本発明の課題は、熱分析のための上述した種類の測定装置及び方法において、使用される構成要素が化学的反応又は物理的反応に起因して損傷するか又は破壊される恐れを低減することである。
上述した種類の測定装置におけるこの課題は、本発明の第1態様によれば、測定装置が坩堝を格納するための外側坩堝を更に備えることにより解決される。この場合、坩堝は、坩堝材料で構成され、外側坩堝は、坩堝材料とは異なる外側坩堝材料で構成されている。
本発明における「坩堝」は、少なくともほぼシェル状又はカップ状に形成されると共に、(以下においては坩堝本体とも称される)基体で構成されるか又は基体を含む。坩堝がセンサ上に配置される使用状況において、坩堝本体は、以下において「底部」と称され、(使用状況において)センサを指向する坩堝本体の下端部として機能する部分、並びに以下において「ジャケット」と称され、坩堝本体における横方向の画定部分として機能すると共に、センサから離れるよう底部から(上方)に向けて延在する部分を有する。坩堝の底部及びジャケットは、坩堝の内部を画定し、その内部の底部上に試料を配置することができる。坩堝には、(場合により)カバーが設けられ、そのカバーにより、坩堝におけるジャケットの上端部に位置する開口が(完全に又は部分的に)閉鎖される。そのようなカバーは、例えば別個の部品として構成可能であり、ジャケットの上端部に(取り外し可能又は取り外し不可能に)取り付けることができる。本発明においては、特に、坩堝本体が少なくともほぼ円筒形状又は円錐台形状を有する坩堝を使用することができる。坩堝は、好適には、1.0〜1.5の横方向広がり/高さ比において、例えば、最大で3〜15 mmの横方向広がり及び/又は2〜10 mmの高さを有することができる。坩堝本体の壁厚は、例えば、50 μm〜300 μmの範囲内にあり得る。
本発明における「外側坩堝」は、少なくともほぼシェル状又はカップ状に形成されると共に、(以下においては「外側坩堝本体」とも称される)基体で構成されるか又は基体を含む。外側坩堝本体の使用目的(坩堝の格納)において、外側坩堝本体は、外側坩堝本体における横方向の画定部分として機能する(外側坩堝)「ジャケット」と称される少なくとも1つの部分、並びに場合により(外側坩堝)「底部」と称され、(使用状況において)センサを指向する外側坩堝本体の下端部として機能すると共に、ジャケットの下側に結合された部分を有する。ジャケット(及び実施形態によって設けられた底部)で画定された外側坩堝の内部は、測定装置の坩堝を格納できる寸法を有する。
外側坩堝の好適な実施形態において、外側坩堝は、平面図で見て、円形の輪郭を有する。本発明においては、特に、外側坩堝本体が少なくともほぼ円筒形状又は円錐台形状を有する外側坩堝を使用することができる。外側坩堝は、好適には、1〜10の横方向広がり/高さ比において、例えば、最大で3〜15 mmの横方向広がり及び/又は2〜5 mmの高さを有することができる。外側坩堝ジャケットの壁厚及び/又は外側坩堝底部の壁厚は、特に、50 μm〜250 μmの範囲内にあり得る。
「センサ」は、使用状況において上側を有し、その上側の上方で(外側坩堝に格納された)坩堝を配置することができる。この上側は、以下において記載するように、平坦又は非平坦に形成可能であると共に、特に少なくとも表面上が金属材料で構成可能である。坩堝内に配置された試料の試料温度をセンサによって測定するため、センサは、上述した表面下において特に熱電素子又は温度測定に適した他の手段を有することができる。特殊な実施形態において、センサは、少なくとも2種の異なる材料、特に金属材料で構成され、それら材料により、試料温度を測定するための熱電素子が既に構成されるよう配置されている。本発明においては、特に、少なくともほぼ円盤形状を有するセンサを使用することができる。センサは、例えば、坩堝の最大横方向広がりに比べて、1.0倍〜1.5倍の最大横方向広がりを有することができる。
本発明に係る外側坩堝を使用すれば、坩堝とセンサとの間の直接的な接触が有利に回避可能になるため、坩堝材料とセンサ材料との間の反応が回避される。坩堝を格納する外側坩堝は、坩堝材料と特に良好に適合するのみならず、センサ材料とも特に良好に適合する材料で構成することができる。坩堝及び外側坩堝は、使用状況において、坩堝が外側坩堝の内側にのみ接触し、センサが外側坩堝の外側にのみ接触するよう構成され、かつ坩堝が外側坩堝に格納されるのが有利である。
一実施形態において、外側坩堝の底部は、坩堝の底部に全面的に当接している。
この全面的な当接を可能とするため、外側坩堝底部の内側の構成は、坩堝底部の外側の構成に対応している。この場合、外側坩堝底部の内側及び坩堝底部の外側は、例えば、平坦に構成されるか(又は代替的に同様に湾曲するよう)構成されている。
全面的な当接には、坩堝と外側坩堝との間で良好な熱接触が実現されるという利点がある。
他の実施形態において、外側坩堝の底部は、坩堝の底部における1つ以上の接触面にのみ当接している。この場合、1つ以上の接触面の全体は、外側坩堝における底部の内側の全体よりも大幅に小さい(例えば、50%よりも小さく、特に25%よりも小さい)。
一実施形態において、外側坩堝の底部は、環状の接触面に沿うよう坩堝の底部に当接している。この場合、環状の接触面は、外側坩堝における底部の内側の全体よりも50%小さく、特に25%小さくすることができる。
このような「部分的な」当接の利点は、一定の製造公差及び/又は熱による形状変化が存在していたとしても、坩堝と外側坩堝との間においてより明確な熱接触又は良好に再現可能な熱接触が実現されることである。
一実施形態において、外側坩堝のジャケットは、坩堝のジャケットに全面的に当接している。
この全面的な当接を可能とするため、外側坩堝ジャケットの内側の構成は、坩堝ジャケットの外側の構成に対応している。この場合、外側坩堝ジャケットの内側及び坩堝ジャケットの外側は、例えば、円筒状に構成されるか(又は代替的に円錐台状又はシェル状に湾曲するよう)構成されている。
全面的な当接により、坩堝と外側坩堝との間で良好な熱接触が実現されるのみならず、外側坩堝内で坩堝のセンタリングが有利に実現される。
一実施形態においては、形状密着により、外側坩堝内で坩堝のセンタリングが可能になるよう、外側坩堝及び坩堝が構成されている。
このことは、坩堝が外側坩堝から取り出されて(他の測定のために)異なる外側坩堝に嵌め込まれた場合、又は異なる坩堝が外側坩堝に嵌め込まれた場合に測定条件の再現性を高めるのに寄与する。
一実施形態において、外側坩堝の高さは、坩堝の高さの1%〜60%、特に10%〜40%に亘ってオーバーラップしている。
オーバーラップの程度が可能な限り小さければ、外側坩堝の使用に起因する測定装置の「付加的な質量」が小さく維持可能であり、従って測定装置の「付加的な熱容量が」小さく維持される(この点は基本的に有利である)。
他方で、(以下において記載するように)センサが上方に突出するセンサ縁部又は他の縁部画定部分を有する場合、オーバーラップの程度は、少なくとも、坩堝とセンサ縁部又は縁部画定部分との間で不所望な接触が確実に回避されるよう選択するのが望ましい。
一実施形態において、センサの上側は、上方に突出するセンサ縁部又は他の縁部画定部分を有し、従ってセンサ上で外側坩堝のセンタリングが形状密着により可能である。
この目的のため、上方に突出するセンサ縁部又は他の縁部画定部分の具体的な構成に適合する外側坩堝の横方向広がりは、(外側坩堝をセンサ上でセンタリングするために)、適切な大きさとすることができる。
上述したセンサ縁部(又は他の縁部画定部分)は、例えば、環状に閉じるようセンサの周方向全体に亘って延在させることができる。ただし代替的には、上方に突出するセンサ縁部(又は縁部画定部分)は、センサの周方向における個別の箇所、例えば周方向において等距離に分布する3つ以上の箇所にのみ形成することもできる。
一実施形態において、外側坩堝材料は、金属又は合金、特にタングステン又はタングステン合金とする。
他の実施形態において、外側坩堝材料は、セラミック材料、特にAl2O3又はY2O3をベースとするセラミック材料とする。
上述した2種の材料、即ち金属或いは合金又はセラミック材料の一方を外側坩堝材料として使用すれば、多くの用途及び高温において、外側坩堝材料の良好な材料適合性が坩堝に対してのみならずセンサ(又はセンサの上側)に対しても有利に保証可能である。
一実施形態において、坩堝(又は少なくともその底部)は、グラファイトで構成されている。特にこの場合、外側坩堝材料は、例えば金属又は合金として有利に選択することができる。
一実施形態において、坩堝材料は、セラミック材料とする。特にこの場合、外側坩堝材料は、例えば、金属又は合金として有利に選択することができる。
一実施形態において、坩堝材料は、金属又は合金とする。特にこの場合、外側坩堝材料は、例えば、セラミック材料として有利に選択することができる。代替的には、例えば、グラファイトを選択することもできる。
一実施形態において、センサは、(少なくとも外側坩堝が接触する領域にて)金属又は合金で構成されている。特にこの場合、外側坩堝は、例えば、セラミック材料として有利に選択することができる。
一実施形態において、センサは、関連領域にてセラミック材料で構成されている。特にこの場合、外側坩堝材料は、例えば金属又は合金として有利に選択することができる。
坩堝材料及びセンサ材料に関する材料の組み合わせについては、本発明の他の構成において更なる改良を施すことができる。この場合、第1材料で構成されると共に坩堝に接触する「第1層」、並びに第1材料とは異なる第2材料で構成されると共にセンサに接触する「第2層」を有する「ワッシャアセンブリ」が坩堝とセンサとの間に嵌め込まれるよう設けられている。第1層は外側坩堝によって形成され、従って第1材料は外側坩堝材料によって形成されているのに対して、第2層は(外側坩堝とセンサとの間で)付加的な層又は付加的なワッシャによって形成されている。
この更なる構成において、外側坩堝及び「第2ワッシャ」(第2層)は、例えば、「外側坩堝ワッシャセット」に基づくことが可能であり、その外側坩堝ワッシャセットは、少なくとも1個の外側坩堝及び複数の第2ワッシャを含み、及び/又は、少なくとも1個の第2ワッシャ及び複数の外側坩堝を含む。
本発明に係る測定装置のワッシャアセンブリは、好適には、外側坩堝及び第2ワッシャで構成されている。即ち、坩堝とセンサとの間に更なるワッシャを有さない。
修正例において、ワッシャアセンブリは、互いに(特に取り外し不可能に)結合されるよう外側坩堝及び第2層を含む複合ワッシャ構造を有する。この場合、ワッシャアセンブリは、既に「使用可能」になるよう有利に組み立てられている。複合ワッシャ構造は、外側坩堝及び第2層だけを含むのが好適である。ただし、外側坩堝と第2層との間に更なる層が含まれることは排除されるべきではない。この場合、更なる層の材料は、外側坩堝材料のみならず第2層の材料と異なるものであり、例えば「アダプタ層」として機能し、その両側において外側坩堝材料及び第2材料が特に良好に結合可能である。
複合ワッシャ構造の一実施形態において、第2層は、外側坩堝の外側(外側坩堝のジャケット及び/又は底部)をスパッタリングすることによって形成された層である。
ワッシャアセンブリ(例えば複合ワッシャ構造)は、使用状況において、外側坩堝が坩堝及び第2層にのみ接触(センサには接触しない)し、第2層がセンサ及び外側坩堝にのみ接触(坩堝には接触しない)するよう構成されているのが好適である。
上述したセンサ縁部又は他の縁部画定部分を有するセンサとの関連において、ワッシャアセンブリの横方向広がりは、特に、センサ上でワッシャアセンブリのセンタリングが形状密着により実現される大きさとすることができる。この実施形態においては、ワッシャアセンブリの第2層が、垂直方向に見て、センサ縁部又は縁部画定部分を越えて上方に突出するのが好適である。
一実施形態において、センサは、(少なくとも第2層が接触する領域では)金属又は合金で構成されている。特にこの場合、第2材料は、例えば、セラミック材料として有利に選択することができる。
一実施形態において、センサは、関連領域にてセラミック材料で構成されている。特にこの場合、第2材料は、例えば金属又は合金として有利に選択することができる。
本発明の更なる態様によれば、上述した課題は、試料を熱分析するための上述した種類の方法において、試料を配置すると共に試料温度を測定するための本発明に係る測定装置が試料チャンバ内に使用されることにより解決される。
本発明に係る測定装置に関して本明細書に記載した各実施形態及び特定の構成は、本発明に係る熱分析方法の各実施形態又は特定の構成としても個々に又は任意の組み合わせで適用することができる。
一実施形態において、本発明に係る方法は、上述したステップを実施する前に、坩堝を外側坩堝内に配置すること、並びにそのように装備した外側坩堝を試料チャンバ内に配置されたセンサ上に配置することを含む。
更なる構成において、外側坩堝は、(上述した種類の)ワッシャアセンブリの一部としてセンサ上に配置する。
「試料の温度調整」は、一般的に試料の加熱及び/又は冷却を含むことができる。この場合、温度調整の基礎をなす温度プログラムにより、一定の温度に関連付けられた時点が更に想定される。
一実施形態において、温度プログラムは、試料チャンバ内のチャンバ温度を規定する。そのために、本発明に係る方法は、例えば、チャンバ温度を測定すること、並びにその測定に基づいて、好適にはチャンバ温度の制御(例えばPID制御)により、温度調整装置を調整することを含むことができる。
代替的に、温度プログラムは、試料温度の所定の時間的変化を規定することもできる。そのために、温度調整装置の対応する調整(特に制御)を、例えば測定した試料温度に基づいて行うことができる。
本発明に係る方法においては、好適には、温度プログラムの過程における測定データ、特に、チャンバ温度及び試料温度の少なくとも1つ(好適には両方)の温度依存的及び/又は時間依存的な変化を表すデータを記録することを含む。温度調整時及び/又は温度プログラムの終了時に、このようなデータを評価することにより、熱分析において対象とすると共に、本発明に係る方法を適用する試料における少なくとも1つの特性(例えば材料パラメータ)を特定することができる。
具体的に実施すべき熱分析に応じて、本発明に係る方法においては、上述した種類の測定装置を試料チャンバ内に2個配置することができる。この場合、上述した形式の2個のセンサ上に、上述した形式の2個の坩堝がそれぞれ外側坩堝に格納されている。この場合、2個の坩堝又は場合により2個の試料(例えば「実際の試料」及び「基準試料」)も、試料チャンバ内で同時に温度調整することができる。2個の試料を同時に温度調整する代替として、第2坩堝は、本発明に係る方法の実施時に、例えば、「空」で(即ち、坩堝内に試料又は基準試料を配置しない状態で)使用することもできる。
言うまでもなく、本発明に係る熱分析方法において、上述した種類の測定装置を2個使用する場合、多くの用途ではこれら2個の測定装置を互いに同じ構成とするのが好適である。
温度プログラムの過程において、チャンバ温度は、少なくとも1つの時点で最低値に達し、少なくとも1つの異なる時点で最大値に達する。
本発明の適用は、温度プログラムにおいて、温度又は最大値が比較的大きい場合に特に有利である。
一実施形態において、チャンバ温度は、温度プログラムの過程で少なくとも500℃の最大値を有する。
多くの用途において、最大値は、少なくとも750℃又は少なくとも1000℃でさえあり得る。
他方で、多くの用途において、チャンバ温度は、温度プログラムの過程で最大2000℃であると想定すれば十分である。
温度プログラムの最低値に関しては、例えば「室温」又は室温よりも僅かに大きな温度(例えば20℃〜100℃)が想定可能であり、その最低値は特に、熱分析方法において使用される温度調整装置によって室温未満に冷却できない場合に想定可能である。
他の場合においては通常、チャンバ温度の最低値として、例えば−150℃〜100℃の範囲内にある温度が(例えばペルチェ冷却及び/又は液体窒素で)容易に実現可能である。
特に有利な実施形態において、熱分析方法は、DSC(示差走査熱量測定)とする。この場合、記載した測定装置が試料チャンバ内に2個存在し、また測定結果(例えば上述した測定データ)の評価においては、特に、2個のセンサによって測定された温度差の時間依存的な変化が特定される。これにより、特に、エネルギー効果及び/又は例えば試料における温度依存的な比熱容量が特定可能である。
更なる実施形態において、本発明に係る熱分析方法では、DSCを少なくとも1つの他の熱分析方法、例えばTGA(熱重量分析)と組み合わせる。
一実施形態において、熱分析方法は、「高温」DSC又は「高温」DSC及びTGAの組み合わせとする。この場合、チャンバ温度及び/又は試料温度は、温度プログラムの過程で少なくとも500℃、特に少なくとも750℃、場合によっては少なくとも1000℃の最大値を有する。
以下、本発明を添付図面に関連する例示的な実施形態に基づいて更に説明する。
図1は、従来技術に既知の構成を備えると共に、試料Pを熱分析するための測定装置の概略側面図を示す。測定装置は、試料Pを格納するための坩堝10と、坩堝10がセンサ20上に配置されたときに試料Pの試料温度を測定するためのセンサ20とを備える。
坩堝10は、典型的には、グラファイト又は金属などの坩堝材料で構成され、図示の実施形態においては、円盤状の底部12を有する円筒形状をしており、その円筒形状の縁部には上方に突出する円筒状のジャケット14が取り付けられている。
本明細書に使用されている用語「上」又は「上側」、「下」又は「下側」、「横方向」などは、(熱分析を実施する場合の)使用状況における各構成要素の配置を指している。
坩堝10は、図1に破線で表されたカバー16を(任意で)更に備えることができ、そのカバー16により、上側に向けて開放され、かつ底部12及びジャケット14で画定された坩堝10の内部が閉鎖される。幾つかの用途において、試料Pを含む内部と坩堝10の外部との間の圧力を補償するために、カバー16には孔が設けられている。
測定装置の使用状況において、センサ20は、坩堝(例えば図示の坩堝10)をセンサ20上に配置可能とし、従って試料P(「基準試料」も含む)を内部に含有し得る坩堝が試料チャンバ内において所定の形式で配置されるよう機能するだけでなく、坩堝10の下側の温度、従って(坩堝が試料Pを内部に含有する場合に)試料温度を測定するよう機能する。温度測定機能については、試料Pから坩堝10の底部12を介してセンサ20の表面又は内部における実際の温度測定装置(例えば熱素子)に至るまでの僅かな伝熱抵抗を前提とする。
図示の例示的な実施形態において、センサ20は、均一な厚さの平坦な円盤形状を有しており、やはり円盤状の坩堝10底部12との相互作用によって試料Pとセンサ20との間で良好な熱接触が実現される。
ただし、図示の実施形態における底部12とセンサ20上側との間の全面的な当接とは異なり、例えば、底部12とセンサ20との間における環状の接触面に沿う他の熱接触も想定可能である。この場合、底部12全体又は少なくとも底部12下側に凹部又は湾曲部が設けられる。
図示の実施形態において、円盤形状の直径として測定されるセンサ20の横方向広がりは、坩堝10の底部12領域の横方向広がりと少なくとも同じ大きさを有するか又は図示のように坩堝10の底部12領域の横方向広がりよりも大きい。
図1の例示的な実施形態に関して上述した坩堝10及びセンサ20の全ての特徴(修正を含む)は、本発明に係る測定装置における坩堝又はセンサにも適用することができる。本発明の例示的な実施形態は、以下において図7、図8、図9、図10に基づいて更に記載する。
図1に示す既知の測定装置における主な欠点は、例えば、坩堝材料とセンサ材料との間の接触面における化学的反応及び/又は物理的反応により、センサ20が損傷を被るか又は破壊される恐れがあることである。更に、試料材料と坩堝材料との間の接触面にも同様の問題が生じる。
更に、図1の測定装置を横方向に見た場合、センサ20上の坩堝10の配置位置が明確に規定されていないことも不利であると見なされる。即ち、坩堝10がセンサ20上に繰り返し取り外されたり再配置されたりした場合、熱分析における測定プロセスの再現性が影響を受ける。
図2〜図4は、図1の実施形態と比べて修正され、かつ本出願人による先行技術に基づく幾つかの例示的な実施形態を示す。
以下、図2〜図4に示す例示的な実施形態の記載、並びに図5〜図12に示す更なる例示的な実施形態の記載においては、各測定装置で同一機能を有する構成要素には、同一参照符号が使用される。基本的には、既に述べた例示的な実施形態との違いだけが記載され、その他の点については先行する実施形態の記載を参照されたい。
図2は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。この場合、図1に示す例と比べて、第1の修正例においては、例えば金属試料Pと金属坩堝10との間に「内側坩堝」18が嵌め込まれ、高温時における試料P材料と坩堝10材料との間の反応が回避されている。図示の例において、内側坩堝18は、セラミック材料で構成されている。
このような内側坩堝の構成は、(内側坩堝18の外側が坩堝10の内側に対して)可能な限り良好に規定され及び/又は可能な限り全面的に当接するよう、図示の内側坩堝18と同様に坩堝10の構成に適合させるのが好適である。図示の内側坩堝18は、坩堝10と同様、円盤状の底部及び上方に突出するようその底部に取り付けられた円筒状のジャケットを有する。図示の例においては、底部のみならずジャケットも、底部の内側又は坩堝10のジャケットの内側に全面的に当接している。
この修正例は、例えば、坩堝10の材料をより自由に選択できるという利点を有する。
第2修正例においては、測定装置が坩堝10とセンサ20との間に嵌め込まれたワッシャ30-1を更に備える。ワッシャ30-1は、坩堝10の底部に接触する上側、並びにセンサ20の上側に接触する下側を有する。
この修正例は、例えば、坩堝の材料及びセンサの材料をより自由に選択できるという利点を有する。
図示の例において、ワッシャ30-1は、セラミック材料で構成されている。坩堝材料と(一般的に極めて「高価」な)センサにおけるセンサ材料との間の拡散溶接及び化学的反応が回避されている。このことは、比較的高温時の使用状況において特に有利である。
図1及び図2に従って示す例においては更に、坩堝10がセンサ20に対して自己センタリングされず、坩堝10が例えばずれるか、又は使用者が横方向においてセンサ20上の異なる位置に配置する可能性がある。このことは、熱分析において実施される測定の再現性に関して不利な影響を及ぼす。
この欠点を回避するため、図3及び図4に例示する実施形態が想定可能である。
図3は、図1における例と比べて修正された測定装置を示す。この場合、センサ20の上側は上方に突出するセンサ縁部22を有しており、従って坩堝10をセンサ20上で形状密着によりセンタリングすることが可能である。センサ縁部22は、例えば、環状に閉じるようセンサ20の周方向全体に亘って延在させることができる。
図3に係る実施形態とは異なり、上方に突出するセンサ縁部22は、センサ20の周方向における個別の箇所にのみ形成することもできる。
図示の例とは異なり、形状密着的な結合は、センサ縁部22の代わりに、他の縁部画定部分で実現することもできる。この場合、他の縁部画定部分としては測定装置の構成要素が想定され、その構成要素は、センサ20に対して固定配置されることにより、センサ20上における坩堝10の配置に関して、横方向に見て坩堝10のための画定部分として機能する。
図4は、センサ20の上側が(図3の実施形態と同様)上方に突出するセンサ縁部22を有する測定装置を示す。これにより、坩堝10をセンサ20上でやはり形状密着によりセンタリングすることが可能である。図示の実施形態においては更に、(図2の実施形態と同様)ワッシャ30-1も設けられている。この場合、図2に示す例と比べて、図4に示す修正例においては、ワッシャ30-1がその横方向広がりに関して、センサ縁部22によって規定されたスペース内に収まるよう縮小されている。
測定装置の実際の使用においては、図示の内側坩堝18及び/又はワッシャ30-1を使用したとしても、センサと坩堝との間、並びに坩堝と試料との間の不所望の反応に関連して、センサ-坩堝-試料-材料の組み合わせを全て最適にすることはできない。例えば試料によっては、グラファイトで構成された坩堝10内に配置しなければならず、高温時にセンサ20との反応が生じる可能性がある。セラミック製のワッシャ30-1を使用すればこの問題をある程度回避できるが、極めて高温時にはグラファイトと反応する可能性がある。
更に、ワッシャ30-1が配置された図2及び図4の実施形態に係る測定装置において、図2の実施形態に係る測定装置であれば、横方向に見て、センサ20上の坩堝10の配置位置が明確に規定されておらず、従って測定プロセスの再現性が影響を受けるのに対して、図4の実施形態に係る測定装置であれば、坩堝10とセンサ20(センサ縁部22)との間で不都合な接触の恐れがある。
図4の実施形態に係る問題を回避するため、以下において図7、図8、図9、図10に基づいて例示的に更に記載する実施形態が想定可能である。
図5は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。この場合、図1に示す例と比べて、測定装置は、坩堝10とセンサ20との間に嵌め込まれたワッシャアセンブリ30を更に備えることを特徴としている。ワッシャアセンブリ30は、坩堝10に接触すると共に、第1材料で構成された第1層30-1、並びにセンサ20に接触すると共に、第1材料とは異なる第2材料で構成された第2層30-2を有する。
ワッシャアセンブリ30は、第1層30-1を形成する第1ワッシャ、並びにその第1ワッシャとは別に第2ワッシャを形成する第2層30-2を有することができる。
この代替案は、図2に示す実施形態の修正例と見なすことができる。この場合、図5に係る実施形態との違いは、坩堝10とセンサ20との間に第2ワッシャ(層30-2)が更に嵌め込まれていることである。
この代替案においては、特に坩堝材料がグラファイトの場合、第1ワッシャ又は第1層30-1が金属材料(例えばタングステン又はタングステン合金)で構成され、第2ワッシャ又は第2層30-2がセラミック材料で構成されることが想定可能である。
図5に示す実施形態においては、ワッシャアセンブリ30が複合ワッシャとして構成された代替案も想定可能である。この場合、複合ワッシャは、(例えば溶接によって)互いに結合された状態で第1層30-1及び第2層30-2を含む。
この代替案は、第1材料及び第2材料が互いに溶接可能な場合、即ち溶接を可能とするために2種の金属又は合金が適切に組み合わされる場合に特に適している。
互いに結合された複合ワッシャの層は、一方の層がスパッタ層として他方の層上に形成されてもよい。
図5に示す例においては更に、(図3及び図4)に基づいて上述した実施形態と同様、センサ20が上方に突出するセンサ縁部22が設けられている。これにより、少なくとも第2層30-2がセンサ20上でセンタリングされるか、又は複合ワッシャ(互いに結合された層30-1,30-2)が使用される場合にはワッシャアセンブリ30がセンサ20上でセンタリングされる。
図5に示す例においては更に、第1層30-1の横方向広がりが第2層30-2の横方向広がりよりも小さく選択されている。これにより、第2層30-2が第1層30-1の全周に亘って横方向に突出するため、センサ20(センサ縁部22)に対して第1層30-1の接触が確実に回避される。
特に両方の層30-1,30-2が個別に構成された場合においても、上側層30-1の移動又は不正確な位置決めを回避するために、又は図5の実施形態とは異なり上側ディスク30-1のセンタリングも実現するために、図6に例示する実施形態を適用することができる。
図6は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。この場合、図5に示す実施形態と比べて、図6の修正例においては、ワッシャアセンブリ30における第1層30-1が、第2層30-2の上側に埋設されている。
図6に示す例においては、ワッシャアセンブリ30における第1層30-1が第2層30-2を越えて上方に突出している。第1ワッシャ又は第1層30-1は、第2ワッシャ又は第2層30-2の縁部を僅かに越えて突出しているため、(例えばグラファイト製の)坩堝10と(例えばセラミック材料の)層30-2との間で不所望の接触が回避される。
図5及び図6に示す実施形態(並びに以下に記載する図8及び図10に示す実施形態)における(2つの層30-1,30-2)を有するワッシャアセンブリに関しては、互いに個別に形成された2つのワッシャが使用される実施形態の他に、特に複合ワッシャが想定可能であり、その複合ワッシャでは、(例えば一方の層に対する)スパッタリング又は他のコーティング法により第1層30-1及び第2層30-2が形成されている。例えばこの場合、スパッタリングにより、金属材料(金属又は合金)で構成された第1層30-1をセラミック製の第2層30-2の上側に形成することができる。
2つの個別ワッシャ30-1,30-2を積層することには、用途に応じて、個別のワッシャを単独で(又は異なる第2ワッシャと組み合わせて)使用できるという利点があり、またワッシャの1つ(特にワッシャ30-1)が汚染した場合にはそのワッシャだけを交換すればよい。この場合、汚染した層は、容易かつ費用効率的に交換可能ないわば有用層として見なすことができる。
記載したワッシャアセンブリは、坩堝材料がグラファイトであり、センサ材料が金属材料の場合に特に有利である。代替的には、例えば、金属材料(特にタングステン又はタングステン合金)の坩堝、及び/又は、(特にグラファイト製の)付加的な内側坩堝が設けられてもよい。
図7は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。図示の測定装置は、坩堝10を格納するための「外側坩堝」30-1を更に備えることを特徴としている。この場合、坩堝10は坩堝材料で構成され、外側ジャケット30-1は坩堝材料とは異なる外側坩堝材料で構成されている。
図2及び図4に示す例とは対照的に、図7の修正例においては、平坦なプレート状の「ワッシャ」30-1(図2及び図4参照)の代わりに、「外側坩堝」30-1が設けられることにより、坩堝材料とセンサ材料との間の接触が回避されている。
図7に示す例示的な実施形態において、外側坩堝30-1は、円盤状の底部を有する円筒形状をしており、その円筒形状の縁部には上方に突出する円筒状のジャケットが取り付けられている。
図示の例においては、外側坩堝30-1の底部が坩堝10の底部12に全面的に当接している。代替的には、例えば、外側坩堝30-1の底部が環状の接触面に沿うよう坩堝10の底部12に当接することも想定可能である。
この点は、図7に示す実施形態とは異なり、底部12全体又は少なくとも底部12下側に凹部又は湾曲部が設けられることによって実現可能である。代替的又は付加的に、例えば外側坩堝30-1の底部の上側には、対応する凹部又は湾曲部を設けることができる。更に、横方向に見て、外側坩堝30-1の底部の中央領域に材料の切り欠き(底部における窪み又は貫通孔)を設け、これにより坩堝10が外側坩堝30-1の環状の底部部分上に当接する構成とすることも想定可能である。
この関連において留意すべきは、図7に係る例とは異なり、外側坩堝は、完全に底部なしで構成することも可能であり、この場合、特に上方から下方に向けて垂直方向にテーパ付けされたジャケットを有し、そのジャケットの内側に坩堝が当接することで支持される。この代替案において、各センサは、図7に示すようにほぼ平坦な上側を有さず、横方向に見て、代わりに(例えば円形)の凹部又は切り欠きを中央領域に有し、その中央領域の縁部に外側坩堝が(例えば環状に閉じた状態で延在しながら)当接するのが好適である。この場合にセンサの凹部又は切り欠きは、坩堝の一部が外側坩堝のジャケットの下縁部を越えて下方に突出していたとしても、その坩堝の一部がセンサに接触することのない深さの寸法又は構成を有することができる。
図7に示す例に再度言及すると、この例においては、外側坩堝30-1のジャケットは、坩堝10のジャケット14に全面的に当接している。換言すれば、外側坩堝30-1のジャケットの内径は、ジャケット14の外径に適合する寸法を有しており、坩堝10が外側坩堝30-1にほぼ遊びの無い状態で嵌め込み可能である。
坩堝のジャケットと外側坩堝のジャケットとの間のこのような全面的な当接は、(図7に示す)実施形態とは異なり、例えば、両方のジャケットが上方から下方に向けてテーパ付けされると共に、(同じ傾斜角を有する)円錐台状に構成されている場合にも有利である。
このような実施形態においては、図7に示す例と同様、外側坩堝及び坩堝は、形状密着により、外側坩堝内にて坩堝のセンタリングが有利に行われるよう構成することができる。この構成は、測定装置で実施される測定の再現性を向上させる。
図7に示す例においては更に、外側坩堝30-1が坩堝10の高さの約30%に亘ってオーバーラップすることが想定可能である。このようなオーバーラップは通常、10%〜40%の範囲にあるのが好適である。
坩堝10及びセンサ20がそれぞれ金属材料で構成されているという例示的な仮定の下においては、外側坩堝の材料としては特にセラミック材料が適している。外側坩堝30-1は、(図7に示す例では内側坩堝が設けられていない点を除けば)いわば図2に示す実施形態のワッシャ30-1として機能している。外側坩堝(図7参照)は、坩堝10の側面においても、坩堝10とセンサ20との間における不所望の接触を有利に回避している。
図8は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。この場合、図7と比べて、図8の修正例においては、測定装置が外側坩堝30-1とセンサ20との間に嵌め込まれたワッシャ30-2を更に備える。
この構成により、図7に示す実施形態と比べて、特に坩堝及び/又はセンサの材料をより自由に選択できるという利点がある。
別の観点に従えば、図8に示す例は、「ワッシャアセンブリ」(図5、図6、図10参照)を備える上述した実施形態の修正例と見なすことができる。この観点においては、外側坩堝30-1又は少なくともその底部がワッシャアセンブリ30における「第1層」30-1として機能し、ワッシャ30-2がワッシャアセンブリ30における「第2層」30-2として機能する。
この別の観点に関しては、図8に係る例とは異なり、2つの構成要素30-1,30-2は(例えば分離不可能に)互いに結合された状態で設けられてもよいことに留意されたい。この場合、構成要素30-1,30-2の結合は、例えば、「複合ワッシャ」について上述したのと同様に実現することができる。
このように図8に示す例においては、坩堝10とセンサ20との間に「ワッシャアセンブリ」30-1,30-2が設けられ、そのワッシャアセンブリ30-1,30-2は、坩堝10に接触すると共に第1材料で構成された「第1層」、並びにセンサ20に接触すると共に第1材料とは異なる第2材料で構成された「第2層」30-2を有する。この場合、第1層は外側坩堝30-1によって形成され、従って第1材料は外側坩堝材料によって形成されているのに対して、図示の例における第2層はワッシャ30-2によって形成されている。
図7及び図8に示す測定装置において、坩堝10は、センサ20に対して自己センタリングされない。この点を実現するため、図9及び図10に例示する実施形態を適用することができる。
図9は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。この場合、図7に示す実施形態と比べて、図9の修正例においては、センサ縁部22に基づく形状密着により、センサ20上で外側坩堝30-1のセンタリングが実現されている。
図9に示す例においては、外側坩堝30-1がセンサ縁部22に直接的に当接することによりセンタリングされている。この場合に想定される外側坩堝30-1の円筒形状及び上方に突出するセンサ縁部22の円筒形状は、外側坩堝30-1の外径とセンサ縁部22の内径との間で寸法が対応していることを意味する。
図10は、坩堝10と、センサ20とを備える測定装置を示す。この場合、図8に示す実施形態と比べて、図10の修正例においては、ワッシャ30-2(又はワッシャアセンブリ30の第2層30-2)が、センサエッジ22に基づく形状密着により、センサ20上でセンタリングされている。図10の修正例においては更に、(図6に示す実施形態に関連して上述した形式で)外側坩堝30-1(又は第1層30-1)が、ワッシャ30-2(又は第2層30-2)の上側に「埋設」されている。
別の観点に従えば、図10に係る実施形態は、図6に示す例の修正例と見なすことができる。図10の修正例においては、第1層30-1(図6参照)の代わりに、外側坩堝30-1(図10参照)が設けられており、これにより坩堝10のセンタリングが実現されている。
図10に示す例において、外側坩堝30-1は、図9に示す例と同様、形状密着によりセンサ上20でセンタリングされているが、外側坩堝30-1がセンサ縁部22への直接的な当接ではなく、ワッシャ30-2(又はワッシャアセンブリ30における第2層30-2)のセンタリングを介した間接的な当接でセンタリングされている。ワッシャ30-2は、センサ縁部22に直接的に当接している。
外側坩堝材料について述べると、外側坩堝材料は、坩堝10材料との材料適合性、並びに下方に隣接する材料、例えばセンサ材料又は場合によってはワッシャ又は第2層30-2材料との材料適合性に対応するよう有利に選択することができる。
対応する用途において、外側坩堝30-1の外側坩堝材料は、例えば、金属又は合金、特にタングステン又はタングステン合金とすることができる。
他の用途において、外側坩堝30-1の外側坩堝材料は、例えば、Al2O3又はY2O3をベースとするセラミック材料として選択したほうが有利な場合もある。
本発明に係る測定装置において、図1〜図10に基づいて上述した個々の構成要素の特徴及び構成は、各特徴又は構成が互いに互換性を有する限り、互いに任意に組み合わせることができる。
図1〜図10に係る例に基づいて上述した坩堝10におけるセンタリングの態様は、横方向の位置決めにのみ関連する。熱分析において実施する測定の再現性を高めるため、坩堝10がセンサ20に対して常に所定の回転位置に容易に配置できれば有利である。特に既知の測定装置において少なくともほぼ回転対称的に構成された坩堝の場合、実際の測定では、使用者は坩堝をセンサに対して任意の回転位置に配置することが想定される。
この問題を回避するため、測定装置、特に図1〜10に基づいて上述した種類の測定装置においては、坩堝のための回転防止手段を形成することにより、坩堝10がセンサ20上に配置されたときに坩堝が所定の回転位置に位置決めされる。このような回転防止手段の例示的な実施形態は、図11及び図12に記載する。
図11は、(破線で表された)センサ20上に配置された坩堝10におけるほぼ円形の外側輪郭の概略平面図を示す。
図示の例示的な実施形態において、センサ20に対する坩堝10の所定の回転位置は、突出部21と窪み19との形状密着的な係合によって保証される。この場合に図11の突出部21は、センサ20上(又はセンサ20に対して固定配置された測定装置における更なる構成要素上)に配置され、窪み19は、坩堝10におけるジャケットの外側に直接的に配置されている。
図示の窪み19を坩堝ジャケットの外側に直接的に配置する代わりに、窪み19は、坩堝10の外側領域における他の箇所、例えば、坩堝10を包囲する上述した形式の「外側坩堝」などの構成要素の外側に配置することもできる。
1回以上の熱分析における異なる測定間において、坩堝10が対応の外側坩堝から分離されないと仮定すれば、外側坩堝にのみ設けられた回転防止手段は、坩堝10のための回転防止手段と見なすことができる。
更に、回転防止手段を構成する窪みを外側坩堝に取り付ける代わりに、そのような窪みを、特に回転防止手段を構成するために設けられ、かつ坩堝10をスリーブのように包囲する構成要素上に設けることも想定可能である。
センサ20上(又はセンサ20に対して固定配置された更なる構成要素上)における突出部21の配置について述べると、センサ20の上側にて上方に突出する上述した形式の「センサ縁部」が設けられている場合、特に、突出部21がセンサ縁部の内側(内周)に配置されることが想定可能である。
図12は、やはり図1〜図10に係る測定装置におけるセンサ20上に配置された坩堝10の例示的な実施形態を示す。図11に示す例と比べて、図12に示す修正例においては、基本的に突出部及び窪みの配置位置が入れ替わっている点だけが異なる。従って、図12に示す例においては、坩堝10の外側領域に突出部19’が配置され、センサ20上(又はセンサ20に対して固定配置された構成要素上)に窪み21’が配置され、これら突出部19’と窪み21’との間における形状密着的な係合により、センサ20に対して坩堝10が所定の回転位置に位置決めされる。
図11に示す窪み19及び突出部21に関連して上述した全ての構成(特に具体的な配置位置)は、図12に示す窪み19’及び突出部21’の構成又は配置に同様に適用することができる。
図11及び図12に示す例において、窪み(19,21’)及び対応するよう構成された突出部(21,19’)は、係合方向に直交する平面内で見て細長の断面を有する。従ってこの場合、窪みは特に直線的に延在する溝を形成することができ、対応する寸法を有すると共に直線的に延在するリブがその溝に係合する。
上述した窪み(19,21’)における細長の断面の直線的な延び、並びに対応する突出部(21,19’)における細長の断面の直線的な延びは、好適には、測定装置の垂直方向に向けられている。
更に、図11及び図12に示す例に明示されているように、窪み(19,21’)及び対応する突出部(21,19’)が丸み付けされた窪み底部又は丸み付けされた突出端部を有するのが好適である。代替的又は付加的に、窪みの断面及び対応する突出部の断面が(図11及び図12に示す例に明示されているように)係合方向に見て縮小する構成も想定可能である。
図11及び図12に係る例とは異なり、窪み19,21’及び対応する突出部21,19’は、非細長の断面、例えば少なくともほぼ円形の断面を有することもできる。この場合、窪み及び突出部は、特に少なくともほぼ円錐台状又はほぼ半球状に構成することができる。
図11及び図12に係る例、即ち突出部が窪みに形状密着的に係合する構成の代替又は付加として、センサ20に対して坩堝10が所定の回転位置に位置決めされる点は、坩堝10が(使用者にとって視認可能な)「マーキング」をその外側領域に有することによっても実現することができる。この場合、使用者は、マーキングにより、坩堝10をセンサ20上における所定の回転位置に配置することが可能になる。
このようなマーキングは、特に、マーキング突出部として又はマーキング窪みとして実現することができる。この場合、図11及び図12に示す坩堝10も、回転防止手段の簡略化された実施形態に合わせて適切に構成される。これら坩堝10においては、窪み19又は突出部19’により、(対応する突出部21又は窪み21’が存在しなくても)そのような視認可能なマーキングを表すことができる。
図11及び図12に基づいて上述した回転防止手段の実施形態は、本明細書において記載した(図1〜図10)に示す測定装置の例示的な実施形態に適用することができる。