JP2019210560A - 編地及び編地にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】 繊維強化樹脂のエネルギー吸収特性を向上させることができる繊維の編地、及びその編地を使用した繊維強化樹脂を提供する。【解決手段】 編地2は、それぞれ横編に編成され、互いの編目列が対向するように配置された第1編地部5及び第2編地部6と、第1及び第2編地部に編み込まれた連結編目列7とを有する。連結編目列は、第1編地部と第2編地部とに交互に編み込まれ、かつ第1編地部に1個の編目間隔をおいて複数の編目に編み込まれ、かつ第2編地部に1個の編目間隔をおいて複数の編目に編み込まれた第1連結編目列7Aと、第1連結編目列に隣接し、第1編地部と第2編地部とに交互に編み込まれ、第1編地部に1個の編目間隔をおいて第1連結編目列と異なる複数の編目に編み込まれ、かつ第2編地部に1個の編目間隔をおいて第1連結編目列と異なる複数の編目に編み込まれた第2連結編目列7Bとを有する。【選択図】 図2
Description
本発明は、編地及び編地にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂に関する。
自動車のセンタピラーをカーボン繊維強化樹脂によって形成したものが公知である(例えば、特許文献1)。センタピラーを構成するカーボン繊維強化樹脂は、車外側の側部にカーボン繊維を織物状に配向したクロス材を含み、車内側の側部にカーボン繊維の方向を揃えたUD材(ユニダイレクショナル材)を含む。
強化繊維にクロス材を使用した繊維強化樹脂は、高い引張強度及び圧縮強度を有するが、降伏点に達した後に引張強度及び圧縮強度が急激に低下し、破断することが知られている。繊維強化樹脂が、降伏点に達した後も破断せず、エネルギーを吸収し続けることができれば、構造材として適用範囲を広げることができる。
本発明は、以上の背景を鑑み、繊維強化樹脂のエネルギー吸収特性を向上させることができる繊維の編地を提供することを課題とする。また、その編地を使用した繊維強化樹脂を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明のある態様は、マトリクス樹脂(3)と共に繊維強化樹脂(1)を構成する繊維の編地(2)であって、それぞれ横編に編成され、互いの編目列が対向するように配置された第1編地部(5)及び第2編地部(6)と、前記第1編地部及び前記第2編地部を結合するべく、前記第1編地部及び前記第2編地部のそれぞれに編み込まれた連結編目列(7)とを有し、前記連結編目列は、前記第1編地部と前記第2編地部とに交互に編み込まれ、かつ前記第1編地部に1個の編目間隔をおいて複数の編目に編み込まれ、かつ前記第2編地部に1個の編目間隔をおいて複数の編目に編み込まれた第1連結編目列(7A)と、前記第1連結編目列に隣接し、前記第1編地部と前記第2編地部とに交互に編み込まれ、前記第1編地部に1個の編目間隔をおいて前記第1連結編目列と異なる複数の編目に編み込まれ、かつ前記第2編地部に1個の編目間隔をおいて前記第1連結編目列と異なる複数の編目に編み込まれた第2連結編目列(7B)とを有し、前記第1連結編目列及び前記第2連結編目列の組は、ウェール方向に所定の間隔をおいて複数形成されることを特徴とする。
この構成によれば、繊維強化樹脂のエネルギー吸収特性を向上させることができる繊維の編地を提供することができる。この編地を使用した繊維強化樹脂は、クロス材を使用した繊維強化樹脂に比較して、引張強度及び圧縮強度が降伏点に達した後に緩やかに減少し、降伏点に到達した後もエネルギーを吸収することができる。
上記の態様において、前記第1連結編目列及び前記第2連結編目列は、互いに連続した編糸によって形成されているとよい。また、前記第1編地部、前記第2編地部、及び前記連結編目列は、互いに連続した編糸によって形成されているとよい。
これらの構成によれば、連続した編糸によって編地を形成することができ、編地の構造を簡素にすることができる。
上記の態様において、前記第1編地部及び前記第2編地部は、編目列方向における両端において互いに結合し、筒形をなすとよい。
この構成によれば、第1編地部及び第2編地部の面方向への相対移動に対してエネルギーを吸収することができる。これにより、引張強度及び圧縮強度を向上させることができる。
上記の態様において、前記第1編地部及び前記第2編地部は、1つの編目列において2個の編目間隔をおいて編み込まれているとよい。また、前記第1編地部及び前記第2編地部は、連続した3列の編目列と、前記第1連結編目列と、前記第2連結編目列とを記載の順序でウェール方向に有するとよい。
本発明の他の態様は、上記の編地にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂(1)である。
以上の構成によれば、繊維強化樹脂のエネルギー吸収特性を向上させることができる繊維の編地、及び繊維強化樹脂を提供することができる。
以下、本発明に係る編地及び編地を含む繊維強化樹脂の実施形態について説明する。編地は、マトリクス樹脂と共に繊維強化樹脂を構成する。
繊維強化樹脂1は、繊維を編成した編地2と、編地2に含浸したマトリクス樹脂3とを含む。編地2を編成する編糸は、例えばガラス繊維や、炭素繊維、ボロン繊維、アラミド繊維である。編糸の形態は、例えばモノフィラメントやマルチフィラメント、撚糸である。マトリクス樹脂3は、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂や、ナイロン樹脂及びABS樹脂等の熱可塑性樹脂である。糸の太さは、使用する編機やその編機のゲージ(1インチ当たりの針本数)、使用目的に応じて適宜選択すれば良い。
図2に示すように、編地2は、互いに対向した第1編地部5及び第2編地部6と、第1編地部5及び第2編地部6を結合するべく、第1編地部5及び第2編地部6のそれぞれに編み込まれた連結編目列7とを有する。
第1編地部5及び第2編地部6は、それぞれ横編に編成され、互いの編目列が平行となるように対向している。第1編地部5及び第2編地部6は、編目列方向における両端において互いに結合し、筒形をなす。第1編地部5及び前記第2編地部6は、互いに連続した編糸によって形成されていることが好ましい。第1編地部5及び第2編地部6は、1つの編目列において2個の編目間隔をおいて編み込まれていることが好ましい。
連結編目列7は、第1編地部5及び第2編地部6の編目列に沿った第1連結編目列7Aと、ウェール方向において第1連結編目列7Aに隣接した第2連結編目列7Bとを有する。第1連結編目列7Aは、第1編地部5と第2編地部6とに交互に編み込まれている。第1連結編目列7Aは、第1編地部5に1個の編目間隔をおいて複数箇所で編み込まれ、かつ第2編地部6に1個の編目間隔をおいて複数箇所で編み込まれている。第2連結編目列7Bは、第1編地部5と前記第2編地部6とに交互に編み込まれている。第2連結編目列7Bは、第1編地部5に1個の編目間隔をおいて第1連結編目列7Aと異なる複数の編目に編み込まれ、かつ第2編地部6に1個の編目間隔をおいて第1連結編目列7Aと異なる複数の編目に編み込まれている。
第1連結編目列7Aにおいて、第1編地部5に編み込まれた編目は第2編地部6に編み込まれた編目に対して編目列方向にオフセットしていることが好ましい。すなわち、第1連結編目列7Aにおいて、第1編地部5に編み込まれた編目は、第2編地部6に編み込まれた編目に対して対向していないことが好ましい。同様に、第2連結編目列7Bにおいて、第1編地部5に編み込まれた編目は第2編地部6に編み込まれた編目に対して編目列方向にオフセットしていることが好ましい。
他の実施形態では、第1連結編目列7Aにおいて、第1編地部5に編み込まれた編目は第2編地部6に編み込まれた編目に対して対向していてもよい(後述する実施例3に対応する)。また、第2連結編目列7Bにおいて、第1編地部5に編み込まれた編目は第2編地部6に編み込まれた編目に対して対向していてもよい。
第1連結編目列7A及び第2連結編目列7Bは、互いに連続した編糸によって形成されていることが好ましい。また、第1編地部5、第2編地部6、及び連結編目列7は、互いに連続した編糸によって形成されていることが好ましい。
第1連結編目列7A及び第2連結編目列7Bの組は、第1編地部5及び第2編地部6において、ウェール方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。第1編地部5及び第2編地部6において、連続した3列の編目列と、第1連結編目列7Aと、第2連結編目列7Bとを記載の順序でウェール方向に有することが好ましい。
次に、図3を参照して編地2の編成工程について説明する。編地2は、例えば、それぞれ左右方向に延び、かつ前後方向に互いに対向する前針床FB及び後針床BBを有する2枚ベッド横編機によって編成することができる。図3中のA〜Oは、前針床FB及び後針床BBの編針を示す。なお、説明を分かり易くするために、編針の数は実際の編成で使用する数よりも少なくしている。また、図中の白丸(○)は前の工程で編針に形成された編目を、黒丸(●)は各工程で編成される編目を表す。
最初に、第1工程S1において、編糸を供給する給糸口10が前針床FBの右側から左側に移動して2個の編目間隔をおいて前針床FBの編針に編糸を係止させ、更に給糸口10が後針床BBの左側から右側に移動して2個の編目間隔をおいて後針床BBの編針に編糸を係止させる。このとき、前針床FBの編針に形成された編目と、後針床BBの編針に形成された編目とは、編目列方向に互いにオフセットしている。第1工程S1によって第1ベース編目列11が形成される。
次に、第2工程S2において、給糸口10が前針床FBの右側から左側に移動して2個の編目間隔をおいて前針床FBの第1工程S1とは異なる編針に編糸を係止させ、更に給糸口10が後針床BBの左側から右側に移動して2個の編目間隔をおいて後針床BBの第1工程S1とは異なる編針に編糸を係止させる。このとき、前針床FBの編針に形成された編目と、後針床BBの編針に形成された編目とは、編目列方向に互いにオフセットしている。第2工程S2によって第2ベース編目列12が形成される。
次に、第3工程S3において、給糸口10が前針床FBの右側から左側に移動して2個の編目間隔をおいて前針床FBの第1工程S1及び第2工程S2とは異なる編針に編糸を係止させ、更に給糸口10が後針床BBの左側から右側に移動して2個の編目間隔をおいて後針床BBの第1工程S1及び第2工程S2とは異なる編針に編糸を係止させる。このとき、前針床FBの編針に形成された編目と、後針床BBの編針に形成された編目とは、編目列方向に互いにオフセットしている。第3工程S3によって第3ベース編目列13が形成される。第1〜第3ベース編目列11〜13によって、全ての編針に1つずつ編目が形成される。
次に、第4工程S4において、給糸口10が前針床FB及び後針床BBの右側から左側に移動し、編糸を後針床BBの編針及び前針床FBの編針に交互に係止させる。編糸は、後針床BBにおいて1個の編目間隔をおいて編針に係止され、前針床FBにおいて1個の編目間隔をおいて編針に係止される。また、前針床FBの編針に係止される編目と後針床BBの編針に係止される編目とは、左右にオフセットしている。第4工程S4によって第1連結編目列7Aが形成される。
次に、第5工程S5において、給糸口10が前針床FB及び後針床BBの左側から右側に移動し、編糸を第4工程S4とは異なる前針床FBの編針、及び第4工程S4とは異なる後針床BBの編針に交互に係止させる。編糸は、前針床FBにおいて1個の編目間隔をおいて編針に係止され、前針床FBにおいて1個の編目間隔をおいて編針に係止される。また、前針床FBの編針に係止される編目と後針床BBの編針に係止される編目とは、左右にオフセットしている。第5工程S5によって第2連結編目列7Bが形成される。第1及び第2連結編目列7Bによって、全ての編針に1つずつ編目が形成される。以上の第1〜第5工程S1〜S5を繰り返すことによって編地2が形成される。
繊維強化樹脂1は、例えば真空補助樹脂注入成形法(VaRTM:Vacuum assisted Resin Transfer Molding)によって形成される。真空補助樹脂注入成形法では、成形型内に編地2を配置し、成形型内を真空にすることによってマトリクス樹脂3を成形型内に引き込み、編地2にマトリクス樹脂3を含浸させる。
以下、本実施形態に係る編地2及び編地2を使用した繊維強化樹脂1の効果を、実施例1〜3と比較例1〜4との対比によって説明する。実施例1〜3及び比較例1〜3に係る編地2は、株式会社島精機製作所製の無縫製横編機SWG091N2(10ゲージ)を使用して編成した。実施例1〜3及び比較例1〜3は、編地2の構造が異なり(図3)、他の構成は同一である。実施例1〜3及び比較例1〜3において、編地2は連続した編糸から形成され、筒形に形成されている。また、編糸は、直径9μmのガラス繊維を束ねた675デシテックスのマルチフィラメントである。マトリクス樹脂3は、エポキシである。比較例4は、クロス(織構造)の強化繊維を含む。
実施例1及び2は、上記の図3に示す編成工程によって形成した編地2である。実施例1の第1及び第2連結編目列7A、7Bはタック度目が10であるのに対して、実施例2の第1及び第2連結編目列7A、7Bはタック度目が25である。
実施例3は、図5に示す編成工程によって形成した編地2であり、実施例1、2と比較して、第1連結編目列7A及び第2連結編目列7Bの編目の位置が異なる。実施例3では、第1連結編目列7Aにおいて、前針床FBの編針に係止される編目と後針床BBの編針に係止される編目とが前後に互いに対向している。実施例3の第1及び第2連結編目列7A、7Bはタック度目が25である。
比較例1は、実施例1と比較して、第1連結編目列7A及び第2連結編目列7Bを有さない点が異なり、他の構成は同一である。すなわち、比較例1は、図3の第1〜第3工程S1〜S3を繰り返すことによって形成されている。
比較例2及び3の編地2は、実施例1と比較して連結編目列7の構成が異なり、第1〜第4連結編目列7A〜7Dを有する。第1〜第4連結編目列7A〜7Dは、第1編地部5及び第2編地部6に交互に編み込まれ、かつ第1編地部5及び第2編地部6のそれぞれにおいて3個の編目間隔をおいて編み込まれている。
比較例2は、図6に示す編成工程によって形成されている。比較例2の第1〜第3工程S1〜S3は、実施例1の第1〜第3工程S1〜S3と同一である(図3参照)。比較例2では、第4〜第7工程S4〜S7において、給糸口10が前針床FB及び後針床BBの右側から左側又は左側から右側に移動し、編糸を前針床FBの編針及び後針床BBの編針に交互に係止させる。編糸は、前針床FBにおいて3個の編目間隔をおいて編針に係止され、後針床BBにおいて3個の編目間隔をおいて編針に係止される。また、前針床FBの編針に係止される編目と後針床BBの編針に係止される編目とは、左右に2つの編目分オフセットしている。第4〜第7工程S4〜S7によって第1〜第4連結編目列7A〜7Dが形成される。
比較例3は、図7に示す編成工程によって形成されている。比較例2の第1〜第3工程S1〜S3は、実施例1の第1〜第3工程S1〜S3と同一である(図3参照)。比較例3では、第4及び第5工程S4、S5において、給糸口10が前針床FB及び後針床BBの右側から左側又は左側から右側に移動し、編糸を前針床FBの編針及び後針床BBの編針に交互に係止させる。編糸は、前針床FBにおいて3個の編目間隔をおいて編針に係止され、後針床BBにおいて3個の編目間隔をおいて編針に係止される。また、前針床FBの編針に係止される編目と後針床BBの編針に係止される編目とは、前後において互いに対向している。第4及び第5工程S4、S5によって第1及び第2連結編目列7A、7Bが形成される。
また、比較例3では、第6及び第7工程S6、S7において、給糸口10が前針床FB及び後針床BBの右側から左側又は左側から右側に移動し、編糸を前針床FBの編針及び後針床BBの編針に交互に係止させる。編糸は、前針床FBにおいて3個の編目間隔をおいて編針に係止され、後針床BBにおいて3個の編目間隔をおいて編針に係止される。また、前針床FBの編針に係止される編目と後針床BBの編針に係止される編目とは、左右に2つの編目分オフセットしている。第6及び第7工程S6、S7によって第3及び第4連結編目列7C、7Dが形成される。
比較例4は、複数の経糸及び複数の緯糸によって形成された平織のクロス(織組織)を有する。織組織は、複数積層されている。
図8は、実施例2と比較例4との圧縮強度試験の結果を示すグラフである。圧縮試験に使用した実施例2のサンプルの繊維体積含有率Vfは32%であり、比較例4のサンプルの繊維体積含有率Vfは51%である。編地2の各編目列が延在する方向をX方向、ウェール方向をY方向とすると、圧縮強度試験において実施例2のサンプルはY方向に沿って圧縮荷重を加えた。比較例4のサンプルは、クロスの経糸に沿う方向に沿って圧縮荷重を加えた。圧縮強度試験における圧縮速度は、0.03mm/minとした。図8のグラフの縦軸は、圧縮強度を繊維体積含有率Vfで除した繊維当り圧縮強度である。
図8に示すように、実施例2及び比較例4において、降伏強さ(圧縮強さ)は概ね等しい値である。しかし、比較例4では降伏点を超えた後に圧縮強度が急激に低下するのに対し、実施例2では降伏点を超えた後に圧縮強度が徐々に低下する。すなわち、比較例4は降伏点を超えた後に直ぐに破壊するのに対して、実施例2は降伏点を超えた後に塑性変形を行いエネルギーの吸収を継続する。そのため、編地2を含む実施例2は、クロスを含む比較例4に対してエネルギーの吸収量が大きい。
降伏点を超えた後の圧縮及び引張強度の低下度合いを荷重降下速度[MPa/min]によって表す。荷重降下速度は、次の式(1)によって表わされ、変位速度(圧縮速度)が1mm/minとした圧縮及び引張強度試験において1分当りの荷重の低下量に相当する。
荷重降下速度[MPa/min]={最大荷重[MPa]−(最大荷重[MPa]−50MPa)}/(変位Aに到達した時間[min]−変位Bに到達した時間[min])...(式1)
ここで、変位Aは荷重が最大荷重(降伏点)のときの変位[mm]、変位Bは荷重が最大荷重から50MPa低下したときの変位[mm]である(図9参照)。荷重降下速度が小さいほど降伏点を超えた後の圧縮強度又は引張強度の低下が小さく、より多くのエネルギーを吸収できる。
荷重降下速度[MPa/min]={最大荷重[MPa]−(最大荷重[MPa]−50MPa)}/(変位Aに到達した時間[min]−変位Bに到達した時間[min])...(式1)
ここで、変位Aは荷重が最大荷重(降伏点)のときの変位[mm]、変位Bは荷重が最大荷重から50MPa低下したときの変位[mm]である(図9参照)。荷重降下速度が小さいほど降伏点を超えた後の圧縮強度又は引張強度の低下が小さく、より多くのエネルギーを吸収できる。
図10は、実施例1〜3及び比較例1〜3をX方向から圧縮したときの荷重降下速度の測定結果を示すグラフである。図11は、実施例1〜3及び比較例1〜3をY方向から圧縮したときの荷重降下速度の測定結果を示すグラフである。図10及び図11の各グラフには、各サンプルに対して3回の測定値を記載している。各圧縮強度試験において、各サンプルの繊維体積含有率Vfは、比較例1が37.3%、実施例1が31.5%、実施例2が33.1%、実施例3が34.7%、比較例2が34.1%、比較例3が36.0%である。繊維体積含有率Vfの測定は、JIS_K_7052に準拠して行なった。各圧縮強度試験において、圧縮速度は1mm/minである。
図10から、実施例1〜3は比較例1〜3よりも明らかにX方向の荷重降下速度が小さいことが判る。また、図11から、実施例2がY方向の荷重降下速度が小さいことが判る。なお、各サンプルにおいて、Y方向の荷重降下速度(図11)はX方向の荷重降下速度(図10)ほど明確な差異が確認されなかった。実施例1〜3は、各連結編目列7が第1編地部5及び第2編地部6のそれぞれにおいて1個の編目間隔をおいて編み込まれている。これに対して、比較例1は連結編目列7を有さない。また、比較例2、3は、各連結編目列7が第1編地部5及び第2編地部6のそれぞれにおいて3個の編目間隔をおいて編み込まれている。これにより、比較例2、3の各連結編目列7を形成する編糸は、実施例1〜3の各連結編目列7を形成する編糸よりもX方向(編目列方向)に対する角度が小さくなる。これにより、実施例1〜3が比較例1〜3よりも荷重降下速度が小さくなると考えられる。
図12は、実施例1〜3及び比較例1〜4について衝撃後圧縮(compression after impact: CAI)強度試験の結果を示すグラフである。各サンプルは、60mm×40mm×3mmに形成した。衝撃は、落錘によってサンプルの面方向から750in.-lbf/inのエネルギーを加えた。試験は、衝撃を加えていないサンプルと、衝撃を加えたサンプルとを圧縮し、それぞれの圧縮強度(圧縮強さ)を測定し、衝撃の付与に起因する圧縮強度の低下率を算出した。各サンプルの繊維体積含有率Vfは、比較例1が37.3%、実施例1が31.5%、実施例2が33.1%、実施例3が34.7%、比較例2が34.1%、比較例3が36.0%、比較例4が46.0%であり、試験結果は各サンプルについて繊維体積含有率Vfを46.0%に換算した値を示している。圧縮強度試験は、実施例1〜3及び比較例1〜3については、X方向又はY方向から圧縮した。比較例4については経糸に沿った方向から圧縮した。
図12から、クロスを含む比較例4に対して、編地2を含む実施例1〜3及び比較例1〜3は衝撃付与後の圧縮強度の低下率が小さいことが判る。また、衝撃付与後の圧縮強度の低下率は、特に実施例1及び実施例2が他のサンプルよりも小さいことが判る。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、編地2は筒形でなくてもよい。この場合、第1編地部5及び前記第2編地部6は、互いに独立した編糸によって編成されてもよい。また、第1編地部5、第2編地部6、及び連結編目列7は、互いに独立した編糸によって形成されてもよい。また、第1編地部5及び第2編地部6を形成する組織は、1つの編目列において1個の編目間隔をおいて編み込まれたものであってもよい。この場合、第1編地部5及び第2編地部6において、連続した2列の編目列と、第1連結編目列7Aと、第2連結編目列7Bとを記載の順序でウェール方向に有することが好ましい。
使用する強化繊維(編糸)は、第1編地部5、第2編地部6、及び連結編目列7で異なる素材であって構わない。実施例では、第1編地部5と第2編地部6は平編みで編成を行っているが、これに限定されるものではない。また実施例では、各連結編目列7は、第1編地部5と第2編地部6にタックを形成したが、これはタックに限定されるものではない。
1 :繊維強化樹脂
2 :編地
3 :マトリクス樹脂
5 :第1編地部
6 :第2編地部
7 :連結編目列
7A :第1連結編目列
7B :第2連結編目列
10 :給糸口
11 :第1ベース編目列
12 :第2ベース編目列
13 :第3ベース編目列
2 :編地
3 :マトリクス樹脂
5 :第1編地部
6 :第2編地部
7 :連結編目列
7A :第1連結編目列
7B :第2連結編目列
10 :給糸口
11 :第1ベース編目列
12 :第2ベース編目列
13 :第3ベース編目列
Claims (7)
- マトリクス樹脂と共に繊維強化樹脂を構成する繊維の編地であって、
それぞれ横編に編成され、互いの編目列が対向するように配置された第1編地部及び第2編地部と、
前記第1編地部及び前記第2編地部を結合するべく、前記第1編地部及び前記第2編地部のそれぞれに編み込まれた連結編目列とを有し、
前記連結編目列は、前記第1編地部と前記第2編地部とに交互に編み込まれ、かつ前記第1編地部に1個の編目間隔をおいて複数の編目に編み込まれ、かつ前記第2編地部に1個の編目間隔をおいて複数の編目に編み込まれた第1連結編目列と、前記第1連結編目列に隣接し、前記第1編地部と前記第2編地部とに交互に編み込まれ、前記第1編地部に1個の編目間隔をおいて前記第1連結編目列と異なる複数の編目に編み込まれ、かつ前記第2編地部に1個の編目間隔をおいて前記第1連結編目列と異なる複数の編目に編み込まれた第2連結編目列とを有し、
前記第1連結編目列及び前記第2連結編目列の組は、ウェール方向に所定の間隔をおいて複数形成されることを特徴とする編地。 - 前記第1連結編目列及び前記第2連結編目列は、互いに連続した編糸によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
- 前記第1編地部、前記第2編地部、及び前記連結編目列は、互いに連続した編糸によって形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の編地。
- 前記第1編地部及び前記第2編地部は、編目列方向における両端において互いに結合し、筒形をなすことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の編地。
- 前記第1編地部及び前記第2編地部は、1つの編目列において2個の編目間隔をおいて編み込まれていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の編地。
- 前記第1編地部及び前記第2編地部は、連続した3列の編目列と、前記第1連結編目列と、前記第2連結編目列とを記載の順序でウェール方向に有することを特徴とする請求項5に記載の編地。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載の前記編地にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂。
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