JP2019197962A - 折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器 - Google Patents

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正太郎 西尾
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明紀 恵島
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Abstract

【課題】量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがなく、虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に優れ、フィルム製の画像表示部の硬度が高い折りたたみ型ディスプレイを提供すること。【解決手段】外表面の少なくとも一部が、極限粘度0.65〜1.0dl/gのポリエステルフィルムの基材フィルム上に易接着樹脂層とハードコート層を順に有するハードコートフィルムからなる折りたたみ型ディスプレイであって、ハードコートフィルムを構成するハードコート層が折りたたみ型ディスプレイの表面側に位置しており、易接着樹脂層が、チタン化合物、ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物及びジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んでなるポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されてなる折りたたみ型ディスプレイ。【選択図】図1

Description

本発明は折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器に関し、繰り返し折りたたんでも、外表面に位置しているフィルムの変形による画像の乱れの起こり難く、前記フィルム表面が高硬度の折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器に関する。
携帯端末機器の薄膜軽量化が進み、スマートフォンに代表される携帯端末機器が広く普及している。携帯端末機器には様々な機能が求められている反面、利便性もとめられている。そのため普及している携帯端末機器は、簡単な操作は片手ででき、さらに衣服のポケットなどに収納することが前提であるため6インチ程度の小さな画面サイズとする必要がある。
一方、7インチ〜10インチの画面サイズであるタブレット端末では、映像コンテンツや音楽のみならず、ビジネス用途、描画用途、読書などが想定され、機能性の高さを有している。しかし、片手での操作はできず、携帯性も劣り、利便性に課題を有する。
これらを達成するため、複数のディスプレイをつなぎ合わせることでコンパクトにする手法が提案されているが、ベゼルの部分が残るため、映像が切れたものとなり、視認性の低下が問題となり普及していない。
そこで近年、フレキシブルディスプレイ、折りたたみ型ディスプレイを組み込んだ携帯端末が提案されている。この方式であれば、画像が途切れることなく、大画面のディスプレイを搭載した携帯端末機器として利便性よく携帯できる。
ここで、従来の折りたたみ構造を有しないディスプレイや携帯端末機器については、そのディスプレイの表面はガラスなど可撓性を有しない素材で保護することができたが、折りたたみ型ディスプレイにおいて、折りたたみ部分を介して一面のディスプレイとする場合には、可撓性があり、かつ、表面を保護できるハードコートフィルムなどを使用する必要がある。しかしながら、折りたたみ型ディスプレイでは、一定の折りたたみ部分に当たる箇所が繰り返し折り曲げられるため、当該箇所のフィルムが経時的に変形し、ディスプレイに表示される画像を歪める等の問題があった。
また、折り込み部と非折り込み部の厚さを異ならせる手法も提案されているが、フィルム厚を薄い部分は耐屈曲性は向上するものの、鉛筆硬度が低下してしまう問題があった(特許文献1参照)。
一方、前記のハードコートフィルムには、視認性や意匠性も要求される。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩(干渉斑)等を抑えるため、ハードコート層の上層に高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
しかしながら、昨今、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。しかしながら、繰り返しの折り曲げに対する耐久性と、干渉斑の抑制を同時に十分に満足するものは得られていなかった。
特開2016−155124号公報
本発明は上記のような従来のディスプレイが有する課題を解決しようとするものであって、量産性に優れており、繰り返し折り曲げた後に折りたたみ部分で表示される画像に乱れを生じるおそれがなく、虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に優れ、フィルム製の画像表示部の硬度が高い折りたたみ型ディスプレイと、そのような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器を提供しようとするものである。
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 外表面の少なくとも一部が、極限粘度0.65〜1.0dl/gのポリエステルフィルムの基材フィルム上に易接着樹脂層とハードコート層を順に有するハードコートフィルムからなる折りたたみ型ディスプレイであって、ハードコートフィルムを構成するハードコート層が折りたたみ型ディスプレイの表面側に位置しており、易接着樹脂層が、チタン化合物、ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物及びジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んでなるポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されてなる折りたたみ型ディスプレイ。
2. ハードコートフィルムの基材フィルムであるポリエステルフィルムの厚みが10〜75μmである上記第1に記載の折りたたみ型ディスプレイ。
3. ハードコート層の厚みが1〜40μmである上記第1又は第2に記載の折りたたみ型ディスプレイ。
4. チタン化合物がチタニア粒子、及び/又は、ジルコニウム化合物がジルコニア粒子である上記第1〜第3のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
5. 易接着樹脂層が、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子を含有する上記第1〜第4のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
6. 折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配されている上記第1〜第5のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
7. ポリエステルフィルムが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである上記第1〜第6のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
8. JIS K 5600−5−4:1999に準拠して750g荷重で測定したハードコート層の鉛筆硬度が2H以上である上記第1〜第7のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
9. 折りたたんだ際の屈曲半径が5mm以下である上記第1〜第8のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
10. 上記第1〜第9のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
本発明の折りたたみ型ディスプレイは、量産性を維持しながら、表面に位置しているハードコートフィルムが繰り返し折りたたんだ後の変形を起こさず、虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に優れており、フィルム製の画像表示部が高硬度であり、ディスプレイの折りたたみ部分での画像の乱れを生じないものである。前記のような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器は、美しい画像を提供し、高硬度であるため傷にも強く、機能性に富み、携帯性等の利便性に優れたものである。
本発明における折りたたんだ際の屈曲半径の測定箇所を示すための模式図である。 本発明におけるポリエステルフィルムの屈曲方向を示すための模式図である。 本発明におけるハードコートフィルムの一態様を示す断面模式図である。
(ディスプレイ)
本発明で言うディスプレイとは、表示装置を全般に指すものであり、ディスプレイの種類としては、LCD、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED、FEDなどあるが、折曲げ可能な構造であるLCDや、有機EL、無機ELが好ましい。特に層構成を少なくすることができる有機EL、無機ELが特に好ましく、色域の広い有機ELがさらに好ましい。
(折りたたみ型ディスプレイ)
折りたたみ型ディスプレイは、連続した1枚のディスプレイが、携帯時は2つ折りにすることでサイズを半減させ、携帯性を向上させた構造となっていることが好ましい。また同時に薄型、軽量化されているものが望ましい。そのため、折りたたみ型ディスプレイの屈曲半径は5mm以下が好ましく、3mm以下がさらに好ましい。屈曲半径が5mm以下であれば、折りたたんだ状態での薄型化が可能となる。屈曲半径は小さいほど良いと言えるが、0.1mm以上で構わず、0.5mm以上であっても構わない。1mm以上であっても、折りたたみ構造を有しない従来のディスプレイに対比して実用性は十分良好である。折りたたんだ際の屈曲半径とは、図1の模式図の符号11の箇所を測定するもので、折りたたんだ際の折りたたみ部分の内側の半径を意味している。なお、後述する表面保護フィルムとしてのハードコートフィルムは、折りたたみ型ディスプレイの折りたたんだ外側に位置していてもよいし、内側に位置していてもよい。言い換えれば、折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器は、折りたたみ型ディスプレイを折りたたんだ外側に位置させてもよいし、内側に位置させてもよい。
(有機EL)
有機ELディスプレイの一般的な構成は、電極/電子輸送層/発光層/ホール輸送層/透明電極からなる有機EL層、画質を向上させるための位相差板、偏光板からなる。
(タッチパネルを有する携帯端末機器)
タッチパネルを有する携帯端末機器に有機ELディスプレイを用いた場合、有機ELディスプレイの上部、もしくは有機EL層/位相差板間にタッチパネルモジュールを配置する。この際、上部から衝撃が加わると、有機EL、タッチパネルの回路が断線するおそれがあるため、表面保護フィルムが必要であり、表面保護フィルムとしてディスプレイの前面に配されるフィルムについて、ディスプレイの少なくとも表面側にはハードコート層が積層されたハードコートフィルムであることが好ましい。
図3に、本発明におけるハードコートフィルムの一態様の断面模式図を示す。ハードコートフィルムは、基材フィルムとしてのポリエステルフィルム(符号31)上に、易接着樹脂層(符号32)及びハードコート層(符号33)が前記の順に積層されていることが好ましい。そして、ハードコートフィルムは、折りたたみ型ディスプレイの表面に位置しており、ハードコート層は、折りたた型ディスプレイの外表面に位置するように配されていることが好ましい。図示しないが、ハードコート層(符号33)の表面は、通常、折りたたみ型ディスプレイの外表面と一致していると言える。
ハードコートフィルムを構成する基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光透過性が高く、ヘイズが低いフィルムであれば使用することができが、その中でも耐衝撃性が高く、十分な鉛筆硬度を有するポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、安価で製造できるポリエステルフィルムが特に好ましい。
本発明において、ポリエステルフィルムは、1以上のポリエステル樹脂からなる単層構成のフィルムでもよいし、2種類以上のポリエステルを使用する場合、多層構造フィルムでも良いし、繰り返し構造の超多層積層フィルムでもよい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
基材フィルムにポリエステルの共重合体を用いる場合、ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p−キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150〜20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の質量比率は20質量%未満である。20質量%未満の場合には、フィルム強度、透明性、耐熱性が保持されて好ましい。
また、基材フィルムの製造において、少なくとも1種類以上の樹脂ペレットの極限粘度は、0.65〜1.0dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.65dl/g以上であると、得られたフィルムを繰り返し折り曲げた後に変形が発生しづらく、画質を低下させるおそれがないため好ましい。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造を安定的に操業し易く好ましい。
フィルムが単層構成、積層構成であることに関わらず、フィルムの極限粘度は、0.65dl/g以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.68dl/g以上である。0.65dl/g以上あれば、十分に耐屈曲性の効果が得られる。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であるフィルは、操業性よく製造でき好ましい。
ポリエステルフィルムの厚みは、10〜75μmであることが好ましく、25〜75μmであることがさらに好ましい。厚みが10μm以上であると鉛筆硬度向上効果が見られ、厚みが75μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性やハンドリング性などに優れる。
本発明のポリエステルフィルムの表面は、平滑であっても凹凸を有していても良いが、ディスプレイの表面カバー用途に用いられることから、凹凸由来の光学特性低下は好ましくない。ヘイズとしては、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズの下限は小さいほどよいが、0.1%以上でも構わず、0.3%以上でも構わない。
前記のようにヘイズを低下させる目的からはあまりフィルム表面の凹凸は大きくない方がよいが、ハンドリング製の観点から程度な滑り性を与えるために、凹凸を形成する方法としては、表層のポリエステル樹脂層にフィラーを配合したり、フィラー入りのコート層を製膜途中でコーティングすることで形成することができる。
基材フィルムに粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
なかでも、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらにフィルム表面の突起数を少なくすることができる。
また、ポリエステルフィルムは、光線透過性の好ましい範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができる。ポリエステルフィルムの全光線透過率は高いほどよいと言えるが、99%以下でも構わず、97%以下でも構わない。
本発明のポリエステルフィルムの表面に、ハードコート層などを形成する樹脂との密着性を向上させるための処理を行うことができる。
表面処理による方法としては、例えば、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が挙げられ、特に限定なく使用できる。
また、易接着層などの接着向上層により、密着性を向上させることもできる。易接着層としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など特に限定なく使用でき、一般的なコーティング手法、好ましくはいわゆるインラインコート処方により形成できる。
上述のポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルをフィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程を経て、製造することができる。フィルムの強度や寸法安定性、耐熱性を持たせるために、延伸は二軸方向に行い、二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが好ましい。
(ポリエステルフィルムの製造方法)
次に、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記すことがある)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。また、単層構成、多層構成など層数を限定するものではない。
PETのペレットを所定の割合で混合、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。単層の場合は1台の押し出し機でよいが、多層構成のフィルムを製造する場合には、2台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成する複数のフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成することができる。
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約280℃程度に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため好ましい。
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下が好ましく、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で好ましい。
折りたたんだ際の屈曲方向と直交する方向(折りたたみ部の方向)の延伸倍率は屈曲方向より大きいことがフィルムの力学的特性から好ましく、屈曲方向と直交する方向の延伸倍率としては2.5〜5.0倍を例示できる。延伸倍率を2.5倍以上にすることで安定した生産性が得られ、延伸倍率を5.0倍以下にすることで良好な耐屈曲性が得られるので好ましい。ここで、屈曲方向とは、図2のポリエステルフィルム(符号2)上の符号22に示すように、折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルムの用途において想定される折りたたみ部(符号21)と直交する方向を指している。屈曲方向はフィルムの長手方向、幅方向いずれにも限定されない。
具体的には、例えば、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化させて、未延伸PETシートを形成する。得られた未延伸シートを80〜130℃に加熱したロールで長手方向に1.0〜3.4倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き、180〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向または長手方向に1〜12%の弛緩処理を施しても良い。
(易接着樹脂層)
本発明の折りたたみ型ディスプレイの表面に位置させてディスプレイを保護するハードコートフィルムは、ポリエステルフィルム/ハードコート層の層間に易接着樹脂を有していることが好ましい。ポリエステルフィルムに易接着樹脂層を設ける方法は、このポリエステルフィルム製造工程の任意の段階で、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布することで形成することができる。例えば、機械流れ方向に一軸配向PETフィルムを得た後に易接着樹脂層形成用の塗布液を塗工し幅方向に延伸、熱処理してポリエステルフィルムの片面に乾燥、硬化した易接着樹脂層を形成させても良い。塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2〜35質量%であることが好ましく、特に好ましくは4〜15質量%である。
易接着樹脂層のバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など特に限定なく使用できるが、ポリエステルフィルムとの高い密着性や屈折率の点において、ジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んで共重合されて構成されるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。またこれら易接着樹脂層の密着耐久性を向上させるためにバインダー樹脂に架橋構造を形成させてもよい。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられ、自己架橋型のポリウレタン樹脂等を配合することもできる。
本発明における易接着樹脂層にはチタン化合物、ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましい。ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62〜1.65)とアクリル樹脂等からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するために、ポリエステルフィルムと易接着樹脂層との屈折率差、易接着樹脂層とハードコート層の屈折率差を小さくするように、易接着樹脂層の屈折率を制御することが重要である。主成分のバインダー樹脂や粒子からなる易接着樹脂層の屈折率を制御する際、屈折率の高い上記化合物を含有させることで、制御が容易となる。チタン化合物としては、例えば、水溶性のチタンキレート化合物や水溶性のチタンアシレート化合物、酸化チタン、塩化チタンなどが挙げられ、中でも二酸化チタン(チタニア)が好ましく用いられる。ジルコニウム化合物としては、例えば水溶性のジルコニウムキレート化合物や水溶性のジルコニウムアシレート化合物、酢酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられ、中でも、二酸化ジルコニウム(チタニア)が好ましく用いられる。前記の屈折率の高い化合物は粒子状のものであることも好ましい。
また易接着樹脂層表面に滑り性を付与するために、滑剤粒子を含むこともできる。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の無機粒子、アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。塗布層に適度な滑り性を与えるために、平均粒径200nm以上700nm以下のシリカ粒子が特に好ましく使用される。
ポリエステルフィルム表面に易接着樹脂層を設けることは、ポリエステルフィルムの製造工程の任意の段階で行うことができるが、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、前記易接着樹脂層を形成することができる。例えば、一軸配向PETフィルムを得た後に、公知の任意の方法のコーティング手法により形成できる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、リバースキスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。本発明において、最終的に得られる易接着樹脂層の厚みは0.03〜0.20g/mであることが好ましい。0.03g/m未満では、接着性が低下し、0.20g/mより厚いと、ブロッキング性、滑り性が低下するので好ましくない。
(ハードコート層)
折りたたみ型ディスプレイの表面に位置させてディスプレイを保護するポリエステルフィルムは、その表面にハードコート層を有していることが好ましい。ハードコート層は、ポリエステルフィルム上のディスプレイ表面側に位置させてディスプレイにおいて用いられることが好ましい。ハードコート層を形成する樹脂としては、可視光線を透過するものであればよいが、光線透過率が高いものが好ましい。用いられる材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、シロキサン系樹脂、有機無機ハイブリッド系樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂などが挙げられる。
紫外線、電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなど、(メタ)アクリレート系官能基を持つ化合物やアリル基やビニル基などの不飽和二重結合を有する官能基を持つ化合物が挙げられる。また、ハードコート層の硬度を上げるために多官能モノマーを併用してもよい。多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが例示される。上記材料は単独で使用してもよいし、2種類以上の材料を混合して用いることもできる。
活性エネルギー線が紫外線の場合は、光重合開始剤を加えることが好ましい。光重合開始剤には、ラジカル重合系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合の混合系であってもよいが、反応速度が大きく生産性に優れるため、ラジカル重合系が特に好ましい。紫外線ラジカル重合開始剤の例として、アルキルフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、チタノセン類、オキシ酢酸フェニル類が挙げられ、単独または2種以上混合して使用しても良い。さらに具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。光重合開始剤の添加量は活性エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対して、下限が0.1質量部以上、より好ましく1質量部以上、上限が30質量部以下、より好ましくは20質量部以下の範囲で使用することができる。添加量が0.1質量部以上であると、ハードコート層の硬度が高くでき好ましい。また、添加量が30質量部以下であると、ハードコート層が黄変するおそれがなく、ハードコート層の硬化も十分であり好ましい。
さらにハードコートの性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、消泡剤、充填剤、溶剤、防眩剤、反射防止剤、無機フィラーや有機フィラーなどを挙げることができる。
(ハードコートフィルムの製造方法)
ハードコート層を形成するために、上記化合物を所定量の溶剤に分散または溶解した塗布液をポリエステルフィルムに塗布する。有機溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類が挙げられる。また、使用する有機溶媒は、沸点が60〜180℃の範囲の溶媒を選択することが好ましい。沸点が60℃以上の有機溶媒を用いることにより、塗布時の塗布液の固形分濃度の変化を抑え、塗布厚みを安定化させることができる。180℃以下とすることにより、乾燥時に発生する熱シワによるプラスチック基材フィルムの平面性の悪化を抑制できる。
塗布方法としては、マイヤーバー、グラビアコート、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーターなど特に限定なく使用できる。塗布液をポリエステルフィルムに塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が速い熱風乾燥が好ましい。このような迅速な乾燥を行なうことにより、揮発性成分をハードコート層内に略均一に分散させたまま、ハードコート層を形成することができ、高度なカールの抑制のために好適である。
ハードコート層の硬化方法としては、紫外線、電子線などの活性エネルギー線や、熱による硬化方法など使用できるが、フィルムへのダメージを軽減させるため、紫外線や電子線などによる硬化方法が好ましい。紫外線での照射は、通常、塗布層側から行うが、ポリエステルフィルムとの密着性を高めるため、ポリエステルフィルム面側から行ってもよい。紫外線は、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ−ジョンHランプ、キセノンランプなどから照射される。その照射量は下限が50mJ/m以上、より好ましくは100mJ/m以上、上限が1000mJ/m以下、より好ましくは800mJ/m以下である。照射量が50mJ/m以上であると、ハードコート層の硬度が高くなり好ましい。一方、照射量が1000mJ/m以下であると、走行速度が遅くなり過ぎず、生産性の上で有利となる。
硬化後のハードコート層の膜厚としては、1〜40μmが好ましい。1μmより厚ければ十分に硬化し、良好な鉛筆硬度が得られる。また厚みを40μm以下にすることで、ハードコートの硬化収縮によるカールを抑制し、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。より好ましくは3〜38μm、更に好ましくは5〜35μmである。
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度としては、B以上が好ましく、H以上が更に好ましく、2H以上が特に好ましい。B以上の鉛筆硬度があれば、容易に傷がつくことはなく、視認性を低下させない。一般にハードコート層の鉛筆硬度は高い方が好ましいが10H以下で構わず、8H以下でも構わず、6H以下でも実用上は問題なく使用できる。
また、ハードコートフィルムのフィルムの全光線透過率は、ポリエステルフィルムの全光線透過率と同様に85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができる。ハードコートフィルムのフィルムの全光線透過率も高いほどよいと言えるが、99%以下でも構わず、97%以下でも構わない。
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
(1)極限粘度
フィルムまたはポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの該当するポリエステル層を削り取ることで、各層単体の極限粘度を評価した。
(2)ガラス転移温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、DSC6200)を使用して、25〜300℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
(3)繰り返し耐屈曲性
幅方向(折りたたみ部の方向)50mm×流れ方向(屈曲方向)100mmの大きさのサンプルを用意する。無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH−FS)を用いて、屈曲半径3mmを設定し、1回/秒の速度で、5万回屈曲させた。その際、サンプルは長辺側両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位は50mm×80mmとした。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視検査を行った。
○ :サンプルの変形がないか又は変形があっても、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが3mm未満。
△ :サンプルの変形があり、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが3mm以上5mm未満。
× :サンプルに折跡があるか、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
(4)鉛筆硬度
作製したハードコートフィルムのハードコート層について、JIS K 5600−5−4:1999に準拠し、荷重750g、速度0.5mm/sで測定した。
(5)全光線透過率、ヘイズ
ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いてハードコートフィルムについて測定した。
(6)干渉斑改善性(虹彩状色彩)
作製したハードコートフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工製、ビニルテープNo21;黒)を張り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40〜60cm、フィルム面に対して15〜45°の角度)で観察した。
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
(ポリエチレンテレフタレートペレットAの調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。
次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットAを得た。
(ポリエチレンテレフタレートペレットBの調製)
ポリエチレンテレフタレートペレットAを、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.67dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットBを作製した。
(ポリエチレンテレフタレートペレットCの調製)
ポリエチレンテレフタレートペレットAを、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットCを作製した。
(ポリエチレンテレフタレートペレットDの調製)
ポリエチレンテレフタレートペレットAを、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、極限粘度0.83dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットDを作製した。
(共重合ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルナフタレート381質量部、ジメチルテレフタレート58.3質量部、ジメチルー5−ナトリウムスルホイソフタレート41.5質量部、ジエチレングリコール46.7質量部、エチレングリコール245.8質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(X−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
同様の方法で、別の組成の共重合ポリエステル樹脂(Y−1)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、1H−NMRで測定した組成及び重量平均分子量の結果を表1に示す。
(共重合ポリエステル樹脂の水分散液の調整)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、共重合ポリエステル樹脂(X−1)25質量部、エチレングリコールt−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水60質量部を上記ポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分25質量%の乳白色の共重合ポリエステルの水分散液(X−2)を作製した。同様に共重合ポリエステル樹脂(X−1)の代わりに共重合ポリエステル樹脂(Y−1)を使用して、水分散液を作製し、水分散液(Y−2)とした。
(自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液の調製)
アジピン酸、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(モル比:4/2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80〜90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40〜50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液を得た。
(易接着樹脂層形成用塗布液(a)の調製)
共重合ポリエステル系樹脂の水分散液(X−2)を24.0質量部、自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液を10.0質量部、水を33.8質量部、およびイソプロピルアルコールを30.0質量部混合した。さらに、フッ素系界面活性剤(ポリオキシエチレン−2−パーフルオロヘキシルエチルエーテル)の10質量%水溶液を0.6質量部、コロイダルシリカ(平均粒径450nm)の10質量%水分散液を1.2質量部、ジルコニア粒子の水分散液(日産化学工業製ZR−40BL、固形分濃度40質量%)を0.4質量部、それぞれ添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で上記混合物のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで上記混合物を精密濾過し、易接着樹脂層形成用の塗布液(a)を調製した。
(易接着樹脂層形成用塗布液(b)の調製)
ジルコニア粒子の水分散液をチタニア粒子の水分散液(石原産業製TTO−W−5、固形分濃度30質量%)に変更した以外は、上記塗布液(a)と同様にして易接着樹脂層形成用の塗布液(b)を調製した。
(易接着樹脂層形成用塗布液(c)の調製)
共重合ポリエステル系樹脂の水分散液(Y−2)を24.0質量部、上記自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液を10.0質量部、水を34.2質量部、およびイソプロピルアルコールを30.0質量部混合した。さらに、フッ素系界面活性剤(ポリオキシエチレン−2−パーフルオロヘキシルエチルエーテル)の10質量%水溶液を0.6質量部、コロイダルシリカ(平均粒径450nm)の10質量%水分散液を1.2質量部、それぞれ添加した。次いで、5質量%の重曹水溶液で上記混合物のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで上記混合物を精密濾過し、易接着樹脂層形成用の塗布液(c)を調製した。
(ハードコート層形成用の塗布液)
ウレタンアクリレート系ハードコート剤(荒川化学工業社製、ビームセット(登録商標)577、固形分濃度100%)95質量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)184、固形分濃度100%)5質量部、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、固形分濃度100%)0.1質量部を混合し、トルエン/MEK=1/1の溶媒で希釈して、固形分濃度40%のハードコート層形成用塗布液を調製した。
(実施例1)
上記のポリエチレンテレフタレートペレットCを150℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを加熱ロールを用いて75℃に均一加熱し、非接触ヒーターで100℃に加熱して3.4倍のロール延伸(縦延伸)を行った(フィルムの縦方向が屈曲方向に対応)。次いで、一軸延伸フィルムのキャスティングドラム接触面側に上記易接着層形成用塗布液(a)をリバースキスコート法により、乾燥後の樹脂固形分の厚みが0.3μmになるように塗布した。塗布層を有する一軸延伸フィルを乾燥しつつテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定(易接着樹脂層の乾燥、硬化)して240℃で5秒間の熱処理を施し、さらに210℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た(フィルムの幅方向が折りたたみ部の方向に対応)。得られたポリエステルフィルムの易接着形成面にマイヤーバーを用いて、ハードコート層形成用塗布液を乾燥後の膜厚が10.0μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(高圧水銀ランプ、積算光量200mJ/cm)、ハードコートフィルムを得た。
(実施例2)
ポリエステルフィルムの厚みを38μmにしたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
(実施例3)
易接着層形成用塗布液(b)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレートペレットDを用い、ハードコート層の乾燥後膜厚が5.0μmになるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレートペレットBを用い、ハードコート層の乾燥後膜厚が5.0μmになるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
(比較例1)
易接着層形成用塗布液(c)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレートペレットAを用い、ハードコート層の乾燥後膜厚が5.0μmになるように塗布したこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレートペレットAを用い、易接着層形成用塗布液(c)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
作製したフィルムを、25μm厚の粘着層を介して有機ELモジュールに貼合し、図1における屈曲半径の相当する半径が3mmの全体の中央部で二つ折りにできるスマートフォンタイプの折りたたみ型ディスプレイを作成した。ハードコートフィルムは折りたたみ部分を介して連続した1枚のディスプレイの表面に配され、ハードコート層をそのディスプレイの表面に位置するように配されている。また、表面保護フィルムであるハードコートフィルムが、折りたたみ型ディスプレイの折りたたんだ外側表面に位置するようにした。各実施例のハードコートフィルムを用いたものは、中央部で二つ折りに折りたたんで携帯できるスマートフォンとして動作及び視認性を満足するものであった。一方、比較例1、3のハードコートフィルムを使用した折りたたみ型ディスプレイは、蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)が目立ち、使用頻度が増えるに従って、ディスプレイの折りたたみ部で画像の歪を生じてきたように感じ、あまり好ましいものではなかった。また、比較例2のハードコートフィルムを使用した折りたたみ型ディスプレイは、繰り返し屈曲使用後の画像の乱れが見られてあまり好ましいものではなかった。
本発明によれば、量産性を維持しながら、表面の高い鉛筆硬度を有し、虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に優れ、繰り返し折りたたんだ後の表面ハードコートフィルムの変形が起こりづらく、経時的な画像の乱れを生じ難い折りたたみ型ディスプレイとそのような折りたたみ型ディスプレイを搭載した携帯端末機器の提供が可能となった。
1 : 折りたたみ型ディスプレイ
11: 屈曲半径
2 : 折りたたみ型ディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム
21: 折りたたみ部
22: 屈曲方向(折りたたみ部と直交する方向)
3 : ハードコートフィルム
31: ポリエステルフィルム
32: 易接着樹脂層
33: ハードコート層

Claims (10)

  1. 外表面の少なくとも一部が、極限粘度0.65〜1.0dl/gのポリエステルフィルムの基材フィルム上に易接着樹脂層とハードコート層を順に有するハードコートフィルムからなる折りたたみ型ディスプレイであって、ハードコートフィルムを構成するハードコート層が折りたたみ型ディスプレイの表面側に位置しており、易接着樹脂層が、チタン化合物、ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物及びジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んでなるポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されてなる折りたたみ型ディスプレイ。
  2. ハードコートフィルムの基材フィルムであるポリエステルフィルムの厚みが10〜75μmである請求項1に記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  3. ハードコート層の厚みが1〜40μmである請求項1又は2に記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  4. チタン化合物がチタニア粒子、及び/又は、ジルコニウム化合物がジルコニア粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  5. 易接着樹脂層が、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  6. 折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配されている請求項1〜5のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  7. ポリエステルフィルムが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  8. JIS K 5600−5−4:1999に準拠して750g荷重で測定したハードコート層の鉛筆硬度が2H以上である請求項1〜7のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  9. 折りたたんだ際の屈曲半径が5mm以下である請求項1〜8のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイ。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の折りたたみ型ディスプレイを有する携帯端末機器。
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