以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつ10(以下、単に「おむつ10」ともいう)の基本的な構造が示されている。おむつ10は、図1及び図2に示すように、肌当接面を形成する液透過性の表面シート2と、この表面シート2の非肌当接面側に配置された裏面シート3と、これら両シート2,3の間に配置された吸収体4とを備えている。表面シート2と吸収体4とは、例えばホットメルト型接着剤等の接着剤により一体化されている。なお、肌当接面とは、おむつ10又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面とは、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。裏面シート3は、吸収性物品の裏面シートに通常使用されている材料を用いて形成することができる。例えば、液難透過性の樹脂フィルム、撥水性の樹脂フィルム、又は樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等、場合によっては液透過性の不織布が、裏面シート3として用いられる。
おむつ10は、着用時に着用者の前後方向と一致する方向である長手方向Yと、おむつ10を図1に示すように平面状に広げた状態において、長手方向Yと交差する幅方向Xとを有している。また、おむつ10は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部A、着用時に着用者の背側に配される背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に位置する股下部Cを、長手方向Yに有している。おむつ10は、展開型の使い捨ておむつであり、背側部Bの両側縁部にファスニングテープ7が設けられている。腹側部Aの外表面には、そのファスニングテープ7を止着するランディングゾーン8が設けられている。
おむつ10における吸収体4は、吸収性コア4aとこれを包むコアラップシート4bとを備えている。吸収性コア4aは、例えばパルプ繊維等の吸液性繊維の積繊体や、吸液性繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊体から構成することができる。吸液性繊維としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等のセルロース系の親水性繊維が挙げられる。
セルロース系の親水性繊維以外に、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる繊維を界面活性剤等により親水化したものを用いることもできる。コアラップシート4bとしては、例えば、ティッシュペーパーや透水性の不織布が用いられる。コアラップシート4bは、1枚で吸収性コア4aの全体を包んでいてもよいし、2枚以上を組み合わせて吸収性コア4aを包んでいてもよい。
おむつ10における長手方向Yの両側には、弾性部材5aを有する立体ギャザー形成用のシート5が配されている。弾性部材5aの収縮により、着用状態における股下部Cに、着用者の肌側に向かって起立する立体ギャザーが形成される。また、股下部Cにおける脚周りに配される部位には、レッグ部弾性部材6が伸長状態で配される。レッグ部弾性部材6の収縮によって、着用状態における股下部Cに着用者の脚周りへのフィット性を向上させるレッグギャザーが形成される。
本実施形態のおむつ10における表面シート2は、一方向に延びる筋状の凹凸構造を肌当接面に有する不織布1から構成されている。表面シート2における凹凸構造の延びる方向は、おむつ10の長手方向Yと一致しているが、必ずしも一致していなくてもよい。凹凸構造は、おむつ10の幅方向Xに延びる場合もある。
不織布1に用いることができる繊維材料は、特に限定されない。具体的には、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維等のポリオレフィン繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で用いてなる繊維;芯鞘型、サイドバイサイド型等の構造の複合繊維などが挙げられる。このような複合繊維としては、例えば、鞘成分がPE又は低融点PPである芯鞘構造の繊維などが挙げられる。芯鞘構造の繊維の代表例としては、PET(芯)とPE(鞘)、PP(芯)とPE(鞘)、PP(芯)と低融点PP(鞘)等の芯鞘構造の繊維等が挙げられる。
繊維材料は、PE繊維、PP繊維等のポリオレフィン系繊維、PE複合繊維、又はPP複合繊維を含むことが好ましい。PE複合繊維は、PETとPEとを含む複合組成であり、PETと低融点PPとを含むことが好ましい。より具体的には、PET(芯)とPE(鞘)、PET(芯)と低融点PP(鞘)が挙げられる。これらの繊維は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いて、不織布を構成することができる。また、不織布には、熱可塑性繊維以外の繊維が含まれていてもよい。
本実施形態のおむつ10における表面シート2は、排泄された液を迅速に吸収体へ透過させることが要求される。これを達成するには、表面シート2を構成する不織布1に親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理を施すことで、不織布1の繊維の水との接触角が小さくなる。水との接触角は、その値が小さいほど親水性が高いことを意味する。不織布1は、既知の方法により親水化処理を施すことができる。例えば、不織布1の繊維を親水剤によって親水化し、不織布1を製造する方法が挙げられる。
親水化処理に用いる親水剤としては、各種公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、親水性の油剤が用いられる。親水性の油剤としては、アニオン性、カチオン性、両性あるいはノニオン性の界面活性剤が一般的であるが、特にこれらに限定されない。これらは、所定濃度の水溶液や乳化液等にして用いることもできる。好ましい親水剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコール、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等が挙げられる。
以下、図3〜6を参照して、表面シート2を構成する不織布1の一例を説明する。図3に示す不織布1は、底部14を介して隣り合う複数の畝部12が、肌当接面で一方向に延びている。底部14の一部には、隣り合う畝部12を繋ぐように鞍部16が設けられている。鞍部16は、畝部12が延びる方向に沿う断面においては、上向きに凸であり、畝部12が延びる方向に直交する方向に沿う断面においては、下向きに凸である。畝部12は、一方向に連続している必要はなく、不連続であってもよい。ただし、この場合も隣り合う畝部12は鞍部16で繋がれている。
複数の畝部12は、図4に示すように、底部14から肌当接面側に突出して一方向に配列されている。不織布1は、底部14が非肌当接面側となる。畝部12は、連続して延びている方向に沿って同等の高さを有している。本明細書において高さが「同等」とは、マイクロスコープVHX900(株式会社キーエンス製)を用いて測定した高さが、測定平均値に対して0.9倍以上1.1倍以下の範囲内であることをさす。
それぞれの畝部12は、頂部(以下、「頂部領域12a」という)と、頂部領域12aを支持する一対の壁部(以下、「壁部領域12b」という)とを有する。壁部領域12bは、繊維密度が頂部領域12a及び底部14より小さい部分を有する。また、頂部領域12aは、繊維密度が底部14より大きい部分を有する。壁部領域12bの繊維密度が他より小さいことによって、不織布1全体として通気性及び通液性が向上する。肌当接面に接触した液体は、壁部領域12bを経由して内部に容易に浸透できる。本明細書における繊維密度は、不織布の断面における単位面積当たりの繊維の本数をさす。なお、本明細書において、「ある領域が他の領域に比して繊維密度が小さい(単位面積当たりの繊維の本数が少ない)」とは、ある領域の一部に他の領域の一部よりも単位面積当たりの繊維の本数が少ない部分があることを意味する。すなわち、壁部領域12bと頂部領域12a及び底部14とについて言えば、壁部領域12bの全体が頂部領域12a及び底部14に比し単位面積当たりの繊維の本数が少ないことが好ましいが、これに限定されず、壁部領域12bの一部のみが、頂部領域12a及び底部14に比し単位面積当たりの繊維の本数が少ない構成も含まれ得る。
底部14と壁部領域12bとの成す角度(壁部領域12bの傾斜角度)θは、60°以上120°以下であり、70°以上であることが好ましく、80°以上であることがより好ましく、また、110°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましい。傾斜角度θが小さいほど、すなわち、壁部が平面に対して垂直に近いほど、底部14から頂部領域12aまでの距離が大きくなり、高い畝部12が形成されるため、かさ高の不織布1となる。
なお、底部14と壁部領域12bとの成す角度θが部分的に上記範囲外であっても許容される。例えば、壁部領域12bが波打った形状であってもよい。傾斜角度θは、例えばマイクロスコープVHX900(株式会社キーエンス製)を用いて、頂部領域12a、壁部領域12b、底部14を含む断面(例えば図4)において、目視される底部14と壁部領域12bとの成す角度を測定することにより確認することができる。
なお、傾斜角度θは、他の測定方法によって測定してもよい。例えば、水平な台の表面に底部14が当接するよう不織布1を設置し、頂部領域12a、壁部領域12b、底部14を含む断面(例えば図4)において、壁部領域12bと水平な台との成す角度を測定することにより傾斜角度θを求めることもできる。壁部領域12bは、平坦であっても良く、平坦ではなく凹凸面であっても良く、開孔していても良い。壁部領域12bが平坦でない場合や、開孔している場合には、底部14と壁部領域12bの交点から頂部領域12aと壁部領域12bの交点に向かう仮想面を設定し、その仮想面と底部14との成す角度との成す角度を測定し、傾斜角度θとすることができる。
更に、壁部領域12bの繊維密度が他より小さいことによって、おむつ10が使用される際、畝部12が着用者の肌の動きに追従しやすくなる。これによって、良好な肌当たりを実現することができる。このように繊維密度の異なる領域を有する不織布1は、例えば後述する方法によって製造することができる。
繊維密度は、不織布1の断面を観察して、以下の手法により測定することができる。不織布1は、測定対象の部位(例えば、壁部領域12b間)を通るように厚み方向に切断する。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM−5100)を使用して切断面を拡大観察し、一定面積の切断面内の切断されている繊維の断面を数える。拡大観察は、繊維断面が30本から60本程度計測できる倍率(150倍以上500倍以下)に調節する。次に、1mm2当たりの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm2)とする。3カ所の測定結果を平均して、そのサンプルの繊維密度とする。
不織布1は、畝部12の非肌当接面側に中空領域18を有している。本明細書における「中空領域」とは、実質的に不織布の繊維で満たされていない空間であり、具体的には、上述した繊維密度が20本/mm2未満であることを指す。中空領域18における繊維密度は、小さいほど好ましい。中空領域18は、不織布1における畝部12が延びる方向に連続し、通気経路として作用する。中空領域18は、おむつ10において吸収体4への液体の移動を促進する。中空領域18を有することによって、不織布1はクッション性が高められるとともに、厚み方向に潰れにくい構造となる。
底部14は、壁部領域12bに比し疎水性を有している。本明細書において、「ある領域が他の領域に比して疎水性を有する」とは、ある領域の一部に他の領域の一部よりも疎水性である部分があることを意味する。すなわち、底部14と壁部領域12bについて言えば、底部14の全体が壁部領域12bに比し疎水性を有していることが好ましいがこれに限定されず、底部14の一部のみが、壁部領域12bに比し疎水性を有する構成も含まれ得る。疎水性の程度は、下記方法で測定される水に対する接触角に基づいて評価することができる。接触角が大きいほど、疎水性が大きいことを示す。なお、以下の説明において、「疎水性が大きい」とは、基準に比して疎水性を有していることを意味し、「疎水性が小さい」とは、基準に比して疎水性を有していないことを意味している。これらの場合に、基準における水に対する接触角と、測定対象における水に対する接触角との差(基準に対する、水に対する接触角の差)は、7°以上であることが好ましく、8°以上であることがより好ましい。
接触角の測定には、底部14又は壁部領域12bから取り出した繊維を測定用試料として、脱イオン水を用いる。測定装置としては、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、測定用試料の真上に水滴を滴下する。滴下の様子を、水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は、後に画像解析を行う観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピューターが望ましい。
本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、測定用試料に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と測定用試料とのなす角を算出し、接触角とする。
なお、測定用試料は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に水平に載置し、繊維1本につき異なる2か所の位置で接触角を測定する。各部位において、N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10カ所の測定値を平均した値(小数点以下第2位で四捨五入)を、各々の部位での接触角と定義する。測定は、室温(20℃)、湿度60%の環境下で行い、使用する脱イオン水、測定用試料は、前記環境下で1日以上保存後に使用する。
底部14の疎水性が壁部領域12bより大きいので、肌当接面に接触した液体は、壁部領域12bに容易に導かれる。壁部領域12bの繊維密度が小さいことにより、液体は壁部領域12bから速やかに内部に浸透して、中空領域18から下層の吸収体4に移動できる。しかも、底部14の疎水性が大きいので、内部に浸透した液体が底部14を介して外部に戻るおそれは小さい。底部14が全面にわたって壁部領域12bより疎水性が大きい場合には、その効果はよりいっそう高められる。また、底部14の中央部分が、壁部領域12b近傍よりも繊維密度が大きくなっていると、疎水剤が底部14の中央部分に集まり易くなることから、底部14の疎水性は、中央部分から壁部領域12b近傍に向けて徐々に小さくなるグラデーションとなり、液体の引き込み効果及び液戻り抑制効果がよりいっそう高められる。
図3におけるIII−III’線断面においては、図5に示すように、畝部12と鞍部16とが交互に配置されている。鞍部16は、隣り合う畝部12を繋ぐ方向において下向きに凸状である。一方、図3におけるIV−IV’線断面においては、鞍部16は上向きに凸状であることが、図6に示されている。すなわち、鞍部16とは、不織布1の厚み方向において、交差する2方向で逆向きに湾曲した形状の領域である。
鞍部16が下向きに凸となる断面(例えば図5)においては、鞍部16の曲率は、隣り合う頂部領域12a同士の距離dに依存する。隣り合う頂部領域12aの距離dが小さいほど、鞍部16の曲率は大きくなる。この場合、鞍部16の曲率半径は、例えば上述のマイクロスコープを用いて、鞍部16の縁の曲率半径を測定することにより確認することができる。鞍部16の縁の曲率半径は、例えば鞍部16の縁に肌当接面側から仮想面を想定し、仮想面に接する円の半径を測定して求めることができる。
鞍部16が上向きに凸となる断面(例えば図6)においても、鞍部16の曲率半径を求めることができる。この場合には、鞍部の縁に非肌当接面側から仮想面を想定し、仮想面に接する円の半径を測定することで、鞍部16の縁の曲率半径を求めることができる。
底部14から鞍部16までの厚み方向の距離は、頂部領域12aから鞍部16までの厚み方向の距離の0.01倍以上100倍以下程度である。底部14から鞍部16までの厚み方向の距離は、例えば、水平な台の表面に底部14が当接するよう不織布1を設置し、鞍部16が上に凸となる断面(例えば図6)において、水平な台から鞍部16までの高さを測定して求めることができる。水平な台の表面に底部14が当接するよう不織布1を設置し、鞍部16が下向きに凸となる断面(例えば図5)において、水平な台から鞍部16までの高さを測定して、底部14から鞍部16までの厚み方向の距離を求めてもよい。
頂部領域12aから鞍部16までの厚み方向の距離は、次のようにして求めることができる。すなわち、水平な台の表面に底部14が当接するよう不織布1を設置し、鞍部16が下向きに凸となる断面(例えば図5)において、水平な台から頂部領域12aまでの高さと、鞍部16までの高さを測定する。このようにして得た水平な台から頂部領域12aまでの高さと、鞍部16までの高さとの差が、頂部領域12aから鞍部16までの厚み方向の距離に相当する。水平な台からの高さの測定には、いずれも上述のマイクロスコープを用いる。このような鞍部16は、例えば後述する不織布1の製造方法によって得ることができる。
こうした形状の鞍部16は、必ずしも底部14において隣り合う畝部12同士を繋いでいる必要はない。鞍部16は、畝部12から離間して、底部14に設けられていてもよい。あるいは、畝部12の頂部領域12aに設けることもできる。いずれの場合も、所定の形状の鞍部16が不織布1の肌当接面に存在していることによって、不織布1は厚み方向の押圧に対する耐性が付与され、不織布1は潰れにくいものとなる。さらに、不織布1表面における液体の流れを誘導するという効果が得られる。
図示する例においては、鞍部16は隣り合う畝部12を繋ぐように設けられている。鞍部16が隣り合う畝部12を繋いでいるため、畝部12にかけられた荷重が偏ることがない。その結果、畝部12のX方向への変形が抑制されて、畝部12の高さを保ちやすくなる。また、鞍部16が畝部12を繋いでいることにより、不織布1に与えられた荷重を肌当接面内で分散させることができる。不織布1は、良好な弾力性とクッション性とを備えることから、風合いが良くなる。
鞍部16は、図6に示すように非肌当接面側に中空領域18’を有している。中空領域18’は、上述したように繊維密度が20本/mm2未満の領域である。鞍部16の中空領域18’と畝部12の非肌当接面側の中空領域18とによって、不織布1の非肌当接面側には凹部が縦横に形成される。その結果、おむつ10においては、不織布1と吸収体4との間に連通空間が形成される。中空領域18に加えて中空領域18’が存在することによって、不織布1はクッション性がよりいっそう高められるとともに、厚み方向により潰れにくい構造となる。また、不織布1と吸収体4との間の連通空間は、捕集された液体の流路としても機能するので、吸収体4への液体の引き込み性が向上する。しかも、連通空間内に液体が保持されることによって、表面への液戻りの抑制にも寄与する。なお、上述したように鞍部16の位置は限定されないため、非肌当接面側に中空領域が形成されない場合がある。この場合でも、畝部12の非肌当接面側に存在する中空領域18の効果は、何ら損なわれることなく発揮される。
本実施形態のおむつ10は、表面シート2として上述したような不織布1を備えているので、使用の際、液体が肌当接面側から内部に浸透しやすく、液体の引き込み性が優れている。浸透した液体が肌当接面に向けて戻ったとしても、肌当接面から流れ出るおそれが少ない。
不織布1における底部14は、必ずしも全体が平坦である必要はなく、一部が肌当接面側に湾曲していてもよい。これによって、畝部12の壁部領域12bへの液体の流れが促進される。一部が肌当接面側に湾曲した凸部が、隣り合う畝部12の間の底部14にも形成されることによって、不織布1はよりいっそう潰れ難くなる。底部14を通過して外部に向かう液体の流れは、より確実に妨げられる。底部14に形成される凸部は、任意の方向に延びていてもよい。
不織布1に含まれる繊維は、頂部領域12a、壁部領域12b、及び底部14のそれぞれにおいて、所定の方向に配向している。壁部領域12bにおける繊維の配向方向は、頂部領域12a及び底部14とは異なる。具体的には、頂部領域12a及び底部14においては、繊維は平面方向に配向し、壁部領域12bにおいては、繊維は厚み方向に配向する。壁部領域12bにおいて、厚み方向に繊維が配向していることによって、畝部12は押圧力を受けても高さ方向に変形し難く、形状を維持することができる。中空領域18が維持されることから、液戻りをよりいっそう確実に抑制することができる。このような鞍部16を有する不織布1は、例えば後述する方法により製造することができる。
「繊維が平面方向に配向している」とは、後述する測定方法によって得られる繊維の配向度が45%未満であることを意味する。繊維の配向度が45%未満であることによって、繊維の半数以上が平面方向に並び、平坦な形状を保つことができる。厚み方向に配向した繊維は、不織布1の形状や強度の保持に寄与するので、頂部領域12aに含まれていてもよい。この場合、繊維の配向度は、30%以上40%未満とすることができる。好ましくは38%以下であり、より好ましくは37%以下である。
壁部領域12bは、繊維が不織布の厚み方向に配向した部分である。「繊維が不織布の厚み方向に配向している」とは、後述する測定方法によって得られる繊維の配向度が60%以上であることを意味する。壁部領域12bにおける繊維の配向度が60%以上である場合、不織布1の厚み方向において平面に直交して繊維が配置されているといえる。
壁部領域12bは、繊維の配向度が60%以上であり、繊維同士の一部が融着している。これによって、壁部領域12bは柱のような状態で起立して、不織布1の厚み方向に適度な弾力を付与することができる。なお、従来の不織布の繊維には、このような領域が存在しないため、厚み方向に押圧した際に追従して変形する。従来の不織布は、押圧されると繊維間を埋めるように変形し、付与される応力が増大すると変形量も増加する。
壁部領域12bにおける繊維の配向度は、クッション性の観点から、63%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、68%以上がさらに好ましい。配向度の大きさは、応力に耐える構造となる融着点の割合にも影響を及ぼす。壁部領域12bにおける繊維の配向度は、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。
繊維の配向度を求めるにあたっては、まず、不織布1から5mm×5mmを切り取って、図4に示したようなII−II’断面を有する切片、及び図6に示したようなIV−IV’断面を有する切片を作製する。各切片における断面を観察して、配向度を求めることができる。
各切片を平坦な支持台上に置いて、2.9Paの荷重を加えて断面を観察する。具体的には、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−900)の台座に、切片を載置する。切片の上に、目付300g/m2の黒い厚紙を載せて、株式会社キーエンス製VHX220Rレンズを用いて断面から20倍の倍率で観察する。こうして、断面における境界を判断することができる。
判断した境界に基づいて、繊維の配向度を求める頂部領域12a、壁部領域12b、及び底部14の部位を画定する。各部位について、所定の面積内の繊維の本数を測定する。不織布の厚み方向に直交する基準線を横切る繊維を「縦繊維本数」とし、不織布の厚み方向に直交する基準線を横切る繊維を「横繊維本数」とする。これを用いて、下記式により配向度を算出する。
配向度=(縦繊維本数)/(縦繊維本数+横繊維本数)×100
頂部領域12a、壁部領域12b、及び底部14のそれぞれについて4点測定し、平均値をそれぞれにおける配向度とする。
不織布1は、底部14に疎水性が頂部領域12aより大きい部分があることが好ましい。この場合、壁部領域12bと頂部領域12aとが相対的に親水性となる。頂部領域12aが親水性であることによって、液戻りを低減して液を迅速に透過させることができる。頂部領域12aの肌当接面側にある繊維は、水に対する接触角が74°以上であることが好ましく、76°以上であることがより好ましい。上限としては、80°以下であることが好ましい。
不織布1は、壁部領域12bより疎水性が大きい部分を頂部領域12aに有することが好ましい。頂部領域12aの親水性が壁部領域12bより小さいことによって、内部に浸透した液体が頂部領域12aを通過し難くなる。
畝部12においては、少なくとも頂部領域12aの非肌当接面12cに、疎水性が壁部領域12bより大きい部分があることが好ましい(図4参照)。畝部12の頂部領域12aを介した外部への液体の流れは、より確実に防止される。肌触りが損なわれないように、頂部領域12aの表面は壁部領域12bより親水性であることが望まれる。
底部14は、壁部領域12bに向けて疎水性が変化していてもよい。壁部領域12bに向けて疎水性が増大している場合には、内部への液体の浸透がよりいっそう促進されるのに加え、液戻りした液体の外部への流れをより確実に防止できる。
以下に、図7〜9を参照して、不織布1の製造方法の好ましい実施形態を説明する。
本実施形態の不織布1の製造にあたっては、まず、図7(A)に示すように、支持体雄材120の上に繊維ウエブ110を載置し、繊維ウエブ110の上から支持体雌材130で押し付ける。支持体雄材120は、図8に示すように、一方向とそれに直交する方向に突起121が間隔を空けて配置されている。一方、支持体雌材130には、図9に示すように、一方向に連続した突起131が設けられている。
支持体雄材120は、不織布1の畝部12と鞍部16とで囲まれる底部14が賦形される位置に対応して、複数の突起121を有する。隣り合う突起121同士の間は、畝部12が賦形される位置に対応する凹部122とされている。これにより、支持体雄材120は凹凸形状を有しており、突起121と凹部122とが平面視異なる方向に交互に配されている。凹部122の基部123は、熱風が通過できる構造である。例えば、複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。
この実施形態においては、不織布1を製造する支持体は、機械流れ方向(MD方向)が不織布1のY方向に、機械流れ方向に直交する幅方向(CD方向)が不織布1のX方向に相当する。ただし、「異なる方向」は、Y方向及びX方向に限定されない。支持体雄材120の突起121の高さが3mm以上であれば、クッション感のある不織布1を製造することができる。突起121の高さは、5mm以上がより好ましく、7mm以上が最も好ましい。
突起121は、角柱及び円柱のいずれであってもよい。図示する例では、平面視において、不織布1のMD方向に対し四角形状であるが、ひし形とすることもできる。突起121は、角柱で平面視において正方形であることが好ましい。この場合には、繊維が支持体雄材120により入り込んで、不織布1の形状が保持され、不織布1の厚さを確保しやすくなる。
不織布1の形状の保持のしやすさを考慮すると、平面視した突起121の一つの上面の面積は3mm2以上であることが好ましい。また、隣り合う突起121間の距離は、平面視において2mm以上であることが好ましい。この場合には繊維を効果的に押し込むスペースを確保することができる。
支持体雌材130は、支持体雄材120の凹部122に対応し、平面視において一方向に連続する突起131を有する。隣り合う突起131間は、支持体雄材120の突起121に対応する凹部132とされている。これにより、支持体雌材130は、凹凸形状を有しており、突起131と凹部132とが交互に配されている。凹部132の基部133は、熱風が通過でき、例えば複数の貫通孔が設けられている。
支持体雌材130における突起131間の間隔は、支持体雄材120における突起121の幅よりも広い。突起131間の間隔は、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の突起131とで繊維ウエブ110を挟みこんで、繊維が厚み方向に配向する壁部領域12bを好適に賦形できるように、適宜設定される。支持体雌材130における突起131は、支持体雄材120における突起121同士の間に挿入される必要がある。このため、突起131は1mm以上の長さを有することが好ましい。
支持体雄材120における突起121と、支持体雌材130における凹部132とを嵌合させて、平面方向に連続した不織布1が得られるように、突起131のピッチが設定される。具体的には、突起131のピッチは、支持体雄材120における突起121の平面視における一辺の長さより1mm以上長いことが好ましい。なお、突起121の上面形状が円形、又は長円形の場合、突起121の上面の一辺の長さは、その直径又は長径の長さとする。
図7(A)に示した繊維ウエブ110は、カード機(図示せず)からウエブを賦形する位置に供給する。繊維ウエブは、親水化処理された熱可塑性繊維を含んでいる。繊維ウエブ110上から、図7(B)に示すように支持体雌材130を押し込む。このとき、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の凹部132とが嵌合し、支持体雄材120の凹部122と支持体雌材130の突起131とが嵌合する。支持体雄材120と支持体雌材130とは、図10に示すように組み合わされる。図10中、繊維ウエブは省略している。
繊維ウエブ110は、不織布とは異なって繊維の移動の自由度が高い。そのため、繊維ウエブ110の繊維は、支持体雄材120と支持体雌材130との間に挟まれた際には、その状態に応じて所定の方向に配向する。
図7(B)に示すように、支持体雄材120における突起121の側面と、支持体雌材130における突起131の側面とに挟まれた領域112bでは、繊維は厚み方向に配向する。一方、支持体雄材120の凹部122と支持体雌材130の突起131の端面との間の領域112aでは、繊維が平面方向に配向する。支持体雌材130を押し付けているので、領域112aで平面方向に配向した繊維は、他の領域112bより密な状態である。
図10に示すように、支持体雄材120における隣り合う突起121間の凹部122のうち、支持体雌材130における凹部132に対応する部分122aには、支持体雌材130の突起131が入り込まない。このため、図示しない繊維ウエブにおいては、支持体雄材120の突起121と、支持体雌材130の突起131とで囲まれた領域122a内で繊維が引っ張られる。こうして繊維の配向の異なる領域が形成されて、鞍部16に相当する繊維層となる。
この状態で、図7(B)に示すように支持体雌材130の側から繊維ウエブ110に向けて第1の熱風W1を吹き付けることが好ましい。これによって、繊維ウエブ110は、不織布1の凹凸形状を保持可能な程度に融着される。繊維ウエブ110においては、繊維同士が極めて緩く融着している状態となっている。図面矢印は、第1の熱風W1の流れを模式的に示している。
支持体雄材120の突起121の壁面と支持体雌材130の突起131の壁面との間の領域112bでは、繊維が厚み方向に配向した壁部領域12bが賦形される。突起121の端面と凹部132の基部との間の領域114では、第1の熱風W1を受けて繊維が平面方向で形状を保持可能な程度に融着される。これにより、底部14に相当する繊維層が形成される。凹部122の基部123と突起131の端面との間の領域112aでは、繊維が平面方向に配向する。突起131は熱風を隔てているので、形成される繊維層は繊維の融着が少なく、滑らかである。これにより、頂部領域12aに相当する繊維層が形成される。
第1の熱風W1の温度は、熱可塑性繊維が厚み方向と平面方向とに形状を保持できるように、融点より高い温度に設定される。この種の製法に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、第1の熱風W1の温度と熱可塑性繊維の融点との差は、70℃以下であることが好ましく、5℃以上50℃以下であることがより好ましい。
第1の熱風W1の速度は、効果的に融着させる観点から、2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。また、第1の熱風W1の速度は、装置規模をコンパクトにできる観点から、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。このようにして、繊維ウエブ110を熱融着させて凹凸形状に保持する。
次に、支持体雌材130を取り外し、凹凸形状が賦形された繊維ウエブ110の各繊維が適度に融着できるように、第2の熱風W2を吹き付けて、繊維同士をさらに融着させる。図7(C)に示すように、第1の熱風W1と同様に、繊維ウエブ110に対し、不織布1における非肌当接面となる側から第2の熱風W2を吹き付けることが好ましい。第2の熱風W2の温度は、熱可塑性繊維が厚み方向と平面方向とに形状を保持できるように、融点より高い温度に設定される。この種の製法に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、第2の熱風W2の温度と熱可塑性繊維の融点との差は、70℃以下であることが好ましく、5℃以上50℃以下であることがより好ましい。
第2の熱風W2の風速は、支持体雄材120の突起121の高さにもよるが、2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。これにより、繊維への熱伝達を十分なものとして繊維同士を融着させ、凹凸形状の固定を十分なものとすることができる。第2の熱風W2の風速は、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。これにより、繊維への過度な熱伝達を抑えて、良好な風合いの不織布1が得られる。
なお、支持体雌材の表面粗さを小さくすることで、第1の熱風W1の吹き付けの工程を省略することが可能である。表面粗さを小さくすることで、融着していない繊維をまとわりつかせることがなく、第2の熱風W2の吹き付けの工程での支持体雌材の取り外しが可能である。つまり、ウエブを作製後、支持体雄材と支持体雌材とを嵌合し、そのまま支持体雌材を取り外し、第2の熱風W2によって処理することが可能である。これにより、より簡便な加工となる。
熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられているものが挙げられる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘型、サイドバイサイド型などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分の芯鞘複合繊維)を用いる場合、繊維ウエブ110に吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また弾力性の観点から、芯鞘複合繊維の中でも、高融点である芯が多いほど弾力性が高い。そのため、断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。
以上説明したようにして、不織布1が作製される。支持体雄材120の突起121の側面では、繊維ウエブ110の繊維が揃って厚み方向に配向して、壁部領域12bが形成される。突起121の頂部には、繊維が平面方向に配向する底部14が形成される。底部14の一部には、鞍部16が形成される。また、凹部122の基部123には、繊維が平面方向に配向する頂部領域12aが形成される。
本実施形態においては、得られた不織布1は、図7(C)における下側の面が肌当接面であり、その反対側の面が非肌当接面となるようにおむつ10に組み込まれている。つまり、不織布1における肌当接面は、支持体雄材120が配された側であり、非肌当接面は、第1の熱風W1及び第2の熱風W2が吹き付けられた側である。そのため、第1の熱風W1の吹き付け量の相違から、肌当接面の頂部領域12aよりも非肌当接面の底部14の繊維同士の融着量が多くなる。しかし、これとは逆に、すなわち、図7(C)における不織布1の下側の面が非肌当接面となるようにおむつ10に組み込んでもよい。
さらに、熱量が少ないことに起因して、非肌当接面側の底部14の表面よりも、肌当接面側の頂部領域12aの表面の方が、滑らかで肌触りがよいものとなる。第1の熱風W1の吹き付けの工程を省略しても、第2の熱風W2からの距離により同様の効果が得られる。
また、支持体同士が嵌合することで、支持体雌材130側の繊維(不織布1における非肌当接面側の底部14となる繊維)は引っ張られて支持体雄材120へ向かう。そのため、支持体雄材120の突起121の頂部に賦形された非肌当接面側の底部14の繊維量は、支持体雄材120の凹部122の基部123に賦形された肌当接面側の頂部領域12aより少なくなる。
本実施形態の不織布の製造方法においては、不織布1の厚みは、支持体雄材120の突起121及び支持体雌材130の突起131の高さによって、適宜決定される。例えば、突起の高さを高くするとシートの見掛け厚みが厚くなり、低くするとシートの見掛け厚みが薄くなる。また、突起の高さを高くすると不織布1の繊維密度が低くなり、低くすると不織布1の繊維密度が高くなる。
なお、上述した製造方法では、一方向に連続した複数の突起131を有する支持体雌材130を用いたが、例えば図11に示すような、直交する二方向に連続した複数の突起131A,131Bを有する支持体雌材130Aに変更することもできる。ここで用いる支持体雌材130Aには、直交する二方向に連続する突起131A,131Bが交差することで、平面視で格子状に配置された複数の凹部132が形成される。すなわち、凹部132は、一方向に連続して延びる突起131Aと、これと直交する方向に連続して延びる突起131Bとによって囲まれた矩形状の領域であり、支持体雌材130Aの上面から下面に亘って貫通して形成されている。この凹部132は、支持体雄材120の突起121を受け入れるように、突起121に対応して形成されている。このような支持体雌材130Aに変更した場合も、同様の支持体雄材120を用いて、図7を参照して説明した方法にしたがって、不織布を製造することもできる。
図7(B)に示したように、支持体雄材120上の繊維ウエブ110に支持体雌材130Aを押し込むことで、支持体雄材120の各突起121が支持体雌材130Aの各凹部132に挿入されると共に、支持体雌材130Aの各突起131A,131Bが支持体雄材120の凹部122に挿入される。この状態の平面図を図11に模式的に示す。図11中、繊維ウエブは省略している。図示しない繊維ウエブは、支持体雄材120の突起121の四方の壁面と、これを囲む支持体雌材130Aの凹部132の壁面とに挟まれる。これによって、繊維ウエブ110の繊維が厚み方向に配向する。
ここで用いられる支持体雌材130Aは、一方向に延びる突起131Aのみが、図7(B)に示すように端面で繊維ウエブを支持体雄材120の凹部122の基部123に押し付けて、畝部に相当する繊維層が形成される。もう一方の方向においては、支持体雄材120の凹部122a内で突起131Bの端面で押し付けられた繊維ウエブは、支持体雄材120の凹部122の基部123には到達しない。繊維ウエブのこの領域は、鞍部16に相当する繊維層となる。
図7(C)に示した工程において第2の熱風W2を吹き付ける際、凹凸形状が賦形された繊維ウエブ110の露出面(支持体雄材120とは反対側の面)に、第2の繊維ウエブ(図示せず)を載置してもよい。この場合には、非肌当接面側に第2の不織布層をさらに備えた2層構造の不織布を得ることができる。
不織布1は、例えば、成人用や乳幼児用等の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の吸収性物品の表面シートとして好適に用いることができる。表面シートとして用いる場合、どちらの面を着用者の肌側に向けてもよい。繊維の配向方向を考慮すると、畝部12の頂部領域12a側を着用者の肌側に向けて用いることがより好ましい。
例えば、図1に示したおむつ10の表面シート2として不織布1を用いる場合、不織布1は、ホットメルト型接着剤を用いて吸収体4と一体化することができる。ホットメルト型接着剤としては、例えば、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体等のブロックコポリマー系のホットメルト型接着剤が挙げられる。
ホットメルト型接着剤は、任意の方法により塗付することができる。塗布方法としては、例えば、カーテンスプレー、スパイラルスプレー、スロットコート、ダイコート、パターンコート、ビートコート、ドットコートなどが挙げられる。不織布1と吸収体4との貼り合わせ方法については、特に限定されない。例えば、ホットメルト型接着剤を塗布した吸収体4に対して不織布1を貼り合わせる方法であっても良いし、ホットメルト型接着剤を塗布した不織布1に対して吸収体4を貼り合わせる方法であっても良いし、吸収体4及び不織布1の両方にホットメルト型接着剤を塗付した後、これらを貼り合わせる方法であっても良い。また、吸収体4と不織布1の貼り合わせと同時に、ホットメルト型接着剤を塗付することもできる。
疎水性のホットメルト型接着剤を用いることで、吸収体4と一体化された不織布1は、底部14の疎水性が壁部領域12bより大きくなる。ホットメルト型接着剤が塗布された吸収体4に不織布1を貼り合わせた場合、底部14のみに疎水性が付与される。一方、ホットメルト型接着剤が塗布された不織布1に吸収体4を貼り合わせた場合には、底部14に疎水性のホットメルト型接着剤が浸透し底部14全体が疎水性となる。いずれの場合も、性能が向上する観点から望ましい。
なお、疎水性のホットメルト型接着剤により底部14に疎水性を付与する方法の他、吸収体4と一体化する前に、不織布1の底部14に疎水化処理を施すこともできる。例えば、不織布1の非肌当接面側から、疎水剤を噴霧する手法が挙げられる。また、不織布1の非肌当接面側から、刷毛などで疎水性の油剤を塗布してもよい。他にも、非肌当接面側から、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の、任意の印刷方法により、底部14に疎水剤を付着させて疎水化処理を行うことができる。
また、非肌当接面側から、例えばカーテンスプレー、スパイラルスプレー、スロットコート、ダイコート、パターンコート、ビートコート、ドットコート、キスコート、タッチロールコートなどの手法により底部14に疎水剤を付着させて疎水化処理を施すこともできる。このように非肌当接面側から疎水化処理を施すことによって、簡便な手法で底部14の疎水性を壁部領域12bより大きくすることができる。この場合、非肌当接面側から疎水化処理が行われるので、畝部12の非肌当接面12cも疎水性となる。
疎水剤としては、疎水性のモノマー、オリゴマー、ポリマー、レジンを単独又は2種以上で用いることができる。疎水剤としては、例えば、酸クロライド型疎水剤、イソシアネート型撥水剤、ケテンダイマー型撥水剤、ピリジン縮合型撥水剤、エチレン尿素型撥水剤、メチロール化合物型撥水剤、エチレンオキサイド型撥水剤、珪素化合物型撥水剤、クロム錯化合物型撥水剤、チタン含有化合物型撥水剤、ジルコニウム含有化合物型撥水剤、フッ素化合物型撥水剤、ケイ素化合物型撥水剤などが挙げられる。
その他の撥水剤としては、油脂(植物油、動物油、植物脂、動物脂)、高級脂肪族化合物(飽和或いは不飽和の酸、アルコール、エステル、アミン、アミド、塩類)、ワックス(植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、変性ワックス)等を挙げることができる。なお、その変成物や、これらの混合物などを用いてもよい。ケイ素化合物型撥水剤は、鎖状のポリジメチルシリコーンが代表的で、メチル基の一部をポリエーテル、フェニル基やトリフルオロプロピル基にかえた変性シリコーン等がある。
フッ素化合物型撥水剤としては、パーフルオロアルキル基を含むアルコールのアクリル酸エステルのポリマーあるいはリン酸エステル等が用いられている。ケイ素化合物型撥水剤は、疎水性と共に柔軟性に優れ、肌に直接接触する表面剤の処理に好適である。フッ素化合物型撥水剤は、最も優れた疎水性を示し、特に親水化の為の界面活性剤に接触しても疎水性を維持できる点で有利である。
その他の方法として、底部14に含まれる繊維から親水剤を除去して、底部14の疎水性を大きくすることもできる。例えば、底部14を任意の溶媒に浸漬させ、底部14に含まれる繊維から親水剤を除去することができる。また、底部14を任意の溶媒が付着したキスロール、タッチロール等に接触させ、底部14に含まれる繊維から親水剤を除去してもよい。溶媒は、特に限定されず、任意のものを用いることが可能であるが、例えば水やアルコール類を用いることができる。
底部14の疎水性を大きくするためには、不織布1を製造するための繊維ウエブ110において、底部14に相当する部分に疎水性の繊維を配置してもよい。例えば、支持体雄材120の突起121の先端に絡みやすい位置に、疎水性の繊維を配置することで、底部14に相当する部分に疎水性の繊維を配置することができる。また、支持体雄材120の突起121の先端に絡みやすい形状の疎水性の繊維を用いることで、底部14に相当する部分に疎水性の繊維を配置することができる。
また、不織布1の製造に用いる支持体雄材120の突起121の先端に、疎水剤を塗布しておいてもよい。こうした手法を採用した場合には、疎水性を大きくする領域をより細かく制御することが可能となる。さらに、熱融着等、任意の方法によって、底部14に疎水化処理を施すこともできる。
以上のように、繊維の密度や配向方向が特定の条件を満たすとともに、底部の疎水性が他より大きいという不織布1を表面シート2として有しているので、本実施形態に係るおむつ10は、液体の引き込み性に優れるとともに、液戻りを抑制することが可能である。
次に、本発明の吸収性物品に用いる不織布の実施例を説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
[実施例1]
繊度1.8dtexの芯鞘型(PET/PE=5:5)の熱可塑性繊維を用いて繊維ウエブを作製した。熱可塑性繊維は、親水剤による親水化処理が施されている。繊維ウエブを支持体雄材120上に配置し、図7(A)に示すように、繊維ウエブ110上から支持体雌材130を支持体雄材120に押し込んで賦形処理を行った。第1の熱風W1を吹き付けた後、支持体雌材130を取り外して第2の熱風W2を吹き付けて融着処理を行い、不織布を作製した。
支持体雄材120には、高さが8mmの角柱形状の突起121が設けられている。突起121は、上面視において2mm×2mmの正方形状である。角柱のピッチはMD方向、CD方向それぞれ5mmとした。支持体雌材130としては、幅2mmの直線状の突起131を有する金属製のものを用い、支持体雄材120の突起121間に押し込んだ。支持体雌材130における隣り合った突起131、131間は5mmピッチで配置されている。支持体雄材120に支持体雌材130が押し込まれた時の繊維が入る空間は、片側0.5mmであり、支持体雄材120の突起121の両端合わせて1mmであった。
第1の熱風W1による吹き付け処理は、温度160℃、風速54m/s、吹き付け時間6sの条件で行った。第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間6sの条件で行った。得られた不織布は、繊度1.8dtexであった。実施例1の不織布は、図3に示したような畝部12、底部14、及び鞍部16を備えていた。
バットに疎水剤を高さ0.5mmになるように満たし、底部14側から浸漬して疎水化処理を施し、実施例1の不織布材料を得た。疎水剤としては、KF−96H−100,000cs(信越化学化学工業株式会社製)をヘキサンに20%で溶解させた溶液を用いた。
[実施例2]
実施例1にて用いた支持体雌材130を、図11に示すような、直交する二方向に連続した突起131A,131Bを有するものに変更した。繊維径1.8dtexの芯鞘型(PET/PE=5:5)の熱可塑性繊維を用い、図7に示す工程を含む方法によって不織布を作製した。熱可塑性繊維は、親水化処理が施されている。第1の熱風W1による吹き付け処理は、温度160℃、風速54m/s、吹き付け時間6sの条件で行った。第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間6sの条件で行った。
作製された不織布は、畝部12、底部14、及び鞍部16を備えていた。実施例1と同様の疎水化処理を底部14に施して、実施例2の不織布材料を得た。
[比較例1]
特開2012−136790号公報の図1に示す不織布を、繊度1.8dtexの熱可塑性繊維を用いて同公報に記載された製造方法に準拠して作製し、その不織布を比較例1の不織布試料とした。
[比較例2]
疎水化処理を施さない以外は、実施例1と同様の手法により比較例2の不織布試料を作製した。
[比較例3]
疎水化処理を行う代わりに、洗浄して繊維表面から親水剤を除去した以外は、実施例1と同様の手法により比較例3の不織布試料を作製した。親水剤の除去は、脱イオン水へ浸漬させた状態で超音波洗浄することにより行った。
実施例、及び比較例の不織布試料について、繊維の密度及び配向度を測定し、不織布試料から採取した繊維について、水に対する接触角を調べた。さらに、各不織布試料について、液流れ距離及び液戻り量を以下の手法により測定した。
<液流れ距離>
不織布試料は、10cm×20cmのサイズに切断して評価用試料とし、45度傾斜している載置部の上に市販のティッシュペーパーを介して固定した。評価用試料の上方10mmの高さから1gの脱イオン水を10秒かけて注入して、脱イオン水の流れを観察した。垂線上の注入点から評価用試料内に脱イオン水が引き込まれる場所までの距離を測定して、液流れ距離とした。
液流れ距離が短いほど、液体が内部に浸透しやすい、すなわち、液体の引き込み性が優れていることを示す。
<液戻り量>
水平に載置した不織布に120gの生理食塩水を注入し、注入完了から10分間静置した。アドバンテック社製のろ紙No.5C(100mm×100mm)を20枚重ねて準備した吸収シート(質量M1)を、不織布試料の上に配置した。さらに、生理用食塩水の注入点を中心として3.5kPaの圧力が印加されるように調整した錘を置いた。1分載置した後のろ紙の質量をM2として、(M2−M1)を液戻り量とした。液戻り量は、小さいほど好ましい。
得られた結果を、その他の物性とともに下記表1にまとめる。
上記表1に示すように、実施例の不織布試料は、壁部領域の繊維密度が頂部領域及び底部より小さい。また、実施例の不織布試料は、壁部領域の繊維の配向度が60%以上と高い。しかも、水に対する接触角は、頂部領域及び壁部領域から採取した繊維より底部領域から採取した繊維のほうが大きく、底部の疎水性が相対的に大きい。こうした条件を備えているので、実施例の不織布材料は、液流れ距離が比較例1及び3より小さく、液戻り量も比較例1及び2より少ない。
実施例の不織布材料を表面シートとして用いることによって、液体の引き込み性に優れるとともに、液戻りを低減することが可能な吸収性物品が得られる。
なお、上記には本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態では、吸収性物品としておむつ10を例に挙げて説明したが、本発明の吸収性物品は、このようなおむつに限らず、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の種々の吸収性物品に適用可能である。