JP2019211456A - 青果物および果汁の品質検査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 強力な光源や高感度な光検出器を必要とせず、青果物や果汁の糖度を簡易に測定することができる非破壊品質検査装置を提供する。【解決手段】 本発明の検査装置は、青果物や果汁から散乱光を発生させるための光源と散乱光を測定するための散乱光検出器から構成され、青果物や果汁の屈折率変化による光散乱強度および散乱強度の角度分布の変化を使って青果物や果汁の糖度を検査する。【選択図】図3
Description
この発明は、青果物や果汁に光を照射した際に生じる散乱光の強度を測定することにより青果物や果汁の糖度を検査する非破壊検査装置に関するものである。
みかん、りんご、スイカ、メロン、トマトなどの青果物やそれらの果汁では、糖度が重要な品質検査項目である。これらの青果物や果汁の糖度検査法としては、糖分子による近赤外光の光吸収を測定する非破壊検査法や果汁の屈折率を測定し糖度(Brix糖度)に換算する破壊検査法が行われている。摘果前および出荷前の非破壊糖度検査法としては、近赤外光を用いた光吸収測定法しかなく、摘果時期の決定や出荷の際の非破壊品質検査法として用いられている。糖分子による近赤外光の吸収を用いた青果物の糖度測定に関しては、特許文献1および非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3がある。入射光近傍の後方散乱光に含まれる糖分子による光吸収を分光器付きのCCDカメラを利用して測定する検査法に関しては非特許文献4がある。青果物の屈折率を使った糖度測定に関しては、特許文献2がある。青果物の反射光を利用した品質検査法に関しては、特許文献3がある。
河野 澄夫、食糧 その科学と技術 農研機構、No.43(2005,3月)69−86.
荒川 博、中根 健、松浦 英之、大場 聖司、あたらしい農業、静岡県農林水産部、No.370 平成13年、1−10.
藤原 孝之、日本食品工学会誌、Vol.5,No.2,(2004)51−62.
Yankun Peng,Renfu Lu,"Analysis of spatially resolved hyperspectral scattering images for assessing apple fruit firmness and soluble solids content",Postharvest Biology and Technology 48(2008)52−62.
近赤外光の光吸収を用いた青果物および果汁の摘果前および出荷前の非破壊糖度検査法では、図1のように青果物7や果汁5に含まれる植物繊維からなる光散乱体4による光散乱のために青果物や果汁の透明度が低く、透過光6を直接測定するためには強力な光源と高感度な光検出器が必要である。このため、従来の糖分子による近赤外光の光吸収を用いた非破壊糖度検査法では、青果物7の表面に光を照射し青果物内部から発生する散乱光2に含まれる微弱な光吸収を測定して糖度に換算している。検査に利用できる光は特許文献1のように、青果物や果汁に含まれる糖分子による波長783、830、899、1031nmの光吸収が測定できる波長700nmから波長1100nmの近赤外線や、青青果物からの光反射強度を使った特許文献2の検査方法で使用される波長900nmから波長1920nmの光に限定される。この他、特許文献3のプリズムを用いて測定した青青果物の屈折率から糖度を推定する方法や、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4の糖分子の近赤外線領域の光吸収を利用する糖度測定法があるが、いずれも近赤外領域の糖分子の光吸収を利用している。また、非特許文献4のCCDカメラを使った検査法では、測定範囲が入射光近傍に限られており、広い散乱角度全体に渡っての測定は行われていない。
果汁による可視光および近赤外光の光吸収スペクトルの例としてオレンジジュースとトマトジュースの光吸収スペクトルを図2に示す。オレンジジュースの波長500nmから波長1100nmの波長領域の吸収スペクトルおよび、トマトジュースの波長600nmから波長1100nmの波長領域の吸収スペクトルでは、波長970nm付近に水(H2O)の光吸収ピークが見られる他には糖分子による大きな光吸収ピークは観測できない。この波長領域では果実や果汁からの散乱光の強度は圧倒的に強く、糖分子による光吸収は微弱であるため測定は困難である。このため従来技術では吸収スペクトルの1次微分曲線や2次微分曲線を解析する演算手法により糖分子による光吸収を強調して検出していた。多くの果実や果汁で可視光から近赤外光の波長範囲で非常に強い光散乱が測定できるが、これまで糖分子の光吸収とは関係のない波長の散乱光強度を使った青果物や果汁の糖度検査は行われていない。この発明では、青果物や果汁の糖度検査を可能にするために散乱光強度または散乱光強度の角度分布測定を使った非破壊糖度検査装置を提供する。
本発明の検査装置は、図3のように青果物や果汁に光を照射し散乱光2を発生させるための光源1と散乱光強度を測定するために散乱角度(θ)9の位置に設置した散乱光検出器8から構成される。青果物7に含まれる果汁の糖度が変化すると図4のように糖度に対応して果汁の屈折率(n0)が変化する。果汁の屈折率(n0)が糖度によって変化するため、果汁の屈折率(n0)と青果物や果汁に含まれるセルロース(ns=1.53〜1.60)やリグニン(ns=1.61)などの光散乱体の屈折率(ns)との比率(ns/n0)が糖度によって変化する。この結果、青果物や果汁の光散乱強度と光散乱強度の角度分布が糖度によって変化する。本発明の検査装置では、従来行われていた青果物や果汁の糖分子による光吸収強度や表面反射強度の測定ではなく光散乱強度を使って非破壊糖度検査を行う。
本発明の検査装置では、果汁の屈折率変化に伴い散乱体(セルロースやリグニン)と果汁の屈折率比(ns/n0)が変化することによって光散乱特性が変化する現象を利用して、光散乱強度または光散乱強度の角度変化を測定して果汁の糖度を検査する。果汁の屈折率変化に伴う光散乱特性の変化を利用するため、さまざまな波長の光を使って糖度を測定することが可能になる。糖分子の光吸収に関係なく光散乱強度の測定によって糖度の非破壊検査が可能になる。光源としては青果物や果汁から散乱光が発生すれば良く、青果物や果汁の内部に侵入しやすい(透過しやすい)波長の光源をすべて利用することが可能になり、光源を選ばない効果的な品質検査が可能になる。本発明の検査装置では、強力な散乱光そのものを糖度検査に使用するため高感度な検出器を必要とせず、測定が容易に行えるという利点がある。
青果物や果汁の光散乱強度は散乱角度(θ)9によって変化する。散乱角度(θ)が120度以上かつ150度以下の範囲では、糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度が存在する。オレンジジュースの場合はこの角度は140度である。糖度によって散乱強度が変化しない散乱角度よりも高角度側では、糖度の増加に対して光散乱強度が減少し、低角度側では、糖度の増加に対して光散乱強度が増加する。したがって、あらかじめ標準試料を用いて散乱角度ごとに糖度と光散乱強度との間の検量線を作成すれば、光散乱強度の測定値から糖度を検査することができる。光散乱強度が試料の糖度によって変化しない散乱角度での測定値は、糖度の変化以外の原因による光散乱強度の変動(外乱)を補正するために利用できる。
光源1としては、ハロゲンランプなどの連続光の他に、フィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)、白色LED、発光ピーク波長600nmの黄色LED、発光ピーク波長630nmの赤色LED、発光ピーク波長850nmの近赤外LED、発光ピーク波長940nmの近赤外LEDおよび、それらの光源の複数個を図7のように円周上に配置したリング状光源13などが糖分子の光吸収波長である783、830、899、1031nm付近の光を含まない光源として使用可能である。被測定対象から光散乱を発生させることができるすべての光源が使用可能である。さらに果汁などの液体試料の検査では、図8のようにガラス製円筒容器14に果汁を入れて光源1から光を照射し、散乱光検出器9を用いて光散乱強度および光散乱強度の角度分布を測定することができる。散乱光検出器8としては、ダイオードアレイを使った光ファイバ分光器などの分光測定器、Siフォトダイオードなどの半導体光検出器や光電子増倍管(フォトマルチプライヤー)などの光検出器がすべて使用可能である。光散乱強度の角度分布を測定するため、図3のように散乱光検出器8の散乱角度(θ)9を変えながら光散乱強度の角度分布を測定する方法、図5のように散乱角度(θ)9の値が異なる複数の散乱光検出器8を光ファイバ固定器11を使って設置する方法などが利用できる。複数の検出器を設置する場合は少なくとも1個の検出器を120度以上かつ150度以下の範囲の糖度によって散乱強度が変化しない散乱角度に設置し、残りの検出器をその散乱角度よりも高角度側あるいは低角度側あるいはその両方に設置することにより、糖度の変化以外の原因による光散乱強度の変動(外乱)を補正することができる。散乱光検出器8の代わりに図9のように散乱角度90度付近に設置した散乱画像撮影カメラ12を使用することによって広い角度範囲の散乱強度の角度分布を2次元画像として測定することができる。散乱光検出器8としてダイオードアレイを使った光ファイバ分光器などの分光測定器を使用すれば、糖分子の光吸収波長以外の波長の光を選択して散乱強度を測定し糖度を検査することも可能である。
本発明の検査方法では、散乱光を使って青果物や果汁の非破壊検査が可能になるため、摘果前の品質検査、出荷前の品質検査などに利用できる。従来法のように糖分子の光吸収波長に限定されること無く、測定波長の制限が無いため被測定物の内部に侵入可能であれば可視光から赤外光までのさまざまな波長の光源を用いて効果的な測定が可能になる。糖分子が吸収する特定の波長の微弱な光吸収ではなく、さまざまな波長の光で生じる強力な光散乱を糖度測定に利用することができる。このため、光源としてはハロゲンランプなどの連続光の他に糖分子の光吸収波長の光を含まない光源が光散乱強度を使った糖度測定に使用可能である。散乱光検出器としてダイオードアレイを使った光ファイバ分光器などの分光測定器を使用すれば、糖分子の光吸収波長以外の波長の光を選択して散乱強度を測定し糖度を検査することも可能である。青果物や果汁では、青果物や果汁に含まれる植物繊維(セルロース、リグニンなど)による強力な光散乱のために光の透過率が著しく低下する。植物繊維は可視光から近赤外光にわたるさまざまな波長の光を散乱させるため、強力な散乱光に重畳する微弱な糖分子による光吸収を測定することは困難である。青果物や果汁では、散乱光の強度は圧倒的に強く糖分子による吸光度は微弱であるため、散乱光強度の測定は糖分子による光吸収の測定に比べて容易である。
青果物や果汁の光散乱強度や散乱強度の空間分布は、散乱体と果汁の屈折率の比率で変化する。果汁の糖度が高いと屈折率が増加し、散乱体と液体の屈折率比が1に近づくため光散乱による透過損失が低下する。従って、青果物や果汁の散乱強度や散乱強度の空間分布を詳細に測定すれば、青果物や果汁に含まれる液体成分の屈折率に関する情報を得ることができる。糖度が高い青果物や果汁では液体成分の屈折率が大きく、セルロースやリグニンなどの青果物や果汁に含まれる光散乱体との屈折率比が1に近づくため光散乱強度が低下し、散乱強度の空間分布が変化する。散乱角度(θ)が120度以上かつ150度以下の範囲では、糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度が存在する。この散乱角度(θ)よりも高角度側では、糖度の増加に対して光散乱強度が減少し、低角度側では、糖度の増加に対して光散乱強度が増加する。糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度よりも高角度側(後方散乱側)では、糖度の増加によって果汁の屈折率が増加したことにより散乱体と果汁の屈折率比は1に近づき、散乱強度が低下したため光散乱強度が減少したと考えられる。糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度よりも低角度側(前方散乱側)では、果汁の糖度の増加によって光散乱による損失が減少したため光散乱強度が増加したと考えられる。したがって、あらかじめ標準試料を用いて散乱角度ごとに糖度と光散乱強度との間の検量線を作成すれば、光散乱強度の測定値から糖度を検査することができる。糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度での測定値は、糖度の変化以外の原因による光散乱強度の変動(いわゆる外乱)を補正するために利用できる。
この方法では、甘み成分の光吸収を使う従来の近赤外光吸収測定法と異なり、糖分子の光吸収とは関係なく光散乱強度が測定できれば糖度が非破壊検査可能である。このため、測定波長の制限が無く、散乱光が観測できれば可視光から近赤外光までのさまざまな波長の光が測定に使用可能であるという利点がある。本発明の検査装置では、散乱光の波長とは無関係にすべての散乱光が利用できるため、検出器に入射したすべての波長の散乱光の強度を合計して測定することにより、散乱強度が微弱な透明度の低い試料に対しても糖度検査が可能になる。本発明の検査方法を使えば、散乱体を含む半透明の液体や固体の屈折率に関する検査が非破壊で行えるため、青果物や果汁以外にも種々の食品や飲料、工業製品、原料などの非破壊品質検査に適用可能である。
本発明の検査装置は、図3のように青果物や果汁から散乱光を発生させるために光源用光ファイバ10−1に接続した光源1と散乱光強度を測定するために検出器用光ファイバ10−2に接続した散乱光検出器8から構成される。光源用光ファイバ10−1および検出器用光ファイバ10−2の両方あるいは片方を使わずに光源1および散乱光検出器8を直接青果物7に設置しても良い。光源1としては、ハロゲンランプなどの連続光の他にフィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)、白色LED、黄色LED、赤色LED、近赤外LED(波長850nm)、近赤外LED(波長940nm)および、それらの光源の複数個を図7のように円周上に配置したリング状光源13などの糖分子の光吸収波長である783、830、899、1031nm付近の光を含まない光源が使用可能である。
本発明の検査装置では、果汁の屈折率変化による光散乱特性の変化をもとに果汁の糖度を検査するため、糖分子の光吸収波長以外の波長の光を使って糖度を測定することができる。糖分子の吸収波長に限定されること無く、青果物内部に侵入しやすい(透過しやすい)波長の光をすべて利用することが可能になり、光源を選ばない効果的な品質検査が可能になる。本発明の検査装置では、散乱光の波長とは無関係にすべての散乱光が利用できるため、検出器に入射したすべての波長の散乱光の強度を合計して測定することにより、散乱強度が微弱な透明度の低い試料に対しても糖度検査が可能になる。
散乱光の空間分布を測定するため、図3のように散乱光検出器8の散乱角度(θ)9の値を変えながら光散乱強度の角度分布を測定する方法、図5のように散乱角度(θ)9の値が異なる複数の散乱光検出器8を設置する方法、図6のように散乱光の画像を散乱角度90度の位置に設置した散乱画像撮影カメラ12を用いて撮影し、輝度分布を解析する方法を使って散乱光強度の角度分布を測定することにより、高精度に青果物の糖度を測定することができる。さらに果汁などの液体試料の検査では、図8のようにガラス製円筒容器14に果汁を入れて光源1から光を照射し、散乱光検出器8を用いて光散乱強度および光散乱強度の角度分布を測定することができる。散乱光検出器8としては、ダイオードアレイを使った光ファイバ分光器などの分光測定器、Siフォトダイオードなどの半導体光検出器や光電子増倍管(フォトマルチプライヤー)などが使用できる。さらに散乱光検出器8の代わりに図9のように散乱角度90度付近に設置した散乱画像撮影カメラ12を使用することもできる。散乱光検出器8としてダイオードアレイを使った光ファイバ分光器などの分光測定器を使用すれば、糖分子の光吸収波長以外の波長の光を選択して散乱強度を測定し糖度を検査することも可能である。
青果物や果汁からの光散乱強度は散乱角度(θ)9によって変化することがわかっている。散乱角度(θ)9が120度以上かつ150度以下の範囲には、糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度が存在する。糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度よりも高角度側では、糖度の増加に対して光散乱強度が減少し、低角度側では、糖度の増加に対して光散乱強度が増加する。したがって、あらかじめ標準試料を用いて散乱角度ごとに糖度と光散乱強度との間の検量線を作成すれば、光散乱強度の測定値から糖度を検査することができる。120度以上かつ150度以下の角度範囲に存在する糖度の変化に対して光散乱強度が変化しない散乱角度における測定値を使えば、糖度の変化以外の原因による光散乱強度の変動(いわゆる外乱)を補正することができる。この原理を使えば、光散乱強度や光散乱強度の空間分布によって青果物の糖度が非接触かつ非破壊で測定できる。
図8のようにガラス製円筒容器14にオレンジジュース又はトマトジュースを入れて、光源用光ファイバ10−1を通じて光源1からの光をガラス製円筒容器14の果汁5に照射した。青果物の周りを同心円状に回転可能な台に検出器用光ファイバ10−2を設置し、当該光ファイバを散乱光検出器8に接続した。散乱角度(θ)9の値を変えて散乱光強度を測定することにより光散乱強度の空間分布が測定できた。図2の光吸収スペクトルから、オレンジジュースでは、波長500nmから波長1100nmの波長領域では、比較的光吸収が少ないことがわかる。この波長領域では波長970nm付近に水(H2O)の光吸収ピークが見られる他には大きな光吸収ピークは観測できない。また、図2のトマトジュースの光吸収スペクトルから、トマトジュースでは、波長600nmから波長1100nmの波長領域では、比較的光吸収が少ないことがわかる。この波長領域ではオレンジジュースと同様に波長970nm付近に水(H2O)の光吸収ピークが見られる他には大きな光吸収ピークは観測できない。この結果からオレンジジュースでは、波長500nmから波長1100nmの波長領域の光源が、トマトジュースでは、波長600nmから波長1100nmの波長領域の光源がそれぞれ光散乱測定に使用できることがわかった。
一例としてオレンジジュース50gに砂糖(スクロース)を加えて糖度を12%および46%に調製した試料の光散乱強度の散乱角度による変化を図10に示した。光源としては、フィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)を用いた。散乱光検出器8としては、ダイオードアレイを使った光ファイバ分光器を使用した。図10から散乱角度140度付近では、光散乱強度の糖度による変化が極めて小さいことがわかった。散乱角度が140度よりも高角度側(後方散乱側)では、糖度の増加によって光散乱強度が減少した。140度よりも高角度側(後方散乱側)では、糖度の増加によってオレンジジュースの屈折率が増加したことにより散乱体と果汁の屈折率比は1に近づき、散乱強度が低下したため光散乱強度が減少したと考えられる。一方、散乱角度が140度よりも低角度側(前方散乱側)では、糖度の増加によって光散乱強度が増加した。これは、散乱角度が140度よりも低角度側(前方散乱側)では、オレンジジュースの糖度の増加によって光散乱による前方散乱光強度および透過光強度の損失が減少したため光散乱強度が増加したと考えられる。試料としてオレンジジュースの代わりにトマトジュースを用いた場合にも同様の現象が確認できた。
濃縮還元オレンジジュース50gに対して2、4、6、8、10、12、14、16、18、20gの砂糖(スクロース)を溶かした溶液を内容積100mLのメスフラスコに入れた。このメスフラスコの標線まで純水(イオン交換水)を加えて全量を100mLに調製した後に撹拌して標準溶液とした。図8のように、この標準試料をガラス製円筒容器14に入れ、光源1としてフィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)を用いて、光源用光ファイバ10−1を通じて光源1からの光をガラス製円筒容器14の果汁5に照射した。青果物の周りを同心円状に回転可能な台に検出器用光ファイバ10−2を設置し、検出器用光ファイバ10−2を散乱光検出器8に接続した。散乱光検出器8としては、ダイオードアレイを使った光ファイバ分光器を使用した。糖度の異なる標準溶液からの散乱光強度の空間分布を測定した。あらかじめ光学式糖度計を用いて標準試料溶液の糖度を測定し散乱強度と糖度の関係を評価した。フィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)を光源として用い、糖分子の光吸収がない波長600nm付近の可視光の光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に変化することが確認できた。光散乱角度が140度よりも高角度側では、光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に低下することが示された。一方、光散乱角度が140度よりも低角度側では、光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に増加することが示された。近赤外線LED(発光波長940nm)を光源1として用いた場合にも同様の結果が測定できた。この結果から、光散乱強度の測定により果汁の非破壊糖度検査が可能であることが確認できた。
濃縮還元トマトジュース50gに対して2、4、6、8、10、12、14、16、18、20gの砂糖(スクロース)を溶かした溶液を内容積100mLのメスフラスコに入れた。このメスフラスコの標線まで純水(イオン交換水)を加えて全量を100mLに調製した後に撹拌して標準溶液とした。図8のように、この標準試料にフィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)の可視光線を光源1として、光源用光ファイバ10−1を通じて光源1からの光をガラス製円筒容器14の果汁5に照射した。青果物の周りを同心円状に回転可能な台に検出器用光ファイバ10−2を設置し、検出器用光ファイバ10−2を散乱光検出器8に接続した。散乱光検出器8としては、ダイオードアレイを使った光ファイバ分光器を使用した。それぞれの試料からの散乱光強度の空間分布を測定した。あらかじめ光学式糖度計を用いて標準試料溶液の糖度を測定し散乱強度と糖度の関係を評価した。糖分子の光吸収がない波長630nm付近の可視光源や近赤外光LED(波長940nm)を光源として用いた場合でも、光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に変化することが確認できた。光散乱角度が140度よりも高角度側では、光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に低下することが示された。一方、光散乱角度が140度よりも低角度側では、光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に増加することが示された。トマトジュースでは赤色の色素の影響による光吸収のために黄色LEDを光源として用いた場合の散乱光強度は著しく弱かった。この結果から、光散乱強度の測定により果汁の非破壊糖度検査が可能であることが確認できた。
市販のトマトを試料として、図3のように、フィルターを使って赤外線を除去したハロゲンランプ(コールドライト)の可視光線を光源1として、光源用光ファイバ10−1を通じて光源1からの光をトマトに照射した。青果物7の周りを同心円状に回転可能な台に検出器用光ファイバ10−2を設置し、検出器用光ファイバ10−2を散乱光検出器8に接続した。散乱光検出器8としては、ダイオードアレイを使った光ファイバ分光器を使用した。散乱角度9(θ)の値を変えてトマトからの散乱光強度の空間分布を散乱光検出器8を用いて測定した。光散乱測定後に光学式糖度計を用いてトマトの糖度を測定し、光散乱強度と糖度の関係を評価した。コールドライトの可視光線を光源として、それぞれの試料からの散乱光強度の空間分布を測定した。あらかじめ光学式糖度計を用いて標準試料溶液の糖度を測定し散乱強度と糖度の関係を評価した。糖分子の光吸収がない波長640nmおよび波長710nm付近の可視光を光源として用いた場合でも、近赤外光LED(波長940nm)を光源として用いた場合でも、光散乱強度が試料溶液の糖度に対して直線的に変化することが確認できた。光散乱角度が140度よりも高角度側では、光散乱強度が試料溶液の糖度の増加に対して直線的に低下した。トマトの光散乱測定では、トマトジュースと同様に赤色の色素の影響による光吸収のために黄色LEDを光源として用いた場合の散乱光強度が著しく弱かった。この結果から、光散乱強度の測定により青果物の非破壊糖度検査が可能であることが確認できた。
本発明の検査方法は、青果物や果汁の摘果前の品質検査および出荷前の品質検査などに利用できる。従来法のように糖分子の光吸収波長に限定されること無く、測定波長の制限が無いため被測定物の内部に侵入可能な波長の光を用いて効果的な測定が可能になる。糖分子が吸収する特定の波長の光だけではなく、さまざまな波長の光源をすべて利用することができる。本発明の検査方法を使えば、散乱体を含む半透明の液体や固体の屈折率に関する検査が非破壊で行えるため、青果物や果汁以外にも種々の食品や飲料、工業製品、原料などの非破壊品質検査に適用可能である。
1 光源
2 散乱光
3 表面反射光、表面散乱光
4 光散乱体
5 果汁
6 透過光、前方散乱光
7 青果物
8 散乱光検出器
9 散乱角度(θ)
10−1 光源用光ファイバ
10−2 検出器用光ファイバ
11 光ファイバ固定器
12 散乱画像撮影カメラ
13 リング状光源
14 ガラス製円筒容器
2 散乱光
3 表面反射光、表面散乱光
4 光散乱体
5 果汁
6 透過光、前方散乱光
7 青果物
8 散乱光検出器
9 散乱角度(θ)
10−1 光源用光ファイバ
10−2 検出器用光ファイバ
11 光ファイバ固定器
12 散乱画像撮影カメラ
13 リング状光源
14 ガラス製円筒容器
Claims (9)
- 青果物又は果汁に光を照射し散乱光を生じさせるための光源と光散乱の強度または光散乱強度の角度分布を測定するための散乱光検出器を備え、当該検出器を使って測定した光散乱強度または光散乱強度の角度分布をあらかじめ作成した検量線を使って糖度に換算することを特徴とする青果物および果汁の品質検査装置。
- 光源からの角度を変えて設置した複数の散乱光検出器を備え、当該検出器を使って測定した光散乱強度の角度分布から糖度を測定することを特徴とする請求項1記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 散乱光強度の角度分布を測定するための複数の検出器のうち少なくとも1つが散乱角度120度以上かつ150度以下の位置に設置されることを特徴とする請求項1または2に記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 光源からの光を青果物又は果汁に照射した際の光散乱画像を撮影するカメラを散乱角度90度の位置に備え、当該カメラを用いて撮影した散乱画像の輝度分布から糖度を測定することを特徴とする請求項1記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 散乱光検出器の周りに複数の光源をリング状(円周上)に設置したリング状光源を備え、当該光源からの光を照射した被測定物からの光散乱強度を測定することを特徴とする請求項1記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 周期的に点滅する光源を備え、当該光源からの光を照射した青果物又は果汁からの散乱光の強度と外乱光の強度を交互に測定することにより、散乱光強度と外乱光強度を分離して測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 散乱光を測定するために青果物又は果汁に光を照射する光源として発光ダイオード(LED)を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 光源からの光を青果物又は果汁に照射した際に発生する散乱光の強度を測定し、あらかじめ作成した検量線を使って糖度に換算する青果物および果汁の品質検査装置において、散乱光測定器が測定する散乱光の波長が400nm以上かつ700nm以下の範囲の可視光であり、糖分子の光吸収波長の光を含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の青果物および果汁の品質検査装置。
- 光源からの光を青果物又は果汁に照射した際に発生する散乱光の強度を測定し、あらかじめ作成した検量線を使って糖度に換算する青果物および果汁の品質検査装置において、散乱光測定器が測定する散乱光の波長が700nm以上かつ1100nm以下の範囲の近赤外光であって、糖分子の光吸収波長の光を含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の青果物および果汁の品質検査装置。
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