次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。各図を通して同一の符号は、同一の部材、または対応する部分を示している。ここでは一例として、液体吐出装置が、インクなどの記録液を被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録装置として構成されているものとする。したがって液体吐出ヘッドは、インクジェット記録ヘッドであり、これには、インクジェットヘッドカートリッジ、インクジェットヘッド、インクジェットカートリッジ、インクカートリッジ、ペンカートリッジ等が包含される。もちろん、本発明に基づく液体吐出装置は、インクジェット記録装置に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の一形態の液体吐出装置を示しており、(a)は外観を示す斜視図であり、(b)は内部の機構部分の概要を示す斜視図である。図1(a)に示すように、液体吐出装置11は、筺体30による略直方体の外観形状を有する。筺体30の上面には、内部の機構部、特に液体吐出ヘッド13にアクセスするためのアクセスドア31と開閉式の給紙トレイカバー34が設けられている。図1(a)は、アクセスドア31及び給紙トレイ34がいずれも閉じられている状態を示している。さらに筺体30の上面には、ユーザに対して情報を表示し、ユーザからのこの液体吐出装置11に対するコマンドなどが入力される操作表示部32が設けられている。操作表示部32は、例えばLED(発光ダイオード)などからなる表示素子と、プッシュボタンなどからなる入力素子とを備えている。特に入力素子には、プッシュボタンであるレジュームボタン36が含まれている。
図1(b)は、筺体30を取り除いた状態での液体吐出装置11を示している。液体吐出装置11は、キャリッジ12に交換可能に保持された液体吐出ヘッド13と、吐出されるべき液体を液体吐出ヘッド13に供給する液体流通路14と、吐出されるべき液体を収容する複数の液体タンク15と、を備えている。液体タンク15は、後述するように液体を補充可能な構成であり、液体タンク15の図示上面は、開閉式のタンクカバー33で覆われている。液体タンク15に隣接して後述のバルブユニット24も設けられている。さらに液体吐出装置11には、被記録媒体を給紙し搬送する構成として、給紙ローラ(不図示)、搬送ローラ16、排紙ローラ(不図示)が設けられている。キャリッジ12は、液体吐出装置11のシャーシ17に取り付けられたレール18によって案内されて、後述するキャリッジモータにより駆動され、図示X方向に往復移動する。これにより、キャリッジ12は被記録媒体に対して相対的に移動可能である。これに対し液体タンク15はシャーシ17に固定されている。
図2は、図1に示した液体吐出装置11での液体タンク15から液体吐出ヘッド13までの液体の流路を構成する部品のみを表している。ここでは液体吐出装置11がインクジェット記録装置であるものとしており、吐出されるべき液体は、各色の記録液、具体的にはブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクの4色の記録液である。そのため液体タンク15として、ブラック用タンク151、シアン用タンク152、マゼンタ用タンク153及びイエロー用タンク154の4つが設けられている。各液体タンク15には、液体流通路14を構成するチューブと、液体タンク15内を大気に連通させる大気連通路25を形成するチューブとが取り付けられている。大気連通路25の他端は、大気に開放した大気開放口23(図3参照)となっている。液体吐出ヘッド13はキャリッジ12に搭載されて図示X方向に往復移動するのに対し、液体タンク15はシャーシ17に固定されているから、液体流通路14を構成するチューブは、キャリッジの往復運動に追従できる長さと柔軟性を有する必要がある。各液体タンク15の上部には、液体注入口21が開口として設けられており、この液体注入口21に対してタンクキャップ22が取り付けられている。ユーザは、タンクカバー33を開け、タンクキャップ22を取り外すことで、液体タンク15内へ必要に応じて液体を注入することが可能となる。
液体流通路14での液体タンク15と液体吐出ヘッド13の間、及び、大気連通路25での液体タンク15と大気開放口23の間には、液体または空気の連通を遮断する弁を有するバルブユニット24が設けられている。バルブユニット24としては、ブラック側バルブユニット24(図示右側)と、カラー側バルブユニット24(図示左側)の2個が設けられている。ブラック側バルブは、ブラック用タンク151に接続されるインク流通路及び大気連通路25を遮断する。一方、カラー側バルブユニット24は、シアン用タンク152、マゼンタ用タンク153及びイエロー用タンク154の各々に接続されるインク流通路及び大気連通路25を遮断する。なお、図に示したものでは、液体吐出ヘッド13としてもブラック用液体吐出ヘッド13(図示右側)とカラー用液体吐出ヘッド13(図示左側)の2個が設けられている。ブラックインクはブラック用液体吐出ヘッド13に供給され、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクはカラー用液体吐出ヘッド13に供給されるようになっている。
図3は、液体タンク15と液体吐出ヘッド13の位置関係、特に垂直方向での位置関係を示している。液体吐出装置においては、液体吐出ヘッド13に設けられた吐出口51から液体が自然流下して垂れ落ちることを防ぐため、吐出口51において液面に負圧(液多吐出ヘッド側に引き込む方向の圧力)が加わるように構成される必要がある。そこでこの液体吐出装置11では、液体吐出ヘッド13の吐出口51に対して、液体タンク15の気液交換位置52を、高さ方向で図中のHだけ低い位置に設けている。すなわち高さHに相当する水頭差により吐出口51に負圧を掛ける構成を取っている。図中のHmは、吐出口51と液体タンク15内の収容部54における液面との間の水頭を示している。また、液体タンク15の下部にはバッファ室53と呼ばれる空間を設けている。バッファ室53は、液体注入口21と液体タンク15の液体収容部54内の空気が気圧変動や温度変化により膨張した場合に、押し出されたインクを溜めることができるものであり、大気連通路25を通って液体が液体タンク15から漏出することを防いでいる。
図4は、液体吐出装置11において液体吐出ヘッド13を交換する手順を説明している。液体吐出ヘッド13を交換する場合には、ユーザは、液体吐出装置11の筺体30に設けられたアクセスカバー31及び給紙トレイカバー34を開け、さらにアクセスカバー31を開けたことによってアクセス可能となったタンクカバー33も開ける。タンクカバー33を開けることにより、以下に述べるようにバルブユニット24によって液体吐出ヘッド13への液体の供給が遮断され、大気連通路25での空気の流通も遮断される。ユーザは、アクセスカバー31による開口を介して液体吐出装置11内にアクセスし、液体の供給を遮断した状態で液体吐出ヘッド13を交換する。なお、キャリッジ12の往復移動範囲の両端部(図4において各液体タンク15の背面側)ではキャリッジ12を覆うように覆い板35が設けられているので、この位置にキャリッジ12があるときにはユーザはキャリッジ12を操作できない。キャリッジ12の往復移動範囲の両端部にあるときは、液体吐出ヘッド13の交換が不可能となる。
次に、図5を用いてバルブユニット24の構成を説明する。図5(a)はバルブユニット24を示す斜視図であり、図5(b)はバルブユニット24の分解斜視図である。バルブユニット24は、液体流通路14及び大気連通路25をそれぞれ構成するチューブ81を挟持するように構成されており、保持部材82、変位部材83及びカム部材84を備えている。保持部材82はチューブ81を保持する。変位部材83は、図中のZ方向に可動であってチューブ81を押し潰し、チューブ81を閉塞させることができる。カム部材84は、変位部材83に対して摺擦するカム面と、レバー形状の係止部86(図6)とを有し、係止部86がタンクカバー33に嵌合することによりタンクカバー33に係止されている。ユーザがタンクカバー33を開けるときにはタンクカバー33はその端部を軸として回転するが、カム部材84は、タンクカバー33の回転方向に可動である。カバー部材85は、バルブユニット24を覆うものであって、保持部材82に対して固定されており、カム部材84を回転可能に支持する。
図6は、バルブユニット24が液体流通路14及び大気連通路25を閉塞する動作を示しており、(a)はバルブ開放状態を示し、(b)はバルブ開放状態からバルブ閉塞状態への移行過程を示し、(c)はバルブ閉塞状態を示している。カム部材84はその係止部86によってタンクカバー33に係止しているので、図6において係止部86の向きは、タンクカバー33の向きを示すことになる。また図中の角度θは、カム部材84のカム面と変位部材83とが接する位置でのカム面の接平面とZ方向とのなす角を示している。図6(a)に示すように変位部材83がチューブ81を押し潰していないバルブ開放状態にあるとき、タンクカバー33は略水平状態にある。この状態からタンクカバー33を図4に示したように開けると、カム部材84は、図6において反時計周りに回動する。その結果、図6(b)に示したように、カム部材84のカム面のうち回転中心に対して凸な部分が変位部材83と当接することとなり、変位部材83が−Z方向に変位し、チューブ81が潰される。タンクカバー33が完全に開けられると、図6(c)に示すようにカム部材84がさらに回転して変位部材83がチューブ81に向かってさらに変位し、それにより、チューブ81が十分に潰されて液体流通路14、大気連通路25ともに閉塞される。開いた状態のタンクカバー33が閉められるときは、カム部材84が図6において時計回りに回動するので、変位部材83が+Z方向に変位することとなって、チューブ81が元の形状に戻る。チューブ81が元の形状に戻ったことにより、液体及び空気がそれぞれ液体流通路14及び大気連通路25を流れることができるようになる。液体吐出装置11では、このようにタンクカバー33の開閉に連動して液体流通路14及び大気連通路24を遮断することができ、液体タンク15への液体の供給時や液体吐出ヘッド13の交換時における液体の漏出を防止できる。したがってタンクカバー33及びバルブユニット24は、協働して、大気連通路25及び液体流通路14の少なくとも一方を遮断する遮断手段に該当することになる。
次に、液体吐出装置11の制御系の構成について、図7を用いて説明する。インクジェット記録装置として構成された液体吐出装置11は、外部のホストコンピュータ214からの記録データに応じて液体吐出ヘッド13の吐出口から液体を吐出するものである。ホストコンピュータ214には、プリンタドライバ2141がソフトウェアとしてインストールされている。プリンタドライバ2141は、ユーザによって記録動作の実行が命令された場合に、記録画像や記録画像品位等の記録情報を取りまとめて記録データとし、液体吐出装置11と通信する処理を実行する。
液体吐出装置11には、ホストコンピュータ214と接続して記録データ等のやり取りを行うインタフェース(I/F)部213が設けられ、インタフェース部213には、MPU(マイクロプロセッサユニット)201が接続している。MPU201は、液体吐出装置11の各部動作やデータの処理などを制御するプロセッサであり、制御手段として機能する。MPU201には、ROM(読出し専用メモリ)202、記憶部として機能するRAM(ランダムアクセスメモリ)203、液体吐出ヘッドドライバ207、キャリッジモータドライバ208、搬送モータドライバ209及び操作表示部32が接続する。さらにMPU201には、アクセスカバー31の開閉状態を示す信号が、アクセスカバー31が当接する位置で筺体30に設けられているセンサ210から入力する。ROM201には、MPU201によって実行されるプログラムやデータが格納され、特に、画像処理部2021として、画像処理を実行するためのプラグラムが格納されている。RAM203は、MPU201によって実行される処理に用いられるデータ及びホストコンピュータ214から受信したデータを一時的に記憶する。液体吐出ヘッドドライバ207は、MPU201からの制御によって液体吐出ヘッド13内の各吐出エネルギー発生素子(不図示)を駆動するための信号を生成し、液体吐出ヘッド13を駆動する。キャリッジモータドライバ208は、MPU201からの制御によって、キャリッジ12を駆動するキャリッジモータ204を制御する。搬送モータドライバ209は、MPU201からの制御によって、給紙ローラ、搬送ローラ16及び排出ローラの駆動・制御を行う。
次に、上述の構成を前提として、本発明が解決しようとする課題について説明する。上述の液体吐出装置11では、液体吐出ヘッド13と液体タンク15とがチューブ81で接続されており、正常に動作している際にはチューブ81内に記録液などの液体が存在する。また液体吐出ヘッド13に何かしらの不具合が生じて正常に記録できない場合には、ユーザは、液体吐出ヘッド13を交換する必要がある。しかしながらチューブ81内に液体が存在する状況において、大気連通路25及び液体流通路14の少なくとも一方を遮断しないまま液体吐出ヘッド13の取り外しを行うと、液体流通路14内の液体の逆流や、液体の漏れが懸念される。液体の漏れが発生すると機体の破損につながる恐れがある。また、液体の逆流については、そののち再度、液体を液体流通路14内に充填する必要があるため、無駄な液体の消費につながり、ユーザに対して不利益が生じる。この課題の解決策として、液体吐出ヘッドの交換での誤操作防止を機械的なインターロック構成で実現する方法があるが、上述した液体吐出装置11の構成では実現が容易ではない。以下では、液体吐出ヘッドの交換のことを単に「ヘッド交換」とも記載する。また、液体の漏れを防ぐための大気連通路25及び液体流通路14の少なくとも一方を遮断することに関し、大気連通路25を遮断する場合を例にして説明する。
そこで液体吐出装置11では、ヘッド交換を行うための複数回のユーザ操作に応答し、キャリッジ12をヘッド交換位置とは別の位置に移動させることで、大気連通路25の遮断操作をユーザに促すようにする。ここでユーザが遮断操作を行うことで、ヘッド交換位置にキャリッジ12を移動させる前に大気連通路25を遮断し、誤操作に伴う液体の漏出の防止という課題を解決する。しかしながら、ヘッド交換を行わないと液体吐出装置11自体が正常に動作しない状況下においてもユーザに対して複数回の操作を要求することは、利便性の低下につながってしまう。ヘッド交換を行わないと液体吐出装置11自体が正常に動作しない状況とは、例えば、液体吐出ヘッド13の未装着状態など、液体吐出装置11全体としてエラーになっている場合である。このような場合は、チューブ81内に液体が供給されておらず液体吐出ヘッド13の取り外しが行われても液体漏れ等の懸念がないから、複数回のユーザ操作に応答したキャリッジ12の動作によって大気連通路25の遮断操作を促す必要もない。逆に、大気連通路25の遮断操作を促すために複雑な操作をユーザに対して要求すると、ユーザにとっての液体吐出装置11の利便性が悪化してしまう。以下に説明する実施形態では、この課題を解決し、インターロック構造などの特別な機械的な構成を設けることなく、ヘッド交換に関連した誤操作を防止する。
以下、第1の実施形態として、上述した液体吐出装置11における液体吐出ヘッド13の交換について詳細に説明する。ここでは、大気連通路25の遮断操作をキャリッジ12の動作によってユーザに促すことで液体漏れを防止する方法と、大気連通路25の遮断操作を促す必要がない場合の液体吐出ヘッドの交換方法とについて順に説明する。ここで述べているヘッド交換が必要な場合とは、液体吐出ヘッド13が装着されていない状態や、液体吐出ヘッド13の故障等により液体吐出ヘッド13をMPU201側で認識できない場合等のエラーになった状態を指す。ヘッド交換が必要な状態のことを交換必要状態と呼ぶ。ここでは、ヘッド交換には、液体吐出ヘッド13が未装着である場合に新たな液体吐出ヘッド13をキャリッジ12に装着することも含まれる。交換必要状態では、液体吐出ヘッドの装着や交換操作を行わないかぎり、スキャン動作等の液体吐出ヘッド13を使用しない操作も含めて、液体吐出装置11が正常に動作しないため、ヘッド交換を容易に行わせる必要がある。その一方で、交換必要状態ではないときにユーザがヘッド交換を行う場合には、複数回のユーザ操作の応答として大気連通路25の遮断操作をユーザに促して遮断操作を行わせることで、誤操作による液体漏れを防止する。交換必要状態ではない状態において液体吐出ヘッドの交換を行う事例としては、例えば、液体吐出装置11としてはエラーにならないが、液体吐出ヘッドで何かしらの異常が発生して不吐等の不具合につながった場合が考えられる。
まず、特別な機械的構成を用いることなくヘッド交換における誤操作を防止する方法について説明する。ここでは、ヘッド交換が可能な状態にするために複数回のユーザ操作を必要とし、それに応答したキャリッジ12の動作によって大気連通路25の遮断操作をユーザに促すことで、誤操作の防止を実現する。図8は液体吐出ヘッド13の交換の処理を示すフローチャートである。
液体吐出装置11が正常に動作する場合の液体吐出ヘッド13の交換では、ステップ501において、ユーザはまずアクセスカバー31を開ける操作を行う(図4参照)。これはユーザが行う第1の操作となる。アクセスカバー31が開けられたことはセンサ210によって検知されるから、MPU201は、図8に示す処理を開始する。したがってセンサ210は、ユーザによる第1の操作を検出する第1の検出手段に該当する。このときはキャリッジ12を動作させていないため、キャリッジ12は、ホームポジションとして、往復移動するキャリッジ12の移動範囲内の右端(図4における右側の液体タンク15の背面の位置)に位置している。この位置は、図4に示すように覆い板35で覆われている位置であるので、ユーザは、キャリッジ12を操作することができず、そのため、不用意に液体吐出ヘッド13が取り外される可能性は低い。またアクセスカバー31の開閉はセンサ210によって検知されるから、アクセスカバー31を開けたときにキャリッジ12がユーザによって操作できる位置に存在した場合には、一旦、ユーザによって操作できない位置までキャリッジ12を退避させてもよい。
次にステップ502において、MPU201は、ヘッド交換が必要なエラーが発生中かどうかを判断する。ここでは正常な動作を行っていることを前提としているので、そのままステップ503に進み、MPU201は、ユーザ操作を待機する。ここでのユーザ操作は、例えば、操作表示部32に設けられたボタンの内の特定のもの(例えばレジュームボタン36)を長押し(例えば5秒間以上)することである。このボタンの長押しは、ユーザによる第2の操作である。ステップ503において第2の操作が行われたと判断したら、MPU201は、ステップ504において、ユーザに対してタンクカバー33の開放タイミングの通知のために、すなわち大気連通路25の遮断操作を促すために、第1の動作を実行する。ここでの第1の動作は、液体吐出ヘッド13を搭載したキャリッジ12を、その往復移動範囲の左側の端まで移動させることである。MPU201は、キャリッジ12を移動させるように、キャリッジモータドライバ208によりキャリッジモータ204を駆動する。上述したように、キャリッジ12の移動範囲内の左端も、ユーザがキャリッジ12を操作できない位置である。このようにキャリッジ12の移動動作を行うことは、操作表示部32の表現能力が乏しい構成においても、液体流通路14と大気連通路25を遮断するタンクカバー33の開放操作をユーザに促すためである。またこの第1の動作でも、大気連通路25が遮断される前に液体吐出ヘッド13が取り外されることを防止するため、ユーザが操作できない位置にキャリッジ12を移動させる。別の例では、MPU201は、キャリッジに対する移動動作ではなく、操作表示部32のLEDや液晶表示素子を用いてメッセージ等を表示し、ユーザに対して遮断動作を促してもよい。あるいはMPU201は、ホストコンピュータ214のプリンタドライバ2141を介し、ホストコンピュータ214に接続された表示装置(不図示)上にメッセージを表示し、ユーザに対して遮断動作を促してもよい。
続いてユーザは、ステップ505において、キャリッジ12の移動などによって大気連通路25の遮断操作を促されたことを確認し、インク流通路14及び大気連通路25を遮断するため、タンクカバー33を開放する。MPU201は、タンクカバー33を開放したことの通知を受けるために、ステップ506において、ユーザ操作を待機する。ここでのユーザ操作は、例えば、操作表示部32に設けられたボタンの内の特定のもの(例えばレジュームボタン36)を長押しすることである。長押しとは、一定の時間(例えば5秒間)以上、ボタンを押し続けることである。このボタンの長押しは、ユーザによる第3の操作である。ステップ506において第3の操作が行われたと判断したら、MPU201は、ステップ507において、第2の動作として、ユーザがキャリッジ12を操作可能な位置、すなわちユーザがヘッド交換が可能な位置にキャリッジ12を移動させる。ヘッド交換が可能な位置にキャリッジ12が移動したら、ユーザを液体吐出ヘッド13を交換し、これによって、本実施形態の液体吐出装置11での液体吐出ヘッド13の交換が完了する。この液体吐出装置11では、ユーザが上記の第1から第3の操作を順番に行うことで、ヘッド交換が可能な位置にキャリッジ12が移動する前にインク流通路14と大気連通路25を遮断することができ、交換時の誤操作を抑制できる。
次に、液体漏れ等の懸念がない状態であって、かつヘッド交換が必要な場合における、液体吐出ヘッド13の交換方法について説明する。液体漏れ等の懸念がある場合は、上述したように、複数回のユーザ操作を必要とし、タンクカバー33の開放操作をユーザに促すことで、誤操作を抑制する。それに対して液体漏れ等の懸念がない場合は、液体流通路14及び大気連通路25の各々の遮断操作を促す必要がないので、ユーザに対して簡単な手順で容易に液体吐出ヘッド13を交換させる。液体漏れ等の懸念がない状態であって、かつヘッド交換が必要な場合には、上述と同様にステップ501,502を実行する。ステップ502では、MPU201は、ヘッド交換が必要なエラーが発生すると判断して、直ちにステップ507に遷移し、ヘッド交換が可能な位置までキャリッジ12を移動させる。ヘッド交換が必要な状態では、ユーザがアクセスカバー31を開けるだけでヘッド交換が可能な位置までキャリッジが移動することとなり、ユーザは、アクセスカバー31を開けるという1つの操作だけで、容易にヘッド交換を行えるようになる。
以上の説明では、ユーザが行う第1の操作はアクセスカバー31を開けることであるとしたが、第1の操作はこれに限定されるものではない。液体吐出装置11が例えば開閉可能なスキャナユニットやADF(オートドキュメントフィーダ)を備えている場合には、スキャナユニットやADFを開ける操作を第1の操作としてもよい。また、第2及び第3の操作のために用いられるボタンは、ユーザによる第2及び第3の操作を検出する第2の検出手段に該当するものである。もっとも第2の検出手段はレジュームボタン36に限られるものではなく、ヘッド交換専用のボタンを操作表示部32に設けて使用するようにしてよい。さらに、ホストコンピュータ214にインストールされたプリンタドライバ2141により、ホストコンピュータ214に対するユーザの操作を第2及び第3の操作として扱ってもよい。
次に、第2の実施形態として、ヘッド交換での誤操作をさらに抑制した構成について説明する。本実施形態の液体吐出装置11では、第1の実施形態での複数回のユーザ操作に加え、タイムアウト時間を設定する。このタイムアウト時間によって、ヘッド交換を行おうとしたユーザがその操作の一部を行ったのちその後の操作を放置した際には再度最初の段階から操作が必要になる状態に遷移させる。それにより、第2の実施形態では、ヘッド交換での誤操作をさらに抑制する。図9は、第2の実施形態での処理を示すフローチャートである。図9に示す処理は、図8に示す処理に対し、さらにステップ601〜605を加えたものである。
図8に示した第1の実施形態の場合と同様に、ステップ501において、ユーザによる第1の操作、すなわちアクセスカバー31が開けられることによって処理が開始する。ステップ502においてMPU201は、ヘッド交換が必要なエラーが発生中かどうかを判断し、ヘッド交換が必要なエラーが発生しているときはステップ507に移行し、正常な動作を行っているときはステップ503に移行する。MPU201は、ステップ503においてユーザによる第2の操作を待機し、第2の操作が行われたと判断したら、ステップ504において、キャリッジ12を移動させることなどにより、タンクカバー33を開けることをユーザに促す第1の動作を実行する。タイムアウトにより後述するステップ605から戻ってきた場合には、キャリッジ12の位置がキャリッジ12の往復移動範囲の左端となっているので、その場合には、第1の動作としてキャリッジ12をホームポジション側に移動させる。MPU201は、タイムアウト判定のために、第1の動作の実行と同時に、タイマをスタートさせる。ユーザは、ステップ505において、液体流通路14及び大気連通路25を遮断するため、タンクカバー33を開放する。
次にMPU201は、タンクカバー33を開放したことの通知を受けるために、ユーザによる第3の操作を待機する。第2の実施形態では、ステップ505に引き続くステップ601において、MPU201は、タイマが予め設定された第1のタイムアウト時間(例えば10分)を経過したかどうかを判断する。第1のタイムアウト時間を経過していない場合、MPU201は、ステップ506において第3の操作が行われたかを判断し、第3の操作が行われていなければステップ601に戻り、第3の操作が行われていれば、ステップ507に移行する。一方、ステップ601において既に第1のタイムアウト時間を経過していた場合には、MPU201の処理はステップ503に戻る。言い換えれば、ユーザの第2の操作に応じて大気連通路25を遮断することをユーザに促したのち所定のタイムアウト時間を経過してもユーザが第3の操作を行わなかった場合には、第2の操作を待機する状態の直前の状態に処理が遷移する。これにより、ユーザに第2の操作からを再実行させる。この場合はユーザがタンクカバー33をまだ開けていないことも考えられるので、ここでは、ステップ503においてユーザからの第2の操作を待ち合わせた上で、ステップ504において第1の動作を実行し、ユーザによる第3の操作を待機する。
ヘッド交換が必要なエラーが発生していなくてステップ506において第3の操作が行われた場合、あるいは、ヘッド交換が必要なエラーが発生中であるとステップ502において判定した場合、次にステップ507が実行される。ステップ507では、MPU201は、第2の動作として、ユーザがキャリッジ12を操作可能な位置、すなわちユーザがヘッド交換が可能な位置にキャリッジ12を移動させる。ユーザはここでヘッド交換を行うこととなるが、MPU201は、タイムアウト判定のために、第2の動作の実行と同時に、タイマをスタートさせる。そしてMPU201は、ステップ602において、タイマが予め設定された第2のタイムアウト時間(例えば10分)を経過したかどうかを判断する。第2のタイムアウト時間を経過していない場合、MPU201は、ステップ603において予め定めた終了条件が成立しているか否かを判断する。終了条件とは、ヘッド交換のための処理を終了してもよいという条件であり、例えば、ヘッド交換がなされたことを液体吐出ヘッドドライバ207が検出したこと、あるいは、アクセスカバー31が閉じられたことをセンサ210が検出したことである。ヘッド交換が検出された場合、あるいはアクセスカバー31が閉じられたことを検出した場合は、終了条件を満たされており、これはタイムアウト処理の対象外であるから、MPU201は、そのままヘッド交換に関する処理をそのまま終了する。一方、ステップ602にタイムアウトとなった場合は、所定のタイムアウト時間内に終了条件が満たされなかった場合であり、MPU201は、ステップ604において、ヘッド交換が必要なエラーが発生中かどうかを再度判定する。ここでヘッド交換が必要なエラーが継続している発生している場合は、ステップ603に移行して、MPU201は、終了条件が成立しているかを再度確認する。結局、ヘッド交換が必要なエラーが継続して発生しているときは、ステップ602,604,603で循環することとなり、ヘッド交換位置にあるキャリッジ12が移動しないので、ユーザはそのままヘッド交換を行えることになる。ヘッド交換が終われば、あるいはアクセスカバー31が閉じられれば、ヘッド交換のための処理は終了する。一方、ステップ604においてヘッド交換が必要なエラーが発生していない場合には、MPU201は、ユーザに第2の操作からを再実行させるために、ステップ605においてキャリッジ12をホームポジションに戻した上で、ステップ503に戻る。ここでキャリッジ12をホームポジションに移動させるのは、キャリッジ12の位置をヘッド交換位置からユーザが操作できない位置とするためである。
第2の実施形態では、タイムアウト制御を導入して、ユーザが一定の時間以上、定められた操作を行わなかった場合にユーザに対して操作をやり直させることにより、さらにヘッド交換に関連した誤操作を抑制させることができる。その一方で、ヘッド交換が必要なエラーが発生しているときは、タイムアウト制御を行わずにキャリッジ12をヘッド交換位置に移動させることにより、利便性を損なうことなくユーザによるヘッド交換を可能にする。
以上説明した各実施形態の液体吐出装置11では、特別な機械的な機構を用いることなく例えばヘッド交換位置以外へのキャリッジの移動動作などによって、液体供給の遮断操作を行うことをユーザに促すことができる。これにより、液体吐出ヘッドの交換の誤操作を防止できて液体漏れなどを低減できる。また、ヘッド交換を必要とする場合などには、液体供給の遮断操作を促すことなくヘッド交換を可能とすることにより、ヘッド交換におけるユーザの利便性を向上させることができる。