JP2019196936A - 熱式センサ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、高温環境下において、発熱体に加わるストレスを低減し、薄膜部の反りを抑制することができる熱式センサ装置を提供することにある。【解決手段】基板2に形成した空洞部3を絶縁膜で覆った薄膜部4と、薄膜部4に形成した発熱体5と、を備えた熱式センサ装置において、薄膜部4における絶縁膜11a,12a,11b,11cに部分的に圧縮性を強めた圧縮性領域Bが設けられ、圧縮性領域Bに発熱体5が配置される。【選択図】図4A
Description
本発明は、基板に形成した空洞部を覆う薄膜部に発熱体を形成した熱式センサ装置に関する。
本技術分野の背景技術として、特開平11−271123号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、薄膜発熱部の発熱体膜を保持する下部薄膜と上部薄膜の膜厚を厚くして機械的強度を高めることができ、且つ全体の反りを低減したエアフローセンサが記載されている。このエアフローセンサは、シリコン基板に形成した空洞部を架橋するように、下部薄膜、ヒータ層および上部薄膜を積層した構造の薄膜発熱部を有する。下部薄膜及び上部薄膜は、それぞれ圧縮応力膜と引張応力膜とを組み合わせた構成とし、ヒータ層を挟んで下部薄膜と上部薄膜とが対称構造となるように積層される。圧縮応力膜は密着性の良いSiO2膜で構成し、引張応力膜は、耐湿性の良いSi3N4膜で4構成している。圧縮応力膜および引張応力膜は、内部応力を打ち消し合うので内部応力を緩和でき、反りモーメントを打ち消して全体の反りを抑制できる。これにより、特許文献1のエアフローセンサは、下部薄膜及び上部薄膜の膜厚を厚くして、機械的強度の向上を図っている(要約および段落0009参照)。
気体の物理量の微小な変化を検出するためには、発熱体を高温化し検出感度を上げる必要がある。例えば、湿度による発熱体の放熱量変化を検出する熱式湿度センサにおいては、発熱体を500℃程度の高温に加熱する必要がある。そうすると、発熱体(発熱体膜)とその周辺の薄膜部との熱膨張差が増加し、発熱体に加わるストレスが増加する。このような高温、高ストレス環境よって、発熱体に塑性変形が生じる。
特許文献1のエアフローセンサは、薄膜部の反りを低減することが可能であるが、発熱体に加わる熱ストレスの抑制に対する配慮が十分ではなかった。
発熱体に加わる熱ストレスを低減するためには、発熱体とその周辺の薄膜との熱膨張差をできるだけ小さくすることが必要である。例えば、発熱体に金属材料を用いた場合、発熱体を積層する薄膜部の膨張係数をできるだけ金属材料に近づける必要がる。しかしながら、薄膜部の内部応力を金属材料に合わせようとすると、薄膜部に反りが生じ異形な薄膜部となり、機械的強度や生産性が損なわれる。
本発明の目的は、高温環境下において、発熱体に加わるストレスを低減し、薄膜部の反りを抑制することができる熱式センサ装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の熱式センサ装置は、
基板に形成した空洞部を絶縁膜で覆った薄膜部と、前記薄膜部に形成した発熱体と、を備えた熱式センサ装置において、
前記薄膜部における前記絶縁膜に部分的に圧縮性を強めた圧縮性領域が設けられ、前記圧縮性領域に前記発熱体を配置する。
基板に形成した空洞部を絶縁膜で覆った薄膜部と、前記薄膜部に形成した発熱体と、を備えた熱式センサ装置において、
前記薄膜部における前記絶縁膜に部分的に圧縮性を強めた圧縮性領域が設けられ、前記圧縮性領域に前記発熱体を配置する。
本発明によれば、発熱体に加わるストレスを低減し、薄膜部の反りを抑制することができる熱式センサ装置を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明からにされる。
気体の物理量を検出して電気信号に変換するセンサ装置として、半導体プロセスを用いて厚さ数μmの薄膜部に発熱体を形成した熱式センサ装置が知られている。例えば、気体の流量、濃度などを測定する熱式センサ装置は、薄膜部に形成した発熱体の放熱量が気体の流れや濃度により変化することを利用している。また、可燃性気体の濃度センサでは、薄膜部に触媒層を設け、この触媒層を可燃性ガスと反応するように活性化させるための発熱体が設けられている。このような、センサ装置は、気体の物理量変化に対する検出感度を長期間一定に保つことが必要である。
しかしながら、発熱体が数百度の高温に長時間加熱されると、熱ストレスにより発熱体や薄膜部に変形が生じる。そうすると発熱体の抵抗値が変化して発熱体の加熱温度にずれが生じる。その結果、気体の物理量変化に対する検出感度が変化し、センサ装置に誤差が生じる。
また、発熱体に加わる熱ストレスを低減するためには、発熱体とその周辺の薄膜との熱膨張差をできるだけ小さくすることが必要である。例えば、発熱体に金属材料を用いた場合、発熱体を積層する薄膜部の膨張係数をできるだけ金属材料に近づける必要がる。しかしながら、薄膜部の内部応力を金属材料に合わせようとすると、薄膜部に反りが生じ異形な薄膜部となり、機械的強度や生産性が損なわれる。
本発明に係る熱式センサ装置の一実施例は、基板に形成した空洞部を覆う薄膜部に発熱体を形成し、発熱体が配置された薄膜部の合成応力が他の領域の薄膜部と異なるように薄膜部を形成する。これにより、発熱体に加わるストレスを低減するとともに薄膜部のそりを抑制することができる。その結果、本実施例の熱式センサ装置は、長期間に亘り測定精度の維持または測定精度の低下抑制を図ることができるとともに、機械的信頼性および生産性を確保した熱式センサ装置を提供することができる。
[実施例1]
以下、本発明を適用してなる熱式センサ装置としての実施形態を説明する。以下で説明する実施例は、熱式センサ装置の一例として、自動車エンジンの吸気湿度を計測する熱式センサ装置に本発明を適用したものである。本実施例の熱式センサ装置が検出対象とする物理量は気体の濃度変化であり、本発明は湿度の他に例えば水素濃度などを計測する熱式センサ装置にも適用できる。また本発明は気体の流量を検出するフローセンサにも適用可能であり、検出対象とする気体や物理量の種類は以下の実施例に限定されない。
以下、本発明を適用してなる熱式センサ装置としての実施形態を説明する。以下で説明する実施例は、熱式センサ装置の一例として、自動車エンジンの吸気湿度を計測する熱式センサ装置に本発明を適用したものである。本実施例の熱式センサ装置が検出対象とする物理量は気体の濃度変化であり、本発明は湿度の他に例えば水素濃度などを計測する熱式センサ装置にも適用できる。また本発明は気体の流量を検出するフローセンサにも適用可能であり、検出対象とする気体や物理量の種類は以下の実施例に限定されない。
本実施例の熱式センサ装置が計測対象とする吸気湿度は、気体の濃度による気体の熱伝導率変化を検出することにより計測される。熱伝導率の変化はセンサ素子に形成した発熱体の放熱量変化から検出する。気体の濃度による気体の熱伝導率変化は微小であることから、発熱体を500℃程度の高温に加熱する必要がある。このようなセンサ装置においては本発明の構成による効果が高い。
図1は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例1)に係る平面図である。
センサ素子1は、フォトリソグラフィーを利用した半導体微細加工技術やエッチング技術を用いて形成される。センサ素子(熱式センサ素子)1は、単結晶シリコンで形成された基板2を有している。基板2は、空洞部3が形成され、空洞部3を絶縁膜によって覆うことにより構成される薄膜部4を備えている。薄膜部4には、発熱体としての検出ヒータ5及び補助ヒータ6が敷設される。検出ヒータ5及び補助ヒータ6は、薄膜部4の平面(膜面)に沿って延在し、複数の折り返し部を有する抵抗パターンとして形成される。
検出ヒータ5は湿度の検出に用いられる。本実施例の場合、検出ヒータ5は例えば500℃程度の一定温度に制御される。検出ヒータ5の放熱量は雰囲気の湿度に依存して変化し、検出ヒータ5を500℃に保つために必要な電力が変化する。この電力変化を測定することで湿度を検出できる。
検出ヒータ5の材料としては、高温において安定で、且つ抵抗温度係数が高い材料が好適である。例えば、白金(Pt)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属材料が好適である。
補助ヒータ6は、検出ヒータ5を取り囲むように敷設される。補助ヒータ6の材料としては、検出ヒータ5と同一材料により形成することができる。補助ヒータ6の役割は、検出ヒータ5の放熱量が環境温度に依存しないように、検出ヒータ5の周囲温度を一定に保持することである。補助ヒータ6の温度は、300℃程度であり、検出ヒータ5の温度より低く設定される。
本実施例では、検出ヒータ5の周辺に検出ヒータ5の周囲を囲むように補助ヒータ6を設けた構成としているが、本発明の効果を得るために補助ヒータ6は必須ではない。補助ヒータ6は環境温度による温度依存性を補償するためのものであり、補助ヒータ6を有さない構成においても本発明の効果が得られる。
基板2には、検出ヒータ5及び補助ヒータ6を外部の駆動回路と接続するために電極パッド7a〜7dが設けられる。これらの電極パッド7a〜7dには、アルミニウム(Al)等が選定される。
図2は、本発明の熱式センサ装置の駆動回路(回路構成)の一実施例を示す回路図である。なお、熱式センサ装置100は、センサ素子1を含む駆動回路全体である。実施例1で説明する熱式センサ装置100は、他の実施例にも適用される。
駆動回路は、検出ヒータ5及び補助ヒータ6と、検出ヒータ5を加熱制御するブリッジ回路(第1ブリッジ回路)BC1と、補助ヒータ6を加熱制御するブリッジ回路(第2ブリッジ回路)BC2と、から成る。
検出ヒータ5が含まれるブリッジ回路BC1は、検出ヒータ5に抵抗8aを接続した直列回路と、抵抗8bと抵抗8cとを接続した直列回路と、を並列接続した構成である。検出ヒータ5と抵抗8aとの接続部(中間部)の電位(第1中間電位)と、抵抗8bと抵抗8cとの接続部(中間部)の電位(第2中間電位)とは差動増幅器9aに入力される。差動増幅器9aは、入力電圧の差(第1中間電位と第2中間電位との電位差)に応じた電圧、または電流を出力する。差動増幅器9aの出力はブリッジ回路BC1の検出ヒータ5と抵抗8bとの間に接続され、検出ヒータ5の加熱電流としてフィードバックされる。検出ヒータ5が500℃となる抵抗値でブリッジ回路BC1がバランスするように抵抗8a〜8cを選定することにより、検出ヒータ5を一定温度に保持することができる。
補助ヒータ6が含まれるブリッジ回路BC2は、補助ヒータ6に抵抗10aを接続した直列回路と、抵抗10bと抵抗10cとを接続した直列回路と、を並列接続した構成である。補助ヒータ6と抵抗10aとの接続部(中間部)の電位(第3中間電位)と、抵抗10bと抵抗10cとの接続部(中間部)の電位(第4中間電位)とは差動増幅器9bに入力される。差動増幅器9bは、入力電圧の差(第3中間電位と第4中間電位との電位差)に応じた電圧、または電流を出力する。差動増幅器9bの出力はブリッジ回路BC2の補助ヒータ6と抵抗10bとの間に接続され、補助ヒータ6の加熱電流としてフィードバックされる。補助ヒータ6が300℃となる抵抗値でブリッジ回路BC2がバランスするように抵抗10a〜10cを選定することにより、補助ヒータ6を一定温度に保持することができる。
以下、上記のような熱式センサ装置100における検出ヒータ5の抵抗変化について説明する。
検出ヒータ5は金属材料で形成し、その周囲の絶縁膜は酸化シリコンや窒化シリコンで形成される。金属材料は線膨張係数が大きいため高温に加熱すると、周辺の絶縁膜により膨張が妨げられ、検出ヒータ5に圧縮応力が働く。圧縮応力が小さければ検出ヒータ5に応力が加わっても弾性変形となるため、冷却すれば検出ヒータ5は元の形状に戻る。しかし、高温に加熱することによって熱ストレスが大きくなると、検出ヒータ5は弾性変形の領域を越えて塑性変形となり、残留応力が蓄積する。これにより、検出ヒータ5の抵抗値が徐々に変化し、計測精度に影響を与える。
加熱による検出ヒータ5に加わる応力を低減するためには、検出ヒータ5と周囲の絶縁膜との膨張係数の差を小さくすることが好ましい。絶縁膜は圧縮性応力を有する酸化シリコン膜と、引張性応力を有する窒化シリコン膜の積層によって形成される。検出ヒータ5に用いる金属材料は圧縮性であることから、絶縁膜は検出ヒータと同じ圧縮性応力を有する酸化シリコンによって形成することが望ましい。
しかしながら、絶縁膜を構成する薄膜部の圧縮性を増加させると、薄膜部に反り変形が生じる。図3に薄膜部4が引張性である場合と圧縮性である場合の反り形状を示す。
図3Aは、熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の変形を概念的に示す断面図であり、薄膜部を形成する積層膜の合成応力が引張性となるように膜厚を設定した場合の、薄膜部の断面形状を示す図である。
図3Aでは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を積層して薄膜部4を形成している。酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の合成応力は引張性となるように、各膜厚が設定されている。この場合、図3Aに示すように、薄膜部4は平坦な形状となり良好に製造することができる。
図3Bは、熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の変形を概念的に示す断面図であり、薄膜部を形成する積層膜の合成応力が圧縮性となるように膜厚を設定した場合の、薄膜部の断面形状を示す図である。
図3Bでは、酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜の合成応力は引張性となるように、各膜厚が設定されている。薄膜部4の酸化シリコン膜の比率を増して圧縮性とした場合、図3Bに示すように、薄膜部4に撓みが生じ機械的強度が低下する。
上記の課題を解決する本発明の具体的実施例を、以下説明する。
図4Aは、図1のIVA−IVA断面を示す断面図である。
センサ素子1は、単結晶シリコンから成る基板2の表面に、圧縮性絶縁膜11aが形成される。圧縮性絶縁膜11aは、主に酸化シリコン(SiO2)から成り、熱酸化膜やCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成することができる。
圧縮性絶縁膜11a上には、引張性絶縁膜12aが形成される。引張性絶縁膜12aとしては、例えばCVD法により形成した窒化シリコン膜(Si3N4)を用いることができる。引張性絶縁膜12aは、検出ヒータ5が形成される領域Bに対応する部分(検出ヒータ形成領域対応部分)12a−1がエッチングにより部分的に取り除かれる。すなわち引張性絶縁膜12aは、引張性絶縁膜12aと検出ヒータ5とを基板2の平面(絶縁膜形成面)2a又は平面2aに平行な仮想平面に投影した場合に、検出ヒータ5が形成される領域と重なる部分12a−1が取り除かれている。
次に同様な方法で酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜11bを形成する。圧縮性絶縁膜11bの表面はCMP(Chemical mechanical polishing)などにより必要に応じて平坦化処理される。
次に、金属膜をスパッタ法などにより形成してパターニングすることにより、検出ヒータ5及び補助ヒータ6を形成する。本実施例では金属膜として、高融点材料であり、且つ抵抗温度係数が高いモリブデン(Mo)を用いる。Moのほか白金、タンタル、タングステンなども用いることができる。
最後に検出ヒータ5及び補助ヒータ6を保護するために、プラズマCVD法などを用いて酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜11cを形成する。
検出ヒータ5及び補助ヒータ6が位置する基板2の部位は、水酸化カリウム(KOH)などを用いて異方性エッチングされ、空洞部3が形成される。
前述したように、検出ヒータ5が形成される領域Bの絶縁膜の合成応力は圧縮性とする必要がある。そのため、本実施例では、引張性絶縁膜12aを部分的に除去することで、検出ヒータ5が形成される領域Bの圧縮性絶縁膜11a,11b,11cの比率を他の薄膜部4の領域Aに比べて増加させている。つまり、絶縁膜11a,12a,11b,11cで形成された薄膜部4の合成応力が部分的に圧縮性となる圧縮性領域Bが設けられ、この圧縮性領域Bに検出ヒータ5が配置されている。
引張性絶縁膜12aを部分的に除去することで、検出ヒータ5が形成される領域Bは圧縮性(−σ)が強くなり、薄膜部4のその他の領域Aは引張性(+σ)となる。こうすることで、検出ヒータ5が形成された領域Bの膨張にともなう歪を、周囲の引張性を強くした領域Aにより面方向において相殺することができ、薄膜部4を平坦な形状に製造することができる。
本実施例では、検出ヒータ5が形成された領域の引張性絶縁膜12aを除去しているが、補助ヒータ6が形成された領域は引張性絶縁膜12aを残した構造としている。この理由は、検出ヒータ5は温度が高く熱ストレスが大きくなるが、補助ヒータ6は検出ヒータ5に比べて温度が低く熱ストレスの影響が小さいためである。補助ヒータ6の温度を高く設定した場合は、補助ヒータ6が形成される領域においても引張性絶縁膜11bを除去するなど、適宜除去範囲を調整することができる。
本実施例では、図4Aに示したように、検出ヒータ5が配置された領域Bの引張性絶縁膜12aをすべて除去した構成としているが、検出ヒータ5の下部に部分的に引張性絶縁膜12aを残した構成としても良い。ここで、引張性絶縁膜12aを部分的に残すとは、引張性絶縁膜12aを2層以上設けた場合に、全ての引張性絶縁膜12aにおいて検出ヒータ形成領域対応部分12a−1を除去する必要はなく、領域Bが圧縮性になっていれば、検出ヒータ形成領域対応部分12a−1が除去されない引張性絶縁膜12aの層があってもよいことを意味する。或いは、引張性絶縁膜12aを部分的に残すとは、1層又は複数層からなる引張性絶縁膜12a少なくとも1層の膜厚が薄くなるように、構成されることを意味する。
検出ヒータ5の下部の引張性絶縁膜12aをどの程度除去するかは、熱式センサ装置100が適用されるシステムの要求仕様に応じて設計可能である。また本実施例では、引張性絶縁膜12aを検出ヒータ5の領域B外の全面に形成した構成としているが、領域Bの外側において引張性絶縁膜12aが部分的に除去された部分があっても良い。つまり、検出ヒータ5の上層、下層の絶縁膜の圧縮化に伴う応力を吸収できる程度に引張性となっていれば、本発明の効果が得られる。
本実施例では、薄膜部4を形成する絶縁膜において、部分的に除去される引張性絶縁膜12aは圧縮性絶縁膜11a、11b、11cに挟まれるように形成している。この理由は、薄膜部4における中間層に近い層において部分的に除去された膜が介在する構成にすることで、薄膜部4の平面位置による反りモーメントの変化が小さくなり、より凹凸のない平坦な薄膜部4を形成することができるからである。
本実施例では、検出ヒータ5や補助ヒータ6などの発熱体の下層側に引張性絶縁膜12aを形成した構造としているが、これらの発熱体の上層側に引張性絶縁膜12aを形成して、発熱体が形成される領域の引張性絶縁膜12aを部分的に除去した構造としても良い。この場合、プラズマCVD法などを用いた窒化シリコン膜を用いることができる。
本実施例では、薄膜部4を形成する引張性絶縁膜12aの材料として窒化シリコン膜を用いたが、窒化シリコン膜に限定されるものではなく、引張応力を備えた材料であれば同様な構成にすることができる。例えば窒化アルミニウムなども引張性絶縁膜12aの材料として用いることができる。
窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜で形成した薄膜部4の内部応力は温度によって変化する。
図4Bは、薄膜部4、検出ヒータ5、引張性領域A及び圧縮性領域Bを基板2の基板面(絶縁膜形成面)に平行な仮想平面に投影した図である。
(a)では、検出ヒータ5が位置する領域Bの引張性絶縁膜12aは、方形に除去される。引張性絶縁膜12aを方形に除去すると、角部において応力集中が発生しやすくなる。このため、(b)や(c)のように、除去する形状(領域Bの形状)を多角形や円形とすることで、角部における応力集中を低減し、薄膜部4の強度低下を抑制できる。
なお、図4Bに示す領域Bの形状は、矛盾しない範囲内で、後述する実施例に適用できる。
図5は、本発明に係るセンサ素子の一実施例における応力の温度依存性を示す図である。図5では、単結晶シリコン基板2に形成した薄膜部4の温度と内部応力との関係を示している。
図5に示すように単結晶シリコンで形成した基板2に形成した薄膜部4は、温度の上昇に伴い引張応力(+σ)となり、温度が低下すると圧縮応力(−σ)が強くなる特性がる。引張応力となる高温域であれば薄膜部4は平坦となるが、温度が低下すると圧縮性が強くなり薄膜部4に反りが生じる。
図5に示した破線Aは低温側(室温)において引張性を強めた薄膜構造の内部応力の温度特性であり、図4に示した本実施例における領域Aの薄膜構造に相当する。領域Aでの薄膜構造の場合、低温側および高温側において引張性を維持している。
実線Bは圧縮性を強めた薄膜構造の内部応力の温度特性であり、図4に示した本実施例における領域Bの薄膜構造に相当する。領域Bでの薄膜構造の場合、高温側で引張性、低温側(室温)で圧縮性となる。
本実施例の薄膜部4は、上記の破線A及び実線Bの特性を持つ絶縁膜を組み合わせた構成である。低温側(室温)において圧縮性となる絶縁膜と引張性となる絶縁膜が互いにキャンセルしあうことで空洞部全体の応力が引張性を維持できる構成になる。
[実施例2]
図6は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例2)に係る断面図である。実施例1と同様な構成には、同じ符号を付し、説明を省略する。本実施例のセンサ素子20について、以下説明する。
図6は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例2)に係る断面図である。実施例1と同様な構成には、同じ符号を付し、説明を省略する。本実施例のセンサ素子20について、以下説明する。
本実施例では、3層の窒化シリコン膜Si3N4を設けた構成について説明する。
単結晶シリコンから成る基板2の表面に圧縮性絶縁膜21aを形成する。圧縮性絶縁膜21aは、主に酸化シリコン(SiO2)からなり、熱酸化膜やCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成することができる。
圧縮性絶縁膜21a上には、引張性絶縁膜22aが形成される。引張性絶縁膜22aとしては、例えばCVD法により形成した窒化シリコン膜(Si3N4)を用いることができる。引張性絶縁膜22aは空洞部3上を完全に覆うように均一な膜厚で形成している。
引張性絶縁膜22a上には同様な手法で酸化シリコンを材料とした圧縮性絶縁膜21bが形成される。
圧縮性絶縁膜21b上には窒化シリコンからなる引張性絶縁膜22bが形成される。引張性絶縁膜22bは、検出ヒータ5が形成される領域Bに対応する部分(検出ヒータ形成領域対応部分)12a−1がエッチングにより部分的に取り除かれる。
次に同様な方法で酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜21cを形成する。圧縮性絶縁膜21cの表面はCMP(Chemical mechanical polishing)などにより必要に応じて平坦化処理される。
次に、金属膜をスパッタ法などにより形成しパターニングすることにより検出ヒータ5と補助ヒータ6を形成する。本実施例では金属膜として、高融点材料であり抵抗温度係数が高いモリブデン(Mo)を用いる。
次に検出ヒータ5および補助ヒータ6を保護するために、プラズマCVD法などを用いて酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜21dを形成する。
圧縮性絶縁膜21d上には引張性絶縁膜22cを形成する。引張性絶縁膜22cとしては、プラズマCVD法により形成した窒化シリコンを用いることができる。
最後に、圧縮性絶縁膜21eを同様な手法で形成する。
検出ヒータ5及び補助ヒータ6が位置する基板2には、水酸化カリウム(KOH)などを用いて異方性エッチングすることにより空洞部3が形成される。
本実施例の圧縮性絶縁膜21b、引張性絶縁膜22b、圧縮性絶縁膜21c及び圧縮性絶縁膜21dは、実施例1の圧縮性絶縁膜11a、引張性絶縁膜12a、圧縮性絶縁膜11b及び圧縮性絶縁膜11cに対応する。さらに本実施例では、引張性絶縁膜22a及び引張性絶縁膜22cが追加されるために、最下層の圧縮性絶縁膜21a及び最上層の圧縮性絶縁膜21eが追加される。
本実施例においても、引張性絶縁膜12bが部分的に除去されることで、検出ヒータ5が形成された領域Bが他の領域Aに比べ圧縮性を強めた構成となる。つまり、本実施例においても、検出ヒータ5が形成される領域Bの圧縮性絶縁膜(酸化シリコン膜)の比率を他の部分Aに比べ増加させている。引張性絶縁膜12bを部分的に除去することで、検出ヒータ5が形成される領域Bは圧縮性(−σ)が強くなり、薄膜部4のその他の領域Aは引張性(+σ)が強められている。すなわち、空洞部3に設けられた薄膜部4内に、圧縮性領域(圧縮性薄膜部)Bと引張性領域(引張性薄膜部)Aとが形成され、圧縮性領域(圧縮性薄膜部)Bに検出ヒータ5が配置されている。こうすることで、検出ヒータ5が形成された薄膜部4の絶縁膜の膨張にともなう形状変化を、周囲の引張性を強くした絶縁膜により相殺することができ、薄膜部4を平坦な形状とすることができる。
本実施例においては、空洞部3上の領域を完全に覆う引張性絶縁膜22aと引張性絶縁膜22cを備える構成とした。また、検出ヒータ5は、上層側の引張性絶縁膜22cと下層側の引張性絶縁膜22aとの間に介在する構成とした。引張性絶縁膜22a,22cは窒化シリコンで形成されるため外部から浸入する水分や酸素などを遮断する効果があり、これにより、検出ヒータ5を酸化や腐食から保護する効果を高めることができる。
本実施例においては、引張性絶縁膜22a,22cと、引張性絶縁膜22a,22cを設けるために追加された圧縮性絶縁膜21a及び圧縮性絶縁膜21eに係る構成が実施例1と相違しており、それ以外の構成は、実施例1と同様に構成することができる。
また本実施例では、中間層に位置する引張性絶縁膜22bを部分的に除去した窒化シリコン膜で形成している。この場合、薄膜部4の積層方向の中心に近い膜を部分的に除去した構成となるため、薄膜部4の平面位置における反りモーメントの変化が小さくなり、より凹凸のない平坦な薄膜を形成することができる。
[実施例3]
図7Aは、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例3)に係る断面図である。
図7Aは、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例3)に係る断面図である。
本実施例は、実施例2に対してさらに構成を追加したものであり、実施例2と異なる構成及び効果について説明する。実施例1及び実施例2と同様な構成については、実施例1及び実施例2と同じ符号を付し、説明を省略する。また同じ符号を付した構成について、他の実施例と異なる部分については、その都度説明する。なお補助ヒータ6は必須の構成ではないため、図7では記載を省略しているが、実施例1及び実施例2と同様に補助ヒータ6を設けてもよい。本実施例のセンサ素子30について、以下説明する。
引張性絶縁膜22bは、検出ヒータ5の領域において部分的に除去される。本実施例では、薄膜部4の引張性絶縁膜22bが除去された領域Bと、引張性絶縁膜22bが形成された領域Aとの間に緩衝領域Cを設けている。緩衝領域Cは、領域Aと領域Bとの境界における急激な膜質変化を緩和するものであり、検出ヒータ5に近づくに従い引張性絶縁膜22bを徐々に除去した構造を備えている。具体的には、緩衝領域Cにおいて、引張性絶縁膜12bにスリットや孔を設けることで形成することができる。例えば、スリットの幅や孔の径又は幅を変えたり、スリットや孔の間隔を変えたりすることで、急激な膜質変化を緩和する。
上記構成による効果について説明する。熱式センサ装置100が使用されるシステム環境では、圧力変動や粒子衝撃などによりセンサ素子30の薄膜部4に外力が働く場合がある。薄膜部4に外力が働くと絶縁膜に応力が生じる。特に、薄膜部4上において膜質が変化する箇所は撓みによる応力集中により破壊しやすくなる。これに対して、領域Aと領域Bとの間の膜質を徐々に変化させることで応力集中を緩和し、薄膜部4の強度低下を抑制することができる。
図7Bは、薄膜部4、検出ヒータ5、引張性領域A、圧縮性領域B及び緩衝領域Cを基板2の基板面(絶縁膜形成面)に平行な仮想平面に投影した図である。
緩衝領域Cを構成するスリットや孔の形状の具体例として、図7Bに示すような形状が考えられる。しかしスリットや孔の形状は、図7Bに示す形状以外の形状であってもよい。図7Bに示すように、領域Aと領域Bとの境界にスリット又は孔により引張性絶縁膜を除去した緩衝領域Cを設けることによって、領域Aと領域Bとの境界における応力集中を緩和できる。
なお、図7Bに示す緩衝領域Cの形状は、矛盾しない範囲内で、後述する実施例に適用できる。特に、図4Bで説明した領域Bの形状(b),(c)と組み合わせることで、応力集中を緩和する効果が向上する。
[実施例4]
図8は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例4)に係る断面図である。
図8は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例4)に係る断面図である。
本実施例は、実施例2を変更したものであり、実施例2と異なる構成及び効果について説明する。実施例1〜3と同様な構成については、実施例1〜3と同じ符号を付し、説明を省略する。また同じ符号を付した構成について、他の実施例と異なる部分については、その都度説明する。なお補助ヒータ6は必須の構成ではないため、図8では記載を省略しているが、実施例1及び実施例2と同様に補助ヒータ6を設けてもよい。本実施例のセンサ素子40について、以下説明する。
本実施例は、検出ヒータ5が比較的大きなパターンである場合に有効な構成である。本実施例では、薄膜部4の検出ヒータ5が形成された領域Bにおいて、引張性絶縁膜22bが一部残されている。すなわち本実施例では、引張性絶縁膜22bの構成が一部で実施例2と相違している。検出ヒータ5の形成領域が広くなると、圧縮性とすべき領域も広がる。そうすると、検出ヒータ5の周辺の領域Aが狭くなり、検出ヒータ5の領域Bの圧縮性の歪を十分に吸収しきれなくなる。
そこで本実施例では、検出ヒータ5の領域Bにおいて、検出ヒータ5がパターニングされた直下を除いて引張性絶縁膜12bを設けている。言い換えれば、検出ヒータ5がパターニングされた直下の引張性絶縁膜12bを除去している。つまり、薄膜部4を上面から見たときに検出ヒータ5と引張性絶縁膜12bとが重ならないようにしている。すなわち、検出ヒータ5と引張性絶縁膜12bとを図1と同様な平面図に投影した場合に、検出ヒータ5を構成する金属パターンの間に窒化シリコンで構成される引張性絶縁膜12bが設けられている。
本実施例の構成により、検出ヒータ5が形成された部位の薄膜部4の圧縮性を増加させると共に、圧縮化に伴う歪を吸収する領域Cを確保することができる。
[実施例5]
図9は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例5)に係る断面図である。
図9は、本発明の熱式センサ装置に用いられるセンサ素子の一実施例(実施例5)に係る断面図である。
本実施例では、圧縮性絶縁膜となる酸化膜の圧膜化により、検出ヒータ5が形成された領域Bの圧縮性を他の領域Aに比べて強める。実施例1〜4と同様な構成については、実施例1〜4と同じ符号を付し、説明を省略する。また同じ符号を付した構成について、他の実施例と異なる部分については、その都度説明する。なお補助ヒータ6は必須の構成ではないため、図9では記載を省略しているが、実施例1及び実施例2と同様に補助ヒータ6を設けてもよい。本実施例のセンサ素子50について、以下説明する。
本実施例では、単結晶シリコンから成る基板2の表面に圧縮性絶縁膜51aを形成する。圧縮性絶縁膜51aとしては、主に酸化シリコンからなり熱酸化膜やCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成することができる。
圧縮性絶縁膜51a上には、引張性絶縁膜52aが形成される。引張性絶縁膜52aとしては、例えばCVD法により形成した窒化シリコン膜を用いることができる。引張性絶縁膜52aは空洞部3上を完全に覆うように均一な膜厚で形成している。
引張性絶縁膜52a上には同様な手法で酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜51bを形成する。
次に、金属膜をスパッタ法などにより形成し、パターニングすることにより検出ヒータ5及び補助ヒータ6を形成する。次に検出ヒータ5及び補助ヒータ6を保護するために、プラズマCVD法などを用いて酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜51cを形成する。圧縮性絶縁膜51cは検出ヒータ5が形成された領域を残して除去される。
次に引張性絶縁膜52bを形成する。引張性絶縁膜52bとしては、プラズマCVD法により形成した窒化シリコンを用いることができる。
最後に、酸化シリコンからなる圧縮性絶縁膜51dを同様な手法で形成する。
本実施例では、検出ヒータ5が形成された領域Bの圧縮性絶縁膜(酸化シリコン)を他の領域に比べ厚く形成した構成である。つまり、絶縁膜で形成された薄膜部4の合成応力が他の領域Aに比べて部分的に圧縮性となる圧縮性領域Bが設けられ、この圧縮性領域Bに検出ヒータ5を配置している。これにより、検出ヒータ5が形成された領域Bを他の領域Aに比べて圧縮性とし、他の領域Aは引張性を強くすることが可能である。
本実施例の構成では、圧縮性絶縁膜が厚く形成された領域Aと圧縮性絶縁膜が薄く形成された領域Bとで、薄膜部4を形成する絶縁膜全体の厚みが異なる。そのため、薄膜部4の表面に突部(厚膜部)53が形成される。突部(厚膜部)53の段差部53aには前述したような外力による応力集中が発生しやすい。そのため、段差部53aを高さが緩やかに変化する段差となるように形成し、応力集中を緩和することが望ましい。具体的には、既知の手法であるSOG(Spin on Glass)、エッチバック、CMP等により段差部を緩和し緩やかに膜厚が変化させることができる。
本実施例では、検出ヒータ5の上層(領域B)の圧縮性絶縁膜51cを残して他の領域Aの圧縮性絶縁膜51cを取り除いた構成について説明したが、検出ヒータ5の下層の圧縮性絶縁膜51bを用いて同様な構成とすることも可能である。つまり検出ヒータ5が形成された領域Bにおいて、他の領域Aよりも圧縮性絶縁膜51bが厚く形成されていれば、本発明の効果が得られる。
また本実施例で説明した構成において、領域Aにおいて圧縮性絶縁膜51c又は圧縮性絶縁膜51bを完全に除去するのではなく、領域Bにおける圧縮性絶縁膜51c又は圧縮性絶縁膜51bの膜厚に対して領域Aにおける圧縮性絶縁膜51c又は圧縮性絶縁膜51bの膜厚を薄くする構成でも、本発明の効果が得られる可能性がある。
上述した各実施例により、以下の熱式センサ装置が得られる。
(1)基板2に形成した空洞部3を絶縁膜11a〜11d,12a〜12c,21a〜21e,22a〜22c,51a〜51d,52a,52bで覆った薄膜部4と、薄膜部4に形成した発熱体5と、を備えた熱式センサ装置において、薄膜部4における前記絶縁膜に部分的に圧縮性を強めた圧縮性領域Bが設けられ、圧縮性領域Bに発熱体5が配置される。
(2)(1)において、圧縮性領域Bの周辺の前記絶縁膜に引張性領域Aが形成される。
(3)(2)において、前記絶縁膜の空洞部3の上を覆う部分は、室温において基板2に対して圧縮性となる圧縮応力膜11a〜11d,21a〜21e,51a〜51dと、基板2に対して引張性となる引張応力膜12a〜12c,22a〜22c,52a,52bとからなり、圧縮性領域Bにおいて前記引張応力膜が部分的に除去されている。
(4)(3)において、前記絶縁膜の前記部分は、発熱体5の下層側に形成された下層側引張応力膜22aと、発熱体5の上層側に形成された上層側引張応力膜22cと、下層側引張応力膜22aと上層側引張応力膜22cとの間に形成された中間引張応力膜22bと、を備え、圧縮性領域Bにおいて中間引張応力膜22bが部分的に除去されている。
(5)(4)において、中間引張応力膜22bは、上層引張応力膜22c及び下層側引張応力膜22aよりも厚く形成される。
(6)(3)において、前記絶縁膜の前記部分は、引張応力膜22bがスリット状に除去された領域Cを備える。
(7)(3)において、引張応力膜12aは、圧縮性領域Bにおいて、多角形または円形に除去されている。
(8)(3)において、圧縮応力膜11a〜11d,21a〜21e,51a〜51dは酸化シリコンを主とする絶縁膜であり引張応力膜は窒化シリコン12a〜12c,22a〜22c,52a,52bを主とする絶縁膜である。
(9)(3)において、発熱体5は金属材料である。
(1)基板2に形成した空洞部3を絶縁膜11a〜11d,12a〜12c,21a〜21e,22a〜22c,51a〜51d,52a,52bで覆った薄膜部4と、薄膜部4に形成した発熱体5と、を備えた熱式センサ装置において、薄膜部4における前記絶縁膜に部分的に圧縮性を強めた圧縮性領域Bが設けられ、圧縮性領域Bに発熱体5が配置される。
(2)(1)において、圧縮性領域Bの周辺の前記絶縁膜に引張性領域Aが形成される。
(3)(2)において、前記絶縁膜の空洞部3の上を覆う部分は、室温において基板2に対して圧縮性となる圧縮応力膜11a〜11d,21a〜21e,51a〜51dと、基板2に対して引張性となる引張応力膜12a〜12c,22a〜22c,52a,52bとからなり、圧縮性領域Bにおいて前記引張応力膜が部分的に除去されている。
(4)(3)において、前記絶縁膜の前記部分は、発熱体5の下層側に形成された下層側引張応力膜22aと、発熱体5の上層側に形成された上層側引張応力膜22cと、下層側引張応力膜22aと上層側引張応力膜22cとの間に形成された中間引張応力膜22bと、を備え、圧縮性領域Bにおいて中間引張応力膜22bが部分的に除去されている。
(5)(4)において、中間引張応力膜22bは、上層引張応力膜22c及び下層側引張応力膜22aよりも厚く形成される。
(6)(3)において、前記絶縁膜の前記部分は、引張応力膜22bがスリット状に除去された領域Cを備える。
(7)(3)において、引張応力膜12aは、圧縮性領域Bにおいて、多角形または円形に除去されている。
(8)(3)において、圧縮応力膜11a〜11d,21a〜21e,51a〜51dは酸化シリコンを主とする絶縁膜であり引張応力膜は窒化シリコン12a〜12c,22a〜22c,52a,52bを主とする絶縁膜である。
(9)(3)において、発熱体5は金属材料である。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1,20,30,40,50…センサ素子、2…基板、3・・・空洞部、4・・・薄膜部、5・・・検出ヒータ、6・・・補助ヒータ、7a〜7d・・・電極パッド、8a〜8c・・・抵抗、9a・・・差動増幅器、10a〜10c・・・抵抗、11a〜11d,21a〜21e,51a〜51d・・・圧縮性絶縁膜、12a〜12c,22a〜22c,52a,52b・・・引張性絶縁膜、100…熱式センサ装置、A…引張性領域、B…圧縮性領域。
Claims (9)
- 基板に形成した空洞部を絶縁膜で覆った薄膜部と、前記薄膜部に形成した発熱体と、を備えた熱式センサ装置において、
前記薄膜部における前記絶縁膜に部分的に圧縮性を強めた圧縮性領域が設けられ、前記圧縮性領域に前記発熱体を配置したことを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項1に記載の熱式センサ装置において、
前記圧縮性領域の周辺の前記絶縁膜に引張性領域が形成されることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項2に記載の熱式センサ装置において、
前記絶縁膜の前記空洞部の上を覆う部分は、室温において前記基板に対して圧縮性となる圧縮応力膜と、前記基板に対して引張性となる引張応力膜とからなり、前記圧縮性領域において前記引張応力膜が部分的に除去されていることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項3に記載の熱式センサ装置において、
前記絶縁膜の前記部分は、前記発熱体の下層側に形成された下層側引張応力膜と、前記発熱体の上層側に形成された上層側引張応力膜と、前記下層側引張応力膜と前記上層側引張応力膜との間に形成された中間引張応力膜と、を備え、前記圧縮性領域において前記中間引張応力膜が部分的に除去されていることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項4に記載の熱式センサ装置において、
前記中間引張応力膜は、前記上層側引張応力膜及び前記下層側引張応力膜よりも厚く形成されることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項3に記載の熱式センサ装置において、
前記絶縁膜の前記部分は、前記引張応力膜がスリット状に除去された領域を備えることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項3に記載の熱式センサ装置において、
前記引張応力膜は、前記圧縮性領域において、多角形または円形に除去されていることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項3に記載の熱式センサ装置において、
前記圧縮応力膜は酸化シリコンを主とする絶縁膜であり、前記引張応力膜は窒化シリコンを主とする絶縁膜であることを特徴とする熱式センサ装置。 - 請求項3に記載の熱式センサ装置において、
前記発熱体は金属材料であることを特徴とする熱式センサ装置。
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