図1を用いて自車10の概略構成を説明する。以下の説明では、自動運転が可能な自車10を例にとって説明するが、説明した内容は、自車10の運転支援にも適用可能である。自車10は、走行制御装置100と、駆動システム130と、操舵システム140と、制動システム160と、後輪170、171と、前輪172、173と、各種検出部180と、通信部190と、経路案内装置195とを備える。
走行制御装置100は、各種検出部180と、通信部190と、経路案内装置195とを用いて自車10の運転に必要な様々な情報を取得し、自車10の運転を制御する。なお、自車10は、自動運転の車両でもよく、自動運転でない車両でもよい。自車10が自動運転で無い場合には、走行制御装置100は、運転者の運転をアシストする。
駆動システム130は、駆動用ECU132と、駆動装置134と、デファレンシャルギア136と、駆動軸138とを備える。駆動用ECU132は、走行制御装置100から指示を受けて、駆動装置134を制御する。駆動装置134は、例えば電動モータあるいは、内燃機関である。なお、駆動装置134として、電動モータと内燃機関の両方を備えてもよい。駆動装置134の出力は、デファレンシャルギア136及び駆動軸138を介して後輪170、171に伝えられる。駆動装置134として電動モータを用いる場合には、駆動装置134は、自車10の運動エネルギーを電力に回生する発電機としても用いられてもよい。本実施形態では、駆動装置134は、後輪170、171を駆動するが、前輪172、173を駆動しても良く、後輪170、171と前輪172、173の両方を駆動しても良い。
操舵システム140は、操舵用ECU142と、ハンドル144と、エンコーダ146と、操舵装置148と、操舵モータ150と、操舵ギア152と、を備える。自動走行においては、操舵用ECUは、走行制御装置100から指示を受けて、操舵装置148を制御する。操舵装置148には、エンコーダ146が接続されており、エンコーダ146は、運転者がハンドル144を操作したとき、ハンドル144の回転角度を検出する。操舵装置148は、自動走行に場合には、操舵用ECUからの指示より操舵モータ150を駆動し、自動走行でない場合には、ハンドル144の回転角度に応じて操舵モータ150を駆動し、運転者の操作をアシストする。操舵モータ150は、操舵ギア152を介して前輪172、173の舵角(直進方向に対する角度)を制御する。操舵ギア152は、例えば、ラックとピニオンにより構成されている。右左前輪172、173のそれぞれの舵角には、操舵ギア152により、必要に応じたターニングラジアスが付与されてもよい。
制動システム160は、制動用ECU162と、油圧ポンプ164と、ブレーキホース166と、ブレーキキャリパー168と、ブレーキディスク169とを含む。制動用ECU162は、走行制御装置100から指示を受けて、油圧ポンプ164を駆動し、制御する。運転者がブレーキペダル(図示せず)を踏んだとき、及び制動用ECU162から制動指示を受けた時、油圧ポンプ164は、ブレーキホース166を介してブレーキキャリパー168に油圧を送る。ブレーキキャリパー168は、油圧が送られると、ブレーキパッド(図示せず)をブレーキディスク169に押し付けることで自車10を制動する。本実施形態では、ブレーキパッドをブレーキディスク169に押し付けるディスクブレーキを例にとって説明したが、ドラムブレーキでも良い。駆動装置134が電動モータを含む場合には、走行制御装置100は、駆動用ECU130に対して、電動モータからの回生を指示することで、制動を行っても良い。
各種検出部180は、自車10の走行に必要な情報を取得する。各種検出部180については、後述する。通信部190は、V2V(Vehicle−to−Vehicle)のような車車間通信やV2I(Vehicle−to−roadside−Infrastructure)のような路車間通信を利用して、他車や自車10が走行する道路に関する情報を取得する。経路案内装置195は、地図情報を有し、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星からの信号を受信して、自車10の位置を特定し、自車10の目的地までの経路を案内する。経路案内装置195は、GNSSの衛星からの信号の他、例えば、道路に設けられた電波ビーコンからの電波、携帯の基地局からの電波、Wi−Fi基地局から電波を受信し、これらを用いて、自車10の位置を特定しても良い。地図情報は、道路の車線数、車線の幅、車線における通行方向、道路の規制情報、を含んでいてもよい。
図2を用いて、各種検出部180と走行制御装置100について説明する。自車10は、各種検出部180として、カメラ182と、レーダ184と、車速検出部186と、操舵方向検出部188と、を備える。
カメラ182は、自車10の前方を撮影する。本実施形態において、カメラ182として、単眼カメラあるいは2眼カメラを用いることができる。カメラ182は、モノクロのカメラでも、カラーのカメラでもよい。また、カメラ182は、広角レンズやズームレンズを備えるカメラであってもよい。また、複数のカメラ182で広角をカバーするようにしても良い。また、カメラ182の撮影方向を代える回転装置を備えていても良い。
レーダ184は、自車10の前方に電磁波あるいはレーザーを放射し、その反射波を受信して、自車10の前方の状態を検知する。レーダ184として、例えば、ミリ波を用いるミリ波レーダ、赤外線を用いる赤外線レーダ、赤外線よりも波長の短い光を用いるLiDAR(Light Detection and Ranging)レーダが利用可能である。レーダ184として、これのうちの複数のレーダを備える構成であってもよい。
車速検出部186は、自車10の速度を検出し、取得する。自車10の速度は、例えば、デファレンシャルギア136や駆動軸138の回転速度を用いて検出できる。操舵方向検出部188は、前輪173、174の向きを検出し、取得する。前輪173、174の向きは、操舵ギア152のラックの位置を用いて検出できる。
走行制御装置100は、前方車両特定部104と、車線検出部106と、前車挙動検出部108と、離脱判定部116と、追従制御部118と、オートクルーズ制御部120と、走行モード切替部122と、を備える。走行制御装置100は、CPU102と、RAM,ROM,入出力ポート(I/O)などを備えるコンピュータであり、CPU102の動作により、前方車両特定部104と、車線検出部106と、前車挙動検出部108と、離脱判定部116と、追従制御部118と、オートクルーズ制御部120と、走行モード切替部122の機能が実現される。なお、RAM,ROM,入出力ポート(I/O)については、図示を省略している。また、追従制御及びオートクルーズ制御に関係の無い機能、構成については、図示及び説明を省略する。
前方車両特定部104は、上述したカメラ182やレーダ184を用い、図3に示すように、自車10の前方の前車20を検出し、前車20の存在及び位置を特定する。前方車両特定部104は、図3に示すように、自車10からの距離に応じて信頼指数(パーセントで表示)を設け、予め定められた指数以上の領域に存在する前車20を、後述する前車挙動検出部108と、離脱判定部116と、追従制御部118の対象とする。なお、前方車両特定部104は、前車20の位置の相対的な遷移を用いて、前車20の相対速度Rvも取得できる。
車線検出部106は、上述したカメラ182を用いて、図3に示すように、自車10の前方の車線境界線S1、S2、S3を検出する。
前車挙動検出部108は、前車20の挙動、特に、横方向の挙動を検出する。前車挙動検出部108は、方向指示検出部110と、前車横方向速度取得部112と、前車走行情報取得部114とを備える。方向指示検出部110は、カメラ182を用いて取得した前車20の画像から、前車の方向指示器が点滅しているか否かを検出する。前車横方向速度取得部112は、カメラ182やレーダ184を用いて取得した前車20の位置の遷移を用いて前車20の横方向の速度を取得する。前車走行情報取得部114は、V2V(Vehicle−to−Vehicle)のような車車間通信を用いて前車の走行情報、例えば速度や操舵の向き、を取得する。前車挙動検出部108は、方向指示検出部110と、前車横方向速度取得部112と、前車走行情報取得部114の全部を備える必要は無く、少なくとも1つを備えれば良い。
離脱判定部116は、前車挙動検出部108を用いて検出、あるいは取得した前車20の挙動を用いて、自車10走行する車線から前車20が離脱中なのか、あるいは、離脱する可能性が大きいか否かを判定する。
追従制御部118は、追従制御を実行する。ここで、追従制御とは、自車10に対し、予め設定された速度以下、かつ、前車20との車間距離を空けて、前車を追従して走行させる制御である。オートクルーズ制御部120は、自車10のオートクルーズを制御する。オートクルーズとは、自車10に対し、予め設定された速度以下で、かつ、車線から逸脱しないように走行させることを意味する。走行モード切替部122は、追従制御と、オートクルーズ制御と、通常制御と、を切り替える。通常制御とは、本実施形態では、追従制御でも、オートクルーズ制御でもない制御を意味する。オートクルーズ中に、前車20に近づいた場合、あるいは、自車10が走行する車線に前車20が割り込んだ場合には、走行モード切替部122は、オートクルーズ制御から追従制御に切り替える。また、前車20の追従制御中に、自車10から前車20が離れた場合、あるいは、自車10が走行する車線から前車20が離脱した場合には、走行モード切替部122は、追従制御からオートクルーズ制御に切り替える。なお、走行モード切替部122は、オートクルーズスイッチ125がオンの時には、追従制御、または、オートクルーズ制御に切り替え、オートクルーズスイッチ125がオフの時には、通常制御に切り替える。なお、オートクルーズスイッチ125のオン・オフは、例えば、運転者により行われる。
走行制御装置100の各部が行う制御について、フローチャートを用いて説明する。図4に示した処理は、運転者がオートクルーズスイッチ125をオンにしている間、繰り返して実行される。図4のステップS100では、前方車両特定部104は、例えば、信頼指数50%以上の領域に前車20が存在するか否かを判定する。前車20が存在しない場合には、ステップS110に処理を移行し、オートクルーズ制御部120は、自車10をオートクルーズさせる。一方、前車が存在する場合には、ステップS120に移行し、追従制御部118は、自車10が前車20に追従する制御を実行する。なお、前方車両特定部104は、信頼指数40%の領域に前車20が存在する場合には、信頼指数50%以上の領域に前車20が存在すると判定しない。しかし、自車10が走行する車線に隣接する車線に前車20が存在し、前車20が自車10の車線側の方向指示器を点滅させており、かつ、点滅側の車線境界線を踏んでいる場合には、前方車両特定部104は、信頼指数を例えば10%上げて、50%とし、信頼指数50%以上の領域に前車20が存在するか否かを判定してもよい。前車20が自車の走行する車線に割り込んでくる可能性があるからである。
ステップS120では、追従制御部118は、前車20に追従するように自車10の走行を制御する。このとき、追従制御部118は、自車10の速度が予め設定された車速以下であり、かつ、自車10と前車20との車間距離が目標車間距離以上を維持するように、駆動用ECU132に対して駆動システム130を制御させ、制動用ECU162に対して制動システム160を制御させる。このときの目標車間距離を「第1の車間距離」と呼ぶ。ここで、第1の車間距離は、固定値でもよく、自車10の速度に応じて定められていてもよい。また、追従制御部118は、自車10の速度が大きいほど第1の車間距離を長くし、自車10の速度が予め定められた速度以上の場合には、固定値としてもよい。本実施形態では、追従制御部118は、目標車間距離を用いたが、目標車間距離の代わりに、目標車間時間を用いても良い。ここで、車間時間とは、前車20がある地点を通過してから、自車10がその地点を通過するまでの時間である。すなわち、目標車間時間を用いて制御するとは、前車20がある地点を通過してから、自車10がその地点を通過するまでの時間で制御することである。なお、追従制御部118は、前車20との車間距離目標車間距離以上に空けることに加え、を自車10が走行している車線をはみ出さないように、操舵用ECU142に対して操舵システム140を制御し、あるいは、運転者をアシストしてもよい。
ステップS130では、離脱判定部116は、前車20が自車10の前方からの離脱可能性を判定する。前車20が自車10の前方からの離脱する可能性が大きい場合には、処理をステップS140に移行し、前車20が自車10の前方からの離脱する可能性が小さい場合には、処理をステップS190に移行する。上述したように、離脱判定部116は、前車挙動検出部108から取得した前車20の挙動を用いて、前車20が離脱する可能性が大きいか、あるいは小さいかを判定する。なお、離脱判定部116は、前車20が離脱する可能性が大きいと判定しても、前車20のさらに前に前々車があり、自車10と前々車との相対速度Rvが負の場合、すなわち、前々車が近づいている場合には、離脱する可能性が大きいと判定しなくても良い。前車20が離脱しても、前々車が入れ替わりに前車となる可能性があるからである。なお、前車20の方向指示器の点滅を確認しても、前車20が車線を変更せず一定時間が経過した場合には、離脱する可能性が大きいと判定しなくても良い。前車20の運転者が方向指示器を誤って点滅させている場合があるからである。
ステップS140では、前方車両特定部104は、前車20が自車10の前方から離脱したか否かを判定させる。例えば、前車20が、信頼指数50%未満の領域に移動した場合には、前車20が自車10の前方から離脱したと判定してもよい。前方車両特定部104は、このとき、前車20が方向指示器で示す方の車線境界線を踏んでいる場合には、信頼指数を下げて、前車20の離脱を判定してもよい。例えば、前車20が自車10と同じ車線上に存在し、さらに、信頼指数50%の領域に存在するが、方向指示器を点滅させており、点滅側の車線境界線を踏んでいる場合には、信頼指数を例えば10%下げて、40%とし、前車20が自車10の前方から離脱したと判定してもよい。
ステップS150では、追従制御部118は、自車10と前車20との相対速度Rvと相対距離Rdとを算出する。
ステップS160では、追従制御部118は、自車10と前車20との相対速度Rvが、予め定められた閾値V未満か否かを判定する。自車10と前車20との相対速度Rvが、閾値V未満の場合には、処理をステップS190に移行し、閾値V以上の場合には、処理をステップS170に移行する。
ステップS170では、追従制御部118は、自車10と前車20との相対距離Rdが、予め定められた閾値W未満か否かを判定させる。自車10と前車20との相対距離Rdが、閾値W未満の場合には、処理をステップS190に移行し、閾値W以上の場合には、処理をステップS180に移行する。
ステップS180では、追従制御部118は、図5で示すように、目標車間距離を、第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に小さく変更する。第2の車間距離は、例えば、第1の車間距離の半分あるいは、1/3程度の大きさである。追従制御部118は、自車10の速度に応じて、第2の車間距離の大きさや第1の車間距離に対する第2の車間距離の減少率を定めても良い。また、追従制御部118は、目標車間距離を小さくする代わりに、車間時間を短くしても良い。
ステップS190では、追従制御部118は、図5で示すように、前車20との間の目標車間距離を第1の車間距離以上空けるように維持する。
なお、追従制御部118は、自車10の速度と、自車10と前車20との相対速度Rvに応じて第1の車間距離及び第2の車間距離を設定するマップを備え、ステップS180、S190における車間距離を設定あるいは補正するに当たり、マップを用いてもよい。
図6を用いて、比較例と本実施形態の前車20の認識状態とそれに対する自車10の制御を説明する。比較例1、2と本実施形態は、以下の点で相違する。比較例1は、前車20が自車10の前方から離脱する可能性を判定しない。すなわち、前方車両特定部104が前車20を認識して特定している状態1、前方車両特定部104が前車20を認識せず特定していない状態2、の2通りしかない。これに対し、本実施形態と比較例2は、前車20が自車10の前方から離脱する可能性を判定する。すなわち、前方車両特定部104が前車20を認識して特定しているが前車20が自車10の前方から離脱すると離脱判定部116が判定していない状態1、前方車両特定部104が前車20を認識せず特定していない状態2、前方車両特定部104が前車20を認識して特定しているが前車20が自車10の前方から離脱すると離脱判定部116が判定している状態3、の3通りがある。比較例2と本実施形態の違いについては、後述する。
本実施形態、比較例1、2とも、状態1、状態2における自車10の制御は、それぞれ同じである。すなわち、状態1では、本実施形態、比較例1、2とも、追従制御部118は、自車10の速度を設定車速以下とし、かつ、自車10と前車20との間の目標車間距離を短縮せず、前車20に追従する制御を実行する。また、状態2では、オートクルーズ制御部120が、自車10を、予め定められた設定車速で単独走行をさせる。
状態3の場合は、本実施形態と、比較例2は、以下のように異なる。比較例2では、状態3の場合、前車20の追従を解除し、オートクルーズ制御部120は、自車10を、予め定められた設定車速で単独走行をさせる。これに対し、本実施形態では、状態3の場合に、追従制御部118が、自車10と前車20との間の目標車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に変更して、前車20に追従する制御を実行する。
以下、図面を用いて、自車10の挙動について説明する。まず、前車20が高速道路の追越車線から走行車線に車線変更する場合について説明する。図7に示すように、前車20は、方向指示器を点滅させながら、走行車線に車線変更する。比較例1の場合、前方車両特定部104は、前車20を認識しており、追従制御部118は、前車20との車間距離を第1の車間距離以上空けるように追従制御を実行する。比較例2の場合、前車20が方向指示器を点滅させた場合、追従制御部118は、前車20の追従を解除する。その結果、オートクルーズ制御部120が、自車10を設定車速で単独のオートクルーズ走行をさせる。そのため、前車20に自車10が急接近する。これらに対し、本実施形態では、前車20が離脱すると離脱判定部116が判定した場合には、追従制御部118は、前車20との間の目標車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に変更する。その結果、自車10は、比較例2程では無いが、比較例1よりも前車20に近づく。自車10が、前車20に対して、第2の車間距離よりも近づいた場合には、走行制御装置100は、制動用ECU162に対して、自車10の制動を指示する。なお、前車20が走行車線への車線変更を完了し、前方車両特定部104が前車20を検出できなくなった場合には、オートクルーズ制御部120は、予め設定された車速で自車10をオートクルーズさせる。自車10及び前車20が走行車線を走行し、前車20が追越車線に移動する場合も同様である。
次に、前車20が高速道路から退出路に車線変更する場合について説明する。図8に示すように、前車20は、方向指示器を点滅させながら、減速し、退出路に車線変更する。比較例1の場合、追従制御部118、前車20の減速に伴い、前車20との間の車間距離を第1の車間距離以上に空けるように追従制御を実行する。そのため、制動用ECU162に対して、制動を指示し、自車10を減速させる。比較例2の場合、前車20が方向指示器を点滅させた場合、前車20の追従を解除するため、オートクルーズ制御部120が、自車10を設定車速で単独のオートクルーズ走行をさせる。そのため、前車20に自車10が急接近する。これらに対し、本実施形態では、前車20が離脱すると離脱判定部116が判定した場合には、追従制御部118は、前車20との間の目標車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に変更する。その結果、自車10は、比較例2程では無いが、比較例1よりも前車20に近づく。なお、前車20が高速道路から退出路に車線変更するときに減速しない場合は、図7で説明した場合と同じである。自車10が、前車20に対して、第2の車間距離よりも近づいた場合には、走行制御装置100は、制動用ECU162に対して、自車10の制動を指示する。なお、前車20が退出路への車線変更を完了し、前方車両特定部104が前車20を検出できなくなった場合には、オートクルーズ制御部120は、予め設定された車速で自車10をオートクルーズさせる。
次に、高速道路ではなく、一般道路において、前車20が交差点で左折する場合について説明する。一般道路とは、高速道路以外の道路を指す。高速道路とは、高速自動車国道、あるいは、自動車専用道路を意味する。図9に示すように、前車20は、方向指示器を点滅させながら、減速し、左折する場合について説明する。比較例1の場合、の追従制御部118は、前車20の減速に伴い、前車20との車間距離を第1の車間距離以上空けるように維持するため、制動用ECU162に対して、制動を指示し、自車10を減速させる。比較例2は、前車20が方向指示器を点滅させた場合、前車20の追従を解除するため、オートクルーズ制御部120が、自車10を設定車速で単独のオートクルーズ走行をさせる。そのため、前車20に自車10が急接近する。これらに対し、本実施形態では、追従制御部118は、前車20が離脱する可能性が大きいと判定した場合には、目標車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に変更する。その結果、自車10は、比較例2程では無いが、比較例1よりも前車20に近づく。なお、前車20は、左折先に横断者がいる場合には、停止する。このような場合、自車10が、前車20に対して、第2の車間距離よりも近づいた場合には、自車10の走行制御装置100は、制動用ECU162に対して、自車10を停止させるように、制動を指示する。なお、前車20が左折を完了し、自車10の前方から存在しなくなった場合には、オートクルーズ制御部120は、予め設定された車速で自車10をオートクルーズさせる。
以下、前車20が減速して離脱した場合の自車10の加速度と車速について、目標車間距離を第1の車間距離以上あけるように維持する比較例1と、目標車間距離を第2の車間距離に変更する本実施形態とを比較する。図10に示すグラフから明らかなように、本実施形態の方が比較例1よりも、加速度の変動が小さく、速度の変動も小さい。すなわち、比較例1では、前車20が減速した場合、その減速に合わせて自車10も減速し、前車20が自車10の前方から離脱した場合には、設定速度まで加速する。これに対し、本実施形態では、前車20が減速した場合、目標車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に変更している。そのため、車間距離が第1の車間距離から第2の車間距離に至るまでの間の自車10の減速は、前車20の減速よりも緩やかでよい。また、車間距離が第1の車間距離から第2の車間距離に至るまでの間の自車10の速度は、本実施形態の方が比較例1よりも速い。その後、前車20が自車10の前方から離脱した場合には、設定速度まで加速する。このとき、本実施形態は比較例1よりも加速前の自車10の速度が速いため、設定速度まで加速が緩やかで良い。このように、本実施形態は、比較例1よりも、自車10の加速度や速度の変動を小さく抑えることができる。すなわち、本実施形態は、比較例1よりも、無駄な減速・加速をしなくて済む。その結果、本実施形態は、比較例よりも、ドライバフィーリングを向上させることができると共に、燃費も向上できる。
次に、前車20が減速せずに離脱した場合の自車10の加速度と車速について、目標車間距離を第1の車間距離以上あけるように維持する比較例1と、目標車間距離を第2の車間距離に変更する本実施形態とを比較する。前車20の速度は、自車10のオートクルーズの速度よりも遅いとする。この場合、図11に示すように、追従制御部118は、前車20が離脱する可能性が高いと判定されたときから、目標車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に変更するように自車10を加速させ、速度を上げる。そのため、前車20の離脱完了後に急加速して設定速度に上げる必要がない。そのため、本実施形態によれば、比較例1よりも、加速度や速度の変化を緩やかにできるので、ドライバフィーリングを向上させることができる。また、燃費も向上できる。
以上、本実施形態によれば、自車10が走行する車線から前車20が離脱する可能性が高まったと離脱判定部116が判定した場合には、追従制御部118は、前車20の追従を解除するのでは無く、第1の車間距離よりも短い第2の車間距離を開けて前車20を追従するように変更するので、無駄な減速・加速をしなくて済み、ドライバフィーリングを向上させることができると共に、燃費も向上できる。また、前車20の追従を解除しないので、自車10が前車20に急接近することがない。
追従制御部118は、目標車間距離を短縮することで、前車20との車間距離を第1の車間距離から第2の車間距離に短縮してもよく、目標車間時間を短くしても良い。また、追従制御部118は、自車10の速度に応じて第1の車間距離と第2の車間距離とを定めてもよい。さらに、追従制御部118は、自車10の速度に応じて第1の車間距離に対する第2の車間距離の割合を定めてもよい。
前車挙動検出部108は、前車20の方向指示器の点滅を用いて、前車20の挙動を検出する方向指示検出部110を備え、離脱判定部116は、その挙動を用いて前車20が離脱する可能性を判定してもよい。前車20が方向指示器を点灯させたときには、前車20が車線変更あるいは、右左折する可能性が高いため、前車20が離脱する可能性が高まるからである。
前車挙動検出部108は、前車20の横方向の速度を用いて、前車20の挙動を検出する前車横方向検出部112を備え、離脱判定部116は、その挙動を用いて前車20が離脱する可能性を判定してもよい。前車20が方向指示器を点灯させずに、車線変更あるいは、右左折する場合においても、前車20が離脱する可能性を判定できる。
前車挙動検出部108は、車車間通信により取得した前車20の動きや挙動を取得する前車走行情報取得部を備え、離脱判定部116は、その動きや挙動を用いて前車20が離脱する可能性を判定してもよい。カメラ等で前車20の動きが検知し難い場合でも前車20が離脱する可能性を判定できる。また、前車20の目的地やルートを車車間通信により取得できる場合には、前車20の動きを容易に予測できる。
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、車両の走行制御装置が提供される。この走行制御装置は、自車(100)の前方を走行する先行車両である前車(200)を特定する前方車両特定部(40)と、前記前車の挙動を検出する前車挙動検出部と、前記前方車両特定部により特定された前記前車を、予め定められた車間距離を空けて追従する追従制御を実行する追従制御部(21)と、検出した前記前車の挙動に従って、前記自車が走行する車線から前記前車が離脱する可能性が高い離脱状況にあるか否かを判定する離脱判定部(20)と、を備える。前記前車が離脱状況にあると前記離脱判定部が判定した場合には、前記追従制御部は、前記追従制御における車間距離を、前記前車が離脱状況にない場合に設定されている第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に変更して前記追従制御を実施する。この形態によれば、前車が離脱状況にあると離脱判定部が判定した場合には、追従制御部は、追従制御における車間距離を、第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に変更するので、追従制御をしない場合と比較すると、自車が前車に急接近することがない。また、前車が減速して車線から離脱するときに、前車の減速よりも緩やかな減速でも、前車との車間距離を第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に維持できる。すなわち、前車に合わせて自車を減速する必要が無く、自車を前車よりも緩やかに減速できる。また、前車に合わせて減速する場合に比べて前車が離脱したときの自車の速度が速いため、自車を元の速度に戻すための加速も小さくて良い。すなわち、自車の加速度や速度の変動を小さく抑えることができる。すなわち、無駄な減速・加速をしないようにできる。その結果、ドライバフィーリングを向上すると共に、燃費も向上できる。
(2)上記形態において、さらに、前記自車の速度を取得する車速検出部(186)を備え、前記追従制御部は、前記自車の速度に応じて前記第1の車間距離と前記第2の車間距離とを修正してもよい。自車の速度が異なれば、制動距離が異なるので、自車の速度に応じて第1の車間距離と第2の車間距離とを定めることが好ましい。
(3)上記形態において、前記追従制御部は、前記自車の速度に応じて前記第1の車間距離に対する前記第2の車間距離の割合を定めてもよい。自車の速度が異なれば、制動距離が異なるので、自車の速度に応じて第1の車間距離に対する第2の車間距離の割合を定めることが好ましい。
(4)上記形態において、前記前車挙動検出部は、前記前車の方向指示器の点滅を検知する方向指示検出部(50)を備え、前記離脱判定部は、前記方向指示器の点滅を用いて、前記前車が離脱する可能性を判定してもよい。前車が方向指示器を点灯させたときには、前車が車線変更あるいは、右左折する可能性が高い。この形態によれば、方向指示器の点滅を用いることで、前車が離脱する可能性が高いか否かを容易に判定できる。
(5)上記形態において、前記前車挙動検出部は、前記前車の横方向の速度を取得する前車横方向速度取得部(112)を備え、前記離脱判定部は、前記前車の横方向の速度を用いて、前記前車が離脱する可能性を判定してもよい。この形態によれば、前車が方向指示器を点灯させずに、車線変更あるいは、右左折する場合においても、前車が離脱する可能性が高いか否かを容易に判定できる。
(6)上記形態において、前記前車挙動検出部は、前記前車との車車間通信により前記前車の動きを取得する前車走行情報取得部(114)を備え、前記離脱判定部は、前記車車間通信により取得した前記前車の動きを用いて、前記前車が離脱する可能性を判定してもよい。この形態によれば、カメラ等で前車の動きが検知し難い場合でも前車が離脱する可能性を判定できる。
(7)上記形態において、オートクルーズ制御部(120)を備え、前記前方車両特定部が前記前車を検知できなくなった場合には、前記オートクルーズ制御部は、予め設定された車速で単独走行を実行してもよい。この形態によれば、前車を追従しないときの走行を制御できる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、車両の走行制御装置の他、車両の走行制御方法等で実現することができる。