以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る自動分析装置1の機能構成の例を示すブロック図である。図1に示される自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、及び制御回路9を備える。
分析機構2は、標準試料、又は被検試料等の試料と、この試料に設定される各検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、試料と試薬との混合液を測定し、例えば吸光度又は散乱光強度等で表される標準データ、及び被検データを生成する。
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、検量データ、及び分析データ等を生成するプロセッサである。解析回路3は、記憶回路8から動作プログラムを読み出し、読み出した動作プログラムに従って検量データ、及び分析データ等を生成する。例えば、解析回路3は、標準データに基づき、標準データと標準試料について予め設定された標準値との関係を示す検量データを生成する。また、解析回路3は、被検データと、この被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、濃度値、酵素の活性値、及び変化にかかる時間として表される分析データを生成する。解析回路3は生成した検量データ、及び分析データ等を制御回路9へ出力する。
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
入力インタフェース5は、例えば、操作者から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
記憶回路8は、磁気的、若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されても構わない。
記憶回路8は、解析回路3で実行される動作プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための動作プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを被検試料毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。
図2は、図1に示される分析機構2の構成の一例を示す模式図である。図2に示される分析機構2は、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、及び試薬庫204を備える。
反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、複数の反応容器2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。反応容器2011は、例えば、ガラスにより形成されている。
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留し、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される混合液を昇温する。
ラックサンプラ203は、測定を依頼された試料を収容する複数の試料容器を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持する。図2に示す例では、5本の試料容器を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
ラックサンプラ203には、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで試料ラック2031を搬送する搬送領域が設けられている。搬送領域では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域から引き込む引き込み領域が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域が設けられている。戻し領域では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
試薬庫204は、標準試料、及び被検試料に含まれる所定の成分と反応する試薬を収容する試薬容器100を複数保冷する。試薬庫204内には、回転テーブルが回転自在に設けられている。回転テーブルは、複数の試薬容器100を円環状に載置して保持する。なお、本実施形態において、図2では図示していないが、試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。試薬容器100は、例えば、柱状のガラス製の容器である。より具体的には、試薬容器100は、円柱状、又は所定の円筒内に収容可能な多角柱状のガラス製の容器である。
また、図2に示される分析機構2は、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、攪拌ユニット210、測光ユニット211、及び洗浄ユニット212を備える。
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部が位置するようになっている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の直上、又は、サンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、直下に位置する試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
試薬分注アーム208は、反応ディスク201と試薬庫204との間に設けられている。試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試薬分注アーム208は、一端に試薬分注プローブ209を保持する。
試薬分注プローブ209は、試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、試薬吸引位置が設けられている。試薬吸引位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、回転テーブルに円環状に載置される試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。また、試薬分注プローブ209の回動軌道上には、試薬分注プローブ209が吸引した試薬を反応容器2011へ吐出するための試薬吐出位置が設定されている。試薬吐出位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の試薬吸引位置、又は試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、試薬吸引位置で停止している試薬容器から試薬を吸引する。すなわち、試薬分注プローブ209は、吸引部の一例である。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した試薬を、試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
攪拌ユニット210は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。攪拌ユニット210は、攪拌子を有し、攪拌子により、反応ディスク201上の攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている試料及び試薬を攪拌する。
測光ユニット211は、反応容器2011内に吐出された試料と試薬との混合液における所定の成分を光学的に測定する。測光ユニット211は、光源、及び光検出器を有する。測光ユニット211は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット211は、反応容器2011から出射された光を、光検出器により検出する。
具体的には、例えば、光検出器は、反応容器2011内の標準試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度等により表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器2011内の被検試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度等により表される被検データを生成する。測光ユニット211は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。なお、光検出器は、反応容器2011内の混合液で散乱された散乱光を検出し、散乱光強度により表される標準データ及び被検データを生成しても構わない。
洗浄ユニット212は、測光ユニット211で混合液の測定が終了した反応容器2011の内部を洗浄する。
図1に示される制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能91を実現しても構わない。
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。
次に、試薬容器100が保冷される試薬庫204について詳細に説明する。図3乃至図5は、本実施形態に係る試薬庫204の構成例を表す模式図である。図3は、試薬庫204の断面図の例を表し、図4は、図3におけるA−A断面における上面図の例を表し、図5は、図3におけるB−B断面における上面図の例を表す。図3乃至図5に示される試薬庫204は、試薬カバー2041、筐体2042、テーブル回転機構2043、対流分離板2044、ファン2045、及び冷却素子2046を有する。
試薬カバー2041は、筐体2042の開口を覆う蓋である。試薬カバー2041には、図示しない試薬吸引口が設けられている。試薬吸引口は、試薬カバー2041を貫通する孔であり、試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。
筐体2042は、上端に開口部を有し、内部にテーブル回転機構2043が備える回転テーブル20431、及び対流分離板2044を収容可能に形成されている。筐体2042は、開口部が試薬カバー2041により覆われている。筐体2042は、内面部が熱伝導性に優れたアルミニウム等の材料により形成されている。また、筐体2042は、内面部を覆うように形成される、断熱材から成る断熱部を有する。
テーブル回転機構2043は、制御回路9の制御に従い、試薬容器100を試薬吸引位置へ搬送する。テーブル回転機構2043は、例えば、回転テーブル20431、冠部20432、支持部20433、及び回転軸20434を備える。
回転テーブル20431は、試薬容器100が載置される台である。すなわち、回転テーブル20431は、載置手段の一例である。回転テーブル20431において、試薬容器100が載置される位置は予め設定されている。図2乃至図5では、複数の試薬容器100が二重の円環状に載置される場合を例に示している。なお、試薬容器100は、二重の円環状に載置されることに限定されず、一重、又は三重等の円環状に載置されても構わない。
試薬容器100の載置位置は、円周上に隣り合う試薬容器100同士が予め設定された間隔を維持して載置されるように設定されている。載置位置が規則正しく設定されることで、試薬庫204内の温度分布に偏りが生じにくくなる。
内側に設けられる円環状の載置位置は、この載置位置に載置される試薬容器100が、外側の円周上に配列される試薬容器100の間から筐体2042の内壁と面するように設定されている。これにより、外側の円周上に配列される試薬容器100の間を通過した冷気が内側の円周上に配列される試薬容器100に直接ぶつかるようになる。
回転テーブル20431に直接載置される試薬容器100の形状は、予め設定されている。例えば、図5では、円柱形状の試薬容器100が回転テーブル20431に直接載置されるように設定されている。なお、回転テーブル20431に直接載置可能な試薬容器100の形状は、円柱形状に限定されず、多角柱形状であっても構わない。
回転テーブル20431に直接載置可能な試薬容器100の形状が予め設定されていたとしても、その形状の容器のみが載置可能という訳ではない。回転テーブル20431の載置形状に対応したアダプタ(補助器具)を容器に取り付け、アダプタを取り付けた容器を回転テーブル20431に載置してもよい。このようなアダプタを用意することにより、アダプタを取り付け可能であれば、種々の形状の容器に対応することが可能となる。アダプタの機能は、試薬容器100の形状を補うものに限られない。試薬容器100の高さが低く、直に載置位置に載置されたのでは、試薬容器100の開口部が対流分離板2044に形成されている突出孔20441から出ない場合には、試薬容器100の高さを補うものとして用いてもよい。
回転テーブル20431には、載置される試薬容器100の間を通過する冷気の量を調整するための溝部、及び孔が形成されている。例えば、回転テーブル20431には、図5に示されるように、調整溝204311、及び調整孔204312がそれぞれ複数形成されている。調整溝204311は、筐体2042の内壁との間に隙間を形成させるための溝である。調整溝204311は、例えば、回転テーブル20431に設けられる外側の載置位置から半径方向外側のテーブル端部が厚さ方向に略半円形状に削られてなる。調整溝204311と筐体2042の内壁との間には、空気を通過させるための隙間が形成される。なお、調整溝204311の形状は略半円形状に限定されず、通過する空気に偏り、及び乱れを生じさせない形状であれば任意に設定可能である。また、調整溝204311の幅、及び数は、試薬庫204内の温度分布に応じ、任意に設定可能である。また、調整溝204311が設けられる位置は、試薬容器100の外側載置位置から半径方向外側のテーブル端部に限定されず、通過する空気に偏り、及び乱れを生じさせない位置であれば任意に設定可能である。
調整孔204312は、試薬庫204の底面側と上面側とを導通させるための孔である。調整孔204312は、例えば、回転テーブル20431に設けられる内側の載置位置から半径方向外側の領域が、略円形状に貫通されてなる。なお、調整孔204312の形状は略円形状に限定されず、通過した冷気に偏り、及び乱れを生じさせない形状であれば任意に設定可能である。また、調整孔204312の直径、及び数は試薬庫204内の温度分布に応じ、任意に設定可能である。また、調整孔204312が設けられる位置は、試薬容器100の内側載置位置から半径方向外側の領域に限定されず、通過する空気に偏り、及び乱れを生じさせない位置であれば任意に設定可能である。
冠部20432は、回転テーブル20431の内周から上方へ向かって延設されている。冠部20432の高さは、回転テーブル20431に載置される試薬容器100の高さに応じて設定されている。冠部20432は円周方向に、予め設定された間隔で、通過孔204321が形成されている。このとき、通過孔204321が形成される位置は、隣接する円周上に配列される試薬容器100の位置に基づいている。具体的には、図5では、内側の円周上に配列される試薬容器100の円周方向内側と、内側の円周上において隣接する試薬容器100の中間点の円周方向内側とに通過孔204321が設けられている。通過孔204321の形状は、試薬庫204の高さ方向に長い形状を有することが望ましい。なお、孔の大きさは試薬庫204内の温度分布に応じ、任意に設定可能である。
支持部20433は、冠部20432の上端に形成される、例えば、板状の部材である。支持部20433は、対流分離板2044を取り外し可能に支持している。
回転軸20434は、支持部20433の略中心に固定されている。回転軸20434は、図示しないモータと接続し、モータの動力を支持部20433へ伝える。モータが制御回路9の制御に従って駆動されると、回転軸20434により伝達されるモータの動力により、支持部20433、冠部20432、回転テーブル20431、及び対流分離板2044が回動及び停止を繰り返す。これにより、回転テーブル20431に載置される複数の試薬容器100うちいずれかの試薬容器100が、試薬吸引口の直下の位置、すなわち、試薬吸引位置で停止されるようになる。
対流分離板2044は、試薬カバー2041と筐体2042とにより形成される空間を分離するための部材であり、例えば、分離手段の一例である。試薬カバー2041と筐体2042とにより形成される試薬庫204内の空間は、例えば、対流分離板2044より上方の第1空間と、対流分離板2044より下方の第2空間とに分離される。第2空間の高さは、基準となる試薬容器100の高さに基づいて設定されている。例えば、第2空間は、試薬容器100のうち、試薬を収容している本体を含むように設定されている。これにより、第2空間では、試薬容器100のうち、冷却を要する部分が存在することになる。
対流分離板2044は、例えば、テーブル回転機構2043の支持部20433に固定されている。対流分離板2044には、回転テーブル20431に載置される試薬容器100の開口部を試薬庫204の上面側へ突出させるための突出孔20441が複数形成されている。突出孔20441が形成される位置は、回転テーブル20431で設定されている試薬容器100の載置位置と対応する。突出孔20441の形状は、回転テーブル20431で設定されている直接載置可能な試薬容器100の形状と対応する。
例えば、回転テーブル20431において円柱形状の試薬容器100が二重の円環状に載置されるように設定されている場合、対流分離板2044は、設定される試薬容器100よりも若干大径の円形状の突出孔20441が二重の円環状に設けられる。一方、例えば、回転テーブル20431において多角柱形状の試薬容器100が一重の円環状に載置されるように設定されている場合、対流分離板2044は、設定される試薬容器100よりも若干大きい多角形状の突出孔20441が一重の円環状に設けられる。
ファン2045は、制御回路9の制御に従って駆動され、予め設定された方向へ空気を送り出す送風手段の一例である。具体的には、例えば、ファン2045は、回転軸20434を囲むように設けられている。また、ファン2045は、冠部20432と支持部20433とにより囲まれる空間内の空気を、試薬庫204の底面方向へ送り出すように設けられている。これにより、対流分離板2044より下方の第2空間において対流が発生する。なお、図3では、ファン2045が独自の動力源を有する場合を例に示しているが、これに限定されない。ファン2045の回転軸がテーブル回転機構2043の回転軸20434と共有され、ファン2045は、回転軸20434と接続するモータの動力により駆動されても構わない。
冷却素子2046は、制御回路9の制御に従って駆動され、冷却効果を発生させる半導体素子であり、冷却手段の一例である。冷却素子2046は、例えば、冷却素子2046は、冷気が滞留する試薬容器100の底面に複数設けられる。
次に、以上のように構成される試薬庫204内で発生する対流について説明する。
操作者は、試薬カバー2041を開き、対流分離板2044に形成されている突出孔20441に、試薬容器100を挿入することで、回転テーブル20431に試薬容器100を載置する。なお、予め設定する基準形状と異なる試薬容器、及び基準高さより低い試薬容器については、アダプタを取り付けて突出孔20441に挿入する。
対流分離板2044の突出孔20441に挿入されて回転テーブル20431に試薬容器100が載置されると、突出孔20441から試薬庫204の上面側へ、例えば、試薬容器100の肩部より上の部分が突出する。本実施形態において、試薬容器100の肩部とは、例えば、試薬容器100の本体が開口部へ向けて小径となる部分を指す。また、試薬容器100が突出孔20441に挿入されると、試薬庫204内の空間が、対流分離板2044より上方の第1空間と、対流分離板2044より下方の第2空間とに分離される。操作者は、全ての試薬容器100を載置すると、試薬カバー2041を閉じる。
試薬カバー2041が閉じられ、検査が開始すると、所定のタイミングでファン2045が回転する。なお、試薬カバー2041が閉じられている間において、ファン2045を回転させるタイミングに限定はなく、例えば、ファン2045は、常に回転していても構わない。また、試薬カバー2041が開けられたことで第1空間の温度が室内温度程度にまで上昇し、第2空間の温度も上昇傾向にある場合には、制御回路9は、冷却素子2046のパワーをブーストし、ファン2045の回転数を上げるように制御しても構わない。
ファン2045が回転すると、冠部20432と支持部20433とにより囲まれる空間内の空気がファン2045に吸引され、吸引された空気は、試薬庫204の底面方向へ送り出される。空気が吸引された空間内は負圧となる。つまり、冠部20432と支持部20433とにより囲まれる空間が負圧室となる。
底面方向へ送り出された空気は、冷却素子2046により冷却されて底面部に滞留している冷気を、回転テーブル20431の調整溝204311と筐体2042との間に形成される隙間、及び調整孔204312から、回転テーブル20431の載置面側へ押し出す。載置面側へ押し出された冷気は、負圧となっている中央の空間へ引き付けられる。これにより、押し出された冷気の進行方向は、第1空間方向から、回転軸20434方向へ、略90度切り替えられる。進行方向が切り替えられた冷気は、回転テーブル20431に載置されている試薬容器100の間を通り抜け、負圧となっている中央の空間へ到達する。これにより、第2空間中で冷気が循環される。
載置面側へ押し出された冷気のうち、進行方向が維持される一部の冷気は、対流分離板2044に衝突する。対流分離板2044に形成されている突出孔20441には試薬容器100の本体が充填されているため、突出孔20441と試薬容器100との間の隙間は小さく、この隙間を通過して第1空間へ到達する冷気は少ない。そのため、対流分離板2044に衝突した冷気の大部分は、負圧となっている中央の空間へ引き込まれる。
図6は、試薬庫204内の対流の例を表す模式図である。図6に示されるように、冷気は、第2空間中で循環され、第1空間へはほぼ到達しない。
以上のように、本実施形態では、試薬庫204に対流分離板2044を設け、試薬容器100の開口部が存在する第1空間と、試薬容器100のうち冷却するべき試薬容器本体が存在する第2空間とに分離させる。そして、第2空間において空気の対流を発生させ、第1空間では第2空間における対流が伝播しないようにしている。これにより、試薬庫204内の温度分布を一定に保ちつつ、開口部からの試薬の蒸発を押さえることが可能となる。
また、試薬容器100の交換の為に試薬カバー2041を開けると温度の高い外部空気が試薬庫204内に流入することで第1空間の温度は外気温度と同等まで上昇するが、対流分離板2044により隔てられた第2空間の温度上昇はある程度抑制されることになる。
また、試薬カバー2041を閉めることで解放時に上昇した第1空間の温度が下がると、第1空間では必然的に結露が生じる。結露が生じるということは、第1空間の相対湿度が高いことを表しており、つまり、試薬が蒸発しにくい環境であることを表している。
また、本実施形態では、ファン2045により空気が吸引されて内部が負圧となる負圧室が第2空間に発生する。そして、ファン2045により発生された対流は、冷却素子2046、回転テーブル20431に載置される複数の試薬容器100の本体部分、及び負圧室を循環するようになっている。これにより、第2空間内の空気が効率的に冷却されることになる。例えば、試薬容器100の交換時に試薬カバー2041が開けられた場合であっても、試薬カバー2041の閉鎖後直ちに温度復帰させることが可能になる。
また、本実施形態では、第2空間において、回転テーブル20431を通過して第1空間へ向けて進行する冷気を引き込む位置に負圧室が形成されるようにしている。これにより、第1空間へ到達する冷気をより減少させることが可能となる。
また、本実施形態では、回転テーブル20431において、試薬容器100の載置位置から半径方向外側に、調整溝204311、及び調整孔204312等の冷気を通過させる機構を設けるようにしている。すなわち、回転テーブル20431において、試薬容器100の載置位置から冷気の進行方向の上流側に、冷気の通過機構を設けるようにしている。これにより、回転テーブル20431を通過した冷気が回転軸20434方向へ流動する際に、試薬容器100へ効率的に衝突することになり、試薬容器100を効率的に冷却することが可能となる。
また、本実施形態では、回転テーブル20431に載置させる試薬容器100の形状、及び高さが基準の形状、及び高さと一致しない場合、試薬容器100にアダプタを取り付けて回転テーブル20431に載置させるようにしている。これにより、試薬容器100の形状、及び高さがそれぞれ異なる場合であっても、特別な機構を要しない。
なお、本実施形態に係る試薬庫204の構造は、図3に示される例に限定されない。試薬庫204は、例えば、ファン2045よりも底面側の位置に第2ファン2047を有していても構わない。図7は、本実施形態に係る試薬庫204のその他の構成例を表す模式図である。
第2ファン2047は、水平循環用のファンであり、例えば、シロッコファンにより実現される。第2ファン2047は、制御回路9の制御に従って駆動され、試薬庫204の底面近傍の空気を、水平方向に循環させる。図8は、図7に示される試薬庫204内の底面近傍で発生する対流の例を表す模式図である。図8で示されるように、第2ファン2047により発生された対流は、冷却素子2046の直上を通る。これにより、冷却素子2046で冷却された空気が試薬庫204の底面全体に行き渡ることになり、試薬庫204の底面が一定温度に冷却されることになる。
また、本実施形態では、試薬容器100を回転テーブル20431に直接載置する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。試薬容器100は、複数の試薬容器100を搭載可能な試薬ラックに搭載されて、回転テーブル20431に載置されても構わない。これにより、試薬容器100は、試薬ラックが回転テーブル20431に設置されることで、まとめて回転テーブル20431に載置される。また、試薬容器100は、試薬ラックが回転テーブル20431から取り外されることで、回転テーブル20431からまとめて取り出される。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、自動分析装置1は、簡易な構造で、試薬庫204内の試薬の蒸発を抑制することができる。また、試薬容器を高密度に収容する場合であっても、試薬庫204内の試薬の蒸発を抑制することができる。したがって、検体測定処理プロセスにおける蒸発による試薬の無駄を恒常的に削減することができる。また、蒸発による試薬の劣化が引き起こす検査結果の異常も回避することができる。
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。