JP2019194333A - ポリ(エチレングリコール)メタクリレートミクロゲル、調製方法および使用 - Google Patents

ポリ(エチレングリコール)メタクリレートミクロゲル、調製方法および使用 Download PDF

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Abstract

【課題】単分散性、pH感受性および感熱性である利点を有し、磁性ナノ粒子または生物活性分子を保持することができ、元の光学および電磁特性を有する透明膜を形成することができる、ハイブリッドミクロゲルの提供。【解決手段】架橋剤の存在下で、以下の3種のモノマー:ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)2MA)、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)nMA)(式中、nは3〜12の範囲の整数である)、式CR1R2=CR3R4(式中、R1、R2、R3およびR4は水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、ただし、4つの基の少なくとも1つは−COOHまたは−COO−M+基を含み、M+はカチオンを表す)、のモノマーの水性相沈殿重合によって得られるミクロゲル。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ(オリゴ−(エチレングリコール)メタクリレート)ミクロゲル、水性媒体中でそれを調製する方法ならびに光学、電子工学、センサ、化粧品、薬学および医療診断などの様々な適用分野におけるその使用に関する。
これらのミクロゲルは、単分散性、pH応答性および温度応答性である利点ならびに有機分子または無機粒子を組み込むことができる利点を有する。任意選択に無機ナノ粒子が充填されたこれらのミクロゲルのコロイド溶液から調製された膜は、非常に有益な光学特性および電気機械特性を有する。
温度応答性ミクロゲルについていくつかの化学的性質が存在する。主なものは、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、およびそれほど多くはないが、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)(PVCL)またはポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとする。
文献に記載されているポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)ミクロゲルを合成するための様々な経路は、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマー(M(EO)MA、いくらか疎水性)、およびペンタ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマー(M(EO)MA、いくらか親水性)などのモノマーの組合せに関与する。
P(M(EO)MA−co−M(EO)MA)をベースとする温度応答性コアならびにポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)およびポリ(アクリル酸)(P(M(EO)MA−co−M(EO)MA−co−AA))の混合物をベースとするシェルからなる、温度応答性およびpH応答性ミクロゲルの合成は、Chi,C.、T.Cai、およびZ.Hu、Oligo(ethylene glycol)−Based Thermoresponsive Core−Shell Microgels. Langmuir、2009年.25:3814〜3819頁に記載されている。これらのミクロゲルは疎水性コアおよび親水性シェルを有するコア/シェル構造を有する。
生物活性分子を、ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとするミクロゲルに組み込むことが示唆されている。
例えば、ポリ(M(EO)MA)コアおよびポリ(M(EO)MA−co−M(EO)MA)シェルならびにポリマーを犠牲シリカ粒子上にグラフトすることによって得られるポリ(M(EO)MA−co−OEGMA)ナノカプセルからなる温度応答性ミクロゲルが、Zhouら、Engineering oligo(ethylene glycol)−based thermosensitive microgels for drug delivery applications. Polymer、2010年.51:3926〜3933頁、およびWangら、Preparation of biocompatible nanocapsules with temperature−responsive and bioreducible properties、Journal of Materials Chemistry、2011年.21:15950頁のそれぞれによって有効成分を送達するために提案されている。
無機ナノ粒子を含有する公知のハイブリッド(またはナノコンポジット)温度応答性ミクロゲルは、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)をベースとするミクロゲルである。これらのミクロゲルは生体適合性ではない欠点を有する。
これらの物質を調製するための第1の手法は、ナノ粒子の存在下でミクロゲルを合成することである。このストラテジーは、重合の複雑性に起因してこれらのハイブリッドミクロゲルの製造を困難にする。組み込まれるナノ粒子の比率は一般的に少なく、ミクロゲルは多分散性である。さらに、それは一般的にコア−シェル型構造を生じ、その中にナノ粒子が均一に分布する。
第2の手法は、最初に、イオン基によって官能化された温度応答性ミクロゲルを合成することである。次に、無機ナノ粒子がナノ粒子の前駆体塩の共沈によって組み込まれる。出願WO2004/081072は、例えば、アクリル酸ナトリウム(−COONa)アニオン単位を有するPNIPAMミクロゲルならびに磁性(Fe)粒子、金(Au)粒子、および量子ドット(CdTe、CdS)粒子などの様々なナノ粒子の前駆体塩のin situ共沈を記載している。
第3の手法は、溶媒移動によって無機ナノ粒子を組み込むことである。疎水性無機ナノ粒子は、有機相中で合成され、分散される。温度応答性ミクロゲルはナノ粒子を含有する溶液に加えられ、次いで全てが水溶液に移動し、これにより、ミクロゲル中にナノ粒子が封入される。この方法は、フォトルミネセンスにおける適用のためにポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ミクロゲルおよび量子ドット(CdS)ナノ粒子を使用した特許の対象である(米国特許第7914710号)。
第4および第5の手法は、イオン電荷を有するミクロゲルを合成すること、およびミクロゲルの表面において反対電荷のナノ粒子を吸着することである。2−アミノエチルメタクリレート(AEMA)カチオン基を有するポリ(スチレン−co−N−イソプロピルアクリルアミド)ラテックスの調製が、出願WO1997/045202に記載されている。表面が負に帯電した磁性γ−Feナノ粒子は静電相互作用によってラテックスの表面において吸着された。次いでナノ粒子は、ハイブリッドラテックスの表面におけるPNIPAMの新たな外側シェルの合成によって構造中に捕捉された。
ごく最近では、正電荷(TiO)を有するナノ粒子が、アクリレート(COO)基を含む単位によって帯電したPNIPAMミクロゲル構造内に組み込まれた(米国特許第8158005号)。
ミクロゲル、特に磁性特性を有する温度応答性ミクロゲルの使用は、特定の分野において薄膜の形態でのそれらの調製を必要とする。
水性相中に予め分散したミクロゲルから構成される薄膜の形成は、2つの矛盾する要因を調整することを必要とするので、困難な合成プロセスである。水性相中に分散したミクロゲルは、ミクロゲルが凝集または沈殿することを防ぐ反発電荷によって安定化される。しかしながら、ミクロゲルは膜を形成するために互いに相互作用してミクロゲルの層を形成しなければならない。いくつかのプロセスがそれらを形成するために開発されなければならない。
修飾された表面上にミクロゲルを自己集合させるための第1のプロセスは、その表面上にイオン電荷を生じさせるために前処理した基材の表面にミクロゲルを固定することである。ミクロゲルは、一般に重合開始剤に由来するか、またはイオンコモノマーに由来するイオン基を有する。ミクロゲルは、反対に帯電した基との静電相互作用によって基材の表面に固定され得る。この技術により、基材上にミクロゲルの薄層を堆積させることが可能になる(単層技術)が、それはまた、連続表面処理によってこれらの層を増加させることも可能にする(レイヤー・バイ・レイヤー(Layer−by−Layer)技術)。この技術によれば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)またはP(NIPAM−co−AA)をベースとするミクロゲルは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)基によってグラフトされた基材上に堆積される。ミクロゲルの各層の後に、正電荷(ポリ(アリルアミン塩酸塩)PAHまたはポリ(エチレンイミン)PEI)を有するポリマーが、アミンの酸性度定数において、より低いpHについての正電荷を再生するために修飾された基材に加えられた。
基材上に堆積したミクロゲルの膜は、糖尿病を処置するためのインスリン(Nolan,C.M.、M.J.Serpe、およびL.A.Lyon、Thermally Modulated Insulin Release from Microgel Thin Films. Biomacromolecules、2004年.5(5):1940〜1946頁)またはがん細胞を処置するためのドキソルビシン(Serpe,M.J.ら、Doxorubicin Uptake and Release from Microgel Thin Films. Biomacromolecules、2005年.6(1):408〜413頁)などの有効成分を送達するために使用されている。
この技術は、ミクロゲルの薄膜の生成に固有のパラメーター(ミクロゲルの膜厚および構造化など。)を制御する利点を有する。このプロセスの欠点は、特定のミクロゲル(帯電したミクロゲル)および前処理した基材の使用を必要とする、その生成の複雑性にある。これにより、任意の表面上でのミクロゲルの任意の直接的使用が妨げられる。
コロイド粒子を封入するヒドロゲル膜を生成するための第2のプロセスは、軟質および湿潤膜を形成するためにヒドロゲル中に粒子を封入することである。このプロセスは主にフォトニック用途のために研究されている。この概念は、集合した粒子の光学特性を湿潤状態におけるヒドロゲルの機械特性と組み合わせることである。いくつかの例が文献に記載されており、主に硬質球の形態のポリ(スチレン)粒子を使用している。E.Tianらは、いくつかの構造化された層としてポリ(スチレン−co−メチルメタクリレート−co−アクリル酸)粒子を集合させ、ポリ(アクリルアミド)ヒドロゲル中に全てを封入した(Tian,E.ら、Colorful humidity sensitive photonic crystal hydrogel. Journal of Materials Chemistry、2008年.18:1116〜1122頁)。2つの実体の組合せにより、フォトニックヒドロゲルを開発することが可能になった。ごく最近では、H.Jiangらもまた、ポリ(ビニルアルコール)またはPVAヒドロゲル中にポリ(スチレン)粒子を封入した(Jiang,H.ら、Photonic crystal pH and metal cation sensors based on poly(vinyl alcohol) hydrogel. New Journal of Chemistry、2012年.36:1051〜1056頁)。
ごく最近では、H.Kimらは、磁場効果下でシリカ酸化物(SiO)により被覆した酸化鉄(Fe)の磁性粒子を集合させ、この集合物を、ポリ(エチレングリコ−ル)ジアクリレートモノマーおよび光開始剤の混合物中に封入した。混合物の光重合により、ポリ(エチレングリコールアクリレート)樹脂中に粒子を固定することが可能になる。バルク中に固定した磁性粒子は、印加される磁場によって規定され得るフォトニック特性を有する(米国特許出願公開第2012/0028834号)。この技術は、より軟質のミクロゲル膜を生成する利点を有する。なぜなら、その軟質のミクロゲル膜は、固体支持体ではなく、溶液中の「軟らかい」ヒドロゲルによって支持されるからである。しかしながら、粒子のこれらの膜の生成は複雑なままであり、様々な重合ステップが必要となり、これにより、粒子の直接的使用の間のいずれかの自然発生する自己集合が妨げられる。
ミクロゲル膜を形成するための第3のプロセスは、反応性官能基をミクロゲルの表面に付加することである。この官能性は、ミクロゲルの合成の間のコモノマーの付加によって提供される。これらの反応性官能基は、互いに共有結合を形成し得るか、または別の実体との反応によって共有結合を形成し得る。次いで、各ミクロゲルの間に架橋点を形成することができ、これらの全てのことにより、互いに化学的に結合しているミクロゲルから構成される膜が得られる。この自己集合プロセスは主にフォトニック用途のために研究されている。自己集合プロセスはミクロゲルの合成の間に付加される官能性の種類に依存する。これらの研究の大多数はPNIPAM系ミクロゲルの集合に焦点を当てている。
第1の手法は、PNIPAMミクロゲル内にポリ(アクリル酸)(すなわちPPA)を付加することである。ミクロゲルの自己集合はPAAのカルボン酸官能基の間の弱い相互作用のために起こる。相互作用の総和により、ミクロゲルを自己集合させ、媒体をゲル化することができる。
共有結合を生じさせることである第2の手法はまた、PNIPAMミクロゲルの溶液への架橋剤の添加によって、またはPNIPAM−co−NMAミクロゲル(NMA:N−メチロールアクリルアミドまたはN−ヒドロキシメチルアクリルアミド)の重縮合によって提案されている。ミクロゲルの分散系の簡単な乾燥によってミクロゲルは自己集合する。膜の形成は、架橋剤の加熱後重合またはNMAの熱および酸塩基触媒縮合のさらなるステップを必要とする。
ある研究は、表面重合性官能基を有するオリゴ(エチレングリコール)メタクリレート誘導体ミクロゲルを使用した。これらのミクロゲルは、フォトニック用途のためのそれらの集合の間、UV光重合によって架橋された(米国特許出願公開第2010/0076105号)。しかしながら、膜形成は、約数週間の非常に長い乾燥時間を必要とする。
本発明の目的は、従来技術のミクロゲルと比較して以下の利点:単分散性;pH応答性;生体適合性;反対に帯電したナノ粒子の吸着によってハイブリッド(またはナノコンポジッド)ミクロゲルを形成する能力;簡単な乾燥プロセスによっていくつかの層において自己集合する能力;透明膜を形成する能力;粘着性および弾性膜を形成する能力;膜の形態において圧縮効果によって電位を発生する能力;膜の形態において光を回折し、それにより色を発生する能力の少なくとも1つを有するオリゴ(エチレングリコール)メタクリレートミクロゲルを提案することである。
本発明の文脈の範囲内で、特定のポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)が、周囲温度での水の蒸発によって高い膜形成電位を有することが発見された。特に、本発明は初めて、構造化特性を有する薄膜の形態の磁性ハイブリッドミクロゲルの自己集合を提案する。
本発明のミクロゲル膜は完全に自立する利点を有する。ミクロゲルは封入または支持されないので、膜形成の間、ミクロゲルと、それらが堆積される基材、例えば皮膚との間の相互作用が最大となる。膜は周囲温度での簡単な乾燥によって得られ、ラジカル開始剤は必要とされない。任意選択にナノ粒子を含有する本発明のミクロゲルは、透明膜を形成するためにいくつかの層において自己集合できる。
本発明の文脈の範囲内で、ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)ミクロゲルが、機械的作用によって電場を発生できる高分子電解質物質であることが発見された。
本発明は、コロイド特性およびまた、任意選択に塩化された−COOH基の存在のために、水中の温度および/またはpHの変化に対する応答性を備えているポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)ミクロゲルに関する。
本発明の意味の範囲内で、「ミクロゲル」は、乾燥状態(すなわち2重量%未満の水を含有する)において100nmから500nmまで変化する、好ましくは350から450nmの間である、より好ましくは400nmのオーダーであるサイズを有する球形粒子の形態の架橋ポリマーであることが理解される。本発明のミクロゲルは、いくつかのモノマーの水性相共重合のプロセスによって得ることができるという意味でミクロヒドロゲルである。本発明のミクロゲルはコア/シェル構造を有さず:そのミクロゲルを形成するモノマーは粒子の体積全体にわたって均一に分布しており、これによりそのミクロゲルに特定の特性を与える。
本発明のミクロゲルは、同時に単分散性、温度応答性、pH応答性および生体適合性である利点を有し得る。本発明のミクロゲルは、一般にポリ(アルキルアクリルアミド)をベースとする構造である従来技術の温度応答性ミクロゲルと異なり、同時に温度応答性および生体適合性であり得る。
本発明のミクロゲルは、分枝エチレンオキシド繰り返し単位およびカルボン酸(−COOH)またはカルボキシレート(−COO)基を含む単位の混合物を含むという新規性を有し、それらの含有物により、目標とされた用途に応じて変化させることが可能になる。これらの基はミクロゲルにpH応答特性を与える。
したがって、本発明の第1の主題は、架橋剤の存在下で、以下の3種のモノマー:
− ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)、
− オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)(式中、nは3〜12の範囲、好ましくは8〜10の範囲の整数である)、
− 式CR=CRのモノマー(式中、R、R、RおよびRは、水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、4つの基の少なくとも1つは、−COOHまたは−COO基を含み、Mはカチオンを表す)
の水性相沈殿重合によって得られるミクロゲルである。
本文書の残りにおいて、「−COOH」という用語は、簡略化のために、−COOH酸形態または−COO塩化形態を示す。
M(EO)MAは、例えばモノマーの総モル数の50mol%〜90mol%を占め、M(EO)MAは、好ましくはモノマーの総モル数の10〜50mol%を占め、式CR=CRのモノマーは、好ましくはモノマーの総モル数の0.1mol%〜20mol%を占め、これらの3種の含有物の合計は100%に等しい。
M(EO)MAとM(EO)MAとの間のモル比は、好ましくは1:1から20:1の間、例えば5:1から10:1の間である。本発明の意味の範囲内で、「間」という表現は、その表現の前の数値制限を除外する。他方で、「〜から〜の範囲」という表現は、記載された制限を含む。
式CR=CRのモノマーのモル数は、3種のモノマーの総モルの総数の0から20mol%の間、例えば0.1〜5mol%の範囲であり得る。
一実施形態によれば、M(EO)MAは、例えば3種のモノマーの総モル数の80〜90mol%を占め、M(EO)MAは、好ましくはモノマーの総モル数の5〜15mol%を占め、メタクリル酸は、好ましくはモノマーの総モル数の0.1〜10mol%を占め、これらの3種の含有物の合計は100%に等しい。
式CR=CRのモノマーは、好ましくはRおよびRの各々が水素を表し、RがHまたはアルキル基、好ましくは−OHまたは−COOHで任意選択に置換されているC1〜C6アルキル基を表し、Rは、Rから独立して、−COOH基またはアルキル基、好ましくは−OHまたは−COOHで任意選択に置換されているC1〜C6アルキル基を表す。アルキル基は、メチル、エチルまたはn−ブチルであり得る。一つの特定の実施形態によれば、RおよびRの各々は水素を表し、RおよびRは独立して−H、−COOH、または−CH−COOHを表す。
式CR=CRのモノマーは、例えばメチルアクリル酸、メチルメタクリル酸、エチルアクリル酸、エチルメタクリル酸、n−ブチルアクリル酸およびn−ブチルメタクリル酸から選択され得る。
一実施形態によれば、式CR=CRのモノマーは、メタクリル酸またはイタコン酸であり得る。アクリル酸は、特定の場合、式CR=CRのモノマーの定義から除外され得る。
架橋剤は、1〜10個のエチレングリコール単位を含むオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、N,N−ジビニルベンゼン、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、二硫化アリル、ビス(2−メタクリロイル)オキシエチルジスルフィドおよびN,N−ビス(アクリロイル)シスタミンからなる群から選択され得る。
架橋剤は、例えば3種のモノマーの総モル数の1〜5mol%を占める。
使用されるモノマーは、好ましくはジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA、Mn 250g.mol−1)、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA、Mn 475g.mol−1)、メタクリル酸(MAA)である。
架橋剤は、例えば4〜5個のエチレンオキシド単位(OEGDA、Mn 250g.mol−1)を含むオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレートである。好ましいモノマーおよび架橋剤の化学構造は図1に表される。
本発明のミクロゲルの平均サイズは、それが乾燥しているか、または水溶液中にあるかどうかに応じて変化し得る:したがって乾燥状態におけるミクロゲルは、それが20℃にて水溶液中に存在している場合のその最初のサイズの4倍に到達し得る。乾燥状態における本発明のミクロゲルの平均サイズは100〜1000nmの範囲であり得る。60°の角度および20℃の温度にて測定したミクロゲルの流体力学的動径分布関数は、有益には1.1未満であり、これはミクロゲルに単分散性の性質を与える。
本発明のミクロゲルは有機または無機粒子を含んでもよく、この場合、それらは一般にハイブリッドミクロゲルとして知られている。導入される粒子は、好ましくは1から150nmの間、例えば5から50nmの間のサイズを有し、ナノ粒子として知られている。ナノ粒子は磁性であってもよいか、または磁性でなくてもよい。
本発明の第2の主題は、磁性ナノ粒子を含有するポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとする単分散性、温度応答性および磁性ハイブリッドミクロゲル、ならびにそれらのハイブリッドミクロゲルを調製する方法である。
本発明のポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとする特定の単分散性、温度応答性および磁性ハイブリッドミクロゲルは、少なくとも2種のモノマー:
− ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)、および
− オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)(式中、nは3〜12の範囲の整数である)から得られ、任意選択に第3のモノマー:
− 式CR=CR(式中、R、R、RおよびRは水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、ただし、4つの基の少なくとも1つは−COOHまたは−COO基を含み、Mはカチオンを表す)のモノマー
の存在下で得られる。
本発明のポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとする単分散性、温度応答性および磁性ハイブリッドミクロゲルを調製する方法は、
− 表面が正に帯電し、水溶液中に存在しているナノ粒子のコロイド分散系を調製するステップと、
− 請求項1から4の一項に記載のミクロゲルの水性コロイド分散系を調製するステップと、
− 2種のコロイド分散系を混合し、pHをナノ粒子の等電点を上回るように調整するステップとを含む。
一実施形態によれば、ナノ粒子は、本発明のハイブリッドミクロゲルが、2種のコロイド分散系:ミクロゲルの第1のコロイド分散系およびナノ粒子の第2のコロイド分散系の簡単な混合によって調製され得る限り、それらが水溶液中に存在していると、その表面が正に帯電している。この方法の成功を可能にする重要なパラメーターは、一方で、ミクロゲル内に均質に分布しているカルボキシルまたはカルボキシレート基の付加にあり、他方で、ナノ粒子の正表面電荷にある。全てにより、最終的な物質のコロイドおよび温度応答特性を保ちながら、制御された様式でミクロゲル内にナノ粒子を封入することが可能になる。ミクロゲルのハイブリッド構造およびまた、それらの温度感受特性が本発明において実証される。ミクロゲル内へのナノ粒子の組み込みは最初に、封入された磁性ナノ粒子の多くのおよび定量的な含有量で実証される(試験された充填剤の含有量は、1つのハイブリッドミクロゲル当たりナノ粒子0〜33wt%の範囲である)。水溶液中のハイブリッドミクロゲルの温度応答特性もまた、磁性ナノ粒子充填剤含有量に関係なく実証される。
一実施形態によれば、ナノ粒子は、光学、化粧品、農業食品または薬学分野において一般に使用される顔料、染料または日焼け止め剤である。
粒子は少なくとも1種の金属または1種の金属酸化物を含み得る。金属は、金、銀、スズ、チタン、銅またはアルミニウムであり得る。金属酸化物は、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロムおよび酸化スズからなる群から選択され得る。粒子は、例えば以下の化合物:TiO、Fe、TiFe、Ti−亜酸化物、Fe、Cr、ZrO、ZnO、SnO、Sn(Sb)Oの少なくとも1つを含む。
一実施形態によれば、ナノ粒子は、1から150nmの間、例えば6から30nmの間のサイズを有する酸化鉄(Fe、磁赤鉄鉱)の磁性ナノ粒子である。
磁性ナノ粒子は、水性相中の金属塩(Fe2+およびFe3+)の共沈、次いで正電荷によって溶液中で安定化される磁性ナノ粒子(γ−Fe)を生成するために酸化によって合成され得る。磁赤鉄鉱ナノ粒子の合成プロセスは、Massart,R.、Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Trans. Magn.、1981年.17(2):1247〜1248頁によって開発されたものであってもよい。
ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)およびナノ粒子をベースとする温度応答性ハイブリッドミクロゲルの調製は、好ましくは、コロイド分散系の形態において2つの構成要素を混合するプロセスによって実施され得る。水溶液中に存在するナノ粒子は、それらがミクロゲルと接触すると、表面が正に帯電できる。ハイブリッドミクロゲルの安定性は、ナノ粒子の封入を保ちながら、無機ナノ粒子の等電点を上回るpHの増加によって得られる。
このプロセスは、実行するのが簡単である利点を有する。ミクロゲル内のカルボン酸またはカルボキシレート基の均質な分布および表面が正に帯電しているナノ粒子の選択により、最終的な物質のコロイドおよび温度応答特性を保ちながら、制御された様式でミクロゲル内にナノ粒子を封入することが可能になる。
本発明のハイブリッドミクロゲルは、それらのコロイド、pHおよび温度応答特性を失わずに最大で50重量%、特に最大で35重量%のナノ粒子を含有できる。1つのハイブリッドミクロゲル当たりのナノ粒子の含有量は熱重量分析(TGA)によって決定され得る。
任意選択にナノ粒子を含む上記のミクロゲルは、前記ミクロゲルの水性懸濁液を乾燥するまたは蒸発するプロセスによって、ミクロゲルの1つまたは複数の層からなる膜を形成するために自己集合できる。
形成した膜は粘着性および弾性である。したがって本発明のミクロゲルは、ケラチン物質上での化粧品組成物の保持を改良するために、それらの組成物における膜形成剤として使用され得る。乾燥後、膜は、それらが水に浸されると、再分散しない。
ミクロゲルおよびそれらが形成する膜は圧縮効果によって電位を発生できる(ドナン効果)。膜は、カルボキシレート(COO)官能基に由来するイオンサイトを有するミクロゲルから調製される。これらのイオンサイトは構造内に抑制され、ミクロゲル(例えば高分子電解質ミクロゲル)内に分極を生じる。膜に圧力がかけられると、対イオンの移動が膜内に分極を生じるのに寄与し、表面と膜の容積との間に電位差を発生する。本発明者らは、メタクリル酸の存在が膜の電気機械特性を改良することを見出した。
単分散性ミクロゲルの自己集合はまた、光の回折を可能にするので色を発生する。フォトニック特性は、まさにミクロゲルの組成によって調整され得る。
本発明の単分散性ミクロゲルはコロイド結晶の形態で周期的に自己集合できる。この特定の自己集合は入射光の回折を可能にするので、視野角に依存して観測され得る色を発生する。この効果はミクロゲルの組成に応じて変化する:a)ナノ粒子を有さないミクロゲルの分散系の乾燥は、光を回折しない完全に透明な無色の乾燥膜の形成を誘導する。これに対して、この同じ膜は溶液中で観測され得る色を有する湿潤状態において光を回折する。b)磁性ナノ粒子(ハイブリッドミクロゲル)を含有するミクロゲルの分散系の乾燥は、光を回折する透明な有色(茶色)の乾燥膜の形成を導く。その結果として、膜は90°の視野角にて茶色(磁性ナノ粒子に由来する色)になり、より小さな視野角にて反射して色を変化させる。
ミクロゲル内の磁性ナノ粒子の存在は、永久磁石を用いてミクロゲルを方向付け、膜の機械特性を改良することを可能にする。所与の表面上での乾燥の間、温度応答性および磁性ミクロゲルは、永久磁石を用いて正確な点に誘導され、その点に集中させられ得る。これは、膜の厚さおよび色(より暗いまたはより明るい茶色の色合い)を変化させる効果を有する。さらに、磁性ナノ粒子は湿潤媒体中で膜の機械特性を改良し、これにより、膜上により大きな圧縮を与えることを可能にする。
これらの特性の全てにより、化粧製品または医薬製品を調製するための本発明のミクロゲルおよびそれらが形成する膜の使用を予測することが可能になる。これらの製品は、電流を発生し、任意選択に圧縮効果によって生物活性分子を送達することによって皮膚を刺激できる。生物活性分子はミクロゲル内に封入されてもよいか、または製品中に存在してもよい。
したがって、本発明の別の主題は、上記のミクロゲルならびに任意選択に界面活性剤、油、生物活性製品、顔料および染料からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなるか、またはそれらを含有する化粧製品または医薬製品である。
本発明のミクロゲルは、化粧品および医薬分野、好ましくは酸化鉄または生物活性物質をベースとする顔料において使用される全ての種類の成分または賦形剤を含有し得る。
本発明のミクロゲルは、水溶液中に予め溶解したモノマーを使用して、沈殿重合方法によって合成され得る。
本発明はまた、上記のポリ(エチレングリコール)メタクリレートミクロゲルの沈殿重合のための方法であって、架橋剤の存在下で、水性相中で、40℃から90℃の間の温度にて、上記の3種のモノマーを接触させるステップを含む、方法に関する。本発明の方法はSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などの界面活性剤の存在を必要としない。
モノマーの重合は、40℃から90℃の間の温度、好ましくは70℃のオーダーにて、水溶性ラジカル開始剤、例えば過硫酸カリウム(KPS)の添加によって開始され得る。
沈殿するミクロゲル中の−COOH基の均質な分布を保証するように、式CR=CRのモノマーの水溶液を2種の他のモノマーの水溶液中に徐々に加えることが好ましい。
重合温度にて、形成したポリマーは疎水性であり、球形粒子の形態で水性反応媒体中に沈殿し、重合の間の架橋剤OEGDAの存在により、架橋点を生じることによってこの球形で粒子を固定することが可能になる。
本発明のミクロゲルは、−COOH基および架橋点がそれらの体積全体にわたって均一に分布するので、均質な構造である利点を有する。
ミクロゲル膜は、有益には、20℃にて溶媒を乾燥させるか、または蒸発させるプロセスによって、例えば水中で1.4から5wt%まで変化させてもよい重量濃度にて単分散性ミクロゲルのコロイド分散系から開始することによって調製される。
このプロセスによれば、溶液の少なくとも第1の体積は、周囲温度にて水が完全に蒸発するまで乾燥させたままにしておいてもよい。このステップは、単分散性ミクロゲルのいくつかの層から構成され、乾燥状態において350から450マイクロメートルの間に変化し得る厚さを有する膜を得るために、数回繰り返されてもよい。
本発明はまた、i)上記のミクロゲルと、任意選択に、界面活性剤、油、生物活性製品、顔料および染料からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とからなるか、またはそれらを含有する化粧製品または医薬製品、2)磁石と、上に記載されており、磁性ナノ粒子を含むミクロゲルを含有する化粧製品とを含むキットであって、前記磁石および前記製品は一緒にパッケージング化されている、キット、iii)上記のミクロゲルまたは化粧製品を皮膚に塗布することを含む化粧品メイクアップまたはケアの方法、iv)上記のミクロゲルまたはハイブリッドミクロゲルの少なくとも1つの層を含む薄膜、ならびにv)光学、電子工学、センサ、化粧品、薬学および医療診断などの様々な適用分野におけるその使用に関する。
本発明の生体適合性ミクロゲルを合成するために使用されるモノマーの化学構造を示す図である。 本発明のポリ(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)をベースとするpH応答性および温度応答性生体適合性ミクロゲルの合成スキームの図である。 γ−Fe粒子を調製するためのスキームの図である。 γ−Fe粒子を含有する本発明によるハイブリッドミクロゲルを調製するための方法の第1および第2の合成ステップのそれぞれの概略図である。 本発明によるミクロゲルの膜を形成するための方法のスキームを表す図である。 本発明のミクロゲルの膜の電気機械効果を特徴付けるための部品を表す図である。 本発明のミクロゲルの膜の圧縮および弛緩の時間の概略図である。 本発明のミクロゲルの圧縮および弛緩プログラムのダイヤグラムである。 乾燥状態におけるおよび溶液中で膨張した本発明のミクロゲルの膜の画像である。 様々な視野角にて得られたγ−Feナノ粒子を含有する本発明のハイブリッドミクロゲルの乾燥膜の画像である。 明るい表面および暗い表面で得られたγ−Feナノ粒子を含有する本発明のハイブリッドミクロゲルの乾燥膜の画像である。 磁石を有するおよび有さないγ−Feナノ粒子を含有する本発明のハイブリッドミクロゲルの乾燥膜の画像である。
本発明はまた、以下の実施例によっても例示される。
本発明によるポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとするミクロゲルの合成
以下のモノマーを使用した:ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA、Mn 250g.mol−1)、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(本明細書以下においてOEGMAとも示されるM(EO)4−5MA、Mn 475g.mol−1)、およびメタクリル酸(MAA)。架橋剤はオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート(OEGDA、Mn 250g.mol−1)であった。
実験プロトコール
0.966gのMEOMA(5.14×10−3mol)、0.272gのOEGMA(5.73×10−4mol)および0.029gのOEGDA(1.17×10−4mol)を57.5mLの体積の水の中に導入し、モノマーが完全に溶解するまで磁性撹拌下に置いておく。次いで混合物を濾過し、機械的撹拌器を備えた250mLの体積を有する三つ口フラスコ内に導入し、その後、機械的撹拌(150rpm)しながら窒素下で45分間脱気する。次いでMAA水溶液(0.026g、2mLの水に溶解した3.05×10−4mol)を反応媒体中に導入する。混合物を70℃にて20分間置いておき、その後、事前に窒素下で脱気した過硫酸カリウム水溶液(KPS、2.5mLの水に溶解した0.0143g)を導入する。KPSの添加により、重合を開始することが可能になり、反応媒体を70℃にて6時間、機械的撹拌(50rpm)下に置いておく。
次いで酸素の添加により重合を停止させ、置いておいて、周囲温度まで冷やす。次いでミクロゲルを遠心分離(10000rpm、30分)によって反応媒体から分離し、反応媒体を(milliQグレードの)純水と置き換え、このステップを5回繰り返す。
その結果、最終溶液は水性相中のP(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ミクロゲルのコロイド分散系から構成され、この分散系を周囲温度に維持する。
ミクロゲルの特性
ミクロゲルの合成は、プロトン核磁気共鳴(H NMR)分光法を使用してモノマーの動的モニタリングによって特徴付けた。モノマーの完全な変換ならびにまた、架橋点およびメタクリル酸単位の均質な分布を有するミクロゲルの均質な組成を観測する。
架橋ミクロゲルの最終収率は反応媒体の固体含有量によって分析し、架橋ミクロゲルの70wt%の収率を決定することができる。
組み込んだメタクリル酸の含有量は、精製したミクロゲルの酸塩基滴定によって決定した。水溶液中のミクロゲルのpH応答性質およびまた、最初のMAAモノマーの70mol%の組み込みが確認できた。
ミクロゲルは透過電子顕微鏡法(TEM)によって観測し、それらのサイズは動的光散乱によって決定した。観測したミクロゲルは、乾燥状態において400nmのサイズを有し、湿潤状態において最大1000nmまでの範囲であり得る、単分散性である。
ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとするミクロゲルの溶液の調製
実施例1に従って調製したミクロゲルの1.2mLの溶液(15g.L−1のミクロゲルを含有する)を10mLの純水(milliQグレード)の溶液中に分散する。分散系のpHは塩酸または水酸化カリウムの0.1mol.L−1溶液の添加によって調整する。pHが安定するまで、混合物を磁性撹拌下に置いておく。溶液中のミクロゲルのサイズを動的光散乱によって測定し、分析の間、溶液の温度を制御する。
動的光散乱により溶液中のミクロゲルのサイズを調べることによって、水中で膨張または収縮するミクロゲルの能力に対する媒体のpHおよび温度の影響を評価することが可能になった。
ミクロゲルは、媒体のpH変化に対して応答性であり、pH<5.5にて400nmのサイズからpH>6.0にて1000nmのサイズまで変化する。
ミクロゲルは、温度応答性であり、20℃にて膨張状態から高温にて収縮状態まで変化する。収縮温度はpHに依存する(pH<6.0にて35℃およびpH>7.0にて55℃)。最終的に、20℃にて膨張したミクロゲルの体積は、温度が収縮温度を超えた場合、その最初の体積と比較して最大で3倍減少する。
磁性ナノ粒子を含有するポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとするミクロゲルの調製
磁赤鉄鉱γ−Feナノ粒子の合成
使用した反応物質は、塩化鉄(II)四水和物(FeCl.4HO)、塩化鉄(III)六水和物(FeCl.6HO)、28〜30%w/w水酸化アンモニウム(NHOH)、硝酸鉄(FeIII(NO.9HO)、36%v/v塩酸(HCl)および硝酸(HNO)である。
この研究の間に使用される磁赤鉄鉱ナノ粒子は金属塩(FeIIおよびFeIII)の共沈によって合成した。この合成方法は、水酸化アンモニウム(NHOH)の添加による塩基性媒体中での塩化鉄(II)(FeCl)および塩化鉄(III)(FeCl)の共沈によって磁鉄鉱(Fe)のナノ粒子を形成することを含む。次いで磁鉄鉱を酸化して磁赤鉄鉱(γ−Fe)種を形成する。磁鉄鉱の磁赤鉄鉱への酸化により、ナノ粒子の表面にてpH応答性ヒドロキシル官能基を確立することが可能になり、これらの官能基は中性pH(pH≒7.2)にてゼロ電荷の点を有する。したがって、酸性または塩基性pH値にて、これらのナノ粒子はアニオン電荷(塩基性pHにて)またはカチオン電荷(酸性pHにて)の静電反発力によって水性相中でコロイド状態を有する。これは、一般に「カチオン性強磁性流体」または「アニオン性強磁性流体」と称される、pHの安定化に依存して水性相中で安定化される磁性ナノ粒子を合成するための汎用的方法である。
実験プロトコール
ステップ1:磁鉄鉱の形成
12.2gの塩化鉄(III)六水和物FeCl.6HO(0.0451mol)を、500mLの純水を含有する3Lのビーカー内に導入する。4.49gの塩化鉄(II)四水和物FeCl.4HO(0.0226mol)を24.3mLの塩酸(HCl)の1.5mol.L−1溶液中に溶解させ、これを3Lのビーカーに加え、全てを穏やかな機械的撹拌下で混合して置いておく(最初のFeII/FeIII比=0.5)。次いで体積V=43mLの28/30%w/w水酸化アンモニウムを、激しく機械的撹拌しながら、周囲温度にてビーカーに加える。水酸化アンモニウムの添加により、塩基性水溶液(pH>10)中で凝集した磁鉄鉱(Fe)の形成が導かれ、次いで磁鉄鉱凝集塊を、永久磁石によって発生する磁力の作用下で沈殿させて置いておき、次いで上清を除去し、純水(milliQグレード)と置き換える。過剰な水酸化アンモニウムを除去するために洗浄ステップを2回繰り返す。
ステップ2:アンモニウム対イオンの脱着および表面酸化
磁鉄鉱を洗浄する連続ステップの後、体積V=28.6mLの硝酸HNOの2mol.L−1水溶液を磁鉄鉱凝集塊に加え、磁鉄鉱粒子の表面を処理するために、30分間、機械的撹拌下に置いておく。
硝酸の添加により、媒体を酸性化し、硝酸塩NO イオンでのイオン交換によってナノ粒子の表面にて過剰なアンモニウムNH 対イオンの脱着を誘導することが可能になる。また、表面における粒子の酸化により、沈殿しておらず、ナノ粒子の表面に存在する第一鉄イオンを溶解することも可能になる。
表面処理した磁鉄鉱凝集塊を永久磁石下で沈殿させて置いておき、次いで上清を除去し、純水と置き換え、このステップを2回繰り返す。
ステップ3:ナノ粒子のコアの酸化。
表面処理した磁鉄鉱を洗浄する連続ステップの後、体積V=85.7mLの新たに調製した硝酸鉄FeIII(NOOの0.33mol.L−1溶液を沸騰状態で磁鉄鉱凝集塊に加え、還流下および機械的撹拌下に45分間置いておく。
硝酸鉄によるFe3+イオンの導入により、粒子のFeIIを酸化することが可能になり、それによって磁赤鉄鉱γ−Fe種を形成する。粒子の完全な酸化の後、磁赤鉄鉱凝集塊を永久磁石下で沈殿させて置いておき、上清を除去し、次いで純水と置き換え、この操作を2回繰り返す。
ステップ4:磁鉄鉱ナノ粒子の「ペプチゼーション」。
体積V=28.6mLの硝酸HNOの2mol.L−1溶液を磁赤鉄鉱凝集塊に加え、周囲温度にて機械的撹拌下に30分間置いておく。硝酸の添加により、磁赤鉄鉱の表面にてヒドロニウムHイオンを導入することが可能になる。カチオン性の磁赤鉄鉱凝集塊を沈殿させて置いておき、次いでアセトンで3回洗浄する。次いで体積V=70mLの水をナノ粒子に加え、水中のナノ粒子の「ペプチゼーション」を可能にし、次いでナノ粒子の分散系を、ナノ粒子の表面における正電荷の静電反発力によって安定化する。最後に、残留アセトンを40℃にて真空下での蒸発によって除去する。
P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)/γ−Feハイブリッドミクロゲルの合成
ハイブリッドミクロゲルは、P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ミクロゲルの水性分散系と、pH2にて安定化される磁赤鉄鉱ナノ粒子(カチオン電荷を有するナノ粒子)の分散系との簡単な混合によって合成する。ミクロゲル内へのナノ粒子の封入は2ステップで実施する:
・ 第1のステップは、カチオン性ナノ粒子を、pH3および周囲温度にて分散したミクロゲルの溶液に加えることである。これらの混合条件により、γ−Feナノ粒子の表面においてカチオン電荷を保持することが可能になる。ナノ粒子は、ミクロゲル内に含有されるメタクリル酸単位に由来するカルボン酸基のためにミクロゲルと優先的に相互作用する。具体的には、カルボン酸基は酸化鉄などの金属酸化物の粒子の表面において吸着する能力を有し、さらにナノ粒子の表面における正電荷により、有益な相互作用が可能になる。この意味において、γ−Feナノ粒子の添加により、そのγ−Feナノ粒子はミクロゲル内に優先的に定着する(図4においてまとめられたステップ)。
・ 第2のステップは、pH3から開始して最大でpH7.5まで媒体(ミクロゲル+ナノ粒子)のpHを増加させることである。このpHの上昇は、1)混合物内のカチオン性γ−Feナノ粒子の不安定化を誘導する。具体的には、ナノ粒子は中性pH(等電点=7.2)においてゼロ電荷の点を有するので、そのナノ粒子は、静電反発力の欠如に起因してこのpHで凝集する。2)カルボキシレート(COO)基の形態のカルボン酸(COOH)官能基に由来するミクロゲル内の負電荷の発生。これらの2つの現象の共存により、ミクロゲル内に磁性ナノ粒子を固定し、カルボキシレート官能基の負電荷のためにハイブリッドミクロゲルの安定性を改良することが可能になる(図5においてまとめられたステップ)。
実験プロトコール
1.45g.L−1の重量濃度を有する40mLの体積のP(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ミクロゲルの水性分散系を100mLの丸底フラスコ内に導入し、磁性撹拌下に置いておき、硝酸(HNO)の0.1mol.L−1溶液の添加によって分散系のpHを3.0に調整する。次に、pH3にて1.34g.L−1の重量濃度を有する10mLの体積のカチオン性磁鉄鉱ナノ粒子の分散系を、周囲温度にて磁性撹拌下で混合物に滴下して加え、これは約18.8%のハイブリッドミクロゲル当たりのナノ粒子の量に相当する。反応混合物を撹拌下で周囲温度にて12時間置いておく。次いで反応混合物のpHを、水酸化カリウム(KOH)の0.5mol.L−1溶液を滴下して加えることによって増加させる。最終的に、ハイブリッドミクロゲルを遠心分離(5000rpm、20分)によって反応媒体から分離させ、反応媒体を(milliQグレードの)純水と置き換える。その結果、最終溶液は水中のP(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ミクロゲルのコロイド分散系から構成され、この分散系を周囲温度にて維持する。様々な合成を、0から33%の間のハイブリッドミクロゲル当たりのナノ粒子の理論的重量分率を変化させることによって実施した。
γ−Fe/P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ハイブリッドミクロゲルの特性
ハイブリッドミクロゲルは、透過電子顕微鏡法(TEM)によって乾燥状態において、および動的光散乱によって湿潤状態において特徴付けた。ミクロゲルのハイブリッド構造はTEMによって実証し、乾燥状態におけるミクロゲルの観測により、乾燥処理の間に放出されない、ミクロゲル内の磁性ナノ粒子の良好な封入を明らかにすることができる。封入されたナノ粒子充填剤の含有量は熱重量分析によって決定し、その分析により、定量的および有意なナノ粒子の封入が確認される(試験された充填剤の含有量は1つのハイブリッドミクロゲル当たりナノ粒子0〜33wt%の範囲である)。中性pHにおける水溶液中のハイブリッドミクロゲルの温度応答特性もまた、20℃にて1000nmから37℃の収縮温度で450nmまで変化するハイブリッドミクロゲルの収縮により実証される。中性pHにおけるこの収縮は磁性ナノ粒子充填剤含有量と関係なく起こる。
ミクロゲルの膜
表1にまとめたミクロゲルの組成を使用して膜を調製する。
水(溶液1)中に1.4から5wt%まで変化する重量濃度のミクロゲルを有する単分散性ミクロゲル(溶液中で500から1000μmの間で変化し得るサイズを有する)のコロイド分散系から開始して、図6に提示した乾燥プロセスによって膜を調製する。一定体積の溶液をプラスチックモールド内に導入し、水が完全に蒸発するまで乾燥させて置いておく(図6のステップ1)。その結果、モールドの底に残っている膜は単分散性および完全に乾燥したミクロゲル(乾燥状態において350から450μmの間で変化し得るサイズを有する)のいくつかの層から構成される。膜を注意深く回収し、水溶液(溶液2)中に再導入する。様々なパラメーターを変化させる:1.)1.4〜5wt%の分散系の重量濃度により、膨脹した膜厚を変化させることができる(ステップ3の最後:200μm〜1000μmの厚さ)。2.)溶液2のpHを5.5から7.5の間で変化させる。
実験プロトコール:ポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとする温度応答性ミクロゲルの膜の形成。
1.4〜5wt%の重量濃度にて5mLの体積のミクロゲルのコロイド分散系をプラスチックモールド内に導入し、32℃(+/−2℃)の温度にて乾燥させて置いておく。溶媒の完全な蒸発後、膜を注意深く回収し、次いで水溶液中に導入し、周囲温度にて膨脹させて置いておく。
回収した膜は、乾燥状態において原子間力顕微鏡によって観測し、湿潤状態においてレオメータを使用して特徴付けた(図6のステップ3の最後)。ミクロゲルは、ミクロゲルのいくつかの層から構成される弾性膜を形成し(ステップ2)、これはミクロゲルの組成とは関係がない(表1におけるミクロゲル1〜5)。逆に、ミクロゲルは、それらが水中で膨脹すると、それらの機械特性を喪失するが、溶液中で再び分散しない。
ミクロゲル1および2:膜厚は200から1000μmまで変化し、ミクロゲルの層の増加は「膜形成」現象を変化させず、膜は乾燥状態においてそれらの弾性を維持する。
ミクロゲル3、4および5:ハイブリッドミクロゲルの場合における、300μmのオーダーの厚さ(ステップ3において膨脹した膜)を研究した。ナノ粒子の添加はミクロゲルの膜形成特性を変化させない。反対に、膜の機械特性は湿潤状態において大幅に改良される。
膜の電気機械特性の評価
1.膜の電気機械特性の特徴付け
ミクロゲルの膜の電気機械特性を調べた。これは、圧力がこれらのミクロゲルに加えられたときに電流を発生するミクロゲルの能力を実証することに関する問題である。より具体的に、本発明の概念は基材の表面に物質を押圧することによって電流を発生させることである。この電位は共有結合しているイオン官能基を有する物質(または高分子電解質物質)から発生し得る。具体的には、イオン基はミクロゲル内で結合しているので、各カルボキシレート基の対イオンのみがミクロゲル内で移動性を有する。一方向圧力/変形がこれらの高分子電解質ミクロゲルに加えられると、対イオンの移動性が有益になるので、移動性対イオンの正電荷と、結合しているカルボキシレート基の負電荷との間に分極を生じる。このイオン勾配の結果として、接触面において電位が生じる。したがって、ミクロゲル内のイオン性官能基の存在により、物質内で分極を生じ、電位を発生させることが可能になるであろう。
膜の電気機械特性を実証するために部品を使用する。これに関して、Anton Paar MCR301レオメータをプレート間形状において使用し、その中でインジウムスズ酸化物またはITOをベースとする2つの平面および導電性電極(図7の実体1)がその形状のいずれかの側に結合される。下側電極は固定され、上側電極は取り外し可能である。ミクロゲルの湿潤膜(図7の実体3)は下側電極の表面上に堆積し、上側電極は膜に力Fの圧縮を加えるために下げられる。2つの電極間の距離を制御することによって、膜に加えられる粉砕力(F)を制御することができる。
圧縮/弛緩のプログラムは、膜に加えられる力を変化させるために実施する。最初に、湿潤膜の最初の厚さ(Lと示す)を決定し、2つの電極間の距離を、上側電極を下げることによって距離ΔLまで徐々に減少させた。プログラムは、最終距離Lで短時間の粉砕(τ=2秒)、次いで最初の状態Lまで戻る長時間の弛緩(τ=20秒)によって識別し、全てにより、膜に対する「接触感受性」型の作用を模倣することが可能になる(図8)。
粉砕時間において、垂直抗力F(ニュートン単位)を記録する。この力Fは粉砕厚さ(ΔL)に比例する。プログラムを、膜が、ΔL=(3×)10%.L、次いで(3×)20%.L、次いで(3×)25%.Lなどで距離L=L−ΔLに圧縮するようにアレンジする。使用したプログラムの例を図9に示す。
最後に、上側および下側電極を、プログラム全体を通して2つの電極の間で発生した電位差(Eと示す)を記録するために変換器/増幅器に接続する。
2.ミクロゲルの膜の研究
P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ミクロゲルの膜
P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)生体適合性ミクロゲルの膜は、3つのパラメーターを変化させることによって特徴付けた:
1.)圧縮の増加の効果:各膜について、同じ力の圧縮を連続して繰り返し(図9に表したように3回)、各圧縮の電位を分析する。
2.)膜厚:2つの膜厚を、接触面において電位を発生する膜の能力に対する厚さ(約200μmおよび約900〜1000μm)の影響を決定するために試験した。
3.)カルボン酸官能基の組成:MAA単位の組成を、電位に対するMAA単位の影響を評価するために0〜3.5mol%のMAA(ミクロゲル1および2)に変化させた。
4.)膜が膨張する溶液のpH:pHにより、ミクロゲル内のイオン官能基(COO)の量を変化させることが可能になる。具体的には、カルボン酸官能基は2つのプロトン化(COOH)および脱プロトン化またはイオン化(COO)種の形態で存在する。これらの2つの種の比率は溶液のpHに依存し、pHが増加するとイオン化種COOが増加する(pH5.5→%COO=0;pH6.5→%COO=50%;pH7.5→%COO=75%)。
結果:
ミクロゲルの膜の圧縮の間の電気信号の変化を観測することによって、電気機械効果が、特徴付けられた膜の全てにわたって実証される。この電気機械効果は膜に加えられた力Fの関数であり、電位は圧縮力と共に増加する。さらに、ある傾向が分析パラメーターの関数として現れるように見える:
・ 圧縮の反復の効果:記録した電位は第1の圧縮の間、非常に高い。一方、第2および第3の圧縮の間、発生した電位はより低くなる。この第1の観測は、高い瞬時電位(約12mV)を生じる膜の第1の圧縮におけるイオンの顕著な移動に起因し得る。20秒の弛緩後、同じ力の次の圧縮はイオンのこの同じ移動をもたらすのに十分ではないように見え、発生する電位は減少する。
・ 膜厚の効果:異なる厚さの膜の圧縮によって発生する電位は、膜が厚過ぎると、弱い電気機械効果を示す(Fn,max=0.35NについてE=2〜5.6mV)。反対に、より大きな電気機械効果は、膜厚が小さいときに見られ、0.38〜0.4Nの力Fについて11〜5mVの範囲である。したがって、厚さを非常に大きくすることにより、イオンの移動に対して十分な影響を与えることができなくなるであろう。(表2.膜厚の効果を参照のこと)
・ カルボン酸官能基の組成:メタクリル酸の存在は膜の電気機械特性を改良するように見える。具体的には、膜は、弱い力について測定した電位により、圧縮効果に対して、より感受性があるように見える(MAAを用いないと0.4Nにて1〜0.5mVに対してMAAを用いると0.4Nにて11〜5mV)。さらに、pH6.5で行った測定は、ミクロゲルの膜の感受性に対する、MAA単位に由来するイオン化カルボキシレート基(イオン化MAA基の50%)の重要性を強調する。(表2.MAA組成の効果を参照のこと)
・ 同じ組成のミクロゲルの膜上での5.5〜7.5の溶液のpHは、膜の電位の値を変化させないように見えるが、溶液のpHを増加させると、圧縮反復の面における電位の喪失が低下するように見える。具体的には、pH5.5において、圧縮の反復により、電位は2mVまで降下するが、より高いpHにおいて、電位は5.4mVまで降下する。これは恐らく、イオン化カルボキシレート官能基の比率の増加(%COOpH5.5=0%;%COOpH6.5=50%;%COOpH7.5=75%)に起因し、膜を形成するミクロゲルの分極容量を増加させる。その結果、pHが増加すると、膜はより感受性になる。(表2.pHの効果を参照のこと)
P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)/γ−Feハイブリッドミクロゲルの膜
ハイブリッドミクロゲルの膜をpH7.5にて特徴付け、磁性ナノ粒子(NP)を有さないミクロゲルの膜と比較した。ナノ粒子を有さないミクロゲルの膜は、圧縮力F=0.4Nについて6mVの最大電位を有する。ナノ粒子を有するミクロゲルの膜について、発生する電位は組み込まれるナノ粒子の量に依存する:
・ 組み込まれる約5wt%の磁性ナノ粒子について、ナノ粒子は、発生する電位に影響を与えず、圧縮に対する膜の応答は6〜7mVである。
・ 組み込まれる9および17wt%の磁性ナノ粒子について、圧縮力に関係なく2.5mVに達する電位の低下が観測される。電位の喪失はpH7.5にてカルボン酸単位に由来する電荷の減少に起因し得る。なぜならそれらは既にNPと相互作用しているからである。具体的には、ナノ粒子の組み込みは、ミクロゲル内に含有されるイオンサイト(COO)においてナノ粒子の吸着によって行われる。この吸着は、ミクロゲル内でまだ利用可能であるイオンサイトの割合を減少させ、それによってミクロゲルの分極容量を減少させるように見える。組み込まれる5wt%のナノ粒子の量はハイブリッド膜の高分子電解質の挙動に影響を与えない(表2.γ−Feの効果を参照のこと)。
ミクロゲルの光学特性
電気機械特性以外に、ミクロゲルの膜は、光を回折するこれらの膜の能力に関連する、それらの光学特性によって識別される。不均一性が膜の組成に応じて観測される:
P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)ミクロゲルの膜
ナノ粒子を有さないミクロゲルのコロイド分散系を乾燥させている間、形成した膜は、乾燥状態において透明であり、湿潤状態において虹色である(図10)。ミクロゲルの膨脹の間、粒子間の直径および距離は可視領域における光の回折に有益であるように見え、この回折はフォトニック結晶の観測によって実証される。
P(MEOMA−co−OEGMA−co−MAA)/γ−Feハイブリッドミクロゲルの膜
ミクロゲルのコロイド分散系を乾燥させている間、乾燥状態において透明であり、有色である膜が得られ、それは非常に小さい視野角で反射して虹色の特性を有する。次いでその物質は90°で見たとき茶色(磁性ナノ粒子に起因する色)になり、より小さい角度で見たとき虹色になる(図11)。
フォトニック特性は、図12に見られるように、特に(暗いバックグラウンドで)反射して可視でき、(明るいバックグラウンドで)透過してほとんど可視できない。
ハイブリッド膜の機械および磁性特性
ハイブリッドミクロゲルの膜形成特性およびそれらの光学特性以外に、磁性ナノ粒子の添加により、乾燥の間にミクロゲルを方向付けることもできる。図13は、乾燥の間、磁場の印加によって正確な点にミクロゲルを集中させることができるので、これらの特性を明確に例示する(本発明者らの場合では、磁石を分散系の下に置いた)。乾燥により、一方で、目標とする点に全てを固定することができ、他方で、反射して虹色の特性を保持しながら、ハイブリッドミクロゲルの局在化した集中により最終的な膜の色合いを変化させることができる(磁石を有する乾燥させた溶液、図13)。

Claims (13)

  1. 架橋剤の存在下で、以下の3種のモノマー:
    − ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)、
    − オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)(式中、nは3〜12の範囲の整数である)、
    − 式CR=CR(式中、R、R、RおよびRは水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、ただし、4つの基の少なくとも1つは−COOHまたは−COO基を含み、Mはカチオンを表す)のモノマーの水性相沈殿重合によって得られるミクロゲル。
  2. M(EO)MAが3種のモノマーの総モル数の50mol%〜90mol%を占め、M(EO)MAが3種のモノマーの総モル数の10mol%〜50mol%を占め、式CR=CRのモノマーが3種のモノマーの総モル数の0.1mol%〜20mol%を占めることを特徴とする、請求項1に記載のミクロゲル。
  3. 前記式CR=CRのモノマーがメタクリル酸であることを特徴とする、請求項1または2に記載のミクロゲル。
  4. 前記架橋剤が、1〜10個のエチレングリコール単位を含むオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート(OEGDA)であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のミクロゲル。
  5. 金属または金属酸化物ナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のミクロゲル。
  6. 顔料、染料および日焼け止め剤から選択されるナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のミクロゲル。
  7. 磁性ナノ粒子を含有するポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)をベースとする、単分散性、温度応答性および磁性ハイブリッドミクロゲル。
  8. 請求項7に記載のハイブリッドミクロゲルを調製する方法であって、
    − 表面が正に帯電し、水溶液中に存在している磁性ナノ粒子のコロイド分散系を調製するステップと、
    − 請求項1から4のいずれか一項に記載のミクロゲルの水性コロイド分散系を調製するステップと、
    − 該2種のコロイド分散系を混合し、pHを該ナノ粒子の等電点を上回るように調整するステップとを含む、方法。
  9. 請求項1から4のいずれか一項に記載のミクロゲルを沈殿重合する方法であって、架橋剤の存在下で、前記水性相中で、40℃から90℃の間の温度にて、上記の3種のモノマーを接触させるステップを含む、方法。
  10. 請求項1から7のいずれか一項に記載のミクロゲルと、任意選択に、界面活性剤、油、生物活性製品、顔料および染料からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とからなるか、またはそれらを含有する、化粧製品または医薬製品。
  11. 磁石と、磁性ナノ粒子を含むミクロゲルを含有する請求項10に記載の化粧製品とを含むキットであって、該磁石および該製品が一緒にパッケージ化されている、キット。
  12. 請求項1から7のいずれか一項に記載のミクロゲル、または請求項10に記載の化粧製品を皮膚に塗布することにある、化粧品メイクアップまたはケアの方法。
  13. 請求項1から7のいずれか一項に記載のミクロゲルの少なくとも1つの層を含む薄膜。
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