JP2019194547A - ウイルス除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料中のウイルスを有効に除去する方法を提供する。【解決手段】一実施形態によると、ウイルス含有試料を、多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤と接触させて、前記ウイルス含有試料からウイルスを除去する方法であって、前記ウイルスは、サーコウイルス、白血病ウイルス、シミアンウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルスおよびシンドビスウイルスからなる群より選択される1種以上である方法が提供される。【選択図】 図1

Description

本発明は、吸着剤を用いて試料中のウイルスを除去する方法に関する。
血漿分画製剤やバイオ医薬品等の製造においては、生体由来の原料を使用するため、不純物を除去して目的物質を高純度で得ることが求められる。また、製造過程でウイルスが混入することも懸念されており、バイオ医薬品等の製造においては、ウイルス除去工程やウイルス不活化工程が必須である。ウイルスを不活化する方法としては、加熱処理法や化学薬品処理法等がある。また、ウイルスを除去する方法には、クロマトグラフィーによる方法、膜濾過法等があるが、近年は、ウイルス除去膜による膜濾過法が多く採用されている。この方法は、精製対象のタンパク質は膜を通過するがウイルスが通過できない条件を設定することによってウイルスを捕捉する方法である。
しかしながら、ウイルス除去膜による膜濾過法によっては十分に除去できないウイルスも存在する。例えば、ブタサーコウイルス(Porcine Circovirus:PCV)は、現在知られている最も小さなウイルスであり、その粒子径は約17.0〜20.7nmである。ブタサーコウイルスは、バイオ医薬品の製造過程で混入するリスクの高いウイルスの1つであり、実際に2010年には混入事例が報告されている。現在産業応用されている最も膜孔径の小さなウイルス除去膜(平均孔径15nm)を使用したとしても、ブタサーコウイルスを十分に除去することができない。したがって、多くのバイオ医薬品の製造において使用されている平均孔径19nm程度のウイルス除去膜を使用した場合にブタサーコウイルスを除去できないことは言うまでもない。さらに、ブタサーコウイルスは、低pH処理や加熱処理にも耐性を有する。
イオン交換体であるQ Sepharoseを使用してブタサーコウイルスDNAを吸着除去できたという報告はなされているが(非特許文献1)、さらなる検討が求められている。
Biotechnol. Prog., 2013, Vol.29, No.6, p1464-1471 Journal of Virological Methods, 2003, 114, p11-19 Journal of Virological Methods, 2007, 143, p95-103
上記のような背景のもと、試料中のウイルスを有効に除去できる方法が求められている。
本発明者らは、これまでに、核酸と強固に結合するリガンドとして知られているポリエチレンイミンについて研究を重ねてきた(非特許文献2および3)。本発明者はさらに鋭意検討した結果、ポリエチレンイミンをリガンドとして有する吸着剤が、ブタサーコウイルス等の種々のウイルスに対する吸着能を有することを見出し、本発明に至った。
本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] ウイルス含有試料を、多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤と接触させて、前記ウイルス含有試料からウイルスを除去する方法であって、前記ウイルスは、サーコウイルス、白血病ウイルス、シミアンウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルスおよびシンドビスウイルスからなる群より選択される1種以上である方法。
[2] 前記ウイルスがブタサーコウイルスである、[1]に記載の方法。
[3] 前記ポリエチレンイミンの質量平均分子量が500〜200,000である、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記ポリエチレンイミンが分岐鎖構造を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記ベース担体が架橋セルロース粒子である、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記多孔性粒子の平均細孔径が50〜250nmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記方法がpH4.0〜8.0の条件下で行われる、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記方法がクロマトグラフィーによって行われる、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記試料が抗体を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記抗体がモノクローナル抗体である、[9]に記載の方法。
[11] 多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤を含む、ウイルス含有試料からウイルスを除去するためのクロマトグラフィー用充填剤であって、前記ウイルスは、ブタサーコウイルス、マウス白血病ウイルス、シミアンウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルスおよびシンドビスウイルスからなる群より選択される1種以上であるクロマトグラフィー用充填剤。
[12] 前記ポリエチレンイミンが分岐鎖構造を有する、[11]に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
本発明によると、試料中のウイルスを有効に除去できる方法を提供することができる。
試験例5の結果を示す図。 試験例6の結果を示す図。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の一実施形態によると、ウイルス含有試料を、多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤と接触させて、ウイルス含有試料からウイルスを除去する方法が提供される。この方法によると、試料中のウイルスを吸着剤に吸着させることによって試料を精製することができる。
本発明の方法によると、従来除去することが困難であったブタサーコウイルス(以下、「PCV」とも称する)をはじめとするウイルスを除去することができる。除去可能なウイルスとしては、例えば、サーコウイルス(例えば、ブタサーコウイルス)、白血病ウイルス(例えば、異種指向性マウス白血病ウイルス)、シミアンウイルス(例えば、シミアンウイルス40)、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、パルボウイルス(例えば、ブタパルボウイルス)およびシンドビスウイルスが挙げられる。これらのうちの1種を除去できるか、あるいは2種以上を同時に除去することもできる。
1.吸着剤
以下、本発明で使用する吸着剤の各構成要素について、順に説明する。
(1)ベース担体
クロマトグラフィー充填剤をはじめとする吸着剤は、一般的に、ベース担体にリガンドが結合した構成を有する。本発明におけるベース担体は多孔性粒子を含み、多孔性粒子は、リガンドとしてのポリエチレンイミン(以下、「PEI」とも称する)を導入するための官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾されている。そのような官能基で修飾され得る限り、使用される多孔性粒子は限定されないが、例えば、アガロース、デキストラン、でんぷん、セルロース、プルラン、キチン、キトサン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロースなどの多糖類およびその誘導体;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリビニルアルコールなどの有機重合体などが好ましく挙げられる。これらのうち、多孔性セルロース粒子または多孔性アクリル粒子がより好ましく、多孔性セルロース粒子およびポリビニルアルコール重合体が特に好ましい。さらに、多孔性粒子は、架橋構造を形成していることが、機械的強度を確保できる点から好ましい。これらの中でも、架橋反応によってセルロース粒子の骨格が補強された架橋セルロース粒子を用いることがより好ましい。
架橋セルロース粒子としては、クロマトグラフィー充填剤のベース担体として使用され得るものであれば特に制限されない。原料となるセルロースは、結晶セルロースであっても非結晶セルロースであってもよいが、強度が高いことから結晶セルロースが好ましい。
本発明において好適に使用できる架橋セルロース粒子としては、例えば、特開2009−242770号公報に開示されている多孔性セルロースゲルが挙げられる。同公報に開示されている多孔性セルロースゲルは、未架橋セルロース粒子の懸濁液に、セルロースモノマーのモル数の6〜20倍量の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホウ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機塩の存在下、セルロースモノマーのモル数の4〜12倍量の架橋剤と、架橋剤のモル数の0.1〜1.5倍量のアルカリとを3時間以上かけて連続滴下または分割添加する工程を含む方法で得られる。このようにして得られた架橋セルロース粒子は、機械的強度が高く、流速の速いクロマトグラフィー条件下での使用が可能であり、生産性の高い陽イオン交換クロマトグラフィー充填剤を与えることができる。ここで、「セルロースモノマー」とは、セルロースの構成単位であるグルコースユニットを意味する。また、セルロースモノマーのモル数(すなわち、重合度)は、グルコース1ユニットから水分を引いた量(すなわちセルロースの乾燥重量)に基づいて計算する(分子量162を1モルとする)。
多孔性粒子の形状は特に制限されないが、機械的強度が高く、ゲル沈降性に優れ、均一な充填床を作製できることから、球状のものが好ましい。この場合、多孔性粒子の真球度は0.8〜1.0であることが好ましい。ここで「真球度」とは、多孔性粒子の短径/長径を意味する。
球状セルロース粒子は、例えば、結晶セルロースまたは結晶領域と非結晶領域とからなるセルロースを溶解し再生することで容易に得ることができる。球状セルロース粒子の製造方法としては、例えば、特公昭55−39565号公報、特公昭55−40618号公報などに記載される酢酸エステルを経由する方法;特公昭63−62252号公報などに記載されるチオシアン酸カルシウム塩を含む溶液から製造する方法;特開昭59−38203号公報などに記載されるパラホルムアルデヒドおよびジメチルスルホキシドを含む溶液から製造する方法;特許第3663666号公報に記載される、セルロースを塩化リチウム含有アミドに溶解させたセルロース溶液から製造する方法などが挙げられる。また、球状の架橋セルロース粒子は、球状セルロース粒子を架橋することで得ることができる。
本発明に用いる多孔性粒子の粒子径は、10〜500μmが好ましく、30〜200μmがより好ましく、50〜150μmが特に好ましい。また、平均粒子径は、30〜1000μmが好ましく、40〜200μmがより好ましく、50〜100μmが特に好ましい。ここで、「粒子径」とは、各多孔性粒子の粒子径の実測値を意味し、「平均粒子径」とは、上記粒子径に基づいて算出される平均値を意味する。
本明細書において、多孔性粒子の粒子径および平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。この装置では、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折/散乱光の強度分布パターンから粒度分布を求め、それに基づいて粒子径および平均粒子径を算出する。具体的な測定装置としては、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)などを用いることができる。
あるいは、光学顕微鏡で撮影した画像を使用して粒子径を測定することもできる。具体的には、ノギスなどを用いて画像上の粒子径を計測し、撮影倍率から元の粒子径を求める。そして、光学顕微鏡画像から求めたそれぞれの粒子径の値から、下記の式によって平均粒子径を算出する。
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd)/Σ(nd
[式中、dは光学顕微鏡画像から求めた各粒子の粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
多孔性粒子の多孔性は、細孔サイズ特性をもって特徴づけることができる。細孔サイズ特性を示す指標の一つとして、ゲル分配係数Kavがある。細孔サイズは、粒子の物理的強度や精製対象となる目的物質の多孔性粒子内での拡散性に影響を及ぼす。従って、細孔サイズによって、多孔性粒子中を通過する液体の流速や多孔性粒子の動的吸着容量に違いが生じる。そのため、目的に応じた細孔サイズとなるような多孔性粒子の設計が必要となる。特に動的吸着容量の観点から、多孔性粒子のゲル分配係数Kavは、重量平均分子量1.5×10Daの標準ポリエチレンオキシドをサンプルとして使用し、純水を移動相として使用した場合に、0.15〜0.6の範囲であるものが好ましく、より好ましくは0.2〜0.55であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。
本発明においては、上記範囲のゲル分配係数を得られるような細孔サイズを有する多孔性粒子を使用することが、吸着特性の観点から好ましい。多孔性粒子として架橋セルロース粒子を使用する場合、そのゲル分配係数Kavは、例えば、粒子形成時のセルロースの溶解濃度を制御することにより調整することができる。
ゲル分配係数Kavは、特定の分子量を有する標準物質(例えば、ポリエチレンオキシド)をサンプルとして使用した場合の保持容量とカラム体積との関係から、次式により求めることができる。
Kav=(Ve−V)/(Vt−V
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、Vはブルーデキストランの保持容量(mL)を表す。]
ゲル分配係数Kavの具体的な測定方法は、例えば、L.Fischer著生物化学実験法2「ゲルクロマトグラフィー」第1版(東京化学同人)などに記載されている。
また、多孔性粒子の平均細孔径は、50〜250nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましく、60〜120nmであることが特に好ましい。本明細書において、平均細孔径は、Journal of Chromatography A, 883 (2000) 39−54に記載されている方法で測定および算出された値である。
好ましい多孔性粒子の平均細孔径は、対象とするウイルス粒子の大きさによって多少異なるが、基本的には、捕捉対象のウイルス粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。大きなサイズのウイルス、例えば、パラミクソウイルスのような数百nmのサイズのウイルスの場合、ウイルス粒子よりも大きな細孔を有する多孔性粒子を使用しようとすると、担体強度が低下して圧力損失が大きくなるという問題が生じ得る。このようなウイルスの場合、多孔性粒子の最表面のみでウイルスが吸着されるように担体を設計することが好ましく、多孔性粒子の細孔径が吸着に与える影響は小さくなる。一方、ブタサーコウイルス(平均粒子径:約17nm)のようにサイズの小さいウイルスの場合には、多孔性粒子の細孔内にもウイルスを拡散させて、細孔内吸着を利用することによって効率的にウイルスを吸着させることができる。そのため、多孔性粒子の細孔径の選択がより重要となる。捕捉対象のウイルスがブタサーコウイルスの場合、多孔性粒子の平均細孔径は、50〜200nmが好ましく、担体の強度の観点から50〜150nmがより好ましい。
(2)リガンド
本発明の吸着剤は、上述したベース担体にリガンドとしてのポリエチレンイミンが結合した構造を有する。ポリエチレンイミンは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、ウイルス吸着能の観点から分岐鎖状であることが好ましい。ポリエチレンイミンの質量平均分子量は、500〜200,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜70,000であることが特に好ましい。
ポリエチレンイミンは、イオン交換容量が0.1meq/mL以上(例えば0.1〜1.0meq/mL、0.1〜0.5meq/mL、0.1〜0.3meq/mL等)、好ましくは0.2meq/mL以上(例えば0.2〜1.0meq/mL、0.2〜0.5meq/mL等)、より好ましくは0.3meq/mL以上(例えば0.3〜1.0meq/mL、0.3〜0.5meq/mL等)になるような量でベース担体に付加されるのが好ましい。
ベース担体へのポリエチレンイミンの付加方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリエチレンイミンが結合し得る官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾された多孔性粒子とポリエチレンイミンとを含む溶液を、所定の条件下で撹拌することにより行うことができる。あるいは、ベース担体上でモノマーをグラフト重合させてポリエチレンイミンを形成してもよい。
2.ウイルス除去方法
続いて、本発明の方法の使用態様について説明する。
本発明の方法は、ウイルス含有試料を上述した吸着剤と接触させて、試料中のウイルスを除去することを含む。本発明の方法は、ウイルス含有試料を吸着剤と接触させてウイルス含有試料中のウイルスを吸着除去できる態様であれば、いずれの態様であっても使用することができる。例えば、カラムに上述した吸着剤を充填し、そこへ試料溶液を流して、ウイルスを吸着剤に吸着させることにより試料を精製することができる。あるいは、精製対象物質とウイルスを共に吸着剤に吸着させ、溶出時の塩濃度を段階的あるいは連続的に増加させることで、吸着剤への親和性の違いを利用して試料を精製することもできる。本発明の方法は、特にタンパク質の分離精製において有用であり、従ってバイオ医薬等の精製に使用することができる。具体的には、ワクチン、抗体、酵素、血液凝固因子等の分離精製において使用することができる。
本発明で使用する吸着剤は、試料溶液中のウイルスを吸着除去できるため、クロマトグラフィーを用いた精製に利用する場合には、フロースルーモードを採用することが好ましい。ここで、フロースルーモードとは、不純物をクロマトグラフィー充填剤に結合させ、目的物質はクロマトグラフィー充填剤に結合せずに流れて回収される精製方法を言う。例えば、試料として抗体溶液を使用する場合、ウイルスがクロマトグラフィー充填剤に結合し、抗体はクロマトグラフィー充填剤に結合することなくカラム中を流れる。この時、多少であれば抗体も結合してよいが、ウイルスがより選択的にクロマトグラフィー充填剤に結合することにより、抗体が精製される。
本発明の方法は、広いpH条件下で実施することが可能である。例えば、酸性から中性のpH条件下(好ましくはpH4.0〜8.0、より好ましくはpH5.0〜8.0、特に好ましくはpH5.5〜7.5の条件下)で効率的にウイルスを除去することができる。従来、イオン交換クロマトグラフィーでは、試料の電気伝導度が高くなると、吸着能および分離能が低下することが課題となっていた。また、特に抗体医薬精製でフロースルーモードにて利用される陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて、抗体溶液中にクエン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン等の多価陰イオンが存在する場合にも、同様の課題があった。しかしながら、本発明の方法は広いpH条件下で使用することができ、したがって幅広い試料に対して使用することができる。しかし、必要に応じて、試料溶液のpH、電気伝導度、緩衝液、塩濃度、添加物、試料濃度、吸着剤の単位体積あたりの試料負荷量などを予め好適な条件に調整してから、本発明の方法を実施してもよい。これらの調整方法としては、例えば、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法が挙げられる。
試料溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液に含まれる成分としては、緩衝能を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、1〜300mmol/Lのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TES、Tricineなどが挙げられる。また上記の塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの他の塩と組み合わせて用いることもできる。さらに、緩衝液には、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸、グルコース、スクロース、ラクトース、シアル酸などの糖、またはこれらの誘導体などが含まれていてもよい。
本発明の方法は、他の精製方法と組み合わせて実施してもよい。他の精製方法としては、特に限定されないが、例えば、クロマトグラフィー、活性炭処理、アルコール分画、沈殿物除去、塩析、緩衝液交換、濃縮、希釈、ろ過、ウイルス不活性化、ウイルス除去などが挙げられる。他の精製方法としては、一つまたは複数の方法を選択してもよく、本発明の方法の前に行っても後に行ってもよい。
他の精製方法がクロマトグラフィーである場合、使用される担体または膜としては、ヘパリン担体およびプロテインA担体などのアフィニティー担体、陽イオン交換担体、陽イオン交換膜、陰イオン交換担体、陰イオン交換膜、ゲルろ過担体、疎水性相互作用担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、硫酸化アガロース担体、混合モード(マルチモーダル)担体などが挙げられる。
本発明の方法によると、2以上(例えば2〜3)、好ましくは3以上(例えば3〜4)の対数除去係数(LRV)でウイルスを除去することができる。ここで、対数除去係数(LRV)とは、ウイルス除去操作前後の試料中のウイルス減少量を対数値で表したものであり、以下の式で算出される。
対数除去係数(LRV)=Log[(V×T)/(V×T)]
:ウイルス除去処理前の試料の容量(mL)
:ウイルス除去処理前のウイルス量(Copies/mL)
:ウイルス除去処理後の試料の容量(mL)
:ウイルス除去処理後のウイルス量(Copies/mL)
本発明の方法によると、広い条件下(例えば、ウイルス除去について上述したような広いpH条件下)で、試料溶液に含まれる他の不純物も吸着除去することができる。他の不純物としては、宿主由来タンパク質(HCP)の他、例えば、核酸、ウイルス、プロテインAリーク、抗体の分解物、および変性、糖鎖成分の除去、酸化、脱アミド等を受けた修飾抗体など、培養過程または他のクロマトグラフィー処理工程などで生じ得るものが挙げられる。
ウイルス含有試料としては、抗体溶液を好適に使用することができるが、これに限定されるものではない。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。抗体の種類としては、例えば、マウス抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらのFc領域などを改変した抗体などが挙げられ、分子型としては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、Fab、Fc、Fc−融合蛋白、VH、VL、VHH、Fab’2、scFv、scFab、scDb、scDbFcなどが挙げられる。
また、抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の一部を積極的に変性させた、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体も含まれる。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の変性方法としては、例えば、Journal of PHARMACEUTICAL SCIENCES、2011、100、2104−2119に記載の方法が挙げられる。
抗体は、単量体であっても重合体であってもよいが、単量体であることが好ましい。抗体単量体とは、1分子の抗体からなる分子である。抗体重合体とは、2分子以上の抗体の単量体が共有結合または非共有結合により重合した分子であり、例えば、二量体、三量体、多量体、凝集体、凝集塊などが挙げられる。
抗体溶液としては、例えば、血漿、血清、乳もしくは尿などの生体から得られる組成物、遺伝子組換え技術もしくは細胞融合技術を用いて得られる抗体産生細胞、大腸菌などの菌類の培養液、またはトランスジェニック非ヒト動物、植物もしくは昆虫などから得られる組成物などが挙げられる。
抗体産生細胞としては、例えば、宿主細胞に所望の抗体をコードする遺伝子が組み込まれた形質転換細胞などが挙げられる。宿主細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、酵母細胞などの細胞株が挙げられる。具体的には、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、ラットミエローマ細胞であるYB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞などが挙げられる。
抗体産生細胞を培養する培地としては、各々の細胞の培養に適した培地であればいずれも使用することができる。例えば、血清含有培地、血清アルブミンもしくは血清分画物などの動物由来成分を含まない培地、無血清培地、無蛋白培地などが挙げられるが、好ましくは無血清培地または無蛋白培地である。また、必要に応じて、抗体産生細胞の生育に必要な生理活性物質、栄養因子などを添加することができる。これらの添加剤は、培養前に予め培地に含有させるか、培養中に添加培地または添加溶液として培地へ適宜追加供給する。添加剤は1種類でも2種以上でもよく、また、連続的に添加しても、断続的に添加してもよい。
抗体を産生するトランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫としては、タンパク質をコードする遺伝子が細胞内に組み込まれた非ヒト動物、植物または昆虫が挙げられる。非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、サルなどが挙げられる。植物としては、例えば、タバコ、ポテト、トマト、ニンジン、ソイビーン、アブラナ、アルファルファ、コメ、小麦、大麦、コーンなどが挙げられる。
また、抗体溶液としては、上述したような抗体を含有する血漿、尿などの生体から得られるものの他、精製する過程で得られる抗体溶液も含まれる。具体的には、例えば、細胞除去液、沈殿物除去液、アルコール分画液、塩析分画液、クロマトグラフィー溶出液などが挙げられる。さらに、抗体溶液中に粒子などの不溶物が存在する場合には予めそれらを除去し、その後に本発明のウイルス除去方法に供してもよい。粒子などの不溶物の除去方法としては、例えば、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、これらの方法を組み合わせた方法などが挙げられる。
本発明の他の実施形態によると、多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤を含む、ウイルス含有試料からウイルスを除去するためのクロマトグラフィー用充填剤であって、前記ウイルスは、ブタサーコウイルス、マウス白血病ウイルス、シミアンウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルスおよびシンドビスウイルスからなる群より選択される1種以上であるクロマトグラフィー用充填剤が提供される。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<調製例1>
〔6%球状セルロース粒子(含水)の製造〕
6%球状セルロース粒子を、以下の手順に従って製造した。ここで、以下の(1)の工程で結晶性セルロースの濃度が6重量%である場合に、製造されるセルロース粒子を「6%球状セルロース粒子」と呼ぶ。
(1)100gのチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に、6.4gの結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:セオラスPH101)を加え、110〜120℃に加熱して溶解した。
(2)この溶液に、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート6gを添加した。それを、130〜140℃に予め加熱したo−ジクロロベンゼン480mL中に滴下し、200〜300rpmにて撹拌して分散液を得た。
(3)次いで、上記分散液を40℃以下まで冷却した。それをメタノール190mL中に注ぎ、粒子の懸濁液を得た。
(4)得られた懸濁液を濾過分別して粒子を回収し、その粒子をメタノール190mLで洗浄した。この洗浄操作を数回行った。
(5)さらに大量の精製水で粒子を洗浄し、球状セルロース粒子を得た。
(6)次いで、この球状セルロース粒子をJIS標準ふるい規格53μm〜125μmのふるいにかけて、所望の粒子径(粒子径:50〜150μm、平均粒子径:約100μm)を有する6%球状セルロース粒子(含水、セルロース溶解濃度:6重量%)を得た。
なお、ここでの平均粒子径は、光学顕微鏡で撮影した画像を使用して測定した。具体的には、ノギスを用いて画像上の粒子径を計測し、撮影倍率から元の粒子径を求めた。そして、光学顕微鏡画像から求めたそれぞれの粒子径の値から、下記の式によって平均粒子径を算出した。
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd)/Σ(nd
[式中、dは光学顕微鏡画像から求めた各粒子の粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
〔架橋6%セルロース粒子の製造〕
上記で製造した6%球状セルロース粒子を架橋反応させ、架橋6%セルロース粒子を製造した。その手順は以下の通りである。
(1)上記で得られた6%球状セルロース粒子(含水)100gに121gの純水を加え、撹拌しながら加温した。30℃に到達したところで、45重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液3.3gおよび水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)0.5gを加え、さらに加温および撹拌した。ここでの初期アルカリ濃度は、0.69%(w/w)であった。
(2)30分後、45℃に加温された反応液に60gの硫酸ナトリウム(NaSO)を加え、溶解させた。混合物の温度が50℃に到達した時点から、温度を50℃に維持しながらさらに2時間撹拌を継続した。
(3)50℃で混合物の撹拌を継続しながら、45重量%の水酸化ナトリウム水溶液48gと、エピクロロヒドリン50gとをそれぞれ25等分した量を、15分おきにおよそ6時間かけて添加した。
(4)添加終了後、この混合物を温度50℃で16時間反応させた。
(5)反応混合物を40℃に冷却した後、酢酸2.6gを加えて中和した。
(6)反応混合物を濾過してセルロース粒子を回収し、セルロース粒子を純水で濾過洗浄して架橋6%セルロース粒子を得た。
得られた架橋6%セルロース粒子の平均細孔径、平均粒子径およびKav値を、以下の通り測定した。
(平均細孔径の測定)
平均細孔径は、Journal of Chromatography A, 883 (2000) 39−54に記載されている方法で測定および算出した。その結果、上記で得られたセルロース粒子の平均細孔径は、100nmであった。
(平均粒子径の測定)
レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)を用いて平均粒子径を測定したところ、85μmであった。
(Kav値の測定)
ゲル分配係数Kavは、重量平均分子量1.5×10Daの標準ポリエチレンオキシドをサンプルとして用い、その保持容量とカラム体積との関係から、次式により算出した。なお、移動相としては純水を使用した。
Kav=(Ve−V)/(Vt−V
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、Vはブルーデキストランの保持容量(mL)を表す。]
上記で得られた架橋6%セルロース粒子のゲル分配係数Kavは、0.38であった。
<実施例1:PEI平均分子量70,000、分岐鎖>
1Lセパラブルフラスコに、上記で得られた架橋セルロース粒子135g、水99mLを加え、プラスチック製撹拌翼で10分間撹拌した。次に、エピクロロヒドリン71mLを加え、30℃で撹拌した。さらに48質量%水酸化ナトリウム水溶液55mLを滴下後、30℃で3時間撹拌した。反応したセルロース粒子を、濾紙を用いて廃液が中性になるまで水で洗浄し、エポキシ化セルロース粒子を得た。
100mLセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(質量平均分子量70000、分岐鎖状、30質量%水溶液、alfa aesar製)14g、水31mLを加えて、プラスチック製撹拌翼で撹拌した。そこに、上記で製造したエポキシ化セルロース粒子30gを加え、50℃で2時間撹拌した。反応したセルロース粒子を、濾紙を用いて廃液が中性になるまで水で洗浄し、PEI導入セルロース粒子を得た。
(イオン交換容量の測定)
得られたPEI導入セルロース粒子に水を加えてスラリー化し、1mLカラム容器に充填した。次に濾紙を用いて、カラム容器内のPEI導入セルロース粒子を回収し、20mLサンプル管に加えた。このサンプル管に、PEI導入セルロース粒子と合わせて8gになるように水を加えた。さらに0.5M塩酸2mLを加え、1時間振とうした。サンプル管を静置して、上澄み2mLを採取し、0.1M水酸化ナトリウム水溶液及びフェノールフタレイン水溶液で滴定した。濾紙を用いてPEI導入セルロース粒子を回収し、80℃で17時間、真空乾燥し、その後乾燥重量を測定した。滴定量及び乾燥重量から、PEI導入セルロース粒子のイオン交換容量を算出した。
(N含量の測定)
PEI導入セルロース粒子を乾燥させ、有機微量元素分析装置(MICRO CODER JM10、J−SCIENCE社製)を用いて、PEI導入セルロース粒子に含まれるN含量を測定した。
(BSA吸着能の測定)
PEI導入セルロース粒子に水を加えてスラリー化し、1mLカラム容器に充填した。別途、50mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩水溶液(pH8.3)に、1mg/mLとなるようBSA(ウシ血清アルブミン)を溶解させた。PEI導入セルロース粒子が充填されたカラム容器を、低圧クロマトグラフィーシステム(AKTAprime plus、GEヘルスケア社製)に接続し、BSA水溶液を1mL/minの速度で通液した。PEI導入セルロース粒子から漏れ出たBSA量を測定し、BSA吸着能を算出した。
<実施例2:PEI平均分子量70,000、分岐鎖>
ベース担体として、多孔性粒子であるセルファインGH25(JNC製、セルロース粒子)を使用した。この多孔性粒子は、粒子径が44〜105μm、平均粒子径が67μm、平均細孔径が6nmであった。また、標準ポリエチレングリコールの分子量とKav値から求めた排除限界分子量は約3000Daであった。
2Lセパラブルフラスコに、セルファインGH25 208g、水660mLを加え、プラスチック製撹拌翼で10分撹拌した。別途、200mLビーカーに48%水酸化ナトリウム水溶液2.2mLと水128mLを加えて撹拌した。得られた溶液を、セルファインGH25を含むセパラブルフラスコに加えて、40℃で20分間撹拌した。さらに水素化ホウ素ナトリウム(SBH)3.07gを加えて60℃に昇温し、18時間撹拌した。反応後のセルロース粒子を、廃液が中性になるまで水で洗浄し、SBH処理セルロース粒子を得た。
1Lセパラブルフラスコに、上記で得られたSBH処理セルロース粒子147g、水220mLを加え、プラスチック製撹拌翼で10分撹拌した。次に、48%水酸化ナトリウム水溶液19.7mLを加え、30℃で1時間撹拌した。さらにエピクロロヒドリン33.5mLを加え、30℃で3時間撹拌した。反応後のセルロース粒子を、廃液が中性になるまで水で洗浄し、エポキシ化セルロース粒子を得た。
100mLセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(平均分子量70000、30質量%水溶液、alfa aesar製)8.5g、水36.5mLを加え、プラスチック製撹拌翼で撹拌した。さらに上記で得られたエポキシ化セルロース担体30gを加え、50℃で2時間撹拌した。反応したセルロース粒子を、濾紙を用いて廃液が中性になるまで水で洗浄し、PEI導入セルロース粒子を得た。
<実施例3:PEI平均分子量10,000、分岐鎖>
質量平均分子量10,000、分岐鎖状のポリエチレンイミン(和光純薬工業製)9gおよび水41mLを使用したことを除き、実施例1と同様にPEI導入セルロース粒子を製造した。
<実施例4:PEI平均分子量600、分岐鎖>
質量平均分子量600、分岐鎖状のポリエチレンイミン(和光純薬工業製)35gおよび水15mLを使用したことを除き、実施例1と同様にPEI導入セルロース粒子を製造した。
<実施例5:PEI平均分子量70,000、分岐鎖>
質量平均分子量70,000、分岐鎖状のポリエチレンイミン(質量平均分子量70,000、分岐鎖状、30質量%水溶液、alfa aesar製)1.33gおよび水32mLを使用したことを除き、実施例1と同様にPEI導入セルロース粒子を製造した。
<実施例6:PEI分子量100,000、直鎖>
実施例1と同様にエポキシ化セルロース粒子を製造した。
100mLセパラブルフラスコに、ポリエチレンイミン(質量平均分子量100,000、直鎖状、Polyscience,Inc.製)3.1g、水30mLを加えて、プラスチック製撹拌翼で撹拌した。そこに、上記で製造したエポキシ化セルロース粒子20gを加え、70℃で2時間撹拌した。反応したセルロース粒子に2M塩酸を40mL加え、30分撹拌した後、濾紙を用いて廃液が中性になるまで水で洗浄した。次に、0.5M水酸化ナトリウム水溶液20mLを加えて30分撹拌した後、濾紙を用いて廃液が中性になるまで水で洗浄し、PEI導入セルロース粒子を得た。
<比較例1:セルファインMAX Q−r>
デキストラン導入陰イオン交換担体である、セルファインMAX Q−r(JNC製、セルロース粒子)を使用した。
実施例2〜6、比較例1のセルロース粒子についても、実施例1と同様にイオン交換容量、N含量およびBSA吸着能を測定した。その結果を以下の表1に示す。
<ブタサーコウイルス(PCV)の調製>
ウイルスは、PCVを持続産生するブタ腎臓由来株化細胞PK15(ATCC No.CCL−33)の培養上清より調製した。PK15細胞(1.0×105cells/mL)を5%ウシ胎児血清含有ダルベッコ改変イーグル培地に播種し、37℃、5% CO条件下で培養した。培養4日目の培養液を回収した。これを小分け分注し−80℃で凍結保存したものをウイルスストックとした。ウイルスストックのゲノム濃度は、10.09Log10copies/mLであった。
<試験例1:pH5.5>
実施例1、3〜6および比較例1で得られたPEI導入セルロース粒子に水を加えてスラリー化し、1mLカラム容器に充填した。一方、10mM酢酸ナトリウムおよび50mM NaClを含む溶液(pH5.5)に、ヒト免疫グロブリン(IgG;日本血液製剤機構製)を0もしくは0.03%(W/V)となるよう加え、さらに上記で調製したブタサーコウイルス(PCV)を加えてウイルス含有試料溶液(PCV溶液)を調製した。PEI導入セルロース粒子が充填された1mLカラムに、シリンジ及びシリンジポンプを用いて、PCV溶液を0.2mL/minの速度で2mLまたは10mL通液した。PEI導入セルロース粒子への通液前後におけるPCVゲノム量を測定し、そのゲノム量の差をPCV吸着除去能とし、対数除去係数(LRV;log reduction value)で表した。
ここで、対数除去係数(LRV)とは、ウイルス除去操作前後の試料中のウイルス減少量を対数値で表したものであり、以下の式で算出される。
対数除去係数(LRV)=Log[(V×T)/(V×T)]
:ウイルス除去処理前の試料の容量(mL)
:ウイルス除去処理前のウイルス量(copies/mL)
:ウイルス除去処理後の試料の容量(mL)
:ウイルス除去処理後のウイルス量(copies/mL)
そして、LRVは、以下のように評価される。本明細書においては、LRVが1.0以上(望ましくは2.0以上)の場合にウイルス吸着除去能を有すると判断する。
1.0未満:効果なし(no significant inactivation/removal)
1.0〜2.0:限定的(limited inactivation/removal)
2.0〜4.0:寄与(moderate inactivation/removal)
4.0超:効果的(effective inactivation/removal)
なお、ウイルス量は、定量PCR(Q−PCR)を用いて、ウイルスゲノム量を指標に測定および定量した。
結果は表2に示すとおりであり、実施例のPEI導入セルロース粒子は、IgGの存在の有無に関わらず、PCV吸着除去能を示した。
<試験例2:pH7.5>
PCV溶液の溶媒として50mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩水溶液(pH7.5)を使用したことを除き、試験例1と同様にしてPCV吸着除去能を評価した。表3に示すように、実施例のPEI導入セルロース粒子は、IgGの存在の有無に関わらず、PCV吸着除去能を示した。また、PEIの構造または分子量、PEI導入量にかかわらず優れたPCV吸着除去能を示した。
<試験例3:pH6.5>
PCV溶液の溶媒として10mMリン酸ニ水素化ナトリウム(NaHPO)および50mM塩化ナトリウムを含む水溶液(pH6.5)を使用し、PCV溶液を0.2mL/minの速度で2mLまたは10mL通液したことを除き、試験例1と同様にしてPCV吸着除去能を評価した。表4に示すように、実施例のPEI導入セルロース粒子は、IgGの存在の有無に関わらず、PCV吸着除去能を示した。また、ベース担体として実施例1の架橋セルロース粒子を使用した場合に、より好ましい結果が得られた。
<試験例4:pH4.0>
PCV溶液の溶媒として0.3Mグリシン水溶液(pH4.0)を使用したことを除き、試験例1と同様にしてPCV吸着除去能を評価した。表5に示すように、実施例のPEI導入セルロース粒子はPCV吸着除去能を示した。
<試験例5:他のウイルス>
PCV以外のウイルスについて、PEI導入Toyopearlと市販のQ−Sepharose(Q−Sepharose, GE Amersham Bioscience, Cat No. 17−0510−01, Lot No. 309848)のウイルス吸着除去能を比較した。
PEI導入Toyopearl(TOYOPEARL AF−Carboxy−650M)は、次の方法により調製した。まず、リガンドである分岐鎖PEI(質量平均分子量70,000、30質量%水溶液)40mLを精製水で約3倍に希釈し、濃塩酸を用いてpHを5.5付近に調整した。湿重量として60gのToyopearlを200mLの0.9%NaCl水溶液でG3ガラスフィルターを用いて3回洗浄した。溶液を除いたToyopearlに、pH5.5に調整した分岐鎖PEI溶液を混合した。1800mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を精製水8mLに溶解し、直ぐにToyopearl−PEI混合液に添加した。架橋反応を37℃で2時間行い、400mLの精製水で2回、400mLの3M NaCl水溶液で3回、400mLの精製水で2回、400mLの1mM HCl水溶液で2回洗浄し、最後に20%エタノール液に懸濁した。これをPEI導入ポリマー担体として使用直前まで保存した。
PEI導入ToyopearlとQ−Sepharoseをそれぞれカラム(直径10mm×カラム高20mm)に充填したのち、基本バッファー(20mM/10mM クエン酸塩/リン酸塩バッファー;pH6.5)10mLで平衡化した。モノクローナル抗体溶液(PBS中の75mg/mL溶液)およびウイルス溶液(シミアンウイルス40(SV40)、単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、ブタパルボウイルス(PPV)、ポリオウイルス(Poliovirus)、異種指向性マウス白血病ウイルス(X−MuLV)、シンドビスウイルス(Sindbisvirus))を調製した。抗体溶液および各ウイルス溶液を、1mLの基本バッファーにそれぞれ25μLおよび50μL添加し、これをカラムに負荷した。各カラムに基本バッファーを1mLずつ添加し、溶出液を1mLずつ分画して、その後の解析に用いた。流速は1mL/分に設定した。目的とする抗体が素通りで溶出する画分3および4(素通り画分)をプールした。素通り画分と処理前のウイルス溶液について、それぞれに含まれるウイルス核酸量をqPCR法により定量し、比較した。
結果は、図1に示すとおりである。図1において、「Apply」はカラムに負荷した総ウイルス量を示し、「PEI」は上記で調製したPEI導入Toyopearlと接触させた後(ウイルス吸着後)の試料中のウイルス量を示し、「Q−sepharose」は市販のQ−Sepharoseと接触させた後(ウイルス吸着後)の試料中のウイルス量を示す。試験したいずれのウイルスについても、PEI導入Toyopearlの方がQ−Sepharoseよりも優れたウイルス吸着除去能を示すことが分かった。
<試験例6:宿主細胞由来タンパク質およびDNAの吸着除去>
基本バッファーとして0.2Mのクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.0)、0.2Mのクエン酸−リン酸緩衝液(pH6.0)、0.2Mのクエン酸−リン酸緩衝液(pH7.0)、および0.2Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)を調製した。これらバッファーのぞれぞれにNaClを0mM、20mM、50mMおよび100mMになるように添加して16種類のバッファーを調製し、電気伝導度(mS)を測定した。
(CHO細胞由来タンパク質の吸着除去)
CHO DG44細胞を2×10細胞/mL程度になるまで培養し、細胞等を除去した上清を得た。さらに12,600×gで15分間遠心分離し、上清を得た。これを0.22μm滅菌フィルターで濾過した。1/10量の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)を添加し、リン酸緩衝塩溶液で平衡化したプロテインAカラムに負荷した。リン酸緩衝塩溶液で洗浄後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出し、抗体医薬品と同様の挙動を示すCHO細胞由来タンパク質(以下、CHOタンパク質と称する)含有溶出液を回収した。得られた溶出液について、10Kの限外濃縮を行い、CHOタンパク質を濃縮した。得られたCHOタンパク質のOD280nmでの吸光度は0.6であった。
ヒトモノクローナル抗体溶液を75mg/mLになるように調製した。上記の16種類のバッファーに、1mLあたり25μLの抗体溶液および12.5μLのCHOタンパク質溶液を添加し、被検液とした(抗体/CHOタンパク質混合液)。試験例5で使用したのと同じPEI導入Toyopearlをカラムに充填し、それぞれバッファー10mLで洗浄し、平衡化した。次いで、上記で調製した抗体/CHOタンパク質混合液を1mLのバッファーに懸濁し、それをカラムに負荷し、引き続いて各バッファーを1mLずつ各カラムに添加した。溶出液を1mLずつ分画して、その後の解析に用いた。また、流速は1mL/分に設定した。目的とする抗体が素通りで溶出する画分3および4(素通り画分)をプールした。カラムに負荷した被検液および素通り画分100μLに含まれるCHOタンパク質の量を、Cygnus CHO HCP ELISA kit(Cygnusテクノロジー社製)および添付されているCHOタンパク質標準品を用いて定量した。得られた被検液および素通り画分のそれぞれに含まれるCHOタンパク質量を比較し、素通り画分におけるCHOタンパク質の残存率を算出した。その結果を、バッファーの電気伝導度およびpHの値と共に図2に示す。
(CHO細胞由来DNAの吸着除去)
CHO細胞由来DNA(以下、CHO DNAと称する)として、上記でCHO DG44細胞より得たCHOタンパク質含有溶出液を、0.22μm滅菌フィルターで濾過した液を使用した。調製した液より、スマイテストEX−R&DTMを用いて核酸を分離した。そのDNA量はE260nm・50μg/ml=1.0を用いて推定した。これを定量PCRにおけるCHO DNA標準品として用いた。上記16種類のバッファー各1mLに、20μLのCHO DNA含有液および25μLの抗体溶液を添加し、被検液とした(抗体/CHO DNA混合液)。試験例5で使用したのと同じPEI導入Toyopearlをカラムに充填し、それぞれバッファー10mLで洗浄し、平衡化した。次いで、上記で調製した抗体/CHO DNA混合液を1mLのバッファーに懸濁し、それをカラムに負荷し、引き続いて各バッファーを1mLずつ各カラムに添加した。溶出液を1mLずつ分画して、その後の解析に用いた。また、流速は1mL/分に設定した。目的とする抗体が素通りで溶出する画分3および4(素通り画分)をプールした。カラムに負荷した被検液および素通り画分100μLに含まれるCHO DNAを、スマイテストEX−R&DTMを用いて抽出した。上記CHO DNA標準品に基づいて被検液および素通り画分のそれぞれに含まれるCHO DNA量を算出して比較し、素通り画分におけるCHO DNAの残存率を算出した。その結果を、電気伝導度およびpHの値と共に図2に示す。
試験例1〜4の結果から、本発明の方法で使用する吸着剤は、抗体の存在の有無にかかわらず、酸性条件および中性条件の両方においてPCV吸着除去能を示すと言える。したがって、特に抗体の精製において有用であると言える。一方、比較例1の吸着剤は、使用するpH条件によっては十分なPCV吸着除去能が得られなかった。また、試験例5の結果から、本発明のウイルス除去方法は、種々のウイルスに対して有効であることが分かる。さらに、試験例6の結果から、本発明のウイルス除去方法によると、試料溶液に含まれる他の不純物も広い条件下で吸着除去できると言える。

Claims (12)

  1. ウイルス含有試料を、多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤と接触させて、前記ウイルス含有試料からウイルスを除去する方法であって、
    前記ウイルスは、サーコウイルス、白血病ウイルス、シミアンウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルスおよびシンドビスウイルスからなる群より選択される1種以上である、
    方法。
  2. 前記ウイルスがブタサーコウイルスである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ポリエチレンイミンの質量平均分子量が500〜200,000である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記ポリエチレンイミンが分岐鎖構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記ベース担体が架橋セルロース粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記多孔性粒子の平均細孔径が50〜250nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記方法がpH4.0〜8.0の条件下で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記方法がクロマトグラフィーによって行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記試料が抗体を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
  11. 多孔性粒子を含むベース担体にポリエチレンイミンが結合した構造を有する吸着剤を含む、ウイルス含有試料からウイルスを除去するためのクロマトグラフィー用充填剤であって、
    前記ウイルスは、ブタサーコウイルス、マウス白血病ウイルス、シミアンウイルス、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、パルボウイルスおよびシンドビスウイルスからなる群より選択される1種以上である、
    クロマトグラフィー用充填剤。
  12. 前記ポリエチレンイミンが分岐鎖構造を有する、請求項11に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
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