JP2019220380A - 非水電解液電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下に長時間保持されても特性劣化が少なく、かつ低温での負荷特性に優れた非水電解液電池の製造方法の提供。【解決手段】負極2、正極1、セパレータ3及び非水電解液を有し、負極2は、Al層と、Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成され、セパレータ3として、300〜1500ppmの水分を含有したセパレータ3を用い、非水電解液として、フッ素を含有する無機Li塩を電解質塩とし、且つSi、Ge又はSnに、R1〜R3〔其々独立に、Fで置換されていてもよい、C1〜10のアルキル基、C2〜10のアルケニル基又はC6〜10のアリール基〕が結合した基を分子内に有するリン酸化合物又はホウ酸化合物を含む電解液を用いる、非水電解液電池の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、高温貯蔵特性および低温放電特性に優れた非水電解液電池の製造方法に関するものである。
非水電解液電池は、高容量、高電圧などの特性を生かして、種々の用途に利用されている。そして、その適用分野の広がりと共に、非水電解液電池には、各種の特性向上が求められている。
特に、近年では電気自動車の実用化などに伴い、車載用の非水電解液電池(二次電池)の需要が伸びており、電気自動車のモーターの駆動電源への適用が主である一方で、それ以外への適用も進められている。例えば、現在、車両が事故などに遭遇した際に、それを関係各所へ通報するための緊急通報システムの開発が進行中であるが、その電源として、非水電解液電池(一次電池または二次電池)の適用が検討されている。
そのようなシステムは、実際に作動する機会が限られているものの、緊急時に確実に作動することが必要とされる。そのため、電源となる電池には、長期にわたって貯蔵しても、その特性を良好に維持できる信頼性が要求される。
また、車両の走行中にタイヤがパンクして重大事故につながるケースが散見されるようになったことに鑑み、車両走行中の安全性を確保するために、タイヤ空気圧監視システム〔Tire Pressure Monitoring System(TPMS)〕を装着した車両が普及しつつある。前記システムの電源として、非水電解液電池(一次電池)が利用されているが、高温多湿環境となるタイヤ内にシステムが設置されることから、その電源となる電池に対しても、長期間特性を維持することのできる信頼性が要求される。
更に、加熱滅菌などを必要とする医療用途や、150℃以上の高温環境が想定される宇宙用途など、電池の更なる高温耐性が要求される用途もあり、高温環境下で長時間耐え得るように、非水電解液電池の耐熱性を向上させる技術の検討が進められている。
そのような特性向上を図る技術の一つとして、非水電解液の改良が検討されており、電池の安全性を向上させたり、電池の耐久性や耐電圧性能を向上させたりするために、特定構造のリン酸エステル化合物などを非水電解液に添加することが提案されている(特許文献1および2)。
また、特許文献3では特定の負極活物質を用いた非水電解質電池と、特定構造のリン酸エステル化合物を含む非水電解質を使用した場合には、高温での貯蔵を経た後の低温環境下での負荷特性を高く維持できることが開示されている。
特開2001−319685号公報 特開2015−72864号公報 WO2017/002981
しかしながら、車載用途などにおいては、高温環境下での耐久性と共に低温での負荷特性も要求されるようになってきており、電池構成の更なる改良が必要とされている。本発明者らが前記特定構造のリン酸エステル化合物などについて、その効果を検討したところ、電池構成の相違により効果に大きな差が生じることが判明した。
また、高温環境下での特性や、生産性にはまだ改善の余地があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下に長時間保持された場合に特性劣化が少なく、かつ低温における負荷特性に優れた非水電解液電池を製造する方法を提供するものである。
本発明は、負極、正極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解液電池の製造方法であって、前記負極は、Al層と、前記Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成され、前記セパレータとして、300〜1500ppmの水分を含有したセパレータを用い、前記非水電解液として、フッ素を含有する無機Li塩を電解質塩とし、かつ下記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を0.1〜8質量%の範囲で含む電解液を用いることを特徴とする。
Figure 2019220380
前記一般式(1)中、XはSi、GeまたはSnであり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、水素原子の一部または全部がフッ素で置換されていてもよい。
本発明によれば、高温貯蔵特性および低温負荷特性に優れた非水電解液電池を製造する方法を提供することができる。
本発明に係る非水電解液電池の一例を模式的に表す部分縦断面図である。 図1の斜視図である。
以下、本発明法により製造される非水電解液電池の詳細について説明する。
本発明に係る非水電解液電池は、セパレータとして、前記セパレータとして、300〜1500ppmの水分を含有したセパレータを用い、非水電解液として、フッ素を含有する無機Li塩を電解質塩とし、かつ前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を0.1〜8質量%の範囲で含有する電解液を用いることにより製造される。
なお、本発明法により製造される非水電解液電池は、一次電池(非水電解液一次電池)としての形態を取ることもでき、また、二次電池(非水電解液二次電池)としての形態を取ることも可能である。
前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物は、炭素材料を負極活物質に使用した非水電解液電池において、非水電解液に添加されることで、その安全性を高める作用を有していることが知られている。
一方、Li(リチウム)またはLi合金を有する負極を用いた非水電解液電池において、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を添加した非水電解液を使用した場合には、高温での貯蔵を経た後の電池の特性劣化を抑制することが可能となる。
非水電解液に前記リン酸化合物または前記ホウ酸化合物が添加されている場合、負極のLiまたはLi合金の表面に、薄くかつ良質な被膜を形成すると考えられる。従って、高温貯蔵での負極の劣化が抑制されると共に、形成される被膜が薄いため、その被膜による負荷特性の低下を抑制することが可能となり、高温貯蔵後においても、負荷特性に優れた電池を構成することができるものと推測される。
一方、前記構成の非水電解液電池について更に検討を進めた結果、前記リン酸化合物またはホウ酸化合物の作用が、組み合わせるセパレータや電解質塩に依存しており、含有水分量が300〜1500ppmのセパレータを用い、非水電解液の電解質塩として、フッ素を含有する無機Li塩を用いることにより、前記添加剤の効果がより優れたものとなることが判明した。
セパレータに含有される前記水分は、例えば、非水電解液の電解質塩として汎用されているLiPFなどのフッ素を含有する無機Li塩と反応しやすく、電池内でフッ化水素を発生させる原因となる。
これに対し、非水電解液が、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を含有している場合、発生したフッ化水素により、これらの添加剤が負極表面に保護被膜を形成する反応が促進されるため、一定量の水分を含有するセパレータを用いることにより、却って、前記添加剤の効果が生じやすくなる。
本発明の非水電解液電池において、非水電解液には、フッ素を含有する無機Li塩を電解質塩を、例えば下記の非水系溶媒中に溶解させることで調製した溶液が使用できる。そして、非水電解液には、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を含有させて使用する。
前記リン酸化合物は、リン酸が有する水素原子のうちの少なくとも1つが、前記一般式(1)で表される基で置換された構造を有している。
また、前記ホウ酸化合物は、ホウ酸が有する水素原子のうちの少なくとも1つが、前記一般式(1)で表される基で置換された構造を有している。
前記一般式(1)において、XはSi、GeまたはSnであるが、前記リン酸化合物としては、XがSiであるリン酸シリルエステルが好ましく用いられ、前記ホウ酸化合物としては、XがSiであるホウ酸シリルエステルが好ましく用いられる。
また、前記一般式(1)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜10のアリール基であるが、メチル基またはエチル基がより好ましい。また、R、RおよびRは、その水素原子の一部または全部がフッ素で置換されていてもよい。そして、前記一般式(1)で表される基としては、トリメチルシリル基が特に好ましい。
前記リン酸化合物においては、リン酸が有する水素原子のうちの1つのみが前記一般式(1)で表される基で置換されていてもよく、リン酸が有する水素原子のうちの2つが前記一般式(1)で表される基で置換されていてもよく、リン酸が有する水素原子の3つ全てが前記一般式(1)で表される基で置換されていてもよいが、リン酸が有する水素原子の3つ全てが前記一般式(1)で表される基で置換されていることが、より好ましい。
このような前記リン酸化合物としては、例えば、リン酸モノ(トリメチルシリル)、リン酸ジ(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸ジメチルトリメチルシリル、リン酸メチルビス(トリメチルシリル)、リン酸ジエチルトリメチルシリル、リン酸ジフェニル(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(ビニルジメチルシリル)、リン酸トリス(トリイソプロピルシリル)、リン酸トリス(ジメチルエチルシリル)、リン酸トリス(ジメチルエチルシリル)、リン酸トリス(ブチルジメチルシリル)、リン酸トリス(ビニルジメチルシリル)、リン酸トリス(トリフェニルシリル)などを挙げることができ、リン酸モノ(トリメチルシリル)、リン酸ジ(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸ジメチルトリメチルシリル、リン酸メチルビス(トリメチルシリル)が好ましく、リン酸トリス(トリメチルシリル)が、特に好ましい。
また、前記ホウ酸化合物においては、ホウ酸が有する水素原子のうちの1つのみが前記一般式(1)で表される基で置換されていてもよく、ホウ酸が有する水素原子のうちの2つが前記一般式(1)で表される基で置換されていてもよく、ホウ酸が有する水素原子の3つ全てが前記一般式(1)で表される基で置換されていてもよいが、ホウ酸が有する水素原子の3つ全てが前記一般式(1)で表される基で置換されていることが、より好ましい。
このような前記ホウ酸化合物としては、例えば、ホウ酸モノ(トリメチルシリル)、ホウ酸ジ(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸ジメチルトリメチルシリル、ホウ酸メチルビス(トリメチルシリル)、ホウ酸ジエチルトリメチルシリル、ホウ酸ジフェニル(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(ビニルジメチルシリル)ホウ酸トリス(トリイソプロピルシリル)、ホウ酸トリス(ジメチルエチルシリル)、ホウ酸トリス(ジメチルエチルシリル)、ホウ酸トリス(ブチルジメチルシリル)、ホウ酸トリス(ビニルジメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリフェニルシリル)などを挙げることができ、ホウ酸モノ(トリメチルシリル)、ホウ酸ジ(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸ジメチルトリメチルシリル、ホウ酸メチルビス(トリメチルシリル)が好ましく、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)が、特に好ましい。
非水電解液中の、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物の添加量は、その使用による前記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であり、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが特に好ましく、1質量%以上であることが最も好ましい。また、その含有量が多くなりすぎると、負極表面に形成され得る被膜の厚みが増大し、これにより抵抗が大きくなり負荷特性が低下したり、高温で貯蔵した際に添加剤由来のガスが発生する虞があることから、非水電解液中の、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物の添加量は、8質量%以下であり、7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、3質量%以下であることが最も好ましい。
前記リン酸化合物と前記ホウ酸化合物とを共に含有する場合には、その合計量が前記範囲となるように調整すればよい。
非水電解液に含有させる電解質塩としては、セパレータにより電池内に持ち込まれる水分と反応して効果的にフッ化水素を発生し、前記添加剤が負極表面に保護被膜を形成する反応を促進することのできるフッ素を含有する無機Li塩が用いられる。
フッ素を含有する無機Li塩としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbFなどが好ましく用いられ、LiBFがより好ましく用いられる。これらのLi塩の非水電解液中の濃度としては、0.6〜1.8mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.6mol/lとすることがより好ましい。
また、フッ素を含有する無機Li塩以外のLi塩を、フッ素を含有する無機Li塩と併用することも可能であり、このようなLi塩としては、LiClO、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などが例示される。
フッ素を含有する無機Li塩、またはフッ素を含有する無機Li塩と併用可能なLi塩は、2種以上を用いることもできる。
フッ素を含有する無機Li塩と併用可能なLi塩を用いる場合の非水電解液中の濃度は、例えば、Li塩全体の濃度がフッ素を含有する無機Li塩の好適濃度として先に記載した範囲内となるよう調整すればよい。
非水電解液に係る溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で、または2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
更に、非水電解液には、必要に応じて、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物以外の添加剤を含有させることもできる。このような添加剤としては、1,3−プロペンスルトンなどの不飽和環状スルトン化合物;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどの飽和環状スルトン化合物;無水マレイン酸、無水フタル酸などの酸無水物;スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルなどのジニトリル;LiB(C;などが挙げられる。
更に、非水電解液は、公知のポリマーなどのゲル化剤を用いてゲル状(ゲル状電解質)としてもよい。
また、非水電解液の量は、電極に良好に非水電解液を接触させ電極活物質に添加剤を十分作用させるために少なくとも1Ah当り1.7g以上あることが望ましい。また、生成する被膜が多くなり過ぎたり水分の作用が低下したりする虞があることから1Ah当り6.7g以下であることが望ましい。
非水電解液電池において、正極と負極との間に介在させるセパレータは、その含有水分量を300〜1500ppmの範囲に調整しやすくするために、少なくとも一部に親水性を有する材料を含有させることが好ましい。親水性を有する材料としては、金属酸化物あるいは金属水酸化物などの無機粒子や、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロース、ポリビニルアルコールなどの親水性樹脂が例示される。
親水性を有する材料として無機粒子を用いた場合、その無機粒子を含有させたセパレータの構成としては、(1)無機粒子や有機バインダなどを含有する多孔質膜形成用組成物に溶剤を加えて、液状スラリー化させ、このスラリーをポリエチレンテレフタレート(PET)製の樹脂フィルムなどの基体に塗布し乾燥させた後、塗膜状の多孔質膜形成用組成物を基体から剥離させたもの、(2)正極や負極の電極表面に、前記多孔質膜形成用組成物を含むスラリーを塗布および乾燥して電極表面に多孔質膜形成用組成物を形成させたもの、(3)樹脂不織布に前記多孔質膜形成用組成物を含むスラリーを塗布し乾燥させたもの、(4)ポリオレフィン製の微多孔フィルムの表面に前記多孔質膜形成用組成物を含むスラリー塗布し乾燥させたもの、などが例示される。
前記無機粒子としては、例えば、酸化鉄、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、TiO、BaTiO、ZrOなどの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶;モンモリロナイトなどの粘土;などの微粒子が挙げられる。ここで、前記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などであってもよい。
有機バインダとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA。酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの。)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−ビニルアクリルアミド(PNVA)、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダが好ましく用いられる。
前記多孔質膜形成用組成物に含まれる無機粒子の量は、セパレータの強度-を向上させ高温での短絡などを防ぐため、および含有水分量を一定以上とするために、70体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
無機粒子の形態としては、例えば、球状に近い形状を有していてもよく、板状の形状を有していてもよいが、少なくとも一部が板状粒子であることが好ましく、無機粒子の全てが板状粒子でもよい。多孔質膜に板状粒子を使用することで、短絡防止作用をより向上させることができる。
無機粒子の粒径は、平均粒子径として、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。すなわち、粒径が小さすぎる粒子を用いると、多孔質膜の細孔径が小さくなり過ぎたり、含有水分量が多くなり過ぎたりする虞がある。一方、多孔質膜の細孔径が大きくなり過ぎたり、多孔質膜の強度が低下したりすることを防ぐため、無機粒子の平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
親水性を有する材料として親水性樹脂を用いた場合、その親水性樹脂を含有させたセパレータの構成としては、前述した無機粒子を含有させたセパレータと同様の形態が採用されるほか、親水性樹脂を主体とした微多孔質フィルムや、親水性樹脂の織布または不織布などが例示される。あるいは、親水性樹脂を主体とした微多孔質フィルムや、親水性樹脂の織布または不織布に、前記無機粒子を含む多孔質膜形成用組成物を形成させる構成であってもよい。
前記親水性の樹脂としては、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートなどが例示される。
セパレータの含有水分量は、無機粒子または樹脂粒子を用いる場合には、その粒径や粒子形状、またはその含有割合などを調整することにより適宜調節することが可能であるが、含有水分量が少なすぎる場合には、電池の組み立て前に、飽和水分量に近い高湿度に調整された雰囲気下で保管して吸着水分を多くすることによって調節することもでき、また、含有水分量が多すぎる場合には、電池の組み立て前に、乾燥処理を行って吸着水分を低減することによって調節することも可能である。
なお、本発明におけるセパレータの含有水分量は、セパレータ全体の質量に対する水分の質量の割合として表される。
セパレータの厚みは、例えば、10〜30μmであることが好ましい。
非水電解液電池に係る負極は、Al層と、前記Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成される。
このような負極と一般式(1)であらわされる基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を含む非水電解液とを用いた非水電解液電池は、高温での貯蔵を経た後の低温環境下での負荷特性を高く維持することができる上、含有水分量が適切なセパレータとを組み合わせた場合には、高温貯蔵特性が向上するだけではなく、高温貯蔵後の低温環境下での負荷特性を更に相乗的に向上させることができる。
また、通常のリチウムイオン二次電池では負極集電体としてCu箔を使用しおり、前記リチウムイオン二次電池は充電状態で放置すると自己放電するのが一般的である。特に高温環境下で放置すると自己放電がより進行してしまい、さらに機器に電池が接続された状況では機器のリーク電流によって電池製造業者が定める放電終止電圧(例えば本発明では2.0V)よりも深く放電されてしまうことが起こりうる(過放電状態)。そのような状況では負極側の電位が高くなるが、Cu箔のようにCu金属が直接電解液と接触しているとCuが溶出しやすくなる。溶出したCuはその後充電された際に電極上などに析出し、負極の受け入れ性を低下させサイクル特性を損ねたり、セパレータを貫通して正極と導通し電池が発熱する原因になるという問題があった。
一方、Cu箔の両面または片面にAl箔を積層したCu−Alクラッド材を負極として用いれば、Cu箔を用いた場合よりCuの露出面積が少なくなるため過放電状態におけるCuの溶出を抑制することが可能ではあるが、Cu層が存在するために完全には溶出をなくすることはできなかった。例えば車載や医療といった高信頼性の要請のある用途の電池では数10万個や数100万個に一つの製品欠陥を防ぐため本質的な上記問題の対策が求められており、未だ改善の余地があった。
本願発明の負極は、Al層と、前記Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成されるため、前記Cu箔、あるいはCu−Alクラッド材のように、電解液に直接接触するCuの層が存在しない。したがって、本発明の非水電解液電池は、高温環境下で著しく自己放電させてもCuが溶出することがない。
尚、負極のLi−Al化していないAl金属はLiBFやLiPF6いった電解液中の塩と不導態膜を形成しそのような溶出は問題にならない。
本願発明の負極は、負極前駆体としてAl箔を使用する。本願発明でいうところのAl箔とは、純Al箔およびAl合金箔をも含む。特に、強度を向上させる、あるいは導電性をあげるなどの目的で、Fe、Cu、Mn、Si、Mgなどの金属が添加されたAl合金箔が採用される。ここで、添加金属して加えられるCuは、Cu箔やCuクラッド材のように電解液に直接接触する独立した金属層状で存在するわけではなく、Al合金箔内部に点在し、電解液に接触する部分は非常に小さいため電池が著しく放電した場合においても、Cuが溶出して問題になることはない。
本願発明の負極は、Li箔あるいはLi合金箔と負極前駆体となるAl箔とを貼り合わせて電池内に導入し、非水電解液の共存下でLiとAlとを反応させてAl層と、Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成された負極を得るができる。また、電池の組み立て後に、充電により負極前駆体であるAl箔を正極から供給したLiと合金化させる工程を経て、Al層と、Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成された負極とすることもできる。
更に、正極活物質の種類に応じ、あるいは、Li−Al合金の不可逆容量を調整するために、負極前駆体であるAl箔の表面にあらかじめLi箔を貼り合わせたものを用いて電池を組み立て、組み立て後の電池を充電して、正極よりLiをさらに供給させ、目的とする組成のLi−Al合金層を形成することも可能である。
上述したいずれの場合でも、本発明の負極は一定のAl層が必ず存在し、Al層が負極における集電体の役割を果たす。その場合、Li−Al合金層はAl箔の片面だけに形成されていてもよく、両面に形成されていても良い。
負極前駆体としてのAl箔の厚さは、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。前記Al箔の厚さが、上記範囲内であれば、充電後でLi−Al合金層が膨張した場合でも、十分な強度を保って集電を行うことができ、負極の容量を一定以上とすることができる。
また、負極前駆体としてのAl箔中のCu成分の量は、7質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。この範囲であればCuの溶出をより確実に担保することができる。
また、負極前駆体として使用するAl箔には、電池の組み立て前に、常法に従って負極リード体を設けることができる。
非水電解液電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。正極活物質には、リチウム含有複合酸化物(Liイオンを吸蔵および放出可能なリチウム含有複合酸化物)や、リチウム含有複合酸化物以外の正極活物質を使用することができる。
正極活物質として使用されるリチウム含有複合酸化物としては、Li1+x(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有複合酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などが挙げられる。前記層状構造のリチウム含有複合酸化物としては、LiCoOなどのコバルト酸リチウムやLiNi1−aCoa−bAl(0.1≦a≦0.3、0.01≦b≦0.2)などの他、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiNi3/5Mn1/5Co1/5など)などを例示することができる。
また、リチウム含有複合酸化物以外の正極活物質としては、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物などの金属酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどの金属硫化物を例示することができる。
正極活物質には、前記例示の化合物のうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、高容量で貯蔵安定性に優れていることから、リチウム含有複合酸化物を使用することが好ましく、リチウム含有ニッケル層状酸化物を用いることが好ましい。
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることができる。
正極合剤層に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを含有する正極合剤を、溶剤(NMPなどの有機溶剤や水)に分散させて正極合剤含有組成物(ペースト、スラリーなど)を調製し、この正極合剤含有組成物を集電体の片面または両面などに塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
また、前記正極合剤を用いて成形体を形成し、この成形体の片面の一部または全部を正極集電体と貼り合わせて正極としてもよい。正極合剤成形体と正極集電体との貼り合わせは、プレス処理などにより行うことができる。
正極の集電体としては、AlやAl合金などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、Al箔が好適に用いられる。正極集電体の厚みは、10〜30μmであることが好ましい。
正極合剤層の組成としては、例えば、正極活物質を80.0〜99.8質量%とし、導電助剤を0.1〜10質量%とし、バインダを0.1〜10質量%とすることが好ましい。また、正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、30〜300μmであることが好ましい。
正極の集電体には、常法に従って正極リード体を設けることができる。
非水電解液電池において、正極と負極(負極前駆体を含む)とは、例えば、セパレータを介して重ねて構成した電極体、前記電極体を更に渦巻状に巻回して形成された巻回電極体、または複数の正極と複数の負極とを交互に積層した積層電極体の形態で使用される。
前記巻回電極体の場合、Al層を含むクラッド材を用いた場合は、クラッド材自身が硬く、巻回内周側において折れてしまい、それがきっかけとなって短絡が発生することがある。一方、負極前駆体であるAl箔を組み立てた後にLiと合金化させる方法でAl層とAl層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成された負極とするときには、Al箔はやわらかく巻回しやすいため、また巻回内周側でも折れにくいため安全性が高い。
非水電解液電池の外装体には、スチール製やアルミニウム製、アルミニウム合金製の外装缶や、金属を蒸着したラミネートフィルムで構成される外装体などを用いることができる。
前記の通り、負極前駆体であるAl箔を組み立てた後にLiと合金化させる方法でAl層とAl層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成された負極とする場合には、組み立て後の電池に少なくとも1回の充電工程を有するか、または充電工程に加えて放電工程も有する化成処理を施すことが好ましい。
前記充電工程において、負極前駆体であるAl箔が、非水電解液中のLiイオンと電気化学的に反応してLi―Al合金層が形成されることで、負極前駆体が負極に変化する。
なお、前記化成処理においては、Li−Al合金が形成されるときにAl金属層が大きな体積膨張を生じるため、Li−Al合金層に多数のクラックを生じ、化成処理を行わない場合と比較して、高温貯蔵後の負荷特性をより向上させることができる。充電条件などの化成処理の条件は、必要とされる特性に応じて適宜設定することができる。
本発明法によって製造される非水電解液電池は、高温環境下で貯蔵しても劣化が少なく、また、高温環境下での貯蔵を経ても低温下においても優れた負荷特性を発揮できるものであることから、こうした特性を生かして、例えば車両緊急通報システムの電源用途のように、高温環境下に置かれた後に、低温下でも良好に放電できることが求められる用途に好ましく適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<セパレータの作製>
板状ベーマイト粒子(平均粒径1μm、アスペクト比10)1000gを水1000gに分散させ、更に有機バインダとしてアクリル樹脂のエマルジョンおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を加えて均一に分散させて、多孔質膜形成用組成物を調製した。前記組成物中のアクリル樹脂の含有量は、ベーマイト粒子100質量部に対し3質量部とし、CMCの含有量は、ベーマイト粒子100質量部に対し1質量部とした。
厚みが12μmのポリエチレン製微多孔フィルムの片面に、前記の多孔質膜形成用組成物をブレードコーターにより塗布して乾燥し、厚みが4μmの多孔質膜を形成することにより、ポリエチレン製の微多孔フィルムとベーマイト粒子を含有する多孔質膜との積層体よりなる、総厚が16μmのセパレータを作製した。
<正極の作製>
正極活物質であるLiNi0.8Co0.15Al0.05:97質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:1.5質量部と、バインダであるPVDF:1.5質量部とを、NMPに分散させたスラリーを調製し、これを厚さ12μmのAl箔の両面に塗布し、乾燥し、プレス処理を行うことにより、Al箔集電体の片面におよそ13mg/cmの質量の正極合剤層を形成した。更に、正極合剤層のプレス処理を行うと共に、アルミニウム製のリード体を取り付けることにより、長さ974mm、幅43mmの帯状の正極を作製した。
<負極の作製>
988mm×44.5mmの大きさで、JIS規格で定められている1N30番の厚さ80μmのAl箔を負極前駆体として用いた。前記Al箔には、電池外部との導電接続のためのニッケル製のリード体を取り付けた。
<電池の組み立て>
前記セパレータを、25℃相対湿度60%の雰囲気中で24時間保持して含有水分量を調整した後、前記正極と前記負極とを、前記セパレータを介して積層し、渦巻状に巻回した後、押しつぶして扁平状の電極体を形成した。前記電極体の作製の際には、セパレータのベーマイトを含有する多孔質膜側が正極と対向するようにした。
なお、窒素ガスをフローした150℃の加熱炉に、前記含有水分量を調整したセパレータを入れて保持し、フローした窒素ガスをカールフィッシャー水分計の測定セルに導入し、滴定終点までの積算値から前記セパレータの電池組み立て前の含有水分量を求めた。
また、プロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DEC)との体積比20:60:20の混合溶媒に、LiBFを1.0mol/lの濃度で溶解させ、更にリン酸トリス(トリメチルシリル)(TMSP):3質量%となる量で添加することにより、非水電解液を調製した。
前記電極体を、厚さ0.8mmのアルミニウム合金製の角形電池容器に挿入し、前記非水電解液を注入した後、電池容器を封止することにより、規格容量が1200mAhであり、図1および図2に示す構造で、103450サイズの角形非水電解液二次電池を組み立てた。
ここで図1および図2に示す電池について説明すると、図1はその部分断面図であって、正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体6として、角形(角筒形)の電池容器4に非水電解液と共に収容されている。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の各層や非水電解液などは図示していない。
電池容器4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この電池容器4は正極端子を兼ねている。そして、電池容器4の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、電池容器4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはポリプロピレン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
そして、この蓋板9は電池容器4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池容器4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって電池容器4と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池容器4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
図2は前記図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図1では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。
(実施例2)
無機粒子として、平均粒子径が0.8μmの水酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(実施例3)
無機粒子として、平均粒子径が1.5μmのゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータを作製し、このセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(実施例4)
リン酸トリス(トリメチルシリル)の添加量を0.5質量%に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(実施例5)
リン酸トリス(トリメチルシリル)の添加量を6質量%に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(実施例6)
電解質塩として、LiBFに代えてLiPFを用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(実施例7)
リン酸トリス(トリメチルシリル)をホウ酸トリス(トリメチルシリル)(TMSB)に変更して非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例1)
セパレータとして、厚みが16μmのポリエチレン製微多孔フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例2)
無機粒子として、平均粒子径が1.5μmのゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータを作製した。このセパレータを、25℃相対湿度90%の雰囲気中で24時間保持して含有水分量を調整した以外は、実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例3)
リン酸トリス(トリメチルシリル)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例4)
リン酸トリス(トリメチルシリル)の添加量を10質量%に変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例5)
電解質塩として、LiBFに代えてLiClOを用いた以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は実施例1と同様にして角形非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例6)
<負極の作製>
厚さ35μmのCu箔の両面に、それぞれ、厚さ30μmのAl箔を積層した988mm×44.5mmの大きさで、クラッド材(積層金属箔)を負極前駆体として負極の作製に用いた。
負極前駆体を、上記のものとした以外は実施例1と同様にして角型非水電解液二次電池を組み立てた。
実施例及び比較例の各電池について、240mAの定電流で、電圧が3.8Vになるまで定電流充電を行い、その後、3.8Vの定電圧で充電電流が12mAになるまで定電圧充電を行った。次に、充電後の各電池を定電流1000mAで2.0Vとなるまで放電を行った後、更に同様の充放電をもう1回行って、電池の化成処理を行った。
<高温貯蔵後のガス量測定>
化成処理後の各電池に対し、0.2C(240mA)の定電流で3.8Vまで充電し、その後、3.8Vの定電圧で0.01C(12mA)に電流値が減少するまで充電を続ける定電流−定電圧充電を行い、充電状態とした各電池を85℃の恒温槽に入れ30日間保持した。
保持した後の各電池の一部に対し、恒温槽から取り出してすぐに電池を分解し、電池内
部のガス量を測定した。
<低温放電特性放電時間>
また、前記分解した電池とは別の電池に対し、室温まで放冷させ、更に−20℃まで冷却した後に、−20℃の環境下で1.5C(1800mA)の定電流放電を行い、電池電圧が2.0Vに低下するまでの放電時間を測定した。
<Cu溶出量の測定>
化成処理後の各電池の一部に対し正極と負極間を 0.1Ωの抵抗を介して接続させたまま各電池を100℃の恒温槽で35日間保持した。
保持した後の各電池に対し、恒温槽から取り出して電池を分解し電池内の電解液を採取した。この採取した電解液に体積で10倍量の1N−HNO3を加えた後、純水で電解液の100倍量になるように定容希釈した。この液を用いて原子吸光分光光度計(日立ZA−3000)にてCuの濃度を測定した。
前記の各構成および評価結果を、用いたセパレータの含有水分量と共に表1、2に示す。



















Figure 2019220380
























Figure 2019220380
表1に示す通り、Al層と、前記Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成された負極と、含有水分量が適正なセパレータと、フッ素を含有する無機Li塩からなる電解質塩、および適正な量の前記リン酸化合物やホウ酸化合物を含む非水電解液とを用いて作製し、セパレータの含有水分量が適切な実施例1〜7の非水電解液二次電池は、高温貯蔵後のガス発生が抑制されており、また、高温貯蔵後の低温での放電時間が長く、高温貯蔵特性および高温貯蔵後の低温での負荷特性が良好であり、かつCuの溶出が認められないことから過放電特性も良好であった。
これに対し、含有水分量が少ないセパレータを用いた比較例1の電池、含有水分量が多すぎるセパレータを用いた比較例2の電池、前記リン酸化合物を含有しない非水電解液を用いた比較例3の電池、およびフッ素を含有する無機Li塩を含まない非水電解液を用いた比較例5の電池は、高温貯蔵後の低温での放電時間が短く、高温貯蔵後の低温での負荷特性が劣っていた。また、前記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物の含有量が多すぎる非水電解液を用いた比較例4の電池は、高温貯蔵後のガス発生量が多く、高温貯蔵特性が劣っていた。比較例6の電池はAl層と、前記Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成された負極を用いず、Cu層を含むクラッド材を負極前駆体として使用していたので、過放電状態での高温貯蔵後にCuの溶出が認められた。
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池容器
6 扁平状の巻回電極体

9 封口用蓋体

Claims (3)

  1. 負極、正極、セパレータおよび非水電解液を有する非水電解液電池の製造方法であって、
    前記負極は、Al層と、前記Al層の表面に形成されたLi−Al合金層とで構成され、
    前記セパレータとして、300〜1500ppmの水分を含有したセパレータを用い、
    前記非水電解液として、フッ素を含有する無機Li塩を電解質塩とし、かつ下記一般式(1)で表される基を分子内に有するリン酸化合物またはホウ酸化合物を0.1〜8質量%の範囲で含む電解液を用いることを特徴とする非水電解液電池の製造方法。
    Figure 2019220380
    〔前記一般式(1)中、XはSi、GeまたはSnであり、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、水素原子の一部または全部がフッ素で置換されていてもよい。〕
  2. 前記セパレータが、少なくとも一部に親水性を有する材料を含有させた請求項1に記載の非水電解液電池の製造方法。
  3. 前記セパレータが、ポリオレフィン製の微多孔フィルムと無機粒子を含有する多孔質膜形成用組成物との積層体である請求項1または2に記載の非水電解液電池の製造方法。
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