JP2019203228A - ポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物及びポリプロピレン系モノフィラメントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1では、プロピレン系樹脂(A)と、固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体又はプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))と、固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体又はエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を、成分(a)100重量部に対し成分(b)0.01〜20重量部を含有し、MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(230℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するプロピレン系樹脂(B)0.1〜14重量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン繊維が開示されており、最高延伸倍率及び強度は改善されているが、紡糸性に関してはその比較例1に示されているとおり、MFRが9g/10分のポリプロピレン樹脂と同等の紡糸性を示すに過ぎない。
また、モノフィラメントでは、発泡糸の検討もなされている。例えば特許文献2では、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[ηE]が15〜100dl/gの範囲の高分子量ポリエチレン0.01〜5.0重量部とプロピレン単独重合体又はプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[ηP]が0.2〜10dl/gの範囲のプロピレン(共)重合体100重量部を含むポリプロピレン組成物(A)を主成分とすることを特徴とする発泡糸が開示されている。この技術では、モノフィラメントの発泡性能は向上しているが、未発泡糸の紡糸性に関してはその比較例1、2に示されているとおり、MFRが2〜5g/10分のポリプロピレン樹脂と同等の紡糸性を示すに過ぎない。
さらに、前記特許文献1や特許文献2の技術による繊維は、フィッシュアイと呼ばれるゲル状物質が生じやすいという問題点も有している。
例えば、特許文献3では、その比較例2のMFRが12g/10分の結晶性ポリプロピレン系樹脂は、直径300μmのモノフィラメントを紡糸することが可能であったが、比較例3のMFRが120g/10分の結晶性ポリプロピレン系樹脂脂は紡糸できていない。
高MFRのモノフィラメントとしては、特許文献4の実施例1にMFRが20g/10分の、比較例1にMFRが30g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物による直径1.75mmのストランドがそれぞれ例示されている。しかしながら、これらのポリプロピレン系樹脂組成物は溶融張力が低いため、太番手のモノフィラメントを安定的に製造することは困難であり、例えばその実施例に記載のとおりストランドの直径が1.70〜1.80mmという、3Dプリンタ用フィラメントとしては大きな振れ幅があった。
本発明は、以下のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物及びポリプロピレン系モノフィラメントの製造方法を提供する。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X):
(x1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(a)を満たすこと。
Log(MT1)<−0.9×Log(MFR)+0.7 かつ MT1<15 式(a)
ポリプロピレン系樹脂組成物(Z):
(z1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜100g/10分であること。
(z2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(b)を満たすこと。
Log(MT1)≧−0.9×Log(MFR)+0.7 又は MT1≧15 式(b)
(z3)長鎖分岐構造を有すること。
ポリプロピレン系樹脂組成物(G):
(g2)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。
[3]ポリプロピレン系モノフィラメントがロープ用である[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
[4]ポリプロピレン系モノフィラメントが織物用である[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
[5]ポリプロピレン系モノフィラメントがカーペット用である[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
[6]ポリプロピレン系モノフィラメントが人工芝用である[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
[7]ポリプロピレン系モノフィラメントがコンクリート補強用繊維用である[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
[8]ポリプロピレン系モノフィラメントが3Dプリンタ用フィラメント用である[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X):
(x1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(a)を満たすこと。
Log(MT1)<−0.9×Log(MFR)+0.7 かつ MT1<15 式(a)
ポリプロピレン系樹脂組成物(Z):
(z1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜100g/10分であること。
(z2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(b)を満たすこと。
Log(MT1)≧−0.9×Log(MFR)+0.7 又は MT1≧15 式(b)
(z3)長鎖分岐構造を有すること。
ポリプロピレン系樹脂組成物(G)
(g1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜500g/10分であること。
(g2)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(Z)は、以下で説明する(z1)、(z2)及び(z3)の特性を満たす。
(1−1)特性(z1):MFR
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(Z)のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分の範囲であることが必要であり、好ましくは1.0〜30g/10分、さらに好ましくは1.0〜15g/10分である。当該MFRが0.1g/10分以上であると、流動性が良好となり、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)とのブレンド時に均一に分散しやすく、一方、当該MFRが100g/10分以下であると、モノフィラメント成形時の安定性を向上させることができる。
なお、本発明において、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定され、単位はg/10分である。
さらに、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(Z)は、溶融張力(MT1)とMFRが以下の関係式(b):
log(MT1)≧−0.9×log(MFR)+0.7
又は 式(b)
MT1≧15
として記載されているうちのいずれかの式を満たすことを必要とする。
ここで、MT1は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:20mm/分、引き取り速度:4.0m/分、キャピラリ―出口から引取プーリー下端までの間隔42cm、温度:230℃の条件で、30秒間測定したときの溶融張力(平均値)を表し、単位はグラムである。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)のMT1が極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMT1とする。また、MFRの測定条件、単位は、前述のとおりである。
この規定は、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)を含んでなる樹脂組成物(G)のモノフィラメント成形時の成形安定性を発現するために十分な溶融張力を有するための指標であり、一般に、溶融張力(MT)は、MFRと相関を有していることから、MFRとの関係式によって記述している。
log(MS)>−0.61×log(MFR)+0.82
(ここで、MSは、MTと同義である。)
また、特開2003−64193号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
11.32×MFR−0.7854≦MT
さらに、特開2003−94504号公報には、高溶融張力を有するポリプロピレンの定義として、以下の関係式が提案されている。
MT≧7.52×MFR−0.576
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)が、関係式:
log(MT1)≧−0.9×log(MFR)+0.7 又は MT1≧15
のいずれかを満たせば、十分に溶融張力の高い樹脂といえ、モノフィラメントを成形する際、安定した成形を可能にする。
また、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)は、以下の関係式:
log(MT1)≧−0.9×log(MFR)+0.9 又は MT1≧15
を満たすことがより好ましく、以下の関係式を満たすことがさらに好ましい。
log(MT1)≧−0.9×log(MFR)+1.1 又は MT1≧15
MT1の上限値については、これを特に設ける必要はないが、MT1が40g以下であると、上記測定手法における測定に適した引き取り速度を示し、このような場合は、樹脂の延展性にも優れていると考えられる。そのため、MT1は好ましくは40g以下、より好ましくは35g以下、さらに好ましくは30g以下である。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(Z)は、長鎖分岐構造を有するものである。長鎖分岐構造を有しないもの、例えば上記特許文献1(特開2011−195988号公報)に記載のものの場合、高い溶融張力を示すものの、フィッシュアイと呼ばれるゲル状物質が発生しやすく、モノフィラメントの成形には問題がある。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(Z)は、上記特性(z1)〜(z3)を満たせばよく、プロピレンを主体とする重合体より得られるものであればよい。プロピレンを主体とする重合体とは、重合体を構成する単量体の50重量%以上がプロピレンであるものをいい、例えばプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体又はそれらの混合物が例示される。
また、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(Z)は、上述のとおり、溶融張力が高く、分岐構造を有するという特徴を有している。そのような特徴を有するポリプロピレン系樹脂としては、重合工程で分岐を生じさせるものや、重合工程の後に電子線や有機過酸化物を用いた架橋により分岐を生じさせるものが知られており、いずれも特に制限なく使用することができる。ポリプロピレン系樹脂組成物やモノフィラメントの生産工程における材料のリサイクル使用の際に、再溶融加熱に起因する溶融張力などの物性や成形性の低下現象の観点から、重合工程で分岐を生じさせるものがより好ましく、特にメタロセン触媒を用いて製造されるものが好ましい。重合工程で分岐させるものとしては、例えば特開2014−132068号公報に開示されたものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂組成物は当業者に広く知られており、代表的なものは以下のとおりである。特開2017−2229号公報、特開2017−31274号公報、特開2017−71124号公報及び特開2017−105889号公報に開示された長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂組成物、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウェイマックス<WAYMAX>(登録商標)」が挙げられる。また、特開2012−30498号公報、特開2013−199643号公報及び特開2018−30992号公報に開示された、架橋法により製造された長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体含有組成物、ボレアリスAG製、商品名「Daproy(登録商標)WB140HMS」が挙げられる。好ましい市販品の例としては、メタロセン触媒を用いて製造された長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系重合体含有組成物、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウェイマックス(登録商標)MFX3」、「ウェイマックス(登録商標)MFX6」及び「ウェイマックス(登録商標)MFX8」が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、以下で説明する(x1)の特性を満たすものである。
(2−1)特性(x1):溶融張力(MT1)
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、溶融張力(MT1)とMFRが以下の関係式(a):
log(MT1)<−0.9×log(MFR)+0.7
かつ 式(a)
MT1<15
を満たすことを必要とする。
ここで、MT1及びMFRの測定条件、単位は、前述のとおりである。
この規定は、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)を含んでなる上記モノフィラメント成形時に十分な延展性を付与し、モノフィラメントの太さを所望の値に調整するために必要な特性である。前記特性(x1)を満たす場合、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)とポリプロピレン系樹脂組成物(Z)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物(G)の溶融張力が高くなり過ぎることはなく、延展性が良好となり、モノフィラメントの太さを所望の値に調整することが容易になる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、さらに下記特性(x2)及び(x3)の各範囲であることが好ましい。
特性(x2):メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)
MFRは1.0g/10分以上500g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは5.0g/10分以上100g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以上100g/10分以下、特に好ましくは30g/10分を超えて100g/10分以下、最も好ましくは50g/10分以上100g/10分以下である。
ここで、MFRは、JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されるものである。
MFRが1.0g/10分以上であれば、成形時の負荷が小さく、モノフィラメントの成形自体が容易である。一方、MFRが500g/10分以下であれば、成形の安定性が損なわれにくくなる。
Tmは121〜170℃であることが好ましく、より好ましくは121〜166℃、さらに好ましくは125〜166℃、特に好ましくは130〜166℃である。
融解ピーク温度が121℃以上であれば、本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物より得られるポリプロピレン系モノフィラメント及びそれを用いた加工品や、3Dプリンタ用フィラメント用途に適用した場合、3Dプリントにより得られる造形品が、高温下、好ましくは121℃以上の環境下で形状を保持できるだけの耐熱性を発現しやすくなる。一方、融解ピーク温度が170℃以下であれば、製造が容易である。
曲げ弾性率が10MPa以上であれば、例えば本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物より得られるポリプロピレン系モノフィラメント及びそれを用いた加工品や、3Dプリントにより得られる造形品が形状を保持できるだけの剛性を有する。また、曲げ弾性率が2000MPa以下であれば適度な柔軟性を有するため、本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物より得られるポリプロピレン系モノフィラメントの折れによる破壊が起こりにくくなる。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、上記特性(x1)を満たせばよく、プロピレンを主体とする重合体より得られるものであればよい。プロピレンを主体とする重合体とは、重合体を構成する単量体の50重量%以上がプロピレンであるものをいい、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体及びそれらを2成分以上組み合わせることが挙げられる。所望のMFR、融解ピーク温度、曲げ弾性率となるよう適宜配合して調整することができる。ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の全部又は一部にプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を用いる場合、α−オレフィンとしてエチレン及び/又は1−ブテンであることが好ましく、プロピレン単位は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であることが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の全部又は一部にプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を用いる場合、α−オレフィンとしてエチレン及び/又は1−ブテンであることが好ましく、プロピレン単位は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であることが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)には、本発明の効果を妨げない限り、ポリプロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。具体的な内容は後述のポリプロピレン系樹脂組成物(G)の項で例示したものが挙げられるが、これらの限りではない。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)は、市販品より適宜選択してもよく、市販品の例としては、日本ポリプロ(株)製商品名「ノバテック(登録商標)PP」、商品名「ウィンテック(登録商標)」、商品名「ニューコン(登録商標)」、商品名「ウェルネクス(登録商標)」等が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(G)は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物(X)1〜99重量%、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは70〜99重量%、さらに好ましくは70〜97重量%と、上記ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)1〜99重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜30重量%を含有する樹脂組成物を含む。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X)が1重量%以上、すなわちポリプロピレン系樹脂組成物(Z)が99重量%以下の場合、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)とポリプロピレン系樹脂組成物(Z)を含有する樹脂組成物を含むポリプロピレン系樹脂組成物(G)のモノフィラメント成形性以外の物性調整の自由度が高く、適用用途に制限が生じにくくなる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(G)は、以下で説明する(g1)、(g2)の特性を満たすものである。
MFRは1.0g/10分以上500g/10分以下である。好ましくは2.0g/10分以上100g/10分以下、より好ましくは10g/10分以上100g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分を超えて100g/10分以下、特に好ましくは40g/10分以上100g/10分以下である。
ここで、MFRは、JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されるものである。
MFRが1.0g/10分以上であれば、成形時の負荷が小さく、モノフィラメントの成形自体が容易である。一方、MFRが500g/10分以下であれば、成形の安定性が損なわれにくくなる。
Tmは121〜170℃である。好ましくは121〜166℃、より好ましくは125〜166℃、さらに好ましくは130〜166℃である。
融解ピーク温度が121℃以上であれば、本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物より得られるポリプロピレン系モノフィラメント及びそれを用いた加工品や、3Dプリンタ用フィラメント用途に適用した場合、3Dプリントにより得られる造形品が、高温下、好ましくは121℃以上の環境下で形状を保持できるだけの耐熱性を発現しやすくなる。一方、融解ピーク温度が170℃以下であれば、製造が容易である。
ポリプロピレン系樹脂組成物(G)は、さらに下記特性(g3)の範囲であることが好ましい。
特性(g3):メルトテンション(MT2)
MT2は2mN以上であることが好ましい。2mN以上であれば、モノフィラメントの成形安定性がより向上する。MT2の上限値については、これを特に設ける必要はないが、MT2が400mN以下であると樹脂の延展性にも優れ、モノフィラメントの成形性に優れる。そのため、MT2は好ましくは400mN以下、さらに好ましくは350mN以下、最も好ましくは300mN以下である。
ここで、MT2は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて、キャピラリー:直径2.095mm、長さ8.0mm、シリンダー径:9.55mm、シリンダー押出速度:10mm/分、引き取り速度:4.0m/分、キャピラリ―出口から引取プーリー下端までの間隔42cm、温度:190℃の条件で、30秒間測定したときの溶融張力(melt tension、平均値)を表し、単位はmNである。
log(MT2)≧−1.0×log(MFR)+1.9 式(c)
また、ポリプロピレン系樹脂組成物(G)は、以下の関係式:
log(MT2)≧−1.0×log(MFR)+2.0
を満たすことがより好ましく、以下の関係式を満たすことがさらに好ましい。
log(MT2)≧−1.0×log(MFR)+2.1
ここで、MFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定され、単位はg/10分である。
また、前記MT2測定において30秒間の測定時間中の最大値と最小値の差(ΔMT2)と平均値(MT2)の比(ΔMT2/MT2)も成形安定性の指標となる。ΔMT2/MT2の値が大きいと、溶融張力のムラが大きいことを示しており、線条の太さにムラがあることを示している。ΔMT2/MT2は小さいことが好ましく、概ね0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましく、0.2以下が特に好ましい。
本発明の効果を損なわない限り、ポリプロピレン系樹脂組成物(G)にはポリプロピレン系樹脂組成物(Z)とポリプロピレン系樹脂組成物(X)以外の樹脂成分を配合することができる。
その他の樹脂成分は、本発明の効果を妨げない限り、添加量に特に制限はないが、通常、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)と(Z)の合計100重量部に対して、100重量部以下である。
ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)とポリプロピレン系樹脂組成物(X)以外の成分としては、特に限定されないが、エチレン−α−オレフィン共重合体、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン系エラストマーやエチレン−酢酸ビニル共重合体などで代表されるポリエチレン系樹脂や、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体、1−ブテン−エチレン共重合体等のポリオレフィンを挙げることができる。また、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、及びそれらの水素添加誘導体等に代表される脂環式炭化水素樹脂や、例えば三井化学社製商品名「アペル」やポリプラスチックス社製商品名「TOPAS」や日本ゼオン社製商品名「ゼオノア」、「ゼオネックス」に代表される環状オレフィン(共)重合体などを添加してもよい。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等の高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルやシリコーンオイルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンモノエステルやソルビタン酸モノエステル、ポリエチレングリコールエステルなどで代表される帯電防止剤、ソルビトール系造核剤(例えば、新日本理化社製商品名「ゲルオールMD」、ミリケン社製商品名「ミラッドNX8000J」)、芳香族燐酸エステル類(例えば、ADEKA社製商品名「アデカスタブNA−21」や「アデカスタブNA−11」)、ミリケン社製商品名「Millad」シリーズ、ミリケン社製商品名「Hyperform」シリーズ、タルク、高密度ポリエチレンなどで代表される造核剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤や有機過酸化物などで代表される分子量調整剤や架橋助剤、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類に代表される中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、タルク、マイカ、モスハイジ、ガラス繊維、セルロースナノファイバー、グラスウールや炭素繊維、カーボンナノチューブなどに代表される充填剤、抗菌剤、防黴剤、蛍光増白剤、防曇剤、着色剤、顔料、染料、天然油、合成油、ワックス、さらには用途に応じて有機系、無機系の難燃剤などを、添加してもよく、それらの配合量は、適宜量である。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂組成物(G)は、上述のポリプロピレン系樹脂組成物(X)とポリプロピレン系樹脂組成物(Z)と、必要に応じて、他の添加剤、ポリマー成分をヘンシェルミキサー(商品名)、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合し、得ることができる。さらに必要に応じて、前記混合工程の後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により溶融混練する方法により得ることもできる。
また、各成分は同時に混合及び/又は溶融混練してもよいし、一部をマスターバッチとした上で、混合及び/又は溶融混練してもよい。また、ポリプロピレン系樹脂組成物(X)及び/又は(Z)にあらかじめ配合しておくこともできる。
本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物を用いてモノフィラメントを製造する際、その製造装置は公知のものを制限なく使用することができる。例えば、ポリプロピレン系樹脂組成物(G)を、押出機などを用いて溶融押出し、ダイに設けられた孔から押出された線条を、引取り装置などを用いて引き取りつつ冷却固化させて得る方法が挙げられ、好ましい形態としては、ダイに設けられた孔から押出された線条を水槽中の水にくぐらせることにより冷却固化する方法が挙げられる。
また、得られたモノフィラメントをさらに延伸工程を通して延伸モノフィラメントとすることもできる。延伸工程についても公知の方法を制限なく用いることができる。
より具体的には、原料を押出機により溶融させた後、孔径0.3mm〜3mm、孔数一〜数百の紡糸ノズルヘッドから、溶融ストランドが押し出される。溶融ストランドは、紡糸ノズル直下10〜500mmに据え付けてある冷却水槽へ導入され冷却固化させ、延伸工程を含む場合は冷却固化されたストランドを通常数m〜数十m/分のロール速度で実施される複数の繰出ロールにより延伸槽へと運び、延伸槽でストランドを延伸する方法が挙げられる。
なお、延伸槽は、湿式と乾式タイプがあり、湿式の場合は通常60〜100℃の加熱水が用いられる。乾式の場合では熱板又はオーブンが用いられ、温度は通常60〜160℃の範囲内であり、延伸倍率は通常1.0〜20倍である。延伸されたストランドは、場合によっては熱セットを施された後に巻き取り機へと運ばれる。
本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物より得られるポリプロピレン系モノフィラメントは、その線径に特に制限はないが、例えば直径0.3mmを超えるような太番手のモノフィラメントであることが本発明の効果を活かす観点で好ましい。より好ましくは直径0.4mm以上、さらに好ましくは直径1.0mm以上であり、例えば1.75mm、2.85mm、3.0mm等が例示できる。前記線径は、断面が真円状の場合の例であり、例えば断面が楕円状、三角形、四角形、星型、Y型等の異型であるものの場合、それらの断面積を真円の直径に換算した値が0.3mmを超えることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系モノフィラメントの製造方法により得られるポリプロピレン系モノフィラメントは、従来の方法では困難であった高いMFRを有することが可能となるため、例えば高速造形性が求められる3Dプリンタ用のフィラメントとして好適に用いることができる。また、本発明のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物を用いることによりモノフィラメントの成形性が改善されるため、例えばロープ、織物、カーペット、人工芝、コンクリート補強用繊維等の用途向けにも好適に用いることができる。
(1)評価方法
(1−1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分):
JIS K7210:1999の附属書A表1、条件Mに従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃ 公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.000mm
(1−2)ポリプロピレン系樹脂組成物(X)及び(Z)の溶融張力MT1(単位:グラム):
前述の方法で測定した。
(1−3)ポリプロピレン系樹脂組成物(G)の溶融張力MT2(単位:mN):
前述の方法で測定した。
(1−4)融解ピーク温度(融点)(Tm、単位:℃):
ティー・エイ・インスツルメント社製商品名Q2000型示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて、熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。複数の吸熱ピークが現れた場合は最も大きな吸熱ピークを融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。なお、測定試料は5mg用いた。
(1−5)ポリプロピレン系樹脂組成物(X)の曲げ弾性率(単位:MPa):
射出成形品の曲げ弾性率をJIS K7171に準拠して測定した。
(1−6)モノフィラメント成形性:
前述のポリプロピレン系樹脂組成物(G)の溶融張力MT2測定と同様の装置、シリンダー押出速度でキャピラリーから樹脂を押出してモノフィラメントを成形した。その際、押出温度を160℃、190℃、210℃、230℃に変化させ、さらに室温下で引取速度を4m/分、10m/分、20m/分とした際に各々引取可能であったものはその時の溶融張力(単位:mN)を記した。たるみや線条のバタつきの影響で滑車から線条が外れ安定して引取ることができずモノフィラメントの成形に不適であったものを×、線条が破断して引取不可能であったものを××とした。また、押出温度190℃、引取速度4m/分の時の溶融張力測定を行い、30秒間の測定時間中の溶融張力の最大値と最小値の差(ΔMT2)と溶融張力の平均値(MT2)との比(ΔMT2/MT2)も算出した。
(2−1)ポリプロピレン系樹脂組成物(X)
(2−1−1)X−1 日本ポリプロ(株)製商品名「ウェルネクス(登録商標)RMG02」を用いた。分析結果を表1にまとめる。
(2−1−2)X−2 下記製造例(X−2)で得られた樹脂組成物を用いた。分析結果を表1にまとめる。
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学工業(株)製、商品名:ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。化学処理した珪酸塩をキルン乾燥器で乾燥した。
(触媒の調製)
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調整した。
次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は、特開平10−226712号公報実施例に従って実施した)2,177mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
(予備重合)
続いて、窒素で充分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、n−ヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した触媒スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。
続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。
最後の上澄み液の成分分析を実施したところ、有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mmоl/L、Zr濃度は、8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中のZr存在量(重量比)は、0.018重量%であった。
続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液170mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥した。
この操作により、触媒1g当たりポリプロピレン2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
図1は、実施例で用いた重合装置のフローシートである。
攪拌羽根を有する横型重合器5(L/D=5.2、内容積:50m3)に、予め保有量45vol%になるようにベッドポリマー量を制御し、反応温度は、触媒がフィードされるリアクター上流部分を59℃、パウダー抜出される部分を65℃と設定し、その間の温度を63℃と設定した。反応圧力2.05MPaG、攪拌速度19.5rpmの条件を維持しながら、配管2から反応器の気相部ガス組成がエチレン/プロピレン=0.06モル比になるように混合ガスを連続的に供給し、さらに反応器の気相中の水素濃度を水素/プロピレン=0.001モル比に維持するように、水素ガスを連続的に供給して、予備重合処理した上記触媒を0.17kg/h(予備重合ポリマー量除く)、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを1kg/h一定となるように配管1より供給した。生成ポリマーすなわちプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)の分子量(MFR)を調整した。
反応熱は、配管3から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管4を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器5に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の45vol%となるように配管6を通して重合器5から間欠的に抜き出し、第2重合工程の重合器11に供給した。ガス遮断槽7からプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)の一部を抜き出して、分析用試料とした。
第一重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を分析したところ、MFRは140g/10分、エチレン含有量は1.95wt%であった。
攪拌羽根を有する横型重合器11(L/D=5.2、内容積:50m3)に、第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を配管8から間欠的にそれぞれ供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。
反応条件は、攪拌速度18rpm、反応温度70℃、反応圧力1.95MPaGであり、気相中のガス組成エチレン/プロピレン=0.38モル比、水素/エチレン=0.0012モル比となるように調整した。反応器中の未反応ガスは、未反応ガス抜き出し配管13から抜き出され、循環経路を通して、原料循環ガス供給配管15から再供給される。プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度21wt%)を配管12より110L/hで供給した。
反応熱は、配管14から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管13を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器11に還流した。
第2重合工程で生成されたポリプロピレン系樹脂(X−2)は、重合体の保有レベルが反応容積の55vol%となるように、配管18を通して重合器11から間欠的に抜き出した。
このとき、重合されたポリプロピレン系樹脂(X−2)の一部を抜き出して、分析用試料とした。このとき、ポリプロピレン系樹脂(X−2)の生産量は、6.0t/hであった。
こうして得られたポリプロピレン系樹脂(X−2)を分析した結果、第1重合工程で得られた成分の比率は80重量%、第2重合工程で得られた成分のエチレン含有量は11.5重量%、であった。
なお、X−2の分析については特開2005−132979号公報に記載の方法にて、測定した。なお、成分(A)及び(B)は、特開2005−132979号公報に記載の成分(A)及び(B)に各々対応する。
得られたポリプロピレン系樹脂(X−2)100重量部に、添加剤(フェノール系酸化防止剤)としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、BASFジャパン株式会社製)0.05重量部、ホスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「IRGAFOS 168」、BASFジャパン株式会社製)0.05重量部を、ヘンシェルミキサー(商品名)に投入し、750rpmで1分間室温で高速混合した後、スクリュー口径25mmのテクノベル社製KZW−25二軸押出機にて、スクリュー回転数250rpm、吐出量15kg/hr、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)を得た
Z−1:日本ポリプロ(株)製 商品名:ウェイマックス(登録商標)MFX3(メタロセン触媒を用いて製造された長鎖分岐構造を有する)を用いた。分析結果を表2にまとめる。
Z−2:日本ポリプロ(株)製 商品名:ウェイマックス(登録商標)MFX6(メタロセン触媒を用いて製造された長鎖分岐構造を有する)を用いた。分析結果を表2にまとめる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)95重量%と、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−1)5重量%をポリ袋に入れ、袋ごと手で上下左右に振とうして内容物を十分撹拌することによりブレンドし、スクリュー口径15mmのテクノベル社製KZW−15二軸押出機にて、スクリュー回転数200rpm、吐出量3kg/hr、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでポリプロピレン系樹脂組成物(G−1)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表3にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)を90重量%に、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−1)を10重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作でポリプロピレン系樹脂組成物(G−2)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表3にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)を85重量%に、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−1)を15重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作でポリプロピレン系樹脂組成物(G−3)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表3にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)を80重量%に、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−1)を20重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作でポリプロピレン系樹脂組成物(G−4)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表3にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)95重量%をポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)97重量%に、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−1)5重量%をポリプロピレン系樹脂組成物(Z−2)3重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作でポリプロピレン系樹脂組成物(G−5)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表4にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)を95重量%に、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−2)を5重量%に変更した以外は実施例5と同様の操作でポリプロピレン系樹脂組成物(G−6)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表4にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)を90重量%に、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z−2)を10重量%に変更した以外は実施例5と同様の操作でポリプロピレン系樹脂組成物(G−7)ペレットを得た。得られたペレットを用いて前述の方法にてモノフィラメントを成形した。評価結果を表4にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−2)ペレットをポリプロピレン系樹脂組成物(G−8)ペレットとして前述の方法にてモノフィラメントを成形した。160℃でもモノフィラメントを安定的に製造することができなかった。評価結果を表3にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X−1)ペレットをポリプロピレン系樹脂組成物(G−9)ペレットとして前述の方法にてモノフィラメントを成形した。160℃、190℃ではモノフィラメントを安定的に製造することができたが、210℃、230℃ではモノフィラメントを安定的に製造することができなかった。また、190℃、引取速度4m/分の時のΔMT2/MTの値が実施例に比べて大きなものとなった。評価結果を表4にまとめた。
表3及び4における実施例1〜7から明らかなように、本発明によるポリプロピレン系樹脂組成物(X)と、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂組成物(Z)を含有した組成物を使用することにより、モノフィラメントを安定的に製造することができた。
一方で、ポリプロピレン系樹脂組成物(Z)を含有しない組成物である場合、紡糸ノズル直下におけるモノフィラメントの走行状態が安定せず、モノフィラメントを安定的に製造することができずモノフィラメントの成形に不適であるもの(比較例1)や、モノフィラメントを安定的に製造することができる押出温度があるものの、その際のモノフィラメントの成形安定性は実施例1〜7よりも劣るもの(比較例2)であった。
以上の結果から、本発明の各実施例においては、各比較例に比して、ポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物を使用することにより、モノフィラメントの成形安定性が、おしなべて顕著に優れており、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を明示しているといえる。
2 原料混合ガス供給配管
3 原料プロピレン供給配管
4 未反応ガス抜出し配管
5 攪拌羽根を有する横型重合器(第1重合工程)
6 重合体抜出し配管
7 ガス遮断槽(脱ガス槽)
8 重合体供給配管
9 凝縮機
10 圧縮機
11 攪拌羽根を有する横型重合器(第2重合工程)
12 活性抑制剤添加用配管
13 未反応ガス抜出し配管
14 原料プロピレン供給配管
15 原料循環ガス供給配管
16 凝縮機
17 圧縮機
18 重合体抜出し配管
Claims (9)
- 下記特性(x1)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物(X)1〜99重量%と、下記特性(z1)〜(z3)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物(Z)1〜99重量%を含有する樹脂組成物を含み、かつ、下記特性(g1)〜(g2)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物(G)からなるポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X):
(x1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(a)を満たすこと。
Log(MT1)<−0.9×Log(MFR)+0.7 かつ MT1<15 式(a)
ポリプロピレン系樹脂組成物(Z):
(z1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜100g/10分であること。
(z2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(b)を満たすこと。
Log(MT1)≧−0.9×Log(MFR)+0.7 又は MT1≧15 式(b)
(z3)長鎖分岐構造を有すること。
ポリプロピレン系樹脂組成物(G):
(g1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜500g/10分であること。
(g2)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。 - モノフィラメントの線径が直径0.3mmを超えるポリプロピレン系モノフィラメント用である請求項1に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- ポリプロピレン系モノフィラメントがロープ用である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- ポリプロピレン系モノフィラメントが織物用である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- ポリプロピレン系モノフィラメントがカーペット用である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- ポリプロピレン系モノフィラメントが人工芝用である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- ポリプロピレン系モノフィラメントがコンクリート補強用繊維用である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- ポリプロピレン系モノフィラメントが3Dプリンタ用フィラメント用である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系モノフィラメント用樹脂組成物。
- 下記特性(x1)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物(X)1〜99重量%と、下記特性(z1)〜(z3)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物(Z)1〜99重量%を含有する樹脂組成物を含み、かつ、下記特性(g1)〜(g2)を満たすポリプロピレン系樹脂組成物(G)を溶融押出し、線条を形成させるポリプロピレン系モノフィラメントの製造方法。
ポリプロピレン系樹脂組成物(X):
(x1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(a)を満たすこと。
Log(MT1)<−0.9×Log(MFR)+0.7 かつ MT1<15 式(a)
ポリプロピレン系樹脂組成物(Z):
(z1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.1〜100g/10分であること。
(z2)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)とMT1(溶融張力 単位g 230℃)が以下の関係式(b)を満たすこと。
Log(MT1)≧−0.9×Log(MFR)+0.7 又は MT1≧15 式(b)
(z3)長鎖分岐構造を有すること。
ポリプロピレン系樹脂組成物(G)
(g1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1.0〜500g/10分であること。
(g2)融解ピーク温度(Tm)が121〜170℃であること。
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