JP2019207752A - 色彩変化方法および色彩変化装置 - Google Patents

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和秀 野田
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敏博 坂東
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通友 石井
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Abstract

【課題】自然な白色光を照射しつつ、光源を変えて、着色層の色彩を大きく変化させる色彩変化方法等の提供。【解決手段】光源(B1)から光源(B2)に光に変えて、または光源(B2)から光源(B1)に光を変えて、色材(A)を含む着色層(A)の色彩を変化させる、色彩変化方法であって、光源(B1)および光源(B2)は白色光であり、光源(B1)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長550〜700nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、光源(B2)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長500〜600nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長である。【選択図】図1

Description

本発明は、色材と光源との組み合せにより色彩を変化させる方法に関する。
従来から、物理的に異なる光(物体色)が特定の条件の下で同じに見える現象を用いた色彩変化が知られている。
条件等色(メタメリズム)の現象は、照明、着色料や素材の働きによって引き起こされ、色と照明が密接にかかわっている。例えば、照明光のもつ分光分布と太陽光のもつ分光分布には大きな違いがあり、照明によって色が変わって見えてしまうという現象は多くの場合、好まれないものとされてきたが、この現象を活用しながら色彩変化の手法が検討されている。
例えば特許文献1では、色の見えは、(照明の分光分布)×(光を反射する色材の分光反射率分布)によって決まることから、適当な分光反射率分布を持った色材を設計すると、分光分布特性の異なった照明の下で色の見えが変化できるとし、この条件等色を活用し表現態様、パターン変化を演出するシステムが提案されている。具体的には、天然色素である麹塵、無機顔料を含む油絵の具等の色材、無機微粒子を用いて、通常の照明の光源と選定したLED光源とを用いることが開示されている。
また、特許文献2〜4では、有機染料である分散染料等の染料を含む染色物を用いて、照明光を変えたときに図柄、その色が変化する着色組成が得られることが開示されている。
また、特許文献5〜6では、光源の色によって見える図柄が変化する物で、青色光源を用いた場合に赤色と緑色の部分は互いに原色であるため青色の光と打ち消しあい黒色に見えることが開示されている。
特開2009−295472号公報 特開平7−34390号公報 特開平7−34389号公報 実開昭63−198599号公報 特開2002−225500号公報 特開2005−321729号公報
しかし、従来の技術は、色材と光源の組み合わせにより、自然な白色光を維持しながら、色の変化、特により極端な色彩の変化を視認することができていなかった。また、光源の切り替えにより色彩を変化させていたため、見る者は、色彩の変化に対する驚きが少なかった。
本発明は、自然な白色光を照射しつつ、着色層の色彩を大きく変化させる色彩変化方法、および色彩変化装置の提供を目的とする。
本発明の色彩変化方法は、異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を用い、光源(B1)から光源(B2)に光に変えて、または光源(B2)から光源(B1)に光を変えて、色材(A)を含む着色層の色彩が変化する色彩変化方法であって、
色材(A)を含む着色層は、視野角2°でのC光源下において、波長400〜450nmの分光反射率が10%以下、かつ波長500〜600nmの分光反射率が60%以上となる領域を有し、
光源(B1)および光源(B2)は白色光であり、
光源(B1)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長550〜700nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
光源(B2)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長500〜600nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長である。
上記の本発明によれば、自然な白色光を照射しつつ、光源を変えて、着色層の色彩を大きく変化させる色彩変化方法、および色彩変化装置を提供できる。
C光源の発光スペクトルの一例 F10光源の発光スペクトルの一例 色彩変化装置の光源(B1)および光源(B2)の模式的な単色LED配置図 色彩変化装置の模式的斜視図 色彩変化装置の模式的な正面図 単色LED L1の発光スペクトル 単色LED L2の発光スペクトル 単色LED L3の発光スペクトル 単色LED L4の発光スペクトル 単色LED L5の発光スペクトル 光源(B1)の発光スペクトル 光源(B2)の発光スペクトル 東洋インキ株式会社製リオアルファS F523朱のC光源反射スペクトル 東洋インキ株式会社製リオアルファS F525朱のC光源反射スペクトル 東洋インキ株式会社製リオアルファS F23黄のC光源反射スペクトル ホルベイン工業株式会社製バヂターブルーWW095を1部、シーアイ化成社製NanoTekPowderを1部混合したインキのC光源反射スペクトル 東洋インキ株式会社製リオアルファS Z821紫のC光源反射スペクトル
まず、用語を定義する。「色彩変化」とは、被照射体の色彩が実際には変化していないにも関わらず、色彩が変化して見えることを表す。「色彩変化」は、人が視認する色が変化することをいう。C光源とは、JIS Z 8720:2012で規定された、補助イルミナントCである。C光源のスペクトルを図1に示す。
本明細書の色彩変化方法は、色材(A)を含む着色層と、異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を使用する。そして異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を用い、光源(B1)から光源(B2)に光に変えて、または光源(B2)から光源(B1)に光を変えて、色材(A)を含む着色層の色彩が変化する。
<色材(A)を含む着色層>
色材(A)を含む着色層(以下、着色層という)は、色材(A)は、視野角2°でのC光源下において、波長400〜450nmの分光反射率が10%以下、かつ波長500〜600nmの分光反射率が60%以上である。着色層の分光反射率が上記範囲にあることで、着色層は、光源の切り替えにより極端な色彩の変化が得られる。
着色層は、視野角2°でのC光源下において、波長400〜450nmの分光反射率が10%以下、かつ波長500〜600nmの分光反射率が60%以上となる領域を有している。そのため、着色層は、例えば、F10光源やC光源、太陽光の照射下において、黄色、橙色または赤色を呈することが好ましい。本明細書では、着色層の分光反射スペクトルは、C光源を基準にする。また色彩の特定は、市販の分光測色計を用いて色度を測定する。
なお黄色、橙色または赤色とは、C光源での測定時、Yxy表色系においてy≧−x+0.7(但し、x≧0.2、y≧0.26)の範囲で表される人間の目で認識できる色である。なお、F10光源とは、日本国内で一般的に流通している蛍光灯である。F10光源のスペクトルの一例を図2に示す。
色材(A)は、上記分光反射スペクトルが得られる有機顔料、有機染料が好ましい。有機顔料、有機染料は、シャープな分光反射スペクトルを有することが多く、より極端な色彩変化が得易い。
有機顔料および有機染料は、例えば、モノアゾ系色材、ジスアゾ系色材、インドリン系色材、シアニン系色材、ナフトール系色材、ジケトピロロピロール系色材、フェナントロリン系色材、スクアリリウム系色材などが挙げられる。なお、これら以外の色材を使用して色相を適宜調整できることはいうまでもない。
色材(A)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
色材(A)の含有量は、着色層の色彩変化を視認できればよいため限定されないところ、着色層100質量%中、1〜50質量%程度である。
色材(A)の分光反射率は、分光測色計を用いて測定できる。本明細書では、コニカミノルタ社製の「分光測色計CM−2600d」等を使用する。
着色層は、分散剤および樹脂(C)を含むことが好ましい。分散剤を含むことで色材(A)を着色層中に容易に分散できる。また、樹脂(C)を含むことで着色層の被膜を容易に形成できる。
分散剤は、例えば、界面活性剤、樹脂型分散剤などが挙げられる。界面活性剤は、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤、両性型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤に分類できる。樹脂型分散剤の構造は、例えば、A−Bブロック分散剤、末端変性型分散剤、グラフト型分散剤に分類できる。
樹脂(C)は、例えば、大豆油などを用いたワニス、松ヤニを用いたロジン樹脂およびロジン変性樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、およびポリエステル樹脂、ならびにこれらにエチレン性不飽和二重結合を付加した紫外線硬化樹脂等が挙げられる。なお、樹脂(C)を分散剤として使用することもできる。また、分散剤を樹脂として使用できる場合がある。
分散剤および樹脂(C)は合計で着色層100質量%中、50〜99質量%程度を含むことが好ましい。
着色層は、着色組成物(以下、インキともいう)を印刷して形成できる。着色組成物は、色材(A)、分散剤、樹脂(C)、溶媒を含むことが好ましい。なお、着色組成物が紫外線硬化樹脂を含む場合、さらに光重合開始剤や熱重合開始剤を含むことが好ましい。
溶媒は、水、有機溶剤であり、印刷に適した粘度に調整できる公知の有機溶剤を使用できる。
着色組成物は、例えば、色材(A)と樹脂(C)を混合した後に分散を行い作製する。分散は、例えば、ニーダー、二本ロール、三本ロール、ビーズを用いた湿式分散機、ディスパーなどの攪拌機、超音波分散機等公知の分散機を使用できる。分散する際、用途に応じて溶媒を加え粘度や分散性を調整することができる。
着色層は、着色組成物を基材に印刷(塗工ともいう)して形成する。印刷の際、必要に応じて、乾燥工程を行う。乾燥は、例えば、熱風オーブン、赤外線ヒーター、風乾などが挙げられる。乾燥工程に加え、または代わりに紫外線を照射できる。樹脂(C)が紫外線硬化樹脂の場合、特に有効である。
印刷方法は、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、静電潜像現像印刷、インクジェット印刷や、アプリケーター等を用いたベタ塗り印刷等が挙げられる。基材は、印刷可能な素材であればよく、例えば、上質紙、コート紙、ダンボール、プラスチックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ベニヤ板、ステンレス板、ガラス、絹、木綿、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、皮革等が挙げられる。
着色層の厚さは、0.1〜50μm程度である。
基材の厚さは、10μm〜10cm程度である。
<光源(B1)および光源(B2)>
本明細書では、少なくとも、異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を使用する。「少なくとも」とは、課題を解決できる範囲であれば光源(B1)および光源(B2)以外の光源を使用できる意味である。
光源(B1)および光源(B2)は白色を呈する。すなわち、人が白色光と感じる光を発色する。光源(B1)および光源(B2)の発色は、ともに白色であるため、例えば、光源(B1)から光源(B2)に光源を切り替えた場合、見る者は光源の変化には気づきにくい。しかし、光源(B1)および光源(B2)は、それぞれ発する波長が異なるため、光源を変えると本明細書の着色層の反射光が変わるため、見る者は着色層の色が突然変化するように見える。
光源(B1)および光源(B2)は、1または2以上の光源を組み合わせて使用できる。光源(B1)および光源(B2)は、例えば、単色のLED電球を組み合わせて白色を呈する光を生成する方法、または市販の白色LED電球を用いることが好ましい。単色のLED電球とは、例えば、青、緑、橙、赤など白色でないLED電球を意味する。単色のLED電球は、より極端な色彩変化を発現させるためシャープな発光スペクトルを有することが好ましく、例えば、レーザー光のような極端にシャープな発光スペクトルを有することがより好ましい。なお、いうまでもないが光源は、LED電球で限定されない。
単色のLED電球を組み合わせて白色を呈する光を生成する一例としては、光源(B1)は、455nm付近の青色を呈するLED電球、502nm付近の緑色を呈するLED電球、532nm付近の緑色を呈するLED電球、557nm付近の黄緑色を呈するLED電球、624nm付近の赤色を呈するLED電球、光源(B2)は、455nm付近の青色を呈するLED電球と、557nm付近の黄緑色を呈するLED電球の組み合わせが挙げられる。なお、これらの波長は発光ピークを示している。
なお、本明細書で白色を呈するとは、米国規格協会(American National Standards Institute)が定めた、色度に関する規格(ANSI C78.377)にて規定された白色光を意味する。
本明細書の色材(A)を含む着色層は、視野角2°でのC光源下において、波長400〜450nmの分光反射率が10%以下、かつ波長500〜600nmの分光反射率が60%以上となる領域を有し、
光源(B1)および光源(B2)は白色光であり、
光源(B1)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長550〜700nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
光源(B2)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長500〜600nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長である。
光源(B1)は、波長500〜700nmの黄色〜橙色〜赤色の発光スペクトルを有する。また、白色を呈するために、400〜500nm付近の青色の発光スペクトルも有する必要がある。そのため本明細書の着色層は、主に光源(B1)からの550〜700nmの発光を反射し黄色、橙色、赤色を呈する。
光源(B2)は波長500〜600nmの黄色〜橙色の発光スペクトルを有する。また、白色を呈するために、400〜500nm付近の青色の発光スペクトルも有する必要がある。そのため本明細書の着色層は、主に光源(B2)からの500〜600nmの発光を反射し黄色、橙色を呈する。また、反射光の強度が弱い場合は、茶色を呈する。
本明細書では、光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長であるため、着色層は、光源(B1)では長波長の光を反射し、光源(B2)では短波長の光を反射する。これにより着色層を見る者は、色彩変化を認識できる。色彩変化のパターンは、例えば、赤色―橙色、赤色―茶色、赤色―黄色、茶色―橙色、茶色―黄色、橙色―黄色が挙げられる。
本明細書で光源(B1)と光源(B2)は、光源を切り替える際に、見る者に光源が切り替わったことを感じさせないように、照度や色温度を同程度にすることが好ましい。
本明細書で光源(B1)と光源(B2)の照度差は、200ルクス以下であることが好ましい。照度差をこの範囲とすることで、見る者は、光源が切り替わったことがより気づきにくくなる。なお、照度とは、光の明るさを評価する指標であり、単位面積に入射する光束量で表される値であって、単位はlux(ルクス)で表される。
色温度とは、ある光源が発している光の色を定量的な数値で表現する尺度(単位)である。単位には熱力学的温度のK(ケルビン) を用いる。理想的な黒体を想定すると、ある温度において黒体が放射する光の波長の分布を導き出すことができる。温度が低い時は暗いオレンジ色であり、温度が高くなるにつれて黄色みを帯びた白になり、さらに高くなると青みがかった白に近くなる。このように、白という色を黒体の温度で表現し、この温度を色温度と呼ぶ。澄み切った高原の空の正午の太陽の光はおおよそ6500Kといわれる。これらは、一般に考えられている白よりかなり黄色っぽい。実際に物体を照らす光には天空光(直射日光以外の光)の青色がかなり色みに影響しており、6500Kよりも高い色温度では白く感じられる。光源(B1)と光源(B2)の色温度の差は、2000K以下であることが好ましく、1000K以下であることがより好ましい。
照度や色温度は、例えばユーピーアールテック社製スペクトルメーター「MK350S」等を用いて測定することができる。
光源を(B1)から(B2)に直接変化させた際に、照度や色温度の違いなどにより見る者が違和感を覚える場合は、例えば、色彩変化に寄与しない市販の白色LEDを用いた光源(B0)を導入し、光源を(B1)⇒(B0)⇒(B2)の順に変化させることで、違和感のない光源の切り替えを行うことができる。
<色彩変化装置>
本明細書の色彩変化装置は、色材(A)を含む着色層、ならびに異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を備え、
光源(B1)から光源(B2)に光に変えて、または光源(B2)から光源(B1)に光を変えて、色材(A)を含む着色層の色彩が変化する色彩変化装置であって、
前記色材(A)は、色材(A)を含む着色層と、少なくとも、異なる発光波長を有する光源(B1)及び光源(B2)とを含む色彩変化装置であって、
前記着色層は、視野角2°でのC光源下において、400〜450nmの範囲で分光反射率が10%以下であり、500〜600nmの範囲に分光反射率が60%以上となる領域を有し、
光源(B1)および光源(B2)は白色光であり、
光源(B1)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長550〜700nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
光源(B2)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長500〜600nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長である。
本明細書の色彩変化装置の一例を示す。まず、図面は、上側を上、下側を下という。
図3の光源101によると単色のLED電球である光源L1〜L5を複数配置する。配置方法は、LEDの光が均一に混ざるように配置すれば良く、図3に示すように各LEDを、例えば、横一列に並べる、または、縦一列に並べる、または、ランダムに並べることができる。光源の配置は、光源(B1)を光源(B2)に切り替える、または、光源(B2)を光源(B1)に切り替えることで着色層に所望の色変化が起きればよい。なお、光源101に記載されたL1〜L5は、それぞれ図6〜図10の分光波長を示すLED電球を使用している。
図4の色彩変化装置201は、光が底面205方向に照射されるよう天板202に光源101を下向きに設置する。着色層を備える印刷物206は、図4では、底面205に設置しているが、底面205から光源101の任意の場所に配置できる。光源101から着色層を備える印刷物206までの距離は、光源101からの単色のLED電球の光が十分混ざり合い、白色光として着色層に到達するよう適宜調整する。色彩変化装置201は、光源(B1)および光源(B2)以外の光を遮断することが、より極端な色変化が得られる面で好ましい。そのため天板202、および底面205以外の正面、背面、右側面、および左側面の4つの面のうち、3つの面を白色度90%以上の壁紙や黒色の壁紙等で覆い、外部からの光を遮断することが好ましい。残る1面は、全く覆わなくても良いが、天板に近い上半分程度を前記壁紙で覆うことで、外部からの光をより遮断することができる。また、色彩変化装置のサイズが、部屋のように人が入れる程度に大きい場合は、色彩変化装置の中に人が入り、残る1面にドアなどを設置し完全に覆うことで、外部からの光をほぼ完全に遮断できる。なお、壁紙の色は問わないが、光源を変化させた際に色彩変化を起こさない色が好ましい。着色層付印刷物206は、光源の変化で色彩が変化可能な場所に設置すればよく、底面205に限定されないことはいうまでもない。
着色層を備える印刷物206は、既に説明した通り、色材(A)、樹脂(C)、溶剤を含む着色組成物を、オフセット印刷等の公知の印刷方法を用いて基材に塗工し、乾燥させて形成できる。
次に図5に示す光源101を発光方向204のように発光させてと着色層付印刷物206に光を照射する。
光源(B1)と光源(B2)との光源の切り替えは、マイクロコンピュータとそこに組み込んだコンピュータプログラムを用いた上で、光の強度を(B1):(B2)=100:0〜50:50〜0:100〜50:50〜100:0と段階的に、かつ、スムーズに切り替えて色彩を徐々に変化させることができる。また、光の強度を(B1):(B2)=100:0から0:100へ急激に切り替えることで、色彩が突然変化したように見せることもできる。
色彩変化装置は、光源(B1)および光源(B2)を切り替えることによって、色材(A)を含む着色層の色彩が変化可能であれば良いため、LED光源の配置は、図3に限定されないことはいうまでもない。
以下、実施例で本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお特に断りがない限り、部は質量部を意味する。
<色彩変化装置の作製>
[光源B1の作製]
光源B1として、下記のLED電球を用いて作製した。
L1:波長455nmの青色LED電球(分光分布は416〜515nmの範囲)、発光スペクトルを図6に示す。
L2:波長502nmの緑色LED電球(分光分布は449〜572nmの範囲)、発光スペクトルを図7に示す。
L3:波長532nmの緑色LED電球(分光分布は480〜601nmの範囲)、発光スペクトルを図8に示す。
L4:波長557nmの黄緑色LED電球(分光分布は517〜636nmの範囲)、発光スペクトルを図9に示す。
L5:波長624nmの赤色LED電球(分光分布は573〜659nmの範囲)、発光スペクトルを図10に示す。
上記LED電球を図3の光源101の通り配置し、全LED電球を発光させ、光源(B1)の照度を約700ルクス、色温度を約6500KとなるようL1〜L5の単色LEDの発光強度を調整したところ白色光を呈した。図11に光源(B1)の発光スペクトルを示す。
[光源B2の作製]
光源(B2)は、光源(B1)で配置したLED電球のうち、L1およびL4のLED電球のみ点灯させ、照度を約700ルクス、色温度を約6500Kとなるよう調整し、白色光を呈する態様を光源(B2)とした。光源(B2)の発光スペクトルを図12に示す。なお、光源(B1)、光源(B2)から照射され生成した白色光は、米国規格協会(American National Standards Institute)が定めた、色度に関する規格(ANSI C78.377)にて規定された白色光の範囲内となるよう調整した。
[色彩変化装置の作製]
アルミ棒を組み合わせ、縦50cm、横50cm、高さ100cmのアルミ製フレームを作製した。アルミフレームの天板に、LED電球L1〜L5を搭載した光源101を、底板に向かって光が照射される方向に取り付けた。底板として、ダンボールに白色度90%以上のコート紙を貼り付けたものを取り付けた。アルミ製フレームの天板および底板以外の4面のうち3面に、ダンボールに白色度90%以上のコート紙を貼り付けたものを取り付けた。天板、底板、天板および底板以外の4面のうち3面は、外部からの光が極力入らないよう、隙間やつなぎ目を白色度90%以上のコート紙で覆った。残る1面には、天板に近い上半分に、ダンボールに白色度90%以上のコート紙を貼り付けたものを取り付けた。
印刷物は底板の上に設置し、光源からの距離が100cmとなるよう配置した。
<印刷物の作製>
[実施例1]
東洋インキ株式会社製リオアルファS F523朱(有機顔料、樹脂、溶剤を含有する)を、ヨシミツ精機社製ドクターブレードYD−2型(塗布幅75mm、塗布厚6μm)を用い、LENETA社製試験紙KL−5C(厚さ100μm)に塗工し、次いで60℃で5分間乾燥を行い、厚さ3μmの着色層を備える印刷物1を得た。得られた印刷物1は視野角2°でのC光源下、橙色を呈していた(Yxy表色系において、視野角2°でのC光源下の測定でx=0.59、y=0.40)。印刷物1のC光源における分光反射スペクトルを図13に示す。
[実施例2]
東洋インキ株式会社製リオアルファS F523朱を、東洋インキ株式会社製リオアルファS R525朱(有機顔料、樹脂、溶剤を含有する)に変更すること以外は実施例1と同様にして、印刷物2を得た。得られた印刷物2は視野角2°でのC光源下、赤色を呈していた(Yxy表色系において、視野角2°でのC光源下の測定でx=0.60、y=0.36)。印刷物2の分光反射スペクトルを図14に示す。
[実施例3]
東洋インキ株式会社製リオアルファS F523朱を、東洋インキ株式会社製リオアルファS F23黄(有機顔料、樹脂、溶剤を含有する)に変更すること以外は実施例1と同様にして、印刷物3を得た。得られた印刷物3は視野角2°でのC光源下、黄色を呈していた(Yxy表色系において、視野角2°でのC光源下の測定でx=0.46、y=0.51)。印刷物3の分光反射スペクトルを図15に示す。
[比較例1]
東洋インキ株式会社製リオアルファS F523朱を、ホルベイン工業株式会社製バヂターブルーWW095を1部、シーアイ化成社製NanoTekPowderを1部、これらを均一に混合したものに変更すること以外は実施例1と同様にして、印刷物4を得た。得られた印刷物4は視野角2°でのC光源下、青色を呈していた(Yxy表色系において、x=0.16、y=0.26)。印刷物4の分光反射スペクトルを図16に示す。
[比較例2]
東洋インキ株式会社製リオアルファS F523朱を、東洋インキ株式会社製リオアルファS Z821紫(有機顔料、樹脂、溶剤を含有する)に変更すること以外は実施例1と同様にして、印刷物5を得た。得られた印刷物5は視野角2°でのC光源下、目視で紫色を呈していた(Yxy表色系において、視野角2°でのC光源下の測定でx=0.19、y=0.06)。印刷物5の分光反射スペクトルを図17に示す。
[色彩評価]
得られた印刷物1〜5を、作製した照明装置の中に設置し、光源(B1)を光源(B2)に切り替え色彩変化を目視で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2019207752
表1の結果から実施例1および2は、光源(B1)を照射すると、550〜700nmの範囲にある発光(今回の場合、624nmにピークを有する発光)由来の反射光が観測されるため、赤色に見える。実施例3は、550〜700nmの範囲にある発光ピーク由来の反射に加え、500〜550nmの発光ピーク由来の黄色の反射が観測されるため、橙色に見える。ここで光源を(B2)に切り替えると、実施例1は、500〜600nmの範囲にある発光(今回の場合、557nmにピークを有する発光)のうち、550〜600nm付近の反射光が観測されるため、橙色に見える。実施例2は、500〜600nmの範囲の発光のうち、565〜600nm付近の反射光が観測され、かつ、反射光の強度が弱いため、茶色に見える。実施例3は、500〜600nmの範囲にある発光由来の反射光が観測されるため、黄色に見える。
一方、比較例1は、400〜450nmの分光反射率が10%以上であるため、光源を(B1)から(B2)に切り替えても青色の反射が観測され、極端な色彩変化が起きず、目視で色彩の大きな変化を確認できなかった。
また、比較例2は、400〜450nmの分光反射率が10%以上であり、500〜600nmの範囲に分光反射率が60%以上となる領域を有さないため、光源を(B1)から(B2)に切り替えても極端な色彩変化が起きず、目視で色彩の大きな変化を確認できなかった。
以上の結果から、本発明の色彩変化方法および色彩変化装置を用いることで、見る者は、照明変化を意識せずに、着色層の色の変化を体感することができる。本発明は、舞台装置、衣装、緞帳等の劇場照明、建築意匠の演出、広告照明、紙幣・有価証券・チケット等の偽造防止印刷、信号等の表示装置などに好適に用いることができる。
101 光源
201 色彩変化装置
202 天板
203 フレーム
204 発光方向
205 底面
206 着色層を備える印刷物
301 光源

Claims (4)

  1. 異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を用い、光源(B1)から光源(B2)に光に変えて、または光源(B2)から光源(B1)に光を変えて、色材(A)を含む着色層の色彩が変化する色彩変化方法であって、
    色材(A)を含む着色層は、視野角2°でのC光源下において、波長400〜450nmの分光反射率が10%以下、かつ波長500〜600nmの分光反射率が60%以上となる領域を有し、
    光源(B1)および光源(B2)は白色光であり、
    光源(B1)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長550〜700nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
    光源(B2)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長500〜600nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
    光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長である、色彩変化方法。
  2. 色材(A)を含む着色層は、視野角2°でのC光源下で黄色、橙色または赤色である、請求項1に記載の色彩変化方法。
  3. 色材(A)を含む着色層が、透明樹脂(C)を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の色彩変化方法。
  4. 色材(A)を含む着色層、ならびに異なる発光波長を有する光源(B1)および光源(B2)を備え、
    光源(B1)から光源(B2)に光に変えて、または光源(B2)から光源(B1)に光を変えて、色材(A)を含む着色層の色彩が変化する色彩変化装置であって、
    色材(A)を含む着色層は、視野角2°でのC光源下において、400〜450nmの範囲で分光反射率が10%以下であり、500〜600nmの範囲に分光反射率が60%以上となる領域を有し、
    光源(B1)および光源(B2)は白色光であり、
    光源(B1)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長550〜700nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
    光源(B2)の分光分布は、最大発光強度を100%とした場合に、波長500〜600nmで50%以上の発光ピークを1つ以上有し、
    光源(B2)の波長500〜600nmにおける50%以上の発光ピークの波長が、光源(B1)の波長550〜700nmにおける50%以上の発光ピークの波長より短波長である、色彩変化装置。
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