(本開示の基礎となった第1の知見)
現代社会における鬱等のストレス障害は、日々の生活で蓄積されたストレスが原因で重症化することが多い。このような問題を回避するために、日常生活の中でストレスの蓄積を低減させることが重要となる。つまり、人々が自身のストレス状態をコントロールできることが望ましい。そのために、日常生活におけるストレスの状態をセンシングして、ストレスの強度及びストレスの要因に応じて適切なストレス解消方法及びストレス回避方法などのストレス低減策をユーザに提供することが望ましい。
例えば、特許文献1に記載のストレス判定システムは、加速度センサから得られた情報を基に被測定者の活動強度等を算出し、心拍数、鼓動波形、血圧、血中酸素飽和度、体温、発汗度などの生体指標及び活動強度に基づいて、被測定者のストレス状態を判定する。当該システムでは、活動強度が一定値以下の場合にのみ生体指標を測定することにより、被測定者の日常生活におけるストレス状態を判定している。
しかしながら、特許文献1に記載のストレス判定システムでは、ストレスの有無の判定は可能であるが、ストレスの要因についての情報が得られない。人がストレスを受ける要因、つまり、ストレスの要因は様々である。また、ストレスの要因に応じて最適なストレス解消方法及びストレス回避方法は異なる。特許文献1に記載のストレス判定システムでは、ストレスの要因についての情報が得られないため、ユーザに適切なストレス解消方法及びストレス回避方法を提供することができず、ユーザのストレスの制御を行うには不十分である。
また、特許文献2に記載の生活支援システムは、心電及び脈波等の生体情報だけではなく、被測定者の行動情報を取得して、被測定者の周囲の状況を分析して判断することにより、被測定者にストレス解消方法などを提供する。
しかしながら、特許文献2に記載の生活支援システムでは、被測定者の周囲の状況が同じであっても、被測定者によってストレスの要因が異なる場合があるため、被測定者が実際に感じているストレスの要因を判定することは難しい。そのため、特許文献2に記載の生活支援システムでは、被測定者に不適切なストレス解消方法及びストレス対処行動を提示する危険性がある。
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討をした。検討内容を以下に記す。
本発明者らは、ストレスの要因と、心拍情報などの生体情報から得られる複数種類の生体指標との関連性を見出すために、以下のモニター試験を実施した。
[モニター試験]
20名の被験者に対してストレスの要因が異なる4つのタスクを与え、タスクを実行している被験者の生体信号を測定した。
被験者は、20代から30代の社会人又は大学生の男女であり、健康状態及び精神状態に関するアンケ―トの結果が異常値を示さない20名が選出された。
タスクは、[1]対人に関するストレス、[2]痛みに関するストレス、[3]思考による疲労(以下、思考疲労)に関するストレス1、[4]思考疲労に関するストレス2の4種類である。各タスクは各被験者に対して個別に実施された。タスクの詳細は、以下の通りである。
[1]対人に関するストレス
被験者と初対面の男性1名及び女性1名の合計2名のタスク説明者が、被験者にタスクの説明をした後、被験者にタスクを実行させ、タスク実行中の被験者の生体信号を測定した。具体的には、タスク説明者は、5分間後に模擬の就職面談を行うこと、及び、面談開始までの5分間で話す内容を決定することを被験者に伝えた。生体信号の測定は、会話による動き及びノイズを考慮し、被験者が話す内容を考える5分間に実施した。
[2]痛みに関するストレス
被験者が十分に痛みを感じる程度に調整した電気刺激を、被験者の前腕部に10分間与えた。電気刺激は、約1分間に、ランダムに10回程度実施した。これを10分間繰り返した。生体信号の測定は、電気刺激を開始してから最初の5分間に実施した。
[3]思考疲労に関するストレス1
ディスプレイに表示された2桁又は3桁の掛け算の問題を制限時間内に被験者に解答させた。被験者は、掛け算の問題を暗算し、ディスプレイに表示された3つの選択肢から解答を選択した。問題の難易度及び1問当たりの制限時間は、被験者の暗算能力を事前に測定することにより、決定された。被験者は、このタスクを15分間実行した。生体信号の測定は、被験者がタスクを開始してから最初の5分間に実施した。
[4]思考疲労に関するストレス2
スピーカーから指示されるじゃんけんの問題に対してディスプレイに表示された3つの選択肢から正しいものを制限時間内に被験者に選択させた。1問当たりの制限時間は、被験者の解答能力を事前に測定することにより、決定された。被験者は、このタスクを15分間実行した。生体信号の測定は、被験者がタスクを開始してから最初の5分間に実施した。
上記のモニター試験は、日内変動を考慮し、被験者毎に別日の同時刻に実施した。
被験者の安静時の生体信号は、上記[1]〜[4]の各タスクを実施する前に、タスクを実行する姿勢と同じ姿勢で、5分間測定した生体信号である。この生体信号から生体指標を算出し、生体指標の変化量を算出するための基準値とした。生体指標の変化量は、被験者の安静時の生体指標を基準とするタスク実行中に測定された被験者の生体信号から算出された生体指標である。
測定された生体信号は、心電図(Electrocardiogram:ECG)、呼吸間隔、指先温度(Skin Temperature:SKT)、及び、指先の皮膚コンダクタンス(Skin Conductance:SC)である。これらの生体信号は同時に測定された。そして、各生体信号から複数種類の生体指標を得た。以下、ECGを用いて検討した結果について説明する。
測定されたECGから、連続する2つの心拍のR波のピークの間隔である心拍間隔(R−R intervals:RRI)が算出された(図7の(a)参照)。RRIは、心拍数の指標の1つである。さらに、算出されたRRIから、心拍変動の変動係数(Coefficient of Variation of R−R intervals:CvRR)が算出された。CvRRは、心拍揺らぎの指標の1つである。CvRRは、下記式(1)に示すように、RRIから、任意時間帯におけるRRIの標準偏差SDを任意時間帯におけるRRIの平均値で規格化することにより算出された。
CvRR=任意時間帯における心拍間隔のSD/任意時間帯における心拍間隔の平均 ・・・式(1)
また、連続する各RRIを、時間とRRIとの2軸の関係に変換し、さらに、RRIの等間隔時系列データ(図7の(b)参照)に変換した後に、高速フーリエ変換(Fast
Fourier Transform:FFT)を用いて周波数解析した(図7の(c)参照)。これにより、心拍変動の周波数成分を示す生体指標であるHF(High Frequency)とLF(Low Frequency)とが算出された。HF及びLFは、心拍揺らぎの指標である。HFは、0.14Hz〜0.4Hzの高周波数領域のパワースペクトルの積分値であり、副交感神経の活動量を反映していると考えられている。また、LFは、0.04Hz〜0.14Hzの低周波数領域のパワースペクトルの積分値であり、交感神経及び副交感神経の活動量を反映すると考えられている。なお、FFTを用いた周波数解析を行うデータは、60秒間の心拍変動のデータであり、周波数変換は、5秒間隔で行われた。
被測定者の安静時の生体指標、及び、被測定者がタスクを実行している間に測定された生体指標は、それぞれ測定開始60秒後から240秒間の生体指標の平均値である。また、生体指標の変化量は、被測定者の安静時の生体指標の平均値である基準からの被測定者がタスクを実行している間に測定された生体指標の平均値への変化量である。なお、変化量は、比又は差で表される。生体指標の変化量が比で表される場合、生体指標の変化量は、下記式(2)を用いて算出される。
生体指標の変化量=(タスク実行中の生体指標の平均値−安静時の生体指標の平均値)/安静時の生体指標の平均値 ・・・式(2)
続いて、ストレスの要因を判定する性能の高い生体指標の変化量の組み合わせを検討した。具体的には、算出されたRRI、CvRR、LF、及び、HFのそれぞれの変化量を用いて線形判別分析を行った。
RRI及びCvRRの変化量を用いて線形判別分析を行った結果、判定精度は75.0%であった。したがって、RRIの変化量及びCvRRの変化量を用いると、比較的高い精度でストレスの要因を判定できることが分かった。
また、RRI、LF及びHFの変化量を用いて線形判別分析を行った結果、判定精度は67.5%であった。したがって、RRIの変化量、LFの変化量及びHFの変化量を用いると、比較的良好な精度でストレスの要因を判定できることが分かった。
一方、LF及びHFの変化量を用いて線形判別分析を行った結果、判定精度は46.3%であった。したがって、LFの変化量及びHFの変化量を用いると、RRIの変化量を含む組み合わせに比べて、判定精度が大きく低下した。以上の検討により、RRIの変化量及びCvRRの変化量を用いると、比較的高い精度でストレスの要因を判定できることが分かった。
そこで、生体指標の変化量としてRRIの変化量及びCvRRの変化量を用いてストレスの要因を判定した。図1は、被験者20名それぞれのストレスの要因毎の生体指標の変化量をプロットした図である。思考疲労に関するストレス1及び2は、ともに同様の結果を示したため、思考疲労に関するストレスとして図示した。図1から、生体指標の変化量は、実行されるタスクの種類によって変化の傾向が異なることが分かった。変化の傾向をより明確にするために、被験者20名の生体指標の変化量の平均値を求めた。図2は、被験者20名のストレス要因毎の生体指標の変化量の平均値を示す図である。図2から、ストレスの要因によって生体指標の変化量は、以下の特徴的な変化の傾向を有することが分かった。
ストレスの要因が対人に関する要因である場合、RRIの変化量はマイナス側に大きく移行し(すなわち、心拍数が大きくなり)、CvRRの変化量はプラス側に移行する傾向がある。また、ストレスの要因が痛みである場合、RRIの変化量はプラス側に移行し(すなわち、心拍数が小さくなり)、CvRRの変化量はマイナス側にわずかに移行する傾向がある。また、ストレスの要因が思考疲労である場合、RRIの変化量はマイナス側にごくわずかに移行し(すなわち、心拍数はあまり変化せず)、CvRRの変化量はマイナス側に大きく移行する傾向があることが分かった。
以上の結果により、RRIの変化量とCvRRの変化量とを用いてストレスの要因を判定すると、比較的高い判定精度が得られることが分かった。また、RRIの変化量及びCvRRの変化量は、ストレスの要因によって変化の傾向があることが分かった。これらの変化量の変化の傾向に基づいて、被験者のストレスの要因を容易に、かつ、精度良く判定できることが分かった。
以上の検討結果から、本発明者らは、ストレスの要因によって各生体指標の変化量は所定の変化の傾向を有しており、特に、心拍数及び心拍揺らぎに関する生体指標の変化量の両方を判定の指標に用いることにより、いずれか一方を判定の指標に用いる場合よりも、より正確にストレスの要因を判定できるとの知見を得た。そして、この検討結果を基に、被測定者から得られる複数種類の生体指標の変化量と閾値とを比較することにより、被測定者のストレスの要因及びストレスの強度を判定する装置の発明に想到した。
そこで、本開示は、被測定者のストレスの要因を判定できるストレス評価装置、ストレス評価方法及びプログラムを提供する。
本開示の一態様の概要は、以下の通りである。
本開示の一態様に係るストレス評価装置は、被測定者の心拍数及び心拍揺らぎを測定する第1センサ部と、(i)心拍数の変化量、及び、(ii)心拍揺らぎの変化量を算出する演算部と、(i)前記心拍数の変化量及び(ii)前記心拍揺らぎの変化量に基づいて前記被測定者のストレスの要因を判定し、判定結果に基づく情報を出力する判定部と、を備え、前記心拍数の変化量は、前記被測定者の安静時の心拍数である基準からの前記第1センサ部によって測定された前記心拍数への変化量であり、前記心拍揺らぎの変化量は、前記被測定者の安静時の心拍揺らぎである基準からの前記第1センサ部によって測定された前記心拍揺らぎへの変化量であり、前記判定部は、(I)前記心拍数の変化量と第1の閾値との大小関係の比較、及び、(II)前記心拍揺らぎの変化量と第2の閾値との大小関係の比較を行うことにより、前記ストレスの要因を判定する。
上記構成によれば、被測定者の安静時の各生体指標を基準として各生体指標の変化量を算出するため、各生体指標の推移をより正確に把握することができる。したがって、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記心拍数の変化量は、第1の時間に測定された前記心拍数の変化量であり、前記心拍揺らぎの変化量は、第2の時間に測定された前記心拍揺らぎの変化量であり、前記第1の閾値は、前記被測定者の安静時の心拍数を基準とする、前記第1及び前記第2の時間とは異なる任意の時間に測定された前記心拍数であり、前記第2の閾値は、前記被測定者の安静時の心拍揺らぎを基準とする、前記任意の時間に測定された前記心拍揺らぎであってもよい。
ここで、任意の時間とは、例えば、被測定者がストレスを感じる手前の状態にある時を指す。これにより、第1の閾値及び第2の閾値を正確に設定することができる。例えば、各生体指標の変化量と閾値との大小関係を比較する場合、被測定者の睡眠中又は就寝直前等の所定の時刻に測定した各生体指標を各生体指標の閾値に設定してもよい。これにより、被測定者が任意の時間を都度設定することなく女性の月経変動、又は、経年変動等を考慮した閾値を設定できるため、より正確にストレスの要因を判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記心拍揺らぎは、前記被測定者の心拍間隔を周波数分析して求められてもよい。
これにより、ストレス評価装置は、心拍揺らぎの周波数成分から呼吸間隔及び血圧の情報を得ることができる。したがって、ストレス評価装置は、被測定者の詳細な情報を含む生体指標をストレスの判定のための指標(判定指標)に用いることができるため、被測定者のストレスの要因をより正確に判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記判定部は、前記心拍数の変化量が前記第1の閾値よりも大きく、かつ、前記心拍揺らぎの変化量が前記第2の閾値よりも大きい場合、前記ストレスの要因は、対人に関する要因であると判定してもよい。
上記構成によれば、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因が対人に関する要因であると判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記判定部は、前記心拍数の変化量が前記第1の閾値よりも大きく、かつ、前記心拍揺らぎの変化量が前記第2の閾値よりも小さい場合、前記ストレスの要因は、痛みであると判定してもよい。
上記構成によれば、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因が痛みであると判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記判定部は、前記心拍数の変化量が前記第1の閾値よりも小さく、かつ、前記心拍揺らぎの変化量が前記第2の閾値よりも大きい場合、思考による疲労であると判定してもよい。
上記構成によれば、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因が思考による疲労であると判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、さらに、前記判定部は、前記心拍数の変化量と前記第1の閾値との差、及び、前記心拍揺らぎの変化量と前記第2の閾値との差に応じて、前記ストレスの強度を判定し、判定結果を前記判定結果に基づく前記情報として出力してもよい。
これにより、被測定者は、自身のストレスの強度を知ることができる。これにより、ストレスの制御について意識を持ちやすくなり、自身のストレスに対する傾向を把握しやすくなる。例えば、被測定者は、複数種類のストレスの要因の中でも耐えうるストレスの強度が異なることを認識することができる。これにより、被測定者は、ストレスの状況に応じてストレスの制御がすぐに必要かどうかを判断することができるようになる。そのため、被測定者は、ストレスの制御を効率良く行うことができるため、ストレスの制御を継続して行うことができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置は、さらに、前記判定部によって出力された前記判定結果に基づく前記情報を提示する提示部を備え、前記情報は、前記ストレスの要因、前記ストレスの強度及び前記ストレスの低減策からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
これにより、被測定者は、ストレスを受けた直後に、自身のストレスの状況及びストレスの制御方法を知ることができるため、ストレスの蓄積をより低減することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記提示部は、音声で提示してもよい。
これにより、被測定者は、日常生活を送りながら簡便に自身のストレスの状況及び制御方法を知ることができるため、自身のストレスの制御に対する意識を維持しやすくなる。そのため、被測定者は、自身のストレスの制御を継続して行うことができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記提示部は、画像で提示してもよい。
これにより、被測定者は、視覚的に自身のストレスの状況及び制御方法を知ることができるため、自身のストレスの制御について明確に意識することができる。そのため、被測定者は、自身のストレスの制御を継続して行うことができる。
また、本開示の一態様に係るストレス評価方法は、測定された被測定者の心拍数及び心拍揺らぎを取得する取得ステップと、(i)心拍数の変化量、及び、(ii)心拍揺らぎの変化量を算出する算出ステップと、前記心拍数の変化量及び前記心拍揺らぎの変化量に基づいて前記被測定者のストレスの要因を判定し、判定結果に基づく情報を出力する判定ステップと、を含み、前記心拍数の変化量は、前記被測定者の安静時の心拍数である基準からの前記第1センサ部によって測定された前記心拍数への変化量であり、前記心拍揺らぎの変化量は、前記被測定者の安静時の心拍揺らぎである基準からの前記第1センサ部によって測定された前記心拍揺らぎへの変化量であり、前記判定ステップでは、(I)前記心拍数の変化量と第1の閾値との大小関係を比較し、かつ、(II)前記心拍揺らぎの変化量と第2の閾値との大小関係を比較することにより、前記ストレスの要因を判定する。
上記方法によれば、被測定者の安静時の各生体指標を基準として各生体指標の変化量を算出するため、各生体指標の推移をより正確に把握することができる。そのため、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定することができる。
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。
(実施の形態1)
以下、本実施の形態に係るストレス評価装置、ストレス評価方法及びプログラムについて具体例を挙げて説明する。
[ストレス評価装置の概要]
図3は、本実施の形態に係るストレス評価装置100の概略構成図である。図3に示すように、ストレス評価装置100は、第1センサ部11aと、演算部12と、判定部13と、提示部14と、記憶部15と、を備える。ストレス評価装置100では、例えば、第1センサ部11aは、被測定者の生体信号を測定するウエアラブルの第1生体センサ111a(図4参照)を含む。第1センサ部11aは、第1生体センサ111aで測定された生体信号から複数種類の生体指標を算出し、測定された生体指標として演算部12に出力する。演算部12は、被測定者の安静時の各生体指標の平均値(以下、基準値ともいう)及び各生体指標の閾値を算出し、記憶部15に格納させる。また、演算部12は、測定された各生体指標の平均値及び各生体指標の変化量を算出し、判定部13に出力する。判定部13は、各生体指標の変化量に基づいて被測定者のストレスの要因を判定する。より具体的には、判定部13は、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定する。また、判定部13は、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との差に応じて、ストレスの強度を判定する。そして、判定部13は、これらの判定結果に基づく情報を提示部14に出力する。このとき、判定部13は、判定結果に基づく情報を記憶部15に格納させる。提示部14は、判定結果に基づく情報を提示する。さらに、ストレス評価装置100は、被測定者(ユーザ)の指示を入力する入力部16(図4参照)を備えてもよい。判定部13は、入力部16に入力された被測定者の指示に基づいて判定結果の情報を提示部14に提示させる。
[ストレス評価装置の構成]
本実施の形態に係るストレス評価装置100の構成についてより具体的に説明する。図4は、図3の構成に基づくストレス評価装置の具体例を示す構成図である。
図4に示すように、ストレス評価装置100は、第1生体センサ111aと第1信号処理部112aとを含む第1センサ部11aと、演算部12と、判定部13と、提示部14と、記憶部15と、入力部16と、を備える。
第1生体センサ111aは、被測定者の生体信号を測定する。生体信号は、生体情報の信号である。生体情報は、例えば、心拍、脈拍、呼吸数、血中酸素飽和度、血圧、又は、体温などのストレスにより影響を受ける生理学的な情報である。測定の容易性から、生体情報は、例えば、心拍情報である。心拍情報とは、心拍から得られる情報である。また、生体情報は、脈波情報であってもよい。
第1生体センサ111aは、心拍情報又は脈波情報を取得するセンサである。第1生体センサ111aが心拍情報を取得するセンサ(以下、心拍センサ)である場合、心拍センサは、例えば、被測定者の体の表面に接触する一対の検出電極を備えるセンサである。心拍センサにより得られる心拍情報は、心臓の拍動により得られる電気信号であり、例えば、心電図である。心拍センサは、導電性粘着ゲル電極であってもよく、導電性繊維などで構成されるドライ電極であってもよい。心拍センサの装着部位は、胸部であり、心拍センサの形状は、例えば、ウエアと電極とが一体となったウエア型である。
第1生体センサ111aが脈波情報を取得するセンサ(以下、脈波センサ)である場合、脈波センサは、例えば、フォトトランジスタ及びフォトダイオードにより血管中の血液量の変化を反射光又は透過光により測定するセンサである。脈波センサは、ユーザの手首に装着され、当該装着された形状で脈波情報を測定する。脈波センサの装着部位は、足首、指、上腕などでもよい。脈波センサの形状は、バンド型(例えば、腕時計型)に限定されず、頸部等に貼り付ける貼付型、メガネ型などであってもよい。また、脈波センサは、顔又は手などの皮膚の色度の変化から脈波情報を測定して脈拍を算出する画像センサであってもよい。
第1生体センサ111aで測定された生体信号は、第1信号処理部112aに出力される。
第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aで測定された1つの生体信号から複数種類の生体指標を算出する。本実施の形態では、生体指標1及び生体指標2の2種類の生体指標が算出される。上述したように、生体信号が心電図の場合、複数種類の生体指標は、RRI、CvRR、HF及びLFなどである。RRIは、心拍数の指標であり、CvRR、HF及びLFは、心拍揺らぎの指標である。さらに、第1信号処理部112aは、心拍揺らぎの周波数成分から呼吸数及び血圧の変動の生体指標を算出してもよい。また、これらの複数種類の生体指標のうち判定精度が比較的高い組み合わせは、RRI及びCvRRである。したがって、本実施の形態では、生体指標1及び生体指標2は、それぞれRRI及びCvRRである例について説明する。なお、RRI及びCvRRの算出方法については、モニター試験にて上述した通りである。第1信号処理部112aは、算出された生体指標1及び生体指標2を演算部12に出力する。
演算部12は、第1信号処理部112aが出力した生体指標1及び生体指標2を取得し、取得した生体指標1及び生体指標2から生体指標1の変化量及び生体指標2の変化量を算出する。生体指標の変化量は、被測定者の安静時に測定された生体指標(以下、基準値と称する場合がある。)を基準とする測定された生体指標であり、差又は比で表される。各生体指標の基準値は、記憶部15に格納されている。演算部12は、記憶部15に格納された生体指標1及び生体指標2の基準値を読み出し、当該基準値に対する生体指標1及び生体指標2の変化量を算出する。演算部12は、算出した各生体指標の変化量を判定部13に出力する。なお、基準値は、季節又は被測定者の生理周期などにより変動する場合があるため、所定の期間毎に更新されてもよい。
また、演算部12は、各生体指標の閾値を算出する。生体指標1が、例えば、心拍数である場合、心拍数の変化量は、第1の時間に測定された心拍数の変化量である。第1の閾値は、生体指標1の閾値であり、例えば、心拍数の指標であるRRIの閾値である。第1の閾値は、被測定者の安静時の心拍数を基準とする、任意の時間に測定された心拍数である。また、生体指標2が、例えば、心拍揺らぎである場合、心拍揺らぎの変化量は、第2の時間に測定された心拍揺らぎの変化量である。第2の閾値は、生体指標2の閾値であり、例えば、心拍揺らぎの指標であるCvRRの閾値である。第2の閾値は、被測定者の安静時の心拍数を基準とする、任意の時間に測定された心拍揺らぎである。つまり、これらの閾値は、第1の時間及び第2の時間とは異なる任意の時間に測定された生体指標の測定値と基準値との差又は比である生体指標の変化量である。ここで、任意の時間とは、例えば、被測定者がストレスを感じる手前の状態にある時を指す。
以下、本実施の形態では、第1の時間及び第2の時間は、同じ時間である場合について説明するが、第1の時間及び第2の時間は異なる時間であってもよい。例えば、第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aで測定された1つの生体信号から時分割で複数種類の心拍数及び心拍揺らぎを算出してもよい。このとき、演算部12は、第1の時間に測定された心拍数の変化量を算出し、第1の時間とは異なる第2の時間に測定された心拍揺らぎの変化量を算出する。
演算部12は、記憶部15に格納された各生体指標の閾値を読み出し、各生体指標の変化量と閾値との大小関係を比較する。そして、演算部12は、各生体指標の変化量の少なくとも1つが閾値を一定時間超えている期間をストレス発生期間と判定する。ストレス発生期間とは、被測定者がストレスを感じた期間である。演算部12は、ストレス発生期間中の各生体指標の変化量から各生体指標の変化量の代表値を算出する。例えば、ストレス発生期間における各生体指標の変化量の代表値は、ストレス発生期間中の各生体指標の変化量の平均値を用いてもよく、基準値からの差分が最も大きい値(最大値)を用いてもよい。
判定部13は、演算部12が出力した生体指標1及び生体指標2の変化量の代表値を取得し、記憶部15に格納された第1の閾値及び第2の閾値を読み出す。判定部13は、ストレス発生期間における生体指標1の変化量の代表値と第1の閾値との大小関係を比較し、かつ、生体指標2の変化量の代表値と第2の閾値との大小関係を比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する。つまり、判定部13は、ストレス発生期間毎にストレスの要因を判定する。生体指標の変化量の代表値は、生体指標の変化量の一例であると言えるため、以下、生体指標の変化量の代表値を単に生体指標の変化量とも呼ぶ。
具体的には、判定部13は、生体指標1(ここでは、心拍数)の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、生体指標2(ここでは、心拍揺らぎ)の変化量が第2の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、対人に関する要因であると判定する。また、判定部13は、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも小さい場合、ストレスの要因は、痛みであると判定する。また、判定部13は、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも小さく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、思考による疲労であると判定する。
さらに、判定部13は、生体指標1の変化量と第1の閾値との差、及び、生体指標2の変化量と第2の閾値との差に応じて、ストレスの強度を判定し、判定結果を当該判定結果に基づく情報として出力する。判定結果に基づく情報は、例えば、ストレスの要因、ストレスの強度及びストレスの低減策の少なくとも1つを含む。ストレスの低減策は、例えば、ストレスの解消方法又はストレスの回避方法などである。ストレスの低減策は、後述する提示情報テーブルに含まれる。判定部13は、記憶部15に格納された提示情報テーブルから適切なストレス低減策を読み出し、提示部14に出力する。
また、判定部13は、判定結果に基づく情報を記憶部15に格納する。このとき、判定部13は、被測定者がストレスを感じた時間の情報と上記判定結果に基づく情報とを紐づけして記憶部15に格納してもよい。
提示部14は、判定部13によって出力された上記判定結果に基づく情報を提示する。提示部14は、上記判定結果に基づく情報を音声で提示してもよく、画像で提示してもよい。提示部14が上記情報を音声で提示する場合は、提示部14は、例えば、スピーカーである。また、提示部14が上記情報を画像で提示する場合は、提示部14は、例えば、ディスプレイである。
記憶部15は、各生体指標の基準値、各生体指標の閾値、及び、提示情報テーブルなどを格納する。提示情報テーブルは、ストレスの要因及び当該ストレスの強度に応じて提示されるストレス低減策などの提示情報のテーブルである。上述したように、各生体指標の基準値及び閾値は、所定の期間で更新されてもよい。なお、提示情報テーブルも同様に、所定の期間で更新されてもよい。
また、記憶部15は、判定部13が出力したストレスの要因、ストレスの強度及びストレス低減策などの判定結果に基づく情報を格納する。このとき、記憶部15は、判定結果に基づく情報とストレス発生期間とを紐付けて格納してもよい。これにより、被測定者は、所望のタイミングで判定結果に基づく情報を呼び出すことができる。このとき、判定部13は、入力部16により入力された被測定者の操作に基づいて、判定結果に基づく情報を提示部14に提示させる。
入力部16は、被測定者による操作を示す操作信号を判定部13に出力する。入力部16は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、又は、マイクなどである。操作信号とは、判定結果に基づく情報の抽出方法又は提示部14における提示方法などの設定を行う信号である。提示部14には、入力部16に入力された設定に基づき、様々な形式の判定結果が提示される。例えば、所定の期間におけるストレスの変化、被測定者が影響を受けやすいストレスの要因、及び、被測定者に適したストレス低減策などである。これにより、被測定者は、短期的なストレスの傾向を把握できるだけでなく、中期的及び長期的なストレスの傾向を把握することができる。このように、被測定者は、自己に適した効果的なストレス低減策を知ることができるため、中長期的なストレスを制御することができる。
[ストレス評価方法]
次に、本実施の形態に係るストレス評価方法について図5を用いて具体的に説明する。図5は、実施の形態に係るストレス評価方法を説明するフローチャートである。
本実施の形態に係るストレス評価方法は、測定された被測定者の心拍数及び心拍揺らぎを取得する取得ステップS10と、(i)心拍数の変化量、及び、(ii)心拍揺らぎの変化量を算出する算出ステップS20と、心拍数の変化量及び心拍揺らぎの変化量に基づいて被測定者のストレスの要因を判定し、判定結果に基づく情報を出力する判定ステップS30と、を含む。心拍数の変化量は、被測定者の安静時の心拍数である基準からの第1センサ部11aによって測定された心拍数への変化量であり、心拍揺らぎの変化量は、被測定者の安静時の心拍揺らぎである基準からの第1センサ部11aによって測定された心拍揺らぎへの変化量である。判定ステップS30では、(I)前記心拍数の変化量と第1の閾値との大小関係を比較し、かつ、(II)前記心拍揺らぎの変化量と第2の閾値との大小関係を比較することにより、前記ストレスの要因を判定する。本実施の形態では、さらに、判定ステップS30の判定結果に基づく情報を提示する提示ステップS40を含む。
以下、各ステップについてより具体的に説明する。
まず取得ステップS10では、演算部12は、第1センサ部11aで測定された被測定者の複数種類の生体指標(ここでは、心拍数及び心拍揺らぎ)を取得する。第1センサ部11aでは、第1生体センサ111aで心拍情報(ここでは、心電図)が測定され、第1信号処理部112aで、心拍数の指標及び心拍揺らぎの指標などの生体指標が算出される。なお、上述した通り、生体情報は、心拍情報に限られず、脈波情報などのストレスで影響を受ける生理学的な情報であってもよい。特に、心拍情報は、ウエアラブルな生体センサを用いた場合、脈拍、呼吸数、血圧、及び血中酸素飽和度などの他の生体情報よりも被測定者の負担が少ない状態で簡便に、かつ、リアルタイムに測定することができる。そのため、生体情報として被測定者の心拍情報を用いることにより、被測定者のストレスの状態を適切に評価することができる。
心拍情報から得られる生体指標は、心拍数の指標であるRRI、心拍揺らぎの指標であるCvRR、LF、HF、及び、LF/HFなどである。このように1つの生体情報から複数種類の生体指標が得られる。また、上述したように、これらの生体指標の組み合わせにより、比較的高い判定精度でストレスの要因を判定することができるため、信頼性の高い評価が得られる。
図6は、本実施の形態に係るストレス評価装置100の第1センサ部11aで得られる心拍情報の一例を示す図である。心拍情報は、例えば、心電図であり、図6に示す心電波形となる。心電波形は、心房の電気的興奮を反映するP波と、心室の電気的興奮を反映するQ波、R波、及びS波と、興奮した心室の心筋細胞が再分極する過程を反映するT波とから構成されている。これらの心電波形のうち、R波の波高(電位差)が最も大きく、筋電位などのノイズに対して最も頑健である。そのため、これらの心電波形における連続する2つの心拍のR波のピークの間隔、つまり、心拍間隔(RRI)を算出する。心拍数は、RRIの逆数に60を乗じて算出される。
さらに、モニター試験で上述した通り、CvRRは、上記式(2)を用いて、RRIから、任意時間帯におけるRRIの標準偏差SDを心拍間隔の平均値で規格化することにより算出される。
第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aで得られた心拍情報から、左心室が急激に収縮して心臓から血液を送り出す際に発生する電気信号(R波)を検出し、RRIを算出する。なお、R波の検出には、例えば、Pan&Tompkins法などの公知の手法が用いられる。
次に、演算部12において検出されたR波から心拍間隔(RRI)の変動量を算出する方法について説明する。
図7は、心拍間隔(RRI)の変動量を算出する手法を説明する図である。第1信号処理部112aは、得られたR波の検出データから、以下のように、RRIの変動量を算出する。
図7の(a)に示すように、第1信号処理部112aは、連続する2つの心拍のR波のピークの間隔であるRRIを算出する。第1信号処理部112aは、算出された各RRIを時間とRRIとの2軸の関係に変換する。変換されたデータは不等間隔の離散的なデータであるため、演算部12は、変換されたRRIの時系列データを、図7の(b)に示す等間隔時系列データに変換する。次いで、演算部12は、この等間隔時系列データに対して、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数解析することにより、図7の(c)に示す心拍変動の周波数成分を求める。
心拍変動の周波数成分は、例えば、高周波成分HFと低周波成分LFとに分けることができる。モニター試験で上述した通り、HFは、副交感神経活動量を反映していると考えられる。また、LFは、交感神経及び副交感神経の活動量を反映すると考えられている。そのため、LFとHFとの比であるLF/HFは、交感神経活動量を示すと考えられる。
このように、第1センサ部11aでは、心拍情報から複数種類の生体指標が算出される。
取得ステップS10では、演算部12にて、これらの生体指標から2種類の生体指標(ここでは、心拍数及び心拍揺らぎ)を取得する。
次いで、算出ステップS20では、演算部12にて、取得ステップS10で取得された2種類の生体指標の変化量を算出する。各生体指標の変化量は、上述した通り、被測定者の安静時の各生体指標の値を基準値として、各生体指標の基準値と取得された各生体指標の値との比又は差を算出して得られる。演算部12は、記憶部15に格納された各生体指標の基準値を読み出して使用する。
なお、各生体指標の変化量は、例えば、変化量が差で表される場合は、取得ステップS10で取得された各生体指標の値から各生体指標の基準値を差し引くことにより算出される。例えば、心拍数の変化量は、取得ステップS10で取得された被測定者の心拍数の値から心拍数の基準値を差し引くことにより算出される。また、変化量が比で表される場合は、取得ステップS10で取得された各生体指標の値を各生体指標の基準値で割ることにより算出される。例えば、心拍数の変化量は、取得ステップS10で取得された被測定者の心拍数の値を心拍数の基準値で割ることにより算出される。
以上のように、算出ステップS20では、演算部12にて、各生体指標の変化量を算出する。
次いで、判定ステップS30では、判定部13にて、算出ステップS20で算出された各生体指標の変化量に基づいてストレスの要因を判定する。判定部13は、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する。具体的には、判定ステップS30では、判定部13は、心拍数の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、心拍揺らぎの変化量が第2の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、対人に関する要因であると判定する。また、判定部13は、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも小さい場合、ストレスの要因は、痛みであると判定する。また、判定部13は、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも小さく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、思考による疲労であると判定する。
さらに、判定部13は、生体指標1の変化量と第1の閾値との差、及び、生体指標2の変化量と第2の閾値との差に応じて、ストレスの強度を判定し、判定結果を当該判定結果に基づく情報として出力する。
なお、第1の閾値は、心拍数の閾値であり、被測定者の安静時の心拍数を基準とする、第1の時間及び第2の時間とは異なる任意の時間に測定された心拍数である。第2の閾値は、心拍揺らぎの閾値であり、被測定者の安静時の心拍揺らぎを基準とする、第1の時間及び第2の時間とは異なる任意の時間に測定された心拍揺らぎである。これらの閾値は、演算部12にて算出され、記憶部15に格納される。判定部13は、記憶部15に格納された各生体指標の閾値を読み出して使用する。上述したように、任意の時間とは、例えば、被測定者がストレスを感じる手前の状態にある時を指す。
各生体指標の閾値は、各生体指標の変化量が正の値である場合の閾値と、各生体指標の変化量が負の値である場合の閾値とが設定される。基準値は変化量のゼロ点である。各生体指標の変化量と閾値との大小関係は、以下のように比較される。生体指標の変化量が正の値である場合、生体指標の変化量と正の閾値との大小関係を比較する。また、生体指標の変化量が負の値である場合、生体指標の変化量の絶対値と負の閾値の絶対値との大小関係を比較する。なお、各生体指標の閾値は、固定値であってもよく、所定の期間で更新されてもよく、日々の測定に基づいて都度更新されてもよい。
なお、閾値は、線形判別又は決定木等の比較的単純な機械学習によって算出されてもよい。これにより、被測定者に適した判定基準値及び閾値を設定できるため、ストレスの要因をより精度良く判定することができる。
以上のように、判定ステップS30では、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する。
次いで、提示ステップS40では、提示部14にて、判定部13で判定された判定結果に基づく情報を提示する。提示部14は、判定結果に基づく情報を音声で提示してもよく、画像で提示してもよい。判定結果に基づく情報は、ストレスの要因、ストレスの強度及びストレスの低減策の少なくとも1つを含む。提示部14は、被測定者が入力部16で入力した設定に基づき、様々な形式の判定結果を表示する。
[ストレス評価装置の使用例]
次に、本実施の形態に係るストレス評価装置100の使用例について具体的に説明する。図8は、本実施の形態に係るストレス評価装置100の使用例を説明する図である。
図8に示すように、ストレス評価装置100は、第1センサ部11aの一部である第1生体センサ111aと、第1生体センサ111a以外の構成を含む評価端末20とから構成される。被測定者は、第1生体センサ111aを胸部の肌に接触するように装着し、心電図(ECG)を測定する。第1生体センサ111aは、導電性粘着ゲル電極であってもよく、導電性繊維などで構成されるドライ電極であってもよい。第1生体センサ111aは、測定した心拍の電気信号を、通信により評価端末20に送信する。通信方法は、Bluetooh(登録商標)などの無線通信であってもよく、有線通信であってもよい。
評価端末20は、第1センサ部11aの第1信号処理部112a、演算部12、判定部13、提示部14、記憶部15及び入力部16を備える。第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aから通信により送信された心拍の電気信号を受信する。第1信号処理部112aは、受信した心拍の電気信号から心拍数の指標であるRRI及び心拍揺らぎの指標であるCvRRを算出し、これらの生体指標を演算部12に出力する。
演算部12は、第1信号処理部112aが出力したRRI及びCvRRを取得し、記憶部15に格納されたRRIの基準値及びCvRRの基準値を読み出す。演算部12は、読み出した基準値を基準とする、これらの生体指標である生体指標の変化量をそれぞれ算出する。生体指標の変化量は、差又は比で表される。本実施の形態では、当該変化量は、比で表される。
また、上述した通り、演算部12は、各生体指標の閾値を算出し、記憶部15に出力する。各生体指標の閾値は、各生体指標の変化量が正の値になる場合の閾値と、各生体指標の変化量が負の値になる場合の閾値とが設定される。基準値は変化量ゼロである。具体的には、各生体指標の変化量が正の値になる場合、正の閾値は、基準値よりも大きい値であり、変化量のグラフ120中の第1の閾値1a(以下、正の閾値1a)及び第2の閾値2a(以下、正の閾値2a)である。各生体指標の変化量が負の値になる場合、負の閾値は、基準値よりも小さい値であり、変化量のグラフ120中の第1の閾値1b(以下、負の閾値1b)及び第2の閾値2b(以下、負の閾値2b)である。また、演算部12は、各生体指標の基準値を算出し、記憶部15に出力する。各生体指標の基準値は、各生体指標の変化量がゼロである。例えば、変化量のグラフ120では、基準値は、正の閾値1a及び負の閾値1bの間の実線である。なお、正の閾値及び負の閾値は、基準値(変化量ゼロ)を挟んで等間隔に設定されてもよく、基準値を挟んで等間隔に設定されなくてもよい。これらの閾値は、各生体指標の変化量の大きさに応じて、適宜設定されてもよい。
判定部13は、演算部12が出力した各生体指標の変化量を取得し、記憶部15に格納された各生体指標の閾値を読み出す。判定部13は、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較し、ストレスの要因を判定する。例えば、各生体指標の変化量が正の値である場合、判定部13は、各生体指標の変化量と正の閾値との大小関係を比較する。また、各生体指標の変化量が負の値である場合、判定部13は、各生体指標の変化量の絶対値と負の閾値の絶対値との大小関係を比較する。以下、変化量のグラフ120及び判定表130を用いて、より具体的に説明する。
変化量のグラフ120に示すように、期間A1では、RRIの変化量の絶対値は、負の閾値1bの絶対値よりも大きく、かつ、CvRRの変化量は、正の閾値2aよりも大きい。よって、判定部13は、被測定者が期間A1で感じたストレスの要因は、対人に関する要因であると判定する。また、期間B1では、RRIの変化量は、正の閾値1aよりも大きく、かつ、CvRRの変化量の絶対値は、負の閾値2bの絶対値よりも小さい。よって、判定部13は、被測定者が期間B1で感じたストレスの要因は、痛みであると判定する。また、期間C1では、RRIの変化量の絶対値は、負の閾値1bの絶対値よりも小さく、かつ、CvRRの変化量の絶対値は、負の閾値2bの絶対値よりも大きい。よって、判定部13は、被測定者が期間C1で感じたストレスの要因は、思考による疲労(思考疲労)であると判定する。
判定表130では、矢印の向き及び本数で、基準値(変化量ゼロ)に基づく各生体指標の変化量の推移を示している。横向きの矢印は、生体指標の変化量が閾値を超える変化を伴わないことを示している。
さらに、判定部13は、RRIの変化量の絶対値と第1の閾値の絶対値との差、及び、CvRRの変化量の絶対値と第2の閾値の絶対値との差に応じて、ストレスの強度を判定する。
判定部13は、これらの判定結果に基づく情報を提示部14に出力する。提示部14は、例えば、スマートフォンのディスプレイである。また、判定部13は、被測定者は、所望のタイミングで判定結果に基づく情報を呼び出すことができる。このとき、判定部13は、タッチパネルなどの入力部16により入力された被測定者の操作に基づいて、判定結果に基づく情報を提示部14に提示させる。例えば、被測定者が評価端末20の入力部16で必要な情報を抽出する指示を入力すると、判定部13は、被測定者の指示に基づいて提示部14に提示情報140を提示する。提示情報140は、被測定者がストレスを感じた時間、ストレスの要因、及びストレスの低減策を含んでいる。ストレスの低減策は、例えば、ストレスの要因に応じたストレス解消方法又はストレス回避方法を提案するメッセージである。当該メッセージは、例えば、ストレスの要因が思考疲労である場合、少し休憩しましょう、又は、ストレッチをしましょう、などであり、対人に関わる要因である場合、少し瞑想しましょう、又は、深呼吸をしましょう、などである。
以上のように、本実施の形態によれば、被測定者が日常生活を送りながら簡便に、かつ、正確に、ストレスの要因を判定することができる。そのため、被測定者は、従来よりも正確に自身のストレス状態及び適切なストレス低減策を把握することができる。これにより、被測定者は、適切に、かつ、効率良く、自身のストレスの制御を行うことができるため、ストレスの制御を継続して行うことができる。
(本開示の基礎となった第2の知見)
本発明者らは、本開示の基礎となった第1の知見に記載の上記課題に鑑みて鋭意検討をした。検討内容を以下に記す。
本発明者らは、ストレスの要因と、心拍情報及び発汗情報などの生体情報から得られる生体指標との関連性を見出すために、以下のモニター試験を実施した。
[モニター試験]
20名の被験者に対してストレスの要因が異なる4つのタスクを与え、タスクを実行している被験者の生体信号を測定した。
被験者は、20代から30代の社会人又は大学生の男女であり、健康状態及び精神状態に関するアンケ―トの結果が異常値を示さない20名が選出された。
タスクは、[1]対人に関するストレス、[2]痛みに関するストレス、[3]思考による疲労(以下、思考疲労)に関するストレス1、[4]思考疲労に関するストレス2の4種類である。各タスクは各被験者に対して個別に実施された。タスクの詳細は、第1の知見に記載のモニター試験と同様であるため、ここでの記載を省略する。
上記のモニター試験は、日内変動を考慮し、被験者毎に別日の同時刻に実施した。
被験者の安静時の生体信号は、上記[1]〜[4]の各タスクを実施する前に、タスクを実行する姿勢と同じ姿勢で、5分間測定した生体信号である。この生体信号から生体指標を算出し、生体指標の変化量を算出するための基準値とした。生体指標の変化量は、被験者の安静時の生体指標を基準とするタスク実行中に測定された被験者の生体信号から算出された生体指標である。
測定された生体信号は、心電図(Electrocardiogram:ECG)、呼吸間隔、指先温度(Skin Temperature:SKT)、及び、指先の皮膚コンダクタンス(Skin Conductance:SC)である。これらの生体信号は同時に測定された。そして、各生体信号から複数種類の生体指標を得た。
生体指標の算出方法は、各生体指標により様々である。例えば、生体指標がSKTである場合、SKTは、指先の温度を任意の区間で平均化して得られる。なお、CvRR、HF、LFについても、上述した通りであるため、ここでの記載を省略する。
続いて、ストレスの要因を判定する性能の高い生体指標の変化量の組み合わせを検討した。具体的には、算出されたRRI、CvRR、LF、HF、SC、及び、SKTのそれぞれの変化量を用いて線形判別分析を行った。これら全ての生体指標の変化量を用いて線形判別分析を行った結果、判定精度は約81.3%であった。また、より単純な決定木による判別では、判定精度は77.5%であった。
また、RRI、CvRR、及びSCの変化量を用いて線形判別分析を行った結果、判定精度は81.3%であり、決定木による判別では、判定精度は66.3%であった。したがって、ストレス要因の判定に用いる生体指標の変化量の数を3つに減らしても、比較的高い判定精度を保つことが分かった。
一方、例えば心拍数の生体指標であるRRIを除き、CvRR及びSCの変化量を用いて線形判別分析を行った結果、判定精度は62.5%であった。したがって、ストレス要因の判定に用いる生体指標の変化量から心拍数の指標であるRRIの変化量を除くと、判定精度が著しく低下することが分かった。
そこで、生体指標の変化量としてRRIの変化量、CvRRの変化量及びSCの変化量を用いてストレスの要因を判定した。図9Aは、被験者20名それぞれのストレスの要因毎の生体指標の変化量をプロットした図である。図9Bは、図9AをRRIの変化量を示す軸のプラス側から見た図である。図9Cは、図9AをCvRRの変化量を示す軸のマイナス側から見た図である。図9Dは、図9AをSCの変化量を示す軸のマイナス側から見た図である。
図9A〜図9Dから、生体指標の変化量は、実行されるタスクの種類によって変化の傾向が異なることが分かった。変化の傾向をより明確にするために、被験者20名の生体指標の変化量の平均値を求めた。図10Aは、図9Aにプロットした被験者20名のストレス要因毎の生体指標の変化量の平均値を示す図である。図10Bは、図10AをRRIの変化量を示す軸のプラス側から見た図である。図10Cは、図10AをCvRRの変化量を示す軸のマイナス側から見た図である。図10Dは、図10AをSCの変化量を示す軸のマイナス側から見た図である。図10A〜図10Dから、ストレスの要因によって生体指標の変化量は、以下の特徴的な変化の傾向を有することが分かった。
ストレスの要因が対人に関する要因である場合、RRIの変化量はマイナス側に大きく移行し(すなわち心拍数が大きくなり)、CvRRの変化量はプラス側に移行し、SCの変化量はプラス側に移行する傾向がある。また、ストレスの要因が痛みである場合、RRIの変化量はプラス側に移行し(すなわち心拍数が小さくなり)、CvRRの変化量はマイナス側にわずかに移行し、SCの変化量はプラス側に大きく移行する傾向がある。また、ストレスの要因が思考疲労である場合、RRIの変化量はマイナス側にごくわずかに移行し(すなわち心拍数はあまり変化せず)、CvRRの変化量はマイナス側に大きく移行し、SCの変化量はプラス側に移行する傾向があることが分かった。
以上の結果により、RRIの変化量、CvRRの変化量、及び、SCの変化量を用いてストレスの要因を判定すると、比較的高い判定精度が得られることが分かった。また、これらの変化量は、ストレスの要因によって変化の傾向があることが分かった。これらの変化量の変化の傾向に基づいて、被験者のストレスの要因を容易に、かつ、精度良く判定できることが分かった。
以上の検討結果から、本発明者らは、ストレスの要因によって各生体指標の変化量は所定の変化の傾向を有しており、特に、(i)心拍数、(ii)心拍揺らぎ、及び、(iii)皮膚コンダクタンス又は皮膚温度に関する生体指標の変化量を判定の指標に用いることにより、比較的高い精度でストレスの要因を判別できるとの知見を得た。そして、この検討結果を基に、被測定者から得られる複数種類の生体指標の変化量と閾値とを比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する装置の発明に結実した。
そこで、本開示は、被測定者のストレスの要因を判定できるストレス評価装置、ストレス評価方法及びプログラムを提供する。
本開示の一態様の概要は、以下の通りである。
本開示の一態様に係るストレス評価装置は、さらに、前記被測定者の皮膚コンダクタンス又は皮膚温度の少なくとも一方を測定する第2センサ部を備え、前記演算部は、さらに、(iii)皮膚コンダクタンスの変化量、又は、皮膚温度の変化量を算出し、前記皮膚コンダクタンスの変化量は、前記被測定者の安静時の皮膚コンダクタンスである基準からの前記第2センサ部によって測定された前記皮膚コンダクタンスへの変化量であり、前記皮膚温度の変化量は、前記被測定者の安静時の皮膚温度である基準からの前記第2センサ部によって測定された前記皮膚温度への変化量であり、前記判定部は、前記(I)及び前記(II)に加えて、(III)前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量と第3の閾値との大小関係の比較も行うことにより、前記被測定者のストレスの要因を判定し、判定結果に基づく情報を出力する。
上記構成によれば、被測定者の安静時の各生体指標を基準として各生体指標の変化量を算出するため、各生体指標の推移をより正確に把握することができる。したがって、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記心拍数の変化量は、第1の時間に測定された前記心拍数の変化量であり、前記心拍揺らぎの変化量は、第2の時間に測定された前記心拍揺らぎの変化量であり、前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量は、第3の時間に測定された皮膚コンダクタンス又は前記皮膚温度の変化量であり、前記第1の閾値は、前記被測定者の安静時の心拍数を基準とする、前記第1、前記第2及び前記第3の時間とは異なる任意の時間に測定された前記心拍数であり、前記第2の閾値は、前記被測定者の安静時の心拍揺らぎを基準とする、前記任意の時間に測定された前記心拍揺らぎであり、前記第3の閾値は、前記被測定者の安静時の皮膚コンダクタンスを基準とする、前記任意の時間に測定された前記皮膚コンダクタンス、又は、前記被測定者の安静時の皮膚温度を基準とする、前記任意の時間に測定された前記皮膚温度であってもよい。
ここで、任意の時間とは、例えば、被測定者がストレスを感じる手前の状態にある時を指す。これにより、第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値を正確に設定することができる。
例えば、各生体指標の変化量と閾値との大小関係を比較する場合、被測定者の睡眠中又は就寝直前等の所定の時刻に測定した各生体指標を各生体指標の閾値に設定してもよい。これにより、被測定者が任意の時間を都度設定することなく、女性の月経変動、又は、経年変動等を考慮した閾値を設定できるため、より正確にストレスの要因を判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記心拍揺らぎは、前記被測定者の心拍間隔を周波数分析して求められてもよい。
これにより、ストレス評価装置は、心拍揺らぎの周波数成分から呼吸間隔及び血圧の情報を得ることができる。これにより、ストレス評価装置は、被測定者の詳細な情報を含む生体指標を判定指標に用いることができるため、被測定者のストレスの要因をより正確に判定することができる。
これにより、ストレス評価装置は、心拍揺らぎの周波数成分から呼吸間隔及び血圧の情報を得ることができる。したがって、ストレス評価装置は、被測定者の詳細な状態を含む生体指標をストレスの判定のための指標(判定指標)に用いることができるため、被測定者のストレスの要因をより正確に判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記判定部は、前記心拍数の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、前記心拍揺らぎの変化量が第2の閾値よりも大きく、かつ、前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量が第3の閾値よりも大きい場合、前記ストレスの要因は、対人に関する要因であると判定してもよい。
上記構成によれば、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因が対人に関する要因であると判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記判定部は、前記心拍数の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、前記心拍揺らぎの変化量が第2の閾値よりも小さく、かつ、前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量が第3の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、痛みであると判定してもよい。
上記構成によれば、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因が痛みであると判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記判定部は、前記心拍数の変化量が第1の閾値よりも小さく、かつ、前記心拍揺らぎの変化量が第2の閾値よりも大きく、かつ、前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量が第3の閾値よりも小さい場合、ストレスの要因は、思考による疲労であると判定してもよい。
上記構成によれば、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因が思考による疲労であると判定することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、さらに、前記判定部は、前記心拍数の変化量と前記第1の閾値との差、前記心拍揺らぎの変化量と前記第2の閾値との差、及び、前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量と前記第3の閾値との差に応じて、前記ストレスの強度を判定し、判定結果を前記判定結果に基づく前記情報として出力してもよい。
これにより、被測定者は、自身のストレスの強度を知ることができる。これにより、ストレスの制御について意識を持ちやすくなり、自身のストレスに対する傾向を把握しやすくなる。例えば、被測定者は、複数種類のストレスの要因の中でも耐えうるストレスの強度が異なることを認識することができる。これにより、被測定者は、ストレスの状況に応じてストレスの制御がすぐに必要かどうかを判断することができるようになる。そのため、被測定者は、ストレスの制御を効率良く行うことができるため、ストレスの制御を継続して行うことができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置は、さらに、前記判定部によって出力された前記判定結果に基づく前記情報を提示する提示部を備え、前記情報は、前記ストレスの要因、前記ストレスの強度及び前記ストレスの低減策からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
これにより、被測定者は、ストレスを受けた直後に、自身のストレスの状況及びストレスの制御方法を知ることができるため、ストレスの蓄積をより低減することができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記提示部は、音声で提示してもよい。
これにより、被測定者は、日常生活を送りながら簡便に自身のストレスの状況及び制御方法を知ることができるため、自身のストレスの制御に対する意識を維持しやすくなる。そのため、被測定者は、自身のストレスの制御を継続して行うことができる。
例えば、本開示の一態様に係るストレス評価装置では、前記提示部は、画像で提示してもよい。
これにより、被測定者は、視覚的に自身のストレスの状況及び制御方法を知ることができるため、自身のストレスの制御について明確に意識することができる。そのため、被測定者は、自身のストレスの制御を継続して行うことができる。
また、本開示の一態様に係るストレス評価方法は、前記取得ステップは、さらに、前記被測定者の皮膚コンダクタンス又は皮膚温度の少なくとも一方を取得し、前記算出ステップは、さらに、(iii)皮膚コンダクタンスの変化量、又は、皮膚温度の変化量を算出し、前記皮膚コンダクタンスの変化量は、前記被測定者の安静時の皮膚コンダクタンスである基準からの前記第2センサ部によって測定された前記皮膚コンダクタンスへの変化量であり、前記皮膚温度の変化量は、前記被測定者の安静時の皮膚温度である基準からの前記第2センサ部によって測定された前記皮膚温度であり、前記判定ステップは、前記(I)かつ前記(II)かつ(III)前記皮膚コンダクタンスの変化量又は前記皮膚温度の変化量と第3の閾値との大小関係を比較することにより、前記被測定者のストレスの要因を判定し、判定結果に基づく情報を出力する。
上記方法によれば、被測定者の安静時の各生体指標を基準として各生体指標の変化量を算出するため、各生体指標の推移をより正確に把握することができる。そのため、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定することができる。
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、本開示の実施の形態2について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係るストレス評価装置、ストレス評価方法及びプログラムについて具体例を挙げて説明する。
[ストレス評価装置の概要]
図11は、本実施の形態に係るストレス評価装置100aの概略構成図である。図11に示すように、ストレス評価装置100aは、第1センサ部11aと、第2センサ部11bと、演算部12aと、判定部13aと、提示部14aと、記憶部15aと、を備える。ストレス評価装置100aでは、例えば、第1センサ部11a及び第2センサ部11bはそれぞれ、被測定者の生体信号を測定するウエアラブルの第1生体センサ111a及び第2生体センサ111b(図12参照)を含む。第1センサ部11aは、第1生体センサ111aで測定された生体信号から複数種類の生体指標を算出し、測定された生体指標として演算部12aに出力する。第2センサ部11bは、第2生体センサ111bで測定された生体信号から少なくとも1種類の生体指標を算出し、測定された生体指標として演算部12aに出力する。演算部12aは、被測定者の安静時の各生体指標の平均値(以下、基準値ともいう)及び各生体指標の閾値を算出し、記憶部15aに格納させる。また、演算部12aは、測定された各生体指標の平均値及び各生体指標の変化量を算出し、判定部13aに出力する。判定部13aは、各生体指標の変化量に基づいて被測定者のストレスの要因を判定する。より具体的には、判定部13aは、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定する。また、判定部13aは、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との差に応じて、ストレスの強度を判定する。そして、判定部13aは、これらの判定結果に基づく情報を提示部14aに出力する。このとき、判定部13aは、判定結果に基づく情報を記憶部15aに格納させる。提示部14aは、判定結果に基づく情報を提示する。さらに、ストレス評価装置100aは、被測定者(ユーザ)の指示を入力する入力部16a(図12参照)を備えてもよい。判定部13aは、入力部16aに入力された被測定者の指示に基づいて判定結果の情報を提示部14aに提示させる。
[ストレス評価装置の構成]
本実施の形態に係るストレス評価装置100aの構成についてより具体的に説明する。図12は、図11の構成に基づくストレス評価装置の具体例を示す構成図である。
図12に示すように、ストレス評価装置100aは、第1生体センサ111aと第1信号処理部112aとを含む第1センサ部11aと、第2生体センサ111bと第2信号処理部112bとを含む第2センサ部11bと、演算部12aと、判定部13aと、提示部14aと、記憶部15aと、入力部16aと、を備える。
第1生体センサ111a及び第2生体センサ111bは、被測定者の生体信号を測定する。生体信号は、生体情報の信号である。生体情報は、例えば、心拍、脈拍、呼吸数、血中酸素飽和度、血圧、又は、体温などのストレスにより影響を受ける生理学的な情報である。測定の容易性から、生体情報は、例えば、心拍情報である。心拍情報とは、心拍から得られる情報である。また、生体情報は、脈波情報であってもよい。
第1生体センサ111a及び第2生体センサ111b(以下、単に「生体センサ」と称する)は、各生体情報に応じたセンサを用いる。例えば、生体センサが心拍情報を取得するセンサ(心拍センサ)である場合、心拍センサは、例えば、被測定者の体の表面に接触する一対の検出電極を備えるセンサである。心拍センサにより得られる心拍情報は、心臓の拍動により得られる電気信号であり、例えば、心電図である。心拍センサは、導電性粘着ゲル電極であってもよく、導電性繊維などで構成されるドライ電極であってもよい。心拍センサの装着部位は、胸部であり、心拍センサの形状は、例えば、ウエアと電極とが一体となったウエア型である。
生体センサが脈波情報を取得するセンサ(以下、脈波センサ)である場合、脈波センサは、例えば、フォトトランジスタ及びフォトダイオードにより血管中の血液量の変化を反射光又は透過光により測定するセンサである。脈波センサは、ユーザの手首に装着され、当該装着された形状で脈波情報を測定する。脈波センサの装着部位は、足首、指、上腕などでもよい。脈波センサの形状は、バンド型(例えば、腕時計型)に限定されず、頸部等に貼り付ける貼付型、メガネ型などであってもよい。また、脈波センサは、顔又は手などの皮膚の色度の変化から脈波情報を測定して脈拍を算出する画像センサであってもよい。
また、生体情報が呼吸数である場合、生体センサは、例えば、胸部又は腹部に巻き付ける圧力センサを備えるベルト型のセンサ、又は、鼻の下に取り付ける温度センサである。
また、生体情報が血中酸素飽和度である場合、生体センサは、例えば、フォトトランジスタ及び2種類のフォトダイオードにより血管中の血液に含まれる飽和酸素濃度の変化を反射光又は透過光により測定するセンサである。
また、生体情報が血圧である場合、生体センサは、例えば、圧力センサが付いたベルトを上腕部と、指先又は橈骨と、に巻き付けるセンサである。
また、生体情報が体温である場合、生体センサは、例えば、掌又は鼻の頭などストレスにより毛細血管の収縮が起こりやすい部位に貼り付ける熱電対のセンサである。
また、生体情報が発汗である場合、生体センサは、例えば、掌又は顔などストレスにより発汗が起こりやすい部位に接触する一対の検出電極を備えるセンサである。
第1生体センサ111a及び第2生体センサ111bで測定された各生体信号は、第1信号処理部112a及び第2信号処理部112bに出力される。
第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aで測定された1つの生体信号から複数種類の生体指標を算出する。本実施の形態では、第1センサ111aは、心拍センサである。上述したように、心拍の生体信号が心電図の場合、複数種類の生体指標は、RRI、CvRR、HF及びLFなどである。RRIは、心拍数の指標であり、CvRR、HF及びLFは、心拍揺らぎの指標である。さらに、第1信号処理部112aは、心拍揺らぎの周波数成分から呼吸数及び血圧の変動の生体指標を算出してもよい。また、これらの複数種類の生体指標のうち判定精度が比較的高い組み合わせは、RRI及びCvRRである。したがって、本実施の形態では、生体指標1及び生体指標2は、それぞれRRI及びCvRRである例について説明する。なお、RRI及びCvRRの算出方法については、モニター試験にて上述した通りである。第1信号処理部112aは、算出された生体指標1及び生体指標2を演算部12aに出力する。
また、第2信号処理部112bは、第2生体センサ111bで測定された1つの生体情報から少なくとも1種類の生体指標を算出する。本実施の形態では、生体指標3が算出される。上述したように、生体情報が発汗である場合、第2生体センサ111bは一対の検出電極を備えるセンサである。また、生体情報が体温である場合、第2生体センサ111bは、例えば、熱電対のセンサである。第2生体センサ111bは、例えば、被測定者の指に巻き付けて装着される。生体情報が発汗である場合、第2信号処理部112bは、皮膚コンダクタンスを算出する。また、第2生体センサ111bから出力された生体情報が体温である場合、第2信号処理部112bは、皮膚温度を算出する。したがって、本実施の形態では、生体指標3は、皮膚コンダクタンス又は皮膚温度である。第2信号処理部112bは、算出された生体指標3を演算部12aに出力する。
演算部12aは、第1信号処理部112aが出力した生体指標1及び生体指標2を取得し、取得した生体指標1及び生体指標2から生体指標1の変化量及び生体指標2の変化量を算出する。また、演算部12aは、第2信号処理部112bが出力した生体指標3を取得し、取得した生体指標3から生体指標3の変化量を算出する。生体指標の変化量は、被測定者の安静時に測定された生体指標(以下、基準値と称する場合がある。)を基準とする測定された生体指標であり、差又は比で表される。各生体指標の基準値は、記憶部15aに格納されている。演算部12aは、記憶部15aに格納された各生体指標の基準値を読み出し、当該基準値に対する各生体指標の変化量を算出する。演算部12aは、算出した各生体指標の変化量を判定部13aに出力する。なお、基準値は、季節又は被測定者の生理周期などにより変動する場合があるため、所定の期間毎に更新されてもよい。
また、演算部12aは、各生体指標の閾値を算出する。生体指標1が、例えば、心拍数である場合、心拍数の変化量は、第1の時間に測定された心拍数の変化量である。第1の閾値は、生体指標1の閾値であり、例えば、心拍数の指標であるRRIの閾値である。第1の閾値は、被測定者の安静時の心拍数を基準とする、任意の時間に測定された心拍数である。また、生体指標2が、例えば、心拍揺らぎである場合、心拍揺らぎの変化量は、第2の時間に測定された心拍揺らぎの変化量である。第2の閾値は、生体指標2の閾値であり、例えば、心拍揺らぎの指標であるCvRRの閾値である。第2の閾値は、被測定者の安静時の心拍数を基準とする、任意の時間に測定された心拍揺らぎである。また、生体指標3が、例えば、皮膚コンダクタンス又は皮膚温度である場合、皮膚コンダクタンス又は皮膚温度の変化量は、第3の時間に測定された皮膚コンダクタンス又は皮膚温度の変化量である。第3の閾値は、生体指標3の閾値であり、例えば、皮膚コンダクタンスの閾値又は皮膚温度の閾値である。第3の閾値は、被測定者の安静時の皮膚コンダクタンスを基準とする、任意の時間に測定された皮膚コンダクタンス、又は、被測定者の安静時の皮膚温度を基準とする、任意の時間に測定された皮膚温度である。これらの閾値は、第1、第2及び第3の時間とは異なる任意の時間に測定された生体指標の測定値と基準値との差又は比である生体指標の変化量である。ここで、任意の時間とは、例えば、被測定者がストレスを感じる手前の状態にある時を指す。
以下、本実施の形態では、第1の時間、第2の時間、及び、第3の時間は、同じ時間である場合について説明するが、第1の時間、第2の時間、及び、第3の時間は、それぞれ異なる時間であってもよい。例えば、第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aで測定された1つの生体信号から時分割で複数種類の心拍数及び心拍揺らぎを算出してもよい。このとき、演算部12は、第1の時間に測定された心拍数の変化量を算出し、第1の時間とは異なる第2の時間に測定された心拍揺らぎの変化量を算出する。また、第2信号処理部112bは、第3の時間に、第2生体センサ112bで発汗又は皮膚温度を測定してもよい。このとき、演算部12は、第3の時間に測定された皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量を算出する。なお、第3の時間は、第1の時間及び第2の時間のいずれかと同じ時間であってもよい。
演算部12aは、記憶部15aに格納された各生体指標の閾値を読み出し、各生体指標の変化量の値と各生体指標の閾値との大小関係を比較する。そして、演算部12aは、各生体指標の変化量の少なくとも1つが閾値を一定時間超えている期間をストレス発生期間と判定する。ストレス発生期間とは、被測定者がストレスを感じた期間である。演算部12aは、ストレス発生期間中の各生体指標の変化量の値から各生体指標の変化量の代表値を算出する。例えば、ストレス発生期間における各生体指標の変化量の代表値は、ストレス発生期間中の各生体指標の変化量の平均値を用いてもよく、基準値からの差分が最も大きい値(最大値)を用いてもよい。
判定部13は、演算部12aが出力した各生体指標の変化量の代表値を取得し、記憶部15aに格納された第1の閾値、第2の閾値及び第3の閾値を読み出す。判定部13aは、生体指標1の変化量の代表値と第1の閾値との大小関係を比較し、かつ、生体指標2の変化量の代表値と第2の閾値との大小関係を比較し、かつ、生体指標3の変化量の代表値と第3の閾値との大小関係を比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する。つまり、判定部13aは、ストレス発生期間毎にストレスの要因を判定する。生体指標の変化量の代表値は、生体指標の変化量の一例であると言えるため、以下、生体指標の変化量の代表値を単に生体指標の変化量とも呼ぶ。
具体的には、判定部13aは、生体指標1(ここでは、心拍数)の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、生体指標2(ここでは、心拍揺らぎ)の変化量が第2の閾値よりも大きく、かつ、生体指標3(ここでは、皮膚コンダクタンス又は皮膚温度)の変化量が第3の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、対人に関する要因であると判定する。また、判定部13aは、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも小さく、かつ、生体指標3の変化量が第3の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、痛みであると判定する。また、判定部13aは、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも小さく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも大きく、かつ、生体指標3の変化量が第3の閾値よりも小さい場合、ストレスの要因は、思考による疲労であると判定する。
さらに、判定部13aは、生体指標1の変化量と第1の閾値との差、生体指標2の変化量と第2の閾値との差、及び、生体指標3の変化量と第3の閾値との差に応じて、ストレスの強度を判定し、判定結果を当該判定結果に基づく情報として出力する。判定結果に基づく情報は、例えば、ストレスの要因、ストレスの強度及びストレスの低減策の少なくとも1つを含む。ストレスの低減策は、例えば、ストレスの解消方法又はストレスの回避方法などである。ストレスの低減策は、後述する提示情報テーブルに含まれる。判定部13aは、記憶部15aに格納された提示情報テーブルから適切なストレス低減策を読み出し、提示部14aに出力する。
また、判定部13aは、判定結果に基づく情報を記憶部15aに格納する。このとき、判定部13aは、被測定者がストレスを感じた時間の情報と上記判定結果に基づく情報とを紐づけして記憶部15aに格納してもよい。
提示部14aは、判定部13aによって出力された上記判定結果に基づく情報を提示する。提示部14aは、上記判定結果に基づく情報を音声で提示してもよく、画像で提示してもよい。提示部14aが上記情報を音声で提示する場合は、提示部14aは、例えば、スピーカーである。また、提示部14aが上記情報を画像で提示する場合は、提示部14aは、例えば、ディスプレイである。
記憶部15aは、各生体指標の基準値、各生体指標の閾値、及び、提示情報テーブルなどを格納する。提示情報テーブルは、ストレスの要因及び当該ストレスの強度に応じて提示されるストレス低減策などの提示情報のテーブルである。上述したように、各生体指標の基準値及び閾値は、所定の期間で更新されてもよい。なお、提示情報テーブルも同様に、所定の期間で更新されてもよい。
また、記憶部15aは、判定部13aが出力したストレスの要因、ストレスの強度及びストレス低減策などの判定結果に基づく情報を格納する。このとき、記憶部15aは、判定結果に基づく情報とストレス発生期間とを紐付けて格納してもよい。これにより、被測定者は、所望のタイミングで判定結果に基づく情報を呼び出すことができる。このとき、判定部13aは、入力部16aにより入力された被測定者の操作に基づいて、判定結果に基づく情報を提示部14に提示させる。
入力部16aは、被測定者による操作を示す操作信号を判定部13aに出力する。入力部16aは、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、又は、マイクなどである。操作信号とは、判定結果に基づく情報の抽出方法又は提示部14aにおける提示方法などの設定を行う信号である。提示部14aには、入力部16aに入力された設定に基づき、様々な形式の判定結果が提示される。例えば、所定の期間におけるストレスの変化、被測定者が影響を受けやすいストレスの要因、及び、被測定者に適したストレス低減策などである。これにより、被測定者は、短期的なストレスの傾向を把握できるだけでなく、中期的及び長期的なストレスの傾向を把握することができる。このように、被測定者は、自己に適した効果的なストレス低減策を知ることができるため、中長期的なストレスを制御することができる。
[ストレス評価方法]
次に、本実施の形態に係るストレス評価方法について図13を用いて具体的に説明する。図13は、実施の形態に係るストレス評価方法を説明するフローチャートである。
本実施の形態に係るストレス評価方法は、測定された被測定者の(i)心拍数、(ii)心拍揺らぎ、及び、(iii)皮膚コンダクタンス又は皮膚温度を取得する取得ステップS100と、(i)心拍数の変化量、(ii)心拍揺らぎの変化量、及び、(iii)皮膚コンダクタンスの変化量、又は、皮膚温度の変化量を算出する算出ステップS200と、(i)心拍数の変化量と、(ii)心拍揺らぎの変化量と、(iii)皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量の少なくとも一方の変化量と、に基づいて被測定者のストレスの要因を判定し、判定結果に基づく情報を出力する判定ステップS300と、を含む。心拍数の変化量は、被測定者の安静時の心拍数である基準からの第1センサ部11aによって測定された心拍数への変化量であり、心拍揺らぎの変化量は、被測定者の安静時の心拍揺らぎである基準からの第1センサ部11aによって測定された心拍揺らぎへの変化量である。また、皮膚コンダクタンスの変化量は、被測定者の安静時の皮膚コンダクタンスである基準からの第2センサ部11bによって測定された皮膚コンダクタンスへの変化量であり、皮膚温度の変化量は、被測定者の安静時の皮膚温度である基準からの第2センサ部11bによって測定された皮膚温度である。判定ステップS300では、(I)心拍数の変化量と第1の閾値との大小関係を比較し、かつ、(II)心拍揺らぎの変化量と第2の閾値との大小関係を比較し、かつ、(III)皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量と第3の閾値との大小関係を比較することにより、ストレスの要因を判定する。本実施の形態では、さらに、判定ステップS300の判定結果に基づく情報を提示する提示ステップS400を含む。
以下、各ステップについてより具体的に説明する。
まず、取得ステップS100では、演算部12aは、第1センサ部11a及び第2センサ部11bで測定された被測定者の複数の生体指標を取得する。第1センサ部11aでは、第1生体センサ111aで心拍情報(ここでは、心電図)が測定され、第1信号処理部112aで、心拍数の指標及び心拍揺らぎの指標が算出される。また、第2センサ部11bでは、第2生体センサ111bで温度又は発汗の生体情報が測定され、第2信号処理部112bで、皮膚温度(SKT)又は皮膚コンダクタンス(SC)が算出される。なお、上述した通り、生体情報は、例えば、心拍、脈拍、呼吸数、血中酸素飽和度、血圧、体温、発汗などのストレスで影響を受ける生理学的な情報であってもよい。特に、心拍情報は、ウエアラブルな生体センサを用いた場合、脈拍、呼吸数、血圧、及び血中酸素飽和度などの他の生体情報よりも被測定者の負担が少ない状態で簡便に、かつ、リアルタイムに測定することができる。そのため、生体情報として被測定者の心拍情報を用いることにより、被測定者のストレスの状態を適切に評価することができる。
例えば、心拍情報から得られる生体指標は、心拍数の指標であるRRI、心拍揺らぎの指標であるCvRR、LF、HF、及び、LF/HF等などである。このように1つの生体情報から複数種類の生体指標が得られる。また、上述したように、これらの生体指標の組み合わせにより、比較的高い判定精度でストレスの要因を判定することができるため、信頼性の高い評価が得られる。
図6を再び参照する。心拍情報は、例えば、心電図であり、図6に示す心電波形となる。心電波形は、心房の電気的興奮を反映するP波と、心室の電気的興奮を反映するQ波、R波、及びS波と、興奮した心室の心筋細胞が再分極する過程を反映するT波とから構成されている。これらの心電波形のうち、R波の波高(電位差)が最も大きく、筋電位などのノイズに対して最も頑健である。このため、これらの心電波形における連続する2つの心拍のR波のピークの間隔、つまり、心拍間隔(RRI)を算出する。心拍数は、RRIの逆数に60を乗じて算出される。
さらに、第1の知見におけるモニター試験で上述した通り、CvRRは、上記式(2)を用いて、RRIから、任意時間帯におけるRRIの標準偏差SDを心拍間隔の平均値で規格化することにより算出される。
第1信号処理部112aは、第1生体センサ111aで得られた心拍情報から、左心室が急激に収縮して心臓から血液を送り出す際に発生する電気信号(R波)を検出し、RRIを算出する。なお、R波の検出には、例えば、Pan&Tompkins法などの公知の手法が用いられる。
次に、演算部12aにおいて検出されたR波から心拍間隔(RRI)の変動量を算出する方法について説明する。
図7を再び参照する。第1信号処理部112aは、得られたR波の検出データから、以下のように、RRIの変動量を算出する。
図7の(a)に示すように、第1信号処理部112aは連続する2つの心拍のR波のピークの間隔であるRRIを算出する。第1信号処理部112aは、算出された各RRIを時間とRRIとの2軸の関係に変換する。変換されたデータは不等間隔の離散的なデータであるため、演算部12aは、変換されたRRIの時系列データを、図7の(b)に示す等間隔時系列データに変換する。次いで、演算部12aは、この等間隔時系列データに対して、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数解析することにより、図7の(c)に示す心拍変動の周波数成分を求める。
心拍変動の周波数成分は、例えば、高周波成分HFと低周波成分LFとに分けることができる。モニター試験で上述した通り、HFは、副交感神経活動量を反映していると考えられる。また、LFは、交感神経及び副交感神経の活動量を反映すると考えられている。そのため、LFとHFとの比であるLF/HFは、交感神経活動量を示すと考えられる。
このように、第1センサ部11aでは、心拍情報から複数種類の生体指標を算出される。
以上のように、取得ステップS100では、演算部12aにて、第1センサ部11aから出力された2種類の生体指標(ここでは、心拍数及び心拍揺らぎ)及び第2センサ部11bから出力された1種類の生体指標(ここでは、皮膚コンダクタンス)を取得する。
次いで、算出ステップS200では、演算部12aにて、取得ステップS100で取得された各生体指標の変化量を算出する。各生体指標の変化量は、上述した通り、例えば、被測定者に安静時の各生体指標の値を基準値として、各生体指標の基準値と取得された各生体指標の値との比又は差を算出して得られる。演算部12aは、記憶部15aに格納された各生体指標の基準値を読み出して使用する。
なお、各生体指標の変化量は、変化量が差で表される場合は、取得ステップS100で取得された各生体指標の値から各生体指標基準値を差し引くことにより算出される。例えば、心拍数の変化量は、取得ステップS100で取得された被測定者の心拍数の値から心拍数の基準値を差し引くことにより算出される。また、変化量が比で表される場合は、取得ステップS100で取得された各生体指標の値を各生体指標の基準値で割ることにより算出される。例えば、心拍数の変化量は、取得ステップS100で取得された被測定者の心拍数の値を心拍数の基準値で割ることにより算出される。
以上のように、算出ステップS20では、演算部12aにて、各生体指標の変化量を算出する。
次いで、判定ステップS300では、判定部13aにて、算出ステップS200で算出された各生体指標の変化量に基づいてストレスの要因を判定する。判定部13aは、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する。具体的には、判定ステップS300では、判定部13aは、心拍数の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、心拍揺らぎの変化量が第2の閾値よりも大きく、かつ、皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量が第3の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、対人に関する要因であると判定する。また、判定部13aは、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも大きく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも小さく、かつ、皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量が第3の閾値よりも大きい場合、ストレスの要因は、痛みであると判定する。また、判定部13aは、生体指標1の変化量が第1の閾値よりも小さく、かつ、生体指標2の変化量が第2の閾値よりも大きく、かつ、皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量が第3の閾値よりも小さい場合、ストレスの要因は、思考による疲労であると判定する。
さらに、判定部13aは、生体指標1の変化量と第1の閾値との差、心拍揺らぎの変化量と第2の閾値との差、及び、皮膚コンダクタンスの変化量又は皮膚温度の変化量と第3の閾値との差に応じて、ストレスの強度を判定し、判定結果を当該判定結果に基づく情報として出力する。
なお、第1の閾値は、心拍数の閾値であり、被測定者の安静時の心拍数を基準とする被測定者に対して任意の時間に測定された心拍数である。第2の閾値は、心拍揺らぎの閾値であり、被測定者の安静時の心拍揺らぎを基準とする任意の時間に測定された心拍揺らぎである。第3の閾値は、皮膚コンダクタンス又は皮膚温度の閾値であり、被測定者の安静時の皮膚コンダクタンス又は皮膚温度を基準とする任意の時間に測定された皮膚コンダクタンス又は皮膚温度である。これらの閾値は、演算部12aにて算出され、記憶部15aに格納される。判定部13aは、記憶部15aに格納された各生体指標の閾値を読み出して使用する。上述したように、任意の時間とは、例えば、被測定者がストレスを感じる手前の状態にある時を指す。
各生体指標の閾値は、各生体指標の変化量が正の値である場合の閾値と、各生体指標の変化量が負の値である場合の閾値とが設定される。基準値は変化量のゼロ点である。各生体指標の変化量と閾値との大小関係は、以下のように比較される。生体指標の変化量が正の値である場合、生体指標の変化量と正の閾値との大小関係を比較する。また、生体指標の変化量が負の値である場合、生体指標の変化量の絶対値と負の閾値の絶対値との大小関係を比較する。なお、各生体指標の閾値は、固定値であってもよく、所定の期間で更新されてもよく、日々の測定に基づいて都度更新されてもよい。
なお、閾値は、線形判別又は決定木等の比較的単純な機械学習によって算出されてもよい。これにより、被測定者に適した判定基準値及び閾値を設定できるため、ストレスの要因をより精度良く判定することができる。
以上のように、判定ステップS300では、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較することにより、被測定者のストレスの要因を判定する。
次いで、提示ステップS400では、提示部14aにて、判定部13aで判定された判定結果に基づく情報を提示する。提示部14aは、判定結果に基づく情報を音声で提示してもよく、画像で提示してもよい。判定結果に基づく情報は、ストレスの要因、ストレスの強度及びストレスの低減策の少なくとも1つを含む。提示部14aは、被測定者が入力部16aで入力した設定に基づき、様々な形式の判定結果を表示する。
[ストレス評価装置の使用例]
次に、本実施の形態にストレス評価装置100aの使用例について具体的に説明する。図14は、本実施の形態に係るストレス評価装置100aの使用例を説明する図である。
図14に示すように、ストレス評価装置100aは、第1センサ部11aの一部である第1生体センサ111a及び第2センサ部11bの一部である第2生体センサ111bと、第1生体センサ111a及び第2生体センサ111b以外の構成を含む評価端末20とから構成される。被測定者は、第1生体センサ111aを胸部の肌に接触するように装着し、心電図(ECG)を測定する。第1生体センサ111aは、導電性粘着ゲル電極であってもよく、導電性繊維などで構成されるドライ電極であってもよい。第1生体センサ111aは、測定した心拍の電気信号を、通信により評価端末20に送信する。
また、第2生体センサ111bは、腕時計型センサであり、掌に貼り付けて使用するセンサ電極を備える。第2生体センサ111bは、センサ電極で測定された掌の皮膚電位を測定し、通信により、評価端末20に送信する。さらに、第2生体センサ111bは、指先に貼り付けて使用する熱電対型センサを備えてもよい。これにより、第2生体センサ111bは、熱電対型センサで指先の温度を測定することができる。なお、第1生体センサ111a及び第2生体センサ111bと評価端末20との通信方法は、Bluetooh(登録商標)などの無線通信であってもよく、有線通信であってもよい。
評価端末20は、第1センサ部11aの第1信号処理部112a、第2センサ部11bの第2信号処理部112b、演算部12a、判定部13a、提示部14a、記憶部15a及び入力部16aを備える。第1信号処理部112a及び第2信号処理部112bは、それぞれ第1生体センサ111a及び第2生体センサ111bから通信により送信された生体信号を受信する。
第1信号処理部112aは、受信した心拍の電気信号から心拍数の指標であるRRI及び心拍揺らぎの指標であるCvRRを算出しこれらの生体指標を演算部12aに出力する。第2信号処理部112bは、受信した皮膚電位の信号から発汗の指標である皮膚コンダクタンス(SC)を算出し、SCを演算部12aに出力する。なお、第2信号処理部112bは、第2生体センサ111bが皮膚温度を測定した場合は、第2生体センサ111bから皮膚温度の信号を受信し、体温の指標である皮膚温度(SKT)を算出し、SKTを演算部12aに出力する。
演算部12aは、第1信号処理部112aが出力したRRI及びCvRRを取得し、記憶部15に格納されたRRIの基準値及びCvRRの基準値を読み出す。また、演算部12aは、第2信号処理部112bが出力したSCを取得し、記憶部15aに格納されたSCの基準値を読み出す。演算部12aは、読み出された基準値を基準とする、これらの生体指標それぞれの変化量を算出する。生体指標の変化量は、差又は比で表される。本実施の形態では、当該変化量は、比で表される。
また、上述した通り、演算部12aは、各生体指標の閾値を算出し、記憶部15aに出力する。各生体指標の閾値は、各生体指標の変化量が正の値になる場合の閾値と、各生体指標の変化量が負の値になる場合の閾値とが設定される。基準値は変化量ゼロである。具体的には、各生体指標の変化量が正の値になる場合、正の閾値は、基準値よりも大きい値であり、変化量のグラフ120a中の第1の閾値1a(以下、正の閾値1a)、第2の閾値2a(以下、正の閾値2a)及び第3の閾値3a(以下、正の閾値3a)である。各生体指標の変化量が負の値になる場合、負の閾値は、基準値よりも小さい値であり、変化量のグラフ120中の第1の閾値1b(以下、負の閾値1b)、第2の閾値2b(以下、負の閾値2b)及び第3の閾値3b(以下、負の閾値3b)である。また、演算部12aは、各生体指標の基準値を算出し、記憶部15aに出力する。各生体指標の基準値は、各生体指標の変化量がゼロである。例えば、変化量のグラフ120aでは、基準値は、正の閾値1a及び負の閾値1bの間の実線で示される。なお、正の閾値及び負の閾値は、基準値(変化量ゼロ)を挟んで等間隔に設定されてもよく、基準値を挟んで等間隔に設定されなくてもよい。これらの閾値は、各生体指標の変化量の大きさに応じて、適宜設定されてもよい。
判定部13aでは、演算部12aが出力した各生体指標の変化量を取得し、記憶部15aに格納された各生体指標の閾値を読み出す。判定部13aは、各生体指標の変化量と各生体指標の閾値との大小関係を比較し、ストレスの要因を判定する。例えば、各生体指標の変化量が正の値である場合、判定部13aは、各生体指標の変化量と正の閾値との大小関係を比較する。また、各生体指標の変化量が負の値である場合、判定部13aは、各生体指標の変化量の絶対値と負の閾値の絶対値との大小関係を比較する。以下、変化量のグラフ120a及び判定表130aを用いて、より具体的に説明する。
変化量のグラフ120aに示すように、期間A2では、RRIの変化量の絶対値は、負の閾値1bの絶対値よりも大きく、かつ、CvRRの変化量は、正の閾値2aよりも大きく、かつ、皮膚コンダクタンスの変化量は、正の閾値3aよりも大きい。よって、判定部13aは、被測定者が期間A2で感じたストレスの要因は、対人に関する要因であると判定する。また、期間B2では、RRIの変化量は、正の閾値1aよりも大きく、かつ、CvRRの変化量の絶対値は、負の閾値2bの絶対値よりも小さく、かつ、皮膚コンダクタンスの変化量は、正の閾値3aよりも大きい。よって、判定部13aは、被測定者が期間B2で感じたストレスの要因は、痛みであると判定する。また、期間C2では、RRIの変化量の絶対値は、負の閾値1bの絶対値よりも小さく、かつ、CvRRの変化量の絶対値は、負の閾値2bの絶対値よりも大きく、かつ、皮膚コンダクタンスの変化量の絶対値は、負の閾値3bの絶対値よりも小さい。よって、判定部13aは、被測定者が期間C2で感じたストレスの要因は、思考による疲労(思考疲労)であると判定する。
判定表130aでは、矢印の向き及び本数で、基準値(変化量ゼロ)に基づく各生体指標の変化量の推移を示している。横向きの矢印は、生体指標の変化量が閾値を超える変化を伴わないことを示している。
さらに、判定部13aは、RRIの変化量の絶対値と第1の閾値の絶対値との差、CvRRの変化量の絶対値と第2の閾値の絶対値との差、及び、SCの変化量の絶対値と第3の閾値の絶対値との差に応じて、ストレスの強度を判定する。
判定部13aは、これらの判定結果に基づく情報を提示部14aに出力する。提示部14aは、例えば、スマートフォンのディスプレイである。また、判定部13aは、判定結果に基づく情報を記憶部15aに格納する。これにより、被測定者は、所望のタイミングで判定結果に基づく情報を呼び出すことができる。このとき、判定部13aは、タッチパネルなどの入力部16aにより入力された被測定者の操作に基づいて、判定結果に基づく情報を提示部14aに提示させる。例えば、被測定者が評価端末20の入力部16aで必要な情報を抽出する指示を入力すると、判定部13aは、被測定者の指示に基づいて提示部14aに提示情報140aを提示する。提示情報140aは、被測定者がストレスを感じた時間、ストレスの要因、及びストレスの低減策を含んでいる。ストレスの低減策は、例えば、ストレスの要因に応じたストレス解消方法又はストレス回避方法を提案するメッセージである。当該メッセージは、例えば、ストレスの要因が思考疲労である場合、少し休憩しましょう、又は、ストレッチをしましょう、などであり、対人に関わる要因である場合、少し瞑想しましょう、又は、深呼吸をしましょう、などである。
以上のように、本実施の形態によれば、被測定者が日常生活を送りながら簡便に、かつ、正確に、ストレスの要因を判定することができる。そのため、被測定者は、従来よりも正確に自身のストレス状態及び適切なストレス低減策を把握することができる。これにより、被測定者は、適切に、かつ、効率良く、自身のストレスの制御を行うことができるため、ストレスの制御を継続して行うことができる。
以上、本開示に係るストレス評価装置、ストレス評価方法及びプログラムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、本実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
なお、上記実施の形態では、生体情報として心拍情報を用い、心拍情報から得られる複数種類の生体指標として、心拍数の指標及び心拍揺らぎの指標を用いる例を示したが、これに限られない。例えば、自律神経活動度であるエントロピーE及び自律神経バランスであるトーンTを用いてもよい。また、上記実施の形態では、心拍数の指標として、RRIを用い、心拍揺らぎの指標としてCvRR、LF及びHFを用いる例を説明したが、心拍揺らぎを示すこれら以外の指標を用いてもよい。
また、実施の形態1では、ストレス評価装置100が生体センサ111と評価端末20とから構成される例を示したが、例えば、第1センサ部11aと、第1センサ部11a以外の構成を備える評価端末とから構成されてもよい。
また、実施の形態2では、ストレス評価装置100aが生体センサ111aと評価端末20とから構成される例を示したが、例えば、第1センサ部11a及び第2センサ部11bと、第1センサ部11a及び第2センサ部11b以外の構成を備える評価端末とから構成されてもよい。
また、ストレス評価装置は、全ての構成が1つのデバイスに組み込まれた一体型の装置であってもよい。本実施の形態では、生体センサは心拍センサである例を示したが、生体センサは脈波センサであってもよい。この場合、ストレス評価装置は、ディスプレイを備える腕時計型の装置であってもよい。
また、実施の形態1では、評価端末20はスマートフォン又はタブレット端末である例を示したが、スマートフォン又はタブレット端末は提示部14と入力部16とを備え、第1信号処理部112a、演算部12、判定部13及び記憶部15をインターネットなどの通信ネットワークを介して接続されるサーバー上に設けてもよい。
また、実施の形態2では、評価端末20はスマートフォン又はタブレット端末である例を示したが、スマートフォン又はタブレット端末は提示部14aと入力部16aとを備え、第1信号処理部112a、第2信号処理部112b演算部12a、判定部13a及び記憶部15aをインターネットなどの通信ネットワークを介して接続されるサーバー上に設けてもよい。
また、各生体指標の基準値及び閾値が評価端末に設けられた記憶部に格納される形態を一例として示したが、上記基準値及び閾値がインターネット上のサーバーに格納され、評価端末に随時送られてくる形態でもよい。
また、本開示では、ストレスの要因を判定するための指標の1つとして、皮膚コンダクタンスを挙げたが、精神性発汗を測定できる指標であれば特に限定されない。例えば、皮膚抵抗など皮膚電位又は電流値を測定して得られる指標であってもよく、皮膚表面の湿度など水分量を測定して得られる指標であってもよい。
また、実施の形態2では、皮膚コンダクタンス又は皮膚温度を掌で測定する例を挙げたが、精神性発汗が生じやすい顔面の一部で測定してもよく、足の裏で測定してもよい。
また、本開示では、ストレスの要因の一つである対人に関する要因の具体例として、モニター試験における模擬の就職面談を挙げたが、これに限られない。例えば、対人に関する要因は、職場及びプライベートでの人間関係、人前で話をすること、又は、人との交渉など、人と関わる事柄で被測定者が不安又は緊張を感じる要因であればよい。
また、本開示では、ストレスの要因の一つである痛みの具体例として、電気刺激による痛みを挙げたが、これに限られない。例えば、痛みは、打撲、頭痛、歯痛、裂傷などの身体の痛み、又は、擦る、刺す、切る、打つなどの物理的な刺激に伴う痛みなど、恐怖又は我慢を感じる痛みであればよい。
また、本開示では、ストレスの要因の一つである思考による疲労の具体例として、思考が必要な作業として暗算及び音声によるじゃんけんの課題を挙げたが、これに限られない。例えば、思考による疲労は、思考が必要な作業として、パソコンでの作業、又は、集中力が必要な実験等の知的な活動など、思考する作業を続けることによって疲労を感じる要因であればよい。