JP2019208300A - 電動機の界磁位置検出方法 - Google Patents

電動機の界磁位置検出方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019208300A
JP2019208300A JP2018101553A JP2018101553A JP2019208300A JP 2019208300 A JP2019208300 A JP 2019208300A JP 2018101553 A JP2018101553 A JP 2018101553A JP 2018101553 A JP2018101553 A JP 2018101553A JP 2019208300 A JP2019208300 A JP 2019208300A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
voltage
phase
open
angle
phase voltage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018101553A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6402276B1 (ja
Inventor
山本 清
Kiyoshi Yamamoto
山本  清
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hokuto Seigyo KK
Original Assignee
Hokuto Seigyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hokuto Seigyo KK filed Critical Hokuto Seigyo KK
Priority to JP2018101553A priority Critical patent/JP6402276B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6402276B1 publication Critical patent/JP6402276B1/ja
Publication of JP2019208300A publication Critical patent/JP2019208300A/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Control Of Motors That Do Not Use Commutators (AREA)

Abstract

【課題】簡単なハードウェアにて単一制御手法で零速から最高回転数まで高精度に界磁位置を検出する方法を提供する。
【解決手段】MPU51は、電圧測定部57により三相コイル端子電圧を測定し、通電相間電圧の1/2を中性点電位として開放相測定電圧と中性点電位の差分を演算し、開放相誘起電圧が単調減少する通電区間は符号を反転して開放相電圧を求め、計時部56により当該通電区間の区間始点時刻から三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し、計測時間を6倍しその逆数を仮想回転数とし、仮想回転数に基づいて当該通電区間内の所望の所定位相角における開放相電圧を演算して仮想開放相電圧とする。また、開放相電圧と仮想開放相電圧とを大小比較し、開放相電圧が仮想開放相電圧と一致あるいは超えるまで測定及び演算を繰り返し、仮想開放相電圧を通電時間の経過に応じて減少させながら開放相電圧と比較して所定位相角を検出する。
【選択図】図8

Description

本開示は、ブラシレスDCモータなどの電動機の界磁位置検出方法に関する。
従来、小型直流モータはブラシ付きDCモータが用いられてきたが、ブラシ音・電気ノイズ・耐久性等に問題がありブラシレスDCモータが登場した。さらに最近では小型軽量化・堅牢化・ローコスト化等の観点から位置センサを持たないセンサレスモータが注目され、まず情報機器分野のハードディスクドライブ等に採用されたがベクトル制御技術の発展により家電・車載分野でも採用され始めた。
図12に位置センサを備えないセンサレスモータの一例として3相ブラシレス直流(DC)モータの構成を示す。回転子軸1を中心に回転する回転子2にはS極とN極で一対の永久磁石3が設けられている。永久磁石界磁の磁極構造(IPM,SPM)あるいは極数等は様々である。固定子4には120°位相差で設けられた極歯に電機子巻線(コイル)U,V,Wが配置され、中性点(コモン)Cを介してスター結線されている。
図13に従来のセンサレス駆動回路例のブロックダイアグラムを示す。MOTORは3相センサレスモータである。MPU51はマイクロコントローラ(制御部)である。INV52は、3相ハーフブリッジ構成のインバータ回路(出力部)である。ZEROはゼロクロスコンパレータ54とダミーコモン生成部55である。なお実際の駆動回路には、このほかに電源部、ホストインターフェース部等が必要であるが煩雑化を避けるため省略してある。
図14に3相ブラシレスDCモータの駆動方式の代表的な例として120°通電のタイミングチャートを示す。区間1はU相からV相に、区間2はU相からW相に、区間3はV相からW相に、区間4はV相からU相に、区間5はW相からU相に、区間6はW相からV相に、矩形波通電される。破線は誘起電圧波形である。HU〜HWはモータに内蔵されるホールセンサの出力波形であり、従来の位置センサ付きブラシレスDCモータはこの信号に基づいて励磁切り替えが行われる。
位置センサを用いないセンサレス駆動方式により励磁切り替えを行う方法としては、中速度以上で回転時に中性点電位を基準として開放相(非通電相)電圧を比較し誘起電圧ゼロクロス点を検出し30°遅延タイマー等を用いて励磁切り替え点を検出する30°遅延法(基準電圧比較法あるいはゼロクロス点検出法)が広く知られており先行技術として以下の文献がある。
特許第5634963号公報
モータが零速あるいは低速域では誘起電圧の検出が困難であるため、始動はオープンループ制御に頼らざるを得ず、始動不安定あるいは負荷変動時は始動に失敗する等の問題がある。上記特許文献1はそれを解決しようとするものであるが、中速度以上のセンサレス駆動時は前述の30°遅延法を用いており、低速回転域と中高速回転域とで界磁位置検出方式を切り替える構成となっており位置検出プログラムの複数化と切り替えプログラムの使用が強いられている。
また、一般的に広く用いられている30°遅延法においてはゼロクロス点と励磁切り替え点との30°位相差をタイマーという時間要素により整合させていることから速度依存性があり、速度変動時は大きな位置検出誤差が生じてトルクが低下しさらに加速度が大きい場合は脱調し再始動モードに入ってしまう等の問題がある。この30°遅延法における重大な欠点によりセンサレスモータの用途が限られている。
以下に述べるいくつかの実施形態に適用される開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ブラシレスDCモータを120°通電方式でセンサレス駆動する際、簡単なハードウェアにて単一制御手法で零速から最高回転数まで高精度に界磁位置を検出し全速度域で閉ループ制御を可能とする電動機の界磁位置検出方法を提供することにある。
永久磁石界磁を有する回転子と三相コイルを有する固定子を備え、電気角120°通電方式により駆動する電動機の界磁位置検出方法であって、ハーフブリッジ型インバータ回路を介して前記三相コイルに双方向通電する出力部と、三相コイル端子電圧をA/D変換して制御部に送出する電圧測定部と、当該通電区間の区間始点時刻から前記三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し前記制御部に送出する計時部と、上位コントローラからの指令により前記出力部の出力を制御し、連続回転が可能な60°通電区間単位の通電角度情報と通電パターン情報とを記憶しそれに基づいて前記三相コイルへの通電状態を切り替え、前記電圧測定部及び前記計時部の測定値が入力されて前記60°通電区間における界磁位置を判定する前記制御部と、を備え、当該通電区間の任意のタイミングで前記電圧測定部により前記三相コイル端子電圧を測定し、通電相間電圧の1/2を中性点電位として開放相測定電圧と中性点電位の差分を演算し、開放相誘起電圧が単調減少する通電区間は符号を反転して開放相電圧を求めるステップと、前記計時部により当該通電区間の区間始点時刻から前記三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測するステップと、前記計時部による計測時間を6倍しその逆数を仮想回転数とし、この仮想回転数に基づいて当該通電区間内の中点を0°として0°から電気角30°以内の所望の所定位相角における開放相電圧を演算して仮想開放相電圧とするステップと、を含み、前記制御部は、前記開放相電圧と前記仮想開放相電圧とを大小比較し、前記開放相電圧が前記仮想開放相電圧と一致あるいは超えるまで前記測定及び演算を繰り返し、一致あるいは超えたら前記所定位相角と判定する動作を繰り返すことで、前記仮想開放相電圧を通電時間の経過に応じて減少させながら前記開放相電圧と比較して前記所定位相角を検出することを特徴とする。
前記制御部は、理論的区間終点位相角である30°から所望の進角角度を減算して所定位相角とし前記所定位相角検出処理を行い、始動時あるいは進角値設定時に進角誤差が発生しても特段の誤差補償を行わず位相誤差の収束性により所望の進角値に正確に一致する進角制御を行うようにしてもよい。
前記制御部は、パルス幅変調(PWM)を含むパルス通電を行う際に、前記仮想開放相電圧に前記所定位相角において通電2相間のインダクタンス偏差により発生するインダクタンス起電圧を加算するようにしてもよい。
前記電圧測定部により区間始点近傍にて三相コイル端子電圧を測定するステップと、リニヤ通電時は通電二相間電圧の1/2を基準電位aとし、パルス通電時は通電二相間電圧の1/2に区間中点で発生するインダクタンス起電圧を加算して基準電位aとし、開放相測定電圧が前記基準電位aを横切るゼロクロス点を検出するまで上記測定を繰り返すステップと、ゼロクロス点を検出したら任意のタイミングで前記電圧測定部により前記三相コイル端子電圧を測定するステップと、リニヤ通電時は通電二相間電圧の1/2を基準電位bとし、パルス通電時は通電二相間電圧の1/2に区間中点で発生するインダクタンス起電圧を加算して基準電位bとし、開放相測定電圧と前記基準電位bの差分を演算し、開放相誘起電圧が単調減少する通電区間は符号を反転して開放相電圧を求めるステップと、記計時部により当該通電区間のゼロクロス点検出時刻から前記三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し、前記計測時間を12倍しその逆数を仮想回転数とするステップと、前記仮想回転数に基づいて当該通電区間内の中点を0°として0°から電気角30°以内の所望の所定位相角における開放相電圧を演算して仮想開放相電圧とするステップと、を含み、前記制御部は、前記開放相電圧と前記仮想開放相電圧とを大小比較し、前記開放相電圧が前記仮想開放相電圧と一致あるいは超えるまで前記三相コイル端子電圧測定及び前記仮想開放相電圧の演算を繰り返し、一致あるいは超えたら前記所定位相角と判定することで、ゼロクロス点検出時刻から前記所定角度の検出を行うようにしてもよい。
上述した電動機の界磁位置検出方法を用いれば、界磁位置検出方式の切り換えなしで零速から最高回転まで対応でき使いやすく切り替えショックも発生しない。従来の30°遅延法に比較して、加減速の許容範囲が広くトルク低下が少なく脱調しないことからインパクト負荷など大きな負荷変動に対して有利である。また位置検出誤差が小さく最適な励磁切り替えが行われることから高効率・低騒音化され、進角制御も容易である。また開放相電圧波形と仮想開放相電圧波形の勾配が反対なことから交点検出が確実となり、低速域で有利であり耐ノイズ性も向上する。
またシンプルな単一アルゴリズムで制御できソフト開発の負荷を大幅に低減できる。従来のセンサレス駆動方式の多くは回転速度に応じて複数の位置検出プログラムを切り替える必要があったが、本案は位置検出プログラムが一つで済み切り替えも不要である。また速度検出・マスク処理・30°遅延などのプログラムも不要で制御ソフトが簡略化される。また自動的に所定位相角に一次遅れ特性でスムーズに収束し位相誤差補正プログラムも省略できる。
これらの特長から位置検出に要求される演算量が少なく高速処理できることから超高速回転も可能であり、さらにソフト・ハードのリソースを抑えることでローコスト化及び低消費電力化を図ることができる。
仮想開放相電圧の波形例である。 仮想開放相電圧の進角の波形例である。 仮想開放相電圧の位相誤差収束後の進角波形例である。 仮想開放相電圧の位相誤差の波形例である。 図4の位相誤差の収束波形例である。 仮想開放相電圧の変速誤差の波形例である。 区間中点から時間測定した場合の変速誤差の波形例である。 モータ駆動回路のブロック構成図である。 リニヤ通電時の位置検出動作フローチャートである。 パルス通電時の位置検出動作フローチャートである。 ゼロクロス点から位置検出する際の動作フローチャートである。 センサレスモータの構成図である。 従来のモータ駆動回路のブロック構成図である。 120°通電タイミングチャートである。
以下、電動機の界磁位置検出方法の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本願発明は、電動機の一例として、回転子に永久磁石界磁を備え、固定子に巻き線を120°位相差で配置してスター結線し、相端がモータ出力部に接続されたセンサレスモータを用いて説明する。
以下では、一例として三相DCブラシレスモータをセンサレス駆動するセンサレスモータの永久磁石界磁位置検出方法について、センサレスモータ駆動装置の構成と共に説明する。図12を参照して本発明に係る三相ブラシレスDCモータの一実施例を示す。一例として2極永久磁石ロータと3スロットを設けた固定子4を備えた三相ブラシレスDCモータを例示する。モータはインナーロータ型でもアウターロータ型でもいずれでもよい。また、永久磁石型界磁としては永久磁石埋め込み型(IPM型)モータや表面永久磁石型(SPM型)モータのいずれであってもよい。
図12において、回転子軸1には回転子2が一体に設けられ、界磁として2極の永久磁石3が設けられている。固定子4には120°位相差で極歯U,V,Wが永久磁石3に対向して配置されている。固定子4の各極歯U,V,Wに巻線u,v,wを設けて相間をコモンCでスター結線して後述するモータ駆動装置に配線された三相ブラシレスDCモータとなっている。尚、コモン線は、不要であるので省略されている。
次に、図8を参照して三相センサレスモータ駆動回路の一例を示す。
駆動方式としては120°通電バイポーラ矩形波励磁を想定している。
MOTORは三相センサレスモータである。MPU51はマイクロコントローラ(制御部)である。MPU51は、三相コイル(U,V,W)に対する6通りの通電パターンと各通電パターンに対応する120°通電の励磁切り替え区間(区間1〜区間6)を指定する界磁位置情報を記憶し、上位コントローラ50からの回転指令RUNに応じて後述する出力部をスイッチング制御して励磁状態を任意に切り替える。
インバータ回路52(INV:出力部)は、三相コイル(U,V,W)に通電し、モータトルクを制御するために励磁相切り替えあるいはPWM制御などのスイッチング動作を行う。インバータ回路52は、スイッチング素子に逆並列に接続されるダイオードを備え、正極電源ライン及び接地電源ラインに任意に接続可能なハーフブリッジ型スイッチング回路が三相分設けられている。
タイマー回路56(TMR:計時部)は、当該通電区間の始点時刻等から後述する電圧測定部により三相コイル端子電圧を測定するまでの経過時間を計測し、測定結果をMPU51(制御部)に送出する。通常タイマー回路56はMPU51に内蔵されている。
A/D変換回路57(ADC:電圧測定部)は、コイル出力端子U,V,Wと接続され、MPU51(制御部)からの変換開始信号により三相それぞれのコイル電圧を同時サンプリングし、順次アナログ・デジタル変換し、変換結果をMPU51に送出する。通常ADC57はMPU51に内蔵されており、内蔵ADCを利用する場合は最大入力電圧が低いため抵抗による分圧回路RAを設けることが望ましい。
(原理)
通電時間から通電区間終点の開放相電圧(図1VZ′)を演算し、実際の開放相電圧(図1VZ1)と一致したら区間終点と判定する。120°通電方式は6区間で1電気角回転することから、区間時間をtとするとレシプロカル法により電気角の回転数n=1/(6t)と表せる。ここで実際の回転数に関わりなく区間始点時刻からの任意の経過時間t′ですでに1区間分の位相角60°回転したものと仮定すると、経過時間t′の瞬時回転数を仮想回転数n′としてn′=1/(6t′)であり、さらに仮想回転数n′に基づいて所定位相角における仮想開放相電圧VZ′を次式にて求めることができる。
VZ′=(Ke×sin(θ′)×1.5)/(6t′) ・・・式(1)
但しKeは誘起電圧定数でその値は既知とする。θ′は区間中点を0°とする界磁角度で、0°から電気角30°以内の所望の所定位相角とする。例えば所望の所定角度が区間終点の場合ならば30°である。なおコモン電圧を加算するため係数1.5を掛けている。以上から式(1)右辺の分子(Ke×sin(θ′)×1.5)は定数であり、仮想開放相電圧VZ′は経過時間t′に反比例し経過時間とともに指数カーブを描いて単調減少する。
一方、等速回転時の実際の開放相電圧VZは経過時間とともにsin(θ)で変化し次式で表される。
VZ=(Ke×sin(θ)×1.5)/(6t) ・・・式(2)
但しtは区間時間であり回転数により決定され等速回転であることから一定値となり、従って式(2)右辺の分母(6t)は定数である。θは区間中点を0°または180°とする界磁角度であり、等速回転時の開放相電圧VZはサインカーブを描く。またコモン電圧を加算するため係数1.5を掛けている。なお演算の便宜上、開放相誘起電圧が単調減少する区間(奇数番号区間)は符号を反転する。これにより6区間とも区間中点を0°として扱うことができ、すべての区間で開放相電圧VZはサインカーブを描いて単調増加する。
以上から仮想開放相電圧VZ′波形は単調減少し、開放相電圧VZ波形は単調増加し双方は交差する。交点では電圧VZ′=VZかつ時間t′=tが成立するから位相角θ′=θである。言い換えれば仮想開放相電圧VZ′と実際の開放相電圧VZの交点が所望の所定位相角θ′である。ただし、位置検出が有効となるためには、区間始点時刻と時間測定開始時刻が一致することと、等速回転状態であることが条件で、条件が満たされれば位置検出誤差は0である。
従来の30°遅延法では開放相電圧と比較する電圧を中性点電位である0Vに固定して位相角0°を検出していたため励磁切り替え点30°を検出できなかったが、本案は従来中性点電位に固定されていた比較電圧即ち閾値を仮想開放相電圧VZ′に置き換えて時間に応じて変化させることで励磁切り替え点を直接検出することに特徴がある。従って30°の遅延処理は不要であり遅延タイマーに起因していたセンサレス駆動の問題点を一掃できる。
以上から当該区間において、周期的に開放相電圧VZの測定と仮想開放相電圧VZ′の演算を行いVZとVZ′を大小比較すれば中点を0°として0°から電気角30°以内の所望の所定位相角を検出できる。
尚、所定位相角は一つに限らず、複数設定しそれぞれで仮想開放相電圧を演算することで複数の位相角を検出することができる。さらに時間測定開始時刻も複数とすることができる。
所定位相角を励磁切り替え位置としておき、所定位相角を検出したら励磁パターンを歩進すれば連続回転できる。本案による界磁位置検出処理において従来必要であった速度検出、ゼロクロス点検出、30°遅延処理等は行われていない。当然これらの処理に含まれていた遅延要素も無く位相遅れも発生しない。従って位置検出プログラムは単純化され高精度回転と一次遅れ系の素直な応答性が得られる。
図1に横軸を時間、縦軸を電圧として、仮想開放相電圧波形VZ′(破線)及び異なる速度における開放相電圧波形VZ1〜VZ3(実線)を示す。VZ1は高速回転波形例であり、VZ2はVZ1の1/2の中速回転波形例、VZ3はVZ1の1/4の低速回転波形例である。仮想開放相電圧波形VZ′は所定位相角を区間終点(位相角30°)とした場合の波形で、VZ1〜VZ3とVZ′との交点X1〜X3がそれぞれの速度における区間終点である。なお、仮想開放相電圧VZ′波形の初期部分は、時間測定開始直後のt′が小さいことからVZ′は非常に大きな値となるため表示されていない。以後、本文にて引用される各図におけるVZ′も同様である。
図1の破線から明らかなように、時間の経過とともに閾値である仮想開放相電圧VZ′が減少してゆくことから低速側の限界速度は原理的には存在せず、極低速回転まで位置検出でき減速許容範囲も広い。実用上は異常検出のために区間時間に制限を設けるなどの保護手段が講じられることから、その時の回転数が最低回転数となる。
これに対し、例えば区間始点で前回区間時間などから回転数を求め区間終点の開放相電圧VZを推定する方法は当該区間内では閾値Vthが一定であり、区間内で速度が半分以下に減速した場合は開放相電圧のピーク値でさえ閾値Vthに到達しなくなり位置検出できなくなる。参考までにVZ1に対する閾値Vth(水平点線)を図示するが減速率50%に相当するVZ2が減速時の限界速度であることが判る。つまり減速に対する許容範囲が狭い。
高速側の限界はコイル電圧の測定周期によって決まり、例えば5us周期で測定できるものとし区間あたり最低5回の測定を行うことを限界条件とした場合、電気角周期は5us×5回×6区間=150usとなり6.7krpsまたは400krpm(2極モータ換算)まで適用でき、本案は低速回転領域のみならず高速回転領域においても広い許容範囲を持っている。
上位コントローラ50からの指令によりMPU51は、インバータ回路52の出力を制御し、連続回転が可能な60°通電区間単位の通電角度情報と通電パターン情報とを記憶しそれに基づいてインバータ回路52の通電状態を切り替える。MPU51には、A/D変換回路57(電圧測定部)及びタイマー回路56(計時部)による測定値が入力され、60°通電区間における界磁位置を判定する。このとき、MPU51は当該通電区間の任意のタイミングでA/D変換回路57により三相コイル端子電圧を測定し、通電相間電圧の1/2を中性点電位として開放相測定電圧と中性点電位の差分を演算し、開放相誘起電圧が単調減少する通電区間は符号を反転して開放相電圧VZを求める。タイマー回路56により当該通電区間の区間始点時刻から三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し、計測時間を6倍しその逆数を仮想回転数とする。また、仮想回転数に基づいて当該通電区間内の所望の所定位相角における開放相電圧VZを演算して仮想開放相電圧VZ´とし、開放相電圧VZと仮想開放相電圧VZ´とを大小比較する。開放相電圧VZが仮想開放相電圧VZ´と一致あるいは超えるまで上述の測定及び演算を繰り返し、一致あるいは超えたら所定位相角と判定することで、仮想開放相電圧VZ´を通電時間に応じて減少させながら開放相電圧VZと比較し所定位相角を検出する。
(進角制御)
隣接区間の開放相誘起電圧が一致する位相角が理論的な区間始点である。しかしコイル電流遅れの補償あるいはリラクタンストルク利用のために5°〜15°程度理論的な区間始点より前方で励磁切り替えすることが広く行われておりこれを進角制御という。
そこで、所望の所定位相角を理論的区間終点位相角30°より小さくすれば仮想開放相電圧VZ′の値は小さくなりその結果、開放相電圧VZとの交点の位相が進み、交点を検出したら交点位相角を区間終点(=次区間始点)と判定し直ちに励磁切り替え及び次区間の時間測定を開始すれば進角制御ができる。
図2に進角シミュレーション波形例を示す。横軸は時間、縦軸は電圧で、VZ(実線)は開放相電圧波形である。VZ′00〜VZ′30(破線)は仮想開放相電圧波形で、VZ′00は進角なし、VZ′10は進角10°(所定位相角20°)、VZ′20は進角20°(所定位相角10°)、VZ′30は進角30°(所定位相角0°)の進角波形例である。なお進角30°時の仮想開放相電圧波形VZ′30はsin(0°)=0であることから常に0Vとなり中性点電位と一致しこれが進角の限界値である。VZとVZ′10〜30の交点が進角制御時の交点で、進角なしの所定位相角に対するそれぞれの波形の進角量をLA10、LA20,LA30として図示してある。
ところで例えばLA10をみると進角量は10°ではなく約7°しかなく所望の進角値と一致しない。これは時間測定を理論的な区間始点から開始しているため時間測定の開始時刻が進角時の区間始点時刻からずれていることに起因する。このような進角設定値と実際の進角量との誤差は始動時あるいは進角値の設定を変更した直後に発生する。
しかし本案は穏やかな位相誤差の収束性(後述「誤差補償」で詳述する)を備えており、特段の位相補償をしなくとも前記の進角誤差は4区間ほどで自動的に0に収束し所望通りの進角値となる。従って理論的な区間終点位相角30°から所望の進角量を減算した角度を所定位相角として設定すれば次区間の区間始点は理論的な区間始点より進角量だけ位相が進み、前記の仮想開放相電圧VZ′自体が小さくなることと区間始点の位相が理論的な区間始点時刻t0より進むことの双方の効果により進角誤差のほとんどない設定値通りの進角制御が実現できる。例えば10°の進角制御をする場合は、30°−10°=20°であるから所定位相角を20°に設定すればよい。
図3に開放相電圧の位相誤差収束後の進角シミュレーション波形例を示す。符号の説明は図2を援用する。t0は理論的な区間始点時刻である。始動時などに発生する進角誤差は4区間以内で±1°以下に低減して図3の状態となり、以後も進角誤差は0に収束してゆき正確な進角制御が行われる。例えばLA10は正確に進角設定値どおりの10°となっている。
このように進角制御を行う際、理論的区間終点位相角である30°から所望の進角値を減算して所定位相角とし前述した所定位相角検出処理を行い、始動時あるいは進角値設定変更時等に進角誤差が発生しても特段の誤差補償を行わず本案の備える位相誤差の収束性により所望の進角値に正確に一致する進角制御を行うことが好ましい。
(パルス通電)
また、パルス幅変調(以後PWMと呼ぶ)などパルス通電時の開放相電圧VZは、開放相の誘起電圧に通電2相のインダクタンス偏差によるインダクタンス起電圧が重畳し、インダクタンス起電圧は界磁位相角に応じて変化する。そこで仮想開放相電圧VZ′に所定位相角θ′におけるインダクタンス起電圧を重畳させれば、仮想開放相電圧VZ′と開放相電圧VZの交点において双方のインダクタンス起電圧は等しくなり交点の電圧レベルがシフトするだけで位相角は変化せず、正確な所定位相角の検出が可能となる。
なお、所定位相角におけるインダクタンス起電圧はあらかじめ測定するかあるいは演算により求めて記憶しておくことが可能であり、インダクタンス起電圧値は既知量として扱うことができる。
(誤差補償)
励磁切り替え位置が±30°ずれるとトルクはピークトルクの50%に低下するが多くの用途でこの程度の誤差を瞬時最大許容誤差と考えることができ、一方、定常回転時の許容誤差としては±1°程度であれば充分な高精度と考えられる。位置検出誤差の要因としては位相誤差と変速誤差があげられるが、本案は閾値である仮想開放相電圧VZ′が時間とともに減少してゆく特性を備えていることから、位相誤差あるいは変速誤差が発生しても誤差は比較的小さく抑えられ、さらに所望の位相角を検出するごとに位相誤差が補償され数区間で所定位相角に収束し収束までの挙動も滑らかで急減速時にも脱調しない堅牢性を備えていると言える。
従来の30°遅延法では閾値を中性点とし固定していることからゼロクロス点ごとに位相補償され1区間で誤差はキャンセルされる。それに対し本案は閾値を変化させており閾値の変化分が位相補償となることから区間ごとの位相補償量は少なく、誤差がほぼ0に収束するのに4区間程度要する。しかしこの穏やかな位相補償特性は実用上においては区間ごとに周期変動を繰り返す微小振動の抑制に効果的であり、実機モータによる検証でも微小振動が抑制され区間周期が非常に安定することを確認している。この特性により低振動性や効率向上また高速回転域の拡大が期待できる。
位置検出誤差の要因としては位相誤差と変速誤差があげられる。以下それぞれの誤差と低減対策について詳述する。
(位相誤差)
まず経過時間の計測開始が区間始点時刻からずれる位相誤差がある。計測開始が早すぎると仮想開放相電圧波形VZ′の位相も早くなり、交点位相も進む。あるいは計測開始が遅れると交点位相も遅れる。式(1)の区間始点時刻の前提条件が崩れることから発生する誤差である。
図4に位相誤差シミュレーション波形を図示する。横軸は時間でt0は区間始点時刻、縦軸は電圧である。VZ(実線)は開放相電圧、VZ′及びVZ′1〜VZ′2(破線)は仮想開放相電圧波形で、VZ′は区間始点時刻t0から、VZ′1は区間始点時刻t0より30°前から、VZ′2は区間始点時刻t0より30°過ぎてから時間測定を開始した波形例である。VZとVZ′の交点X0が正確な所定位相角であり、X0に対するVZ′1交点の差分ER1あるいはVZ′2交点の差分ER2が位相誤差である。
本案は仮想開放相電圧VZ′が経過時間とともに小さくなることから位相誤差が当該区間終点時では区間始点時より小さくなる収束性を備えており、位相誤差は数区間で実用上問題のないレベルにまで減少し所定位相角に収束する。これにより自動的に位相誤差は補正されまた補正の挙動も一次遅れ系で好ましいものである。計測開始位相が遅れた場合も同様に数区間で所定位相角に収束する。
図5に位相誤差の収束シミュレーション波形を図示する。横軸は区間数、縦軸は位相誤差角度である。時間測定の開始点が区間始点時刻より進んだ場合を−、遅れた場合を+として表示している。第1区間の開始時に最大許容誤差である−30°及び+30°が発生した場合の2波形を図示しており、それぞれ第1区間終点(=第2区間始点)では−8.4°及び+13.5°に減少し、第4区間の終点では−0.3°及び+0.7°と所定位相角に穏やかに収束していることが判る。つまり最大許容誤差30°の場合でもほぼ4通電区間(=電気角で240°)で実用上問題のない位相誤差±1°以下に自動的に収束している。
このように本案は所定位相角に自動的に収束する特性を備えていることから、位相誤差に対して堅牢と言える。
(変速誤差)
次に変速時に位相がずれる変速誤差がある。式(2)の等速回転の前提条件が崩れることから発生する誤差である。
従来の30°遅延法では加速時は大きな遅角となり効率低下と騒音発生を招き、減速時は大きな進角となりトルクが低下しさらに脱調等の問題があったが、本案では閾値である仮想開放相電圧VZ′が大きな値から指数カーブで単調減少することから加速時及び減速時も誤差が小さくトルク低下が抑えられ、またすでに説明したようにパルス通電時は零速まで位置検出できることから脱調しない。
図6に変速誤差シミュレーション波形を図示する。条件は区間中点(ゼロクロス点)にて速度が切り替わったものとした。VZ′(破線)は仮想開放相電圧波形、VZ(実線)は等速時の、VZ4(実線)は加速時の、VZ5(実線)は減速時の、開放相電圧波形である。X4は加速時の、X5は減速時の所定位相角理論値であり、矢印EA4及びEA5は変速誤差である。参考までに従来の30°遅延法における誤差を矢印EB4及びEB5で示す。本条件では加速時はEA4=−8.4°に対しEB4=+30°、減速時はEA5=+6°に対しEB5=−15°となり、図6からもEA4<EB4,EA5<EB5であることが判り、加速時及び減速時ともに本案のほうが従来の30°遅延法より大幅に誤差が小さいことを示している。また120°通電においては原理的にトルクリップルが12%発生するが、位置検出誤差により悪化し30°遅延法では50%(加速時)に増大するのに対し、本案は22%に改善されまた騒音も減る。
以上の位相誤差及び変速誤差に対する考察から本案は従来の30°遅延法に比べて高精度で位置検出可能であることが判る。
(ゼロクロス点開始法)
上述のとおり変速時は区間内で速度が変化し変速誤差が発生するが、変速誤差は時間測定期間の長さにほぼ比例すると考えられ時間測定期間を短くすれば変速誤差を低減できる。そこで経過時間の測定開始時刻を区間始点時刻ではなく区間中点時刻(ゼロクロス点時刻)とすれば確率的に変速誤差は概ね1/2に低減できると考えられる。
そのためにはゼロクロス点の検出が必要であり、リニヤ駆動時は三相のコイル電圧を測定し通電2相間電圧/2を中性点電位とし、開放相が中性点電位を横切る点を検出すればゼロクロス点を検出できる。パルス駆動時はインダクタンス起電圧が重畳するため通電2相間電圧/2の基準電圧に区間中点におけるインダクタンス起電圧を加算して中性点電位とし、そのうえで開放相電圧が中性点電位を横切る点を検出してゼロクロス点とする。
またパルス駆動時は前述のように仮想開放相電圧VZ′に所望の所定位相角におけるインダクタンス起電圧を加算する必要がある。
ゼロクロス点を検出したら、ゼロクロス点時刻から経過時間の測定を開始し、上述と同様に3相のコイル電圧測定及び仮想回転数と仮想開放相電圧の演算等を行い所定位相角を検出する。その際の時間測定する対象区間は30°であり1電気角は12区間となることから仮想回転数は1/12t′とし、区間始点時刻から時間測定する場合の半分の速度として演算する。
図7に、ゼロクロス点時刻から位置検出を行ったシミュレーション波形を示す。符号の説明は図6を援用する。VZZ′(破線)はゼロクロス点時刻から時間測定を開始した時の仮想開放相電圧波形である。
区間始点時刻から時間計測した仮想開放相電圧VZ′は変速誤差EA4及びEA5が発生するが、ゼロクロス点時刻から時間計測した仮想開放相電圧波形VZZ′は理論値X4及びX5にて交差し誤差0である。つまり時間測定をゼロクロス点時刻から開始した場合は区間前半における変速誤差が影響せず、区間始点時刻から位置検出した場合に比べて変速誤差は低減されることが判る。
A/D変換回路57(電圧測定部)により区間始点近傍にて三相コイル端子電圧を測定し、リニヤ通電時は通電二相間電圧の1/2を基準電位aとし、パルス通電時は通電二相間電圧の1/2に区間中点で発生するインダクタンス起電圧を加算して基準電位aとし、開放相測定電圧が前記基準電位aを横切るゼロクロス点を検出するまで上記測定を繰り返す。ゼロクロス点を検出したら任意のタイミングでA/D変換回路57により三相コイル端子電圧を測定し、リニヤ通電時は通電二相間電圧の1/2を基準電位bとし、パルス通電時は通電二相間電圧の1/2に区間中点で発生するインダクタンス起電圧を加算して基準電位bとし、開放相測定電圧と基準電位bの差分を演算して開放相電圧VZとし、タイマー回路56(計時部)により当該通電区間のゼロクロス点検出時刻から三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し、計測時間を12倍しその逆数を仮想回転数とする。この仮想回転数に基づいて当該通電区間内の中点を0°として0°から電気角30°以内の所望の所定位相角における開放相電圧を演算して仮想開放相電圧VZ´とし、MPU51は、開放相電圧VZと仮想開放相電圧VZ´とを大小比較し、開放相電圧VZが仮想開放相電圧VZ´と一致あるいは超えるまで三相コイル端子電圧測定及び仮想開放相電圧の演算を繰り返し、一致あるいは超えたら所定位相角と判定することで、ゼロクロス点検出時刻から所定角度の検出を行う。
(実施例1)
図8に示すモータ駆動回路によるリニヤ通電時の動作手順について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。図8のモータ駆動回路を用いてリニヤ通電にて120°通電し、区間終点(位相角30°)を検出する。誘起電圧定数Keは既知とする。θ′=30°、sin(θ′)=0.5とする。
以下、図9のフローチャートのSTEPごとに説明する。
MPU51は、区間始点時刻にて、タイマーをクリヤーし計時を開始する(STEP1)。インバータ回路52を通じて三相コイルに通電し、A/D変換回路57にて三相分のコイル電圧を測定する(STEP2)。電圧測定までの時間t′をタイマー回路56から読み出す(STEP3)。MPU51は、VZ=開放相測定電圧−(相間電圧/2)により開放相電圧VZを演算する(STEP4)。このとき単調減少区間ならばVZ=−VZとし単調増加に勾配変換する(STEP5)。MPU51は、VZ′=0.75Ke/(6t′)により仮想開放相電圧VZ′を演算する(STEP6)。MPU51は、開放相電圧VZと仮想開放相電圧VZ′を大小比較し、VZ<VZ′ならSTEP2に戻る。VZ≧VZ′となって区間終点を検出したら励磁切り替えし連続回転する(STEP7)。
(実施例2)
次にパルス通電時の動作手順を図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。PWMによるパルス通電時は、コイル電圧測定をPWMオンサイクルの終了時に行えば開放相電圧を測定でき、経過時間t′はPWMキャリア周期単位となる。そのため最高回転数は制約を受けリニヤ通電時より低くなる。またPWM通電時は通電2相間のインダクタンス偏差によるインダクタンス起電圧が重畳するので仮想開放相電圧VZ′に所望の所定位相角におけるインダクタンス起電圧を加算する必要がある。
なおインダクタンス起電圧は零速でも発生することから零速から位置検出が可能となる。従ってパルス通電にてインダクタンス起電圧を検出することで、センサレス駆動において問題となるオープンループ制御による始動をすることなくクローズドループ制御による確実な始動を実現することができ始動性が改善される。
図8に示すモータ駆動回路を用いてPWM120°通電し、区間終点(位相角30°)を検出する動作のフローチャートを図10に示す。タイマー回路56としてPWM周期で発生する割り込みを計数するPWMカウンタを使って時間測定している。誘起電圧定数Keは既知とする。θ′=30°、sin(θ′)=0.5とする。30°位相角におけるインダクタンス起電圧VLは判っているものとする。
以下、図10に示すフローチャートのSTEPごとに説明する。
MPU51は、区間始点時刻にてPWMカウンタをクリヤーし計時を開始する(STEP11)。インバータ回路52を通じて三相コイルに通電し、A/D変換回路57にてPWMオンサイクル端にて三相のコイル電圧を測定する(STEP12)。電圧測定までの時間t′をPWMカウンタから読み出す(STEP13)。MPU51は、VZ=開放相測定電圧−(相間電圧/2)に基づいて開放相電圧VZを演算する(STEP14)。このとき単調減少区間ならばVZ=−VZとし単調増加に勾配変換する(STEP15)。MPU51は、VZ′=0.75Ke/(6t′)+VLに基づいて仮想開放相電圧VZ′演算する(STEP16)。MPU51は、開放相電圧VZと仮想開放相電圧VZ′を大小比較し、VZ<VZ′ならSTEP12に戻る。VZ≧VZ′となって区間終点を検出したら励磁切り替えし連続回転する(STEP17)。
(実施例3)
上述の実施例1及び2は区間始点時刻から時間測定するため、区間内で速度が変化すると変速誤差が発生する。変速誤差を低減するために区間中点即ち誘起電圧ゼロクロス点時刻から時間測定を開始すれば区間前半における変速は位置推定に影響しないので変速誤差は概ね半分に抑えることができる。
ゼロクロス点の検出に際して、リニヤ駆動時は誘起電圧のみを扱えばよいが零速から低速においては誘起電圧が小さいため位置検出できない。一方パルス駆動時は零速からインダクタンス起電圧が発生し位置検出できるが、開放相電圧にインダクタンス起電圧が重畳するため正確にインダクタンス起電圧を知る必要がある。特に表面永久磁石型(SPM)モータではインダクタンス起電圧が区間内で中性点電位の正側あるいは負側のみにしか発生しない場合も多く、低速時にゼロクロス点自体が発生しない場合はインダクタンス起電圧を加算してオフセット電圧をキャンセルしなければ誘起電圧ゼロクロス点を検出することすらできない。
以下、パルス通電にてゼロクロス点時刻から時間測定する場合の動作手順について図11に示すフローチャートに沿って説明する。まず区間始点近傍から3相のコイル電圧によりゼロクロス点の検出を行い(あるいはゼロクロスコンパレータを設けて検出してもよい)、ゼロクロス点検出以後は上述の位置検出と同様の手順で所定位相角の検出を行う。但し仮想回転数は時間測定区間が30°であることからn′=1/12t′となる点が異なる。
図8に示すモータ駆動回路を用いてPWM120°通電し、区間終点(位相角30°)を検出する際の動作フローチャートを図11に示す。タイマーとしてPWMカウンタを使って時間測定している。誘起電圧定数Keは既知とする。θ′=30°、sin(θ′)=0.5とする。なお区間中点(位相角0°)におけるインダクタンス起電圧VL1及び区間終点(位相角30°)におけるインダクタンス起電圧VL2はあらかじめ判っているものとする。
図11に示すフローチャートの前半はゼロクロス点検出動作である。
MPU51は、インバータ回路52を通じて三相コイルに通電し、A/D変換回路57にて区間始点近傍のPWMオンサイクル端にて三相のコイル電圧を測定する(STEP21)。MPU51は、VZ=開放相測定電圧−(相間電圧/2)に基づいて開放相電圧VZを演算する(STEP22)。このとき単調減少区間ならばVZ=−VZとし単調増加に勾配変換する(STEP23)。MPU51は、ゼロクロス点を検出したか否か判定する。即ち、VZ<(相間電圧/2+VL1)ならSTEP21へ戻る。VZ≧(相間電圧/2+VL1)なら区間終点検出動作に移行する(STEP24)。なお、VL1はインダクタンス起電圧値である。
MPU51は、ゼロクロス点を超えたらPWMカウンタをクリヤーし計時を開始する(STEP25)。MPU51は、インバータ回路52を通じて三相コイルに通電し、A/D変換回路57にて区間始点近傍のPWMオンサイクル端にて三相のコイル電圧を測定する(STEP26)。電圧測定までの時間t′をPWMカウンタから読み出す(STEP27)。MPU51は、VZ=開放相測定電圧−(相間電圧/2)に基づいて開放相電圧VZを演算する(STEP28)。このとき単調減少区間ならばVZ=−VZとし単調増加に勾配変換する(STEP29)。MPU51は、VZ′=0.75Ke/(12t′)+VL2により仮想開放相電圧VZ′演算する(STEP30)。なおVL2はインダクタンス起電圧値である。次に、区間終点を検出したか否か判定する。即ち、MPU51は、開放相電圧VZと仮想開放相電圧VZ′を大小比較し、VZ<VZ′ならSTEP26に戻る。VZ≧VZ′となって区間終点を検出したら励磁切り替えし連続回転する(STEP31)。
上述のとおりゼロクロス点を検出している期間は界磁位置検出をしないので演算時間が増加することはなく高速処理が可能である。また誘起電圧のゼロクロス点は界磁位置を直接検出できる特異点であり位相誤差はほとんど発生しない。従って、ゼロクロス点から位置検出する方法は変速誤差のみならず位相誤差も小さくなり、誤差低減に有効である。さらにパルス通電により零速から位置検出しクローズドループ制御により確実に始動でき、大幅な負荷変動にも耐えられ、またIPMモータ及びSPMモータを問わず広い汎用性も備えており、本実施例は極めて有効な位置検出法である。
なお、モータ駆動回路の構成や制御プログラム構成は様々考えられ、本実施例に開示された態様に限定されるものではなく、本案主旨を逸脱しない範囲で電子回路技術者あるいはプログラマー(当業者)であれば当然なし得る回路構成の変更やプログラム構成の変更も含まれる。
1 回転子軸 2 回転子 3 永久磁石 4 固定子 50 上位コントローラ 51 MPU 52 インバータ回路(INV) 56 A/D変換回路(ADC)57 タイマー回路 VZ 開放相電圧 VZ′仮想開放相電圧 Vth 閾値 VL1,VL2 インダクタンス起電圧値

Claims (4)

  1. 永久磁石界磁を有する回転子と三相コイルを有する固定子を備え、電気角120°通電方式により駆動する電動機の界磁位置検出方法であって、
    ハーフブリッジ型インバータ回路を介して前記三相コイルに双方向通電する出力部と、
    三相コイル端子電圧をA/D変換して制御部に送出する電圧測定部と、
    当該通電区間の区間始点時刻から前記三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し前記制御部に送出する計時部と、
    上位コントローラからの指令により前記出力部の出力を制御し、連続回転が可能な60°通電区間単位の通電角度情報と通電パターン情報とを記憶しそれに基づいて前記三相コイルへの通電状態を切り替え、前記電圧測定部及び前記計時部の測定値が入力されて前記60°通電区間における界磁位置を判定する前記制御部と、を備え、
    当該通電区間の任意のタイミングで前記電圧測定部により前記三相コイル端子電圧を測定し、通電相間電圧の1/2を中性点電位として開放相測定電圧と中性点電位の差分を演算し、開放相誘起電圧が単調減少する通電区間は符号を反転して開放相電圧を求めるステップと、
    前記計時部により当該通電区間の区間始点時刻から前記三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測するステップと、
    前記計時部による計測時間を6倍しその逆数を仮想回転数とし、この仮想回転数に基づいて当該通電区間内の中点を0°として0°から電気角30°以内の所望の所定位相角における開放相電圧を演算して仮想開放相電圧とするステップと、を含み、
    前記制御部は、前記開放相電圧と前記仮想開放相電圧とを大小比較し、前記開放相電圧が前記仮想開放相電圧と一致あるいは超えるまで前記測定及び演算を繰り返し、一致あるいは超えたら前記所定位相角と判定する動作を繰り返すことで、前記仮想開放相電圧を通電時間の経過に応じて減少させながら前記開放相電圧と比較して前記所定位相角を検出することを特徴とする電動機の界磁位置検出方法。
  2. 前記制御部は、理論的区間終点位相角である電気角30°から所望の進角角度を減算して所定位相角とし前記所定位相角検出処理を行い、始動時あるいは進角値設定時に進角誤差が発生しても特段の誤差補償を行わず位相誤差の収束性により所望の進角値に正確に一致する進角制御を行う請求項1記載の電動機の界磁位置検出方法。
  3. 前記制御部は、パルス幅変調(PWM)を含むパルス通電を行う際に、前記仮想開放相電圧に前記所定位相角において通電2相間のインダクタンス偏差により発生するインダクタンス起電圧を加算する請求項1又は請求項2記載の電動機の界磁位置検出方法。
  4. 前記電圧測定部により区間始点近傍にて三相コイル端子電圧を測定するステップと、
    リニヤ通電時は通電二相間電圧の1/2を基準電位aとし、パルス通電時は通電二相間電圧の1/2に区間中点で発生するインダクタンス起電圧を加算して基準電位aとし、開放相測定電圧が前記基準電位aを横切るゼロクロス点を検出するまで上記測定を繰り返すステップと、
    ゼロクロス点を検出したら任意のタイミングで前記電圧測定部により前記三相コイル端子電圧を測定するステップと、
    リニヤ通電時は通電二相間電圧の1/2を基準電位bとし、パルス通電時は通電二相間電圧の1/2に区間中点で発生するインダクタンス起電圧を加算して基準電位bとし、開放相測定電圧と前記基準電位bの差分を演算し、開放相誘起電圧が単調減少する通電区間は符号を反転して開放相電圧を求めるステップと、
    前記計時部により当該通電区間のゼロクロス点検出時刻から前記三相コイル端子電圧の測定までの経過時間を計測し、前記計測時間を12倍しその逆数を仮想回転数とするステップと、
    前記仮想回転数に基づいて当該通電区間内の中点を0°として0°から電気角30°以内の所望の所定位相角における開放相電圧を演算して仮想開放相電圧とするステップと、を含み、
    前記制御部は、前記開放相電圧と前記仮想開放相電圧とを大小比較し、前記開放相電圧が前記仮想開放相電圧と一致あるいは超えるまで前記三相コイル端子電圧測定及び前記仮想開放相電圧の演算を繰り返し、一致あるいは超えたら前記所定位相角と判定することで、ゼロクロス点検出時刻から前記所定角度の検出を行う請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電動機の界磁位置検出方法。
JP2018101553A 2018-05-28 2018-05-28 電動機の界磁位置検出方法 Expired - Fee Related JP6402276B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018101553A JP6402276B1 (ja) 2018-05-28 2018-05-28 電動機の界磁位置検出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018101553A JP6402276B1 (ja) 2018-05-28 2018-05-28 電動機の界磁位置検出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6402276B1 JP6402276B1 (ja) 2018-10-10
JP2019208300A true JP2019208300A (ja) 2019-12-05

Family

ID=63788051

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018101553A Expired - Fee Related JP6402276B1 (ja) 2018-05-28 2018-05-28 電動機の界磁位置検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6402276B1 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60180494A (ja) * 1984-02-24 1985-09-14 Sankyo Seiki Mfg Co Ltd センサ−レスブラシレスモ−タの駆動回路
JPS6132793U (ja) * 1984-07-30 1986-02-27 株式会社三協精機製作所 ブラシレスモ−タの駆動回路
JPH07115789A (ja) * 1993-10-13 1995-05-02 Fujitsu General Ltd ブラシレスモータの回転子位置検出方法およびその装置
JP3833918B2 (ja) * 2001-09-28 2006-10-18 シャープ株式会社 モータ制御装置
JP6460927B2 (ja) * 2015-06-29 2019-01-30 日立オートモティブシステムズ株式会社 電動パワーステアリング装置の制御装置及び電動パワーステアリング装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6402276B1 (ja) 2018-10-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6065188B2 (ja) 電気機械の制御
EP2232695B1 (en) Control of electrical machines
JP6050339B2 (ja) 電気駆動ユニット
JP6284207B1 (ja) 電動機の界磁位置検出方法
KR20120084289A (ko) 센서 없는 브러시리스 직류 모터들에서의 감소된 제로-크로싱 입상용 가변 펄스폭 변조
JP6321130B1 (ja) 電動機の界磁位置誤差補正方法
CN110476348B (zh) 电动机的磁场位置检测方法
CN112747662B (zh) 电动机的磁场位置检测方法
JP2017143612A (ja) 3相ブラシレスモータのセンサレス始動方法
JP2020202636A (ja) 電動機の界磁位置検出方法
JP6402276B1 (ja) 電動機の界磁位置検出方法
JP6383128B1 (ja) 電動機のインダクタンス起電圧の推定方法及び界磁位置推定方法
JP5967662B2 (ja) モータ制御のための逆起電力検出
KR20150031356A (ko) Bldc 모터 제어 시스템에서 역기전력의 제로 크로싱 지점 판단 기준전압 보상 장치 및 방법
JP6343235B2 (ja) ブラシレスモータの駆動装置、及び駆動方法
US20150130391A1 (en) Motor drive controller and motor drive control method, and motor system using the same
US20240072700A1 (en) Method of controlling a brushless permanent magnet motor
JP6951008B1 (ja) センサレスモータの回転子位置検出方法及びセンサレスモータ駆動方法
JP2011055586A (ja) モータ駆動制御回路
US20240154549A1 (en) Brushless permanent magnet motor

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180530

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20180530

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180611

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20180815

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180904

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180910

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6402276

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees