JP2019182791A - 抗体凝集体の低減方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法を提供する。【解決手段】一実施形態によると、陰イオン交換基および疎水性基を有するクロマトグラフィー担体に抗体溶液を接触させる工程を含む、前記抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法が提供される。【選択図】 図1
Description
本発明は、抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法に関する。
抗体医薬を含むバイオ医薬の製造工程において、クロマトグラフィーを用いた精製を行うことは広く知られており、種々の分子間相互作用を利用して目的物と不純物の分離が行われる。例として、静電的相互作用を利用したイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用を利用した疎水性クロマトグラフィーおよび抗体に対するアフィニティー相互作用を利用したプロテインAクロマトグラフィーなどがある。
現在、抗体の精製において最も多く用いられているのは、イオン交換クロマトグラフィーである。イオン交換クロマトグラフィーは、処理液の電気伝導度が増加することで吸着性能が減少することが知られている。したがって、電気伝導度の高い試料においては、吸着処理を行う前に希釈や脱塩により電気伝導度を下げる必要がある。
このようなイオン交換クロマトグラフィーの欠点を補うため、近年は静電的相互作用に加え、疎水性相互作用、親水性相互作用、キレート相互作用などを併せ持つクロマトグラフィー担体の開発が盛んに行われている。
このように複数の作用を併せ持つクロマトグラフィー担体としては、Capto(登録商標)adhere、Capto(登録商標)MMC(以上、GEヘルスケア社製)、MEP HyperCel、HyperCel(商標) AX STAR(以上、Pall社製)、Eshumuno(登録商標)HCX(EMD Millipore社製)、CHT(登録商標)Ceramic Hydroxyapatite(バイオ・ラッド社製)、およびToyopearl(登録商標)MX Trp−650(東ソー社製)などが市販されている。
これらの複数の作用を併せ持つクロマトグラフィー担体は、静電的相互作用を有するリガンドに加え、異なる原理の相互作用を有するリガンドを同一のベース担体に導入することにより得られる。このようにして得られた担体は、静電的相互作用を有するリガンドのみを担持したイオン交換クロマトグラフィー担体とは異なる選択性を有する。また、細胞培養上清に近い条件下(例えば、培養上清と同程度の電気伝導度の条件下)で、良好な吸着特性を示す担体も知られている。
抗体医薬の製造においては、精製工程によって抗体溶液から不純物を除去するのみならず、抗体凝集体も除去できることがより均一な抗体医薬を製造できるという点で好ましい。したがって、上述したような複数の作用を併せ持つクロマトグラフィー担体を用いて抗体凝集体を除去することも研究されている。例えば非特許文献1には、モノクローナル抗体の精製において、複数の作用を併せ持つクロマトグラフィー担体が、イオン交換クロマトグラフィー担体よりも不純物の除去、特に凝集体の分離の点で優れていることが示されている。
Journal of Chromatography A 1217(2010),216−224
本発明は、抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法を提供することを目的とする。
本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] 陰イオン交換基および疎水性基を有するクロマトグラフィー担体に抗体溶液を接触させる工程を含む、前記抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法。
[2] 前記クロマトグラフィー担体が、多孔性粒子を含むベース担体と前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する基とを含み、前記第一級アミノ基の一部が疎水基で修飾された構造を有する[1]に記載の方法。
[3] 前記クロマトグラフィー担体に含まれる全ての第一級アミノ基のうちの20〜55%が疎水基で修飾されている、[2]に記載の方法。
[4] 前記第一級アミノ基を複数有する基が、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリグアニジンおよびポリオルニチンからなる群より選択される化合物に由来する基である[2]または[3]に記載の方法。
[5] 前記第一級アミノ基を複数有する基の重量平均分子量が、5000〜15000である[2]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記疎水基が、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造を有する[1]〜[5]のいずれかに記載の方法:
[式中、
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、前記第一級アミノ基を複数有する基におけるアミノ基との結合部位である]。
[7] 前記疎水基が、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物に由来する基である[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記疎水基で修飾された第一級アミノ基を複数有する基が、以下の一般式(a)で表される繰返し単位および一般式(b)で表される繰返し単位を含む、[2]〜[7]のいずれかに記載の方法:
(式(b)中、
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基である)。
[9] 抗体溶液中の抗体凝集体の量が65%以上低減される、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記抗体溶液の電気伝導度が22mS/cm以下である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記抗体がモノクローナル抗体である、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の方法を行うことを含む、抗体の精製方法。
[1] 陰イオン交換基および疎水性基を有するクロマトグラフィー担体に抗体溶液を接触させる工程を含む、前記抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法。
[2] 前記クロマトグラフィー担体が、多孔性粒子を含むベース担体と前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する基とを含み、前記第一級アミノ基の一部が疎水基で修飾された構造を有する[1]に記載の方法。
[3] 前記クロマトグラフィー担体に含まれる全ての第一級アミノ基のうちの20〜55%が疎水基で修飾されている、[2]に記載の方法。
[4] 前記第一級アミノ基を複数有する基が、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリグアニジンおよびポリオルニチンからなる群より選択される化合物に由来する基である[2]または[3]に記載の方法。
[5] 前記第一級アミノ基を複数有する基の重量平均分子量が、5000〜15000である[2]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記疎水基が、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造を有する[1]〜[5]のいずれかに記載の方法:
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、前記第一級アミノ基を複数有する基におけるアミノ基との結合部位である]。
[7] 前記疎水基が、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物に由来する基である[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記疎水基で修飾された第一級アミノ基を複数有する基が、以下の一般式(a)で表される繰返し単位および一般式(b)で表される繰返し単位を含む、[2]〜[7]のいずれかに記載の方法:
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基である)。
[9] 抗体溶液中の抗体凝集体の量が65%以上低減される、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記抗体溶液の電気伝導度が22mS/cm以下である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記抗体がモノクローナル抗体である、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の方法を行うことを含む、抗体の精製方法。
本発明によれば、抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法を提供することができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法は、陰イオン交換基および疎水性基を有するクロマトグラフィー担体に抗体溶液を接触させる工程を含む。この方法は、主に抗体の精製において使用される。
本発明の抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法は、陰イオン交換基および疎水性基を有するクロマトグラフィー担体に抗体溶液を接触させる工程を含む。この方法は、主に抗体の精製において使用される。
本発明の方法において使用するクロマトグラフィー担体は、陰イオン交換基(例えば、第四級アンモニウム基、第一〜三級アミノ基等)および疎水性基を有する限りその構造は特に限定されないが、例えば、多孔性粒子を含むベース担体と該ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する基とを含み、前記第一級アミノ基の一部が疎水基で修飾された構造を有することが好ましい。このような構成のクロマトグラフィー担体を抗体の精製において使用した場合、抗体溶液に含まれる不純物(HCP等)を吸着除去するとともに、抗体凝集体も吸着除去することができる。その結果、得られる抗体溶液中の不純物および抗体凝集体の量を低減することができ、高い精製度でより均一な精製抗体を得ることができる。ここで、「抗体溶液」とは、精製対象である抗体、抗体凝集体、不純物等を含む溶液を意味する。
従来、イオン交換クロマトグラフィーでは、抗体溶液の電気伝導度が高くなると、吸着能および分離能が低下することが課題となっていた。また、特に抗体精製においてフロースルーモードにて使用される陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて、培地や緩衝液に含まれることにより抗体溶液中にクエン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン等の多価陰イオンが存在する場合にも、同様の課題があった。しかしながら、本発明の方法は、抗体溶液の電気伝導度が比較的高い場合および/または抗体溶液中に多価陰イオンが存在する場合にも適用可能であり、高い効率で抗体凝集体を吸着除去することができる。
このように、本発明の方法は、抗体溶液の電気伝導度にかかわらず優れた吸着能および分離能を発揮するため、広範囲の抗体溶液に適用可能であると言える。また、抗体培養液と同等の電気伝導度(約14mS/cm)を有する抗体溶液をそのままカラムに供することができ、従来行っていた予め抗体溶液を脱塩、希釈等して電気伝導度を調整する工程を行う必要がない。さらに、事前に抗体溶液から多価陰イオンを除去する必要もないため、この点でもより簡便に抗体凝集体を除去できると言える。
1.クロマトグラフィー担体
以下、本発明の方法で使用するクロマトグラフィー担体の各構成要素について、順に説明する。
(1)ベース担体
クロマトグラフィー担体は、一般的に、ベース担体にリガンドが結合した構成を有する。ベース担体は多孔性粒子を含み、多孔性粒子は、リガンドを導入するための官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾されている。そのような官能基で修飾され得る限り、使用される多孔性粒子は限定されないが、例えば、アガロース、デキストラン、でんぷん、セルロース、プルラン、キチン、キトサン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロースなどの多糖類およびその誘導体;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリビニルアルコールなどの有機重合体などが好ましく挙げられる。多孔性粒子は、架橋構造を形成していることが、機械的強度を確保できる点から好ましい。これらの中でも、架橋反応によってセルロース粒子の骨格が補強された架橋セルロース粒子を用いることがより好ましい。
以下、本発明の方法で使用するクロマトグラフィー担体の各構成要素について、順に説明する。
(1)ベース担体
クロマトグラフィー担体は、一般的に、ベース担体にリガンドが結合した構成を有する。ベース担体は多孔性粒子を含み、多孔性粒子は、リガンドを導入するための官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾されている。そのような官能基で修飾され得る限り、使用される多孔性粒子は限定されないが、例えば、アガロース、デキストラン、でんぷん、セルロース、プルラン、キチン、キトサン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロースなどの多糖類およびその誘導体;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリビニルアルコールなどの有機重合体などが好ましく挙げられる。多孔性粒子は、架橋構造を形成していることが、機械的強度を確保できる点から好ましい。これらの中でも、架橋反応によってセルロース粒子の骨格が補強された架橋セルロース粒子を用いることがより好ましい。
架橋セルロース粒子としては、クロマトグラフィー担体のベース担体として使用され得るものであれば特に制限されない。原料となるセルロースは、結晶セルロースであっても非結晶セルロースであってもよいが、強度が高いことから結晶セルロースが好ましい。
好適に使用できる架橋セルロース粒子としては、例えば、特開2009−242770号公報に開示されている多孔性セルロースゲルが挙げられる。同公報に開示されている多孔性セルロースゲルは、未架橋セルロース粒子の懸濁液に、セルロースモノマーのモル数の6〜20倍量の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホウ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機塩の存在下、セルロースモノマーのモル数の4〜12倍量の架橋剤と、架橋剤のモル数の0.1〜1.5倍量のアルカリとを3時間以上かけて連続滴下または分割添加する工程を含む方法で得られる。このようにして得られた架橋セルロース粒子は、機械的強度が高く、流速の速いクロマトグラフィー条件下での使用が可能であり、生産性の高い陽イオン交換クロマトグラフィー担体を与えることができる。ここで、「セルロースモノマー」とは、セルロースの構成単位であるグルコースユニットを意味する。また、セルロースモノマーのモル数(すなわち、重合度)は、グルコース1ユニットから水分を引いた量(すなわちセルロースの乾燥重量)に基づいて計算する(分子量162を1モルとする)。
多孔性粒子の形状は特に制限されないが、機械的強度が高く、ゲル沈降性に優れ、均一な充填床を作製できることから、球状のものが好ましい。この場合、多孔性粒子の真球度は0.8〜1.0であることが好ましい。ここで「真球度」とは、多孔性粒子の短径/長径を意味する。
球状セルロース粒子は、例えば、結晶セルロースまたは結晶領域と非結晶領域とからなるセルロースを溶解し再生することで容易に得ることができる。球状セルロース粒子の製造方法としては、例えば、特公昭55−39565号公報、特公昭55−40618号公報などに記載される酢酸エステルを経由する方法;特公昭63−62252号公報などに記載されるチオシアン酸カルシウム塩を含む溶液から製造する方法;特開昭59−38203号公報などに記載されるパラホルムアルデヒドおよびジメチルスルホキシドを含む溶液から製造する方法;特許第3663666号公報に記載される、セルロースを塩化リチウム含有アミドに溶解させたセルロース溶液から製造する方法などが挙げられる。また、球状の架橋セルロース粒子は、球状セルロース粒子を架橋することで得ることができる。
多孔性粒子の粒子径は、10〜500μmが好ましく、30〜200μmがより好ましく、50〜150μmが特に好ましい。また、平均粒子径は、30〜1000μmが好ましく、40〜200μmがより好ましく、50〜100μmが特に好ましい。ここで、「粒子径」とは、各多孔性粒子の粒子径の実測値を意味し、「平均粒子径」とは、上記粒子径に基づいて算出される平均値を意味する。
本明細書において、多孔性粒子の粒子径および平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。この装置では、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折/散乱光の強度分布パターンから粒度分布を求め、それに基づいて粒子径および平均粒子径を算出する。具体的な測定装置としては、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)などを用いることができる。
あるいは、光学顕微鏡で撮影した画像を使用して粒子径を測定することもできる。具体的には、ノギスなどを用いて画像上の粒子径を計測し、撮影倍率から元の粒子径を求める。そして、光学顕微鏡画像から求めたそれぞれの粒子径の値から、下記の式によって平均粒子径を算出する。
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd4)/Σ(nd3)
[式中、dは光学顕微鏡画像から求めた各粒子の粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd4)/Σ(nd3)
[式中、dは光学顕微鏡画像から求めた各粒子の粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
多孔性粒子の多孔性は、細孔サイズ特性をもって特徴づけることができる。細孔サイズ特性を示す指標の一つとして、ゲル分配係数Kavがある。細孔サイズは、粒子の物理的強度や精製対象となる目的物質の多孔性粒子内での拡散性に影響を及ぼす。従って、細孔サイズによって、多孔性粒子中を通過する液体の流速や多孔性粒子の動的吸着容量に違いが生じる。そのため、目的に応じた細孔サイズとなるような多孔性粒子の設計が必要となる。特に動的吸着容量の観点から、多孔性粒子のゲル分配係数Kavは、重量平均分子量1.5×105Daの標準ポリエチレンオキシドをサンプルとして使用し、純水を移動相として使用した場合に、0.15〜0.6の範囲であるものが好ましく、より好ましくは0.2〜0.55であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。
本発明においては、上記範囲のゲル分配係数を得られるような細孔サイズを有する多孔性粒子を使用することが、吸着特性の観点から好ましい。多孔性粒子として架橋セルロース粒子を使用する場合、そのゲル分配係数Kavは、例えば、粒子形成時のセルロースの溶解濃度を制御することにより調整することができる。
ゲル分配係数Kavは、特定の分子量を有する標準物質(例えば、ポリエチレンオキシド)をサンプルとして使用した場合の保持容量とカラム体積との関係から、次式により求めることができる。
Kav=(Ve−V0)/(Vt−V0)
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、V0はブルーデキストランの保持容量(mL)を表す。]
ゲル分配係数Kavの具体的な測定方法は、例えば、L.Fischer著生物化学実験法2「ゲルクロマトグラフィー」第1版(東京化学同人)などに記載されている。
Kav=(Ve−V0)/(Vt−V0)
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、V0はブルーデキストランの保持容量(mL)を表す。]
ゲル分配係数Kavの具体的な測定方法は、例えば、L.Fischer著生物化学実験法2「ゲルクロマトグラフィー」第1版(東京化学同人)などに記載されている。
(2)リガンド
本発明の方法で使用するクロマトグラフィー担体は、リガンドとして第一級アミノ基を複数有する基を含み、さらに第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基の一部が疎水基で修飾されている構造を有することが好ましい。
本発明の方法で使用するクロマトグラフィー担体は、リガンドとして第一級アミノ基を複数有する基を含み、さらに第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基の一部が疎水基で修飾されている構造を有することが好ましい。
(第一級アミノ基を複数有する基)
第一級アミノ基を複数有する基は、第一級アミノ基を複数有する化合物をベース担体に結合させることにより形成される。第一級アミノ基を複数有する化合物は、ベース担体上の官能基と結合し得るものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどのポリアミン;キトサンなどの多糖類;ポリリジン、ポリグアニジン、ポリオルニチンなどのポリアミノ酸等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミンおよびポリリジンが好ましく、ポリアリルアミンがより好ましい。
第一級アミノ基を複数有する基は、第一級アミノ基を複数有する化合物をベース担体に結合させることにより形成される。第一級アミノ基を複数有する化合物は、ベース担体上の官能基と結合し得るものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどのポリアミン;キトサンなどの多糖類;ポリリジン、ポリグアニジン、ポリオルニチンなどのポリアミノ酸等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミンおよびポリリジンが好ましく、ポリアリルアミンがより好ましい。
第一級アミノ基を複数有する基の重量平均分子量は、300,000以下であってよく、1,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましく、5,000〜15,000であることが特に好ましい。ポリアリルアミンを使用する場合、重量平均分子量は150,000以下であってよく、1,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましく、5,000〜15,000であることが特に好ましく、10,000〜15,000であることが最も好ましい。
ベース担体への第一級アミノ基を複数有する化合物の付加方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物が結合し得る官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾された多孔性粒子と第一級アミノ基を複数有する化合物とを含む溶液を、所定の条件下で撹拌することにより行うことができる。
あるいは、ベース担体上でモノマーをグラフト重合させて、第一級アミノ基を複数有する化合物を付加してもよい。この場合、モノマーとして第一級アミノ基を含む化合物を使用してもよいし、グリシジルメタクリレートのようにアミンに対して反応性の基を有するモノマーをベース担体上でグラフト重合し、その後アンモニアと反応させて第一級アミノ基を複数有する化合物を付加してもよい。
あるいは、ベース担体上でモノマーをグラフト重合させて、第一級アミノ基を複数有する化合物を付加してもよい。この場合、モノマーとして第一級アミノ基を含む化合物を使用してもよいし、グリシジルメタクリレートのようにアミンに対して反応性の基を有するモノマーをベース担体上でグラフト重合し、その後アンモニアと反応させて第一級アミノ基を複数有する化合物を付加してもよい。
(疎水基)
疎水基としては、第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基に結合し、疎水性を有する限り特に限定されることはないが、疎水性クロマトグラフィー担体において通常用いられる疎水基が好ましい。そのような疎水基としては、飽和アルキル基および/またはフェニル基を含む基が挙げられる。飽和アルキル基は、直鎖状の飽和アルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8の直鎖状飽和アルキル基であることがより好ましく、n−ブチル基であることが特に好ましい。
疎水基としては、第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基に結合し、疎水性を有する限り特に限定されることはないが、疎水性クロマトグラフィー担体において通常用いられる疎水基が好ましい。そのような疎水基としては、飽和アルキル基および/またはフェニル基を含む基が挙げられる。飽和アルキル基は、直鎖状の飽和アルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8の直鎖状飽和アルキル基であることがより好ましく、n−ブチル基であることが特に好ましい。
好ましい疎水基の構造として、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造が挙げられる。
[式(1)〜(3)中、
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
言い換えると、nは、R1がフェニル基の場合に0〜8の整数であり、R1がHである場合に4〜8の整数である。
上記式(1)〜(3)で表される構造における炭素原子は、炭素数1〜2のアルキル基やアルコキシ基等の置換基、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基およびエトキシ基等を有していてもよい。
上記一般式(1)〜(3)の構造のうち、一般式(1)の構造がより好ましい。さらに好適なものとして、一般式(1)の構造のうち、nが4であることが好ましい。
上記式(1)〜(3)で表される構造における炭素原子は、炭素数1〜2のアルキル基やアルコキシ基等の置換基、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基およびエトキシ基等を有していてもよい。
上記一般式(1)〜(3)の構造のうち、一般式(1)の構造がより好ましい。さらに好適なものとして、一般式(1)の構造のうち、nが4であることが好ましい。
疎水基の第一級アミノ基への結合方式は、共有結合であれば特に制限されない。具体的には、例えば、酸無水物、酸塩化物、または活性エステルとアミノ基との反応によって形成されるアミド結合、あるいはエポキシ化合物またはハロゲン化物とアミノ基との反応によって形成される炭素−窒素結合であってよい。
上記のような疎水基を導入するための化合物としては、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。すなわち、疎水基としてはこれらの化合物由来の基が好都合である。これらの化合物を第一級アミノ基を複数有する基と反応させることにより、疎水基を、第一級アミノ基を複数有する基の第一級アミノ基に結合させることができる。上記化合物の中で、無水吉草酸および無水安息香酸がより好ましい。酸無水物は、第一級アミノ基を複数有する基との反応が温和な条件で効率よく進行する点から好ましい。
第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基を、疎水基で修飾する際の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物と疎水基を導入するための化合物とを含む溶液を、所定の条件下で撹拌することにより行うことができる。ベース担体に第一級アミノ基を複数有する基を結合させてから疎水基で修飾してもよいし、第一級アミノ基を複数有する化合物と疎水基を導入するための化合物を予め反応させてから、それをベース担体に結合させてもよい。
疎水基の構造は、以下の一般式(4)または(5)の構造であってもよい。
[式(4)および(5)中、
R2は、複素環基であり、
*は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
R2は、複素環基であり、
*は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
R2の複素環基としては、特に限定されないが、窒素原子を含む複素環基が好ましく、窒素原子を有する芳香族複素環基がより好ましい。複素環基における複素環として、具体的には、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾリン、ピラジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン等が挙げられ、ピリジン、イミダゾール、およびベンズイミダゾールが好ましい。
複素環基における炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基やアルコキシ基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、およびブトキシ基であることが好ましい。
複素環基における炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基やアルコキシ基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、およびブトキシ基であることが好ましい。
上記式(4)で表される疎水基を、第一級アミノ基を複数有する基に結合させるには、例えば、第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基に、メタクリル基を結合させ、さらにメタクリル基に複素環含有基を結合させる。メタクリル基は、第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基と、無水メタクリル酸、メタクリル酸の酸塩化物、またはメタクリル酸から誘導される活性エステル化合物などとを反応させることにより導入することができる。また、複素環含有基は、複素環基含有化合物を、第一級アミノ基に結合したメタクリル基と反応させることにより導入することができる。複素環基含有化合物は、例えば複素環基およびチオール基を含んでおり、この場合、チオール基がメタクリル基と反応する。
上記式(5)で表される疎水基を第一級アミノ基を複数有する基に結合させるには、例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基に、アリル基を結合させ、さらにアリル基に複素環含有基を結合させる。アリル基は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基と、第一級アミノ基と結合する官能基およびアリル基を併せ持つ化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル)とを反応させることにより導入することができる。また、複素環含有基は、複素環基含有化合物を第一級アミノ基に結合したアリル基と反応させることにより導入することができる。複素環基含有化合物は、例えば複素環基およびチオール基を含んでおり、この場合、チオール基がアリル基またはアリル基から誘導される官能基と反応する。
上記式(4)および(5)で表される疎水基の導入において使用される複素環基含有化合物は、複素環基を導入できる限り特に限定されないが、複素環基およびチオール基を含む化合物が好ましい。そのような化合物として、例えば、2−メルカプトエチルピリジン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルイミダゾール、2−メルカプト−4,5−メチルイミダゾール等が挙げられる。
第一級アミノ基を複数有する基における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されている。このアミノ基の修飾率は、クロマトグラフィー担体が有する全ての第一級アミノ基に対する疎水基で修飾されている第一級アミノ基の割合であり、例えばクロマトグラフィー担体に100個の第一級アミノ基が存在する場合、そのうちの20〜55個が疎水基で修飾されていることを意味する。アミノ基の修飾率は25〜55%がより好ましい。あるいは、アミノ基の修飾率は、10〜75%であってもよい。なお、疎水基がブチル基などの飽和アルキル基を含み、フェニル基を含まない場合、アミノ基の修飾率が40%超〜55%、より好ましくは45%〜55%、あるいは50%〜55%であると、より高効率で抗体凝集体を吸着除去することができる。また、疎水基がフェニル基を含む場合はアミノ基の修飾率が高くなるほど抗体回収率の低下が認められることから、抗体回収率と抗体凝集体の吸着除去能のバランスを最適化していくことが好ましい。
第一級アミノ基を複数有する基と疎水基を導入するための化合物とを反応させる際に、疎水基を導入するための化合物の量を調節することにより、アミノ基の修飾率が上記範囲になるように調節することができる。アミノ基の修飾率は、疎水基を導入する前後でクロマトグラフィー担体のイオン交換容量をそれぞれ測定し、その値を比較することにより算出することができる。
上述したリガンドは、例えば、以下の一般式(a)で表される繰返し単位と一般式(b)で表される繰返し単位を含む。
式(b)中、nおよびR1は上記一般式(1)において定義したとおりである。本発明で使用するクロマトグラフィー担体は、親水性基であり静電的相互作用を有するアミノ基(一般式(a)における−NH2基)、静電的相互作用を有するアミド基(一般式(b)における−NH−CO−基)、疎水的相互作用を有する疎水性基(一般式(b)における−(CH2)n−R1基)を有することが好ましく、これら3種の基が相互に作用することによって特に好ましい特性が得られる。
上述したように、本発明の方法は、抗体溶液の電気伝導度にかかわらず使用することができ、例えば、22mS/cm程度(例えば、14〜22mS/cm)の比較的高い電気伝導度を有する抗体溶液についても高効率で抗体凝集体を吸着除去することができる。したがって、本発明の方法によると、22mS/cm以下、好ましくは2〜22mS/cm、より好ましくは5〜15mS/cmの電気伝導度を有する抗体溶液から抗体凝集体を吸着除去することができる。
また、上述したように、本発明の方法は、抗体溶液中に多価陰イオンが存在する場合においても使用することができる。抗体溶液中に存在し得る多価陰イオンとしては、クエン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン等が挙げられ、クエン酸イオン、リン酸イオンおよび硫酸イオンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
2.抗体
精製対象の抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が挙げられるが、モノクローナル抗体であることが好ましい。抗体の種類としては、例えば、マウス抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらのFc領域などを改変した抗体などが挙げられ、分子型としては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、Fab、Fc、Fc−融合蛋白、VH、VL、VHH、Fab’2、scFv、scFab、scDb、scDbFcなどが挙げられる。
精製対象の抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が挙げられるが、モノクローナル抗体であることが好ましい。抗体の種類としては、例えば、マウス抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらのFc領域などを改変した抗体などが挙げられ、分子型としては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、Fab、Fc、Fc−融合蛋白、VH、VL、VHH、Fab’2、scFv、scFab、scDb、scDbFcなどが挙げられる。
また、抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の一部を積極的に変性させた、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体も含まれる。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の変性方法としては、例えば、Journal of PHARMACEUTICAL SCIENCES、2011、100、2104−2119に記載の方法が挙げられる。
抗体凝集体とは、2分子以上の抗体の単量体が共有結合または非共有結合により重合した分子を意味し、したがって本発明の方法によると、2量体以上の抗体凝集体を吸着除去することができる。
抗体溶液に含まれる不純物としては、宿主由来タンパク質(HCP)の他、例えば、核酸、ウイルス、プロテインAリーク、抗体の分解物、および変性、糖鎖成分の除去、酸化、脱アミド等を受けた修飾抗体など、培養過程または他のクロマトグラフィー処理工程などで生じ得るものが挙げられる。
抗体溶液としては、例えば、血漿、血清、乳もしくは尿などの生体から得られる組成物、遺伝子組換え技術もしくは細胞融合技術を用いて得られる抗体産生細胞、大腸菌などの菌類の培養液、またはトランスジェニック非ヒト動物、植物もしくは昆虫などから得られる組成物などが挙げられる。
抗体産生細胞としては、例えば、宿主細胞に所望の抗体をコードする遺伝子が組み込まれた形質転換細胞などが挙げられる。宿主細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、酵母細胞などの細胞株が挙げられる。具体的には、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、ラットミエローマ細胞であるYB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞などが挙げられる。
抗体産生細胞を培養する培地としては、各々の細胞の培養に適した培地であればいずれも使用することができる。例えば、血清含有培地、血清アルブミンもしくは血清分画物などの動物由来成分を含まない培地、無血清培地、無蛋白培地などが挙げられるが、好ましくは無血清培地または無蛋白培地である。また、必要に応じて、抗体産生細胞の生育に必要な生理活性物質、栄養因子などを添加することができる。これらの添加剤は、培養前に予め培地に含有させるか、培養中に添加培地または添加溶液として培地へ適宜追加供給する。添加剤は1種類でも2種以上でもよく、また、連続的に添加しても、断続的に添加してもよい。
抗体を産生するトランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫としては、タンパク質をコードする遺伝子が細胞内に組み込まれた非ヒト動物、植物または昆虫が挙げられる。非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、サルなどが挙げられる。植物としては、例えば、タバコ、ポテト、トマト、ニンジン、ソイビーン、アブラナ、アルファルファ、コメ、小麦、大麦、コーンなどが挙げられる。
また、クロマトグラフィー担体に負荷される抗体溶液としては、上述したような抗体を含有する血漿、尿などの生体から得られるものの他、精製する過程で得られる抗体溶液も含まれる。具体的には、例えば、細胞除去液、沈殿物除去液、アルコール分画液、塩析分画液、クロマトグラフィー溶出液などが挙げられる。さらに、抗体溶液中に粒子などの不溶物が存在する場合には予めそれらを除去し、その後に本発明の方法に供してもよい。粒子などの不溶物の除去方法としては、例えば、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、これらの方法を組み合わせた方法などが挙げられる。
また、必要に応じて、抗体溶液のpH、導電率、緩衝液、塩濃度、添加物、抗体濃度、クロマトグラフィー担体の単位体積あたりの抗体負荷量などを予め好適な条件に調整してから、本発明の方法に供してもよい。これらの調整方法としては、例えば、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法が挙げられる。
3.方法
本発明の抗体凝集体の低減方法は、抗体溶液を上述したクロマトグラフィー担体に接触させて、抗体凝集体を吸着除去することを含む。具体的には、カラムに上述したクロマトグラフィー担体を充填し、そこへ抗体溶液を流して、例えば抗体凝集体を担体に吸着させることにより抗体溶液中の抗体凝集体量を低減することができる。
本発明の抗体凝集体の低減方法は、抗体溶液を上述したクロマトグラフィー担体に接触させて、抗体凝集体を吸着除去することを含む。具体的には、カラムに上述したクロマトグラフィー担体を充填し、そこへ抗体溶液を流して、例えば抗体凝集体を担体に吸着させることにより抗体溶液中の抗体凝集体量を低減することができる。
本発明の方法で使用するクロマトグラフィー担体は抗体溶液中に含まれる抗体凝集体を吸着する能力が高いため、本発明の方法ではフロースルーモードを採用することが好ましい。ここで、フロースルーモードとは、抗体凝集体をクロマトグラフィー担体に結合させ、抗体単量体はクロマトグラフィー担体に結合せずに流れて回収される方法を言う。
あるいは、バインド・アンド・エリュートモードで使用することも可能である。抗体単量体をクロマトグラフィー担体にいったん結合させ、その後、抗体単量体を溶出(エリュート)させて回収する。結合させた抗体単量体の溶出方法としては、抗体単量体とクロマトグラフィー担体との親和性が低下するような特定の塩濃度またはpHを有する緩衝液を通液して溶出させる一段階溶出法、段階的に塩濃度またはpHを変化させて抗体単量体を溶出させるステップワイズ法、または連続的に塩濃度またはpHを変化させて抗体単量体を溶出させるグラジエント法が挙げられる。
クロマトグラフィー条件の設定においては、クロマトグラフィー担体に対する、抗体単量体と抗体凝集体の親和性の違いを利用する。例えば、担体構造(リガンド種、リガンド密度、リガンド配向性、粒子径、細孔径、ベースマトリクス組成など)や、抗体単量体と抗体凝集体の物理化学的性質(等電点、電荷、疎水性度、分子サイズ、立体構造など)の違いを考慮して条件設定する。
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液に含まれる成分としては、緩衝能を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、1〜300mmol/Lのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TES、Tricineなどが挙げられる。また上記の塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの他の塩と組み合わせて用いることもできる。さらに、緩衝液には、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸、グルコース、スクロース、ラクトース、シアル酸などの糖、またはこれらの誘導体などが含まれていてもよい。
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液のpHとしては、好ましくは2〜9の範囲であり、より好ましくは3〜8の範囲である。
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液の線速度としては、好ましくは50〜1000cm/hの範囲である。
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液の線速度としては、好ましくは50〜1000cm/hの範囲である。
クロマトグラフィー担体の単位体積あたりの抗体負荷量としては、好ましくは10〜500g/Lであり、より好ましくは60〜200g/Lである。
本発明の方法は、他の精製方法と組み合わせて実施してもよい。他の精製方法としては、抗体の精製に適した方法であればいずれも用いられるが、例えば、クロマトグラフィー、活性炭処理、アルコール分画、沈殿物除去、塩析、緩衝液交換、濃縮、希釈、ろ過、ウイルス不活性化、ウイルス除去などが挙げられる。他の精製方法としては、一つまたは複数の方法を選択してもよく、本発明の方法の前に行っても後に行ってもよい。
他の精製方法がクロマトグラフィーである場合、使用される担体または膜としては、ヘパリン担体およびプロテインA担体などのアフィニティー担体、陽イオン交換担体、陽イオン交換膜、陰イオン交換担体、陰イオン交換膜、ゲルろ過担体、疎水性相互作用担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、硫酸化アガロース担体、混合モード(マルチモーダル)担体などが挙げられる。
本発明の方法によると、クロマトグラフィー担体に負荷する前の抗体溶液中に含まれる抗体凝集体の量と負荷した後の抗体溶液中に含まれる抗体凝集体の量を比較した場合に、65%以上の抗体凝集体量の低下を達成することができる。
1.抗体溶液の調製
(1)抗体凝集体の生成
10.9mg/mLモノクローナル抗体溶液を、20mM 酢酸Naバッファーおよび50mM NaClを含む溶液(pH4.0)で透析した。得られた溶液を1.5mLチューブに分注し、ブロックヒーターを用いて60℃で60分間加熱した。加熱終了後、氷冷し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した。サイズ排除クロマトグラフィー分析を行い、凝集体の生成を確認した(図1)。
(1)抗体凝集体の生成
10.9mg/mLモノクローナル抗体溶液を、20mM 酢酸Naバッファーおよび50mM NaClを含む溶液(pH4.0)で透析した。得られた溶液を1.5mLチューブに分注し、ブロックヒーターを用いて60℃で60分間加熱した。加熱終了後、氷冷し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した。サイズ排除クロマトグラフィー分析を行い、凝集体の生成を確認した(図1)。
(2)抗体溶液の調製
(抗体溶液A)
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH7.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH7.0、電気伝導度5mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度(溶液中の抗体単量体と抗体凝集体の合計濃度)は5.1mg/mL、凝集体割合(溶液中の抗体単量体と抗体凝集体の合計に対する抗体凝集体の割合)は9.9%(後述するサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるピーク面積%から算出した値)であった。
(抗体溶液A)
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH7.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH7.0、電気伝導度5mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度(溶液中の抗体単量体と抗体凝集体の合計濃度)は5.1mg/mL、凝集体割合(溶液中の抗体単量体と抗体凝集体の合計に対する抗体凝集体の割合)は9.9%(後述するサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されるピーク面積%から算出した値)であった。
(抗体溶液B)
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH7.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH7.0、電気伝導度15mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度は5.1mg/mL、凝集体割合は9.5%であった。
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH7.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH7.0、電気伝導度15mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度は5.1mg/mL、凝集体割合は9.5%であった。
(抗体溶液C)
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH8.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH8.0、電気伝導度5mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度は5.1mg/mL、凝集体割合は7.8%であった。
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH8.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH8.0、電気伝導度5mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度は5.1mg/mL、凝集体割合は7.8%であった。
(抗体溶液D)
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH8.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH8.0、電気伝導度15mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度は5.1mg/mL、凝集体割合は8.2%であった。
10.9mg/mLのモノクローナル抗体に、上記(1)で得られた変性モノクローナル抗体を混合した。この混合液を20mM Tris−HCl(pH8.0)およびNaCl(5mS/cm)を含む溶液で透析した。次に、超純水、1mol/LのTris、5mol/Lの塩化ナトリウム溶液を用いてpH8.0、電気伝導度15mS/cmの溶液を調製した。得られた溶液を0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過後の溶液における抗体濃度は5.1mg/mL、凝集体割合は8.2%であった。
2.カラムクロマトグラフィー
(実施例1)
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液A
A1バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(5mS/cm)
B1バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
(実施例1)
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液A
A1バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(5mS/cm)
B1バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA1バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA1バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB1バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA1バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA1バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA1バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB1バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA1バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA1バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
(iv)サイズ排除クロマトグラフィーによる分析
カラム:TSK gel SuperSW mAb HR (東ソー株式会社製)
システム:Infinity1200(Agilent)
移動相:0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液+0.1M硫酸ナトリウム(pH6.7)
流速:0.7ml/min
インジェクション量:50μL
(iv)サイズ排除クロマトグラフィーによる分析
カラム:TSK gel SuperSW mAb HR (東ソー株式会社製)
システム:Infinity1200(Agilent)
移動相:0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液+0.1M硫酸ナトリウム(pH6.7)
流速:0.7ml/min
インジェクション量:50μL
単量体回収率は以下の式より求めた。
単量体回収率(%)={(回収フラクションの抗体単量体に由来するピーク面積の和)/(抗体溶液の抗体単量体に由来するピーク面積×通液量)}×100
凝集体割合は以下の式より求めた。
凝集体割合(%)={(回収フラクションの抗体凝集体に由来するピーク面積の和)/(回収フラクションの抗体単量体に由来するピーク面積と抗体凝集体に由来するピーク面積の和)}×100
ここで、回収フラクションとは、カラム通過液とその後に通液したバッファー洗浄液を1mLずつ回収したフラクションである。
単量体回収率(%)={(回収フラクションの抗体単量体に由来するピーク面積の和)/(抗体溶液の抗体単量体に由来するピーク面積×通液量)}×100
凝集体割合は以下の式より求めた。
凝集体割合(%)={(回収フラクションの抗体凝集体に由来するピーク面積の和)/(回収フラクションの抗体単量体に由来するピーク面積と抗体凝集体に由来するピーク面積の和)}×100
ここで、回収フラクションとは、カラム通過液とその後に通液したバッファー洗浄液を1mLずつ回収したフラクションである。
(比較例1)
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例1と同様に試験を行った。
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例1と同様に試験を行った。
(実施例2)
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液B
A2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(15mS/cm)
B1バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液B
A2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(15mS/cm)
B1バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA2バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA2バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB1バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA2バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA2バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、実施例1と同様にサイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA2バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA2バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB1バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA2バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA2バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、実施例1と同様にサイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
(比較例2)
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例2と同様に試験を行った。
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例2と同様に試験を行った。
(実施例3)
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液C
A3バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+NaCl(5mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+1M NaCl
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液C
A3バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+NaCl(5mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+1M NaCl
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA3バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA3バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB2バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA3バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA3バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA3バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA3バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB2バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA3バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA3バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
(比較例3)
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例3と同様に試験を行った。
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例3と同様に試験を行った。
(実施例4)
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液D
A4バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+NaCl(15mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+1M NaCl
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX IB(JNC株式会社製)
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)抗体溶液およびバッファー
抗体溶液:抗体溶液D
A4バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+NaCl(15mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)+1M NaCl
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA4バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA4バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB2バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA4バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA4バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA4バッファーを0.294mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液10mLを0.15mL/minでカラムに通液した。次いで、15カラム体積分のA4バッファーを0.294mL/minで通液して洗浄した。その後、20カラム体積分のB2バッファーを0.15mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA4バッファーを0.294mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液とその後のA4バッファー洗浄液を1mLずつ回収し、サイズ排除クロマトグラフィーで分析した。
(比較例4)
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例4と同様に試験を行った。
実施例および比較例で得られた凝集体割合および単量体回収率を以下の表1にまとめる。
担体をCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)に変更したことを除き、実施例4と同様に試験を行った。
実施例および比較例で得られた凝集体割合および単量体回収率を以下の表1にまとめる。
表1に示すように、本発明の方法によると、抗体溶液中の抗体凝集体の量を有意に低減することができる。そして、抗体単量体も高い収率で回収することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
Claims (12)
- 陰イオン交換基および疎水性基を有するクロマトグラフィー担体に抗体溶液を接触させる工程を含む、前記抗体溶液における抗体凝集体の量を低減する方法。
- 前記クロマトグラフィー担体が、多孔性粒子を含むベース担体と前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する基とを含み、前記第一級アミノ基の一部が疎水基で修飾された構造を有する請求項1に記載の方法。
- 前記クロマトグラフィー担体に含まれる全ての第一級アミノ基のうちの20〜55%が疎水基で修飾されている、請求項2に記載の方法。
- 前記第一級アミノ基を複数有する基が、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリグアニジンおよびポリオルニチンからなる群より選択される化合物に由来する基である請求項2または3に記載の方法。
- 前記第一級アミノ基を複数有する基の重量平均分子量が、5000〜15000である請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記疎水基が、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、前記第一級アミノ基を複数有する基におけるアミノ基との結合部位である]。 - 前記疎水基が、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物に由来する基である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記疎水基で修飾された第一級アミノ基を複数有する基が、以下の一般式(a)で表される繰返し単位および一般式(b)で表される繰返し単位を含む、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法:
nは、0〜8の整数であり、
R1は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基である)。 - 抗体溶液中の抗体凝集体の量が65%以上低減される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記抗体溶液の電気伝導度が22mS/cm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を行うことを含む、抗体の精製方法。
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JP2018076173A JP2019182791A (ja) | 2018-04-11 | 2018-04-11 | 抗体凝集体の低減方法 |
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