JP2019199550A - オレフィン系樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]および特定構造の架橋メタロセン化合物[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合させ、以下の要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂を製造するオレフィン系樹脂の製造方法。(I)主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。(II)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し50〜90mol%の範囲にあり、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜50mol%(ただしエチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位との合計を100mol%とする)の範囲にある。(III)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が0〜100℃の範囲にある。(IV)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dl/gの範囲にある。【効果】本発明により、側鎖が非晶性であるエチレン・α−オレフィン共重合体であるグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を、モノマーから単一反応器で一つの重合工程により直接製造することができ、簡易に製造できる。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の要件を満たすオレフィン系樹脂の製造方法に関する。
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂は、軽量、柔軟であり、成型性、リサイクル性、他のオレフィン系樹脂との相容性に優れるといった特性から、バンパーやインストルメントパネルなどの自動車部品、包装材料、潤滑油剤、スポーツ用部品、電線被覆材など、主材あるいは改質剤として幅広く用いられている。エチレン・α−オレフィン共重合体は、モノマーの組成 (エチレンとα−オレフィンの組成比)によって、熱的特性、機械的特性、レオロジー特性などの諸物性が変化するため、各用途の要求性能に応じたモノマー組成の設計がなされている。
一方、ブロック型オレフィン共重合体は、異なる構造のポリマー鎖が結合したオレフィン系重合体であり、単一構造の重合体や複数の重合体の単なるブレンド物では得られない性能や優れた物性バランスを示すことがある。製造方法としては、リビング重合触媒を用いてブロック構造にする方法(特許文献1)、特定の重合触媒と亜鉛化合物を存在させ可逆的な連鎖移動反応によりマルチブロック構造を生成させる方法(特許文献2)、反応性官能基をポリオレフィンに導入し重合体鎖をカップリング反応させる方法(特許文献3)などが一般に知られている。中でも末端に共重合性のあるビニル基を持ったマクロモノマーを他のオレフィンモノマーと共重合してグラフト型ブロックコポリマーを製造する方法は、工業的生産性に優れ、着色や臭気など汚染の懸念の少ない重合体が得られる点で、有用である。
例えば、特許文献4には、特定の触媒の組み合わせにより、単一の反応器中でポリエチレンマクロモノマーを生成し、そのマクロモノマーとエチレンとαオレフィンとを共重合させることにより、側鎖をポリエチレン、主鎖をエチレン・α−オレフィン共重合体とするグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を製造する方法が開示されている。
また、特許文献5には、プロピレンとエチレンの共重合体であるマクロモノマーを製造した後、そのマクロモノマーをさらにエチレンおよびプロピレンと共重合することにより、主鎖が結晶性(エチレン組成74mol%以下)であり、側鎖が非晶性(エチレン組成30〜65mol%)であるグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を製造する方法が開示されている。特許文献5には、このような主鎖が結晶性であり、側鎖が非晶性であるグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂は、潤滑油粘度調整剤として用いた場合、低温下での貯蔵安定性と優れた粘度特性とを両立できることが示されている。
しかし、特許文献4に記載の方法では、グラフト型オレフィン重合体を単一の反応器にてモノマーから直接製造する方法であるものの、側鎖は実質ポリエチレンに限定されている。また、特許文献5には、グラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を単一の反応器にてモノマーから直接製造する具体的な方法は示されていない。このような技術背景の中、経済性の観点から側鎖が非晶性であるエチレン・α−オレフィン共重合体であるグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂の、より簡易な製造方法が求められていた。
特開2004−204058号公報 特表2007−529617号公報 特開2009−102598号公報 国際公開第2015/147186号 国際公開第2017/082182号
本発明の課題は、グラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を製造する方法であって、特に側鎖が非晶性であるエチレンαオレフィン共重合体であるグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を、モノマーから単一反応器で一つの重合工程により直接製造する方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の重合触媒の組み合わせにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は、次の[1]〜[4]に関する
[1] 下記化合物[A]および[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合させ、以下の要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂を製造するオレフィン系樹脂の製造方法。
(I)主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し50〜90mol%の範囲にあり、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜50mol%(ただしエチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位との合計を100mol%とする)の範囲にある。
(III)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が0〜100℃の範囲にある。
(IV)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dl/gの範囲にある。
[A]:ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物
[B]:下記一般式[B]で表わされる架橋メタロセン化合物
Figure 2019199550
(式[B]中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
[2] 炭素原子数3〜12のα−オレフィンがプロピレンである前記[1]に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
[3] 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]が以下の要件(i)を満たす前記[1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
(i) 前記側鎖が、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなり、前記側鎖に含まれるエチレンから導かれる繰り返し単位の割合が側鎖に含まれる全繰り返し単位に対し30〜65mol%の範囲にある。
[4] 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]が以下の要件(i i)を満たす前記[1]〜[3]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
(i i) 前記主鎖が、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなり、前記主鎖に含まれるエチレンから導かれる繰り返し単位の割合が主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し74〜92mol%の範囲にある。
本発明により、側鎖が非晶性であるエチレン・α−オレフィン共重合体であるグラフト型オレフィン重合体を含むオレフィン系樹脂を、モノマーから単一反応器で一つの重合工程により直接製造することができ、簡易に製造できる。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示すときに使用される「〜」という記号は、該記号の左側の数値以上、右側の数値以下であることを表す。
<オレフィン系樹脂の製造方法>
本発明にかかる製造方法は、下記化合物[A]と[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合させことを特徴とする。
[A]:ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物
[B]:下記一般式[B]で表わされる架橋メタロセン化合物
Figure 2019199550
(式[B]中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
以下、遷移金属化合物[A]を含む重合触媒について説明する。
遷移金属化合物[A]は、好ましくは後述する化合物[C]との組み合わせにより、末端不飽和非晶性共重合体(以下、マクロモノマーとも言う)を製造する重合触媒として機能する。後述する架橋メタロセン化合物[B]により、前述したマクロモノマーをさらに共重合させることにより後述するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を製造する。
ジメチルシリルビスニンデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]としては、Resconi, L. JACS 1992, 114, 1025−1032などで例示されている化合物が知られており、末端不飽和非晶性重合体を製造するオレフィン重合用触媒を好適に用いることが出来る。
そのほかに、ジメチルシリルビスニンデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]として、開平6−100579、特表2001−525461、特開2005−336091、特開2009−299046、特開平11−130807、特開2008−285443等により開示されている化合物を好適に用いることができる。
上記ジメチルシリルビスニンデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]としてより具体的には、架橋ビス(インデニル)ジルコノセン類又はハフノセン類からなる群から選択される化合物を好適な例として挙げることができる。より好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセン又はハフノセンである。さらに好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセンであり、ジルコノセンを選択することで、末端不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体の挿入反応により生じる長鎖分岐ポリマーの生成が抑制される。
より具体的には、ジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド又はジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチルを好適な遷移金属化合物[A]として用いることができる。
以下、架橋メタロセン化合物[B]について具体的に説明する。
架橋メタロセン化合物[B]は、前述のマクロモノマーをさらに共重合させ、前述の遷移金属化合物[A]と組み合わせたときに主鎖が結晶性となる共重合体を生成する。
架橋メタロセン化合物[B]は、上記一般式[B]で表されるエチレン架橋型メタロセン化合物である。
以下、本発明で用いられうる架橋メタロセン化合物[B]の化学構造上の特徴について説明する。
架橋メタロセン化合物[B]は、構造上、次の特徴[m1]および[m2]を備える。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
[m2]二つの配位子が、エチレン架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
以下、架橋メタロセン化合物[B]が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式[B]中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示すものであり、末端ビニルエチレン・α−オレフィン共重合体を良好に取り込む構造として、R1、R2、R3およびR4は全て水素原子であるか、またはR1、R2、R3およびR4のいずれか一つ以上がメチル基であり残りは水素原子である構造が特に好ましい。
(置換フルオレニル基)
式[B]中、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。R6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましく;R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
重合活性の視点からは、R6およびR11がいずれも水素原子でないことが好ましく;R6、R7、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことがさらに好ましく;R6およびR11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つR7とR10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。また、R6およびR7が互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
5〜R12における好ましい基としては、例えば、炭化水素基(好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基、以下「炭化水素基(f1)」として参照することがある。)またはケイ素含有基(好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基、以下「ケイ素含有基(f2)」として参照することがある。)が挙げられる。その他、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。
5〜R12におけるケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられ、具体的には、シクロペンタジエニル基の環炭素にアルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、アリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が結合している基が挙げられる。
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
炭化水素基(f1)の中でも、炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などが好適な例として挙げられる。
6およびR7(R10およびR11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する一般式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
(架橋メタロセン化合物[B]のその他の特徴)
式[B]中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Qにおける炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける上記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。[A]との共重合性の観点より、ジルコニウム原子がより好ましい。
(好ましい架橋型メタロセン化合物[B]の例示)
以下に架橋型メタロセン化合物[B]の具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1',3,6,8,8'−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3',6,6',8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
Figure 2019199550
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Figure 2019199550
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架橋メタロセン化合物[B]としては、例えば、
エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(1,1',3,6,8,8'−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3',6,6',8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、が挙げられる。
架橋メタロセン化合物[B]としては、上記例示の化合物の「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」または「メチルエチル」などに代えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに替えた化合物を挙げることもできる。
以上の架橋メタロセン化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
以上のような架橋メタロセン化合物[B]は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
遷移金属化合物[B]は、好ましくは後述する化合物[C]と組み合わせて、グラフト共重合体を製造する重合触媒として機能する。
化合物[C]について具体的に説明する。
本発明にかかる樹脂の製造方法では、オレフィン重合用触媒として用いられる遷移金属化合物[A]および架橋メタロセン化合物[B]と共に、化合物[C]を用いることが好ましい。
化合物[C]は、遷移金属化合物[A]および架橋メタロセン化合物[B]と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、[C1]有機金属化合物、[C2]有機アルミニウムオキシ化合物、および、[C3]遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれるものである。以下、[C1]〜[C3]の化合物について順次説明する。
([C1]有機金属化合物)
本発明で用いられる[C1]有機金属化合物として、具体的には下記の一般式(C1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物、一般式(C1−b)で表わされる周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および一般式(C1−c)で表わされる周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、[C1]有機金属化合物には、後述する[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は含まないものとする。
Figure 2019199550
上記一般式(C1−a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+r+s=3である。)
Figure 2019199550
上記一般式(C1−b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
Figure 2019199550
上記一般式(C1−c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。
上記一般式(C1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物としては、次のような一般式(C−1a−1)〜(C−1a−4)で表わされる化合物を例示できる。
Figure 2019199550
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは1.5≦p≦3の数である。)
Figure 2019199550
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは好ましくは0<p<3の数である。)
Figure 2019199550
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは好ましくは2≦p<3の数である。)
Figure 2019199550
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)
一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルブチルアルミニウム、トリ2−メチルペンチルアルミニウム、トリ3−メチルペンチルアルミニウム、トリ4−メチルペンチルアルミニウム、トリ2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
a 2.5Al(ORb0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
また(C1−a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
上記一般式(C1−b)に属する化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
上記一般式(C1−c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
またその他にも、[C1]有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを、上記[C1]有機金属化合物として使用することもできる。
上記のような[C1]有機金属化合物は、1種類単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
([C2]有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
なお上記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
本発明で用いられる[C2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
Figure 2019199550
(一般式(III)中、R17は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、4つのR18は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
上記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
Figure 2019199550
(一般式(IV)中、R19は上記一般式(III)におけるR17と同じ基を示す。)
上記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記一般式(C1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
上記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
上記のような[C2]有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
([C3]遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物)
本発明で用いられる、遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物[C3](以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
具体的には、上記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどである。
上記イオン性化合物としては、例えば下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2019199550
(一般式(V)中、R20はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R21〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)。
上記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
20としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
上記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
上記N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
上記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)または(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
Figure 2019199550
(式(VI)中、Etはエチル基を示す。)
Figure 2019199550
(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
イオン化イオン性化合物(化合物[C3])の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、例えば4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルウンバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、上記塩としては、上記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、上記塩としては、上記酸の例えば周期表第1族または第2族の金属、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
上記のようなイオン化イオン性化合物([C3]遷移金属化合物[A]または架橋メタロセン化合物[B]と反応してイオン対を形成する化合物)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
遷移金属化合物[A]、架橋メタロセン化合物[B]に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの[C2]有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
上記のような[C3]イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
有機金属化合物[C1]は、有機金属化合物[C1]と、遷移金属化合物[A]を触媒とする反応(以下、反応(A)ともいう)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、架橋メタロセン化合物[B]を触媒とする反応(以下、反応(B)ともいう)においては架橋メタロセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C1/M)が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物[C2]は、有機アルミニウムオキシ化合物[C2]中のアルミニウム原子と、遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)、および、架橋メタロセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C2/M)が、それぞれ通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
イオン化イオン性化合物[C3]は、イオン化イオン性化合物[C3]と、遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(C3/M)、および架橋メタロセン化合物[B]中の遷移金属原子(M)(ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C3/M)が、それぞれ通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
本発明における重合方法は気相重合、スラリー重合、バルク重合、溶液(溶解)重合のいずれの方法においても実施可能であり、特に重合形態は限定されないが、グラフト共重合体を効率的に得る観点から溶液重合がより好ましい。
溶液重合で実施される場合、重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、後処理工程の負荷低減の観点から、ヘプタンまたはヘキサンが好ましい。
また、重合温度は、通常50℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃の範囲、より好ましくは、80℃〜130℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50質量%であり、好ましくは、10〜40質量%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)の負荷及び生産性の観点から、15〜50質量%であることが好ましい。
得られる共重合体の分子量は、重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、前述の化合物[C1]の使用量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等の使用量を増やすことで分子量が下がる。
水素を添加する場合も分子量を調節することは可能であるが、水素存在下の重合ではマクロモノマーの末端不飽和度が低減されるため、水素無添加条件での製造が好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、重合反応工程に加え、必要に応じて、生成する重合体を回収する工程を含んでも良い。本反応は、重合反応において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する反応であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程であれば特段制限はない。
<オレフィン系樹脂>
本発明により製造されるオレフィン系樹脂は以下の要件を満たす。
(I)主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し50〜90mol%、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜50mol%(ただしエチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位との合計を100mol%とする)の範囲にある。
(III)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が0〜100℃の範囲にある
(IV)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dl/gの範囲にある
以下、(I)〜(IV)の要件を具体的に説明する
[要件(I)]
主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
前記オレフィン系樹脂は、上記製造方法によれば、化合物[A]を用いた共重合反応と化合物[B]を用いた共重合反応とが同一反応系内で起きて生成されるエチレン・α−オレフィン共重合体である。化合物[A]のみの存在下、エチレンとα-オレフィンとの共重合を行った場合、末端不飽和共重合体が生成されるのは既知であり、化合物[A]と[B]の存在下、同一反応系内で反応させた場合も、化合物[A]の作用によりマクロモノマーが生成される。反応系内で生成されたマクロモノマーの一部が化合物[B]によって起こる共重合に寄与することから、前記オレフィン系樹脂はグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。また、グラフト型重合体の生成に寄与しなかった末端不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体およびマクロモノマーが、化合物[B]における共重合に寄与しなかった結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体を含み得る。すなわちオレフィン系樹脂は、実質的にはグラフト型重合体と直鎖状重合体(化合物[A]の触媒作用で生成した重合体であって、グラフト型重合体の生成に寄与せず、側鎖を構成しなかった重合体および化合物[B]の触媒作用で生成した重合体であって、マクロモノマーが寄与しなかった重合体)の混合物である。オレフィン系樹脂におけるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の含有量は好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜40質量%である。
オレフィン系樹脂におけるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の含有量は、DSCによる結晶性成分の融解熱量から求められる主鎖/側鎖の重量比およびGPCのピーク分離を組み合わせることにより求めることができる。例えばGPCを用いて測定した分子量分布曲線から実施例の項に記載の方法によりピーク分離を行って求めることができる。このほか種々分析手法を用いることにより求められ、特段手段が限定されるものではない。
なお、本発明において「グラフト(共)重合体」あるいは「グラフト型重合体」という語は、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したポリマーである。
本発明の上記製造方法における適切な化合物[A]と[B]の組み合わせにより、主鎖は結晶性、側鎖が非晶性のグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂の製造が可能である。結晶性の異なるブロック成分を含む樹脂は、例えば、粘度調整剤として用いた場合、低温下での粘度特性と貯蔵安定性との相反性能を同時に改善することが知られている(特許文献4参照)。グラフト型オレフィン系重合体[R1]中の結晶性成分の重量比は特に限定されないが、通常1〜99質量%、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜85質量%である。
ここでエチレン・α−オレフィン共重合体においてエチレンと共重合している炭素原子数3〜12のα−オレフィンの具体例および好ましい例としては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
より好ましくは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、さらにより好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィン、および4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができ、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、プロピレンが更に好ましい。
なお、上記α−オレフィンは、一種を単独で用いることもできるし、複数種を組み合わせて用いることもできる。
i) 側鎖の組成
側鎖が、エチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とからなり、エチレンから導かれる単位が30〜65mol%のエチレン・α−オレフィン共重合体からなることが好ましい。いいかえると、上記側鎖が、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体とからなり、上記エチレンから導かれる単位が30〜65mol%の範囲にあることが好ましい。本発明において、側鎖が非晶性共重合体であることが好ましく、側鎖における上記エチレンから導かれる単位が好ましくは40〜65mol%、より好ましくは45〜60mol%の範囲にある。
側鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が上記範囲にあることで、側鎖は非晶性を示し、融点を持たない、または-20〜0℃の範囲で融点を持つ。
側鎖単体での組成は、DSC、NMR、IRなどの公知の方法での定量可能であるが、本発明の上記製造方法では主鎖および側鎖が同一反応系内で生成されるため、後述する樹脂全体の組成から後述する主鎖組成を差し引くことによって求められる。
側鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位のモル比は、側鎖を製造する反応で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度との割合を制御することにより調整できる。また、化合物[A]と[B]を組み合わせる上記製造方法では、主鎖に寄与する重合も同時に起こるため、化合物[A]のみ存在下での重合の場合と、エチレンおよびα−オレフィンの濃度比が同一であっても、組成の異なることがありうる。
ii)主鎖の組成
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のエチレンから導かれる繰り返し単位の割合は、主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し好ましくは74〜92mol%、より好ましくは76〜91mol%の範囲である。また、α−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合は、主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し好ましくは8〜26mol%、より好ましくは9〜24mol%の範囲である。
グラフト共重合体[R1]を含む主鎖は、結晶性であるため、エチレンおよびα−オレフィンの繰り返し単位の割合は融点(Tm)によって求めることができ、例えば、後述するDSCによりTmが求められる。また、DSCによって得られる樹脂中の結晶性成分のTmに由来する融解熱量(ΔH)と結晶性主鎖のみから求められるΔHとの割合から主鎖および側鎖の重量比を求めることができる。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]における主鎖の割合の調整方法としては、化合物[A]と[B]の濃度比を調整する方法などが挙げられる。
用いるα−オレフィンの種類によって上記エチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合と融点(Tm)の関係は異なるが、後述する要件(III)に記載の融点(Tm)の範囲を達成するうえで、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンの繰り返し単位の割合は上記範囲にあることが好ましい。
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が上記範囲にあることで、主鎖は結晶性を示し、融点を持つ。
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位のモル比は、主鎖を製造する反応で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度との割合を制御することにより調整できる。
[要件(II)]
エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し50〜90mol%、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜50mol%(ただしエチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位との合計を100mol%とする)の範囲にある。エチレンから導かれる全繰り返し単位の割合はより好ましくは51〜95mol%、特に好ましくは52〜90mol%、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合はより好ましくは10〜49mol%、特に好ましくは115〜48mol%である。
エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が上記上限値以下であることにより、本発明のオレフィン系樹脂は、例えば、粘度調整剤に用いた場合、低温下における貯蔵安定性に優れ、上記下限値以上にあることにより低温での粘度特性に優れる。炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が上記上限値以下であることにより、本発明のオレフィン系樹脂は、例えば、粘度調整剤に用いた場合、低温での粘度特性に優れ、上記下限値以上にあることにより低温下における貯蔵安定性に優れる。エチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選択される少なくとも一種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とのモル比は、原料のモノマー比を調整することにより上記範囲内とすることができる。
オレフィン系樹脂中のエチレン由来の構成単位は、「高分子分析ハンドブック」(日本分析化学会、高分子分析研究懇談会編、紀伊国屋書店発行、1995年1月12日発行)に記載の方法に従って、13C−NMRで測定することができる。
[要件(III)]
本発明の製造方法により得られる樹脂の融点(Tm)は通常0〜100℃、好ましくは5〜90℃の範囲にある。
融点(Tm)は種々の因子によって調整されるが、主にオレフィン系樹脂の繰り返し単位の構成により調整され、エチレンから導かれる繰り返し単位の含有割合が大きくなると融点(Tm)は高くなり、含有割合が小さくなると融点(Tm)は低くなる傾向となる。すなわち重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度との割合を制御することにより上記範囲に調整できる。
オレフィン系樹脂の示差走査型熱量測定(DSC)による融点(Tm)の測定方法は実施例の項で詳述する。
[要件(IV)]
135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dl/gの範囲にある。好ましくは0.5〜5dl/gであり、より好ましくは0.6〜2.5dl/gである。
該極限粘度[η]は、上記の分子量調節方法により制御することで上記範囲内とすることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
[DSC測定]
実施例または比較例で製造した樹脂を、インジウム標準にて較正したSII社製示差走査型熱量計(X−DSC7000)を用いて、DSC測定を行った。
アルミニウム製DSCパン上に上記測定サンプルを約10mg秤量した。蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得た。
サンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置した。DSCセルを窒素雰囲気下にて30℃(室温)から、150℃まで10℃/分で昇温した(第一昇温過程)。
次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを−100℃まで冷却した(降温過程)。−100℃で5分間保持した後、DSCセルを150℃まで10℃/分で昇温した(第二昇温過程)。
第二昇温過程で得られるエンタルピー曲線の融解ピークトップ温度を融点(Tm)とした。融解ピークが2個以上存在する場合には、最大のピーク高さを有する融解ピークのトップ温度をTmと定義した。
融点における融解熱量(ΔH)は融解ピークの二つの変曲点を結んだ面積から求めた。
主鎖のエチレンから導かれる繰り返し単位は融点を用いた公知の方法により求めた。
主鎖および側鎖に由来する樹脂の質量比は、結晶性成分のみからなる樹脂の融解熱量と主鎖(結晶性)および側鎖(非晶性)を含むオレフィン系樹脂の融解熱量との比より求めた。
[極限粘度[η](dL/g)]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。具体的には、重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[GPC測定]
実施例または比較例で製造または使用した共重合体の重量平均分子量および分子量分布は、以下の方法により測定した。
(試料の前処理)
実施例または比較例で製造または使用した共重合体30mgをo−ジクロロベンゼン20mlに145℃で溶解した後、その溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで濾過したものを分析試料とした。
(GPC分析)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布曲線を求めた。計算はポリスチレン換算で行った。求めた重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)から分子量分布Mw/Mnを算出した。
(測定装置)
ゲル浸透クロマトグラフHLC−8321 GPC/HT型(東ソー社製)
(解析装置)
データ処理ソフトEmpower2(Waters社、登録商標)
(測定条件)
カラム:TSKgel GMH6−HT 2本、およびTSKgel GMH6−HTL 2本(いずれも直径7.5mm×長さ30cm、東ソー社)
カラム温度:140℃
移動相:o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
検出器:示差屈折率計
流速:1mL/分
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.4mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)
分子量換算:PS換算/標品換算法
(オレフィン系樹脂におけるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の含有量([R1]/(オレフィン系樹脂))(質量%))
GPC測定結果から、オレフィン系樹脂におけるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の含有量を以下の方法で算出した。
GPC測定により得られる、オレフィン系樹脂の分子量分布曲線は、実質的に2つのピークから構成された。この2つのピークのうち、1番目のピーク、すなわち低分子量側のピークは反応(B)に用いる末端不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体由来ポリマーに起因するピークとみなし、2番目のピーク、すなわち高分子量側のピークはグラフト型オレフィン系重合体[R1]由来ポリマーに起因するピークとみなした。そして、グラフト型オレフィン系重合体[R1]由来ポリマーに起因するピーク面積(すなわち、高分子量側のピーク面積)とオレフィン系樹脂由来ポリマーに起因するピーク面積(すなわち、全体のピーク面積)の比率[グラフト型オレフィン系重合体[R1]由来ポリマーに起因するピーク/樹脂(α)由来ポリマーに起因するピーク]を、オレフィン系樹脂におけるグラフト型オレフィン系重合体[R1]の含有量とした。
得られた値を用いて、グラフト型オレフィン系重合体[R1]における主鎖の含有量を算出した。その際、反応(B)で得られたオレフィン系樹脂の質量から、反応(B)に用いた末端不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体の質量を差し引いた値が主鎖の質量に相当するものとみなした。
より詳細には、分子量分布曲線における各ピークの比率は、オレフィン系樹脂の分子量分布曲線(G1)と、反応(B)に用いる末端不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布曲線(G2)とを用いて、下記の方法により決定した。なお、「分子量分布曲線」は、微分分子量分布曲線を指し、分子量分布曲線について「面積」というときは、分子量分布曲線とベースラインとの間に形成される領域の面積をいう。
[1] 分子量分布曲線(G1)および(G2)の各数値データにおいて、Log(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに分子量分布曲線(G1)、(G2)のそれぞれについて、面積が1となるように強度[dwt/(dlog分子量)]を正規化した。
[2]低分子量側で分子量分布曲線(G1)の強度と分子量分布曲線(G2)の強度との差の絶対値が0.0005以下となるように、分子量分布曲線(G2)の強度を一定の比率で任意に変更した曲線(G3)を作成した。
[3] 分子量分布曲線(G1)における最大重量分率での分子量をピークトップとしたときに、当該ピークトップより高分子量側における分子量分布曲線(G1)と曲線(G3)との重なり合わない部分、すなわち、分子量分布曲線(G1)と曲線(G3)との差分曲線(G4)を作成したときに、当該差分曲線(G4)において、分子量分布曲線(G1)における最大重量分率での分子量より高分子量側に現れるピーク部分(P4)[(G1)−(G3)]を第2ピーク(すなわち、上記「高分子量側のピーク」)とした。
[4]グラフト型オレフィン系重合体[R1]由来ポリマーに起因するピークの比率Wを以下の通り算出した。
W=S(G4)/S(G1)
ここで、S(G1)、S(G4)はそれぞれ分子量分布曲線(G1)、差分曲線(G4)の面積である。
[エチレン由来の構造単位]
実施例または比較例で製造または使用した共重合体のエチレン由来の構造単位およびα−オレフィン由来の構造単位の含有割合(モル%)については、13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
(測定装置)
ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置
(測定条件)
測定核:13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:512回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(4/1 v/v)、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:ベンゼン−d6(128.0ppm)。
[側鎖のエチレンから導かれる繰り返し単位]
側鎖のエチレンから導かれる繰り返し単位は上記で求められるオレフィン系樹脂全体のエチレン由来の構造単位から主鎖のエチレンより導かれる繰り返し単位を差し引くことにより求めた。
具体的には、以下より求められる。
オレフィン系樹脂中の主鎖のエチレンより導かれる繰り返し単位 (質量%) =
主鎖のエチレンより導かれる繰り返し単位(質量%)×オレフィン系樹脂における主鎖結晶性成分の質量比 ・・・・(a)
オレフィン系樹脂中の側鎖のエチレンより導かれる繰り返し単位 (質量%) =
オレフィン系樹脂全体のエチレンから導かれる繰り返し単位(質量%)−(a) ・・・・(b)
式(b)で求められた重量換算組成をモル換算することによりモル換算組成を算出できる。
触媒[A]として使用したジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド (化合物(1)) は特許第3737134号に開示されている方法に従って合成した。
触媒[B]として使用した下記式で示される化合物(2)および化合物(3)は公知の方法に従って合成した。
Figure 2019199550
Figure 2019199550
[実施例1]
圧力制御バルブを備えた内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタンを1457mL/hr、化合物(2)とトリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)を混合したトルエン溶液(化合物(2):0.0625mmol/L、iBu3Al:6.25mmol/L)を58mL/hr、化合物(1)のトルエン溶液(0.035mmol/L)を91mL/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(0.4mmol/L)を68mL/hr、エチレンを240g/L、プロピレンを414g/Lでそれぞれ連続的に装入し、圧力制御バルブは0.74MPaに設定し、重合器内部の温度を110℃に保ちながら、重合器内の液量が950mLになるよう連続的に重合反応液を抜き出した。上記全ての溶媒、モノマーおよび触媒等の装入を開始してから2時間後、重合反応液を50分間採取した。得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール(750mL)とアセトン(750mL)の混合液中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、140℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂186gを得た。得られたオレフィン系樹脂(α-1)の分析結果を表1に示す。
[比較例1]
化合物(2)の代わりに化合物(3)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたオレフィン系樹脂(α'-1)の分析結果を表1に示す。
Figure 2019199550
比較例1のメチレン架橋を持つメタロセン化合物では、共重合性が高く、遷移金属化合物[A]の共重合性に近似しているため、本発明の要件を満たす共重合体は得られない結果となった。
よって、エチレン架橋部を有する適切な触媒を組み合わせることにより、単段反応で主鎖と側鎖とで組成の異なるグラフト共重合体の合成が可能であった。

Claims (4)

  1. 下記化合物[A]および[B]を含む重合触媒の存在下、単一の反応器で、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合させ、以下の要件(I)〜(IV)を満たすオレフィン系樹脂を製造するオレフィン系樹脂の製造方法。
    (I)主鎖および側鎖から構成されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
    (II)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し50〜90mol%の範囲にあり、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜50mol%(ただしエチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位との合計を100mol%とする)の範囲にある。
    (III)示差走査熱量分析(DSC)によって測定された融点(Tm)が0〜100℃の範囲にある。
    (IV)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1〜10dl/gの範囲にある。
    [A]:ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物
    [B]:下記一般式[B]で表わされる架橋メタロセン化合物
    Figure 2019199550
    (式[B]中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
    6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
    1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
    Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
  2. 炭素原子数3〜12のα−オレフィンがプロピレンである請求項1に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
  3. 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]が以下の要件(i)を満たす請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
    (i) 前記側鎖が、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなり、前記側鎖に含まれるエチレンから導かれる繰り返し単位の割合が側鎖に含まれる全繰り返し単位に対し30〜65mol%の範囲にある。
  4. 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]が以下の要件(i i)を満たす請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
    (i i) 前記主鎖が、エチレンと、炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなり、前記主鎖に含まれるエチレンから導かれる繰り返し単位の割合が主鎖に含まれる全繰り返し単位に対し74〜92mol%の範囲にある。
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