっている(非特許文献1)。
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む(非特許文献2)。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro−MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である(非特許文献3,4)。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)によってタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳格な調節を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2−抗プラスミン(α2−antiplasmin)である。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)(非特許文献5、6)を有する。
プラスミノゲン(plasminogen,plg)は単一鎖の糖タンパクであり、分子量は約92kDaである(非特許文献7、8)。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的なソースである(引用文献9、10参照)。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸−プラスミノゲン(Glu−plasminogen)及びリジン−プラスミノゲン(Lys−plasminogen)である。天然的に分泌され及び分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N−末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸−プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸−プラスミノゲンはLys76−Lys77においてリジン−プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸−プラスミノゲンと比較して、リジン−プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560−Val561ペプチド結合はuPA またはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす(非特許文献11)。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの同源トリクル環を含み、即ちいわゆるkringleであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringleはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2−APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノゲンフラグメントであり、kringlel−4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントは血管阻害剤と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理性血栓の形成を予防するキーポイントである(非特許文献12)。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している(非特許文献8、13、14)。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解させることができ、MMP−1、MMP−2、MMP−3及びMMP−9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である(非特許文献15)。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する(非特許文献16−18)。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
<現在の血栓を溶解させる治療方法>
現在の血栓を減少させる関連の薬物治療はよく見られる非手術的治療方法であって、血栓溶解療法、抗凝固療法、抗血小板薬及び血管拡張薬を含む。現在の最も有効な方法は血栓溶解療法を用いることであり、よく用いられる血栓溶解薬には三つの世代がある:第一世代はストレプトキナーゼ(SK)及びウロキナーゼ(UK)を代表とし、血栓溶解能力が高く、しかし血栓溶解特異性を有さず、全身的な血栓溶解亢進が現れやすくこれにより出血をもたらすことがある(非引用文献19、20)。第二世代は組織型プラスミノゲン活性化剤tPAを代表とし、その血栓溶解作用はSK、UKより優れ、体内における半減期が短い(非特許文献21)。第三世代は遺伝子工学技術を用いたものであり、単一クローン技術で第一世代、第二世代の薬物に対して改造を行うものであるが、しかし基本的には試験段階にある。これらの薬物は血栓溶解平衡における活性化剤を増加させることに基づくものであり、プラスミン(Plm)を生成させてフィブリン溶解を促進し、これにより血栓溶解の目的を果たす(非特許文献22)。
現在の承認が得られている血栓溶解薬は二種類に分けられる:絶対的大多数の血栓溶解薬が使用するのはプラスミノゲン活性化剤であり、天然及び異なる組み換え形式のtPA、uPA及びストレプトキナーゼ(streptokinase)を含む。プラスミノゲン活性化剤自身は血栓を溶解させることができず、血栓付近のプラスミノゲン分子を活性化させて活性のプラスミンにさせてから血栓溶解作用を果たすことになる。最近の数年間において、活性プラスミンを直接局所血栓溶解に用いることが許されるようになり、具体的な方法はガイドチューブを血栓部位に導通して局所で活性プラスミンを放出することで直接血栓を溶解させる。
プラスミノゲン(plg)はプラスミン(Plm)の非活性形式であり、従来ではそれは体内において過量で安定的なものであり、生体の血栓溶解プロセスはプラスミノゲンが活性化剤の作用下において活性化されて活性のあるプラスミンとなり、活性プラスミンはさらにフィブリン血液凝塊(fibrin clot)を溶解させる機能を果たすものである。従来的にプラスミノゲン自身は血栓を溶解させる作用を有しないと考えられている。
しかし、本発明は意外にも、天然プラスミノゲンが優れた新鮮血栓及び陳旧性血栓を溶解させる機能を有することを見出し、安全性に優れ、血栓を溶解させる強度が調整しやすく、特異性が優れるなどの長所を有する。
本発明の血栓溶解メカニズムは従来知られている血栓溶解ストラテジーと完全に異なるものである。従来技術における血栓を溶解させる方法は、血栓溶解反応の触媒、即ちプラスミノゲン活性化剤を増やすこと、活性化剤はtPA、uPA、ストレプトキナーゼ及びその誘導体または血栓溶解反応の生成物を含み、即ち活性プラスミンを増やすことで実現されるものである。本発明の血栓を溶解させる方法は、血栓溶解反応の基質のプラスミノゲンを調整するストラテジーで実現されるものである。
従来技術における血栓溶解薬に比べて、本発明のプラスミノゲン血栓溶解は少なくとも以下のメリットを有する。
1、優れた血栓溶解効果
末梢動脈血栓(peripheral arterial occlusion,PAO)及び深部静脈血栓(deep vein thrombosis,DVT)の状況下で形成される長い血栓及び徐々に収縮する陳旧性血栓に対して、従来技術における血栓溶解薬の効果は比較的弱い(非特許文献23〜25)。しかし本発明はプラスミノゲンまたはプラスミンとPAの組み合わせを用いることにより、前記血栓に対して優れた血栓溶解効果を実現している。そのため、本発明は効果的にtPA,uPAの前記課題を解決できる。
2、半減期が長い
現在の血栓溶解物質の一つの重要な特徴は体内半減期が短すぎることである。例えば天然uPAの体内半減期は5〜10分間であり、天然tPAの体内半減期は3〜5分間であり、天然プラスミンの体内半減期はさらに極めて短いものである。現在は遺伝子工学によってこれらの物質の半減期を伸ばそうとしているが、その効果が理想的でなく、半減期が短すぎることは依然非常に大きくこれらの物質の応用を制限している。
しかし、プラスミノゲンの体内半減期は53時間に達し、これはプラスミノゲンまたはプラスミンとPAの組み合わせを使用することで、いずれも顕著に体内における血栓溶解の作用期を延長させる顕著な作用を有し、持続的に、穏やかに血栓を溶解させる目的を達成できる。
3、より穏やかで制御可能性が高い
活性プラスミンにとって、それは高活性を有するプロテアーゼであり、そのため、活性プラスミンを使用することで血栓を溶解させることは非常に速い反応プロセスであり、これにより現在の使用において必ずガイドチューブを用いて直接血栓部位に導く必要がある。
プラスミノゲン活性化剤の場合、それは血栓溶解反応において触媒の位置に属し、少量のプラスミノゲン活性化剤を添加することにより短時間で速やかに大量の活性プラスミンを形成し、激しい酵素反応プロセスである。
しかし、本発明は実験により以下を証明している。血栓溶解反応の基質プラスミノゲンを調整することにより血栓を溶解する過程をより穏やかにし、且つ、異なるプラスミノゲン用量及び血栓溶解効果の研究により、プラスミノゲンの血栓溶解速度はプラスミノゲンの用量によって調整することができる。
4、特異性及び副作用が低い
従来技術においてプラスミノゲン活性化剤を血栓溶解薬物として使用する一つの主な副作用は出血であり、特に腸管及び脳部における出血である。正常の体内においてプラスミノゲンは広くすべての体液中に存在し、正常な状況では体内に生理性のフィブリンの沈着があり、プラスミノゲン活性化剤の増加は受傷、出血、激しい運動などの特殊な状況下において起きる場合が多い。そのため、プラスミノゲン活性化剤を一旦注射すれば、体内において非特異的に広くプラスミノゲンが活性化されてプラスミンが形成される反応が発生し、これにより元の正常なフィブリンが沈着して溶解しさらに出血が発生する。臨床上において、頭蓋骨内出血リスクは一つの主な出血リスクである。報道によって、2〜24時間持続する投薬プロセスにおいて、頭蓋骨内出血の発生率は1%〜2%であり、現在はこのような出血リスクを回避する良い方法がない。
本発明において、プラスミノゲンは活性酵素ではなく、そのためプラスミノゲンを注射した後に非特異的に広くプラスミノゲンを活性化させて活性プラスミンを形成するという反応が生じることはない。この反応の発生部位はどこでプラスミノゲン活性化剤が発現されるかであり、即ち血栓が生じる部位である。本発明は実験によりプラスミノゲンは特異的に血栓部位に吸着できることを証明し、血栓溶解特異性を有し、且つ実験により出血という副作用が生じていないことが証明されている。
5、効果的に陳旧性血栓を溶解させる
現在の血栓溶解薬物の血栓溶解作用は血栓形成初期に集中しており、即ち「新鮮血栓」である。虚血性の脳卒中の研究が証明するように、血栓が形成してから3時間以内に組み換えtPAを注射することで効果的に血栓を溶解できる。後続の研究により以下が証明されている。組み換えtPAは最長で血栓が形成されてから4.5時間以内に血栓を溶解できる。4.5時間を過ぎれば、組み換えtPAを注射するリスクは有効的な作用を超える可能性がある。そのため、従来の薬物において、なるべく血栓形成の早期(4.5時間未満)に組み換えtPAを注射する(非特許文献26、27)必要がある。言い換えれば、現在、本分野において、強力な陳旧性血栓を溶解させる薬物を望まれている。
本発明において、プラスミノゲン(及び生理的レベルのtPA)を単独で使用し、またはプラスミノゲン及びプラスミノゲン活性化剤(tPAまたはuPA)を使用することにより、いずれも効果的に新鮮血栓(血栓形成から0.5時間)、または陳旧性血栓(血栓形成から20時間)、場合によっては極めて古い陳旧性血栓(72時間)の血栓を溶解させることができる。これらのデータは明確にプラスミノゲンが陳旧性血栓を溶解させることに非常に大きな優位性を有することを示している。
そのため、プラスミノゲンは新しいより優位性のある血栓溶解新薬となることが望まれる。
一方において、本発明は被験者の動脈、静脈血栓を予防及び/または解消させる方法に係り、被験者に対してプラスミノゲンを投与することを含む。本発明はさらにプラスミノゲンの被験者の動脈、静脈血栓の予防及び/または解消における用途を含む。一つの実施形態において、前記血栓は新鮮血栓及び陳旧性血栓を含む。一つの実施形態において、前記血栓は血液系疾患、循環系疾患、自己免疫疾患、代謝に乱れが生じる疾患または感染性疾患によってもたらされる血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は糖尿病によって生じる大血管、小血管、微小血管血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は大小血管病変によって起こる血栓である。
これと共に、本発明は新しい血栓関連疾患を予防及び/または治療する方法に係り、該方法は被験者体内に有効量のプラスミノゲンを投与することを含む。本発明はさらにプラスミノゲンを血栓関連疾患の予防及び/治療に用いる関連の用途に係る。本発明は被験者の病理的血栓を予防及び/解消させる方法に係り、該方法は全身または局所にプラスミノゲンを投与することにより前記血栓を溶解させる。前記血栓は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓であり、前記血栓関連疾患は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓によって誘発またはもたらされる疾患である。前記被験者は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンが低下している。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
一つの実施形態において、本発明の血栓は静脈血栓及び/または動脈血栓である。前記血栓関連疾患は以下を含む:門静脈血栓によってもたらされる膵臓炎、肝硬変;腎静脈血栓がもたらす腎栓塞;頸部静脈血栓によってもたらされる全身性敗血症、肺栓塞、脳血栓;動脈及び静脈血栓がもたらす臓器の梗塞:脳梗塞、心筋梗塞、血栓性脳卒中、心房細動、不安定性狭心症、難治性狭心症、一過性の脳虚血発作、肺栓塞、糖尿病による大小血管栓塞等を含むが、これらに限られない。
一つの実施形態において、前記血栓関連疾患は糖尿病性腎臓病、糖尿病性網膜症、糖尿病性肝臓疾患、糖尿病性心臓病、糖尿病性腸疾患であり、糖尿病性神経痛等の糖尿病性神経病変を含む。
一つの実施形態において、前記血栓は継発的及び/または局所の血栓である;前記血栓関連疾患は継発的及び/または局所の血栓関連疾患である。
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的(conservative)な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは例えば、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投薬は血栓領域においてプラスミノゲンを含有するドレッシング材及び/またはガイドチューブを用いることによって行われる。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001−2000mg/kg、0.001−800mg/kg、0.01−600mg/kg、0.1−400mg/kg、1−200mg/kg、1−100mg/kg、10−100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001−2000mg/cm2、0.001−800mg/cm2、0.01−600mg/cm2、0.1−400mg/cm2、1−200mg/cm2、1−100mg/cm2、10−100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
前記プラスミノゲンは単独で投与でき、他の薬物と組み合わせても使用でき、前記他の薬物は例えば、心血管疾患治療薬、不整脈治療薬、糖尿病治療薬等である。
もう一方において、本発明はプラスミノゲンの被験者の動脈、静脈血栓を予防及び/または消去する薬物、製品、薬物キット中における用途に係る。本発明はさらに製薬方法に係り、プラスミノゲンを薬学的に許容できる担体と一緒に被験者の動脈、静脈血栓を予防及び/または消去する薬物、製品、薬物キットに係る。一つの実施形態において、その前記血栓は新鮮血栓(急性血栓)及び陳旧性血栓(慢性血栓)を含む。一つの実施形態において、前記血栓は血液系疾患、循環系疾患、自己免疫疾患、代謝に乱れが生じる疾患または感染性疾患がもたらす血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は糖尿病によって継発する大血管、小血管、微小血管の血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は大小血管の病変がもたらす血栓である。
これとともに、本発明はプラスミノゲンの被験者病理性血栓を予防及び/解消させる薬物、製品、薬物キットにおける用途に係り、及びプラスミノゲンの被験者血栓関連疾患を予防及び/または治療する薬物、製品、薬物キットにおける使用に係る。本発明はさらに薬物を製造する方法に係り、プラスミノゲンを薬学的に許容し得る担体と共に被験者の病理性血栓を予防及び/または解消させる薬物、製品、薬物キットに製造することであり、または被験者の血栓関連疾患を予防及び/または治療する薬物、製品、薬物キットに係る。前記血栓は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓であり、前記血栓関連疾患は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓がもたらす疾患である。前記被験者は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンは低下している。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
一つの実施形態において、本発明の血栓は静脈血栓及び/または動脈血栓である。前記血栓関連疾患は以下を含む:門静脈血栓によってもたらされる膵臓炎、肝硬変;腎静脈血栓がもたらす腎栓塞;頸部静脈血栓によってもたらされる全身性敗血症、肺栓塞、脳血栓;動脈及び静脈血栓がもたらす臓器梗塞:脳梗塞、心筋梗塞、血栓性脳卒中、心房細動、不安定性狭心症、難治性狭心症、一過性の脳虚血発作、肺栓塞、糖尿病による大小血管栓塞等を含むが、これらに限られない。
一つの実施形態において、前記血栓関連疾患は糖尿病性腎臓疾患、糖尿病性網膜病変、糖尿病性肝臓疾患、糖尿病性心臓疾患、糖尿病性腸疾患、糖尿病性神経痛等を含む糖尿病性神経病変である。
一つの実施形態において、前記血栓は継発的及び/または局所の血栓である。上記血栓関連疾患は継発的及び/または局所の血栓関連疾患である。
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、消去及び/または置換したもので、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは例えば体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投与は血栓領域においてプラスミノゲンを含有するドレッシング材及び/またはガイドチューブを用いることによって行われる。
上記プラスミノゲンは単独で投与でき、または他の薬物と組み合わせて投与することで病理性の血栓に伴って発生する他の疾患を治療することができ、上記他の薬物は例えば心血管疾患治療薬、不整脈治療薬、糖尿病治療薬等である。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001−2000mg/kg、0.001−800mg/kg、0.01−600mg/kg、0.1−400mg/kg、1−200mg/kg、1−100mg/kg、10−100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001−2000mg/cm2、0.001−800mg/cm2、0.01−600mg/cm2、0.1−400mg/cm2、1−200mg/cm2、1−100mg/cm2、10−100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
もう一方において、本発明は被験者の動脈、静脈血栓を予防及び/または解消させるプラスミノゲンに係り、及び被験者の動脈、静脈血栓を予防及び/または解消させる、プラスミノゲンを含有する薬物組成物に係る。一つの実施形態において、前記血栓は新鮮血栓及び陳旧性血栓を含む。一つの実施形態において、前記血栓は血液系疾患、循環系疾患、自己免疫疾患、代謝に乱れが生じる疾患または感染性疾患がもたらす血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は糖尿病に継発する大血管、小血管、微小血管血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は大小血管病変がもたらす血栓である。これとともに、本発明は血栓関連疾患の予防及び/または治療に用いるプラスミノゲンに係り、及び血栓関連疾患を予防及び/または治療する、プラスミノゲンを含有する薬物組成物に係る。上記血栓は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓であり、前記血栓関連疾患は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓がもたらす疾患である。一つの実施形態において、前記血栓は静脈血栓及び/または動脈血栓である。前記血栓関連疾患は以下を含む:門静脈血栓によってもたらされる膵臓炎、肝硬変;腎静脈血栓がもたらす腎栓塞;頸部静脈血栓によってもたらされる全身性敗血症、肺栓塞、脳血栓;動脈血栓がもたらす臓器の梗塞:脳梗塞、心筋梗塞、血栓性脳卒中、心房細動、不安定性狭心症、難治性狭心症、一過性の脳虚血発作、肺栓塞、糖尿病による大小血管栓塞等を含むが、これらに限られない。
一つの実施形態において、前記血栓関連疾患は糖尿病性腎臓病、糖尿病性網膜症、糖尿病性肝臓疾患、糖尿病性心臓病、糖尿病性腸疾患であり、糖尿病性神経痛等の糖尿病性神経病変を含む。
一つの実施形態において、前記血栓は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。上記血栓関連疾患は先天的、継発的及び/または局所の血栓関連疾患である。
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは例えば、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投薬は血栓領域においてプラスミノゲンを含有するドレッシング材及び/またはガイドチューブを用いることによって行われる。
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001−2000mg/kg、0.001−800mg/kg、0.01−600mg/kg、0.1−400mg/kg、1−200mg/kg、1−100mg/kg、10−100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001−2000mg/cm2、0.001−800mg/cm2、0.01−600mg/cm2、0.1−400mg/cm2、1−200mg/cm2、1−100mg/cm2、10−100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
もう一方において、本発明は被験者の動脈、静脈血栓を予防及び/または解消させるプラスミノゲンを含有する薬物キットに係る。一つの実施形態において、前記血栓は新鮮血栓及び陳旧性血栓を含む。一つの実施形態において、前記血栓は血液系疾患、循環系疾患、自己免疫疾患、代謝に乱れが生じる疾患または感染性疾患がもたらす血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は糖尿病に継発する大血管、小血管、微小毛管血栓である。一つの実施形態において、前記血栓は大小血管病変がもたらす血栓である。一つの実施形態において、前記製品または薬物キットは有効用量のプラスミノゲンを含有する容器である。さらには、前記製品または薬物キットはさらに一種類または複数種類の他の薬物を含む容器を有し、そのうち前記他の薬物は血栓の形成を伴うその他の疾患の治療薬である。該薬物はさらにプロトコル(使用説明書)を含むことができ、該プロトコルは前記プラスミノゲンが前記動脈、静脈血栓、または血栓関連疾患の予防及び/治療に用いることができることを説明するものであり、さらには前記プラスミノゲンが前記他の薬物を投与する前、投与と同時、及び/または後に投与できることを説明するものである。一つの実施形態において、前記他の薬物は例えば、心血管疾患治療薬、不整脈治療薬、糖尿病治療薬等であり、病理的血栓の発生に伴う他の疾患を治療するためのものである。具体的には前記技術構成において、上記血栓は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓であり、前記血栓関連疾患は新鮮血栓及び/または陳旧性血栓がもたらす疾患である。一つの実施形態において、前記血栓は静脈血栓及び/または動脈血栓である。前記血栓関連疾患は以下を含む:門静脈血栓によってもたらされる膵臓炎、肝硬変;腎静脈血栓がもたらす腎栓塞;頸部静脈血栓によってもたらされる全身性敗血症、肺栓塞、脳血栓;動脈及び静脈血栓がもたらす臓器の梗塞:脳梗塞、心筋梗塞、血栓性脳卒中、心房細動、不安定性狭心症、難治性狭心症、一過性脳虚血発作、肺栓塞、糖尿病による大小血管栓塞等を含むが、これらに限られない。
一つの実施形態において、前記血栓関連疾患は糖尿病性腎臓病、糖尿病性網膜症、糖尿病性肝臓疾患、糖尿病性心臓病、糖尿病性腸疾患であり、糖尿病性神経痛等の糖尿病性神経病変を含む。
一つの実施形態において、前記血栓は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。上記血栓関連疾患は先天的、継発的及び/または局所の血栓関連疾患である。
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1−100、1−90、1−80、1−70、1−60、1−50、1−45、1−40、1−35、1−30、1−25、1−20、1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、1−2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu−プラスミノゲン、Lys−プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ−プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンは低下している。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
本発明は本発明の実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、且つこれらの組み合わせ後の技術構成は本出願で明確に開示され、前記技術構成が単独且つ明確に開示されているのと一緒である。また、本発明はさらに各実施形態及び要素のすべてのサブの組み合わせをカバーし、さらに本明細書中において開示され、それぞれのサブの組み合わせが単独且つ明確に本明細書中において開示されているのと一緒である。
1.定義
「血栓」は凝血プロセスにおいて形成される産物である。凝血プロセスは生体が密閉高圧循環系の完全性を保持するための防御メカニズムである。正常な場合において、該プロセスは非活性化状態を維持すべきであり、しかし組織が損傷を受けた場合、速やかに該メカニズムを起動させて血液の外部への漏洩を減らすべきである。血管が損傷を受けた場合、トロンビンの作用下において血漿中に溶解しているフィブリノーゲン(fibrinogen)は最終的に水に溶けないフィブリン(fibrin)多重合体となり、さらに互いに網となり、血液細胞を中に網羅し、血液凝塊を形成することで、凝血プロセスを完成させる。該プロセスにおいて、血液凝塊と傷口の大きさの比が極めて重要である。そのため血液凝塊の形成を開始させる分子(フィブリン、トロンビン)及び血液凝塊を溶解させる分子(プラスミン、プラスミノゲン活性化剤など)の間には平衡が存在する。しかし病理的なプロセスにおいて、該平衡の破壊は過剰の血液凝塊形成分子を破壊し、これにより血栓 (thrombus)を形成させ、該血栓は「病理性血栓」である。
人体において、血栓は血流のあるところであればどこでも発生する可能性があり、現在は主に二種類に分けられる:静脈血栓及び動脈血栓である。静脈血栓は静脈中において生じる血液凝塊によってもたらされる。最もよく見られる静脈血栓のタイプは以下である:深部静脈血栓症(DVT)、それは体の静脈例えば大腿静脈(femoral vein)に影響し、これにより影響を受ける部位の痛みと腫れをもたらす;門静脈血栓、それは肝臓門静脈に影響し、これにより膵臓炎、肝硬変、憩室炎または胆管がんをもたらす;腎静脈血栓、腎栓塞をもたらす;頸内静脈血栓、それは全身性の敗血症、肺塞栓などの複数種類の合併症を引き起こす;脳静脈血栓、患者の頭痛、視覚異常、脳卒中などの症状をもたらす。動脈血栓は体内のほとんどの臓器の梗塞をもたらす可能性があり、それが引き起こす疾患は以下を含むがこれらに限られない:脳梗塞、心筋梗塞、血栓性卒中、アテローム性動脈硬化、不安定性狭心症、難治性狭心症、一過性脳虚血発作、肺栓塞などである。
「血栓関連疾患」は血栓形成及び血栓栓塞という二種類の病理的プロセスによってもたらされる疾患である。本発明の血栓関連疾患はという用語は血栓形成及び血栓栓塞によって引き起こされるすべての疾患を含む。
血栓の形成(thrombosis)とは一定条件下において、血液有形成分が血管内(多くは小血管)に栓を形成し、これにより血管の一部または全体が詰まり、対応部位の血液供給に障害が生じる病理的プロセスである。血栓組成成分により血小板血栓、赤血球血栓、フィブリン血栓、混合血栓等に分けられる。血管の種類に応じて動脈性血栓、静脈性血栓及び毛細血管性血栓に分けられる。
血栓栓塞(thromboembolism)は血栓が形成部位から脱落し、血液の流動に伴って移動する過程においてなんらかの血管の一部または全部を詰まらせることをいい、これにより組織及び(または)臓器の虚血、酸素不足、壊死(動脈血栓)及び鬱血、むくみ(静脈血栓)を形成する病理的プロセスである。
静脈血栓形成は下肢の深部静脈血栓の形成が最もよく見られ、よく見られるのは深部静脈例えば膝窩静脈、大腿静脉、腸間膜静脈及び門静脈などである。多くは赤血球血栓またはフィブリン血栓などである。主な表れは以下である:(1)血栓によって形成される局所の腫れ、痛み;(2)血栓による末梢血液の還流障害:例えば末梢のむくみ、腫れと痛み、皮膚変色、腹水等である;(3)血栓脱落後に栓塞した血管によってもたらされる関連臓器の機能障害、例えば肺梗塞の症状、特徴などである。
動脈血栓の形成の多くは冠状動脈、脳動脈、腸系膜動脈及び手足動脈等に見られ、血栓のタイプは早期において血小板血栓が多く、それからフィブリン血栓である。臨床的表れは以下である:(1)発病の多くが突然で、局所の激しい痛み、例えば狭心症、腹痛、手足の激痛などを伴う;(2)関連供血部位の組織の虚血、酸素不足によってもたらされる臓器、組織構造及び機能異常、例えば心筋梗塞、心不全、心原性ショック、不整脈、意識障害及び片麻痺などである。(3)血栓の脱落により引き起こされる脳栓塞、腎栓塞、脾臓栓塞などの関連症状及び特徴である;(4)血液供給組織の虚血性壊死によって引き起こされる臨床的症状、例えば発熱等である。毛細血管血栓の形成はよくDIC、TTP及び溶血性尿毒症症候群(HUS)等で見られる。臨床上の表れの多くの場合特異性がなく、主に皮膚粘膜の栓塞性壊死、微小循環不全及び臓器機能障害である。
「糖尿病」は遺伝的要素、免疫機能の乱れ、微生物感染及びその毒素、フリーラジカル毒素、精神要因などの各種病気誘発因子が生体に作用することによる、インスリン減退、インスリン抵抗などによって引き起こされる糖、タンパク質、脂肪、水及び電解質等の一連の代謝に乱れが生じる症候群であり、臨床的には高血糖を主な特徴とする。
「糖尿病合併症」は糖尿病プロセスにおける血糖の制御不良によって引き起こされる身体のその他の臓器または組織のダメージまたは機能障害であり、肝臓、腎臓、心臓、網膜、神経系のダメージまたは機能障害等を含む。世界保健機関の統計によれば、糖尿病合併症は100種類以上あり、現在における合併症が最も多い疾患である。これらの糖尿病の合併症は主に患者の各臓器の大血管、小血管、微小血管が損傷を受けることによって起こるものである。
「糖尿病性大血管病変」は主に主動脈及び各臓器の動脈に発生するアテローム性動脈硬変である。その発病メカニズムは以下の面を含む:1)持続性の高血糖は血液の粘度及び凝固性を向上させ、これにより動脈の血管弾性の弱まり及び喪失をもたらす;2)脂質類代謝異常、それはコレステロール及びコレステロールエステルの細胞内における堆積を促進し、これによりアテローム性動脈硬変の発生および発展をもたらす;3)動脈壁の内皮細胞損傷、血流動力学の変化により血液が機械的に長期的に血管内皮に衝突し、内皮の損傷を引き起こし、これにより血小板、フィブリンが損傷部位において凝集して血栓を形成し、さらには炎症を引き起こす;4)凝血メカニズムに関与する糖タンパク質因子が多くなり、血小板及びフィブリンが損傷した内皮下層に附着することで溶解能力が低下することを促進し、これにより血栓を形成する。
「糖尿病性微小血管病変」とは糖尿病患者の生体の各臓器または組織の微小循環において異なる程度の異常がもたらす微小血管障害である。微小血管障害が形成するプロセスは概ね以下である:微小循環の機能改変、内皮損傷、基膜の厚み増大、血液粘度の上昇、赤血球の凝集、血小板の粘着及び凝集、最終的には微小血栓形成及び/または微小血管閉塞をもたらす。
前記の二種類の「糖尿病性血管病変」は組織または臓器の局所血管損傷、血流不順、細胞の酸素欠乏、血液凝塊の形成、血栓及び炎症をもたらし、さらには周辺の組織及び臓器の機能に影響し、これにより糖尿病合併症をもたらす。例えば、糖尿病性心臓病、糖尿病性腸疾患、糖尿病性腎臓病、糖尿病性網膜症、糖尿病性肝臓疾患、糖尿病性神経病変である。
「糖尿病性腎疾患」は糖尿病微小血管合併症であり、主に糖尿病性糸球体硬化症といい、これは血管損傷を主とする糸球体の病変であり、タンパク尿、高血圧、むくみ、糸球体硬化症、血管構造変化及び細管間質性疾患(tubulointerstitial disease)を含むことを特徴とする。糖尿病性腎臓疾患の第一の臨床的証拠は通常、尿液中に存在するアルブミン尿であり、例えば微量アルブミン尿(microalbuminuria)または大量アルブミン尿(macroalbuminuria)である。
「糖尿病性神経病変」は「糖尿病性神経病」とも呼ばれ、糖尿病によって引き起こされる神経系損傷によってもたらされ、感覚神経損傷、運動神経損傷及び自主神経損傷を含む。そのうち感覚神経損傷が通常比較的ひどく、よく見られる症状は以下を含むがこれらに限られない:体の痛み、感覚減退、痺れ、熱さ、冷たさ、及び糖尿病神経性疼痛;糖尿病合併症によって引き起こされる自発性疼痛、痛覚減退(hypoalgesia)、痛覚過敏(hyperalgesia)等を含むがこれらに限られない。
「糖尿病性神経疼痛」は糖尿病の神経病変の最もよく見られる形であり、通常は糖尿病による感覚神経の損傷によってもたらされる。主な疼痛は通常、温度及び触覚の喪失を伴い、疼痛の発生は足の感覚の場合が多く、同時に腕及び胴体にも発生する。一般的には末梢及び中枢神経疼痛に分けることができる。周囲神経疼痛は周囲神経の損傷によって引き起こされ、中枢神経疼痛は中枢神経系及び/または脊髄損傷によって引き起こされる。
「糖尿病性肝損傷」は糖尿病によって引き起こされる肝臓組織学及び機能に変化が生じる病変である。それは主に糖尿病によって引き起こされる大血管、微細血管病変によってもたらされる。糖尿病によって引き起こされる肝損傷は以下を含む:肝酵素学的異常であって、肝細胞内の二酸化炭素の蓄積、酸中毒、酸素供給の減少、酸素消耗の増加を引き起こし、肝臓アミノ基移転酵素の活性を向上させ、ビリルビンの代謝を乱し、ひどいものは肝細胞の壊死をもたらす;脂肪肝、脂肪肝をもたらすすべての病因において、糖尿病は第3位を占め、そのうち、21%〜78%の糖尿病患者は脂肪肝を伴う;肝炎、肝硬変及び肝臓がん、そのうち糖尿病患者におけるウイルス性肝炎の疾患率は健常者の2〜4倍であり、原発性の肝臓がんの発生率は健常者の4倍である。
臨床において、糖尿病によって引き起こされる肝疾患及びその関連症状は以下を含むがこれらに限られない:肝臓酵素学異常、肝臓周辺の不快感と圧迫痛、肝腫大、脾腫大、肝脾腫大、肝炎、脂肪肝、胆管炎、肝硬変、肝壊死及び肝臓がんである。
「糖尿病性心血管疾患」とは糖尿病によって引き起こされる心血管系の組織学及び機能変化が生じる病変であり、最もよく見られる糖尿病合併症の一つであり、主に糖尿病によって引き起こされる大血管、小血管、微小血管病変によってもたらされる。そのうち、患者は臨床的に心電図異常、心臓の拡張、不整脈、狭心症、無痛性心筋梗塞、心不全として現れる。統計によれば、概ね70%−80%の糖尿病患者は最終的に心血管合併症で死亡する。
「糖尿病性網膜病変」は「糖尿病性網膜症」とも呼ばれ、糖尿病に引き起こされる、網膜に組織学及び機能的変化が生じる病変であり、主に糖尿病によって引き起こされる大血管、微小血管の病変がもたらすものである。糖尿病網膜症は最もよく見られる糖尿病性眼疾患であり、視力減退または失明をもたらす。統計によれば、50%の糖尿病患者は病程の10年前後において該病変が現れ、15年以上では80%に達する。糖尿病の病状がひどく、年齢が大きいほど、発病の確率が高い。
CTまたはMRI等の技術により患者の血栓組織を検査する際、病巣部に新鮮血栓、または陳旧性血栓が見られる。初発の病巣は急性発作期では新鮮病巣であり、病巣部組織が虚血して中心部分が壊死し、一部は回復する可能性があり、周辺領域は影響を受けていない。この時の治療目的は主に「中心梗塞領域」の拡大を防ぐことである。一方で陳旧性血栓の場合は組織の虚血により中心部は完全に壊死し、治療目的は梗塞域の周辺組織機能が継続的に改善されることに尽力することである。陳旧性血栓は比較的高い再発リスクを有し、そのため陳旧性血栓の患者によって、治療と予防は同じように重要で、症状を減軽すると同時に高い再発率を低減させることができる。現在の複数種類の血栓溶解薬は急性期の新鮮血栓に対しては治療効果が優れているが、しかし陳旧性血栓に対しては治療効果が比較的良くない。
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD−二量体に加水分解できる。
「プラスミノゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含有する天然ヒト由来プラスミノゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1−5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1−Gly19を含み、Papは残基Glu20−Val98を含み、Kringle1は残基Cys103−Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184−Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275−Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377−Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481−Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581−Arg804を含む。
Glu−プラスミノゲンは天然のフルサイズのプラスミノゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)、該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu−プラスミノゲンの第76−77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys−プラスミノゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Δ−プラスミノゲン(δ−plasminogen)はフルサイズのプラスミノゲンにKringle2−Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず(非特許文献28,29)、δ−プラスミノゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり(非特許文献30)、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノゲン(Mini−plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443−Asn791(シグナルペプチドGlu−プラスミノゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており(非特許文献31)、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノゲン(Micro−plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543−Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu−プラスミノゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し(非特許文献32)、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531−Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu−プラスミノゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノゲン」と「フィブリンプラスミノゲン」、「繊維タンパクプラスミノゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
本発明の「新鮮血栓」及び「急性血栓」は互いに置き換えて使用できる;「陳旧性血栓」と「慢性血栓」は互いに置き換えて使用できる。
循環プロセスにおいて、プラスミノゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD−二量体に加水分解して、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノゲンのPapドメインはプラスミノゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要な決定クラスターであり、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリシン残基と結合できるものである。プラスミノゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などである。
「プラスミノゲン活性フラグメント」とはプラスミノゲンのタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノゲンの技術構成に係り、プラスミノゲン活性フラグメントでプラスミノゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノゲン活性フラグメントはプラスミノゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノゲンは該プラスミノゲン活性フラグメントを含み、且つ依然該プラスミノゲン活性を有するタンパク質を含む。
現在、血液中のプラスミノゲン及びその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノゲン活性化剤の活性に対する測定(t−PAA)、血漿組織プラスミノゲン活性化剤抗原に対する測定(t−PAAg)、血漿組織プラスミノゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン−抗プラスミン複合物に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、その後に分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノゲンの活性と正比例関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノゲン活性に対して測定を行う。
「オルソロジー(orthology)」とは異なる種どうしのオルソログ(ortholog)であり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノゲン活性を有するプラスミノゲン直系同源物または直系同系物である。
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリシンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%〜99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換変異体」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素であり、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
「分離された」プラスミノゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノゲンを含む。
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体をも指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要な時にギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は引用配列の適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズを比較することで最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN−2により得られるものである。
ALIGN−2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、アミノ酸配列Aと所定のアミノ酸配列Bのアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bのあるアミノ酸配列と同一性を有する所定のアミノ酸配列Aの占める%)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
そのうちXは配列比較プログラムALIGN−2によって該プログラムのA及びBの比較において同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。明確に説明した場合を除き、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN−2コンピュータプログラムによって得られるものである。
本文において使用されているように、用語の「治療」、「処理」及び「解消」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒させるものとする。さらに以下を含む:(1)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況である;(2)疾患を抑制し、その形成を阻害する;及び(3)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させる。
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に、疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノゲン、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
2、本発明のプラスミノゲンの製造
プラスミノゲンは自然界から分離及び精製され、さらに治療の用途に用いられるものであり、さらには標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することができる。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid−Phase Peptide Synthesis;3−284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149−2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3−10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723−8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖を構築している機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノゲンを生産する。例えば、プラスミノゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサー素子及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーター系とすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせることができるものである。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノゲンの収集及び精製の条件下において宿主を維持できる。
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、これは外部由来に期待のDNA配列で形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
大腸菌(Escherichia coli)はプラスミノゲンをコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と許容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージλ由来のプロモーター系である。プロモーターは通常発現を制御し、遺伝子配列を操縦する場合、さらにリボソームの結合位置配列を有し、転写及び翻訳を起動させてもよい。
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えば出芽酵母(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3−ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母はアルコール脱水素酵素、イソ細胞色素C、及び麦芽糖とガラクトースの利用のための酵素のプロモーターによって起動される。
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノゲンの発現に用いることができる(例えばプラスミノゲンをコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマである。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合位置、RNAの切断位置、ポリアデノシン酸化位置、及び転写終止子配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
一旦合成(化学または組み換え方式)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノゲンを精製することができる。該プラスミノゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%〜90%の純度で、少なくとも約90%〜95%の純度で、または98%〜99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、プラスミノゲン以外の大分子などである。
3、薬物配合剤
必要とする純度のプラスミノゲンと選択可能な薬用担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド水和物;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルエタノール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルのパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンチルエタノール;m−クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリゼニールピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はブドウ糖、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛−タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗−VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状に必要な一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
本発明のプラスミノゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に包まれることができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたはエマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術は以下に開示されている。Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)。
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌ろ過膜でろ過することで容易に実現できる。
本発明のプラスミノゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過基質を含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98−105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L−グルタミン酸とγメチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983))、分解できないエチレン−ビニルアセテート(ethylene−vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸−ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸−ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン−酢酸エチル及び乳酸−ヒドロキシ酢酸は、持続的に100日間以上分子を放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーを設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S−S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
4.投与及び用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内、鼻内、体表または皮内投与または脊髄または脳内輸送により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。エアロゾル製剤例えば鼻噴霧製剤は活性剤を含有する精製した水性またはその他の溶液及び防腐剤と等張剤を含有する。このような製剤を鼻粘膜と許容し得るpH及び等張状態に調整する。
一部の場合において、以下の方式により本発明のプラスミノゲン薬物組成物を修飾または調製することができ、これにより血液脳関門を貫通する能力を提供する。各種腸内及び胃腸外の投与ルート、内服、静脈内等を含むもので血栓及び/または血栓関連疾患を患っている個体に対してこのようなプラスミノゲン組成物を投与する。
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
いくつかの実施形態において、本発明のプラスミノゲンは血液脳関門の通過を促進する薬剤と配合されている。いくつかの場合において、本発明のプラスミノゲンは直接またはアダプターにより血液脳関門の通過を促進する担体分子、ペプチドまたはタンパク質と融合する。一部の実施形態において、本発明のプラスミノゲンは内在性血液脳関門(BBB)受容体に結合するポリペプチドと融合する。プラスミノゲンと内在性血液脳関門受容体に結合するポリペプチドは、BBBの通過を促進する。内在性血液脳関門(BBB)受容体に結合するポリペプチドは抗体、例えばモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントを含み、それは特異的に内在性BBB受容体に結合する。適切な内在性BBB受容体はインスリン受容体を含むがこれに限られず、抗体はリポソームに内包されたものである。体、鉄タンパク受容体、リポタンパク受容体、及びインスリン様成長因子受容体である。例えば米国特許公開文書No.2009/0156498を参照すること。
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001〜2000mg/kgであり、または約0.001〜500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)である。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1−50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量の日程表は連続数日1−10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において血栓疾患及びその関連疾患の治療効果及び安全性はリアルタイムに評価、定期的に評価すべきである。
5.治療効力及び治療安全性
治療の効力
プラスミノゲンの治療効力に対する評価は主に以下の指標をモニタリングすることによって行われる:
(1)治療一週間後の血栓溶解率。例えば、ガイドチューブから造影剤を注入し、毎日血栓溶解状況について評価し、各血管域に対してスコア付けを行い、完全に解消されているものは0点、一部閉塞しているものは1点とし、完全に閉塞しているものは2点とする。血栓を溶解させる前の総スコアから血栓を溶解させた後の総スコアを引き、血栓を溶解する前の総スコアを割って、得られた割合に応じて異なる血栓溶解ランクとし、一級<50%、二級50%〜90%、三級は血栓が完全に溶解したものとする。
(2)6か月後の血管開通率。例えば、内視鏡、CT血管造影分析、カラードップラー超音波などの方法により血管開通率に対して評価を行う。治療後の血管開通率のパーセンテージが治療前と比較して統計学的に顕著に向上されているかによって、治療の有効性を判断する。
(3)6か月後の血管閉塞及び/または静脈還流率。治療後の血管閉塞及び/または静脈還流率の低下を統計することにより薬剤の血栓溶解率に対する改善を判断する。
(4)その他の評価指標;例えば、血管腔内エコー変化、血管壁の厚み比較、及び2年後の血栓後遺症発生率等である。例えば、血管壁の厚み及び腔内エコーはグレースケール超音波を用いて評価でき、回腸静脈、大腿静脈の血流及び大腿静脈弁機能膜不全に対しては患者の立ち姿勢におけるトップラー超音波を用いて評価することができる。
安全性の評価
プラスミノゲン薬物を用いて血栓を治療した後の安全性に対して評価を行い、前記評価は主に治療後の有害事象の発生率を観察することを含む。一般的にはひどい出血、栓塞、卒中、死亡を重大有害事象し、次に出血及びその他の軽微な症状の合併症を副次的有害事象とする。
安全性評価において、最もよく見られる有害事象は出血であり、例えば脳内出血である(または出血性ショック、網膜下出血、硬膜下出血等を含む)。本発明の前記ひどい出血は一般的に脳内出血または出血の重大さが死亡、手術、治療停止または輸血を必要とする出血事象をいい、「大出血(major hemorrhage)事象」及び「命を脅かす出血事象」を含む。副次的な出血とはガイドチューブ周囲の出血、及び/または血栓溶解薬、抗凝固薬または抗血小板薬物の用量を変えること、または圧迫することによって止血できる出血を言う。前記「大出血」、「大出血事象」とは具体的にはヘモグロビンの含有量が少なくとも2.0g/L低下するまたは少なくとも2単位の輸血を必要とするものであり、または重要部位または臓器における症状性の出血である。「大出血」よりの程度のひどい出血事象、即ち大出血のサブクラスは、「命を脅かす出血事象」と称し、致命性の出血、症状性脳内出血、ヘモグロビンが少なくとも5.0g/L低下するものまたは4単位を超える血液の輸血を必要とするもの、または心筋収縮剤もしくは手術を必要とする出血を言う。
また、大出血事象リスク因子を有すると評価される患者に対して、事情の重大さの程度に応じてその投与する用量に対して微調整を行いさらに投与後の有害事象に対して少なくとも3か月のフォローモニタリングを行い、好ましくは6か月以上行う。前記大出血リスクは以下を含むがこれに限られない:(1)年齢が75歳以上、(2)以前に出血事象の病歴を有する、(3)低減されたクレアチニン除去率を有し、80mL/分未満または50mL/分未満である。
6.製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、血栓の治療に用いられる本発明のプラスミノゲンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはパンフレットを含む。適切な容器はボトル、小瓶、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたは小瓶であり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノゲンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記血栓及び血栓関連疾患の治療に用いられるものであると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液である。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するパンフレットを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノゲン組成物及び併発する疾患の治療に用いるその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
材料と方法:
体内実験:
実験動物
C57マウス(6−8週齢)は南方医科大学実験動物センターから購入されたものである。購入したマウスをバリア環境動物室内で飼育する。db/dbマウスは南京生物医薬研究所から購入したものである。
実験設計及び投与方式
対照グループ及び実験グループのすべての動物に対して手術の方式により頸部動脈を遊離させた後に、10%FeCl3を含有する濾紙で5min接触させ片側頸部動脈血栓モデル構築を行い、モデル構築後1h以内にプラスミノゲンを静脈注射し、対照グループに対して同じ体積のPBSを静脈注射する。3時間以後に対応の頸静脈血栓及び向こう側の静脈付近の筋肉を取り出す。血栓及び向こう側の静脈付近の筋肉を研磨装置で均質化(ホモジネート)を行い、遠心した後に上澄みを取り、上澄みに対してBCA法を利用してそのタンパク質総量を測定し、エライザ法を用いて均質液中のプラスミノゲン含有量を測定し、一定のタンパク質総量中のプラスミノゲン含有量を計算する。プラスミノゲン体内血栓溶解の特異性について研究する。
また、24−25週齢db/dbマウスを対照グループ及び実験グループ動物として、それぞれ尾部静脈から溶媒PBSまたはプラスミノゲンを投与する。31日後に眼球を摘出して血中D―二量体の測定を行い、神経、肝臓、腎臓、心臓のフィブリン免疫組織染色を行い、プラスミノゲンの体内における血栓溶解効果について研究を行う。
血液中D−二量体の分析
マウスの眼球を摘出して採血を行い、血漿を得て、D−二量体キット(武漢優爾生、中国)を用いて実験操作を行い、試験が完了した後にエライザリーダー(elisa reader)(Biotek米国)を用いて450nmで数値を読み取り、データ分析を行う。
免疫組織分析
神経、肝臓、腎臓、心臓を取り、10%中性ホルマリン中にて24時間固定を行う。固定後の心臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後に1回水洗いし、それからPAPマーカーで組織を囲む。0.3%メタノールで希釈した過酸化水素水で15分間インキュベーションし、3回水洗いする。10%の二次抗体と同由来の正常血清を用いて10分間封止させ、余分な血清を吸い取る。一次抗体を室温にて30分間インキュベーションしまたは4℃で終夜インキュベーションし、TBSで3回洗浄する。HRPでマークした二次抗体を室温にて30分間インキュベーションし、TBSで3回洗う。DABキット(vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、ヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間安定化させ、それからTBSで1回洗う。透明になるよう段階的に脱水してから封止を行う。用いられる抗体は以下である:マーカー抗体はFibrin(ogen)(Abcam)である。切片は光学顕微鏡(Olympus,BX43)下にて観察する。
体外血栓溶解実験の設計:
健常者の血漿を取りELISA 96ウェルプレート中に入れ、固定量のトロンビン(Sigma,米国)を添加して血栓を形成し、それから以下の異なる実験を行う。固定量のtPA、uPA(sigma,米国)及び異なる量のプラスミノゲン、固定量のプラスミノゲン及び異なる量のtPA、uPA、ストレプトキナーゼ(sigma,米国)を添加し、対照グループはPBSを添加する。血栓が溶解されるまで、異なる時間のインキュベーションを行い、エライザリーダー(Biotek,米国)を用いてOD405の波長を観察して吸光度の数値及び毎回の記録時間を記録する。さらにデータ分析を行う。
実施例1は20時間の陳旧性血栓を125ng tPA条件下にて37℃で1時間インキュベーションした場合の、異なる用量のプラスミノゲンの血栓溶解効果に関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEppendorf(EP)チューブ内に入れ、37℃で20hインキュベーションした後に上澄みを破棄し、陳旧性血栓を形成する(非特許文献33,34)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液が澄清になるようにする。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、125ng tPA対照グループ、20μg tPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループにし、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに1mL PBSを添加する;125ng tPA対照グループに1mL PBS及び125ng tPAを添加する;20μg tPA対照グループに1mL PBS及び20μg tPAを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃のインキュベータにおいて行われ、1時間インキュベーションした後に上澄みを吸い取り、吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、さらに血栓の重さを測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLであり(非特許文献35)、激しい運動しまたは静脈うっ血の場合において、体内のtPAの含有量は20倍乃至100倍に増加し、即ち100ng/mL以上に達する(非特許文献36)。そのため、本実験中で使用するtPAの用量は125ng/mLで、これにより体内の血栓状況下において自然に発生するtPA含有量をシミュレーションする。
結果は以下を示している。体外において20時間形成された陳旧性血栓は、125ngのtPA条件下において、プラスミノゲンを0.2mg、1mg、2mgを添加した場合の血栓溶解率は単独で125ng tPAを添加する場合より明らかに上昇し、統計の差異は極めて顕著で、これは体内に血栓が現れた場合に自然に発生するtPAレベルの状況下において、0.2mgまたはより多くのプラスミノゲンを添加することにより、1時間で顕著に血栓溶解を促進できることを示している。125ng tPAの条件下において、プラスミノゲン1mgを添加することで体内注射用量20μg tPAの場合と同じ血栓溶解効果を得ることができる(20μg tPAは、Boehringer Ingelheim社が生産する注射用アルテプラーゼプロトコルによる、体内に血栓が生じる状況下における血栓の溶解に必要とされる用量を、ラットの必要とする注射量に変換したものである)。即ち同じような血栓溶解効率に達することができ、体内において1mgプラスミノゲンが存在すれば、必要とするtPAの量は元の1/160に減少する。また、125ng tPA条件下において、プラスミノゲン1mgを添加することでプラスミノゲンの血栓溶解のピークに達し、さらに1倍多いプラスミノゲンを添加したところで血栓溶解率は下がる傾向があり、これはプラスミノゲンの添加に飽和度が存在し、飽和度は1から2mg前後であることを示している(図1)。
実施例2は20時間の陳旧性血栓を125ng tPA条件下にて37℃で2時間インキュベーションした場合の、異なる用量のプラスミノゲンの血栓溶解効果に関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEPチューブ内に入れ、37℃で20hインキュベーションした後に上澄みを破棄し、陳旧性血栓を形成する(非特許文献33,34)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液が澄清になるようにする。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、125ng tPA対照グループ、20μg tPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループにし、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに1mL PBSを添加する;125ng tPA対照グループに1mL PBS及び125ng tPAを添加する;20μg tPA対照グループに1mL PBS及び20μg tPAを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃のインキュベータ中において行われ、2時間インキュベーションした後に上澄みを吸い取り、吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、さらに血栓の重さを測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLであり(非特許文献35)、激しい運動しまたは静脈うっ血の場合において、体内のtPAの含有量は20倍乃至100倍にまで増加し、即ち100ng/mL以上に達する(非特許文献36)。そのため、本実験中で使用するtPAの用量は125ng/mLで、これにより体内の血栓の状況下において自然に発生するtPA含有量をシミュレーションする。
結果は以下を示している。体外において20時間形成された陳旧性血栓は、実施例1と比較して、各グループは反応時間の延長に伴い、血栓溶解率も対応するように増加する。125ngのtPA条件下において、プラスミノゲンを0.2mg、1mg、2mgを添加した場合の血栓溶解率は単独で125ng tPAを添加する場合より明らかに上昇し、統計の差異は極めて顕著である。これは体内に血栓が現れた場合に自然に発生するtPA用量の状況下において、0.2mgまたはより多くのプラスミノゲンを添加することにより、2時間で顕著に血栓溶解を促進できることを示している。1mg、2mgのプラスミノゲングループの血栓溶解効果は体内正常注射量20μg tPA対照グループより優れている(20μg tPAは、Boehringer Ingelheim社が生産する注射用アルテプラーゼプロトコルによる、体内に血栓が生じる状況下における血栓の溶解に必要とされる用量を、ラットの必要とする注射量に変換したものである)。即ち同じような血栓溶解効率に達することができ、体内において1mgプラスミノゲンが存在すれば、必要とするtPAの量は元の1/160未満に減少する(図2)。
実施例3は20時間の陳旧性血栓の10ng tPA条件下における血栓溶解率がプラスミノゲン用量の増加に応じて上昇することに関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEPチューブ内に入れ、37℃で20hインキュベーションした後に上澄みを破棄し、陳旧性血栓を形成する(非特許文献33,34)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液が澄清になるようにする。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、10ng tPA対照グループ、0.2mg tPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループに分け、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに始めに1mL PBSを添加する;10ng tPA対照グループに1mL PBS及び10ng tPAを添加する;0.2mgプラスミノゲン対照グループに1mL PBS及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃のインキュベータにおいて行われ、2時間インキュベーションした後に上澄みを吸い取り、吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、さらに血栓の重さを測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLであり(非特許文献35)、そのため、本実験中で使用するtPAの用量10ng/mLは、体内の正常生理状況下において自然に発生するtPA含有量をシミュレーションしたものである。
結果は以下を示している。体外において20時間形成された陳旧性血栓は、体内の正常な生理状況下において自然に発生するtPA含有量(10ng)の条件下において、プラスミノゲンを添加した各グループの血栓溶解率はいずれも体内生理用量tPAの対照グループの血栓溶解率より高く、統計的な差異も極めて顕著である。プラスミノゲンの添加用量の増加に伴い、対応の血栓溶解率も段階的に向上する傾向を示し、これはプラスミノゲンの用量を調整することで20時間の血栓を溶解させる速度を調整できると示している。また、0.2mgプラスミノゲンの存在下において、体内の生理的レベルのtPA(10ng)を添加したグループの血栓溶解率はtPAを添加していないグループより極めて高く、0.2mgのプラスミノゲンのみを添加したグループの血栓溶解効果はPBSを添加した対照グループの血栓溶解効果と類似し、これは生理的レベルのtPAがプラスミノゲンの血栓溶解作用を発揮させることに重要な作用を有することを示している(図3)。
実施例4は72時間の陳旧性血栓の125ng tPA条件下における血栓溶解率がプラスミノゲン用量の増加に応じて上昇することに関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEppendorf(EP)チューブ内に入れ、37℃で72hインキュベーションした後に上澄みを破棄し、陳旧性血栓を形成する(非特許文献36)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液が澄清になるようにする。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、125ng tPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲン対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループにし、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに1mL PBSを添加する;125ng tPA対照グループに1mL PBS及び125ng tPAを添加する;0.2mgプラスミノゲン対照グループに1mL PBS及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;;0.2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び125ng tPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃のインキュベータにおいて行われ、1時間インキュベーションした後に上澄みを吸い取り、吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、さらに血栓の重さを測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLであり(非特許文献35)、激しい運動しまたは静脈うっ血の場合において、体内のtPAの含有量は20倍乃至100倍にまで増加し、即ち100ng/mL以上に達する(非特許文献36)。そのため、本実験中で使用するtPAの用量は125ng/mLで、これにより体内の血栓状況下において自然に発生するtPA含有量をシミュレーションする。
結果は以下を示している。体外において72時間形成された陳旧性血栓は、125ngのtPA条件下において、プラスミノゲンを添加した場合の血栓溶解率は単独で125ng tPAを添加する場合より明らかに高く、且つ差異は極めて顕著で、これは体内に血栓が現れた場合に自然に発生するtPAレベル(125ng)下において、0.2mgまたはより多くのプラスミノゲンを添加することで、2時間で顕著に72時間陳旧性血栓の溶解を促進できることを示している。添加するプラスミノゲン用量の段階的な増加により、その血栓溶解率も段階的に増加し、これはプラスミノゲンの用量を調節することにより陳旧性血栓を溶解する速度を調整できることを示している。また、プラスミノゲン4mgを添加した場合の血栓溶解率は本実験において体内正常注射用量 20μg tPAの場合より血栓溶解効果が向上されている(20μg tPAは、Boehringer Ingelheim社が生産する注射用アルテプラーゼプロトコルによる、体内に血栓が生じる状況下における血栓の溶解に必要とされる用量を、ラットの必要とする注射量に変換したものである)。これは体内に血栓が発生した場合に自然に生じるtPA用量(125ng)の状況下において、プラスミノゲンのみを添加して陳旧性血栓を溶解させる効果は従来の血栓溶解薬の効果より優れ(図4)、プラスミノゲンがより血栓溶解効果の優れた血栓溶解物質となれることを示している。
また、実施例2において、対照PBSグループと比較して、単独で125ngのtPAを添加した場合、20時間血栓を溶解させる能力を顕著に向上させることができる。しかし、本実施例において、72時間の陳旧性血栓に対しては、体内状況と類似し、単独で125ngのtPAを添加するグループと対照PBSグループの血栓溶解効果はほとんど同じで、これは血栓が古くなるにつれ、生理状況下において自然に発生するtPAの血栓溶解能力が次第に低下することを示し、これは側面から実施例が使用するモデルはある程度体内の状況をシミュレーションできることを示している。
実施例5は72時間の陳旧性血栓の10ng tPA条件下における血栓溶解率がプラスミノゲン用量の増加に応じて上昇することに関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEPチューブ内に入れ、37℃で72hインキュベーションした後に上澄みを破棄し、陳旧性血栓を形成させる(非特許文献36)。PBS溶液が澄清になるまで、PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄する。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、10ng tPA対照グループ、20ng tPA対照グループ、0.2mg tPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ、2mgプラスミノゲングループ及び4mgプラスミノゲングループに分け、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに1mL PBSを添加する;10ng tPA対照グループに1mL PBS及び10ng tPAを添加する;20ng tPA対照グループに1mL PBS及び20μg tPAを添加する;0.2mgプラスミノゲン対照グループに1mL PBS及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。4mgプラスミノゲングループに1mL PBS及び10ng tPA及び4mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃のインキュベータにおいて行われ、2時間反応した後に上澄みを吸い取り、吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、さらに血栓の重さを測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLであり(非特許文献35)、そのため、本実験中で使用するtPAの用量は10ng/mLで、これにより体内の正常生理状況下において自然に発生するtPA含有量をシミュレーションする。
結果は以下を示している。体外において72時間形成された陳旧性血栓は、体内の正常な生理状況下において自然に発生するtPA含有量10ngの条件下において、プラスミノゲンを添加した場合の血栓溶解率は単独で10ng tPAを添加した場合の血栓溶解率より高く、且つ差異が極めて顕著である。体内において血栓発生時に自然に生じるtPA用量(10ng)の状況下において、0.2mgまたはより多くのプラスミノゲンを添加して2時間で顕著に72時間の陳旧性血栓の溶解を促進できる。プラスミノゲンの添加用量の増加に伴い、対応の血栓溶解率も段階的に向上する傾向を示し、これはプラスミノゲンの用量を調整することで陳旧性血栓を溶解する速度を調整できると示している。さらに、プラスミノゲン4mgを添加した場合の血栓溶解率は体内正常tPA注射用量の場合に血栓溶解効果が近いことを示している(Boehringer Ingelheim社が生産する注射用アルテプラーゼプロトコルによる、体内に血栓が生じる状況下における血栓の溶解に必要とされる用量を、ラットの必要とする注射量に変換したものである)(図5)。これは生理的レベルのtPA用量(10ng)の状況において、プラスミノゲンのみを添加することで陳旧性血栓を溶解させる効果は従来の血栓溶解薬の効果と同じことを示し、この意味では、プラスミノゲンが新しい陳旧性血栓溶解薬となる見込みを有する。
実施例6はプラスミノゲンで穏やかに20時間陳旧性血栓を溶解することに関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEPチューブ中に入れ、37℃で20hインキュベーションした後に上澄みを廃棄して、陳旧性血栓を形成する(非特許文献33、34参照)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液を添加して澄清になるようにする。給水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ内に分布させ、血栓の重量を測り、それぞれの血栓の重さが一致するようにする。血栓を二つのグループに分け、各グループ12個サンプルである。第一グループはtPA対照グループで、1mL PBS及び5μg tPAを添加する;二つ目のグループはプラスミノゲングループで、1mL PBS、10ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する。予備実験により以下が証明されている:これらの二つのグループの20時間陳旧性血栓に対する2時間以内の血栓溶解率は似ている(データは示されていない)。すべての反応は37℃インキュベータにおいて行われ、それぞれ0.5h、1h、1.5h、2hにサンプルを取り、それぞれの時間でそれぞれ3つのサンプルを取り、上澄みを吸い取り、吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、さらに血栓の重量を測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLである(非特許文献35)。そのため、本実験で使用するtPAの用量は10ng/mLであり、体内の正常な生理状況下において自然に発生するtPAの含有量をシミュレーションしている。
実験は以下を示している。20時間の陳旧性血栓に対して、二つのグループの血栓溶解率は時間の延長に伴って上昇し、しかし0から0.5時間及び0.5から1時間の二つの区間において、プラスミノゲングループの血栓溶解曲線の傾斜はいずれもtPAグループより低い(図6)。表1は10ng tPAの存在条件下において、1mgプラスミノゲン血栓溶解効率は単独で5ug tPAを添加した場合の血栓溶解率の時間に伴う変化の比較である。表1が示すように、プラスミノゲングループの2時間の総血栓溶解率の75%は約1時間以内に集中し、tPAの対照グループの2時間の総血栓溶解率の75%は約0.5時間に集中している。これらのデータは明らかに以下を示している:tPAに対して、プラスミノゲンの血栓溶解速度はtPAの血栓溶解速度よりも穏やかである(図6、表1)。
表1は10ngtPA存在条件下における、1mgプラスミノゲンの血栓溶解効率と単独で5ugtPAを添加した場合の血栓溶解効率の時間に伴う変化を示したものである。
実施例7は100ng uPA条件下における、プラスミノゲンの20時間陳旧性血栓の溶解促進に関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してEppendorf(EP)チューブ内に入れ、37℃で20hインキュベーションした後に上澄みを破棄し、陳旧性血栓を形成する(非特許文献33,34)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液が澄清になるようにする。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、100ng uPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲン対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループに分け、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに開始時に1mL PBSを添加する;100ng uPA対照グループに1mL PBS及び100ng uPAを添加する;0.2mgプラスミノゲン対照グループに対して1mLPBS及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び100ng uPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び100ng uPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び100ng uPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃インキュベータで行われ、1時間インキュベーションした後、上澄みを吸い取り、吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、さらに血栓の重量を測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報道によれば、プラスミノゲンを基質とする酵素促進反応プロセスにおけるtPAのミカエリス定数は0.18×10−7mol/Lであり(非特許文献37)、しかしuPAのミカエリス定数は2.43×10−7mol/Lである(非特許文献38)。即ち、同じ反応条件において、同じ反応時間内のtPAの親和力はuPAの約10倍であり、そのため今回の実験において、実施例3が使用した10ng tPA/mlにより算出されたuPAの用量は100ng/mlである。
結果が示すように、体外において20時間形成された陳旧性血栓に対して、プラスミノゲン活性化剤10ng tPAを100ng uPAに変更した後、プラスミノゲン0.2mg、1mg、2mgを添加した各グループの血栓溶解率は単独で100ng uPAを添加した場合の血栓溶解率より明らかに上昇し、統計上の差異はいずれも極めて顕著である(**P<0.01;***P<0.001)。これは100ngのuPA用量の場合、0.2mgまたはより多くのプラスミノゲンを添加することにより1時間で顕著に血栓を溶解させることができ、さらにプラスミノゲン添加用量の段階的な増加により、その血栓溶解効率も顕著的に向上する(図7)ことを示している。これは100ng uPA条件下において、プラスミノゲンが陳旧性血栓の溶解を促進できることを示している。
実施例8は1ng uPA条件下における、プラスミノゲンの20時間陳旧性血栓の溶解促進に関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してからEPチューブ内に入れ、37℃で20時間インキュベーションしてから上澄みを廃棄し、陳旧性血栓を形成する(非特許文献33,34)。PBSを添加して繰り返し5〜10回洗浄し、PBS溶液が澄清になるようにする。吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測り、各血栓の重量が同じになるようにする。血栓をPBSブランク対照グループ、1ng uPA対照グループ、0.2mg Plg対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループに分け、各グループのチューブが3つずつである。PBSブランク対照グループに1mL PBSを添加する;1ng uPA対照グループに対して1mL PBS及び1ng uPAを添加する;0.2mg Plg対照グループに対して1mL PBS及び0.2mg Plgを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び1ng uPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び1ng uPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び1ng uPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃インキュベータで行われ、2時間インキュベーションした後、上澄みを吸い取り、吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、さらに血栓の重量を測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報道によれば、正常な生理状況下におけるuPAの含有量は1ng/mLである(非特許文献35)。そのため、本実験中で使用するuPAの用量は1ng/mLで、体内の正常な生理状況下において自然に発生するuPAの含有量をシミュレーションするものである。
結果は以下を示している。体内において20時間形成された陳旧性血栓に対して、uPAの用量を体内の正常含有量1ngに低下させた場合、陳旧性血栓の血栓溶解率の血栓溶解全体が比較的遅いものである。しかし1mg及び2mgのプラスミノゲングループの血栓溶解率は顕著に1ng uPA対照グループより高く、統計的差異を有する。これは1ng uPA条件下において、プラスミノゲンを添加した場合、陳旧性血栓の溶解に対して顕著な促進作用を有することを示している(図8)。
実施例9はマウスに対してtPA及びプラスミノゲンを静脈注射した後の再出血実験である。
11週齢のC57野生型オスマウス55匹を取り、3%ペントバルビタールで全身麻酔を行い、それぞれ尾部を3mmせん断し、尾部を37℃温水中に入れ、尾部の出血状況を観察する(非特許文献39)。止血してからランダムに二つのグループに分け、tPAグループ5匹、プラスミノゲングループ50匹である。tPAグループに対して目縁からtPA 400μg/0.05mL/匹を静脈注射する;プラスミノゲングループに対して目縁から1mg/0.05mL/匹のプラスミノゲンを静脈注射する。実験過程において、終始マウス尾部を37℃温水中に入れ、実験の出血状況を20分間観察し、且つ記録する。
実験結果は以下を示している。400μg tPAを静脈注射することで受傷したマウスの既に凝血したマウス尾部の傷口が再出血する現象が生じ、これはtPA薬物の一つの普遍的な副作用である。しかし1mgプラスミノゲンを静脈注射したマウスにはこのような副作用が見られていない(表2)。これは、プラスミノゲンはtPAに対して安全性がより優れていることを示している。
表2はマウスに対してtPAまたはプラスミノゲンを静脈注射した後の体内出血実験の結果を示したものである。
実施例10はプラスミノゲンの体内血栓に対する特異性吸着実験を示したものである。
野生型オスマウス9匹を選択し、ランダムに3つのグループに分け、溶媒PBS対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ及び1mgプラスミノゲングループであり、各グループ3匹ずつである。3%ペントバルビタールを使用して全身麻酔を行い、マウス頸部静脈を分離させ、さらに10%FeCl3溶液を浸している吸水紙(3mm×5mm)を頸部静脈に5分間接触させ静脈血栓を形成する。血栓形成後にすぐにプラスミノゲンまたは溶媒PBSの投与を開始する。溶媒PBS対照グループに対して尾部静脈から100ulのPBS、1mgプラスミノゲングループ及び0.2mgプラスミノゲングループに対してそれぞれ尾部静脈から1mg、0.2mgプラスミノゲンを投与する。3時間以後に対応の頸静脈血栓及び向こう側の静脈付近の筋肉を取り出す。血栓及び向こう側の静脈付近の筋肉を研磨装置で均質化(ホモジナイズ)を行い、遠心した後に上澄みを取り、上澄みに対してBCA法を利用してそのタンパク質総量を測定し、エライザ法を用いて均質液中のプラスミノゲン含有量を測定し、一定のタンパク質総量中のプラスミノゲン含有量を計算する。
結果は以下を示している。血栓が形成された後に血栓中のプラスミノゲンの含有量はいずれも筋肉中のプラスミノゲンの含有量より明らかに高い。且つプラスミノゲンを静脈注射した後の血栓中のプラスミノゲンの含有量はさらに増加する。これらの結果は以下を示している:体内血栓の存在下において、プラスミノゲンは特異的に血栓上に結合して(図9)さらに血栓溶解作用を発揮することができ、しかし一旦tPAを血管中に注入すれば、非特異的に血管内において血栓溶解反応を触媒する。該実験結果は、プラスミノゲンはtPAに比較して顕著な特異性のある血栓溶解ができるという長所を有することを示している。
実施例11は30分間新鮮血栓にプラスミノゲンを添加した後の血栓溶解効率が顕著に上昇することに関するものである。
2匹のSDラットの全血を採取してからEPチューブ内に入れ、37℃で30分間インキュベーションしてから、上澄みを廃棄し、新鮮血栓を形成する(非特許文献33)。PBSを添加5〜10回繰り返し洗浄し、PBS溶液を添加して澄清になるようにする。吸水紙でなるべく血栓の水分を吸い取り、それから血栓を平均的に各EPチューブ中に分布させ、血栓の重量を測定し、各チューブの血栓の重量を一致させる。血栓をPBSブランク対照グループ、125ngtPA対照グループ、0.2mgプラスミノゲングループ、1mgプラスミノゲングループ及び2mgプラスミノゲングループに分け、各グループ2チューブずつである。PBSブランク対照グループに対して1mL PBS添加する;tPA対照グループに対して1mL PBS及び125ng tPAを添加する;0.2mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び125ng tPA及び0.2mgプラスミノゲンを添加する;1mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び125ng tPA及び1mgプラスミノゲンを添加する;2mgプラスミノゲングループに対して1mL PBS及び125ng tPA及び2mgプラスミノゲンを添加する。すべての反応は37℃のインキュベータ中において行われ、2時間インキュベーションした後、上澄みを吸い取り、吸水紙で血栓の水分をなるべく吸い取り、さらに血栓の重量を測り、血栓溶解率を計算する。
文献の報告によれば、正常な生理状況下におけるtPAの含有量は5−10ng/mLであり(非特許文献35)、激しい運動しまたは静脈うっ血の場合において、体内のtPAの含有量は20倍乃至100倍に増え、即ち100ng/mL以上に達する(非特許文献36)。そのため、本実験中で使用するtPAの用量は125ng/mLで、これにより体内の血栓の状況下において自然に発生するtPA含有量をシミュレーションする。
この実験は以下を示している。体内において30分間形成された新鮮血栓に対して、段階的にプラスミノゲンの用量を増加する条件下において、血栓溶解率は段階的に向上し、さらにプラスミノゲンの各グループの血栓溶解率はいずれも単独でtPAを添加する対照グループの血栓溶解率より高く、統計的差異が極めて顕著である。これらの結果は以下を示している。体内において血栓が出現する際に自然に発生するtPAレベルの状況下において、0.2mgまたはより多いプラスミノゲンを添加することで、1時間で顕著に血栓の溶解を促進することができる(図10)。これは、プラスミノゲンが陳旧性血栓の溶解を促進できるだけでなく、新鮮血栓の溶解も促進できることを示している。
実施例12はプラスミノゲンの糖尿病によってもたらされる微小血栓の溶解促進に関するものである。
24−25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムで二つのグループに分け、溶媒PBS投与グループ及びプラスミノゲン投与グループに分け、各グループ5匹である。実験開始当日を0日目として体重を測ってからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、連続的15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にてプラスミノゲンを尾部静脈から注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。16日目に眼球を摘出して採血を行い、全血を静置した後に血液中のD−二量体の含有量の測定に用いる。
結果は以下を示している。投与から15日後に、プラスミノゲン投与グループの血清中のD−二量体の含有量が顕著に上昇している(図11)。これはプラスミノゲンを投与した後に、糖尿病によってもたらされる微小血栓が顕著に溶解していることを示している。
実施例13はプラスミノゲンの糖尿病末期マウスの心臓組織血栓の溶解促進に関するものである。
24−25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムで二つのグループに分け、溶媒PBS投与グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹である。実験開始当日を0日目として体重を測定してからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与してさらに1日目と記録し、連続的31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にてプラスミノゲンを尾部静脈から注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定した後の心臓組織をエタノールで段階的に脱水させて及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせてから再水和してさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流し、透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で400倍にて観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下における生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解される(非特許文献40〜42)。そのためフィブリノーゲンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。フィブリンは組織損傷後に血栓を形成する主な成分であり、そのため、フィブリンレベルを血栓の一つの指標とすることができる。
結果は以下を示している。触媒PBS投与対照グループ(図12A)と比較して、プラスミノゲン投与グループ(図12B)のマウス心臓組織フィブリンの陽性着色が比較的薄く、これはプラスミノゲン投与グループの心臓組織沈着したフィブリンが減少し、プラスミノゲンは糖尿病によってもたらされる心臓組織の損傷を修復でき、プラスミノゲンは心臓組織血栓の溶解を促進できることを示している。
実施例14はプラスミノゲンの糖尿病末期マウスの腎臓組織血栓の溶解促進に関するものである。
24−25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムで二つのグループに分け、溶媒PBS投与グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹である。実験開始当日を0日目として体重を測ってからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与してさらに1日目と記録し、連続的31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にてプラスミノゲンを尾部静脈から注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して腎臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定した後の腎臓組織をエタノールで段階的に脱水させて及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせてから再水和してさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流し、透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解される(非特許文献40〜42)。そのためフィブリノーゲンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。フィブリンは組織損傷後に血栓を形成する主な成分であり、そのため、フィブリンレベルを血栓の一つの指標とすることができる。
結果は以下を示している。プラスミノゲン投与対照グループ(図13B)と比較して、溶媒PBS投与対照グループ(図13A)のマウス心臓組織フィブリンの陽性着色が比較的薄い。プラスミノゲンを注射することで糖尿病マウスの腎臓フィブリンの沈着を顕著に低減させることができ、プラスミノゲンは糖尿病マウスの腎臓損傷に対して顕著な修復作用を有し、プラスミノゲンが腎臓組織の血栓の溶解を促進できることを示している。
実施例15はプラスミノゲンの糖尿病末期マウスの肝臓組織血栓の溶解促進に関するものである。
24−25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムで二つのグループに分け、溶媒PBS投与グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重を測ってからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与してさらに1日目と記録し、連続的31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にてプラスミノゲンを尾部静脈から注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定した後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させて及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせてから再水和してさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で200倍にて観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解される(非特許文献40〜42)。そのためフィブリノーゲンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。フィブリノーゲンは組織損傷後に血栓を形成する主な成分であり、そのため、フィブリンのレベルを血栓の一つの指標とすることができる。
研究は以下を示している。触媒PBS投与対照グループ(図14A)と比較して、プラスミノゲン投与グループ(図14B)のマウス肝臓組織フィブリンの陽性着色が比較的薄く、これはプラスミノゲンを注射することで糖尿病肝臓フィブリンの沈着を顕著に減軽できることを示し、フィブリンは糖尿病マウスの肝臓損傷に対して顕著な修復作用を有することを反映し、プラスミノゲンが肝臓組織血栓の溶解を促進できることを示している。
実施例16はプラスミノゲンの糖尿病後期マウスの神経組織血栓の溶解促進に関するものである。
24−25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムで二つのグループに分け、溶媒PBS投与グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹である。実験開始当日を0日目として体重を測ってからグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、連続的15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にてプラスミノゲンを尾部静脈から注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。16日目にマウスを殺処分して坐骨神経を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定した後の坐骨神経をエタノールで段階的に脱水させて及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせてから再水和してさらに1回水洗いする。それからPAPマーカーで組織を囲む。3%TBSで希釈した過酸化水素水で15分間インキュベーションし、3回水洗いする。10%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;余分な血清を吸い取る。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで3回洗う。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで3回洗う。DAB薬物キット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で400倍にて観察する。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解される(非特許文献40〜42)。そのためフィブリノーゲンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。フィブリノーゲンは組織損傷後に血栓を形成する主な成分であり、そのため、フィブリンのレベルを血栓の一つの指標とすることができる。
研究により以下を見出した。触媒PBS投与対照グループ(図15A)と比較して、プラスミノゲン投与グループ(図15B)のマウスの坐骨神経のフィブリンのレベルが低下し、これは、プラスミノゲンはフィブリンレベルを低減させる機能を有し、損傷がある程度修復されることを示し、プラスミノゲンは神経組織周囲の血栓溶解を促進できることも示している。
実験結果は以下のようにまとめることができる。
本発明の実施例の実験はプラスミノゲン体外血栓溶解及び体内血栓溶解の二つの部分を含む。
体外血栓溶解において体内血栓溶解条件をシミュレーションし、10ng/mL tPAを用いて正常な生理状況下において自然に発生するtPAの量、125ng/mL tPAで体内血栓状況下において体内に自然に生じるtPA量をシミュレーションすることで、プラスミノゲンの血栓溶解能力について研究する。
本発明の実験研究は以下を示している。10ng/mL tPAまたは125ng/mL tPA条件下において、20時間陳旧性血栓か72時間陳旧性血栓かにかかわらず、プラスミノゲンは非常に優れた血栓溶解効果を有し、且つプラスミノゲンの用量の増大により血栓溶解効率も上昇する。
プラスミノゲンは新鮮血栓に対して非常に強い溶解能力を有し、2時間インキュベーションした時の血栓溶解率は80%以上に達する。
我々はuPA存在条件下におけるプラスミノゲンの血栓溶解効果についても研究した。1ng/mL uPAまたは100ng/mL uPA条件下において、プラスミノゲンは同じように非常に優れた血栓溶解効果を有し、且つプラスミノゲンの用量の増加に伴い血栓溶解効率も増大する。
体内実験において、糖尿病後期マウスに対して連続的に2mgプラスミノゲンを15日間毎日投与し、血清中のD−二量体の含有量は顕著に増加している。これとともに、心臓、肝臓、腎臓、神経組織のフィブリンレベルは顕著に低下し、これはプラスミノゲンが明らかにこれらの組織中の糖尿病組織損傷によっても引き起こされる血栓の溶解を明らかに促進することができ、フィブリンが分解し、実験動物にプラスミノゲンを投与することで同じように顕著な血栓溶解効果が得られることを証明している。
マウス頸部静脈血栓のモデル実験が示すように、プラスミノゲンは非常に特異的に体内血栓と結合できる。
また、我々の研究は以下を示している。tPAと比較した場合、プラスミノゲンの血栓に対する溶解はより穏やかで、且つマウスのtail−bleeding実験はプラスミノゲンに出血の副作用がないことを示している。
以上をまとめると、プラスミノゲンは非常に優れた血栓溶解能力を有し、特に陳旧性血栓に対して優れた血栓溶解能力を有する。さらに特異性が高く、穏やかで、効き目が速く及び出血の副作用がないという特徴を有する。