JP2019219043A - 制動材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この鉄道車両や自動車等のブレーキディスクとしては、通常、ステンレス鋼やクロム鋼等の鋼材が用いられている。
このような材質の一つとして、軽量かつ高強度であることから、炭化珪素系セラミックスが注目されている。ただし、従来の炭化珪素セラミックスは、脆性材料であり、靱性がなく、衝撃のかかるブレーキディスクに適用するのに十分な特性を有していなかった。
また、この特許文献1には、この炭素繊維強化炭化珪素系複合材が強度及び靱性に優れ、ブレーキディスク等の制動材として好適であることが記載されている。
即ち、炭素繊維強化炭化珪素系複合材が高温状態に曝されると、その表面の炭素繊維が酸化し、その結果、ブレーキ性能が低下し、製品寿命が短いという課題があった。
また、前記摺動層において、第1の粒径の第1の炭化珪素粒子は、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の第2の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部によって連結されるため、本発明にかかる制動材は、機械的強度が増し、Si起点のクラックを抑制し、製品寿命が向上する。
尚、炭化珪素焼結部を形成する炭化珪素粒子の第2の粒径が、第1の炭化珪素粒子の第1の粒径よりも大きい場合には、第2の炭化珪素粒子の焼結反応が低下し、焼結し難くなるため、連結した炭化珪素焼結部の形成が困難となる。
前記第1の粒径が100μm未満の場合には成形かさ密度が大きくなることで、後の加熱において収縮が大きくなり、亀裂や剥離が発生するため、好ましくない。一方、前記第1の粒径が180μmを超える場合には、第1の炭化珪素粒子間の隙間が大きくなり最終形態にて耐熱衝撃性が低いSiが多くなり好ましくない。
また、前記第2の粒径が0.4μm未満の場合には、第1と第2の炭化珪素粒子の分散が困難になり、偏在することになり好ましくない。一方、前記第2の粒径が5μmを超える場合には、第2の炭化珪素粒子が第1の炭化珪素粒子間隙間への埋設が困難となり好ましくない。
また、前記摺動層の膜厚が1mm未満である場合には、基体を構成する炭素繊維が表面に露出する虞があり、炭素繊維の酸化抑制作用が低減するためである。
尚、前記摺動層の膜厚が、3mmを超える場合には、カケが発生しやすくなり、好ましくない。
また、第1の粒径の第1の炭化珪素粒子と炭化珪素焼結部の間の残存する間隙にシリコンを含浸させることができる。
その結果、機械的強度が向上し、Si起点のクラックを抑制した、長寿命の制動材を製造することができる。
前記第1の粒径が100μm未満の場合には成形かさ密度が大きくなることで、後の加熱において収縮が大きくなり、亀裂や剥離が発生するため、好ましくない。一方、前記第1の粒径が180μmを超える場合には、第1の炭化珪素粒子間の隙間が大きくなり最終形態にて耐熱衝撃性が低いSiが多くなり好ましくない。
また、前記第2の粒径が0.4μm未満の場合には、第1と第2の炭化珪素粒子の分散が困難になり、偏在することになり好ましくない。一方、前記第2の粒径が5μmを超える場合には、第2の炭化珪素粒子が第1の炭化珪素粒子間隙間への埋設が困難となり好ましくない。
また、前記摺動層の膜厚が1mm未満である場合には、基体を構成する炭素繊維が表面に露出する虞があり、炭素繊維の酸化抑制作用が低減するためである。
本発明に係る制動材は、炭素繊維を含有する炭化珪素複合材からなる基体と、前記基体表面における、少なくともブレーキパッドが摺動する領域に形成された、炭素繊維を含まない摺動層とを備えている。
前記基体は、炭素繊維を含有する炭化珪素複合材によって構成され、炭素繊維の本数、長さ、径、また炭化珪素の粒径、更に、炭化珪素と炭素繊維の割合など、適宜選択することができ、特に限定されるものではない。
具体的に説明すれば、例えば、特許文献1(特開2013−209281号公報)に記載された炭素繊維強化炭化珪素系複合材を用いることができる。また、特許文献2(特開2012−153575号公報)に記載された炭素繊維強化炭化珪素系セラミックスを用いることができる。
この摺動層は、炭素繊維を含まず、第1の粒径の第1の炭化珪素粒子と、前記第1の粒径の第1の炭化珪素粒子を連結する、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の第2の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部と、前記第1の粒径の炭化珪素粒子、前記炭化珪素焼結部の隙間に形成されたシリコン、カーボンを含む。
図1は、本発明の制動材の摺動層の断面写真であり、摺動層の断面を研磨したのちに顕微鏡で撮影したものである。また、図2は、図1に示した断面写真の一部を模式的に表した図であり、第1粒径の炭化珪素粒子1を右下がりの斜線のハッチングで示し、第2粒径の第2の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部2の領域を左下がりの斜線のハッチングで示し、含浸したシリコン3を散在した点で示し、またバインダーが炭化したカーボン4を黒色で示している。
また、第1の炭化珪素粒子と前記第2の炭化珪素粒子は反応焼結し、連結されるため、第1の炭化珪素粒子同士は、炭化珪素焼結部2を介して連結されている。
更に、図1、図2にから明らかなように、第1粒径の炭化珪素粒子1および2粒径の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部2の間隙に、含浸したシリコン3及びバインダーが炭化したカーボン4が形成されている。
これにより、本発明の実施に係る制動材は、摩擦熱によって高温下に曝される環境であっても、表面の損傷が抑制され、耐久性が向上し、寿命がより向上する(長寿命化する)。
前記第1の粒径が100μm未満の場合には成形かさ密度が大きくなることで、後の加熱において収縮が大きくなり、亀裂や剥離が発生するため、好ましくない。一方、前記第1の粒径が180μmを超える場合には、第1の炭化珪素粒子間の隙間が大きくなり最終形態にて耐熱衝撃性が低いSiが多くなり好ましくない。
また、前記第2の粒径が0.4μm未満の場合には、第1と第2の炭化珪素粒子の分散が困難になり、偏在することになり好ましくない。一方、前記第2の粒径が5μmを超える場合には、第2の炭化珪素粒子が第1の炭化珪素粒子間隙間への埋設が困難となり好ましくない。
尚、ここで、粒径とは、メディアン径および篩目開きを意味する。
前記摺動層の膜厚が1mm未満である場合には、基体を構成する炭素繊維が表面に露出する虞があり、炭素繊維の酸化抑制作用が低減するためである。
尚、前記摺動層の膜厚が、3mmを超える場合には、カケが発生しやすくなり、好ましくない。
本発明に係る動材の製造方法は、少なくとも炭素繊維と炭化珪素粉とを含む第1の原料から基体を成形する工程と、少なくとも第1の粒径の第1の炭化珪素粉と、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の第2の炭化珪素粉とを含む第2の原料を、前記成形された基体の表面に塗布して摺動層を形成する工程と、前記基体および前記摺動層を焼成する工程と、前記焼成された前記基体および前記摺動層に、減圧下でシリコンを含浸する工程と、を含むことを特徴としている。特に、この製造方法は、基体の表面に摺動層を形成する点に特徴がある。
例えば、特許文献1(特開2013−209281号公報)に記載された炭素繊維強化炭化珪素系複合材の製造方法を用いることができる。また、特許文献2(特開2012−153575号公報)に記載された炭素繊維強化炭化珪素系セラミックスの製造方法を用いることができる。
このスラリーの調製においては、主原料である炭化珪素粉に、炭素繊維と炭素粉を添加し、更にゲル化能を有する有機物を添加し、得られたスラリーを型に鋳込み、加圧もしくは減圧下でゲル化または硬化させて成形する、いわゆるゲルキャスト成形と加圧もしくは減圧成形を併用して成形を行うことができる。
尚、炭素繊維の含有量は10重量%以上40重量%以下、および前記炭素粉の含有量は1重量%以上15重量%以下であることが好ましい。炭素繊維の含有量が10重量%未満では破壊エネルギーを十分確保できず、40重量%を超えると炭化珪素の相対比が下がり曲げ強度が低下するので、いずれも好ましくない。
ここで、主面の最大長とは、円板であれば直径のように、面上で取りうる最大長さのことである。
前記第1の粒径が100μm未満の場合には成形かさ密度が大きくなることで、後の加熱において収縮が大きくなり、亀裂や剥離が発生するため、好ましくない。一方、前記第1の粒径が180μmを超える場合には、第1の炭化珪素粒子間の隙間が大きくなり最終形態にて耐熱衝撃性が低いSiが多くなり好ましくない。
また、前記第2の粒径が0.4μm未満の場合には、第1と第2の炭化珪素粒子の分散が困難になり、偏在することになり好ましくない。一方、前記第2の粒径が5μmを超える場合には、第2の炭化珪素粒子が第1の炭化珪素粒子間隙間への埋設が困難となり好ましくない。
なお、ここでいう粒径とは、メディアン径および篩目開きを意味する。
また、第1の炭化珪素粒子粉および第2の炭化珪素粒子粉と、バインダーとの割合は100:25〜100:35であることが好ましい。
また、塗布の厚さは、摺動層の膜厚が1mm以上3mm以下となるように塗布される。また、前記摺動層の膜厚が1mm未満である場合には、基体を構成する炭素繊維が表面に露出する虞があり、炭素繊維の酸化抑制作用が低減するためである。
尚、摺動層の膜厚が3mmを超える場合には、カケが発生しやすくなり、好ましくない。
そして更に、還元雰囲気下にて、2000℃で二次焼成する。
その後、シリコン含浸工程において、10Paの減圧下で、1600℃で、前記工程により得られた焼成体に溶融シリコンを含浸させ、制動板を作製する。
また、第1の炭化珪素粒子と前記第2の炭化珪素粒子は反応焼結し、連結されるため、第1の炭化珪素粒子1同士は、炭化珪素焼結部2を介して連結される。
また、炭化珪素粒子1および炭化珪素焼結部2の間隙に、含浸したシリコン3及びバインダーが炭化したカーボン4が形成される。
その結果、第1粒径の炭化珪素結晶粒1の間の結びつきが強く、この摺動層は耐熱衝撃性および耐摩耗性がより向上する。
更に、この摺動層は、シリコンが連続して存在する部分が少なく、炭化珪素粒子によって形成されるので、この制動材は、耐熱衝撃性が高く、カケ等の発生が抑制される
(基体の作成)
粉末原料は、平均長さ8mmの炭素繊維20重量部、平均粒径0.8μmの炭化珪素粉30重量部、平均粒径50nmのカーボンブラック10重量部を混合して作製した。この粉末原料に、エタノール15重量部と、フェノール樹脂10重量部と、イミン系樹脂等の架橋重合性樹脂であるソルビトールポリグリシジルエーテル10重量部と、架橋剤であるポリエチレンイミン5重量部添加し、混合した。
粒径が160μmの炭化珪素粒子粉と、粒径が2μm炭化珪素粒子粉と、バインダーとを、75:25:30の重量比で混合し、スラリーを調製した。
そして、鋳込み法によって、塗布膜の厚さが2mmとなるよう、前記基体成形体に塗布した。
そして更に、還元雰囲気下にて、2000℃で二次焼成する。その後、シリコン含浸工程において、10Paの減圧下で、1600℃で、前記工程により得られた焼成体に溶融シリコンを含浸させ、制動板を作製した。
既に述べたように、図1、図2から明らかなように、第1粒径の炭化珪素粒子1および2粒径の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部2の間隙に、含浸シリコン3及びバインダーが炭化したカーボン4が形成されている。
また、第1の粒径の炭化珪素粒子1は、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部2により、焼結反応により連結されていることが確認された。
検証は、φ150mm×10tのスケールテスタ試験を実施した。また、乗用車用として一般的に使用されている摩擦材を使用した。
試験パターンは初速度100km/h、減速度4.5m/s2でのブレーキを100回繰り返した。試験後、ロータ表面のカケの観察及びロータ材の摩耗量を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、基体を作成した。また、摺動層のスラリーは、実施例1と異なり、粒径が2μm炭化珪素粒子粉を用いることなく、粒径が160μmの炭化珪素粒子粉と、バインダーとを、100:30の重量比で混合し、調製した。そして、実施例1と同様に、スラリーを調製し、鋳込み法によって、塗布膜の厚さが2mmとなるように塗布した。
そして、実施例1と同一の条件で、乾燥、焼成し、溶融シリコンを含浸させ、制動板を作製した。
この図3、図4から明らかなように、炭化珪素粒子1の間は、含浸シリコン3によって占められており、炭化珪素粒子1同士は連結されていないことが判明した。
検証は、実施例1と同一条件で行い、試験後、ロータ表面のカケの観察及びロータ材の摩耗量を測定した。その結果を表1に示す。
比較例1の摺動層は、炭化珪素粒子1の間は、含浸シリコン3によって占められており、炭化珪素粒子1同士は連結されていないため、その強度は実質的に含浸シリコンによって決定されるものと考えられる。
一方、実施例1にあっては、第1の粒径の炭化珪素粒子1は、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部2により、焼結反応により連結されているため、第1の炭化珪素子1の間の結びつきが強い。その結果、実施例1は、耐摩耗性、耐久性が向上したものと考えられる。
摺動層を形成する炭化珪素粒子の第1の粒径を100μm(実施例2)、180μm(実施例3)、90μm(比較例2)、190μm(比較例3)に変えて、カケ、摩耗量を検証した。その他の条件は、実施例1と同一とした。その結果を表2に示す。
尚、炭化珪素粒子の第1の粒径が90μm(比較例2)の場合は、製作時に亀裂や剥離が発生するものがあり、製作が困難であった。この検証に際しては、亀裂や剥離が発生しなかったものを用いた。
このように、摺動層を形成する炭化珪素粒子の第1の粒径は、100μm以上180μm以下が望ましいことが判明した。
摺動層を形成する炭化珪素粒子の第2の粒径を、0.4μm(実施例4)、5μm(実施例5)、0.3μm(比較例4)、6μm(比較例5)に変えて、カケ、摩耗量を検証した。その他の条件は、実施例1と同一とした。 その結果を表3に示す。
実施例1における、炭化珪素粒子の第1の粒径を160μm、炭化珪素粒子の第2の粒径を2μmとし、第1の炭化珪素粒子粉と第2の炭化珪素粒子粉とバインダーの割合を、60:40:30とし、その他は実施例1と同一条件で、基体に厚さ2mmの摺動層を形成した(実施例6)。また製造条件は、実施例1と同一とした。
そして、実施例1と同一の条件で、耐熱衝撃性、耐摩耗性の検証を行った。その結果を表3に示す。
そして、実施例1と同一の条件で、耐熱衝撃性、耐摩耗性の検証を行った。その結果を表3に示す。
したがって、第1の粒径の第1の炭化珪素粒子粉と、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の第2の炭化珪素粒子粉との配合割合は、60:40〜80:20が好ましく、第1の炭化珪素粒子粉および第2の炭化珪素粒子粉と、バインダーとの割合は100:25〜100:35が好ましいことが判明した。
摺動層の膜厚を、実施例1における摺動層の厚さを0.5mm(比較例10)、4μm(比較例7)に変えて、カケ、摩耗量を検証した。その他の条件は、実施例1と同一とした。その結果を表4に示す。
したがって、前記摺動層の膜厚が、1mm以上3mm以下が好ましいことが判明した。
2 第2粒径の第2の炭化珪素粒子
3 含浸シリコン
4 カーボン
Claims (6)
- 炭素繊維を含有する炭化珪素複合材からなる基体と、前記基体表面における、少なくともブレーキパッドが摺動する領域に形成された、炭素繊維を含まない摺動層とを備えた制動材であって、
前記摺動層が、
第1の粒径の第1の炭化珪素粒子と、
前記第1の粒径の第1の炭化珪素粒子を連結する、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の第2の炭化珪素粒子で形成された炭化珪素焼結部と、
前記第1の粒径の炭化珪素粒子と前記炭化珪素焼結部が形成さない隙間に、形成されたシリコン及びカーボンとを含む、
ことを特徴とする制動材。 - 前記第1の粒径が、100μm以上180μm以下であり、かつ前記第2粒径が、0.4μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の制動材。
- 前記摺動層の膜厚が、1mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制動材。
- 炭素繊維を含有する炭化珪素複合材からなる基体と、前記基体表面における、少なくともブレーキパッドが摺動する領域に形成された、炭素繊維を含まない摺動層とを備えた制動材の製造方法であって、
少なくとも炭素繊維と炭化珪素粉とを含む第1の原料から基体を成形する工程と、
少なくとも第1の粒径の第1の炭化珪素粉と、前記第1の粒径よりも小さい第2の粒径の第2の炭化珪素粉とを含む第2の原料によって、前記摺動層を形成するスラリーを調整し、前記スラリーを前記基体の表面の少なくとも一部に塗布し、摺動層を形成する工程と、
前記摺動層が形成された基体を焼成する工程と、
前記焼成された、前記摺動層が形成された基体に、減圧下でシリコンを含浸する工程と、
を含むことを特徴とする制動材の製造方法。 - 前記第1の粒径が、100μm以上180μm以下であり、かつ前記第2の粒径が、0.4μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項4に記載された制動材の製造方法。
- 前記摺動層の膜厚が、1mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の制動材。
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