JP2019199536A - 冬用タイヤトレッド用ゴム組成物および冬用空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、シリカはゴム成分との親和性が低く、また、シリカ同士の凝集性が高いため、ゴム成分に単にシリカを配合してもシリカが分散せず、ウェット性能および転がり性能を向上させる効果が十分に得られないという問題があった。
また、氷雪路面で使用されることがある冬用タイヤでは、ウェットグリップ性能等に加えて、氷雪路上性能、すなわち氷雪路上での制動性に優れていることも要求されている。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
特定可塑剤を含む可塑剤と、
シリカと、
シランカップリング剤とを含有し、
上記特定可塑剤の含有量が、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部以上であり、
上記シリカの含有量が、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部以上であり、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、3〜30質量%であり、
上記特定共役ジエン系ゴムが、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、上記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、上記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる第2工程と、上記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであり、
上記特定可塑剤が、ガラス転移温度が−50℃以下である可塑剤であり、
上記共役ジエン系ゴムと上記可塑剤との平均ガラス転移温度が、−50℃よりも低い、冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[2] 上記共役ジエン系ゴムが、更に、上記特定共役ジエン系ゴム以外の共役ジエン系ゴム(y)を含み、
上記特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度と、上記共役ジエン系ゴム(y)のガラス転移温度との差の絶対値が、30℃以上である、[1]に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[3] 上記特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が、−60℃以下である、[1]または[2]に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[4] 上記特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が、−60℃を超える、[1]または[2]に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[5] 上記共役ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が−60℃を超える特定共役ジエン系ゴム(T1)と、ガラス転移温度が−60℃以下である特定共役ジエン系ゴム(T2)とを含む、[1]に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[6] 上記シリカの含有量が、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、100質量部以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[7] 上記特定共役ジエン系ゴムが、
イソプレン単量体単位80〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜20質量%を含む重合体ブロック(A)と、
1,3−ブタジエン単量体単位50〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜50質量%を含む重合体ブロック(B)とが一続きにして形成された構造を有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[8] 上記特定可塑剤のガラス転移温度が、−60℃以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[9] 上記特定可塑剤の含有量が、上記可塑剤全量に対して、5〜100質量%である、[1]〜[8]のいずれかに記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[10] 上記特定可塑剤が、パラフィンオイル、液状ポリブタジエンおよびリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤(p1)を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[11] 上記液状ポリブタジエンの重量平均分子量が、2,000〜100,000である、[10]に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤトレッド部を備える、冬用空気入りタイヤ。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物に含有される各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」または「メタクリロニトリル」を表す表記である。
また、本明細書において、ガラス転移温度を「Tg」と略記する場合がある。
本発明の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含む共役ジエン系ゴムと、特定可塑剤を含む可塑剤と、シリカと、シランカップリング剤とを含有する。
上記特定可塑剤の含有量は、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部以上である。
上記シリカの含有量は、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部以上である。
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、3〜30質量%である。
上記特定共役ジエン系ゴムが、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、上記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、上記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる第2工程と、上記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムである。
上記特定可塑剤が、ガラス転移温度が−50℃以下である可塑剤である。
上記共役ジエン系ゴムと上記可塑剤との平均ガラス転移温度が、−50℃よりも低い。
一方で、本発明の組成物が含有する特定共役ジエン系ゴムはシリカと類似の構造を有するポリオルガノシロキサン構造を有するため、上記ポリオルガノシロキサン構造がシリカと親和し、シリカの凝集を防ぐものと考えられる。また、特定共役ジエン系ゴムはアミノシラン等の窒素原子含有シランに由来する構造も有するため、これがシランカップリング剤とシリカとのシラニゼーションを促進し、シリカの凝集をさらに抑制するものと考えられる。結果として、シリカによる効果(ウェット性能と氷雪路上性能を高いレベルで両立)が十分に発揮されると考えられる。また、加工性も良好になるものと考えられる。
本発明の組成物に含有される共役ジエン系ゴムは特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含む。
最初に特定共役ジエン系ゴムについて説明する。
本発明の組成物が含有する特定共役ジエン系ゴムは以下の第1〜3工程を備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムである。
(1)第1工程
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程
(2)第2工程
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、上記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、上記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる第2工程
(3)第3工程
上記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程
上述のとおり、第3工程では、第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(2)で表される化合物を反応させる。ここで、一般式(2)で表される化合物が有するA1が、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基と反応して結合する。しかしながら、後述のとおり、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基は様々な構造をとり得るため、反応残基に一般式(2)で表される化合物が反応した後の構造は極めて複雑であり、その構造を解析することは技術的に不可能であるか、又は、その構造を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要する。そのため、特定共役ジエン系ゴムを「第1〜3工程を備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴム」と記載することには、いわゆる「不可能・非実際的事情」が存在する。
第1工程は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程である。
まず、第1工程で用いられる各成分等について説明する。
第1工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るために、単量体として用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。
また、第1工程において、重合に用いる単量体として、共役ジエン化合物とともに芳香族ビニル化合物を用いてもよい。単量体として用いる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スチレンが好ましい。
さらに、第1工程においては、共役ジエン化合物とともに、芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物と共重合可能な化合物(その他の共重合可能な化合物)を用いてもよい。このような共役ジエン化合物と共重合可能な化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2−ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,5−ヘキサジエン、1,6−へプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他の(メタ)アクリル酸誘導体;などが挙げられる。本発明の効果がより優れる理由から、これらの共役ジエン化合物と共重合可能な化合物は、第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中に、単量体単位として、10質量%以下とするのが好ましく、5質量%以下とするのがより好ましい。
重合に用いる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体濃度が、たとえば1〜50質量%となる量であり、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10〜40質量%となる量である。
重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、へキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5ートリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−へキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、本発明の効果がより優れる理由から、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、n−ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。
なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびへプタメチレンイミンなどの2級アミン化合物と反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、R11、および/またはR12がアミノ基の保護基である場合には、アミノ基の保護基が外れることにより、得られる共役ジエン系ゴムを形成する重合体鎖の一方の末端において、後述する一般式(5)におけるR13、および/またはR14が水素原子である構造を導入することができる。
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、プロポキシエチル基などが挙げられる。
また、エポキシ基を含有する基としては、たとえば下記一般式(4)で表される基などが挙げられる。
−Z1−Z2−E1 (4)
一般式(4)中、Z1は炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子または酸素原子であり、E1はグリシジル基である。
R11およびR12が互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合、環構造は、4〜8員環構造であることが好ましい。
なお、R13、R14となりうる水素原子は、アミノ基の保護基が外れることにより、導入される。
重合温度は、通常−80〜+150℃、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
共役ジエン化合物を含む単量体を重合するにあたり、得られる共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、本発明の効果がより優れる理由から、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3〜80質量%、特に好ましくは5〜70質量%である。
第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、100,000〜2,000,000が好ましく、200,000〜1500,000がより好ましく、300,000〜1,200,000が特に好ましい。
第1工程は、本発明の効果がより優れる理由から、次のような工程とすることが好ましい。
すなわち、不活性溶媒中で、イソプレン、またはイソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を、重合開始剤により重合し、イソプレン単量体単位80〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜20質量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程Aと、
上記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3−ブタジエン、または1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体と、を混合して重合反応を継続させ、1,3−ブタジエン単量体単位50〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜50質量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(B)を、重合体ブロック(A)と一続きにして形成させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程Bと、を備えるものとすることが好ましい。
以下、このような態様について説明する。
工程Aで形成される重合体ブロック(A)は、重合体ブロック(A)中、イソプレン単量体単位80〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜20質量%を含むものであればよいが、本発明の効果がより優れる理由から、イソプレン単量体単位85〜95質量%および芳香族ビニル単量体単位5〜15質量%を含むものであることが好ましく、イソプレン単量体単位89〜95質量%および芳香族ビニル単量体単位5〜11質量%を含むものであることがより好ましい。
工程Bで形成される共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(B)は、重合体ブロック(B)中、1,3−ブタジエン単量体単位50〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜50質量%を含むものであればよいが、本発明の効果がより優れる理由から、1,3−ブタジエン単量体単位52〜95質量%および芳香族ビニル単量体単位5〜48質量%を含むものであることが好ましい。1,3−ブタジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との含有割合が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。
第2工程は、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる工程である。
−Z3−Z4−E2 (6)
一般式(6)中、Z3は、炭素数1〜10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Z4はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、E2はエポキシ基を有する炭素数2〜10の炭化水素基である。
第3工程は、第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(2)で表される化合物を反応させる工程である。
特定共役ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、共役ジエン単量体単位50〜100質量%を含むものが好ましく、52〜95質量%を含むものがより好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位0〜50質量%を含むものが好ましい。
特定共役ジエン系ゴムにおける共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3〜80質量%、特に好ましくは5〜70質量%である。
また、特定共役ジエン系ゴムのカップリング率は、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。なお、カップリング率は、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンおよび一般式(2)で表される化合物、ならびに、必要に応じて用いられるカップリング剤やその他の変性剤と反応させる前の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量の1.8倍以上の分子量を有する重合体分子の、最終的に得られた共役ジエン系ゴムの全量に対する質量分率であり、このときの分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めるものとする。
また、特定共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値で、好ましくは100,000〜3,000,000、より好ましくは150,000〜2,000,000、特に好ましくは200,000〜1,500,000である。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性を高めることができ、さらには、本発明の効果がより優れるものとなる。
また、特定共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜90、特に好ましくは35〜80である。なお、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
共役ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量の上限は特に制限されず、100質量%である。共役ジエン系ゴム中の特定共役ジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、40質量%以上であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましい。
上記ジエン系ゴムは特定共役ジエン系ゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を含有していてもよい。
そのようなその他のゴム成分としては、上記特定共役ジエン系ゴム以外の共役ジエン系ゴム(y)が挙げられる。
上記共役ジエン系ゴム(y)としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)のような芳香族ビニルと共役ジエンとの共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族ビニルと共役ジエンとの共重合体、ブタジエンゴム(BR)であることが好ましい。
共役ジエン系ゴム中のその他のゴム成分の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0〜60質量%であることが好ましく、0〜50質量%であることがより好ましい。
上記事項は下記式で表すことができる。
なお、上記共役ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が−60℃以下である共役ジエン系ゴムとして、特定共役ジエン系ゴムを含む場合、上記共役ジエン系ゴムは、ガラス転移温度が−60℃以下である共役ジエン系ゴムと、ガラス転移温度が−60℃を超える共役ジエン系ゴムとのうちのいずれかとして、または、両方として、共役ジエン系ゴム(y)を、更に、含むことができる。上記共役ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が−60℃を超える共役ジエン系ゴムとして、特定共役ジエン系ゴムを含む場合も同様である。
本発明において、ガラス転移温度が−60℃以下である特定共役ジエン系ゴムを、特定共役ジエン系ゴム(T1)と称する場合がある。また、ガラス転移温度が−60℃を超える特定共役ジエン系ゴムを、特定共役ジエン系ゴム(T2)と称する場合がある。
本発明の組成物は、特定可塑剤を含む可塑剤を含有する。
なお、本発明において、上記可塑剤が共役ジエン系ゴムである場合、上記可塑剤としての共役ジエン系ゴムは、本発明の組成物に含有される「(特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含む)共役ジエン系ゴム」に該当しない。
ただし、上記可塑剤は、ワックスを含まない。
上記可塑剤は、室温条件下において、液状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明において、上記特定可塑剤は、ガラス転移温度が−50℃以下である可塑剤である。
なお、本発明において、可塑剤のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出することができる。
上記特定可塑剤のガラス転移温度の下限は例えば、−150℃以上とできる。
上記特定可塑剤のガラス転移温度は、ウェット性能および氷雪路上性能により優れるという観点から、−120℃以上であることが好ましく、−105℃以上であることが好ましい。
なお、上記の特定可塑剤のガラス転移温度の好適範囲は、特定可塑剤として使用される各可塑剤が有するガラス転移温度を意味する。
また、上記可塑剤は、本発明の効果により優れ、ウェット性能と氷雪路上の両立に優れるという観点から、TDAEオイルと、パラフィンオイル、液状ポリブタジエンおよびリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤(p1)とを併用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
TDAEオイル(処理留出物芳香族系抽出物油)は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
特定可塑剤としてのパラフィンオイルは、飽和炭化水素化合物を含むオイルであれば特に制限されない。具体的には例えば、石油留分もしくは残油を水素添加し、精製したもの、または、分解により得られる油が挙げられる。
特定可塑剤としての液状ポリブタジエンは、室温条件下において液状であり、ブタジエンによる繰り返し単位を有する重合体であれば特に制限されない。
液状ポリブタジエンは、ブタジエンの単独重合体であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
なお、上記液状ポリブタジエンは、上記共役ジエン系ゴムに該当しない。
本発明において、液状ポリブタジエンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
特定可塑剤としてのリン酸エステルは、リン酸(H3PO5)のエステルであれば特に制限されない。上記リン酸エステルは、モノエステル、ジエステルまたはトリエステルのいずれであってもよい。
上記リン酸エステルにおいて、エステルを構成する炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状もしくは環状)、芳香族炭化水素基、または、これらの組合せが挙げられる。
上記炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子;塩素原子のようなハロゲンを有してもよい。
上記ガラス転移温度が−50℃を超える可塑剤は特に制限されない。
ガラス転移温度が−50℃を超える可塑剤としては、例えば、液状ポリスチレンブタジエンが挙げられる。
本発明において、上記特定可塑剤の含有量は、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部以上である。
上記特定可塑剤の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜70質量部であることが好ましく、8〜60質量部であることがより好ましい。
本発明において、上記共役ジエン系ゴムと上記可塑剤との平均ガラス転移温度は、−50℃よりも低い(−50℃未満である)。
上記所定のガラス転移温度は、本発明の効果により優れるという観点から、−70〜−51℃であることが好ましく、−65〜52℃がより好ましい。
本発明の組成物に含有されるシリカは、特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。上記シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
シリカの含有量の上限は特定に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した共役ジエン系ゴム100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましい。
本発明の組成物に含有されるシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50〜200m2/gであることが好ましく、70〜150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、下記一般式(I)で表されるアルキルトリエトキシシラン(以下、「特定アルキルトリエトキシシラン」とも言う)を含有するのが好ましい。
上記炭素数7〜20のアルキル基としては、具体的には、例えば、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、オクチル基、ノニル基が好ましい。
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100〜160℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明の冬用空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された、冬用の空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の冬用空気入りタイヤの実施態様の一例を表す空気入りタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の冬用空気入りタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
以下のとおり、特定共役ジエン系ゴム1〜4および比較共役ジエン系ゴム1〜4を製造した。
ここで、特定共役ジエン系ゴム1〜4は上述した第1〜3工程を備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであり、上述した特定共役ジエン系ゴムに該当する。さらに、特定共役ジエン系ゴム2〜3は第1工程が上述した工程Aと工程Bとを備えるものであり、特定共役ジエン系ゴムがPIブロックを有する。
一方、比較共役ジエン系ゴム1は、ポリオルガノシロキサンの添加量が上述した第2工程を満たさないため、上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない。また、比較共役ジエン系ゴム2〜4は上述した第1〜2工程を備える(上述した第3工程を備えない)共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであり、上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない。
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.42mmol、1,3−ブタジエン87.6g、およびスチレン32.4gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.79mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(11)で表されるポリオルガノシロキサンを、40質量%濃度のキシレン溶液の状態にて、0.26g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数に換算して、使用したn−ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn−ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間攪拌させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた共役ジエン系ゴムを特定共役ジエン系ゴム1とする。特定共役ジエン系ゴム1の重量平均分子量(Mw)は467,000、カップリング率は54.4%、スチレン単量体単位含有量は26.9質量%、ビニル結合含有量は58.5質量%であった。
窒素置換された100mlアンプル瓶に、シクロヘキサン50.0g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.66mmolを添加し、さらに、n−ブチルリチウム6.6mmolを添加した。次いで、イソプレン11.61g、およびスチレン0.87gをゆっくりと添加し、50℃のアンプル瓶内で120分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を得た。この重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は3,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.0質量%、イソプレン単量体単位含有量は93.0質量%、ビニル結合含有量は7.7質量%であった。
窒素置換された800mlアンプル瓶に、シクロヘキサン70.0g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.77mmolを添加し、さらに、n−ブチルリチウム7.69mmolを添加した。次いで、イソプレン27.9g、およびスチレン2.1gをゆっくりと添加し、50℃のアンプル瓶内で120分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を得た。この重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は6,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.0質量%、イソプレン単量体単位含有量は93.0質量%、ビニル結合含有量は7.7質量%であった。
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、1,3−ブタジエン120gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム1.00mmolを加え、80℃で重合を開始した。90分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(11)で表されるポリオルガノシロキサン0.32g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数に換算して、使用したn−ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)を添加し、30分間反応させた。次いで、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン1.00mmol(使用したn−ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた共役ジエン系ゴムを特定共役ジエン系ゴム4とする。特定共役ジエン系ゴム4の重量平均分子量(Mw)は485,000、カップリング率は55.5%、ビニル結合含有量は9.8質量%であった。
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.42mmol、1,3−ブタジエン87.6g、およびスチレン32.4gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.79mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(11)で表されるポリオルガノシロキサンを、40質量%濃度のキシレン溶液の状態にて、0.16g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数に換算して、使用したn−ブチルリチウムの0.7倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn−ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間攪拌させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた共役ジエン系ゴムを比較共役ジエン系ゴム1とする。比較共役ジエン系ゴム1の重量平均分子量(Mw)は383,000、カップリング率は34.4%、スチレン単量体単位含有量は26.6質量%、ビニル結合含有量は58.5質量%であった。
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.42mmol、1,3−ブタジエン87.6g、およびスチレン32.4gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.79mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(11)で表されるポリオルガノシロキサンを、40質量%濃度のキシレン溶液の状態にて、0.26g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数に換算して、使用したn−ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた共役ジエン系ゴムを比較共役ジエン系ゴム2とする。比較共役ジエン系ゴム2の重量平均分子量(Mw)は460,000、カップリング率は52.5%、芳香族ビニル単量体(スチレン単量体)単位含有量は27.6質量%、ビニル結合含有量は58.8質量%、ガラス転移温度(Tg)は−22℃、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン7.69mmolを添加しなかったこと以外は、上記特定共役ジエン系ゴム3の製造方法と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた上記共役ジエン系ゴムを比較共役ジエン系ゴム3とする。共役ジエン系ゴム3の重量平均分子量は450,000、カップリング率は56.8%、スチレン単量体単位含有量は15.0質量%、ビニル結合含有量は30.0質量%であった。
3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン1.00mmolを添加しなかったこと以外は、上記特定共役ジエン系ゴム4の製造方法と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた上記共役ジエン系ゴムを比較共役ジエン系ゴム4とする。共役ジエン系ゴム4の重量平均分子量は460,000、カップリング率は54.0%、ビニル結合含有量は9.1質量%であった。
下記表1に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表1に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤトレッド用ゴム組成物を得た。
表1において、各ゴム成分の量(質量部)はゴムの正味の量である。
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物について下記のとおり評価を行った。
得られたタイヤトレッド用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で40分間プレス加硫して加硫ゴムシートを作製した。
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±0.5%、振動数20Hz、温度−10℃の条件で貯蔵弾性率E′(−10℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さい方が氷雪路上性能(Snow性能)に優れる。実用上、100未満であることが好ましい。
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準じ、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件でtanδ(0℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が大きい方がウェット性能(ウェットグリップ性能)に優れる。実用上、101以上であることが好ましい。
・特定共役ジエン系ゴム1〜4:上述のとおり製造した特定共役ジエン系ゴム1〜4
・比較共役ジエン系ゴム1〜4:上述のとおり製造した比較共役ジエン系ゴム1〜4
・カーボンブラック:ショウブラックN339(カーボンブラック、キャボットジャパン社製)
・シランカップリング剤:Si69(シランカップリング剤、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日油社製)
・老化防止剤:オゾノン6C(精工化学社製)
・特定可塑剤2:プロセスオイル 123(パラフィンオイル、ガラス転移温度−70℃、昭和シェル石油社製。)
・特定可塑剤3:LBR307(液状ポリブタジエン、ガラス転移温度−94℃、重量平均分子量9,000、クラレ社製。)
・特定可塑剤4:トリ2−エチルヘキシルフォスフェート(ガラス転移温度−100℃、Lanxess社製。)
・加硫促進剤(CZ):大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤(DPG):1,3−ジフェニルグアニジン(ソクシノールD−G、住友化学工業社製)
実施例4と実施例2との対比から、特定共役ジエン系ゴムがPIブロックを含む場合、より優れた氷雪路上性能およびウェット性能を示した。
実施例1〜3の対比(特定共役ジエン系ゴムとして特定共役ジエン系ゴム1を含有する態様同士の対比)から、特定可塑剤のガラス転移温度が低いほど、より優れた氷雪路上性能を示した。
実施例1〜4と実施例5〜6との対比から、共役ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が高めの共役ジエン系ゴムとして、特定共役ジエン系ゴムを含む場合、より優れた氷雪路上性能を示した。
実施例7と8との対比から、共役ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が高めの共役ジエン系ゴムとして特定共役ジエン系ゴムを含み、かつ、ガラス転移温度が低めの共役ジエン系ゴムとして特定共役ジエン系ゴムを含む場合、より優れた氷雪路上性能およびウェット性能を示した。
特定共役ジエン系ゴムを含有しない比較例2、3および6は、氷雪路上性能およびウェット性能が不十分であった。
特定共役ジエン系ゴムの含有量が所定の範囲を外れる比較例4および5は、氷雪路上性能およびウェット性能が不十分であった。
シリカの含有量が所定の範囲を外れる比較例7は、氷雪路上性能およびウェット性能が不十分であった。
共役ジエン系ゴムと可塑剤との平均ガラス転移温度が所定の範囲より高い比較例8は、氷雪路上性能が不十分であった。
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
上記所定のガラス転移温度は、本発明の効果により優れるという観点から、−70〜−51℃であることが好ましく、−65〜−52℃がより好ましい。
Claims (12)
- 特定共役ジエン系ゴムを30質量%以上含む共役ジエン系ゴムと、
特定可塑剤を含む可塑剤と、
シリカと、
シランカップリング剤とを含有し、
前記特定可塑剤の含有量が、前記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部以上であり、
前記シリカの含有量が、前記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部以上であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、3〜30質量%であり、
前記特定共役ジエン系ゴムが、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、前記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、前記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(−Si−O−)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる第2工程と、前記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法により製造される共役ジエン系ゴムであり、
前記特定可塑剤が、ガラス転移温度が−50℃以下である可塑剤であり、
前記共役ジエン系ゴムと前記可塑剤との平均ガラス転移温度が、−50℃よりも低い、冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
一般式(1)中、X1およびX4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。
一般式(1)中、X2は、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であり、複数あるX2は、互いに同一であっても相違していてもよい。
一般式(1)中、X3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X3が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。
一般式(1)中、mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数であり、m+n+kは3以上である。
一般式(2)中、A1は、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基と反応しうる基である。
一般式(2)中、A2は、窒素原子を含有する基である。
一般式(2)中、pは0〜2の整数、qは1〜3の整数、rは1〜3の整数、p+q+r=4である。 - 前記共役ジエン系ゴムが、更に、前記特定共役ジエン系ゴム以外の共役ジエン系ゴム(y)を含み、
前記特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度と、前記共役ジエン系ゴム(y)のガラス転移温度との差の絶対値が、30℃以上である、請求項1に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。 - 前記特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が、−60℃以下である、請求項1または2に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度が、−60℃を超える、請求項1または2に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記共役ジエン系ゴムが、ガラス転移温度が−60℃を超える特定共役ジエン系ゴム(T1)と、ガラス転移温度が−60℃以下である特定共役ジエン系ゴム(T2)とを含む、請求項1に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記シリカの含有量が、前記共役ジエン系ゴム100質量部に対して、100質量部以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記特定共役ジエン系ゴムが、
イソプレン単量体単位80〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜20質量%を含む重合体ブロック(A)と、
1,3−ブタジエン単量体単位50〜100質量%および芳香族ビニル単量体単位0〜50質量%を含む重合体ブロック(B)とが一続きにして形成された構造を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。 - 前記特定可塑剤のガラス転移温度が、−60℃以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記特定可塑剤の含有量が、前記可塑剤全量に対して、5〜100質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記特定可塑剤が、パラフィンオイル、液状ポリブタジエンおよびリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤(p1)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 前記液状ポリブタジエンの重量平均分子量が、2,000〜100,000である、請求項10に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の冬用タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤトレッド部を備える、冬用空気入りタイヤ。
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