≪第一実施形態≫
以下、本発明の一実施形態に係る吐出システム10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、吐出システム10は、吐出装置20と、移動装置40と、入出力装置50と、制御装置70とを備えている。吐出システム10は、制御装置70に規定された吐出条件に基づいて吐出装置20及び移動装置40を規定通りに作動させる。このようにして、吐出システム10は、所定の吐出過程を経て、所定の吐出パターンで流動体を吐出対象物に対して吐出するルーチン処理を行うことができる。
吐出装置20は、吐出対象物に対して流動体を吐出して塗布するためのものであり、ディスペンサ22によって構成されている。ディスペンサ22は、流動体を圧送するためのものであり、一軸偏心ねじポンプ30によって主要部が構成されている。ディスペンサ22は、制御装置70からの動作指令に則って動作し、先端部に設けられたノズル24から流動体を吐出させて吐出対象物に対して塗布することができる。
一軸偏心ねじポンプ30は、回転容積式のポンプである。図2に示すように、一軸偏心ねじポンプ30は、動力を受けて偏心回転する雄ねじ型のロータ32と、内周面が雌ねじ型に形成されたステータ34と、モータ36とを有する。
ロータ32は、n条(本実施形態ではn=1)の雄ねじ形状とされた金属製の軸体である。ステータ34は、内周面34aがn+1条(本実施形態ではn=1)の雌ネジ形状に形成された貫通孔34bを有する略円筒形の部材である。一軸偏心ねじポンプ30は、ロータ32をステータ34の貫通孔34bに挿通することによって主要部が構成されたポンプ機構35をポンプケーシング38に内蔵させた構成とされている。
モータ36は、一軸偏心ねじポンプ30の駆動源となるものである。モータ36は、動力伝達部37a及び偏心回転部37bを介してロータ32の基端部に接続されている。そのため、一軸偏心ねじポンプ30は、モータ36を作動させることにより、ロータ32を貫通孔34bの内部において自由に偏心回転させることができる。
一軸偏心ねじポンプ30は、ロータ32をステータ34の貫通孔34b内において回転させることにより、ロータ32及びステータ34の間に形成された流体搬送路39を長手方向に進めることができる。そのため、ロータ32を回転させることにより、ステータ34の一端側から流体搬送路39内に流動体を吸い込み、ステータ34の他端側に向けて移送し、吐出させることが可能である。また、ロータ32(モータ36)の回転量に応じて、流動体の移送量(吐出量)を制御することができる。さらに、ロータ32の回転方向を切り替えることにより、流体搬送路39内における流動体の進行方向を切り替えることができる。
移動装置40は、流動体の吐出対象物(吐出対象物)に対して吐出装置20を相対移動させるためのものである。移動装置40は、吐出装置20に対して吐出対象物を移動させるコンベアや、吐出装置20を吐出対象物に対して移動させる産業用ロボット、あるいはこれらの組み合わせ等によって構成できる。本実施形態では、移動装置40として産業用ロボットが用いられている。移動装置40は、制御装置70からの指令信号に基づいてロボットアームを動作させることができる。そのため、制御装置70の動作制御により、ロボットアームの先端部分に取り付けられた吐出装置20を予め規定された軌跡に沿って移動させることができる。
入出力装置50は、吐出情報の入出力を行うための装置である。ここで、吐出情報とは、例えば吐出対象物に対して吐出される流動体の厚み(吐出厚)、流動体の吐出幅のように流動体の吐出パターンに関する情報であって、制御装置70に規定された吐出条件に対して相関関係を有するものである。本実施形態では、吐出情報として吐出厚が採用されている。
入出力装置50は、吐出情報の表示、吐出情報を変更するための入力、及び入力された吐出情報の出力を行うための装置である。入出力装置50は、タッチパネル52を備えている。タッチパネル52は、吐出情報の表示機能及び入力機能の双方を担う。入出力装置50は、制御装置70に設定されている設定情報に基づき、タッチパネル52上に図3や図4のようなGUI54(Graphical User Interface)により、吐出情報の表示及び入力を可能とする。
具体的には、入出力装置50は、複数の区間により構成される吐出過程において、区間毎に吐出情報を表示できる。例えば、図3や図4に示すように、入出力装置50は、タッチパネル52に表示されたGUI54に、吐出対象物に対する吐出装置20の軌跡56をグラフィカルに表示することにより、流動体の吐出過程を示す情報(以下、「吐出過程情報58」とも称す)を示すことができる。吐出過程情報58は、吐出過程を複数に分割した区間毎に表示させることができる。具体的には、図4に示すように、GUI54に表示されている軌跡56のうち、例えば左下の角の部分においてタッチパネル52をタッチすると、図4に示すようにこの部分を含む区間が選択された状態になる(図示状態では破線で囲まれると共に、軌跡56の色が変わる)。また、軌跡56のうち、選択されている区間についての吐出情報が、吐出情報表示部55に表示される。図示例では、吐出情報として流動体の塗布高さ(吐出厚)が、初期設定値に対する割合(%)を示す数値として表示される。
また、入出力装置50は、吐出情報変更部57を備えている。吐出情報変更部57は、選択中である一又は複数の区間についての吐出情報を変動させるものである。吐出情報変更部57は、タッチパネル52上に表示されるボタンなどによって構成することができる。具体的には、吐出情報変更部57は、タッチパネル52上に表示されるテンキーや各種のボタンなどとすることができるが、例えば、図3や図4に示すような吐出情報変更ボタン60を備えたものとすることができる。吐出情報変更ボタン60は、増加ボタン62及び減少ボタン64を有する。増加ボタン62を押下することにより吐出情報をなす数値を増加させ、減少ボタン64を押下することにより吐出情報をなす数値を減少させることができる。また、吐出情報変更部57には、吐出情報変更ボタン60により入力された情報を確定するためのボタンとして、書込ボタン66が設けられている。書込ボタン66を押下することにより、吐出情報変更ボタン60により入力された情報が制御装置70の記憶媒体に書き込まれる。
また、GUI54には、上位モードボタン68や、リセットボタン69a、元に戻すボタン69bが設けられている。上位モードボタン68は、後述の直接操作モードでの操作を行う際に押下するボタンである。また、リセットボタン69aは、押圧前に表示されている吐出情報(本実施形態では吐出厚)を初期設定値に戻すためのボタンである。元に戻すボタン69bは、吐出情報(本実施形態では吐出厚)を、間接操作モードに入った段階での設定値に戻すためのボタンである。
制御装置70は、設定された吐出条件に基づき、吐出装置20及び移動装置40を同期させつつ動作させる制御を行うものである。このような制御を行うことにより、所定の吐出過程を経て流動体が吐出されるよう、吐出システム10を動作させることができる。すなわち、制御装置70は、流動体の吐出進行における各ポイント、具体的には動作開始からの時間あるいは吐出条件cと紐づけられた吐出位置ごとに、吐出情報(区間ごとの吐出厚)を一軸偏心ねじポンプ30におけるロータ32の回転数に変換し、動作制御を行う。
制御装置70による制御は、いかなる制御方法により行われるものであっても良いが、本実施形態では主軸の位置と、主軸の位置に応じて従軸が動作するべき位置との関係を電子カム曲線として生成する電子カム制御により、吐出装置20及び移動装置40の動作を制御可能なものとされている。さらに詳細には、制御装置70は、一軸偏心ねじポンプ30におけるロータ32の回転数(吐出条件a)、移動装置40による移動量(吐出条件c)を制御すべく、動作開始からの経過時間を仮想主軸として、ロータ32の回転数(吐出条件a)及び移動量(吐出条件c)をどう変化させるかを関数(動作開始からの経過時間を横軸とし、吐出条件a及び吐出条件cを仮想の電子カム形状に変換した電子カム関数)として記憶している。制御装置70は、この関数に基づいて吐出装置20及び移動装置40の動作制御を行う。
制御装置70は、間接操作モード、直接操作モードの2つの方法で、吐出条件を変更できる。間接操作モードは、入出力装置50をなすタッチパネル52への入力により変動した吐出情報を吐出条件に変換する変換処理を行える操作モードである。具体的には、上述した吐出情報変更部57による入力により吐出情報を変更する入力がなされたとしても、その変更後の吐出情報(数値等)を制御装置70に入力するだけでは、吐出装置20や移動装置40を動作条件の変更を電子カム曲線をなす関数に反映することができない。そこで、間接操作モードが選択されている場合には、制御装置70は、吐出情報が変更されることを条件として、上述した電子カム曲線をなす関数に展開するための変換処理を行い、変更(更新)できる。
また、直接操作モードは、タッチパネル52に表示された上位モードボタン68を押下することにより選択できるモードである。直接操作モードを選択することにより、上述した電子カム曲線をなす関数の変更を、前述のような変換処理を経ることなく、ユーザ自身が直接行えるようになる。
上述したように、本実施形態の吐出システム10は、タッチパネル52に吐出過程をなす複数の区間毎に視覚的に表示された吐出情報を、タッチパネル52を介して選択し、変動させることができる。また、吐出システム10は、タッチパネル52に入力された吐出情報を吐出条件に変換する変換処理機能を制御装置70に実装したものとされている。そのため、吐出システム10は、タッチパネル52に視覚的に表示されている吐出情報を変動させるだけで所望の吐出条件に則って吐出動作を実行できる状態になる。従って、吐出システム10によれば、電子カム曲線をなす関数を直接変更する作業に熟練していないユーザーであっても、複雑な制御のパラメータ等を意識することなく直感的に吐出条件の変更、調整を行える。
本実施形態の吐出システム10では、移動装置40として産業用ロボットを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、いわゆるベルトコンベアやローラコンベア等のコンベア装置のように、吐出装置20と吐出対象物とを相対移動させうるものであればいかなるものであっても良い。
また、本実施形態の吐出システム10では、表示装置及び入力装置の双方の機能をなすものとしてタッチパネル52を採用している。そのため、吐出システム10は、ユーザが直感的に操作でき、利便性が高い。なお、本実施形態では、表示装置及び入力装置としてタッチパネル52を採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、表示装置及び入力装置を別々の装置として準備したものであっても良い。
上述したように、吐出システム10は、吐出条件の変更を変換処理を経ることなく直接行える直接操作モードを備えたものである。そのため、吐出システム10は、変換処理を経て吐出条件の変更を行った後、さらに詳細な変更を直接操作モードを選択して行うといった使い方等にも対応可能である。なお、本実施形態では、直接操作モードを設けた例を示したが、直接操作モードを備えていないものであっても良い。
上述した吐出システム10では、吐出装置20のノズル24として吐出口が略円状の開口形状を有するものを採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、ノズル24に代えて、いわゆる平ノズルのように、細長い矩形状の開口形状の吐出口を有するものを用いても良い。ノズル24に代えて平ノズルを採用した場合、吐出口が吐出装置20の進行方向に対して交差する方向に延びるように設置することにより、ノズル24を用いた場合よりも流動体を幅広に吐出することができる。この場合においても、上述したノズル24を採用した場合と同様の構成とすることにより、流動体の塗布高さ(吐出厚)の調整などを直感的に行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、各区間において吐出対象物に対して吐出される流動体の厚みや高さを吐出情報として表現した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、流動体が吐出後、吐出対象物の表面で幅方向に拡がるような低粘度のものである場合等には、流動体の厚みや高さに代えて、あるいは加えて流動体の吐出幅を吐出情報とすることも可能である。
≪第二実施形態≫
続いて、第二実施形態に係る吐出システム200について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、吐出システム200において、上述した吐出システム10と共通する部分については同一の符号を付し、詳細な説明については省略する。
吐出システム200は、吐出装置20と、移動装置40と、入出力装置50と、制御装置270とを備えている。また、吐出装置20は、上述した吐出装置20のノズル24に代えて、吐出幅可変装置210を具備している。
吐出幅可変装置210は、一軸偏心ねじポンプ30によって圧送されてきた流動体を所定の吐出幅で吐出できるものである。図6に示すように、吐出幅可変装置210は、上述した一軸偏心ねじポンプ30の端部に接続されている。図7に示すように、吐出幅可変装置210は、ケーシング280、内筒部286、及び駆動機構部292(駆動装置)を備えている。
ケーシング280は、中空であって筒状の外筒部282を有する。外筒部282は、内筒部286を内蔵する筒状の部分であり、吐出口284を備えている。吐出口284は、スリット状であって直線的に延びる開口によって構成されており、外筒部282の内外を連通している。
内筒部286は、外筒部282の内側において回転可能なように収容されており、外径が内筒部286の内径と略同一の大きさを有する中空の筒体である。内筒部286は、駆動機構部292から動力を受けて回転可能とされている。
内筒部286の外周部には、周部開口288が内外を連通するように形成されている。周部開口288は、外筒部282に設けられた導入口に臨む(面する)位置に設けられている。これにより、一軸偏心ねじポンプ30によって圧送されてきた流動体を内筒部286内側に導入可能とされている。
図8に示すように、周部開口288は、開口幅d(内筒部286の母線方向への長さ)が内筒部286の周方向に連続的に変化するように形成されている。具体的には、周部開口288は、内筒部286を展開した状態において略二等辺三角形の開口形状を有する。また、周部開口288に対して内筒部286の周方向に外れた位置には、非開口部が設けられている。また、図8に示すように、周部開口288の開口幅dは、いずれの部位においても外筒部282に設けられた吐出口284の開口幅sよりも小さい。
図7に示すように、駆動機構部292は、モータによって構成された駆動機294と、歯車等からなる動力伝達機構296とを有する。駆動機構部292は、駆動機294を作動させることにより、動力伝達機構296を介して内筒部286に動力を伝達できる。これにより、外筒部282内において内筒部286を回動させることができる。また、駆動機294の回転量及び回転方向を制御することにより、内筒部286の回転量の調整、及び回転方向の変更を行うことができる。
吐出幅可変装置210は、図8中おいてハッチングを付して示すように、外筒部282に設けられた吐出口284と、内筒部286に設けられた周部開口288とが重なる部分に、両者が連通した連通領域290が形成される。また、駆動機294の回転量及び回転方向を調整し、吐出口284と周部開口288との相対位置を変化させることにより、連通領域290の幅D(以下、「吐出幅D」とも称す)を変化させたり、吐出口284を閉止させたりすることができる。そのため、吐出幅可変装置210により吐出幅Dを調整しつつ、吐出装置20による流動体の吐出、及び移動装置40による相対移動を行うことにより、例えば十字型(図13参照)や三角形等、様々な形状の吐出パターンで流動体を吐出させることができる。
また、本実施形態では、移動装置40として、第一実施形態において採用されていたロボットアームに代えて、いわゆるベルトコンベアやローラコンベア等のコンベア装置が採用されている。
入出力装置50は、吐出過程をなす複数の区間毎に吐出情報を視覚的に表示できる。本実施形態の吐出システム200では、入出力装置50をなすタッチパネル52に、図9に示すようなGUI254が表示される。GUI254には、吐出対象物に対する流動体の吐出過程を示す情報(以下、「吐出過程情報258」とも称す)として、塗布開始から塗布終了までの区間を複数(本実施形態では10区間)に分割したものを表示できる。吐出過程をなす各区間についての吐出情報は、矩形状(柱状)に表示される。本実施形態の吐出システム200では、各区間において吐出対象物に吐出される流動体の厚み(以下、「吐出厚」とも称す)、及び区間の長さ(吐出長)が吐出情報とされている。吐出情報を示す矩形状(柱状)の部分の高さは、吐出厚を表す。また、吐出情報を示す矩形状(柱状)の部分の幅は、各区間の長さを表す。そのため、GUI254に表示された吐出過程情報258により、ユーザーは、各区間において吐出対象物に吐出される流動体の厚みや、各区間の長さを直感的に把握できる。
また、GUI254には、吐出過程の開始前に行われるブーストアップ運転、及び吐出過程の終了時に行われるサックバック運転についても、吐出情報として矩形状(柱状)に表示される。ブーストアップ運転は、吐出過程の開始に先だって一軸偏心ねじポンプ30のロータ32を高速で回転させることで一定量の流動体を内筒部286内へ短時間で充満させて吐出準備圧をかけ、吐出過程の開始時にスムーズに流動体を吐出できるようにするための運転である。また、サックバック運転は、吐出過程の終了時にロータ32を吐出時とは逆方向に回転させることにより、流動体を一軸偏心ねじポンプ30側に引き戻す運転である。吐出システム200では、ブーストアップ運転及びサックバック運転についても吐出過程の一部として捉え、GUI254に表示する。
GUI254には、吐出情報変更部257が設けられている。吐出情報変更部257は、GUI254上において選択された吐出情報を変動させる機能を有する。吐出情報変更部257は、タッチパネル52上に表示されるボタンなどによって構成することができる。具体的には、吐出情報変更部257は、吐出情報の変更操作を行うためのボタンとして吐出情報変更ボタン260を備えている。また、吐出情報変更ボタン260として、厚み増減ボタン262、ブーストアップ量増減ボタン264、及びサックバック量増減ボタン265が設けられている。これらの増減ボタンを押下することにより、選択中である区間についての吐出量を増減させる操作を行うことができる。
また、図9及び図10を比較して分かるように、吐出量を増減させる操作に連動して、GUI254において矩形状(柱状)に表示されている吐出厚を示すグラフィックについても、高さが増減する。これに加え、吐出厚の初期値を100%とした場合に、現在の吐出厚が初期値に対して何%に相当するかを示す情報が、数値によって各区間毎に表示されている。例えば、図10に示す例では、ブーストアップ運転及びサックバック運転に相当する区間、及び区間1〜5について150%とされ、区間6〜10について100%とされている。これらの数値についても、厚み増減ボタン262、ブーストアップ量増減ボタン264、及びサックバック量増減ボタン265の操作に連動して変動する。
また、本実施形態では、吐出情報変更ボタン260として、前述した厚み増減ボタン262だけでなく、長さを変更するための塗布長さ変更ボタン263が設けられている。塗布長さ変更ボタン263を操作することにより、選択中である吐出情報について、区間の長さを増減させることができる。また、この操作に連動して、GUI254において矩形状(柱状)に表示されているグラフィックについても、幅(吐出長に相当)が増減する。
さらに、吐出情報変更部257には、書込ボタン266が設けられている。書込ボタン266は、吐出情報変更ボタン260をなす各ボタンにより入力された情報を確定するためのボタンである。書込ボタン266を押下することにより、吐出情報変更ボタン260により入力された情報が制御装置270の記憶媒体に書き込まれる。
また、GUI254には、上位モードボタン268や、リセットボタン269a、元に戻すボタン269bが設けられている。上位モードボタン268は、直接操作モードに移行する際に押下するボタンである。リセットボタン269aは、押圧前に表示されている吐出情報(本実施形態では吐出厚)を初期設定値に戻すためのボタンである。元に戻すボタン269bは、吐出情報(本実施形態では吐出厚)を、間接操作モードに入った段階での設定値に戻すためのボタンである。
制御装置270は、設定された吐出条件に基づき、吐出装置20及び移動装置40に加え、吐出幅可変装置210を同期させつつ動作させる制御を行うものである。すなわち、制御装置270は、流動体の吐出進行における各ポイント、具体的には動作開始からの時間あるいは吐出条件cと紐づけられた吐出位置ごとに、吐出情報(区間ごとの流動体の吐出量、厚み、吐出幅)を一軸偏心ねじポンプ30におけるロータ32の回転数や、吐出幅可変装置210の内筒部286の回転量に変換し、動作制御を行う。
制御装置270は、一軸偏心ねじポンプ30におけるロータ32の回転数(吐出条件a)、移動装置40による吐出対象物の移動量(吐出条件c)に加え、吐出幅可変装置210の内筒部286の回転量(吐出条件b)を制御する。制御装置270は、動作開始からの経過時間を仮想主軸として、一軸偏心ねじポンプ30の回転数(吐出条件a)、内筒部材240の回転量(吐出条件b)、及び移動量(吐出条件c)をどう変化させるかの関数を記憶している。この関数は、動作開始からの経過時間を横軸とし、吐出条件a,b,cを仮想の電子カム形状に変換した電子カム関数とされている。制御装置270は、このようにして設定された関数に基づき、一軸偏心ねじポンプ30及び吐出幅可変装置210の動作制御を行う。
制御装置270は、上述した第一実施形態の制御装置70と同様に、間接操作モード、及び直接操作モードの2つの方法で、吐出条件を変更できる。間接操作モードは、入出力装置50をなすタッチパネル52への入力により変動した吐出情報を吐出条件に変換する変換処理を行える操作モードである。具体的には、各区間について表示された吐出情報(吐出厚)をタッチにより選択し、厚み増減ボタン262を押せば吐出厚が変更される。
さらに具体的な例として、例えば、吐出対象物に対する流動体の吐出パターン(塗布パターン)のうち、前半部にある区間1〜5の吐出厚を、後半部にある区間6〜10よりも厚くしたい場合を例示する。このような場合は、先ず図9のようにGUI254に表示されている区間1〜5に対応する領域をタッチして選択した後、厚み増減ボタン262を押下する。これにより、図10に示すように、パターン前半部にある区間1〜5の吐出厚(吐出情報)が変更される。その後、書込ボタン266を押すと、現在表示されている吐出厚になるよう、各区間での吐出量が変更される。すなわち、区間1〜5において設定通りの吐出幅及び吐出厚で流動体を吐出させることができるよう、吐出幅可変装置210の内筒部286の回転量(吐出条件b)に応じて一軸偏心ねじポンプ30の回転数(吐出条件a)を増加させるための演算処理が行われる。また、各区間の間における一軸偏心ねじポンプ30の回転数の変化について、直線補完する演算処理が行われる(電子カム変位量の関数が直線補完される)。これらの演算処理に基づき、区間1〜5の吐出厚の変更を反映した、新たな電子カム関数が導出され、更新される。
また、ブーストアップ量の増減、及びサックバック量の増減についても、上述したのと同様にブーストアップ量増減ボタン264、及びサックバック量増減ボタン265の操作により設定すれば、内部演算により自動的に電子カム関数が導出された後、更新される。このようにして電子カム関数の更新処理が行われた後、流動体を吐出させるための運転を開始すると、変更後の吐出厚で流動体を吐出できるように吐出システム200が動作する。
上述した例では、吐出厚の変更方法について例示したが、同様の操作方法により吐出対象物に対する流動体の塗布長さの変更も行うことができる。すなわち、流動体の吐出長さを変更する際には、変更対象となる区間を選択した後、塗布長さ変更ボタン263を操作することにより、当該区間の吐出長さを増減させることができる。その後、書込ボタン266を押すと、現在表示されている吐出長さになるよう、移動装置40をなす移動装置40による吐出対象物の移動量(吐出条件c)が変更される。これに伴い演算処理がなされ、自動的に電子カム関数が導出された後、更新される。このようにして電子カム関数の更新処理が行われた後、流動体を吐出させるための運転を開始すると、変更後の吐出長さで流動体を吐出できるように吐出システム200が動作する。
具体的には、図9のように区画1〜10の全てにおいて均一の吐出厚に設定されている状態において吐出システム200を作動させると、図11(a)に示すように流動体が吐出(塗布)される。これに対し、吐出開始位置にある区画1から中央の区画5までの吐出厚を50%増加させる設定を行った後、吐出システム200を作動させると、図11(b)に示すように、前半部分の吐出厚が後半部分に比べて厚くなるように流動体が吐出(塗布)される。
また、GUI254に表示されているリセットボタン269aを押下することにより、吐出厚を初期設定値に戻すことができる。また、GUI254に表示されている元に戻すボタン269bを押下することにより、吐出厚の調整のために間接操作モードに入った段階での設定値に吐出情報を戻すことができる。
また、直接操作モードは、タッチパネル52に表示された上位モードボタン268を押下することにより選択できるモードである。直接操作モードを選択することにより、上述した電子カム曲線をなす関数の変更を、前述のような変換処理を経ることなく、ユーザ自身が直接行えるようになる。
上述したように、第二実施形態の吐出システム200は、十字型などの形状に流動体を吐出する場合に、吐出装置20による流動体の吐出、及び移動装置40による相対移動に加え、吐出過程において吐出幅可変装置210による吐出幅Dの調整も行う必要がある。吐出幅Dが変動する箇所においては、吐出幅Dが一定である箇所におけるよりも、極めて複雑な吐出量調整が求められる。具体的には、吐出幅Dの増減分だけ吐出量が増加するように吐出量調整を行う必要がある。これに加え、例えば吐出幅Dの増減に連動して吐出幅可変装置210の内圧変動が生じるよう場合には、内圧変動に伴う吐出量の変動も考慮して吐出量を調整する必要がある。そのため、吐出システム200は、上述した第一実施形態の吐出システム10よりも複雑な制御が必要となる。しかしながら、本実施形態の吐出システム200についても、タッチパネル52を介して吐出情報を変更したい区画を選択して変動させるだけで、所望の吐出条件に則って吐出動作を実行できる状態になる。従って、吐出システム200によれば、電子カム曲線をなす関数を直接変更する作業に熟練していないユーザーであっても、複雑な制御のパラメータ等を意識することなく直感的に吐出条件の変更、調整を行える。
本実施形態の吐出システム200では、移動装置40としてコンベア装置を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一実施形態において説明した産業用ロボットをはじめ、吐出装置20と吐出対象物とを相対移動させうるものであればいかなるものであっても良い。
また、吐出システム200は、表示装置及び入力装置の双方の機能をタッチパネル52に担わせている。そのため、吐出システム200は、ユーザが直感的に操作でき、利便性が高い。なお、吐出システム200についても、表示装置及び入力装置としてタッチパネル52以外の表示装置及び入力装置を採用したものであっても良い。
上述したように、吐出システム200についても、吐出条件の変更を変換処理を経ることなく直接行える直接操作モードを備えたものである。そのため、吐出システム200は、変換処理を経て吐出条件の変更を行った後、さらに詳細な変更を直接操作モードを選択して行うといった使い方等にも対応可能である。なお、本実施形態では、直接操作モードを設けた例を示したが、直接操作モードを備えていないものであっても良い。
また、吐出システム200は、吐出幅可変装置210を設けたものであるため、各区間において吐出対象物に対して吐出される流動体の厚み又は高さが同一であっても、吐出幅が異なれば各区間において吐出される流動体の厚み(高さ)が異なる。本実施形態の吐出システム200では、このような特性を考慮し、吐出対象物に対して吐出される流動体の厚み(吐出厚)を吐出情報として採用している。従って、本発明の吐出システム200によれば、各区間において吐出される流動体の厚み(吐出厚)と流動体の吐出量との関係をユーザが意識することなく直感的に吐出情報を設定するだけで、所望の厚さで流動体を塗布することが可能となる。
また、吐出システム200では、一又は複数の区画を選択しつつ、塗布長さ変更ボタン263を操作することにより、吐出過程の全体の長さや、吐出過程をなす一又は複数の区間の長さを容易かつ適切に変更できる。なお、本実施形態では、塗布長さ変更ボタン263を設け、各区画の長さを調整可能とした例を示したが、本発明はこれに限定されず、塗布長さ変更ボタン263を備えていないものであっても良い。
≪第三実施形態≫
続いて、第三実施形態に係る吐出システム300について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、吐出システム300において、上述した吐出システム10や吐出システム200と共通する部分については同一の符号を付し、詳細な説明については省略する。
吐出システム300は、吐出装置20と、移動装置40と、入出力装置50と、制御装置370とを備えている。吐出システム300は、第一実施形態の吐出システム10と同様に、産業用ロボットを移動装置40として備えており、ロボットアームに吐出装置20を搭載したものとされている。また、吐出システム300に搭載される吐出装置20は、上記第二実施形態において例示した吐出幅可変装置210を具備している。
吐出システム300において、制御装置370は、一軸偏心ねじポンプ30におけるロータ32の回転数(吐出条件a)、吐出幅可変装置210の内筒部286の回転量(吐出条件b)、及び吐出対象物に対するロボットアームのXYZ軸方向への移動量(吐出条件d)についての電子カム関数を設定し、各部の動作制御を行う。制御装置370は、動作開始からの経過時間を仮想主軸として、どのタイミングで、一軸偏心ねじポンプ30の回転数(吐出条件a)、内筒部材240の回転量(吐出条件b)、及び吐出対象物に対する移動量(吐出条件d)をどう変化させるかの関数を記憶している。この関数は、動作開始からの経過時間を横軸とし、吐出条件a,b,dを仮想の電子カム形状に変換したものである。制御装置370は、このようにして設定された関数に基づき、一軸偏心ねじポンプ30及び吐出幅可変装置210の動作制御を行う。
本実施形態の吐出システム300は、吐出幅可変装置210により吐出幅を変動させると共に、移動装置40により吐出対象物に対して吐出装置20を相対移動させつつ、流動体を吐出させることにより、様々なパターンで流動体を吐出対象物に対して吐出(塗布)できる。そのため、吐出システム300によれば、例えば図13〜図15に示すように略十字型のパターンで横に二つ並べて塗布するといったことが可能となる。
また、吐出システム300によれば、図13〜図15に示すような塗布パターンで流動体を吐出対象物に塗布する場合において、例えば左側のパターンの真ん中だけ吐出厚を調整するといったことも、直感的かつ簡単な操作で実現することができる。具体的には、吐出システム300においては、タッチパネル52に図13〜図15に示すようなGUI354が表示される。
GUI354には、吐出対象物に対する流動体の吐出過程を示す情報(以下、「吐出過程情報358」とも称す)が、塗布パターンに対応する形状に表示される。吐出過程情報358は、吐出過程なす区間毎に選択可能とされている。具体的には、図13に示すGUI354に塗布パターンの形状を模して表示された吐出過程情報358において選択したい箇所にタッチしたり、タッチした後にドラッグしたりする操作を行うことで、一又は複数の区間を選択することができる。選択された区間については、例えば図14に示すように線(図示例では破線)で囲んだり、色を変化させたりして選択された状態であることが分かる状態とされる。また、GUI354上においてピンチアウトやピンチインの操作を行うことにより、選択範囲を拡大あるいは縮小できる。
また、第一実施形態のものと同様に、GUI354には、吐出情報表示部355が設けられている。吐出情報表示部355には、選択された区間についての吐出情報が、表示される。図示例では、吐出情報として流動体の塗布高さ(塗布厚)が、初期設定値に対する割合を示す数値により吐出情報表示部355に表示される。
また、上述のようにして一又は複数の区間を選択することにより、選択された区間の吐出情報を変更可能な状態になる。吐出情報を変更するためのものとして、第一実施形態で例示した吐出情報変更部57のように各種のボタン等を設けることも可能であるが、本実施形態では選択された範囲内をタップする操作を行うことにより、吐出情報(塗布厚)を所定量(例えば10%)刻みで増加させることができるようにしている。また、タップ操作を継続することにより塗布厚の最大値(例えば150%)まで到達した場合、次のタップ操作により最小値(例えば50%)に戻るようにしている。
上述したようにして吐出情報を変更すると、その数値が吐出情報表示部355に表示される。これと共に、GUI354に図示されている吐出過程情報358のうち、吐出情報の増減操作対象とされている区間について、その表示色や色合い、濃淡により吐出情報(塗布厚)が直感的に把握できるように表現される。具体的には、図14と図15とを比較して分かるように、吐出情報(塗布厚)が大きくなるのに連れて表示色が濃くなるように表現する等して、吐出情報の大きさを直感的に把握できる状態とされる。
また、GUI354には、塗布パターンに対応する形状に表示された吐出過程情報358を上下左右に移動させるための吐出位置調整ボタン367が設けられている。吐出位置調整ボタン367は、吐出過程情報358をなす図形(図示状態では十文字状の図形)に対し、上下左右の4箇所に設けられた矢印型のボタンである。吐出位置調整ボタン367を操作することにより、吐出対象物に対する流動体の塗布位置を上下左右に調整できる。
また、GUI354には、上位モードボタン368や、リセットボタン369a、元に戻すボタン369bが設けられている。これらのボタンは、上述した上位モードボタン268、リセットボタン269a、元に戻すボタン269bと同様の機能を発揮するものである。
また、吐出情報変更部357には、吐出情報変更ボタン360により入力された情報を確定するための書込ボタン366が設けられている。書込ボタン366を押下することにより、吐出情報変更ボタン360により入力された情報が制御装置370の記憶媒体に書き込まれる。
制御装置370は、上述した第二実施形態の制御装置270と同様に、設定された吐出条件に基づき、吐出装置20、移動装置40、及び吐出幅可変装置210を同期させつつ動作させる制御を行う。制御装置370は、一軸偏心ねじポンプ30におけるロータ32の回転数(吐出条件a)、吐出幅可変装置210の内筒部286の回転量(吐出条件b)、吐出対象物に対するロボットアームのXYZ軸方向への移動量(吐出条件d)を制御する。制御装置370は、動作開始からの経過時間を仮想主軸として、どのタイミングで、一軸偏心ねじポンプ30の回転数(吐出条件a)、内筒部材240の回転量(吐出条件b)、ロボットアームの移動量(吐出条件d)をどう変化させるかの関数を記憶している。この関数は、吐出条件dを横軸とし、吐出条件a,b,dを仮想の電子カム形状に変換した電子カム関数とされている。制御装置370は、このようにして設定された関数に基づき、一軸偏心ねじポンプ30及び吐出幅可変装置210の動作制御を行う。
制御装置370は、間接操作モード、及び直接操作モードの2つの方法で、吐出条件を変更できる。制御装置370による吐出条件の変更方法(操作モード)は、上述した第一実施形態及び第二実施形態の制御装置70,270と同様であるため、詳細の説明については省略する。
上述したように、本実施形態の吐出システム300についても、タッチパネル52を介して各区画の吐出情報を調整するだけで、所望の吐出条件に則って吐出動作を実行できるように、電子カム関数の設定変更を行うことができる。従って、吐出システム300によれば、電子カム曲線をなす関数を直接変更する作業に熟練していないユーザーであっても、複雑な制御のパラメータ等を意識することなく直感的に吐出条件の変更、調整を行える。
本実施形態の吐出システム300では、第一実施形態と同様に移動装置40として産業用ロボットを用いた例を示したが、第二実施形態のようにコンベア装置等を採用したものであっても良い。また、吐出システム300では、タッチパネル52を採用することにより、表示装置及び入力装置の双方の機能を発揮できるようにした例を示したが、例えば表示装置及び入力装置を別々の装置として設ける等しても良い。
上述したように、吐出システム300は、吐出条件の変更を変換処理を経ることなく直接行える直接操作モードを備えたものである。そのため、吐出システム300は、変換処理を経て吐出条件の変更を行った後、さらに詳細な変更を直接操作モードを選択して行うといった使い方等にも対応可能である。なお、本実施形態では、直接操作モードを選択可能とした例を示したが、吐出システム300は、他の実施形態のものと同様に、直接操作モードを選択できないものであっても良い。
また、本実施形態の吐出システム300では、吐出位置調整ボタン367が設けられており、このボタンの操作いにより吐出対象物に対する流動体の吐出位置を調整できる。そのため、吐出システム300によれば、吐出対象物に対する流動体の吐出位置について、直感的かつ適切に調整できる。なお、吐出システム300は、吐出位置調整ボタン367を必ずしも備えていないものであっても良い。
上述した各実施形態の吐出システム10,200,300は、いずれも一軸偏心ねじポンプ30を採用し、一軸偏心ねじポンプ30の回転数を吐出条件として採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、吐出システム10,200,300は、いずれも一軸偏心ねじポンプ30に代えて、他方式の吐出装置を採用したものであってもよい。具体的には、一軸偏心ねじポンプ30に代えて、ギアポンプ式のポンプを採用し、その回転数を吐出条件としても良い。また、一軸偏心ねじポンプ30に代えてエア圧送シリンジ式の吐出装置を採用し、ピストンの押圧に用いるエア量を吐出条件としたり、液滴を飛ばすショット数で吐出量を制御可能なジェット式吐出装置を採用し、ショット数を吐出条件としても良い。
上述した吐出システム10,200,300は、いずれも一つの制御装置70,270,370で吐出装置20の動作制御と、移動装置40,240の制御を行う例を示したが、複数の制御装置を設け各部の制御を行うようにしても良い。具体的には、吐出装置20の動作制御用の制御装置と、移動装置40,240の動作制御用の制御装置とを別に設け、同期用信号の受け渡しにより吐出装置20及び移動装置40,240を同期させつつ制御可能なものとしてもよい。