JP2019216516A - 車両用インバータの冷却構造 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなインバータは、複数の半導体素子(例えば、IGBT、サイリスタ等)を有するパワーモジュールと、制御用電源部やゲート駆動回路等を有する制御部等から構成され、これらを電気的に接続してセラミック等の絶縁基板上に組み込んだ状態で用いられている。
一般に、インバータの冷却は、絶縁基板の底面を金属製放熱板及び放熱グリスを介してヒートシンクに接触させる片面間接冷却方式、絶縁基板の底面を放熱板を介して直接ヒートシンクに接合する片面直接冷却方式、パワーモジュールの両面に放熱板を設けて両面を直接ヒートシンクに接合する両面直接冷却方式に代表される3つの方式に分類されている。
また、半導体素子等の各部品は、絶縁保護を目的としてシリコンゲル等により全体が液密状に被覆されているため、インバータを直接的に冷却媒体内に浸漬する技術も提案されている(特許文献2参照)。
ヒートパイプは、蒸発部と凝縮部とを備えた収容器(チャンバー)内に冷却媒体としての作動流体が封入され、作動流体による蒸発・凝縮現象を利用している。
蒸発部において、作動流体が入熱した際、潜熱を吸収し、液相である作動流体(液相流体)が蒸発して凝縮部に移動する。凝縮部において、気相流体が外部との熱交換によって潜熱を放出し、気相流体が凝縮して相変化された液相流体は蒸発部に還流する。
ヒートパイプ内では、潜熱吸収、蒸発移動、潜熱放出、凝縮還流からなる熱サイクルが繰り返されている。
しかし、ヒートパイプを車両用冷却構造に適用した場合、期待される十分な冷却能力を獲得できない虞がある。
前述したように、ヒートパイプの冷却能力は、作動流体の蒸発・凝縮現象に依存しているため、蒸発部に貯留された作動流体が多い場合、体積に比例して熱抵抗が大きくなり、これに伴い、熱輸送機能(伝熱特性)が低下し、ヒートパイプの冷却効率が低下する。
従って、蒸気圧との関係から十分な冷却能力を発揮可能な気液界面の適正高さが存在している。
例えば、ステアリング操舵により遠心力(横G)が生じる場合、気液界面の揺動によってインバータが作動流体から露出する現象、所謂ドライアウトが生じ、熱輸送機能を維持することが機構的に困難になる虞がある。
即ち、ヒートパイプの作動流体内にインバータを浸漬した車両用インバータの冷却構造では、インバータのドライアウトを回避しつつ熱輸送機能を確保することは容易ではない。
前記制御部は、前記収容器内において、車両静止状態の気液界面内であって、前記パワーモジュール上方を部分的に覆うことにより前記パワーモジュールから上方の気液界面に到達する経路が前記制御部に規制されて蛇行する蛇行通路を形成する位置に取り付けられ、前記制御部と前記パワーモジュールが上下方向にハードワイヤで電気的に接続されたため、作動流体の揺動に伴うパワーモジュールのドライアウトを回避することができる。
この構成によれば、簡単な構成で外部との熱交換可能なヒートパイプの凝縮部を形成することができる。
この構成によれば、接続手段をハードワイヤで構成することができると共に短縮化することができる。
この構成によれば、熱サイクルによって発生した気相流体を早期に凝縮部に誘導することができ、熱輸送機能を向上することができる。
この構成によれば、クロスメンバ内のデッドスペースを利用してヒートパイプを車体に設置することができる。
この構成によれば、インバータの冷却能力を一層高くすることができる。
図1に示すように、本実施例の車両Vは、インバータ10の冷却機構Fが車体前部に搭載されたハイブリッド自動車である。
インバータ10の冷却機構Fの説明の前に、車両Vの前提構造について説明する。
この車両Vは、車体前部に内燃機関であるエンジン3が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2を駆動するFR(Front engine Rear drive)車である。
また、主駆動輪の後輪2は、エンジン3の代わりに主駆動モータ4によっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪1は、副駆動モータであるインホイールモータ(以下、IWMという)5によって所定の運転領域に駆動されている。
エンジン3と主駆動モータ4は、クラッチ(図示略)を介して締結解除可能に接続されている。
動力伝達機構6は、プロペラシャフト6aと、クラッチ6bと、後輪2に車軸(図示略)を介して接続された有段変速機としてのトランスミッション6c等を備えている。
主駆動モータ4は、例えば、48Vで駆動される25kWの永久磁石同期モータ(PMモータ)によって構成され、48Vのバッテリ8(例えば、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ等)の電流を変換するインバータ7から交流電流が供給されている。
この主駆動モータ4は、エンジン3と直列に接続され、主駆動モータ4が発生した駆動力は、エンジン3の駆動力と同様に、動力伝達機構6を介して後輪2に伝達される。
IWM5は、例えば、120Vで駆動される17kWの三相誘導モータ(SRモータ)によって構成され、キャパシタCp(図2参照)の電流を変換するインバータ10から交流電流が供給されている。
図2に示すように、インバータ10は、パワーモジュールPと、このパワーモジュールPの動作を制御する制御部Cと、パワーモジュールPと制御部Cとを電気的に接続するハードワイヤW(接続手段)を主な構成要素としている。
パワーモジュールPと制御部Cは、各々のセラミック製絶縁基板上に組み込まれ、各々の絶縁基板上においてシリコンゲルにより全体が液密状に被覆された液密封止構造である。
これらパワーモジュールPと制御部Cは、高圧電源ラインLhとアースラインLeとによって構成されたハードワイヤWによって接続されている。
各相用スイッチングユニットSu,Sv,Swは、互いに並列に接続されており、何れのユニットSu,Sv,Swも、直列接続された2個のスイッチング素子の一端は高圧電源ラインLhに接続され、他端はアースラインLeに接続されている。また、2個のスイッチング素子の中間点はIWM5の各相に接続されている。
これらの各回路構成部品のうち、第1コンデンサC1、昇圧用のリアクトルL、及び昇圧用スイッチングユニットSaが、昇圧回路を構成している。
昇圧用スイッチングユニットSaは、直列接続された2個のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列接続されたダイオードとを有し、直列接続された2個のスイッチング素子の一端は高圧電源ラインLhに接続され、他端はアースラインLeに接続されている。2個のスイッチング素子の中間点はリアクトルLの他方端に接続されている。
第1コンデンサC1は、キャパシタCpに並列に接続されている。
第2コンデンサC2は、昇圧用スイッチングユニットSa及び各相用スイッチングユニットSu,Sv,Swに並列接続されている。
リアクトルLは、一端がキャパシタCpの正極側に接続され、他端が昇圧用スイッチングユニットSaの直列接続された2個のスイッチング素子の中間点に接続されている。
第1コンデンサC1は、キャパシタCpから供給された直流電圧を平滑化してリアクトルLに供給する。昇圧用スイッチングユニットSaは、指令部Caからの制御信号に応じてスイッチング動作を行い、リアクトルLに流れる電流を制御し、スイッチング素子のオン時間に応じて昇圧した直流電圧を第2コンデンサC2に供給する。
第2コンデンサC2は、昇圧用スイッチングユニットSaから出力された昇圧後の直流電圧を平滑化して各相用スイッチングユニットSu,Sv,Swに供給する。
各相用スイッチングユニットSu,Sv,Swは、指令部Caからの制御信号に応じてスイッチング動作を行い、直流電圧を交流電圧に変換してIWM5の各相に供給する相電流を生成している。
各相用スイッチングユニットSu,Sv,Swは、指令部Caからの制御信号に応じてスイッチング動作を行い、IWM5が発電した交流電圧を直流電圧に変換して第2コンデンサC2に供給する。第2コンデンサC2は、供給された直流電圧を平滑化して昇圧用スイッチングユニットSaに供給する。昇圧用スイッチングユニットSaは、指令部Caからの制御信号に応じてスイッチング動作を行い、リアクトルLに流れる電流を制御し、供給された直流電圧を降圧する。そして、降圧した直流電圧を、第1コンデンサC1を介してキャパシタCpを充電している。
図1に示すように、制御装置9は、エンジン3、主駆動モータ4及びIWM5を制御している。キャパシタの近傍には、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータと低圧DC/DCコンバータが夫々配設されている(何れも図示略)。
制御装置9は、切替スイッチ(図示略)によってEVモードが選択されたとき、発進時及び低速走行時、主駆動モータ4のみで車両Vを駆動し、高車速領域である加速走行時、IWM5を作動させて主駆動モータ4とIWM5が協働して車両Vを駆動している。
キャパシタの電荷が不足する場合、バッテリ8の電圧を昇圧してキャパシタに充電し、キャパシタの端子間電圧が過剰に上昇した場合、キャパシタの電荷を降圧してバッテリ8に充電している。
尚、図において、矢印F方向を前方向とし、矢印L方向を左方向とし、矢印U方向を上方向としている。
フレーム部材26a〜26fは、サイド側アッパフレーム26aと、センタ側フレーム26bと、サイド側フレーム26cと、サイド側ロアフレーム26dと、センタ側ロアフレーム26eと、補強フレーム26fとを夫々左右1対備えている。
これらフレーム部材26a〜26fは、何れも押出成形された中空状に構成されており、補強フレーム26fは、前方程上方に延在する一方で、該補強フレーム26f以外のフレーム部材26a〜26eは直線状に延在しており、左右各側において車室部と骨格メンバ21とを連結している。
下側クロスメンバ23は、押出し成型されたアルミ合金製の押出部材であって、上下に間隔を隔てて対向する上壁部と下壁部とを有する略矩形の閉断面を左右に延設した略筒状体に形成されている。この下側クロスメンバ23は、骨格メンバ21の車幅方向内面側部分に接合されている。
左右1対の傾斜フレーム25は、押出し成型されたアルミ合金製の押出部材であって、略矩形の閉断面を所定方向に延設した略筒状体に形成されており、下端部同士が車幅方向に近接状態で突き合うように配置されると共に上方程互いの間隔が広がるように傾斜して正面視でV字状に配置されている。
図6,図7に示すように、冷却機構Fは、電動ファン31(排出手段)と、左右1対の導入開口部32と、左右に延びる上側クロスメンバ24の閉断面内に収容された左右に延びる(車幅方向に長い)略直方体状の収容器40等を備えている。
この冷却機構Fは、収容器40内に冷却媒体としての作動流体が封入され、インバータ10を熱源として、潜熱吸収、蒸発移動、潜熱放出、凝縮還流からなる熱サイクルを繰り返すヒートパイプを構成している。
図3〜図6に示すように、ダクト33は、上側クロスメンバ24の車幅方向中央部分から電動ファン31に向けて後方に延設されている。
上側クロスメンバ24の上壁部には、左右両端部及び中央部に閉断面内外を連通する開口が夫々形成され、中央部に形成された開口にダクト33の前端が連結され、左右両端部に形成された開口に上方に延びる導入開口部32が連結されている。
これにより、電動ファン31が駆動されたとき、収容器40から入熱された空気が上側クロスメンバ24の閉断面内からダクト33を介して排出され、走行風が上側クロスメンバ24の閉断面内に導入開口部32を介して導入されている。
そこで、本発明では、作動流体の気液界面の揺動を抑制する、複数のバッフルプレートを設けている。
バッフルプレート43は、本体部41の中段部において左右方向全域に亙って形成され、本体部41の前壁部から後壁部近傍位置に亙って後方程高くなるように形成されている(例えば、傾斜角度5〜15°)。
バッフルプレート44は、作動流体の最適液面レベルよりも下側位置において本体部41の左右方向全域に亙って形成され、本体部41の後壁部から前壁部近傍位置に亙って前方程高くなるように形成されている(例えば、傾斜角度5〜15°)。
バッフルプレート43,44は、バッフルプレート43の後端部とバッフルプレート44の下面とが僅かに離隔しているため、協働して蛇行通路を形成している。
これにより、インバータ10を作動流体内に全体的且つ直接的に浸漬することができ、制御部Cによりバッフルプレート43、換言すれば、蛇行通路の一部を形成している。
バッフルプレート43の途中部には、作動流体が蒸発することにより生成された気相流体をバッフルプレート43の下部から上部に開放する1又は複数の開口43aが形成されている。本実施例では、開口43aが、制御部Cよりも前側位置に形成されたため、制御部Cによって集められた気相流体を積極的に上部に開放している。
図8,図9に示すように、各熱交換部42は、側面視にて略台形状に形成されると共に正面視にて略三角形状に形成され、その内部は中空状に構成されている。
これにより、熱交換させるための内外表面積を確保している。そして、蛇行通路に沿って流動してきた気相流体は、各熱交換部42の中空部に誘導され、上側クロスメンバ24内に導入された新気と熱交換を行う。凝縮により気相流体から液相流体に相変化した作動流体は、熱交換部42の内壁面に沿って流れて滴下し、本体部41に還流される。
この冷却機構Fでは、パワーモジュールPを浸漬する下部の液相の作動流体が潜熱吸収後気化して上方移動すると共に上部凝縮部にて気相流体が潜熱を放出して再び液相流体に変移して降下することによりヒートパイプの熱サイクルを実行する収容器40を設けたため、コンパクトで且つ別途動力を必要としないインバータ10の冷却機構Fを確保することができる。
制御部Cは、収容器40内において、車両静止状態の気液界面内であって、パワーモジュールP上方を部分的に覆うことによりパワーモジュールPから上方の気液界面に到達する経路が制御部Cに規制されて蛇行する蛇行通路を形成する位置に取り付けられ、制御部CとパワーモジュールPが上下方向にハードワイヤWで電気的に接続されたため、作動流体の揺動に伴うパワーモジュールPのドライアウトを回避することができる。
1〕前記実施例においては、乗用車用駆動モータの冷却に適用した例を説明したが、振動等による作動流体の流動が大きい使用環境であれば、乗用車以外の車両に適用しても同様の効果を奏することができる。
また、副駆動モータであるIWMのインバータの冷却に適用した例を説明したが、主駆動モータのインバータの冷却に適用しても良い。
21 骨格メンバ
24 上側クロスメンバ
31 電動ファン
32 導入開口部
40 収容器
42 熱交換部
43 バッフルプレート
43a 開口
44 バッフルプレート
P パワーモジュール
C 制御部
F 冷却機構
Claims (6)
- 複数の半導体素子を有するパワーモジュールと、このパワーモジュールを制御する基板状の制御部と、前記パワーモジュールと制御部を電気的に接続する接続手段とを備えた車両用インバータの冷却構造において、
前記パワーモジュールを浸漬する下部の液相の作動流体が潜熱吸収後気化して上方移動すると共に上部凝縮部にて気相流体が潜熱を放出して再び液相流体に変移して降下することによりヒートパイプの熱サイクルを実行する収容器を設け、
前記制御部は、前記収容器内において、車両静止状態の気液界面内であって、前記パワーモジュール上方を部分的に覆うことにより前記パワーモジュールから上方の気液界面に到達する経路が前記制御部に規制されて蛇行する蛇行通路を形成する位置に取り付けられ、
前記制御部と前記パワーモジュールが上下方向にハードワイヤで電気的に接続されたことを特徴とする車両用インバータの冷却構造。 - 前記収容器の頂部から上方に突出すると共に内部が中空状に形成された複数の熱交換部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用インバータの冷却構造。
- 前記収容器の内部に前記収容器の底面部から気液界面までの経路を規制して蛇行通路をなす複数のバッフル部材を設け、
前記複数のバッフル部材は、長手方向寸法が前記収容器の長手方向寸法と略同等で且つ長手直交方向が前記収容器の長手直交方向よりも短い板状部材によって形成され、
前記パワーモジュールを前記収容器の底部に固定すると共に前記制御部を前記複数のバッフル部材のうち最下部のバッフル部材に配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用インバータの冷却構造。 - 前記少なくとも1つのバッフル部材に前記作動流体の蒸気を排出するための開口が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の車両用インバータの冷却構造。
- 前記収容器が、左右1対のサスペンション支持部間を連結する閉断面状のクロスメンバ内に設置されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用インバータの冷却構造。
- 前記クロスメンバ内の前記収容器の上方であって前記熱交換部が存在する空間に接続される、空気排出用の排出手段と、空気導入用の導入開口とを設けたことを特徴とする請求項5に記載の車両用インバータの冷却構造。
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